グリプス戦役~another story~(147)

※原作キャラ出ますがオリキャラがメインです


エゥーゴによるジャブロー侵攻を食い止めるために衛生軌道上にて妨害作戦が下令された。
作戦部隊の指揮を任されたのは地球連邦軍所属のライネック大尉。一年戦争を経験したパイロットだ

ライネック「妨害作戦ですか?」

ハイル「そうだ」

偉そうに椅子にふんぞり返る男はハイル中佐。アレキサンドリア級重巡洋艦の艦長で一年戦争以来のライネックの上官で高圧的な典型的『嫌な上司』である。

ライネック「我々は地球連邦軍でありティターンズ所属ではありませんよ?エゥーゴと事を構える必要はないと思われますが?」

ハイル「バスク大佐の頼みだ。あの方には世話になったのだ。断ることなどできん」

ライネック「ふっ……自分の都合で部下を死地に向かわせますか。バスク大佐の人徳が伺える」

ハイル「言葉が過ぎるぞ。過去の功績が無ければただでは済まん所だ」

ライネック「命令には従いますよ?仕事ですからね」

ライネック「しかし、個人的に思ったことは…ティターンズを率いているのはジャミトフだ。その思想に賛同する行動ならばともかく、バスクへの私的な行動となれば私は憤りを隠せない」

ハイル「作戦開始は明日だ。貴様は黙って命令にだけ従えばよいのだ。余計な事は喋るな。下がれ」

ライネック「失礼します」

ミーティングルーム

ライネック「…………ふぅ」

ユーナ「ライネック…」

溜息を吐くライネックに声をかける女性はユーナ伍長。ライネックの副官であり、ライネック同様一年戦争経験者。

ユーナ「ウチの部隊もエゥーゴに宣戦布告したみたいね…」

ライネック「あぁ……」

ユーナ「本当にいいの?」

ライネック「いいも悪いも無い。軍人として使命を全うするだけだ」

ユーナ「でも、あなたのティターンズ嫌いは相当でしょ?ティターンズの傘下に入るのよ?」

ライネック「バスクの腰巾着……いや、腰巾着だった男の決定だ。上官命令なら反対できない。嫌味の一つ二つ飛ばすくらいしかできないな」

ユーナ「そう……」

ライネック「俺はティターンズに下るよりも……別に気がかりな事がある」

ユーナ「気がかりな事?」

ライネック「この前艦隊と合流した時に見た木星帰りの男だ」

ユーナ「パプテマス・シロッコ…だったっけ?その人がどうかしたの?」

ライネック「ヤツからは嫌な予感がする。何か不安を煽るような不快感だ…」

ユーナ「あなたの嫌な予感には慣れっこだけど。どうしてそう思うの?」

ライネック「わからん。ただ、ヤツは信用ならない。今回はどちらかと言うとティターンズに下ることによってヤツと関わりを持つ事が気に食わない」

ライネック「それだけだ。クソ上司の悪口も出ない程にな」

ユーナ「そう、でも隊員達はその『クソ上司』ではなくてあなたを慕っているわ」

ライネック「知ってるさ。心配するな、あの問題児共を生きて帰らせるのが俺の役目だ。気分の悪さは作戦には影響させない」

ライネック「俺はもう休むよ。出撃は明日だ」

ユーナ「ええ、お休み」

モビルスーツデッキ

ハイル中佐に続いて歩くライネック隊。正規格納モビルスーツであるライネック隊のガルバルディβの他にバリュートを搭載したハイザックが目に入る。

ライネック「あのハイザックはティターンズのモビルスーツじゃないですか?何故この艦に?」

ハイル「貴様達にはジャブローに降下する友軍の援護及び敵部隊掃討を行ってもらう」

ユーナ「艦長、この艦のモビルスーツ運用能力はお世辞にも高いとは言えません。運用可能なモビルスーツは12機とされていますが実際は我々のガルバルディβ6機の運用で手一杯のはずです」

ハイル「貴様の意見など聞いていない。貴様は黙って命令にだけ従えばよいのだ。」

ライネック「しかし、伍長の言う通り補給修繕が困難になるかと。降下部隊と違い我々はこの艦を拠点に活動します。後の事は責任者としてどうなさるおつもりですか?」

ハイル「我が艦はこの作戦の後『ゼダンの門』を拠点に活動する。補給修繕は何の心配も要らん。全てはバスク大佐のご厚意による物だ」

ラース「またバスク大佐か……アンタ1人でゼダンに行けよ」ぼそっ

シャドウ「これで俺らもティターンズのお友達ってか?ケッ…」

ハイル中佐に悪態をつくのはライネックの部下のラース二等兵とシャドウ二等兵である。ライネック隊の隊員達はスペースノイド故にティターンズ嫌いだ。

ライネック「わかりました。ライネック隊、出撃します。」

ハイル「諸君らの任務遂行を祈る」

ライネック隊「はっ!」

整備兵「大尉の愛機はキチンと整備しときましたよ!」

ライネック「ありがとう。いつも悪いな」

整備兵「いえ、とんでもありません!モビルスーツのメンテナンスは天職ですから」

ライネック「ふっ、頼りになるな。帰ったら一緒に酒でも飲もう」

整備兵「楽しみにしてます。ワイン開けますからどうかご無事で」

ライネック「ワインはティターンズの次に嫌いだな」

整備兵「あちゃ~」

ユーナ機『大尉、世間話もその辺に』

ライネック「わかってる」

ライネック「ライネック。ガルバルディβ発進する」

ユーナ「ユーナ伍長。発進します」

勢いよくカタパルトから射出されたガルバルディ2機。続くライネック隊

ラース「ラース、ガルバルディ!発進します!」

シャドウ「シャドウ。発進よろし」

アヴァンズ「アヴァンズ。発進よろし」

レナ「レナ機、発進します」

ライネック『ライネック隊に告ぐ。降下部隊のハイザックが発進し終わるまで周囲警戒を怠るな。伍長は俺と前方を。アヴァンズとシャドウが右翼を、ラースとレナが左翼側を見張れ。いいな?』

ライネック隊『了解!!!』

衛生軌道上までの航路を巡行中のライネック隊。前にライネック率いるガルバルディ隊、後ろに降下部隊のハイザック隊。

ラース『こちらラース。大尉~応答願いま~す』

ライネック『なんだ?』

ラース『大尉は地球出身なんですよね?』

ライネック『あぁ、そうだ』

ラース『地球の重力ってどんな感じなんですか?』

ライネック『どう?と聞かれてもな…ただ、地球出身の俺から言わせてもらえば、重力の無い宇宙は怖いな』

ラース『自分は宇宙の出身だからピンと来ないっすねー』

ライネック『地球の居心地の良さは保証するぞ。だからティターンズが生まれたんだ』

ラース『あ~、納得したっす』

レナ『ずっと聞きたかったんですが、大尉の初陣はいつだったんですか?』

ライネック『俺の初陣は奇しくもジャブローだったよ。凄まじい対空砲火で撃墜される敵を見て恐ろしく思った。仲間も多勢死んだけどな…』

アヴァンズ『伍長は何処だったんです?一年戦争経験者でしたよね?』

ユーナ『私はア・バオア・クーだったわ……大尉の下で作戦に参加したの』

ライネック『楽しいお話の最中申し訳ないが、戦闘宙域に入るぞ。敵部隊の掃討だが深追いするな?俺達の任務は援護だからな。地球の重力に巻き込まれるなよ?命は落とすな!全員!生きて帰れ』

ライネック隊『了解!!!』

落ちろカトンボ

ライネック『!?』

ユーナ『ライネック?どうしたの?』

ライネック『なんなんだ…このまとわり付く悪寒は……』

シャドウ『大尉!右翼側に敵艦隊の物と思われる弾幕を確認!戦闘が開始された模様!』

ライネック『これより敵を叩く!ラース!シャドウ!アヴァンズ!レナ!お前達は引き続きハイザック部隊の援護だ!そちらの指揮はアヴァンズに任せる!』

アヴァンズ『了解!』

ライネック『伍長は俺に続け!』

ユーナ『了解!』

クワトロ『頭をアポリーとロベルトのリックディアスに任せた。エマ中尉の支援に向かう』

ブライト『了解。正体不明のモビルアーマーを叩き落とせ』

クワトロ『了解』

クワトロ「…と、おっしゃるがただの敵とは思えん」

クワトロ「!?」

クワトロが駆る百式の進路を遮るようにビームが飛ぶ。

クワトロ「援軍!?」

ライネック『目立つ色だな。新型か!?』

ライネック『ユーナ!こいつは俺がやる!お前は援護だ!』

ユーナ『了解』

ライネック『堕ちろ!!!』

狙いを定めビームライフルを複数回撃つライネック。しかし軽々しく避ける百式

クワトロ「遅い!」

ライネック『チッ……この動き…赤い彗星か?いや、まさかな……』

クワトロ「堕とさせてもらう」

ライネックもクワトロのビームライフルを避ける。接近したガルバルディはビームサーベルを抜く

ライネック『近接武器は苦手なんだが』

クワトロ「チィ!!」

百式とガルバルディが互角に斬り合うが近接格闘性能で劣るガルバルディでは差が出始める。

ライネック『しまった!!!』

百式のハイキックが連続で入り怯むガルバルディ

クワトロ「こんなものか」

ライネック『くっ……』

クワトロ「直撃させる」

ユーナ『ライネック!!!』

ユーナのガルバルディのタックルにより直撃する筈の弾道が逸れ、ライネックのガルバルディの右腕が吹き飛ぶ。

クワトロ「チィッ!!!」

ライネック『くそっ……ユーナ!一旦後退するぞ!』

ユーナ『了解』

百式から離れて行く2機のガルバルディ。百式はそれを追わない

ユーナ『ライネック!!大丈夫!?』

ライネック『攻撃力は失ったが問題ない。……アヴァンズ!聞こえるか?』

アヴァンズ『こちらアヴァンズ!』

ライネック『状況は!?』

アヴァンズ『敵の数が多いです!レナの機体が損傷しました。戦況は不利です!』

ライネック『仕方ない。撤退する』

アヴァンズ『しかし!まだハイザック部隊がバリュートを展開していませんよ!?』

ライネック『そのまま行けば引力に引き込まれる。それに俺の機体も攻撃力を失った、これ以上は無理だ』

アヴァンズ『了解です』

ライネック『………』

ユーナ『ライネック、飛べるの?』

ライネック『あぁ、腕はやられたが肩の姿勢制御バーニアは無事だ。航行に問題は無い』

ラース『大尉!!!』

ライネック『どうした?』

ラース『出力が弱まったレナの機体の速度じゃ敵の迎撃隊を振り切れません!!どうすればいいんですか大尉!!!』

ライネック『すぐにそっちに行く。それまで持ち堪えろ!』

ライネック「次から次へと……くそっ」

駆けつけた先でライネック隊達は敵と交戦中だった。レナは敵に囲まれ、回避するのが精一杯の状態。

レナ『大尉!!私のことは構わず撤退してください!!』

ラース『バカ言ってんじゃねぇ!!無駄口叩く暇あったら速度上げろバカ!!!』

ユーナ『敵の数が10機以上……どうするの?ライネック』

ライネック『俺が敵を引きつける……お前らは撤退しろ。』

レナ『ま、待ってください!!』

ラース『それじゃ大尉が!!』

ユーナ『これは命令よ?従いなさい!』

ラース『でも……』

シャドウ『大尉、敵の機体は新型の量産機です。数的にもガルバルディでは…』

ライネック『ユーナ、ビームライフルを』

ユーナ『どうかご無事で』

ライネック『行け!』

アヴァンズ『御武運を』

ビームライフルを渡したユーナはライネックを残し部下を連れ母艦に撤退した。

モビルスーツデッキ

整備兵「伍長!大尉はどうしたんです!?」

ユーナ「敵と交戦中よ」

整備兵「交戦中!?」

ユーナ「アヴァンズ!ラース!シャドウ!レナ!ブリッジに上がるわよ」

アヴァンズ、シャドウ、ラース「了解…」

レナ「………」

ユーナ「どうしたの?」

レナ「私が足手まといなばかりに……」

ユーナ「あなたのせいじゃないわ。それにライネックはこんなことで堕ちるようなパイロットじゃないわ」

アヴァンズ「しかし…損傷機体でネモ10機以上……絶望的です」

ラース「アヴァンズ!縁起でもないこと言うな!」

ラース「大尉がやられるワケねぇよ!!」

シャドウ「大尉は必ず戻ってくる!」

ユーナ「そうよ、あの人…悪運だけは強いから」

ユーナ「それより今は報告よ。いいわね?」

アヴァンズ、シャドウ、ラース「了解」

ユーナ「レナも、いいわね?」

レナ「はい…」

ブリッジ

ユーナ「ライネック隊、帰還しました。」

ハイル「ライネックはどうした?」

ユーナ「現在敵と交戦中です」

ハイル「どういうことだ?」

ユーナ「損傷したレナ機の速度では敵を振り切れなかったのでライネック大尉が囮となりました。」

ハイル「そうか。エズラ二等兵(レナ)の機体の損傷具合は?」

ユーナ「右足、左肩が欠損。ブースターパックに異常アリです。戦線復帰には時間がかかります」

ハイル「追撃部隊が来た場合は貴様ら4人に出撃してもらう。準備して待機だ、下がっていいぞ」

索敵班「右舷よりモビルスーツ接近!!」

ユーナ「!!!」

ハイル「機種はなんだ?」

索敵班「ガルバルディです!!ライネック大尉の機体です!!」

索敵班「機体が損傷しています」

ラース「大尉!!!」

ハイル「悪運の尽きんヤツだ」

ハイル「ハッチを開け」

ユーナ「ライネック……」

モビルスーツデッキ

ライネック「はぁ……」

ユーナ「ライネック!!」

ライネック隊員「大尉!!!」

ライネック「あぁ、手厚い出迎えだな」

整備兵「囮になったと聞いた時は肝を冷やしましたよ……」

ライネック「伊達にモビルスーツパイロットをやっちゃいないさ」

アヴァンズ「それにしても、よくあの数のネモを…」

ライネック「全部撃墜してやったよ」

ラース「すげぇ!!さすが大尉だ!!」

ユーナ「こら!嘘言わない!」

ライネック「バレたか」

ユーナ「私のビームライフルの残弾は6発しか無かったわ」

ラース「えぇ!?嘘なんすか!?」

ライネック「そんなこと出来んのはアムロ・レイくらいだよ」

シャドウ「ならどうやってあの追撃を?ガルバルディの速度ではネモを振り切れないはず…」

ライネック「あれはネモじゃない。ネモのカラーリングのGMⅡだ」

ライネック「兵器不足のエゥーゴの苦肉の策だろうな。おかげで助かったが」

レナ「大尉……」

ライネック「何だ?」

レナ「すみません…私が不甲斐ないばかりに……」

ライネック「気にする事は無い。そんなこともある」

ライネック(気がかりなのは…あの感覚…プレッシャーにも似た感覚。俺が交戦した金色のモビルスーツのパイロットではない…なんなんだあれは)

ユーナ「ライネック?」

ライネック「!」

ライネック「なんだ?」

ユーナ「いえ、ぼーっとしているから何かあったのかと…」

ライネック「なんでもない、生き残って少し気が抜けたんだ」

ユーナ「そう、先に中佐に報告しないと」

ライネック「そうだな、行ってくる」

自室

ライネック「ふー……」

ピンポン

ライネック「誰だ?」

ユーナ「私よ」

ライネック「入っていいぞ」

ウィーン…

ライネック「どうした?」

ユーナ「またタバコとお酒?今日は何本吸ったの?」

ライネック「ふー……入って来ていきなり説教か」

ユーナ「説教?健康に気を付けてって話をしてるの」

ライネック「軍人に言うことじゃないな。タバコを吸い続けて肺癌で死ぬ予定の俺も健康第一で老衰死する予定のお前も明日撃墜されれば結果は同じだ」

ユーナ「あなたは撃墜されないでしょ?だからタバコとお酒は控えて」

ライネック「今日は撃墜されかけたんだがな」

ユーナ「なら今日は撃墜からあなたを救った人間の言うことを聞いてくれてもいいんじゃない?」

ライネック「士官学校に入って過保護な母親から離れられたかと思えば……軍人になってからは過保護な部下から酒タバコ禁止令…」

ユーナ「禁止してません!控えてくださいって言ってるんです!せめてタバコを一箱に!!」

ライネック「考えとくよ」

ユーナ「はぁ………」

ライネック「小言言いに来ただけじゃないだろ?なんだ?」

ユーナ「さっき艦内でティターンズの人達を見かけたの」

ライネック「ティターンズの連中だと?」

ライネック「どういうことだ?」

ユーナ「私にも…さっき見かけただけだから」

ライネック「チッ…」

ユーナ「ライネック、どこに行くの?」

ライネック「クソ上司の所だ。あのアホはどうせロクなことを考えちゃいない!」

ユーナ「待って!私も行くわ!」

艦長室

ライネック「ハイル中佐!」

ジャマイカン「何だ貴様は!」

ハイル「何の用だ?」

ライネック「ティターンズの人間が艦内をウロついてると聞きまして」

ジャマイカン「貴様は何者だと聞いている!」

ハイル「彼はこの艦のパイロットで、イアン・ライネック大尉です」

ジャマイカン「そうか、ライネック大尉。すまないが君には席を外してもらう」

ライネック「私はハイル中佐に話があって来たのです」

ジャマイカン「ならば後にしたまえ。今は私が中佐と話をしているのだ」

ハイル「いや、ライネックにも聞いてもらいましょう。どの道話すことですから」

ジャマイカン「くっ」

ライネック「先に聞きましょう」

ハイル「伍長も、外に居るのだろう?入れ」

ユーナ「失礼します」

ジャマイカン「彼女は?」

ユーナ「ユーナ・サフィーナ伍長です。ジャマイカン少佐」

ライネック「それで、話とは?」

ハイル「朗報だ。我々は正式にティターンズの部隊となることが決まった」

ライネック「!?」

ライネック「それの何処が朗報なんですか?」

ジャマイカン「ティターンズ所属の軍人は通常の連邦軍の階級より一つ上の待遇を受けられる。朗報以外の何だと言うのだ?」

ライネック「あんたらの言う朗報ってのは…

がしっ

ライネック「!?」

ユーナ「ダメよ!ライネック!それ以上は」

ライネック「………」

ハイル「それに伴ってお前達ライネック隊にバスク大佐から贈り物だ。モビルスーツデッキに置いてある。見に行くといい」

ジャマイカン「そういうことだ。下がれ」

ライネック「……失礼しました」

モビルスーツデッキ

ユーナ「これは?」

整備兵「RMS-108マラサイです。ティターンズの量産機でガルバルディβよりも高性能な機体ですね」

ライネック「気に入らんな、ティターンズが開発したモビルスーツなんぞ」

整備兵「これはアナハイム製のMSですよ?」

ライネック「アナハイム?」

ユーナ「アナハイムって確か…」

ライネック「エゥーゴのスポンサーのはずだが」

ユーナ「どうしてアナハイムがティターンズにモビルスーツを提供するの?これじゃまるで……」

整備兵「そうですね……戦いを煽っているようにしか……」

ライネック「アナハイムの目的は利益と立場だ。アナハイムはティターンズに地球圏を支配されたくないが、連邦の実権を握るティターンズを完全に敵にすることもできないワケだ」

ユーナ「それじゃあエゥーゴに投資することすらできないんじゃないの?」

ライネック「そうだ、だから非公式な組織であるエゥーゴは物量的に完全に不利だ。おそらくアナハイムの上層部がモビルスーツの開発と資金提供をやっているんだろう。このマラサイはティターンズに対するパフォーマンスだ『私は敵ではありません』ってな」

ユーナ「詳しいのね」

ライネック「いや、ただの憶測話だ」

ユーナ「マラサイが投入されたって知ったらラースは素直に喜びそうね」

ライネック「ラースのヤツは単純だからな……でも、ティターンズ入りとセットだからな。アイツが1番怒りそうな気もする」

ライネック「!」

ライネック(この感覚…)

ユーナ「ライネック?」

ライネック「…っ!」

ライネックが目を向けた先に居たのはパプテマス・シロッコだった。シロッコはライネックの視線に気付くと近寄りライネックに握手を求める

シロッコ「君がこの艦のモビルスーツ部隊の指揮官かな?」

ライネック「そうです」

シロッコ「私は木星資源採掘船ジュピトリスの責任者、パプテマス・シロッコ大尉だ。よろしく」

ライネック「重巡洋艦インダスMS部隊隊長イアン・ライネック大尉だ」

シロッコ「そちらの女性は?」

ユーナ「ライネック隊副隊長ユーナ・サフィーナ伍長です」

シロッコ「これからしばし行動を共にするかもしれん。よろしく頼むよ」

ライネック「ジュピトリスの責任者が何故わざわざ地球圏まで?それも戦争中だというのに。何かティターンズに与する理由が?」

シロッコ「私はティターンズに与する理由は無いよ、同時にエゥーゴに与する理由も無い」

ライネック「要はどっちでもよかったってことですか」

シロッコ「フフフ……言ってしまえばそうなるな。しかし、ティターンズに与しているつもりは無い。私は傍観者だからな」

ライネック「それはあなたが地球圏に来た理由としては理解できないですね」

シロッコ「木星という僻地は私にとって退屈でしかなかったのだよ」

ライネック「そりゃ暇潰しで戦争しに来たって意味か?」

ユーナ「ライネック!落ち着いて!」

シロッコ「当然目的はあるさ。木星で発掘した資源を有効利用するために来たのだ、私が開発したモビルスーツの性能テストも兼ねてね」

シロッコ「そう言う君はどうだ?やけにティターンズを毛嫌いしているようだが、君はエゥーゴに参加したいのか?」

ライネック「俺は戦いが好きでないだけだ、エゥーゴに参加したいワケではない。ティターンズは個人的に嫌っているんだ」

シロッコ「的外れなことを言う」

ライネック「なに?」

シロッコ「戦争中にエゥーゴとティターンズ、どちらの軍閥にも属さず連邦軍の軍人でいられると思っているのかな?」

ライネック「…………」

シロッコ「人は時代の流れに逆らえんものさ。逆らえばもがき苦しみ溺れる」

シロッコ「しかし、今の流れのままならスペースノイドはアースノイド粛清を企てるであろう」

ライネック「そう考えているなら何故ティターンズに?その流れは間違いなくティターンズが生み出すと思うが?」

シロッコ「エゥーゴのように真っ向から立ち向かうのは骨が折れる上に私の主義ではないのだよ」

ライネック「?」

シロッコ「大きな力は潰してしまうよりも利用すべきだ。私はシステムとは内部から変えていくべきだと思っている。そして、スペースノイドとアースノイドを引っ張って行ける天才が必要だと思わんか?」

ライネック「自分がその天才だと?」

シロッコ「フフフ……私は歴史の立会人に過ぎんよ。そして、世の中を変えていくのは女性だとも思っている」

シロッコ「そろそろ時間だな、話をできて良かった。また会おう」

そう言い残しジャマイカンとともにシロッコは去って行った


ユーナ「なんだか嫌味な人ね」

ライネック「あぁ、自分を天才と言う辺りがいっそ清々しいくらいにな」

ライネック「だが、俺が気に入らないのはそこじゃない」

ユーナ「え?」

ライネック「ヤツの言うことは正しいし的を射ている」

ユーナ「それがどうして気に入らないの?」

ライネック「わからん……」

ユーナ「わからないって……」

ライネック「本当にわからないんだ……なんとなく……いや、勘かもしれん」

ユーナ「ふふっ……いいわ、あなたの『勘』は嫌いじゃないから」

ライネック「そうか…いいやつだよお前は」

ライネック「小言マシーンじゃなけりゃ嫁に欲しいと思ったくらいだ」

ユーナ「私だって酒呑みのヘビースモーカーじゃなければお嫁に行ったかもね」

ライネック「ふっ…交渉決裂だな」

ユーナ「少しは辞める努力してください」

グリプス宙域

ラース『大尉ー!!』

ライネック『なんだ?』

ラース『すごいっすねぇ!このマラサイ!機動性がガルバルディと全然違う!!』

ライネック『機体に慣れるためのテスト飛行だからって甘く見るなよ』

ラース『ひゃっほぉー!!!』

レナ『ラース!!!はしゃぎ過ぎ!!!大尉もちゃんと注意してください!!!』

ライネック『らーすちゃんとしろー』

ユーナ『レナ?中佐からマラサイ1号機(ライネック)と4号機(ラース)の撃墜許可が降りたわよ?』

ライネック『ラース!!はしゃぐな!!』

ラース『すいません』

モビルスーツデッキ

ラース「ふぅ…いやぁ、すげぇなマラサイ」

シャドウ「お前ずっとすげぇしか言ってないな」

アヴァンズ「察してやれ。教養が足りないんだ」

ラース「なんだと!?」

アヴァンズ「教養が足りないんだろ」

ラース「うっせぇ!!!」

ラース「でもなぁ。ティターンズのモビルスーツじゃなきゃもっと喜べたのに」

シャドウ「それは言えてる。モビルスーツだけならともかく俺たちティターンズになっちまった」

ライネック「マラサイはティターンズのモビルスーツじゃないぞ。アナハイム製だ」

アヴァンズ「え?そうなんですか?」

シャドウ「でも、アナハイムって」

レナ「エゥーゴのスポンサーだと聞いたはずですが…それがどうしてティターンズに?」

ライネック「儲け主義だってことだ」

ユーナ(私に説明した時より随分投げやりね……)

ラース「うっわぁ…エゥーゴにもティターンズにもモビルスーツ売れるとかアナハイム独り勝ちじゃん!!俺もアナハイム入りてぇ!!」

レナ「行けばいいんじゃない?」

ライネック「離隊許可書ならいつでも書くぞ?」

シャドウ「よし、送別会の準備だ」

アヴァンズ「こいつじゃアナハイムもお断りだな。達者でな」

ラース「ひでぇよ……皆…ひでぇよぉ~」

ユーナ「はい!やめやめ!」

ユーナ「あなた達は喋るといつもラースをいじめるんだから!」

ラース「母ちゃぁぁん!!!」

ユーナ「私はあなたのお母さんじゃありません」べしっ

ラース「痛てっ!」

レナ「まったく…19歳になってまでユーナさんに面倒かけて」

ラース「うっせぇババァ」

レナ「…………まだ21歳なんだけど?」がしっ

ラース「ごめん……ウソ」

シャドウ「21歳でも嫁の貰い手はないな」

レナ「大尉、シャドウとアヴァンズの分も離隊許可お願いします」

アヴァンズ「俺は何も言ってないんだが」

2日後……

ハイル「ゼダンの門の移動が完了したらしい。これより我が艦はゼダンの門へと向かう」

索敵班「艦長!!!」

ハイル「なんだ?」

索敵班「右翼側から敵モビルスーツ部隊接近!!機種、リック・ディアス2機!ネモ5機!」

ハイル「モビルスーツデッキへ繋げ」

オペレータ「了解」

整備兵『こちらモビルスーツデッキ』

ハイル「マラサイの出撃準備は出来ているか?」

整備兵『現在調整中で……出撃可能な機体はライネック機だけしか……』

ハイル「聞こえたか?ライネックに繋げ!」

オペレータ「了解」

自室

ライネック「………」(なんだ?すごく嫌な予感が……)

ハイル『ライネック!出撃命令だ!』

ライネック「……」(当たった)

ハイル『聞いているのか!?』

ライネック「聞こえてますよ」

ライネック「で、敵の数は?」

ハイル『7機だ。貴様の機体しか出撃できん!我が艦が戦闘域を出るまで囮としてモビルスーツ部隊を引きつけろ!いいな?』

ライネック「了解」

モビルスーツデッキ

整備兵「ライネック大尉……」

ライネック「そんな葬式みたいな顔をするな。まだ死んでないぞ?」

整備兵「しかし……今回はあまりにも……俺達がもっと早く調整を終えていたら……くそっ」

ライネック「いいからさっさとハッチ開けてくれ。でないと…

ユーナ「ライネック!!!!」

ライネック「保護者が来ちまった」

ユーナ「無茶はやめて!!!1機で敵を引きつけるだなんて!!」

ユーナ「私の機体はどうなってる!!??」

整備兵「伍長の機体はエネルギーパックも外していて出撃できるような状態じゃ」

ユーナ「なら他の機体は!?飛べるものなら何でもいい!!!」

整備兵「そんな…」

ライネック「ユーナ、落ち着け。囮なんだから1人の方が楽に決まってるだろ?しかも、お前みたいな小言マシーンに居られたら逆に堕とされる」

ユーナ「冗談を言ってる場合じゃない!!」

ライネック「上官命令だ。落ち着け」

ユーナ「……っ」

ライネック「俺はまだまだ撃墜される気はない。行って来る」

ユーナ「御武運を……」

ライネック『ライネック、マラサイ出撃する』

ライネック(何故だ……とても生きて帰れる状況ではないのに……不安は無い)

ライネック(開き直っているのか?)

ライネック(なんというか……負ける気がしない)

ライネック「敵は……」

ライネック「!」

ライネック「見つけた!!」

ライネック(!?何故だ!?まだ視認できていないのに!何故敵が見える!?リック・ディアス2機にネモ5機……)

数分後、母艦インダスのブリッジに映し出される交戦中のライネック。敵に囲まれ攻撃を避け続ける姿を見て船員達は祈る……

ユーナ「ライネック……やっぱり私も!!」

ラース「落ち着いてくださいユーナさん!!無理っすよ!!出撃できる機体が無いんだ!!」

アヴァンズ「あの状況じゃ仮に行けても……」

レナ「祈ることしかできないのか…」

ハイル「うろたえるな。ライネックは優秀なパイロットだ。こんなことでは堕ちん!できることをしろ」

ハイル「メカニックに機体の整備を急がせろ!通信斑!周囲の友軍に増援を要請しろ!!」

ライネック(見える……敵の攻撃が全て見える)

ライネック「そこだ!!」

明後日の方向にビームライフルを放つライネック。しかし、その弾はネモ2機に直撃した

ライネック「堕ちろ!!!」


瞬く間に敵機を撃墜するライネック。ネモ5機が全滅したことによりリック・ディアス2機は撤退した

インダスの船員達はその光景に唖然とする。たった1機で5機を撃墜し2機を撃退するという異常事態。ユーナですら言葉が出ない

ラース「すげぇ……」

レナ「あれが大尉の実力……」

ユーナ「…………」

アヴァンズ「ユーナさん?」

ユーナ「危機を退けたというのに……どうしてか不安になるの…」

アヴァンズ「どういうことですか?」

ユーナ「ライネックが何処か遠い所へ行ってしまうような……」

ユーナ「そんな気がするの…」

自室

ライネック「ふぅ………」

ウィーン

ユーナ「………」

ライネック「タバコは辞めないぞ」

ユーナ「少しいい?」

ライネック「……あぁ」

ユーナ「今日の戦闘の話なのだけど」

ライネック「………」

ユーナ「あなたには何が見えているの?」

ライネック「………」

ライネック「質問の意味が……ふぅー……わからんな」

ユーナ「とぼけても無駄よ。私の小言を先回りしたのはともかく、私の質問の意味はわかっているでしょ?」

ライネック「…………ふぅ…」

ライネック「ユーナ」

ユーナ「?」

ライネック「ニュータイプって知ってるか?」

ユーナ「話には聞いたことはあるわ……超能力のようなものだと」

ライネック「俺もニュータイプの定義については知らないんだが……ここ最近異変があった」

ユーナ「異変?」

ライネック「あぁ、予感が的中するというか……もちろん具体的なものではないんだが。そういう意味では直感と言った所か?第六感……まぁそんなものが研ぎ澄まされた気がする…」

ユーナ「何があなたをそうさせたの?」

ライネック「………」

ライネック「パプテマス・シロッコ……」

ユーナ「?」

ライネック「ヤツと出会ってからだ……というより。出会う前よりヤツの存在、その不愉快さを感じていた」

ユーナ「ちょっと待って」

ライネック「ん?」

ユーナ「話が突飛過ぎて……その、つまりあなたはニュータイプだってこと?」

ライネック「さっきも言ったがニュータイプについての定義はわからん。俺の直感の良さが関係しているのかもわからん」

ライネック「ただ」

ユーナ「なに?」

ライネック「パプテマス・シロッコはニュータイプであると……俺の勘はそう言っている」

ユーナ「あなた自身ニュータイプを知らないのに?」

ライネック「こういのは理屈じゃないんだ」

ユーナ「オカルトの類の話を全く信じないあなたのセリフとは思えないわね」

ライネック「あぁ、信じてないな幽霊も超常現象も信じてない。でも、俺の勘は嫌いじゃないんだろ?」

ユーナ「ふふっ…えぇ、あなたの勘は当たらないもの。あなたがジャンケンで勝った所を見たことがないわ」

ライネック「言ってくれるな。これでも星占いよりは当たると自負してるんだがな」

ユーナ「そうね、当たる確率は星占いとどっこいどっこいね」

ライネック「けっ……俺が言いたいのは。ヤツには注意しろってことだ!わかったら出てけ!しっしっ!」

翌日~ゼダンの門到着~

ラース「ここがティターンズの根城か…」

シャドウ「ゼダンの門あらため掃き溜めだな」

ラース「掃き溜めっていうよりゴミ屋敷だな」

シャドウ「それを言うなら地球圏全体がゴミ屋敷だな」

ラース「ゴミはゴミ箱に、ティターンズもゴミ箱に」

レナ「あんた達って口喧嘩弱いくせにティターンズの悪口言う時だけは頭が回るのね」

アヴァンズ「それだけここの空気が不快なんだ」

ライネック「なんかそのうちジオンの顰蹙買って、ここに隕石ぶつけられそうだな」

ラース「そうなったらジークジオンって叫びますよ」

ハイル「ライネック」

ライネック「はい?」

ハイル「少し話がある。来い」

ユーナ「?」

ライネック「わかりました。ユーナ、ここの設備の説明を後で頼む」

ユーナ「了解」

ユーナ「………」(なんの話だろう……)


ハイルはライネックを格納庫に連れて来た

ハイル「ゼダンの門に来たばかりで悪いがお前にはティターンズの旗艦。ドゴスギアに移ってもらう」

ライネック「は?」

ライネック「嫌です」

ハイル「これは決定事項だ」

ライネック「どうして自分が?艦長が行けばよいのでは?バスク大佐も喜ばれることでしょう」

ハイル「バスク大佐はゼダンの門を統率している」

ライネック「?」

ライネック「ならドゴスギアの指揮権はジャマイカンですか?」

ハイル「ドゴスギアの指揮権はパプテマス・シロッコに委ねられている」

ライネック「!?」

ハイル「本来ならばドゴスギアはバスク大佐の指揮管轄に入るはずだった。それをあの木星帰りの男……ジャミトフ閣下に忠誠の誓いを立てたらしい」

ライネック「それと俺のドゴスギア行きとどう関係が?」

ハイル「これはバスク大佐の命令だ。ドゴスギアのパイロットとして潜入し、シロッコを監視しろ。ヤツは何を考えているかわからん」

ライネック「バスク大佐が俺を指名とは…光栄ですな」

ハイル「お前のパイロット技能の高さを見込んで私が推挙したんだ。それに伴いお前に良い物があるぞ?」

ライネック「良い物?プレゼントなら物より現金か商品券にしてくださいよ?」

ハイル「これを見ろ」

そう言って格納庫の電気をつけるハイル。ライネックの目に飛び込んだのは1機のモビルスーツ


ライネック「これは……」

ハイル「RX-272。ガンダムMk-Ⅲだ」

ライネック「ガンダムMk-Ⅱの話は聞いていたが……」

ハイル「エゥーゴに強奪されたガンダムMk-Ⅱだが、その水面下で設計された可変モビルスーツ。ガンダムMk-Ⅲの試作2号機……またの名を″ハーピュレイ″」

ライネック「これを俺に使えと?」

ハイル「申し分ない贈り物だと思うが?この機体は従来の設計にプラスしてアナハイム・エレクトロニクス社が提供してくれたマラサイと同じガンダリウムγで出来ている。カタログスペック以上の性能を出せるようにしてある」

ライネック「俺がガンダムのパイロットになる日が来るとはな……」

ハイル「明日この機体で出撃してもらう。詳しくはバスク大佐から説明があるはずだ」

ライネック「バスク大佐が直接?」

ハイル「そうだ、バスク大佐は司令官室に居る。部下を連れて来いとの命令だ。行ってこい」

ライネック「何故あいつらまで?ドゴスギアに移るのは俺だけでは?」

ハイル「さぁな、しかし、ヤツらも挨拶をしておくべきだ」

ライネック「ティターンズ嫌いの連中がティターンズのNo.2に挨拶か……胃もたれする食い合わせだ」

司令官室

ライネック「イアン・ライネック大尉です」

ユーナ「ユーナ・サフィーナ伍長です」

アヴァンズ「アヴァンズ・ホルト上等兵です」

シャドウ「シャドウ・フレデリック一等兵です」

レナ「レナ・エズラ二等兵です」

ラース「ラース・スペイディオ二等兵です」

ライネック「ハイル中佐の命で参りました」

バスク「うむ、よく来てくれたな。ライネック大尉、お前のことはハイルからよく聞いている。とても優秀なパイロットだとな」

ライネック「恐縮です」

バスク「それはそうと、ガンダムMkⅢは気に入ったか?」

ユーナ「?」

ライネック「はい、私には勿体無い機体です」

バスク「明日その機体でドゴスギアに行ってもらうつもりだったが、先ほどエゥーゴ派の連邦軍艦隊がウロついているという情報が入った」

バスク「そこで、ライネック大尉にはガンダムの試運転を兼ねてティターンズに刃向かう連中を沈めて来てもらう。お前の力を見たい、もちろんライネック隊も一緒にな」

ライネック「艦隊の規模は?」

バスク「サラミス級が4隻だ。おそらく貴様達の乗艦インダスを襲ったモビルスーツ隊の艦だろう」

バスク「やってくれるな?」

ライネック「はい、必ずや敵を撃沈してみせます」

ミーティングルーム

ライネック「ふぅ……」

ユーナ「ライネック」

ライネック「何度も言うがタバコは辞めないぞ」

ユーナ「違う。ドゴスギアに移るってどういうこと?」

ライネック「そっちか」

ラース「ドゴスギアって最近投入されたティターンズの旗艦でしょ?どうして大尉だけ?俺たちは?」

アヴァンズ「ライネック隊はゼダンの門を拠点に活動するんじゃなかったんですか!?」

レナ「何故黙ってたんですか!?それよりも何故バスクの命令に異議を言わないんですか!?大尉らしくないです!!」

ライネック「そんなにまくし立てるなよ………。異動の件は今さっきハイルに言われたんだ、隠してたワケじゃない」

ラース「じゃあホイホイ命令に従うのはどうしてなんですか?」

ライネック「俺たちは組織に属した軍人だ。本意じゃないにしろティターンズに身を置くなら逆らう相手は選ぶべきだ」

シャドウ「問題は次の出撃です。いくらなんでも俺たちだけで敵艦隊をやるなんて……」

レナ「モビルスーツ隊も出てくるでしょうね……」

ライネック「モビルスーツは出てこない」

シャドウ「何故ですか?この前インダスを襲ったヤツらなら…」

ライネック「そいつらは別の部隊だ。サラミスにモビルスーツ運用能力は無い。ただ沈めるだけだ」

シャドウ「随分簡単に言いますね。モビルスーツが出なくて敵艦隊を沈めるなんて容易じゃないですよ」

レナ「私達だけでは心許ない……援軍を頼みましょう」

ライネック「必要ない」

ラース「必要ですよ!!」

ライネック「俺は必要無いと言ってるんだ!ろくに頭も回らんヤツが偉そうに言うな!!嫌なら出なくても構わん!!」

ラース「!?」

ユーナ「ライネック!!ラースに当たることは無いでしょう!?何を焦ってるの!?あなた少し変よ!?」

ライネック「……俺は焦ってなんか」

ユーナ「いいえ、あなたは焦っているわ。そうでなければ何かを恐れているわ」

ライネック「恐れる?」

レナ「私も大尉は冷静じゃないと思います。以前の大尉ならこんな攻撃的な作戦には反対したはずです。大尉は無意味に自分や部下を戦場に向かわせる人ではなかったはずです」

ライネック「…………」

ユーナ「ライネック、この作戦の裏側には何があるの?ドゴスギアに行くのと関係があるの?」

ライネック「…………」

アヴァンズ「黙ってないで教えてくださいよ!1人で抱え込むなんて大尉らしくないですよ!いつもなら気に入らないことがあるとボヤくじゃないですか」

ライネック「すまん……これは言えん事だ」

ユーナ「ライネック…」

ライネック「ラース、酷い事を言って悪かったな。お前が言ってる事の方が正しいよ、俺は冷静じゃなかった。援軍の要請はしておく」

ラース「大尉……」

ライネック「しかし、援軍が出るか出ないかもバスク次第だ。今日はもう休め」

ライネック隊「了解」

ライネック「」(俺が焦っている…恐れている……)

ライネック「」(シロッコを見張る任務を降ろされるワケにはいかない)

ライネック(何故俺はシロッコにこだわっている?)

ライネック(ヤツから感じた強烈なプレッシャーのせいなのか?)

ライネック(俺はシロッコを恐れている……か)

モビルスーツデッキ

ライネック『マラサイ部隊!作戦を確認する。俺が先に敵に接近し対空砲を引きつける。その間にお前達が後ろから機関部を狙え!いいな?』

ライネック隊『了解!!』

ライネック『ユーナ!マラサイ部隊の指揮を頼むぞ!』

ユーナ『了解』

ライネック『よし!ガンダムMkⅢ!ライネック出るぞ!』

ユーナ『マラサイ部隊発進準備!』

ラース『ラース発進よろし』

アヴァンズ『アヴァンズ発進よろし』

シャドウ『シャドウ発進よろし』

レナ『レナ発進よろし!』

ラース『大尉飛ばし過ぎじゃないですか?これじゃあ俺達ついて行けませんよ?』

ユーナ『これでいいのよ。ライネックは陽動するのが目的なのだから』

レナ『それにしても、あのガンダムMkⅢという機体は……』

シャドウ『あぁ、異質だよな』

アヴァンズ『可変モビルスーツと聞いてるが、ドゴスギア行きと何か関係あるのでしょうか?』

ユーナ『その件は喋れないってライネックが言っていたはずよ。今は任務に集中なさい』

ラース『でも、大尉…結構悩んでそうですよ?何か力になりたいです』

ユーナ『いずれ話してくれるわ。今はライネックに余計な心配をかけないようにすることよ!ここで私達が足を引っ張ってたらライネックに迷わせることになるわ』

ラース『了解~』

ラース『あ、ところで』

ユーナ『なに?』

ラース『ユーナさんって大尉と付き合ってるんですかぁ?』

ユーナ『つ、付き合ってない!!!変なこと聞かないでよ!!!』

シャドウ『慌てて全否定……』

アヴァンズ『つーか聞くなよラース。大尉とユーナさんが付き合ってるなんて見なくてもわかるだろ…』

ユーナ『付き合ってないって言ってるでしょ!!??あんたら帰ったら覚えてなさいよ!?』

ラース『ユーナさんが修正するってよー』

レナ『…………』

シャドウ『ん?レナぁ~どうしたんだぁ?大尉の色恋話になるといつも黙るよなぁ?ん~?』

アヴァンズ『そりゃお前ぇアレだよな?レナぁ?へへへ』

レナ『ユーナさん、シャドウとアヴァンズの撃墜許可お願いします』

ユーナ『え?レナ…あなたライネックが?やめなさいよあんな飲んだくれのいいかげん男なんて。苦労するわよ?』

レナ『ユーナさんまで何言ってんですか!!それに!!大尉はそんな人じゃないです!!』

ラース『…………』

シャドウ『また1人黙ったヤツがいるぞぉ~』

ラース『うっせぇぇ!!しねぇぇ!!!』バキュン!!!

シャドウ『馬鹿野郎!!ホントに撃つんじゃねぇ!!!』

レナ『しねぇぇ!!!』バキュン

シャドウ『レナまで!!やめろ!!マジやめろ!!お前らホントに狙ってんだろ!!』

ユーナ『安心しなさい、ライネックには内緒にしておくから』

レナ『もぉぉ!!ユーナさんまで!!!』

ライネック『悪いがミノフスキー粒子が薄くて部聞こえてたぞ。だが、俺は良い上司だから聞こえてない事にする』

レナ『ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!違うんです!!違うんですよ大尉ぃぃぃぃ!!!』

ユーナ『私も違うんだからね!?この子達が勝手に言ってるだけだから!!』

ライネック『聞こえねーなー。あー全然聞こえねーわー。なぁアヴァンズ聞こえるか?』

アヴァンズ『いっやぁ~、まったく聞こえないっすね~』

ユーナ『ライネック!!!』

ライネック『すまんが話はここまでだ』

ライネック『これより敵艦隊と接触する。お前達は迂回して敵艦を攻撃しろ!」

ライネック隊『了解』


ライネック「さぁて、ガンダムの性能試させてもらうぞ!」

対空砲火の中を潜り抜けるモビルアーマー。弾幕が擦りもしない機動性を見せつけるライネック

ライネック「これは……」

ライネック「沈めれる!」

ライネックは艦隊のメガ粒子砲を掻い潜り主砲から艦橋にかけてビームを直撃させサラミス一隻をものの数秒で撃沈する

ライネック「これがガンダムか……連邦の白い悪魔の系譜は伊達じゃないってことだな」

ーーーーーーー

艦長「たかが一機だろう!!何故撃ち落とせん!!!」

船員1「ダメだ……全然当たらない!!」

船員2「来る!!来るぞ!!!」

艦長「落とせぇぇ!!!!」

ドゴォォォォォォン…………

ぐぁぁぁぁぁぁぁ

ーーーーーーーー

ライネック「沈め」


この任務で陽動役のライネックは味方攻撃部隊の攻撃を待たずして敵艦隊を宇宙の藻屑に変えた。一隻目撃沈から僅か3分の出来事であった

ゼダンの門

ライネック「バスク大佐。報告に参りました」

バスク「いや、結構だ。すべて見させてもらったよ。見事な活躍だった」

ハイル「よくやったぞライネック」

ライネック「いえ、運が良かっただけです」

バスク「そう謙遜するな。かつての赤い彗星を彷彿とさせる活躍だった」

バスク「予定通りお前にはシロッコの監視を任せたぞ。明日出発してもらう。いいな?」

ライネック「了解しました」

ハイル(さすがはライネック……いや、ハーピュレイか……)

休憩所

ライネック「………」

ユーナ「ライネック」

ライネック「なんだ?タバコは辞めないぞ」

ユーナ「明日出発って聞いたわ」

ライネック「あぁ」

ユーナ「いつ帰ってくるの?」

ライネック「さぁな、帰って来られるかすらわからんさ。上の命令もあればパイロットとして撃墜されるかもしれん」

ユーナ「やっぱり…言えないのね」

ライネック「……………」

ユーナ「なら、私から一つお願いしてもいい?」

ライネック「禁煙、禁酒以外ならな」

ユーナ「必ず帰って来るって…言って……」

ライネック「ユーナ……」

ユーナを抱き寄せ耳元で囁くライネック。

ユーナ「!?」

ライネック「そりゃ、死亡フラグだ」ぼそっ

ユーナ「ふふっ……ムードブレイカーな所は健在なのね。イアン…」

[見せられません]


物陰

レナ「……………」

ラース「何してんだ?」

レナ「!?」

ラース「え、アレ……ちょっ……」

レナ「見ちゃダメよ!!」ぺしっ

ラース「痛っ」

ラース「!?」

レナ「………」

ラース「泣くなよ……キャラじゃねぇよ」

レナ「泣いてないし…もう寝るし…」

ラース「待てよ!」

レナ「………」

ラース「待てって!!」

レナ「何よ、ほっといてよ」

ラース「まぁ……なんだ、お前みたいな女じゃ大尉に釣りあわねぇんだよ!」

レナ「はぁ?」がしっ

ラース「ぐぇぇ…ごめん…言い過ぎた……」

レナ「アンタ何が言いたいの」

ラース「うぅ……いや、俺は励ましてるつもりだったんだけど……ごほっごほっ」

レナ「全然励ませてないから」

ラース「俺が言いたいのはさ、大尉とユーナさんの付き合いの長さを考えたら俺達が割り込む隙間は無かったって事だよ。お前がどうとかよりな」

レナ「じゃあ最初からそう言いなさいよ。それでも励ましになってないけど」

ラース「最後まで聞けって」

レナ「うん」

ラース「お前さ、戦場で状況判断は冷静に正しくできるだろ?」

レナ「まぁね、じゃないと軍人って言えないし」

ラース「それと同じように考えてみろよ。大尉は無理だけど男は他に一杯居るだろ?」

レナ「諦めて次に進めって?」

ラース「そういうこと。俺とか居るし…」

レナ「は?」

ラース「いや!もちろん俺だけじゃなくってシャドウとかアヴァンズも居るけどよ」

レナ「アンタさ」

ラース「はい」

レナ「まさか、私のこと口説いてる?」

ラース「はぁ!?いや別に、ま、まぁ?お前がそう思うんならそうなんじゃね!?お前ん中ではな?」

レナ「ふっ……なんだかアンタを見てたら元気出てきた」

ラース「え?じゃあ」

レナ「無理だけど」

ラース「」

レナ「でも……サラミス4隻撃沈できるようになったら考えてもいいけどね」

ラース「それ無理ゲー……」

レナ「じゃあね」

モビルスーツデッキ

ライネック「じゃあ行ってくる。しばらくお前達とは別行動だが指揮権はユーナに委任する

ユーナ「了解」

シャドウ「最近調子良いからって油断して撃墜されないでくださいよ?」

ライネック「気を付けるさ」

ラース「ユーナさんが居ないからって浮気しちゃダメっすよー」

ライネック、ユーナ「な!?」

レナ「何言ってんのよアンタ!!」べしっ

ラース「痛っ!」

ライネック「行ってくるよ……ハハハ…」

整備兵「大尉が居なくなると思うと寂しいですよ」

ライネック『そう思ってくれりゃ軍隊ってのも捨てたもんじゃないな』

整備兵「お気をつけて」

ライネック『あぁ、行ってくるよ。ライネック、ガンダムMkⅢ出るぞ!』

ーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ドゴスギア

オペレーター「パプテマス大尉、後方よりモビルスーツ接近。ライネック大尉のガンダムMkⅢです」

シロッコ「ハッチを開けて着艦許可を出せ」

オペレーター「了解」

モビルスーツデッキ

シロッコ「また会ったな、ライネック大尉」

ライネック「あぁ、バスク大佐からティターンズ編入の祝いの編入だそうだ」

シロッコ「会えて嬉しいよ」

ライネック「こちらこそ」

そう言いながら握手をする2人。とても冷ややかで異物を含んだ握手を

シロッコ「聞いていると思うがドゴスギアは今私の指揮下にある。が、君は例外的に私の指揮権の外だ。ここでは自由に動いてくれて構わない」

ライネック「それは良心的な待遇だな」

シロッコ「しかし君にはモビルスーツ部隊の隊長を任せたいと思う。紹介しよう。ジェリド・メサ中尉とマウアー・ファラオ少尉だ」

シロッコ「君達とモビルスーツ部隊はライネック大尉の指揮の元活躍してもらうぞ」

ジェリド「了解しました」

ライネック「ジェリド・メサ?」

ジェリド「自分がどうかしましたか?」

ライネック「すまない。君の知り合いにライラ・ミラ・ライラという人は居たか?」

ジェリド「!?」

ジェリド「自分の師匠です…」

ライネック「そうか、やっぱり君がライラの言っていたジェリドか。一月ほど前に出来の悪い可愛い弟子ができたと珍しく嬉しそうにしていたんだ」

ライネック「あいつは元気にしてるか?」

ジェリド「ライラは戦死しました…」

ライネック「!?」

ジェリド「エゥーゴのパイロットに撃墜されました」

ライネック「…………そうだったのか」

ライネック「シロッコ」

シロッコ「何かな?」

ライネック「少しこの2人と話がしたい。借りてもいいかな?」

シロッコ「あぁ、構わんよ」

ライネック「すまないな」

シロッコ「話が終わったらブリッジまで来てくれ」

ジェリド、マウアー「了解」

ライネック「2人でドゴスギアを案内してくれるか?休憩所がいいなタバコを吸いたいんだ」

休憩所

ライネック「ふぅ………」

ジェリド「ライラとはどういう知り合いなんですか?」

マウアー「………」

ライネック「まぁ、一年戦争の時の同僚だな。あいつは気が強くて、いつもケツを叩かれてたよ」

ライネック「ジェリド中尉もそうだったろ?それに今も変わってないと見た」

ジェリド「?」

ライネック「マウアー少尉だったな?」

マウアー「はい」

ライネック「君からはライラと同じ匂いがするんだよ」

ジェリド、マウアー「におい?」

ライネック「そうそう、『情けないジェリドのケツを叩いてます』って顔に書いてある」

ジェリド「確かに……俺は情けないままかもな。何度もマウアーに助けられてる」

マウアー「そんなことは……」

ライネック「ハハハ、良いコンビだな」

マウアー「!?」

ライネック「シロッコは俺にモビルスーツ部隊を任せると言ったが、指揮は君達に任せるよ。俺は職場を荒らしに来たわけでもないしな」

ジェリド「それじゃあアンタが来た意味は…」

マウアー「大尉、一つよろしいでしょうか?」

ライネック「なんだ?」

マウアー「大尉は何故単身でここに?」

ライネック「…………」

マウアー「言えない理由なのですか?」

ライネック「ふぅ………」

ライネック「良いだろう。教えよう」

ジェリド「?」

ライネック「シロッコの監視だ。バスクから直接の命令でな」

マウアー「!?」

ジェリド「それをシロッコの下居る俺達に言ってもいいのかい?」

ライネック「ふっ……お前達が1番わかってるはずだ。パプテマス・シロッコは信用できないとな」

ジェリド「お見通しってワケかい…」

ライネック「命令じゃなても、俺個人としてもシロッコは信用できない。だからティターンズなんかの命令を聞いたんだ」

マウアー「大尉は反ティターンズ派なのですか?」

ライネック「そうだな」

ジェリド「だったら何でティターンズに?」

ライネック「俺の上司がバスクの犬だったんだよ。別にエゥーゴ派ってワケでもないが、ティターンズなんざロクなもんじゃない」

ジェリド「ティターンズは力だ!地球圏平定には大きな力が必要なんだ!」

マウアー「ジェリド、熱くならないで!」

ジェリド「そういう意味でティターンズが1番平和に近い存在だと思っている。それを邪魔するエゥーゴとジオンの残党共は悪だ!」

ライネック「そうか、ならいいさ。俺はティターンズは嫌いだが、お前は嫌いじゃない」

ジェリド「…………」

マウアー「何故大尉はティターンズを嫌うのですか?」

ライネック「ふぅ………ジェリド」

ジェリド「はい?」

ライネック「お前は今ティターンズは力だと言ったな?」

ジェリド「はい」

ライネック「俺が思うに、人間ってのはゴムなんだよ」

ジェリド、マウアー「?」

ライネック「べつにゴム製って言ってるワケじゃないぞ?ゴムってやつは強い力で抑え込むと反発するよな?」

マウアー「はい」

ライネック「人間も同じさ」

ライネック「ティターンズに強い力で弾圧されたスペースノイド達は反発する」

ライネック「悲しいことに人はティターンズに限らずそれを繰り返してきた。それこそ人類が地球が球体であることを知らなかった時代からだ」

ジェリド「なら大尉はエゥーゴが正しいと?」

ライネック「いや、そうでもないさ」

マウアー「なら大尉は何をもって正義だと御考えで?」

ライネック「そんなものはないさ。エゥーゴとティターンズ、勝った方が連邦軍に飲み込まれる」

ジェリド「どっちも同んなじだってのかい?尚更答えになってないでしょう?」

ライネック「ティターンズが勝った場合はさっき言った弾圧がエスカレートしていくだろうな。だからティターンズは嫌いなんだ。エゥーゴに関してはわからないんだ……だから好きとも嫌いとも言えない」

ライネック「ただ……」

ジェリド、マウアー「?」

ライネック「エゥーゴも…ティターンズも…連邦軍もジオンもスペースノイドもアースノイドも地球が欲しいのさ」

ライネック「もしも全人類が地球を欲しがらなくなれば……あるいは変わるのかもな……」

ジェリド「………」

マウアー「………」

ライネック「すまないな、哲学みたいな話になった。色々言ったが俺も偉くないし流れにも逆らえないんだ」

マウアー「流れに逆らえない?」

ライネック「そう、弱いってことだ。話が長引いたな、シロッコの所に戻ろうか。あいつが俺の目を盗んで晩飯をつまみ食いでもしたくらいならバスクに折檻されちまう」

ブリッジ

ジェリド「ただいま戻りました」

シロッコ「話は終わったのかな?」

ライネック「おかげさまでね」

シロッコ「そうか、なら次の作戦について説明させてもらう」

ライネック「どうぞ」

シロッコ「作戦名は『アポロ作戦』。内容はエゥーゴの拠点である月面都市フォン・ブラウン市の制圧だ」

ライネック「ずいぶん簡単に言うな」

シロッコ「ふふっ…さほど難しい話でもないさ」

ライネック「詳しく聞こうか」

シロッコ「簡単なことだ。ティターンズの艦隊をフォン・ブラウン市に着陸させるのだ」

シロッコ「フォン・ブラウン市の制空権に入ってしまえばエゥーゴはこちらに手出しできん」

ライネック「それはいい考えだな」

ライネック「しかし問題は、どうやってスペースデブリにならずに制空権に辿り着くかだ」

ライネック「ドゴスギアと一緒に宇宙の藻屑になるのはゴメンだな」

マウアー「私もライネック大尉の言う通りエゥーゴの抵抗は甘くはないと思います」

マウアー「それにこのような作戦が上に通るとは思えません」

シロッコ「通すのだよ。心配は要らない、事態は見えている。後は簡単だ」

休憩所

ジェリド「シロッコめ。何を考えているんだ!?」

ジェリド「フォン・ブラウンに着陸などと!あのジャマイカンが認めるものか!!」

ライネック「シロッコはこの作戦を通すだろうな。この一件に限りジャミトフの後ろ盾があるんだ、ジャマイカンなど敵ではないバスクですら通さざるを得ん」

ジェリド「それでも!いくらなんでもメチャクチャだ!辿り着く前に堕とされる!」

ライネック「そうだな……そこが問題だ」

ライネック「マウアー、お前はこの作戦。どう思う?」

マウアー「どうとは?」

ライネック「そのまんまだ。この作戦をどう思っているかだ」

マウアー「私は何故シロッコがこんな力押しな作戦を考え実行しようとしているのかが疑問です」

ジェリド「確かに、ヤツらしくない。焦っているようにも…」

ライネック「ヤツは冷静だ。びっくりするほどにな」

マウアー「何故そう思うのです?」

ライネック「この作戦。成功すればどうなると思う?」

マウアー「エゥーゴの拠点を一つ奪うことができ、ティターンズの勝利が一歩近づきます」

ライネック「一歩か…」

マウアー「?」

ジェリド「違うというのか?」

ライネック「一歩どころか……これで決まると言ってもいいだろう」

ジェリド「!?」

ライネック「エゥーゴがフォン・ブラウンを失うということは死活問題だ」

マウアー「たしかに……補給も難しくなります」

ライネック「それもそうだが、まずアナハイムの支援をティターンズ握り潰されてしまう」

ライネック「これで兵器開発、資金援助は凍結する。そしてフォン・ブラウン市はエゥーゴ支持派の重要都市だ」

ライネック「民衆の力を借りなければ軍隊なんぞは成立しない。フォン・ブラウン市をみすみすティターンズに渡したエゥーゴに対してフォン・ブラウン市民は不信感を抱くだろう」

ライネック「拡がった不信感がエゥーゴの活動領域を月面だけに留まらず大きく収縮させる。実質エゥーゴの敗北だ」

ジェリド「しかし、それができれば苦労はしない!」

ライネック「そう、それができればティターンズは苦労しない……だが、シロッコならやりかねない。ヤツは何か考えている」

ライネック「どうするつもりかは知らんが危険な匂いがする」

ジェリド「できることなら結構なことだろ?シロッコがどう考えてようが関係ない。俺は手柄を立てるためにヤツを利用するだけだ!」

ライネック「結果を急ぐあまり足をすくわれるなよ?」

ジェリド「そんなことは言われなくてもわかってる!」

マウアー「ジェリド!」がしっ

ジェリド「自分の部屋に戻るだけだ」

マウアー「ジェリド……」

ライネック「かわいいヤツだな……ジェリドは」

ライネック「ライラが惚れたのもわかる気がする」

マウアー「大尉!」

ライネック「ん?」

マウアー「ジェリドは熱くなり過ぎて周りが見えない時があります」

ライネック「そうだな、そこがアイツの悪い所だ」

マウアー「ジェリドを死なせないでください……お願いします」

ライネック「ハハハ、あの果報者め」

マウアー「……」

ライネック「心配するな。俺の目が黒いうちはジェリドを死なせやしない」

マウアー「あなたがドゴスギアに来てくれて良かった」

ライネック「なぁに、俺もティターンズ編入なんざ糞食らえって思ってたしドゴスギア行きなんざまっぴらだと思ったが」

ライネック「ティターンズという荒れた組織の中でお前達みたいな人間臭いヤツが居てまだまだ捨てたもんじゃないとも思ったよ」

マウアー「大尉……」

ライネック「そろそろ休め。いざって時に『寝不足が原因で撃墜されました』なんて終わり方じゃぐっすり永眠(ねむ)れないだろ」

マウアー「ふふふ、大尉は冗談がお好きですね」

ライネック「冗談の一つも言えないようじゃ婚期が遅れるぞ?マウアー少尉」

マウアー「覚えておきます。では」

ライネック「じゃあな」

ライネック「…………」

おもむろにポケットから写真を取り出し見つめるライネック

ライネック「…………」

ライネック「ユーナ…アヴァンズ…シャドウ…レナ…ラース……」

ライネック「まだ一日目だってのに……」

ライネック「ホームシックだ……」

アポロ作戦開始

シロッコ「艦砲射撃による威嚇を行う。発射は3分後だ!準備しろ!」

オペレーター「了解!」

ライネック「ハーピュレイの発艦準備も頼むぞ」

シロッコ「君も出るのか?ライネック大尉」

ライネック「いや、ドゴスギアが宇宙の藻屑になりそうな時に逃げるためだ」

シロッコ「フッ、まぁ見ていたまえ。君のガンダムMkⅢの整備は完了している。出撃は好きにしてかまわない」

シロッコ「ジェリド隊は私の合図が出るまでは待機と伝えろ」

オペレーター「了解!」

シロッコ「よし!アポロ作戦開始だ!主砲放て!!!」

シロッコの合図によりドゴスギア率いるティターンズ艦隊による一斉射撃

オペレーター「フォン・ブラウン付近に着弾確認!!」

索敵班「右舷よりエゥーゴの艦隊を察知しました!モビルスーツ部隊を出撃させています!」

オペレーター「アレキサンドリア以下艦隊がモビルスーツを発艦させました!ジェリド隊に発艦許可出しますか!?」

シロッコ「まだだ!ジェリド隊には待機命令を出し続けろ!我艦はこのまま横並びに艦砲射撃を継続だ!」

オペレーター「了解!」

エゥーゴ側

クワトロ『敵艦隊をフォン・ブラウンに近づけるな!モビルスーツとの戦闘は極力避け艦隊の足を止めろ!』

エマ『了解!』

カミーユ『了解!』

クワトロ「敵の数が多いな……」

クワトロ「?」

クワトロ「ティターンズは味方モビルスーツが出ているにも関わらず対空砲を使う!?正気か!!」

ドゴスギア

マウアー「対空砲!?あれでは味方に!」

ライネック「ジャマイカンめ……」

シロッコ「フフフ…いい具合に敵を引きつけてくれているな」

シロッコ「ドゴスギア!フォン・ブラウン市に向けて全速前進!」

オペレーター「了解!」

ライネック「そういうことか…」

シロッコ「何か不満があるかな?」

ライネック「不満は無いさ。じつにお前らしいやり方だよ」

ライネック「このままジャマイカンも消えてくれれば一石二鳥だな」

シロッコ「フフフ…心外だなライネック大尉。私はそんなことは考えていないよ」

ライネック「その白い面でよく言う」

クワトロ「ん?一隻だけ単独行動?ティターンズは何を考えている」

カミーユ「くっ!対空砲を使うなんて!味方に当たるぞ!」

エマ『クワトロ大尉』

クワトロ『どうした?』

エマ『あの先頭の戦艦が妙です。警戒してください』

クワトロ『了解した。ここの指揮はエマ中尉とアポリーに任せる』

エマ『了解』

クワトロ『カミーユは私について来い。あの戦艦を追撃する!』

カミーユ『了解!』

索敵班「艦長!」

シロッコ「どうした?」

索敵班「後方よりモビルスーツ2機が接近しています!」

シロッコ「映像出せ」

索敵班「了解!」

マウアー「あれは!Ζガンダム!」

ライネック「あの金色は……あの時の」

シロッコ「流石に対応が早いな……ジェリド隊に出撃命令だ!」

オペレーター「了解!」

ジェリド「やっと出撃か…」

ジェリド「ん?あれは……」

ドゴスギアから出撃したジェリドの目に入ったのはΖガンダムだった

ジェリド「カミーユ!見つけたぞ!!!」

カミーユ「!?」

ジェリド「ライラの仇を討たせてもらう!!!」

カミーユ「こいつはこの前の!」

ジェリド「堕ちろ!!!」

カミーユ「くっ……」

ジェリドの駆るガブスレイのメガ粒子砲をかわすカミーユ

サラ『ジェリド中尉!フォン・ブラウンの駐留部隊です!』

ジェリド「チィ!何だってこんな時に!!」

ジェリド『サラ!そっちは任せたぞ!!』

サラ『そんな…敵の数が多過ぎます!』

ジェリド「逃がさんぞカミーユ!!!」

サラ『戻ってください!ジェリド中尉!!』

マウアー「艦長、私の隊も出ます。出撃命令を」

シロッコ「いや、必要ない。このままドコスギアが降下を続ければジェリド隊の援護にもなる」

マウアー「それではジェリドが…

ライネック「つまりジェリドは当て馬だって言うのか?」

シロッコ「その言い方は心外だよライネック大尉」

マウアー「私もガブスレイで出る!準備しておけ!」

オペレーター「え…」

シロッコ「ハッチ開け」

オペレーター「艦長、いいのですか?」

シロッコ「好きにさせておけ」

ライネック「…………」

シロッコ「ん?どこへ行くのかな?ライネック大尉」

ライネック「ちょっと月の周りを散歩だ。散歩するのも艦長の許可がいるのか?」

シロッコ「いや、構わんよ。ここでは好きに行動してくれて構わん」

ライネック「晩飯までには戻るよ」

シロッコ「ガンダムMk?の出撃準備だ」

オペレーター「了解」

ジェリド『死ね!カミーユ!』

カミーユ『しまった!!!』

隙を見せたZガンダムに銃口を向けるガブスレイ。

クワトロ『やらせん!!!』

マウアー『ジェリド!!!』

かけつけたマウアーのガブスレイがジェリドのガブスレイに体当たりをする。百式から撃たれたビームは外れたが、同時にガブスレイが放ったビームもZガンダムを逃す

ジェリド『何故邪魔をした!!俺はZを撃墜していた!!!』

マウアー『あなたも撃たれていた!』

クワトロ『逃がさん!!』

百式のビームライフルがジェリドのガブスレイの足を直撃

ジェリド『ぐぉぉぉ……』

マウアー『ジェリド!!』

マウアー『くっ……(敵は2機…損傷したガブスレイでは連携が取りにくい…)』

クワトロ『カミーユ!敵を駐留部隊と挟み撃ちにする!私に続け!』

カミーユ『わかりました!』

ジェリド『させるかぁぁ!!!』

マウアー『ジェリド!!その機体では無理よ!下がって!』

マウアー『貴方はシロッコに当て馬に使われたのよ!』

ジェリド『それが任務だ!』

クワトロ『堕とさせてもらう!!!』

マウアー『ジェリド!!危ない!!』

再度クワトロの駆る百式がジェリドのガブスレイに銃を向ける

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月01日 (金) 17:20:26   ID: VbdoKCu7

ここで終わって良いのかよ?!
死んだ人が喜ぶのかよ?!!!

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