紅莉栖「今年の夏も岡部に会える♪」(435)

・紅莉栖「明日は5ヶ月ぶりに岡部に会える♪」 の続き
・2ヶ月ぶり
・マグマ



フェイリス「あっ、クーニャーン!」


フェイリスが、私の姿を見つけるなり、笑顔で駆け寄ってくる。

紅莉栖「久しぶり、フェイリスさん!」

フェイリス「4ヶ月ぶりニャ。元気だったかニャ?」

紅莉栖「うん、おかげさまで。でもわざわざ空港まで迎えに来てくれるなんて、助かっちゃった」

フェイリス「クーニャンは大事な大事なお友達。これくらいお安い御用ニャ」

紅莉栖「うふふ、ありがと」

フェイリス「ささ、こっちニャ」


フェイリスが指差す方向には、立派な黒塗りのセダンが停まっていた。

黒木「牧瀬様、お久しぶりです」

フェイリス家に仕える顔なじみの執事がハンドルを握っている。

紅莉栖「ご無沙汰してます、黒木さん。ごめんなさい、わざわざ来ていただいて」

黒木「いえいえ、お嬢様同様、私も牧瀬様にお会いできるのを楽しみにしておりました」

黒木はニコリと微笑む。

真面目な人だと思ってたけど、意外と冗談も言える人だったんだ。


フェイリス「コラ黒木、クーニャンは凶真だけのものだニャ。手を出したら承知しないニャ」

黒木「ああ、そうでした。ですが麗人をお乗せできることは私にとっても役得でございます」

フェイリス「ニャニャ?フェイリスを乗せるだけじゃ物足りないっていう事かニャ?説明するニャ」

黒木「はは、お嬢様には適いませんね。それでは発車いたします」


二人のやりとりは、私の緊張を解くためのものなのだろう。

秋葉家に古くから仕える執事の、意外とお茶目な素顔を見た。

フェイリス「クーニャン、明日が誕生日だニャ?」

紅莉栖「うん、19歳」

フェイリス「明日はラボでクーニャンの誕生パーティーが開かれるニャ」

紅莉栖「わぁ、嬉しいな。あまりそういうのって経験なくって」

フェイリス「ニャフフ、もちろんその後は凶真と二人っきりになれるようにシナリオができてるニャ」

紅莉栖「あはは、お気遣いありがとう」

フェイリス「凶真も今日が待ち遠しかったみたいで、昨日の打ち合わせの時からずっとソワソワしてたニャ」

紅莉栖「そうなんだ。昨日の電話じゃ普段どおりっぽかったけど」

フェイリス「愛する人と会えるのが楽しみじゃない人なんていないニャ。クーニャンこそなんか普段どおりっぽいニャ」

紅莉栖「わ、私は、人前じゃあまり感情を表に出さない性格だから」


10時間のフライト中、岡部に会えるのが楽しみすぎて一睡もしていないのは秘密である。


移動すること30分。フェイリスの住む高層マンションの前に到着した。


紅莉栖「送迎までしていただいてありがとうございました」

黒木「いえいえ、構いませんよ。お荷物はどういたしましょうか?」

フェイリス「一度うちで荷物を降ろして、まっすぐラボまで送るニャ?」

紅莉栖「うーん、どうしようかな。ここから歩いていこうかな。ちょっと寄り道もしたいし」

フェイリス「了解ニャ。凶真にはもう連絡したのかニャ?」

紅莉栖「あ、メールしとかなきゃ」


送信メール
7/24 11:48
件名:会いに来たZE♪

本文:
今フェイリスさんの家に着いたところ。
ここから歩くから、20分くらいしたら着くかな?

受信メール
7/24 11:49
件名:ご苦労だったな

本文:
すまない、寝ていた。睡眠不足だったものでな。
理由?言わせるな恥ずかしい。
まだラボには俺一人だ。来るなら今のうちだぞ。なんてな。


紅莉栖「よし、と」

フェイリス「残念ニャけどフェイリスはバイトでラボには行けないのニャ。明日行くニャ」

紅莉栖「うんわかった、今日はありがと。それじゃ行ってくるわね」

フェイリス「いってらっしゃいニャー!」

「ハッピーバースマンスだな。クリス」


7月上旬 アメリカ

紅莉栖「あ、ボス。お疲れ様です」

「確か25日だったな。19歳になるのか」

紅莉栖「ええ。ここに来たときはまだ17歳でしたね」

「そこで質問だ。今年の誕生日はアメリカで過ごしたいか? それとも」


ニヤリとキザに笑い、胸ポケットから1枚のチケットを取り出した。

「2週間、日本でリンタローと一緒に過ごしたいか?(キリッ」


紅莉栖(キタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆)



「今回はスケジュールの都合で休暇は2週間しかとれなかった。すまないな」

紅莉栖「い、いえ、ありがとうございます!こんな忙しい時期に2週間も・・・!」

「いいリアクションだ。それだけ喜んでもらえれば休暇を与えた甲斐があるってもんだ」

小さくウインクをし、眉を持ち上げひょうきんな笑顔を見せる。

「2週間しかないかわり、冬にも1か月近い連休を与えることを約束しよう」

紅莉栖「もう!ボスってば、大好きです!」

「ちなみに、移動日数も考慮して休暇は16日間にした。丸々2週間の休暇だぞ」

紅莉栖「もう!ボスってば、超大好きです!」

「ハッハッハ、その言葉はリンタローの為にとっておけ」

岡部「・・・さて、と」

紅莉栖にメールを返信し、ついにやけそうな顔を両手でピシャリと打った。

岡部「シャワー入っておくか。髭も剃らんとな」

顎に手をやる。

しかし、そこに無精髭はない。

岡部「? さっき剃ったんだったっけか」

ソファーから体を起こす。やけに体が軽い。ちょっとばかし浮かれすぎか。

岡部「ふわーぁ、っととっ」

ズルリ。

自然とズボンが脱げた。

岡部「最近また痩せてしまったからな。まあどうせ脱ぐ物だったんだ。手間が省けた」

スルリ。

下着も脱げた。

岡部「・・・まあ、脱ぐ手間が省けた」

ズルズル。

白衣が引きずられる。

岡部「最近洗濯して伸びたのだろうな。うん」

やけにラボが広く感じる。

岡部「まだ寝ぼけていて空間認識ができていないだけだ。そうだ。そうに違いない」


視点がやけに低い。


岡部「だあああああもう!!これ以上自分に言い聞かせるのは不可能だ!何が起きている!!?」


シャワー室の鏡の前に立つ。


映し出されたのは、あっけにとられた表情を浮かべた、10歳にも満たない少年の姿。


おかべ「・・・なんだ、これは」

10年ぶりに見る、懐かしい顔。

右手を上げると、鏡の少年は同じタイミングで左手を上げた。

おかべ「こまった、しこうがおいつかない」


なんだ?なぜ俺はこんな姿になっている?

そうか、これは夢だ。よくあるヤツだ。

ひとまず携帯を手に取る。

待ち受け画面に映し出される、笑顔の紅莉栖。

おかべ(ふふ、もうすぐあえるな・・・)


違う、そうじゃない。

試行錯誤の結果、はっきりと導き出された答え。

「夢じゃないっぽい」

テレビを点けたり、シャワーを浴びたりしてみたものの、「夢っぽさ」が感じられない。


おかべ「えーと・・・えーと・・・」


思考を巡らせるものの、何も思いつかない。


「若返り 対処法」

で検索をしても、美容のページしか出てこない。


今は何時だ。再び携帯を見る。


12:15。


おかべ「まずい。ひじょうにまずい」


天王寺「お、紅莉栖ちゃんじゃねえか。久しぶりだなぁ」

萌郁「あら、お帰りなさい」

紅莉栖「お久しぶりです。さっき日本に着いたんです」

天王寺「で、いの一番に岡部に会いに来たってか。ったく、若ぇなおい」

萌郁「岡部くん、昨日からずっとソワソワしてたのよ。心ここにあらずみたいな」

天王寺「こんな所に寄ってねえで、早く顔見せに行ってやんな」

萌郁「つもる話もあるでしょ、今日は二人っきりにしてあげるからね」

二人に見送られながら階段を上がり、ラボの玄関を開ける。

紅莉栖(あ、倫くんの靴・・・)

他の靴はない。つまり、彼一人。


紅莉栖「ハロー♪」

おかべ「おかえり、くりす」

紅莉栖「・・・?」

サイズの合っていない白衣をまとい、ソファーにちょこんと座る少年。


・・・・・・・・・・・・。


おかべ「まあ、いろいろとぎもんはうかぶだろう。おれもまだせいりがつかないのだ」

紅莉栖「・・・え・・・えっと・・・?ぼく、どこの子?」

おかべ「おかべりんたろう といったらどうする?」

紅莉栖「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・ひょっとしてそれは」

おかべ「ギャグでいっているわけではない」

紅莉栖「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・」

おかべ「どうしてこうなった」

紅莉栖「・・・かわいい・・・」

おかべ「へ?」

紅莉栖「やばい・・・超かわいい・・・!!」

おかべ「いやいや、だいいっせいがそれか」

紅莉栖「ひとまず抱きしめていい?」

おかべ「まて、おちつけ。とりあえずすわってくれ。いきさつをはなす」

紅莉栖「・・・かわいい・・・!」

おかべ「・・・とまあ、こんなところだ。しょうじきおれじしんもよくわかっていない」

紅莉栖「へぇ・・・」

おかべ「きょうはおまえひとりでよかった。ぜんいんしゅうごうだったらどうなっていたか」

紅莉栖「運がよかった、というべきかしらね・・・」

おかべ「ところで、なぜさっきからずっとあたまをなでている」

紅莉栖「あっ、ごめん、無意識だった」

おかべ「そもそもなぜおれはこんなすがたになってしまったのだ」

紅莉栖「うーん、神様から私への誕生日プレ、げふんげふん」

おかべ「きょうのおまえはいつもいじょうにたががはずれているようだな」

紅莉栖「でも、かっわいいなー。抱きしめていい?」

おかべ「わ、や、やめろ。いや、やめなくてもかまわんが」

おかべ「・・・あっ」

紅莉栖「どうしたの?」

おかべ「まさか・・・くりす、おくじょうをみてきてくれないか」

紅莉栖「屋上?なん・・・まさか」

おかべ「かんがえられるりゆうはそれしかない。たのめるか」

紅莉栖「うん、ちょっと見てくる」



紅莉栖「ただいま」

おかべ「どうだった?」

紅莉栖「うん・・・あったよ。タイムマシン」

おかべ「・・・やはりな」

おかべ「すずははいなかったのか?」

紅莉栖「多分いなかったと思う。ノックしたけど返事なかったし」

おかべ「ふむ・・・どうすればよいのだ」

紅莉栖「とりあえず待機ね」

おかべ「くそ・・・ひとをこんなすがたにしておいて、じぶんはゆうゆうとおでかけしおって」

紅莉栖「・・・この姿って、小さい頃の姿そのものなの?」

おかべ「ああ、みまごうことない10ねんまえのおれだ。ごていねいにかみがたまでもな」

紅莉栖「そうなんだ。・・・モテたりした?」

おかべ「いや、そんなきおくはないが」

紅莉栖「そう」

おかべ「おまえの10ねんまえはどうだったのだ?」

紅莉栖「うーん、そうね。あまり変わってないのかも。イマイチ覚えてないけど」

おかべ「ということは、さぞかしかわいいしょうじょだったのだろうな」

紅莉栖「ふぇ!?な、なに言ってるのよこのおませさん!」///

おかべ「おませさんって・・・おれは19さいだ」

紅莉栖「あ・・・ああ、そっか」

おかべ「どうした?きょうのおまえはなにかおかしい」

紅莉栖「3ヶ月ぶりに会った彼氏が10歳近く若返ってるのよ?誰だって多少なりとも混乱するわよ」

おかべ「まあ、ぜんれいはないだろう」

おかべ「おまえも、あした19さいになるのだな」

紅莉栖「うん、ティーンエイジのラストイヤーね」

おかべ「また、おれとおないどしになるのだな」

紅莉栖「実感湧かないな。この状況だと」

おかべ「ひとあしさきにいわせてくれ。 くりす、たんじょうび、おめでとう」

紅莉栖「うん、ありがと・・・これからも、よろしく」

おかべ「もちろんだ、まいとし、こうやっておまえのたんじょうびをいわ


ガチャ!

鈴羽「どうもー!2036年から遠路はるばるやって参りましたー!」

おかべ「おう、”えあ・ぶれいかー”」

紅莉栖「こんにちは・・・」///

鈴羽「あ、紅莉栖さんもう来てたんだ。あっれー?オカリンおじさん、ちょっと見ない間に随分若返ったんじゃなーい?」

おかべ「やはりおまえのしわざかぁぁぁぁぁぁ!!!」

紅莉栖(GJ)

鈴羽「えー、そんなに怒んないでよー。せっかく持ってきたのにー」

おかべ「もってきた?なにをだ?」

鈴羽「ふっふーん、これを使ったんだよ」

紅莉栖「FG、191・・・未来ガジェットなの?それ」

おかべ「かいちゅうでんとうにしかみえないが・・・まさか」


鈴羽「じゃーん!未来ガジェット191号 ”我々はあと10年戦える”!!!」

おかべ「・・・そのなまえ、ダルがつけたな」

鈴羽「あ、わかる?これを使うとね、なんと!」

おかべ「いわなくてもわかるわ!つかったけっかがこれだよ!」

鈴羽「鍵もかけずに寝てるからだよー?強盗じゃないだけありがたいと思わなきゃ」

おかべ「ぐぬぬ・・・」

紅莉栖(GJ)

おかべ「もどるんだろうな?これ」

鈴羽「当たり前じゃん。さすがにそこまで私も無責任じゃないって」

リュックから、似たような形の懐中電灯のようなものを取り出す。

鈴羽「じゃーん!未来ガジェット192号 ”我々は10年待ったのだ!”!!!」

おかべ「ガノタじちょうしろ」

鈴羽「あ、元ネタガンダムなんだ。これを使えばもとどお


ツルッ

ガシャ

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・」

鈴羽「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・」

鈴羽「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・」

鈴羽「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・」

鈴羽「私、もう行かなきゃ・・・短い間だったけど、皆に会えて、嬉しかったよ・・・」

おかべ「まてええええええええええいい!!!!!!」

おかべ「お・ま・え・なぁ~~~!!!」

鈴羽「だーっ!わざとじゃないんだってばー!!」

おかべ「くりすもこのドアホウになんかいってや・・・?」


腕を組み、真剣な表情でうつむきながら思考に耽っている。

30秒ほど経過したところで顔をあげ、鋭い眼光で鈴羽と目を合わせる。

鈴羽はビクッと身をすくませた。

久々に見るこの表情。おかべも背筋が凍る。


鈴羽(やば、紅莉栖さん怒らせちゃったかも・・・せっかくの来日なのにこんなアクシデントで・・・私のバカ!)

依然、紅莉栖は鋭く睨みつける。




そしてゆっくりと拳を前へ突き出し、力強く親指を上げた。

おかべ「サムズアップ・・・だと・・・?」

紅莉栖「まあ、壊れちゃったものは仕方ないわよね。ドンマイ、鈴羽さん」

鈴羽「あ・・・うん、ごめんなさい」

おかべ「いやいや、まずはおれにあやまるべきだろ」

紅莉栖「それ、直るの?」

鈴羽「うーん、父さんなら多分・・・。一度未来に戻って聞いてみるよ。待ってて!急いで行ってくるから!」

紅莉栖「大丈夫、別に急がなくてもいいわよ。無理しないでね」

鈴羽「あ、うん。行ってきます!」

勢いよくラボを飛び出し、屋上へ駆け上がっていく。


おかべ「むしされた。かんぜんにむしされた」


鈴羽(紅莉栖さん・・・怒ってない?)

紅莉栖「まあ、焦る必要もないわよ。そのうち戻れるんだし」

おかべ「そうはいってもなぁ。おまえはいいのか?おれがこんなすがたで」

紅莉栖「うーん、この姿はかわいいからよし」

おかべ「かわいいはせいぎ、か。まゆりもおなじことをいいそうだ」

紅莉栖「もう一回抱きしめていい?」

おかべ「あ、ああ、かまわないが・・・」


ムギュー。

おかべ「・・・あつい。だがわるいきはしない」

紅莉栖「ああもう、かわええ・・・///」

おかべ「きょうのくりすこわい。だがわるいきはしない」

紅莉栖「ところで、服はそのままなのね」

おかべ「つごうよくふくもちぢんではくれないようだ」

紅莉栖「ってことは、白衣の下って・・・」

おかべ「Tシャツと、いちおうパンツははいている。ゆるゆるなのでしばっているが」

紅莉栖「あ、ああそう、よかった」

おかべ「これがぎゃくのたちばじゃなくてよかったな。ダルにあったらどうなるか」

紅莉栖「なにそれこわい」

おかべ「だがちいさいおまえもみてみたいものだ。さぞかしかれんだったのだろうな」

紅莉栖「・・・おませさん」///


おかべ(しかし、こうやってくりすをみあげるというのもしんせんだな)

紅莉栖「そういえば、倫くんこのままじゃ外出も出来ないわよね」

おかべ(あごのラインがすっとしてて、くびもほそい)

紅莉栖「服、買ったほうがいいのかな・・・」

おかべ(いままであまりきにしなかったが、すごくいいにおいがする)

紅莉栖「子供服ってどこに売ってるのかしら?」

おかべ(あしもほそいな。ウエストもひきしまっている)

紅莉栖「? どうしたの?静かになっちゃったけど」

おかべ「このすがたもわるいことばかりではないことにきづいた」

紅莉栖「? そう」

おかべ「しかし、このざこうだと、ならんですわったときにちょっとばかしめのやりばにこまる」

紅莉栖「どういうこと?」

おかべ「・・・」チラッ チラッ

紅莉栖「?・・・ちょっ」

わざとらしく胸元を隠す。

紅莉栖「どこ見てんのよ。スケベ」

おかべ「お、いがいとれいせいだったな。もっとあわてるとおもったが」

紅莉栖「・・・まあ、ね。 これが橋田だったらフルボッコだけど」

おかべ「あいつはああみえてしんしだ。いっせんはこえない」

紅莉栖「紳士ねぇ・・・」

おかべ「たとえまゆりがソファーでねてても、ダルはエロゲからめをはなさない」

紅莉栖「それはそれで自分に自信なくすわね・・・」

おかべ「かんがえてみれば、あうのも3かげつぶりなのだな」

紅莉栖「うん・・・長かった。すごく」

おかべ「この3かげつ、おまえのことをかんがえなかったひはない」

紅莉栖「・・・ありがと」

おかべ「そしてきょう、こうやっておまえにあえたことがなによりもうれしい」

紅莉栖「私も。実はあまり寝れてなかったりして」

おかべ「せっかくのきゅうかだ、むりはするなよ」



おかべ「2しゅうかん、できるかぎりおまえといっしょにいたい。いいか?」

紅莉栖「・・・はい。喜んで」

鈴羽「とうさぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

至「おおう、びっくりした。鈴羽?なんで帰ってきた?」

2036年 橋田家。


鈴羽「実は、かくかくしかじかなの!」

至「やれやれ、そそっかしい。由季に似たな。どれ、見せてみそ」

バツが悪そうに、未来ガジェット191号を差し出す。

至「ふむ・・・なんだ、中身は無事だ。これくらいなら10分で直る」

鈴羽「マジ?よかったー!急いで直して!」

至「・・・今日は24日だな。ってことは、紅莉栖ちゃんがラボに来ているな?」

鈴羽「紅莉栖さん?来てるけど?」

至「ふむ・・・これは面白い。様子を見てみよう。2日後に取りに来てくれ」

鈴羽「えーっ」

ズシン―――

おかべ「ぬおっ」

紅莉栖「ひっ」

咄嗟におかべを庇うように胸に抱える。

紅莉栖「あっ、鈴羽さん帰ってきたんだ」

おかべ(おおう・・・これがぼせいほんのうというものなのか・・・)


鈴羽「ただいまー・・・」

おかべ「ひょうじょうからだいたいさっすることができる」

鈴羽「うん・・・2日かかるって言ってた」

おかべ「むう・・・あしたはこのすがたをみんなにこうひょうしなければならないのか・・・!」

紅莉栖「仕方がないわね・・・」

おかべ「まんざらでもないひょうじょうをうかべないでくれ」


鈴羽(オカリンおじさん・・・未来にも味方はいなかったよ・・・)

おかべ「しかしだ。ぜんいんしゅうごうのまえでいきなりこのすがたをみせたらどうなるものか」

紅莉栖「パニック、大騒ぎは免れないわね」

おかべ「で、ミスターブラウンのいかりのてっけんか。しんだな、これは」

紅莉栖「いや、さすがに子供に手は出さないと思うけど」

鈴羽「じゃあ数人ずつ小分けに見せていけば?まだお昼だし、皆に会う時間はあるでしょ?」

紅莉栖「そっか、今日のうちに顔合わせしておけば、明日の大騒ぎは多少は収まりそうね」

おかべ「いいあんだな、すずは」

鈴羽「いや、まあこれでも責任は感じてるしさ」

紅莉栖「じゃあ、とりあえず店長さんたちに会ってみる?」

おかべ「ミスターブラウンにあいにいくふくがない。つれてきてもらえないか」

紅莉栖「わかった。待ってて」

綯「あっ、紅莉栖おねーちゃんだー!」

買い物袋を下げ、萌郁と手をつないで帰ってくる所に遭遇した。

紅莉栖「お久しぶり。大きくなったわね。お父さんいるかな?」

綯「うん、ちょっと待ってて!おとうさーん!」

萌郁「どうしたの?店長に何か用?」

紅莉栖「うん、割と重要事項。萌郁さんも聞いて欲しい」

萌郁「婚約発表?」

紅莉栖「ち、違います!それはもっと段階的に過程をふまえって私は何を言ってくぁwせdrftgyh」

萌郁「落ち着いて」

紅莉栖(ふぅ・・・。あ、店長さんって綯ちゃんの服とかどこで買ってるのかな)

店の奥から、巨体がのそりと姿を現す。

天王寺「どうした?岡部とケンカでもしたのか?」

紅莉栖「お聞きしたいんですけど、子供服ってどこで買ってますか?」

萌郁「!!!」

咄嗟的に、萌郁は綯の耳を手で抑えた。

綯「?」


天王寺「・・・おいおい、そりゃいくらなんでも気が早・・・まさか・・・デキちまったのか!?」

紅莉栖「はい?・・・・・・はい!?」

天王寺「お・か・べのヤロォ~、ちゃんと責任取れんのか!?説教だ!!」

紅莉栖「わーっ!ちょ、違います!」

天王寺「紅莉栖ちゃん、あいつはロクに避妊もできねぇ大馬鹿野郎だが、新たな命と共に、幸せになるんだぞ」

紅莉栖「わーっ!わーっ!だから違うんですってば!話を聞いてください!!!」

天王寺「・・・」

おかべ「・・・やあ、ミスターブラウン、きょうもいいてんきですね」

萌郁「・・・」

おかべ「もえか、きのうぶりだな」

綯「・・・」

おかべ「なえ、ちょっとみないうちにおおきくなったな。げんきそうでなによりだ」

綯「・・・」///

小動物はソソクサと天王寺の後ろに隠れた。


天王寺「・・・紅莉栖ちゃんの話を聞いたとき、暑さでヘンになっちまったのかと思ったが」

どう見ても10歳にも満たない子供だが、どことなく岡部の面影がある。そしてこの口調である。

天王寺「何が一体どうなっちまったんだ?」

おかべ「すべてはそこにいるみつあみスパッツのしわざです」

鈴羽「ちょ、せめて名前で呼んでよ!」

天王寺「はぁー、こんなおもちゃみたいなモンがねぇ」

未来ガジェット191号を手に取り、しげしげと眺める。

萌郁「こんなもの、どこで手に入れたの?」

鈴羽「あ、えーと・・・とある発明家から借りたの」

天王寺「ふむ・・・ちょっと借りてっていいか?」

鈴羽「えっ、何に使うの?人に使ったらダメだよ!」

天王寺「大丈夫だ。ちょっと試したいことがあってな。すぐ戻る」


数分後、天王寺が満面の笑顔で帰って来た。

天王寺「ありがとよ。こりゃ間違いなく本物だ。よし、お前ら戻るぞ」

萌郁「あっ、はーい。それじゃね。また明日来るから」

おかべ「なににつかったのだ?」

鈴羽「さあ・・・ブラウンさんに変化はなかったけど・・・」


ブラウン管工房、最奥部。
イマイチ調子の悪かった42型のブラウン管テレビが、何故か新品同様の姿になっていた。

紅莉栖「あっ、そうそう。倫くんの服、リサイクルショップがいいんじゃないかと思うの」

おかべ「ああ、そのことをわすれていた」

紅莉栖「今日と明日着るだけならそれでいいだろって店長さんが」

鈴羽「そういやさっき紅莉栖さんの叫び声が聞こえたけど、どうしたの?」

紅莉栖「そ、それは別にいいの!えーと、近場ならどこにあるかなっと。PC借りるわね」


おかべ「こころなしかウキウキしてるようにみえるのだが」

鈴羽「うん、さっき普通におじさんのこと”倫くん”って呼んだよね」

おかべ「あっ、きづかなかった・・・。あいつめ、ひとまえでそのよびなはやめろといったのに・・・!」

鈴羽「いやいや、未来じゃ普通にそう読んでるから聞き慣れてるよ」

おかべ「ふくざつなきぶんだ」

紅莉栖「あ、ここに行ってみよ」

目ぼしい店を発見したようだ。

紅莉栖「鈴羽さんも行きましょうよ」

鈴羽「へ?私も?別にいいけど」

おかべ「ショッピングきぶんか。いいきなものだな」

紅莉栖「ごめんね。なるべく早く帰るから待ってて」

おかべ「ああ、たのむ。このじょうたいじゃそとにでられないからな」

鈴羽「いってきまーす」



おかべ「ルカこはふくをきてからあいにいけばいいか」





メールが鳴った。

受信メール
7/24 14:07
件名:トゥットゥルー♪

本文:
今、お昼なの。紅莉栖ちゃんはもう来てる?


送信メール
7/24 14:08
件名:ご苦労

本文:
ああ、鈴羽も来ている。たった今二人で出掛けてしまったが。
バイトの後、ラボに立ち寄ってもらえるか?できればフェイリスも連れて。


受信メール
7/24 14:10
件名:りょうかーい!

本文:
あ、スズさんも来てるんだ!久しぶりー♪
フェリスちゃんにも聞いてみるね。

添付:201107241409.jpg


おかべ「いや、ひるめしのがぞうはいらない」

送信メール
7/24 14:11
件名:Re:りょうかーい!

本文:
もしダルが来たら、ラボに寄るように伝えておいてもらえるか?


受信メール
7/24 14:12
件名:りょうかーい!

本文:
わかった、来たら伝えとくね。
今日は多分来る気がするんだー♪


おかべ「くそ、はらがへったがなにもない。めしをかいにいくふくがない」

鈴羽「・・・ごめんなさい、せっかくの誕生日にこんなアクシデント・・・」

紅莉栖「いいのいいの。一生忘れられない誕生日になりそう」

鈴羽「服代、半分出すよ」

紅莉栖「そんなのいいって。倫くんの小さい頃の姿が見られただけで十分だから」

鈴羽「いや、自分へのケジメみたいな感じ。いらないっていっても出すよ」

紅莉栖「そう?じゃあ2着買っちゃいましょ。今日と明日の分ね。ふふ♪」

鈴羽「優しいんだね、紅莉栖さん。・・・あとさ、もうひとついい?」

紅莉栖「何?」

鈴羽「さっきからずっとおじさんのこと”倫くん”って呼んでること、気付いてる?」

紅莉栖「え゛っ、嘘!?・・・無意識だった。は、恥ずかしい・・・」///

鈴羽「ま、未来じゃ普通にそう呼んでるから、私は何とも思わないよ」

紅莉栖「あ、そうなんだ。ならよか・・・えっ?」

鈴羽「~♪」

紅莉栖「あ、ここね。おしゃれなお店。リサイクルショップに見えない」

鈴羽「ま、ちゃっちゃと買っていこうよ。おじさん待たせちゃいけないし」

紅莉栖「そうね。今日と明日着るだけだし、適当にね」


・30分後


紅莉栖「これもかわいいわね。どっちが似合うかな?」

鈴羽「うーん、こっち」

紅莉栖「そうね、じゃあこれ、あっ、これもいいな」

そう言うと突然、紅莉栖は目を瞑り、深く考え込んだ。

鈴羽「? 紅莉栖さ


紅莉栖「よし!絶対これ似合う!一着はこれで決まりね。もう一着はどうしようかな。動きやすいのがいいかな」

鈴羽(ノリノリじゃん・・・)



おかべ「くうふくである。まことにくうふくである」

鈴羽「たっだいまー!」

紅莉栖「遅くなっちゃった。お昼も買ってきたよ」

おかべ「おそい!なぜかいものに1じかんはんもかかるのだ!」

紅莉栖「ごめんなさい、決めるのに時間かかっちゃって、はい、倫くんの分」

おかべ「まったく、こんかいはこのハンバーガーにめんじてゆるしてやろう」

鈴羽(あ、もう”倫くん”で通すんだ)

おかべ「くそ、てがちいさい。かたてではむりか」

紅莉栖「・・・」

おかべ「な、なんだ」

紅莉栖「っ、なんでもない」///


紅莉栖(かわいいな・・・)

おかべ(ふたつのいみでたべにくい)

紅莉栖「そうそう、服買ってきたよ」

おかべ「おお、くうふくのせいでそのことをわすれていた」

紅莉栖「まずは1着目。動きやすい服がいいと思って」

おかべ「Tシャツとジャージか。うむ、たすかる。 って、1ちゃくめだと?」

紅莉栖「こっちが2着目。明日用ね」

おかべ「べつにさっきのだけでかまわないのだがな。ふむ。いいセンスだ」

鈴羽「お、気に入った?30分悩んだ甲斐があったね」

おかべ「30ぷんだと!?それでかえりがおくれたのか!」

紅莉栖「だって、沢山あったんだもの、悩んじゃうわよ。白衣はなかったけど」

おかべ「いや、そりゃそうだろう。おれがいうのもなんだが」

おかべ「ああ、ふくがきれた。やっとがいしゅつできる」

紅莉栖「うん、似合ってる。かわいい」

おかべ「かわいいはよせ」

紅莉栖「だって、かわいいじゃない」

鈴羽(クールで知的な紅莉栖さんのイメージが・・・)


ガチャ。

紅莉栖「あ、誰かきた。まゆり?」

ダル「まゆ氏かと思った?残念、僕でしたー!」

おかべ「ああ、おれがよんだ」

鈴羽「ちーっす」

ダル「お、鈴羽も来てたん。二人とも久しぶりだお。オカリンは?」

おかべ「ここだ」

ダル「ん?このショt・・・お子さんは誰ぞ?」

おかべ「おれだ。おかべだ」

ダル「牧瀬氏の知り合い?」

おかべ「だからおれだ」

ダル「鈴羽が連れてきたん?」

おかべ「だからおれがおかべだといっておろうが」

ダル「・・・mjd?」

紅莉栖「mjd」

おかべ「そこのみつあみスパッツのしわざだ」

鈴羽「あはは・・・どもども」

ダル「今北産業」

ダル「はあ、これが未来ガジェット191号・・・」

鈴羽「ちなみに作ったのは父さん本人だよ」

紅莉栖「ちょ、父さんって言っちゃっていいの?」

鈴羽「うーん、もうバレちゃったからね。大丈夫なんじゃない?私自身もまだ存在してるし」

おかべ「あいかわらずかるいやつだ」

ダル「これ、本当に僕が作ったん?」

鈴羽「そうだよ。1、2年前に」

ダル「ちなみに、これの名前は?」

鈴羽「”我々はあと10年戦える”」

ダル「ああ、間違いなく僕のネーミングセンスだお」

おかべ「かくかくしかじか、というわけできょうとあしたはこのすがたのままだ」

ダル「ふむ・・・その未来ガジェット192号の名前は?」

鈴羽「”我々は10年待ったのだ!”」

ダル「さすが僕だお」

おかべ「ということで、ラボメンぜんいんにかおあわせをしようというわけだ」

紅莉栖「あと会ってないのは、まゆり、フェイリスさん、るかさんね」

おかべ「ルカこにはあとであいにいこう。あとのふたりはバイトのあとにここにくる」

紅莉栖「なんとか滞りなくいきそうね」


隣に座る鈴羽に、小声で問いかけてみた。

ダル「鈴羽、修理に2日かかるって、嘘でしょ?」

鈴羽「えっ!な、なんでさ?」

ダル「僕の言いそうなことは、僕が一番わかるのだぜ」

鈴羽「・・・正解。10分で直るみたい」

ダル「やっぱり。でも面白いからこのままにしとこ」

るか「あっ。牧瀬さん!」

神社の清掃が終わったのか、ほうきを片付けようとしているところだった。

紅莉栖「ハロー、お久しぶり。あいかわらずキュートね」

るか「そ、そんな、キュートだなんて、恥ずかしいです・・・?」

紅莉栖と手を繋いだ少年に目を落とす。

るか「牧瀬さんのお知り合いですか?誰かに似てるような・・・」

紅莉栖「ふふ、さて、誰でしょう?」

るか「・・・?  !!!  ま、まさか、岡部さんとのお子さん、とか・・・?」

紅莉栖「へ?」

るか「はっ!ボク、何か変なことを・・・!でも、牧瀬さんと仲良く手を繋いでるからてっきり・・・」

おかべ「おまえはなにをいっているんだ」

紅莉栖「そ、そうよ、子供っていうのはちゃんと段階を踏まえてから授かるものであわわわわ」///

おかべ「おまえらはなにをいっているんだ」

るか「あっ。牧瀬さん!」

神社の清掃が終わったのか、ほうきを片付けようとしているところだった。

紅莉栖「ハロー、お久しぶり。あいかわらずキュートね」

るか「そ、そんな、キュートだなんて、恥ずかしいです・・・?」

紅莉栖と手を繋いだ少年に目を落とす。

るか「牧瀬さんのお知り合いですか?誰かに似てるような・・・」

紅莉栖「ふふ、さて、誰でしょう?」

るか「・・・?  !!!  ま、まさか、岡部さんとのお子さん、とか・・・?」

紅莉栖「へ?」

るか「はっ!ボク、何か変なことを・・・!でも、牧瀬さんと仲良く手を繋いでるからてっきり・・・」

おかべ「おまえはなにをいっているんだ」

紅莉栖「そ、そうよ、子供っていうのはちゃんと段階を踏まえてから授かるものであわわわわ」///

おかべ「おまえらはなにをいっているんだ」

るか「・・・岡部、さん・・・なんですか?」

おかべ「うむ。おれだ。しんじられないきもちもわかるがな」

るかはしゃがみこみ、まじまじとその少年の顔を見た。

るか「・・・たしかに、岡部さんの顔です」

おかべ「なかなかじょうきょうをのみこむのがはやいな」

るか「だ、だって、いつも岡部さんのこと、見てますから・・・」///

おかべ(だがおとこだ)

紅莉栖「ま、色々とあってね。明日パニックにならないように顔見せしてるの」

るか「でも・・・か・・・かわいい、ですね・・・」///

紅莉栖「うん・・・かわいい」///

おかべ「いわれなれてきたじぶんがいやだ」

ダル「なあ、鈴羽」

鈴羽「ん?何?」

ダル「未来から来た、っていうのはやっぱり皆には秘密なん?」

鈴羽「うーん、本来は絶対内緒にしなきゃいけないんだけどね。未来が変わっちゃうし」

ダル「ま、そりゃそうだ罠」

鈴羽「3人にはもうバレちゃったけどね。にひひ」

ダル「それは大丈夫なん?」

鈴羽「大丈夫なんじゃないかな。タイムマシン作成に携わった3人なんだし」

ダル「オカリンの発想力、牧瀬氏の頭脳、僕の技術力があれば”もう何も怖くない”ですね。わかります」

鈴羽「なにそのポーズ?」

ダル「別に」

紅莉栖「ただいま。橋田もまたいたんだ」

おかべ「はぁ、つかれた。ちいさいからだはたいりょくもとぼしい」

紅莉栖「親子水入らず、って所かしら?」

ダル「同い年の娘か。それはつまり種が種を

おかべ「おいやめろ」

鈴羽「何の話?」

おかべ「きくな。それいじょうはなにもかんがえるな」

ダル「しかしショタリンは可愛かったんだねぇ。大人オカリンはどうしてああなった」

おかべ「いまのはききずてならんな。あのすがただってクールなナイスガイではないか」


ダル「ねーy・・・ねーよ」 鈴羽「うーん、ノーコメントかな」 紅莉栖「うん」


おかべ「おれだ。どうやら、みかたはくりすだけとなってしまったらしい」

ダル「さて、僕そろそろ帰るお。帰ってアニメ見なきゃ」

おかべ「もう5じちかいのか。あわただしかったからあっというまだった」

紅莉栖「倫くん、今日はここに泊まるの?その姿じゃ家には帰れないでしょ」

ダル「ん?今”倫くん”って言ったよね?」

紅莉栖「あっ、しまっ・・・」

おかべ「だからきをつけろとあれほど」


ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

鈴羽「わぁ!父さんから謎の黒いオーラが!」

プシュー。

ダル「ま、別にいいお。昔の僕とは違うのだぜ」

紅莉栖「岡部、今日はここに泊まるの?その姿じゃ家には帰れないでしょ」

おかべ「きょうはさいしょからそのつもりだった」

紅莉栖「よくここに泊まってるみたいだけど、ご両親は心配しないの?」

おかべ「わりとほうにんしゅぎでな。いきていればいいらしい」

ダル「それはつまり、”あら、だったらお姉さんが一緒にお泊りしてア・ゲ・ル”ってことですね」

紅莉栖「ふぇ!? バ、バカ!橋田のHENTAI!氏ね!割とマジで氏ね!」//////

おかべ「むすめのまえでそれはさすがにどうかと」

鈴羽「いや、酔ったらいつもこんなんだし」

おかべ「おまえは25ねんたってもブレないのだな」

ダル「いやぁ~」

おかべ「ほめてない」

紅莉栖「私はフェイリスさん家にお世話になるの!そ、そりゃ泊まってもいいけどあqwせdrfgtyhじゅいこ」

おかべ「おまえもあわてすぎだ」

天王寺「お、出かけんのか」

紅莉栖「あ、店じまいですか。これからご飯でも食べに行こうかと思って」

天王寺「女の子二人にガキ一人か。変な組み合わせだな」

おかべ「しつれいな。そうだ、もえかもいくか?」

萌郁「あら、いいの?じゃあ行くわ」

天王寺「ますます変な組み合わせだな。よし、綯、帰るぞ」

綯「・・・あ、うん。バイバイ、オカリンお兄さん達!」///

慌てて軽トラックの助手席に乗り込む綯。

やがて、皆はおかべの顔をを見下ろす。

天王寺(なんだと・・・?)
紅莉栖(ふむん)
鈴羽(へーぇ)
萌郁(あらあら、うふふ)


おかべ「ん?どうした?」


まゆり「トゥットゥルー♪来たよー」

フェイリス「急に呼び出しって、二人のラブラブでも見せ付ける気かニャー?」

紅莉栖「まゆり、お久しぶり」

鈴羽「ちーっす」

まゆり「わー、紅莉栖ちゃんにスズさんだー!久しぶりだねー!」

フェイリス「肝心の凶真の姿が見えないニャ?」

おかべ「ここだ」

まゆり「わー!オカリンが縮んでるよー!」

おかべ「いや、のみこみがはやすぎるだろう」

まゆり「だって、昔のオカリンそのままだよー。懐かしいなー♪」

おかべ「まずはげんいんをきくのがさきではないか?」

鈴羽「どもども、原因の三つ編みスパッツでーす」

おかべ「つまり、かくかくしかじかというわけだ」

フェイリス「便利な日本語ニャ」

まゆり「紅莉栖ちゃん、このオカリン見た時どうだったー?」

紅莉栖「えっ?ま、まあ、キュートなんじゃないかしら」

おかべ「んんー?さっきまでとははんのうがちがうな。さっきまではあれだけかわいいかわいいと」

紅莉栖「ちょ、おま、言わないでよ!」

まゆり「確かにこの頃のオカリンはかわいかったよねー」

フェイリス「このミニミニ凶真をメイクイーンに連れて行ったら、女の子達にモテモテニャ」

おかべ「ほほう、それはつれていってほしいものだ」

紅莉栖「だ、駄目!」

おかべ「んー?なーぜだーぁ?」

紅莉栖「えっと、その、別に他の女の子にモテるのが嫌だとかそういうのではなくて」

フェイリス「冗談だニャ♪」

まゆり「何がダメなのかなー?」

紅莉栖(味方がいない・・・だと・・・?)

フェイリス「そろそろフェイリス達は帰るけど、クーニャンはどうするニャ?」

まゆり「まゆしぃも今日はフェリスちゃんのおうちにお泊りだよー」

紅莉栖「それじゃ、私ももう行こうかな。岡部も疲れたでしょ?」

おかべ「ああ、とにかくふりまわされたいちにちだった」

鈴羽「ま、そのうちいい思い出になるってことで」

おかべ「おまえがいうな」

フェイリス「それじゃ、クーニャンは我々が大事にお預かりしますニャー♪」

まゆり「紅莉栖ちゃん、今日は久々にお話の日だよー?」

紅莉栖「ですよねー」

おかべ「みな、ごくろうだった。あしたにそなえてゆっくりやすむのだぞ」


別れ際、フェイリスがおかべに向かって、小さくウインクをしてみせた。

”大丈夫、あまり遅くまでは付き合せないから”

鈴羽「ふあーぁ、っと。なんか飲み物もらっちゃうよ」

おかべ「なぜおまえはまだここにいる」

鈴羽「別にいいじゃん。することないしさ。ってドクターペッパーしかないし」

おかべ「10じはん、まだねるにははやいか」


ドクターペッパーをあおり、一息ついたところで鈴羽は呟く。

鈴羽「・・・今日は、ごめんなさい」

おかべ「どうした、きゅうに」

鈴羽「私の好奇心でさ、おじさんをこんな姿にしちゃって、ちょっと反省中」

おかべ「ひとのドクペをのみながらはんせいか。まあ、べつにかまわん」

おかべ「くりすはこのすがたをきにいっているようだし、とくにもんだいはない」

鈴羽「やっぱり紅莉栖さん第一に考えるんだ。愛してるね」

おかべ「・・・おれは、あいつをいっしょうまもってやらなければならない。それがつぐないだとおもっている」

鈴羽「償い?」

おかべ「おれなりのけじめだ。これいじょうははなすきはない」

鈴羽「うん、二人には色々あったんだろうね。応援する」

おかべ「いつになくまじめモードだな。いつもどおりでいいのだぞ」

鈴羽「そう? よっ、ご両人!お幸せに!ヒューヒュー!」

おかべ「そうだ、おまえはそれでいい。だがおまえがそれをいうとしんじつみがますな」

鈴羽「まあ、実際未来でも幸せそうだけどね。にっひっひ」

おかべ「そうだ、くりすにはもうはなしたのか?」

鈴羽「話したって、どの事?」

おかべ「ほら、2016ねんに、おれと・・・だな」

鈴羽「ああ、結婚?言ってないよ」

おかべ「そうか」

鈴羽「でも薄々感づいてそう。ちょこっとヒント与えちゃったし」

おかべ「ヒント?」

鈴羽「未来では普段から”倫くん”って呼んでるから気にしなくていいよ、って」

おかべ「それ、ほぼこたえではないか」

鈴羽「前にここに来たときもなんか言った覚えがある。何だったかな」

おかべ「まったくおまえというやつは。まあもうそのときにプロポーズはすましてあるがな」

鈴羽「うっそ、マジ!?」

まゆり「紅莉栖ちゃん、久々の日本はどう?」

紅莉栖「やっぱり暑いわね。湿度が高い」

フェイリス「それでも凶真に会うために来日するってことは、二人の愛は本物だニャ」

紅莉栖「え、あ、う」///

フェイリス「今更隠したって無意味ニャ。なんたってフェイリスは3月にクーニャンの想いを聞かされてるからニャー♪」

紅莉栖「ちょ、それは絶対言わないで!」///

まゆり「なになにー?」

フェイリス「マユシィ、こればっかりは他言無用ニャ。凶真とクーニャンとフェイリスだけの秘密なのニャ」

まゆり「そっかー、じゃあ聞かないでおくね」

紅莉栖(セフセフ・・・!)

まゆり「でも、きっとそれはいいことなんだろうなー♪」


これより、紅莉栖の長い夜は幕を開ける。

まゆり「第2回、ラボメン全員ついに揃ったよ!ワイワイ会議ー!」

萌郁「岡部君の姿が見えないけど?」

まゆり「えっへへー、オカリン、どうぞー!」

玄関の方から、少年は恥ずかしげに姿を現した。

まゆり「なんと!オカリンが縮んでしまったのです!」

ダル「ガイシュツ」
紅莉栖「同じく」
るか「うん、知ってる」
フェイリス「昨日マユシィと一緒に会ったニャ」
萌郁「私も店長と綯ちゃんと一緒に会ったわ」
鈴羽「つーか、犯人は私だし」


まゆり「あれー?」

おかべ「えっ、しらせてないとおもっていたのか?」

まゆり「ちなみにこのオカリンの姿はね、昔のオカリンの姿そのものなんだよー」

おかべ「たしかに。われながらなつかしいかおだ」

紅莉栖(カワユス・・・テラカワユス・・・)///

ダル(オカリンェ・・・時の流れは残酷だお)

るか(はわわ・・・岡部さんの子供時代・・・)///

フェイリス(クーニャンの目がハートマークだニャ)

萌郁(綺麗な岡部君)

鈴羽(二人に男の子ができてたら、こんな感じだったのかなぁ)


一同「・・・」ジーッ

おかべ「おまえら、ひとのかおをみるときはもうすこしえんりょしろ」

まゆり「まあ、それはさておき」

おかべ「えっ、いがいとあっさり」

まゆり「今日は、紅莉栖ちゃんのお誕生日なのです!」

一同「おめでとー!やんや、やんやー!」

まゆり「それでは、一言コメントをどうぞー!」

紅莉栖「あ、うん、私も今日で19歳。まさか日本で誕生日を迎えるなんて思いもしなかった」

紅莉栖「でも、こうやってたくさんの人に祝ってもらえるなんて、凄く・・・その・・・」

一同「?」

紅莉栖「・・・」じわ

まゆり「わわー!紅莉栖ちゃん、泣いちゃダメだよー!せっかくのお祝いなんだからー」

紅莉栖「あ・・・ごめん。つい・・・。みんな、ありがとう!」


おかべ(くりすが、19かいめのたんじょうびをむかえることができた、か・・・)

るか(岡部さん、すごく嬉しそう)

まゆり「第1回、紅莉栖ちゃんお誕生日パーティー!」

ダル「その『第何回~』っての、まだ増えるん?」

まゆり「皆、プレゼントは用意してきたよねー?まずはまゆしぃからでーす。はい」

紅莉栖「あ、かわいい。携帯ストラップ?」

まゆり「うん!ピンク色のうーぱはねー、恋愛運上昇なんだよー」

るか「じゃ、じゃあ次はボクからです。お気に召してもらえるといいんですが・・・」

紅莉栖「オルゴール付きのメッセージカードね。素敵。るかさんらしいわ」

萌郁「次は私。はい」

紅莉栖「・・・カップ焼きそば?箱で?」

萌郁「カップ焼きそばUMA。おいしいのよ、これ」


おかべ(あれ?なんかみたおぼえが)

フェイリス「フェイリスからはこれを送るニャ」

紅莉栖「わぁ、ハート型のコーヒーカップ」

フェイリス「ペアだニャ。もう一つのカップはもちろん・・・」

紅莉栖「・・・うん、ありがとう」

ダル「無類のカップ麺好きの牧瀬氏にはこれを送るお」


http://www.koncent.jp/?pid=17183954


紅莉栖「wwwwwwwwwww」

ダル「偶然にも桐生氏のプレゼントとセットで使えるのだぜ」

鈴羽「ごめーん、私何も用意してなかった」

紅莉栖「うん、なんかそんな気がしてた」

ダル「さて、残すは本命のショタリンなわけだが」

おかべ「ショタリンいうな」

まゆり「何を用意したのかなー?」

おかべ「フッ・・・おれからのプレゼントは・・・」

バッ!

おかべ「フゥーハハハ!おかべりんたろう、このおれじしんだ!」


ダル「うわぁ」

萌郁「うわぁ」

フェイリス「うわぁ」

鈴羽「うわぁ」

まゆり「うわー」


おかべ「やめて そんなめでみないで はずかしい」

紅莉栖(いや、私はそれでもいいけど・・・)

るか(いいなぁ・・・)

8つの焼きそばの湯切り口から放たれる熱湯!そのすべてを排水溝は一滴たらず飲み干す!
その量、およそ3リットル!

湯気!圧倒的湯気・・・ッ!


まゆり「いただきまーす♪」

テーブルに並ぶ8つの焼きそば!
そして、中央に聳え立つは山の如し唐揚げ!

高カロリー!圧倒的高カロリー・・・ッ!


おかべ「なんだ・・・このパーティーは・・・ッ!」

ダル「牧瀬氏、いいのかお?せっかくのプレゼントを皆で食べちゃって」

紅莉栖「持って帰れないし、一人じゃ食べきれないからラボに提供するわ。もちろん私が優先的に食べるけど」

萌郁「気に入ってもらえてなによりだわ」

おかべ「しょくりょうていきょう、かんしゃする」

皆が賑やかに談笑する中、鈴羽の服をチョイチョイと引っ張り、小声で話しかける。

鈴羽「ん?何?」

おかべ「みらいガジェット192ごう、あしたのあさにはなおっているか?」

鈴羽「うん、直ってると思う。なんで?」

おかべ「できれば、あさいちですがたをもどしたい。くりすがラボにくるまえに」

鈴羽「オッケー。今日は一旦戻って、明日の朝もう一回来るよ」

おかべ「すまないな、たのむ。・・・っておれがあやまるりゆうはなにひとつないのだな」


フェイリス「ンニャー?そこのお二人さん、なんの話かニャー?」

おかべ「なんでもない。こっちのはなしだ」

萌郁「あらあら、彼女の前で他の娘とイチャイチャするなんて。紅莉栖ちゃんを悲しませちゃだめよ?」

紅莉栖「へ?何が?」

萌郁「あら、平気なのね。やきもち妬かせようと思ったのに」

おかべ「・・・おまえはもういちど、むかしのせいかくにもどったほうがよさそうだな」


まゆり「それじゃまゆしぃ達は帰るのです。トゥットゥルー♪」

フェイリス「お二人とも、ごゆっくりニャー」

ダル「このあと皆暇かお?カラオケとかいかね?」

まゆり「おー、いいねー。フェリスちゃん歌上手なんだよー」

ダル「それはぜひ蝿帳させていただきたく存じます!鈴羽も行こうず」

鈴羽「私も?いいけど」

まゆり「オカリンと紅莉栖ちゃんも今度一緒に行こうねー」

おかべ「かんがえておく」

紅莉栖「うふふ、いってらっしゃい」


当人不在の2次会へと向かう一行を見送ると、溜息を吐きつつソファーにドッカリと座った。

おかべ「はあ、つかれた。もう8じか」

紅莉栖「お疲れ様。体力無いわね」

おかべ「むかしのおれはこんなにつかれやすいたいしつだっただろうか」

紅莉栖「はい、コーヒー」

おかべ「おお、サン・・・ハートがたのカップ?」

紅莉栖「フェイリスさんからのプレゼントよ。見てなかったの?」

おかべ「ほう、こんなものがあるのか」

紅莉栖「ペアでくれたの。大事にしなきゃ」

おかべ「あいつはああみえてきがきくやつだからな」

紅莉栖「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「・・・」

おかべ「・・・」

紅莉栖「あの」

おかべ「あの」

紅莉栖「な、なに?」

おかべ「いや、おまえからでいい」

紅莉栖「・・・”プレゼントは俺自身”って・・・どう捉えるべき?」

おかべ「ん?・・・ああ、そのままのいみだ」

紅莉栖「・・・」///

一瞬のタイムラグの後、耳まで赤くなる。

その姿は大変愛しく、


おかべ「・・・ぶふっ」


大変おかしかった。


おかべ「なーにをそうぞうしているのだ。HENTAI」

紅莉栖「う、うるさい!何も想像してないわよ!」///

おかべ「あのことばは、とっさにでたことばだ。とくにいみはない」

紅莉栖「咄嗟に、ってことは、何も用意してなかったってこと?」

『(´・ω・`)』の如くションボリする。


こいつをからかうのは楽しい。

もう少し反応を楽しもうかとも思ったが、その悲しげな表情に心が痛んだ。

人を悲しませるのは趣味ではない。


おかべ「じょうだんだ。ちょっとまっていろ」

研究室の奥深くから、綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出す。


おかべ「プレゼントはおれじしんだといったな。あれはうそだ」

紅莉栖「・・・何が始まるんです?」

おかべ「開けてみろ」

紅莉栖「・・・ネックレス・・・」

おかべ「・・・あまり、こうかなものではないが」

恥ずかしい。俺は紅莉栖から目を逸らした。


三日月をモチーフにしたペンダントに、ハートを象った小さなチャーム。

刻印された"Artemis"の文字。

おかべ「アルテミス、じゅんけつをつかさどる、つきのめがみのなまえだ。おまえのイメージにぴったりだろう」

ハートのチャームをよく見てみると、こちらにも小さく刻印が打たれていた。

" for Chris From Rintaro "

おかべ「それは・・・その、”えいえんのあい”、だ。ついかりょうきんでもじをいれてもらった。しょくにんわざだな」

紅莉栖「・・・」

おかべ「・・・きにいらなかったか?」

紅莉栖「・・・やばい、私もう少しで嬉死しそうなんだけど・・・」

おかべ「しぬとかやめて。だが、きにいってくれたようでよかった」


おかべ(ラボメンガールズwithルカこ、アドバイスにかんしゃする)

そのころ、カラオケルーム・・・ッ!

まゆり(オカリン、もう紅莉栖ちゃんに渡したかな?)

るか(岡部さん、今頃はプレゼントを・・・)

フェイリス(クーニャン、どんな反応を見せるかニャー)

萌郁(紅莉栖ちゃん、今頃泣いてたりして。かーらーのー?)


ダル「みんな、どしたん?心ここにあらずだお」




鈴羽(困った・・・知ってる曲が無い・・・!)

紅莉栖「はー・・・」

子供のような無邪気な笑顔で、ネックレスをまじまじと眺める。

かれこれ、10分。

おかべ「こどもかっ」

紅莉栖「・・・誕生日プレゼントなんて貰ったの、10年ぶりかな」

無邪気な笑顔から一転、フッと息を吐き、バツが悪そうな苦笑いを見せて肩をすくめた。

紅莉栖「パパもママも忙しそうで、こうやって祝ってもらったことなんて一度も無かったかもしれない」

おかべ「・・・さみしかったのか」

紅莉栖「最初はそうだったけど、誕生日なんてこんなものだと思ってたから」

おかべ「にほんにくれば、ラボメンのみんなはいつだっておまえをしゅくふくしてくれる」

紅莉栖「うん・・・祝福されるって、嬉しいものなのね」

おかべ「くりす・・・」

紅莉栖「倫くん・・・」

おかべ「・・・と、いいムードになったところで、おれ、こんなすがたなんだよな」

紅莉栖「うん、さすがに・・・ね」

おかべ「たいざいきかんは2しゅうかんだったな」

紅莉栖「うん、来月の6日くらいまでかな」

おかべ「みじかいな。あっというまにそのひがきそうだ」

紅莉栖「そのかわり、冬は1ヶ月近く来れるから安心して」

おかべ「そうか。たのしみにしているぞ」

紅莉栖「誕生日、12月14日よね?一緒に祝えたらいいな」

おかべ「ああ、そうしたい」

紅莉栖「まだ日程は決まってないから、決まったら連絡するから」

おかべ「うむ。しかしやすみのおおいしょくばだな」

紅莉栖「日本が少なすぎるのよ」

おかべ「そうなのか?アメリカでは1かげつのやすみとかふつうなのか?」

紅莉栖「祝日とかは日本より全然少ないけど、言えば休暇になる、みたいな感じ」

おかべ「じゆうのくにだな」

おかべ「コミマにはきょうみはあるか?」

紅莉栖「コミマって、有明の?うーん、無くはない」

おかべ「ほう?かつてのせかいせんではあんなにノリノリでBLをなんじゅっさつもかいあさっていたというのに」

紅莉栖「ちょ、おま!!何よそれ!?」

おかべ「こうしゅうのめんぜんであんなあられもないなコスプレもして・・・」

紅莉栖「ぎゃー!」///

おかべ「あげくのはてには『こんなすがたをみせるの、あんただけなんだからね・・・///』などとのたまい・・・」

紅莉栖「やめてー!嘘よね!?それは嘘よね!?」

おかべ「ああ、ぜんぶうそだ」

ガスッ ガスッ ガスッ

おかべ「やめてくださいしんでしまいます」

紅莉栖「氏ね!死ねじゃなくて氏ね!」

おかべ「だがじっさい、おまえのコスプレをみたいといったら、どうする?」

紅莉栖「・・・考えとく」///

紅莉栖「あ、もう11時・・・」

おかべ「そろそろかえるのか」

紅莉栖「うん、早いなぁ」

おかべ「まったくだ。あしたもこれるな?」

紅莉栖「もちろん。何時に来ればいい?」

おかべ「しょうごあたりにくるといい。どこかでかけよう」

紅莉栖「デート?」

おかべ「う、うむ、そうだ、ばしょはかんがえておこう」

紅莉栖「うん、楽しみにしとく」

おかべ「それじゃあな。きをつけてかえれよ」

紅莉栖「あ、そうだ」

ポケットに大事にしまいこんでいたネックレスを取り出す。

紅莉栖「これ・・・付けてくれる?」

ネックレスを手に、紅莉栖の首に手を回す。

今の俺は腕が短い。首の後ろまで手を伸ばしたら、紅莉栖との距離は幾許もない。

おかべ(ふおお・・・なんというリアじゅうイベント・・・!)

紅莉栖の大きく透き通った瞳に見つめられる。

恥ずかしさのあまり目を背けたかったが、あまりの美しさ故、視線を外すのが勿体無かった。

そのせいでうまくネックレスがはまらない。

おかべ「くっ、どこだ、これか、ちがう。ここか・・・あれ?なぜだ」


チュッ。

おかべ「!?」

紅莉栖「・・・遅いから」


それが合図だったかのように、ネックレスは一本の輪となる。

紅莉栖「サイズもピッタリ。・・・本当に嬉しい。宝物にするから」

首にかけられたネックレスに優しく手を当て、潤んだアクアマリンの瞳を瞬かせて優しく微笑んだ。

紅莉栖「それじゃ、おやすみなさい」

「うーん・・・おはよう、セイラ」

”彼は有名なシネマ・アクターだ”

そう紹介されれば、十中八九信じるであろう、端正な顔立ちと風格。


男は愛する者に挨拶をすませ、部屋のブラインドを開ける。

「悪くない天気だ」


軽めの朝食をすませ、世界の天気予報へとチャンネルを変える。

「ふむ、ついている」

スーツケースの中身を再三確認し、愛用のサングラスをかける。

「セイラ、少しの間家をあけるが、いい子にしているんだぞ」




―――12時間後―――




「ハッハー!俺まで日本に来てしまったぜ!」

「えーと、アキハバラは・・・と」

スマートフォンに表示された乗り換え案内に従い、目的地へと向かう。


「ほう・・・ここがアキハバラか・・・噂通りだ。リンタローはこの近くに住んでいるのだろう」


画面に表示されたマップを頼りに、アキハバラを歩く長身のシネマ・アクター。

「まずは私用を済ませてしまおう。道はこっちで合っているのか?」


ほどなくして、目的地は見つかった。

「ふむ・・・ネットで見た通りの看板だ。読めないが」

笑みがこぼれそうになるのを抑え、店内へと向かおうとした矢先、何者かに呼び止められた。


「エクスキューズミー、テレビの取材なんですが、お時間よろしいでしょうか」←英語

「ん?」


15分後、

その店の前を紅莉栖が通ったが、己の上司がそこにいる事など気づく由もなかった。

なにしろ、彼女も知らなかったのだから。

鈴羽「おっはよーさーん」

9時、例の如く鍵の閉まっていないラボに元気な声が響いた。

おかべ「んが・・・なんだ、おまえか」

鈴羽「ちょっとちょっとー、早いうちに来てっていったのオカリンおじさんじゃんかー」

おかべ「このからだにカフェインはききすぎるようでな、5じまでねむれなかった」

鈴羽「やれやれ、たった一杯で夜も眠れず、だね」

おかべ「ペリーらいこうか。ほかにもりゆうはあるがな」

鈴羽「どしたの?」

おかべ「ないしょだ」

鈴羽「何それー。気になる言い方するなぁ」

おかべ「で、もってきたか」

鈴羽「へっへーん。ふっかーつ!」

おかべ「おお、でかした。 いや、おまえをほめるりゆうはなにひとつない」

鈴羽「つれないなぁ」

おかべ「さて、さっそく・・・」

鈴羽「ちょ、ちょっと!なんでいきなり服脱いでんの?頭おかしくなった?」

おかべ「なんでって、からだはもどっても、ふくはそのままなのだぞ」

鈴羽「あ、なるほどね。私の前でいきなり脱ぎだすから何事かと思ったよ」

おかべ「・・・それもそうだな。あたまがはたらいてなかった」


シャワールームに本来の服と未来ガジェット192号を持ち込む。

おかべ「のぞくなよ」

鈴羽「おじさんの体なんて興味ないよーだ」

おかべ「おないどしだといっておろうが!いや、いまはおまえより10さいとししただ!」

鈴羽「にっひっひー、いいから早くやっちゃいなよ」


鈴羽(父さんの友人が私と同い年で、見た目は9歳。・・・なんだろうね、こりゃ)

おかべ「なんだろう、すごくきんちょうする」

パンツ一丁。縛っていた紐を解く。

ハラリ。

生まれたままの姿で、右手にはライトのようなもの。

おかべ「どうみてもへんしつしゃです。ほんとうにありがとうございました」


ライトのようなもののスイッチに指をかける。

おかべ「いざ!おかべりんたろうよ、かつてのからだをとりもどすのだ!」


固く瞑った目を開く。見慣れた目線の高さ。見慣れた体。

岡部「おお・・・」

聞き慣れた声。

岡部「戻った・・・」


ガラッ

岡部「戻った!戻ったぞ!」

鈴羽「だーーーっ!!服着てよ!!」

岡部「ああ、懐かしきかなこの白衣」

一昨日まで袖を通していた白衣が、こんなにも愛しいとは。


ガラッ

岡部「岡部倫太郎、今ここに復活!」

鈴羽「おー、お帰り」

岡部「名前欄が漢字!台詞も漢字!当たり前のことがこんなにもありがたいとは!」

鈴羽「お、メタフィクション」

岡部「視聴者の諸君、待たせたな!俺が岡部倫太郎”19歳”だ!フゥーハハハ!」

鈴羽「心なしかスカイクラッドの観測者が聴こえてきた」

岡部「あえてもう一度言おう!俺が岡部倫太郎”19歳”だ!フゥーハハハ!」

鈴羽「0が過去で1が未来ー♪」

岡部「この物語の行方は、この手の中にある!」

鈴羽「収束をするー♪」

岡部「そろそろ自重しよう」

鈴羽「やりすぎはよくないね」

鈴羽「ところでさ、なんで朝早くから戻りたかったわけ?」

岡部「出かけたい場所があってな」

鈴羽「お、デートかい?」

岡部「ああ、葛飾に行く」

鈴羽「へぇ、なんでまた葛飾まで?」

岡部「実はな・・・」

PCを立ち上げ、とあるページを開く。


鈴羽「へぇー、いいじゃん!私も行こ!」

岡部「構わんが、完全別行動だぞ」

鈴羽「わかってるわかってる。空気ぐらい読むって」

岡部「そうだ、未来ガジェット、返しておく」

鈴羽「ん、今度は壊さないように用心してプチプチで包んで持ってきたんだよ」

岡部「25年経ってもその手法は健在なのか」

岡部「さて、久々にコンビニに行ってこよう」

鈴羽「あ、私も行く」

ビルを出てすぐ、ブラウン管工房に遊びに来ていた綯と会った。

綯「あ」

岡部「おう、久々だな」

綯「もとにもどれたんですねよかったですね」

岡部「なんだその棒読みとあからさまにげんなりとした表情は」

綯「べつになんでもないですどこかでかけるんですかいってらっしゃい」


岡部「なんだあいつ?目のハイライトがなかったぞ」

鈴羽「え、気づかないの?一昨日の綯さんのあの反応見たのに?」

岡部「一昨日?ああ、なんかドギマギしてたが、なんか関係が?」

鈴羽(鈍感なのこの人?)

岡部「というかお前にとっては綯も『さん』なのか」

フェイリス「おはようニャンニャーン!」

紅莉栖「あ、おはよう。朝から元気そうね。ふわ~ぁ」

フェイリス「そういうクーニャンは眠そうだニャ」

紅莉栖「うん、ちょっと寝るのが遅くなっちゃって」

フェイリス「ニャニャ?そのネックレス、昨日まではしてなかったニャ。もしかしてー?」

紅莉栖「・・・気付くのが早いわね。昨日、もらったの」

フェイリス「ニャ、ニャんだってー!oh my cat!  嬉しくて眠れなかったのニャ?」

紅莉栖「・・・うん(何今の)」

フェイリス「へぇー、三日月のモチーフ、すごく似合ってるニャ」

紅莉栖「そう?ありがと。一生大事にしなきゃ」

フェイリス(ま、アドバイスをしたのはフェイリス達なんだけどニャ。選んだのは凶真ニャけど)

天王寺「お、岡部。元に戻ったのか」

岡部「ええ、おかげさまで」

天王寺「そうか、だから綯の元気が急に無くなったのか」

岡部「ああ、さっき会いましたよ。何かあったんですか」

天王寺「もう少しで俺はお前を半殺しの目に会わせる所だったぜ」

岡部「は?何故!?」

天王寺「だが今の俺は鈴羽ちゃんのおかげで気分が良いから特別に免じてやる。命拾いしたな、岡部」

ニヤリ、と冷たい笑いを浮かべ、天王寺は店内へと消えていった。


岡部「何?何なの?天王寺家に何があった?」

鈴羽(よく紅莉栖さんオトせたなぁこの人・・・)


萌郁「あら岡部君おはよう。もう元に戻っちゃったのね。つまんないの」

快晴。7月の東京にしては過ごしやすい気温。

駅からラボへと向かう足取りは自然と軽やかになる。


紅莉栖「♪~  ん?」

道中に立ち並ぶショップのうちの1軒に小さな人だかりができていた。

隙間から店内をヒョイと覗いてみると、大きな機材を抱えた男性が数人、何かを話し合っている。

紅莉栖「ああ、取材かなんか」

秋葉原でテレビ取材のシーンを見ることはそう珍しいことではない。過去に2回目撃した。


アメリカ育ちの彼女には野次馬精神というものは備わっていない。

取材される側の経験も少なくないので、テレビカメラにもの珍しさも感じない。興味も無いので早々にその場を後にした。


紅莉栖「あ、でもメールしとこ」

受信メール
7/26 11:57
件名:もうすぐ着くよ

本文
今ラボに向かってる途中。
なんかテレビ取材?みたいなのやってた。
日本人って野次馬になるの好きよね。


受信メール
7/26 11:59
件名:ニュースなのだZE

本文
とらのあなにいたらテレビの取材が来た件について

多分僕も映ったと思われ。あぁん、恥ずかしいお///



岡部「お、ニアミス」

紅莉栖「さて今日はどこに連れてってくれるのかしら」

階段を上がりながら、つい色々な想像をしてしまう。

いかんいかん、ニヤけてるぞ。私。

ドアノブに手をかける。鍵は開いていた。

紅莉栖「ほんっと無用心ね」

一人の靴しかない事を確認しつつ、中へと進む。

紅莉栖「来たぞー」


岡部「よう」

紅莉栖「あっ・・・」


岡部「待たせたな。岡部倫太郎、19歳だ」

岡部「見ての通り、完全復活を遂げた! さあ、この胸に飛び込んで来るがいい!」

一呼吸の沈黙。大げさに開かれた両腕の間に、紅莉栖は俯きながらも飛びついてきた。

岡部「ぉおっ!本当にきた!」

紅莉栖「・・・会いたかった。すごく、会いたかった。この姿に」

岡部「おっと、また泣くか?泣き虫少女め」

胸にうずめた顔を上げ、涙の浮かんだ瞳で岡部を見上げる。

紅莉栖「・・・我慢した」

岡部「したといえるのかそれは。まあいい」

頭をワシワシと撫でる。

紅莉栖「・・・やっぱ、この方がいい。下から見上げた時の顔、素敵だから」

岡部「下から見るお前も悪くなかったが、やはりその上目遣いがいい」


数秒の沈黙。見詰め合ったまま、二人はフフッと笑う。


紅莉栖「おかえり、倫くん」

岡部「おかえり、紅莉栖」

仲良く、ソファーに寄り添う。

紅莉栖「うん、やっぱりこれ。落ち着く」

岡部「昨日まではあんなにかわいいかわいいと連呼していたのにな」

紅莉栖「う」

岡部「まるで犬か猫を可愛がるかのようにな」

紅莉栖「ああ、そうかも。恋愛感情とは違う」

岡部「まあ、今回の出来事もそのうちいい思い出になるだろう」

紅莉栖「うん、いい夢見させてもらった」

岡部「夢?」

紅莉栖「その・・・倫くんとの、子供?みたいな妄想を、ですね、少しばかり」///

岡部「そんな事まで考えていたのか。だが俺は娘がいい」

紅莉栖「そればかりは・・・コウノトリの気まぐれね」

岡部「野菜をたくさん食べるといいかもしれない」

紅莉栖「野菜?」

紅莉栖「で、今日はどこに?」

岡部「うーむ、そうだ、花火を見に行かないか」

紅莉栖「花火!」

子供のように目が輝く。

岡部「今日、柴又公園で打ち上げ大会があってな。ちょっと遠いが電車で行こう」

紅莉栖「ちょっとちょっと何それ!超ロマンチックじゃないの!絶対行く!」

岡部「おおう、食いつきが凄い」

紅莉栖「だって、花火なんて小学生の時に見・・・で、何時から?」

岡部「6時半だ。そうだな、5時にラボに集合にしよう」

紅莉栖「集合って、どこか出かけるの?」

岡部「実家にちょっと用があってな。3時頃に一度帰るつもりだ。お前はここでゆっくりしていてくれ」

岡部「おっと、3時を過ぎてた。一度帰る」

慌てて身支度をする。

岡部「お前といるとつい時間を忘れるな。それじゃ、また後で会おう」

紅莉栖「うん、いってらっしゃい」



紅莉栖「花火、花火、花火、花火、花火、花火・・・」

止まらないニヤニヤ。

紅莉栖「花火、花火、はな・・・あっ」


先ほどまでのニヤニヤから一転、スタンバイ中だったパソコンを起動し、真剣な表情でキーワードを打ち込む。

紅莉栖「お願い、間に合って・・・!」


どこかに電話をかけ、通話の終了と同時にラボを飛び出していった。

都内、某マクドナルド。

”シネマ・アクター”は突然のテレビ取材を終え、お礼として受け取った封筒をしげしげと眺めていた。

「日本という国はクールだ。テレビスタッフの礼儀も素晴らしく、こんな封筒ですら美しい」

”謝礼 ”と書かれ、超結びの水引がプリントされた、ごく一般的な封筒。

「紅白は演技のいい色だとクリスが言っていたな。この紐の結び方にもきっと意味があるのだろう」

中身にはさほど興味はない。だが、この封筒は気に入った。帰国したら部屋に飾ろう。


るか「やっぱ混んでるね」

まゆり「あっ、あそこ空いてるよー」

るか(わっ、が、外人さんの隣・・・)


それに、日本のガールは総じてキュートだ。素晴らしい国だ、日本。


「ハーイ、キュートガールズ!」

まゆり「ハーイ♪」

るか(あ、あわわ・・・)

「君達はいくつだい?」←英語

まゆり「せぶんてぃーん!」

るか「ミ、ミートゥー(ま、まゆりちゃん・・・)」

「ほう、高校生か。名前を聞かせてもらっていいかい?」←英語

まゆり「あいあむまゆり・しいな。ぷりーずこーるみーまゆしぃ!トゥットゥルー♪」

るか「アイアム ルカ・ウルシバラ(・・・ナンパ?)」

「いい名前だ。最後に写真だけ撮らせてもらっていいかな?ツイッターに載せたいんだ」←英語

まゆり「写真をツイッターに載せたいんだって。るかくんはいい?」

るか「う、うん、いいけど(まゆりちゃん、ヒアリングすごい)」

まゆり「るかくん、ついに世界デビューだねー♪」


ツイートが投稿されました。


「よし、と。またいつかどこかで会えるといいな。グッバイ!to-to-loo!」←英語

  【画像】
  天使は存在するかどうかだって?日本のマクドナルドにいたよ。 マユスィー、ルカ。To-to-loo.
  数秒前 iphoneから

カラン、コロン。軽快な足音が秋葉原に響く。

ある者はその美しさに目を奪われ、またある者はテレビの撮影か何かかと辺りを見渡す。

昔から注目されることに慣れている紅莉栖は、周りの目など気にすることもなくラボへと足を運んでいた。

紅莉栖「よかった、間に合って。下駄なんて初めて履いたかも」

一足ごとにフワリ、フワリとポニーテールが揺れる。

紅莉栖「あら、ブラウン管工房、もう閉まってる。珍しいわね」


ラボのドアを開けると、見慣れたものではない2足の靴が並んでいた。

まゆり「わー、紅莉栖ちゃん、浴衣だー!」

ダル「お?どしたん?それ」

紅莉栖「レンタル。一式でも意外と安いのね」

↓俺からも

紅莉栖「それにしても変わった組み合わせね。二人でどこか行ってたの?」

まゆり「ううん、るかくんとお出かけしてて、この後バイトだから寄っただけなのです」

ダル「僕は買い物帰り。もすこししたら帰るお」

紅莉栖「そう、私もあとで出かける」

ダル「うん、見たらわかる。どうせデートっしょ?」

まゆり「今日って花火大会があったよねー?行くの?」

紅莉栖「うん、誘われたの」

ダル「さすがオカリン、牧瀬氏にメロメロだお」

まゆり「ほんとだねー。紅莉栖ちゃんのこと大好きだもんねー」

紅莉栖「え、いや、そんなでもないわよ。普通に『見に行かないか』って誘われただけだし」

まゆり「実はね、2週間くらい前からずっとどこに行こうかって考えてたんだよー」

ダル「ま、牧瀬氏の前じゃあんな姿見せられん罠。話しちゃうけどwwwwwwwwwwww」

2/3を消化したところで、9時くらいまで離脱。
今日は落ちそうな予感。落ちたらまた立てよう。

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2280492.jpg
これでいいのか?

>>180
よくやった

ノシ

オカクリ以外は多分違う世界線の話なんだよ。きっと。

再会はもう少し待って。

  ( ^)   地面か…
  (  ) ̄
(  | |  )

  _(^o^)  フンッ!
    ( )|
  (  | |  )

       ( ^o)  うわっ!
      ̄(  )
   (   //  )

             (o^ )  なんだこれ!熱っ!
            (  )ヽ
             | | 

..三  \ \  V  /   (o^ ) 三 マグマだー♪
 三  \ \  V  / (  )ヽ 三
三   \ \  |  /  / /   三


三  ( ^o) \  V // / /  三  マグマだー♪
 三/( ) \  V / (o^/   三
三   ヽヽ  \ |  /(  /  三

..三/( )  \  V  /    (o^ ) 三 
 三  ヽヽ^o) \ V   /  (  )ヽ 三
三    \  )\ | (o^/  / /   三

  ( ^)   だから♪
  (  ) ̄
(  | |  )

  _(^o^)  今♪
    ( )|
  (  | |  )

       ( ^o)  1秒ー♪
      ̄(  )
   (   //  )

             (o^ )  ごとに~♪
            (  )ヽ
             | | 

..三  \ \  V  /   (o^ ) 三 世界ー♪
 三  \ \  V  / (  )ヽ 三
三   \ \  |  /  / /   三


三  ( ^o) \  V // / /  三  線をー♪
 三/( ) \  V / (o^/   三
三   ヽヽ  \ |  /(  /  三

..三/( )  \  V  /    (o^ ) 三 越ーえてー♪
 三  ヽヽ^o) \ V   /  (  )ヽ 三
三    \  )\ | (o^/  / /   三

2週間前―――

るか「あ、岡部さん、26日に柴又公園で花火大会があるみたいです」

岡部「何ッ!?」

ダル「ああ、毎年やってるヤツね」

岡部「ふむ・・・それはいいものか?」

まゆり「うん、女の子はねー、そういうイベント好きだよー」

萌郁「紅莉栖ちゃん、花火なんてしばらく見てないでしょ?いいと思うわよ」

フェイリス「『花火よりも、お前のほうが綺麗だよ』 なーんて台詞言っちゃえばいいニャ!」

岡部「よし、決定だ!大至急、日時と場所を調べ上げてくれ!」

ダル「いや、だから26日に柴又公園だって」

岡部「お?おお」

萌郁「心ここにあらず過ぎよ」

岡部「柴又か、行った事がないな。ダル、ルートは?」

ダル「えーと、2,3本乗り換えればおkみたい」

岡部「規模は?」

るか「約7000発って書いてあります」

岡部「よし、相手にとって不足はない!決定だ!」

フェイリス「服装はどうするニャ?まさかその格好ではないニャ?」

岡部「服装?考えてもいなかった。うーむ・・・」

萌郁「浴衣でいいじゃない。岡部君身長高いから似合いそう」

岡部「浴衣か・・・親父、持っていただろうか」

ダル「レンタルもあるみたい。セットで7~8千円が相場だってさ」

岡部「意外と安いな。いざとなればそれだ」

まゆり「おおー、太っ腹だねー」

岡部「当たり前だ。俺は今月の為に汗水垂らしてバイトに勤しんだのだからな」

ダル「って、交通量調査じゃん。僕まで道連れにして」

ダル「・・・ってな事があったわけ」

まゆり「土日はずっとバイトしてたから、結構稼いでたよねー」

ダル「ま、付き合わされたおかげで僕の財布も潤ったわけだが

紅莉栖「・・・そう、なんだ」

ネックレスに手を当てる。

ダル「狂気のマッドサイエンティストはどこへ行ったんだか。それにしても・・・ふーむ」

紅莉栖「な、何よ、ジロジロ見ないでよ」

ダル「その格好、完成度テラタカス」

まゆり「うんうん、スタイルがいいからモデルさんみたい」

紅莉栖「そう?気に入ってくれるかな」

ダル「その辺りは無問題だお。だって」

ダル「浴衣姿の嫌いな男なんかいません!!」
まゆり「浴衣姿の嫌いな男なんかいません♪」

ダル「あ、でももうちょっと胸元をはだけさせて生足を」

紅莉栖「それ以上言うと生きたまま脳をスプーンでかき出すぞ」

ダル「ひいぃ、ノータリンはご勘弁」

紅莉栖「でも、そこまで入念にプランを練ってたなんて思わなかった。さも今思いついたように言ってたから」

ダル「それがオカリンクオリティー」

まゆり「オカリン昔からね、平静を装って、心の中ではあれこれ考えるタイプなんだよ」

ダル「男子中学生にはよくあること」

まゆり「ほえ?そうなの?」

紅莉栖「聞かないほうがいいわよ」



”まゆりを助けるため、幾度もタイムリープをして、ありとあらゆる手を尽くした”

去年、岡部が私にだけ、全てを話してくれた。

紅莉栖(きっとその時も平静を装って、いつも通り優しく接してあげてたんだろうな・・・辛かったでしょうね)


まゆり「どうしたのー?」

紅莉栖「ううん、なんでも」

ダル「あ、そういえば今日とらのあなにいたらテレビ取材が来た件について」

まゆり「へー。どんな?」

ダル「イケメンなアメリカンが色々買い物してた。容姿は違えどオタクは世界共通なのだぜ」

紅莉栖「ああ、多分私が見た人だかり、それね」

まゆり「あっ、イケメン外人さんといえばね、まゆしぃ達も会ったのです」

ダル「ほう」

まゆり「るかくんとマック行ったらね、はーい、きゅーとがーるず!って笑顔で挨拶されたの」

紅莉栖「まったく男って。多分そいつイタリア人よ」

まゆり「でねー、写真撮って、ツイッターに投稿して挨拶してどっか行っちゃった」

ダル「イケメンイタリアンじゃなかったらタイーホですよねー」

紅莉栖「ちょっと待って、ガール”ズ”?」

まゆり「多分るかくんのこと女の子だと思ってたんじゃないかなー。エンジェルがどうのこうのって言ってたもん」

ダル「知らぬが仏ですね。わかります」

ペタシ、ペタシ。

ラボの階段を、聞きなれない足音が反響する。

まゆり「あ、オカリン来たのかなー?」

ガチャ。

岡部「ん、下駄?誰のだ」


岡部「あ、浴衣・・・」
紅莉栖「あ、浴衣・・・」

岡部「・・・おぉ・・・」
紅莉栖「・・・おぉ・・・」

岡部「・・・」///
紅莉栖「・・・」///


ダル「氏ね」

まゆり「おおー、オカリンも浴衣だー!お揃いだねー」

ダル「氏ね」

まゆり「その浴衣、どうしたのー?」

岡部「親父のだ。草履もサイズがちょうど良かったので拝借してきた」

まゆり「似合うねー♪そうだ、今度から毎日その格好でラボに来ればいいと思うよー」

岡部「毎日これを着ろと?面倒すぎる。 ところで、お前、その浴衣は?」

紅莉栖「レンタル。岡部が出てった後、急いで行ってきた。・・・似合う?」

岡部「う・・・うむ、悪くないのではないか」

まゆり「ダメだよそれじゃー。紅莉栖ちゃんはオカリンにかわいいって言って欲しいんだよー」

岡部「ぐ・・・で、俺はどうだ?鏡を見てもイマイチピンとこなくてな。似合うか?」

紅莉栖「え、ええ、まあ、新鮮ね。いつも白衣だから」

まゆり「もー、オカリンだって似合うって言って欲しいから着て来てるんだよー」

紅莉栖「うぐぅ・・・ま、まあ、似合ってるんじゃないかしら」

岡部「お、お前こそ、に・・・似合ってるぞ」

まゆり「うんうん♪素直にならなきゃだめだよー♪」


ダル「氏ね」

岡部「じゃ、俺達は行く。戸締りしていけよ」

まゆり「いってらっしゃーい。楽しんできてねー♪」

ダル「5発くらいで中止になってしまえばいい」


ダル「やれやれ、リア充バカップルめが」

まゆり「でもダル君、なんか嬉しそうだよ?」

ダル「・・・んー、なんだかんだであの二人、うまくいって欲しいというか」

まゆり「へー、珍しいねー。他人の恋愛が憎くて大嫌いで仕方ないはずなのにねー」

ダル「まゆ氏は僕を何だと思ってるんwwww そういうまゆ氏こそ2828しっ放し」

まゆり「んふー、なんかね、あの二人はこれからもずっとずーーっと仲良くしていて欲しいなって思っちゃうの」


愛用の帽子を脱ぎ、ラボメンバッジの”A”に視線を落とす。

ダル「く、悔しいけど・・・賛同しちゃう・・・!」

帽子を被り直しながら、窓の外、遠くを眺めながらそう呟いた。

岡部「・・・」

紅莉栖「・・・」

ペタシ、ペタシ、カラン、コロン。

紅莉栖が横に並びながら岡部の顔を覗き込むと、目が合った瞬間プイと目を逸らした。

紅莉栖「あ、なんでよ」

岡部「いや、別に・・・」

紅莉栖「・・・似合って、ないかな」

岡部「あ、いや、そうじゃない。その・・・そこまで気合入れた格好をしてくるとは思わなくてな」

紅莉栖「って、そっちだって浴衣着てきてるじゃないの。変なの」

フワリ、フワリとポニーテールが規則正しく揺れる。


岡部「・・・いぞ」

紅莉栖「なんか言った?」

紅莉栖「うわ、凄い人の数。みんな花火大会に行く人なの?これ」

夏の風物詩、柴又駅は黒山の人だかり。

岡部「毎年数十万人が集まるらしいからな。ここではぐれてしまっては生きて帰還することは困難となるぞ。ほら」

紅莉栖「くす、何よそれ」

差し出された右手を、強く、左手で握り返した。



数分後。
「なんだこの人数は!これが噂に聞く”通勤ラッシュ”というものなのか!?どっちに向かえばいいのだ」

「おう、どうした?花火か?よかったら案内してやるが」←英語

「わー、外人さん」

(あ、英語喋れるのね。意外)



さらに数分後。
柴又公園近辺、人ごみを華麗に避けながら猛スピードで駆け抜けるキックボードが目撃された。

紅莉栖「ふおぉ・・・!」

高々と打ち上げられた花火が色鮮やかに爆ぜる。その一つ一つに思わず感嘆の声が漏れてしまう。

紅莉栖「綺麗・・・!ふおっ」

岡部「おお、でかいな、今の」

紅莉栖の横顔をチラリと見る。

岡部(喜んでくれているようだ。”花火よりも、お前のほうが綺麗だよ”か・・・さもありなん)


「おぉ・・・これはすごい・・・!アートだ!ジャパニーズ・アートだ!」←英語

携帯電話のカメラを起動しようとした所を、案内人の男に止められる。

天王寺「やめときな」←ry

「なぜだ?この美しい光景は是非写真に収めたいのだが」

天王寺「花火の美しさってぇのは写真じゃ残せねぇ。心のアルバムにしまっておくものだ」

「心のアルバム・・・なんて綺麗な言葉だ・・・!日本人のスピリットはブリリアントだ!」

萌郁(あ、なんかわかんないけどいい事言ったのね、多分)



鈴羽「おー、きれー。写真撮っとこ」

岡部「どうだった?」

紅莉栖「すごかった!」

岡部「子供かっ」

紅莉栖「なんていうか、その・・・すごかった!」

岡部「・・・かわいいぞ」

紅莉栖「ふぇっ!?な、なんでこのタイミングで?」///

岡部「さっき言いそびれたのでな。その姿、とてもよく似合っている」

紅莉栖「ぅ、あ・・・そ、そっちだって、よく似合ってるわよ!かっこいいから!」///

岡部「惚れ直したか?」

紅莉栖「惚れ直してない!最初からずっと惚れっぱなし!って言わせんな恥ずかしい!」///


「すいませーん、イチャイチャしてる所申し訳ないけど、ちょっと時間もらえないですかねー」

岡部「ん?」
紅莉栖「ん?」

男から差し出された名刺の会社名には、見覚えがあった。

岡部「『アーク・リライト』って、秋葉原にある編プロの?」

男「あ、ご存知?いやぁ光栄っすねー」

女「浴衣姿の女の子特集のために写真撮らせてもらってるんですけど、お時間大丈夫ですか?」

女はそう言うと、肩から下げた鞄から一冊のファッション雑誌を取り出す。

紅莉栖「あ、ラボで読んだことある」

岡部「ああ、まゆりがたまに買ってる雑誌だ」

岡部「撮ってもらえばいいではないか。どうせ今はまだ駅も混んでいる」

紅莉栖「うーん・・・じゃ、いいですよ」

男「お、彼氏さん、話がわかる!それじゃ、2~30分で終わりますんでー」

男がカメラマン、女は指示を受けてレフ板を動かしている。

岡部「さすがにカメラ慣れしているな。振舞いに余裕がある」

手持ち無沙汰なので、携帯を取り出し、メールを打つ。


送信メール
7/26 20:14
件名:

本文:
アーク・リライトという編集プロダクションを知っているか?
 


受信メール
7/26 20:15
件名:突然どうしたの?(・_・?)

本文:
ごめん、返信遅れちゃった。
聞いたことないけど、それがどうしたの?
萌郁


岡部「そうか、ならいい・・・と」

男「お、いいよーその表情かわいいねー。ところで、学生さん?」

紅莉栖「え、ええと、そうです。大学生です」

こんな所で身元バレは恥ずかしいので、一部の情報は隠すことにした。

男「そうなんだ。どこの大学?」

紅莉栖「えっと、ヴィクトル・コンドリア大学です」

男「へっ、ヴィクコン!?アメリカの?本当に?」

紅莉栖「はい、脳科学専攻です」

男「ヒャー驚いた!今日イチの可愛いコが今日イチの高学歴!こりゃ一面決まりだよ!」

女「じゃあ今は夏休みで帰国中ですか?」

紅莉栖「はい、彼に会いに来ました」

男「アッツイねぇー。彼氏さんからしたら自慢の彼女でしょ! ハイ撮影終わりー」

撮影が終わったらしく、紅莉栖が指示を受けて書類を書いている。

アシスタントの女が、暇そうにしている俺に話しかけてきた。

女「お待たせしました。もうすぐ終わりますから」

岡部「ご苦労様です。男女で取材なんて珍しいのでは」

女「女性を撮影する場合は結構多いですよ。男だけだと怪しまれたり断られたりが多くて」

岡部「なるほど、納得です」

女「彼女さん、アメリカの大学に通ってるんですね。超遠距離恋愛ですか?」

そうか、素性を隠したか。

岡部「ええ、年に数回しか会えないので、こうやって思い出作りの為にここまで」

女「ふむふむ・・・素敵ですね」

女はメモを取り出し、今の台詞を書き連ねた。

岡部「えっ、これも取材?」

この今書いてるSSのシリーズって

ダル「牧瀬氏、オカリンのこと好きっしょ?」紅莉栖「ふぇ!?」
紅莉栖「明日は5ヶ月ぶりに岡部に会える♪」

の他にある?
なければ今から読み進めたいとおも

男「じゃ、ここに必要事項書いて欲しいの。書けるところだけでいいから」

紅莉栖(名前、か・・・)

牧瀬紅莉栖。

こんな名前、ググられたら一発で身元が割れる。

しかもそれがデート中なんて知れたら、恥死する。

紅莉栖(偽名にしとこ。・・・あっ)

ボールペン。書き直しはきかない。

紅莉栖(・・・まあ、いいわ)


紅莉栖「書けました」

男「はいどーもありがとねー。はい、少ないけど謝礼」

紅莉栖「えっ、いいんですか?」

男「タダで写真撮らせてもらうわけにはいかないっしょ。これで彼氏さんとご飯行っちゃいなよ!んじゃお疲れ様ー」

女「あ、待ってくださいよー!それじゃ、ありがとうございましたー!」


岡部「・・・この仕事、昔の萌郁にはできなかっただろうな」

紅莉栖「5千円入ってた」

岡部「よかったじゃないか。レンタル代の足しになったろう」

紅莉栖「あとでご飯食べに行きましょ。奢ってあげる」

岡部「いいのか?」

紅莉栖「ええ、気分がいいから。どこに行く?」

岡部「うーむ、お互い浴衣を汚すわけにはいかないからな。ひとまずラボで着替えるか」

紅莉栖「そのほうがいいわね。じゃあ、もう一駅くらい歩かない?」

岡部「なぜだ?遅くなってしまうぞ」

紅莉栖「だって折角の浴衣デートですもの、もう少しこのままでいたい」

岡部「次に見られるのは早くても1年後か。ああ、お前に任せる」

紅莉栖「じゃあラボまで歩いちゃうけど?」

岡部「やめてくださいしんでしまいます」


ペタシ、ペタシ。カラン、コロン。



   ねぇパパ、花火ってどうやって火にに色を付けてるか、知ってる?

   ん?うーん、知らないな。どうしてだ?

   えー、知らないの?あれは炎色反応を利用しているのよ。
   白い花火はアルミニウム、青い花火は酸化銅でしょ、赤い花火は炭酸・・・なんだっけ?
   そういう色んな薬品を火薬に混ぜて色を変えてるんだって!

   ほう、さすが紅莉栖は物知りだな。

   さっき調べたの。だって、昨日の花火、すごく綺麗だったもの!

   そうか。なんでもすぐ調べるのは偉いぞ。きっと将来は物知りな学者さんになれるな。

   本当?パパみたいになれるかな?

   ああ、なれるさ、もっともっと勉強するんだぞ。そうしたらまた来年も連れて行ってやるからな。

   うん!勉強する!

紅莉栖「っ・・・」

岡部「疲れたか?乗って2駅目で寝るとは」

岡部にもたれかかって静かに寝息を立てていた紅莉栖は、すれ違う電車の警笛に目を覚ました。

紅莉栖「あ・・・ごめん、つい」

岡部「構わん。リア充を満喫していたところだ」


なんだろう、とても懐かしく、悲しい夢をみていた気がする。

紅莉栖「私、なんか寝言言ってたりした?」

岡部「いや、よく眠っていた。乗換えまでまだある。もう少しそうしていろ」

紅莉栖「・・・うん・・・」

焦点の定まらぬままの虚ろな目を瞑り、岡部の肩にまた頭を乗せる。


岡部(・・・知られたくない、忘れたい過去など、誰にでもある)


苦しく、喉の奥から搾り出すような、か細い声。
それは、確かに岡部の耳に届いていた。


―――パパ、ごめんなさい―――

俺も疲れていたのだろう。

ラボに戻り、着替えて食事から帰ってきてソファーに座ったところまでは覚えている。確か夜の10時ほどだったであろうか。


気が付けば、朝の8時である。


岡部「く・・・大事な時間を睡眠に回してしまった・・・!」

”明日は早めに来るね、おやすみ”と書かれた置手紙。

岡部「悪いことをしてしまった。怒っては・・・いないか」

テレビを点ける。

「それでは本日の特集です。秋葉原を訪れた外国人観光者に魅力を語ってもらいました。VTR、どうぞ」

岡部「お、ダルが言ってたやつか」



「続いては笑顔が素敵なこちらのイケメン男性。大学の研究所の所長というエリートマン」

『いやぁ、ここはジャパニメーションファンの聖地だろ?どうしても来たかったんだ』

岡部「お、吹き替え大塚芳忠。無駄遣いすぎる」

「お目当ては?」

『今日はBLOOD-TUNEのセイラのフィギュアを探しに来たんだ』

「ブラッドチューンとは、一昨年に放送された深夜アニメ。海外にも配信され、ヒロインの天之河星来が―――」

『既にノーマルver.は手に入れてるんだが、覚醒後と制服姿ver.が向こうじゃ売っていないんだよ』

「そうとうのめり込んでらっしゃるようですね」

『ああ、彼女は俺のオアシスさ。ハッハー!BLOOD-TUNEサイコー!ボケナスー!』

「ヒロインの名台詞を叫び、意気揚々と店内へ突入する男性。すると」

『あった!2体ともあったぞ!』

「なんと、わずか数分でお目当てのフィギュアを発見。これには男性も大喜び!」

『おお、なんてキュートでセクシーなんだ!我が女神よ!』

「フィギュアを2体ともご購入。そのお値段、なんと3万円!」

『ああ、日本に来てよかったよ。オレは今最高にハッピーさ!』



岡部「”残念なイケメン”とはこのことなのだろうな・・・」

10時過ぎ。

ドアノブをガチャガチャと回す音が聞こえた。

しかし、入ってくる気配がない。

岡部「?」

玄関の鍵がかかっている。

開錠してドアを開くと、配電盤の上の合鍵を取ろうと目一杯に腕を伸ばす紅莉栖がいた。

紅莉栖「あっ、起こしちゃった?」

岡部「いや、もう起きていた。なぜ鍵が閉まっていたのだ?」

紅莉栖「ご飯から帰ってきた時にそこの合鍵とってもらったじゃない。覚えてないの?」

岡部「そういえばそんな気がするな」

紅莉栖「で、帰るときに鍵閉めて、配電盤の上に放り投げたら取れなくなっちゃって」

岡部「すまない、先に開けておくべきだったな。入れ」

岡部「昨日はすまなかったな、勝手に寝てしまって」

紅莉栖「疲れてたんでしょ?しょうがないわよ。私だって電車で寝ちゃってたし」

岡部「大事な時間を無駄にしてしまった」

紅莉栖「ううん、昨日はありがとう。とても素敵なデートだった」

岡部「そうか。また来年、連れて行ってやるからな」

紅莉栖「っ・・・」

突然、笑顔が消える。


紅莉栖「・・・本当?」

岡部「ああ、またお前の浴衣姿を見たい」

紅莉栖「・・・絶対行くって、約束してくれる?」

岡部「お?いいだろう。誓約書だって書いてやろうか?」

紅莉栖「私の前から、突然・・・いなくなったりとか、しないよね?」


その涙は、あまりにも予想外だった。

岡部「・・・どうした」

嗚咽を漏らす紅莉栖を胸に抱き、動揺を隠しつつできる限りの優しい声をかける。

何を泣くことがある、泣き虫少女め。そういった冗談を口走る空気ではないと、さすがの彼にも察知できた。

紅莉栖「楽しみだったのに・・・ずっと・・・ひっく、楽しみにしてたのに・・・」

岡部「何か、思い出させてしまったか」

紅莉栖「わかってる・・・私が悪いんだって。でも、褒めてもらえたのが、ひっく、嬉しくて・・・」

岡部「気が済むまで泣くといい。昨日のお詫びだ」

紅莉栖「気持ち・・・考えてあげられなくて・・・ごめんなさい・・・!」

岡部「来年も日本に来れるのなら、また花火を見に行くことを約束する。絶対だ」

紅莉栖「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

子供のように泣きじゃくるその姿は大変愛しく、


岡部「お前の悲しむ顔は見たくない。泣き止んだら、また、笑顔を見せてくれ」


大変、心が痛んだ。

「アキハバラで有名なメイド・カフェに行ってみたい。オススメはあるか?なるべく印象に残るような」

そうツイートをしてみると、過去に来日を果たしている”仲間”から画像付きで返信が届いた。

「有名な老舗のメイド・カフェです。英語が堪能な方もいらっしゃるので、楽しめると思います」


「ふむ、ここか。”メイクイーン・ニャンニャン”・・・なんとも心が躍るネーミングだ」

カランコローン。

「お帰りなさいませ、ご主、あっ」

「ハーイ!キュートガール」

「ウェ、ウェイト!ウェイトプリーズ!」

慌てふためいた何某ニャンニャンが、奥へと引っ込んだ。

「フェ、フェイリスちゃーん、外国人の方来ちゃったよー。行ってもらっていい?」

フェイリス「ニャフフ、任せるニャーン」


フェイリス「お待たせニャンニャーン!お帰りなさいませ、ご主人様!」←英語

「おお、なんてキュートな子猫だ。フェイリスというのか。チャーミングだ!」

「これが、メイド・カフェというものか。心がエキサイトだ」

フェイリス「お待たせしましたニャン、ノンカフェインのアイスコーヒーですニャーン♪」

フェイリスが営業スマイル120%、いつも以上の身振りと声色でアイスコーヒーを運んでくる。

フェイリス「ミルクとガムシロップはどういたしますニャ?」

「そうだな、両方もらえるかな」

フェイリスは手馴れた手つきでガムシロップとミルクをコーヒーに入れ、顔を近づけ、目を見てかき混ぜる!


客たちの心の声
(で、で、出たァーーーッ!!!あれはフェイリス・ニャンニャン必殺「目を見て混ぜ混ぜ ”チェシャーズ・アプローチ”」!
 従来の目を見て混ぜ混ぜの場合、我々とフェイリスたんの顔の距離は平均34.5cm!!
 で、でもあの距離は、推定”15cm”!!! ま、まさか生きている内にこの目であの秘技が見られるなんて!
 そして、わー、ガイジンだ!イケメンだ!なに一つ勝てる要素がない!)


「気分はエクスタシーだ!」

フェイリス「これが日本猫のおもてなしなのニャ♪」

「ハッハー!もはやこれはリスペクトだ!」

「フェイリス、やはり個人的な写真撮影は禁止なのかい?」

フェイリス「うーん、週末には撮影イベントがあるんニャけど、いつまで日本にいるのニャ?」

「明日帰る予定なんだ。忙しい身なのでさすがに週末まではいられない」

フェイリス「うーん、そういうことなら・・・でもニャー」

立ち上がり、フェイリスの顎を軽くクイッと持ち上げ、ニヒルに微笑む。

「君と出会えた喜びは、大きすぎて心のアルバムには収まりそうにないんだ。お願いだ」

フェイリス「ニャ」///

フェイリス、揺らぐ!

フェイリス「・・・こ、今回だけは特例だニャ!そのかわり、周りに見えないようにコソッと撮るニャ」///


【画像】
日本で最もキュートな猫といえば?ジャパニーズボブテイル?ハローキティ?
違う。フェイリス・ニャンニャンだ。to-to-loo.
数秒前 iphoneから


「ありがとうフェイリス。また日本に来たら、必ず君に会いに来るよ!グッバイ!」

フェイリス「ま、まさかフェイリスを超える微笑みを持つ人がいたニャんて・・・完敗だニャ・・・!」

紅莉栖「・・・ごめん」

10分ほどしてようやく落ち着きを取り戻し、赤く腫れた目を擦りながら顔を上げた。

岡部「今北産業」

紅莉栖「ちょっと 悲しいこと 思い出した  あっ」

しまった、つい反応してしまった。

岡部「もう大丈夫だな」

紅莉栖「・・・うん。ありがと。・・・実はね」

岡部「無理に話さなくてもいい。辛くなるだけだ」

紅莉栖「・・・優しい」

岡部「誰にでも、話したくない過去はあるものだ。無論、俺にだって黒歴史はある」

紅莉栖「へぇ・・・kwsk」

岡部「だから黒歴史だと言っておろうが。話した瞬間、俺の人生は幕を閉じる」

紅莉栖「くすくす。いつか絶対聞き出してみせる」


笑顔が、戻った。

紅莉栖「初めてここに来た時、ここは私の思い出を作る所だ、って言ってくれたわよね」

岡部「ああ、”リコレクションズ・ラボラトリー”のことか」

紅莉栖「いや、その名称は初耳だけど」

岡部「ああ、初めて言った」

紅莉栖「・・・でも、あの言葉、嬉しかった」

岡部(お、久々にデレデレモード)

紅莉栖「こうやって思い出が増えるのも、あの日、あなたに会えたから・・・」

岡部「そういえば、明日で丸1年になるのか。一応」

紅莉栖「早いものね、1年なんてあっという間」

岡部「まあ、俺にとっては長すぎる8月だったがな」

紅莉栖「・・・ごめん」

岡部「いや、あの時お前がいてくれたから今の俺がいる。感謝している」

紅莉栖「私は何も覚えてないけどね。ふふ」

岡部「好きだ」

紅莉栖「あ、先に言われた・・・」///

ガチャ。

萌郁「おじゃまー。ここでお昼食べていい?店長ったら掃除始めちゃってほこりっぽくてかなわ・・・」

岡部「」
紅莉栖「」

口付けを交わし終えた、その刹那。


萌郁「・・・」ススス

そのままバックし、ラボを出ようとする。

岡部「だーー!出て行かんでいい!ここで食っていけ!」

呼び止められ、壁から半分だけ顔を覗かせた。

萌郁「大丈夫?お姉さん1時間くらい外出してこようか?足りる?」

岡部「やかましい!そんな気遣いはせんでいい!」

紅莉栖「」///


萌郁「あっれー?このお弁当、甘ったるいわねー。何でかしらー?」

岡部「うるさい!」

紅莉栖「」///

鈴羽「~♪ のわぁっ!!」

相棒のキックボードで秋葉原を疾走中、突然物陰から人が飛び出す。

類まれなる動体視力を駆使してハンドルを切る。すんでの所で接触は免れた。

鈴羽「セーフ! のうっ!!!」

安心したのも束の間、前輪は排水溝へと導かれ、その場でキックボードだけが動きを静止する。

少女は、宙へと放り出された。

「ああ、神よ!」

惨事は免れまい。男は神へ祈った。せめて、彼女の命だけは!

クルリ シュタッ!

祈りが通じた!少女は宙で体を捻りながら1回転。華麗な着地を決める!巻き起こる歓声!

鈴羽「っと、ふぃー、危なかったー」

「だ、大丈夫だったかい!俺の前方不注意で・・・!ああ、神よ、彼女を救ってくれたことに感謝します!」

鈴羽「えっ、わ、が、外人だ!ソーリー!オーケーオーケー!サンキュー!!」

慌てて倒れたキックボードを立て、少女は愛想笑いを浮かべながら全力で駆け抜けていった。

「・・・ファンタスティック!なんてタフなガールだ!」

紅莉栖「そういえば萌郁さんって、初めて会ったときとまるで性格が変わったわよね」

岡部「前のほうが静かでよかった」

萌郁「ひどいこと言うわね。年上に向かって」

紅莉栖「なにがあったの?まゆりのおかげとは聞いてるけど」

岡部「コミケでまゆりのコスプレを着せさせられた」

紅莉栖「え、荒療治?」

萌郁「そうそう、去年の年末よね」

岡部「コスプレで人前に立った瞬間、こいつのスイッチが入った」

萌郁「そうそう、寒さもあってなんか楽しくなってきちゃって」

岡部「問題はそのスイッチが切れなくなったことだ」

萌郁「なによなによ、折角明るくなれたのにその言いぐさは」

2010年、冬―――

まゆり「ジャーン!かんせーい!」

ダル「乙。予定より早く完成したんじゃね?」

まゆり「うん、二人分は大変だったけど、着てくれるのが楽しみだからすぐできちゃったー♪」

岡部「お前もうそっちの仕事をすればいいではないか」

まゆり「ううん、あくまでもこれは趣味だもん。はい、こっちがるかくんの」

るか「わあ、かわいい。ちょっと上だけ着てみるね」

岡部「ルカ子はすっかりその気になったようだな」

るか「はい、まゆりちゃんも喜んでくれるし、ちょっと面白くなってきました」

岡部「そうか、楽しめるならそれでいい」

るか「それに、お、岡部さんも見に来てくれますし・・・」///

岡部(だが男だ)

まゆり「それでー、こっちが萌郁さんの分」

萌郁「っ・・・!」

岡部「二人分って・・・そいつのか?」

まゆり「うん♪実はずっと内緒でね、萌郁さんのコスプレを作ってたんだー♪」

萌郁「え・・・私、着るの、これ・・・」

まゆり「こないだシャワールームでスリーサイズ測らせてもらったでしょ?実はこれのためだったんだー」

ダル「ガタッ」

萌郁「で、でも、私・・・こういうの・・・」

まゆり「おっぱいが大きくて恥ずかしがり屋さんな眼鏡っ娘キャラの衣装なんだよー」

岡部「驚くほど都合がいいキャラがいたものだ」

萌郁「は・・・恥ずかしい・・・無理・・・」///

まゆり「そのキャラもね、そうやって恥ずかしがりながらこの衣装を着るって設定だったんだよー」

るか「大丈夫ですよ桐生さん!着てみたら意外と楽しいですよ」

まゆり「ほら、るかくんもこう言ってるんだからー。着ようよー」

ダル「目が本気すぐるwwwwwwww」

まゆり「着るよねー?萌郁さんは着るべきだよー。着てくれないと困っちゃうのです」

萌郁「ひっ・・・」

衣装を手に、グイグイと詰め寄る。

まゆり「着なきゃおかしいよー。着るに決まってるよー。着ないなんて言わせないよー?えっへへー♪」

一同「((((;゚Д゚))))」




受信メール
12/26 12:37
件名:怖い!

本文:
岡部君、助けて!
まゆりちゃん、目が笑ってないの!
萌郁



無視した。

萌郁「っ・・・!!」

まゆり「はい決まりー♪明日このアニメのDVD持って来るから見てねー♪」

岡部「・・・と、こんな経緯があってな」

萌郁「あの時のまゆりちゃんの顔、夢に出たのよ」

紅莉栖「まゆりェ・・・」

岡部「で、コミマ当日にそれを着て皆の前に出た瞬間、今のこいつになった」

萌郁「頭の中で”カチッ”って音が聞こえたわ」

岡部「まゆりは『それじゃキャラが違うよー』と嘆いていたがな」

紅莉栖「コスプレをすれば、内気な性格が改善されるのかしら」

萌郁「紅莉栖ちゃんもしてみれば?岡部君を押し倒して襲っちゃうくらいの勇気は出るかもよ」

紅莉栖「ふぇ!?」///

岡部「な?嫌だろ、こいつ」

紅莉栖「そ、それで今年も出るの?」

萌郁「ええ、多分。まゆりちゃんには感謝してるから、お礼も兼ねてね」

岡部「これ以上おかしくならんことを祈る」

萌郁「明日は二人が出合った日なんでしょ?また皆で集まる?」

岡部「ふむ。だが集まったところで何をする」

萌郁「二人のラブラブっぷりを洗いざらい聞き出すの」

岡部「よし、もう帰れ」

萌郁「ああん、冗談だってば」

紅莉栖「でも、皆で集まるのはいいことじゃない?」

岡部「そうか?まあ、お前がそういうのであれば構わんが」

萌郁「はいラブラブいただきましたー」

岡部「ん?誰だ貴様は?覚えてないな」

萌郁「あら、忘れたの?ラボのお姉さん的存在、セクシー担当、ラボメンNo.005、桐生萌郁、21歳でーす☆」

岡部「もうやだこいつ」

紅莉栖「どうしてこうなった」

萌郁「あの時岡部君が助けてくれなかったのが悪いのよ」

「今日でアキハバラともお別れか・・・」

秋葉原の魅力に惹きつけられてしまった男は、来るべき帰国の日を大いに悲しんだ。

「来年・・・また来る。神に誓って約束する」

目を瞑り、胸のまえで十字を切った。


まゆり「ふぇー、遅くなっちゃったよー」

駅の入り口に差し掛かったところで、小走りの少女と肩がぶつかった。

まゆり「あっ、ごめんなさ・・・あーっ」

「おう、ソーリー、ケガは・・・マユスィー?マユスィーじゃないか!」

まゆり「また会ったねー♪トゥットゥルー!」

「to-to-loo! 神よ!天使に再度会わせてくれるなんて、あなたはなんて慈悲深いんだ!」

まゆり「りたーん・とぅ・あめりか?」

「ああ、今日帰国するんだ。君はどこへ向かうんだい?」

まゆり「あい・うぃる・ごー・とぅ・らぼ!」

「ラボ?どこかの研究員だったのかい?」

まゆり「のーのー。あい・あむ・オカリンず・ほすてーじ!」

「オカリンの人質って・・・まさか、リンタローのことか!?」

まゆり「ほえ?いえーす。どぅー・ゆー・のう・オカリン?」

「知っているも何も、俺はクリスの上司なのだ!」

まゆり「おおー!そうなんだー!」

「ああ、すっかり忘れていた!俺はリンタローに会いに来たんだった!会わせてくれるかい?」

まゆり「おふこーす!ぷりーず!かもん!」

「ハッハー!これはミラクルだ!」

まゆり「ほわい・ゆー・のう・ひず・にっくねーむ?」

「前にクリスが言っていたんだ。とてもキュートなニックネームだってね!」

ダル「うーす。ちょっち遅れたお」

岡部「おう」

フェイリス「あとはマユシィだけだニャ」

ダル「お?まゆ氏まだ来てないん?」

岡部「ああ、ギリギリになりそうとメールは来てたが遅刻とは珍しい」

萌郁「司会進行がいないと始まらないわよね」

紅莉栖(あ、久々にツイッター見とこ)

るか「遅くなるなんて、心配ですね」

岡部「なに、問題ない。どうせ食い物の匂いにつられてフラフラしているんだろう」

鈴羽「あはは、何それひっどーい」

ダル「ところで、なんで急に収集かけたん?」

フェイリス「今日は凶真とクーニャンが出会って1周年なのニャ」

萌郁「だから、二人のラブラブっぷりを根掘り葉掘り聞き出しちゃおうってわけ」

岡部「今度余計なことを言うと口を縫い合わすぞ」

萌郁「おお怖い。年上を敬う気持ちがなってないわこの子」

ダル「そんな事の為だけに呼ばれる僕の気持ちも考えてくだしあ」


紅莉栖「はぁぁぁぁぁあああああ!!!!????」

一同「!?」

岡部「ど、どうした、いきなり」

紅莉栖「え、うそ、なんで・・・?」

るか「な、何かあったんですか・・・?」


紅莉栖「ボスが・・・日本に来てる・・・しかもすぐ近くにいる・・・!」

岡部「ボスって・・・お前の上司の?」

紅莉栖「あ、あわわ、あわわわわ」

ダル「もちつけ」

紅莉栖「え?なんで?聞いてないけど?どうして?」

フェイリス「なんで日本にいるってわかったニャ?」

紅莉栖「今ツイッター見返してたら・・・画像に・・・」

まゆりとるかの2ショット。

恥ずかしそうにポーズをきめたフェイリス。


ガチャ

まゆり「トゥットゥルー♪遅くなっちゃった」

岡部「おう、なんかあったのか?」

まゆり「うん、お客さん連れてきたよー」


「ハッハー!to-to-loo!」

岡部「あ、テレビの残念イケメン」

ダル「お、とらのあなにいたイケメンアメリカン」

萌郁「あら、花火大会の」

フェイリス「ニャ、き、昨日の・・・」///

るか「あっ、この前の外人さん」

鈴羽「げ、あの時の・・・!」


岡部「えっ」

ダル「えっ」

萌郁「えっ」

フェイリス「えっ」

るか「えっ」

鈴羽「えっ」


紅莉栖「えっ?」

「やぁ、君がリンタローか!写真で見るよりずっと男前じゃないか!」

岡部「あ、は、はぁ。ナイストゥーミーチュー」

「お、君は店の中にいたね。特徴的だから覚えているよ」

ダル「日本語でおk」

「君は花火大会の時にMr.テンノウジの隣にいたね。いやぁ美しい」

萌郁(この笑顔、昼間に見るとちょっと暑苦しいわね)

「やぁフェイリス、また会えたね。昨日は素敵な時間をありがとう」

フェイリス「ニャ、ニャゥ・・・」///

「ルカ、君は僕をここへと導いた天使なのかもしれない」

るか「え、えっと・・・イエス!」

「君は昨日のタフ・ガールじゃないか!本当に大丈夫だったかい?」

鈴羽「ノ、ノープロブレム!アイムオーケー!」


岡部「あのフェイリスが赤くなっている。ボスは口が達者なのか?」

紅莉栖「・・・イタリア系アメリカ人なのよ・・・」

「いやぁ、リンタローに一目会えてよかった。俺はこのために来日したんだからな」

時間にあまり余裕がないとのことなので、10分ほど話をした所で、ラボの前でお見送り。

「また来るよ。その時はゆっくり話を聞かせてくれ」

岡部「ええ、いつでも歓迎します」

紅莉栖が通訳となり、別れの挨拶を済ませる。


天王寺「なんだ、皆して。騒がしいな」

「おお、Mr.テンノウジじゃないか!まさかあなたもこのビルに?」

天王寺「お、こないだの男じゃねぇか。いかにもこのビルのオーナーだが」

「おお・・・これはまさに神様のクールなイタズラ!ハッハー!」

両手を拡げ、天を仰いだ。

「日本、最高だ!」


天王寺「どうしたんだ、コイツ?」

岡部「ええ、ちょっとかくかくしかじかで」

「おっと、さすがに時間が。そろそろ行くよ」

別れを告げ、数歩進んだところで何かを忘れたかのように引き返し、岡部の前に立つ。

岡部「へ?俺?」


「Please invite me at the time of marriage ceremony, haha!」


紅莉栖「ちょッ!!」///

天王寺「へっ」

まゆり「おほー♪」


「グッバイ!to-to-loo!」

まゆり「トゥットゥルー♪また来てねー!」


岡部「今、なんて言ったんだ?」

紅莉栖「え、えと、また会おう、みたいなことよ」///


フェイリス「ニャフ~・・・」///

ダル(フェイリスたんが・・・フェイリスたんが・・・!)

そして時は流れ、紅莉栖、帰国の日。

ラボで皆に見送られた後は、岡部のみが空港まで付き添った。


紅莉栖「この2週間、ほんとにあっという間だった」

岡部「まったくだ。少々物足りない」

紅莉栖「禿同。毎日一緒だったのにね。・・・ほんとは、まだ帰りたくない」

岡部「アメリカにもお前の帰りを待つ人がいるんだ。諦めろ」

紅莉栖「・・・うん・・・」

寂しげに俯く紅莉栖の頭を抱き寄せる。


岡部「12月にまた会おうな、紅莉栖。愛してる」

紅莉栖「・・・それ以上、やったら、泣く」


紅莉栖を乗せた飛行機が、晴天に向かって飛び立つ。

機体が肉眼で確認できなくなると、岡部は踵を返し、無言で駅へと向かった。

岡部「帰国した」

ラボに帰るなり、ソファーに倒れこみ、うわ言のようにつぶやき始めた。

岡部「帰国した帰国した帰国した帰国した帰国した帰国した紅莉栖は帰国した」

るか「え、えっと、あの、大丈夫ですか?」

その変わり果てた姿に、るかはどうしていいかわからずオロオロするしかない。

ダル「ああ、気にしなくていいお。いつものことだから」

まゆり「この姿見るのも3回目だねー」

岡部「どうして。どうしてどうして」

るか「で、でも・・・」

ダル「大丈夫大丈夫。数日で治るから」

まゆり「でもその間、全然ダメダメだよねー」

ダル「女がいないと生きていけないとか、それなんて超ヒモ理論?」



岡部「もうどうにでもなーれ」

自室のPCから、待ちわびた着信音が鳴った。
亜音速でヘッドセットを装着し、亜高速で通話ボタンを押す。

紅莉栖「はやっ。ハロー」

岡部「おう、久しぶりだな」

紅莉栖「って、1週間前までずっといたじゃないの。寂しかった?」

岡部「まあな」

紅莉栖「私はすごく寂しかった。今も少し泣きそうですしおすし」

岡部「やれやれ、相変わらず泣き虫だ」

紅莉栖「まだ泣いてないわよっ」

岡部「ということは泣く予定があるのか?」

紅莉栖「・・・会話の内容次第では」

岡部「紅莉栖。1週間お前に会えなくて、心が張り裂けそうだった。とても・・・辛かった」

紅莉栖「・・・ぐす」

岡部「瞬殺だったな」

紅莉栖「・・・うるさい」

紅莉栖「そっちは変わらない?」

岡部「そうだな、特に・・・いや、一つ」

紅莉栖「どうかしたの?」

岡部「ボスさんに会ってからフェイリスの様子がおかしい」

紅莉栖「・・・つまり、どういうことだってばよ?」

岡部「惚れたな、きっと」

紅莉栖「あー・・・。あの人、かわいい子には手当たり次第に声かけるから・・・」

岡部「ということは、お前も」

紅莉栖「え、ええ。まあ。無論断ったけど。って自画自賛してるみたいで嫌」

岡部「ボスさんのツイッターのアカウント、フェイリスに教えてやってくれないか?」

紅莉栖「うん、後でメールしておく」

岡部「ちなみにダルは『もうどうにでもなーれ』状態になった」

紅莉栖「うん、それはどうでもいい」

岡部「ボスさんは元気・・・だろうな」

紅莉栖「ええ、ラボ内でトゥットゥルー!を流行らせようとしてるわ」

岡部「ついにアメリカデビューか。まゆり大勝利だな」

紅莉栖「あと、仕事が終わったら急いで家に帰るようになったわ。ようやく恋人でもできたのかしら?」

岡部「・・・知らないほうがいいだろう」

紅莉栖「?そう。あと、あなたのこと凄く気に入ったみたい」

岡部「ほう、それは光栄だ」

紅莉栖「それに、フェイリスさんやまゆり達にもまた会いたいって」

岡部「フェイリスが聞いたら喜ぶだろうな。だが内緒にしよう」

紅莉栖「テラヒドスw」

岡部「ダルがこの1週間ろくに食事が喉を通らないらしいが、見た目は何一つ変わらない」

紅莉栖「うん、心底どうでもいいかな」

岡部「そうだ、お前が撮ってもらった雑誌がもうすぐ出るそうだ」

紅莉栖「ああ、意外と早いわね」

岡部「先日カメラマンの人に偶然会ってな、発売日を聞いた。もちろん買う」

紅莉栖「女の子向けのファッション雑誌なんて買えるの?」

岡部「男というものは”恥ずかしい本をうまく誤魔化して買う能力”に長けているのだ」

紅莉栖「いや、そこまでするならまゆりに買ってきてもらえばいいじゃない」

岡部「そういうのはねー、自分で買わなきゃダメなんだよー、えっへへー♪ だと」

紅莉栖「似てねーwwwww」

岡部「そこに食いつくな恥ずかしい。まゆりとフェイリスとルカ子も買うそうだ」

紅莉栖「あ、そうなん・・・あっ!」

岡部「どうした?」

紅莉栖「う、ううん、なんでもない」

岡部「そうだ、お前にも買ってやろう、近いうちに郵送してやる」

紅莉栖「あ、うん、ありがと・・・」

紅莉栖「ところで、コミマには萌郁さんも出るの?」

岡部「ああ、ルカ子共々張り切っている。こっちも写真ができたら送ろう」

紅莉栖「うん、見てみたい」

岡部「そうだな、あとは・・・12月の来日の日程はまだ決まらないか?」

紅莉栖「気が早すぎ。まだ8月だってば」

岡部「こっちにも準備が色々あるのでな。決まり次第教えてくれ」

紅莉栖「うん、っていっても12月に入ってからだと思うけど」

岡部「そうか。また会えるのが楽しみだ」

紅莉栖「うん、私も」

岡部「それまではスカイプで我慢だな。時間、大丈夫か?もう夜も遅いが」

紅莉栖「いや、こっちはお昼なんだけどね」

岡部「ああもう、ややこしい」


紅莉栖「うふふ、まだまだ話すわよ。今夜は寝かさないから、覚悟しなさい!」


-fin-

8月下旬。

紅莉栖「うーん・・・おはよー」

待ち受け画面に映し出される愛しい人に、日課の挨拶を済ませた。

紅莉栖「よいしょっと。いい天気」

大きく伸びをしながら、玄関へ新聞を取りに行く。

新聞と一緒に、大きめの小包が届いていた。

紅莉栖「? 何かしら・・・あっ」

差出人の名前を確認すると、寝ぼけ眼の顔に笑顔が咲いた。


用意されていた朝食に手を伸ばし、コーヒーを啜りながら包装を解く。

紙袋の中には、フォトアルバム、一冊のティーン向け雑誌、そして一通の封筒が入っていた。

”先に読むこと”と書かれた封筒には数枚の便箋。ふむん、まずはこれを読むのね。


   紅莉栖、元気にしていたか?そうか、それはよかった。

紅莉栖「なによこの始まり方www」

   これを書いているのは8/22。暑い。死ぬほど暑い。汗が滴って便箋に落ちて、いきなり2枚書き直した。
   なので今は頭にタオルを巻いている。暑い。死ぬほど暑い。
   上半身裸になりたいところだが、まゆりがいるのでそうもいかない。
   この暑い中ダルは出かけている。メイクイーン?違う。      デ - ト だ 。

紅莉栖「な、なんだってー!」

   今頃お前は「な、なんだってー!」とでも言っていることだろう。
   俄かには信じられないな?そこでだ、一発で信じることができる事実を突きつけよう。
   彼女の苗字は「阿万音」だ。

紅莉栖「あっ・・・!」

   阿万音由季さん。俺らと同い年で、すこし離れた所に住んでいるらしい。
   見た目と声は鈴羽と瓜二つ。あいつをストレートヘアにしておしとやかにした感じだ。
   どうみても美女と野獣です。本当にありがとうございました。

紅莉栖「wwwwwwww」

   ダル、ねんがんの かのじょに 大ハッスル! と思うだろう。だが、以外にも落ち着き払っている。
   まぁ、一足先に鈴羽に会っている以上、二人の行く末は見えているしな。
   まあ一応、お前からも二人の幸せを願ってやってくれないか。

紅莉栖「うん、橋田、がんばってね」
 
   ちなみに由季さんもコスプレイヤーだ。アルバムの1P目を見てみろ。

紅莉栖「わ、ホントにそっくり。鈴羽さん、橋田から受け継いだDNAは髪質だけなのね。よかった」

   由季さんは多分天然なのだろう。まるで生き写しな鈴羽に会っても何のリアクションもない。
   鈴羽も躊躇なく顔合わせしたものだから、俺一人だけが慌てふためいてしまった。

紅莉栖「絵が浮かぶわ」
 
   まゆりが「二人ともそっくりだねー。双子みたい」といいパンチを繰り出した。
   鈴羽は「あはー、ホントだね」とあっけらかんと笑い、由季さんは「本当ですね。うふふ」ときた。
   天然少女達のふわふわ時間だ。

紅莉栖「くすくす」

   萌郁とルカ子のコスプレ写真も同封した。
   萌郁はリベンジも兼ねて、去年と同じ格好だ。今回は設定を守って、恥ずかしがり屋を演じている。
   まさに昔の萌郁そのものだ。女の演技は恐ろしい。

紅莉栖「あ、本当だ。顔を赤らめて物陰に隠れてる。すごいわねあの人」

   このまま昔の萌郁に戻ってくれればよかったのだが、そうもいかない。
   休憩に入った途端「ああ、あっつー!ビールないのー?ビールー」だ。 もうやだこいつ。

紅莉栖「あの人に公衆の面前でお酒飲ませたら危険よね」

   ルカ子の写真を見てみろ。大人気だ。だが男だ。

紅莉栖「あ、かわいー。これは人気出るわよね」

   女だと思われて人気ならば話はわかる。しかし、男だとわかっていながらこの人気だ。
   日本始まった。

紅莉栖「うん、始まりと終わりのプロローグね」

   さて、本題に入る。そこに一冊のファッション雑誌があるじゃろ?
   何を言いたいかは、お前が一番わかっている筈だ。そのページを開け。

紅莉栖「う・・・」

身に覚えがありすぎる紅莉栖は、目次から該当するページを探し、開く。

   これは、テロだ。俺への陵辱テロだ。どうしてこうなった。どうしてこうした。
   しかも、あろうことかまゆりがそれを皆に見せて回りやがった。あいつも共犯者だ。

紅莉栖「うぅ・・・」

   まゆりとフェイリスは目を輝かせているし、ダルはムカつくほどニヤニヤし、
   ルカ子は赤くなって俯き、鈴羽はツンツンと肘で小突き、由季さんはニコニコしている。
   萌郁に至っては腹を抱えて大爆笑しやがった。ほんとにもうやだこいつ。

そのページに書かれた文章を目で追い、とある文字の前で動きが止まり、頬を赤らめつつ俯いた。

紅莉栖「うぅ、ごめん。思い付きだったのよ・・・名前を書き直すのも不自然だし・・・」///


今日のイチオシはこのコ!なんと、ヴィクトル・コンドリア大学に在学中の2年生!
夏休みを利用して帰国、超遠距離恋愛中の彼氏サンとの思い出作りに来た所とのこと。
才色兼備で笑顔もキュート!いやぁ、彼氏サンが羨ましいッス!       (カ)

その彼氏サン(撮影NG。残念!)も、なかなか優しそうで男前でしたヨ! (アシ)

   
NAME:岡部 紅莉栖(19)大学生

   完全に不意打ちだった。せめて一言許可を取ってほしかった。

紅莉栖「ごめんなさい。本当にごめんなさい」///

   気にするな。怒っているわけではない。
   反省しているかどうかは、近日中に問いただそうではないか。
   この郵便が届いたら、メールをくれ。都合のいい時間に連絡する。   おわり

紅莉栖「あれ、終わり?まだ1枚あるけど」

1枚、短く文が添えられた便箋が残った。

紅莉栖「えーと・・・・・・っ!」

読み進めると同時に口元を抑える。

紅莉栖「く・・・不意打ちとは、卑怯なり・・・泣くもんか、泣くもんですか・・・」

強がってはみたものの、既に声は震えている。自分でもわかった。


   P.S.
   今回の件は悪質であり、罪は非常に重い。よって、判決を言い渡す。
   
   被告 牧瀬紅莉栖には、そこに書かれた氏名が”現実”となる刑を処する。

   執行日及び場所については未定。準備が整い次第、追って報告する。

   なお、拒否権は与えられない。

大きく間が空き、最後の行に書かれた、この物語を締めくくる一文。

”被告”によって読みあげられた直後、便箋に一滴の雫が落ちた。


紅莉栖「・・・はい。謹んで、全うさせていただきます」














   刑期?無論、終身刑だ。

-fin-

SS4作目「琴瑟愛和のインティメイト」終了。
最初はギャグ寄りにするつもりだったんだよ?気付いたらこうなってたよ。
続きは某所で細々と書いていくつもり。

現在、シュタゲ×ひぐらしのコラボSS執筆中。
なので>>192-196に少し吹いた

紅莉栖「とっととも何も、今初めて名前を呼ばれたんだけど」

岡部「いや、さっきから何度も!」

紅莉栖「言っておくけど、私は助手でもクリスティーナでもない」

岡部「ではなんと呼べと?」

紅莉栖「・・・紅莉栖、でいいわよ」

岡部「紅莉栖・・・ティーナ」

紅莉栖「だぁぁぁもう!何で最後にそれ付けちゃうのよ!バカなの?死ぬの?」

岡部「・・・”死ぬ”という言葉は、しばらく、聞きたくない」

紅莉栖「・・・今のは謝る」

岡部「・・・」

紅莉栖「・・・」

岡部「・・・」

紅莉栖「・・・ごめん」

岡部(俺は長いこと8月を繰り返して、ようやくSG世界線へとたどり着いた。
   
   ここまで来れたのも、紅莉栖がいたおかげだ。
   
   そう、俺は紅莉栖が好きだ。だから再会できたことに心から喜んだ!
   
   だがなんだこれは!デレない!こいつデレてくれない!

   俺の紅莉栖への気持ちが、一切伝わらないではないか!
  
   辛い!この温度差、凄く辛い!

   おまけに紅莉栖に合わせるように俺までツンデレっぽくなってきてしまった!

   ・・・もっと、紅莉栖と、仲良くなりたい)


―――人の子よ、今の願いは、そなたのものか?―――

ああ、俺の希望を心の中でブチ撒けただけだ。

―――・・・ふむ、面白きカケラを見つけた。どう紡いでくれるやら―――

紡ぐ?お前は誰だ。

―――ふふふ、この男ならば、出口のない迷路に突破口を見出すやもしれぬ―――


耳の奥がチクリと痛み、そのまま、岡部は意識を失った。

梨花「・・・というわけ。今回が私の生きられる最後のチャンス」

岡部「・・・」

紅莉栖「・・・そんなのって・・・」

梨花「どう、信じられないでしょ?無理もないわ」

岡部「・・・そのループを終わらせるためには、何をすればいい?」

梨花「っ・・・信じられるの?ただの子供の戯言かもしれないのに」

岡部「俺だって、似たような経験をしてきた」

脇に腰掛ける紅莉栖へ視線をうつす。

岡部「紅莉栖、申し訳ないが、少しだけ席を外してほしい」

紅莉栖「は?私には聞かせられな・・・わかった。終わったら呼んで」

岡部「すまない。お前にも、話せるときが来たら話す」

紅莉栖は立ち上がり、展望台のほうへと足を運んだ。


紅莉栖(岡部、目が本気だった。・・・あの時と同じ目・・・)

そんじゃーお疲れーノシ

コラボSSとはいえ、ちゃんとプロットは練ってるからそこまでひどいものにはならない・・・はず。

ちなみになんだかんだでオカクリに収束するし。

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