八幡「雪ノ下が猫カフェで働いてるだって?」 (131)
八幡「おいおい、いくら何でもそれは嘘だろう」
結衣「だって、優美子が二俣新町の猫カフェからゆきのんが出てくるところを目撃したって言ってたんだもん!」
八幡「そもそも、あんな辺鄙なところに猫カフェあったのかよ……」
八幡「あんな都会の外れにポツンと取り残されたような駅、二俣新町くらいだぞ」
結衣「いまは二俣新町ディスってる場合じゃないって!」
八幡「猫カフェに客として向かったんじゃないのか?あいつにバイトをする必要性なんてないだろ?」
結衣「それなら、どうしてここ数週間、部活に顔を出さないの?
八幡「……それもそうだな
八幡「しかし、あの雪ノ下がカフェで働くとはね……。あいつに接客なんか出来るのかよ」
結衣「だ・か・ら、調査しようよ!」
八幡「調査ぁ?」
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結衣「実際にゆきのんが働いてる(かもしれない)猫カフェへ、一緒に行ってみようよ!」
八幡「えぇぇ……」
結衣「……い、いや?」
八幡「いくら千葉愛好家の俺でも、二俣新町の地に下りるのはちょっとな……」
結衣「そんなに嫌なの!?」
八幡「(武蔵野線は通らず、快速は通過する。その上、京葉線沿線の中では最も本数の少ない駅だぜ?)」
八幡「(なんだよこのスルー炸裂&嫌われっぷりときたら)」
八幡「(……そう考えてみると、俺と通ずるものがあるな」
八幡「(なんだか急に同情心が芽生えてきてしまったぞ。駅相手に)」
八幡「……やっぱり行こうぜ」
結衣「え?」
八幡「いや、行きたいんだ!行かせてくれ!!」
八幡「(二俣新町を見捨てるわけにはいかねぇ!)」
結衣「……あたしと、行きたい、ってこと……?//」カアァッ
結衣「(そ、そんなこと急に言われたら、あたしっ、どうしたらいいのかわからな……)//」ドキドキ
結衣「…うんっ!行こっ!」
八幡「おうっ!」
結衣「(えへへ、ちゃっかりデートをするみたいな流れになっちゃった……//)」
八幡「(……あれ、何をしに二俣新町行くんだっけな?駅前で記念撮影?)」
日曜日
・・・・・・・
二俣新町駅前
八幡「……来たぜ、朋友」
八幡「(さすが、電車の便が悪いだけあるな。まったく栄えてない)」
八幡「(駅前は『デイリーヤマザキ』があるだけだぜ)」
八幡「(それなのに駅の反対側には、最大手のセブンイレブンやファミマの配送センターがあるんだな)」
八幡「(……まるで、スクールカーストの縮図のようだな)」
八幡「カースト最上位のセブンとファミマをよそに、ポツンと残るデイリーヤマザキ……」
八幡「恐ろしい停車場だ、二俣新町……」
八幡「……にしても遅いな、由比ヶ浜のやつ」
八幡「(俺が早く来たせいでもあるが、集合時間が10分過ぎて待ちくたびれた)」
八幡「(俺はいつからいるのかって?始発で来たから5時間は待ってるってばよ)」
結衣「おーい、ヒッキー!」トテテ
八幡「おー、アホみたいな走り方で向かってくるのは由比ヶ浜だな」
結衣「ごめん、遅れちゃって……」
八幡「気遣い上手のお前が遅れてくるとはな」
結衣「うん……最初に武蔵野線直通に乗っちゃってさ、二俣新町を通らずに西船橋へ進んじゃって……」
八幡「そうか、災難だな…」
八幡「(ますます同情するぜ、二俣新町……)」
結衣「それで折り返すのにロスしちゃってさ……ごめんね?」
八幡「まあいいさ、待ちくたびれたから早く行こうぜ」
結衣「え、そんなに?何分前から待ってたの?」
八幡「およそ300分前だな」
結衣「ほぇ?」
八幡「いいから行くぞ」
結衣「えーと、60分が1時間だから……え、5時間!?」
八幡「張り切ってしまった(二俣新町へ向かうことに)」
結衣「張り切りすぎだよ!そんなに楽しみにしてたの!?」
八幡「おう、楽しみだったぞ」
結衣「え……//」ドキッ
結衣「そ、そっか……あはは、嬉しいな……//」
八幡「?」
八幡「(なんだ?ガハマにとっても二俣新町は思い出の地なのか?)」
結衣「(もういっそ、このまま二人っきりで……)//」
結衣「(って、ちがうちがう!今日はゆきのんが働いてるかもしれない猫カフェへ突撃調査のつもりで来たんだから!)」
結衣「(……まあ、もしもゆきのんがそこで働いてなくて、ただの無駄足になったとしても、ヒッキーと一緒にねこちゃんとじゃれることができるし……)」ニヘラァ…
八幡「おい、顔がデュフフwwwwみたいになってるぞ」
結衣「ふぇっ!?」アワワッ
・・・・・・・
結衣「えーと、優美子が言うにはここの猫カフェらしいよ?」
八幡「まじかよ……」
八幡「(辺り一帯、工場ばっかりじゃねぇか……)」
八幡「誰が来るんだ、こんなところに……」
結衣「さぁ……?」
八幡「そもそも、どうして三浦はこんな工業団地を訪れたことがあるんだよ」
結衣「んーと、この近くに両親の実家があるって言ってたよ?」
八幡「ファッ!?」
八幡「(三浦の両親、メイドインファクトリーかよ!アンドロイドじゃねぇか!?)」
結衣「なんだっけ?公務員宿舎が近くにあるとかなんとかって……聞いてる?」
結衣「とりま、店先で立ち話もなんだし、中に入ろうよ」
八幡「お、おう。色んな工場を見ている場合じゃねぇな……」
八幡「(三浦の身体にも、製造番号刻まれてるんだろうか……いや、にしてもアンドロイドの子供ってなんだ?アンドロイドチルドはアンドロイドなのか?謎だ……)」
結衣「………………」
八幡「…………………」
結衣「……………………」
八幡「………………………何してる」
結衣「………いやあ、ドア開かないね?」
八幡「……おい」
結衣「ん?」
八幡「それ、押しボタン式だぞ」
結衣「え………あっ、気づかなかった!!」
八幡「アホ………」
ポチッ ウィィ~ン
結衣「あ、あはは~………」
結衣「(めちゃくちゃ恥ずかしいよぉ………//)」
八幡「(よく総武高に入れたもんだ、本当……)」
店員「いらっしゃいませ~♪」スタスタ
結衣「あっ、2人です」
店員「2名様ですねぇ、お好きな席へどうぞぉ~」
結衣「はーい……きゃあ!見て見てヒッキー!猫ちゃんがいっぱいいるよ!!」
八幡「そうだな、それはいいがお前の大声で一気に猫が警戒しはじめたぞ」
結衣「ほんとだ、シャーって鳴いてる。かわいい~//」
八幡「お前……頭ん中お花畑か……」
八幡「とりあえず靴脱いでテキトーに席着こうぜ。俺たち以外に客もいないそうだし」
結衣「うんっ!わぁテンション上がってキター!」
シャー!
八幡「(ああもううるさいうるさい。猫が牙向いてるじゃねぇか)」
結衣「ふぅ、じゃあここにしよっか」
八幡「おう」ヨッコイショウイチ
結衣「なんかいいね、この店の内装。全体的に明るい色してるし、アットホームな空間だよね」
八幡「ざっくりしたレビューだな」
八幡「(まあ確かに、薄ピンクを基調とした壁紙に、白や黄色、オレンジといったストライプが入っていてとても明るい色合いだ)」
八幡「(その他、モフモフした絨毯の敷かれた床には色とりどりのクッションが転がっており、そばには真っ白なちゃぶ台が置いてあるといった感じだ)」
八幡「(これが由比ヶ浜の言う、アットホームというやつなのだろう。席はくつろぎやすくていいが、ここまで明るいと目が疲れちまうわい)」
結衣「さてと、なに頼もっかな~♪ヒッキーはどれにする?」
八幡「あ?先に決めちゃっていいぞ」
結衣「うーん……あ!この『猫も食べれるビスケット』良いんじゃないかな?ねこちゃんにもあげることができるんだって!」
八幡「キャットフード食うつもりか……」
結衣「キャットフードじゃないよ、『猫も食べれる』だから、本来は人間食なの!たぶん……」
八幡「わかんねぇぞ?元は『人間も辛うじて食える』という文句を改ざんしている可能性がだな」
結衣「どこまで否定的なの!?」
八幡「(近頃流行ってるじゃないか、改ざんとか偽装とかゴーストライターとか。だから恐いのさ)」
結衣「ま、ヒッキーは放っておいて、ビスケットプラスアイスティーを頼もっと」
八幡「俺は………チッ、MAXコーヒー無いのか」
結衣「いや、普通無いでしょうに……」
八幡「しゃーない。じゃあ、この猫ババロアでも頼むか」
八幡「(こういうダジャレを織り交ぜたメニューはまあまあ好きだ。)」
八幡「(ところで、猫ババの逆は犬ジジなんだろうか?そもそも逆ってなんだよ)」
結衣「すいませーん!」
店員「はいはーい、お決まりですか?」
結衣「はい、猫も食べれるビスケット、アイスティー、猫ババロアをお願いします」
店員「了解でーす、お作りしますのでその間、猫ちゃんとじゃれじゃれしてくださいね~」
結衣「はーい」
八幡「(じゃれじゃれなんて日本語聞いたことないのに意味が大体把握できる俺ってやっぱり頭脳明晰容姿端麗才色兼備七転八幡だな)」
結衣「よし!ぬこと遊ぼう!ほらほら、おいでおいで~♪」
シャー!
結衣「あ、あはは……」ガクッ
八幡「じゃれじゃれ開始5秒で心折れんなや」
結衣「お、折れてないよっ!」
八幡「ったく、猫と接するときはな、まず甘い声を発しながら近寄るんだ。お前みたいな大声出す馬鹿にはどいつも警戒するに決まってる」
結衣「わ!バカって言った!」
シャーシャー!
結衣「ぅえっ!?」
八幡「だから言ったろうが、大声は厳禁だっつーの」
結衣「だって、今のはヒッキーが……」ボソボソ
八幡「(……仕方ない、手本を見せるしかないか。由比ヶ浜目の前にやるのは羞恥心が騒ぐが……)」
八幡「わかった、俺が試しにやってやるから参考にしろ」
結衣「う、うん……」
八幡「ホーラ、カワイイネ~?コッチオイデー?ホラ、ノドクスグッテアゲルカラサ?カムヒアカムヒア、オイデヤスチバ?」
シャシャシャー!!
八幡「いでででででぇっ!!」
結衣「ヒッキー!話が違うよ!?」
八幡「(くっそ、猫の分際で俺の手の甲引っ掻きやがって!)」
結衣「てか、大丈夫?手……」
八幡「……とまぁ、俺がやったみたいに接すれば、こんなにも猫と触れあうことができるんだ」
結衣「いやいや、こんな引っ掻き傷が出来るような触れあい方はごめんだよ!?」
八幡「(そういえば、昔はカマクラにこんな引っ掻き傷を作られたことが何度もあったな……)」
八幡「(もっとも、今のような接し方をしたときに限ってだが……)」
結衣「はぁ……どっちも猫に嫌われちゃったなぁ……」ガクッ
ぬこ「!」ピョンッ
ボフッ
結衣「きゃっ!な、なに!?」ズシッ
八幡「おいおい、なんだこの絵……」
結衣「なに!何が起きたの!?」
八幡「猫がお前の団子頭にしがみついて離れない。以上」
結衣「え、じゃあこの重みって、猫!?」
八幡「ああ、良かったな好かれて」
結衣「な、なんかガジガジ聞こえるんだけど……」ガジガジ
八幡「はっは、大丈夫だ。べ、別に由比ヶ浜のお団子頭を猫が噛んでるわけじゃないんだからねっ!」
結衣「噛んでるんだ!?」ガジガジ
結衣「ヒッキー!このねこちゃん引き離してぇ!」
八幡「いや、いいんじゃないか?おいしそうに味わって食べてることだし」
結衣「食べられちゃってるから離してほしいんだよっ!?」
八幡「ったく、しゃあねぇな……」スッ
ぬこ「ぎゃーー!ぎゃーー!ひぎゃーー!!」
八幡「(俺に捕まれてどんだけ嫌なんだよ!人類以外の生態からも嫌われてんのかよ泣きそう)」
結衣「ありがと。あーあ、お団子がぐちゃくちゃになっちゃった……直さないと……」グシグシ
八幡「いや、そのままでいいんじゃないか?」
結衣「えっ……?//」
八幡「そのピョンピョン跳ねた感じ、アホ毛っぽく見えて由比ヶ浜らしいぞ」
結衣「ばーか!!」
店員「お待たせしました~、ご注文の品とお水でーす」
結衣「あ、はい」
店員「ごゆっくりどうぞ~」
八幡「ほう、これが猫ババロアか」
八幡「(クリーム色したババロアの中心部に、チョコペンでぬこの顔が描かれてるだけだぜ!なんだこれ安っ)」
結衣「そうだ!このビスケットを使って親交を図ろっと!」
八幡「なに?カカロット?」
結衣「ほら~ねこちゃん、このビスケット、いまならタダであげるよ~?」ヒョイヒョイ
八幡「(おぉふ、スルースキル全快)」
結衣「ほれほれ~」ヒョイヒョイ
ぬこ「!」パクッ
結衣「わぁ……」
ぬこ「ミャー♪」シャクシャク
結衣「きゃあぁぁ……かわいい~~//」パアァッ
八幡「そんな声出すほど興奮するか?」
結衣「だって、あたしの持ってるビスケットをおいしそうに食べてくれてるんだよ~!」
ヌコ「みゃー」
Mr.Nuko「みゃー」
n.U.K.o.「みゃー」
結衣「わかったわかった!君たちにもあげるから、順番順番♪」
八幡「(…まぁ、猫を飼ってない者からしたら、そもそも猫と戯れる機会なんて無いだろうしな)」
八幡「(猫を飼ってない猫好きの、猫好きによる、猫好きのための憩いの場、それのニーズに合っているのが猫カフェなんだろうな)」
カランコロン
「……………」ツカツカ
八幡「(ほら、こうして猫hshsの猫好きが次々と店を訪れr……)」
八幡「あ」
雪乃「!」
八雪「………………」
八幡「(がっつり5秒は目が合ってるな)」
雪乃「………………」チラッ
結衣「はいはい、もう一個あげる!あはは!あたしの手は舐めなくていいってば♪」
雪乃「………………」チラッ
八幡「(再度俺に目を向けた)」
雪乃「…………………」スタスタ
八幡「(…………店の奥へ入っていった……)」
八幡「つーことは、この噂……」
八幡「(黒だったのか!!)」
結衣「ちょっとねこちゃんたち、あたしの食べる分が無くなっちゃうよー!」アハハ
八幡「おい、由比ヶ浜。いま雪ノ下が……」
結衣「きゃあ、重い重い!みんなあたしの体に乗りすぎだってばー!」ワキャワキャ
八幡「……だめだ、今のコイツはまるでだめだ」
八幡「(……にしても、まさか本当に働いてるとはな)」
八幡「(俺たちに見つかったとしても、あいつは仕事として来ているんだ。接客業としての接し方で、普段通りの態度は見せないはずだろう)」
八幡「(さて、どんな持て成しをしてくれるだろう。ちょびっと楽しみだ)」
結衣「どしたの?ヒッキー」
八幡「あ?いや、別に何も」
結衣「そう?なんだかつまらなそうにしてたから」
八幡「まあ、普段から猫が身近にいる生活を送ってるからな。新鮮味を感じないのは確かだ」
結衣「そーだよね、飼い猫がいるいないでどれだけ楽しめるかが変わるよね」
八幡「おう。……ところでさっき、雪ノ下が」
結衣「あ、もうビスケット無くなっちゃった。追加注文していい?」
八幡「いや、なぜ俺に訊くよ?」
結衣「えへ、ついなんとなく。すいませーん!」
店員「はいは~い」
結衣「同じビスケットを、もう一皿お願いします」
店員「わかりました、少々お待ちくださいね~」
八幡「(……これってまさかとは思うが、俺たちが店にいる間、雪ノ下は接客に出てこないなんてことは無いよな……?)」
八幡「(いくらなんでも、そんな逃げるような真似はしないだろう……決めつけだが)」
店員『……あら雪乃ちゃん!イメチェンでもしたの?』
雪乃『……えぇ、そんなところでしょうか』
店員『あらぁ、お似合いじゃない!ついでに猫耳なんかも付けてみない?』
雪乃『結構です』
八幡「(イメチェン?奥で何のやりとりしているんだ……)」
店員『じゃあ後は店番よろしく頼むわね。私は婦人会に行かなきゃならないから』
雪乃『わかりました』
店員『じゃあこのビスケット、あちらのちゃぶ台のお客様にお願い』
雪乃『…………はい』
八幡「(めっちゃ嫌そうな言い方に聞こえたぞ……)」
八幡「(さて、雪ノ下はどのような感じで俺たちに接してくるのだろう。営業スマイルを利かすのか?はたまたいつもの無愛想で通すのか?)」
ツカツカ………
八幡「(来るぞ……!!)」
ツカツカ……
八幡「(ヤヴァイ、なに緊張してるんだ俺!)」
ツカツカ…
八幡「(お、俺は客なんだ、客様は神様なんだ!なに従業員・雪ノ下雪乃を相手に怯んでいるん)」
「お待たせしました」
八幡「!!」
結衣「あ……、ビスケット来たよーねこちゃん!」
八幡「……あれ?」
「こちら、ご注文の猫も食べれるビスケット(219Kcal)になります」
八幡「(こいつ、雪ノ下……なのか……?)」
八幡「(目の前に現れたのは、白く艶やかな肌を帯び、艶のある漆黒色の髪の毛がポニーテールに結えていて、明るめな赤いフレームのメガネをかけた一人の女性従業員であった)」
八幡「(詰まるところ、顔の輪郭が雪ノ下によく似たそっくりさんである)」
八幡「(いや、てか雪ノ下だろお前。変装してるつもりかよそれ)」
「……ごゆっくりどうぞ」スタスタ
八幡「(戻るスピード速っ)」
結衣「………………」
八幡「(お、ガハマが俯いて固まってる。ようやく気づいたか?)」
八幡「……なぁ、由比ヶ浜。やっぱり今のって」
結衣「……このマグカップ可愛い」コトッ
八幡「は?」
結衣「すいませーん、ていいんさーん!」
「!!」ビクッ
八幡「(ガハマはちゃんと店員って呼べてねぇし、雪ノ下のそっくりさんは呼ばれて露骨にビックリしてるしなんだこの図)」
「……はい、なんでしょう」スタスタ
結衣「この水が入ったマグカップ、ここで売ってますか?」
「……そちらのマグカップですか」
八幡「(そういえば最初の注文の品と一緒に、マグカップが2つ運ばれてきたな。水だったのかこれ)
結衣「はい!デザインが可愛いマグカップだなぁーと思って。もし売ってたら購入したいんですけど……」
「……そちらは、私の家に余っていたものを持ってきただけでして。販売は致しておりません」
八幡「(これ完全にゆきのんの声だわ。部活での会話と声音が驚くなかれ、完璧に一致してるんですけど)」
結衣「へぇ……。そうなんですか、ちょっと欲しかったな……」
八幡「そうわがまま言うなって」
「……その、中古品でよければ……」
結衣「?」
「……そちら、お持ち帰りいただいても結構ですよ?」
結衣「え、本当ですか!?」
「…………っ」コクッ
八幡「(こいつ仕事中にもガハマにデレやがった。もうこの店員、完全に雪ノ下さんだよ!)」
結衣「やった!ありがとうございます!」
「……で、では失礼します」スタスタ
結衣「えへへ、このマグカップをプレゼントしたら、ゆきのん喜ぶかな?」
八幡「えっ?」
「!!」
八幡「(あ、一時停止した)」
結衣「ゆきのんは奉仕部切っての猫好きだからね。これ猫のプリントが可愛いし、状態も綺麗だから大丈夫でしょ!」
八幡「ほぉ……」
八幡「(これは面白い展開だな)」
八幡「じゃあ、もし雪ノ下がこの店に働いてるとすれば、学校でわざわざ渡さずに済むな」
結衣「まあ、そうだね。直接渡すことは出来るね」
結衣「でも、ゆきのんには部室でプレゼントしたいなぁって」
「……………」
結衣「ゆきのんと出逢ったあの部屋で、いつも一緒に過ごしているあの場所で……」
結衣「あたしの好きな、ありのままのゆきのんでいてくれる空間でプレゼントしたい」
八幡「……何言ってんだ?」
結衣「……ゆきのん、最近部活に来ないでしょ?」
八幡「そうだな。もしかしたらバイトで忙しいのかもな」
結衣「うん。……ゆきのんがいない場所だから、わがまま言うけど」
結衣「……部室にゆきのんがいないと、寂しい。」
「……………………」
結衣「うん、寂しい……」
八幡「そうか。しかし雪ノ下自身も、もしかしたらバイトに生き甲斐を感じているのかもしれないぞ?」
八幡「大好きな猫が身近な職場だ。そこで働くことが楽しくてしょうがないと思っているかもしれない」
八幡「……そうであったとしても、お前は雪ノ下の気持ちを汲むという気遣いをせず、己のわがままを貫き通すのか?」
結衣「………うん。だって、」
結衣「だってあたし、ゆきのんのことが大好きだから……」
結衣「ゆきのんは、親友の一人だから……」
「っ………………//」
八幡「………安っぽくてベッタベタな言葉だな。全身が痒くなる」
結衣「えへへ……これに代わる言葉が見つからなくて……」
八幡「……でもな、そんな言葉にも心が揺らぐ奴だっているんだ」
八幡「自分を必要としてくれるだけで、どれほど嬉しいことか」
八幡「(そうだよな、雪ノ下?)」
「……………………」
八幡「(ったく、ガハマも侮れないな)」
八幡「(バカだアホだと思ったが、さすが総武高の生徒なりに頭が冴えてるな)」
八幡「(いつの間にやら気づいてたんだ、自分と同じ空間に雪ノ下がいるってことを)」
八幡「(女って怖いよな。こうして平気で嘘をつき、嘘をつかれ、嘘をつき返す)」
八幡「(……ただ、今回の場合は『嘘も方便』『知らぬが仏』だな)」
ガハマさんの猫苦手設定はない事になってる世界線なのね。
八幡「………安っぽくてベッタベタな言葉だな。全身が痒くなる」
結衣「えへへ……これに代わる言葉が見つからなくて……」
八幡「……でもな、そんな言葉にも心が揺らぐ奴だっているんだ」
八幡「自分を必要としてくれるだけで、どれほど嬉しいことか」
八幡「(そうだよな、雪ノ下?)」
「……………………」
八幡「(ったく、ガハマも侮れないな)」
八幡「(バカだアホだと思ったが、さすが総武高の生徒なりに頭が冴えてるな)」
八幡「(いつの間にやら気づいてたんだ、自分と同じ空間に雪ノ下がいるってことを)」
八幡「(女って怖いよな。こうして平気で嘘をつき、嘘をつかれ、嘘をつき返す)」
八幡「(……ただ、今回の場合は『嘘も方便』『知らぬが仏』だな)」
八幡「(穿ちつつ歪んだ進行でも、プラスとして何かを得られることもある。真っ当に過ごしたら得たいものも得られないことがある。いつからこんなに難しくなったんだろうな、世の中って。)」
八幡「……よし、帰るぞ」
結衣「うん。」
八幡「一応言っておくが、肝心なことは訊かなくていいのか?」
結衣「え?………うん、もう大丈夫だよ。きっと」
八幡「なーにがきっとなんだか(棒)」
結衣「ふふ、なーにがきっとなんだろうね?」
八幡「そこの店員さん、会計お願いします」
「………………はい。」スタスタ
ぬこ「みゃー」
n.U.K.o.「みゃー」
結衣「ふふ、バイバイねこちゃん。楽しかったよ」
・・・・・・・
「……会計、1,880円になります」
八幡「ファッ!?暗算で出した予想会計金額と違うぞ!?」
八幡「(ピタリ賞100万円GET!わー!なはずが!)」
「……増税したので」
八幡「はい?」
「メニュー表の記載金額は税率5%当時のものになります。そのため、注意書きシールをちゃんと添付しておきました。くまなくチェックすれば気がつくことでしょう?」
八幡「そんなこと言われたってな、お品書きと永遠に共ににらめっこするほど俺はこの店のメニューには興味はないんだよ」
「あら?それは俗に言う言い訳よ?負け犬の遠吠えとも言うわね」
八幡「ちょっと待て、俺は負け犬でもなければ遠吠えすらしていないのだが??」
八幡「(笑う犬の冒険なら許した)」
結衣「あ、ヒッキー!私の分はちゃんと出すから待って!」トテテテ
八幡「いいよ、レジを前にして割り勘のための料金徴収は面倒だ。俺が出しておく」
結衣「……ありがと」
「1,880円ちょうど頂きます。レシートはどうされますか?」
八幡「……そうだな、記念に貰っておこうか」
「……そうですね、今後私から受け取ることも無いでしょうし」スッ
八幡「じゃあな、二度と来ねぇよ」
「えぇ、願ったり叶ったりです」
結衣「……ごちそうさまでした。」
「……ありがとう、ございました……//」
結衣「……えへへ」
八幡「おい、そこ段差」
結衣「えっ、きゃあっ!!」ズテンッ
シャー!
「(……はぁ、外でも変わらぬそそっかしさね。)」
月曜日放課後
・・・・・・・
部室
コンコン ガラガラッ
八幡「うっす」
雪乃「……あら、お久しぶりね」
八幡「んあ?……あぁ、そうだったな」
雪乃「私が来ない間、何か変わったことはあったかしら?」
八幡「いや、なーんにも」
雪乃「そう。………由比ヶ浜さんは?」
八幡「あぁ……アイツはまぁ……」
八幡「お前が来たら、いつも以上に喜ぶんじゃね」
雪乃「………そ」
八幡「(地の文風に言うと『その刹那、彼女は柔らかな微笑みを浮かべた』ってか)」
八幡「……一応、記念として取っておいてるんだぜ」
雪乃「何を?」
八幡「……いいや、言わないでおく」
雪乃「それなら、話を振らないでもらえるかしら?」
八幡「しょうがないだろ。お前の反応を見て、言う気が引けたんだよ」
八幡「(レシート。それは大方の人がゴミ同然のように捨て、中には会計の時に貰うのを拒む輩もいるものだ)」
八幡「(だが、昨日貰ったレシートは非常に貴重な品だと思う)」
八幡「(右下に小さく『担当:雪ノ下雪乃』と書かれたこの紙切れ、見ていてとても面白い。コレハホント☆ユカイ)」
八幡「(雪ノ下がバイトてwwwwww滑稽だわwwwwww嘲笑が止まらんわブフォwwwwww)」
八幡「(……的なことをいつか思える日が来るのを祈って、保存しておくことにします)」
コンコン ガラガラッ
結衣「やっはろー!」
雪乃「!」
結衣「!」
雪乃「……お久しぶり。」
結衣「……ゆ、ゆ、ゆきのん~っ!!」ギュウゥ
雪乃「ちょっ、由比ヶ浜さんっ……!」
八幡「(キマシタワー)」
結衣「うぅぅ……やっと来てくれた……寂しかったよぉ……」ズリズリ
雪乃「……ごめんなさい、由比ヶ浜さんの気持ちも汲めなくて」
結衣「ううん……こうして来てくれるだけで、あたしは幸せだから……」
雪乃「………………//」
八幡「(あ、雪ノ下が照れたー!!って野次馬してみたい今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか)」
結衣「あ、そうだ!ゆきのんにプレゼント渡したかったんだ!」ガサゴソ
雪乃「……あら、何かしら?」
八幡「(お、大女優・雪ノ下雪乃さん、演技入りました)」
結衣「じゃーん!マグカップゥー!」スッ
雪乃「……かわいいマグカップね」
八幡「(だろうよ、元はお前の持つフィーリングで買ったものだしな)」
結衣「でしょ?それをなんと……じゃーん!」スッ
雪乃「!!」
八幡「はっ!?」
結衣「えへへー、おそろー♪」
八幡「(ガハマさんマジッすかマジックかと思いました)」
雪乃「……どうしたの?これ……」
結衣「えーっと……昨日行った雑貨屋に置いてあったからさ、かわいいなーと思ってふたつ買っちゃったんだ!」
雪乃「そう……。良い買い物だと、思う……」
結衣「そう!?ゆきのん、もっと褒めてー!」
八幡「(あー騒々しい。いつまでこんな小芝居続けるつもりなんだ……)」
結衣「それと、ヒッキー」
八幡「ん?」
結衣「ヒッキーにも……おそろい」スッ
八幡「は……?」
結衣「言ったでしょ?『ふたつ買った』って」
八幡「ガハマ………」
結衣「昨日奢ってくれたお礼だよ?」
八幡「ゆいゆい………」
八幡「(いかん、由比ヶ浜がデキる女に見えてしまった)」
結衣「ねぇゆきのん!早速紅茶淹れて、このマグカップで飲んでみようよ!」
雪乃「……ええ、そうしましょうか」
八幡「(『その刹那、彼女は柔らかな微笑みを浮かべた』このフレーズ、実用性高くね?これからチョイチョイ使おっと。えっと、誰に?」
・・・・・・・
コポォ……
トプトプトプ……
結衣「それじゃあ、奉仕部の今日の良き日に!」
結衣「かんぱーい!」
結衣「……って、声出したのあたしだけじゃん!」
八幡「あーはいはい、卍解」
ゴクリンチョ
八幡「……うん、飲みやすい形状だ」
雪乃「そうね。少し内側に傾けただけで良い香りと紅茶が身体に入ってくるわ」
結衣「そういうコメントを求めてるわけじゃないんだけどなぁ……あはは……」
八幡「……でもまだ熱いな」コトッ
雪乃「そうね、少し冷ましてから飲むことにするわ」コトッ
結衣「じゃあ、あたしも」コトッ
突然だけど安価
雪乃or由比ヶ浜
>>56
起きたら続き書きますおやすみ
川なんとかさん
ゆいゆい
起きた
>>57で行くよ
書いてる途中に寝落ちしてた
今度こそつづき書き始める
1時間後
・・・・・・・
雪乃「……あら、もうこんな時間」ガタッ
結衣「どうしたのゆきのん?」
雪乃「えぇ、野暮用があって」
結衣「……もしかして、バイト?」
雪乃「その通りだけれど、違うわ」
結衣「?」
雪乃「……まだ、辞表を提出していなかったから……」
結衣「ゆきのん……!」
雪乃「それだけのことよ。労働目的ではないわ」
結衣「わかった!行ってらっしゃい!」
雪乃「ええ。比企谷くん、下校の時に戸締まりよろしく頼むわね」
八幡「おうよ」
ガラガラ バタン
結衣「……ねえ、ヒッキー」
八幡「あ?」
結衣「ゆきのん、どうして突然バイトなんか始めたんだろ?」
八幡「さあな。訊いてみればいいだろ」
結衣「そうなんだけど……なんか、訊いちゃってもいいのかなあ?って考えちゃってさ……」
八幡「昨日の由比ヶ浜の言葉で辞める決心がついたんだから、そんな人様に言えないような深い理由はないんじゃねぇか?」
結衣「うーん……」チラッ
結衣「あれ、ゆきのん、紅茶残して帰っちゃったよ!」
八幡「あ、俺もすっかり紅茶の存在忘れてたわ」
結衣「また忘れないうちに飲んじゃおっか」
八幡「そうだな」
結衣「………あれ」
八幡「おい、早く自分の取れよ」
結衣「ううん、ヒッキーから取ってよ」
八幡「いいや、ここはレディファーストを尊重すべきだろ。だからお前から」
結衣「で、でも………」
八幡「さっさとしてくれ」
結衣「あ、あたしのマグカップってどれだったっけ……?」
八幡「お前も忘れたのかよ!」
八幡「(これは参ったぞ、あまり絡みもしなかった中学の同級生全員の名前と顔を未だに覚えているほど、記憶力には自信のあった俺が……)」
八幡「(自分が使ったマグカップがどれか忘れてしまった……)」
結衣「えと、最初どの位置で飲んでたんだっけ……。それだけでも思い出せれば……」
八幡「……なあ、この際どれだって良いんじゃねぇの?」
結衣「そっ、それはダメだよ!もしヒッキーがあたしの選んで飲んじゃったら、間接キスになっちゃ……あっ……//」
八幡「……な、なに頬染めてるんだよ」
結衣「べつに!染めてなんかないし……//」
八幡「(こんなことで意識されたら、こっちまでドキドキしちゃうじゃん……)ドキドキ
八幡「もういい、このままじゃ埒が明かない。テキトーにこれにするぞ」スッ
結衣「えっ!ちょっと待って」
八幡「んくっ」ゴクッ
結衣「あ……」
八幡「っ!? ぶぉおえっ!」ダバダバ
結衣「うわっ!?汚なっ!」
八幡「な、なんじゃこりゃあぁぁっ……!」
八幡「(甘すぎだろ、この紅茶……!?)」
結衣「……もしかしてそれ、すっごく甘かった?」
八幡「あぁ……甘すぎて胃がビックリしたわ……」
八幡「(昨日食ったラーメンまでもリバる勢いだった)」
結衣「ち、ちょっとそれ貸して?」
八幡「んぁ?俺がいま飲んだマグカップか?」スッ
結衣「うん、どれどれ……」ゴクッ
八幡「え?」
結衣「……うん、甘いね。やっぱりこれあたしのだったよ」
八幡「いや、そんなことよりな、お前……」
結衣「あはは、ごめんね?こんな甘くしちゃって。あたし、これくらいが丁度良くて……」
結衣「…………あれ?」
八幡「俺がたったいま飲んだやつを……」
結衣「……あっ……!!///」カアァッ
結衣「つっ、つつつつい飲んじゃった!!」
八幡「しかもそれ、俺の口の中に入ってたやつ、カップに少し戻しちゃったんだが……」
結衣「ぅえ!?……じゃあ、ヒッキーが口に入れた紅茶を、あたしがいま飲んじゃって……」
結衣「だから、つまり……間接キス、しちゃった……//」
八幡「い、いちいち言葉に出すな!意識しちまうだろ!」
結衣「で、でででも、ヒッキーのよだれも混じってるわけだから、それがあたしの口に入って……これって、もはや間接なんてもんじゃ……//」
八幡「頼む!もうこれ以上追究しないでくれ!」
結衣「(うぅ……胸がバクバクいってるよぉ……)//」ドキドキ
八幡「(俺もたかが間接キスぐらいで……。どんだけ純情で無垢なんだよ、八幡!」
結衣「…………ねえ?」
八幡「あ!?な、なんだ!」
結衣「……これってさ、あたしたち、キスしたことになるの……かな?」
八幡「……いや、ならねぇ……と思う」
結衣「そ、そっか」
八幡「だからよ、あまり気に留めるな。そもそも口付け以外はキスとは言わないはずだ」
結衣「じゃあさ、」
八幡「?」
結衣「その、……本当のキスってもの、して、みない……?」
八幡「……お前さ、ヤケクソも大概に……」
結衣「ヤケクソなんかじゃないし!」
八幡「はぁ?」
結衣「……ヒッキーなら、良いから……だから、言ってるんだよ?」
八幡「!?」ドキッ
結衣「イヤ、かな?」
八幡「……信じられないんだ」
結衣「え……」
八幡「……今まで俺は、こんな色恋沙汰の、ギャルゲーのような場面展開になる度に、自分自身に可能性を与えてきてしまった」
八幡「放課後、教室に気になるあの子と二人っきり」
八幡「そんな展開で、失敗なんてしないと勝手に確信し、大胆不敵に想いを伝えてしまった。イケると思い込んでしまっていたから」
八幡「いつものようにあっさりとフラれ、俺はまた暴走しちまった。どうして学ばないんだと、毎度自分の行動や思考・根拠の無い自信を省みてきた」
八幡「それを幾度と重ねていくにつれ、俺は恋愛絡みに関しては自分自身を否定することしかできなくなってしまった」
八幡「ある異性からデートのような誘いを受けたとき、かつての俺なら『もしかして気があるのか?』と思い込んでいただろう」
八幡「だが今では『どうせ相手はデートのつもりで誘ってないし、よって俺を想う気なんて微塵も無いだろ』と否認するようになり」
八幡「ある異性に慰められたときは『それは仕方なしに、上辺だけの同情心を配ってくれているだけだ』と否みつづけ」
八幡「ある異性に対して、好意を抱いてしまったときにも『一時的な気の迷いだ、勘違いってことにしておけ』と諭してしまう」
八幡「俺は、完全消極主義思考へと変貌してしまったんだ。」
八幡「……だからこの場合も、実は由比ヶ浜もキスがどうこうって話の流れ上、仕方なしに俺を誘ってきただけなんじゃないか?という疑念が生じたわけであって……」
結衣「………はぁ?」
結衣「何を長々と言ってんだろうと思ったら、くだらない。」
八幡「くだらないってお前!俺にとっては重大なことで」
結衣「本当にそんなこと思ってるの?」
結衣「あたしが、嫌々キスをねだっている女に見えたの!?」
八幡「……………」
結衣「ヒッキーなら分かってるはずだけど、心にもない言葉って、要は嘘をつくことと一緒。するっと口から出せるでしょ?」
結衣「……でも反対に、正直に話すことって難しい」
結衣「さっきのことだってそう。あたしなりに勇気振り絞って、恥ずかしいのに頑張って言ったんだよ?」
結衣「意外とこういうことには敏感な
くせして、鈍感なフリをするヒッキーに、復習がてら教えてあげる」
結衣「どうして伝えるのが恥ずかしかったのか?」
結衣「……だってそれは、あたしの本心が抱いている想いだから。」
八幡「っ!…………」
結衣「……もう一度、あたしの想いを伝えるから、ちゃんと聴いてね?」
八幡「……………」
結衣「……ヒッキーと、キスしたい。」
結衣「ヒッキーじゃないと、イヤなんだから……///」
八幡「………由比ヶ浜」
結衣「なに?」
八幡「……本当、こういう肝心な場面でも言動がビッチ臭いな」
結衣「だから、ビッチっていうなし!」
八幡「……なあ」
結衣「なによ」
八幡「……お、俺が本当にキスしても、その………逃げるなよ?」
結衣「ふふ、何それ」
八幡「真面目な質問なんだ。ファイナルアンサーが欲しい」
結衣「っ…………逃げないよ。」
ギュッ
結衣「ふぁ…………//」
八幡「…………い、いくぞ?」
結衣「っ、う、うん……!」
八幡「………っっ!!」プルプルプルガチガチガチヌヌヌヌヌゥ
結衣「……ぷっ!あはははははは!!」
八幡「…………!?」
結衣「あははははは!!ひーひー!あははははっ!!」ゲラゲラ
八幡「…………おい」
結衣「はははは!あー、おっかしいー!」
八幡「…………やっぱり、俺をからかってたのか?」
結衣「ちがうちがう!ヒッキーのキス顔がガッチガチで、それがゆっくりあたしに近づいてくるもんだから、笑いが堪えられなくなっちゃって!」
八幡「チッ…………もういい、どうせ俺なんて」
結衣「♪、すきありっ!」チュッ
八幡「!?」
結衣「んっ………んむ…………//」レロ…
八幡「(こ、コイツ、舌入れて……!)」
結衣「んむっ………んんっ…………//」
八幡「(……おかしい、今さっきまで募りに募っていたイライラが、一瞬で吹き飛んだ)」
八幡「(何だろう、嘲笑されて気分はドン底だったのに、今は幸せすぎてどうにかなりそうだ)」
八幡「(それはまるで、貶められ、底辺まで落ちぶれている惨めな状態の時に、そっと優しく抱きしめられたような。
気分が最悪な状況で受け取る優しさは、平常心でいる時よりも心に染み渡り、嬉しさのあまり弾けてしまいそう。それと似ている)」
八幡「(一瞬、由比ヶ浜のことが大嫌いになりかけたけど、不意に可愛くキスされたら、こっちとしては更に由比ヶ浜を欲しくてしまうだろうが)」
結論を言おう、俺は結衣のことが大好きだ。
八幡「(結衣への愛情は、キスの時間が続くほど加速度的に上昇していく)」
八幡「(結衣を机に半分押し倒すような状態で、互いががっつき合うように口付けを交わす)」
八幡「(バランスを崩した俺は、結衣の全身を乗せた机に体を預けるかのように前へと倒れ込む)」
八幡「(その刹那、マグカップがひとつ倒れ、残った紅茶が机を侵食していくかのように広がる)」
八幡「(そんなことはお構い無しに、俺たちは互いの唇と舌を貪っていた)」
八幡「(ああ、これ歯止め効かないわ。俺は、結衣のことが尋常でないほど好きみたいだ)」
猫カフェどこいった
官能小説方面にしか進んでないよなこれ
八幡「(苦しい。色んな意味で苦しみながら今を生きている)」
八幡「(まず、結衣が異常に抱き締めてくる。まさしく『締め』てきている。呼吸的に苦しい)」
八幡「(マジでこれあざとかできるんじゃねぇか?負けじと俺も結衣を強く抱きしめる)」
八幡「(もう何分間唇を引っ付きあわせていることだろう。結衣は疲れたのか、舌を入れることさえも止めている状態だ)」
八幡「(実際、俺も疲れてきた。こんなに長時間、口を塞いだことなんてないから)」
八幡「(しかしどうしたことか、互いの唇を離すと同時に口付けという行為は終わってしまうことに気づいた俺は、どうにか一秒でも長く結衣とキスをし続けたいと思ってしまい、否応なしに離したくなくなってしまう)」
八幡「(結衣ともっとキスしたい。結衣の唇から離れるなんて心苦しいことこの上ない。こんなことを想う俺気持ち悪っ)」
八幡「(だがこれが俺の本心だ。一度点いた熱はそう簡単に弱まらない)」
八幡「(結衣も満更でもないのか、それとも俺の気持ちを汲んでくれているのか、一向に拒否の表れを見せない)」
八幡「(それなら俺の気の済むままキスをさせてもらおうか。あとになって唇がヒリヒリしようが腫れぼったくなろうがそんなことどうだっていい)」
八幡「(逆にそうなってくれた方が、こうして結衣とキスをしているという実感が殊更わく)」
間は経っただろうか)」
八幡「(ここまで来ると互いの唇がアロンアルファでくっつけたが如く、貼り付いてはがれない)」
『……ッ……ー……』
八幡「(もはやこの行為はキスなのかも分からなくなってきた。永遠と続けてると、キスの特別感が薄れてきてしまう。なんなら薄れた)」
『…ヒッ……ー…』
八幡「(キスって一瞬で済ますからこそ、もっとしたいもっとさせろやと欲求が生じるんだよな。まともなキスなんて今までしたことないから知らんが)」
『……ッキー…』
八幡「(恥ずかしいがそろそろ正直になろうか。キスのしすぎで疲れたわ!!)」
『ヒッキー!!』
八幡「ファッ!?」ガタッ
雪乃「……………」ジトー
結衣「……………」ジトー
八幡「……あ、あぁれ?なんだここは……?私はどこ?ここは誰だ?」
雪乃「ゴミ谷くん、私たちがあなたを起こすのにどれほど苦労したか分からないでしょう?」
八幡「は?起こす……?」
結衣「紅茶をヒッキーの顔にかけたり、カーテンで胴体を締め上げたりしても、ちっとも起きないんだもん」
雪乃「いい加減死んだのかしらと思いたかったのだけれど、寝息が聞こえるあたり、まだ昇天していないそうで非情に遺憾だわ」
八幡「え?えっ?」
八幡「あれ……、ちょっと待て?雪ノ下、お前猫カフェのバイトはどうした?」
雪乃「猫カフェのバイト?急に何を言い出すの?」
八幡「いや、お前働いて…」
雪乃「高校生でも健忘症にかかること人もいるものね」
八幡「俺はアルツハイマーじゃねぇよ!」
雪乃「とにかく、とつぜんそんなこと訊かれて意味が解らないのだけれど」
八幡「うっそーん……」
結衣「ねぇヒッキー?もう下校時刻だから早く帰りの仕度してほしいんだけど……」
八幡「え?あ……もうそんな時間ですか……なんかスンマセン……」
雪乃「私達に迷惑をかけた罪として、戸締まりと鍵の返却をやってもらうわよ」
八幡「罪ってなんだよ、せめて罰だろ」
雪乃「これで前科一犯ね。私は先に帰るわよ」スタスタ
結衣「あ、待ってゆきのん!あたしも一緒に帰る!」
八幡「(……これって、まさかの夢オチってやつなのか……?)」
結衣「……ねえ、ヒッキー」
八幡「んあっ?あ?」
結衣「……寝言で、結衣結衣、結衣結衣うるさかったよ……」
八幡「え」
結衣「……これから、あたしを下の名前で呼ぶのは、」
結衣「あたしと二人っきりの時だけにして……ほしい……//」
八幡「え、ちょおいそれ」
結衣「じゃあね!ヒッキー」トテテテ
八幡「………え、これどこまでが夢オチなんだ?」ポツーン
こうして今までと変わらぬ日常が戻ってきた。(全部夢オチであった)
ただ一点、変わったところを挙げるとすれば
結衣「(……一歩、進んだかな?♪)」
由比ヶ浜結衣の抱く比企谷八幡への想いが一層強くなったことである。
おわひ
後半、マジで猫カフェ関係ねぇ……
遅筆で稚拙な[田島「チ○コ破裂するっ!」]に付き合ってくだすってありがとうございました
ではまたどこかで
あら、もしかしてゆきのんルートも書いたほうがいいのかしら
おいお前らちょっと待て
猫カフェちっとも関係あらへんやないか!!!(°Д°)
お前らの構成力に脱帽するよ
要はあれか、エロエロにしてほしいってことかいな
酉忘れてた
乙
もう自演するなよ
これ前同じスレタイでゆきのんルートの奴見たんだけど
とりあえず、つづきということで立てた
八幡「雪ノ下から一緒に猫カフェへ行こうと誘われるなんて」
八幡「雪ノ下から一緒に猫カフェへ行こうと誘われるなんて」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396790151/)
自演は勘違いだった
ただ単純なトリップだから漏れてる
このSSまとめへのコメント
由比ヶって猫嫌いじゃね?って思ったけど夢オチなら良しとする
ツマンネ