エレン「お前何言ってんだ?」
アニ「あんた調査兵団に行くんだろ?」
エレン「そうだけど」
アニ「そしたら女と付き合う機会もないだろうしそのまま死んじまうかもしれないだろ?」
エレン「まぁそうかもしれないけどさ…」
アニ「それじゃあいくらあんたでもちょっと可哀想かなって思ってね」
エレン「だからってお前とキスしなくちゃいけない理由にはならないだろ」
アニ「…」
アニ「そうだよね、悪かったよ…変なこと言って…」シュンッ
エレン「…」
アニ「…」
エレン「あぁもう!」
エレン「だからってお前とキスしなくちゃいけない理由にはならないだろ」
アニキ「…」
アニキ「そうだ、悪かった…変なこと言って…」シュンッ
エレン「…」
アニキ「…」
エレン「あぁもう!」
ミカサ「……ライナー、少しいい?」
アニキ「…おう」
エレン「目つぶれ」
アニ「え?」
エレン「いいから目つぶれよ」
アニ「う、うん…」スッ
エレン「…」チュッ
アニ「!」
エレン「ほ、ほら!これでいいだろ!もう俺は行くからな!」
アニ「…意気地無し」
アニ(おでこにキス…今はこれでいいかな)
休日
市街
エレン「……おっ」
アニ「……」
エレン「おぉ、こんなところで会うなんて偶然だな!」
アニ「……」スタスタ
エレン「ってオイ!無視すんなよ!」
アニ「なに?」
エレン「なにじゃねぇだろ!仲間が声をかけてんのに無視はないだろ普通」
アニ「……そうだね、悪かったよ。それじゃ」スタスタ
エレン「おう」スタスタ
アニ「……」ピタ
アニ「……なんでついてくるの?」
エレン「ん?ダメか?せっかくの休日なんだし一緒にふらつこうぜ」
アニ「……」
アニ「まぁ別に構わないけどさ」
…………
エレン「お、もうこんな時間か」
アニ「……」
エレン「まったく、なんで休みってのはこんなに早く終わっちまうんだろうな」
アニ「……」
エレン「明日からはまた訓練だな……ってオイ、聞いてんのかアニ」
アニ「あぁ、聞いてるよ」
エレン「本当かよ。ったく……」
エレン「どうする?そろそろ兵舎に戻るか?」
アニ「そうだね……」
アニ「……」
アニ「……いや」
エレン「?」
アニ「ちょっと付き合ってよ」
休日夕方
公園
エレン「へぇ!トロスト区にこんな公園があったなんてな!」
アニ「休日はいつもここで過ごしてるの」
エレン「そうなのか!あれ?ってことは……」
アニ「ああ、今日もここに来るつもりだったよ」
エレン「うげっ!……まぁ、なんだ、その……悪かったな。無理矢理付き合わせちまって」
アニ「別にいいよ」
アニ「……私も退屈しなかったし」
カァ……カァ……
アニ「……」
エレン「……」
アニ「……」
アニ「……あんたはさ」
エレン「ん?」
アニ「あんたはさ……、なんで戦うの?」
アニ「なんのためにあんなくだらない訓練を必死になってやっているの?」
アニ「…………私にはわからない。理解できない」
エレン「……なんで戦うのか、か」
エレン「……」
エレン「ひとつは、憎しみ」
エレン「あいつらは母さんを喰った。アルミンのおじいちゃんを喰った」
エレン「俺はあいつらを絶対に許さない」
アニ「…………そう」
エレン「そしてもうひとつは、俺とアルミンの夢を叶える為だ」
アニ「夢?」
エレン「ああ。俺とアルミンはいつの日か巨人を駆逐して外の世界に旅に出るんだ」
エレン「昔アルミンが見せてくれた本に載ってた、外の世界をこの目で確かめるんだ」
エレン「だから俺は巨人を倒さなければならない。戦わなければならい」
エレン「絶対に、俺は絶対に諦めない」
エレン「……これが、俺の戦う理由さ」
アニ「……そう」
アニ「……ふふっ」
エレン「はぁっ!?なに笑ってんだよお前!!」
アニ「ああ、悪いね」
アニ「あんたの話があまりにも突拍子のない夢物語だったものだからさ……ふふっ」
エレン「てめぇ!馬鹿にしてんのか!!」
アニ「……でも」
アニ「悪くはない」
アニ「……私はそう思うよ」
アニ「……」
アニ「あんたは眩しい」
アニ「あんたみたいな人間になりたいとは思わないけど」
アニ「…………たまに、羨ましく感じるよ」
エレン「……喜んでいいのか怒っていいのかわからないな」
アニ「両方で構わないよ」
エレン「そういうアニはなんで憲兵団を目指してんだ?」
アニ「前にも言ったと思うんだけどね……。死にたくないからに決まってる」
アニ「死にたくないからこそ、退屈な座学や格闘訓練を我慢してこなしてるんだよ。安全な憲兵団に入りたいから」
エレン「……へぇ」
エレン「……なぁアニ、前々から気にはなってたんだけど、それ嘘だろ」
アニ「ッ!?」
エレン「まずさ、お前が散々退屈だ退屈だって言ってる格闘訓練、アレ結構楽しんでるだろ」
アニ「……私は人をいたぶるのが大好きなサディストだって言いたいのかい?」
エレン「いいや、違うさ。そんなわけないだろ」
エレン「……お前の格闘技、親父さんに教えてもらったもんなんだよな?」
エレン「格闘訓練をしている時のお前は、なんというかこう生き生きとして見える」
エレン「好きなんだろ?親父さんから教えてもらった格闘技がさ」
エレン「大好きなんだろ?親父さんのことがさ」
アニ「……」
アニ「……さぁね」
エレン「素直じゃないヤツだな」
エレン「格闘技のくだりもそうだけどさ、お前って結構わかりやすいんだよな」
アニ「……あんたに言われるとなんだか腹が立つね」
エレン「そうそう。腹が立つと言えば、いつだったかライナーに馬鹿にされた時なんかわかりやすいくらい怒ってたよな」
アニ「……くっ」
エレン「……まぁ、だからさ、俺にはなんとなくわかるんだよ」
エレン「お前が嘘をついてるかそうでないかってのは」
アニ「……」
エレン「で、そんな俺に言わせれば」
エレン「死にたくないから憲兵団に入りたいってのもあながち嘘じゃない。でも本当の理由は別にある」
エレン「そんなとこだろ?」
アニ「………………まぁ、そうだね。あんたの言うとおりだよ」
エレン「へへっ!どうだ!」
アニ「……ああもう腹が立つ」
エレン「というわけで、本当のところはどうなんだ?」
アニ「なにがさ」
エレン「とぼけるなよ。お前が憲兵団に入りたい理由だよ」
アニ「……」
アニ「それは……」
アニ「私が……」
『アニ…俺が間違っていた…』
アニ「憲兵団に入りたい……」
『今更俺を許してくれとは言わない』
アニ「本当の……」
『けど…』
アニ「理由……」
『一つだけ……一つだけでいい』
アニ「……それは」
『頼みがある…』
『この世のすべてからお前が恨まれることになっても…』
『父さんだけはお前の味方だ』
『…だから』
『約束してくれ』
アニ「父さんと」
アニ「約束をしたから」
エレン「……そうか」
アニ「……薄い反応だね」
エレン「え?『マジで!すっげぇ!』とか言った方が良かった?」
アニ「蹴り飛ばすところだったね」
エレン「おぉ怖い怖い」
アニ「……」
エレン「……」
アニ「……」
エレン「……」
アニ「……正直」
エレン「ん?」
アニ「……お父さんとの約束は守りたい」
アニ「……それでも」
アニ「……正直、わからなくなってきた」
エレン「……」
アニ「このまま憲兵団を目指すべきかどうか迷ってるんだ」
エレン「……」
エレン「……そっか」
エレン「……そういえばさ」
アニ「?」
エレン「この前教官が言ってたんだ」
エレン「兵士たちが戦う理由について」
エレン「今俺達が話してた内容そのまんまの話だ」
エレン「戦いに赴く前のヤツらは、人類のためだとか残された家族を守るためだって回答するヤツが多いらしい」
エレン「そして、実戦を経験した兵士達の間で最も多かった回答は……」
エレン「共に戦う仲間を死なせたくない」
エレン「だそうだ」
アニ「……」
エレン「俺達はまだ訓練兵の身だけど、なんとなくわかるよな」
エレン「毎日苦楽を共にしてきた仲間たちを死なせたくない。そう思うだろ?」
アニ「……」
アニ「……あぁ」
アニ「でも、どうして急にそんな話を」
エレン「あ、あぁ。いや、その、アレだよ」
エレン「なんていうか、その、俺が守りたい大切な仲間の中には勿論お前も含まれているわけで」
エレン「お前が憲兵団に行くっていうなら俺はお前を応援するし、俺と同じ調査兵団に行くっていうなら俺はお前を絶対に死なせないし……」
エレン「つまりアレだよアレ!」
アニ「…………悩んでいる私を励まそうとしたと?」
エレン「いやもう少しオブラートに包んだ言い方してくれよ」
エレン「お前はいつも不機嫌そうな顔してるけど、内面は結構乙女だからな」
アニ「……なにを馬鹿なことを」
エレン「は?いつだったか『もっと乙女扱いしろー』だとかなんとか騒いでたじゃねぇか」
アニ「あぁ、そんなこともあったね」
アニ「……」
アニ「……ふふっ」
エレン「……ん?なに笑ってるんだ?」
アニ「なんでもないよ。なんでも」
アニ「悩み解決とまではいかなくても、少しは気が楽になったよ」
エレン「アニは変に繊細なところがあるからな。あんまり思い詰めるなよ?」
アニ「ああ、気をつけるよ」
エレン「はっ、どうだか」
アニ「……まぁ、ありがとね」
エレン「礼を言われるようなことじゃねぇよ」
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