幼エルフ「ねえ、おじちゃん」オーク「ん?」 (28)

幼エルフ「おじちゃんはなんで毛むくじゃらなの?」

オーク「気付いたらこうなっていたのさ」

幼エルフ「おじちゃんのお鼻はどうして大きいの?」

オーク「それも、いつの間にかこうなっていたんだ」

幼エルフ「おじちゃんはエルフじゃないのに、どうしてエルフしか知らないおまじないを知ってるの?」

オーク「おじちゃんは昔、エルフだったからさ」

幼エルフ「おじちゃんはエルフだったのに、どうして毛むくじゃらの大きいお鼻になったの?」

オーク「さぁ…。でも思い当たることがある。昔、とても悪いことをした」

幼エルフ「なにをしたの?」

オーク「昔、俺は君の住んでいる里で暮らしていた。そこで、とても悪いことをしたんだ。それで里に居られなくなって、姿もこうなってしまった」

幼エルフ「おじちゃんはどこに住んでるの?」

オーク「この先に谷があるだろう。君たちが『暗がり谷』と呼んでいるところだ。その谷の底に住んでいるんだ」

幼エルフ「おじちゃんはどうしてここに毎日いるの?」

オーク「ここに狩に来ているのさ。狩がひと段落して休んでいると、いつも君がやって来るだろう?だからここにいつもいるんだ」

オーク「おっと、そろそろ帰らないと陽が沈んでしまうぞ」

幼エルフ「えー?やだ!もっといろいろ教えてよ!」

オーク「また明日ここに来ればいい」

幼エルフ「ぶー!……わかったよ」

オーク「そうだ、帰る前にこれを持って帰ってくれ」

幼エルフ「わあ!きれい!」

オーク「これを君のお母さんに渡してくれないか?ここで拾ったと言って」

幼エルフ「あたしにはくれないの?」

オーク「もっと大きくなったらひとつあげよう。それまではお預けだ」

幼エルフ「わかった!」

………

幼エルフ「ただいま!」

母エルフ「おかえりなさい」

幼エルフ「あのね、お母さん、これ」

母エルフ「……!幼、これ、どうしたの?」

幼エルフ「あのね、えっとね、拾ったの」

母エルフ「どこで?」

幼エルフ「えっとね、森の出口のところ」

母エルフ「……そんなところに……」

幼エルフ「……?」

………

次の日も、おじちゃんはいつもの場所に座っていた。

わたしの姿を認めると、お母さんに昨日の綺麗な珠を渡したら、何と言ったかを訪ねてきた。

どうしたのか尋ね、その後は何かを考えているようだったと答えたら、おじちゃんは少しの間黙り込んで、もう帰りなさいと言った。何故かと訊きたかったけれど、それがいけないことのような気がして、黙って従った。

それからは次の日、また次の日と、わたしはいつもの場所に行ったけれど、おじちゃんはいなかった。

そうして一週間が過ぎた。

その日もわたしは、いつもの場所でおじちゃんを待った。

今日も来ないのかもしれないと不安な気持ちで待った。

日が傾き始めた頃、おじちゃんはやってきた。今までに見たことのない真剣な顔で、真っ直ぐわたしを見つめて。

今までどこに行っていたのか問い詰めようかと思っていたのだけれど、おじちゃんの思い詰めたような目を見て、おじちゃんがわたしになんて言うのかを待つことにした。

オーク「君のお母さんは、母エルフという名前だろう?」

幼エルフ「うん、そうだよ」

オーク「そうか。今日は、君に本当のことを教えようと思って来たんだ」

オーク「君のお父さんは、君が産まれる前に死んでしまった。そうだね?」

幼エルフ「うん。事故でね」

オーク「事故で……か。まあいいだろう」

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