佐々木「キョン、2011年度日本シリーズ第六戦が始まるよ」(245)


 試合開始を間近にしたリビングで、俺はひとつの懸案事項を抱えていた。

「橘、ちょっと話がある」

「あれ? 何ですか?」

「お前の応援するソフトバンクはこの試合で日本一になるかもしれん」

「はい、そうですね。あー、話って前祝いってことです? これはどうもご丁寧に」

 違うっつの。

 ハルヒのアホが、日本シリーズ勝者を一日団長に任命するとか抜かしやがった件についてだよ。



 ちょうど一週間前のことになる。第一戦の試合開始前に、ハルヒのやつが唐突に宣言を行った。

 それは、日本シリーズ優勝チームを応援していた者をSOS団一日団長に任命するというものだった。

 中日を応援する古泉ならば、妙な考えは起こさないだろう。しかし、この間まで敵対勢力として悪行を重ねてきた橘が一日団長に選ばれた場合、何かとんでもないことを要求するのではないかと俺は気になっていたのだ。


「橘、仮にお前がSOS団の一日団長になったとしたら、どんなことをするつもりなんだ?」

 今でこそ、こいつはウチのリビングで野球観戦するような間柄に成り下がったが、また妙な気でも起こして、朝比奈さんを拉致監禁するだとかSOS団を解散しろだとか言い出すつもりならば未然に防がねばならん。

「そんなことするわけないじゃないですか、今のあたしは春先のあたしとは違うのです。それに涼宮さんが団長として目を光らせてるのですから、万が一そういうことを望んでいたとしてもできるわけないですってば」

 ああ、そういやハルヒのやつがそんなことを言ってた気がするな。

 だが、『朝比奈さんに一日中コスプレさせてください』なんて言い方だったら、ハルヒが面白がってOKしないとも限らんのだ。

 大学受験を控えた朝比奈さんの身に何か面倒事が降りかかってしまえば、監督不行き届きとして朝比奈原理主義者どもから私刑を被りかねない。

 俺は食い下がってみたのだが、やはり橘は首を縦に振らなかった。

「いや、言えませんって」

「なんでだよ。隠さなきゃならんほどの悪巧みでもしてるのか?」

「そんなんじゃないですって。うーん、なんか誤解されてるみたいなんで、またあとでお話しましょっか。そうすればあなたも納得できますよね」

 橘は、話はこれで終わりとばかりにテレビへと向き直ってしまった。

 間もなく試合が開始される。俺の聞き込み調査もこれでタイムアップのようだ。

※このスッドレは『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズに登場したキャラクターが、SOS団一日団長を賭けて担当チームを応援するスレです。
※原作『涼宮ハルヒの驚愕』までのネタバレがあるかもしれません。アニメだけしか観ていない方はご注意下さい。
※話の流れは実際の試合展開に順じます。
 → テレビ朝日系列の地上波、BS「NHK-BS1」で視聴できます。

【主な登場人物】
 ・古泉一樹:中日ドラゴンズファン
 ・橘京子:福岡ソフトバンクホークスファン

 ・キョン:読売ジャイアンツファン
 ・佐々木さん:北海道日本ハムファイターズファン

こんばんは!始また!打たれた!

一回表 鷹0-0竜 二死二塁 P:和田
荒木 左安
井端 投犠打
森野 二直

「おお、荒木が打ったな」

「ドラゴンズレギュラー陣にあって、荒木選手はただひとり三割を超える打率を残しています。トップバッターとして申し分のない働きですよ」

 続く井端が送って、中日は初回に先制機を迎えた。

 王手をかけられてはいるが、ここで得点をすれば、ソフトバンクに大きなプレッシャーを与えられることだろう。

初回から四球でホームラン打たかられた和田か…
ファール惜しい…

一回表 鷹0-0竜 二死一二塁 P:和田
ブランコ よんたま

「ブランコはよく見たな」

「僅かに低めへと外れたようですね。そして次は、和田投手に対して抜群の相性を誇る和田選手です。期待も高まってしまうというものです」

 ソフトバンクの和田も、立ち上がりに苦しんでいるように感じられるな。

ぎゃあぁぁ

一回表 鷹0-2竜 チェンジ P:和田
和田 中三タイムリー!
平田 右飛

「おおっ! さすが和田選手です! 和田投手の変化球を逆らわずに右方向へと弾き返しましたね!」

 荒木だけでなく、一塁ランナーのブランコまで生還し、これで中日は初回に二点を先制した。

 さらに三塁への送球が逸れ、カメラマン席へと入ってしまったようだが、テイクワンベースとはいかなかったみたいだな。

 一点が試合を大きく左右する展開が続いているだけに、ソフトバンクとすれば助かっただろう。

吉見ストライク先行で好調だなあ

一回裏 鷹0-2竜 チェンジ P:吉見
川崎 からさん
本多 みのさん
内川 からさん

「おいおい、先制の次は三者連続三振かよ……」

「立ち上がりに不安のある吉見投手ですが、今日はすばらしいですね。抜け球も散見されたのですが、それが返って荒れ球のような幻惑効果を生んでいるのかもしれません」

 両チームともにホームゲームに強いはずなのだが、まったく逆の展開になってるな。

あぶねー
和田はボール先行であんまり調子よくないなあ…

谷繁が日本一決勝打初ヒット!


というのをここまできたら期待するw

二回表 鷹0-2竜 チェンジ P:和田
藤井 遊ゴ
谷繁 左飛(内川好捕!)
大島 遊ゴ

 初回に二点を取られてしまった和田だったが、この回は中日の下位打線を三者凡退に切って取ったようだ。

「和田も立ち直ったみたいだな」

「うーん、コントロールはまとまってきたと思うのですけど、いつもよりストレートのキレがないような感じがするのですよね……」

 普段ならば球速も140km/hくらい出るんだったか?

 ソフトバンクファンの橘からすれば、不安はまだ拭えないようだ。

>>35
鷹が2点以上取れるような祈ってくれww

惜しい悔しい

二回裏 鷹0-2竜 チェンジ P:吉見
小久保 中安
松中 投ゴ(二塁封殺)
松田 三ゴ(二塁封殺)
多村 左飛(平田好捕!)

「四番小久保で、五番に松中か。ベテランもがんばってるな」

「ホントそう思います。なんていうか、この二人がそろい踏みで日本シリーズで打席に立ってるのが、なんだか夢みたいで……」

 クライマックスシリーズが導入されてからと言うもの、ソフトバンクはポストシーズンで苦しめられていたからな。

 そういった苦境を乗り越えて、こうして日本シリーズに進出できたことは、感慨深いものがあるのだろう。

「今年のホークスはベテランと若手と移籍組が一体になって戦っていた感じですから――キャー! 多村さんが打ちました……あれ?」

「レフトの平田が捕ったみたいだな」

「うう……、ナイスキャッチなのですけど、抜けてたら一点だったなぁ……」

 まあ、中日からすれば先発吉見を助ける好捕になったか。抜けていれば一点入っていただろうから、両チームともに溜息のでるようなプレイだったな。

よく捕った!でも怪我はヤメテ(´;ω;`)

三回表 鷹0-2竜 一死一塁 P:和田
荒木 右邪飛(多村好捕!)
井端 よんたま

「おお、あのファウルを捕られてしまったのですか……」

 古泉も平素のような冷静さを忘れるような多村の好捕だった。

 しかし、橘の歓声が聞こえるかとも思ったのだが、意外にも静かだな。

「多村さん、怪我してなきゃいいんですけど……」

 多村は怪我が多いだけに、橘としてはそっちが気に掛かってしまったようだな。

三回表 鷹0-2竜 チェンジ P:和田
森野 からさん
ブランコ みのさん

 井端にフォアボールを与えた和田だったが、森野ブランコを連続三振に抑えたようだ。しかし――

「和田はずいぶんと苦しんでるみたいだな」

「そうみたいなのです……。テレビでダルビッシュさんも言っていたのですけど、やっぱりストレートが良くないみたいですね。でも中日の和田さんに回さなかったのは大きいですね!」

 初回は先制となる二点タイムリーを打たれていたからな。

 フルカウントまで粘られながらも、ブランコで切る事ができたのは、和田にとってもソフトバンクにとっても助かったことだろう。

三回裏 鷹0-2竜 チェンジ P:吉見
長谷川 右飛
細川 中飛
川崎 中飛

「この回も三者凡退か。吉見は調子良さそうだな」

「吉見投手の調子は悪くないと思います。しかし、決して良いとも言えないのではないでしょうか。マウンドの相性もあるのだと思いますが、ナゴヤドームで見せる、相手を寄せ付けないピッチングまではいっていないようです」

 中日ファンの古泉からすれば、いい吉見を知っているだけに、不安もあるということなのだろうか。

コワかった

四回表 鷹0-2竜 二死一塁 P:和田
和田 左飛
平田 左安
藤井 三直(松田好捕!)

「あわやホームランかという当たりのあとに、レフトへのクリーンヒットですか。平田選手も振れていますね。しかし、大飛球の行方を確認しなかった和田投手の姿も印象的でした」

「打球の行方を見たからって結果が変わるわけじゃないですし、びっくりするような打球だったら見たいほうがいいと思うのです。なので和田さんは正解でしたね!」

 まあ、橘の言うことも一理あるかも知れん。

 だが、そのファウルのあとにストレートを叩きつけるような場面もあっただけに、和田もまったくの平静でいられたわけでもなさそうだな。

四回表 鷹0-2竜 チェンジ P:和田
谷繁 からさん

「平田さんのファウルには焦っちゃいましたけど、和田さんもしっかり抑えてくれたみたいですね」

 和田も立ち直ってきたのかもな。谷繁の打席じゃ、ずいぶんといい球を投げてたように思えるぞ。

「ストレートもだんだんキレてきたみたいですね。初回の失点は残念でしたけど、このまましっかり抑えて欲しいです」

 中日とすれば谷繁に一本欲しかったところだが、この回は和田に軍配が上がったようだ。

さすが俊足!内川、小久保お願いします!

四回裏 鷹0-2竜 無死三塁 P:吉見
本多 中三

「おおー! 本多さんがスリーベースです! 反撃開始ですね!」

「ノーアウト三塁ですか……。非常に厳しい場面ではあるのですが、何としても最小失点、あわよくば無失点に抑えたいところです」

 俊足の本多だからな。内野ゴロでも一点が入っちまうだろう。

 中日の内野は定位置で守っているだけに、一点は覚悟の上って作戦のようだ。

よしよし
よく粘ってくれた

なんつーコントロールだ吉見

四回裏 鷹1-2竜 一死一塁 P:吉見
内川 右タイムリー!
小久保 からさん

「キャー内川さんすごいです! これでまず一点ですよ!」

 吉見も外を中心に、丁寧なピッチングをしていたと思うのだが、最後は内川に内野の頭を越されてしまった。

「あれだけ粘られてしまうと、さすがの谷繁捕手も投げる球がなくなってしまったのかも知れませんね。ここばかりは内川選手の巧打を褒める他ないようです」

 続く小久保は抑えたようだが、松中も松田も怖いバッターであることに違いはない。

 吉見にとっては気の抜けない場面が続くな。

四回裏 鷹1-2竜 チェンジ P:吉見
松中 からさん
松田 遊ゴ

「うーん、小久保さんも松中さんも三振ですかぁ……」

「吉見投手のコントロールが冴え渡った打席でしたね。ストライクゾーンを掠めるようにミットへと納まるスライダーは見事の一言ですよ」

 変化球を中心としたピッチングなのだが、どの球も低めにコントロールされている。

 全ての球種でストライクが取れるってのは、やっぱり大きな武器になるんだな。

五回表 鷹1-2竜 二死一塁 P:和田
大島 左飛
荒木 中飛
井端 左安

「お、井端のヒットは久しぶりじゃないか?」

「そうですね。ツーアウトながら井端選手がランナーとして出ていますので、脚を絡めた攻撃を期待したいところです」

 ここまでの試合では、ソフトバンクの盗塁が目立っていただけに、中日としても機動力で対抗したいところだろう。

五回表 鷹1-2竜 チェンジ P:和田
森野 中飛(エンドラン)

「中日の走塁は決まらないな」

「そのこともあるのですが、僕としては森野選手の不調が気がかりですね」

 森野のバッティングは、テレビでも言及されていたな。そんなに悪いのか?

「タイミングが取れていないこともそうなのですが、様々なボールを追ってしまっていることも不振を助長しているようにも感じられてしまいます。

 思うようなバッティングができず焦る気持ちもあると思うのですが、ボールを呼び込んでのバッティングというものを取り戻してもらいたいですね」

 森野の不調は、中日の成績に大きく影響するだろう。古泉とすれば復調を期待したいところだよな。

打てないなー

五回裏 鷹1-2竜 チェンジ P:吉見
多村 からさん
長谷川 二ゴ
細川 からさん

「吉見は快調だな」

「確かにそうなのですけど、まだ四回も攻撃が残ってますし点差も一点ですからね。まだ焦るような時間じゃない、ってやつですよ」

 そうかもしれんが、引用元がバスケ漫画ってのはどうなんだ。

和田交代か!はやっ

六回表 鷹1-2竜 一死 P:金澤
ブランコ 一飛

「もう和田を諦めちまったのか」

「和田さんはそんなに調子よさそうじゃなかったですし、継投もアリじゃないですかね。金澤さんだって馬原さんの不在を埋めるくらい活躍してた人ですから」

 金澤から森福、攝津、ファルケンボーグと繋いでいくのだろうか。

 さらに馬原やホールトンもいるだけに、延長になったとしてもソフトバンクは磐石のリレーを敷けそうだ。

六回表 鷹1-2竜 チェンジ P:金澤
和田 二ゴ
平田 二ゴ

「なんかあっさり抑えちまったな」

「さすが金澤さんですね。機動力や先発ピッチャーが注目されがちですけど、ホークスはブルペンもいいのですよ!」

 この回はたったの7球で抑えちまったのか。

 スイッチヒッターの藤井や、左の大島に打順が巡ってくるが、次の回も金澤が投げるかもしれないな。

もうちょっとねちっこい攻撃をしようよ

六回裏 鷹1-2竜 チェンジ P:吉見
川崎 遊邪飛
本多 左飛
内川 左飛

「うぅ、吉見さん崩れないですね……」

 一番から始まる好打順だったのだが、吉見の前に三者凡退に抑えられてしまった。

 自慢の機動力もランナーが出なければ発揮できないだけに、橘としては悔やまれる展開となったことだろう。

「制球もいいのですが、球数の少なさにも着目しなければなりませんね。六回を終わって77球です。中五日ではありますが、完投も十分考えられますよ」

 このペースでいけば120球弱ってことか。浅尾や岩瀬が控えているだけに、ソフトバンクは次の回に攻勢をかけたいところだろう。

七回表 鷹1-2竜 チェンジ P:金澤
藤井 左飛
谷繁 三ゴ
大島 からさん

「金澤もすげえな。二回をパーフェクトか」

「♪いざゆーけー むてきーのー わかたかぐんだんー」

 応援歌に夢中で聞いちゃいねえか……。

七回裏 鷹1-2竜 二死 P:吉見
小久保 からさん
松中 一ゴ

「うーん、小久保さんも松中さんも打てなかったですか……」

「この回の吉見投手は、甘い球も散見されてしまうようになりましたね。特に小久保選手へのラストボールは背筋が凍るような思いさえ味わってしまいましたよ」

 小久保の表情も悔しがっていただけに、ホームランになりかねないような投球だったんだろう。

 次の松田もリーグ二位のホームランを放っている。甘い球が続くようならば、一気に同点なんてこともあるかもしれないな。

うーむ

七回裏 鷹1-2竜 チェンジ P:吉見
松田 右飛

「松田もよく粘ってたんだがな」

「昔の松田さんだったら外のスライダーにすぐ三振していたのですけど、今年は簡単に空振りしなくなりましたね。それがいい成績につながったのだと思いますよ」

 思い切りのいいスイングをしてるだけに、当たれば飛ぶのだろう。

 しかし、この場面は吉見の制球が勝ったようだ。差は僅か一点とはいえ、ソフトバンクも徐々に苦しくなってきたか。

八回表 鷹1-2竜 チェンジ P:森福
荒木 左飛
井端 三ゴ
森野 からさん

「森福か。第四戦を思い出しちまうな」

「僕としては忘れたくもあるのですが、なかなか忘れなれないでしょうね

 第四戦の六回裏、ノーアウト満塁という中日の大きなチャンスに立ちはだかったのが、この森福だった。

「今にしてみれば継投の相性も良かったのでしょうね。縦の変化で勝負する右のホールトン投手の次に、横の変化で勝負する左の森福投手。この二人のリレーは、かなりの相乗効果を生んだのだと思いますよ」

 森福はこの試合でも、完璧な内容でゼロに抑えた。

 右打者さえも抑えてしまう左の中継ぎか。こいつがFA権なんか獲得した日には、どのチームも喉から手が出るほど欲しがるだろうな。

久々

あ゛ー
何やってんだよもう

八回裏 鷹1-2竜 二死一塁 P:吉見
多村 中安
長谷川 捕飛(バントエンドラン・併殺) 

細川 → カブレラ 右安(代走:福田)

「ええー! なんでバント上げちゃうんですかー!」

 橘が叫びたくなる気持ちもわかる。先頭の多村がヒットで出たものの、続く長谷川はバントを打ち上げてしまったのだ。

 さらに悪いことには飛び出していた多村が戻れず、最悪のゲッツーとなってしまった。

「あぁ、バントが成功してたらカブレラさんのヒットで同点だったのに……」

 野球にたらればは禁物だと言われているが、この場面ばかりは橘に同情したくもなってしまうぞ。

八回裏 鷹1-2竜 チェンジ P:吉見 → 岩瀬
川崎 (福田盗塁死)

「お、ここは谷繁の肩が勝ったか」

 川崎対岩瀬という場面、一塁ランナーの福田がニ盗を試みたのだが、あえなく盗塁死となってしまった。

「ソフトバンクの機動力には、これまで幾度となく苦しめられてきましたからね。試合の流れを掴む意味でも、この盗塁を刺殺できたことは大きいですよ!」

 古泉も語勢もいつもより強くなっているように感じられるな。それだけ勝ちに近づいたと実感があるのだろう。

「うぅ……、なんか流れが悪いのですけど……」

 橘にとっては頭を抱えたくなるような攻撃になっちまったようだが。

打たれた


まあ馬原だしなー

九回表 鷹1-2竜 一死一塁 P:馬原
ブランコ からさん
和田 左安

「ここで馬原かよ」

「うーん、ホントだったらこんなところで出てくるような馬原さんじゃないのですが……。やっぱり本調子じゃないって判断されちゃったのかもです」

 第二戦では不運な巡りあわせもあったと思うのだが、結果が求められる場であるだけに、このような使われ方も已む無しといったところなのだろうか。

馬原だし谷繁復調しかねんなww

九回表 鷹1-2竜 二死一二塁 P:馬原
平田 一犠打
藤井 → 野本 敬遠

「平田がバントするのか」

「平田選手にはホームランも期待できるのですが、ここはホームランよりも堅実な一点を求めたということなのでしょう」

 ランナーの和田を二塁に進め、藤井に代わって野本を送ったのだが――

「野本選手を敬遠ですか……。谷繁捕手の不調を考えれば、当然ともいえる選択なのかもしれませんが……。ここは何としても谷繁捕手の発奮を期待したいですね!」

 今シーズンは中軸を打っていたこともある谷繁が、前のバッターを敬遠されるというのは屈辱的なことだろう。

 その気合が巧くかみ合うか、ノーヒットを更新してしまうのか、この打席は見ものだな。

九回表 鷹1-2竜 チェンジ P:馬原
谷繁 二飛

「くっ……、内野フライですか……」

 古泉が珍しく感情を滲ませている。

 まあ、中日の中心選手ともいえる谷繁がこのような扱いをされたうえに凡退してしまってはフラストレーションも溜まるというものだろう。

「しかし、九回の裏を抑えればドラゴンズの勝ちとなります。あとアウトみっつ。しっかりと冷静なリードをして頂きたいものです」

 谷繁もなかなか冷静じゃいられないような精神状態にあるだろう。それが試合に影響しなきゃいいんだがな。

オワル

九回裏 鷹1-2竜 二死 P:岩瀬
川崎 左飛
本多 遊ゴ

※野本 → 堂上弟(三)

  ブランコ → 英智(左)
  森野(三) → (一)
  平田(左) → (右)

「岩瀬もさすがだな」

「川崎選手も本田選手も、ランナーとして出してしまうと非常に厄介ですからね。こうしてベンチの期待通りに二人を抑えたことは、ドラゴンズとって大きく勝利に近づいたと言っていいでしょう」

 そして内川を迎える場面で浅尾にスイッチか。

 ソフトバンクもいよいよ土壇場だな。

オワタ

最後邪魔されて落としてたらどうなってたの?

明日何時から?
18時?

九回裏 鷹1-2竜 試合終了 P:岩瀬 → 浅尾
内川 一邪飛

「あれ? 捕っちゃったのですか?」

「ああ、捕ったみたいだな」

 目一杯に体を伸ばして捕球した森野だったが、その後のリアクションがあまりに気迫だったため、何というか試合が終わったという感じがしなかったぞ。

「初回の二点がそのまま勝敗を決めてしまいましたか。厳しい戦いでしたが、これで日本一に逆王手を決めることが出来ました。このシリーズはビジターチームだけが勝利するという奇妙な流れにありますので、このまま日本一を決めて頂きたいですね」

「今日は負けちゃいましたけど、これで三勝三敗のタイになったってだけなのです! 明日勝ってホークスが日本一ですよ! まあ、今日の試合もあまり負けたって感じがしないのですが……」

 シリーズ前の予想では、ソフトバンクが優位だって声が多かったが、中日の粘りもさすがだな。

 古泉の言う通りビジターチームが勝つって流れなら中日なんだろうが、先発がどうなるかわからないだけに、ソフトバンクも十分に勝機があるのだろう。

 関根さんじゃねえが、本当にわからないな。シリーズの決着は、明日の試合を見届けるまでわからないようだ。

>>213
明日は18:30プレイボールとなっております。
テレビ中継は、TBS系列とNHK-BS1で予定されているようです。

むぅー。

>>202
昨年のパリーグCSでは、本多さんが取ろうとしていたファウルフライをソフトバンクファンの方が取ってしまうという場面もありましたね。
得点に繋がらなかったのですが、アウトにできる打球をファンに捕られてしまった本多さんの無念そうな顔が印象的でした。

>>219
記憶力凄いなwww

あーあ、明日はセール無しか
せっかく日曜日なのに勿体ない

お疲れ様でした。

ナゴヤドームで三試合連続初回失点を許してしまった中日でしたが、
今日はソフトバンクのお株を奪う先制劇によって、勝利をもぎ取った試合となりました。

第六戦を終えて、対戦成績は三勝三敗の五分となりました。
ソフトバンクの強さが際立っていたシーズンだけに、中日の健闘が非常に印象的に思えてしまいます。

ホームのソフトバンクが勝利するのか、これまでの流れを受けて中日が勝利するのか、
はたまた引き分けとなり第八戦へと持ち越すのか、明日の試合も楽しみです。

本日はお付き合いいただきましてありがとうございました。
明日なのですが、18:30前にスレ立てを予定しております。

最後になりますが、ご支援ありがとうございました。
また明日の試合につきましても、どうぞお付き合い頂きますようお願い致します。

乙!
明日も早めに帰ってこよう


 試合観戦を終え俺を除いたSOS団の四人は『機関』のタクシーに乗って帰途に着き、その様子を俺たちは玄関のポーチから見送った。

 雨が降っているのだから見送りは俺だけでいいと言ったのだが、佐々木も橘も果ては妹までついてきてしまった。何とも物好きなことだ。

 さて家に戻ろうかというところで、俺は橘に呼び止められてしまった。

 試合開始前に話していたことをここで済ませてしまいたいのだそうだ。

 この雨の降りしきる中、玄関先で。……まあ、他の奴に聞かれたくないってことなんだろうな。

 妹に手を引かれ屋内へと戻っていく佐々木の姿を見送り、俺は超能力者と向かい合った。

「あたし、佐々木さんには幸せになってもらたいのです」

 橘の第一声はこれだった。

 こいつの複雑な表情を見ていると、この一言に全てが集約されているのだろう。

「佐々木さんのことは……、それなりに知ってます」

「…………そうか」

 時間にすれば五秒ほどの微妙な沈黙を経て、俺はそれだけを口にした。

今日はあるのか支援


明日もやってほしいな


 こいつだって曲りなりにも『機関』の対抗勢力だったのだ。自分たちの信仰対象がどのような境遇にあるかなんてことは、調査済みなのだろう。

「今の佐々木さんって、すごく幸せって感じじゃないですよね。あたしなんかが言うことじゃないかもですけど……」

 幸せの定義なんてものは人それぞれだろ――いつもの俺だったら、そんなことを言っていたかもしれない。

 俺はその言葉を臓腑の深くへと飲み下し、ただ話の続きを待った。

「…………」

 しかし、橘はなかなか続きを話そうとはせず、俺も何かを話す気にもなれず、沈黙がもたらす空白を埋めるように雨音が騒がしく鳴り響いているだけだった。

 絶え間なく降りしきる雨粒がパタパタと屋根を叩き、空虚な音を響かせる。それは霞の向こう側で、狂った麻薬中毒者が機関銃を乱射しているようにも聞こえてしまう。

「どうして……」

 鳴り止まぬ銃声に、そろそろ熱で銃身が変形してしまうのではないかと思うようになった頃、ようやく橘が口を開いた――のだが、

「どうしてこの世界は佐々木さんに優しくないんだろうって……、そんなこと考えちゃうのです。佐々木さんは、この世界の神様になってたかもしれないのに……」

「…………」

 ――この世界は佐々木に優しくない。

 その言葉は、あいつが俺に話してくれたことを思い起こさせた。確か、春先の騒動が収束した時のことだったな。


 それは、佐々木とハルヒが同じ小学校に通っていたという思い出話に付随した告白だったのだが、それが指し示す内容は、話し手の努めて軽々しい扱いとは程遠く、黒曜石で作られた文鎮のように重くのしかかってきた。

 ハルヒがなぜ、佐々木と知り合いだったことに気づかなかったのか――その空白を埋めるためだけに用意されたパズルピースのように持ち出されたこともまた、俺の脳細胞に少なからず衝撃を与えた。

 或いは、佐々木に特徴的な話し方をさせた主因となっていたことなのかもしれなというのに……。

『家庭の事情で僕は小学校卒業と同時に名字が変わった』

 まるで遅刻の理由を説明するかのように軽々しく、佐々木はそのことを口にしていた。聞き手に重く受け止めてもらいたくないという意図もあったのかもしれない。

 だが俺は、名字が変わっていたという告白に驚きを隠せなかったのだ。

 名字が変わるということ、それは家庭環境に変化があったということなのだろう。そして、その多くは夫婦間の離別が原因であるのだろう……。

 例え、仲違いがなかった場合でも――死別したあとに再婚した場合などがそれに当たるのだろうか――幼い佐々木の心に決して小さくない痕を残したのではないかと思えてしまう。



 途上国のスラムに生まれた子供たちと比べれば、そりゃ恵まれているだろう。途方もなく幸せな環境に居るのだろう。

 だが、この狭い島国に僅か十数年ばかり生きてきた俺の、チリ紙より薄っぺらいフィルターを通してしまうと、この世界が佐々木に優しいとは到底思えないのだ。


 古泉の話を聞く限りでは、ハルヒだって決して幸せな中学時代を過ごしていたわけではなかったのだろう。

 ただ、あいつの場合は、この世界がつまらないと自分で定義し、その世界に全力で立ち向かったのだ。自らの意思で、変革を望んだのだ。

 だが、佐々木の場合は、大人の都合で変革を余儀なくされてしまった。

 もちろんあいつも世界に抵抗したのかもしれない。世界を変えようと全力で立ち向かったのかもしれない。

 しかし、あいつの名字は変わってしまった。

 そのことが、腹の奥底にもやもやとした

 ウチの両親だって一度も喧嘩をしなかったわけではない。階下からの声に、怯えてしまった妹を抱きかかえて眠ったこともなかったわけではない。

 一般的な家庭において起こりうる些細な衝突でさえ、子供にとっては甚大なストレスを与えてしまうのだ。
 
 頭の芯が、機銃掃射を行った直後の銃身のようにカッカと熱を発している。

 俺も狂人のように、この大雨の中へと飛び出せば、少しは頭が冷えるのだろうか。

「ひとつ、あなたに言っておきたいことがあります」

「なんだ?」


「佐々木さんを誘ってくれて、ありがとうございます」

 礼を言われるようなことじゃないと思うんだがな……。

「あなたに深い考えがなくてもいいのです。ここにいるときの佐々木さんってすごく幸せそうだから。だからあたし、嬉しいのです」

 なぜだろうか。橘の発する言葉によって、溶解寸前だった脳細胞が冷やされていくのを感じる。

「SOS団っていい人ばっかりですね。涼宮さんも、長門さんも、すっごくかわいい朝比奈さんも。古泉さんもそこに入れちゃっていいです」

 あれだけ対抗意識を燃やしてた古泉をいい人にカテゴライズしちまうのかよ。お前は本当にまるくなっちまったんだな。

 まあ、緩んじまった空気を読んで、俺も求められているであろう役目に戻ってやることにするさ。

「なんだよ、一人忘れてないか?」
 
 特殊な属性のない一般人ってことは自認しちゃいるが、頭数に入れられていないとなるとさすがに抗議もしたくなるってもんだ。

「あはは、もう一人もいい人なんでしょうね。たまに小突いてやりたくなりますけど」

 橘は悪びれもせず、ころころと笑っている。

 なぜお前に小突きまわされにゃならんのだ。まったく、女という生き物はわからない。

 しかし、俺の口元には――橘の笑い声につられたように――偽悪的な笑みが浮かんでいた。


「SOS団のみなさんと一緒のときって、佐々木さんすごく楽しそうなのです」

 まあ、それは俺も感じていた。俺たちが野球に熱中しているその横で、ハルヒだの朝比奈さんだとと楽しげにガールズトークとやらを繰り広げているのだ。

 俺たちが佐々木にしてやれることは少ないだろう。だが、SOS団のメンツと同じ時を過ごさせてやることはできるかもしれない。

 それに、お前がSOS団の一日団長になれば、仮入部って形で佐々木のやつを一員にできるかもしれないぞ。

「あたしが一日団長になったとしても、佐々木さんをSOS団に入れろって言うわけじゃないですよ。それに、たぶん本人もそこまでは望んでないと思うのです」

 佐々木ならば、ハルヒ考案の入団試験さえもパスできそうな気もするんだが。

 まあ、本人が望んじゃいないのなら、そこまで立ち入るべきではないのだろう。そのことは、春先の騒動を経て、橘もよく理解しているはずだ。

 さてどうするべきかと思案をめぐらせる俺を尻目に、橘は玄関のドアを開けていた。


「さて、行きましょうか」

 どこへだ?

「今日も佐々木さんを家まで送るんでしょ? あたしも一緒に着いていきますよ。今日もお泊りですから」

 そう言った橘は行儀悪く玄関に靴を脱ぎ捨て、佐々木の待つリビングへと駆け出していった。

 ――一介の高校生が他人の幸せを願うなんて、度の過ぎた行動なのかもしれない。それに俺は一日団長になる可能性さえゼロなのだ。

 だからこそ願う。

 あいつが――橘が、佐々木にとって良い友人となることを、心の底から。

 いつの間にか雨足は弱まったようで、耳障りだったはずの雨音はさやさやと柔らかく夜の闇に溶け込んでいた。

 そしてまた夜空に願う。

 この柔らかな音色が、俺たち三人を優しく包んでくれることを。

                                   <2011年度日本シリーズ第七戦につづく>

読む前に落ちかねんから保守

>>229
がんばります!

しかし、文章がなかなか追いつかず、また今日の分も含めて書き直したい箇所もありますので、SS速報を利用するかもしれません。
今シーズンは満足におまけを書けず、本当に申し訳ないです。

>>241おつ(´ω`)おつ
きょこたんのためにも、二人には幸せになってもらいたい

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