『スマイルプリキュア レインボー!』 スペシャル (264)

~ ごあいさつ ~

こちらは、別スレで展開中の『スマイルプリキュア!』第2期想定二次ストーリー、
『スマイルプリキュア レインボー!』(以下『レインボー!』)の番外編となっております。
投稿の作法や文体などに至らない点がありましたら、随時ご指摘いただけますと幸いです。


また、この作品は本編(『レインボー!』) の設定・ストーリーを大部分踏襲しているため、
本作だけお読みになるとワケがわからないかもしれません。

もし興味を持っていただけたなら、本編も合わせてお読みください。


本編のスレはこちら

・Part 1(第1話 ~ 第11話)
 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)

・Part 2(第12話 ~ 第20話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

・Part 3(第21話 ~ 第29話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373151336/)

・Part 4(第30話 ~ 第38話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379287447/)

・Part 5(第39話 ~ )
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379287447/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387890265

ただ、「本編見てくれ」だけではなんなので、軽く本編の内容について解説させていただきます。

※読み飛ばし可


■原作『スマイルプリキュア』との相違点

・みゆき達は中学3年生に進学しています

・ロイヤルクイーンが消えたため、デコルや、ペガサス・フェニックスの力、ミラクルジュエルといった原作の力は全て消失しています
 代わりに、みゆき達は各々メルヘンランドのパートナー妖精達にデコル化してもらうことで、その力を借りてプリキュアに変身します

 以下が各キャラクター別のパートナーになります。

 みゆき - キャンディ
 あかね - ウルルン(元 ウルフルン)
 やよい - オニニン(元 アカオーニ)
 なお - マジョリン(元 マジョリーナ)
 れいか - ポップ

 ※以下、オリジナルキャラクター
 はるか - ペロー(長靴ネコの妖精。詳細は後述)
 ゆかり - マティエール(妖精ではなく、別の国の王女。詳細は後述)

■『レインボー!』オリジナルキャラクターについて

こちらでは、『レインボー!』で追加された、本作オリジナルキャラクターについてご紹介します

※読み飛ばし可


・藍沢 はるか/キュアノーブル

高校2年生。れいかのいとこ(れいかの父の妹の娘)。
さっぱりとした性格のお姉さんで、小さい頃からのれいかの憧れの人(という設定)。
機転や度胸で、公私にわたってみんなのバックアップをしたりする。

また、青木家の人々から教わって、合気道・柔道をたしなんでいるため、生身でも大分強い。

キュアノーブルは、水を操るプリキュア。
本来持っている格闘術に加え、変幻自在に形を変える水の力を操るため、戦闘能力はかなり高い。



・ペロー

メルヘンランドの長靴ネコの妖精で、はるかのパートナー。原作『スマイル』の24話で登場した妖精と同一人物(という設定)。
好奇心旺盛で、なんにでも興味を示しがちな男の子。

キレイで優しいはるかが大好きで、よく甘えていたりする。



・木下 ゆかり/キュアヴェール

中学1年生。両親は共働きで、鍵っ子。
大分気が弱く臆病なため、みゆき達と知り合う前はクラスメイトにいいように使われていた。

しかし、マティやみゆき達と出会うことで少しずつ成長。
だんだん言いたいことも言えるようになってきて、今に至る。

キュアヴェールは、防御を得意とするプリキュア。というか、防御しかできない。
身体能力が低いため、戦闘能力はからきしだが、どこにでも張れる強固な葉の形の盾 "ヴェール・カーテン" が使え、
主に防御面でのバックアップを行う。



・マティエール(愛称:マティ)

メルヘンランドと深い関わりを持つ(という設定の) 絵の国・"ピクチャーランド" の王女。
姿は普通の人間と同じで、中学1年生くらいの少女。七色ヶ丘中学校に転入していて、ゆかりとは同級生。
天真爛漫かつ自由奔放な性格で、学校に転入した当時は突飛な行動でみゆき達に迷惑をかけたりもした。

絵の国の王女、ということもあり、
"どんな絵も一瞬で描ける" "短時間なら絵を外に出して活動させることができる" "絵画用の道具を自在に呼び出せる" など、絵に関する能力を持つ。

あと、こちらの作品には本編と異なるルールがいくつかあるので、
先にそちらの説明をさせていただきます。


・『レインボー!』本編と番外編はパラレル設定
 :世界観やストーリー展開はほぼ同じですが、あくまで別の物語としてお楽しみください

・原作劇場版『映画 スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』の要素あり
 :"原作劇場版を経た後の話" という体で話が進むため、こちらをご覧になってから読まれた方がいいかもしれません


長くなりましたが、前置きは以上です!
それでは、作品本編を開始いたします!

~ 早朝 星空家 みゆき自室 ~

みゆき(ナレーション)『わたしは、星空 みゆき。七色ヶ丘中学校に通う、絵本が大好きな中学3年生です』


みゆき(ナレーション)『わたしの家には、家族の他に、ふたりの友達がいます』

キャンディ「みゆき、急ぐクル! 待ち合わせにチコクしちゃうクルぅ!」

みゆき「わ、わかってるよぉー! で、でも、急げば急ぐほど、むむ……! 髪がうまくまとまらなくって……!」

キャンディ「みゆき、ガンバるクル! フレーっ、フレーっ、み・ゆ・き!」

みゆき「キャ、キャンディ、気持ちはうれしいけど、気が散るから少し静かにしててーっ!」


みゆき(ナレーション)『友達のひとりは、この小さな妖精さん・キャンディ』

みゆき(ナレーション)『絵本の国・メルヘンランドからわたし達の世界を守るためにやってきて、今はわたしの家に住んでいます』

みゆき(ナレーション)『すごく元気で明るくて、いっしょにいてとっても楽しい、わたしの大切な友達です』


みゆき「ここをこうして、っと……、……できたぁっ! やっと髪がまとまったよぉ!」

キャンディ「じゃあ、早く準備するクル! みんなを待たせちゃうクル!」

みゆき「うんっ!」

みゆき「よぉーし、準備OK! それじゃあ、しゅっぱーつ――」


みゆき「(ピタッ)」

キャンディ「クル? みゆき? どうして急に止まるクル?」

みゆき「あ、うん……。たまにはいいかな、って思って……」

キャンディ「何がクル?」


スッ


キャンディ「あ……! 今、みゆきが本棚から取った、その本……、もしかして……!」

みゆき「うん。だって、今日はハッピーな日だもん! せっかくだから、いっしょにお出かけしたくなったの」

みゆき「それじゃ行こっか、ニコちゃん」ニコッ


みゆき(ナレーション)『そして、もうひとりの友達はこの絵本のキャラクターの女の子・ニコちゃん』

みゆき(ナレーション)『ニコちゃんは、自分の絵本の世界に住んでるふしぎな女の子』


みゆき(ナレーション)『去年、ニコちゃんが自分の絵本から飛び出して、わたし達を絵本の中の世界に招待してくれたことがありました』

みゆき(ナレーション)『その世界は、色んな絵本のお話が混ざったとっても楽しい世界で、わたしや友達のみんなは大はしゃぎでした!』

みゆき(ナレーション)『でも、ニコちゃんは実はわたしのことをキラっていました……』

みゆき(ナレーション)『"破けた絵本のページの代わりに、わたしが続きを描いてあげる" という、小さい頃にした約束を、わたしが忘れてしまっていたからです』

みゆき(ナレーション)『約束を忘れたまま笑顔で楽しむわたしを見て、ニコちゃんはわたしどころか、笑顔まで大キライになってしまっていました……』


みゆき(ナレーション)『そんなニコちゃんに謝りたいと思ったわたしは、友達みんなの助けを借りて、ニコちゃんにせいいっぱい謝りました』

みゆき(ナレーション)『おかげで、ニコちゃんの暗い心は晴れて、元通り、ニコニコ笑顔でわたしと仲直りしてくれたのです』


みゆき(ナレーション)『その時、ニコちゃんは絵本の中に戻ってしまい、あれから一度も現れていません』


みゆき(ナレーション)『でも、絵本の中でニコニコ笑ってみんなを明るくしているニコちゃんは、今でもわたしの大切な……友達です』

みゆき「お待たせ! 行こっ、キャンディ!」

キャンディ「クルぅっ!」


みゆき(ナレーション)『そんな大切な友達だから、今日はニコちゃんといっしょにお出かけしたくなったのです』

みゆき(ナレーション)『だって、今日はみんなにとって、すっごくハッピーな日!』


みゆき(ナレーション)『そう、12月24日……、クリスマスイブだからです!』




スマイルプリキュア レインボー! スペシャル

「明日へのメリー・クリスマス!」



~ なないろ幼稚園 あかぐみ教室 ~

ガラッ


みゆき達「メリー・クリスマースっ!」

園児達「わぁーっ!」


園児の少女・あけみ「えほんのおねえちゃんたち、サンタさんみたーい! かわいいー!」

みゆき「ありがとーっ! ……じゃない。おほんっ、今日のわしは "絵本のお姉ちゃん" ではないのじゃ。みんなを喜ばすためにやってきた、サンタさんなのじゃ!」

園児の少女・あけみ「じゃあ、えほんのおねえちゃんサンタだ!」

みゆき「あ、うん……、それでいいや。あはは……」


みゆき(ナレーション)『ここは、なないろ幼稚園。前に、私が書いた絵本の朗読会をさせてもらったこともあるところです!』

みゆき(ナレーション)『それからも時々遊びに来ていたんですが、そんな時、先生さんから "クリスマスにサンタをやってもらえないか" とお願いされました』

みゆき(ナレーション)『子ども達が喜んでくれるなら、もちろんオッケー! そう思った私達は、みんなでサンタ役をやることにしたのです!』

あかね「ほいほーい、並んでなー。良い子にはサンタさんからお菓子あげんでー!」


やよい「チョコがいいかな? アメがいいかな? 好きなのを選んでね!」


なお「ほーら、割り込んだりしない! 順番に並んで! だいじょうぶ、お菓子は逃げないよ!」


れいか「はい、どうぞ。味わって食べてくださいね」


はるか「……お! アタリだよ! やったね! じゃあ、特別にもう一個プレゼント!」


ゆかり「あ……、そ、そんなに押さないで……。ちゃ、ちゃんとあげるから……!」

マティ「ふふふ、ゆかりちゃんもみなさんといっしょに慌ててしまって……、なんだか面白いですわ」

ゆかり「マティちゃん……、笑わないでよぉ……」


ワイワイワイワイ


幼稚園の先生A「ありがとうね、星空さん。みんな、星空さん達のこと大好きだから、すごく喜んでくれてると思うわ」

みゆき「いえいえ! 私達もみんなのこと大好きですから! みんなの笑顔が見られるならガンバっちゃいます!」

みゆき「はい、どうぞ! それじゃ次の人――」


暗い園児の少女「…………」ポツン…


みゆき「……?」

キャンディ(デコル)「どうしたクル、みゆき? 手が止まっちゃってるクル」

みゆき「あ、うん……。あそこ、教室の隅っこにいる子、なんだか楽しくなさそう……、どうしたのかな……」


スタスタスタ


みゆき「こんにちは。どうしたの、そんなところで一人でいて。みんなといっしょにお菓子食べない? 楽しいよ!」

暗い園児の少女「……いらない……」

みゆき「え……? お菓子、あんまり好きじゃないのかな? でも、ほら! こんなにいっぱい種類があるよ! どれでも好きなのもらっていいんだよ?」

暗い園児の少女「いらないよ! ニセモノのプレゼントなんていらない!」

みゆき「……!? ニセモノ……」


シーーーーン…


幼稚園の先生B「お、おとめちゃん! せっかくお姉ちゃん達がプレゼントを持ってきてくれたのに、なんてことを……」

園児の少女・おとめ「こんなニセモノのプレゼントもらっても、うれしくないもん」


園児の少女・おとめ「……それに、みんなしらないの? ホントはね、サンタさんなんていないんだよ?」

園児の少女・おとめ「それなのに、みんなクリスマスだ、サンタさんだ、プレゼントだ、っておおさわぎして……、バカみたい。そんなの、ぜんぶウソなのに……」

園児の少女・おとめ「あたし、クリスマスなんてキライ……! ウソばっかりの日だから、キライ……!」

園児の少女・おとめ「どうせ明日になったって、プレゼントなんてもらえないんだもん……! ガッカリするだけだもん……!」


園児の少女・おとめ「クリスマスなんて……、明日なんて、こなきゃいいんだ!」


タタタタタッ…


幼稚園の先生B「あ! 待って、おとめちゃん!」タタタタタ…


みゆき達「…………」ポカーン…


みゆき「ど、どうしちゃったんだろう、あの子……。逃げるみたいに出てっちゃった……。私、何かマズいこと言っちゃったかなぁ……」

幼稚園の先生A「……ごめんなさいね。せっかくみんながプレゼントを持ってきてくれたのに……」

幼稚園の先生A「あの子は "小原(おはら) おとめ" ちゃん」

幼稚園の先生A「普段はとっても元気で明るい子なんだけど、自分で言ってた通り、クリスマスがキライみたいで……。クリスマスが近づくにつれて不機嫌になっちゃってるの」

あかね「えー、クリスマスキライな子なんておるんですか? うちなんか、小っさいころは "わーい! プレゼントもらえんでー!" って大喜びしとったもんですけど……」

幼稚園の先生A「……そのプレゼントが問題だったのよ……」

やよい「それって……?」


幼稚園の先生A「おとめちゃんのご両親は二人ともお仕事で忙しくって、なかなか家に帰れないの。だから、ウチの幼稚園でも遅くまで預からせてもらうことが多いのよ」

ゆかり「……!」

ゆかり(親がいなくてひとりぼっち……。わたしに、似てるかも……)

幼稚園の先生A「それでも、さすがにクリスマスの日だけはおとめちゃんのために早く帰ろうと、ご両親もガンバったそうなのね」

幼稚園の先生A「……でも、都合悪く二人とも大切なお仕事が入ってしまって、その日はおうちに帰れなかったそうなの……」


幼稚園の先生A「それで、12月25日の翌朝……。期待に胸を膨らませたおとめちゃんが見たのは、何もない自分の枕元だったの……」

幼稚園の先生A「ご両親が帰れなかったから、クリスマスプレゼントをあげられなかったのね……」

みゆき達「……!」

幼稚園の先生A「それで "サンタさんなんていない" ってことを知っちゃったおとめちゃんは、クリスマスがキライになってしまったの……」


なお「……そっか。だからさっきあんなにツラそうだったんだ……」

れいか「クリスマスプレゼントは、子供にとってはとても大切な喜び……。それがもらえなかった悲しみは……、大きかったことでしょう……」

はるか「自分だけプレゼントをもらえなかったのに、周りのみんなはもらえて、今年も楽しそうに大はしゃぎ……。不機嫌にもなっちゃうか……」


みゆき達「…………」

幼稚園の先生A「ごめんなさい、あなた達まで暗い気持ちにさせてしまって」

幼稚園の先生A「おとめちゃんのことは私達でなんとかするから! あなた達は他の子供達を楽しませてあげてもらえないかな」

みゆき「……わかりました!」


園児の少女・あけみ「ねえねえ! えほんのおねえちゃんサンタさん! おねがいがあるのー!」

みゆき「うんっ、いいよ! 何かな?」

園児の少女・あけみ「えほん! えほん読んで! おねえちゃんのえほん!」

みゆき「あけみちゃん、ホントに絵本好きなんだね! いいよ! うーん、何にしようか――、……あ」

みゆき「それじゃ、とっておきの絵本読んであげる!」

園児の少女・あけみ「とっておき? なになに!?」

みゆき「うん、ちょっと待って、カバンから出すから……」ゴソゴソ


みゆき「……これだよ! 『にこにこニコちゃんと魔王のお城』!」

園児の少女・あけみ「えっ! そのおはなししらない! よんでよんで!」

みゆき「うん! それじゃ、はじまりはじまりー!」

園児の少女・あけみ「わぁーい!」パチパチパチ

~ 数時間後 七色ヶ丘市 なないろ幼稚園前 道路 ~

幼稚園の先生A「みんな、今日は本当にありがとう! 子ども達も喜んでくれてたわ!」

みゆき「いえいえ、お安いごようです!」

幼稚園の先生B「約束では明日も来てくれることになってるけど……、大丈夫かしら?」

みゆき「もちろんです! またサンタになって、みんなにハッピーを届けに来ます!」

幼稚園の先生A「ありがとう! それじゃまた明日、よろしくね!」

みゆき達「はーいっ!」

~ 七色ヶ丘市 帰り道 ~

スタスタスタ


あかね「……いやー、それにしても子ども達みーんなパワフルやなぁ……。めっちゃ疲れてもーたわ……」

なお「そう? あたしは平気だけど?」

ゆかり「なおセンパイは、小さい兄弟がたくさんいるんですよね……。だから平気なんじゃあ……」

やよい「そう考えると、なおちゃんってスゴいなぁ……。わたしももうヘトヘトだよ……」

なお「まだまだだなぁ、みんな!」


はるか「でも、何だかんだでみんなも楽しそう。いいクリスマスイブになったね、みゆきちゃん」

みゆき「……そう、ですね」

はるか「……? みゆきちゃん、どうしたの? 幼稚園出た時はあんなに元気だったのに……」

れいか「もしかして、先ほどのおとめさんという子のことで……?」

みゆき「うん……。やっぱり、気になっちゃって……」

みゆき「確かに、子どものみんなにとって、クリスマスプレゼントってすごく大事なものだよ。わたしだって、小さい頃はうれしかったもん」

みゆき「それが自分だけもらえなかった、っていうのは、ホントにショックだったと思う……」


みゆき「……でも……」


園児の少女・おとめ(回想)『クリスマスなんて……、明日なんて、こなきゃいいんだ!』


みゆき「"明日が来なければいい" だなんて……、そんな風に思うのは、悲しいよ……」

みゆき「何とか……、何とかしてあげられないかな……!?」


ゆかり「……わたしも同じ気持ちです……。わたしも、あのおとめちゃんって子みたいに、家ではひとりぼっちのことが多いですから……」

なお「そっか……、ゆかりちゃんもお父さんとお母さんがお仕事であまりおうちにいないんだっけ……」

ゆかり「はい……。だから、あの子にはわたしと同じ思いをしてほしくないんです……」


あかね達「…………」

あかね「みゆきやゆかりの気持ちはようわかんで。うちかて何とかできるんならしたいわ」

れいか「ですが、これはあくまでおとめさんの家庭の事情。あまり、部外者の私達が首を突っ込むべきではないのではないでしょうか……」

やよい「おうちもわかんないし、わかっても、あたし達が押しかけるわけにもいかないし……。悲しいけど、わたし達にはどうにもできないよ……」

みゆき「……だけど……」

はるか「大丈夫だよ、みゆきちゃん! きっとご両親や先生達がおとめちゃんを喜ばせてくれるはずだから!」

なお「そうだよ! ここはおとめちゃんの周りの人たちに任せよう! ね?」

みゆき「……そうだね」

ゆかり「はい……」

なお「あ、あたしの家こっちだ」

れいか「私もです。今日のところはお別れですね」


はるか「それじゃ、ここで解散ってことにしようか」

やよい「はい! おつかれさまでした!」

あかね「ほななー、おやすみー」

マティ「ごきげんよう! また明日、お会いしましょう!」


みゆき「……うん、また明日!」

~ 夜 星空家 みゆき自室 ~

みゆき「…………」

キャンディ「みゆき……、やっぱりあの子のことが気になるクル?」

みゆき「うん……」


みゆき「……でも、みんなの言う通り、わたしが悩んでもしょうがないよね……」


みゆき「……ダメダメ、こんなハッピーな日に暗くなったりしちゃ! せっかくのハッピーも逃げちゃうよ!」

みゆき「明日も幼稚園に遊びに行くんだし、その時めいっぱいハッピーにしてあげよう! うん!」

キャンディ「クル……! みゆきにスマイルが戻ったクル! やっぱりみゆきはスマイルじゃないとダメクル!」

みゆき「そうだよね!」


みゆき「よぉーし、そうと決まったら寝るぞーっ! 明日はみーんなハッピーにするんだから!」

キャンディ「クルぅっ!」

みゆき「それじゃ、キャンディ。おやすみー」

キャンディ「おやすみクル!」

みゆき「……すー……すー……」

キャンディ「……クル……」


ニコの絵本『(パァッ…)』

~ 深夜 星空家 みゆき自室 ~

??「――き。――みゆき。起きて、みゆき」

みゆき「…………んん……? なに、キャンディ……、もう朝……? ……今、何時……?」


時計『(23:59)』


みゆき「まだ夜じゃなーい……。寝かせてよぉ……。……すぅ……すぅ……」

??「おねがい……! 起きて、みゆき……!」

みゆき「んんー、もう……、なんなのー……? お腹でも空いたの――」


みゆき「……え……?」

ニコ「起きて、みゆき」

みゆき「…………」


みゆき「……うそ……、ニコちゃん……?」

みゆき「な、なんでここに……? 夢かなんかかな……。(ギュウゥゥッ) ……痛い痛い! ほっぺたつねったらちゃんと痛い……」


みゆき「……夢じゃ、ないの……?」

ニコ「うん。わたしはここにいるよ、みゆき」

みゆき「……!」パァッ


みゆき「ニコちゃんっ!」ガバッ

ニコ「わっ、み、みゆき!? 急に抱きついて、どうしたの?」

みゆき「だって……、だって、会いたかったんだよ、ずっと……! ニコちゃんが絵本の中に帰ってから、もう会えないと思ってたのに……! だからうれしいの……!」

ニコ「みゆき……。わたしも、会えてうれしいよ」


ニコ「でも、ゴメン、みゆき。今はおしゃべりしてる時間はないの……!」

ニコ「おねがい、みゆき! 助けてほしいの!」

みゆき「え……? 助ける? ニコちゃんを? 何から?」

ニコ「それは――」


バリィィィィィンッ!


みゆき「わっ!? な、なに!? 窓ガラスが割れた……!?」

ニコ「来た!」


モミの葉の怪物「ファファファファーッ!」

みゆき「な、なにあれ……!? 手足の生えた、葉っぱのオバケ……!? あれがわたしの部屋に飛び込んできたの……!?」

ニコ「あれだよ、みゆき! あれがわたし達を追っかけてきてるの! おねがい、助けて! じゃないとタイヘンなことになっちゃう!」

みゆき「え? え? え? な、何がなんだかわかんないけど……、わかった!」

みゆき「キャンディ! キャンディ、起きて!」

キャンディ「んんー……? みゆき、何クルぅ……? まだ眠いクルぅ……。おなかでも空いたクルぅ……?」

みゆき「わたしとおんなじこと言ってる場合じゃないよ! プリキュアになりたいの! 起きて!」

キャンディ「プリキュアは眠いからお休みクルぅ……」

みゆき「だからそんな場合じゃ――」


モミの葉の怪物「ファーッ!」ガシャァンッ!


みゆき「わっ!? ……あーっ! パンチでわたしの本棚がメチャクチャに!」

キャンディ「ク、クル!? す、すごい音がしたクル……! 今の何クル……!?」


モミの葉の怪物「ファーッ!」


キャンディ「わーっ! なんかヘンなのがみゆきの部屋にいるクルぅ!」

みゆき「だから、あの葉っぱのオバケをやっつけたいの! キャンディ、行くよ!」

キャンディ「わ、わかったクル!」

キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」

パチンッ!

レディ!

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ハッピー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

ハッピー「だぁぁっ! ハッピー・パァーンチっ!」ブンッ


ドカァァァッ!


モミの葉の怪物「ファーッ!?」ヒューン…


ハッピー「やった! とりあえず葉っぱのオバケを部屋から追い出せた! ……けど……」


ゴチャァッ…


ハッピー「わたしの部屋メチャクチャぁ……! 後で直さなきゃいけないのかなぁ、これ……」

ニコ「だいじょうぶ! そっちは何とかなるから、今はあのオバケをおねがい!」

ハッピー「う、うん、わかった! とりあえず外に出よう!」


バッ

~ 星空家 庭 ~

ハッピー「よっ」ストッ

モミの葉の怪物「ファァーッ……!」

ハッピー「ここなら部屋よりは思いっきりやれる!」

キャンディ(デコル)「ハッピー! このオバケ、そんなに強くないクル! 一気にやっつけちゃうクル!」

ハッピー「うん、そうだね! よぉーし、行くぞー――」


モミの葉の怪物「……ファファッ……!」ニヤリ


ハッピー「……ん? あのオバケ、今、笑った?」

ニコ「! みゆき、上!」

ハッピー「え? 上?」


ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ


ハッピー「……! な、何あれ……。すごい数の葉っぱが、ウチに向かって落ちてくる……!?」


バササササササササササッ!


ハッピー「わっ!? は、葉っぱがどんどん庭に積もってく……!?」


モッサァァァァ…


ハッピー「お庭、葉っぱだらけになっちゃった……」

モミの葉の怪物B「ファーッ……!」ムクッ

モミの葉の怪物C「ファーッ……!」ムクッ


ハッピー「え……! 葉っぱが、起き上がって……!?」


モミの葉の怪物D「ファーッ……!」ムクッ

モミの葉の怪物E「ファーッ……!」ムクッ


キャンディ(デコル)「ど、どんどん起き上がっていくクル……!」

ハッピー「ま、まさか……、この葉っぱ全部……!?」


モミの葉の怪物達「ファァァーーッ!」


ハッピー「……す、すごい数になっちゃった……!」

キャンディ(デコル)「1、2、3……、10……、20……、もっといるクル!」


モミの葉の怪物A「ファファファッ……!」ニヤニヤ


ハッピー「さっきのオバケ、"どうだ、まいったか" って顔してる……」

キャンディ(デコル)「さっき "そんなに強くない" って言ったから怒ったクル……?」

モミの葉の怪物達「ファァァーーッ!」バッ!


ハッピー「わーっ!? い、いっぺんに飛びかかってきたーっ!?」

キャンディ(デコル)「ハ、ハッピー、逃げるクルぅ!」

ハッピー「に、逃げるって、どこへ!? 庭はもう葉っぱのオバケでいっぱいだよ!?」


モミの葉の怪物達「ファァァーーッ!」


ハッピー「わっ、わっ、わっ!? や、やられちゃうーっ!」

シャンシャンシャンシャンッ


ハッピー「……え? な、何か音がする……。近づいてくる……?」

キャンディ(デコル)「……! ハ、ハッピー! あっちの空を見るクル!」

ハッピー「そ、空?」


シャンシャンシャンシャンッ


ハッピー「え……、ええっ!? ソ、ソリが……、空を飛んでこっちに来る!」

ニコ「みゆきぃーっ! つかまってーっ!」

ハッピー「ニコちゃん!? い、いつの間に外に!? ソリに乗ってるの!?」

ニコ「早くーっ!」

ハッピー「う、うんっ!」


バッ!


モミの葉の怪物達「ファッ!?」


ドカドカドカドカッ!


モミの葉の怪物達「ファァァーーッ!?」


キャンディ(デコル)「やったクル! 葉っぱのオバケ達、自分達でぶつかりあったクル!」

ハッピー「た、助かったぁ……!」

~ 星空家 上空 ~

シャンシャンシャンシャンッ


ハッピー「……それにしても……」


ハッピー「……空飛ぶソリ」

ハッピー「……それを引くトナカイ」


ハッピー「……これって、もしかして……!」


ニコ「! みゆき! まだだよ!」

ハッピー「え? まだって――」


ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ!


モミの葉の怪物A「ファーッ!」

モミの葉の怪物B「ファーッ!」


ハッピー「わぁっ!? 葉っぱのオバケが飛んで追っかけてくる! あのオバケ、飛べるの!?」


モミの葉の怪物C「ファーッ!」

モミの葉の怪物D「ファーッ!」


ハッピー「……あ。でも、あのオバケ達、まとまって飛んで来る……! これならっ……!」

ハッピー「んんーっ……! 気合だ、気合だ、気合だぁーっ!!」


ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」バァァァァァァァッ!!

モミの葉の怪物A「!? ファファッ!?」


ブワァァァァァァッ!!


モミの葉の怪物達「ファーーーーッ!」


ドォォォォォォォォンッ!!


ハッピー「やったぁっ!」

キャンディ(デコル)「ハッピー、ナイスクル! いっぺんにやっつけちゃったクル!」

ニコ「……すごい……!」

ハッピー「このソリがわたし達を助けて、オバケを引き付けてくれたおかげだよ! ありがとう、ニコちゃん!」

ニコ「……うん!」


ニコ(……やっぱりプリキュアってすごい……! これならきっと何とかしてくれるはず……!)

ニコ(みんなのピンチを救ってくれるはず……!)

ハッピー「……じゃあ、ニコちゃん。落ち着いたところで、色々教えてくれない?」


ハッピー「この空飛ぶソリはなんなの?」

ハッピー「ニコちゃんを襲ってきた、あの葉っぱのオバケ達はなに?」

ハッピー「それに……」


ハッピー「そもそも、ニコちゃんがどうして私達の世界にいるの?」


ニコ「それは――」

老人の声「お嬢ちゃんや……。その話をする前に、まずどいてもらえんかのう……? 踏んどる踏んどる」

ハッピー「わっ!? あ、足元から声が……!? この足の下の赤いの、もしかして人!? ク、クッションかなんかだと……。すぐどきます!」バッ


ムクッ


老人の声「ふぅ……。ずっと踏まれとったのは、結構しんどかったわい」

ハッピー「ゴ、ゴメンなさい……。……って、えええっ!?」


ハッピー「あ、赤い服に赤い帽子……!」

ハッピー「ふさふさした白いおひげ……!」

ハッピー「でっぷりとしたお腹……!」

太った老人「お腹は余計じゃ。これでも気にしとるんじゃよ」


ハッピー「も、"もしかして" とは思ってたけど……、もしかして、本当に……!?」


ハッピー「サンタクロースさん!!?」

老サンタのセンド「いかにも! ワシがあの有名なサンタクロースじゃ! 名前は "センド" という。よろしくのう、お嬢ちゃん!」

ハッピー「……うそぉ……」

ハッピー「……でも、うれしい……! サンタさんってホントにいたんだぁっ! わぁぁぁ……!」キラキラ

老サンタのセンド「ほう……、お嬢ちゃん、ワシに会えてうれしいのかの?」

ハッピー「もちろんっ! わたし、絵本とか、メルヘンとか、そういうの大っっっ好きで、いつもホントのことだったらいいのにな、って思ってるんだもん!」

老サンタのセンド「ほほ、そうか。結構結構」

ハッピー「あ、話が途中になっちゃった。ねぇ、ニコちゃん、どうして本物のサンタさんがここにいるの? さっき聞いたことと一緒に教えてもらえないかな?」

ニコ「うん、わかったよ、みゆき」


ニコ「でも、その前にみんなを集めてほしいの。その後でちゃんと話すよ」

ハッピー「え? みんなって……?」

ニコ「それはもちろん……」


ニコ「スマイルプリキュアのみんなだよ!」

~ 日野家 あかね自室 ~

あかね「……すー……すー……」


コンッ コンッ


あかね「……すー……すー……」


コンッ コンッ


あかね「……ん……? ……窓ガラス、鳴っとるんか……? なんやねん……」ガバッ


みゆき「やっほー、あかねちゃん! 起きて起きて!」


あかね「……? ……窓の外で……、みゆきが空飛ぶソリに乗りながら……、こっちに手を振っとる……?」

あかね「…………」


あかね「……なんや、夢か……。寝よ……」バフッ


みゆき「って、あかねちゃーんっ! 夢じゃないんだって! 起きてよぉーっ!」

~ 黄瀬家 やよい自室 ~

やよい「よぉーっし、やるぞーっ! 漫画の続き、仕上げちゃなわないと!」

オニニン「やよい、ガンバりすぎじゃないオニ? 明日も幼稚園のサンタさんがあるんだから、今日くらいはゆっくりしてもいいオニ」

やよい「漫画を描くのに休みなんてないのだ! みんなが休んでる時こそ描かなきゃいけないのだ!」


やよい「……ねぇ、オニニン、今のどう? プロの漫画家さんっぽくなかった?」

オニニン「……まぁ、やよいが楽しそうだからいいかオニ。それなら、おれ様も手伝うから、一気にやっちゃうオニ!」

やよい「ありがとう、オニニン!」


コンッ コンッ


やよい「ん……? 窓ガラスから音が……?」


みゆき「やっほー、やよいちゃん! こんばんは!」


やよい「うぃっ!? み、みゆきちゃん!? な、な、なんで窓の外に!? ここ 4階だよ!?」

~ 緑川家 床の間 ~

ソロリ ソロリ


なお(ふふふ、なおサンタ登場……!)


けいた(なお弟・長男)「……すー……すー……」

はる(なお妹・次女)「……すー……すー……」


なお(みんなよく寝てる……。これから、プレゼントをあげるからね。喜んでくれるといいな)


なお(はい、けいた)

なお(はい、はる)

なお(はい、ひな)

なお(はい、ゆうた)

なお(はい、こうた)

なお(はい、ゆい……、は、まだ赤ちゃんだから早いか。もうちょっと大きくなったらね)

なお(はい、みゆきちゃん)


なお(…………)


なお「みゆきちゃん!? な、なんで窓の外に――」

みゆき(小声)「!? な、なおちゃん、しーっ! 大きな声出したら……!」

なお「……!」


ひな(なお妹・三女)「……すー……すー……」

ゆうた(なお弟・次男)「……すー……すー……」

こうた(なお弟・三男)「……すー……すー……」


なお(小声)「…………ほっ。みんな、起きなくてよかった……」

~ 青木家 れいか自室 ~

れいか「……すー……すー……」


スラッ…


れいか「……!」パチッ


れいか「(ガシッ) くせ者っ!」


ビュッ!


みゆき「……!?」


れいか「…………あ、あら? もしかして……みゆきさん……?」

みゆき「はぁーい、みゆきでーす……」


あかね「……な、なんや今のれいか……。起きた途端、あっという間に近くのホウキつかんで、柄でみゆき突こうとしたで……!?」

れいか「"女性の寝室に無断で入るような輩には容赦してはならぬ" と、おじい様から言われていまして……。障子が開いた気配がしたものですから、つい……」

やよい「……いつも思うけど、すごいおじい様だね……」

なお「それを実際にやっちゃうれいかもね……」

れいか「……お恥ずかしいところをお見せしました……。ごめんなさい、みゆきさん。大丈夫ですか?」

みゆき「う、うん……。だいじょうぶだけど、ビックリした……。ホウキ、当たるかと思った……」ヘナヘナ…

~ 藍沢家 はるか自室 ~

はるか「(シュッ シュッ) ……どう、ペロー君、気持ちいい?」

ペロー「はるかさんのおひざの上でブラッシング……。最高ペロ……。このまま寝ちゃいたいペロ……」

はるか「あはは、それだと私が動けなくなっちゃって寝られないよ。ほら、眠いならベッド行こう?」

ペロー「イヤペロー……。このままはるかさんといっしょにいるペロー……」

はるか「……もう、甘えん坊だなぁ……」


シン シン シン…


はるか「……あ、見てペロー君! 雪だよ! ……ホワイトクリスマスかぁ、ステキだね」

ペロー「うー……、雪は寒いからキライペロ……」

はるか「そんなこと言わないで見てごらんよ。ほら、キレイだよ? 白い雪がひらひら、って――」


みゆき「こんばんは、はるかさん!」ヌッ


はるか「うわぁっ!? み、み、みゆきちゃん!? なんで窓の外に!?」ガタッ

ペロー「(ドテッ) ふぐっ!? は、はるかさん、急に立たないでほしいペロ……。顔から落っこちちゃったペロ……」

はるか「あ、ごめん……」

~ 木下家 ゆかり自室 ~

ゆかり「…………」


ゆかり(……センパイ達はどうしようもない、って言ってたけど……、あのおとめちゃんって子……、なんとかできないかな……)

ゆかり(今日はお父さんもお母さんも家にいたから、わたしはみんなでパーティできたけど……、おとめちゃんは、できたのかな……。お父さんや、お母さんといっしょにいられたのかな……)


ゆかり(……まるで、マティちゃんや、プリキュアのセンパイ達に会う前のわたしみたい……)

ゆかり(広い家に誰もいなくって、一人ぼっちで……、……さみしくて……)

ゆかり(あんな小さい子にそんな思い……、してほしくないな……)

ゆかり(なんとか、してあげたいな……)


コンッ コンッ


ゆかり(……? 窓から音が……)


みゆき「こんばんは、ゆかりちゃん!」

ゆかり「え……!? み、みゆきセンパイ……!? どうして空を飛んで……、え……? え……!?」

みゆき「あはは……、ワケはこれから話すよ」


みゆき「それより、ゆかりちゃん。なんだかよくわからないんだけど、プリキュアの力が必要なんだって。いっしょに来てくれないかな?」

ゆかり「……あ、は、はい、わかりました……! それじゃあ、ふしぎ図書館に行ってマティちゃんを呼んできます……! キャンディちゃん、いっしょに行ってくれるかな……?」

キャンディ「わかったクルぅっ!」

~ 七色ヶ丘市 空き地 ~

あかね「いやー……、それにしてもビックリしたわ……」

ゆかり「はい……! まさか、ホントにサンタさんがいるなんて……」


やよい「それに……、ニコちゃんも……」

なお「前に会って、それっきりだったもんね……」

はるか「私はその子とは初対面だけど……、みんなのお友達なの?」

れいか「はい。絵本の国に住んでいる不思議な女の子です」

はるか「絵本の国……! そんなのもあるんだ……」


みゆき「さ、ニコちゃん。スマイルプリキュア、全員集合したよ」

みゆき「全部教えてほしいな。今、何がどうなってるのか」

ニコ「うん。わかったよ、みゆき。みんなもよく聞いてほしいの」


ニコ「だって……、このままだと、世界中のみんながピンチになっちゃうから……!」

みゆき達「え……!?」

老サンタのセンド「さて、それではここからはワシが、順を追って話そう」


老サンタのセンド「わしらが子ども達に配っている、クリスマスプレゼント。実はな、あれには、ある大切なヒミツがあるのじゃよ」

れいか「大切なヒミツ……?」


老サンタのセンド「サンタクロースのクリスマスプレゼントは、ただの贈り物ではないのじゃ」

老サンタのセンド「あのプレゼントには、ワシらサンタクロースが持つ "願いのパワー" が込められておるのじゃよ」

はるか「"願いのパワー" ……」

老サンタのセンド「その "願いのパワー" によって、子ども達に希望を与えているのじゃよ」

老サンタのセンド「さて、その "子ども達の希望" というのがとても大事なのじゃが……、だれか、時計は持っておるかの?」

あかね「あ。慌てて出てきたから腕時計しとらんかったわ……」

なお「あたしもだよ」

やよい「あ、でも、駅前におっきな時計があったよね? あれだったら、ここからでも見えるんじゃない?」

みゆき「それだ! ……でも、なんで急に時計の話をしたの?」

老サンタのセンド「時計を見てみぃ。何か、おかしなことに気がつかんか?」

みゆき「……? おかしなことって――」


駅前の時計塔『(23:59)』


みゆき「――え……!? うそ、なんで……!?」

あかね「ん? なんや、どないしたん、みゆき? 時計がなんかおかしいんか?」

みゆき「だ、だって……、ニコちゃんがわたしの家に来た時、23:59 だったんだよ……!」

みゆき「あれから、葉っぱのオバケと戦ったり、みんなを集めたりして、結構時間経ってるはずなのに……!」

みゆき「……もしかして……」

みゆき「あれから、ぜんぜん時間が経ってないの……!?」


老サンタのセンド「うむ、よう気付いたな、お嬢ちゃん。それこそ、クリスマスプレゼント――いや、"希望" という気持ちに秘められた、大事なヒミツなのじゃ」

老サンタのセンド「実はな、"時間" というのは、ただ流れておるものではなく、人の "希望のパワー" によって動いているんじゃよ」

みゆき達「え……!?」


老サンタのセンド「お前さん達も身をもって体験したことがあるはずじゃ。例えば、"楽しい時間は早く過ぎる" といった経験をしたことはないか? あるじゃろ?」

みゆき「た、確かに……。友達と楽しく遊んでたりすると、あっという間に時間がなくなっちゃったりするよね……」

老サンタのセンド「あれはのう、"楽しい" と感じるお前さん達の "希望のパワー" が "時間" に力を与えておるんじゃよ。だから時間が早く動くようになるのじゃ」


はるか「私達の "希望" が、時間を動かしてる……!? ……ホ、ホントなの、それ……?」

れいか「……さすがに、すぐには信じられないようなお話ですが……」

老サンタのセンド「まぁ、信じられないのもムリはないが……、ぜーんぶホントのことじゃ」

老サンタのセンド「さっき言ったとおり、"時間" というものは人の "希望のパワー" によって動いておる」

老サンタのセンド「しかしの、そのパワーはいずれなくなってしまうのじゃ。1年に一度は "希望のパワー" を補充せねばならん。そうしないと、時間そのものが動かなくなってしまうのじゃよ」

老サンタのセンド「そこで大切になるのが、子ども達の "希望" じゃ。よりたくさんの未来を持つ子ども達は、その産み出す "希望のパワー" も多いでな」


れいか「ちょ、ちょっと待ってください。……それでは、もしかして、サンタクロースやクリスマスプレゼントというのは……!」

老サンタのセンド「お前さん、察しがいいのう。その通りじゃ」


老サンタのセンド「ワシらサンタクロースは、クリスマスプレゼントで子ども達に与えることで、"希望のパワー" を補充しておるのじゃ。次の 1年、また時間が無事に動けるようにのう」

老サンタのセンド「"クリスマスプレゼント" とは、"時間" を元通りに保つための大切な儀式でもあるのじゃ。それを仕事としておるのが、ワシら "サンタクロース" なのじゃよ」


みゆき達「…………」ポカーン…


やよい「……なんだか、すごい話を聞いちゃったような気がする……」

はるか「まさに、"事実は小説より奇なり"、だね……」

みゆき「……あれ? でも、その話と、ニコちゃんがここにいること、わたし達プリキュアが集まったことと、どういう関係があるの?」

老サンタのセンド「そう、ここからが問題なのじゃ!」


老サンタのセンド「子ども達の "希望のパワー" を集めて、時間を正常に保つ。そんなワシらの大事な仕事をジャマしようとする、悪いヤツがおるのじゃ……!」

みゆき「……! それってもしかして、わたしがやっつけた葉っぱのオバケのこと……!?」

老サンタのセンド「正確には、あいつらを操っておるヤツじゃ……! あの葉っぱのバケモノは次々に出てきよるでな……。何者かはわからんが、きっと親玉がいるはずじゃ」

老サンタのセンド「ワシらサンタクロースは、そいつらにジャマされることなく、この町の子ども達にプレゼントを配りきらねばならん! ……さもなくば……」

なお「さ、さもなくば……?」ゴクリ

老サンタのセンド「…… "希望のパワー" が十分にたまりきらなくなってしまう……! 時計を見てもわかるとおり、今のまま、時間が止まったままになってしまうじゃろう」

やよい「え……!? それじゃあ……!」

老サンタのセンド「そうじゃ! プレゼントを配りきれなければ、時間は動いてはくれん!」


老サンタのセンド「このまま、"明日" は永遠に来ないのじゃ!」


みゆき達「!!」


あかね「……えらいこっちゃ……!」

みゆき「ニコちゃんが言ってた "世界中のみんながピンチ" って、こういうことだったんだ……!」

老サンタのセンド「……そういうことで、今は大ピンチなのじゃ」

老サンタのセンド「できれば、サンタクロースだけでどうにかしたかったのじゃが、ワシらには襲ってくるあいつらを追っ払うだけの力がないのじゃ……」

老サンタのセンド「あいつらはクリスマスの前からワシらにちょっかいを出してきておったが、逃げ回るので精一杯じゃった」


老サンタのセンド「そこで、ワシらサンタクロースは、色んな世界を回って、あいつらをやっつけてくれる戦士を探した」

老サンタのセンド「そして、出会ったのが "絵本の世界" のニコだったんじゃよ」


みゆき「そうなの、ニコちゃん……?」

ニコ「うん」


ニコ「その時、わたしはセンドさんにみゆき達の――伝説の戦士・プリキュアの話をしたの。そうしたら、センドさんも喜んでくれて」

ニコ「それで、わたしが案内役として "絵本の世界" から出てきて、センドさんをみゆき達のところまで案内してきたの」

ニコ「みんなならきっと、この大ピンチを救ってくれるって思ったから……!」

みゆき「そうだったんだ……!」

ギュッ


ニコ「えっ……? みゆき……、わたしの手を握って……」

みゆき「任せてよ、ニコちゃん! だいじょうぶ! わたし達が、絶対なんとかするから!」

ニコ「みゆき……!」


あかね「せやな! 時間がうんぬんっちゅーのももちろん大事やけど……」

やよい「クリスマスプレゼントは、子ども達みんなの楽しみなんだもん!」

なお「それを渡すのをジャマするなんて、許せない!」

れいか「それに、ニコさんは私達にとっても大切なお友達。困っているのであれば、放ってはおけません」


はるか「ニコちゃん。私達はあなたとは知り合ったばっかりだけど、みんなの友達なら、私の友達だよ」

ゆかり「だから、あの……、わたしに何かできることがあるなら……、お手伝いします……!」


ニコ「みんな……! ありがとう!」ニコッ

みゆき「えへへ……」ニコニコ

あかね「――んで、サンタのじいちゃん。うちらは実際、何したらええんや?」

なお「おじいさんがプレゼントを配る間、その悪い人達を追っ払ってたらいいのかな」

老サンタのセンド「うむ……、できればそうしたいのじゃがのう……。実はワシ、ついさっき違う町でプレゼントを配ってきたばかりでのう……」

老サンタのセンド「それに、ニコといっしょにあいつらから逃げ回ってばかりで……、もうヘロヘロなのじゃ……」

やよい「え、そうなの……!?」

れいか「他のサンタクロースの方はいらっしゃらないのですか? お手伝いをしてもらうことはできないのでしょうか」

老サンタのセンド「それもできんのじゃ……」


老サンタのセンド「ホントは、この町を担当するサンタクロースもいたのじゃ。去年までな」

老サンタのセンド「じゃが、そいつは去年のクリスマスが終わって以来、どっかに行ってしまって連絡が取れんのじゃ……。そのおかげで人手不足でのう……」

老サンタのセンド「他のサンタクロースも仕事を終えたばかりでヘロヘロじゃ……。まともに動けるもんはおらんじゃろう……」

ゆかり「そうなんですか……。じゃ、じゃあ、どうしたら……」

ニコ「そこで、みゆき達にお願いがあるの」

みゆき「え、お願い? なに?」


ニコ「みゆき達プリキュアに、プレゼントを配ってほしいんだ」

みゆき「え……!?」

老サンタのセンド「うむ、それがよかろう。プリキュアの力はさっき見せてもらった。お前さんらなら、あいつらのジャマを退けつつ、プレゼントを配りきることができるじゃろう!」

老サンタのセンド「それに、実は最初っからお前さんらに配達を頼む気だったでな。こうして、準備もさせてもらっとったんじゃ」


シャンシャンシャンシャンッ

シャンシャンシャンシャンッ


やよい「わ……! カラのソリが 2台……?」

老サンタのセンド「連中を追っ払いつつ配達するのはタイヘンじゃろうからな。その 2台とこのソリ、3手に別れて、手分けして配達をしてほしいのじゃ!」

はるか「……と、いうことは……」

れいか「もしかして、私達が……」


みゆき「サンタさんになる、ってこと……!?」


みゆき達「…………」

みゆき「……やっ……」


みゆき「やったぁぁぁぁっ!」


老サンタのセンド「え……? や、"やったぁ" ? タイヘンな仕事になるじゃろうに……、うれしいんかの?」

みゆき「うん! だって、あこがれのサンタさんになれるなんて夢みたい! ウルトラハッピー!」キラキラ

やよい「そうだね! みんなに夢と希望を届けるサンタさん……! すごくいいよ!」キラキラ


あかね「みゆきとやよいはほんっま、こういうファンタジーみたいなの好きやなぁ……」

なお「でも、あたしもやってみたいな! みんなに喜んでもらえるならうれしいし!」

れいか「そうね。笑顔を届けるなんて、とても素敵」


ゆかり「わたしも……、サンタさんやってもいいんでしょうか……?」

みゆき「いいに決まってるよ! いっしょに行こう!?」

ゆかり「みゆきセンパイ……。はい……!」


ワイワイワイ


老サンタのセンド「うーむ……、イヤがりはしても、喜ばれるとは思っておらんかったのう……。変わったお嬢ちゃん達じゃ」

はるか「みんな、誰かに喜んでもらうのが好きなんですよ。もちろん、私も!」

みゆき「じゃあ、出発の前に変身しよう! 妖精のみんな、マティちゃん、準備はいい!?」


キャンディ「だいじょうぶクル!」

ウルルン「待ってたウル!」

オニニン「いよいよ、おれ様達の出番オニ!」

マジョリン「ハリきっていくマジョ!」


ポップ「行くでござるよ、皆の衆!」

ペロー「わかったペロ!」

マティ「わたくし達で、皆さまに希望をお届けしましょう!」


みゆき「よぉっし! それじゃ、行くよ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

7人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(チョキ) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」

ヴェール「そよそよさざめく、優しい木陰。キュアヴェール!!」


7人「7つの光が導く未来!」

7人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ハッピー「それじゃあ、プレゼントを配るチームを 3つに分けよう!」


マーチ「あたし達はいっしょに行こうか、ビューティ」

ビューティ「ええ。では、ノーブルもいっしょに」

ノーブル「いいよ! マーチ・ビューティと 3人か。なんだか、小さい頃を思い出すね」


サニー「ほんなら、うちはピースと行くわ」

ピース「よろしくね、サニー!」

ウルルン(デコル)「オニニン、足引っ張るんじゃねーウル!」

オニニン(デコル)「お前こそ、ヘマしないようにするオニ!」


ハッピー「それじゃ、わたしはヴェールと……」チラッ

ニコ「……!」

ハッピー「いっしょに行こう! ニコちゃん!」

ニコ「みゆき……! うんっ!」

ヴェール「あ、あの……、よろしくお願いします……、ニコさん……」

ニコ「こちらこそ、ゆかり!」

老サンタのセンド「では、配達の前に、お前さん達にやっておかなきゃいかんことがある。みんな、そのまま一か所に集まるのじゃ」


ササッ


ハッピー「こ、こう?」

老サンタのセンド「おっけーじゃ! そのまま動くでないぞ」


老サンタのセンド「むむむむ……! そぉれっ!」ピカッ!

ノーブル「わっ!? サ、サンタさんの手から光が出て……」

ビューティ「私達を包み込んでいます……!」


パァァァッ…!

ポンッ


ハッピー達「…………」


サニー「……ん? わっ、な、なんやこれ!? プリキュアの服がちょっとサンタっぽくなっとる!?」

ハッピー「なにこれ、すごい! かわいいぃぃぃーっ!」

老サンタのセンド「サンタクロースの力をお前さん達に与えたんじゃ」

老サンタのセンド「さっきも言ったが、"希望のパワー" が集まらん限り、時間はこのまま止まり続ける。その中を自由に動けるのはサンタクロースだけなのじゃ」

老サンタのセンド「見えるくらい近くにいる者ならワシのパワーで動かしてやることができる。さっきまで、お前さん達が動いていられるのはそのおかげじゃ」


老サンタのセンド「じゃが、別れて行動するとなるとそうもいかん。ワシから離れてしまえば、お前さんらも動けなくなってしまうじゃろう」

老サンタのセンド「だから、一時的にお前さんらがサンタクロースの力が使えるようにしたのじゃ! 止まった時間の中を動ける他、ふしぎな力を授けてくれるはずじゃ」

老サンタのセンド「その力で、子ども達にプレゼントを――希望を届けてやってくれ! 頼んだぞ、プリキュア!」


ハッピー「うんっ! わかった!」

ノーブル「みんないい? 念のため、もう一度状況をおさらいするよ」


ノーブル「私達の目的は、七色ヶ丘の子ども達にサンタクロースのクリスマスプレゼントを届けること」

ノーブル「そして、その時に子ども達が出してくれる "希望のパワー" を集めて、時間がちゃんと動くように――明日が来るようにすること」


ノーブル「でも、誰か悪い人達がそれをジャマしようとしてる」

ノーブル「目的も正体もわからないけど、その人達にジャマされないよう、プレゼントを届けよう!」


ハッピー達「はいっ!」


ハッピー「よぉーし、それじゃあ、プリキュアサンタ、しゅっぱーつっ!」


シャンシャンシャンシャンッ…

~ 七色ヶ丘市上空 雲の中 モミの木城 ~

赤髪の青年「――で、そのピンク色の女の子にジャマされてしまって、キミ以外はやられてしまった、と」

モミの葉の怪物A「ファー……」

赤髪の青年「だらしないなぁ。……ま、キミ達 "ファー・ソルジャー" はそんなに強くないし……、こんなもんか」


赤髪の青年「……でも、いくらなんでも普通の人にやられるほど弱くはないはずだ」

赤髪の青年「ピンク色の女の子……、何者だ?」


ザッ


筋肉質の大柄な男「では、我々が行って参りましょう」

太った青年「ぼく達ならー、朝飯前なんだなー」

赤っ鼻の小柄な少年「ご主人! おいら達に任せてくれよ! そいつらよりいい仕事するぜ!」

赤髪の青年「キミ達か。……そうだね、ここはキミ達にやってもらおうか」

赤髪の青年「では、行ってきてくれるかい? キミ達でサンタクロースのプレゼントを奪い、ボクの下まで持ってくるんだ。いいね」


筋肉質の大柄な男「かしこまりました。我が主よ」

太った青年「じゃあー、行ってくるんだなー」

赤っ鼻の小柄な少年「期待してくれよ!」

赤髪の青年「頼んだよ」

赤髪の青年「……そうだ。サンタクロースのプレゼントなんて必要ない。クリスマスも必要ない……」


赤髪の青年「明日なんて、来なければいいんだ……!」

~ 七色ヶ丘市 上空 ハッピー・ヴェール・ニコ・センド チーム ~

シャンシャンシャンシャンッ…


ハッピー「あははっ、わたし、今ホンモノのサンタさんなんだーっ! やっほーっ!」

ヴェール「ハッピーセンパイ、楽しそうですね……」

ハッピー「うんっ! だって自分がサンタさんになれるなんて、夢にも思ってなかったよー……!」

マティ(デコル)「ですが、ハッピー様、わたくし達には希望を届けるというお勤めがあるのですから、そちらもしっかりやらないと……」

ハッピー「もちろんやるよ! でも、せっかくだから楽しまないと! ね、ニコちゃん!」

ニコ「うん、そうだね、みゆき!」

~ 七色ヶ丘市 高層マンション ベランダ ~

ハッピー「えーっと……、最初の配達先は、ここでいいのかな」

ヴェール「……そういえば、どうやっておうちの中に入るんでしょう……」

老サンタのセンド「なぁに、心配無用じゃ。サンタクロースの力があれば、壁くらいスルリと抜けられるわい」

ハッピー「え? そうやって入るの? えんとつからじゃなくって?」

老サンタのセンド「昔はそれでよかったんじゃが、今は煙突のない家も多いからのう。ほれ、とりあえずやってみ」

ハッピー「ホ、ホントにできるのかな……。……えぇい、考えててもしょうがない! 気合だっ! だぁぁぁっ!」ダッ


スルリ


ハッピー「わっ!? ……ホ、ホントに窓ガラスすり抜けちゃった……!」

キャンディ(デコル)「すごいクル……!」

老サンタのセンド「言った通りじゃろう? ほれ、他のみんなも入るがよい。……ああ、ニコはサンタクロースの力がないから、キュアヴェールと手をつないで入るように」

ヴェール「わ、わかりました。行きましょう、ニコさん」

ニコ「うん」


スルリ

~ 七色ヶ丘市 高層マンション 子ども部屋 ~

老サンタのセンド「じゃあ、次はプレゼントの配達じゃな」


少年A「――――」

ハッピー「あ、男の子が寝てる。……っていっても、時間が止まってるから全然動かないけど。この子にあげればいいのかな」

老サンタのセンド「うむ。さっき、お前さんに袋を渡したろう。その袋の中に手を突っ込んで、プレゼントを出すのじゃ」

老サンタのセンド「その袋には、子どもの望みを感じ取ってくれるふしぎな力がある。その子のほしい物を出してくれるじゃろう」

ハッピー「そうなんだ……。よぉっし! えいっ!」ズボッ


スポンッ!


ハッピー「やった! プレゼント、取り出せたよ!」

老サンタのセンド「うむうむ。じゃあ、そのプレゼントを枕元に置くのじゃ」

ハッピー「うん」


ソッ


ハッピー「……できた。これでいいのかな?」

少年A「――――」パァッ…!


ハッピー「えっ……!? この子の体が光って――」


ポンッ


キャンディ(デコル)「わっ、男の子の体からなにか出たクル!」

ニコ「小さな、光の玉……?」

マティ(デコル)「キレイですわ……」

老サンタのセンド「それが、その子の "希望のパワー" じゃ。プレゼントがその子に希望を与えてくれたんじゃよ」


ヒューン…


ヴェール「光の玉が、袋に吸い込まれてく……」

老サンタのセンド「……うむ! "希望のパワー" も回収できたようじゃな! よし、これで一件完了じゃ!」

少年A「――――」ニコッ


ハッピー「え……!?」

ニコ「? どうしたの、みゆき」

ハッピー「……なんだか、この子、笑った気がして……」

ヴェール「時間が止まってるのに、ですか?」

ハッピー「うん……」

老サンタのセンド「……きっと、その子がプレゼントを喜んでくれたんじゃろう。その気持ちがキュアハッピー、お前さんに伝わったんじゃな」

ハッピー「そうなんだ……!」

ハッピー「……ねぇ、センドさん。サンタさんって、ホントにステキなお仕事だね」

老サンタのセンド「ん? なんじゃ、急に」

ハッピー「プレゼントをこの子に喜んでもらえたことが、なんだかすごくうれしくって……!」


ハッピー「子ども達みんなをハッピーにして、自分もハッピーになれる。それって、すごくステキなことだなぁ、って、そう思ったの」

老サンタのセンド「……そうか……。ふふ、そう言ってくれると、サンタクロースとしてはうれしいのう……」


ニコ「だからこそ、そのハッピーをみんなに届けてあげないと! 次、行こう、みゆき! みんなが待ってるよ!」

ハッピー「うん、そうだね!」

~ 七色ヶ丘市 民家 子ども部屋 ~

ピース「プレゼントを枕元に置いて、っと。(スッ) これでいいのかな?」


少女A「――――」パァッ…


ポンッ

ヒューン…


サニー「お、これが "希望のパワー" っちゅうやつやな。回収オッケーや!」


サニー「……にしても、プレゼント、クマのぬいぐるみか……。このぬいぐるみが、話し相手になったり、遊び相手になったりして……、この子の大切な友達になってくれるんやろな……」

ピース「そう考えると、プレゼントってスゴいんだね……。センドさんの言ってた通り、みんなの希望になってくれるんだ……」

サニー「せやな……」


サニー「……よっしゃ! ピース、ガンガン行くで! 町中の子ども達に、こんな希望を届けるんや!」

ピース「うんっ!」

~ 七色ヶ丘市 上空 ~

シャンシャンシャンシャンッ!

ゴォォォォォォッ!


ノーブル「あはははっ、風が気持ちいいっ! 私、一回でいいから空を飛んでみたかったんだ! それーっ!」

ビューティ「ノ、ノーブル!? その……、少し、速く動かしすぎでは……!?」

ノーブル「いいじゃない! せっかくのクリスマスに、せっかくのサンタさんなんだもん、楽しもうよ! あはははっ!」

ポップ(デコル)「ノーブル……、まるで人が変わったように陽気になっているでござるな……」

ビューティ「"車を運転すると、とたんに陽気になる人がいる"、と聞いたことがあります……。そのようなものでしょうか……」

ポップ(デコル)「……しかし、すばらしい眺めでござるな……。空から見ると、下の町がキラキラ輝いていて、宝石のようでござる」

ビューティ「クリスマスの飾りつけをしているからですね。本当にきれい……。ねえ、マーチ?」

マーチ「――――」

ビューティ「……マーチ? ぼーっとしているように見えるけれど……、どうかしたの――」

マーチ「――――」フラッ


ドサッ


ポップ(デコル)「……!? マ、マーチ殿……!? 倒れてしまったでござる!」

ビューティ「き、気を失って……! いけない……! そういえば、マーチは高いところが苦手だったんでした……!」

ポップ(デコル)「な、なるほど……! そこにこのスピードでは、ひとたまりもないでござるな……!」

ビューティ「ノーブル! 止めてください! マーチが、マーチが!」


マーチ「――――」

マジョリン(デコル)「……はぁ……、自分のパートナーながら、情けないマジョ……。"勇気リンリン" が聞いて呆れるマジョ……」

~ 七色ヶ丘市 マンション 子ども部屋 ~

少女B「――――」パァッ…


ポンッ

ヒューン…


ピース「やった! またまた "希望のパワー" ゲット!」

サニー「いい調子や! どんどん行くで!」

~ 七色ヶ丘市 平屋民家 子ども部屋 ~

少年B「――――」パァッ…


ポンッ

ヒューン…


ビューティ「これでこちらの方へのプレゼント配達は完了ですね」

ノーブル「順調だね! じゃあ、次行こうか!」

マーチ「あ、あの……、ノーブル……。できれば、このまま低いところの家を回ってもらえませんか……」

ノーブル「あ……、そ、そうしようか……。ゴメンね、マーチ。調子悪いの、気付けなくって……」

マーチ「いえ……」

マジョリン(デコル)「……やれやれマジョ」

~ 七色ヶ丘市 民家 子ども部屋 ~

ハッピー「ねぇねぇ、ニコちゃん! 今度はニコちゃんがプレゼントあげてみない?」

ニコ「え……、わたしが……? いいの?」

ハッピー「うん! プレゼントあげて、喜んでもらえるとうれしいよ!」

ヴェール「さっきはわたしがあげましたから、どうぞ……」

ニコ「あ、ありがとう。じゃあ……」スッ


少年C「――――」パァッ…


ポンッ

ヒューン…


少年C「――――」ニコッ


ニコ「……! みゆき、わたしにも、この子が笑ったように見えたよ……!」

ハッピー「やったね、ニコちゃん! その子の笑顔は、ニコちゃんが作ったんだよ!」

ニコ「わたしが作った笑顔……!」

ニコ「……みゆき」

ハッピー「ん? なに、ニコちゃん?」

ニコ「みゆきが言った通り、人を笑顔にするのって、ステキだね」


ニコ「わたし、"絵本の世界" とプリキュアのみんなの笑顔しか見たことなかったから……、なんだかうれしいよ!」ニコッ

ハッピー「ニコちゃん……! ……ニコちゃんがうれしいなら、わたしもうれしいよ! よかったね、ニコちゃん!」ニコッ

ニコ「うんっ!」

~ 七色ヶ丘市 上空 ~

筋肉質の大柄な男「……感じるぞ、"希望のパワー"」

太った青年「サンタクロース以外にー、集めてるやつらがー、いるみたいなんだなー」

赤っ鼻の小柄な少年「……させねぇよ。ご主人のためにも、これ以上 "希望のパワー" を集めさせるわけにはいかねぇな!」


筋肉質の大柄な男「行くぞ、お前達。我が主のために」

太った青年「わかったんだなー」

赤っ鼻の小柄な少年「おうっ!」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

シャンシャンシャンシャンッ


ビューティ「地面の上を少し浮かぶくらいで走っているけれど……、マーチ、これなら平気?」

マーチ「うん、だいじょうぶ……、大分ラクになってきたよ……」

ノーブル「……マーチには悪いけど、これじゃあ車と大して変わらないなぁ……。ちょっと残念……」

マーチ「すみません、ノーブル……。高いところはどうしてもニガテで……」

ノーブル「ああ、ゴメンゴメン、気にしないで! さ、じゃあ次のおうちに――」


ポップ(デコル)「……むっ!?」ピクッ

ビューティ「? どうかしましたか、ポップさん?」

ポップ(デコル)「イヤな感じが近づいて来るでござる! すごいスピードでござるよ! ビューティ殿、気をつけるでござる!」

ビューティ「え……? イヤな感じ、ですか……? ……はっ!?」

ゴォォォォォォォッ!


赤っ鼻の小柄な少年「プレゼント、よっこせぇぇぇっ!」ジャキッ!


ノーブル「え……!? 男の子が空を飛んで突っ込んで来る……!?」

マーチ「両手に持ってるのは……、枝分かれした剣……!? トナカイの角みたいな……!」

ビューティ「くっ!」パキパキパキッ!


ガキィィィィンッ!


マーチ「ビューティ! 氷の剣で、男の子の剣を受け止めた……!?」

ビューティ「何とか、剣を作るのが間に合いました……っ!」ギリギリギリッ

赤っ鼻の小柄な少年「へぇ、やるじゃん! おいらの剣を受け止めるなんてさ!」

ノーブル「もしかして、この子がセンドさんの言ってた悪い人達……!?」

ガキィィィィンッ!


赤っ鼻の小柄な少年「! おっとっと……、弾き飛ばされちゃったよ。あんた、ホントにやるね」


ビューティ「私は、伝説の戦士・プリキュア、キュアビューティ。あなたは一体、何者ですか?」

赤っ鼻の小柄な少年「おいら? おいらの名前は "ルドルフ" ってんだ!」

マーチ「さっき "プレゼントよこせ" って言ってたけど……、あたし達からプレゼントを奪う気なの!?」

ルドルフ「そうさ! あんたらにプレゼント配られると、困っちゃうんだよね!」

ノーブル「このプレゼントを配らないと、時間が止まったままになっちゃって、明日が来ないんだよ!? どうしてそんなヒドいことを!?」

ルドルフ「そんなのはあんたらの知ったこっちゃないよ! いいからプレゼントをよこしなよ!」

ビューティ「……問答無用、というわけですね……。それならば、仕方ありません」


ザッ


マーチ「あたし達が相手になるよ!」

ノーブル「子ども達の希望を奪わせたりしない!」


ルドルフ「へへっ、本気でおいらとやり合うつもり? やれるもんならやってみな!」

~ 七色ヶ丘市 繁華街 ~

太った青年「あ、そーれー」ブンッ


ドガァァァァァンッ!


ピース「わぁぁぁぁぁっ!?」

サニー「なんやあのふとっちょ……! 飛んどるソリについてきながら、ものすごいパワーで、重そうな袋を振り回してきよる……!」

ピース「な、なんとか避けたけど……! こんなこと繰り返されたら……!」


太った青年「あ、どっこいしょー」ブンッ


ドガァァァァァンッ!


サニー「なんちゅうパワーや……、ビルの壁がコナゴナやで……! あんなんもらったらひとたまりもあらへん……! ピース! ソリの運転、しっかり頼むで!」

ピース「って、言われてもー! もういっぱいいっぱいだよー!」

サニー「やい、ふとっちょ! なんでこんなことすんねん!? 危ないやろ!」

太った青年「ぼくの名前はー、ふとっちょじゃないんだなー。ぼくの名前はー、"サック" っていうんだなー」

ピース「じゃあ、サック! どうしてわたし達を襲うの!? 今、わたし達はすっごく大事なことをしなきゃいけないの!」

サック「知ってるんだなー。ぼくの仕事は、それをジャマすることなんだからなんだなー」

ウルルン(デコル)「おい……、じゃあ、コイツがもしかしたら……!」

オニニン(デコル)「サンタクロースを襲ってた悪者の一味オニ……!?」


サック「そのプレゼント袋ー、渡すんだなー。そしたらー、痛くしないんだなー」

ピース「"渡せ" って言われても、カンタンには渡せないよ! これはとっても大切なものなんだから!」

サック「……じゃあ、しょうがないんだなー。ぺっちゃんこになっちゃっても知らないんだなー」

サニー「やれるもんならやってみぃ! うちらはそうカンタンにはやられへんで!」

~ 七色ヶ丘市 上空 ~

シャンシャンシャンシャンッ


ハッピー「プレゼント、大分配ったねー! この調子なら、そんなに時間かからなそう!」

ニコ「でもみゆき、気をつけて。まだあの葉っぱのオバケの仲間が来てないよ」

老サンタのセンド「そうじゃ。あやつらはいずれ、ワシらも襲ってくるはずじゃ。気を抜かずに――」


キャンディ(デコル)「クル……!?」ピクッ

ハッピー「どうかした、キャンディ?」

キャンディ(デコル)「ハッピー! イヤな感じがするクル! すぐ近くクル!」

ハッピー「え? イヤな感じって……」


マティ(デコル)「……はっ! ヴェール! 上から何か来ます! 防御を!」

ヴェール「え……!? あ、う、うん……! "ヴェール・カーテン" っ……!」パキィィィィンッ!


ヒュゥゥゥゥゥ… ドゴォォォォォォンッ!!


ハッピー達「わぁぁぁぁっ!?」


ハッピー「な、なに!? 空から大きな男の人が落ちてきた!?」

筋肉質の大柄な男「……ほう、オレの拳を防ぐか。その葉の形の盾、中々に強力なようだな」

筋肉質の大柄な男「……だが、それしきでオレは止められんぞ! ぬぅぅぅぅぅぅぅんっ!」


ググググググッ!


ヴェール「……っ! "ヴェール・カーテン" で防いでるのに……、すごいパワーです……! ど、どんどん押し込まれます……っ!」

ハッピー「え……!? それじゃあ……!」

ニコ「ソリが落ちちゃう……!?」


筋肉質の大柄な男「このまま地面に叩き付けてやろう! うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


ゴォォォォォォッ!


ハッピー達「わぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

ルドルフ「よぉーし、そんじゃ、行くぜ――」


ヒュゥゥゥゥゥ… ズガァァァァァァンッ!!


ルドルフ「おわっ!?」

マーチ「わっ!? な、なに!?」

ビューティ「近くに何かが落ちてきたようですが……!?」


ハッピー「……あいったたたた……。ニコちゃん、センドさん、ヴェール、だいじょうぶ……?」

ニコ「みゆき……! わたし達をかばって下敷きに……!?」

ヴェール「ハッピーセンパイ……、わたしまでかばって……!」

老サンタのセンド「お、お前さんこそ大丈夫か!?」

ハッピー「だいじょうぶ、へーきへーき……、えへへ……」


ノーブル「ハッピー達……!? どうしてここに……!?」


筋肉質の大柄な男「……全員無事とはな。仕留めそこなったか。中々やるようだ」

ルドルフ「ビ、ビックリした……! おい、"スレイ"! なにやってんだよ! おいらにも当たるところだったぞ!」

スレイ「真下にいるとは思わなかったのだ。許せ」

ルドルフ「許せ、じゃねーよ! まったく!」

スレイ「それにしても、ルドルフが相手していた者も含めると 5人か。ジャマ者はずいぶん多かったようだな」

ルドルフ「サックが行った方のヤツらもいるだろ。そいつら入れるともうちょっと多いんじゃねーの?」


ノーブル「……! それって、もしかして、サニーとピース……!? あの人達、私達みんなを襲ってるんだ……!」


ノーブル(……マズい……、このままだと、戦ってる最中にプレゼントが取られたり、壊されたりしちゃうかも……。そうしたら、タイヘンなことに……!)

ノーブル(……なら……!)


スレイ「ルドルフ。そっちはお前に任せる。オレは、自分が落とした者達を狙う。それでいいな」

ルドルフ「誰も手伝ってくれ、なんて言ってねーよ! それより、自分の仕事をちゃんとしろよ!」

スレイ「……ふっ、わかった」

スレイ「さて、ではお前達のプレゼント、奪わせてもらおうか」


ザッ


ノーブル「……そうはいかないよ」

ハッピー「ノーブル……!? わたし達の前に立って……!」

スレイ「なんだお前は? オレが狙っていた者ではあるまい? ジャマをしないでもらおうか」

ノーブル「おあいにくだけど、私達は、あなた達に付き合ってられないんだ」


ノーブル「ハッピー、ヴェール! 私達のプレゼントも持って、このままプレゼントを配って! ここは私が引き受ける!」

ハッピー「えっ……!? でも、それって、ノーブルが一人でその人を止めるってことですか……!?」

ヴェール「その人、すごく強いです……! ノーブルセンパイ一人じゃ……!」

ノーブル「大丈夫、任せて! 時間稼ぎくらいはしてみせるよ!」

ノーブル「忘れないで! 私達の目的は、プレゼントを配って、子ども達みんなに希望を届けること! この人達に勝つことじゃない!」

ノーブル「だから行って! プレゼントは……、みんなの希望は、私が守ってみせる!」

ハッピー「ノーブル……!」


老サンタのセンド「……キュアノーブルの言う通りじゃ。もしあやつらにプレゼントを壊されでもしたら、それこそおしまいじゃ……!」

ニコ「行こう、みゆき、ゆかり……! わたし達は、プレゼントを届けなきゃ……!」

ハッピー「センドさん……、ニコちゃん……。……わかりました! 行こう、ヴェール!」

ヴェール「わかりました……! ノーブルセンパイ、ガンバってくださいっ……!」


ノーブル「(ニコッ)」

スレイ「……なにやら勝手に話を進めているようだが……、ヤツらをおめおめと逃がすと思うか!」ダッ


スレイ「ジャマをすると言うのなら、まずお前から倒してやろう! むぅぅぅぅぅんっ!」ブンッ!

ペロー(デコル)「パンチが来るペロ、ノーブル!」

ノーブル「……っ!」


スルッ


スレイ「むっ……!? オレの拳がいなされた……!?」


ガシッ!


ノーブル「はぁっ!」

スレイ「そのままオレの腕を掴んで……、うおぉぉぉぉっ!?」


ドガァァァァンッ!


スレイ「ぐあっ……!?」


マティ(デコル)「ノーブルの投げ技が決まりましたわ!」

ヴェール「すごい……! さすがノーブルセンパイ……!」


ノーブル「さぁ、今のうちに行って!」

ルドルフ「おいおい! スレイ、何やってんだよ! 1人にいいようにされやがって! しょうがねーな……、行かせるかっ!」ダッ


バッ


マーチ「ここはあたし達が!」

ビューティ「通しませんっ!」

ルドルフ「な、なんだよお前ら! ジャマすんなよ!」

マーチ「元々ジャマしてるのはそっちでしょうが!」


ビューティ「ハッピー、ヴェール! この方は私達が引き受けます!」

マーチ「だから、ノーブルの言う通り速く行って! お願い!」


ハッピー「ビューティ、マーチ……! ありがとうっ!」

老サンタのセンド「……よし、これでよかろう! プリキュア! 落とされたワシらのソリの修理はできたぞ! トナカイ達も無事じゃ!」

ニコ「二人とも、早く乗って!」

ハッピー「うんっ!」

ヴェール「はいっ……!」


バッ


ニコ「乗ったね!? それじゃ、行くよっ!」


シャンシャンシャンシャンッ…

ムクリ


スレイ「……行かれてしまったか……。失態だな……。このままでは、我が主に顔向けできん……!」

ノーブル「……! 平気な顔して起き上がった……!」

ペロー(デコル)「効いてないペロ……!?」


スレイ「ならば、お前を倒して後を追わせてもらうぞ! ぬぅんっ!」ブンッ

ノーブル「またパンチ……!? 懲りないなぁ、効かないよ!」


スルッ ガシッ


ノーブル「よしっ! いなして腕を掴んだ! このまま投げ――」

スレイ「おぉぉぉぉっ!」バチィッ!

ノーブル「えっ……!? パ、パワーでほどかれて――」

スレイ「ふんっ!」ブンッ

ノーブル「わっ……!?」バッ


ドゴォォォォォンッ!

ビシビシビシィッ!


ノーブル「じ、地面が割れた……!?」

ペロー(デコル)「す、すごいパワーペロ……! こんなの、まともに当たったら危ないペロ……!」


スレイ「拳をかわして投げるとは……、面白い技を使うな。だが、先ほど見せてもらった。もうその技は通じんぞ」

ノーブル「ヴェールの言った通りだ……。この人、ホントに強い……!」

スレイ「しかし、見事な技だった。お前となら面白い戦いができそうだ。せっかくだ、名を聞かせてもらおうか、戦士よ」

ノーブル「……伝説の戦士・プリキュア。キュアノーブル」

スレイ「キュアノーブル……、その名、憶えたぞ」


スレイ「キュアノーブル、お前を倒すまではヤツらを追うことはせん。真正面から、この拳でお前をねじ伏せてみせよう。オレの誇りにかけて」

ノーブル「正々堂々戦う、ってこと? ……わかった、受けて立つよ!」

スレイ「ふっ……、では行くぞ。いざ、尋常に――」


ノーブル・スレイ「勝負っ!!」

~ マーチ・ビューティ vs ルドルフ ~

ガキンッ! ガキィンッ!


ルドルフ「はははっ! どうしたどうした!? 剣を受けるだけで精一杯かい!?」

ビューティ「くっ、速いっ……! この方の言う通り、防戦一方です……! このままでは……!」


バッ


マーチ「だぁぁぁぁぁぁっ! マーチ・キィーックっ!」ブンッ

ルドルフ「なっ!? あぶねっ!?」サッ

マーチ「!? 蹴りがかわされた!?」

ビューティ「でも、体制が崩れた……! チャンス! はぁぁぁぁっ、ビューティ・ソードっ!」ブンッ

ルドルフ「うわっ!?」


ガキィィィィィンッ!


ルドルフ「くっ!?」

ビューティ「これも防がれた……!?」

マーチ「この子……、見かけによらず強い……!」

ルドルフ「うるせーっ! 誰がチビだ! バカにすんなよ!?」

マジョリン(デコル)「そこまで言ってないマジョ……」

ルドルフ「それにしても……へへっ、二人がかりでその程度かい、おねーさん達? そんなんじゃ、おいらには勝てねーぜ!」

ポップ(デコル)「口だけではないでござる……、この者、中々の手だれ……!」


ビューティ「……ですが、心配には及びません、ポップさん」

マーチ「そうだよ。あたし達が力を合わせれば――」


マーチ「できないことは何もない!」
ビューティ「できないことはありません!」

ルドルフ「威勢だけはいいね! んじゃ、やってみなよ! やれるもんならさ!」


マーチ「行くよ、ビューティ!」

ビューティ「ええ、マーチ!」

~ 七色ヶ丘市 繁華街 ~

サック「あ、よいしょー」ブンッ


ドガァァァァァンッ!


ピース「わわわわわっ!」

サニー「ええで、ピース! なんとかここまでうまく避けられとるわ!」

ピース「で、でも……! あの人、ずっとついてくるよ……! このままじゃつかまっちゃう……!」

サック「そうなんだなー。ぼくからは逃げられないんだなー」

サニー「くぅー……! 戦おうにも、プレゼントになんかあったらエラいことになってまう……! どないしたらええんや……!」


シャンシャンシャンシャンッ


ハッピー「サニー! ピース! やっぱり二人だった!」

サニー「ハッピー!? ヴェールとニコちゃんも! なんでここにおんねん!?」

ヴェール「遠くからソリが見えて……、追いついてきたんです……!」

サニー「……! そや、ええこと閃いたで! んんんんっ……!」グィッ

ハッピー「サニー? プレゼントの袋を持ち上げて、どうする気なの!?」

サニー「こう……するんやっ! それっ、受け取ってやっ!」ブンッ

ハッピー「わっ!? プ、プレゼント袋をこっちに投げた!? (ガシッ) わっとっとっ!」

サニー「ナイスキャッチや、ハッピー! それ持って先行ってくれへんか!?」

ピース「……! そっか! わたし達の代わりにプレゼントを配ってもらうんだね!?」

サニー「そういうこっちゃ!」

サニー「このふとっちょはうちらが食い止める!」

ピース「だから、ハッピー達は子どものみんなにプレゼントを配って! きっと、みんなプレゼントを待ってるはずだから!」

ハッピー「サニー……、ピース……! わかった! ガンバって!」

サニー「任しとき!」ニカッ


シャンシャンシャンシャンッ…


サニー「よっしゃ、行ったか……。後は……!」


サック「あー、プレゼントー、あっちが持ってっちゃったんだなー。逃がさないんだなー」

サニー「それはこっちのセリフやっ! プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」


ボワァァァァァァッ!


サック「わぁー。な、なにするんだなー。あぶないんだなー」

サニー「さんざんその袋ぶん回しといて言えたセリフかい!」


サニー「プレゼントを渡せたおかげで、めいっぱい戦えんで! 覚悟しぃ!」

ピース「ハッピー達のところへは絶対行かせないんだから!」


サック「んーー……! ジャマなんだなー……!」

~ 七色ヶ丘市 道路 ノーブル vs スレイ ~

ノーブル「はぁっ……、はぁっ……」

スレイ「はぁっ……、はぁっ……」


ノーブル(パンチ力がすごいせいで、かわすのにすごく集中力を使って疲れちゃう……! あんまり長くは戦えない……!)

スレイ(見切ったとはいえ、少しでも気を抜けば、あの鋭い投げ技を受ける……! 厄介だな……!)


ノーブル・スレイ(チャンスがほしい! そうすれば勝てる!)

スレイ「……ならば! (ガシッ) うぉぉぉぉぉぉっ!!」


グググググッ…!


ノーブル「……!? ト、トラックを持ち上げた!?」

ペロー(デコル)「なんてパワーペロ……!?」


スレイ「ふんっ!!」ブンッ!


グワッ!


ペロー(デコル)「ペロ!? ト、トラックを投げたペロ!? ノーブル、よけるペローっ!」


スレイ(そうだ、避けるがいい! そのスキを突いて、オレの拳を叩き込む! それで終わりだ!)


ノーブル「…………」


ペロー(デコル)「ノーブル!? なんで動かないペロ!? ぶ、ぶつかるペローっ!」

ノーブル「……大丈夫だよ、ペロー君。さっき、そのトラックには運転手さんが乗ってないのが見えた。なら!」


ノーブル「遠慮なく、斬る!」

ノーブル「はぁぁぁぁっ! "ノーブル・カッター" っ!!」


ビシュゥゥゥッ!

ズバンッ!


スレイ「!? バカな……! 伸ばした指から出した鋭い水が、あの大きなものを真っ二つに……!?」


ビュルルルッ! ビシィッ!


スレイ「な……!? 腕に何かが巻きついた……!? これは……、水のムチ……!?」

ノーブル「"ノーブル・ウィップ"! 捕まえたよ! そのまま……、引き寄せるっ!」グイッ

スレイ「ぬぅぅっ!? ひ、引っ張られるっ……!?」


ガシッ


スレイ(引き寄せられたまま、腕をつかまれた!? いかん、このままでは、あの投げ技を受ける……っ!)


ノーブル「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ブンッ! ドガァァァァァァァンッ!!


スレイ「ぐはぁっ……!?」


ノーブル「一本っ……! ……なんてね!」

~ 七色ヶ丘市 空き地 マーチ・ビューティ vs ルドルフ ~

ビュンッ! ビュンッ!


マーチ「……! すごいスピードで周りを飛びまわって……!」

ビューティ「狙いが定まらない……!?」


ルドルフ「はははっ! どうだい!? 手も足も出ないだろ!」


ルドルフ「緑のおねーさんは、おいら並のスピードがあるみたいだけど、おいらの剣を防げない!」

ルドルフ「青いおねーさんは、剣を持ってるけど、おいらのスピードについてこられない!」

ルドルフ「どっちも何にもできないんじゃ、もう勝てるわけないよな! おいらの勝ちだぜ! ははははっ!」


マジョリン(デコル)「確かに……、アイツの言う通りマジョ……!」

ポップ(デコル)「どうすればいいでござるか……!」

マーチ「…………」


マーチ「……ビューティ、何とかできるかもしれない。耳貸してくれる?」

ビューティ「え……? 何、マーチ……?」

マーチ「あのね、……ごにょごにょ……」

ビューティ「……それは……! 確かに、それなら勝つことができるかも……」

ビューティ「でも、もしうまくいかなかったら、マーチが……!」

マーチ「だいじょうぶ、きっとうまくいくよ! だって、あたしはビューティの氷の力を信じてるから」

マーチ「だから、ビューティも信じてほしいんだ。あたしの勇気を」

ビューティ「…………」


ビューティ「……わかったわ、やりましょう!」

マーチ「そうこなくっちゃ!」

ルドルフ「なんかごちゃごちゃやってたみたいだけど、知ったこっちゃないね! こっちから行かせてもらうぜっ!」バッ


マーチ「(ダッ!)」

ルドルフ「!? 緑のおねーさんが突っ込んできた!?」

マーチ「マーチ・キィィィックっ!」ブンッ

ルドルフ「ほっ!(サッ) それは、さっき避けられるってとこ、見せたろ!?」

マーチ「まだまだ、こっからだよ! ビューティ!」

ビューティ「ええ! プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


ゴォォォォォォッ!


ルドルフ「吹雪!? 避けた後を狙った!?」

ルドルフ「……けど!」サッ

マーチ「……! くぅっ……!?」パキパキパキッ!

ルドルフ「はははっ! おいらが避けたから、仲間が吹雪くらってやんの! バッカでーっ!」

マーチ「……構わない、このまま突っ込むっ!」ダッ


ルドルフ「だーかーらー! 緑のおねーさんはおいらの剣を防げないだろ!? それっ、真っ二つになっちまえっ!」ブンッ

マーチ「……やった、かかったっ!」


ガキィィィィンッ!


ルドルフ「!? 凍った腕で、おいらの剣を受けた……!?」


ガシッ


マーチ「捕まえたよ!」

ルドルフ「わっ! な、なにすんだ、離せよっ!?」


ダッ


ビューティ「はぁぁぁぁぁぁっ! ビューティ・ソードっ!」

ルドルフ「うわっ!? あ、青いおねーさんが突っ込んで来る!?」


ズバァァッ!!

パキパキパキッ バリィィィンッ…!


ルドルフ「……! お、おいらの "角の剣" が……、凍って砕けた……!?」

マーチ「今だっ!」


バッ


マーチ・ビューティ「ダブル・プリキュア・キィーーーックっ!!」


ドガァァァァァァッ!!


ルドルフ「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」ドサァァッ


マーチ「はぁっ、はぁっ、やったね、ビューティ! ビューティの作ってくれた、固い氷のおかげだよ!」

ビューティ「……いいえ、あの剣に立ち向かった、マーチの勇気のおかげだわ」


マーチ・ビューティ「(ニコッ)」

~ 七色ヶ丘市 繁華街 サニー・ピース vs サック ~

サック「そーれー」ブンッ

サニー「レシーブやっ!」ドガァァッ!


サック「あー、もー。さっきっからー、袋が防がれてばっかりー。うっとうしいんだなー」

サニー「はぁっ、はぁっ。元バレー部なめたらあかんで! そのくらい、弾丸スパイクに比べたらへっちゃらや!」


サニー(……とは言うたものの、受けるばかりで攻撃でけへん……! もしあの袋がまともに当たったら、このソリも危ないからな……!)

サニー(困ったわ……、どないしよ……!?)


ピース(サニー、疲れてきてる……!? 守ってばっかりいるから……!? わたしも、ソリ動かすばっかりじゃなくって、何かしなきゃ……!)

ピース(でも、どうしよう……!? 何かいい方法ないかな……!?)


ピース(……あ! あれだっ!)

ピース「サニー! わたし、いいこと思いついちゃった! 合図したら、目つぶってくれる!?」

サニー「え……!? ムチャ言わんといてや! あんなごっつい攻撃の前で目つぶれるかいな!」

ピース「お願い、わたしに任せて! ぜったい役に立つから!」

サニー「ピース……!」


サニー「……わかった。ピースがそこまで言うなら、信じるわ。頼むで!」

ピース「うんっ!」


サック「もー、こーなったらー、当たるまで何度もやってやるんだなー」ブンッ ブンッ

サニー「よっ!(ドガァァッ!) ほっ!(ドガァァッ!) ……ピース、まだかいな!? そろそろ腕もシビれてきて……、レシーブで防ぐのも限界や!」

ピース「待って! もう少し、もう少し……!」


ピース「……今だっ! やるよ、サニー!」

サニー「よっしゃっ! 目、つぶるで!」ギュッ

ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ひゃぁっ! ピース・サンダーァァッ!!」

サック「えー!? か、雷出せるんだなー!?」


バリバリバリッ!


サック「……? ぼくじゃないところー、狙ったー? 何してるんだなー?」

ピース「狙ったのはあなたじゃなくって、そこの電気看板だよ!」

サック「えー?」


バチバチバチッ!

ピカピカピカッ!


サック「うーわー!? ま、まぶしいんだなー!?」


オニニン(デコル)「おおっ! 看板がスゴい光って、目つぶしになったオニ!」

ピース「サニー、今だよ! お願いっ!」

サニー「……なーるほど、そういうことかいな。ナイスやで、ピース! 後は任しとき!」

ウルルン(デコル)「やったれ、サニーっ!」

サニー「よっしゃぁぁっ!」

サニー「サニー・スペシャル・パァァァーーンチっ!」


ドガァァァァァッ!!


サック「ああーーーーれえーーー……」ピューン…


サニー「やったで! めっちゃ飛んでったわ! 大勝利や! ピース、ナイスアイデアやったで!」

ピース「漫画家を目指すなら、ピンチを切り抜けるアイデアくらい、すぐに出せないといけないのだ!」エッヘン

サニー「ははっ、さすがやな! 助かったで!」

~ 七色ヶ丘市上空 雲の中 モミの木城 ~

ファー・ソルジャーA「ファファーっ! ファファファファーっ!」

赤髪の青年「……そっか。あいつら、やられちゃったのか」

赤髪の青年「それで、そのプリキュアとかいうジャマ者は、着々とプレゼントを配っている、と。……ったく、しょうがないなぁ」


スクッ


赤髪の青年「……ボクが行くしかないか」

~ 七色ヶ丘市 上空 ~

シャンシャンシャンシャンッ


ハッピー「プレゼント、大分配れたね!」

老サンタのセンド「うむ! リストによると、次で最後じゃ! もうちょっとじゃ、ガンバってくれ!」

ニコ「……!」

ハッピー「うん! ガンバっていこう! ニコちゃん、ヴェール!」

ヴェール「はい……!」

ニコ「……うん……」

ハッピー「……あれ? ニコちゃん、なんだか元気ないみたいだけど……、どうかしたの?」

ニコ「え……!? あ、ううん、なんでもないよ!」

ハッピー「そう? ならいいんだけど……」


ニコ「…………」


ニコ(……そっか、次で、最後なんだ……)

ニコ(それが終わったら……、わたしは……)

ハッピー「それで、センドさん。最後の子は?」

老サンタのセンド「うむ、リストに名前が載っておる」


老サンタのセンド「小原 おとめちゃん、という子のようじゃ」

ハッピー・ヴェール・ニコ「え……!?」

老サンタのセンド「ん……? なんじゃ、3人して驚いて。知っとる子なのか?


ヴェール「ハッピーセンパイ……、"おとめちゃん" って……」

ハッピー「うん……」


園児の少女・おとめ(回想)『クリスマスなんて……、明日なんて、こなきゃいいんだ!』


ハッピー「なないろ幼稚園の……、クリスマスがキライなあの子だ……」

ニコ「わたしも、本の中で聞いてたよ……。クリスマスにプレゼントがもらえなくって、ツラい思いをしたんだよね……」

ハッピー「うん……」

ハッピー「……あの子には、絶対プレゼントを届けなきゃ」

ハッピー「あの子は、クリスマスが――明日が、イヤなものだって思ってる……。そんなの……、悲しいよ……」


ハッピー「おとめちゃんには、希望を持ってほしいの。明日はもっといいものなんだ、って、キラキラ輝いてるんだ、って、思ってほしいの」

ハッピー「だから、この最後のプレゼント、絶対おとめちゃんに届けなきゃ……!」

ヴェール「ハッピーセンパイ……。わたしも、同じ気持ちです」

ニコ「うん……!」


ニコ「行こう、みゆき! おとめちゃんにプレゼントを――希望を届けに!」

ハッピー「うんっ!」

赤髪の青年「ああ、キミ達。悪いけど、プレゼント渡すの、ちょっと待ってもらえないかな」

ハッピー達「!?」


ハッピー「え……? 今、人の声が……!? どこ……!?」

赤髪の青年「ここだよ、ここ。キミ達のすぐそばさ」

ヴェール「え……!? お、男の人が……、空を飛んでる……!」

ニコ「あなたは一体……!?」


赤髪の青年「ボクの名前は "レド" っていうんだ。"クリスマスを台無しにしようとしてる悪い人達のボス" って言ったらわかってもらえるかな?」

ハッピー「! それじゃあ……、あなたがサンタさん達を……!」

レド「そう。ジャマしてたのさ。ボクの部下を使ってね」


レド「でも、どうやらボクの部下はキミ達の仲間にみんなやられちゃったみたいなんだ」

レド「だから、ボク自身がこうして出てきたってわけ」

レド「えーっと、プリキュア、って言ったっけ。その最後のプレゼント、ボクにくれないかな? それを子どもに渡されると、すごく困るんだ」

ハッピー「な、なに言ってるの……!? ダメだよ! これは大切なプレゼントなんだから!」

レド「どうしてもダメかい?」

ヴェール「ダメです……! 子ども達の希望を奪おうとしている人達には、あげられませんっ……!」

レド「……じゃあ、しょうがない」シュバッ

ハッピー「え……、あの人が消えて――」


レド「力づくでもらうことにしようか」

ハッピー「!? う、後ろ!?」


バチィッ!


ハッピー「わぁぁっ!?」

ヴェール「ハッピーセンパイっ……!」

ハッピー「あの人……、軽く手を払っただけなのに……、当たった手がシビれちゃってる……!」

ニコ「スゴいパワーってこと……!?」


レド「あれ? 今のでも平気なんだ? ふぅん……。さすが、あいつらをやっつけただけのことはあるね」

レド「じゃあ、ちょっとだけ本気出してみようかな」グゥゥッ…!


マティ(デコル)「あの方、握りこぶしを作って……! ヴェール、パンチが来ます!」

ヴェール「うんっ……! "ヴェール・カーテン"っ……!」パキィィィィンッ!

レド「それっ」ブンッ


ガッ

ビシビシッ…! バリィィィィンッ…!


ヴェール「……!? そ、そんな……!」

マティ(デコル)「"ヴェール・カーテン" が、こんなカンタンに割られてしまうなんて……!」

レド「結構固い盾みたいだけど、ボクにとっては紙みたいなもんさ」

レド「さ、もう一発いくよ」ブンッ

ヴェール「……!」


ドガァァァァァァッ!!


ヴェール「きゃぁぁぁぁっ……!?」

老サンタのセンド「いかん! パンチで飛ばされてしもうた……! ソリから落ちてしまうぞ!」

ハッピー「ヴェールっ!」ガシッ


レド「おっと、危ない危ない。ピンクの子、紫の子が落ちる直前に手を掴んだね」


ヴェール「……ハッピー……センパイ……」

ハッピー「だいじょうぶだよ、ヴェール、すぐ引き上げるから……!」


レド「ふふっ、これはいい。キミ達はボクのことを散々ジャマしてくれたみたいだからね。ちょっとイジワルしてみようか」

レド「ピンクの子。キミにチャンスをあげるよ。これから、ボクが選択肢を出す。それに答えてくれたら、ボクはこれ以上何もしないで帰るよ」

ハッピー「え……? な、なにを言って……」

レド「キミが使えるのは右手だけ、ってことにしようか。その手でどちらを掴むか選ぶんだ」


レド「最後のプレゼントか、その紫の子の手か」

ハッピー「……!?」


レド「最後のプレゼントを選べば、紫の子はそのまま落ちちゃうね。それならそれでいいよ。ボクは何もせずに帰ろう」

レド「でも、そのままその子の手を離さないのなら、プレゼントはいらない、ってことにして、ボクがもらって帰る」

ニコ「そんな……! そんなの、選べっこない! ヒドいよ!」

レド「だから言っただろう? "イジワル" だって」


レド「さぁ、どうする、ピンクの子? キミは、どちらを選ぶんだい?」

ハッピー「……!」

キャンディ(デコル)「ハッピー……!」

ハッピー「……わたしは、この手を離さないよ。このまま、ヴェールを助ける……!」

ヴェール「ハッピーセンパイ……!?」

レド「じゃあ、最後のプレゼントはいらない、ってことでいいんだね? 遠慮なくもらっていくよ」スッ

ニコ「ダメ、やめて! それは、とっても大切なものなの! 持っていかないで!」

レド「それなら、力づくで止めてみたらいいよ。できれば、の話だけどね」


レド「まぁ、ムリだろうね。キミからは特別な力を感じない。この子達に比べると、あまりに無力だ。そこで大人しく見てる方が身のためだよ」

ニコ「……っ!」

老サンタのセンド「……お前さん、なんだってこんなヒドいことをするんじゃ……!? そのプレゼントは、子ども達の希望なんじゃぞ……!? それを奪うとは……!」

老サンタのセンド「しかも、プリキュアのお嬢ちゃん達まで必要以上に苦しめおって……! 一体、なにが目的なのじゃ……!?


レド「……ボクはね、クリスマスがキライなのさ」


レド「クリスマスだけじゃない。サンタクロースも、プレゼントも、希望も、そして……明日も。クリスマスに関わる全てが大っキライなのさ……!」

レド「だってそうだろう? クリスマスなんて、明日なんて、幸せじゃない者にとってはうっとうしいだけだよ。周りが幸せな分、余計にね」

レド「だったら、最初っから明日なんてなければいい。そうすれば、明日がキライな者達も苦しまないで済む」

レド「ボクは、それをやろうとしてるだけだよ」


老サンタのセンド「なんということを……!」

ハッピー「……そんなことないよ……!」

レド「ん? 何か言ったかい?」

ハッピー「明日が絶対イヤなもの、だなんて、そんなことないっ!」


ハッピー「明日がどうなるかなんて、誰にもわかんないよ……! でも、だからこそ、ステキな日になるかもしれない……! 今日がイヤな日でも、明日はいい日になるかもしれない……!」

ハッピー「だから、明日はみんなにとっての希望のはずだよ! 明日がなければいい、だなんて、そんなこと絶対ないよっ!」

ニコ「……みゆき……」


レド「……ふぅん。キミ、それがホントだと思ってるのかい?」

ハッピー「もちろんだよ……! わたしは、明日はいつだって、キラキラ輝いてるって信じてる……!」

レド「そうか……」


レド「それならちょうどいい。ボクからもキミに一つ、プレゼントをしよう。"絶望" というプレゼントをね。そのプレゼントを受け取ってもらえば、キミも思うはずさ」

レド「"明日なんて来なければいい" ってね」

ハッピー「え……? ぜ、絶望……?」

レド「キミは知っているのかな。サンタクロースっていうのはね、この世界とは違う世界に住んでいるんだよ」

レド「だから、サンタクロースはこの世界にいつもいられるわけじゃない。こっちの世界に来られるのは、12月24日、クリスマスイブの日だけなんだ」

ハッピー「そ、そうなの……? センドさん……?」

老サンタのセンド「うむ、本当じゃ……」


老サンタのセンド「じゃが、それがどうした!? どうしてそれがキュアハッピーを絶望させることになるのじゃ!?」

レド「いや、なぁに。ピンクの子は、そこの女の子と仲が良さそうだからさ。ホントのことを知ったら、ショックを受けるんじゃないかな、って思ってさ」

ニコ「……!!」

ハッピー「ニコちゃんの、ホントのこと……?」

レド「うん。実は、その子は――」

ニコ「やめて! 言わないで! みゆきには知ってほしくないの!!」

ハッピー「……ニコちゃん……? どうしたの……?」

レド「……やっぱり知らせてなかったんだね。そんな感じしたからさ」


レド「でも、そうとわかったら、なおさら言わないわけにはいかないね。ボクは、ピンクの子に絶望してほしいんだから」

ニコ「やめて! お願いだから……!」

レド「ボクにはわかるよ。ニコっていうその子も、この世界の子じゃないんだろう?」

レド「その子は、サンタクロースの力でこの世界に存在しているに過ぎないんだ。……ボクの言っている意味、わかるかい?」

ハッピー「え……、それが何だって――」


ハッピー「――あ……! ……もしかして……、もしかして……!」

レド「そう」


レド「サンタクロースの力でこの世界に来ているその子は、サンタクロース同様、明日が来れば消えてしまうのさ」

ハッピー「!!」


ハッピー「……ホントなの……、ニコちゃん……?」

ニコ「…………」

レド「何も言えないのかい? でも、否定もできないんだから、それってホントだって言ってるようなものだよね」

レド「さて、ピンクの子。キミ達は、子ども達に希望を与えて、明日が来るように、ってガンバっているね」

レド「でも、それでいいのかな? 本当に、明日が来てもいいのかな?」


レド「仲良しのその子と別れることになるけど、いいのかな?」

ハッピー「……!!」


レド「ふふっ、青ざめた、いい表情をしているよ。ボクのプレゼント、気に入ってもらえたみたいだね」

レド「それじゃあ、ボクはこの最後のプレゼントを持って帰ることにするよ! このプレゼントが最後の子どもに届かない限り、明日は来ない!」

レド「でも、よく考えてみるといいよ! イヤなことが待ってる明日に向かうことが、本当に正しいことなのかをね!」

レド「じゃあ、さよならだ、プリキュア! はははははっ!」


シュバッ


老サンタのセンド「……消えてしもうた……」


ハッピー「…………」

ヴェール「……ハッピーセンパイ……」

シャンシャンシャンシャンッ


サニー「ハッピーっ!」


シャンシャンシャンシャンッ


マーチ「ハッピーっ!」


ヴェール「サニーセンパイ……、マーチセンパイ……、みなさん……!」


ノーブル「私達を襲ってた人たちは、とりあえずやっつけたよ。しばらくは動けないと思う」

ピース「だから、ハッピー達が心配になって追ってきたの!」

ビューティ「プレゼント配達はどうなりましたか……!?」


ハッピー「…………」


サニー「……ハッピー? どないしたん……!? なんでそんなに落ち込んどんの……!?」


ヴェール「……今まで何があったか、ハッピーセンパイの代わりにお話します……」

ノーブル「――え……!? 最後のプレゼントが、悪い人達のボスに取られちゃった……!?」

ヴェール「はい……。その人、とっても強くて……、わたし、何もできませんでした……。それどころか、わたしのせいでプレゼントまで取られちゃって……!」

老サンタのセンド「あの状況ではしかたなかろう……。あまり、自分を責めてはいかんぞ、キュアヴェールや」

ヴェール「…………」


サニー「しかも……、ニコちゃん、ホントは今日までしかこっちの世界におられんかったんやな……」

マーチ「あたし達がプレゼントを配り終えて明日が来たら……、ニコちゃんはまた "絵本の世界" に帰らなきゃならないなんて……」

ビューティ「本当なのですか、ニコさん……?」

ニコ「……うん……」

ニコ「プレゼントの配達前に話した通り、わたしはクリスマスを守ってくれるプリキュアのみんなのところに案内するために、サンタクロースの力を借りてたの……」

ニコ「だから、さっきあのレドって人が言ってたとおり、わたしも、サンタクロースと同じで 12月24日までしかこっちの世界にいられない……」

ニコ「最初っから、全部終わったら、みんなとはお別れしなきゃいけなかったの……」


ニコ「……このことは、みんなには知られたくなかった……。だって、お別れするってわかったら、プレゼントの配達がやりづらくなっちゃうから……」

ニコ「今のみゆきみたいな気持ちに、なっちゃうと思ったから……」


ハッピー「…………」


ピース「ハッピー……、ニコちゃん……」

ハッピー「……わたしね、さっきニコちゃんとまた会えた時、ホントにウルトラハッピーだったんだ……」

ハッピー「ニコちゃんはわたしの大好きな友達で……、でも、本の中からは出て来られないから、会えなくて……。それが……、少しさみしくて……」


ハッピー「だから、目を覚ました時ニコちゃんがいて、ホントにうれしかったんだよ……。"これからはいっしょにいられるのかな" って……」

ハッピー「いっしょにおいしいもの食べたり……、お洋服選んだり……、色んなところで遊んだり……、できると思ったんだ……」


ハッピー「……でも、それって、叶わないんだよね……」

ハッピー「みんなの希望とハッピーを守るためには、ニコちゃんと……お別れしなくちゃ、いけないんだよね……!」


ハッピー「わたし……、わたし、イヤだよ……。せっかくまたニコちゃんと会えたのに、お別れなんて……イヤだよ……!」

ハッピー「わたし、ずっとこのままがいい……。ニコちゃんと、ずっといっしょにいたい……!」

ハッピー「……今なら、あのレドって人が言ってたこと、ちょっとわかる……」

ハッピー「こんなに明日がツラいなら……、イヤなことが待ってるなら……」


ハッピー「"明日なんてこなくていい" 。……そう思ってる、わたしがいるの……」


ニコ「……みゆき……」


ニコ「…………」

ガシッ


ハッピー「……! ニコちゃん……、わたしの肩をつかんで……?」

ニコ「……ダメだよ、みゆき。みゆきがそんなんじゃ、ダメだよ……!」

ニコ「わたしだって、みゆきやみんなと離れ離れになりたくない……! わたしだって、ホントはずっとみんなといっしょにいたい……!」


ニコ「でも、それじゃダメなんだよ! だって、わたし達がガンバらなきゃ、みんなに "明日" が来ないんだから……!」

ニコ「おとめちゃんや、子ども達みんなにも、"いい明日" が来ないんだから……!」

ニコ「……みゆき。さっき、言ってたよね。"明日はみんなにとっての希望なんだ" って」

ニコ「確かに、あのレドって人が言ってたみたいに、明日もイヤな日ってことはあるかもしれない……。そんな明日になるのが、イヤになることもあるかもしれない……」


ニコ「でも、その次の日はいい日になるかもしれないよ? その日がダメでも、そのまた次の日がいい日になるかもしれない」

ニコ「そうだよね? だって、先のことは誰にもわからないんだから……!」


ニコ「だから……、だから……! 目の前にイヤなことがあっても、ガンバって先に進もうよ! そうすれば、いつかきっと "いい明日" が来るかもしれない!」

ニコ「そうしないと……、ツラいことから逃げてばっかりいると……、うまく笑えなくなっちゃうよ……! 今のみゆきみたいに……!」


ハッピー「……!」

ニコ「……わたしはいつだって、みゆきやみんなには、キレイな笑顔でいてほしい。そう願ってる」

ニコ「だって、わたしは前、みゆき達に笑顔の大切さを教えてもらった。だから、そう思えるんだ」


ニコ「……だから、ガンバろう? ツラいことがあるかもしれないけど、負けないでガンバろうよ」

ニコ「それで、思いっきり笑える "明日" に進もう。ね、みゆき」


ハッピー「……ニコちゃん……」

ハッピー「…………そうだよね。わたしがヘコたれてちゃ……、ダメだよね……!」

ハッピー「わたしだって、みんなには笑顔になってほしい。今はムリでも、笑顔になれる "明日" がきっと来るって、信じてほしい」

ハッピー「大人の人にも……、子ども達にも……、……おとめちゃんにも……!」


ニコ「みゆき……!」

ハッピー「……ゴメン、みんな。わたし、あきらめちゃうところだった」

ハッピー「ニコちゃんとお別れするのはイヤだけど……、すごくイヤだけど……!」

ハッピー「それでも、やらなくっちゃいけないんだ! みんなが、わたし達が、"いい明日" に進むために!」


ハッピー「だから、お願いみんな、力を貸して……!」


サニー「ハッピー……! ……当ったり前やろ!」

ピース「このまま明日が来ないなんて、そんなのいいわけないよ!」

マーチ「絶対に、あたし達でみんなの "希望" を取り戻すんだ!」

ビューティ「そして、その "希望" を必ず皆さんに届けましょう!」

ノーブル「そうだね! なんてったって、今の私達はサンタさんなんだから!」

ヴェール「……行きましょう、ハッピーセンパイ……!」


ハッピー「うん! おとめちゃんのための最後のプレゼント……、絶対に取り返そうっ!」

6人・ニコ「うんっ!」

~ 七色ヶ丘市 繁華街 ~

サック「むー! むー!」ジタバタ

ルドルフ「あーあ、こりゃまたハデに埋まってんなぁ……。頭っから壁に突っ込んでるよ」

スレイ「どけ、ルドルフ。オレが引っ張り出そう。……ぬぅんっ!」


ズボッ!


サック「ぷはー! 助かったー。ありがとうなんだなー、スレイー」

スレイ「礼には及ばん」


ルドルフ「……にしても、おいら達なっさけねーよなー……。みんなしてプレゼントを奪えないなんてよ……。ご主人になんて言ったらいいんだか……」

スレイ「…………」

ルドルフ「ん? どうしたんだよ、スレイ。黙っちまって」

サック「どうしたんだなー?」

スレイ「プレゼントを奪う。確かに、それは我らが主よりいただいた命だった」


スレイ「……だが、それが本当に主のためになるのだろうか……」

サック・ルドルフ「……!」


スレイ「今まで、オレは "主のために" と働いてきたが……、果たしてこのままでいいのだろうか……」

スレイ「オレは、それが気になっている……。あの、プリキュアという者達の、真っ直ぐな目を見てからな……」


サック・ルドルフ「…………」


サック「……確かにー、あの子達を見てるとー、ぼく達の "昔" を思い出すんだなー」

ルドルフ「……そーだな。"プレゼント届けるんだー!" ……ってよ」

スレイ「うむ……」

スレイ「お前達、城に戻るぞ」

スレイ「そして、見届けるのだ。あのプリキュア達に、我が主を変えるほどの力があるのかを」


ルドルフ「……ああ」

サック「わかったんだなー」

~ 七色ヶ丘市上空 雲の中 モミの木城 ~

レド「……さて、このプレゼント……、どうしようかな」

レド「これを壊せば、もう明日は永遠に来ないな。"希望" は全てなくなる。……そうしようかな」

レド「…………」


レド(……プレゼント……か……。あの時、ボクがこれを……)


レド「……! ふふっ、何を考えてるんだ、ボクは。今さらそんなことを考えたってしょうがないだろう」


レド「……やはり壊してしまおうか。そして、二度と明日が来ないようにするんだ」

レド「ボクには、明日なんて必要ないんだから……!」

ダダダダッ!


ファー・ソルジャーA「ファファーっ! ファファファーっ!」

レド「……なんだ、やかましいな。"一大事" ? 一体どうしたって言うんだ」

ファー・ソルジャーB「ファーっ! ファファーっ!」

レド「……! 少女達の侵入者……? ……そうか、あのプリキュアという子達が来たのか。あれだけ言ってやったのに、こりないな……!」


レド「わかった。ボクが行こう。あの子達は、今どこに――」


バァァァァァァンッ!


レド「! 部屋の扉が開いた」


ザッ


サニー「いたっ! あの赤い髪の兄ちゃんが、その "レド" っちゅーやつか!?」

ヴェール「そうです……! あの人です……!」

マーチ「ホントみたいだね。プレゼント持ってるよ!」

ビューティ「あれが、最後のプレゼント……!」


ハッピー「……そのプレゼント、返してもらいに来たよ!」

レド「……やれやれ」

レド「しかし、いいのかい? このプレゼントを子どもに渡してしまっても?」

レド「さっき言ったよね。このプレゼントを渡せば明日が来て、そこにいるキミ達の大切なお友達とはお別れしなきゃいけないんだ、って」

レド「そんなのイヤだろう? その子のことが好きならさ。それでも、プレゼントを取り返すっていうのかい?」

ハッピー「うん」


ハッピー「先にイヤなことが待ってても、そのもっと先にきっといいことがあるって信じて、わたし達は先に進む。そう、決めたの」


レド(顔に迷いがない。本気でそう言ってるのか……)

レド(……イヤなことの先にいいことがある……だって?)

レド(…………)


レド(……ふふっ、バカバカしい。そうとは限らないじゃないか……!)

レド(ボクが、そのことを思い知らせてあげよう)

レド「……キミ達はこのプレゼントがどうしてもほしいんだね」

ノーブル「そうだよ。それはみんなの、一人の女の子の大切な "希望"。絶対に取り返す!」

レド「わかった。それじゃあ――」


レド「――んっ!」


ゴァァァァァァァァッ!!


ハッピー達「……!!」ビリビリッ


ビューティ「今のは……、気合を込めたのでしょうか……!?」

マーチ「それだけで、まるですごい風が起こったみたい……!」

ノーブル「聞いてた通り、スゴい相手みたいだね……!」


レド「このプレゼントをかけて決闘といこうじゃないか。ボクに勝てたなら、このプレゼントはキミ達に返すよ」

レド「ただし……、あくまで "勝てたら" の話だけどね!」ダッ


サニー「! 来んで! みんな、気ぃつけや!」

レド「さっきは、ボクがちょっと本気でパンチしただけでやられちゃったよね! 今度はどうかな!?」ブンッ!


マティ(デコル)「ヴェールっ!」

ヴェール「うんっ……!」


ヴェール「"ヴェール・カーテン・ハート" っ!」パキィィィィンッ!


ガァァァァァンッ!


レド「! 受け止めた……? さっきの盾は割れたのに……」

ヴェール「……もう……、負けるわけには……、いかないから……っ!」グググッ…

レド「なるほど、葉っぱの盾を 2枚重ねてるのか。さっきより強力な盾なんだね」


レド「でも、ムダだよ。んっ!」グッ


ビシビシッ!


ヴェール・マティ「!?」

ヴェール「そんな……、"ヴェール・カーテン・ハート" にまでヒビが……!」

レド「ふふ、もう少し力を入れたら割れちゃうね」


サニー「あかん……! ヴェールがピンチや! 行くで、マーチ!」バッ

マーチ「うんっ!」バッ

サニー「だぁぁぁぁぁっ! サニー・パァァーンチっ!」ブンッ

マーチ「マーチ・キィィーックっ!」ブンッ


レド「ん? キミ達は始めて見る顔だね。……でも」


バシィッ!


サニー「……!? 受け止められたんか……!?」

マーチ「こんなにカンタンに……!?」

レド「攻撃が軽いなぁ。それじゃ、ボクは倒せないよ」


バッ


ビューティ「それならばっ!?」

レド「キミも初めてだね、青い子!」

ビューティ「サニーとマーチの攻撃で両手がふさがっていては、かわせないはずですっ!」


ビューティ「はぁぁぁっ! ビューティ・ソードっ!」ブンッ

レド「氷の剣……! いいタイミングだ……!」


レド「でも残念!」


ガキィィィィンッ!


ビューティ「……!? 私の剣を、足で受けた……!?」

レド「キミの剣より、ボクの足の方が固いみたいだね」

サァァァァァァッ…


レド「……ん? これは……、霧……? 目の前が見えなくなる……!」

ノーブル「"ノーブル・ミスト" ……! 水を霧にして、あなたの視界を奪ったよ。今だよ、ピース!」

ピース「はいっ! みんな、離れて!」

ビューティ「わかりました!」バッ


ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ……っ! ピース・サンダーァァッ!!」


レド「雷!? おっと!」サッ

ピース「えっ……!? 当たってないの……!?」

レド「これくらいならかわせるさ! けど、キミ達面白いね! 色々できるんだ!」


バッ


ハッピー「そうだよ! だから、わたし達が力を合わせれば、絶対に負けないっ!」

レド「ピンクの子……!? いつの間に目の前まで……!」


ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」ドバァァァァッ!


レド「かっ、かわせない!? うわぁぁぁぁぁっ!」

レド「……なんてね」


バシィッ!


ハッピー「!? ハッピー・シャワーが……片手ではじかれた……!?」

レド「ダメダメダメ。この程度じゃ、ボクは倒せないよ」


レド「それどころか、近づいてきて、その分危険になっちゃったね」ブンッ

キャンディ(デコル)「ハッピー! パンチが来るクルぅっ!」

ハッピー「ダ、ダメ……、よけきれな――」


ドカァァァァァッ!!


ハッピー「わぁぁぁぁぁっ!?」ドサァッ

キャンディ(デコル)「ハッピーぃぃっ!」

レド「まず一人」

レド「……さて、次は誰にしようかな」シュバッ


ストッ


レド「キミにしようか」

ノーブル「……! いつの間に後ろに――」


ドカァァァァァッ!!


ノーブル「うぁぁぁぁぁっ!?」

ビューティ「ノーブルっ!」


レド「さぁ、ここからは一気にいくよ!」シュバッ

ドカァァァァァッ!!


ビューティ「きゃぁぁぁぁぁっ!?」


ドカァァァァァッ!!


サニー「わぁぁぁぁぁっ!」


ドカァァァァァッ!!


マーチ「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


ドカァァァァァッ!!


ピース「わぁぁぁぁぁぁっ!」


ヴェール「……そんな……、センパイ達が……!」


ストッ


レド「最後はキミだ。覚悟はいいかい?」


ヴェール「……!」

ヴェール「……"ヴェール・カーテン・ハート" っ!!」パキィィィィンッ!


レド「さっきと同じ盾か。どうやら、それが一番強いみたいだね」

レド「でも、さっき通じないってわかっただろう? 今度こそ砕いてあげるよ!」ブンッ


ヴェール「うっ……わぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ガァァァァァァァンッ!!


レド「……! 割れない……!? さっきはカンタンにヒビが入ったのに……!」

レド「どうしてだい? 残っているのはもうキミ一人だけだ。怖くはないのかい?」

ヴェール「コワいよ……! センパイ達が……みんなやられちゃうなんて……、コワいに決まってるよ……!」


ヴェール「でも、負けたくない! あきらめたくない! あの子はきっと……、そのプレゼントが届くのを待ってるから!」

ヴェール「プレゼントが届かなくって……、前の……、プリキュアのセンパイ達やマティちゃんに会う前のわたしみたいな……、部屋で一人ぼっちだった頃のわたしみたいな……!」


ヴェール「そんなさみしい思いはさせたくないからっ!!」


レド「……! この盾、どんどん固くなる……!」

レド「くっ……! おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」グゥゥゥゥゥッ!

ヴェール「えっ……!? もっと、力を込めて――」


ビシィッ! ビシビシッ!

バリィィィィィィンッ…!!


ヴェール「…………!」

マティ(デコル)「…… "ヴェール・カーテン・ハート" までも……、粉々に……」

レド「はぁっ、はぁっ……。ボクに息を切らせるなんて、大したもんだよ。よくガンバったね」

レド「でも、ここまでだ」


レド「ふんっ!」ブンッ


ドガァァァァァァァァァッ!!


ヴェール「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」ドサァァッ

ハッピー「ヴェ、ヴェールっ……!」

タタタタタッ


ニコ「ゆかり! しっかりして、ゆかり!」


パァッ…!


ゆかり「…………」

マティ「……そんな……、変身まで解けて……! ゆかりちゃん……、しっかりしてくださいませ!」

ニコ「ゆかりぃっ!」


レド「ふぅ……。思ったより、てこずらせてくれたね。だけど――」


サニー「…………」

ピース「…………」

マーチ「…………」

ビューティ「…………」

ノーブル「…………」

ゆかり「…………」


レド「――もう誰も起き上がれない。これで終わりだ」

レド「キミ達の負けだよ、プリキュア」


老サンタのセンド「……なんということじゃ……! もう、希望はないのか……!?」

ハッピー「……まだ、終わってないよ……っ!」

レド「ん?」


ググググッ…!


ハッピー「はぁっ……、はぁっ……」

レド「なんだ、ピンクの子。まだ立てたのかい?」


レド「でも」ビュッ


ビシィッ!


ハッピー「うぁっ……!?」ヨロッ…

レド「ちょっと手を払っただけで倒れそうじゃないか」


レド「もう戦う力もない。勝つための方法もない。それでも、どうして立っているんだい?」

レド「苦しいだろう? ツラいだろう? なら、もうやめたらいい。明日に進むなんて、やめたらいい。どうせ、明日になったって、キミにはツラいことが待ってるんだから」

レド「ずっと今日を過ごすんだ。そうすれば、これから起こるハズのツラいことは全部さけられる」


レド「それで、いいじゃないか」


ハッピー「…………」

ハッピー「……ダメなの、それじゃ……」

レド「どうしてだい? ツラいより、ツラくない方がいいに決まってる。なのにどうして?」

ハッピー「…………」


ハッピー「……今やめたら……、明日に進まなかったら……」

ハッピー「ツラいことのもっと先にあるかもしれない、ウルトラハッピーには絶対に出会えないから……!」

レド「……!」

ハッピー「わたしの、大好きな友達が教えてくれた……。ツラいことから逃げてばっかりじゃ……、うまく笑えなくなっちゃう、って……」

ハッピー「わたしは、みんなの笑顔が大好き……! そんなみんなといっしょに、わたしも笑顔でいたい……!」

ハッピー「だから……、そのためには、今日も、明日もツラくっても……、その先に向かってガンバらないといけないの……! だから、わたしはガンバりたいの……!」


ハッピー「わたしだけの、ウルトラハッピーのために!!」


レド「…………」


レド「……そう。なら教えてあげるよ。ガンバったってどうにもならないこともある、ってことを」

レド「キミが何を言おうと、どうせも何もできやしないんだ」

レド「思い知るんだね。ここで、ボクに倒されることによって」


ハッピー「……っ!」

ニコ「……どうしよう……、このままじゃ、みんなが……、みゆきが……!」

ニコ「……でも……!」


レド(回想)『キミはこの子達に比べると、あまりに無力だ。そこで大人しく見てる方が身のためだよ』


ニコ「…………」


ニコ(どうして……、どうしてわたしには、みゆき達みたいな力がないの……!?)

ニコ(わたしにも力があれば……、みゆき達を助けてあげられるのに……)


ニコ(みゆき達を、明日に行かせてあげられるのに!!)

パァァァァァァッ…!


ニコ「えっ……!?」

ゆかり「……ニコさんが持ってる絵本が……、光ってる……?」

マティ「これは……!」


マティ「ニコ様。その絵本、わたくしにお貸しいただけないでしょうか」

ニコ「え? ど、どうして?」

マティ「クリスマスの一大事のため、まだちゃんと自己紹介できていませんでしたわね。わたくしは、絵の国・ピクチャーランド王女のマティエールといいます」


マティ「わたくしは、ほんの少しではありますが、絵に関する色々な力を持っております」

マティ「ですから、わかるのです。その絵本から、あなた様を呼ぶ方のお声が聞こえます。"あなたを助けたい" という声が」

マティ「わたくしにお任せいただければ、その方の絵に力を与え、短い時間だけでもこの世界に出現させることが可能ですわ」

ニコ「サンタクロースの力で、わたしがここにいるみたいに……?」

マティ「はい」


ニコ「……よくわからないけど、お願い!」

ニコ「わたし、みゆき達を助けたい……! それができるなら、なんでもするよ!」

マティ「わかりましたわ!」

パラッ


マティ「……絵の国の王女・マティエールが、あなたに力を与えます」

マティ「出てきてください! ニコ様をお助けしたい絵よ!」


パァァァァッ!


ゆかり「絵本が……光って……!」


ポンッ


魔王「…………」

ニコ「え……!? ま、魔王……!?」

ゆかり「本から何か飛び出した……! 丸い、コウモリのぬいぐるみみたいな……」

魔王「やい、おまえ! ぬいぐるみとはなんだ! おれは、こう見えてもコワーい魔王様なんだぞ!」

ゆかり「わっ、しゃ、しゃべった……!? ご、ごめんなさい……」


ニコ「この子は "魔王"。わたしと同じ、わたしの絵本のキャラクターなの……。そっか、本が光ってたのは、あなたが出たがってたからなんだ……」

ニコ「でも魔王、どうして……?」

魔王「どうしてもこうしてもあるか!」


魔王「ニコ! おまえを助けに来たんだよ!」

ニコ「え……」

魔王「おれ、本の中でずーっと聞いてたよ。だから、今何が起きてるのか、全部知ってる」


魔王「おまえが、クリスマスを迎えられるように、プリキュアのみんなとガンバってたこと」

魔王「そのプリキュアをジャマしようとするヤツがいて、今プリキュアが大ピンチだ、ってこと」

魔王「それに……」


魔王「おまえが、そんなプリキュア達を助けたいって思ってることもだ!」

魔王「だから、おれが力を貸しに来たんだよ、ニコ!」

ニコ「魔王……! ありがとう……!」


パァァァァァッ…!


ゆかり「……!? これって……!」

マティ「ま、また別の光が……!? 今度はどこから……!?」

ゆかり「……わたしの……、スマイルパクトが、光ってる……!」


ゆかり「……もしかしたら……!」

スッ


ゆかり「……ニコさん、魔王さん。このスマイルパクト、使ってください……!」

ニコ「え……。わたしが……?」

ゆかり「わたしはもう……、力、全部使っちゃって……動けないです……。でも、スマイルパクトがこうして光ってる……!」

ゆかり「たぶん、ニコさんの気持ちにこたえてるんだと思います……! みんなを守りたいっていう、ニコさんの強い気持ちに……!」

ゆかり「だから……、受け取ってください……!」


ゆかり「……わたしの代わりに、子ども達の……、おとめちゃんの……、みんなの "明日" を、守ってください!」

ニコ「ゆかり……」


ニコ「…………」

ガシッ


ニコ「ありがとう、ゆかり。これ、借りるね」

ニコ「わたし……、戦うよ! ゆかりの分まで!」

ゆかり「……! ありがとう……ございます……!」


ニコ「行こう、魔王! お願い、力を貸して!」

魔王「よし来た!」


ダッ!

レド「さ、そろそろおしまいにしようか。覚悟はいいね、プリキュア」

ハッピー「はぁっ……、はぁっ……」

レド「それじゃあ……、これで終わりだよ!」ブンッ


ザッ


ニコ「待って! もうこれ以上、みゆき達は傷つけさせない!」

ハッピー「……!? ニコちゃん……!?」

レド「……ボクとピンクの子の間に立って……、どういうつもりだい? キミには何もできやしないっていうのに」

ニコ「……そうかもしれないけど……、でも! やれるだけ、やってみたい!」


ニコ「わたしも、みゆき達といっしょに、ずっと笑顔でいたいから!」


サッ


ハッピー「! ニコちゃん……、それ……、スマイルパクト……!?」

キャンディ(デコル)「スマイルパクトが光ってるクル……! これなら……!」


キャンディ(デコル)「魔王! キャンディ達みたいに、デコルになるクル!」

キャンディ(デコル)「ニコちゃん! デコルになった魔王をスマイルパクトにはめて、叫ぶクル!」


キャンディ(デコル)「"プリキュア! スマイルチャージ!!" って!」


ニコ「わかった!」

ニコ(……前のわたしは、笑顔がキライだった……)

ニコ(自分がツラいのに、他の人が楽しそうにしてるのが、イヤだった……!)


ニコ(でも、それじゃあダメなんだ。周りの人達をうらやましがったり、憎んだりしてるだけじゃ、わたしだって楽しくない……)

ニコ(だから、わたしがまず笑顔になって、みんなを笑顔にしてあげなきゃいけなかったんだ! みゆき達が、そう教えてくれた!)

ニコ(だって、わたしは……、わたしは……!)


ニコ(わたしは、ニコニコ笑顔のニコだから!!)

ニコ「行くよ、魔王!」

魔王「おう! デコル・チェーンジ!」ポンッ


ニコ「…………」


ニコ「プリキュア! スマイルチャージ!!」


パチンッ!

レディ!


ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ウィッシュ!!

バァァァァァァァッ!!


レド「うっ……!? これは……紫の、光……!?」


ニコ「…………」


サニー「……ほんまかいな……」

ピース「こんなことって……!」

マーチ「ニコちゃんが……変わった……!」

ビューティ「二人目の…… "紫の戦士" ……!?」

ノーブル「クリスマスに……奇跡がおきたの……?」


ハッピー「……ニコちゃんが……」

ハッピー「ニコちゃんが……プリキュアになっちゃった……!!」

キュアウィッシュ「ニコニコ笑顔は明日への願い! キュアウィッシュ!!」


ハッピー「キュア……ウィッシュ……!」


レド「キュアウィッシュ……」


ウィッシュ「……できた……! みゆき、わたしもプリキュアになれた……!」

ハッピー「……うん……! すごい……、すごいよ、ニコちゃん! ……ううん、ウィッシュ!」


ウィッシュ「……レド……。みゆき達の "明日" を奪うなんて、絶対にさせない!」


レド「…………」

レド「……威勢がいいね。キミまで変身するなんて、ちょっと驚いたけど……、だからどうだっていうんだい?」

レド「キミもあそこで寝ている他の子達みたいに……、這いつくばらせてあげるよ!」ダッ


ハッピー「ウィッシュ! その人、すごく強いよ! 気をつけて!」

ウィッシュ「……だいじょうぶだよ、みゆき」ニコッ

ハッピー「え……?」


レド「これで、終わりさ!」ブンッ

バシィィンッ!


レド「!? ボクのパンチを……止めた……!? しかも……、片手で……!?」

ウィッシュ「…………」グググッ…


ハッピー「……うそ……」


レド「ぐっ……! うぉぉぉぉぉぉぉっ!」グググッ…

ウィッシュ「…………」グググッ…

レド「ビクともしない……!? 完全に押し負けている……! なぜだ……、他の子達はカンタンに倒せたのに、なぜ……!?」

ノーブル「ニコちゃん……、じゃない、キュアウィッシュ……、スゴい……! ホントに、どうなってるの……!?」


ビューティ「……そういえば、今のウィッシュは、あの魔王さんの力を借りて変身しているんでしたね」

マーチ「あ……! そうだね、だからあんなにスゴいのかな……!」

ノーブル「え……? あの魔王ってちっちゃい子、そんなにスゴいの……?」

サニー「スゴいなんてもんじゃなかったですわ……」

ピース「前に戦っちゃったことがあるんですけど、その時は、わたし達みんなが力を合わせても歯が立たないくらいでしたから……」

ビューティ「あのとてつもない力は、その魔王さんのおかげかと思います……!」

ノーブル「そういうことなんだ……」

ウィッシュ「やぁぁぁぁっ! ウィッシュ・パァーンチッ!」


ドガァァァァァッ!!


レド「う、ぐ……っ!?」


サニー「……! 効いとんで!」


魔王(デコル)「このまま行くぜ、ウィッシュ!」

ウィッシュ「うんっ!」ダッ


レド「……くっ……!」

レド「……調子に、乗るなよ!」シュバッ


ウィッシュ「! 消えた……!? これじゃ、どこから来るかわからない……!」

魔王(デコル)「あわてんな、ウィッシュ! おれの力を使え!」

ウィッシュ「魔王の力……? ……! そっか、わかったよ!」


レド(何をするつもりか知らないけど……)


シュバッ


ハッピー「! ウィッシュ、後ろっ!」

レド「もう遅いよ! このパンチはよけられない! 食らえっ!」ブンッ


ウィッシュ「(ズブブブッ)」


スカッ


レド「!? な、なんだこれは……!?」

ハッピー「え……!? ウィッシュが影に潜って、パンチをよけた……!?」


トプンッ


ピース「……影の中に入りきっちゃった……」


レド「くっ……、一体、どこに行った……!?」

バッ


ウィッシュ「あなたの後ろだよ、レド!」

レド「……!? なんだって……!」

ウィッシュ「ウィッシュ・キィィーーーックっ!」ブンッ


ドガァァァァァッ!!


レド「ぐぁぁぁぁぁぁっ!?」ドサァァッ


サニー「やったで! ダウンや!」

ビューティ「そうでした……。魔王さんは、影を自在に操る力を持っていましたね……!」

ノーブル「じゃあ、ウィッシュも影を操れるってこと……!?」

ビューティ「おそらく……!」

レド「くっ……、ボクが手も足も出ないなんて……、こんな……こんなことが……!」フラフラッ…


ウィッシュ「よろけてる! 魔王、一気に決めるよ!」

魔王(デコル)「おうっ!」


ウィッシュ「はぁぁぁぁぁぁっ……!」ブワァァァッ…!


ハッピー「影から紫の光が出て……、ウィッシュの手に集まっていく……!」


ウィッシュ「プリキュア! ウィッシュ・バスタァァァーーッ!!」


ドバァァァァァッ!!


レド「紫色の光が……! うぉぉぉぉぉぉぉっ!?」


ドォォォォォォォォンッ!!


レド「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」ドサァァッ

ハッピー「……やった……」

ハッピー「やったぁぁぁっ! やったね、ウィッシュ! すごかったよ!」


ウィッシュ「ありがとう、みゆき……! それより、みんなはだいじょうぶ……!?」


サニー「だいじょぶや……! ちょっと休んだから、何とか立てるで……!」

マーチ「ありがとう、ウィッシュ……! 勝てたのは、ウィッシュのおかげだよ!」


ウィッシュ「……ううん、そんなことないよ。この力は、わたしだけの力じゃないもん」

ピース「え……? それって……?」


ウィッシュ「わたしも、魔王も、笑顔がキライだった。その時のまんまだったら、力を出すどころか、プリキュアになることもできなかったと思う」

ウィッシュ「みんなが、みゆき達が笑顔の大切さを教えてくれたから、わたしも強くなれたんだよ」


ウィッシュ「だから、この力はみんなの力なんだ! こちらこそ、ありがとう!」ニコッ

ビューティ「ウィッシュ……」

ハッピー「……うんっ!」

ヨロッ


レド「……勝手に……盛り上がってもらっちゃ……困るなぁ……! まだ、終わっていないよ……!」


ノーブル「レド……!? まだ、動けるの……!?」

サニー「せやかて、もうボロボロやん! これ以上やってもしゃーないやろ!?」

レド「……そうはいかないなぁ……! クリスマスを……、明日を来させるわけにはいかないんだよ……!」

ハッピー「どうしてそこまで……!」

レド「それは、キミ達には関係ないことだよ……! とにかく、ボクはイヤなんだ……、絶対に止めてみせる……!」


レド「そう、どんなことをしてもだ!!」


ドクンッ


レド「ぐぅ……っ! う……うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


メキメキメキ…!


マーチ「な、なに……!? レドの、姿が変わっていく……!」

ビューティ「それに、どんどん大きくなっていきます……!」

レド「ガァァァァァァァァァァッ!!」


ピース「な、なにあれ……!? おっきな……、鳥のオバケ……!?」

ノーブル「ワシの体にライオンの足……。なにかの本で見たことあるよ……! あれは……、伝説の怪獣…… "グリフォン" ……!」


レド・獣態(グリフォン)「……ボクの体に宿ったこの力……、できれば使いたくはなかった……! 一度使えば、もう元には戻れないってわかっていたから……!」

レド・獣態(グリフォン)「でも、もうどうでもいい! どうせボクには明日なんていらないんだ……! このまま明日が来るくらいだったら……、全部ぶち壊してやる!!」

レド・獣態(グリフォン)「くらえ、プリキュアぁぁぁっ!!」


バサァァァァァッ!!

ドバァァァァァァァァッ!!


ハッピー「な、なにこれ……、羽ばたいただけで、すごい風が……っ!」

ハッピー達「わぁぁぁぁぁぁっ!」


ドガァァァァァァァンッ!!


ゆかり「センパイ……! ニコさんっ……!」

マティ「風で吹き飛ばされて、壁に叩きつけられてしまいました……!」


老サンタのセンド「いかん! ここにいてはワシらも危ない! 大人しく隠れておるんじゃ!」

ゆかり「で、でも……、みなさんが……!」

マティ「くやしいですが、今のわたくし達では何もできません……! 見守って……、そして、信じましょう……! プリキュアの皆さまを!」

ゆかり「マティちゃん……。うん……!」

ダダダダダッ


サック「わー! な、なんなんだなー、あのおっきな鳥ー!?」

ルドルフ「おい……、もしかしてあれって……!」

スレイ「うむ……。おそらく、我が主だ……! ついに、人の姿すらも捨てられてしまったのか……!?」


スレイ「……っ……!」ダッ

ルドルフ「おい、スレイ! どこ行くんだよ!?」

スレイ「主を止める! やはり……、これ以上は見ていられん!」

ザッ


スレイ「お待ちください、我が主よ!」


レド・獣態(グリフォン)「……スレイか……。どいてくれないかな……。ボクは、プリキュア達を倒さないといけないんだ……」

レド・獣態(グリフォン)「だって……、あの子達を倒さないと、明日が……クリスマスが来てしまうからね……」


スレイ「主よ……、やはり、"あの時" のことをまだ――」

レド・獣態(グリフォン)「……うるさいよ、スレイ」ブンッ

スレイ「はっ……!? 主の前足が――」


ドガァァァァァァッ!!


スレイ「ぐ……ぅ……」ドサッ

ルドルフ「スレイっ! ……おい、ご主人! 何でスレイをぶっ飛ばすんだよ! アイツは、あんたのことを心配して――」

レド・獣態(グリフォン)「いらないお世話だよ……。キミ達は僕のモノだろう……? 余計なことは言わず、ボクの言うことを聞いていればいいんだ……」

サック「……ご主人様ー……」

スレイ「う……、な、なんという力……。このままでは、主は何もかも破壊してしまう……。人も……、町も……、ご自分の未来さえも……」

スレイ「どうすれば……、どうすればよいのだ……!」


スッ


ノーブル「あなた、大丈夫……?」

スレイ「……! キュアノーブル……。なぜ、オレを気遣う……? オレは、お前達を襲った敵なんだぞ……」

ノーブル「さっき戦った時から思ってたんだけど……、あなた、そんなに悪い人じゃなさそうだから」


ノーブル「それに、ホントに悪い人だったら誰かのために傷ついてまで何かをしようとしないよ」

スレイ「……キュアノーブル……」

スレイ「……プリキュアよ。恥を承知でお前達に頼む」

スレイ「どうか……、どうか、我が主を止めてくれないか……!? お前達にならできるかもしれん……! 頼む……!」

ハッピー達「…………」


サニー「……言われるまでもないわ……! うちらかて、あの人のことは止めなあかんからな……!」

スレイ「では……!」

ハッピー「うん。やれるだけ、やってみるよ」

ハッピー「……でも、スレイさん、だっけ……。その前に、一つだけ聞かせてほしいの……」


ハッピー「どうして、あの人はあんなに明日をイヤがってるの……? あんなになってまで、明日が来ないようにしようとしてるのはどうして……?」

スレイ「……詳しくは、オレの口から言うことはできん……。あの方の名誉に関わることなのでな……」


スレイ「だが……、あの方は以前、とてもイヤな気持ちでクリスマスを過ごしたことがあるのだ……。それ以来、あの方はクリスマスを憎むようになってしまった……」

マーチ「そのせいで、クリスマスを台無しにしようとしてたってこと?」

スレイ「うむ……」

スレイ「我々では、あの方を止めることはできなかった……。あの方の言う通り、我々はあの方の所有物に過ぎないからだ……」


スレイ「だが、お前達は違う。どこまでも明日を、希望を信じるお前達なら、あの方の心を変えられるかもしれん……!」

スレイ「あの方が、明日を信じられるように……!」


ハッピー「…………」

ハッピー「……よくわからないけど、わかったよ。わたし達、やってみる」

スレイ「本当か……!」

ハッピー「うん」


ハッピー「あの人は、みんなの希望を奪おうとしていたけど……、何か事情があってそうなっちゃったんだよね……。最初っから悪い人じゃなかったんだと思う」

ハッピー「だって、こんなにあの人のことを心配してくれてる、あなたみたいな人がいるんだから」

スレイ「プリキュア……!」


ハッピー「やろう、みんな。あの人が、明日を信じられるように、ガンバってみよう!」

ハッピー「それができればきっと……、みんな笑顔でウルトラハッピーになれるから!!」


6人「うんっ!」

ゆかり「センパイ達……、あの鳥のオバケに向かっていく気なんだ……!」

マティ「しかし、ウィッシュ様以外は、人の形をしたあの方にさえ何もできなかったのに……、一体、どうすればいいのでしょうか……!?」

ゆかり「うん……! 何か……、何か方法がないかな……!?」

老サンタのセンド「うむ……!」


パァァァァァッ…!


老サンタのセンド「……む!? これは……、プレゼント袋が光って……!」

老サンタのセンド「……力を、貸してくれるというのか……!?」

ハッピー達「(ザッ)」


レド・獣態(グリフォン)「ん……? なんだ、キミ達……、まだいたのか……。さっきの羽ばたきでどこかへ飛んでいったのかと思ったよ……」

サニー「そうはイカ玉のお好み焼きや! うちらは、絶対にあんたを止めなあかんからな!」

レド・獣態(グリフォン)「止める……? 今のボクを……? ふふふっ……!」

マーチ「何がおかしいの!?」

レド・獣態(グリフォン)「おかしいさ……! さっきまでのボクに手も足も出なかったキミ達が、今のボクに何をするのかと思ってね……!」

ノーブル「……!」


レド・獣態(グリフォン)「またそっちのキュアウィッシュに頼るかい……? まぁ、今なら、負けるつもりはないけどね……!」

魔王(デコル)「アイツの言う通りだ、ウィッシュ……。ヤバイ力を感じるぞ……!」

ウィッシュ「うん……!」


ハッピー「なんとか……、なんとかしたいけど……、でも、どうすれば……!?」

ダダダダダッ


老サンタのセンド「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ!」


ピース「あれ……? こっちに走ってくるのって……センドさん……!?」

老サンタのセンド「プリキュアぁーっ! まだ希望を捨ててはならーんっ! 最後の手段が残っておるぞーっ!」

ビューティ「最後の……手段……!? それは一体……!?」

サニー「なんだかしらんけど、危ないで、じいちゃん! こっち来たらあかんっ!」

老サンタのセンド「そうはいかん! ワシはサンタクロースなんじゃ! 危なかろうが、このまま希望がなくなるところを見ておることなどできんわぁっ!」

ウィッシュ「……センドさん……!」

レド・獣態(グリフォン)「……うっとうしいなぁ……」


レド・獣態(グリフォン)「言わなかったかな……。ボクは、サンタクロースも大キライなんだよ……!」

レド・獣態(グリフォン)「チョロチョロチョロチョロ……、目障りだよ……! 踏み潰してやる……!」ブンッ


グワァッ!


ハッピー「センドさん、危ないっ! 踏んづけられちゃうっ!」

老サンタのセンド「むおっ……!?」

ガキィィィィィンッ!!


ルドルフ「うっ、ぐぅぅぅぅっ……!」

サック「お……、重いん……だなー……!」


老サンタのセンド「な、なんじゃと……! お前さんら、ワシを助けてくれたのか……!? 今までさんざんジャマしてきたのに、どうして……!」


ルドルフ「……結局は、それだってご主人の命令に従ってただけなんだよ……」

サック「でもー……、あんなご主人様ー……、ぼくはイヤなんだなー……。ご主人様が苦しんでるのはー……、イヤなんだなー……!」

ルドルフ「そうさ……! おいら達はいつだって……、ご主人に喜んでほしかっただけなんだからよ……っ!」

老サンタのセンド「お前さんら……」


ルドルフ「だから、なんかあんなら行ってくれ! そんで、ご主人を……助けてやってくれぇっ!」

老サンタのセンド「……わかった! 任せるのじゃ!」


ダダダダダッ

ウィッシュ「センドさんっ! だいじょうぶ!?」

サニー「ったく、ムチャするわぁ……! 見とるこっちがヒヤヒヤしたで……!」

老サンタのセンド「はぁっ、はぁっ、まぁ、うまくいったんじゃからいいじゃろう……!」


老サンタのセンド「それより、こいつをお前さんらに預ける……!」


ドサァッ


ハッピー「え……? これって、プレゼント袋……!」

老サンタのセンド「ゆくぞ、プリキュア! 受け取れぃっ!」


バサッ!

ブワァァァァァァァッ!!


ピース「プレゼント袋から……、すごい数の光の玉が……!」

ノーブル「私達を包んでいく……!」

ハッピー「すごい……! 力が、あふれる……!」

ビューティ「……はっ、ですが、センドさん……。これは、私達が今まで集めてきた、子どものみなさんの "希望のパワー" なのでは……!?」

マーチ「あ、そうだよね……! 使っちゃっていいの……!? このパワーが無いと、明日が来ないんじゃ……!」


老サンタのセンド「……心配なかろう。"あくまで力を貸すだけ、事が終わればちゃんと戻ってくる" 。……この希望達はそう言っとる」

サニー「え……? じいちゃん、"希望" の声が聞こえるんか……?」

老サンタのセンド「ホントはそんな事はできんのじゃが……、聞こえたんじゃ。こやつらも、"明日" のピンチに黙っておれんかったんじゃろう」

老サンタのセンド「よいか、プリキュア。希望を扱うワシにはわかる。どうしてそうなったのかはしらんが、あのレドという者は、"絶望の力" に取り付かれておる」

老サンタのセンド「ならば、今お前さんらに与えた "希望の力" があれば、その "絶望" を吹き飛ばすことができるかもしれん! そうすれば、この戦いを終わらせることもできるじゃろう!」

老サンタのセンド「頼むぞ、プリキュア! みんなの明日を……希望を、守ってやってくれ!」


ハッピー「わかりました!!」

レド・獣態(グリフォン)「どけよ……! ジャマだ……!」


ドカァァァァァァッ!!


ルドルフ「うわぁぁぁぁぁっ!?」

サック「うあーーーー!?」


レド・獣態(グリフォン)「……全く……、ボクのモノのクセに逆らうなんて……。とんだ面倒だったよ……!」


ザッ


ハッピー「そこまでだよ! もうこれ以上暴れないで!」

レド・獣態(グリフォン)「……ああ、待たせたね、プリキュア……。キミ達にもそろそろトドメをさして、終わりにしようか……」

レド・獣態(グリフォン)「それで、永遠に明日が来ない世界にするんだ……!」


ハッピー「……そんなことはさせない……!」

ギュッ


サニー「! ハッピー……? どないしたん、うちの手握って……!」

ハッピー「みんな、手をつなごう」


ハッピー「わたし、思うんだ。これから先にどんなにツラい事が待ってたって、こうやってみんなで手をつないで、いっしょにガンバっていけば……、なんだってできる、って!!」

ハッピー「だから、みんなでいっしょに明日へ……、未来へ進もう!」


サニー「ハッピー……! ……よっしゃぁ!」

サニー「ピースっ!」ギュッ


ピース「マーチっ!」ギュッ


マーチ「ビューティっ!」ギュッ


ビューティ「ノーブルっ!」ギュッ


ノーブル「ウィッシュっ!」ギュッ


ウィッシュ「うんっ!」


ハッピー「行くよ、みんなっ!!」

6人「うんっ!!」

7人「輝け! 7つの希望!! 明日を照らす、光になれ!!」


7人「プリキュア!! シャイニング・レインボー!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!!


マティ「これは……! プリキュアの皆さまが……、それぞれの光を出しながら飛んでいきます……!」

ゆかり「……まるで……虹……!」

レド・獣態(グリフォン)「!? な、なんだこれは……!? 光が……向かってくる……!?」


ハッピー「行っけぇぇぇぇぇぇっ!!」


ドバァァァァァァァッ!!!


レド・獣態(グリフォン)「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」

7人「くぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」


ルドルフ「に、虹が……受け止められちまった……!?」

サック「あー……! でもー、まだー、押してるんだなー……!」

スレイ「……頼む、プリキュア……! 頑張ってくれ……!」

ズズズッ…!


レド・獣態(グリフォン)「……!? お、押される……!? どうしてだ……!? この姿になったボクに、敵なんていないはずなのに……!」


ハッピー「これがわたし達の……、……ううん、わたし達だけじゃない。みんなの希望……、明日を信じる気持ちの力だよ……!」

レド・獣態(グリフォン)「明日を信じる……、気持ち……!?」


サニー「あんたに何があったのか……、うちらはよう知らん」

ピース「どうして、"絶望の力" っていうのに取り付かれちゃったのかもわからない……」

マーチ「でも! あたし達のこの力を見て、思い出してほしいんだ!」

ビューティ「希望を信じることは、とても良いことなのだと!」

ノーブル「それで……、できれば、あなたも明日に向かって進んでほしい……! そう願ってくれてる人達がいるから……!」

ウィッシュ「だからお願い……! もう一度、考えてみて……! 明日に向かうかどうかを……!」


レド・獣態(グリフォン)「…………」

レド・獣態(グリフォン)「……くだらない……」

レド・獣態(グリフォン)「くだらない、くだらない、くだらない!!」


レド・獣態(グリフォン)「何度も言っているだろう!? ボクには明日なんていらないんだ! どうせツラいことしかないんだから!」

レド・獣態(グリフォン)「でも、他のみんなが明日を楽しむのも許せない! だからボクは明日を失くすんだ!!」


レド・獣態(グリフォン)「明日なんて、来なければいいんだ!!」


ウィッシュ「……レド……!」

ハッピー「……本当に、それでいいの……?」

レド・獣態(グリフォン)「……何……?」

ハッピー「あなたは、本当にそれでいいの? 明日が来なくっても、ずっと今日のままでも、いいの?」

ハッピー「それじゃあ、きっと何にも変わらないんじゃないかな……。ずっとツラいままなんじゃないかな……」


レド・獣態(グリフォン)「…………」

ハッピー「ねぇ、レド。思い出してみて。今まで、あなたにはツラいことしかなかった?」

ハッピー「きっと、そんなことないと思うんだ。ツラいこともあったかもしれないけど、でも、うれしいことだってあったはずなんだ」

ハッピー「どうかな、レド」


レド・獣態(グリフォン)「…………」

(回想)『……笑った……! ねぇ、今、この子笑ったよ! そう見えたんだ! ホントだよ!』


(回想)『ボクのおかげで笑ってくれたんだ……! なんだか……、すごくうれしいよ……!』


(回想)『ボク、もっともっとガンバるよ! それで、世界中の子ども達に希望を届けるんだ!!』


レド・獣態(グリフォン)「…………」

ハッピー「もし、うれしいことがあったなら、あなたの未来にまたそれが起きるかもしれないよ」

ハッピー「でも、ずっと今日のままだったら、そんなうれしさもずっとなくなっちゃう……。それって、すごくもったいないよ……」


ハッピー「だから、明日がツラくても、その先を信じて進んでみようよ! きっと、あなただけのハッピーが待ってるから!!」


レド・獣態(グリフォン)「…………」

レド・獣態(グリフォン)「……ボクだけの……ハッピー……」


レド・獣態(グリフォン)「……明日に……、その先にあるかもしれない、ボクのハッピー……!」


レド・獣態(グリフォン)「…………ボクは……、ボクは……! ボクは……っ!!」


レド・獣態(グリフォン)「……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ドバァァァァァァァァァァッ!!!

ルドルフ「うわぁっ!? す、すごい光だ……!」

サック「ま、まぶしいんだなー……!?」


ブワァァァァッ


マティ「きゃっ……!?」

ゆかり「わぁっ……!? 光が強すぎて……と、飛ばされちゃうっ……!?」


ガシッ


スレイ「……大丈夫か」

ゆかり「あ……、ス、スレイさん……!」

マティ「ありがとうございます……!」

スレイ「礼には及ばん」


老サンタのセンド「……あいたた、か、壁に打ち付けられてしもうたわい……! ワシのことも助けてほしかったのう……」

スレイ「あいにく、オレの手は 2本しかないのだ。許せ」


フワァァァァァッ…


スレイ「む……! 光が収まっていく……!」

老サンタのセンド「どうなったのじゃ……!?」

少年のサンタクロース「…………」


ゆかり「え……? 光の中に……、サンタクロースの男の子が立ってる……?」

マティ「どなたでしょう……。わたくしの知らない方ですが……」


スレイ「……お、おお……! おおお……!!」

ルドルフ「……ホントかよ……! こんなことって……!!」

サック「……奇跡……なんだな……!!」

サニー「……あいったたた……! な、なんや……? うちらの技でえらい光が出て……、どないなったんや……?」

ハッピー「……そうだ! レド、レドは!? レドはどうなったの!?」


少年のサンタクロース「……ボクなら、ここにいるよ」


ハッピー「え……? 誰……? サンタさんの、男の子……?」

ピース「知らない子だけど……、ウィッシュ、わかる?」

ウィッシュ「ううん、わたしも知らない……」


少年のサンタクロース「ボクは、キミ達がさっきまで "レド" って呼んでた者だよ」


ハッピー達「え……!!?」


ビューティ「で、では……、もしかして……!」

マーチ「レドって、元はサンタさんだったの……!?」

少年サンタのクラウス「うん。ボクの本当の名前は、"クラウス" っていうんだ」

ノーブル「そうだったんだ……!」


老サンタのセンド「……そうか、そういうことじゃったか……。話には聞いておったが、まさかお前さんがこんなことになっとったとはのう……」

ハッピー「センドさん、何か知ってるの?」

老サンタのセンド「うむ……」

老サンタのセンド「配達をする前にちらっと話したんじゃが……、元々お前さんらの町を担当しておったサンタクロースが去年、行方不明になったんじゃ。憶えておるかの?」

ピース「そういえば、そんな話を聞いたような気が……」

老サンタのセンド「そのサンタクロースが、クラウスなのじゃ」

ビューティ「そうだったのですね……」


老サンタのセンド「しかし、クラウス……。ワシはお前さんとは面識がないが……、話には聞いておった。行方不明になった、ということだけはな」

老サンタのセンド「どうしてそんなことになってしまったのじゃ? "レド" などと名乗って、悪さをしていたのはなぜじゃ? 話してくれんかの」


少年サンタのクラウス「……うん。全部話すよ。去年、ボクに何があったのかを」

少年サンタのクラウス「去年、ボクは他のサンタクロースと同じように、プレゼントの配達をしていたんだ」

少年サンタのクラウス「途中までは順調だったよ。ボクはこの町の子ども達にプレゼントどんどん配っていったんだ」


少年サンタのクラウス「……でも、最後の一個になった時、ボクのソリをすごく強い風が襲ったんだ……。それで、ボクは最後のプレゼントを落としてしまったんだよ……」

少年サンタのクラウス「ボクは必死になって探した……。でも、いくら探しても見つけることはできなくて……、結局、最後の子にプレゼントを届けることはできなかったんだ……」


少年サンタのクラウス「落ち込んだよ……。プレゼントを待っててくれるその子に、ちゃんと届けてあげられなかったんだから……」

少年サンタのクラウス「その年は "希望のパワー" が何とか足りてたみたいで、時間を動かすことはできた」

少年サンタのクラウス「でも、サンタクロースの国に帰ったボクは、そのことでひどく叱られたよ……」

少年サンタのクラウス「"もう少しで大変なことになるところだったんだ"。"サンタクロースとしての自覚を持て" って、何度も何度も……」

少年サンタのクラウス「ボクは、それがイヤになって、サンタクロースの国を飛び出したんだ……」


少年サンタのクラウス「それからさ。ボクが、クリスマスも、サンタクロースも、プレゼントもキライになってしまったのは……」

少年サンタのクラウス「プレゼントの配達のことを思う度に、ボクは失敗した時のことを思い出して、イヤになった……」

少年サンタのクラウス「プレゼントがもらえなかっただろう子の悲しそうな顔も……、失敗して怒られたことも……、全部がイヤだった……」


少年サンタのクラウス「だから、ボクは思ったんだ。"もうクリスマスなんかに関わりたくない" って……」


老サンタのセンド「……そうじゃったか……」

老サンタのセンド「確かに、サンタクロースは重大な使命を負った仕事じゃ。失敗は許されん」

老サンタのセンド「しかし、まだ幼いお前さんにとっては、それはツラいことだったかもしれんの……」


少年サンタのクラウス「…………」

少年サンタのクラウス「そんな時だった。ボクがソリに乗って色んな世界をフラフラしていたら、同じようにフラフラと漂っていた、一枚の絵と出会ったんだ」

少年サンタのクラウス「赤い色で描かれた、不気味な人物の絵と」


少年サンタのクラウス「ボクは、その絵に取り付かれて、おかしくなってしまったんだ……。クリスマスを嫌うどころか、憎むようにさえなってしまった……」

少年サンタのクラウス「いけないことだとわかってても、心の中に憎しみと絶望が次々湧き上がってきて、どうしようもなかった……」


少年サンタのクラウス「それで、おかしくなったボクは "レド" となり、クリスマスを台無しにしようとしてしまったんだ……」


サニー「……なぁ、ハッピー。その絵って、もしかして……」

ハッピー「うん……、たぶん、そうなんじゃないかな……」

老サンタのセンド「ん……? なんじゃ、お前さんら。何か知っておるのか?」

ビューティ「私達は今、私達の世界を絶望に染めようとしている "デスペアランド" という国と戦っているんです」

マーチ「そこの連中が、悪さをする時に絵を使うんだ。もしかしたら、クラウスをおかしくしちゃったのは、そこの絵なんじゃないかな」

ノーブル「どうしてかはわからないけど、"絶望の力" に満ちた絵がどうにかして外に出ちゃったのかもしれないね……」


老サンタのセンド「なるほど……。ワシがレドに見た "絶望の力" というのは、それだったんじゃな……」

老サンタのセンド「子ども達から集めた "希望のパワー" と、プリキュア達の明日を信じる気持ちが、その絶望を吹き飛ばしてくれたのか……」

少年サンタのクラウス「……センドさん。でもたぶん、それだけじゃないよ」

老サンタのセンド「ん? どういうことじゃ?」

少年サンタのクラウス「"希望のパワー" をまとってプリキュア達が飛び込んだ時に聞いた、キュアハッピーの言葉……。それが、ボクをこの姿に戻してくれたんだと思う」

ハッピー「え……、わたしの……?」

少年サンタのクラウス「うん」


少年サンタのクラウス「ボクは、確かにクリスマスがキライになっていた」

少年サンタのクラウス「でも、キミの言葉で思い出したんだ。ボクには、"クリスマスが好きだ" って気持ちもあるってことを」

少年サンタのクラウス「最初にボクがプレゼントを配達した時、届けた子が、笑ったように見えたんだ。時間が止まっていて動けないはずなのに」

ハッピー「あ……! それ、わたしも見た……!」

少年サンタのクラウス「子ども達が、ボクのプレゼントで喜んでくれた。ボクは、そのことがとてもうれしかった……! その笑顔を見て、ガンバろうと思ったんだ……!」


少年サンタのクラウス「キュアハッピー。キミの言う通り、ボクのクリスマスはイヤなことばっかりじゃなかったよ……。ちゃんと、いいこともあったんだ……!」


少年サンタのクラウス「……だから今ボクは、もう一度、その笑顔を見たいって思ってる」

ハッピー「……! それじゃあ……!」

少年サンタのクラウス「うん」

少年サンタのクラウス「ボク、もう一度配達がしたい。子ども達の喜ぶ顔が見たいんだ……!」


ハッピー「……!(パァッ…!) ホント、クラウス!?」

少年サンタのクラウス「……うん。その気持ちがあったから、ボクは元のサンタクロースに戻れたんだと思う」


少年サンタのクラウス「だから、許されるならもう一度、ボクはサンタクロースとしての仕事がしたいんだ」

スレイ「我が主よ。その言葉、お待ちしておりました」

ルドルフ「ったく……、そう言えるようになるまでこんなに時間かけて……、手間のかかるご主人だなぁ!」

サック「ぼくたちはー、いつでもー、準備OK なんだなー」


少年サンタのクラウス「スレイ……、ルドルフ……、サック……」


スレイ「……どうやら、我らも元の姿に戻る時が来たようだ。ゆくぞ、お前達」

ルドルフ「おう!」

サック「わかったんだなー」


パァァァァァァッ…!


サニー「わっ、まぶし……!」

ビューティ「これは……! あの方々の体が光って……!」

マーチ「姿が、変わっていく……!」

老サンタのセンド「……おお……! これは……!」


ノーブル「スレイが、ソリに……!」

ビューティ「ルドルフさんがトナカイに……!」

ピース「サックさんがプレゼント袋になっちゃった……!」


クラウスのソリ(スレイ)「これこそ、我らの真の姿」

クラウスのプレゼント袋(サック)「レドの力でー、別の姿にー、変わってたんだなー」

クラウスのトナカイ(ルドルフ)「そーいうこと!」


マーチ「……あれ? ルドルフ、鼻が赤いけど……もしかして……!」

ハッピー「真っ赤なお鼻のトナカイさん!?」

クラウスのトナカイ(ルドルフ)「へへっ、まーな! その有名な一族の出身なんだ、おいら。ビックリした?」

ビューティ「ええ……。まさか、本物にお会いできるとは、思っていませんでしたから……」

ハッピー「それじゃ、クラウス。この最後の一個のプレゼント、配達しに行こうよ!」

少年サンタのクラウス「え……。いいのかい? 今までキミ達プリキュアがガンバってきたのに……、その最後をやらせてもらって……」

サニー「なんやなんや、元に戻ったら急にしおらしくなりよって。クラウスは、プレゼントの配達、したいんやろ」

少年サンタのクラウス「……うん」

ピース「じゃあ、エンリョすることないよ! プレゼント、届けに行こう!」

ハッピー「それで喜ぶ顔を見て、来年またガンバろう? ね!?」


少年サンタのクラウス「みんな……! ……ありがとう……!」


ハッピー「よぉーっし、それじゃあ、最後の配達にしゅっぱーつっ!」


全員「おーっ!」

~ 七色ヶ丘市 上空 ~

シャンシャンシャンシャンッ


クラウスのトナカイ(ルドルフ)「……って、なんで全員乗ってくんだよ! 重いだろ! 引く方の身になれよ!」

ハッピー「だ、だってぇ……、せっかくだから、最後の配達するところ、見たいんだもん……」

クラウスのソリ(スレイ)「仕方のないヤツらだ……。明らかに定員オーバーなのだが……、落ちるなよ」

ノーブル「心配してくれるの、スレイ? ありがと!」

クラウスのソリ(スレイ)「……礼には及ばん」

少年サンタのクラウス「それで、最後の配達先は?」

ハッピー「あのね、小原 おとめちゃんっていう子なんだけど」

少年サンタのクラウス「……え……!? そ、それ、本当かい……!?」

サニー「どないしたんや、そないビックリして」

少年サンタのクラウス「そりゃあ、驚くよ……」


少年サンタのクラウス「だってその子、ボクが去年プレゼントを届け損ねた子なんだから……!」

ハッピー・ヴェール・ニコ「え……!?」


ヴェール「……そうだったんだ……。だから、おとめちゃんのところにはプレゼントがなかったんだ……」

マティ(デコル)「すごい偶然ですわね……」

ニコ「……でも、それじゃあ、1年越しのプレゼント、ってことになるんだね」

ハッピー「……あのね、クラウス。そのおとめちゃんって子、クリスマスのことキライになっちゃってるんだ……。去年、プレゼントがもらえなかったから、って……」

少年サンタのクラウス「……! そうか……。それは、ボクのせいだな……」


ハッピー「だからさ、今度こそ、おとめちゃんにプレゼントを――希望を届けに行こうよ!」

ハッピー「それでおとめちゃんが喜んでくれれば、クラウスも、おとめちゃんもきっと、みんな笑顔でウルトラハッピーになれるから!」

少年サンタのクラウス「……うん、わかった! ルドルフ、頼む!」

クラウスのトナカイ(ルドルフ)「あいよー! しっかりつかまってなーっ!」


シャンシャンシャンシャンッ…

~ 七色ヶ丘市 小原家 おとめの部屋 ~

スルッ


ハッピー「……ここが、おとめちゃんの部屋……」

ニコ「あ……、見てみゆき……! おとめちゃんの枕元、プレゼントがない……!」

ハッピー「ホントだ……! ……今年も、お父さんとお母さん、帰ってこられなかったんだ……」


ハッピー「でも、今年はだいじょうぶだよね。だって、クラウスがプレゼントを届けてくれるから。お願いね、クラウス」

少年サンタのクラウス「うん」


スッ


少年サンタのクラウス「…………」

ハッピー「どうかな……。おとめちゃん、喜んでくれるかな……」


園児の少女・おとめ「――――」ニコッ


少年サンタのクラウス「……!!」

ハッピー「クラウス、今、笑ったよ……!? おとめちゃん、笑ったよね……!?」

少年サンタのクラウス「うん……、見たよ、確かに……!」

ハッピー「よかったね、クラウス……!」

少年サンタのクラウス「……うん……っ!」

パァァァッ…!


ヴェール「あ……! おとめちゃんの体が……光って……!」


ポンッ


ピース「出たっ! 最後の "希望のパワー"!」


ヒューン…


マーチ「"希望のパワー" が、プレゼント袋に吸い込まれてく……!」


バァァァァァァッ!


老サンタのセンド「おおお……! このプレゼント袋の輝きは、まさしく……!」

ゴォーン… ゴォーン… ゴォーン…


ビューティ「これは……もしや、時計の鐘……!?」

ノーブル「と、いうことは……!」チラッ


おとめの部屋の時計『(0:00)』


ハッピー「……時間が……動いた……! やったんだ、わたし達……!」

ハッピー「ちゃんと……、明日になったんだ……!!」


ハッピー「……やっ……」

全員「やったぁぁぁぁぁーーっ!!」


少年サンタのクラウス「……やったのかな……。ボク、ちゃんとできたのかな……!?」

ハッピー「そうだよ、クラウス! クラウスが届けたプレゼントのおかげで明日になったんだよ!」

少年サンタのクラウス「……そっか……。ははっ……、そっかぁ……!」

園児の少女・おとめ「……ん、うん……。……パパ……? ……ママ……?」

全員「!!」ギクッ


サニー「……せやった……。明日になった、っちゅーことは……!」

ピース「時間も動いてるんだね……!」

マーチ「このままじゃ、おとめちゃんに見つかっちゃう……!」

ビューティ「そうなる前に……!」


ハッピー「逃げよーうっ! ほら、みんな急いで!」

ニコ「う、うんっ!」


ドタドタドタッ…

~ 七色ヶ丘市 空き地 ~

はるか「うーん……、ちょっと慌しかったね……。仕事が終わった感慨に浸る時間くらいは欲しかったなぁ……」

老サンタのセンド「サンタクロースというのは、そういうもんなんじゃよ。仕事が終わったら喜ぶ前にサッと帰る、まさしくプロなのじゃ」

あかね「っちゅーか、じいちゃん……。時間動くの知っとったんなら、先に言っといてや……」

老サンタのセンド「ほっほっほ! すまんすまん! ワシも浮かれて忘れておったわい!」

みゆき「もー、センドさんったらー」


全員「はははははっ!」

やよい「……? あれ? センドさん、なんだか、透けてきてない?」

老サンタのセンド「む。……そうか、時間じゃな」スゥゥッ…

なお「時間って……、……あ」

少年サンタのクラウス「役目が終わったボク達サンタクロースは、自分たちの国に帰らなきゃならない……」スゥゥッ…

あかね「そういえば、そうやったな……」


みゆき「……待って、それじゃあ……!」

ニコ「…………」スゥゥッ…

みゆき「ニコちゃんっ!」

ニコ「うん……。お別れ、みたいだね」


老サンタのセンド「……クラウス。ワシらは先に行くとしようかのう」

少年サンタのクラウス「そうですね、センドさん……。あの子達の別れを、ジャマしたくない」

老サンタのセンド「それじゃあの、プリキュア! 一緒にプレゼントの配達ができて、楽しかったぞ! ありがとう!」


クラウスのソリ(スレイ)「さらばだ、プリキュア。我が主を救ってくれて、礼を言う」

クラウスのプレゼント袋(サック)「結構ー、楽しかったんだなー」

クラウスのトナカイ(ルドルフ)「クリスマスの夜になったら、空を見てくれよ! もしかしたら、おいら達が見えるかもしれないからさ!」


少年サンタのクラウス「……キミ達には、いくらお礼を言っても足りないよ。これから、ボクはサンタクロースとしてガンバっていくつもりさ。キミ達のように、明日を、未来を信じて」


老サンタのセンド「じゃあな! 達者での!」

少年サンタのクラウス「本当に、ありがとう……!」


スゥゥゥッ…


はるか「……行っちゃったね」

ゆかり「はい……」

ポロッ


ニコ「……! みゆき……、泣いてるの……?」

みゆき「……ゴメン……。ニコちゃんがいなくなる、って聞いてから泣かない、って決めてたんだけど……、やっぱり……ダメだ……っ!」


ガバッ


みゆき「ニコちゃんっ! やっぱり、離れたくない……! いっしょにいたいよ……っ!」

ニコ「みゆき……!」

6人「…………」

ニコ「みゆき……、泣かないで……」

みゆき「……だって……、だって……っ!」ポロポロッ

ニコ「……だいじょうぶだよ、みゆき。……だって――」


ニコ「――――」ボソッ

みゆき「……!!」


ニコ「ね?」

みゆき「……うん……!」

ニコ「それじゃあね、みんな! またみんなに会えて、ホントによかった!」

魔王「おれも、ニコといっしょに帰るぜ! プリキュア! ニコを助けてくれて、ホントにありがとな!」


あかね「元気でな、ニコちゃん!」

やよい「魔王とも仲良くね!」

なお「他の絵本のキャラクター達にもよろしく!」

れいか「どうか、お気をつけて!」

はるか「初対面だったけど、楽しかったよ! こちらこそありがとう!」

ゆかり「ニコさん……、魔王さん……、あの時、わたしの代わりにプリキュアになってくれて、ホントにうれしかったです……! ありがとうございます……!」


みゆき「…………」

あかね「……ほれ、みゆき、なんか言い」

ニコ「……みゆき……」

キャンディ「……みゆき、それじゃ、ダメクル。キャンディ達の合言葉、忘れたクル?」

みゆき「……! ……そうだったね、キャンディ」


みゆき・キャンディ「バイバイする時はスマイルで!」

みゆき「……じゃあね、ニコちゃん! また会えて、うれしかった! ありがとう!」ニコッ


ニコ「うんっ! わたしの方こそ、ありがとう! じゃあね!」ニコッ


スゥゥゥゥゥッ…


全員「…………」


あかね「……行ってもーたな」

みゆき「……うん」

みゆき「……よし! それじゃあ、みんな! 今日は早く帰って寝よう! 明日も、なないろ幼稚園でサンタさんなんだから!」

なお「あ、そうだったね! うん、わかったよ!」

れいか「それではみなさん、また明日、幼稚園でお会いしましょう!」


全員「うんっ!」

~ なないろ幼稚園 あかぐみ教室 ~

ガラッ


みゆき達「メリー・クリスマースっ!」

園児の少女・あけみ「わぁーっ! またえほんのおねえちゃんサンタだーっ!」

みゆき「あぁ、結局そうなんだ……。サンタさんだ、って言ってるのになぁ……。……まぁ、いっか!」


みゆき「今日も、みんなにお菓子のプレゼントを持ってきたよーっ! みんなでいっしょに食べようっ!」

園児達「はーいっ!」

スタスタスタ


園児の少女・おとめ「……ねえ、おねえちゃん……。ちょっといいかな……」

みゆき「ん? どうしたの、おとめちゃん?」

園児の少女・おとめ「……あのね、昨日、ふしぎなことがあったの……」


園児の少女・おとめ「夜ね、あたしが寝てたらね、なんだか音がして……」

園児の少女・おとめ「なにかな、って思ったらね、まくらのところに、これがあったの……」スッ

みゆき「わっ、それ、プレゼントじゃない! よかったねぇ、おとめちゃん! きっと、サンタさんが持ってきてくれたんだよ!」

園児の少女・おとめ「……そう、なのかな……」


あかね「……にししっ。みゆき、演技がうまくなったなぁ。ほんまはぜーんぶ知っとるのに」

やよい「演技じゃなくって、おとめちゃんに喜んでもらいたいから、ホントの気持ちで言ってるんじゃないかな」

園児の少女・おとめ「……でも、おねえちゃん……」

みゆき「なに?」

園児の少女・おとめ「あたし、やっぱりまだふしぎなんだ……。だって、サンタさんなんていない、って思ってたから……」


園児の少女・おとめ「だからね……、おねえちゃんに聞きたいことがあるの……」

みゆき「え? なにかな?」

園児の少女・おとめ「…………」

園児の少女・おとめ「……サンタさんって、いるのかな……?」


園児の少女・おとめ「あたし、わかんなくなっちゃった……! なにがホントで、なにがウソなのか……」

園児の少女・おとめ「おしえて、おねえちゃん……! サンタさんって、ホントにいるの……!?」


みゆき「…………」

園児の少女・おとめ「…………」


みゆき「……うん、いるよ」

園児の少女・おとめ「……!」

みゆき「あのね、おとめちゃん。サンタさんに会うためにはね、あることをしないといけないの」

園児の少女・おとめ「あること……?」

みゆき「そう!」


みゆき「それは、"サンタさんはいるんだ" って信じること」


みゆき「サンタさんはね、信じてる人にしか会ってくれないんだよ」

みゆき「だから、サンタさんのことを信じてれば、いつかきっと会えるよ!」

園児の少女・おとめ「……そう、なの……?」

みゆき「うん!」


みゆき「サンタさんだけじゃないよ。妖精さん、妖怪さん、天使さま……、そういった、普段目に見えないヒト達は、信じてる人にだけ会ってくれるの!」

みゆき「それにね、"信じる" ってすごいんだよ! 信じていれば、自分の夢だってかなっちゃうんだから!」

園児の少女・おとめ「ゆめ……?」

みゆき「そう! おとめちゃん、大きくなったら何になりたい?」

園児の少女・おとめ「え……、あの……、あたし……。……かんごしさんになりたい……」

みゆき「看護師さん! ステキな夢だね!」


みゆき「それなら、おとめちゃん。"自分は看護師さんになれる" って、ずっと信じててごらん」

みゆき「そしたらきっと、いつかおとめちゃんは看護師さんになれるんだよ!」

園児の少女・おとめ「ホントに……?」

みゆき「もちろん!」

みゆき「だからね、信じるって、とっても大切なことなんだ!」


みゆき「色んなことを信じていれば、色んなものに出会える。夢だってかなっちゃう!」

みゆき「それに、"いい明日" を信じていれば、きっと明日はいい日になるよ!」


みゆき「だから、おとめちゃん。信じることを忘れないで! そうすれば、明日のこともコワくなくなるから! "明日なんてこなくていい" だなんて、思わなくなるから!」

みゆき「その方がきっと楽しいよ! ね?」

園児の少女・おとめ「……しんじる……」


園児の少女・おとめ「……わかった。おねえちゃん、あたし、しんじるよ。サンタさんのことも。明日のことも。……おねえちゃんのことも!」ニコッ

みゆき「おとめちゃん……! ありがとう!」ニコッ

みゆき「…………」


みゆき(……これで、よかったんだよね。ニコちゃん……)

みゆき(わたしも、信じるよ……。ニコちゃんが、別れる前に言ってくれた言葉……)


ニコ(回想)『みゆきがわたしに会えることを信じてくれれば、いつかきっと必ず会えるよ』


みゆき(……だから、わたしは明日に進むよ。ニコちゃんにまた会える日が来るって信じて)

みゆき(それで、もし来年、また会えたら……、昨日、ニコちゃんに言えなかった言葉、言わせてね)

みゆき「メリー・クリスマス」





おしまい

『スマイルプリキュア レインボー!』スペシャル 「明日へのメリー・クリスマス!」

以上で終了となります。

ここまでお読みいただいた方、ありがとうございました!


さて、あとがき代わりに、この作品を書こうと思った経緯なんかをちょこっとお話します。
※読み飛ばし可


現在、こちらで『スマイルプリキュア レインボー!』という、
『スマイルプリキュア』の続編二次創作作品を書かせてもらっているんですが、
そちらの序盤で "紫のプリキュアが出る" ということをほのめかしたところ、
『スマイル劇場版 絵本の中はみんなチグハグ!』のニコちゃんのプリキュア化を期待される声がありまして。。

最初っから紫は "キュアヴェール/木下 ゆかり" と決めてあったので、そのお返事をいただいた時、
「あー、、これは期待を裏切ることになってしまうな。。」と思ったのです。


ただ、せっかく期待していただいたものですから、何とかならんか、と思った末、
"本編がムリなら、番外編に登場してもらおう!" という運びになったわけです。



長くなってきたので続く

続き


しかし、番外編を作るに当たって、一つ問題がありました。

『レインボー!』本編の方では何回か告知させてもらってたんですが、
実はこの番外編、全く違う内容で、『ドキドキ! プリキュア』の劇場版公開に合わせて投稿する予定でした。

が、内容がどうにも面白くならなかったせいか、筆が全く進まず。。
結局、『ドキドキ!』劇場版公開には間に合いませんでした。。


しかし、「これじゃあ、どうあがいても番外編公開は年末になるなぁ。。」とか思っていたら、ふっと思いついたんです。

「……待てよ、年末? 年末……。クリスマス……。……プリキュアサンタ!!」と、こんな具合に。

"これはイケる!" と自分でも思ったのか、そこからは湯水のようにアイデアが湧き出てきました。
そのクリスマス用のアイデアと、前述のニコちゃんプリキュア化のアイデアをミックスしたのが本作となります。

結構スケジュール的にはパツンパツンだったんですが、無事、当日にお届けできてほっとしています。
お楽しみいただけたなら何よりです。




それでは、あいさつはこの辺で。
この作品が、皆さまへのささやかなクリスマスプレゼントにでもなったなら幸いです。

お読みいただき、ありがとうございました!



あ、もしよかったら、本編の方もどうぞ!
こちらもそろそろクライマックス。盛り上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします!

それでは! メリー・クリスマス!

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