マミ「後悔なんてあるわけない」(268)


お母さんが私の髪をいじっている。

母「ほらできたわよ」

クルクルに螺旋を描いた髪が顔の両脇に垂れ下がった。

マミ「なんか邪魔~」

母「あらかわいいじゃない」

マミ「嫌だ~戻して~」

父「準備できたか?そろそろ行くぞ」


今日は家族でお出かけの日だった。

お父さんの車で小学生のヴァイオリン演奏会に行く。

私は出かけるのが好きじゃなかった。

こんな日にお母さんは決まって私を着せ替え人形にしたがる。

私はひらひらの服も、ぐるぐるに巻いた髪も嫌だった。

外出するときにだけ気取った風なお父さんも嫌いだ。

母「あなたと同い年の子もヴァイオリンを弾くのよ」

助手席のお母さんが、リアシートの私に話しかけた。

父「マミも何か始めてみるか?」

マミ「……何もしない」


私には何も興味のあるものなんてなかった。

お父さんは私が欲しいものは何でも買ってくれる。

人形もおもちゃも、他の小学生たちが羨むほどに持っていた。

しかし何一つとして私の心を掴むものはなかった。

父「家にいても何もしないじゃないか。何かやってみたら楽しいぞ」

母「あなた何か興味のあることはないの?」

マミ「……」

こうして演奏会に連れて行かれるのも、私に何かさせようというお父さんとお母さんの魂胆があるからだった。

私はそうして人からものを突き付けられるほどに、物事への関心を遠ざけていくのだった。

もし誰かに親のことが好きかと聞かれたら、この時の私は間違いなく嫌いだと答えただろう。

いつも私に干渉してくるうっとおしい親だ。


~~~

そうは言っても、そのお父さんとお母さんが急にいなくなってしまったら?

二人とも急にどこか遠くに行ってしまい、たった一人で残されてしまったらどうだろうか?

かえって清々とするだろうか?

どうなの巴マミ――今どんな気持ち?


自分自身に問いかけてもすぐには分からなかった。

お父さんとお母さんは死んだ。


車でヴァイオリンの演奏会に向かう途中、トラックと衝突事故を起こし、二人とも屋根とシートの間に挟まれてしまった。

グシャグシャになった車の中で私だけが奇跡的に助かった。

本当に奇跡だった。

生死の境で白い妖精が舞い降り、私にやさしい声で囁いたのだ。

QB「君の願い事を言ってごらん」

願いは本当に叶った。

しかし、奇跡が起こったのは私だけだった。

お父さんもお母さんも、フロントシートの上で押しつぶされたままだった。

私は願い事を誤ったのだ。


もう一度願い事を叫んでも、妖精は何もしてくれなかった。

 嫌だ!

 お父さん!お母さん!死んじゃ嫌!

マミ「助けて!お父さんとお母さんを助けてよ!」

車から引きずり出してくれた救助隊員の腕の中で、私は叫んでいた。

隊員「大丈夫だから!君を助けたらすぐにお父さんとお母さんを助けるからね!」

マミ「嫌ぁあ!助けてよ!お父さんとお母さんを助けてぇ!」


私は気が付いた。

今私は悲しい気持ちになっている。

お父さんもお母さんもいなくなってしまうのは嫌だ。

私はお父さんもお母さんも大好きだった。

でももう何もかも遅すぎる!

ようやく気持ちの整理が付いた私は、事故後の手当てを受けた病院の廊下で大声を上げて泣いた。

人前で臆面もなく泣き叫んだのは小学校に上がってから初めてのことだった。

すぐに年配の看護婦が駆け寄ってきて私を抱きしめてくれた。

私はその大きな体の中で思い切り泣いた。

泣いて、泣いて、もう泣き止むことはないという覚悟で泣き続けた。


~~~

私は施設に入れられた。

そこには私と同じように親のいない子供が集められていた。

保母たちは、献身的に子供たちの世話をし、自らを「お母さん」と呼ぶように促した。

しかし私は呼ばなかった。

少女1「あんた誰?」

少女2「なんなのそのツラ?」

マミ「……」

少女1「黙ってちゃわかんねぇだろっ!」

保母「ほらほら、あつこちゃん、サリーちゃん、マミちゃんと仲良くしないと駄目よ」

アッコ「ちぇっ、あっち行こうサリー」

サリー「うん、こいつつまんないもん」

※作者注
この物語は創作です。
登場する人物名は実在の魔法少女とは関係ありません。


私は誰とも馴染むことはできなかった。

QB「やあ、巴マミ。どうやらだいぶ気持ちの整理もついたみたいだね」

マミ「あっ!あのときの!」

QB「覚えていてくれたかい?」

マミ「お願い!お父さんとお母さんを生き返らせて!」

QB「悪いけど、僕の力ではそれはできない」

マミ「なんでよ!私のときみたいに生き返らせてよ!私こんな所もう嫌!」

モブ1「何あれー?」

モブ2「もしかして見えないお友達?」

マミ「ハッ」キョロキョロ

マミ「……外に、出ましょう」


~~~

QB「仕方ないよ大抵の人には僕の姿は見えていない」

マミ「どうして私にだけ……?」

QB「君は選ばれし者だからさ」

マミ「私が選ばれし者?」

QB「そうさ。選ばれし者には二つのものが与えられる」

QB「一つは一回の願い事」

QB「君はその願い事で自分自身を救った。実にラッキーだよ」

QB「二つ目はこれだ」

マミ「何これ?」

QB「ソウルジェムっていうんだ」

QB「それを手にした者は魔女と戦う使命を課される」


マミ「私そんなことしたくない……」

QB「そう言わないでおくれよ。だって君はもう魔法少女なんだから!」

マミ「魔法少女?」

アッコ「ちょっとあんた!」

マミ「!?」クルッ

アッコ「何一人で喋ってんの?」

サリー「きっもちわる~い」

マミ「……別に」

アッコ「別にって何?それじゃ分かんないでしょ」

サリー「こんなやつ放っておこうよ、アッコ」

アッコ「そうね。気持ち悪いのがこっちにまで移っちゃうもん」

マミ「……」


二人の少女は悪口だけ残して去っていった。

二人とも嫌な子供だったが、アッコの方は目つきが鋭く特に攻撃的に見えた。

去り際にサリーがこちらを振り向いてにらみ付けて来た。

そして何かを喋っていたが、私がいる場所では聞き取れなかった。

マミ「あの人たち嫌い……」

QB「あの二人ともきっといつか仲良くなれる日が来るかもしれないよ」

マミ「そんなわけない」

QB(サリーと言ったかな。今のあの子の反応はもしかして……)


~~~

その夜

QB「マミ、起きてマミ!」

マミ「う~ん」ムニャムニャ

QB「マミ大変なんだ!起きてくれ!」

マミ「もう、なんなの妖精さん?」

QB「魔女が出たんだ!急がないと!」

マミ「え?魔女?何言ってるの?」

QB「とにかく僕についてきて!」

マミ「え、ちょっと待って!」

 タッタッタッ……

サリー「……」

サリー(あの子たち、こんな時間にどこへ行くつもりなの?)

サリー(まあいいか、あんなやつらのことなんか)


~~~

私はまだ慣れていない施設の建物の中を連れ回された。

それでもその「目的のもの」に近づくにつれて、その光景がおかしなものになっていくことに気が付いた。

マミ「待って!待ってよ!」

QB「どうしたんだい?」

マミ「どうしたって、ここおかしいわ!」

QB「気づいたかい?ここはもう魔女の結界の中だ」

マミ「魔女の結界?さっきから言っていることが分からない!」

QB「巴マミ、言ったよね。君はもう魔法少女なんだよ」

マミ「何よ魔法少女って!いいからここから離れたい!」

QB「戦いの運命を受け入れるんだ、巴マミ。これが願い事をした者の使命なんだよ」

 ゴゴゴゴッ……


QB「マミ!魔女が現れた!」

私が顔を上げると、そこにはこの世のものとは思えないようなグロテスクな怪物が聳え立っていた。

私は悲鳴を上げ、そしてその怪物に背中を向けて逃げ出した。

QB「どこに行くんだマミ!?」

マミ「いやぁ!」

出口は見つからなかった。

そこらじゅうに壊れた人形が散乱し、それら一つ一つの目が自分を向いていた。

私は目を閉じ、ドアを探して走り回った。

QB「マミ落ち着いて!目を開けるんだ!」


できなかった。

あんな怪物と戦うなんて私にはできっこない。

どうして私ばっかりがこんな酷い目に遭うの?

私がいい子にしていなかったから?

私が期待通りの子供にならなかったから?

だからお父さんもお母さんも取り上げられちゃったの?

QB「マミ!変身するんだ!」

QB「自分の力を信じて!解き放て!」

QB「マミ!君ならできるんだよ!」

 ……無理っ!

マミ「いやぁああああ!!助けてぇ!!」


~~~

朝を迎えた。

子供たちはまだ眠っている。

職員の一部が鶏の餌やりをするために、外に出ていた。

ベッドが並んだ部屋の窓から、私はその様子を眺めていた。

QB「大丈夫かい?」

マミ「……」

あの後私はひたすら叫んで、逃げて、命乞いをした。

あの妖精は私を戦わせようとしていたけれど、結局は私の手を引っ張って結界の出口まで導いてくれた。

QB「恥ずかしいことじゃないよ。まだ初めてだし仕方ない」

マミ「昨日の怪物は消えちゃったの?」

QB「今は隠れているだけさ。また出てくるよ」

マミ「……また戦えって言うの?」


QB「いつか君も自分の運命を受け入れなきゃいけない」

QB「急かすわけじゃないけど、それは早ければ早いほどいい。君にとってもね」

マミ「私……無理……」

QB「今は少し休んだ方がいい」

その日は職員たちの動きが少し騒がしかった。

大人たちの青ざめた表情を見て、子供たちもただならぬ事体に気づき始めていた。

アッコ「みんなどうしたってのよ一体?何かあったの?」

サリー「なんか怖いよ、アッコ」

アッコ「あたしに付いてなさい、サリー」

サリー「うん」ギュッ

マミ(あの二人、本当に仲がいいのね……)

マミ(私も仲のいい友達がいたらなぁ……)

マミ(それにしても、本当に何の騒ぎなのかしら?)


その時、年長組の少年たちが興奮した様子で、子供たちが集まる部屋に飛び込んできた。

モブ3「○○のやつが自殺したらしいぞ!」

モブ4「マジだよ!時計塔から飛び降りたんだって!」

その瞬間部屋の中が騒然となった。

 エーマジデー?

 シンジランナーイ

マミ「……」

マミ「ねえ、これってまさか、昨日のことと関係あるの?」

QB「魔女は人を食い物にしている」

QB「人を悪魔の道に導き、人間の絶望の感情で空腹を満たす」

QB「魔女の口付けを受けた者は欲も希望も失って、人を傷つけ、また自分自身を傷つける」

QB「その結果が今回のような悲劇を招くこともあるんだよ」

マミ「……」

マミ「ちょっと……外に出て話しましょう」


~~~

庭の木の下

QB「……泣いているのかい?」

QB「マミ、君が責任を感じることはない」

QB「これは世界中でいつも起こっていることなんだよ」

QB「多くの人間が希望に生き、そして絶望の中死んでいく」

QB「昨日の夜命を絶った少年もその一人でしかない」

QB「でもね、マミ」

QB「そんな可愛そうな人々を一人でも救いたいと、そう願うんだったら」

QB「君にはもうその力が備わっている」


私は腕で覆っていた顔を上げた。

白い妖精はやさしく私を見つめていた。

マミ「あなたの名前は?」

QB「……そうか、まだ言っていなかったね」

QB「僕の名前はキュウべぇ」

QB「魔法少女として頑張る気になってくれたかい?」

マミ「ねえ、キュウべぇ。私にもできることがあるのかな?」

QB「もちろんさ。魔法少女は夢と希望を叶える。その気になれば奇跡だって起こせるよ」


~~~

その夜、私はキュウべぇと共に再び魔女の結界へと足を踏み入れた。

怖かった。

それでも私はもう一度挑戦したかった。

昨日死んだ少年はもちろん全く面識のない人物だ。

それでも私の心にはその少年と心通じる部分があった。

両親と離れ離れになり、この施設に一人で入れられた彼の心中がどんなものだったのか。

そして誰にも気づいてもらえずに死んでいくことがどれだけ辛かったのか。

それが私の心を締め付けるほどに共感できた。

QB「魔女の部屋だよ」

マミ「……ええ、いいわ」

 ギィィィ……

ごめん間違えた。>>52の前にこっちだった

マミ「私ずっと何もなかったの」

マミ「自分のやりたいことも、夢も」

マミ「でももし……」

マミ「人の夢を叶えることができたら――ううん、人の夢と希望を守ることができたら」

マミ「それを私のやりたいことにしても、いいのかな?」

QB「もちろんだよ巴マミ」

マミ「……私もう一回頑張ってみる!」

QB「君ならそう言ってくれると思ったよ!ありがとうマミ!」

マミ「……」

マミ「テヘヘ///」


魔女「ゴゴゴゴッ」

私は初めてはっきりとその魔女の姿を自分の目の中に捉えた。

巨大な裸の人間だ。

いや、それは球体関節の付いた人形だった。

体中に傷が付いた、壊れかけの人形が、人間離れした歪な動きで私を出迎えた。

マミ「……あれが魔女……」

QB「見て、マミ!女の子が!」

一人の少女が生気を失った顔で結界の中の空中階段を登っていた。

マミ「あれは……アッコさん!?」

初日から私に因縁を付けてきたアッコだった。

魔女の口付けを受けた彼女は、今まさに昨日の少年と同じ末路を辿ろうとしていた。

コンビニ行ってくる


QB「どうするマミ?」

マミ「どうするって……」

QB「あの子は君をいじめてきた子だよ。それでも助けるかい?」

マミ「え……」

 何を迷っているの巴マミ!

マミ「当然よ!」

QB「君ならそう言うと思ったよ」

QB「さあ、ソウルジェムを握って、願うんだ!」

QB「人々の夢と希望を!絶望からの救済を!」

私は自分のソウルジェムを胸に握り締めた。

                                     __
                              -‐ニ ┤
                       _  -‐ ´ /   }
                 __ /´        `ヽ、  j
             _ -‐二 ─ァ         (:.r:.) ヽノ

            く  ̄   /   (:.r:.)          ヽ\
                  \  / /         、_,    } ヽ        ぼくと契約して
                   ヽ/   {       ー´       ノ  ヽ
               /   ハ               イ     ヽ
               ,′   | ゝ           / l     ヽ_┐   VIP列島民になってよ
          _    l    ├─`ー ┬-    l´   l     ヽ //
         \ヽミヽ/     !     l        !    l     /ヘ
   /⌒     ヽ\〃ミヽ、 j     ,'      l\  ∧_ // ゚ \
  /  (       `ノ    \、    l       \/レ-< 、 ゚、_ _ )
 /   \     /o      ノヽ\  ハ  i     ヾ、:..ヽ \゚`ヽ、  \
 {    r‐` ̄ / o  o / `ー┘ { {  |       `"ヽ `ヽ、_)`ー--'
 、    ゝ-/   /  /         ! 丶 {          ヽ
  \    'ー─/__ /       / l  ∨    /       }
    \     ´      _ -‐ ´    l  {   ∧       ノ
     ` ー─--  -─ ´       ((l,  H   ト、ゝ─ ´ /
                        〉 ハ / (r  , '´
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マミ「私はみんなの夢を守りたい」

マミ「これ以上誰にも悲しい思いをさせたくない」

マミ「アッコさん、あなたも辛いのよね」

マミ「私はあなたを救いたい!」

 パァァアア!

目の前が光に包まれた。

マミ「わわっ、何これ!」

QB「大丈夫だよマミ、ソウルジェムの光に身を任せて」

私は怖くなって咄嗟に目をつぶった。

目を閉じていても、ソウルジェムの暖かい光を全身に感じ取ることができた。

その光はまるで母親の胎内に戻ったかのような心地よさを与えてくれた。


QB「さあ、もう大丈夫だよ。目を開けてごらん」

マミ「……」

マミ「わあ、何これ?すごい服!」

QB「気に入ったかい?」

マミ「う~ん……ちょっと、恥ずかしいかも……」

QB「大抵の子は気に入ってくれるんだけどなぁ」

QB「さあ、それよりマミ!魔女を倒そう!」

マミ「ど、どうすればいいの?」

QB「武器を出すんだ」

マミ「武器?」

QB「きっとその帽子の中に入ってるんじゃないかな」

マミ「このちっちゃい帽子に何が入ってるの?」ガサゴソ


マミ「わっ!こんなに大きい銃が!」

QB「それが君の武器のマスケット銃だ」

マミ「どうしよう、こんなの使い方わかんない!」

QB「大丈夫、自分の魔法を信じて」

QB「銃を相手に向けるんだ」

マミ「こ、こう?」フルフル

QB「力を抜いて。撃ち方は自然と分かるはずだよ」

マミ「分かったわ」チャキ

QB「これは技術じゃない。君の心の問題だよ」

QB「さあ、よく狙って」

魔女「ゴボボボボ」

マミ「スゥ……」

マミ「アルティマシュート!!」

 ドキュゥーン!


魔女「ウボォアアアア!」

QB「よし!効いてるぞ!」

マミ「やった!」

魔女「ゴゴゴゴッ!」ギュイイイン

QB「マミ危ない!魔女のパンチが飛んでくるよ!」

マミ「えっ……!」

 バシィイイイン!

マミ「きゃあああ!」ズザァァアアア

QB「マミ!」

マミさんのマスケット銃って、慣れてきてからの後付け魔法じゃなかったっけ?
元々の能力って確かリボンだよね わざとだったらごめんね

>>75
そうだったの!?
そらぁ知らんかった


意識朦朧としている私の体を、人形の手が掴み取った。

遠くでキュウべぇの声が聞こえる。

人形の指は固く動かず、全く身動きが取れなかった。

やっぱり私じゃ駄目だったのかな。

今まで何もしてこなかった私が、いきなり正義の味方になろうなんて無理だったんだ。

魔女「ウゴゴゴゴゴッ」

QB「マミしっかりしろ!」

ごめんなさい、お父さん、お母さん。

私やっぱり駄目な子だ……。

ごめんねキュウべぇ、折角助けてもらったのに役に立てなくて……。

サリー「おい!何やってんだよお前!」


マミ「え?」

QB「ハッ、君は!」

サリー「あいつを倒せるのはお前しかいないんだぞ!」

サリー「アッコを助けられるのはお前しかいないんだよ!」

サリー「諦めるなよ!マミ!」

マミ「サリーさん……」

QB「サリー、君は……君もやはり素質があるようだね」

サリー「お願いだ!アッコを助けてくれ!」

QB「サリー、その願いは君の魂を捧げるに値するものかい?」

サリー「え?」


QB「君にもその力があるんだよ。自分の力で友達を救いたいと思わないかい?」

サリー「私が……」

サリー「アッコ……」グッ

サリー「お願い、私もその魔法少女ってやつにして!」

サリー「私は友達を――アッコを救いたい!」

QB「君の願いはエントロピーを凌駕した」

QB「さあ解き放ってごらん!その新しい力を」

一応>>1の今後に役立つかもしれないので詳細載せとくね(某所から転機)

放送終了後に虚淵によって、マミの願いの本質は「命を繋ぐ」であり、その結果、モノを「結び合わせる」「縛り合わせる」能力に特化してると明かされた。
ゆえに魔力の本体、本来の武器もリボンであり、そのリボンを使う上で戦術的に有効な方法として、銃による遠距離戦法に特化していったのだとか。

またマミが登場する魔法少女の中で一番経験豊富で、本来の魔力以外に自ら身に付けた後付けの魔力をいろいろ持ってるとのこと。
マスケット銃や巨大な銃の召喚、キュゥべえを癒したり、さやかのバットを強化したり、まどかとさやかに展開させていたドーム上のシールド等々がソレに該当すると思われる。


私は人形の手の中で気を失っていた。

目が覚めたとき、私は魔法少女になったサリーの両腕の中だった。

サリー「おい!目ぇ覚ませ!」

マミ「……う~ん、ハッ!サリーさん」

サリー「いつまで寝てんだバカやろう」

マミ「ま、魔女は?」

魔女「ゴゴゴゴッ」

サリー「あの通りピンピンしてる」

マミ「あなた、魔法少女になったのね」

サリー「あんた一人じゃ頼りなさそうだったから」

サリー「でも私たち二人ならあいつをやっつけられるよね」

>>86
THX
全くの新情報だった。
できるだけ公式に沿ったSSを作りたいと思っているので参考になった
今回は書き溜めがあるのでこのまま続行するけど


マミ「私たち二人で……」

サリー「ああ、お互いまだ新米同士だけどさ」

マミ「ええ、そうね!」

サリー「行くぞ!」

マミ「アルティマシュート!」バキュゥウウン

魔女「ウボォアアア!」

マミ「当たった!」

マミ「今よ、サリー!」

サリー「うおりゃあああ!」

サリー「私の剣で真っ二つにしてくれる!」

サリー「サンダースラッシュ!」ザシュゥッッ

魔女「ウギャアアアア!」


マミ「やった!」

QB「やったよ!マミ!サリー!」

サリー「やったあ!」

魔女「シュウウウウ……」

マミ「あ、魔女が消えていく」

サリー「結界も消えていく……」

サリー「そうだ、アッコは?アッコはどこ!」

QB「あそこだよサリー!時計塔の上だ!」

マミ「あんなところに!危ない!」

アッコ「うう……」フラフラ

意識を失ったアッコは時計塔から落下した。


私はそれを受け止めようとした。

しかし一歩早くサリーが動いていた。

サリーは魔法の力で跳躍し、時計台の壁に剣を突き立ててその上に立った。

そして落ちてきたアッコを両腕でキャッチした

サリー「アッコ……よかっ」グラッ

足場にしている剣が壁から抜ける。

サリー「きゃあ!」

 シュルシュルシュル

黄色いリボンがサリーとアッコを空中で受け止めた。

驚いたことにそのリボンは私自身が出したものだった。

自分でも気づかないうちに、魔法の力を使っていたのだ。


リボンは二人をそっと地面に降ろした。

サリー「アッコ!アッコ!」ユサユサ

QB「大丈夫、気絶してるだけだ」

マミ「良かったわ。助けることができたのね」

サリー「良かったあ……」ポロポロ

サリーは友達に抱きついて涙を流した。

私に嫌味を言っていたサリーとは思えなかった。

涙でくしゃくしゃにしたその表情の方がよっぽど綺麗だった。

マミ「やっぱり助けられて良かったわ、キュウべぇ」

QB「それは良かった」

マミ「人の顔は一種類じゃないの」

マミ「嬉しいときもあれば、辛いときもある」

マミ「落ち込むこともあれば、人を攻撃してしまうときもある」

マミ「私には分かるわ」


私はあの事故のことを胸の中で思い出していた。

魔女を倒したことが、この子の大切な人を守ることにつながった。

そのことが私の心を満たしてくれた。

人の幸せを願うことってこんなに素敵だったんだ。

 コロン、

マミ「ん?何か落ちてきたわ」

QB「それはグリーフシード。魔女の卵だよ」

マミ「魔女の卵!?」

QB「大丈夫、その状態なら魔女が出てくることはない。むしろ君たちにとって有益なものだ」

QB「マミ、ソウルジェムを出して。グリーフシードに当ててごらん」

マミ「こうかしら」カチン

マミ「何これ?汚れを吸い取ってる!」シュウウ


QB「魔法を使えばそれだけソウルジェムに穢れが溜まるんだ」

QB「でもグリーフシードを使えば、また元通り綺麗な状態に戻る」

マミ「これって綺麗な状態にしておかないといけないの?」

QB「ソウルジェムは魔力の源だからね」

マミ「そっか、汚れると魔法が使えなくなってしまうのね」

QB「さあ、サリーにも渡しておやり」

マミ「サリー、これを使って。ソウルジェムを綺麗にするのよ」

 シュウウウ……

サリー「マミ……ありがとう。お陰でアッコが死なずに済んだ」

マミ「ううん、アッコさんを守ったのはあなたも同じよ。私一人では倒せなかったわ」

サリー「そ、それは私も同じだ!私一人じゃ……あいつを倒せなかったと思う」

マミ「本当にアッコさんのことを大切に思っているのね」


サリー「うん!アッコは私の大切な……大切な友達なんだっ」

サリー「アッコはね、将来お菓子職人になるんだ!」

サリー「そうしたら、私にいーっぱいアッコの作ったお菓子やケーキを食べさせてくれるって」

サリー「私がアッコの最初のお客さんになるんだって、約束したんだ!」

マミ「自分の夢があるのね。素敵なことだわ」

サリー「私は病気で体も弱いし、ここに来て一人ぼっちだった……」

サリー「そんな私をアッコは守ってくれたんだ」

サリー「ごめんね、マミ」

サリー「アッコは、ああ見えて本当はいい子なんだ」

マミ「ええ、分かるわ」


マミ「サリーさん……」

サリー「え?」

マミ「私もあなたと……アッコさんとお友達になれるかしら?」

サリー「なれる……なれるよ!」

マミ「そう?良かった!」

QB「良かったねマミ!」

QB「それにしてもさっきのは一体なんだい?」

QB「アルティマシュートとか、サンダースラッシュとか」

サリー「なんだ、知らないのか?」

マミ「魔法少女きゅあ☆プリよ」

QB「きゅあ……プリ?」


サリー・マミ「「ねー」」

QB「なんだ、マミにも好きなものがあったんじゃないか」

マミ「だって……この年できゅあプリが好きなんて……」

サリー「ちょっと恥ずかしい……よね」

マミ「そうね……うふふ」

サリー「あははっ」

私とサリーは恥ずかしさを隠すように笑いあった。

私は人と笑い合えることが嬉しかった。

私たちもう友達よね、サリーさん?


~~~

私は爽やかな朝を迎えた。

私とサリーにとっては全く新しい朝だ。

アッコはあの夜のことは覚えていない。

相変わらず私にちょっかいを出してくるけれど、必ずサリーがフォローを入れてくれた。

サリー「マミ、一緒の席でお昼食べない?」

マミ「え?」

アッコ「ちょっと!なんでそんなやつなんか……!」

サリー「ねぇ、いいでしょアッコ。お願い!」

アッコ「ええ……」

珍しく強くお願いしてくるサリーに、アッコは困惑気味だった。


そして睨みつける様な目で私を見た。

マミ「ひっ……」

アッコ「なんなのよ、ったく。いいわ、一緒に食べよう」

サリー「やったぁ!」

マミ「ありがとうアッコさん!」

アッコ「……」

三人でテーブルを囲み、お昼を食べた。

まだアッコと会話するのは少し怖いけど、サリーが間に入って会話の架け橋になってくれた。

アッコ「全く、あんたたちいつの間にそんなに仲良くなったのよ……」


サリー「内緒だもんねーマミ」

マミ「うふふ、そうね。私たちだけの秘密」

アッコ「……」

この時の私はアッコが表情を曇らせていることを特に気にも留めなかった。

突然現れた私に困惑しているのだろうと、そのうち私とも笑い合ってくれるのだろうと軽く考えていた。

この時の私は愚かだったのだ。

自分の幸せに浮かれて、人の不幸が見えなくなっていた。

それに気づくには私は幼すぎた。


~~~

それから私とサリーは共に魔女と戦い、共に力を付けていった。

特にサリーはめきめきと魔法の才能を開花させていった。

銃とリボンを扱う私は、後方から攻撃の第一波と、敵の攻撃を封じる役割を担うようになった。

接近戦を得意とするサリーがいつも敵にとどめを刺していた。

後方の私に攻撃が及びそうになると、サリーはすぐに飛んで駆けつけて私を守ってくれた。

魔法少女としての力の差は歴然としていた。

魔女「ウギャアアア……」

サリー「やったぁ!」

マミ「やったわねサリー!」


サリー「ふぅ、疲れた疲れた」

マミ「ごめんなさいね、サリー。また今日も守ってもらっちゃった」

サリー「え?なんだよ、そんなこと。それはお互い様だろ?」

マミ「いいえ、この所のあなたは本当にすごいわ。魔法の力も私よりもずっと上だし」

マミ「私が足手まといになったこともこれが初めてじゃない……」

サリー「ったく、なんだよ。そんなことで暗い顔して」

サリー「分かった。申し訳ないと思うんだったらさ、今度ピザ奢ってくれよ」

サリー「うちにもピザーラのチラシ来てるでしょ?」

マミ「でも、あれは頼んじゃ駄目って……」

サリー「ガクッ、あんたはつくづく真面目だなぁ」


マミ「外出のときにハンバーガーくらいなら……」

サリー「チーズバーガーな」

マミ「え?」

サリー「チーズバーガー奢ってくれたら、今日のことは全部チャラだ」

サリー「それでいいよな?」

マミ「それでいいの?」

サリー「いいって言ってんだろ!」

マミ「うん……ありがとう!」


~~~

サリー「マミ~、お昼食べよう!」

マミ「ええ、サリー」

アッコ「……」

マミ「ほら、アッコさんも座って?」

アッコ「……私はいい」

マミ「え?」

サリー「アッコ、どうしたの?」

アッコ「私はいい!」ダッ

サリー「ああ、アッコ!」


マミ「アッコさん!」

サリー「行っちゃった……」

マミ「サリー、どうする?」

サリー「……」

マミ「サリー!追いかけた方が――」

サリー「ううん、アッコなら大丈夫だよ」

サリー「今日は機嫌が悪い日なんだ。いつものことだよ」アハハハ

そう言って笑うサリーが無理をしているように見えた。


その日から回りがおかしくなっていった。

それはサリーの態度からだった。

なんとなく冷たい……普段の生活からそんな感じを受け取るようになったが、魔女との戦いのときにそれは明らかな形となって現れた。


~~~

マミ「アルティマシュート!」ドキュゥウウン

マミ「サリー今よ!」

サリー「うおりゃあああ!」

サリー「サンダースラッシュ!」

 スカッ

サリーの攻撃がかわされた。

QB「マミ危ない!」

魔女の攻撃が私に向かって飛んできた。

私は油断していた。


咄嗟にリボンで自分の体を持ち上げ、魔女の攻撃から逃げた。

マミ「きゃあ!」

魔女の攻撃が顔をかすめ、私は地面に落下した。

QB「マミ!大丈夫かい!」

サリー「サンダースラッシュ!」ザシュウウウ

魔女「ギョボボボボボッ」

 シュウウウ……

魔女を倒したサリーは剣を握り締めたまま、倒れている私の足元までやってきた。

消えていく結界の虚ろな背景を背にしたその姿が、なぜかとても恐ろしく感じた。


サリー「大丈夫か、マミ」

マミ「え、ええ……」

サリーが私に手を差し伸べた。

サリー「さあ、立って」

怖い……。

魔女の攻撃が私に飛んできたとき、サリーは私を助けてくれなかった。

いや、そのことを恨むつもりはない。

こんなことは今までも何度もあったことだ。

いつだって人に守ってもらえるわけじゃない。

でも……

でもあの時サリーは、私をじっと見ていた。

魔女の攻撃を受ける寸前に、私はサリーが感情の消えた眼差しでこちらをじっと見つめているのを見てしまった。

まるで、私が攻撃を食らうことを期待しているかのように……。


マミ「ありがとう、サリー……」

私はサリーの手を掴んだ。

サリー「今日は危なかったね」

マミ「ええ。でも大丈夫よ。かすり傷だわ」

サリー「へぇ、そう」

サリーは、まるで興味がないとでもいったように、そう言った。

以前のサリーだったら、もっと私を心配してくれたはずだった。

一体何があったというのサリー?

その質問が私にできるはずなかった。

サリー「じゃあ、私はもう帰るから」

マミ「え?」

サリー「はい、グリーフシード。私はもう使ったから」ポイッ

マミ「サリー……」


~~~

次の日からサリーは一緒にお昼を食べてくれなくなった。

かと言ってアッコと一緒に食べるわけでもなく、一人でテーブルに着いて食べていた。

アッコは元々友達が多かったため、他の子達と一緒にお昼を食べていた。

それでも、ちらちらとサリーの様子を、そして私の方を観察しているようだった。

マミ「バラバラになっちゃった……」

QB「これが人間の友好関係で言う喧嘩ってやつなのかな」

マミ「そうなのかしら……」

マミ「そうだといいんだけど」


~~~

サリー「……」

アッコ「ねえ、サリー?」

サリー「……」

アッコ「言ったわよね?マミのやつと縁を切りなさいって」

サリー「……切ったよ。お昼ももう一緒じゃないし……」

アッコ「あんたいつも夜になるとあいつと出かけてるじゃない!」ドンッ

サリー「ヒィッ」ビクッ

アッコ「なんなの?私言ったわよねぇ?縁を切りなさいって」

アッコ「私の言うことが聞けないって言うの?」

アッコ「私のこともう友達じゃないの?」

サリー「そんなことない!」


サリー「アッコは私の一番の友達だよ!」

アッコ「……嘘でしょ」

サリー「嘘なんかじゃない!」

アッコ「いいや、私には分かるよ。サリーが嘘をついてるかどうか」

アッコ「あんた私に隠し事してるでしょ?私に話してないことがあるんじゃないの?」

サリー「そ、それは……」

アッコ「ほーら」

アッコ「私には言えないことなんだね。マミのやつには言えるのに」

サリー「違うよ!そんなんじゃ……!」

アッコ「私は何もかも話したのに!」

アッコ「私は全部教えたじゃない!好きなことも嫌いなことも!私の夢も!」

サリー「お願い信じてアッコ!これはアッコには話せないけど、でも私はあなたが一番大切なの!」


アッコ「……信じられるわけないよ」

サリー「え……」

アッコ「サリーはもう私の友達じゃないんだ」

アッコ「私もう寝るね。それじゃ」スタスタ

サリー「アッコ!」

マミ「……」

聞く気はなかった。

今夜もパトロールのために出かけようとしたときに、サリーがベッドにいないことに気がついて廊下に出たところだった。

話している二人を見つけて咄嗟に身を隠した。

そしてその会話から耳が離せなくなってしまった。


サリー「なーんだ、いたんだぁ」

サリーが首だけを傾けてこちらを向いた。

その表情は私に向けた冷たいものになっていた。

マミ「あの、サリー、私聞くつもりは……」

サリー「さぁて、いこっか。今日も魔女探しに」

マミ「サリー、私で良かったら相談に乗るから」

サリー「……のせいでっ……」ブツブツ

マミ「サリー?」

サリーは何も言わずに歩き始めた。

私はそれ以上サリーにかける言葉がなかった。


~~~

マミ「それぇ!」

私のリボンが魔女の体に巻きついていく。

マミ「今よサリー!私が動きを止めている間に!」

サリー「……」

マミ「サリー!何をしているの!?」

魔女「ウヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

魔女「ソイヤッ」ヒュッ

 バシィィイイン!

マミ「きゃぁあああ!」

QB「マミ!」

サリー「……チィ」


 タンッ

サリーが地面を蹴って魔女に向かっていった。

攻撃を受けた私は地面に倒れている。

でももう大丈夫。サリーが魔女の相手をしているうちに、私も体勢を立て直さないと。

サリーは魔女の背後に回りこんだ。

嫌な予感がした。

サリー「うおりゃぁぁああああ!」ヒュン

サリーが渾身の力で剣を投げる。

その剣は魔女に――当たらず、私の方へ真っ直ぐ飛んできた。

QB「マミ危ない!」


マミ「アルティマシュート!」ドキュゥゥウウン

私はすぐに銃を構えて向かってくる剣を撃ち抜いた。

少しでも迷いがあったら間に合っていなかっただろう。

サリーが魔女の背後に回った瞬間に、私はこうなることを予測していた。

マミ「サリー……」

魔女が上げる砂金の砂煙の向こうに、サリーが見えた。

その顔はまるで鬼のようであった。

QB「マミ!休んでいる暇はないよ!」

マミ「……」

マミ「ええ、分かってるわ」


マミ「人々を絶望から救う!」

マミ「それが私たち魔法少女の役目ですもの!」

マミ「アルティマシュート!!」

~~~

魔女の結界が消えていく。

私たちはがらんとした地下駐車場に立っていた。

サリー「さぁて、今日の戦いも終わったし、帰ろっと」

 ガシッ

マミ「サリー、ちょっと待って」

マミ「さっきのは一体どういうつもり?」

マミ「ねぇ、サリー、あなたが辛いのは分かる。でも――」

サリー「どういうつもりだって?」デヘヘヘヘ


マミ「サリー……!?」

サリー「そんなの、あんたをブッ殺すために……」

サリー「決まってるでしょ!」シャキィイイン

サリーは私に剣を向けてきた。

私はすぐに後ろに飛び退いた。

マミ「サリー!やめて!」

サリー「気安く呼ぶな!」カッ

サリー「私を呼び捨てしていいのはアッコだけだ」

サリー「今度サリーって呼んだら殺す」

マミ「グッ……」

私はサリーの気迫に思わず後ろに倒れそうになった。

マミ「落ち着いて……サリーさん……」


サリー「あんたのせいだ……」

マミ「私の……?」

サリー「お前が来てから何もかもおかしくなった」

マミ「そんな……私は……」

サリー「言い訳するな!」

サリー「お前が来るまで私たちはずっと上手くやっていたんだ!」

サリー「私はアッコを助けたいと思って……ただそれだけを思って魔法少女になったのに……」

サリー「アッコに見放されたら、もう……どうしたらいいか分かんないよぉ」ポロポロ

マミ「サリーさん……」

何も言えなかった。

 ガシャァアン

サリーは構えていた剣をその場に落とした。


サリー「もうみんなどうでも良くなっちゃった」

サリー「私先に帰るわ」

サリー「もうあんたと会うこともないだろうね」

サリー「忘れるなよ」ギロリッ

サリー「私はお前のことを一生許す気はないからな」

私は立ち去るサリーを止めることができなかった。

誰もいない地下駐車場に取り残され、私は涙を流した。

知らぬ間に大切な友達を傷つけていたことを、思い知らされた。

魔法少女になって思い上がっていた私は、全くこれほどまでに愚かだったのだ

足の力が抜けてその場に泣き崩れる。

もうしばらくは帰れそうにない。


~~~

次の日、サリーの姿はどこにもなかった。

保母「サリーさんは、持病の悪化により一時的に病院へ移されることになりました――」

おかしな話だった。

魔法の力によって、サリーの病気の症状はここのところ全く出ていないはずだった。

サリーは魔法によって自らの体を病に侵させたのだ。

それが、ここを去るためにサリーが取った方法だった。

マミ「キュウべぇ……」

QB「なんだいマミ?」

マミ「サリーさんが魔法少女になったことは……友達のために願ったことは本当に正しかったのかしら」

QB「正しいも正しくないも、結果論でしかないよ」

QB「サリーは自分の正しいと思うことをしたまでさ」


マミ「その結果、友達と離れ離れになってしまっても……?」

QB「本当に自分ではなく、友達のことを想っているなら、それでも正しいことだったと思えるはずだよ」

マミ「……そんな風に割り切れないと思う……きっと誰も……」

アッコの表情をうかがってみると、彼女もまた浮かない顔をしていた。

きっと私以上に辛いに違いなかった。

マミ「アッコさん……大丈夫かしら」

QB「僕には君の方が心配だね、マミ?」

QB「これで一人になってしまったけれど、それでも戦えるかい?」

マミ「大丈夫よキュウべぇ。もう私も一人立ちしなきゃ」

マミ「いつまでも誰かに守ってもらうわけにはいかないわ」

QB「それならいいんだけど」


~~~

魔女の結界。

目覚まし時計の魔女。

私にとって初めて一人で立ち向かう敵だった。

無数の目覚まし時計が漂う空間の中で、魔女の姿を見つけるのも一苦労だった。

QB「気をつけてマミ。どこに潜んでいるか分からないよ」

マミ「ええ、分かってるわ」

 ジリリリリリリリリ!!!

目覚まし時計が一斉に鳴り始めた。

QB「うわ!なんて音なんだ!これじゃ何も聞こえない!」

マミ「来るわ!」


魔女が現れた。

それは無数の手と足が生えた不気味な塊だった。

マミ「それじゃあ、行くわよ!」

まずはリボンを使って、周りに浮かんでいる時計を弾き飛ばした。

マミ「これで撃てる!」

マミ「アルティマシュート!」

 ガキィイイン!

隙間を埋めるように他の時計が集まってきて、攻撃を邪魔した。

マミ「これじゃあ、攻撃できない!」

マミ「もっと近づかないと!」

QB「近づきすぎると、攻撃をもろに食らうよ!」

マミ「大丈夫!」


空中の時計をリボンで結びつけ、空中の渡り綱を作った。

私はその上を魔女に向かって走った。

マミ「ここまで近づけば、時計にも邪魔されない。行くわよ!」

そのとき魔女の長い足が目の前に飛んできた。

マミ「きゃっ!」

 バシィィイイッ!

私はその攻撃をもろに食らった。

吹き飛ばされた私は地面まで落下した。

アッコ「なんなのそのザマは?それでも本当に魔法少女やってるの?」

アッコの声が聞こえた。

魔法少女姿のアッコが、大きなハンマーを持って私が作ったリボンの道の上に立っていた。

マミ「アッコ……!」


QB「間に合ったみたいだね」

マミ「キュウべぇ!これってどういうこと!?」

QB「サリーの祈りの影響で因果が増えたことにより、元々持っていたアッコ自身の力が開花したんだよ」

マミ「あなたアッコと契約したの!?」

QB「君が心配だったからね。万が一のことも考えてね」

QB「安心して。彼女は彼女の祈りをした。そのことは君が気にすることはないよ」

マミ「でも……」

アッコ「こいつはあたしが貰うわよ!あんたはそこで寝ていなさい!」

魔女はアッコによってあっさりと倒された。

私はその姿をただ見守っていた。

アッコが私に対して敵意を向けてくるのではないかと、気が気ではなかった。

マミ「アッコさん……」

アッコ「ふぅ~、ざっとこんなもんね」スタッ


マミ「アッコさん!その……ごめんなさい」

アッコ「何あんた?」

アッコ「あんた私に謝るようなことしたんだぁ」

アッコ「へぇ~なんだろうな~、私何されったっけぇ~?」

アッコ「あ、そっか~、私からサリーを奪い取ったこと、謝ってくれるんだぁ」

マミ「奪い取るだなんて、そんな!」

マミ「私はただみんなと仲良く――」

アッコ「キィッ」ギロッ

マミ「ひゃっ」オドオド

アッコ「サリーをこんなことに巻き込みやがって」

その声は怒りに震えていた。


アッコ「ぜ~んぶキュウべぇから聞いたよ」

アッコ「私があの子を誤解していたこと」

アッコ「サリーはずっと私のためを想っていてくれたこと」

アッコ「あんたがこの戦いにサリーを巻き込んだこと。私のサリーを独り占めにしようとしたこと――」

QB「何を言っているんだアッコ!そんな風に僕の話を受け取るなんて!」

QB「僕は君たちに一緒に戦って欲しかったんだよ!」

アッコ「こんなやつと一緒に戦えるわけないでしょう?」

アッコ「私のパートナーはサリーしかいない」

アッコ「私はあの子のためなら、この身を捧げても構わないわ」

マミ「アッコさん、あなたまさかサリーさんのために願い事を……」

夕飯作らないとまずい……
この時間帯に申し訳ない!
8時には戻る!

戻った


アッコ「あんたには関係ないでしょ?」

アッコ「親を見捨てて自分だけ助かるようなあんたには、私の願い事なんて分かるわけない」

マミ「それでもいいの?あなたはそれでも後悔しないの?」

アッコ「はぁ?後悔なんてあるわけないでしょ?」

アッコ「私の一生に一度の最高のお願い事なんだから」

QB「……」

マミ「アッコさん……」

アッコ「私はサリーの元に行くよ。次からは自分一人で倒すんだな」

アッコ「それかもっといいパートナーを見つけることさ」

アッコはそのままの姿で去っていった。


~~~

翌日、アッコもこの施設からいなくなった。

彼女は突然失踪したのだ。

私はまた一人ぼっちになった。

QB「ごめんよ、マミ。アッコなら君と戦ってくれると思ったんだが」

マミ「いいのよキュウべぇ」

マミ「少なくとも二人の間の誤解は解けたみたいですもの。私は嫌われちゃったけど」

マミ「こうするのが、一番良かったのかもしれないわ……」

QB「僕もそう願うよ」


それからの私は誰とも友達にならなかった。

魔法少女をやるということは、少なからず現実の生活を切り捨てることになる。

それをわきまえていなければ、務まる仕事ではない。

私は一人でも十分に魔女と戦えるようになっていった。

アルティマシュートを使うのはもうやめた。

今は違う名前にした。他の人に聞かせることはないだろうけど。

中学校に上がる時、私は施設を出て一人暮らしを始めることにした。

お父さんが残してくれたマンションの部屋がある。


~~~

QB「マミ急いで!登校初日から遅刻する気かい?」

マミ「ちょっと待って!もう準備できたわ」

QB「髪型を変えたのかい?」

マミ「昔お母さんがやってくれたの。くるくるでかわいいでしょ?」

QB「ふーん、人間の感覚は僕にはわからないや」

マミ「もう!そこは嘘でもかわいいって言うものなのよ」

QB「なるほど、人間のしきたりだね」

マミ「さてと、早く行かなきゃ」

越して来たばかりでまだガランとしている部屋を出た。


私は今日から見滝原中学校の一年生になる。

新しい生活が始まる。

これからは一人で頑張らなきゃいけないんだ。

QB「マミ」

マミ「何キュウべぇ?」

QB「君は後悔していないのかい?」

マミ「どうしたの急に?」

QB「いやぁ、新しい生活のスタートだからね。マミにも決意を新たに持ってもらおうと思って」

マミ「後悔なんてあるわけない」

マミ「いつかは胸を張ってそう言える日が来るといいわね」

QB「そうか、そうだね」


~~~

マミ、君は本当に強くなった。

君が何事にも興味を持てなかったあの頃、この子を契約に持っていくのは容易ではないと思った。

そう、あの事故さえなければ、君を契約させることなんてできなかっただろう。

だからあの事故は仕方のないことだったんだ。

マミ、僕を恨まないでおくれよ。

巴マミはその後も正義のために戦い続けた。

その間にはいくつかの出会いもあった。


面白いことに、君たちはいつも上手くいかないんだね。

佐倉杏子ともそうだった。

そして今、マミは新しいパートナーを手に入れようとしている。

鹿目まどかと美樹さやか。

特に前者は飛びぬけた才能の持ち主のようだ。

邪魔さえ入らなければ、二人との契約はそう遠くないだろう。

その前に、少し「あの子」のところに行ってみようかな。

今どういう状態なのか確認しなければいけない。


~~~

病院

QB「やあ、サリー」

サリー「……来たか悪魔め」

QB「ひどい言いようだなぁ。僕は君の様子が心配で見に来たっていうのに」

サリー「嘘だ」

QB「まだ入院していたんだね。わざわざ魔法の力を使ってまで」

サリー「うるさい」

QB「アッコはどうしたんだい?」

サリー「アッコ?アッコなら私が『救って』やったよ。私がこの手で」

QB「そうか……」

QB「アッコは魔女になったんだね」

サリー「知ってたくせに」


サリー「聞きたいことは済んだろ?もう消えろ」

QB「なんだ、君は僕の事を恨んでないのかい?」

サリー「……恨んでるさ」

サリー「恨んでるよ!でもいいんだ……今はまだ」

サリー「これが真っ黒になったら、その時が本番だよ」

QB「君のソウルジェム……もうほとんど限界まで濁ってるじゃないか」

サリー「この病院のやつらも、この世界もメチャクチャにしてやる」

サリー「そしてお前を引き裂いて殺して、それで……」


サリー「巴マミ!……あいつを呪い殺してやる」

サリー「あいつが私たちの夢をぶち壊したんだ!」

サリー「うう~」ブルブル

サリー「早くあいつを殺してやりたい!」

サリー「あいつのはらわたを食い破って、あいつの頭を食いちぎってやりたい!」

サリー「そうでもしないとこの怒りは静まりそうもないよ」フフフフフフ

QB(ソウルジェムの濁りが加速している)

QB(やっぱり来たかいがあったみたいだね)


~~~

看護婦「サリーさん、お加減みましょうね」

看護婦「サリーさん大丈夫?」

看護婦「大変!息してないわ!先生を呼ばなきゃ!」

QB(君のソウルジェムは見事なグリーフシードを生み出したよ)

QB(宇宙のために犠牲になってくれてありがとう。本当に感謝しているよ)

QB(君のその願い、叶うといいね、サリー)

QB(いや、シャルロッテ……!)


~~~

アッコ「うわっぬいぐるみが喋った!?」

QB「僕の名前はキュウべぇ。困っていることがあるみたいだね」

アッコ「なんなのあんた?」

QB「僕はなんでも願い事を一つ叶えてあげる」

QB「その代わりに君は魔法少女となって魔女と戦ってもらうことになる」

アッコ「はぁ?なんだそりゃ?」

QB「信じていないようだね」

アッコ「そんな夢物語みたいな話あるわけないだろ?」

QB「それがあるんだよ、アッコ」


QB「君の友達はもうその戦いに身を投じているよ」

アッコ「友達って……」

QB「サリーさ」

アッコ「……サリーは友達なんかじゃない」

QB「でもサリーはそうは思っていないようだ」

QB「見せてあげるよ。サリーの願いを。その戦いを」

アッコ「うわわっ!なんだ頭の中に映像が!」

QB「さあ受け入れて。これが真実だ」

 ――――

アッコ「はぁ、はぁ」

アッコ「私は……サリーになんてことを……」


QB「サリーを助けたいかい?」

アッコ「私が悪かったんだ!私はどうすれば!」

QB「彼女を助けるために祈りを捧げるかい?」

QB「魔法少女になればサリーと一緒に戦うこともできるよ」

アッコ「こんなことって……」ポロポロ

アッコ「私、なるよ……」

アッコ「私を魔法少女にして!」

QB「願い事を言ってごらん」


アッコ「私のことなんかどうでもいい」

アッコ「サリーを――」

アッコ「いや、サリーは私がこの手で守る」

アッコ「あんたの力は借りない」


QB「それなら何を願い事にするんだい?」

アッコ「何もかもあいつのせいだ!」

アッコ「サリーをこんな戦いに巻き込んで!」

アッコ「巴マミ!」


 マミに怒りの矛先を向けるとはね

アッコ「巴マミ、あいつが、」

 しかもそのために願い事をするなんて

アッコ「無残な死に方をしますように」

 実に面白い

アッコ「あいつが大切に想っている人の目の前で!」

 やっぱり君たちはエネルギーを集めるのに最適な存在だよ

QB「君の祈りはエントロピーを凌駕した」

QB「さあ解き放ってごらん!」

QB「その新しい力を!」

マミ「後悔なんてあるわけない」

おわり

保守等THX!!!

これ以上どうしろと……
この続きはみなさんご存知の第3話です……

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