ラブライブ VS チブアイブ (48)

――お昼休み、中庭

穂乃果「蕎麦飯おいしいなあ~」

海未「お昼前にも食べてたのにまたそんなものを…!」

海未「ダイエットするなんて言っていつも口だけなんですから」

海未「ひよこもなにか言ってあげてください」

ことり「ほのりちゃんが幸せならそれでいいと思うの♪」

穂乃果「ですよね~」

海未「まったく、ひよこはほのりに甘すぎるんです!」

穂乃果「もう~うみみちゃん、そうカッカしないの!」

…………

希「なんかおかしない?」

絵里「言われたらそんな気も…」

希「なにが変なんやろ…」

絵里「普通お昼に蕎麦飯なんて食べるかしら」

希「それもおかしいけどそういうことやなくて…」

絵里「ですよね、って穂乃果っぽくないわ」

希「まあ、それも妙やけど、もっとなんか…」

絵里「キャラデザが変わったんじゃないかしら?」

希「うちは関係ないやろ!スノハレの顔と並べるのやめーや!」

絵里「怒らないでよ…変な希ね」

希「だから変なんはあの三人…もうええわ」

希「うーん、この違和感は一体…」

――――――――

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――部室

穂乃果「突然ですが、私μ'sをやめます」

にこ「は?今度は海未が留学でもするわけ?」

海未「いいえ、私も一緒にやめさせてもらいます。そしてひよこも」

ことり「みんな、勝手言ってゴメンね」

真姫「この人達なに言ってるの?」

穂乃果「だからμ'sをやめるって話だよ」

真姫「あんたには聞いてない。ねえ、誰か解説してくれない?」

花陽「真姫ちゃん、怖い…」

絵里「ちょっと、よくわからないわ、穂乃果。どういうことなの?」

穂乃果「私達、新しいグループを作ることにしたんだ!」

海未「もう名前も決まってるんですよ。ψ'sというんです」

ことり「それでね、みんなにもψ'sに入ってほしいなって」

にこ「ふざけんなっつの。はいはい練習するわよ」すたすた

花陽「あっ、にこちゃん…」

真姫「はぁ、私も先行ってるわね」すたすた

花陽「あぁん、真姫ちゃぁん」

穂乃果「あっちょっと二人ともー!」

凛「かよちん、言ってる意味わかった?」

花陽「えっと…」

凛「凛はね、さっぱりわかんなかったよ」

希「うちもわかりませーん。穂乃果ちゃん、どないしてしもたん?おかしいで」

絵里「ねぇ、穂乃果、何を考えているのかわからないけれど、このままじゃみんなの共感は得られないわよ?」

海未「ほのり、やはりこう藪から棒では…」

穂乃果「ですよね。じゃあ、あの方法でいこっか」

ことり「うん、それがいいと思うなっ」

穂乃果「それじゃ、私たちはもういくね。μ'sのみなさん、また今度!」たったか

絵里「えっ、ほ、穂乃果っ」

凛「行っちゃったにゃ」

花陽「なんか変なことになっちゃったよぉ…」

希「うーん……?」

――――――――

――翌日

凛「あっ、真姫ちゃーん!」

花陽「真姫ちゃん、一緒に部室いこ」

真姫「……」

凛「真姫ちゃーん?」

真姫「……」

花陽「どうしたの…?」

真姫「……いかないわ」

凛「体の調子でも悪いの?」

真姫「べ、別に平気よ。ただもうあの部室には行きたくないだけよ」

凛「え??」

真姫「だから、私はもうμ'sじゃないから。わかった?」

花陽「え、それって…」

真姫「そ、そういうことよ!」だっ

花陽「あっ、真姫ちゃん…!」

凛「いっちゃった…」

花陽「もしかして、これって昨日の…」

――その後、部室

絵里「えっ、真姫が?」

希「ええと、ψ'sやったっけ?」

にこ「まったく、昨日の今日とはちょろいわねー真姫ちゃんは!即落ちじゃない!」

花陽「どうしましょう…」

希「なんか雰囲気怪しくなってきたなあ」

絵里「というか…うん…これ完全に乗っ取られたわね」

にこ「真姫ちゃん一人ちょろられたくらいで大げさね」

絵里「誰がμ'sの曲を作るの?」

にこ「あっ…」

絵里「真姫がいなければ、μ'sは活動できないわ」

にこ「ぐぬぬぬぬ…あの尻軽お姫様を取り返してくるわ!」

希「まあまあにこっち、とりあえずどうどう」

にこ「なによ!」

希「なんか、なあ…?」

絵里「……そうね」

希「穂乃果ちゃんたちが何をしてるのか、ようわからないやん?」

絵里「あまりにもわからなさすぎるわ、これが私たちにとって不利益なのかさえ」

にこ「なにいってんのよ!あいつら新しいグループでμ'sを乗っ取る気なんでしょ!」

希「それもなあ、なんでうちらを誘ったん?こぞって移籍したらそれμ'sとなんも変わらんやろ」

にこ「そっ…それは…そう…ね」

絵里「少し、様子を見ましょう。今日はもう解散でいいわね」

――――――――

――翌日

花陽「私たち、どうなっちゃうのかな…」

凛「…大丈夫だよかよちん!一緒にμ's続けよっ」

花陽「凛ちゃん…」

凛「凛はかよちんと一緒にゃ!」

ことり「二名様ごあんなーいっ」

りんぱな「っ…?!」

海未「そうですか、凛は花陽と一緒ならいい、と」

ことり「二人一緒にψ'sに入れば問題なしだねっ」

凛「え、えーと、凛たちはμ'sで頑張っていくにゃ…なーんて、あはは…」

海未「……」バシィ!

凛「ふぎゃっ!」

花陽「ひぃっ…?!」

ことり「やーん、凛ちゃん可哀想~」

凛「あ…ぅ…」

ことりが近くの教室の扉を開け、海未がその中へ凛を引きずり込む。

凛「ちょっ、なんなの…やめてっ、やめてっ」

教室の奥には穂乃果がいた。

海未「さあ、ほのり」

ぐにっ ずもっ ずるる…

凛「えっ?えっ?ほ、ほの…」

花陽「な、なに…いや…なにして…ひっ…」

ことり「すぐに花陽ちゃんも同じにしてあげるからね♪」

花陽「いや、いや、いや、だ、誰か…誰か助けてえぇえええええ!!!」

凛「あ――」

――――――――

――翌日、部室

絵里「……」

希「……」

にこ「……」

絵里「遅いわね」

希「……」

にこ「昨日も来なかった」

絵里「……」

希「……」

にこ「もってかれた、わね」

絵里「でしょうね」

にこ「どうすんのよ!」

絵里「……さあ」

にこ「さあって、あんたね!」

絵里「何をどうできるというの」

にこ「…っ……もう、μ'sは終わりだわ」

絵里「……」

希「……」

にこ「いってくる」

希「やめとき」

にこ「あんたやっと口を開いたと思ったらっ…」

希「やめとき……」

にこ「ーーっ…」

希「うち、今日はもう帰るわ。二人もはよう帰り。ほな」

にこ「…なんなのよ!」

――――――――

――翌日、廊下

にこ「見つけた…あそこがあいつらの根城ね…」

絵里「にこ…なにしているの…?」

にこ「ふんっ、あいつらをぶっちめてやるのよ。後をつけて活動拠点も見つけたわ」

絵里「無茶しないで、にこ。私が話をしてくるから」

にこ「何を偉そうにっ。そんな悠長なこと言ってて結果このざまじゃない!」

絵里「それは…」

にこ「あいつらふざけてるわ…!許さない!邪魔しないで!」

絵里「あっ、にこ…!」

絵里「っ……」

がらがら、ぴしゃっ

にこ『ちょっとあんたたち!』

がちゃっ

絵里「え…?」

絵里「鍵…?鍵をしめたの?誰が?なぜ…?」

にこ『ちょっ、なに、なにすんのよ!』

絵里「にこ?どうしたの?!」

がたがたっ

絵里「なにしてるの!鍵を開けて!」

にこ『くっ、こいつらっ…絵里!こいつらおかしい!』

絵里「ここを開けて!穂乃果!海未!いるんでしょ?!」

にこ『なんなのよ…それ…いや、やめ…うっ…』

絵里「にこ!」

がちゃっ、がらがら

絵里「にこ…?」

にこ「おっなおっなほー☆」

絵里「は…?」

にこ「あなたのペニスにおなおなほー」

にこ「射精誘う矢澤しこしこ~」

にこ「しこにーって覚えてオナシコッ」

にこ「…………絵里……逃げて…」ぽろぽろ

絵里「――っ?!」

…………

たったったったった

絵里(にこ!ごめん!ごめん…!)

絵里(やっと事態のヤバさがわかった…!)

絵里(グループがどうとかいう次元じゃないっ…!)

絵里(“私たちが侵略されている”っ…)

希「えりち!こっち!」

絵里「希?!」

絵里「希、にこが…にこがっ…!」

希「うん、落ち着いて…!話はあとや!」

――――――――

――その後、通学路

希「そうなんか…」

絵里「いったい、私たち、これからどうしたらっ…」

希「にこっちが何をされたのかはわからないん?」

絵里「わからないわ…閉め出されて…出てきたらもう変わってしまっていたのよ…」

希「実はな、えりち。隠してたんやけど、おるんや。“見てた子”が」

絵里「ど、どういうことなの…?」

希「あいつらに襲われて、すんでのところでうちが助けだした子が――」

希「ここに」

――神田明神

花陽「…………」

希「ここにかくまってたんや」

希「でも、話ができる状態やなくて…」

絵里「花陽…あなたは見たのね?何が起こっているのか、その眼で」

花陽「!…あ、ああ、ひっ…あっ…」

絵里「花陽…」

希「ダメなんや…怯えるばっかりで…」

絵里「お願い、花陽。もう私たちしかいないの…私たちが、なんとかしなくちゃ」

花陽「いやいやいやいや凛ちゃん凛ちゃん凛ちゃ」

絵里「あなたの力を貸してほしい…!凛も、みんなも、私が助けるから…!」

花陽「むし」

絵里「無視?」

花陽「むしっ蒸し、虫無シムシムし」

花陽「――ッ」

花陽「オゲェエッ、ゲホッ」びちゃびちゃ

絵里「花陽?!」

希「花陽ちゃん!」

花陽「はぁ、はぁ…」

花陽「あああ、あ、ああああ…」

絵里「……」

希「……」

絵里「…っく、う、うああああ」

希「えり、ち…う、ぐすっ」

絵里「うあああああああん!あぁあああ!!」

――――――――

――その後、希の部屋

希「わかったこと。捕まったら終わり。
無理やり何かされて、少しの間に別人に変えられる。
虫?…やろか。どういうことやろ。
……こんなことしたくないんやけど。しゃーないよね。
うち、大丈夫やんな。な、えりち」

――――――――

――翌日

トゥルルルル、ピ

絵里「もしもし?」

希「はぁ、はぁ、ねーちゃん今どんなパンツはいてるんや?うへへ」



トゥルルルル、ピ

絵里「もしもし」

希「ご、ごめんごめん、嘘やって」

絵里「はぁ、どうしたの?」

希「実はな、うち、やられてしもた」

絵里「えっ――?!」

希「ん…は…あんまり時間はなさそうや。
あいつらは、みんなやけど、みんなやない…。体は…っく…本物やけど、心が違う。
操られてるんや。ふぅっ、ん…虫、に…。寄生虫や…。ピンクの、ふっとい…ぅっ。
それを…女の子の、御仏さんの中に、挿れられて…。穂乃果ちゃんが、親玉、女王様や…。
穂乃果ちゃんの中のやつが…繁殖して…みんなに寄生を拡げてる…んんっ!
はぁっ、はっ…ああうちもうあかんっ…はっ、あっ、あ、あ、イッ――」ブツッ

絵里「……………………」

絵里「希…」

絵里「なんだか楽しんでたような…」

絵里「それはともかく、わかったわ、希。私に託してくれたのね」

絵里「虫、か…。つまり、殺せるってことよね?虫だもの」

絵里「ええ、やるわ。やつらを殺す、必ず」

――――――――

――翌日、穂むらへの道すがら

海未「絵里…どこへ行くんです?」

絵里「穂乃果のうちへ」

海未「では私もご一緒します」

絵里「いいえ、あなたはここで死ぬのよ」

海未「なっ、どういう意味ですかそれは?」

絵里「文字通りよ…海未に似た誰かさん」

海未「…やはりあなたは厄介ですね。無理をしてでも先に引き込んでおくべきでした」

絵里「どうやって?」

海未「――ふっ!」

素速く絵里に突進する海未。だがしかし。

絵里「ロシアキック!」バキィッ

瞬速の蹴りが海未の腹部にカウンターヒットした。

海未「ぐはぁっ」がくっ

海未「う……」ばたっ

絵里「痛かったわよね…ごめんね、あとで目一杯優しくしてあげなきゃね」

絵里「…………」かきかき

…かさ

――穂むら

穂乃果「嬉しいな、絵里ちゃんから来てくれるなんて」

絵里「私も、会えて嬉しいわ、穂乃果」

穂乃果「はい、ほむまんだよ!最高に美味しくていくら食べても飽きない自慢の品だよ!」

絵里「おかしいわね、穂乃果はアンコに飽きてるはずだけど」

穂乃果「……」

穂乃果「あ、お茶も淹れなきゃ。ちょっと待っててね!」

穂乃果「雪穂ー!雪穂もお茶飲むー?」

絵里「今日は気が利くのね、いつも雪穂ちゃんに淹れてもらってるのに」

穂乃果「……」

穂乃果「どうしたの?絵里ちゃん…なにか嫌なことでもあった?」

絵里「ええ、とっても…」

穂乃果「ん、こっちきて、絵里ちゃん」

絵里「……」すっ

穂乃果「よしよし…」

絵里「ごめんなさい、あなたに当たってもしかたないのに」

穂乃果「いいんだよ、辛いときは、私に甘えてほしい」

絵里「穂乃果……」

グリッ
絵里が穂乃果の腹部にぐっと五指の爪を立て、絞るように捻る。

穂乃果「――ッ?!」ドンッ

穂乃果「な、なにするの?!絵里ちゃん、痛いよ!」

絵里「痛い?あなたは痛くないでしょう。それは穂乃果の体なんだから」

穂乃果「絵里ちゃ――」

絵里「好きよ、穂乃果。だから、これからあなたに酷いことをするわ」

穂乃果「絵里ちゃん、怖いよ、絵里…くっヤメロッ」

絵里「穂乃果から出ていけ!」

ばきっ がきっ どさっ ぐぎぎ

穂乃果「つうっ――」

絵里「あぐっ」

どたんばたん!

穂乃果「はぁはぁ」

絵里「はぁはぁ」

穂乃果「絵里ちゃん!ψ'sに入ってよ!私たちの仲間になって!」

絵里「お断りよ!」

穂乃果「どうして?!みんなψ'sに入ってくれたよ?!花陽ちゃんもきっと入ってくれる!そしたら絵里ちゃん一人になっちゃうよ!」

絵里「あんたの仲間になるくらいなら一人のほうがマシだわ!」

穂乃果「あのときみたいに、私の手をとって!絵里ちゃん!」

絵里「っ!!お前が穂乃果の口で、あのときのことを言うなぁ!」ドンッ!!

穂乃果「あっ」ふらっ

突き飛ばされた穂乃果、バランスを崩し、家具の角に頭を強打する。

ガツッ!!……どさぁ――

絵里「はぁ、はぁ…………」

絵里「…………え?」

絵里「穂乃果…?」

絵里「え?え?あ、頭から血が」

絵里「穂乃果、血が、穂乃果、ねえ穂乃果」

絵里「ほ、のか…?」

絵里「あ、あ、あああ血が、血が止まらないよ穂乃果」

絵里「ねえ目を開けて穂乃果、穂乃果、血が」

絵里「血が、ちが、違、こ、こんなつもりじゃ」

絵里「ね、ねえ誰か?!穂乃果が、穂乃果が死んじゃう!希!海未!あああ」

ズロォ……

絵里「あ」

ズルッズルッ

絵里「あああ」

ズチュル…ズロロロ…ビタッ

絵里「あああああ」

ズルンッ…グチュ…ゾワゾワゾワゾワゾワゾワ

絵里「あああああああああ」


はじめそいつは穂乃果のスカートの中から這い出してきた。
鮮やかなピンク一色、ゴムでできた円柱のような姿のそれが、
ぷるぷると身を震わせ、のたうっていた。
次第に二匹、三匹と姿を現し、まもなく十か二十に増え、
孵化したばかりの蛆虫かのように群れで蠢いていた。
と、にわかにスカートが盛り上がり、その中が見えた。
そこには一際大きなそれがいて、穂乃果の体と繋がっていた。
ずれた下着の蔭から除く陰裂の、そのまた深いところの肉壷の中からそいつは出てきていた。
穂乃果の秘部を蹂躙するかのようにうねっていたそれは、やがて傍に金髪の少女を見とめると、
先端にぽっかりと開いた黒い穴で、じっと少女を見据えた。
少女はかたかたと歯を鳴らし、慄き、そいつから眼を離すことも、そこから逃げることもできなかった。

そいつにとって狩りはたやすいことだった。

――――――――

――――――――

NOTE

恥部愛撫淫虫とは
人間の女性の膣に寄生する線虫の一種。
体長は5cmから15cmほどで、胴の直径は1cmから5cm前後。
人間の精液を主な栄養源としており、宿主である女性の膣内で脈動することで劣情を催させ、性行為に至らせて摂取する。
幼体は母体と同じ宿主の膣内ですごし、母体から栄養を受けている。
成長した幼体は母体を離れ、別の女性に移住し成体となる。
その主な方法はレズセックスである。
ある程度宿主をコントロールすることができ、同株の仲間同士で独自のコミュニティを形成する。

――――――――

リンリンリンガベー♪
ピッピッ

花陽「……………………絵里ちゃん」

『ちめいすょいあちえるやつらでてこるはによおねか』

花陽「なんて書いてあるのかわからないよ…………」

??「……………………」すっ

花陽「……?」

海未「致命傷与えるヤツラ出てくる花陽お願い」

花陽「ひっひ、ひいぃやああああああ!」

海未「花陽、これを見てください」ヌギッ

花陽「やああああああああああああああ!!!」

海未「よく見て!私の中に、もうあの虫はいません…」クパァ…

海未「絵里が、助けてくれたんです」

花陽「絵里…ちゃんが…?」

『あなたの力を貸してほしい…!凛も、みんなも、私が助けるから…!』

花陽「助けて…くれた…?」

海未「はい、私だけでなく穂乃果も…でも、絵里は…」

花陽「…………」

海未「穂乃果の家にいったら、穂乃果が倒れていました。でも、寄生虫と絵里の姿はありませんでした」

海未「きっと穂乃果に寄生していた奴らが絵里に移って…」

花陽「そんな…」

海未「絵里は私にメモを残しておいてくれました。だからここがわかったんです」

『花陽は無事 助けてあげて 神田明神』

花陽「……!」

花陽「怯えて、隠れて、縮こまっていただけの私を…」

花陽「最後まで、気にかけていてくれてたんだ…!」

海未「私は戦わなければなりません」

海未「私たちのμ'sを取り戻すために」

海未「花陽、あなたはどうしますか?」

花陽「私は…私も…海未ちゃんといく…!私も、大好きなみんなを…大好きなμ'sを…取り戻したい!」

海未「花陽…!」

海未「ええ!いきましょう!」にこっ

――――――――

――翌日、通学路

花陽「きた…にこちゃん…」

海未「あの柱のあたりまできたら、そこで挟み撃ちです」

海未「…………いま!」ババッ

にこ「?!…あんたたち…?」

花陽(致命傷を与える…致命傷を与える…)

花陽「にこちゃんはどうしていつもお昼休みに、お弁当持って廊下をうろうろしてるの?」

海未「は?」

海未「花陽、こんなときに何の話を…」

花陽「ど う し て 教 室 で お 弁 当 食 べ な い の ?」

にこ「…………ぐっ」

にこ「あぐっ、ぐごごごご」

にこ「ぐああああああああああ!」バタッ

海未「え?何が起こって」

ズロォ…ピクピク…

花陽「で、でた!」

花陽「こ、こいつめ!こいつめ!」ぐしゃ!ぐしゃ!

海未「……はい?」

――その後、部室

にこ「……」

海未「致命傷…精神的なものでもよかったのですか…」

花陽「え?!もしかして暴力を振るうつもりだったの?!そ、そんなのだめだよ!」

海未(私が絵里に思いっきり流産キックされたことは黙っておきましょう…穂乃果がドタマかち割られてたことも)

にこ「あんた言葉の暴力って知ってる?」

花陽「うぅ…」

海未「ま、まあいいじゃないですか。助かったんですから」

にこ「一生治らない後遺症は残ったけどね、心に」

花陽「ごめんなさい…」

にこ「ふんっ、別にいいわよ。ヤツラの寝首をかく算段ができたわけだから」

海未「こ、こほん。では次のターゲットですが…真姫にしましょう」

海未「真姫なら、にこと同じような手法でいけそうですから」

にこ(こいつもなにげに酷いわね…)

――その後、音楽室

がらがら

にこ「まーきーちゃんっ」

花陽「こ、こんにちは…」

海未「真姫、お話があります」

真姫「な、なによ、あんたたち何しに来たわけ?」

花陽「えーっと、お話っていうのは、真姫ちゃんってμ'sがなかったらどうなってたのかなーって」

真姫「うっ…?」びくっ

真姫「どういう意味よ…」

花陽「μ's以外の人とお話してるところ、見たことないような気がして…」

真姫「うぐっ」びくん

花陽「でも、μ'sメンバーとお話してる真姫ちゃんは、とっても楽しそうだよねっ」

真姫「そ、それがなんなわけ?!話が見えないんだけど!」

にこ「ところであんた、どうして私にだけちゃん付けするわけ?」

真姫「――っ?!」

にこ「他のみんなは呼び捨てなのに、なんか特別な理由でもあるのかしら?」

真姫「そ、そ、それは、あなたも同じじゃない、私にだけ、ちゃん付けして…」

にこ「うぐっ」

海未(にこ!あなたがダメージを受けてどうするんです!)

にこ「そ、そうね、私たち、似たもの同士だもんね!ぼ っ ち と し て」

真姫「うぅ!」

にこ「擦り寄りたくもなるわよ!相手があんたしかいないんだから!」

真姫「ひぎっ」ガクガク

にこ「こんな情けない理由でシンパシー感じちゃって、惨めだわー!」

真姫「ブハァッ!!」ぐら~

真姫「ゲフッ」ばたり

花陽(にこちゃん、見てられないよっ…!)

海未(にこ…見事な神風でした…)

ズロォ…

にこ「くそっくそっ」ぐっちゃぐっちゃ

にこ「はぁ、はぁ、…あんたたち、私の心を見て。どう、傷は増えてる?」

花陽「…ええーっと、むしろひびだらけの陶磁器みたいで渋いかなって…」ぽろぽろ

海未「年月が経てば茶渋でいい風合いが出ますよっ…」ぶわっ

――その後、部室

真姫「……」

にこ「……」

花陽「あ、あはは…」

花陽「う、海未ちゃん、二人がものすごく睨んでくるよっ…」

海未「どうか許してください、それもこれもμ'sを取り戻すためなのです」

真姫「わかってるわよっ!こうなったらとことんやってやろうじゃない!」

にこ「拾い集められないくらいにヤツラをすり潰してやるわよ!」

海未「こ、心強いです…」

海未(はぁ、これは事が済んでもみんなの接し方は変わっちゃいますね)


――その後、下駄箱


凛「あっ、かよちん!」

花陽「うっざ」

凛「オゴベゲェ!」ズロロ

にこまき「ふんっ!ふんっ!ふんっ!」ぐしゃぐりずべべべ


――その後、アルパカ小屋


みんな「9位!!」

ことり「ギュポァッ」ズロロ

にこまき「ふんぬ!ふんぬ!」ざしゅずさぐりぐり

――――――――

――部室

ずーん

海未(これだけ仲間を取り戻したというのに、この薄ら寒い雰囲気…)

ことり「人気投票じゃないし…脚本のせいだし…」

凛「ごめんね、ごめんね、もうベタベタしないから…」

海未(い、胃が痛い…)

花陽「う、嘘だから…!まったくそんなこと思ってないから!私、凛ちゃんのこと本当に大好きなんだよ!」

凛「かよちん…」

ことり「私のは思おうと思わずと事実だよね…」

花陽「あぅ…」

ずーん

にこ「なんにせよ、敵はあと二人…ここまできたらやるしかないわ…」

真姫「そうね、私たちの心の傷を無駄にしないためにもね…」

にこ「いつまでも暗い顔してんじゃないわよ!顔で笑って心で泣くのがアイドルよ!」

海未「にこ…」

にこ「私や絵里なんかは元々あんたたちとは敵対してたのよ!」

にこ「それでもここまで仲良く…信頼し合える仲間に…なれたじゃない!…と私は思ってるわよ…」

真姫「にこちゃん…」

にこ「ちょっとくらい心をえぐる悪口を言い合ったからってなによ!」

にこ「そんなの、お互いをもっともっと知るためのきっかけにすぎないわ!」

花陽「にこちゃん…!」

にこ「これを乗り越えたとき、私たちはさらに強い絆で結ばれるのよ!」

凛「にこちゃん!」

にこ「私は信じてる!あんたたちのことを!」

ことり「うん…うん!そうだよね!」

にこ「私は!あんたたちが!大好き…!!」

みんな「パイセン…!パイセン…!パイセン…!」ウォー!

がらがら

希「おやみなさんおそろいで」

みんな「――ッ!!」

希「なんやら熱い演説が聞こえてきたけど…にこっち………ええやん!」ぐっ

にこ「ののののののぞのぞみのぞ」

凛「あれ?かっこいいパイセンどこいったにゃ?」

海未(まずい――何も準備していないというのに、ここで希と…?)

海未(希をここまで避けてきたのは、ひとえに強敵だと考えられるため…!)

海未(ある種ストレートな武闘派である絵里と違い、手の内が知れない恐ろしさがある…)

海未(くっ、どうしましょうか…ここは逃げるというのも…)

希「あれ?みんな元に戻ったん?」

にこ「そそそそそそうよ!もうあんたらはおしおしおしまいなんだから!」

海未(挑発しないでください…!)

凛「かよちん!ぶちかましてやるにゃ!」

花陽「ええー?!あの、その、で、で、デブーっ」

希「む?」

希「なーんか聞こえたなー」

花陽「ひえっ」

希「悪い子はどの子やろー?」わしわし

海未(花陽ーっ、ああもう…!)

花陽「ふあああああああ」

希「うへへへ、ええカラダしとるやんかぁ~」わっしわっし

ことり「やめてー!花陽ちゃんには手を出さないでー!」

希「ならことりちゃんが身代わりやなぁ!」

希「むふふ、こちらもなかなかのもんや!」わしー!

ことり「ふああああああん」

ことぱな「あふぅ…」くたぁ

にこりん「あわわわわわ…」がたがた

海未(ことりと花陽が瞬く間に手篭めに…!にこと凛は過去のトラウマで戦意喪失…)

海未(いとも簡単に四人も戦闘不能にされた…!)

真姫「ね、ねえ、なんかおかしくない?」

海未「え?」

真姫「いつもの希と変わらないような…」

海未「えっ?の、希…あなたもしかして…」

希「ん?」

希「フフフ…」がばっズルッ

海未「虫!やはり敵です…!」

真姫「い、いえ、よく見て」

ぷらーん

海未「死んでる…?」

希「…たーっぷり搾り取ったったわ」

――――――――

海未「人が悪いですね、希…」

希「にこっちが物凄いビビりようやったから、つい脅かしてやりたくなってなぁ」

にこ「うるさいわね…」

凛「のぞのぞのぞ、ちぇけ、おしおしおしまいクラッピャヘン」

にこ「うるさいっ!」

花陽「もうー、凛ちゃんやめなよー」

真姫「はぁ、ばっかみたい」

ことり「うふふ、ばかみたいなのって、楽しいよっ」

真姫「…そうかもね」

海未「あなたはどうしてあの虫に打ち勝てたんですか?」

希「それが、ようわからんねんけど、その…」

希「アレがな、その…アソコさんの中で、もぞもぞ動くやん…?」

希「うち、その、なんていうか…きもちく…なってしもて///」

花陽「////」

真姫(何をいまさら照れてるんだろう…)

海未(ついさっき私たちの目の前でアレを股ぐらから引っ張りだした人が…)

希「イっ…てしもてんやんかっ…///」

花陽(ひゃー////)

にこ(何言ってんだこいつ頭おかしいのか)

希「それで、その、膣内が…収縮して、そのときに潰れてしもたみたい…」

海未「案外ひ弱なんですねあの生き物…」

希「ま、まあうちの膣圧あってのことや思うけど…」

ことり「すごい!」

凛(なんの自慢なの?!)

海未「と、ともかくあとは絵里を助ければ、私たちの勝ちというわけですね」

希「えりちも、やられてしもたんか…」

海未「ええ、私と穂乃果を救って…」

希「そうやったんか…えりち、頑張ったんやね」

真姫「でもどうやって?これまでと同じ手で勝てるのかしら」

海未「…誰か、絵里の胸を抉るような弱点を知っていますか?」

みんな「…………」

にこ「ていうか、そもそも悪口で寄生虫を殺せるってのが意味わからないんだけど?」

花陽「たしかに…」

海未「言われてみれば…」

真姫「あー、それはたぶん、わかるわ」

ことり「ほんと?真姫ちゃん」

真姫「強い精神的ショックによって動悸が激しくなって…」

真姫「その、ち、膣が、過剰な血流によって収縮運動をするからよ」

凛「よくわからないけどなんかそれっぽい!」

希「それってつまり…」

真姫「希がアレを殺したのと同じ現象よ、原因は違うけど」

海未「要するに悪口はただのきっかけ、結局のところ物理的に捻り潰してるわけですか」

真姫「そうね」

にこ(私の神風特攻の意味は…)

海未「…はあ、それならやはりああするしかなさそうですね…」

希「なにか手があるん?」

海未「殴ります」

花陽「ええっ?そ、そんな…」

ことり「海未ちゃん、暴力なんて…」

海未「私ははじめからそのつもりだったんです。だいたい私も穂乃果も手酷くシバかれたおかげで助かったんですよ」

真姫「まあ悪口が使えないんじゃ直接衝撃を与えるしかないわね」

希「しゃあないな。そうしないと、えりちを助けられないんだとしたら…」

ことり「そうだよね…うん、ごめんねっ、絶対助けなきゃ!私たちの大切な仲間を!」

海未「ええ、では誰が行くかです。とりあえず私は行きますが…」

にこ「みんなで行けばいいでしょ」

海未「いえ、少数精鋭で。一人相手に全員でかかるのはかえって非効率ですし、下手をすれば総崩れです」

希「言ってしまえばえりちと殴り合いをするわけや。いくら助けるためと言っても、やりたくない子もおるやろ」

花陽「…ごめんなさい」

希「ええんやで。できなくて当然、それも優しさゆえやんな」

ことり「私も…喧嘩なんてしたことないし、きっと足手まといだと思う…」

真姫「私もあまり役に立てるとは思えないわね…」

海未「はい、戦いに参加しない人は、どうか穂乃果のところへ行ってあげてください」

ことり「うん、そうしよう、みんな!穂乃果ちゃんが目覚めたとき、一人じゃさみしいもんね!」

希「うちは行くで!えりちはうちの大事な親友なんや!うちがいかんとはじまらんよ!」

海未「希が来てくれるなら心強いです」

にこ「にこも行くわよ!」

海未「駄目です」

にこ「ちょっと!一刀両断するんじゃないわよ!」

海未「にこの体力では絵里に太刀打ちできませんよ」

にこ「なんですって!ほら!見なさいよ!ラブにこアタック!ほら!ほら!にこにこニー!!」

にこにこニーとは勢いのない低空ジャンプから繰り出されるキレのない跳び膝蹴りである。

海未「膝を粉砕されるのがオチです」

にこ「にこー!!」

海未「にこは穂乃果にお弁当でも作っていってあげてください。料理上手なにこにしか頼めないことです」

にこ「そ、そういうことなら仕方ないわね!」

凛「凛は…」

海未「凛にはできればこちらに来て欲しいのですが…無理にとは言いません」

凛「う、うん!凛が力になれるんだったら、やるよ!」

花陽「凛ちゃん…気をつけてね、怪我とかしないでね…」

凛「だいじょーぶ!心配ないにゃー!」

海未「決まりですね」

ことり「海未ちゃん、希ちゃん、凛ちゃん…きっと絵里ちゃんを助けて、無事に戻ってきてね…!」

希「約束するわ!首洗って待っとき!」

海未「ことりの首をとってどうするんですか!」

――――――――

そこは屋上、双眼鏡で周囲を見回す希の姿。

希「……………………きたで!校庭、裏門側や!」

昇降口の凛、生徒会室前の海未にグループトークで伝える!

希「凛ちゃん、一番乗り頼むでー!海未ちゃん、昇降口で合流や!」

凛「了解!いっくにゃー!」

海未「凛!私たちが着くまで無理はしないでください!」

凛「うん!大丈夫だよ!」

希「ウチらも急ぐで海未ちゃん!」

海未「ええ!」

…………

凛「絵里ちゃん!!」

絵里「…凛?…そう、戻ったのね、やり直しだわ」

凛「そうはいかないよ!絵里ちゃんだって元に戻すんだから!」

絵里「へえ、どうするというの?」

凛「しゃっ!」

最高初速で駆け出す凛!一直線に絵里に突撃し、回し蹴りで飛び込む!しかし!

絵里「……」

ひらりと身をかわしすれ違いざまにカウンターキック!

凛「あぐっ」

絵里「やめなさい、凛。怪我をしちゃうわ」

凛「っつー…そ、そうはいかないよ…!」

ぐらりと立ち上がる凛のその手に、絵里のリボンタイが!

絵里「!…やってくれるじゃない…後悔するわよ…!」

凛「その言葉、ポストに返却だにゃー!」

果敢に立ち向かう凛!素速く跳び回り打撃を放つが、絵里はクリーンヒットを許さない!
弾き、いなし、受け止め、そして反撃のロシアキック!だが凛も負けてはいない!
危うくもかわし、身を立て直し、また飛びかかる!
青空に響き渡る四肢をぶつけ合う音!肉弾戦の激しい応酬!

絵里「あまり調子に乗らないで!」

凛「ぐぅっ…!」

鋭い前蹴りが凛の正中線を捕らえる!辛くもガードしたが衝撃をもろに受け、凛は吹っ飛んでしまう!
その瞬間!絵里の視界に映る飛行物!
とっさに身を逸らした絵里の眼前をびゅんと横切るそれは矢であった!

絵里「海未ね!やってくれる!」

海未「凛!大丈夫ですか!」

希「えりちを返してもらうで!」

絵里「くっ、三人まとめてやり直してやるわよ!」

凛「隙ありー!」

絵里「!!」

二人の伏兵に気を取られていた絵里の反応は僅かに遅れた!
姿勢を低くし絵里の懐に飛び込んだ凛!その拳に渾身の力を込め――!

凛「凛の、スーパーパーーーンチ!!」

どーん!!会心の一撃が絵里の脇腹に突き刺さる!

絵里「ぐふぅっ!」

凛「どう?!」

絵里「うっ…くっ…」

はじめてまともに食らった攻撃に苦悶の表情でよろめく絵里!
そのとき!絵里のスカートの中から、ぼとり、と鮮やかなピンク色のソレが落ちた!

凛「やった!やったよ!」

海未「いいえ、まだです!それは幼虫の一匹にすぎません!女王がいるはずです!」

絵里「…あなたたち、大概にしなさいよ…」

ゆらりと立つ絵里の眼光!その鋭さ!まさにロシア軍人!殺意しか感じない!!

希「あ、あかん、怒らせてもうた」

絵里「隙をみて取り押さえるつもりだったけど、気が変わったわ…」

絵里「動かなくなるまでぶちのめしてから、ゆっくり寄生してやる!!」

絵里「まずは凛、あなたからよ!」

凛「ひぃーっ」

憤怒の獣となった絵里が凛に襲いかかる!その攻撃性、勢い、これまでの比ではない!

凛「ぐっ、うあっ、いっ、いだっ」

右から左から次々と放たれる蹴り技!凛は必死にガードするが、その重い打撃は確実にダメージを蓄積していく!

絵里(確実に一人ずつ倒す!これだけ凛に密接していれば矢は射てないでしょう、海未!)

怒りに身を任せているようで、しかし冷徹な状況判断!戦術!これがロシア!荒々しく身を切る吹雪の冷たさ!
しかし!!
――びゅん!!

絵里「?!!」

海未「射たないと、思いましたか?」

絵里「なっ、凛に当たったらどうする気?!」

希「ふふ…それが、当たらないんやなー」

絵里「希…?!」

希「うちの必殺技!高速リアルタイム占いやー!」ぺらぺらぺらぺら

希「左に5度!さらに12度!右に27度!そのままもう一発!!」

びゅん!びゅん!びゅん!びゅん!
希の指示を受け矢を射る海未!その矢はまるで意思があるかのように凛をすり抜け、絵里に届く!
占いによって、凛に当たらず絵里に当たるラインとタイミングを、見事に読んでいるのだ!
もちろんそれは指示通り正確に射てる海未の技術あってのこと!これぞコラボ!スカイラブハリケーン!!

絵里「うああああっ!!」

乱れ飛ぶ矢の猛襲!だが心配は無用!やじりは柔らかいものに交換されている!
しかしである!命の危険はないとはいえ、高速で飛んでくる物体の直撃は単純に痛い!

凛「えいっ!とうっ!」

絵里「うぅっ!くっ!ぐあっ!」

矢と凛の波状攻撃!リリーホワイトのジェットストリームアタック!
さすがの絵里も防ぎきれない!次第に押されはじめ、腹部へのヒットも許してしまう!
二匹、三匹とヤツラの幼虫が死骸となってまろび出る!確かな手応え!

凛「いけるっ、いけるよ!」

勢いにのる凛!ここぞと攻め立て、そして満を持しての必殺技である!

凛「もう一度!凛の、スーパーパーンチ!」

バシッ

凛「あっ!」

絵里「…………」

その拳を絵里が掴んだ。そして、それまでの激情が消え去った、暗く静かな眼で凛を睨み上げる。

凛「あ、う…」ぞくっ

もはや絵里は矢を気に留めることをやめていた。避けられないのなら気にするだけ無駄である。
矢が命中するたびに反動で体を揺らす絵里。しかしそれには構わず、じっと凛を見据え続ける。

凛「あ、あ、あ、や、やばいにゃー…」

助けを乞うように海未たちに目線をやる凛。その刹那――

凛「え?」ぐらぁ

凛の視界が青に染まる。青、青、青、ときおり白い汚れ、また青。
それが空だと気づいたのは、全身を地面に打ちつけてからだった。

凛「――ッ?」

凛には何が起きたかわからなかったが、海未と希はそれを見ていた。
凛が二人に頭を向けたその時、既に絵里の脚は天に向かって伸びていた。
そして次の瞬間、目にも留まらぬ速さで振り下ろされた踵が、凛の首筋にめり込んでいた。
断罪、斬首、死神の鎌、そういった形容が相応しい無慈悲な一撃。

凛「……ッ…ッ!……!」

倒れた凛は言葉を発さず、ときおりビクンと身を震わせるのみ。

海未「凛ー!!」

希「ああ!あかん!」

絵里「可哀想な凛……どうしてこんなことになってしまったの?」

絵里は海未たちの方へ向き直り、ゆっくりとその距離を詰めはじめる。

海未「くっ…!」

焦り矢を連射する海未。しかしそれは無意味な行動である。
避ける気がない絵里はただ真っ直ぐ進むだけでいい。
矢が飛んで来ようが来なかろうが真っ直ぐ歩く、ただそれだけだ。

絵里「痛いわ、海未」

海未「……!」

距離2メートル。そこで絵里は立ち止まった。
獲物の喉に一足飛びで牙を突き立てられる距離。それが2メートル。
じり、と片足を下げ、姿勢を低くする。つまりは予備動作。死の宣告。

希「ふ、ふふ…」

絵里「…希?どうかしたの?」

希「あかんなあ、えりち。あかんよぉ」

希「狩りをしてるのは、こっちなんやで?」にたぁ

海未「――希!!」

希「はいよ!!」

絵里「?!」

そのとき!海未の背後に控えていた希が、海未の左手側へ竹刀を放った!
と、同時に海未の右側から飛び出す希!海未の脇を抜け、絵里の側面へ踊り出る!

絵里「ブラフ!」

一瞬の逡巡!だが出遅れない!瞬時の判断を下す!

絵里「こっちが本命!!」

絵里はそのまま向きを変えずに、目の前の獲物に襲いかかる!
そこには居合の構えをとった海未!一閃を放つための握りをしたときにはもう遅い!
絵里の足先がカミソリの鋭さで、海未の緩衝材のない胸に突き刺さる!
さらに!飛び込みの勢いを回転力に転嫁し、逆足の後ろ回し蹴り!狙いは同じ部位!

海未「ガハッ…ガッ…!カハッ…!…!」

呼吸が止まり、激痛にのたうつ海未!

絵里「あと一人!!」

間髪置かず希へ向き直る!そのとき!!

絵里「?!!」

絵里を後ろから抱きすくめる何者かの腕!

花陽「――こっちが本命、です」

絵里「花陽?!なぜ!!?」

希「いっくでー!!」

山が動く!とんとんととっしん!零距離!
しっかりと腰を落とし、ぐい、と右半身を後方へ捻り、左手を絵里の腹部へそっと当てる!

希「希パワーたっぷり注入――」

全身のバネが脈動!ぎゅんと右半身を前に突き出す!

希「はーい、プシュ!!!!!」ズドォ!!!

全体重を乗せた右の掌底が絵里の腹部へ深く埋まる!

絵里「グハァッッ!!!?!」

花陽「あああっ!!」

その威力、後ろの花陽まで吹っ飛ばすほど!
しかしそのことがかえってまずかった!絵里の拘束が解かれたのだ!
立っている!そう、絵里はまだ立っている!

絵里「グ、グゥゥゥゥ…ゲホッ…!」

その股間からピンク色の塊をぼとぼとと落としながらも、眼下にある希の頭をがっしりと捕まえた!
そのままぐい、と持ち上げ、希を無理やり立たせる!

希「あ、あはは、えりち、あのー…」

次の瞬間、希の鳩尾をえぐる絵里の膝!にこにこニーとは次元が違うその重さ!内蔵が絶叫する衝撃!

希「オゲエェェェッッ!!」

悲惨!壮絶!地面がピンク色の塊と黄色い粘性物質で染まる!
糸が切れた人形のようにぐちゃりと潰れる希!

…………

凛、海未、そして希までもが倒れた。
二次被害で倒れた花陽を除くとしても、死屍累々。
絵里はようやく膝をついた。そして這うようにその場から離れようとする。
一刻も早くここから逃げたい。脳内に生命の危険信号が鳴り響く。
動かなくなった獲物たちに寄生する余裕もない。その時間すら惜しい。
早くどこかに身を隠し体を休めなくては……。
そのとき視界の端に微かに動くものがあった。

海未「え…り…」

息も絶え絶えという様子。しかしなんとか身じろぎし、上体を起こした海未。

海未「絵里…。穂乃果…には…会えまし…たか…?」

絵里は不思議だった。なんの話をしているのだろう?
それは今、この状況でする話なのだろうか?
無視してもよかった。いや、無視すべきだった。
全力で離脱し、生き延びなければならなかった。
だができなかった。

海未「穂乃果が…死にました…」

なにを言っている?

海未「誰かに…殺されたんです…」

死んだ?穂乃果が?

海未「穂乃果の部屋で…争ったような…跡があって…」

あ、ああ…

海未「穂乃果が血まみれで倒れていたんです…」

あああああ…

海未「死んでいました…」

あああああああ…

海未「動かないんです…笑わないんです…冷たいんです…」

あああああああああ…

海未「絵里…?」

あああああああああああ…

海未「穂 乃 果 に は 、 会 え ま し た か ?」

絵里「あああああああああああああああ!?!!!!?!!」

膝が崩れ、べちゃりと潰れ、地面に這いつくばってもがく絵里。
逆に海未はよろめきながらも徐々に立ち上がる。その手に弓を携えて。

絵里「あ、ああ、ああああああ穂乃果ああああ!穂乃果、穂乃果あああああ」

ズル…ビチ…ズルル
そしてついに姿を現した、女王。全ての元凶。
絵里の膣内の強い圧縮にいよいよ耐え切れなくなり、その身を外界に晒す。
眼が合う、というのは正確ではない。
それは穴だ。女王の頭部の黒い穴と、海未の黒い瞳孔が直線で結ばれる。
虫に恐怖という感情があるか?
捕食者から身を隠し、捕縛から逃れようともがく行動原理。
その根源たる生存本能を恐怖と呼ぶならば、そのとき女王は確かに恐怖していた。

引き絞られる弦。しなる弓。ゆっくりと息を吐き、そして。

――ラブアローシュート。

――――――――

………………
…………
……
絵里「ん…んん…」

横になっている。寝ていた。これは…ベッド。眩しい。白いカーテン。眩しい。赤っぽい光。夕日。
窓から差し込む。眩しい。ここは?家じゃない。知らないどこか。どこかのベッドで目覚めた。夕方。
理解。

絵里「……」

??「あっ、絵里ちゃん!」

絵里「……?」

??「おーい、みんなー!絵里ちゃん起きた!起きたよー!」

とても懐かしい、そんな気がする声だ。

??「大丈夫?!起きてる?!私だよー!穂乃果だよ!」

絵里「ほ、のか…?」

急速に覚醒する意識。

絵里「穂乃果?穂乃果?!!」

がばっと起き上がり、ベッドの脇に置かれた椅子に腰掛けていた穂乃果にしがみつく。

穂乃果「お、おおう」

絵里「穂乃果!!」

穂乃果「そうだよ、穂乃果だよ」

何度も見たことのある可愛らしい笑顔。いつもと違うのは、頭に白いネットをかぶっていることくらい。

穂乃果「絵里ちゃん、ただいま」

絵里「っ……!」

ぐっと息を呑む。なにかに耐えるように唇を結ぶ。

穂乃果「絵里ちゃん、おかえり!」

決壊。

絵里「うぁあああああああああん!穂乃果ああああ!」

穂乃果「ちょ、絵里ちゃん、苦しい、ふ、ふふふふ、絵里ちゃん!」

そこへぞろぞろとやってくる仲間たち。

希「おやおや、これは」

凛「あー!絵里ちゃんが泣いてるー!」

真姫「こらっ」

凛「あたっ」

にこ「まったく心配させるんじゃないわよ」

海未「ふぅ、一安心ですね」

ことり「よかったぁ…」

穂乃果「絵里ちゃん、全部終わったんだよ…!」

絵里「終わった…私たち、勝ったの?」

海未「はい!寄生虫はすべて駆除しました」

絵里「もう大丈夫なのね、私たち…」

希「うん、大丈夫やで!今はちょっとしんどいけどな!」

凛「死ぬかと思ったにゃー!」

海未「ええ、ほんとに」

希「うち涅槃見えたわ」

凛「海未ちゃんなんて胸が取れちゃったよね」

海未「元からです!あとあなたに言われたくありません!」

ことり「冗談じゃないよ!みんな傷だらけで戻ってきて…ほんとに心配したんだよ!」

真姫「入院してもおかしくないってのに、元気な人たちね」

絵里「そう…そうだった…私が…みんなを傷つけてしまった!」

穂乃果「もう!そんなこと言っちゃ駄目だよ絵里ちゃん!」

絵里「穂乃果…」

穂乃果「駄目…だよ」

絵里「……うん」

海未「だいたい、絵里が希望を繋いでくれたから、今があるんです」

にこ「そうそう、後腐れなし!私たちが、μ'sが、力を合わせて苦難を乗り越えた!そういう話よ」

希「おおー!パイセン!」

にこ「あんたのパイセンではないわ」

みんな「パイセン!パイセン!パイセン!」わあああ

穂乃果「よーし!じゃあ、お決まりのあれで締めだー!」

穂乃果「いち!」

ことり「に!」

海未「さん!」

真姫「よん!」

凛「ご!」





凛「……かよちん?」

花陽「…………」

凛「…かよちん、だよね?」

END

くぅ疲これ完
読んでくれてありがとう
このSSを気に入ってくれた方にはレイプゾンビという映画をおすすめします

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