久「咲を使ってお金儲け?」憧「そうそう」 (55)
憧「ね、聞くだけ聞いてみない?」
久「うーん」
憧「聞くだけならタダだからさ。何ならコーヒー奢るし」
久「新手のナンパかしら?」
憧「違う違う」
憧「聞いて駄目ならやらなくていいのよ。他校との交流も部長の仕事でしょ?」
久「私、もう部長じゃないんだけど……」
憧「そうなんだ。もう受験生なの?それとも就職?」
久「就職よ」
憧「長野にいい就職先なんてあるの?」
久「ないわね。高卒だし、月14万円の事務よ」
憧「月14万ってバイトの方が稼げるじゃない」
久「……それは私も思ってる」
憧「まっ、今時正社員なだけ有難いかもね。お金儲け、色々知ってた方がいいわよ」
久「……」
憧「はいはい、入った入った」
久「ちょっと、押さないでよ」
カランカラン
店員「いらっしゃいませー」
久「全くもう強引なんだから」
憧「きっと私に感謝する事になるって。あっケーキセット二つ」
店員「かしこまりました」
久「で、咲を使うって何?」
憧「それはもちろんネームバリューよ。宮永照の実妹なのよ。宮永照の」
久「そうね。清澄で二番目に有名になるのかしら」
憧「一番は和でしょうね。あの恵まれた容姿、そして豊満な胸、奇抜なファッション。麻雀界のアイドルだわ。私と同じくね」ズズズ
憧「和もお金儲けに最適な人材なんだけどね」
久「へぇー、そうなの」
憧「コスプレ個人撮影って知ってる?写真撮るだけで時給1万円くらいになるのよ」
久「なんだかいやらしい響きね。個人撮影?危なくないの?」
憧「大丈夫大丈夫。何もされやしないわよ。する勇気もないでしょうね」
久「そうなんだ」
憧「オタクの人は女も男も大人しい人ばかりよ。まぁ、個撮の方にもCDロム売ったりね」
久「エッチな写真も撮られるの?」
憧「本人次第ね。エッチな事するなら売り上げは伸びるでしょうね。でも、人気アニメキャラのコスプレくらいで十分だと思うわよ」
久「写真撮られるだけで儲かるんだ……。でも和は絶対やらないでしょうね」
憧「勿論。第一、和は駄目よ。親が弁護士だし、自分で調べる知恵を持ってるし」
久「そりゃそうよ」
憧「宮永さんならいいの。あの子は才能はあってもそれを正しく使える知恵を持ち合わせてないの」
憧「何かをさせるなら、内気で友達が少ない子が最適ね」ズズズ
久「……咲ね」
久「で、具体的には何をするの?」
憧「麻雀よ」
久「はい?麻雀?」
憧「宮永さんの才能と言えば麻雀。特にプラスマイナスゼロと言う変態麻雀なわけよ」
久「確かに咲の得意スタイルがプラスマイナスゼロと言ってたけど。これってすごい事だけど普段の麻雀では役に立たないのよね」
憧「大会は三位じゃ駄目だからね。二位でもいいけど最終的には一位じゃないと」
久「私も最初見た時は信じられなかったわよ。点数を調整出来る人間が居るなんて」
憧「そうなの。プラスマイナスゼロした所で、すごくはあっても何の意味があるんだって話」
久「で、プラスマイナスゼロがどうしたの?」
憧「プラスマイナスゼロ麻雀を見世物にするのよ」
久「見世物ねぇ」
憧「簡単に言えば、宮永さんと半荘する権利を一万円で売る」
久「一万円ね」
憧「宮永さんのプラスマイナスゼロを阻止出来たら三万円キャッシュバック」
久「じゃあ咲がプラスマイナスゼロ失敗したら損するじゃない」
憧「それでいいの。たまには失敗した方がむしろいいくらい。毎回毎回、プラスマイナスゼロが成功したらイカサマって思われるし」
憧「そうね。一日あれば色んな雀荘回れるし、6回くらいは半荘やれるんじゃない?」
久「一日六万円か」
憧「一日に一回くらいは失敗するとしても三万円儲かるわけよ」
久「土日に繰り返せば……」
憧「一ヶ月で24万円。宮永照の妹って事を大々的に使えば対戦相手に困る事もないでしょう」
久「ふーむ」
憧「って言うか、今は宮永咲に知名度もあったわね。まぁテレビ局に売ってもいいわけで」
久「あんまり目立ちたくないから雀荘巡りからやってみようかな」
憧「そうね、それがいいわね。宮永さんには修行のためとか言っておいたら?」
久「そうしようかしら。一日の咲の売り上げが三万円だったとして私の取り分って……」
憧「二万円でいいんじゃないかしら?特別顧問料として私は五千円でいいわよ」
久「そう……。なら咲の取り分は五千円ね」
憧「宮永さんは色んな人と麻雀打てる上にお金まで貰える。ウィンウインよ」
憧「プラマイゼロだけど。和や竹井さん相手に出来るなら、雀荘に居る程度の一般客ならほぼ九割くらい大丈夫だと思うのよ」
久「咲次第ってわけね。プラマイゼロが10割なら」
憧「一日六万円。後は上客を見つければもっと稼げるわ。宮永照のファンとか」
久「ふむふむ、なるほど」
そして後日
部室
久「えー、これから土日、咲は私が面倒を見ます」
和「はい?」
久「私が咲を鍛えます。じゃあ、みんな須賀君を強くしてあげてね」ドヒュー
咲「あ~~~れ~~~~」
そして雀荘
咲「プラマイゼロでいいんですか?」
久「えぇ、そうなの。今回はプラスマイナスゼロをいかに成功させるかの特訓なの」
咲「うーん、多分普通にやれば出来ますけど」
久「絶対にしなきゃ駄目よ。今日は初日だからね!連続で成功させるのよ」
客「ティヒヒヒ、ホントにプラスマイナスゼロを意図的に出来るの?」
久「えぇもちろん。打って貰えばわかると思います」
客2「三万円本当でしょうね?」ファサ
久「はい。咲が一位になろうが二位になろうが、プラマイゼロじゃない場合は三万円お渡しします」
客3「麻雀に奇跡も魔法もないんだよ。ほら、一万円だ」パサッ
久「……ありがとうございます」
そして半荘後、咲は三位のプラマイゼロで終える
咲「ツモ、700・300です」
客「やられちゃったよー」
客2「ほむぅ……本当にプラスマイナスゼロなのね」
客3「くやしーーーー!ドラ3つ持ってたのに」
咲(何の特訓かよくわからないけど、成功して良かった)
久(一時間で一万円ゲット!)
客「インチキしてない?」
咲「し、してません」ブンブン
久「疑いになるならもう一度してみませんか?条件はさっきと同じで。麻雀卓や牌は交換OKです」
続いて半荘、やはりプラスマイナスゼロで終える咲
咲「ふぅ……。すいません、お水下さい」ゴクゴク
客3「きぃぃぃぃぃ!配牌はいいのに!私の時代なのに!」
客「すごいねー。噂は本当だったんだ」
客2「同性恋愛にご利益があると言われている宮永ホーンを触って帰りましょう」
客3「駄目!まだ私は諦めちゃいない!もう一回」パサッ
バーン
咲「ひゃっ!?」
久「あーごめんなさい。卓は叩かないで貰えますか。これは私達の備品じゃありませんし。もう一回ですね、わかりました」
もちろんプラスマイナスゼロで終える咲
客3「もういいよ!三万も溶けた。帰る!」プンスコ
バタン
咲「あのっ……」
久「毎度ありがとうございましたー」
咲「これで良かったんですか?プラスマイナスゼロなんかして、人を不快にして……」
久「いいのよ。プラスマイナスゼロされる方が悪い。咲、よくやったわね。貴方のいい所たくさん見れた」ナデナデ
咲「あっ…///」
咲(麻雀やって褒められるなんて久しぶりだ)
こうして雀荘を三店舗回り、半荘を七回もした咲
ハニレス
久「いや~、まさか無敗とはね!恐れ入ったわ」
咲「いえ、実質0勝ですけど……」
久「いいのよいいのよ。今回はプラスマイナスゼロが目的なんだから。そう言った趣旨の特訓なのよ」
咲「そうですか……」
久「特訓が上手く行って、とても気分がいいわ。何でも好きな物を食べなさい」
咲「じゃあ…グラタンでも」
久「グラタン!?この780円の単品で頼むつもり?」
咲「い、いけませんか?じゃあ、こっちの480円のパスタで……」
久「ステーキにしなさいよ。これ、2000円のステーキ」
咲「いいんですか?一食で2000円は高くないですか?」
久「いいのよ。今日の私は太っ腹だから」
咲「じ、じゃあ遠慮なく……」
久「デザートも頼んでいいわよ。あっ明日も特訓だからねよろしく」
久の家
プルルルルル、ツーツー
久『ってわけよ。意外や意外。すんなり上手く行った』
憧『ふーん、全勝ね。それはすごい』
久『小さい頃から宮永照と打ってたのよね。そりゃ誰よりも強い練習相手よ』
憧『勝率9割もいけるかもね。いずれレートを上げたりしてもいいんじゃないかな?』
憧『じゃあ、私の取り分は五千円ね。ネットバンクだから24時間振り込めるわよ』
久『はいはい』
憧『別料金くれれば、こっちで宣伝して対戦相手見つけとくから』
久『関西で?』
憧『こっちの人間はそっちよりギャンブル好きだからね。みんな乗って来ると思う』
久「ひーふーみー……七万円!私の利益は六万円!すごい、私自身は何もしてないのに六万円も手に入った!」
久「しかも咲に感謝までされちゃった……。これがお金を稼ぐと言う事なのね!」
一ヶ月後
部室
咲「……」ウトウト
和「咲さん、咲さんのツモ番ですよ」
咲「あぁ!ごめん。ボーとしてた。あっツモ、2600」
京太郎「ん?それだとお前、逆転出来ないぞ」
優希「へへっー、私の勝ちぃ」
和「咲さん!なぜこの手で上がるんですか!待ったら三色もつけれるじゃないですか!」
咲「いや、三色どころか平和すらつけちゃ駄目な条件で……あれ!?私、何やってるんだろ?」
和「しっかりして下さいよ。こんなミス、大会でしちゃ駄目ですよ」
咲「う、うん。わかってる。私、強くなってる…よね?」
バーン
久「さ~き~ちゃん」
まこ「よう顔出すのぉ」
咲「ぶ、部長」
久「ノンノン、久姉って呼びなさい。私と咲は一心同体。もう運命共同体だからね♪」
久「明日から三連休ね。突然だけど旅行に行くわよ」
咲「えっ?」
久「特訓よ特訓。麻雀を打ちに行くの」
咲「……少し休みたいような」
久「若いくせになーに言ってんのよ!」バシーン
久「あっそうだ。温泉に行きましょう、温泉温泉」
咲「温泉ですか?」
久「麻雀打って、温泉で心も体もリフレッシュ!」
久「じゃあ貴方達は引き続きまこの言う事をしっかり聞いて強くなるのよー」
和「……」
優希「……」
まこ「……」
京太郎「じ、実は俺、麻雀の役全部覚えたっす。そこそこ打てるようになったしぜひ竹井先輩とお手合わせを……」
久「バイバイキーン☆」ドヒュー
松実館
憧「紹介するわね。この人、高校麻雀の大ファンの作家の○○さん」
オッサン「デュフフフフ、君が咲ちゃんかー。いやぁー、似てるねぇ……。お姉ちゃんそっくりだ」
咲「は、初めまして」オドオド
オッサン「僕はねー。照ちゃんの大ファンなんだ。あぁ高1の頃から知ってるよ。地方大会からずーーーーーと見ていた」
咲「そ、それはそれは……お姉ちゃんがお世話になり……。あれ?」
オッサン「そうそう。白糸台の制服を入手したんだ。これ、着てくれるかな?」
咲「えっ…いや…、私、宮永照じゃありませんし……」
オッサン「知ってるよ。これ着てくれたら照ちゃんと麻雀打ってるみたいじゃないか!僕の夢なんだ」
咲「あ…、え…、いや…でもでも…」
久(いくら貰えるの?)
憧(あの人、お金持ってるわよー。10万くらいはポーンと払うんじゃないかしら?)
久(……ふーん)
憧(お金持ちの知り合いはお金持ち。多少、無茶聞いといた方が後々、美味しい汁を吸えるわよ)
久「咲、着てあげなさいよ」
咲「ふぇ?」
久「制服着て麻雀なんていつもやってるじゃない。わざわざ咲と打ちたいって言うからいらして貰ったのに無下にするなんて失礼よ」
咲「……そうですかねぇ」
オッサン「サイズはピッタリだと思うんだなぁ、これが」
久「着・な・さ・い」
咲「……はい」
対局中
オッサン「いやー、咲ちゃんは対局中は凛々しいねぇ」
咲「……」ゴゴゴ
憧(照明壊すなよー)
久(しかし、寒気で震える)
オッサン「腕、ギュルルルルするのは出来るのかい?」トン
咲「わ、わかりません」トン
久「これも特訓よ!宮永照に近付くの!貴方ならきっと出来る!」トン
憧「連続で上がってればいいんじゃない?」トン
咲「ツモ、ツモ、ロン、ロン、嶺上開花、ツモ、ロン」ギュルルルルルルルルル
オッサン「おおっ…これが宮永咲(光悦)」
久「やった!咲が更に進化した!私が育てた!」
咲「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!麻雀なんて麻雀なんて……大嫌いだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
こうして久は咲でたいそう儲けたそうな
happy end
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