サーニャ「ダメもとで両親に手紙を送ったら…」 (33)

 
501基地 某日 訓練中



ハイデマリー「ミーナ中佐…お久しぶりです」

ミーナ「あら、ハイデマリー少佐、どうしたのかしら急に」

ハイデマリー「長い休みが取れましたので…旧友に会いたくなりまして」

ミーナ「そう、それでこの基地までわざわざ来たってわけね」

ハイデマリー「はい……もしかして邪魔だったでしょうか」

ミーナ「そんなことないわ、こっちが申し訳ない気分よ、せっかくの休暇なのに騒がしいところでごめんなさい」

 

        <なんだ!ハルトマン!また穿いてないのか!


               いやあ!芳佳ちゃん!どこ触ってるの~!>


   <ああ゛~!虫~~~!シャーリー!そっち行った!捕まえて~!




ハイデマリー「いえ、そんな……」

ミーナ「とにかくせっかく来てくれたんですから、自由にくつろいでくれて構わないわ…」

ハイデマリー「ありがとうございます…」




 
   ~ 訓練後、サーニャの部屋 ~



サーニャ「……?」

ハイデマリー「…サーニャさん……私のこと…わかりますか?」

サーニャ「えっと…もしかしてハイデマリー少佐…?」

ハイデマリー「はい…!覚えていてくれて嬉しいです…!」

サーニャ「実際に会うのは久々ですよね、いつも交信に応じてくれてありがとうございます…」

ハイデマリー「こちらこそ……」

サーニャ「……相変わらず、素敵な人で安心しました…」

ハイデマリー「す、素敵な人って……そんな…//」

サーニャ「とにかく、いろいろ話をしましょう…会える日が来るのを楽しみにしていましたから」

ハイデマリー「…そう…//」

ガチャ…

 
芳佳「サーニャちゃん?」

サーニャ「…芳佳ちゃん」

芳佳「あ、今忙しかったかな」

サーニャ「いえ、大丈夫よ」

ハイデマリー「…こんにちは…カールスラント空軍夜間戦闘航空団、ハイデマリー・W・シュナウファーです、サーニャさんとはナイトウィッチ同士ということで、たまに交信しています…」

芳佳「あ、ええ…はじめまして…えっと…」

サーニャ「この子は宮藤芳佳ちゃん…同じ501の仲間で、私の友達…」

ハイデマリー「この子がミヤフジさん…」

芳佳「…は、はい…」

サーニャ「芳佳ちゃん、少しの間501基地に滞在するらしいわ」

芳佳「そうなんですか!よろしくお願いします!といっても…これといったおもてなしは出来ませんけど…」

 
ハイデマリー「いえ、気にしないで下さい…こうしてサーニャさんに会えただけでも、十分嬉しいですから」

芳佳「そうですか」

サーニャ「それで芳佳ちゃん、要件は?」

芳佳「あ、晩ご飯の用意が出来たから、いつでも食堂に来ていいよ。ハイデマリーさんもよろしければ是非!」

ハイデマリー「そんな…!」

芳佳「気にしないでいいですよ。うちには無駄に大食いな人がたくさんいますから、いつも多めに料理をつくるんです」

ハイデマリー「でも…」

芳佳「あ、せっかくだから、この機会に自己紹介したらどうですか!?きっと皆と仲良くなれますよ!」

ハイデマリー「わかりました…」




 
    ~ 食堂 ~


エーリカ「いや~まさかハイデマリーが501基地に来るとはね~」

バルク「ハルトマン、食事中くらいは黙って食べられないのか、ポロポロと口から落ちて汚いぞ」

エーリカ「だって久しぶりに会えたんだからさー、すこしはうるさくたって仕方ないよねー」

ハイデマリー「は、はい…」

バルク「見ろハルトマン、ハイデマリーのこの上品な食べ方を」

ハイデマリー「上品て…そんなものじゃ…」

サーニャ「皆さんとはお知り合いなんでしょうか…?」

ハイデマリー「はい、カールスラントで一緒に訓練しましたから…私はナイトウィッチなので会う機会は多くなかったんですけど…」

サーニャ「でも、知り合いが多いってだけで憧れます」

ハイデマリー「…//」

 
エイラ「おいミヤフジ」ヒソヒソ

芳佳「どうしたんですかエイラさん」ヒソヒソ

エイラ「どうしてあいつはサーニャとあんなに仲がいいんだ」ヒソヒソ

芳佳「夜間哨戒中によく交信してコンタクトをとっていたみたいです」ヒソヒソ

エイラ「おいおい……なんだこの気持ちは…」ヒソヒソ

芳佳「妬いてるんですか…?」ヒソヒソ

エイラ「ななっ!! そっ…そんなことないぞ!!!」

    ガタッ!





サーニャ「ひっ!」ビク

ハイデマリー「何!?」ビク

エイラ「あっ……」

ペリーヌ「エイラさん、少し落ち着いて食べなさいな」

 
美緒「行儀が悪いぞエイラ」

エイラ「ご…ごめんなさい」シュン

芳佳「やっぱりサーニャさんが自分以外の人と仲良く会話してるのが気に喰わないんですね」

エイラ「み、ミヤフジぃ……」

芳佳「エイラさん!大丈夫です!私はエイラさんの味方ですから!」

エイラ「……ミヤフジ、どうしたらサーニャを取り戻せるんだ…?」

芳佳「一緒に考えましょう」

サーニャ「ハイデマリーさん…食事が終わったら私の部屋に来て下さい…」

ハイデマリー「は、はい」

サーニャ「せっかく会えたから、もっと一緒に居たいんです」

ハイデマリー「…//」

エイラ「うぁぁん…あんな事言ってるぅうう」シュン





 
  ~ そしてサーニャの部屋 ~


サーニャ「ハイデマリーさん、一つお願い事があるんですけど…」

ハイデマリー「何でしょうか…」

サーニャ「……私は、オラーシャ出身で…とてもネウロイの被害が大きい地域だったってことはいつか交信して話しましたよね…」

ハイデマリー「はい…」

サーニャ「入隊してから、両親には全く会ってないんです…ネウロイから逃れるために国を捨て…今どこで暮らしているかもわからない…」

ハイデマリー「……」

サーニャ「……そんな両親に…手紙を書いてみたんです…」

ハイデマリー「…送ったんですか?」

サーニャ「いえ…正直、これが両親のもとに届くのはありえないですから……ずっと引き出しにしまっています」

 
ハイデマリー「そうなの……」

サーニャ「…ずっと会いたいって願ってました…オラーシャで、家族と静かに暮らすのが私の夢なんです…」

ハイデマリー「……かわいそう」ウルッ

サーニャ「それで…この住所も書いてない手紙…やっぱり捨てることにしました」

ハイデマリー「…え!?」

サーニャ「はい…やっぱり、届くかわからない手紙なんて、なんて書けばいいかわかりません」

ハイデマリー「……なんで手紙を書こうと思ったんでしょうか…?」

サーニャ「…ほんの小さな期待です」

ハイデマリー「……」

サーニャ「私が成長するに連れて…両親の顔、声、ぬくもり、そういうのがどんどん忘れていく気がして…」

ハイデマリー「……」

サーニャ「……実際にハイデマリーさんに会ってみたら、なんか手紙書いたことが馬鹿らしく感じちゃって……なんだかハイデマリーさんと会話していると、優しかった両親を思い出すんです」

ハイデマリー「…サーニャさん…もう一度、書きなおしてみたらどうでしょうか」

 
サーニャ「…?」

ハイデマリー「純粋な気持ちを、ありのまま手紙に書くんです…そして、ダメもとでもいいから送りましょう」

サーニャ「…でも!」

ハイデマリー「……大丈夫、きっと届くはずですよ、根拠はありませんが、大切なのは『伝えたい』という気持ちです」

サーニャ「わかりました…」





    


      ガチャ…

ハイデマリー「ひっ!」

エイラ「捕まえたぞ~」

芳佳「ハイデマリーさん!あなたは罪深い人です!」

ハイデマリー「な、何故!?」

 
エイラ「正直に言うんだな。あの部屋でどんな会話をしていた?」

芳佳「サーニャちゃんとはいったいどういうご関係で…!」

ハイデマリー「ちょっとはなして下さい!私は…別に…」

エイラ「サーニャに変なこと吹き込んでないだろうナ」

芳佳「サーニャちゃんはエイラさんと一緒じゃなきゃだめなんです!」

ハイデマリー「私はそんな…!ただ、サーニャさんと会話がしたかっただけで…」

芳佳「本当ですか!?」

ハイデマリー「ほっ…本当です!」

エイラ「…仕方ないな、帰っていいぞ」

ハイデマリー「………」ダッ



    ガチャ…

 
エイラ「サーニャ、夜間哨戒までの間、ちょっとタロット占いを…」

サーニャ「ひっぐ……ううっ……」シクシク

エイラ「サーニャ!!!!!」

芳佳「どうしたの!サーニャちゃん!」

サーニャ「……なんでも……ない……」シクシク

エイラ「はいでまりいいいいいい!!!!! よくも私のサーニャをおおおおおお!!!!!!」ダッ!

芳佳「エイラさん!」

サーニャ「違うの、エイラ…!」

芳佳「どうしたのサーニャちゃん!どうして泣いてるの!?」

サーニャ「……これ…」

芳佳「なにこれ…手紙?」

サーニャ「どうしてもうまく書けないの…!」

 
芳佳「誰への手紙?」

サーニャ「私の親…」

芳佳「え!両親の住所が分かったの!?」

サーニャ「ううん…わからない……」

芳佳「……」

サーニャ「ハイデマリーさんがせっかく書き方を教えてくれたのに…」

芳佳「……サーニャちゃん…」

サーニャ「ううっ……」シクシク

芳佳「なるほど、居場所がわからない両親に手紙を書いていたんだね、私も応援するよ、サーニャちゃんを」

サーニャ「芳佳ちゃん…」

芳佳「絶対届くって信じてみよう、絶対読んでくれるし、返事も来る…私も似たような経験あるから…」

サーニャ「………?」

 
芳佳「今両親に伝えたいことをそのまま、指に任せるだけ。簡単だよ」

サーニャ「……わかったわ」

芳佳「そうだ!今日は私が夜間哨戒変わってあげるよ!」

サーニャ「そんな…!」

芳佳「気にしないで、ミーナ中佐には私から説明しとくから」



ダダダダダ…




エイラ「うおおおおおおお!はいでまりいいいいいいい!」

ハイデマリー「いやあああ!何するんですかぁぁ!!!!!」

エイラ「観念しろおおお!」

  ダダダダダ…

 
芳佳「なにしてるんだろうあの2人」



ダダダダダダ

エイラ「うおおおおっ!なんだこの胸は!!!!」モミモミ

ハイデマリー「やめてえええ!許してええええぇ!」

エイラ「ちょ、ちょっと静かにするんだな」モミモミ

ハイデマリー「ひいいいっ!」

エイラ「おぉ…意外とあるじゃないか…これでサーニャをモノしていたんだな」モミモミ

ハイデマリー「ちがいます!私はっ……ッ…!」

エイラ「ほらほらぁ~おとなしくしないとこうだぞ~」モミモミ

ハイデマリー「いやっ!いやあっ…!……アッ……」



芳佳「…エイラさんにもあとで詳しく説明しとくよ…」

サーニャ「おねがい…」

 
  ~ そんでもって次の日 ~



芳佳「ふぁぁぁあ……眠い……」

サーニャ「ありがとう芳佳ちゃん…」

芳佳「おはよーサーニャちゃん……手紙書けたー?」

サーニャ「うん…」

芳佳「それはよかった……ふあああぁ…」

サーニャ「ごめんなさい…夜間哨戒任せてしまって…」

芳佳「気にしなくていいよぉー………」

サーニャ「それじゃあ私、一旦部屋に戻るわ」

芳佳「うん……ふぁぁ…」

 
エイラ「……オハヨウ」グッタリ

芳佳「おはよう……ってどうしたんですかエイラさん!顔が死んでます!」

エイラ「ミーナ中佐に……やられた」

芳佳「エイラさん………」

エイラ「どういうわけか、ミーナ中佐にこっぴどく叱られてしまって…」

芳佳「…あぁ~」

エイラ「ああ、ブルーだ、なにもやる気が無い、サーニャはずっと落ち込んだままだし…どうすればいいんだ私は」

芳佳「エイラさん!私にいい案があります!」

エイラ「本当か!」

芳佳「サーニャちゃんが落ち込んでいる理由、わかったんです!」

エイラ「何!でかしたぞミヤフジ!」

芳佳「サーニャさんを元気にする方法…コレしかありません」ヒソヒソ…




 
サーニャ「はい、芳佳ちゃん、これが手紙よ…」

芳佳「ありがとう、しっかり送っとくね!」

サーニャ「私ね…書いてる途中…なんて言ったらいいかわからないけど…希望が湧いてきたの」

芳佳「サーニャちゃん…!」

サーニャ「本当に親がこの手紙を読んでくれるんじゃないかって…返事が来るんじゃないかって…」

芳佳「大丈夫!絶対届くよ!」

サーニャ「本当に…ありがとう…」

-------

 
ハイデマリー「サーニャさん…?」

サーニャ「あっ…ハイデマリー少佐」

ハイデマリー「手紙は…?」

サーニャ「今芳佳ちゃんに渡しました…」

ハイデマリー「そう、よかった…ちゃんと書けたんですね」

サーニャ「……本当に返事が来るんでしょうか…」

ハイデマリー「なんとも言えません…でも、ご両親はいつだってサーニャさんを想っていますよ」

サーニャ「…はい」

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