美琴「ナイトメアメーカー?」 (243)

たつか?

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382114465

NIGHTMARE MAKERというマンガからネタをもらって書いてるSSです。
とは言っても、ただ夢見装置のアイデアを貰ったってだけで、クロスじゃありません。


他で書いていたんですが、こっちに引っ越してきました。


** 18禁の表現がありますので、ご注意ください。**



ある程度書き溜めていますが、ペースは遅くなるかもしれません。


わたし、御坂美琴は、ある機械を前に首をかしげている。

「本当にこんなもので?」

カバーが外され基盤が取り出されたノートくらいの大きさのその機械は、今日風紀委員の支部から拝借した夢見装置と呼ばれるものだった。

「自分の見たい夢が見られる機械が学生の間で出回っている」

数週間前から耳にするようになった噂だったが、果たしてその機械は実在していた。現実と夢の区別がつかなくなった学生も出てきたとの話もあり、警備員(アンチスキル)と風紀委員(ジャッジメント)によってひそかに回収が進められているようだ。

驚いたことに、この機械、なんと、学園都市外の高校生によって作られたものだという。

人の見る夢をコントロールするということは、脳内の電流である脳波をコントロールするということだ。エレクトロマスターであるわたしにとってはとても興味深いものだ。
また、あの食蜂操祈の持っているコントローラーに通じるところがあるかもしれない。

「たしかに、外の世界で手に入る部品しか使っていないようね。この3つのパーツの関連が鍵かしら。」

分解して、使っている部品を吟味したくらいではその仕組みはわかりそうにない。そもそも、本当に見たい夢が見られるかどうかもわからないのだし。

「ん~、まずは試してみましょうかね」

この機械の動作を確かめるため、今晩この機械をつけて眠ってみることにした。

「ま、プラシーボ効果ってやつで、みんな、自分の見たい夢が見れたような気になっているだけかもしれないしね」

そうして自ら実験台となるべく、夢見装置につながったヘアバンドを巻いて、わたしは眠りについた。

美琴「ナイトメアメーカー?」
美琴「ナイトメアメーカー?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382114264/)
美琴「ナイトメアメーカー?」
美琴「ナイトメアメーカー?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382113867/)

乱立してるから使わないスレはHTML化依頼してくれ

あ、失礼。
ずっとエラーが出てたと思ったら、たってたんだ。

スレを乱立させてしまってたようです。
ここを使います。失礼しました。

指摘してくれた方、ありがとう。

じゃ、ぼちぼち投下していきます。

ふと気がつくと、わたしは、いつもの自動販売機のある公園にいた。

「ん、これは夢の中、よね?」

何故か夢であることに気がついてしまう。

「うぅん、夢って気づいてしまっちゃあ、見たい夢が見れてたとしてもちょっと興ざめかもね」

そう言いながら、辺りを見回す。なにしろここは自分の見たい夢の中の世界(かもしれない)なのだ。
何か、素晴らしいことがあるかもしれない。

程なく、向うから誰かがやってくる姿が見えた。

「よう、美琴」

目の前に現れたのは、あのツンツン頭の少年だ。

「ハァ、なんだ、アンタか。アンタが出て来るってんじゃ、望んだ夢が見れるってのもやっばあやしいわね」

そう言ってため息をついた。

アイツの方に目をやると、どうも様子がいつもと違う。
様子というか雰囲気だろうか、妙にまじめな顔でじっとわたしをを見つめている。

「な、何よ!」

まっすぐ自分のほうにやってくる上条に、ちょっと気圧されながら声をかける。

「なあ、美琴、何で俺の気持ちに気がついてくれないんだよ」

「へ?」

目が点になった。気持ち?気づく?どういうこと?

戸惑っている間に、上条に両肩をつかまれた。
まじめな目で、じっとわたしを見つめてアイツは続ける。

「美琴。俺は、お前のことが好きなんだよ。何でわかってくれないんだよ」

「え? え? ええぇぇぇ?」

わけがわからない。コイツがわたしのことを好き?いやいやいや、そんなこと考えたことも無かった。

そもそもわたしはコイツのことなんか何とも思っていない。
まあ、親しい友人の一人ではあるかもしれないが、それ以上の存在だと考えたことなんて無かった。

「美琴。好きなんだよ。お願いだから俺の気持ちをわかってくれよ」

上条にいきなり抱きしめられる。
いきなりのことに何も抵抗できず、抱きしめられるままにされている。

そういえば.......

わたしは思い出す。


妹達の時もコイツは命がけでわたしを救ってくれた。好きでもない女の子相手にそんなことできるだろうか?
グラビトン事件の時だってそうだ。自分が盾になってわたしを守ってくれた。

そもそも、その前だって、わたしの能力が通用しないのをいいことに、何かといってはわたしにちょっかいを出してきた。それで、結局一晩中追いかけっこになっちゃったり。
夏には、盛夏祭のステージ裏まで追いかけてきて、「きれいだ」と言ってすぐに逃げて行ったこともあった。

海原光貴に付きまとわれていると言った時には、恋人のふりをすることを提案されたし、大覇星祭では、罰ゲームをかけた競い合いを持ちかけられ、その結果携帯電話のペア契約をする羽目になった。
そういえば、大覇星祭ではいきなり押し倒されたりもした。さすがにすぐ跳ね除けたけど、今思えば危なかった。

(そうか)

コイツは、ずっとわたしのことを想っていたんだ。
それなのに、わたしはというと、コイツのそんな気持ちに気がつくこともなくずっとスルーしていた。

「ごめんね、アンタの気持ちに気付いてあげられなくって」

何か申し訳ない気分になってくる。

「だから、美琴」

「え?え?」

「俺のものになってくれ」

いきなり押し倒された。


「ちょっと、何を……」

戸惑いながら考える。

わたしはここでこのままコイツとゴニョゴニョしてしまうんだろうか?

(ああ、そうだ)

わたしの能力はコイツには通用しない。
そうなれば、わたしはただの中学生の女の子だ。高校生の男子の腕力にかなうわけが無い。
抵抗しても無駄なのだ。

(ああ、このまま身を任せるしかないんだ。わたしはコイツのことなんか何とも思っていないのに……)

あいつの顔が近づいてくる。
わたしは目を閉じることしかできなかった。

唇に何かふれた感触がする。
ああ、わたしのファーストキスはコイツに奪われてしまった。
そう思った直後、あいつの手がわたしの胸に触れてくる。

(あまり大きくないから、恥ずかしいな)

そんなことを考えながら、胸を触られるにまかせる。

胸がむずむずする。
いやな感じじゃない。
それどころか、服の上からじゃまどろっこしい。刺激が足りない。
そんな気分にすらなってくる。

そのうち、あいつの手はわたしの太腿に下りてきた。
太腿を撫で回した後、ゆっくり上がってきて、わたしのその部分を、短パンの上から撫でてくる。

(あぁ)

わたしはもう覚悟を決めていた。

(仕方ない。このままあいつに身をまかせるしかないんだ。)

だって、能力も効かないし腕力でも勝てない相手に対して、か弱いただの女子中学生にいったい何ができるというのか。
口はあいつの口でふさがれているので、声を上げることもできない。

「あっ」

あいつの手がショーツの中に入ってくる。
大事なところを直にさわられている。そこがじっとりと湿ってくる。


自分の中で何か熱いものが生まれているのがわかる。

スカートが脱がされ、短パンとショーツも脱がされた。

わたしは目を閉じて、何もできないままその時を待っていた。


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ふと気がつくと、わたしは自分の寮の部屋のベッドにいた。


(え?夢?覚めちゃったの?)

しばらくの間呆然としていた。

今のは何?
夢だってことはわかる、でも。。。

(夢見装置のせい?わたしが見たい夢がこれだって言うの?)

「悪夢だ。。。。」

夢見装置をはずして、わたしはつぶやいた。

こんなのが自分の望む夢のはずが無い。
別になんとも思っていない相手に、身体を捧げるような夢なんて。
しかも、半分無理矢理のような状況で。

しかし、意識は夢から覚めても、体はまだ冷めていなかった。

体の芯が熱い。

何だろう。アイツさわられていた部分がじんじんする。
そっと手を伸ばして確かめてみた。

濡れている。

(わたし、えっちだ。)

自分自身にあきれる。あんな夢で感じているなんて。
しかし、伸ばした手を引っ込めることはできなかった。

身体はずっと快感を求めている。
頭の中で、あの、あまりにも唐突に終わってしまった夢の続きを想像しながら自分で慰めていた。


「んっ、んっ」

初めて指を中に入れてみる。

(あ、こんな感覚なんだ)

さっき、本当ならアイツにしてもらったはずのこと、それを自分の指で代用するように。

「あっ。ぃ、いっ」

初めてイクという感覚を知った。
本当なら、さっきアイツに教えてもらったはずの感覚なのに。

(なんで目が覚めちゃったんだろ)

そう考えた後に、はっと我に返る。

「違う違う。これは、あのまま夢が覚めなければよかったっていう意味じゃないのよ。純粋にあの機械に不具合があるのかもしれないって思っただけなんだから」

自分自身に言い訳する。


「さすがにさっきの今だしね」

枕元においた機械を見ながら、今日はもう使わないと自分に言い聞かせる。

(途中で目が覚めちゃうのが不具合だとしたら、わたしに直せるかなぁ)

そんなことを考えながら、わたしは再び眠りについた。

今日はここまでにします。

明日、少なくとも他ですでに書いたとこまでくらいは、サクサク投下するつもりです。

ふぅ…生殺しとはけしからん機械だ

エロパロのときから読んでくれている方もいるようですね。

約束通り(?) 今日中に、あっちに上げたところまでは投下したいと思っています。

あと、トリップつけてみます。


では、そろそろいきます。


翌日、わたしは再び夢見装置を試してみることにした。


「昨日はあんな夢だったけど、今度はちゃんとわたしの見たい夢が見れるかもしれないもんね」

昨日の夢の続きが見たわけじゃない、そう自分に言い訳して装置を手に取った。

「昨日も、最初から夢だってことはわかってたんだし、ちゃんと今の意識をもって、自分の意思で行動できるはずよ」

「そもそも、能力が通じないったって、電撃で怯ませるくらいのことはできるはずで、無抵抗でいるなんてわたしらしくないわ」

「わ、わたしのこと好きとか言いだすし、どういうことなのかしっかり問い詰めてやんないとね」

昨日の夢が自分の見たい夢じゃないと言いながらも、すっかり昨日の続きが見られると決め込んでいるということに気付かないまま、少しどきどきした気分で、わたしは眠りに落ちた。



次に気が付いた時、いつもの公園でわたしはアイツに抱きしめられていた。

(え?え? 何? いきなりどういうこと?)

(誰かに見られてたりしてないわよね?あ、どうせ夢だし、いいか)

そんなことを考えるのがやっとだ。すっかりテンパっている。

(ああ、もう、何でいきなり抱きしめられているのよ。最初からガツンと言ってやるつもりだったのに)

そう思いながらも抵抗できない。ただ、真っ赤になって抱きしめられるままになっていた。


「美琴」

優しい声でアイツがわたしの名前を呼ぶ。

「愛してる」

心臓が飛び出るかと思った。
わたし、今、絶対に肉眼でわかるくらいビクってした。

(ア・イ・シ・テ・ル)

アイツの言った言葉を心の中で繰り返す。
ああ。頭の中にICレコーダーがあればいいのに。そうしたら、永久保存版として今の5文字を保管しておける。

いやちょっと待て。何を考えているんだ、自分。

えーと、そもそも、わたしはコイツのことなんかなんとも思っていないわけで、
あと、それで、コイツが一方的にわたしのことを好きになっているだけなわけで、
さらには、これは夢の中なんだけど、こんなのがわたしの見たい夢ってわけじゃ絶対に無いわけで、

ああ、もう頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。

(顔が赤くなってるのがわかっちゃったら恥ずかしいな)

そんなことを思いながら、恐る恐る顔を上げた。

「美琴、かわいいよ」

コイツ、こんなことを言うキャラだったっけ?ああ、そうか、夢だからだ。

変に納得をして、わたしはそっと目を閉じた。

唇が重なるのがわかる。
わたしのセカンドキスもコイツとだ。
きっと、わたしはもうコイツ以外とはキスできない体になっている。

うっとりして、頭がぼうっとなってきた。

「美琴、お前が欲しい」

やさしくキスされて、こんなことを耳元でささやかれて、拒否できる女がこの世にいるんだろうか?

わたしは、小さくうなづくことしかできなかった。


アイツはわたしの胸に手を伸ばしてきた。

頭の隅っこのほうに、我に返った自分がいる。

(いけない、これじゃ昨日の二の舞だ)
(きっぱりと拒絶して、問い詰めてやんなきゃ)

(わるいけど、わたしはアンタのこと何とも思ってないから)
(アンタには借りもあるし、わたしなんかを好きになってくれたのは感謝するわ)
(でもそれとこれとは別問題。これきりにしてくれるかしら)
(そして、どうしてこんなことをしたのか、怒んないから説明しなさい!)

用意してきた言葉を頭の中で反芻する。
でも、決してわたしの口から出て行くことはない。

きっとまた口をふさがれてしまったからだ。

(能力も効かないし、腕力でもかなわないんだから、抵抗しようがないんだ)

わたしは自分に言い聞かせていた。
アイツに身を任せることを正当化するための言い訳だった。

わたしの口に中に、アイツの舌が入ってくる。
わたしは夢中で自分の舌をからめていた。

アイツの手がわたしの股間にのびる。
やさしくなでてくる。

わたしはこころもち足を開いていた。

いつの間にか、わたしは全裸になっている。アイツも裸だ。
裸になって、どこかふわふわした場所で横になって抱き締めあっている。

(ああ、夢だから都合がいいのね)

そんな覚めた感覚がどこかにあった。

(おかげで昨日より進んでるわ)



わたしは、どきどきしながらその時を待っていた。

「美琴、愛してる」

また言ってくれた。
体の芯が、じゅん ってした。

(はやく、はやく来て)

もう待ちきれない。わたしは自分からねだっていた。

「ねえ、もう、、おねがい」

アイツがわたしに微笑みかけた次の瞬間、何かがわたしの中に入ってきた。

「あっ、あっ、あぁっ」

声が出てしまう。

アイツとひとつになっている。
そのことに体が震える。
なぜなんだかわからない。涙があふれてくる。

アイツは、その涙を吸い取るようにわたしの頬にキスした。

「あっ、あっ」

快感がひろがってくる。
もうすぐ、もうすぐだ。

大きな声を出すのが恥ずかしいという気持ちで、じっと歯を食いしばっって、押し寄せる快感に備えた。

「くっ、うっ、あ、あぁーっ」

最後は声が出てしまった。

アイツは、微笑んでわたしを見つめている。

「え、へ。なん か、いっ ちゃっ た みた い」

わたしは、絶え絶えの息で、そう言っていた。
聞かれてもいないのに、何てことを言ってるんだろう。すごく恥ずかしくなってきた。

「美琴、俺、うれしいよ、お前とこうなれて」

その言葉を聞いてわたしの目からまた涙があふれてきた。

「あぁっ、わたしも、わたしもぉぉ」

アイツにしがみついて、夢中でそう言っていた。


自分なりに考察してみた。

所詮は夢だ。自分の知らない感覚は経験できない。
一回目の途中で目が覚めたのは、挿入感や”いく”という感覚をわたしが知らなかったからかもしれない。
その後、自分でゴニョゴニョしてしまい、とりあえず参考になる感覚を知った。だから、二回目はアイツと最後までいくことができたんじゃないだろうか。

「だったら、これからはずっとあれってこと?」

いや、決してそんなこと期待してるわけじゃない。とあわてて否定する。

そういえば、キスはあまり実感がなかったような気がする。それはわたしに参考にできる経験がないからだろう。

(ムードだけで、十分満足しちゃってたけど)
(キスもちゃんとするためには、現実世界で実際にアイツとキスしなきゃだめか)

「あー、もう何考えてんのよ、わたしは!」

どうでもいいのだ、アイツとのあんなことやこんなことなんて。
夢見装置の効果を確認することが目的なんだから。

そう考えると、二回連続して同じような夢を見たということは紛れもない事実だ。
あれが、わたしの望んでいる夢だってことについては全力で否定するけど、何かの作用があるからこそ同じ夢を見たということが言えるかもしれない。

「何らかの効果があるかどうかを確かめるためには、どうしても、もっと試してみる必要があるわね」


そういうわけで、それから当分わたしは夢見装置をつけて寝ることにした。

効果を確かめるためだ。決してあの夢を見たいわけじゃない。
好きでもない相手とあんなことする夢なんて見たいわけが無い。しかし、この装置に効果があるかどうかを確かめるためにはそうするしかないのだ。

「しかたないわよね」

そう自分に言い聞かせて眠りについた。




その夜も、また次の夜も、わたしはこれ以上ない快感と幸福感に包まれていた。

夢の中では、アイツはわたしのことが好きで仕方ない。
夢の中では、アイツはいつも「好きだ」とささやいてくれる。
夢の中では、アイツはやさしくわたしを抱きしめてくれる。
夢の中では、アイツは素敵にわたしをいかせてくれる。

それから一体、何日この装置を試し続けたんだろう。

「やばいわ、クセになりそう、これ」

あくまでまだクセになっているわけじゃないと自分に言い聞かせるように、そうつぶやいた。


今日は、朝からついてない。

学校へ出かける前、夢見装置を黒子に見つけられてしまった。

「おや、お姉さま、この機械は?」

風紀委員(ジャッジメント)の黒子をごまかすことはできない。

「これは、若者を惑わすという理由で、警備員(アンチスキル)で回収中の夢見装置では?」
「お姉さま、これで一体何をしていますの?」

「じゅ、純粋な科学的好奇心よ」
「脳波は電気の流れだしね」
「それをコントロールして夢を見させるなんて、その原理が気になるじゃない。だから、どういう仕組みなのか調べてるの」

わたしはあわてて、当初そうであった目的を説明する。

「へぇ、そうでしたか」

いたずらっぽい顔で黒子が続ける。

「まさかお姉さま、これを使って夢を見たりなんてしていませんですわよね?」

「そっ、そんなことするわけ無いじゃない。本当に純粋に研究材料にしているだけよ」

なかなか鋭い。取り乱さずに答えられていただろうか?

「しかし、これは、見つけてしまった以上このままにしておくわけにはいきませんの」
「この機械のせいで夢と現実との区別がつかなくなって事件を起こしかけた学生もいるとも聞きますし、我々の間では、ナイトメアメーカーと呼ばれている代物ですの」

黒子は、夢見装置を手に取る。

「これは、回収させていただきますわ」

「え、え、そんな」

「申し訳ありませんが、いくらお姉さまでも、見逃すわけにはいきませんの」

まいった。こういった時には黒子は本当に融通が利かない。


「そんなぁ、もうちょっとそれを研究したいんだけどなぁ」

あくまで研究材料ということでお願いしてみる。

「ダメ?」

黒子は少し考えた後、

「研究で使うのでしたら、わたくしがしかるべきところを探して、借用することができないか聞いてみます」
「なんにせよ、この機械がこのように放置された状態で一般の人の手にあるのを見過ごすわけにはいきませんので」

やっぱり融通が利かない。

あの機械、前に分解したときに一通り調べているので、動作原理自体はわからないところがあるが、どんな仕掛けになっているのかはもうわかっている。
その気になれば自分で作ることも多分可能だと思う。
また、学園都市内なら、同じような動きをするもっと高性能のパーツを入手することもできるはずだ。

一日もあれば、組み立てられるだろう。

しかたない、自作するか。これ以上かわいい後輩を困らせるのはやめよう。

「仕方ないわね。それは黒子に預けるわ」

「すみませんお姉さま。しかし、これは危険なものですので」

黒子がすまなそうに頭を下げる。

いいのよ、と軽く返して学校へ向かった。


夕方、わたしは、あの自動販売機のある公園に向かった。

当分夢の中で会えなくなるであろうアイツに会えるかなあという期待が無かったと言うと、きっとウソになる。

「なかなか来ないわねぇ、夢の中だとすぐに来るのに」

別に約束したわけでもないし、そろそろ帰ろうかと思ったところだった。

アイツはやってきた。しかも、女の子二人と一緒に。

長い黒髪が印象的で色白の純日本風美人と、健康そうで顔立ちも整った、胸の大きな女の子だ。

「貴様、一端覧祭の準備を抜け出すとはどういうつもりだ」

「だから、特売のタイムセールから戻ってからちゃんとやると言ってるじゃないですか」

「上条くん。あなたは。一度出て行くと帰ってこない」

何か親しそうに話している。

何故か無性にイライラしてくる。

コイツが女の子と歩いていたってわたしには何の関係も無い。
仮に二人のうちどちらかがアイツの彼女だったとしても、別にかまわない。わたしの人生に何の関わりも無いことだ。

なのに何故か湧き上がってくるイライラ感を止められない。

アンタはわたしのことを好きなんでしょ?あんなに毎晩毎晩「好きだ」ってささやいて、それからゴニョゴニョするくせに。

(何で、こんなところで他の女と楽しそうに話してるのよ!)

長い黒髪の女の子は間違いなくアイツのことを好きだ。それはもう見てすぐわかる。
胸の大きい女の子はどうだろう?断定はできないが同じようアイツのことを好きかも知れない。いや、きっと好きだ。

(どうするつもりなのよ。アンタはわたしのことが好きなんでしょ?)
(その子達、いずれ悲しい思いをすることになるのよ?)
(そんな期待を持たせるよなことをしちゃだめでしょ。)

今から、前に出て行って、二人に「コイツが好きなのはこのわたしよ」と言ってやろうかと思った。
そのほうが二人のためにいいのではないか。現実を早く認識させてあげるべきではないのか。

それなのに、なぜだろう。

実際には、わたしは、三人に見つからないように、その場から逃げるように駆け出していた。


公園から離れた後、街で買い物をした。

洋服とかお菓子じゃない。機械のパーツ集めだ。
学園都市の中にも、電気店街のような一角があり、何店か回って夢見装置を作るのに必要なパーツをそろえた。

小一時間ほどパーツを漁った後、そそくさと寮に帰って、すぐ作成に取り掛かった。

パーツはそろっているが、やはり数時間で作れるようなものじゃあない。
大体の原理はわかっているし、もとの機械から回路図も起こしてあるので、全然ダメってことはないとは思うけど、試行錯誤しなければいけないところもある。

(うぅん。やっぱあのパーツも必要か)

外の世界と全く同じパーツは手に入らないものもある。
それらは、学園都市製の互換性のあるもっと高機能なパーツを買って組み立てているのだが、外の世界の複数のパーツが一つのパーツで機能したり、動作が微妙に違うパーツもある。

今日買いそろえたパーツだけでは完成できなさそうだった。

「仕方ない。明日また買出しに行きますか」

学園都市製のパーツを使うおかげで今度の夢見装置はずいぶん小さくなる。
今まで使っていたのは、ノートくらいの大きさがあったのだが、今度のは5インチのスマートフォンくらいのサイズだ。
ヘッドバンドもワイヤレスのイヤホンタイプにできる。

(これなら、簡単に隠せるし、黒子に見つかってもいくらでもごまかせそうね。)

満足げに微笑むと、パジャマに着替えてベッドに入った。


そういえば、あの機械なしで寝るのは久しぶりだ。

今日はもうあの夢は見られないんだろうか?

「やだ、これじゃまるであの夢を見たがっているみたいじゃない」

わたしは頭をふって否定した。
そんなことはない。あんな夢がわたしの見たい夢のはずがないんだから。

(それに、あの機械なしでも結局同じ夢が見れるかもしれないしね)

そんなことを思いながら眠りについた。


「ここは。。。。」

いつもの公園、いつもの夢の中だ。

「なんだ、結局この夢の世界に入ってくるんじゃない」

あの機械は関係なく、たまたま同じ夢をずっと見ていただけなのかもしれない。

そう思いながら、あたりを見回してアイツを探そうとしたところで、後ろから声をかけられた。

「おや、御坂さんじゃないですか」


振り向いた先にいたのは、海原光貴だった。

げっ、なんでコイツが?
やっぱりあの機械じゃないとダメなんだろうか。

「あら、海原さんじゃないですか」
「こんなところで奇遇ですねぇ」

「あ、わたしはちょっと人を探してますので、これで」

さっさとその場を立ち去ろうしたところ、手をつかまれて引き戻された。

「残念ながら、この世界には彼はいませんよ、御坂さん」

「べ、べつに、アイツを探しているわけじゃっ」

そう答えると、海原光貴はやれやれと苦笑する。

「彼、と言っただけなんですけどねぇ」


「彼にばっかりかまっていないで」

海原光貴が続ける。

「そろそろ私の気持ちに応えてくれませんか、御坂さん」
「私が貴女のことを思う気持ちはとっくに気付いているはずです」
「私だって貴女のためにいろいろとしてきたんですよ」

何を言っているのか理解ができない。


さすがにあれだけ露骨にストーカーまがいのことをされたんだから、気持ちに気付くぐらいのことはする。
でも、それに応えるかどうかは全く別問題だ。
というか、応えるつもりなど全くないし、今後もありえない。

わたしはにっこりと笑って答える。

「あ、海原さん、すみませんがやっぱりお気持ちには応えられないみたいです」

きっぱりと、断ったつもりだった。

「ふ、つれないですねぇ」

そう言って海原は、わたしを抱き寄せようとする。


冗談じゃない。さすがにこれはやりすぎだ。
わたしは、怪我をしない程度の電撃を海原光貴にあびせた。  はずだった。

しかし、次の瞬間、わたしは海原光貴に抱きしめられていた。

(あれ?)

嫌だ。こんなやつに。
わたしを抱きしめるのはコイツじゃない。

「この世界ではあなたの能力は通用しませんよ」

(え、なんで?)
(そういう設定なの?)
(それじゃぁちょっと分が悪いんだけど)

「能力が使えなければ、あなたはただの女の子です。男の力にはかないませんよ」

そう言ってわたしを抱きしめる手に力がこもる。

「ちょっとは私のほうも見てくださいよ」

そう言った海原の手がわたしの胸に触れた。

「やめてよ!」

必死になって振りほどこうとする。

「調子に乗ってんじゃないわよ」

声を出して抵抗するが、なかなか腕を振りほどくことができない。

そして、 なんと、

ゆっくりと海原の顔が近づいてきた。

「嫌だ!」

そう叫んで顔をそらす。しかし、、、、海原の唇がわたしの頬にふれてしまった。

怒りがこみ上げてくる。
お前なんかがやっていいことじゃない。
わたしはもう身も心も売約済みなんだから。

精一杯の力をこめて、海原を突き飛ばした。
抱きしめていた腕が解け、海原は1,2歩後退する。

「ふざけんじゃないわよ!」

わたしは怒鳴った。

「わたしに触れていい男はこの世に一人しかいないのよ!あんたなんかに好きにさせるもんですか!」

「それでもまだ、力ずくでわたしをモノにできるって思ってんなら」

「そんな幻想は、わたしがぶち殺してあげるわよ!」

わたしの渾身の右拳が、海原光貴の顔面を捉えた。


目が覚めたわたしは、ベッドの上で呆然としていた。

アイツじゃない男に抱きしめられた。
アイツじゃない男に胸をさわられた。
アイツじゃない男に唇を奪われかけた。
アイツじゃない男に頬にキスされた。

罪悪感に襲われる。
目から涙があふれてくる。

(ごめんなさい、当麻。当麻だけのわたしなのに)

初めてアイツのことを当麻って呼んだ。心の中でだけど。
アイツだってわたしのことを美琴って呼んでるんだから、わたしだって名前で呼んでいいはずだ。

海原にさわられた胸にそっと手を当てる。

「上書きしてよ。当麻」

自分の胸を揉みしだく。当麻にされているのを想像しながら。

「あっ、あっ、そう、そこ、そこを」

頭の中の当麻は怒っている。自分以外の男がわたしが胸をさわったからだ。
そのことを打ち消すために当麻の手がわたしの胸をさわってくる。


左手で胸をさわりながら、わたしの右手は股間へと伸びていく。

「あっ、やっ、だめ。そんなとこ」

当麻は許してくれない。
あんな男に胸をさわらせるなんて、と、嫉妬に狂ってわたしに迫ってくる。

「うん、うん、いいよ。当麻は何をしても。わたしは当麻のものなんだから、好きにしていい」

わたしの手は止まらない。敏感な部分を刺激し続ける。
いや、違う。これはわたしの手じゃない。

当麻の手だ。

当麻の手が、夢とはいえあんなことを許してしまったわたしに罰を与えるために、わたしの手になって動いているんだ。

そうだ、そうなんだ。だったらわたしの意志で止めることなんてできるわけがない。

「あぁぁ。とぅまぁ。」

甘ったるい声を出しながら、わたしは高みに上っていく。

「あっ、ああっ、ああああっ」



「とうま、あいしてる。」



それからわたしは朝まで眠れなかった。

夢見装置無しで見る夢が怖くてしかたなかったのだ。


とりあえず、エロパロに投下済みのところまでです。

夜には、続きを投下できると思います。
エロパロの時から待っててくれた人、いれば、次からです。


翌朝、寝不足全開の顔をしたわたしに、黒子が声をかけてくる。

「お姉さま、寝不足のようですけど、大丈夫ですの?」

ああ、心配ないわよ、そう答えようとしたところに、黒子が続ける。

「最近夜中にうなされているよな声が聞こえますので、心配していますの」

わたしは、むせ返りそうになる。

声?出てるの?しかも聞かれてる!?

「あ、あぁ、ちょっと変な夢を見ちゃってね」

「と、ところでなんだけど、わたし、どんなこと言ってた?」

恐る恐る聞いてみる。

「いえ、ただ、『ああー』とか、『ううー』とかの苦しそうな声で、特に意味のある言葉は聞こえってきませんでしたけど……」

(黒子、それは苦しんでる声じゃなくて……)

顔が赤くなる。
とりあえず、変なことは聞かれてないようなので安心する。

「あ、ああー。そうねー。最近ちょっと疲れてるからかしら」

「何か心配事でも?」

心の底から心配してる様子で聞いてくる。

「はっ」
「ま、まさか、あの類人猿がーー」

勝手に想像して勝手に怒り始めた。

「な、なに言ってんのよ、そんなわけないじゃない。当麻は関係ないわよ」

慌てて否定する。

黒子はちょっと驚いたような顔でこっちを見ている。

ん?何か変なこと言った?わたし。

「ホントよ」
「そもそも当麻とは会えなかったんだし」
「と、とにかく、大丈夫だから」

そういって話を切り上げた。


夕方、わたしはまたあの公園にいた。

当麻に会いたかった。
わたしは当麻のことを好きなのかどうか、もうよくわからない。
ただ会いたかった。
寝不足でぼーっとた頭で、わたしはひたすら待っていた。


小一時間ほどたっただろうか、向うから当麻がやって来るのが見えた。
頭が瞬時に覚醒する。

あ、わたしに気付いた。

「おぉ、御坂じゃねぇか。こんなところでどうしたんだ?」

当麻の言葉に軽い違和感を感じながらわたしは答える。

「ここに来れば当麻に会えるかも、と思ってね」

え?という顔をしている当麻にかまわずわたしは続ける。

「こっちの世界じゃ、長いこと会ってないもんね。って言っても1週間くらいかしら」

ん?何かひいてる?おかしなことは言ってないはずだけど。

「あ、ああ、そんなもんかな」

当麻がぎこちなく答える。

「まあ、座んなさいよ」

わたしはベンチに座り、ぽんぽんと隣を叩く。

それからわたしたちは話をした。

今まであったこと。
二人で過ごしてきた時間のこと。
とりとめもない話だった。

といっても一方的にわたしがしゃべっていたような気もする。
当麻は時折なにか不思議なものを見るような目でわたしを見た。
途中、何度か口を挟もうとしてやめるのがわかった。

何よ、言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに。


「ねぇ、そういえばさぁ」
「当麻って、長い黒髪が好きなの?あと、胸が大きい娘とか」

「ぶっ」
「な、何をおっしゃってるんでせうか!」

当麻が慌ててる。
え?まさかそうなの?わたしと全然違うタイプなのに?

思わず眉間にしわが寄る。

「そんな、別に特定の好みがあるわけじゃねぇよ。髪とか胸とか」

「外見がどうこうってんじゃなくて、何かのきっかけで誰かを好きになって、その子のことが自分の好みになっていくんじゃないか」
「少なくとも俺はそうだな」

え、それって。
わたしのことを好きになったから、わたしの容姿が好みになったってこと?

「ふ、ふぅぅん。そうなんだ」

わたしは、ぼんやりと当麻の唇を見つめた。

(この唇にキスされたら、夢でもリアルに感じられるのかなぁ)

ここではっと思い出した。
そうだ、これから足りない部品を調達しにいかなきゃいけないんだった。


何店か回らないと見つからないかもしれない。
そんなに遅い時間まで店は開いてないし、今日中に手に入れてあの機械を完成させないと、

(また、今日も眠れない!)

名残惜しいけど、今日はここでお別れすることにした。

「じゃあ、わたしはそろそろ帰るね」

「あ、ああ、じゃあまたな」

「うん、夢で逢いましょう」

「へ?はは、ああ、じゃあ、また夢で」

その場を離れる瞬間、自分の知っている人の気配がした。

(黒子だ)

黒子は付き合いが長いこともあって、ほぼ間違いなくその気配がわかる。
わたしは今朝の会話を思い出した。

(ああー、わたしを探しにきたのね)

わたしは走ってその場を離れた。テレポーターの黒子に勝てないのはわかっている。
でも、とりあえず逃げて、「ああ、つかまっちゃった」ってのをやってみようと思っていた。

しかし、黒子は追ってこなかった。


「あれ?わたしに用があったんじゃないってこと?」

まあ、そのほうが都合がいい。
これから、電気街に行って例の装置のパーツを探すのだ。
黒子に変な詮索をされないほうがいいに決まっている。


「さて、これがあれば大丈夫よね」
お目当てのパーツを手に入れると、わたしは帰路についた。
もう、夢見装置無しで寝るなんて怖くてできない。今日中に完成させないと。


昨日のうちにほとんど完成していたこともあり、装置はすぐに出来上がった。
学園都市のパーツを使ったせいで、装置は以前のものより小さく軽くなっているが、効果は前のものより強くなっているはずだ。
脳内の想像力にも働きかけるようにしてみた。
通常より強化された想像力で補うことによって、経験のある感覚をもとに、経験したことの無い感覚でも夢の中で体験できるようにしてみたのだ。
あと、見たい夢をもっと直接的に、例えば自分が見たいと思う夢を見ることができるようにもなっているはずだ。

(べ、別に見たい夢があるわけじゃないんだけどさ)

自分自身に言い訳をしてしまう。

(たぶん、寝る前に内容をイメージすれば、その内容で夢が見れるようになっているはず)

さて、どんな内容を、と考えて始めてすぐ頬が赤くなってきた。

「そ、そうだ、ちゃんとお風呂に入っとかなきゃ」

わたしは、浴室に向かった。
念入りに体を洗うために。

ちょっと中断します。



ベッドに腰掛けて、夢見装置のイヤホンを装着し、どんな夢を見ようかと考える。

(どうせ、当麻との夢しか見れないわけだし)

また、顔が赤くなるのがわかる。

以前見たドラマのワンシーンが思いだされた。

女の子が、彼氏に後ろからギュッと抱きしめられる。
彼氏が、後ろから顔を前に回り込ませて女の子の頬にキスする。
すると、女の子も後ろを振り返るように顔を向けると、二人の唇と唇がかさなる。。。。

(あーーーー)

一人でじたばたしていた。
これは恥ずかしい。とてもじゃないけど無理だ。


しかし、ちょっと他のシチュエーションを、と思っても何も浮かんでこない。
当麻に後ろから抱きしめられている自分のイメージが頭に焼きついてしまっている。

(あーーーー)

わたしは、顔を赤くしたままベッドにもぐりこんだ。

「これ、絶対無理。恥ずかしすぎる」

わたしは、当麻に後ろから抱きしまられる状況を強くイメージして眠りについた。


「美琴」

当麻の優しい声がすぐそばで聞こえる。

わたしは、後ろから当麻に抱きしめられ、耳元で名前をささやかれている。

(ああ、やっぱり!)

よしっ、と心の中でガッツポーズをする。

「美琴」

当麻は、もう一度わたしの名前をささやくと、両手がゆっくりとわたしの胸に伸びてくる。

(んっ、あぁ)

わたしは右手の人差し指を軽くくわえて、声を押し殺す。

当麻の手は、わたしの胸をゆっくりと揉みしだく。わたしの全身に電流が走る。
エレクトロマスターのわたしにも制御できない種類の電流だ。

当麻は後ろからわたしの耳にキスをしてくる。わたしの全身に再び電流が走る。

(あぁ、もぅ)

すっかりわたしの体はとろけてしまっている。
立っていられるのも不思議なくらいだ。


当麻は、ゆっくり制服のブラウスのボタンをはずしていく。少しずつ前がはだけ、白いスポーツブラが見えてくる。
ブラの上から、当麻の手がわたしの胸を包む。

もどかしい。

その布が邪魔だ。

(直接触って欲しい)

そう思った直後、当麻はわたしのブラを上にずり上げた。

そう大きくない胸がこぼれ出る。

「あ、やだ」

何故思っていることと正反対の言葉が出てしまうんだろう。



当麻は、左手でわたしの胸を弄びながら、右手をゆっくりと下ろして、おへその辺りを撫で回す。

「あ、んっ」

もう何をされても感じる。

(おへそじゃなくて)

そして、もっと感じたくなってくる。

期待通りに、当麻の右手はさらにさがって、スカートの上からわたしの股間のあたりを触っている。
首筋にキスをし、左手でわたしの胸を揉みしだきながら。

(あ、あ、あ、)

もっと、もっと、もっと欲しくなってくる。

当麻の手は、さらに下がり、スカートの裾まで降りていった。そこから、わたしの太腿の内側をゆっくりと登ってくる。

(ああ、もう、何で短パンなんか穿いてんのよ、わたしは)

もっと直に触れて欲しい。そう思いながらわたしは必死になって顔を後ろに向ける。
当麻はすぐに気づいてくれた。そして、やさしくわたしの唇にキスしてくれる。

(あぁ)

心の中が満たされているのがわかる。

当麻が激しくなる。

短パンのボタンがはずされ、ジッパーが下げられる。

パサッ

足元に、短パンが落ちる。


当麻の舌がわたしの口の中に入ってくる。

右手は、ショーツの中に入ってくる。

左手は、胸をやさしく、そして激しく揉みしだいている。

わたしの頭のなかはショート寸前だ。
ここにはエレクトロマスター にも制御できない電気が本当に多すぎる。
そして、それはとても心地よい。

当麻の右手がわたしのあそこに触れる。

「あぁぁぁん」

今、わたし、ものすごく甘ったれた声を出した。
どちらかと言うと、あまり好きではない、媚びたような女の声。
そんな声を自分が今出している。

それを自覚すると、体がますます熱くなってきた。

もう何で立ってられるのかもわからない。
また、後ろを向いてキスをねだる。

当麻の指がわたしの中に入ってくる。

「ぅ、あ、ああぁっ」

わたしのなかをかき回してくる。

「ぅあ、あ、ぃ、いい、あぁ、いいいっ、あっ、いいっ」

もう無理だ。
がくがくと腰を震わせて、わたしはイってしまった。



「あ、ぁ、はぁ、はぁ、あぁぁ」

(服を脱がずにってシチュエーション、結構興奮するわね)

息も絶え絶えになってそんなことを考えていたら、いきなり当麻にお姫様抱っこされる。

「きゃっ」

気がつくと、そこにはベッドがある。夢の中だから、何でも都合がいいんだろう。

わたしたち二人は、そこに横になった。

今度は前から、きつく抱きしめ合う。

(やっぱり、こうやって抱き合うのもいいわね)

唇と唇が求め合う。舌と舌が絡み合う。

わたしは、抱きしめる腕にさらに力をこめながら、胸を当麻の胸に押し付ける。
さらに、足を絡ませて下腹部を当麻の腰のあたりの押し付ける。

もう自分の意思なのかどうかわからない。
当麻に押し付けた腰が淫らに動いている。

当麻がわたしのショーツに手をかける。
わたしは、少し体を離して、脱がせやすいようにする。

あっという間に二人とも生まれたままの姿になった。
大きく足を開かされる。

ゆっくりと当麻がわたしの中に入ってくる。

「あ、あ、あ、」

わたしの空っぽの部分が満たされる。
それはもう、頭の中が真っ白になってしまうような感覚だ。

わたしは、その感覚を一滴たりとも逃すまいと激しく腰を動かす。

「ん、ん、あ、あぁ、ぁ、ぁ、あああああっ」

真っ白になった頭の中がはじける。

わたしは幸福感と恍惚感に包まれて高みに上っていった。


翌朝、わたしはこれ以上ないというほどいい気分で目が覚めた。

(今日もこっちの世界で当麻に会ってみよう。)

心も軽く、朝の身支度をしていると、黒子に声をかけられた。

「お姉さま、今日の放課後、空いてませんか?」

「ん?何?」

「ちょっとお話したいことが」

黒子が何か不安そうな顔で聞いてくる。

「何か悩みでもあるの?」

かわいい後輩のことだ、何か悩みでもあるのなら聞いてあげなければいけない。

「いいえ、そういったことではありません」

「最近のお姉さまは、今までと変わった感じがしますので、ちょっと。。。」

黒子が言葉を濁す。

ああ、そうか。最近のわたしは当麻とべったりだからだ。
気づかれないようにしていたつもりだけど、態度に出てたのかもしれない。

そもそもこの子は、当麻のことをあまり快く思ってはいないわけで……

「ああ、ごめんね、今日の夕方はちょっと用があるんだ。」

当麻のことを詮索されるのであればあまり話したくないと思いそう答えた。
それに、夕方は当麻に会うんだから。


黒子の眉がぴくっと動いたような気がする。

「ええ。それでは仕方ありませんわね。」

思ったよりもあっさりと引いてくれた。

(放課後、またあの公園に行こう)

夢の世界であんなことをして、当麻はどう思っているんだろう。
こっちの世界で会って話してみたかった。


今日はここまでです。



寝る前に、もうちょっと投下しときます。


夕方、いつもの公園にいた。
こっちの世界では、ここで待っていても当麻が来るかどうかはわからない。
でも、待っているこの時間は苦痛じゃない。

ベンチで待つこと数十分、当麻はわたしの待つこの公園にやってきた。
夢の中では、すぐにやって来るのにね。

「当麻」

わたしのほうから声をかけてみる。

当麻はわたしに気づき、ちょっとびっくりしたような顔をしてわたしのほうを見る。

「あぁ、御坂か。こんなところでどうしたんだ?」

そっけない返事を返してきたことにちょっとむっとする。

「何よ、こっちじゃ妙によそよそしいのね」

ちょっと拗ねた顔をしてそう返す。

「何かあったのか?御坂。白井も心配してたぞ」

とまどった様子で、当麻がそう言った。

「黒子が何か言ったの?」

ちょっときつい、まるで詰問するような言い方になっていたかもしれない。

「い、いや、昨日ここで会って、最近御坂と会ったかとか聞かれたんだよ。ちょっと気になるからって」


何だ、昨日黒子はわたしを追ってこなかったと思ったら当麻と話してたのか。
でも、当麻は一体何を話したんだろう?今朝話をしたいと言ったのは、まさか、当麻から夢の世界でのことを聞いた?

「で、で、当麻は何て答えたの?」

「いや、そんなによく会うわけじゃないし、これと言って特別な話もしてないって答えたよ」

なんだ、ちゃんと夢の世界でのことは隠してるんだ。
ちょっとほっとした。

「ふふ、そうよね」

そう言ってわたしは当麻に近づいて行き、ぎゅっと抱きついた。

「え、と、 こ、これは、一体どういうことなんでせうか」

当麻が驚いた声を出す。
そういえばこっちの世界では、体に触れることなんてほとんどなかったもんね。


「こっちの世界でも、たまにはいいじゃない、当麻」

目を閉じて、当麻を体で感じながら答える。

(ああ、当麻ってこんな匂いなんだ)

心が落ち着く。

深く深く呼吸をしているわたしに、当麻が話しかける。

「なぁ、御坂」

「なぁに?」

「お前、いつから俺のことを『当麻』って呼ぶようになったんだ?」
「ずっと『アンタ』とかって呼んでたじゃねえか」

「ふふ」
「じゃあ、ずっと『アンタ』って呼ばれたいの?」
「いいじゃない、もうこっちでも」
「当麻も、わたしのこといつものように『美琴』って呼んでいいんだよ?」

そう言ってわたしは抱きしめる腕に力をこめる。
当麻は心なしか動揺しているようだ。

それでも、わたしは力を緩めてあげない。
もっと、もっと、と心の中で何かがこみ上げてくる。

わたしは、自分の胸を当麻の体に押し当てた。
そして、体をちょっと横にずらし、斜め前から抱きつく格好になると、当麻の体を軽く両足で挟むようにして、下腹部を押し当てた。
昨日、夢の世界でやったように、胸と腰が自然と動いてくる。


「お、おい御坂!」

(もう。美琴でいいのに)

そう思うと、わたしの体はさらに激しくなまめかしく動き出す。

「ちょっ、なにやってんだよ、やめろよ」

ふふ、やめてあげない。

「や、やめろってば!」

いきなり当麻がわたしの体を突き放した。

(え?え?どういうこと?)

わたしは今の状況が理解できない。

当麻は知らない人でも見るような目でわたしを見ている。

(何?何でそんな目でわたしを見るの?)
(当麻はもっとやさしい目でわたしを見つめなきゃダメでしょ?)

「お前、本当に御坂か?」
「いったいどうしちまったんだよ」

(え?うそ、拒絶されたの?)
(うそ。うそでしょ。)

自分の顔からさっと血の気が引いていくのがわかる。
心臓がばくばくしている。
頭の中はぐちゃぐちゃだ。自分が今何を考えているのかもわからない。

当麻のほうに手を伸ばすと、当麻は一歩後ろに下がった。

「え?や、やだよ」

力ない声が口からこぼれ落ちる。

わたしは、逃げるようにその場から駆け出していた。


気がつくと、寮の部屋に戻っていた。

体が震えている。
いやな汗をかいている。
目からは涙が出ている。
ベッドの上で膝を抱えてずっと座っていた。

(嫌われたの?)
(何で?理由がわからないよ)
(こっちの世界ではわたしたちの関係を隠しておきたかったの?でも、何で?)

「そもそも、当麻のほうからわたしのことを好きって言ってきたんじゃない」
「こっちの世界じゃ、当麻の考えていることがわかんない」

そうつぶやくと、わたしはベッドの上に突っ伏した。

涙が止まらない。

(こんなに好きにさせといて、ひどいじゃない)

わたしは、弱々しく立ち上がると、顔を洗って身だしなみを整えるために洗面所へ向かった。
もうすぐ黒子も帰ってくる。あの子にこんなところを見せるわけにはいかない。
何せ、わたしの様子がおかしいと、当麻と話したりしているのだから。


その晩、わたしは眠れなかった。

(夢の世界でも、また当麻に拒絶されてしまう)

それはもう、恐ろしいことだった。
多分、今のわたしには耐えられない。

おとなしくベッドに入ってはいたが、眠るのが怖くて、結局朝まで震えながら起きていた。


翌朝、なかなかベッドから出てこないわたしに黒子が声をかけてくる。

「お姉さま、そろそろ起きなくては、遅刻してしまいますわよ」

「ん?ああ、ごめんね黒子、今日は調子が悪いから休むわ」

黒子が心配そうにしているのが気配でわかる。
調子が悪いというのはウソではない。
今のわたしは、精神的なショックと寝てないことから来るだるさでボロボロだといってもいい状態だ。
とても一日学校の教室にいられる気がしない。


「......はい。それではゆっくり静養なさってください」

少しの沈黙の後、黒子は詮索もせずにそう言った。


黒子が学校に行ってしまうと、わたしは部屋で一人になる。

頭の中は当麻のことしか考えられなくなっている。

(「美琴、愛してるよ」)
(なによ、昨日わたしを拒絶したくせに)
(「あれは仕方なかったんだよ。本当はお前のこと愛してる」)
(「美琴もわかってるんだろう」)
(だったら、だったらちゃんと証明してみせてよ)


わたしの手は自然と胸と股間に伸びていった。
当麻にされていることを想像しながら、自分で自分を慰める。

(ぁ、ん。な、なによ)
(あぁ、あ、んんんっ。ダメよそんなところ)
(こ、こんなことで誤魔化されないんだから)
(ちゃんと、いっぱいしてくれないと許さないんだから)

頭の中の当麻はいつものようにやさしい。
当麻に敏感な部分を刺激され、わたしはどんどん高みに上っていく。

(あ、ああ、んっ、だめ、だめ、そこは、あぁ)
(もっと、もっと愛して)
(もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと)

(んんっ。あぁぁ。い、い、いい。あっ、いっちゃうっ)

必死になって声を押し殺しながら、わたしは絶頂に上りつめた。


しばらく余韻を感じながらベッドに横たわる。

(ホンット、何やってるんだろう、わたし)

だるさと自己嫌悪が襲ってくる。

しかし、

(黒子もいないんだし、声出しちゃってもよかったかしら)

(一度思いっきり声を出して当麻に抱かれたいな)

そんなことを考えている自分もいた。


しばらくして、わたしはシャワーを浴びた。
汗と体液でぐちょぐちょになっている体を洗い流すためだ。


シャワーを浴びてすっきりした後、わたしは外に出た。
部屋の中にいると、眠ってしまいそうになる。それが怖かったのだ。

あてもなく学園都市をさまよってみる。
目的地も決めずに歩いているはずなのに、辿り着いた先々で当麻との思い出が浮かんでくる。

(ここで、ナンパされてるところに助けに入ってきたのよね)
(あの時は、人を子ども扱いするいけ好かない奴だったわね)
(しかも、わたしの電撃も防いじゃうし)

(この河原では朝まで追いかけっこしたわね)
(砂鉄の剣も一瞬で破っちゃうし)
(電流も当麻の体を流れてはいかなかったのよね)

(セブンスミストかぁ)
(グランビトン事件。当麻に助けられたのよね)
(自分がヒーローのくせに、かっこつけちゃってね)

(この鉄橋もいろいろあったわね)
(幻想御手の時に、ここで電撃浴びせたっけ)
(そして、妹達の時もここだったわよね)
(当麻がいなければ、わたしはあの時に死んでたのよね)

(あれ?じゃあ、当麻がいないも同然の今、なんでわたし生きてんだろ?)


気付けば時はもう夕暮れ、わたしはあの公園の自動販売機の前にいた。

(当麻ったら、この自販機に2千円飲み込まれちゃったのよね)
(わたしがジュース取り返してあげたのに、いきなり逃げ出しちゃうし)
(妹達の事件の中で、唯一安らげた時だったわね)

昔を懐かしく思い出したあと、ふと我に返る。

(なんでここに来ちゃったんだろう)

ここに来れば、当麻に会えるかもしれない。そんな気持ちがあったのだろうか。
夢の中ではいつもここで会っていたから。
夢の続きがここで始まるかもしれないという淡い期待からだろうか。

(でも、もう当麻には会えない)

昨日、拒絶されたショックは大きい。
今、当麻に会う勇気はとてもない。
また、昨日のように拒絶されたら、わたしはきっともう立ち上がれない。

誰かがこちらにやってくる気配を感じ、わたしは逃げ出すように駆け出してその場を離れていた。

(ほんと、こっちの世界じゃここからは走り去ってばっかりだわ)

夢の中の世界じゃいつも始まりの舞台となる場所なのに、なんでなんだろう。


とりあえずここまでです。

どうやって終わらせればいいんだろ、これ。


ちょっとだけ投下します、


夜、黒子が話しかけてくる。

「お姉さま、体調はいかがですか?」

「んー、まだちょっとね。本調子じゃないかな」

「それは、体の調子ですの?それとも・・・・・・」

黒子が言葉を濁す。勘のいい子だから何かを感じ取っているんだろう。

「今日はちゃんと一日部屋で休んでらっしゃいましたか?」
「寝てらっしゃらないのでしょう?目の下にクマができて、とてもやつれる様子ですが。」

「心配しないで。すぐ元に戻ると思うから。」

わたしは笑ってそう言った。上手く笑えていただろうか。

「そうですわね。」

黒子は、目を伏せてそう言うと、ベランダに出て行った。
携帯で誰かと話している。

「お姉さま、わたくしこれからちょっと出かけます。」
「夜は遅くなりますが、ご心配なさらずに」

風紀委員の仕事が入ったのだろうか、そういうと黒子は外に出て行った。


一人で部屋に残ったわたしは、また、ベッドの上で膝を抱えて震えていた。

眠るのが怖い。
夢の中でまで当麻に拒絶されるのが怖い。
それは、自分の存在が否定されるのと同じことだ。

(もうずっと眠らない)

そう思っていた。


しかし、昨日の夜も寝ていない上に、今日は昼間にあちこち歩き回った。
さすがに体力の限界だ。

いつまでも眠らないなんてことが出来ないことはわかっている。

わたしは、覚悟を決めて眠ることにした。
夢見装置をつけて。

なぜか、目から涙が零れ落ちてきた。


2レスだけですが、ここまでということで。

この先も書いてはいるんですが、もうちょっと見直してから投下したいと思います。


そろそろ投下します。
またちょっと強引な展開になりますが、今日で完結までいけそうです。


気がつくと、わたしは鉄橋の上にいた。

(ここは、妹達の時、アイツに見つけられた場所よね)

わたしは、絶望すると、ここに来るくせがあるのかもしれない。

(あの時、アイツが来なかったらわたしは死んでたのよね)
(もう、わたしにとってアイツはいないようなものなのに)
(なんでわたしは生きてるんだっけ?)

夢見装置を持っていないことに気付く。
アイツに会った時に鞄から出したままだった。
きっとアイツから、黒子に渡って、風紀委員(ジャッジメント)か警備員(アンチスキル)がちゃんと処分してくれるだろう。

(もういらないわよね。夢見る必用も無いし)


「どうしてこんな事になっちゃったのかなぁ?」

わたしはただアイツといたかっただけなのに。

「たすけてよ……」


その時、向うから足音が聞こえてきた。

わたしは恐る恐るその足音のする方を向く。

「何やってんだよ、お前」

やはりそこにはアイツがいた。

「アンタに言われる筋合いなんてないんだけど」

(何よ、こっちのほうがよっぽど夢みたいな展開じゃない)

まるで三文芝居だ。しかし、そうとなったらもう少し続けてみよう。


「わたしが自分の作った機械で、夢と現実の区別もつかなくなった哀れな女だってわかってるんでしょ」
「で、アンタはわたしが心配だと思ったの?それとも許せないと思ったの?」

「心配したに決まってんだろ!」

即答だった。
あの時よりも力強い声で。

心の底から何かが湧き上がってくる。

しかし、所詮は三文芝居だ、こんな茶番をずっと続けるわけにはいかない。


「憶えてたの?このやりとり」
「でも、もういいのよ。泣き叫ぶのを聞いて駆けつけてくれるヒーローにならなくても」


「いや、そういうわけにはいかねぇんだ」
「『都合のいいヒーローになって、御坂美琴とその周りの世界を守る』 名前も知らないキザ野郎との約束なんだ」

ああ、あの恋人ごっこの時のやつだ。

「海原光貴 との約束なんて、忘れちゃいなさいよ」
「そんなこと、もうどうでもいいでしょ」


「はは、そうだな」

アイツが答える。

「俺も実はそいつとの約束を守る為に美琴を追いかけてきたってわけじゃないんだ」

「だから、もう無理に美琴って呼ばなくてもいいっつってんでしょ!」

声が自然と大きくなる。
お情けで彼氏のふりをしてくれなくてもいい。
自分が惨めになるだけだ。

「恋人ごっこは、とっくに終わったのよ」
「もうお情けでわたしの妄想に付き合ってくれなくてもいいんだよ」


「勝手なこと言ってんじゃねぇよ!」

今度はアイツが大声を出す。


「恋人ごっこは終わっただって?そんなことやってたつもりはねえよ」
「お情けで妄想に付き合ってたつもりもねぇ」

「お前のことを美琴って呼びたいからそう呼んでんだ」

言ってることの意味がしばし理解できなかった。

「確かに最初は、白井に相談されて、協力するってとこから始まったよ」
「俺もお前の様子がおかしいと思ってたしな」
「でもなぁ、俺のことを一途に思ってくれるお前にときめいちまったんだよ」
「途中からは、俺の意思で、お前の彼氏をやってたんだよ」

「いいか、何回も言わないからよく聞け」

「俺はお前が好きだ」

「美琴!この現実の世界で、俺の彼女になってくれ!」


わたしの幻想は、このときにぶち殺されたのかも知れない。

夢の世界なんてただの幻想だ。

  夢の世界のアイツは何度もわたしに「好きだ」って言ってくれた。
  そのたびにわたしはどきどきして幸せな気分になった。

  と思っていた。

あの時の気分を「幸せな気分」と言うのなら、今のわたしの気分は何と表現すればいいんだろう。

息が詰まってしまって、
心臓が止まっちゃうんじゃないかとさえ思えて、
すごく苦しいこの感覚。

でも、全身がうれしさに包まれている。

「あ、あ、」

何か言いたいのに、
言いたいことはいっぱいあるはずなのに、

声が出ない。


わたしのその様子をみて、アイツの顔に不安そうな影がよぎる。

「あ、美琴、その、さ」
「いや、その、勢いで言っちまったけど、あの、さ、本気なんだ」
「え、っと、さ」

急にアイツの言葉の歯切れが悪くなった。

(まさかコイツ、わたしが固まっていることを誤解してる?)

(ここで、「ちょっと考えさせて」とかって言うのも面白いかもしれないわね)
(そしたらこっちが優位に立てるかも)
(ま、そこまでしないにしても、「仕方ないわねぇ、アンタがそこまで言うなら」って感じかしら)

そんなことを考えていたら、やっと声が出た。



「わたしも、大好きだよ!」


もう夢なんかいらない。
現実のアイツがそばにいるから。

わたしは駆け寄って、抱きついた。

「ねえ」

わたしは話しかける。

「なんだ?」

「キスして」

「な、な、いきなりなんてことをいうんでせうか、この子は!」

アイツがあせっている。

「何よ、アンタだって興味が無いわけじゃないでしょうよ」

「いや、でも、ですね、美琴さん」

「いいから!」

わたしは目を瞑って、口を少し突き出す。


「じゃ、じゃあ」
「いくぞ」

しばらくして、当麻の唇がわたしの唇に触れてくる感覚がした。
ああ、これが現実のキスなんだ。

夢の世界であれほどしたキスとは全然違う。
夢の世界のアイツの、手馴れた感じのキスじゃない、何か不器用なキス。
でも、本物を知ってしまうと、もう偽物なんかに惑わされない。

ただ、唇が少し触れてるだけなのに。
客観的に説明すると、「ちょっと柔らかくて暖かいものが唇に触れている」 そんなもんなのに。
体が震えて、涙まで出てきた。

王子様のキスで目が覚めるって、こういうことなんだろう。
夢が夢でしかないことが、はっきりとわかった。
もう、夢の世界になんて行こうと思わない。心の底からそう思った。

わたしの幻想が、完全に息の根を止められた瞬間だった。


「アンタのキス、不器用ね」

唇を話した後、体を離し、軽く涙を拭きながら率直な感想を言った。

「なっ!」
「しかたねぇだろ、キスなんて初めてなんだから!」

アイツが赤くなって怒る。

「ん?」
「美琴、ま、まさか、お前」

「そんなわけないでしょ!」

真っ赤になって反論する。

「でも、お前、今」

「アンタとしかしないわよ!絶対に!」

そう言ってまた抱きついてやった。




とりあえず、話としてはここまでです。
強引な展開で、ばたばたでしたが、とりあえずハッピーエンドということで。


あとで、エピローグみたいなのを投下します。
多分、日が変わる前には。


どうもです。

この終わり方は、構想どおりかといえば、その通りですね。
最初からちゃんとストーリーを考えていたわけじゃないのですが、自分は美琴の味方なので、バッドエンドにするという発想は全く無かったです。

書きたかったのはツンデレの美琴です。
他の人に迫られるときっぱりと拒絶するのに、上条さん相手だと、何だかんだ自分で理由をつけて受け入れてしまうという最初の海原のエピソードですね。

あとは、この手の話ではありがちのオチが頭に浮かんでただけです。


では、これからそのありがちのオチにつながるエピローグを何スレか投下して終わりにします。


こうしてわたしたちは、恋人になった。

夢見装置はもう手元に無いので、あの夢を見ることも無い。
あったとしても使おうとは思わないだろう。
もう夢に頼る必要は無いんだから。

アイツとちゃんと付き合うようになって2週間くらいになるけど、ちゃんと身の丈にあったお付き合いってのをしている。
たまに軽いキスはしてくれるけど、それ以上のことはない。

わたしとしては、以前のあの夢の中の経験もあるし、いつでも覚悟はできてるんだけど。

とは言っても、本当はちょっと怖い気もしている。

あんなに気持ちいいと思っていた夢の中でのキスは、わたしにとって現実のアイツの不器用なキスの足元にも及ばないものだった。

現実にアイツに抱かれたら、わたしはどうなってしまうんだろう?


でも、アイツは、『中学生に手を出したすごい人』にはなれないそうだ。
ぜんっぜん意味がわからない。

あーあ、早く卒業して高校生になりたい。
今から飛び級の試験受けてやろうかしら。

(でも、最近アイツも気が変わってきてる気がするのよね)
(わたしを見る目がちょっと違う気がするもの)
(健康な高校生男子なんだから、当然のことだしね)

わたしだって、健康な思春期の普通の女の子なんだよ?


あ、アイツがやってきた。

アイツと会うときは、いつもこの公園で待ち合わせるようになっている。
ここは思い出がいっぱい詰まった場所だから。

「おう、美琴、お前いつも早くから来てるよな」

「わかってんなら、アンタも早く来なさいよ!」

こんな会話から始まる時間がとても楽しい。

二人でベンチに腰掛けて話をする。

「そういえば、美琴さ」
「何で俺のことアンタって呼ぶように戻ったんだ?」

「え?」

「だって」

わたしは、赤くなって俯く。


「恥ずかしいじゃない」


アイツの目が点になってる。

(あれ?あきれてる?)

「せっかくちゃんと付き合っるわけだから、こっちではアンタって呼ばれることがちょっと寂しいわけですよ、上条さんとしては」

へぇ、コイツこんなこと言うやつだったんだ。


「だからさ」

アイツがわたしの方に寄って来る。

「そろそろさ」

わたしの横にピタっと体をくっつけて、腰に手をまわしてくる。
それから、見たことのない笑顔でわたしに囁いた。


「こっちの世界でもいいんじゃねぇかな、夢の中の世界みたいにさ」


以上。
これで本当におしまいです。

最後まで付き合ってくれてありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月26日 (月) 23:08:56   ID: VGIryLvW

これは引き込まれる
ラストの上条さんのセリフにゾッとした

2 :  SS好きの774さん   2014年09月07日 (日) 22:48:57   ID: -j9MTj-R

このまとめ、70から211の間がとんじゃってる?

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