F5の精霊「私は、F5キーの精霊でございます」 (65)

姉「…………」

タンタンタンタンタン

弟「姉ちゃんっ。そんなに連打したら、キーボード壊れるよ。なにしてんの?」

姉「ライブのチケット取りたいんだけど……全然繋がらない」

弟「何時から発売なの?」

姉「10時から」

弟「もう50分も経ってるじゃん。完売しているよ」

姉「一度『予定枚数終了』って出ても、後で数枚だけ空きが出たりするんだ……」

弟「ふぅん……」

姉「…………グスン」

タンタンタン タタタタタタタタタタタ

ボワン

F5の精霊「お呼びでしょうか。ご主人様」

姉「ぎゃあああああああああああああ」

かわいい

弟「どうしたんだ姉ちゃん……ってうわっ! だ、誰だアンタ!」

F5の精霊「私は、F5キーの精霊でございます」

姉「ひぃぃ……!」

弟「えふごきー? な、何言ってんだ?」

F5の精霊「キーボードの『F5』に宿る精霊です」

姉「へ、変質者だ! 避難しよう! 弟! 防災頭巾をかぶれ!」ガバッ

弟「姉ちゃん、落ち着けよ!」

F5の精霊「ご主人様。願いを3つ、叶えてさしあげます」

弟「ね、願い? キーボードから飛び出たオッサンに何が叶えられるの?」

F5の精霊「失礼ですが。貴方はご主人様ではございません。そちらの、四つん這いで震えている淑女こそ、ご主人様です」

姉「わ、私……? 私、知らないよ……?」

F5の精霊「いいえ。私を呼んだ貴女が、ご主人様です。F5キーを15000回連打なされたでしょう?」

姉「わ、わからない……」

F5の精霊「それが、合図なのです。ご主人様は15000回、F5キーを連打なされました」

オッサンかよ!!期待して損したよ!!
死ね!!

>>9
一つ目の願いで「美少女になってください」って言えばいいだろ

弟「姉ちゃん、何が楽しくて15000回も連打したんだ」

姉「サンドウィッチマンのライブにどうしても行きたかったんだもの……」

姉「はっ! そうだ! チケット!」ガバッ

F5の精霊「……」

姉「ちょ、邪魔! 画面が見えない! どいて!」グイグイ

F5の精霊「はい」スッ

姉「ああああああああああ! 復活してるよ! 弟! チケットが復活してる!」

弟「わかったから、はやく購入しなよ」

姉「うん!」カチッ カチカチッ

【アクセスが集中しております】

姉「がああああああああああああああ」ダンッ

>>12
それでも美少女(オッサン)だよ
いいの?(オッサン)だよ

>>16
じゃあ「美少女だったことにしてください」でいいだろ
これで美少女(もともと美少女)だ

姉「くっ! F5……! あれ!? 無い! F5キーが!」

弟「ホントだ。穴になってる」

F5の精霊「F5キーなら、私の右乳首にございます。ご主人様の前へ実体化する時、身体の一部となるのです」

姉「ふん!」ガバッ

F5の精霊「あっ! 何を!」ドタン

姉「はぁ……! はぁ……!」

F5の精霊「ご主人様……!/// 精霊を押し倒すだなんて……! だめ! それ以上は、お許しください!」

姉「うるさい! 乳首を見せろ!」ガッ

F5の精霊「ひゃん!」

姉「あった! F5キーだ!」

弟(マウスをつかえばいいのに)

>>17
やったああああああああああああ
救いはあった!!ありがとう!!成仏するね!!

姉「せいせいせい!!!」

タンタンタンタン

F5の精霊「ん……! あっ/// そこはぁ……っくぅ!/// 駄目ですぅ! 連打しないでぇ……!///」

姉「弟! 画面は!?」

弟「ちゃんと更新されてるみたいだよ。相変わらず、『アクセスが集中しております』だけど」

姉「このぉ! このぉ!」

タタタタタタタタ

F5の精霊「あっ! 乱暴! 私の乳首はボタンじゃないのに……!///」

姉「ボタンだろ!」

タタタタタタタタタタタタ

弟「あっ! 姉ちゃん! ストップストップ!」

姉「なに!?」

弟「『予定枚数終了しました』って出てた」

姉「ああああああああああああああああああああああ」

ダンッ

F5の精霊「乳首がぁ!!!!!」

姉「チケットがぁ……」

弟「落ち込むなよ。また復活するんじゃない?」

姉「無理だよぉ! そう何度も復活しないよぉ!」

F5の精霊「く……乳首が陥没してしまうところでした……」

姉「もう何もしたくない……寝る」

弟「そんな……昼飯どうすんさ。母さん出かけてるから、姉ちゃんがつくってくれよ」

姉「知らない……冷蔵庫の中勝手に漁れ……」

弟「……はぁ。………あっ、なんだ、母さんちゃんと用意してくれてたよ」

弟「ほら、姉ちゃんも食べる? 美味しそうだよ。サンドウィッチ」

姉「ぐああああああああああああああああああああ!」ガバッ

F5の精霊「ひぃ! もう乱暴しないで!」

弟「どうしたんだよ姉ちゃん!」

姉「サンドウィッチマンのライブを生で観たいよぉ! 観たいよぉ……!」

弟「姉ちゃん……」

姉「今までも、何度もチケット取ろうと頑張ってきたのに……どうして取れないの……」

姉「きっと二人に嫌われてるんだ……私は好きなのに……」

弟「ライブなんてDVDでいいじゃないか」

姉「観客席に座って弄られたいんだよぉ! 弄られたいんだよぉ……二人に弄ってほしいんだぁ……」

弟「……そうだ姉ちゃん! 精霊に頼めばいいじゃないか!」

姉「……?」チラッ

F5の精霊「来ないで! 乳首に乱暴しないで! いやぁ!!!」

弟「あんたもいい加減落ち着いてよ。姉ちゃんだって悪気があったわけじゃないんだ」

弟「サンドウィッチマンの漫才とコントが見たい、その一心でF5キーという名の乳首を連打したんだよ」

F5の精霊「……わかりました……精霊としたことが、取り乱しすぎましたね……」

F5の精霊「ですが、これだけは言わせてください。願いを叶える精霊だとしても、身体は売りません」

弟「うん。で、さっきも言ってたけど、姉ちゃんの願いを叶えてくれるんだよね?」

F5の精霊「ええ。あと2つ」

弟「? 3つじゃなくて?」

F5の精霊「既に『画面が見えない。どいて』という願いを叶えましたから」

弟「ああ……あれも含まれちゃうのか」

>>体は売りません

知るかよ!!!!!はよ死ねや!!!!

弟「まあいいや。とにかく、あと2つは叶えてくれんだよね」

F5の精霊「ええ」

弟「やったじゃないか! 姉ちゃんほら。サンドウィッチマンのライブが観たいって頼みなよ!」

姉「う、うん! 精霊さん! サンドウィッチマンのライブが観たいです!」

F5の精霊「それは無理でございます」

姉「うわあああああああああああああああああ」ドターン

弟「どうして!?」

F5の精霊「チケットは完売してますから」

弟「いや、だから頼んでるんだよ! 精霊の力で何とかならないの!? どんな願いでも叶えてくれるんじゃないの!?」

F5の精霊「『どんな願いでも』とは一言も申しておりません。私の可能な範囲内で、でございます」

弟「そんな……じゃあ、どんなことなら叶えてくれるの?」

F5の精霊「そうですね……たとえば、『どいて』と言われてその場から移動したり……F5連打力の強化も可能です」

弟「連打力の強化……?」

F5の精霊「ご主人様。私は貴方のF5キー連打を観ていましたが、未熟です。まるで素人だ」

姉「よがってたくせに……」

F5の精霊「か、感じてなんかいません! 痛いだけで、気持ちよくなんかありませんでした!///」

弟「いいから、話を続けてよ」

F5の精霊「ええ。ご主人様は、キーの連打が早すぎるのです」

F5の精霊「そのせいで、せっかくページが繋がったのに、再び更新してしまって追い出されるという愚行を繰り返しています」

F5の精霊「そのミスがなければ、チケットを取れていたのですよ?」

姉「……」

弟「何度もやってきて、気づかなかったの?」

姉「気持ちが焦っちゃうんだよ……」

F5の精霊「そのままでは、また同じ過ちを繰り返します」

姉「嫌だっ。次のライブこそ行きたい!」

F5の精霊「いいでしょう。そのために、私が修行をつけてさしあげます。連打の修行です」

弟「いいじゃん。姉ちゃん、教えを乞いなよ。きっと、チケット戦争に勝てるようになるよ」

姉「お、お願いします!」

F5の精霊「脇をしめて! 目を画面から離さない! 更新が終了したのを確認して、はい押す!」

姉「ふん!」

タンッ

F5の精霊「遅い! 力が入り過ぎています! 肩の力を抜いて!」

姉「ふん!」

タッ

F5の精霊「リズミカルに! かつ柔軟に! 更新の速度に対応して、指の動きに変化を!」

姉「ふん!」

タッタ タタタタッタ

F5の精霊「いいですよ! その調子!」

姉「のってきた」

タン タタタタン タン

~2時間後~

F5の精霊「もうご主人様に教えることはありません。よく頑張りました」

姉「なんだか、身体が軽くなった気がする」

弟「きっと錯覚だよ」

F5の精霊「それでは、さっそく身に着けた力を披露してもらいましょう」

F5の精霊「このキーボードをお使いください」

姉「……フフ」ギュッ

弟「フィンガーレスグローブなんてつけて……本気だね」

姉「まずは軽く、一曲」

タッタタッター タータター タッタタッター タータター タタタター 

弟「すごい……! F5キーだけでルパン三世のテーマを奏でている……!」

姉「フフフ、お次は」

タッタタタタッタッタッタ タッタタタッタッタッタッタ タータタタタタタッタタタター

弟「ボレロだ! 信じられない!」

F5の精霊「軽やかな指さばきだ。文句なしの合格点です……感服いたしました」

弟「これで、いつチケット販売がきても安心だね!」

姉「うん」

F5の精霊「さて、願いはあとひとつ、残っておりますが」

弟「他にはどんなことができるの?」

F5の精霊「そうですね……強いて言えば、時間を戻す程度でしょうか」

弟「え!? 時間が戻せるの!?」

F5の精霊「ええ。ですが、範囲は数時間程度でして……あまり評判は良くないのです」

弟「十分だよ! ねえ! 姉ちゃん!」

姉「え? うん……?」

弟「……チケット販売開始前の9時45分ごろに時間を戻してもらえばいいじゃないか、って意味なんだけど」

姉「あ! そうか! すごい! そうだよ!」

F5の精霊「その程度なら、可能でございます」

姉「じゃ、じゃあ! 時間を戻してください! お願いします!」

~9時45分~

弟「すごい、本当に戻ってきた」

姉「チ、チケットは……! やった! まだ販売開始前だ!」

F5の精霊「それでは、3つの願いを叶えましたので、私は帰らせていただきます」

弟「うん。ありがとう」

姉「乳首ごめん」

F5の精霊「そ、そのことは忘れてください……/// やだ、もう……///」

ボワン

姉「……」

弟「いよいよだね。頑張って」

姉「うん……」

弟「チケット、とれるといいね」

姉「うん……」

弟「姉ちゃん? どうしたの」

姉「なんか、緊張してきた。吐きそう」

弟「落ち着けって……」

姉「……ふー」

弟「……」

姉「洗面器。洗面器。弟、せんめん……ぎ」ウプッ

弟「吐くのかよ!」ダッ

姉「オロロロロロロ」

ビチャビチャ

弟「……」

姉「スッキリした」

弟「よかったね……」

姉「よし……」ギュッ

弟「落ち着いてね。連打をはやくしすぎちゃだめだよ」

姉「わかってる……」

チッチッチッチ

【9:58】

タンタンタタンタン

弟(連打を始めたな……)

【9:59】

姉「……」モゾモゾ

弟「姉ちゃん! 平常心!」

姉「……!」

タン タタン タン タタン

【10:00】

姉「…………!」

タタンタン タタタン

【公演を選択してください】

姉「!?!?!??!?!??」ガタン

姉「やったーーーーーーーーー!!!!!」

弟「ちょ、姉ちゃん!」

姉「うぎょああああああああああああああああああああ」

弟「姉ちゃん! まだ選択画面じゃないか! はやく選んで、購入画面に移動しないと!」

姉「そ、そうだった!」カチッ カチカチッ

姉「やった、間に合った!」

【パスワードを入力して下さい】

姉「……! ……! …………!」

弟「ど、どうしたの……?」

姉「パスワード忘れちゃった……!」

弟「ばっ……! どっかに書いてないの!?」

姉「えっと! えっと! 冷蔵庫に貼ってある! 冷蔵庫!」

弟「待ってて!」ダッ

姉「はやくー! はやくー! 」

弟「これ? でもなにこれ、なんか、太陽の絵が書いてあるけど」

姉「暗号……誰かにバレないように暗号で書いたんだった……」

弟「解読方法は!?」

姉「……えっと…………ええっと」

弟「……」

姉「……?」

弟「忘れたか! 馬鹿やろう!!!!」

姉「ど、怒鳴らないでよぉ……! うーん……ええっとぉ……!」

姉「コ、コナンくん! コナンくんに出てきた暗号をつかったような気がする……!」

弟「そういば見覚えあるな……! 何巻だっけ!?」

姉「最初の方だったと思うけど……」

弟「ちょっと待ってて!」ダッ

姉「はやくー!」

~数分後~

弟「あったあった! 12巻だった! ってか、まだ間に合うの!?」

姉「わからないけどはやく! 解読してぇ!」

弟「ええっと……わ、わんこ……わんこ? 『わんこわんこ』?」

姉「そうだ! wankowankoだ!」

弟「それぐらい覚えとけよ!!!」

タタタタタ カチッ

【選択内容は上記の通りでよろしいですか?】

姉「やった! 進めたぁ!」

弟「ふぅ……焦った……あとは支払方法を選ぶだけだね」

姉「うん!」カチッ

姉「……? あれ?」

弟「? どうしたの?」

姉「クレジットカード? コンビニで支払うんじゃなくて?」

弟「え? なに?」

姉「決済方法の欄に、クレジットカードしかないの」

弟「……『この公演はクレジットカードでのお支払いのみとなっております』って書いてあるじゃん」

姉「うん…………そうだね……」

弟「……まさか」

姉「私、クレジットカードなんて持ってない……」

弟「…………」

姉「……F5キーを15000回連打するの、手伝ってくれる?」

弟「ちょっと何言ってるかわからないですね」

~完~

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