モバP「雨の日の天才」 (31)

モバマスSSです。

よろしくお願いします。


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――撮影スタジオ前



P「ふぅ、やっと終わったか」



P「打ち合わせも無事に終わったし、一安心だな」



P「しかし、公用車が使えないってのも不便だなぁ……」



P「まあ、いいか。それほどの距離でもないし、帰りも歩こう」






ポツポツ……



P「……ん?」



サァァァァァ……



P「やばっ、雨か……!?」



ザァァァァァ……!!



P「かなり強いな……」



P「タクシーは……こんな時に限ってか、仕方ない……!!」


――事務所



サァァァァァ……



池袋晶葉「む……雨か」



晶葉「……そうか」



晶葉「……」カチャカチャカチャ……






ザァァァァァ……!!



晶葉「……」キリキリキリ……



晶葉「雨脚が強いな……」



晶葉「大丈夫、だよな……」


ザァァァァァ……



晶葉「……」カチャカチャカチャ……



晶葉「ふむ……」カチャカチャ……



晶葉「……」ピタッ



晶葉「本当に、大丈夫だよな……?」






晶葉「……」ドクンドクン……



晶葉「……まさか、な」




晶葉「むぅ……」スッ





prrrr prrrr……


――事務所、入り口




P「はぁ……はぁ……まるでスコールだ」



P「タクシーもいなかったとはな……はぁ、全身ずぶ濡れだ」



P「鞄……大丈夫、だよな?」



P「書類は……あー、かなり酷いな……」






ガチャッ



P「只今帰りまし……」



晶葉「P……」ギュッ



P「……ただいま、晶葉」


P「携帯……雨で駄目になってたのか」



晶葉「……心配したんだぞ」



P「はいはい。悪かったよ」



晶葉「全く……人のことは、心配するくせに」



P「そうだな」



晶葉「……タクシーくらい、呼べばいくらでも来ただろう」



P「……確かに」



晶葉「君は……本当に、馬鹿だな」



P「そうか。光栄だよ」


晶葉「いつもそうだ、私達のことは散々心配するくせに……」



P「それだけ、大切だからな」



晶葉「だったら、もう少し自分自身に気を使いたまえ。風邪でも引いたらどうするんだ」



P「その時はその時さ」



晶葉「……君の事が、心配なんだぞ」



P「……」



晶葉「あまり、心配させないでくれ……」グスッ



P「……そうだな。悪かったよ」





P「……晶葉、そろそろ離れてくれないか」



晶葉「……駄目だ」ギュッ



P「流石に、濡れたままじゃ本当に風邪を引く」



晶葉「……っ!す、すまない……」


晶葉「……」



P「……どうした、晶葉」



晶葉「いや……なんでもない。大丈夫だったか」



P「ああ。シャツまで濡れちまってたけどな。着替えくらい常備してる」






P「……机、半分返せよ」



晶葉「……あ」



P「俺の椅子は、使っていいから」



晶葉「……すまない、P」


ザァァァァァ……



P「雨、止まないな」



晶葉「……そうだな」






カタカタカタ……



カチャカチャカチャ……



P「……」



晶葉「……」





ザァァァァァ……



カランッ



晶葉「……あっ」




ササッ



P「あっ……」スッ



晶葉「む……」スッ



晶葉「……君が拾ってくれないか」



P「なんで俺が」



晶葉「……いや、なんでもない」


P「ふむ……」



ヒョイッ



P「ほら」



晶葉「……ありがとう、P」



P「自分で拾っても、良かったのにな」



晶葉「いや……何故だか、君に拾ってもらいたかったんだ」



晶葉「どうしてかは……私自身、上手く説明ができないのだが」



P「……いいんじゃないか?」



P「たまには理屈に合わなくたって、それでいいだろ」



晶葉「……確かにな」


ザァァァァァ……



晶葉「……」



P「……」



晶葉「……なあ、P」



P「どうした?」



晶葉「ネジ、締めてくれ」



P「……ああ」





キュッ……キュッ……



P「……ところで、こいつは?」



晶葉「……ウサちゃんロボのプロトタイプさ」



P「プロトタイプ?」


P「そういや、どうしてプロトタイプを?」



晶葉「この子は、思い入れのあるロボだからだよ」



P「思い入れ?」



晶葉「ああ……ウサちゃんロボは、初めて誰かと作ったロボだからな」



P「そうだったのか」



晶葉「ああ。ウサミンのオーダーで作ったものだし、この子以降のウサちゃんロボは全てウサミンのデザインだ」



晶葉「……それに、この子は」



P「ん?」



晶葉「今こうして、君の手で生まれ変わったからな」



P「……そうだな」





キュッ……キュッ……



キュッ



晶葉「そんな風に、思い入れのある子だからな……」



晶葉「時々、こうやって手入れをしているんだ」



P「そうだったのか」



晶葉「……本当は、こんな念入りな手入れなんていらないんだがな」



晶葉「この子には……自律起動するプログラムを入れていないんだ」



P「……つまり、どういうことだ?」



晶葉「今のウサちゃんロボ達みたいに、自ら動くことはない、ってことさ」



晶葉「……いつかは、動かしてあげたいんだがな」



P「プログラム、入れないのか」



晶葉「ああ」


晶葉「……もっと、ちゃんとしたプログラムを持たせてあげたいんだ」



P「現時点で、ウサちゃんロボのプログラムは凄いと思うんだがな」



晶葉「まあ、な。ただ、あれはまだまだ未完成な部分が多いんだ」



晶葉「確かに、数台はおかしな挙動を見せるが……本来なら、命令を受け取ってそれに答えているだけなんだ」



晶葉「つまり、指示待ちということさ。自ら動くとは言ったが、自分で考えて動いている訳ではないんだよ」



P「じゃあ、月見の時のウサちゃんロボとかは」



晶葉「……私にもさっぱりだ。偶然ああなった、としか私には言えないよ」



P「そうだったのか……」



晶葉「本当に、偶然の産物さ。下手にいじるのも気が引けるから、あのままにしているんだ」


晶葉「プログラムについては、私は完璧じゃないからな」



晶葉「その辺は泉に頼めば作ってもらえるのかもしれないが……」



P「自分の手で作りたい、か」



晶葉「ああ。みんなで作るのもいい事だが、やはり自分でプログラムを打ってこそだからな」



晶葉「だから……誰かと作ったロボなのにおかしな話だが、この子は私の手で完成させたいんだ」



晶葉「言わば、私のアイドルとしての原点となるロボ、だからな」



P「なるほどな」



晶葉「この子は……私が一人じゃないと、教えてくれたんだ」






P「本当に、いいお母さんだな」ナデナデ



晶葉「わわっ、い、いきなり何をする!」



P「褒めてるだけさ」



晶葉「ふ、ふんっ……」フイッ



P「まあ、少し位いいだろ」



晶葉「……いつものことだからな」



P「それだけ、俺も信頼されてるってことか」



晶葉「ふん……好きに言っていたまえ」



P「ははは、ありがとな」



晶葉「全く、君は不思議な人だな」






晶葉「……本当に、不思議な人だよ」



晶葉「やはり、君以外に助手はつとまらない」



P「よしてくれ、いつ聞いてもむず痒い」



晶葉「君が私の頭を撫でるのと同じことさ。ふふん」



ザァァァァァ……



カタカタカタ……



P「ん……また、ミスか」



晶葉「……」ジーッ



晶葉「……ふむ」





カタカタカタ……



コトッ



P「ん?」



晶葉「コーヒーでも、どうだ」



P「ああ、ありがとう」


P「コーヒー、淹れられるんだな」



晶葉「君は失礼なやつだな」



P「素直に生きているだけさ」



晶葉「嘘をつけ……と言いたいが、嘘じゃないんだろうな」



P「アイドルに嘘をつく必要なんて、ないだろ?」



晶葉「……そうだな」






晶葉「次は、ウサちゃんロボに嘘発見器でも搭載するか」



P「何のためにだよ……」



晶葉「いや、何かと使えるかもしれんぞ?君が嘘をついているかどうかとか、イタズラの犯人とか……」



P「イタズラの時点で、もう決まってるようなものだろ」



晶葉「う……たしかにそれは、否定出来ないな」


晶葉「……コーヒーの淹れ方は、ちひろに教えてもらったよ」



P「へぇ、ちひろさんが」



晶葉「ああ。おかげで笑われたが」



P「なるほど……」ゴクッ



P「……うん、練習したんだな」



晶葉「もっと、素直に褒めてくれてもいいと思うぞ」



P「予想してた以上に、良いと思う。流石だな」



晶葉「ふふん、この天才に不可能はないのだよ」



P「ちなみに、ラボの冷蔵庫は」



晶葉「い、いや待て。今は散らかっていて入れないぞ」



P「……よく頑張ったな」ナデナデ



晶葉「ふん。私にだって、不得手なものくらいあるさ……」



ザァァァァァ……



カタカタカタ……



P「よし、これで終わりだな」



晶葉「お疲れ、P」



P「ありがとな……ふぁぁぁ……」



晶葉「……大丈夫か?疲れて見えるぞ」



P「いや……大丈夫、じゃないな……視界が霞む」



晶葉「仮眠室にでも行くがいい。どうせこの雨では、私は帰れないしな」



P「……タクシー、呼べるだろう?」



晶葉「……馬鹿と天才は、紙一重さ」



P「……そうか」


P「あー……駄目だ、ソファでいいや」ゴロンッ



晶葉「ま、待てP。仮眠室の方が……」





P「ん……」スゥ……



晶葉「む、寝てしまった……ようだな」



晶葉「全く……」






晶葉「仮眠室……いや、前に頼子から聞いたな。この引き出しに……あった」



バサッ



晶葉「自分の机に毛布など用意して……仕事以外では、君は一体何をしているんだ」



晶葉「だが……私が研究に没頭するのと同じように、君も仕事に没頭しているのかな」



晶葉「……馬鹿なやつだよ、全く」


ザァァァァァ……



晶葉「む……」ジーッ



晶葉「P……半分ほど飲んでも、眠気には勝てなかったのか」



晶葉「……ふむ」






晶葉「……なあ、P?」



晶葉「……うん。寝てるな」



スッ



ゴクッ



晶葉「……苦いな」



晶葉「さて、砂糖とミルクでも入れるか……」



ザァァァァァ……



晶葉「しかし……こんな雨の日でも」



晶葉「時には、いいものだな。ふふん」



晶葉「なあ、P」






晶葉「ふふっ、まるで子供みたい顔だな」



晶葉「……しかし、君ってやつは本当に、わかっていないな」





晶葉「君がソファに横になっていては、その……」



晶葉「私の寝る場所が、ないじゃないか」





晶葉「……Pの、ばか」




ザァァァァァ……



以上で、終わりです。

ありがとうございました。


池袋晶葉(14)


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