ほむら「夢見たものは」(98)

 こうやって、誰かを待つことが楽しいって初めて知った。

まどか「ほむらちゃん、ゴメン!ちょっと遅くなっちゃった?」

ほむら「大丈夫、まだ約束の時間よりちょっと早いもの。私が早く来すぎただけよ?」

まどか「えへへ…ほむらちゃんに早く会えたのは…私も嬉しいかな?」

 楽しみに決まっているじゃない?私にはあの一ヶ月しかなかったんだから。
 やっと、あの一ヶ月が終わって……あなたと友達になれたんだから。

ほむら「どこにいくの?まどかがエスコートしてくれるんでしょ?」

まどか「うん、私に任せて!!…なんだかほむらちゃんをエスコートしなきゃならないと思うと…ドキドキするね」

ほむら「あら?どういう意味かしら?私はまどかと一緒なら…」

まどか「どこでも楽しいなんて言っちゃダメだよ?一生懸命、エスコートするんだから!」

ほむら「フフフ…それもそうね。まどかに期待しちゃおうかな」

まどか「うん、期待してて欲しいな!」

なんだっけ?合唱曲?

>>2
アカペラの曲だっけ?

ほむら「こうやって二人だけなのも久しぶりね」

まどか「うん、そうだね…何だかみんなに悪いかな?」

ほむら「でも、私はこうやってまどかと二人だけでいられるの…楽しみよ?」

 昔の私なら、言えなかっただろうな。臆面も無く恥ずかしいこと言えるようになったのは、きっと今が幸せだから。

まどか「えへへ……私も、ほむらちゃんと二人きりは……楽しいかな?」

まどか「ね?せっかく二人きりのデートだし、手をつなごうか?」

 まどかが手を差し出してくる。昔の私だったらたぶんオロオロしてしまったと思う。でも、今の私は違うんだ。

ほむら「うん………」

 まどかの手をぎゅっと握ってあげられる。まどかの手は思っていたよりも小さくて温かい。

まどか「えへへ………」

 まどかが照れたように笑顔を浮かべている。まどかったら…私が照れて戸惑うって思っていたのかしら?

ほむら「まどかの手は……温かいね」

まどか「……うん、ほむらちゃんの手、冷たくなっちゃてたからよけいにそう感じるのかもね」

まどか「やっぱりちょっと待たせ過ぎちゃったかな?」

 少しのことで大げさに心配してくれるまどか。
 ほんの少し申し訳ない気持ちになったけど、時々意地悪したくなる。

ほむら「ええ…そうね。一人で待っているには、ちょっと長かったかしら」

まどか「ごめんね……」

 まどかが私の手をぎゅぅっと強く、それでいて優しく握ってきてくれた。
 まどかの暖かさが冷え切った私の手を少しずつ温めてくれる。

ほむら「ふふ…別にいいわ。こうやって、まどかが優しくしてくれるんだもの」

まどか「…もしかして、ほむらちゃん、意地悪した?」

ほむら「だって、まどかなら意地悪しても許してくれるでしょ?」

まどか「もう………その通りだけどさ!」

 怒ったようにほほを膨らませるまどか。その様子を微笑ましいって思って見ていられるようになったんだよね、私。

ほむら「ごめんね、お詫びに今日一日は手をつないでいてあげるわ」

まどか「それって、ほむらちゃんがそうしたいだけでしょ?全然、お詫びになってないじゃん!」

ほむら「…じゃあ、手を離す?」

ひとつーのーこーおふーくー

まどか「…………………………」ジトッ

ほむら「…………………………?」

まどか「やっぱり、手、つないでる」ニコニコ

ほむら「なら、仕方ないわね。ずっと手をつないでいてあげるわ」

まどか「うん!」

 まどかの嬉しそうな笑顔がまぶしい。たぶん、私も笑顔になっているんだろうなって思う。だって、まどかが私を見て嬉しそうなんだもの。

まどか「あ……でも………」

 まどかが何か言いかけて、私の方を見つめ、ニコッと微笑んだかと思うと、私の指と指の間に自分の指を絡ませてきた。

ほむら「え!?」

まどか「えへへ……この方が温かいね!」

 また、まどかがぎゅっと手を握ってくれる。
 
まどか「ほむらちゃん、顔、真っ赤になっちゃってかわいいなぁ…」

 今度こそ私の照れているところを見てやろうとでも言うのかしら、まどか?
 言われなくても、顔が真っ赤になっていることくらい、知っているわ。

まどか「えへへ……さっきのほむらちゃんの意地悪の仕返し!」

ほむら「もう……」

 私はあきれたような顔をしてみせて、照れを必死に隠してみる。
 でも、まどかにはそんなことはお見通し。

まどか「えへへ…」

 私を見て嬉しそうな笑顔を向ける。そんな表情を見せられたら、これ以上照れを隠すのが馬鹿らしいじゃない。

ほむら「私もまどかと一緒で手をつないでいて嬉しいよ?」

まどか「うん!」

 まどかが満足そうな表情を向けてくれる。
 この笑顔のために今まで頑張れた…頑張った価値があるんだなって思える。

まどか「今、私のこと考えていたでしょ?

 この子は本当に何もかもお見通しね。

ほむら「ええ、いつだって貴女のことばかりよ、私」

まどか「…なんだか、照れるね」

 自分で聞いたクセに…よほど照れたのかしら?まどかったら、私の手を引きながら半歩前を歩いて、私の顔を見ないようにしている。
 私はそうしたまどかに引っ張られている……こうしてまどかにひっぱてもらえるのって、はじめの方の時間軸以来で…嬉しい。

ほむら「…こうしてまどかが私を引っ張る姿に私はあこがれたんだよ?」

まどか「もう……!そんなこと言われたら、またしばらくほむらちゃんの顔見れないじゃん!」

 まどかの手から伝わるまどかの体温が少し上がった気がした。
 半歩後ろから見る、まどかの耳や首元がぽうっと紅くなっている気がする。

ほむら「恥ずかしがり屋さんの…まどか」

まどか「ほむらちゃんもさっきからずっと心臓バクバクさせているくせに!」

 あら?握っている手から脈拍が伝わってしまったのかしら?
 それとも、やっぱり私の心音、まどかに聞こえるほどなのかしら?

ほむら「私の心臓がドキドキいっている音…聞こえちゃったかしら?」

まどか「うん!もう、とっても良く聞こえる!」

ほむら「フフ…じゃあ、私の気持ちはまどかに隠しておけないのね」

まどか「そうだよ、ほむらちゃん!私にはなんでもお見通しなのです」

ほむら「じゃあ、やっぱり正直にお願いしようかしら?」

まどか「何かな?」

ほむら「やっぱり一緒に並んで歩きたい…な」

 まどかがピタッと歩くのを止める。私もそれに一呼吸遅れて歩くの止める。ちょうど、まどかの横に並んで。
 

まどか「うん、私もほむらちゃんの隣がやっぱりいいな」

 私よりまどかは背が低いまどかは上目遣いで私に微笑んでくれた。
 …あまりに恥ずかしくて、そろそろ思考が停止しそうだわ。

ほむら「………………」

まどか「あー!ほむらちゃんばっかり黙っててズルイ!私だってすっごい恥ずかしいんだよ!」

ほむら「…誰の目を気にする必要も無いのに、なんでこんなに恥ずかしいのかしらね?」

まどか「それは…きっとね?」

ほむら「?」

まどか「…もう!肝心なところは鈍感なんだから」

 ちょっとだけまどかの機嫌が悪くなったみたい。
 鈍感ってどういう意味かしら?

まどか「空が晴れていて、気持ちいいね」

ほむら「そうね…」

 あの一ヶ月の間は天気のことなんてこれっぽっちも気にしなかったから、まどかとそんな話ができるのもとても嬉しい。

まどか「秋の午後にこうしてすっきり晴れていると…なんだか気持ちがいいよね」

ほむら「そうね…」

 季節が移り変わって行くことも、そしてその季節をまどかと経験できたことも嬉しい。

ほむら「明るい青い空…ね」

まどか「そうだね……」

 何となく心細くなってまどかの手をぎゅっと握るとまどかも優しく握りかえしてくれる。

ほむら「なんてことの無い…ただの明るい日曜日の青い空……でも、こうやって眺めていると吸い込まれそうで、不安になるの」

まどか「大丈夫だよ、私が手をつないでいるもの」

ほむら「ふふ……信用しているわ。まどか」

まどか「うん…任せておいて」

 まどかはまたゆっくり歩き出す。私もそれにあわせて歩く。

ほむほむ

まどか「こうしてゆっくり歩いていると色々なものが見えて楽しいよね。普段、バタバタと生活していると見えないことっていっぱいあるから」

ほむら「そうね……景色なんて見なくたって生活はできるものね」

 人間は見たいものしか見ようとしないからね。何かに頭が夢中だと何も他のものは入らないもの。
 こうして景色が目に入るようになった私は、少しは余裕が出てきたのかしら。

まどか「でも、景色だって、忘れられちゃうのは…寂しいよ、きっと」

ほむら「見ようとしないものと見えないものは違うわ。」

 あの一ヶ月の私は、ただ、見なかっただけ。

ほむら「大丈夫よ、人はあるものを見ようとしないことをする一方で、見えないものであっても、信じることができるから。」

ほむら「忘れないで覚えていれば…案外どうにかなるものよ?」

まどか「…そうだね。」

 また、まどかの私の握る手に力がこもる。私はそっと握り返す。

ほむら「まどかと一緒に居るとのんびりできるわ」

まどか「うん…」

ほむほむ

 ゆっくりとまどかと歩いていく。今はゆっくりするだけの余裕がある。

まどか「ちょっと、寄り道しようか?」

ほむら「ええ」

まどか「じゃあ、そこのお店に入ろっか?」

ほむら「トモエカフェ…?聞いたことないわね」

まどか「ティヒヒ…初めて入るお店って何だか緊張するよね?美味しいお店だといいな」

ほむら「そうね」

 まどかに手を引かれてお店に入る。どうやらまどかとの約束はお店の中でも継続みたいね。

まどか「窓際の景色のいいあの席がいいな!」

ほむら「ええ、まどかのお気に召すままに」

 私はまどかのあとをついて行くのが好きなんだなって思う。
 いつのまにか私がまどかを何度も追い越してきたけれども、まどかは私の憧れだもの。

まどか「ねえねえ!このお店は紅茶とケーキがオススメなんだって!どれにしようか?」

いいねいいね

ほむら「私はまどかの好きなものでいいわ」

まどか「私はほむらちゃんの好きなものがいいな!」

 まどかが屈託のない笑顔を私に向けてくれる。思わず私もそれに釣られて微笑んでしまう。

ほむら「じゃあ、私はこれがいいかしら」

 メニューの中から一つを指してみせる。まどかの顔がいっそう明るくなる。

まどか「私の好きなアップルパイ……冬と言ったらアップルパイだよね!」

ほむら「これなら二人で分けて食べられるから…いいわよね?」

まどか「うん!…あ、でも、ほむらちゃんの食べたいものはないの?」

ほむら「言ったじゃない?『まどかの好きなもの』がいいって!」

まどか「ほむらちゃん…」

 まどかが顔を少しだけ赤らめて私の方に笑顔を向けてくれる。
 その笑顔だけで、もう私は幸せよ?

まどまど

 カフェでたわいのないおしゃべりが楽しいなんて忘れていた。
 必要ないと思って何もかも諦めていたから。

まどか「でね、キュぅべえが悪い宇宙人で、みんなを追い詰めて大変になったときに、ほむらちゃんが『合体よ!』って」

まどか「それで『ホムマドマミアンサヤエントロピー!!』てみんなで叫んで…」

まどか「って夢を見たよ!」

 …それは悪夢ね。

まどか「その夢の中でもやっぱりほむらちゃんはかっこよかったなぁ…」

ほむら「夢の内容はともかく、あなたにそう言ってもらえるのは嬉しいわ」

まどか「ウェヒヒ…やっぱりほむらちゃんに憧れちゃうな」

 私はあなたに憧れたの。それは今も変わらないし…これからもずっと。

まどか「私ね、ほむらちゃんが居てくれたから、頑張れるんだ」

ほむら「それは、私も一緒ね。…でも、もう私の場合は頑張るのはしばらくおやすみかしら」

 少なくともこうして幸せな時間が続く限りは、もうしばらくは頑張らないでまどかに甘えていたい。

まどか「じゃ、代わりに私ががんばっちゃおうかな!」

まどまど

ほむら「フフ……なら、甘えてしまおうかな」

まどか「よしよし、ほむらちゃん。まどかおねえちゃんがいるからね」

 まどかがいたずらっぽく私の頭をなでてくる。

ほむら「子ども扱いして…もう。」

まどか「いつもほむらちゃんに妹扱いされちゃうんだもん!私はもともとはおねえちゃんだもん!」

ほむら「ええ…そうだったわね。」

 まどかが私の頭をなでるのをやめると少しだけ口惜しい気がした。でも、その気持ちを見透かされちゃうのは悔しいから素知らぬ顔をしてみる。

ほむら「あら、もういいの?」

まどか「うーん、だって、ほむらちゃんの髪が綺麗だから、あんまりいじったら悪いかなって」

 口では遠慮しているくせに、顔は物欲しそうにしているまどか。ずるいわ、そんな顔されたら…ね。

ほむら「触りたいなら触ってもいいのよ?」

まどか「ホントに?」

ほむら「ええ…あんまり自慢するようなものでもないとは思うけど」

まどか「ううん!ほむらちゃんの髪、とってもさらさらで綺麗だもの」

まどか「それに長くてつやつやで…とっても素敵だなって」

ほむら「そう…かしら?」

 まどかに褒めてもらうのは嬉しい。

ほむら「でも、私はまどかの髪がいいと思うわよ?とてもふわふわしていて…柔らかくて」

まどか「うーん、でも、私はクセっ毛だからほむらちゃんみたいにストレートのロングにはならないんだよね」

ほむら「でも、今のまどかは随分、髪が伸びたと思うけど、やっぱりかわいいと思うわよ?」

まどか「ティヒヒ……そうかな?」

ほむら「ええ…私からすればまどかみたいなツインテールは羨ましいわ」

ほむら「私には………あまりツインテールは似合わないなって、思うから」

まどか「そんなこと無いんじゃないかな?」

 まどかが目を輝かせながら私の方を見つめてくる。

ほむら「……頼まれても見せないからね」

まどか「ウェヒヒ…さすが、ほむらちゃん。私たち以心伝心だね!」

よしよしされたい

ほむら「おだててもダメよ?」

まどか「えぇ……ほむらちゃんなら…私の気持ち分かってくれるよね?」

ほむら「……だーめ」

まどか「ほむらちゃーん!」

 うう…そんなにジッと見つめてお願いされると困るわ。…正直、私はまどかの押しには弱い。

ほむら「私だってまどかとお揃いが良いから試してみたんだけどね?」

まどか「え…」

 フフ…思わぬ反撃にまどかの顔が紅くなったみたい。でも、嘘は言っていないし…これくらいの反撃はいいわよね?

ほむら「じゃあ、逆に私とお揃いにしてみない?」

まどか「え?」

ほむら「ふふ…それくらい髪が長くなっていれば、昔の私と同じように三つ編みにできるわね?」

まどか「え?え!?ええええ!?」

 戸惑うまどかの返事を待たないで、まどかの髪に手を伸ばす。白いリボンをほどくとまどかの髪がふわりと解放される。

ほむほむ

白いリボンなのか

ほむら「…やっぱりまどかの柔らかい髪が羨ましいわね」

まどか「ううう…ほむらちゃん、本当にやるの?」

 不意に髪をほどかれてまどかは動揺しているけれども、今日の私はまどかに遠慮するつもりはないわ。

ほむら「ちょうど…私の使っていた眼鏡も持っているしね」

まどか「やらたに準備がいいけど……もしかして、はじめからこのつもりだったの?」

ほむら「さあ、どうでしょうかね」

 恥ずかしそうな、恨めしそうな目で私を見つめるまどかの問いを曖昧にごまかして、私はまどかの髪に手をやる。



ほむら「…やっぱり羨ましいな。柔らかくてつやつやしていて…」

まどか「ウェヒヒ…そうかな…?」

 まどかは観念したまどかは私が手で髪を梳くのを気持ちよさそうに受け入れている。

ほむら「それになんだかいい匂い……」

まどか「ん……ありがと、ほむらちゃん。えへへ…褒められると嬉しいな」

ほむほむ

ほむら「さあ……これでいいかしらね?」

まどか「なんだか…恥ずかしいな」

ほむら「じゃあ、最後の仕上げね」

 編み上げた三つ編みの先を赤いリボンで結び、私は赤縁の眼鏡を取り出して、まどかに差し出す。

まどか「…やっぱり、眼鏡まで?」

ほむら「じゃないと、私とお揃いにならないじゃない?」

まどか「うう…今は三つ編みじゃないくせに……」

 恥ずかしそうにしながらも、まどかは私から眼鏡を受け取り、眼鏡を掛けてみせる。

まどか「…どう、かな?」

ほむら「はあ…」

 私は思わずため息をついてしまう。そのため息を聞いてまどかが心配そうにこちらを見てくる。

まどか「もしかして似合わない?」

ほむら「逆よ……なんで、同じ髪型なのにまどかにはこんなに似合ってカッコイイのに、私には似合わないんだろうって思ったの」

まどか「そ…そんなこと……ないよ?」

 もじもじとするまどかがとても可愛らしい。…心なしか普段より弱気に見えるのは、三つ編みと眼鏡のせいかしら?

ほむら「…ふふ、なんだか意地悪したくなる格好ね」

まどか「え…自分でこの格好にしておいて!?」

ほむら「……過去にさやかが私のことおもちゃにした気持ちが分かるかな。」

 こんな三つ編みで弱気の子が居たら、さやかでなくてもちょっかい出したくなるわね。…私は自制心があるから、そんなことしないけど。

まどか「もう…さやかちゃんったら……なんか、ごめんね?」

ほむら「フフ…なんで、まどかが謝るの?」

まどか「だって……」

ほむら「じゃ、まどかには今日一日はずっとその格好でいてもらおうかしら?」

まどか「ええ……それとこれとは話が……」

ほむら「ダメよ。それで手を打ってあげる。……それに、私とお揃いそんなに嫌かしら?」

まどか「嫌じゃない!………もう、わかったよぉ。すっごい恥ずかしいけど、今日はこの髪型でいるよ!」

支援ダァーッ!!!

ほむんほむ

まどか「でも、ほむらちゃんとお揃い……」

ほむら「なあに?」

まどか「それはとっても嬉しいかな!って」

 まどかの心の底からの笑顔は本当にまぶしい。暗くてうじうじしていた私と比べると…どうして、同じ髪型なのにこうも違うのかしらね?

まどか「じゃあ…私もほむらちゃんにお願いしちゃおうかな?」

ほむら「何かしら?」

まどか「はい、あーん!」

 まどかが笑顔でアップルパイを私の口元に運ぶ。……それはちょっと恥ずかしいわ。

ほむら「…どうしても?」

まどか「あーん!」

 ニコニコして嬉しそうなまどかを裏切れるわけ無いじゃない。

ほむら「…………あーん」

 まどかが優しく私の口の中にアップルパイを運んでくれる。たぶん、いま、私の顔はリンゴよりも紅い気がするわ。

ほむら「…あまい」

まどか「どう?ほむらちゃん、おいしい?」

ほむら「ええ、とっても。まどかが食べさせてくれたから余計にね…」

まどか「ティヒヒ……じゃあ………あーん」

 まどかは目を閉じて口を開けた。……これって私が食べさせなきゃいけないってことよね?

まどか「……あーん」

 催促されてる!?

ほむら「……はい、まどか。…あーん」

 おそるおそるまどかの口へアップルパイを運んであげる。…少し、小さく切りすぎたかしら?

まどか「ん………あっまい!!!」

 まどかの満足そうな表情に、今まで火を噴きそうに恥ずかしかったことがどうでもよくなった。…周りからどうみられてるかは考えないことにするわ。

ほむら「美味しい?」

まどか「ほむらちゃんが食べさせてくれたからね!」

ほむら「……そう」

 …やっぱりすごい恥ずかしい。

ほむほむ

視力1.5のまどかに度の入ったメガネかけっぱなしとかよくないぞ

ほむら「ご馳走様でした」

まどか「ご馳走様でした」

 結局、アップルパイまるまる一個「あーん」で食べさせあってしまったわ。…とっても幸せな気持ちだけど、油断したら走って逃げ出してしまいそうね。

ほむら「……………………」

まどか「……………………」

 紅茶を飲みながらまどかの方に目をやると、まどかも同じように私のことを見つめてくれていた。目が合うと思わず、耳が熱くなる気がする。

まどか「ティヒヒ………」

ほむら「…そろそろ行きましょうか?」

まどか「うん………じゃあ…はいっ!」

 まどかが再び自分の手を私の前に差し出してくる。そうね、今日一日はまどかとずっと手をつないでいないとね。

ほむら「うん…」

 まどかの指に自分の指を絡ませる…少しはまどかを驚かせたかな?

まどか「ほむらちゃん!」

 まどかは喜んでくれたのかな?ぎゅうって私の手を握ってくれる。

まどか「すっかり、長居しちゃったせいか…ちょっと暗くなってきたね」

ほむら「ええ…そうね。」

 秋は少し嫌い。日が落ちるのが早いから。せっかくまどかと一緒に居られるのに、お日様が早くくれてしまったらどうしようもないじゃない?
 …それでも、同じ季節を繰り返していた頃に比べれば、幸せなのかな。

まどか「……少し、寒いかな?」

ほむら「大丈夫、まどか?」

まどか「うーん……そばに行っていい?」

 また、何か考えている気がする……まあ、いいわ。まどかに付き合ってあげる。

ほむら「おいで、まどか」

まどか「ティヒヒ…えい!」

 まどかが私の腕にぎゅっと掴まってくる。手はつないだまま、腕に体をぴったり寄せてきた。…思わずこわばるしか私にはできないわよ?

ほむら「…………………」

まどか「…………うーーー、自分でやってみたけど、やっぱりちょっと恥ずかしいな」

 私も声が出ないくらい恥ずかしいわよ?

まどまど

まどか「やっぱり、私は甘えん坊なのかなあ…?」

ほむら「さっきはおねえさんだって言ってたのにね」

まどか「うーん……でも、ほむらちゃんにはやっぱり甘えたいかな?」

 照れたように笑ってみせるまどかは、少しだけ私の腕に強く抱きついてきた。照れているのかしら?

ほむら「もう……私もまどかに甘えたいんだけどな」

まどか「ティヒヒ…ごめんね、今日は私がほむらちゃんに甘えちゃう!」

ほむら「…もう、まどかったら」

 まどかの手をまたぎゅっと握ってあげる。まどかも嬉しそうに私の手を握りかえしてくれる。
 …こういうのを幸せって言うんだろな。

ほむら「まどか、手を離したらダメよ?」

まどか「……うん」

ほむら「……ちょっとお散歩しようか」

まどか「うん…いいよ」

 まどかが私の手を引き、私はそれについて行く。
 まどかの手に導かれて、ゆっくりと歩んでいく。
 まどかと一緒なら…どこまでも一緒に……歩いて行けるよ



 ---------------ずいぶん、長い間待たせちゃったんじゃないかと思います。


まどか「ほむらちゃん、ゴメン!ちょっと遅くなっちゃった?」

 でも…私の……最高の友達は、いつもと変わらない優しい笑顔を見せてくれます。

ほむら「大丈夫、まだ約束の時間よりちょっと早いもの。私が早く来すぎただけよ?」

まどか「えへへ…ほむらちゃんに早く会えたのは…私も嬉しいかな?」

 私に心配をかけないようにと思ってさりげなく気を遣ってくれるほむらちゃん。

ほむら「どこにいくの?まどかがエスコートしてくれるんでしょ?」

まどか「うん、私に任せて!!…なんだかほむらちゃんをエスコートしなきゃならないと思うと…ドキドキするね」

 いつもカッコイイほむらちゃんをひっぱていくことなんて本当にできるのかなって、ちょっと不安なんだけど、でも、今日は頑張ります。

ほむら「あら?どういう意味かしら?私はまどかと一緒なら…」

まどか「どこでも楽しいなんて言っちゃダメだよ?一生懸命、エスコートするんだから!」

ほむら「フフフ…それもそうね。まどかに期待しちゃおうかな」

まどか「うん、期待してて欲しいな!」

 私にしかできないこと……あるよね?

まどまど

ほむら「こうやって二人だけなのも久しぶりね」

まどか「うん、そうだね…何だかみんなに悪いかな?」

 でも、ほむらちゃんと二人きりになれたのが嬉しいのです。…悪い子かな、私?

ほむら「でも、私はこうやってまどかと二人だけでいられるの…楽しみよ?」

まどか「えへへ……私も、ほむらちゃんと二人きりは……楽しいかな?」

 ほむらちゃんも同じ気持ちになってくれていたことが何だか嬉しくて…ちょっと勇気を振り絞って、私は背伸びをしてみたくなりました。

まどか「ね?せっかく二人きりのデートだし、手をつなごうか?」

 …ちょっとだけ、自分で言ってて恥ずかしい。

ほむら「うん………」

まどか「えへへ………」

 いつもクールなほむらちゃんが照れているのを見て、私も思わずつられて笑顔になってしまいます。

ほむら「まどかの手は……温かいね」

まどか「……うん、ほむらちゃんの手、冷たくなっちゃてたからよけいにそう感じるのかもね」

 大丈夫…私が暖めてあげるよ。ほむらちゃん。大丈夫…きっとすぐに温かくなるから。

まどまど

 でも、ちょっとだけ、ほむらちゃんの気持ちが心配になって。

まどか「やっぱりちょっと待たせ過ぎちゃったかな?」

ほむら「ええ…そうね。一人で待っているには、ちょっと長かったかしら」

 …ごめんね、ほむらちゃん。やっぱりずっと待っているって寂しいものね。

まどか「ごめんね……」

 何もしてあげられないから、せめて早く暖まるように、ほむらちゃんの手をぎゅっと握ります…少しでも私の暖かさが伝わってくれるといいな。

ほむら「ふふ…別にいいわ。こうやって、まどかが優しくしてくれるんだもの」

 …なんだか、ほむらちゃん嬉しそうです。その笑顔に私も思わず嬉しくなっちゃいます。

まどか「…もしかして、ほむらちゃん、意地悪した?」

ほむら「だって、まどかなら意地悪しても許してくれるでしょ?」

まどか「もう………その通りだけどさ!」

 心配したのに!…ほむらちゃんでも冗談言うんだって初めて知りました。でも、ほむらちゃんの優しさが切ないんです。

ほむら「ごめんね、お詫びに今日一日は手をつないでいてあげるわ」

まどか「それって、ほむらちゃんがそうしたいだけでしょ?全然、お詫びになってないじゃん!」

ほむら「…じゃあ、手を離す?」

ほむほむ

まどか「…………………………」ジトッ

 もしかして、今日のほむらちゃんは意地悪なのかな?

ほむら「…………………………?」

 怒っているんだぞーって顔してみたけど、ほむらちゃんには伝わらなかった見たいです。

まどか「やっぱり、手、つないでる」

 やっぱりほむらちゃんと仲良くしている方が楽しいと思うのでした。それに…やっと握れたほむらちゃんの手です。離したいわけありません。

ほむら「なら、仕方ないわね。ずっと手をつないでいてあげるわ」

まどか「うん!」

まどか「あ……でも………」

 もっと…仲良くなってもいいよね?もっとずっと…ぎゅっと…確実につかみたい。

ほむら「え!?」

まどか「えへへ……この方が温かいね!」

まどか「ほむらちゃん、顔、真っ赤になっちゃってかわいいなぁ…」

 少しだけ、仕返しです。恋人つなぎ……ほむらちゃんは嫌じゃないかな?

まどか「えへへ……さっきのほむらちゃんの意地悪の仕返し!」

まどまど

ほむら「もう……」

 私のワガママな行為をほむらちゃんはしっかりと受け止めてくれまた。

まどか「えへへ…」

 ほむらちゃんの優しさに思わず笑顔が出ちゃいます。

ほむら「私もまどかと一緒で手をつないでいて嬉しいよ?」

 少しだけ紅くなったほむらちゃんをみてますます私の気持ちは高ぶって、もう、笑顔をこらえることなんてできません。

まどか「うん!」

 私の笑顔に優しく答えてくれるほむらちゃん……そうして、ほむらちゃんのまなざしから、私を大切にしてくれるという気持ちがひしひしと伝わってきます。

まどか「今、私のこと考えていたでしょ?

ほむら「ええ、いつだって貴女のことばかりよ、私」

まどか「…なんだか、照れるね」

 ほむらちゃんの優しさが嬉しくって思わず聞いちゃったけど…
 面と向かって言われるとやっぱり恥ずかしいなぁ…
 私は思わず、ほむらちゃんより半歩前に出てしまいました…ほむらちゃんの顔、直視できません。

ほむら「…こうしてまどかが私を引っ張る姿に私はあこがれたんだよ?」

まどか「もう……!そんなこと言われたら、またしばらくほむらちゃんの顔見れないじゃん!」

 ほむらちゃんの言葉に敏感に私は反応してしまいます。なんだかほむらちゃんとつないでる手に私の気持ちが全部あつまっちゃみたいです。

ほむら「恥ずかしがり屋さんの…まどか」

 でも、そういうほむらちゃんの手もとっても温かくなっています…きっと恥ずかしいんだね。

まどか「ほむらちゃんもさっきからずっと心臓バクバクさせているくせに!」

ほむら「私の心臓がドキドキいっている音…聞こえちゃったかしら?」

まどか「うん!もう、とっても良く聞こえる!」

ほむら「フフ…じゃあ、私の気持ちはまどかに隠しておけないのね」

まどか「そうだよ、ほむらちゃん!私にはなんでもお見通しなのです」

 ずっと、ずっと…見てきたからね。私の憧れだから。私の友達だから。

ほむら「じゃあ、やっぱり正直にお願いしようかしら?」

まどか「何かな?」

ほむら「やっぱり一緒に並んで歩きたい…な」

ほむほむ

 思わず私は足が止まっちゃいました。
 …するとほむらちゃんが半歩後ろから追いついて私の隣に並びました。
 ほむらちゃんの顔をみたら…自分の気持ちを隠しておけません。

まどか「うん、私もほむらちゃんの隣がやっぱりいいな」

 恥ずかしくて、ほむらちゃんの目を直視できません。ちょっとだけ私より背の高いほむらちゃんの目を下からちらっと見てみます。

ほむら「………………」

 ほむらちゃんも真っ赤でした。……もしかしてすごい照れてるのかな?

まどか「あー!ほむらちゃんばっかり黙っててズルイ!私だってすっごい恥ずかしいんだよ!」

ほむら「…誰の目を気にする必要も無いのに、なんでこんなに恥ずかしいのかしらね?」

まどか「それは…きっとね?」

 伝えたい気持ちは……分かっているよね?ほむらちゃん。

ほむら「?」

まどか「…もう!肝心なところは鈍感なんだから」

 …ちょっとだけ残念です。

 手をつないでいるせいか二人とも無言になっちゃって…だんだん恥ずかしくなってきたので、私はどうでもいいこと口にしてしまいます。

まどか「空が晴れていて、気持ちいいね」

ほむら「そうね…」

 …もしかしてつまらなかったのか?ほむらちゃん、上の空……。私は慌てて言葉を続けます。

まどか「秋の午後にこうしてすっきり晴れていると…なんだか気持ちがいいよね」

ほむら「そうね…」

 やっぱり上の空です……。

ほむら「明るい青い空…ね」

まどか「そうだね……」

 うーん……面白い話とかできないできない私といるのが退屈なのかな…。

ほむら「なんてことの無い…ただの明るい日曜日の青い空……でも、こうやって眺めていると吸い込まれそうで、不安になるの」

 ぽつりと漏らしたほむらちゃんの言葉は端々が震えていました…私は心配になって、ぎゅっとほむらちゃんの手を握ります。

まどか「大丈夫だよ、私が手をつないでいるもの」

ほむら「ふふ……信用しているわ。まどか」

まどか「うん…任せておいて」

時々下げるのはなぜ??

 また、二人で無言で歩きます……でも、馴れてくると言葉に出さなくても、「楽しい」ってお互いに思っているのが分かります。

まどか「こうしてゆっくり歩いていると色々なものが見えて楽しいよね。普段、バタバタと生活していると見えないことっていっぱいあるから」

ほむら「そうね……景色なんて見なくたって生活はできるものね」

 もしかして、あの一ヶ月のことを思い出してるのかな…。ごめんね…どれだけほむらちゃんに迷惑かけたのかな…。

まどか「でも、景色だって、忘れられちゃうのは…寂しいよ、きっと」

 景色を忘れるくらい余裕のない生活を…ほむらちゃんに送らせちゃった私は…申し訳なさでいっぱいです。

ほむら「見ようとしないものと見えないものは違うわ。」

ほむら「大丈夫よ、人はあるものを見ようとしないことをする一方で、見えないものであっても、信じることができるから。」

ほむら「忘れないで覚えていれば…案外どうにかなるものよ?」

 きっとほむらちゃんは強い子だから…大切なことをいつまでも覚えていてくれます。…でも私はどうなんだろ?心配になってほむらちゃんの手にしがみつきます。

まどか「…そうだね。」

ほむら「まどかと一緒に居るとのんびりできるわ」

まどか「うん…」

 ほむらちゃんの顔が…なんだか寂しそうでした。私の胸は…悲しさでつぶれそうです。私も寂しい気持ちが溢れてきます。

ttp://www.geocities.jp/scaffale00410/cp/yasashiki2.htm
なんとなく、立原道造の「夢みたものは…」が思い浮かんだ

ほむほむ

まどか「ちょっと、寄り道しようか?」

 話題を変えようとして、ほむらちゃんに突拍子のない提案をしてしまいます。

ほむら「ええ」

 …それでもほむらちゃんは、受け止めてくれます。どんなときでも私の考えを受けてくれたのはほむらちゃんでした。

まどか「じゃあ、そこのお店に入ろっか?」

ほむら「トモエカフェ…?聞いたことないわね」

まどか「ティヒヒ…初めて入るお店って何だか緊張するよね?美味しいお店だといいな」

ほむら「そうね」

まどか「窓際の景色のいいあの席がいいな!」

ほむら「ええ、まどかのお気に召すままに」

 お店の中で手をつないでいるのは少しだけ恥ずかしかったけど…ほむらちゃんの手を握っていないとどこかに行ってしまいそうで不安なのでした。

まどか「ねえねえ!このお店は紅茶とケーキがオススメなんだって!どれにしようか?」

ほむら「私はまどかの好きなものでいいわ」

 やっぱりほむらちゃんは優しい…。でも、私がほむらちゃんにしてあげられることは…。

まどか「私はほむらちゃんの好きなものがいいな!」

ほむら「じゃあ、私はこれがいいかしら」

 私の大好きなアップルパイを選んでくれるほむらちゃん……なんで、こんなに優しいのかな?

まどか「私の好きなアップルパイ……冬と言ったらアップルパイだよね!」

ほむら「これなら二人で分けて食べられるから…いいわよね?」

まどか「うん!…あ、でも、ほむらちゃんの食べたいものはないの?」

ほむら「言ったじゃない?『まどかの好きなもの』がいいって!」

 ときどき恥ずかしくなるようなことをさらっていっちゃうほむらちゃん…わたしもそんな風になりたいんだけどなぁ…まだまだ、ダメだな、私。

まどか「ほむらちゃん…」

 少しは成長したのかなと思っていたけど、ほむらちゃんはやっぱり私の一歩先にいます。

ほむほむ

 ほむらちゃんと話していると、いつでもいつの間にか私ばっかり話しています。
 …ほむらちゃんが聞き手に回ってくれているんだろなと思います。

まどか「でね、キュぅべえが悪い宇宙人で、みんなを追い詰めて大変になったときに、ほむらちゃんが『合体よ!』って」

まどか「それで『ホムマドマミアンサヤエントロピー!!』てみんなで叫んで…」

まどか「って夢を見たよ!」

 私のつまらない話にも、ほほえみをたやすことなく、うんうんと聞いてくれています。

まどか「その夢の中でもやっぱりほむらちゃんはかっこよかったなぁ…」

 夢の中でまでほむらちゃんのことばかり考えてました。…ちょっと、重いと思われちゃうかな?

ほむら「夢の内容はともかく、あなたにそう言ってもらえるのは嬉しいわ」

まどか「ウェヒヒ…やっぱりほむらちゃんに憧れちゃうな」

 私はほむらちゃんに憧れたの。だから、ほむらちゃんの力になりたいんです。

まどか「私ね、ほむらちゃんが居てくれたから、頑張れるんだ」

ほむら「それは、私も一緒ね。…でも、もう私の場合は頑張るのはしばらくおやすみかしら」

 うん…ほむらちゃんにおやすみしてもらうために…私はここにいるんだ。

まどか「じゃ、代わりに私ががんばっちゃおうかな!」

ほむ

ほむら「フフ……なら、甘えてしまおうかな」

 ほむらちゃんからいつもの厳しい表情が少しだけとれたように見えます。……うん、どうか安心して…休んでね?

まどか「よしよし、ほむらちゃん。まどかおねえちゃんがいるからね」

 …私がされて嬉しいことをほむらちゃんにするのはちょっと単純だったかな?と反省です。

ほむら「子ども扱いして…もう。」

 口では仕方ないというそぶりでも、表情は嬉しそうです……ちょっと嬉しいな。

まどか「いつもほむらちゃんに妹扱いされちゃうんだもん!私はもともとはおねえちゃんだもん!」

ほむら「ええ…そうだったわね。」

 素直じゃないほむらちゃんがちょっと悔しいのでなでなではおしまいです!

ほむら「あら、もういいの?」

まどか「うーん、だって、ほむらちゃんの髪が綺麗だから、あんまりいじったら悪いかなって」

 なでて欲しいって顔しているよ?ほむらちゃん。

ほむら「触りたいなら触ってもいいのよ?」

まどか「ホントに?」

ほむら「ええ…あんまり自慢するようなものでもないとは思うけど」

まどか「ううん!ほむらちゃんの髪、とってもさらさらで綺麗だもの」

まどか「それに長くてつやつやで…とっても素敵だなって」

ほむら「そう…かしら?」

 照れてるほむらちゃんは、とてもかわいいです。

ほむら「でも、私はまどかの髪がいいと思うわよ?とてもふわふわしていて…柔らかくて」

まどか「うーん、でも、私はクセっ毛だからほむらちゃんみたいにストレートのロングにはならないんだよね」

ほむら「でも、今のまどかは随分、髪が伸びたと思うけど、やっぱりかわいいと思うわよ?」

まどか「ティヒヒ……そうかな?」

ほむら「ええ…私からすればまどかみたいなツインテールは羨ましいわ」

ほむら「私には………あまりツインテールは似合わないなって、思うから」

まどか「そんなこと無いんじゃないかな?」

 実はこっそりほむらちゃんのツインテール姿見てるから、似合っているの知ってるんだよ?…似合ってるからお揃いにしてくれないかな?
 ツインテールにしていたときは服も私の姿を真似していたことも知っているんだよ?

ほむら「……頼まれても見せないからね」

まどか「ウェヒヒ…さすが、ほむらちゃん。私たち以心伝心だね!」

ほむほむ

ほむら「おだててもダメよ?」

まどか「えぇ……ほむらちゃんなら…私の気持ち分かってくれるよね?」

ほむら「……だーめ」

 …やっぱりちょっと鈍感です。

まどか「ほむらちゃーん!」

ほむら「私だってまどかとお揃いが良いから試してみたんだけどね?」

まどか「え…」

 ちゃんと伝わっていました!すごい!やっぱり、ほむらちゃんにちゃんと気持ちが伝わってるんだ!!

ほむら「じゃあ、逆に私とお揃いにしてみない?」

まどか「え?」

 …どうしてそっちに話が行っちゃうの!?

ほむら「ふふ…それくらい髪が長くなっていれば、昔の私と同じように三つ編みにできるわね?」

まどか「え?え!?ええええ!?」

 ドキドキしているうちに、ほむらちゃんに白のリボンをとられちゃいました。…うーん、やっぱりほむらちゃんには敵わないのかな?

ほむら「…やっぱりまどかの柔らかい髪が羨ましいわね」

 ほむらちゃんが私の髪を優しく梳いてくれます…その一回一回がとっても気持ちいい。

まどか「ううう…ほむらちゃん、本当にやるの?」

ほむら「ちょうど…私の使っていた眼鏡も持っているしね」

まどか「やらたに準備がいいけど……もしかして、はじめからこのつもりだったの?」

ほむら「さあ、どうでしょうかね」

 うう…ぜったい、ほむらちゃん確信犯だぁ…。

ほむら「…やっぱり羨ましいな。柔らかくてつやつやしていて…」

まどか「ウェヒヒ…そうかな…?」

 ほむらちゃんに褒められるとそれだけで舞い上がってしまうのでした。…本当は私がほむらちゃんの支えてあげないといけないのに。

ほむら「それになんだかいい匂い……」

 ほむらちゃんの顔が急に私の顔の近くに来たので、わたしはドキッとしちゃいます。

まどか「ん……ありがと、ほむらちゃん。えへへ…褒められると嬉しいな」

 ドキドキを悟られないように、照れ笑いをするのが精一杯の私です…。

まどまど

ほむら「さあ……これでいいかしらね?」

まどか「なんだか…恥ずかしいな」

ほむら「じゃあ、最後の仕上げね」

 ほむらちゃんは、編み上げた三つ編みの先を、久しぶりの赤いリボンで結んでくれて、赤縁の眼鏡を取り出して、私に差し出して来ました。
 …眼鏡のレンズを抜いてあるって…やっぱりはじめから、私にこの格好させる気だったでしょう、ほむらちゃん。

まどか「…やっぱり、眼鏡まで?」

ほむら「じゃないと、私とお揃いにならないじゃない?」

 断れないのを知ってるよね、ほむらちゃん。

まどか「うう…今は三つ編みじゃないくせに……」


まどか「…どう、かな?」

ほむら「はあ…」

 ほむらちゃんががっかりしたようなため息をついて、私は思わず聞いちゃいます。

まどか「もしかして似合わない?」

ほむら「逆よ……なんで、同じ髪型なのにまどかにはこんなに似合ってカッコイイのに、私には似合わないんだろうって思ったの」

まどか「そ…そんなこと……ないよ?」

ええよええよ

 うーん……この格好になるとなんとなく弱気な気分になっちゃうのは何でだろ?
 これから頑張らないといけないのに。

ほむら「…ふふ、なんだか意地悪したくなる格好ね」

まどか「え…自分でこの格好にしておいて!?」

ほむら「……過去にさやかが私のことおもちゃにした気持ちが分かるかな。」

 さやかちゃん……あとで、お仕置きしなくちゃね

まどか「もう…さやかちゃんったら……なんか、ごめんね?」

ほむら「フフ…なんで、まどかが謝るの?」

まどか「だって……」

 さやかちゃんたら…嫁だとか言って抱きついちゃってるんだもん…。思わず謝りたくもなっちゃうよ。

ほむら「じゃ、まどかには今日一日はずっとその格好でいてもらおうかしら?」

まどか「ええ……それとこれとは話が……」

ほむら「ダメよ。それで手を打ってあげる。……それに、私とお揃いそんなに嫌かしら?」

まどか「嫌じゃない!………もう、わかったよぉ。すっごい恥ずかしいけど、今日はこの髪型でいるよ!」

 ほむらちゃんの意地悪……以心伝心を悪用しちゃダメなんだよ?

まどか「でも、ほむらちゃんとお揃い……」

ほむら「なあに?」

まどか「それはとっても嬉しいかな!って」

 私の言葉にほむらちゃんが笑顔を返してくれました。
 ほむらちゃんが優しい笑顔を見せてくれるときは…私は少しだけワガママになっちゃうのです。

まどか「じゃあ…私もほむらちゃんにお願いしちゃおうかな?」

 …ちょっと仕返しもしたいしね。ウェヒヒ

ほむら「何かしら?」

まどか「はい、あーん!」

ほむら「…どうしても?」

まどか「あーん!」

 知ってるよ、ほむらちゃんは嬉しそうな顔しているときの私のお願い、断れないもんね。

ほむら「…………あーん」

 …照れながら、目を閉じて口をあーんってしてるほむらちゃん、かわいいよ。

ほむら「…あまい」

 リンゴよりも真っ赤だよ、ほむらちゃん。

まどか「どう?ほむらちゃん、おいしい?」

ほむら「ええ、とっても。まどかが食べさせてくれたから余計にね…」

 真っ赤になって照れていながらも、嬉しそうにしているほむらちゃんを見て、私も思わず笑顔になります。
 …もう少しだけ、ワガママしちゃおうかな?

まどか「ティヒヒ……じゃあ………あーん」

 ………………ほむらちゃん?この格好で待っているの恥ずかしいから……早くして?

まどか「……あーん」

 うう……あーんの催促なんてすっごい恥ずかしい……。

ほむら「……はい、まどか。…あーん」
 
まどか「ん………あっまい!!!」

 どうしよう、ほむらちゃんの顔、見られない……。

ほむら「美味しい?」

まどか「ほむらちゃんが食べさせてくれたからね!」

ほむら「……そう」

 …やっぱりすごい恥ずかしい。

まどまど

ほむら「ご馳走様でした」

まどか「ご馳走様でした」

 ああ、もう、走って逃げ出したいよ……ほむらちゃんと久々に二人きりだからって私、浮かれすぎかな?

ほむら「……………………」

まどか「……………………」

 紅茶を飲みながらほむらちゃんの方に視線を投げると、ほむらちゃんは優しく私を見つめてくれていた。目が合うと思わず、全身が熱くなってきます。

まどか「ティヒヒ………」

ほむら「…そろそろ行きましょうか?」

 …もう、そんな時間なんだね。楽しい時間はあっという間にすぎちゃいます。
 ほむらちゃんみたいに時間停止!とか使えれば…ずっと一緒にいられるのかな?

まどか「うん………じゃあ…はいっ!」

 しっかりほむらちゃんの手を握らないとね。…離れてしまわないようにね。

ほむら「うん…」

 ほむらちゃんが恋人つなぎで手を取ってくれました!

まどか「ほむらちゃん!」

 嬉しくて嬉しくて…思わずほむらちゃんの手をぎゅっと握っちゃいました。

まどか「すっかり、長居しちゃったせいか…ちょっと暗くなってきたね」

ほむら「ええ…そうね。」

 もうそろそろ…なんだね。こうしている時間がもうすぐ終わりなんだなって…お日様が元気なさそうにしていることから伝わってきます。
 だから…なんだか寂しくなって、やっぱりほむらちゃんに甘えてしまいます。
 私に甘えていいよと言ったのに……やっぱり私はずるいかな?

まどか「……少し、寒いかな?」

ほむら「大丈夫、まどか?」

 ほむらちゃんの優しさが辛い…

まどか「うーん……そばに行っていい?」

 少しでも長くほむらちゃんと一緒に…少しでもほむらちゃんの近くに………

ほむら「おいで、まどか」

まどか「ティヒヒ…えい!」


 優しいほむらちゃんの笑顔に……思わず飛びついちゃいます。そして、ほむらちゃんの腕に…ぎゅっと抱きつきます。

ほむら「…………………」

まどか「…………うーーー、自分でやってみたけど、やっぱりちょっと恥ずかしいな」

 でも……もっとほむらちゃんを感じたいよ……。

ほむほむ

まどか「やっぱり、私は甘えん坊なのかなあ…?」

ほむら「さっきはおねえさんだって言ってたのにね」

まどか「うーん……でも、ほむらちゃんにはやっぱり甘えたいかな?」

 ほむらちゃんはずっと頑張ってきたから…私ばっかり甘えるのはちょっとずるい気もするんだけど…

ほむら「もう……私もまどかに甘えたいんだけどな」

まどか「ティヒヒ…ごめんね、今日は私がほむらちゃんに甘えちゃう!」

ほむら「…もう、まどかったら」

 でも、私に甘えられること……ほむらちゃん、満更でもないでしょ?
 ……だから、私は、甘えちゃうの。…ひとりぼっちは寂しかったよ。

ほむら「まどか、手を離したらダメよ?」

まどか「……うん」

 あーあ……もうすぐ時間か……。もっと、ほむらちゃんに甘えたかったな…。

ほむら「……ちょっとお散歩しようか」

まどか「うん…いいよ」

 私は、ほむらちゃんの手を引いてほむらちゃんを導いてあげなければならない。
 私は、そうなることを選んだから。ほむらちゃんのために。みんなのために。
 これが…私の最後のお仕事……お疲れ様、ほむらちゃん………。これからは、私の側で…おやすみなさい。

ほ……む……?




ほむら「……………………」

 まどかに手を引かれながら、私は自分の残り時間が無いことを改めて理解した。まどかがさっきから…心配そうに私の手を握ってくるのは……彼女なりの因果への反抗なのかもしれない。

ほむら「……………………」

 …こうやって、ただ、二人で歩いていることが幸せに思える。
 私が夢見たものは……まどかとの幸せ。

ほむら「…まどか、ありがとうね」

まどか「……うん」

 泣かないで、まどか。私のために…無理させてしまってごめんね。
 本当は、私一人を特別視することはできないはずなのにね。

ほむら「もう……ここで、いいわ」

まどか「……嫌だよ、せっかく……また逢えたのに」

 うん…私も……悲しいよ。また逢えたのにね……まどか。夢と希望を信じていて良かったと思えたのにね。

ほむら「でも…そろそろ……私のソウルジェムも限界……これ以上引き延ばしたら…私が魔女になってしまうわ」

まどか「でも…………」

ほむら「……ごめんね。あなたの側にずっと居てあげられなくて……でも、私の気持ちはいつでも貴女の側にあるから」

ほむぅ……

やっぱり……

ほむら「それに…あなたにやっと返すことできたから…」

 私は…まどかの三つ編みの先を指さす。まどかも…覚えているよね?

まどか「うん……私のリボン、ずっと大切にしていてくれたんだよね」

ほむら「…ええ。少し痛んでしまっているけどね。」

まどか「……大切にしてくれて、ありがとう」

ほむら「………………代わりに、このリボンをもらっていくね」

 私はさっきまどかから取り上げた…白いリボンをかざして見せた。

まどか「うん……大切にしてね…今の私の一部だから」

 まどかが概念になる時の別れとは逆に…今の私はとても笑顔でいられる。
 反対にまどかは今にも泣き出しそうな悲痛な顔をしているけれども。

ほむら「まどか……今日一日はとても……楽しかった。もう二度と…味わうことができないと思っていた……幸せだったから」

まどか「うん……」

 少しずつ意識が遠のいていることが何となく分かってきた。…まだ、まどかとお話し足りないんだけどな。

ほむら「ずっとね…会いたかったよ。」

まどか「うん……私にはすべての時間軸の出来事が分かるから……ほむらちゃんの変わらない気持ち…ずっと分かってる。」

ほむぅ……

ほむら「…そう。でも、最期にちゃんとあなたに私の気持ち伝えないと」

 私の消えそうな意識の中に、まどかとの出会いが鮮明に思い出される。


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ほむら(……………あの、鹿目さん)

ほむら(本当に…私なんかでいいの…?)

ほむら(私……暗いし……その………)

ほむら(鹿目さんのお友達になんて………)

まどか(ほむらちゃん)

まどか(もうわたしたちは友達だよ)

まどか(これからも…いつまで……ずっと)

ほむら(…………………うん……)


 ----------ずっとね


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ほむら「ずっと…ずっと……私は覚えていたわ…だから…最期に」

ほむほむ

ほむら「まどか……あなたは、私の最初で、最高の…友達よ……」


ほむら「そして………今までも…これからも………」


ほむら「あなたが…大好き」


 遠くに離れていて…ずっと言えなかった、まどかへの気持ち。やっと、まどかに伝えることができた。
 …ありがとう、まどか。



まどか「ありがとう……そして………さようなら、ほむらちゃん」



まどか「…私も、ほむらちゃんが……大好きだから」



 ずっとずっと…ほむらちゃんから聞きたかったことばと、伝えたかったことば。
 …ありがとう、ほむらちゃん。

ほむほむ



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 夢見たものは一つの幸せ




 願ったものは一つの愛




 ……それらはすべて……ここに……



 ここにあると…



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ほむら「夢見たものは」完

>1 :全51レス:2011/11/25
以前も書き溜めてた人?支援支援

乙乙乙

乙ほむまど

とにかく、幸せなほむらとまどかを書きたかった。
冒頭や>>57で指摘されてるように、同名の合唱曲より構想。

この画像の雰囲気だしたかった。
http://beebee2see.appspot.com/i/azuY4M2bBQw.jpg

>>91 Yes

ベタな展開だとは思うものの、しっかりと白いリボンを拾われていたり、ネタバレされるのではないかと冷や冷やしたw

本当は、まどかとほむらが本当に幸せになる話まで作ろうか…と思ったけど、今回はこれで良い気がしたのでおしまいです。

まどかとほむらには幸せになって欲しい…。

>>1

ほむらが合唱曲のタイトルをつぶやいていることがあれば、お会いしましょう。

ネタにつきてきているので、こんな話が良いというのを書いておいてくれれば、参考にするかも。

…では、どこかのまどマギすれに消えます。

保守してくれた人ありがとうございました。

また頼むよ

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