鉱夫「サラマンダー!?」火娘「おうさ」 (19)

鉱夫「うっしょ、と」

親方「おう、おめぇ奥の方行ってこい」

鉱夫「俺がですか? あんな暑いとこは一昨日入った新入りに」

親方「あんにゃろうは辞めやぁった。こんなに暑くて辛いとは思わなかった、だとさ」

鉱夫「情けないなあ、入り口なんてまだ涼しいもんだろうに」

親方「全くよ、最近の若ぇのと来たら……つーわけでおめぇがまた一番の若造に逆戻りってわけだ」

鉱夫「へーいへい、それじゃちょっくら」

親方「おう、気ぃ付けな」

鉱夫「あいあい」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395080976

鉱夫「しっかし、この……ふぅ、明るいのはいいが、くう、この暑さだけは」

火娘「この暑さだけは?」

鉱夫「んぐ、んぐ、んぐ……ぷはぁ。水なしじゃ、あっという間に干からびちまう」

火娘「人間は難儀だねい」

鉱夫「サラマンダー!?」

火娘「おうさ」

鉱夫「ひ、ひいぃ! お、お助け!」

火娘「まぁま、取って食やあしない。ちょっと話しようぜ」

鉱夫「な、は……へっ?」

火娘「退屈してんだよ。人間のこと聞かせろったら」

鉱夫「俺を、く、食わない、のか?」

火娘「そう言ったばっかだぜ、それとも頭から丸齧りにしてやろうか?」

鉱夫「ひやぁああ!!」

火娘「逃げんなっての」

鉱夫「おぶっ」

鉱夫「……熱くないんだな」

火娘「あん?」

鉱夫「尻尾」

火娘「お前が逃げるそぶり見せたら骨まで焼けるようの火が出てくるぜ」

鉱夫「……」

火娘「なんて顔してんだ、大人しく話を聞かせてくれりゃお前の足も離すさ」

鉱夫「くそ、厄日だ……」

火娘「あ、もしかして腹が減って話せないか? それとも喉が渇いたか?」

鉱夫「そ、そんなもん食えねぇし飲めねぇよ!」

火娘「なんでい、おとっときの飯と酒だってのに」

鉱夫「人間は焼けた岩なんぞ食わん! 溶けた鉄もだ!」

火娘「おお、やっと話す気になったか! それで、それで? 人は何を食って何を飲む?」

鉱夫「……麦と葡萄だ」

火娘「ムギ、ムギ、ムギか。それにブドウ……うん、どっちも名前は知ってる、どんなだ?」

鉱夫「……麦、ってのはだな」

火娘「なるほどなー、人間は飯一つ食うのにも随分苦労するんだな」

鉱夫「さあ、もう帰らせてくれ。このままじゃカラカラの砂になっちまう」

火娘「ふぅん……なあ、ここに住まないか? もっと話が聞きたい、飯も寝床も作ってやるぞ」

鉱夫「もう離してくれ、俺はこんなところで死にたくない。頼むから見逃してくれ」

火娘「……そうか、なら帰れ」

鉱夫「た、助かったぁ」

火娘「お前はあたしが嫌いらしい、もう二度と会うこともないだろうが元気でな。それと、土産だ」

鉱夫「あぁ?」

火娘「……怖がせて悪かった、その詫びだ」

鉱夫「こ、こりゃあ……!! おい、おいサラマンダー! 俺はまた来る、また沢山話もしてやる! 土産用意して待ってろ!」

火娘「は? あ、おい! ……行きやがった。さっきの話で少しは人間が分かった気がしたが、ううむ、やっぱりよく分からん」

親方「おう、遅かったな。もう今日は終ぇだ、皆とっくに……おう!?」

鉱夫「へっへっへ」

親方「お、おめぇ、そのでけぇ、そ、それ! どこだ、どこにあった!?」

鉱夫「や、こればっかりは親方にも教えられません」

親方「馬鹿野郎! これだけのブツがあるなら、その周りも脈走ってるはずだ! 明日から全員そこへ回す、どこだ!? どこで見つけた!?」

鉱夫「言えません」

親方「てめぇ、独り占めしようって腹か……!」

鉱夫「決められてた分の鉱石はちゃんと掘ってきたんです、残りの掘り出し物は掘り出した奴の物。そういうルールでしょうが」

親方「そりゃあ、そりゃあそうだが、しかし、おめぇ」

鉱夫「今日は酒場に付き合えません、何せこいつをなんとかしなきゃならないんで。それじゃお疲れ様で」

親方「……おう。気を、付けろよ」

鉱夫「へっへっへ、へへ、へはははは……!」

鉱夫「くくく、おい、ええおい? これ、これ全部俺のか? くっくくく、ふへへへ!」

鉱夫「ずっしりとしてまあ……くひひ、これが金の重みって奴だよなあ、へへ!」

鉱夫「これだけありゃあ、うん、こんな掘っ建て小屋ともオサラバだ! 街の方にどーんと一つ、いや別荘も含めて三つは建てるか!」

鉱夫「それで、それであんな暑っ苦しい穴っぽこに潜るのもやめにして、毎日美味い飯と酒かっ食らって、へっへっへ!」

鉱夫「それでもって綺麗な嫁さん、とびきりのベッピンさんを嫁に貰って、毎日、毎日、朝から晩まで……うひひひひ!」

鉱夫「しょうがねえなあ! しょうがねえなあ!! へへへ、ようやく俺にも運が向いて来たんだ、これぐらいはバチ当たらねぇよなあ!」

鉱夫「ふぅー……」

鉱夫「く、くくくっ! はははは、わははははは!! ひーひっひっひっ、ふっふふふははははは!!」

親方「おう、おはようさん。おはようさん、おう、今日も一日頑張んな、おはようさん、はいおはようさん、おは、おう!?」

鉱夫「へへへへ、くく、くっくく! おはようございます、ふふふ!!」

親方「き、気持ち悪いなおい……おはようさん、今日もよろしく」

鉱夫「ええ、ええ! 精一杯働かせてもらいます!」

親方「……まあ、浮かれすぎて事故なんぞはやめろよ? 周りの士気にも」

鉱夫「はいはいはいはい存じてます存じてます!! それはそうと掘る物も量もいつも通り、それ以外の拾い物もいつも通り。ですねえ?」

親方「ん、あ、おう。リストに載せてあった以外の鉱物は掘り出した奴の物だが……」

鉱夫「くっはは! いやそれだけ聞ければ結構! 今日も張り切って参りましょうかー!」

親方「お、おお」

火娘「本当に来たな、今度はどんな話をしてくれるんだ?」

鉱夫「慌てるな慌てるな、また色々話してやるさ」

火娘「嬉しいな、嬉しいな。昨日、あたしは嫌われてると思ったがやっぱり違ったんだな」

鉱夫「へっへっへ、嫌ったりしねえよ」

火娘「それじゃあ早速聞かせてくれ、人間の話を沢山」

鉱夫「そうだな、まずは人間の服の話だ」

火娘「人間の服か!」

鉱夫「おう、人間の服っていうのはそれはそれは色んなものがあってな……」

火娘「うんうん、なるほどなあ、人間ってやっぱり変な生き物なんだなあ。それでそれで?」

鉱夫「おっと、今日はここまでだ。また明日来るからその時にな」

火娘「なんだ、もう帰るのか? もっとゆっくりしていけよ」

鉱夫「そうも言ってられねぇよ、人間の体はここに居続けるには向いてねぇからな」

火娘「そうか、残念だ……ん、言ってた通りの土産だぜ」

鉱夫「へっへっへ、ありがとよサラマンダー! 明日もまた飛びっきり面白い話を沢山してやるからな!」

火娘「おうさ、あたしも手料理用意して待ってるからな!」

鉱夫「ばっか、だから人間は岩食えねぇんだよ! それよかまたこういう土産用意しててくれ!」

火娘「あっ……う、うん! すっかり忘れてた、ごめんな! また明日な、人間!」

農夫「羽振りがいいなあ、何かあったかい」

鉱夫「いやいや、別になんてこたぁねぇよ! ただおめぇとも長い付き合いだ、たまにはパーッとやろうと思ってな!」

農夫「そりゃありがてえが、財布の方は本当に大丈夫なんだろうな?」

鉱夫「大丈夫大丈夫、まーかせとけ!」

農夫「そう言ってお前、俺に奢るはずだったのが結局全部俺の払いになった、っていうようなこと昔にあったろ」

鉱夫「あー、忘れろ忘れろ! そんなちっちぇえこと言ってるからおめぇはそんななんだよ!」

農夫「そんなってどんなだよ……」

鉱夫「いいから乾杯するぞ、おら! 掛け替えのない友に、乾杯ーっと!」

農夫「へえへえ、浮かれた馬鹿に乾杯乾杯」

鉱夫「ん? なんか焦げたような臭いがするな……」

火娘「気のせいだ気のせい! それより早く話を聞かせてくれ、今日はどんなだ?」

鉱夫「いや、昔俺も料理の真似事をしてたんだが……何度かこんなような臭いがした物食べた覚えが」

火娘「りょ、料理の話は前にも聞いた! 人間は岩を食わないし鉄も飲まないんだったな!?」

鉱夫「ん? おう、それはそうなんだが」

火娘「だから別の話を聞かせてくれ、な! そうだ、人間は学校という奴に通ったりするんだろう? その話がいい!」

鉱夫「そこまで言うなら……あー、まずは貴族のクソッタレどもの話からしないとな、学校ってのは俺ら庶民には縁遠くてだな……」

鉱夫「ん、水が切れたな。キリもいいしそろそろ帰るか」

火娘「もうちょっと、ゆっくりしていかないか? ほら、今出てきたテンモンガクって奴の説明もまだ」

鉱夫「しつこいな、俺を[ピーーー]気か。こんな暑いところじゃ、人間は座ってるだけでも体力消耗すんだよ」

火娘「あっ……すまん。引き止めて悪かったな」

鉱夫「気にすんな、種族が違うんだから。また明日になれば会えるんだし元気出せよ」

火娘「種族……」

鉱夫「……おい?」

火娘「え? あ、ああ! ほら、いつもの土産だ!」

鉱夫「へっへっへ、ありが……ん? なんか、ちょっと小さくねぇか?」

火娘「あんな大物は中々ないんだ、それで勘弁しろ」

鉱夫「ああ、まぁいいけどよ。次はガツーンとデカいの頼むぜ、じゃあな」

火娘「おう、気を付けて、な」

鉱夫「けっ、そろそろ潮時か。野郎、ブツを渡すのが惜しくなったらしい」

若造「どーもーセンパーイ、最近チョーシいいらしいじゃないっすかー」

鉱夫「あん? てめぇ、辞めたんじゃなかったのか」

若造「けけ、いやね? センパイはどうやらヒミツの鉱脈を見つけたんじゃないかって酒場でも噂になってんすよー」

鉱夫「……」

若造「今日も大物見つけたんっすねー! それ、どこにあったんすか?」

鉱夫「どけよ、通れねぇだろうが」

若造「はははっ」

鉱夫「んぐ!? ぁ、ごほっ、てめ……!」

若造「はははは、おらっ! けけけ、ひゃはははは!」

鉱夫「が、ぁぐ! はぁ、はぁ……ぎっ!」

若造「エラそーにしてんじゃねーぞおっさん! とっとと吐けおら、おらっ! きひはは、ははっ!」

鉱夫「う……が、はっ……!」

鉱夫「はぁ……はぁ……」

若造「おっさん見えてるか、おい? へへ、いい加減言えや、なあ? あそこへドボン、なんて嫌だろ?」

鉱夫「ぅ、ぐ……」

若造「それとも向こうの岩場で蒸し焼きがいいか? 生きながら身体中の水っ気が全部抜けてくんだ、辛いぜー、ひひひ!」

鉱夫「はぁ、はぁ……ぅ、く……!」

若造「逃げようとしてんじゃねーぞコラ」

鉱夫「ぃぎ……!? あ、か……!」

若造「……ちっ、ヨクバリすぎんぜクソが。まあいいか、ゆっくり探させてもらうわ」

鉱夫「はぁ……はぁ……っ!? て、めぇ!」

若造「じゃーな、おっさん」

鉱夫「っ、うああああ!?」

鉱夫「……ぅ」

鉱夫「ここ、は……い!? があぁ……!」

鉱夫「くそ、痛ぇ……野郎、本当に落としやがったのか……くそ、くそっ!」

鉱夫「はぁ、はぁ……折れてる、か。くそ、クソッタレ!」

鉱夫「……」

鉱夫「サラマンダー! おい、サラマンダーよう! 出てこい、出てきてくれー!」

鉱夫「はぁ……はぁ……いないのか? くそ、役立たずが……」

鉱夫「なんで俺がこんな、畜生、俺が何したってんだよ、ええ?」

鉱夫「真面目に働いてたのを邪魔されたんだ、ちょっと楽しようとしたってバチはあたんねぇだろ……カミサマは何見てやがんだ、ボケが」

鉱夫「……へへ、道理でクラクラするわけだ、こんなに血が出てるじゃねぇか」

鉱夫「いよいよこれまで、ってか? へへ、はははは……」

鉱夫「ああ、くそぅ……死にたくねぇなあ……!」

鉱夫「……」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom