よつば「とーちゃん、一緒に風呂はいろう!」(218)

よつば「おーい、入ろうよー」ユサユサ

とーちゃん「・・・・・・お前もう中学生だろ」

よつば「だから?」

とーちゃん「普通、家族風呂は小学生三年生ぐらいで卒業だろ? やめとけ」

よつば「? なんで、別によつば気にしないよ? 入っちゃいけないの?」

とーちゃん「恵那ちゃんとか風呂お父さんと入ってたって聞くか?」

よつば「知らない」

とーちゃん「・・・・・・なら聞いとけ」

よつば「とにかく入ろう! とーちゃん!」

とーちゃん「いい、いい。 とーちゃん遠慮しとくから、一人で入れ」

よつば「なんでだよー。 ほらほら、とーちゃんは風呂入りたくなってくる、入りたくなってくるー」

とーちゃん「・・・・・・なら俺が先に入る。 よつばは後から入れ」

よつば「お、よつばの催眠効いたのか! わかった、用意してくる!」ダッ

とーちゃん「・・・・・・」

よつば「とーちゃーん、入るぞー」ガチャ

よつば「ん!? 開かない! とーちゃん閉じ込められてるのか!?」ガチャガチャ ドンドン

とーちゃん「ふっふっふ。 鍵を掛けたのだ! これでよつばは入れまい・・・・・・!」

よつば「くそー、その手があったか! なんの、負けるか!」ドゴッ ガンガン ガキンガキン

とーちゃん「お、おいおいおいおい!! やめろ! 壊れる壊れる!」

よつば「ふん! 壊されたくなかったらここを開けろ!!」ドンドン

とーちゃん「ちょ、わかったわかったから・・・・・・・」カキン

よつば「ふふふー。 よつば登場ーっ!」ガチャ


とーちゃん「ぶっ、お、お前、タオルぐらい巻けよ!」

よつば「はー? なんでー?」シャアアアアア

とーちゃん「・・・・・・いや、そりゃお前」

よつば「よつばは気にしないぞ! ほら、とーちゃん背中洗ってくれー」

とーちゃん「・・・・・・変なやつだなぁ、お前は」

よつば「ほらほらはやくー。 うわっ、とーちゃんでっけー」

とーちゃん「見るな見るな、めー瞑ってろ。 ・・・・・・はぁ」ゴシゴシ

よつば「あっ、そうそこいい。 とーちゃんのは相変わらずきもちーな」

とーちゃん「・・・・・・」ゴシゴシ

よつば「い、痛い痛い! な、なんだ急に力強いぞ、どーしたとーちゃん」 


よつば「んっんっ・・・・・・ふー。 風呂上りの牛乳はさいこーだな」

とーちゃん「そうか」

よつば「さて・・・・・・寝よう!!」ダダダダ

とーちゃん「はぁ・・・・・・」スタスタ

とーちゃん「・・・・・・しんどー、はよ寝よ」ボスン

とーちゃん「・・・・・・ぐー」バタバタ

よつば「とーーちゃーーーん!!」バタァン

とーちゃん「んー・・・・・・なんだ・・・・・・」

よつば「一緒に寝よう!!」


とーちゃん「・・・・・・」

よつば「反論、無し! じゃ、寝る」ボスン

とーちゃん「おい・・・・・・あんまりくっつくな・・・・・・」

よつば「なんでだよー、まだちょっと寒いしいいじゃんか」ギュ

とーちゃん「それでもくっつき過ぎだ、な? 下で寝ろって」

よつば「やだー、とーちゃんと寝るんだ! おやすみ!!」ギュウウウ

とーちゃん「いたたたた、痛い痛い、締め付けるな」

よつば「寝るか? 一緒に寝るか?」

とーちゃん「わかった、わかったから。 寝るよ、一緒に寝るから」


よつば「ふー。 みっしょんこんぷりーと、だ!」

とーちゃん「・・・・・・おやすみ。 とーちゃんもう眠いから寝る・・・・・・」

よつば「うん・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・」

よつば「ぁー・・・・・・熱い、な」

とーちゃん「・・・・・・そうか」

よつば「うん、でも一人で寝るのはやだ・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・そうか。 ・・・・・・はぁ、じゃほんとにおやすみ」

よつば「・・・・・おやすみー・・・・・・」グリグリ


ピピピ

とーちゃん「ん、朝か・・・・・・ん、なんでよつばが・・・・・・あぁ、そうだったな」

よつば「・・・・・・」

とーちゃん「普通これぐらいの歳になったら、親離れの時期なんじゃないのか?」

とーちゃん「全く・・・・・・あ、飯作らなきゃ・・・・・・よっ、こいせ、と」

よつば「ぅ・・・・・」

とーちゃん「? 起きたか?」

よつば「・・・・・・」

とーちゃん「寝てるな、っと飯、飯」


よつば「はよー、とーちゃん・・・・・・」ペタペタ

とーちゃん「ん、飯の前に顔洗ってこい」

よつば「んー・・・・・・」グリグリ ゴシゴシ

とーちゃん「お、おいおい、今火使ってるから俺の背中に顔擦り付けるな」

よつば「顔洗ってる・・・・・・・」

とーちゃん「怒るぞ?」

よつば「ちぇ・・・・・・・」


よつば「美味い! やっぱりとーちゃんの朝飯はさいこーだ!」

とーちゃん「そうか、唯のベーコンと卵なんだけどな」

よつば「いや! この味はとーちゃんにしか出せない!」

とーちゃん「そ、そこまでか・・・・・・まぁ、お前の飯の方が美味いんだけどな」

よつば「え、あ、そ、そんな事ほどでも・・・・・・」

とーちゃん「よつばが朝起きれるようになったら俺が朝飯作らなくてもいいんだがなぁ・・・・・・」

よつば「怠惰だ! とーちゃんそれは怠惰の道へと通ずるぞ!」

とーちゃん「難しい言葉知ってんなぁー」

よつば「中学生だからな!」


よつば「じゃぁいってきまーす!!」

とーちゃん「うん、気つけてなー」

とーちゃん「・・・・・・」バタン

とーちゃん「さて、布団片付けて仕事すっかぁ・・・・・・」

とーちゃん「よいしょ・・・・・・ん?」

とーちゃん「随分湿ってるな・・・・・・汗か?」

とーちゃん「・・・・・・まぁ、密着してたし汗はかくか・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・よいしょ」

とーちゃん「・・・・・・」カタカタ

とーちゃん「・・・・・・ん、電話か」プルル  カチャ

とーちゃん「はい、小岩井です」

とーちゃん「え・・・・・・? そ、それは本当ですか?」


とーちゃん「は、はい! 有難う御座います! で、では日程の方は・・・・・・」

とーちゃん「え・・・・・・いや、しかし・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・・いえ、分かりました」

とーちゃん「では、日程は・・・・・・はい・・・・・・・」

とーちゃん「はい・・・・・・・はい。 分かりました、宜しくお願いします、はい、では・・・・・・」ガチャ

とーちゃん「・・・・・・」


よつば「たっだいまーっ!!」バァン

とーちゃん「はい、おかえり」

よつば「今日も無駄なく帰った! 寄り道一つせずに!」

とーちゃん「なんでまた・・・・・・お前は部活動でもしたらいいのに」

よつば「んー、別に・・・・・・いい。 それに家事やらなきゃいけないからな!」

とーちゃん「それは助かるが・・・・・・」

よつば「んじゃ、洗濯やってくる!」バッ

とーちゃん「・・・・・・甘えてんなぁ、俺」

よつば「きゅ、うになきだしたそらに~こえをあ~げ・・・・・・あ」

よつば「・・・・・・昨日のとーちゃんの、パジャマ・・・・・・」

よつば「・・・・・・」スンスン

よつば「はっ、み、見てない、よね・・・・・・?」バッ

よつば「・・・・・・ほっ・・・・・・! あ、はやく入れないと」パサ

よつば「たたむぞー、超たたむぞー、って・・・・・・」

よつば「・・・・・・ぱ、ぱんつまんのマスクが・・・・・・」


とーちゃん「お、よつば」

よつば「ぎゃっ!?」バサ

とーちゃん「うお、なんだよそんなに驚いて」

よつば「な、なんでもないよ? うん」

とーちゃん「そ、そうか。あ、とーちゃん、ちょっと仕事忙しいから夕飯作ったら一人で食べててくれ」

よつば「・・・・・・いいよ、待つ!」

とーちゃん「え、でも一段落終ってからじゃかなり遅くなるぞ?」

よつば「いい!」

とーちゃん「・・・・・・まぁ、我慢できなくなったら遠慮なく食べなさい」

よつば「ん! わかった」


よつば「おらおらおら! この料理、とーちゃんの為なら! とーちゃんの為ならぁあ!」ガタン

よつば「!? ・・・・・・え・・・・・・とーちゃん?」

よつば「・・・・・・誰も、いない・・・・・・あ」

よつば「なんだ、缶詰落ちただけか! はぁーよかったー・・・・・・」シュウウ

よつば「お!? あ!! 火が、ああ! うわぁ! ・・・・・・・ふぅー・・・・・・危なかったー」

よつば「はしゃぐ、むくな、こどもたち~あわてふためくおと~なをよこめに、ふんふん・・・・・・・」カチャカチャ


よつば「出来た・・・・・・新妻料理としてその名を轟かす・・・・・・その名も・・・・・・にくじゃが!!」

よつば「はぁー、恐ろしい、これほどの料理が出来上がるとは・・・・・・ふぅー」

よつば「・・・・・・とーちゃん、まだかな」

とーちゃん「はぁ、一段落終ったー・・・・・・全部終るにゃ徹夜だなこりゃ」グゥ

とーちゃん「ん、空腹も限界・・・・・よつばがなんか残しておいてくれりゃ良いんだが・・・・・・」


よつば「やっと来たか・・・・・・」ガタッ

とーちゃん「うお、よつば・・・・・・」

よつば「待ちくたびれたぞ、このやろう・・・・・・今温め直すから待ってるんだこのやろう」

とーちゃん「お前、こんな時間まで待ってたのか?」

よつば「そうだが?」

とーちゃん「う、怒ってるのか?」

よつば「ぜんぜん、怒ってないなー、全然だなー」


とーちゃん「悪かったよ、でもとーちゃん言っただろ? 先食べとけって」

よつば「だからよつば怒ってないもん、待っててよ」


とーちゃん「うおぉ、にくじゃがじゃねえか・・・・・・おお、出来立てのようだ!」

よつば「ふふん、温め直しなどこのよつばの手にかかればよゆーよゆー」

とーちゃん「待たせて悪かったな、食べよう」

よつば「ぁ、う、うん!」


とーちゃん「はぁー美味かった・・・・・・やっぱりよつばの料理は天下一品だな」

よつば「そうかそうか!」

とーちゃん「じゃ、もう遅いしよつばは寝とけ、明日も学校だろ」

よつば「え、とーちゃんは?」

とーちゃん「あー、俺は徹夜でしなきゃならん事があるから、今日は一人で寝ろ」

よつば「・・・・・・はい」

とーちゃん「さ、とーちゃんはよつばのお蔭で元気でたから、もう一頑張りだ」

よつば「・・・・・・」


とーちゃん「うぅ体が・・・・・・ちょっと夜食が欲しい気分・・・・・・」ポキ ポキ

とーちゃん「にくじゃがはおかわりでさっき食べきっちまったし・・・・・・」

とーちゃん「冷蔵庫になんかあるかな・・・・・・ん、これは・・・・・・」

よつばメモ(きっと途中でお腹が空くと思うのでサンドイッチ作ったよ、食べてね)

とーちゃん「見抜かれてやがる・・・・・・」モソモソ

とーちゃん「・・・・・・ぅ・・・・・・よつば・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・伝えなきゃな・・・・・・早い内に・・・・・・」


とーちゃん「はぁ~終ったぁ~・・・・・・時間は・・・・・・うぉ、朝ギリギリ」

とーちゃん「えっと、翻訳データを送って・・・・・・ん、よし」カタカタ

とーちゃん「あのサンドイッチのお礼もかねて、俺もよつばに朝飯作っとくか・・・・・・ん」

よつば「あ、おはよー! ご飯食べるならもう一個作るぞ?」

とーちゃん「よつば、随分今日は早いな・・・・・・」

よつば「え、そ、そうか?」

とーちゃん「俺と寝たときはいつも遅いのに・・・・・・」

よつば「そ、そんなことないぞ! 勘違い勘違い!」

とーちゃん「あ、それより、昨日夜食有難うな?」

よつば「あ、うん! 無くなってたからやっぱりと思った!」

とーちゃん「ああ、見抜かれたなあー・・・・・・お、朝飯悪いが俺の分も」

よつば「うん、いいよー」


とーちゃん「・・・・・・やっぱりよつばの飯は元気が出るなー」

よつば「褒めるぐらいなら金をくれ」

とーちゃん「そーいうこと何処で憶えてくるんだ?」

よつば「学校」

とーちゃん「そうか・・・・・・学校か・・・・・・」


とーちゃん「まぁ、いいよ。 お小遣い、はい」

よつば「い、いらない」

とーちゃん「え? でも金をって」

よつば「いらん! そんなモノ欲しくて家事してるんじゃない!」

とーちゃん「え、えぇー・・・・・・?」

よつば「とーちゃんは、お金よりもっとよつばにすることあるでしょ!」バンバン

とーちゃん「こらこら、叩くな叩くな・・・・・・えーと、うーん、よつばにする、こと?」

よつば「良く考えるんだなッ」ビシィ

とーちゃん「なんでそんなに高圧的なんだよ・・・・・・」


よつば「じゃあ行ってきます! 答え探しといてねー!」

とーちゃん「はいはい、いってらっしゃい」


とーちゃん「・・・・・・早く、言わなきゃな」

とーちゃん「しかし、答えって・・・・・・うーん」

とーちゃん「答えも分からず、こんな事言えば激怒必至だな・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・」

とーちゃん「そうだ、お隣さんにお願いしに行かないと・・・・・・」

とーちゃん「こんにちはー」

隣母「あら、小岩井さんどうしたの?」

とーちゃん「ええ、まあ、ちょっとご相談が・・・・・・」

隣母「あ、じゃああがってく?」

とーちゃん「そう、ですね。 上がらせて貰います」


隣母「それで? 只事じゃないって顔してるけど・・・・・・もしかして?」

とーちゃん「はい。 えっと、実はですね・・・・・・」


隣母「そう・・・・・・後どれぐらいになるの?」

とーちゃん「一ヵ月後、ですかね」

隣母「よつばちゃんには?」

とーちゃん「・・・・・・まだ、伝えてないです」

隣母「だめよー、はやく伝えなくちゃ」

とーちゃん「はい・・・・・・それで、前々からお願いしてましたが・・・・・・」

とーちゃん「面倒、見て貰っていいですか、掛かったお金は払いますので」

隣母「それは、お父さんも納得してるから勿論だけど・・・・・・付いて行きたいって言うんじゃないかしら」

とーちゃん「いえ、それは、あいつも年頃ですし・・・・・・ここに居たほうが」


隣母「まぁ、その点に関しては心配しないで、毎日様子見に行って、ご飯も一緒に食べてあげるから」

とーちゃん「すいません、お礼は必ず」

隣母「ふふ、後、何か良いお土産でも頂戴ね。 それでいいわ」

とーちゃん「・・・・・・はい、どうもすいません」

隣母「いーのよ、それより、早く伝えてあげてね?」

とーちゃん「はい・・・・・・」


よつば「ただいまー!」

とーちゃん「よつばおかえり。 夕飯作ってるから食べてくれ」

よつば「え、もう、作っちゃたのか?」

とーちゃん「え、うん」

よつば「なんでだよー、夕飯はよつば担当だろー!」

とーちゃん「すまん、けど父ちゃん特製カレーだから許してくれ」

よつば「え! そ、それをはやく言え!」


よつば「はー、うまかったー・・・・・・やはりとーちゃんのカレーはうまい・・・・・・」

とーちゃん「あのな、よつば。 ちょっと話があるんだが」

よつば「ん、何だ?」

とーちゃん「・・・・・・え、と」

よつば「何だはきはきしないとーちゃんだな」

とーちゃん「・・・・・・よつば、真剣に聞いてくれよ?」

とーちゃん「とーちゃん、外国に行く事になった」

よつば「は?」

よつば「え、ど、どういう事だ? な、なんで・・・・・・」

とーちゃん「ご贔屓にして貰ってる人にな、外国の仕事を紹介してもらったんだ」

とーちゃん「日本人の翻訳家の力を欲しがってるらしくて、とーちゃんが選ばれた」

よつば「そ、そんなの断れば・・・・・」

とーちゃん「俺の仕事に箔がつくチャンスでもあるって、言われたらな・・・・・・」

とーちゃん「実力を、認められたんだ。 だから、一ヵ月後、一年程外国に行く」

よつば「よ、よつばも行くんだよね?」

とーちゃん「・・・・・・連れて、行かない」

よつば「は、は? な、なんでそんな事言う?」

とーちゃん「よつばはこの町が好きだろ。 中学、一杯友達いるだろ?」

とーちゃん「義務教育は、ここで過ごしなさい。 一年たてば、戻ってくるし」

よつば「い、いやだ・・・・・・友達なんていい、と、とーちゃんと」

とーちゃん「我儘、言わないでくれ。 もう、よつば子供じゃないだろう?」

よつば「そ、そんな事ない!」

とーちゃん「隣の恵那ちゃん達が毎日顔出してくれるみたいだから、な? 頼む」

よつば「や、いやだ、やだ・・・・・・!」


とーちゃん「よつば・・・・・・」

よつば「いや! いやだぁあ! とーちゃんと一緒がいい! 行かないでよぉ、一人じゃ・・・・・・」ポロポロ

とーちゃん「一人じゃないだろう? 皆いるし、あ、ジャンボにも頻繁に来てやってくれって頼んでる」

とーちゃん「将来を考えてくれ、よつば。 一緒に来て、転校しなくたっていいだろう」

よつば「ぅうう、ふうううう! やだー・・・・・・やだよー・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・無理言ってるのはわかる。 でも、これだけのチャンスなんて中々無いんだ」

とーちゃん「お金も一杯貰えるし、そうすればよつばに楽一杯させてやれるし・・・・・・」

よつば「いらないぃ・・・・・・そ、そんなのいらないー・・・・・・!」


とーちゃん「・・・・・・・納得してくれ、よつば」

よつば「・・・・・・ぐす」

とーちゃん「・・・・・・ごめん、ごめんな。 でも、よつばはここで暮らして欲しい」

とーちゃん「それが、一番いいんだ。 家事だって出来るし、それに、一年だ一年」

とーちゃん「あっという間だ。 な?」

よつば「・・・・・・とーちゃんは、よつばが嫌いなんだ」

とーちゃん「な・・・・・・」

よつば「お風呂、はいる」


とーちゃん「ま、待てよつば。 話は」

よつば「来ないで! お風呂についてくるなんて気持ち悪いよ!」

とーちゃん「ぅえ・・・・・・?」

よつば「・・・・・・じゃ」バタン

とーちゃん「・・・・・・怒っちゃたか? ・・・・・・怒るよな、そりゃ」

とーちゃん「よつば・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・」


とーちゃん(それから、よつばは口を利いてくれなくなった)

とーちゃん(飯は作ってくれるが、俺とは食べようとしない)

とーちゃん(家事も全部してくれてるし、何もいう事は無い)

とーちゃん(でも急に年頃の女の子になった様に、俺に近づかなくなった)

とーちゃん「よつば、いってらっしゃい」

よつば「・・・・・・」バタン

とーちゃん「・・・・・・駄目か」


恵那「あ、聞いたよ、よつばちゃん、お父さん外国行くんだって?」

よつば「・・・・・・知らない」スタスタ

恵那「知らないって、よ、よつばちゃん!?」

よつば「つ、ついてこないで・・・・・・」

恵那「だって、よつばちゃん顔色悪いし・・・・・・」

よつば「恵那にはかんけーないでしょ、ほっといて」

恵那「よつばちゃん、心配なんだよ? 皆も、私も心配してるから、ね? 話して」

よつば「・・・・・・恵那」


恵那「・・・・・・そっか、お父さんが」

よつば「嫌いなんだ・・・・・・ひぐ、よ、よつばのこと、だからあんな事」

恵那「嫌いだったら、そんな事も言わないよ。 勝手にどっかいっちゃうよ」

恵那「よつばちゃん、お母さんが言ってたけど、後一週間で外国行っちゃうんだよ?」

よつば「・・・・・・」

恵那「よつばちゃん、後悔しないように、ちゃんと、話したほうがいいよ」

よつば「・・・・・・わかった」

恵那「うん、きっとよつばちゃんのお父さんも話したがってるよ」


よつば「・・・・・・」ガチャ

とーちゃん「おう、おかえり」

よつば「・・・・・・」じっ

とーちゃん「ど、どうした?」

よつば「・・・・・・ただいま」

とーちゃん「! あ、ああ、おかえり。 うん、おかえり」

よつば「・・・・・・話、しよ、とーちゃん」


よつば「なんで、もっと早く言ってくれなかったの」

とーちゃん「すまん・・・・・・」

よつば「よつばすっごい驚いたんだからな」

とーちゃん「ああ、そうだな・・・・・」

よつば「・・・・・・行く前に条件ある」

とーちゃん「? 条件?」

よつば「今までの家事の、お礼」

とーちゃん「あ、ああ。 な、何が欲しいんだ?」

よつば「・・・・・・ちゅー」

とーちゃん「え、え・・・・・・?」

よつば「口に、して・・・・・・くれたら、よつば、我慢するから」ガタン タタタタ

とーちゃん「お、おい、よつば・・・・・・!」

とーちゃん「なんだよ、それは・・・・・・どうすりゃ・・・・・・・」


とーちゃん(あれからずるずるとしないまま六日過ぎた)

とーちゃん(だって、出来るわけ無いだろ・・・・・・年頃の娘だし)

とーちゃん(何で、キスして欲しいなんていうんだろうか)

とーちゃん(明日、早朝にはもう家を出なきゃいけない・・・・・・)

とーちゃん(チャンスは、今日だけ・・・・・・よつばは俺と話そうとしないし)

とーちゃん(秘密裏に荷造りまでしてるし・・・・・・)

とーちゃん(どうすりゃ・・・・・・)

よつば「とーちゃん」

とーちゃん「お!? よ、よつば・・・・・・・どうした?」

よつば「明日、着いてくから」

とーちゃん「・・・・・・」

よつば「こんな約束も守ってくれないなら、とーちゃんを信じられない・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・よつば」

よつば「・・・・・・なんていったって、着いてくぞ」


とーちゃん「よつば」

よつば「なに」

とーちゃん「一緒に、寝るか」

よつば「!」

とーちゃん「・・・・・・・ほら、おいで」

よつば「・・・・・・うん」

よつば「・・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・ん、どうした」

よつば「なんで、一緒に寝るの・・・・・・・?」

とーちゃん「・・・・・・あれから仕事も手につかなくてな」

とーちゃん「・・・・・・聞いていいか? なんで、して欲しいなんていったんだ?」

よつば「そ、それは・・・・・・」

とーちゃん「その行為で、お前が何を望んでいるかさっぱり分からなくてな・・・・・・」

よつば「いえないよ・・・・・・」


とーちゃん「なんで、いえないんだ?」

よつば「だって、今は、とーちゃんだもん・・・・・・」

とーちゃん「?」

よつば「・・・・・・よつばだって、なんでかなんてわかんないよ。 でも、して欲しいんだもん」

とーちゃん「・・・・・・」

よつば「今まで通りじゃ・・・・・・よつば、我慢できないから・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・わかった、するよ」

よつば「!!」


とーちゃん「でも・・・・・・悪い、これで、今は、我慢してくれ、な」

よつば「ぁ・・・・・・おでこ・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・今は、誰よりも、よつばと過ごした時間が長いからな」

とーちゃん「その悩みは、今一瞬のものかもしれない。 よつばが、勘違いしている場合だってあるんだ」

よつば「そ、そんなこと・・・・・・」

とーちゃん「聞け、よつば」

よつば「・・・・・・」

とーちゃん「親子なんだ、お前を拾った時から、よつばの父であるよう、努めてきた」

とーちゃん「愛してるよ、よつば。 けど、俺にある感情は親子に向けるものだ」

よつば「・・・・・・ぅ」

とーちゃん「・・・・・・明日から、とーちゃんは居なくなるから、確かめなさい」

よつば「な、なに、を・・・・・・?」

とーちゃん「よつばが悩んでいる感情の正体を。 それは、よつばも俺を父として好きなだけかもしれない」

とーちゃん「あるいは・・・・・・」

よつば「・・・・・・」

とーちゃん「まだまだ、あるよ、時間は。 ゆっくり確かめてくれ、その感情がいったいなんなのか」


よつば「・・・・・・難しい、な。 とーちゃんに、そんな難しい事言われたの初めてだ」

とーちゃん「そう、だな。 でも、父ちゃんわかんなかったから、な」

とーちゃん「急に父ちゃんになって、どう接すればいいかなんて・・・・・・」

よつば「後悔、してるの?」

とーちゃん「まさか。 俺には勿体無いぐらい可愛く素直に育ってくれて、今凄い幸せだ」

よつば「ぅ・・・・・・」

とーちゃん「だから、よつばも慌てないように・・・・・・ゆっくりでいい」

とーちゃん「とーちゃんはよつばが幸せになって欲しい。 だから、焦らずゆっくり考えなさい」

よつば「・・・・・・うん」

とーちゃん「・・・・・・それでも、考えが変わらないなら」

よつば「・・・・・・」

とーちゃん「その時は、もう一回、話をしようか」

よつば「怒る・・・・・・?」

とーちゃん「いいや、お前の幸せの為に、なんでもする」

よつば「・・・・・・わかった、ならこれで今は我慢する」ギュ

とーちゃん「お、おい・・・・・・」


よつば「親子なら、このぐらいは、するでしょ・・・・・・?」

よつば「もっと小さかった頃は、怖い時、抱きしめてもらったんだし・・・・・・」

とーちゃん「・・・・・・はぁ。 わかった・・・・・・」ギュ

よつば「・・・・・・ありがとう・・・・・・おやすみ」

とーちゃん「ん、おやすみ・・・・・・」


よつば「とーちゃん?」

とーちゃん「・・・・・・」

よつば「・・・・・・勘違いじゃ、ないよ」

よつば「・・・・・・娘じゃ、いや。 お嫁さんが、いい・・・・・・」

よつば「血が繋がってないから、こんな気持ちになるのかな・・・・・・」

よつば「好き、だよ・・・・・・とーちゃん」

とーちゃん「おお、早朝なのに見送りしてくれて、すいません」

隣母「いーのよ、頑張ってね」

あさぎ「小岩井さん、よつばちゃんの事は心配しないで良いですよ」

風香「うんうん、小岩井さんは早く帰ってきたらそれで良いです!」

恵那「・・・・・・気をつけてくださいね」

とーちゃん「ありがとね。 よつばの面倒、よろしくお願いします」

ジャンボ「コイ、車早く乗らないと遅れるぞ」

とーちゃん「おう」

空港

ジャンボ「間に合ったな」

とーちゃん「ああ、助かったよ」

よつば「・・・・・・とーちゃん」

とーちゃん「・・・・・・そうだ忘れてた、よつば、これをやろう」

よつば「なんだ、これ?」

ジャンボ「防犯ブザーだな」

とーちゃん「ああ、ジャンボとやんだに襲われそうになったら使うんだ」

ジャンボ「しねーよ!」

よつば「分かった! ジャンボとやんだが家入ってきたら使う!」

ジャンボ「おいおい、様子見で不審者扱いかよ・・・・・・」

とーちゃん「まぁ・・・・・・頼んだぞ、ジャンボ」

ジャンボ「おう」


とーちゃん「お、やんだが来た」

やんだ「ちーっす」

ジャンボ「あれ、仕事じゃねぇのか?」

やんだ「まぁ、そうですけど、小岩井さんなんで」

とーちゃん「よつば、あれが・・・・・・・」

よつば「分かってる、やんだは危険生物だ」

やんだ「なんの話っすか?」

ジャンボ「防犯の話だよ」

とーちゃん「お前にはよつば頼まないからな」

やんだ「えーなんすかそれ」

よつば「そうだそうだ、この防犯ブザーで撃退してやる!」

やんだ「ちょ、それシャレにならんだろ!」

ジャンボ「お前は駄目だな」

やんだ「なんすか、もー」

とーちゃん「まあ、いじけるな。 見送りありがとな」

やんだ「うす、頑張ってください小岩井さん」


とーちゃん「じゃ、行ってくる」

よつば「とーちゃん」

とーちゃん「ん?」

よつば「お返しに、これあげる」

とーちゃん「ジュラルミン? お前大切にしてたんじゃないのか」

よつば「それよつばだと思って」

とーちゃん「・・・・・・わかった」

よつば「よつばはこのブザーを父ちゃんと思うから」

とーちゃん「いや、それはおかしい」


とーちゃん「うわ、時間が、いってくる」ダッ

よつば「とーちゃーん! よつばとーちゃんの事大好きだよーー!!」

ジャンボ・やんだ「「!?」」

とーちゃん「・・・・・・おう、とーちゃんもだよ。 じゃあな」

よつば「・・・・・・」


ジャンボ「ほうほう、よつばがね」

やんだ「大ニュースですね」

よつば「は? 親子だからだよ? 当たり前でしょ?」

やんだ「え、あ、そういうのなの?」

よつば「そうだぞ! 馬鹿かやんだは」

ジャンボ「ばーか」

やんだ「いや、あんたも真に受けてたでしょ!」



よつば「・・・・・・今は、だけど」

よつば「進路どうしようかなー」

風香「なりたいものとかないの?」

よつば「ぇ、そ、それは・・・・・・ごにょごにょ」

風香「私はよつばちゃんのお母さんポジ狙ってるんだよねー」

よつば「は?」ゴゴゴ

風香「こ、怖い怖い、冗談だってよつばちゃん!」


恵那「淋しい? よつばちゃん」

よつば「ん? いや、最近全然電話来ないとか、全然苦じゃないなー」

恵那「・・・・・・そう」

よつば「恵那こそ寂しそうに見えるぞ?」

恵那「え!? いや、そ、そんな事ないよ? うん」

よつば「・・・・・・」

恵那「な、なに?」

よつば「とーちゃんは諦めろ」

恵那「!」


ジャンボ「よーう、よつば、元気してるか」

よつば「ジャンボか・・・・・・」

ジャンボ「おいおい、なんだその見飽きたみたいな顔は。 来てやってんのに」

よつば「前みたいにジャンボが昔のとーちゃん話をしてくれたら態度変えてあげてもいい」

ジャンボ「・・・・・・しゃーねぇな」

よつば「やった! じゃ、お礼にご飯作ってあげるぞ!」

やんだ「ちーっす」ガチャ

ブーーーーーーーーーーー!!!!

やんだ「おい!!」

隣母「これで何回目よ? よつばちゃん」

よつば「ごめんなさい、でもやんだがよつばを襲おうと」

隣母「ほんとなの?」

ジャンボ「はい!!」

やんだ「いやいやいや!!」

隣母「もう・・・・・・本当に危ない時だけ鳴らしてね?」

よつば「うん」

やんだ「もーなんすかもー、将来のお義母さんの好感度下がりまくりっすよ」

よつば「いんがおーほーだ」

ジャンボ「うむ」

やんだ「飯ついでで見に来ただけでこの扱いかよ・・・・・・まぁ、いいや、ちょっと弁当食わせて貰う―――」

ブーーーーーーーーー!!!

やんだ「おい!!」

ジャンボ「もう、帰ったほうが良いぞやんだ」

よつば「帰れ! 帰れ!」

やんだ「泣くぞ、もー」

ジャンボ「さぁ、コイ迎えに行くか。 もうすぐ飛行機つくし」

よつば「うん」

ジャンボ「よく、頑張ったな。 よつばが無理してるってコイ言ってたぞ」

よつば「え?」

ジャンボ「電話の声で、お前が元気じゃないの知ってたみたいだ、さすがとーちゃんだな」

よつば「・・・・・・」

ジャンボ「いつも通りに見えたが、やっぱり無理してたのか? 一年」

よつば「うん、そうかもしれない・・・・・・」

ジャンボ「悩みを相談されれば、答えてやれ、って言われてたが結局相談されなかったし」

よつば「ジャンボにするわけ無いでしょ、悩みは恵那とかに聞いたんだ」

ジャンボ「はは、そうか。 直ぐ悩みを話して、直ぐ解決するお前らしくないとは思ってたが」

ジャンボ「今度の悩みは、無敵のお前でもちょっと難しいかったか?」

よつば「うん、そうだけど・・・・・・でも、もう答えでたもん」

ジャンボ「ほー、どうするんだ」

よつば「秘密」

ジャンボ「そうかー、まぁ、また聞かせてくれよ、何で悩んでたか」

ジャンボ「うーん飛行機着いたみたいだが・・・・・・」

やんだ「ちーっす、小岩井さんまだっすか?」

ジャンボ「おう、来たのか」

よつば「・・・・・・」スッ

やんだ「うっわ、そ、それはもうやめろ!!」

ジャンボ「お、きたきた」

とーちゃん「・・・・・・おう、お出迎えさんきゅーな」

よつば「とーちゃん・・・・・・」

ジャンボ「おう、お帰り、土産はなんだ」

やんだ「そうっすね、それ気になります」

とーちゃん「全くお前らは・・・・・・」

よつば「・・・・・・」

とーちゃん「よつば・・・・・・ただいま。 答え、見つかったか?」

よつば「うん・・・・・よつばが楽しいことをやるよ」

とーちゃん「? それは、どういう・・・・・・」

よつば「よつばは無敵! とーちゃんが言ってくれたんだ。 逆境なんてなんのその!」

とーちゃん「? とーちゃんに分かる様に言ってくれ」

よつば「なんだ、わかんないのか? もー、とーちゃんは駄目駄目だな」

よつば「長旅、疲れたでしょ? だから・・・・・・帰ったら・・・・・・・」

よつば「とーちゃん、一緒に風呂はいろう!」


END

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