ふわふわと浮かぶ光の球が、私の周りを踊るように揺らめいている。
色とりどりの塊は常に入れ替わり、似ているようでどこか違う。
これが夢なのは分かっていた。
最近よく見るのだ。私は古びた、でもどこか懐かしい建物のソファに腰掛けて、なんだか分からない四角い箱を片手に楽しそうにしている。
姿形は私、でもそれを見る別のところにいる私。
向こうの私にはたくさんの友人がいて、笑いあって、そして……
……とても、羨ましい。
そう思わずにはいられなかった。私もそちらに行きたいと手を伸ばしても、決して触れることはできない。
夢の終わりは同じ。二つのリボンが特徴的な、可愛らしい女の子。
私は、あの子を知っている。
どこかで、会ったことがある気がするのだ。
向こうの世界の私が口を開く。
おはよう……春……
姿形は私、でもそれを見る別のところにいる私。
向こうの私にはたくさんの友人がいて、笑いあって、そして……
……とても、羨ましい。
そう思わずにはいられなかった。私もそちらに行きたいと手を伸ばしても、決して触れることはできない。
夢の終わりは同じ。二つのリボンが特徴的な、可愛らしい女の子。
私は、あの子を知っている。
どこかで、会ったことがある気がするのだ。
向こうの世界の私が口を開く。
おはよう……春……
「チハヤ、ここにいたのね」
頭上から声が落ちてくる。
私は顔にかかっていた本をどけて声の主を探した。
「なによキョロキョロしちゃって」
そこには栗色の髪を優雅に流した、見るからに気位が高そうな少女が立っている。
彼女の名前は、確か以前自己紹介で聞いていたはずだったが、一体なんだっただろうか。
「このイオリさまが呼びに来るなんて、本当に珍しいのよ」
そうだ、イオリだ。
この学院に転入してすぐ、私を派閥とやらに勧誘してきたことを思い出す。
確か、あの時は断ってしまって、しばらく敵意のこもった視線を感じていたと思っていたが。
「イオリ?あなたがどうして」
「仕方ないでしょう、今日は響の昇級がかかった大切な試験があるんだから」
「応援は多い方がいいでしょう?」
「そう……」
「嫌だとは言わないわよね」
「あんたがいくら周りに興味がないって言っても、わたしたちは同じ”アイドル”を目指すライバルで、仲間なんだから」
イオリは照れも衒いもなく、爽やかにそう言い切った。
こういう彼女の姿は単純に尊敬してしまう。まだ表面的なことしかわからないものの、イオリは集団の中心であるというプライドがあり、その役割をキチンと果たし
ている事は感じていた。
派閥といってもアイドルを目指すこの学院には大人数の宿舎などもなく、また才能に大きく頼る部分があるため生徒の数もたかが知れている。
その中でも、派閥は大きい。派閥には様々な便宜が図られるのが学院の通例であるらしく、イオリを頼りに集まる人間も少なくなかったようだ。
……もっとも、通常寮区を離れたこちらに来るためには厳しい訓練と努力が必要になるため、派閥の一部の人間がいるに過ぎないが。
ヒビキもイオリ派閥の人間だ。
長い黒髪を一つにくくった健康的な少女で、確かアイドル適性は召喚になっていたはず。
私はまだここの生徒を把握し切れていないが、この子はある意味目立つ存在なので知っていた。
それはいつも肩に乗ったネズミ、名前はハム……レット?だったような気がする。
彼女が召喚できる中ではかなり小型であり、あのネズミが何の仕事をしているのかは分からない。
しかし、みだりにアイドル能力を使うことができない寮の中でも召喚されつづけているのだ。私でなくても覚えてしまうと思う。
「ヒビキさん、候補生になれるのかしら」
「そんなのわからないわよ」
イオリは掌で火球を弄びながらアッサリとそう言った。
「わたしたちは皆、アイドルを目指してここにいる」
「もちろんわたしだって誰にも負けないように努力しているし、それを辞めるつもりもないわ」
「でも、それと人を応援することはまた別の話よ」
「ヒビキが候補生に選ばれたら、悔しい気持ちだってきっとあると思うけど」
「でも、祝福するくらいの懐は持っているつもり」
「だから、誰がアイドル候補生になるかなんてあえて気にしようとは思わないわよ
」
強い力を秘めた瞳が、私を捉えて離さない。
「わたしたちはまだ卵、候補生に選ばれたところで、次はアイドルになるために新しい訓練や努力をする生活は変わらない」
「だから、わたしはさっさと自分がアイドルになって皆をここから解放するわ」
火球が指先でくるりと回転すると、小さな爆発と共に消滅した。
「それで?あんたの返事を聞いていないんだけど?」
「……」
どうしようか。私自身誰かと一緒に物事を進めるのはあまり好まないし、普通科の学校にいた頃はずっと一人だった。
アイドル能力に目覚め、一般寮を飛ばしてここに来たが、ここでも特に昔と変わるつもりはない。
「いいわ、行きましょう」
それでも、気付いたらそう答えていた。
「ふふん、それ以外の答えだったら丸焦げになってもらうところだったわ」
イオリが不敵な笑みを浮かべる。私は木の幹に立てかけてあった水に触れた。
「それが、あんたの能力なのね」
分離させる、それが一番わかりやすい表現になるのだろうか。
空間と空間を分離する、空気と水部分を分離して水筒のように水の塊を持ち運ぶ、使い方は様々ある。
「割と使いいこなしているのね、来たばかりのくせに」
「……ええ、以前から少し使っていたものだから」
イオリはそれ以上何も言わず、視線でついて来いと示した後に歩き始めた。
方向は中庭だろうか、試験なんてまだ関係ないと興味を持っていなかったので、会場も分からない。
イオリの後について、私も木のしたから出る。
桜の花が、少し散り始めていた。
「そうね、一緒に応援してもいいかしら」
それでも、気付いたらそう答えていた。
「ま、それ以外の 答えだったら丸焦げになってもらうところだったわ」
不敵に笑うイオリを背に、私は木の幹に立てかけていた水を元に戻した。
「……へぇ、それがあんたの能力なのね」
分離する、というのが一番わかりやすい表現になるのだろうか。
空間、物、なんであっても私の”壁”は分離してしまう。
応用すれば水自体を水筒のように持ち運ぶこともできる。なかなか便利だと思うが、派手な能力ではない。
「来たばかりのくせに、割と使いこなしているじゃない」
「……」
初めて使うブラウザだからか書き込みエラーが大変なことに。
劇場版アイマスの眠り姫がどんな話か書いて行くだけです。特にネタバレとかもないでしょう。
それでは、楽しめそうだと思う方はこれからよろしくお願いします。
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