雪歩「どっちを選べばいいの~!?」(42)

真「雪歩、愛してる!」

雪歩「ええっ、突然告られちゃった!?」

真「さぁ、姫…誓いのキスを…」

雪歩「真ちゃん…」ドキドキ

貴音「お待ちなさい!」バッ

雪歩「し、四条さん!?」

真「貴音、一体何の用だ!? ボクと雪歩の邪魔をしないでくれ!」

貴音「そうはいきません…」

真「どうしてだ! 理由を言え!」

貴音「何故なら私も雪歩を愛しているからです」

雪歩「えっ、えーっ!?」

真「なんてことだ…やっぱり貴音も雪歩のことが好きだったのか…」

貴音「真…まさかこのような行動に出るとは思いもよりませんでした」

雪歩(真ちゃんだけじゃなくて、四条さんまで私のことを…)

真「雪歩! 雪歩はボクの方が好きだよね!?」

雪歩(真ちゃんと…)

貴音「雪歩、雪歩が私を選んでくれると信じております」

雪歩(四条さん…)

真・貴音「「雪歩!!」」

雪歩(どっちを選べばいいの~!?)

………

……



ジリリリリリ…

雪歩「はっ! 夢か…」

~765プロ~

雪歩(なんだか、素敵な夢だったなぁ)

雪歩(真ちゃんと四条さんが私を取り合って…フヒッ)

雪歩(でも、二股なんてよくないし…ちゃんとどっちかに決めないとダメだよね…)

雪歩(もし本当に夢みたいになったら、私、どっちを選べばいいんだろ…)

真「みんな、おはよう!」

雪歩(あっ、真ちゃん…)

雪歩(今日は真ちゃん、仕事ないみたいだし…レッスン一緒に行こうって誘っちゃえ)

雪歩「真ちゃ…」

美希「真ク~ン!」ガバッ

真「うわっと」グラッ

雪歩「!」

美希「ねぇ、この後レッスン? ミキも一緒に行ってもいいかな!」

雪歩(美希ちゃん…ま、真ちゃんにあんなにくっついて…)

真「美希、今日はやる気だね!」

美希「ミキは、真クンと一緒ならいつでもやる気なの!」

チラ…

雪歩(あれ? こっち見…)

美希「ふふん」ドヤァ

雪歩「…っ!」

雪歩(い、今…私の事見て笑った…)

美希「あ、真クン。ちょっと待って」

ツカツカ

雪歩(え、何? こっちに来る…)

美希「雪歩!」

雪歩「…っ…な、何かな美希ちゃん…?」

美希「雪歩も、一緒に来る? なんか来たそーな顔してるケド」

雪歩「なっ…!」

真「おっ、雪歩もやるかい?」

雪歩「えっ、その…私は…」

美希「雪歩、一緒にレッスンしよっ♪」ニコッ

雪歩「………」ムッ

雪歩(美希ちゃん、何なの? こんなことして…)

雪歩(当てつけのつもり…? 信じられない!)

真「雪歩?」

雪歩(美希ちゃんの馬鹿…!)

雪歩「いいよ! 二人で行って来ればいいでしょ!」プイッ

スタスタ

真「ど、どうしたんだろ、雪歩…?」

美希「………」

スタスタ…

雪歩「………」ピタ…

雪歩「ああ…やっちゃった…」ドヨン

雪歩「二人にあんな態度とっちゃって…変に思われてるよね、絶対…うぅぅ…」

雪歩「でも…やっぱり、美希ちゃんは許せない…」

雪歩「それに、真ちゃんも真ちゃんだよ、あんなデレデレしちゃって!」(※してません)

雪歩「…あれ?」

貴音「………」

雪歩(四条さんだ。ちょうど一人でいるのかな?)

雪歩(…真ちゃんは美希ちゃんと一緒だし、四条さんと…)

雪歩「しじょ…」

響「たかねー!」ダキッ

貴音「おや、響。どうしました?」

響「へへっ、なんでもないぞー!」

雪歩「あ、あうぅ…」

ワイワイ

雪歩(四条さんと響ちゃん…すっごい仲よさそう…)

雪歩(真ちゃんに続いて、四条さんまで…)

雪歩(別に真ちゃんの代わりにとか…そう考えてたわけじゃないのに…)

雪歩(でも、神様はそうは思ってくれなかったのかな…)クル…

トボトボ

春香「あれ、どしたの雪歩?」ヒョコ

雪歩(最近、美希ちゃんのアピールも激しくなってきたし…)

春香「ふふーん…その顔、何か悩み事かな?」

雪歩(響ちゃんも、四条さんにあんなにベタベタして…)

春香「よーし、この春香さんになんでも話してみなさい!」バンッ

雪歩「たぶん、春香ちゃんにはわからないことだから…」

春香「そう…」シュン

雪歩(もしかしたら、どっちを選ぼう、なんて状況じゃないのかも…)

雪歩(できればどっちも、って行きたいけど…)

雪歩(きっと、そんないけないこと考えてるから罰が当たっちゃったんだ)

雪歩(どっちかに決めなきゃ!)

雪歩(でも、真ちゃんには美希ちゃんが…四条さんには響ちゃんがくっついてるし…どうすれば…)

亜美「うわー、このボス強すぎ! 倒せないよー!!」

真美「くっそー、これで10連敗!」

小鳥「あら…そのゲーム、やったことあるけど…」

小鳥「これはまず周りにいる敵から倒すのよ。頭を取るのなら、まず周りからってね」

亜美「あー、なんかそれ聞いたことあるYOー」

真美「あれだよね、確か…『将射ん矢の如し』ってやつだよね」

雪歩(『将を射んと欲すればまず馬を射よ』…)

雪歩(『光陰矢の如し』と混ざって全然違うのになってるよ、真美ちゃん…)

雪歩(でも、馬を射よかぁ…もしかしたら、何か参考になるかも)

雪歩(私の場合、これは美希ちゃんや響ちゃんと仲良くなれ…ってことだよね)

雪歩(最近、真ちゃんも四条さんもいつもあの二人と一緒だし)

雪歩(そうだよ、私も二人と仲良くなれば真ちゃんや四条さんともっと一緒になれるかも…!)

雪歩(となれば、さっそく行動…頑張れ私!)

雪歩「えーと…」

美希「真クンと二人でレッスンレッスン」チラッチラッ

雪歩「………」プイッ

美希「むー…」

真「美希? どうしたのさ、行こうよ」

美希「はいなの、今行くー」トテテテ

雪歩(真ちゃんと四条さんは、どっちかなんてまだ決められないけど…)

雪歩(美希ちゃんよりは響ちゃん…かなぁ。それに、今出て行っちゃったし)

響「ん~」グーッ

雪歩(響ちゃん、四条さんと別れて今は一人みたい。ソファで背伸びしてる)

雪歩(…いきなり話しかけても大丈夫かな?)

雪歩(だ、大丈夫だよ…事務所の仲間だもん、いきなり話しかけても変じゃない変じゃない)

雪歩「あ、あの…響ちゃん」

響「ん?」クルッ

響「なんだ、雪歩か。どうしたんだ?」

雪歩「え?」

響「自分に何か用?」

雪歩(ああっ、何話すか考えてない! どうしよう!?)

雪歩「え、えっと…喉渇かない?」

響「喉? ちょっと渇いてるかも」

雪歩「よかった! 私、お茶入れてくるね!」

響「あ、ああ?」

雪歩「はい、お茶」コトッ

響「うん、ありがとう」ヒョイッ

ゴクッ

雪歩「どうかな?」

響「ああ…いい香りだなぁ…」

雪歩(えーと、えーと…次は何を話せば…)

雪歩「お、お茶は喉に悪いって言われてるけど…」

雪歩「お茶に含まれてるカテキンには殺菌作用があるし、適度な温度と濃度ならむしろ喉には優しいんだよ」

響「そうなんだ、雪歩は物知りだな」

雪歩(喉…あ、そうだ!)

雪歩「あ、あの響ちゃん、私この後ボイストレーニングしに行こうと思ってるんだけど…一緒に行かない?」

響「ボイトレか? うーん…うん、いいよ! 今日は特に予定も入ってないし」

雪歩「よ、よかったぁ…断られたらどうしようかと思っちゃった」

響「あはは、大げさだなぁ雪歩は」

雪歩(ちゃんとできてるよね…? 私…)

そして…

雪歩「ひ、響ちゃん凄いね…」

響「まぁな! ふふん、自分完璧だから!」

雪歩(響ちゃんは肺活量があるから大きな声も出るんだよね…私も、もっと体力つけなきゃ…)

響「さ、もう暗くなっちゃったし帰ろっか」

雪歩「また誘ってもいいかな?」

響「うん、もちろん! 大歓迎だぞ」

雪歩「よかった」

雪歩(もう、仲良くなれたよね? 事務所で話しかけても変じゃないよね)

雪歩(一応、確認しておかないと)

雪歩「ねぇ、響ちゃん…私達、友達だよね?」

響「え?」

雪歩「えっ…だ、だよね?」

響「う、うんっ! そうだな! 雪歩と自分は友達だ!」

雪歩「び、びっくりしたぁ…」

響「友達かぁ…えへへ…」

雪歩(響ちゃん、凄く嬉しそうだ)

雪歩(こんなことでこんなに嬉しそうな顔されると、こっちまで嬉しくなっちゃう)

雪歩(四条さんは、響ちゃんのこういうところが可愛いのかな…)ナデナデ

響「え、雪歩…? な、なんで頭撫でてるの…?」

雪歩「あっ! ご、ごめんなさい…! 嫌…だったよね?」

響「べ、別に、嫌じゃないけど…どうしたんだ、雪歩?」

雪歩「響ちゃん、なんか可愛いなーって…つい…」

響「へ…」ボッ

響「そ、そっかー? まぁ、自分、完璧だからな! あはは!」

雪歩「あっ、私こっちだから…それじゃ、また明日ね。響ちゃん」

響「う、うん! また明日!」

次の日…

響「おはよう、雪歩!」

雪歩「あ、おはよう。響ちゃん」

雪歩(事務所に来たら、響ちゃんに声をかけられた。その横には…)

貴音「雪歩。おはようございます」

雪歩「四条さん! おはようございます!」

貴音「響。雪歩と随分仲良くなっているみたいですが、何かあったのですか?」

響「雪歩とは、昨日二人っきりでレッスンしたんだ。ね?」

雪歩「うん、そうだよ。ね?」

雪歩(二人の中に、自然に入り込める…)

貴音「そうなのですか…ふふ、なんだか妬けてしまいますね」

雪歩「えっ!?」

貴音「今度は私も一緒に混ざってもよろしいでしょうか?」

雪歩「は、はいっ! 大歓迎ですぅ!」

雪歩(四条さんとも自然に話せる…やっぱり、勇気を出して踏み出してみてよかった!)

数日後…

雪歩「~♪」

雪歩(ここの所、毎日が楽しいなぁ)

雪歩(四条さんといっぱいお喋りできるし、響ちゃんも見てると楽しいし)

美希「鼻歌なんてしてゴキゲンだね、雪歩」

雪歩「! …美希、ちゃん」

美希「雪歩ってば、最近真クンにあんまり話しかけてこないね」

雪歩「…そうかもね」

美希「諦めちゃったの?」

雪歩「別にそんなんじゃないよ…」

美希「だったら、なんで貴音とばっかり話してるの?」

雪歩「別に、私が四条さんと話しても悪いことなんてないでしょ」

美希「フーン、じゃあ雪歩が貴音と仲良くしてるうちに、真クンはミキがペロっといただいちゃうの☆」

スタスタ…

雪歩(やっぱり、美希ちゃんとはあんまり仲良くなれそうにないなぁ…)

そして…

雪歩「ただいま…」

小鳥「お帰りなさい、雪歩ちゃん。ふぅ、今日のお仕事は終わり?」

雪歩「はい…」

雪歩(今日は美希ちゃんの言葉が気になって、あんまり集中できなかった)

雪歩(真ちゃんか…確かに、最近あんまり話せてない)

雪歩(会ったらちゃんと挨拶はしてるけど、それっきりで…)

雪歩(もう、こんなこと考えてるからダメダメなんだよ! 今は四条さんと仲良くできてるんだから、四条さんの方を選ぶべきだよ!)

雪歩(うん、決めた! これからは四条さん一本で行く! そうする!)

雪歩(そうと決めたら、四条さん…)キョロキョロ

雪歩(…は、どこ…?)

響「雪歩! おかえり!」

雪歩「あ、響ちゃん」

響「雪歩、今日は終わり?」

雪歩「えっと…うん。それで四条さんを探してるんだけど…知らない?」

響「貴音? 今日はもう帰ったんじゃないか?」

雪歩「そっか…」

雪歩(うぅ、決心したばかりなのに…幸先悪いなぁ…)

響「あ、あのさ雪歩…」

雪歩「?」

響「終わりだったらさ、その…自分でよければ一緒に帰らない?」

雪歩「響ちゃんと?」

雪歩(うーん、四条さんもいないみたいだし…)

雪歩「うん、いいよ。一緒に帰ろう」

響「えへへ…よかった、断られたらどうしようかと思ったぞ」

雪歩「ふふ、ちょっと大げさじゃない響ちゃん?」

響(最近、貴音にべったりだったからな…)

響(この機会に雪歩とも、もっと仲良くなりたいぞ!)

~帰り道~

響「それでさ、その時美希が…」

雪歩「美希…ちゃん…」

響「あ、あれ? なんかまずかったか?」

雪歩「う、ううん。大丈夫だよ。続けて?」

響「そっか…? 美希がさ…」

雪歩(なんで美希ちゃんはいっつもあんなことを言いにくるんだろ…)

雪歩(関係ない、関係ない…美希ちゃんが何を言ってきても、私は…)

犬「バウッ!!」

雪歩「ひっ!?」

響「雪歩!?」

雪歩「のっ、のっのっのっのっ野良犬…!?」プルプル

響(雪歩が怖がってる…! ここは自分がなんとかしないと!)

響「おい、おまえっ!」

犬「グルルルル…」

響「うー…わうっ!」

雪歩「へっ!? 響ちゃん…?」

犬「ウォゥ!? バウ! ワウワウ!」

響「わふっ! どぅるるるる!」

犬「グワゥ! フゥーッ!!」

雪歩(い、犬と会話してる…)

響「がうがう!?」

犬「グルルル…」

響「う? きゃんっ」

犬「キュー…」

響「わうん」

犬「クゥーン…」スタスタ

響「ふぅ…行ったぞ、雪歩」

雪歩「あ、あの…一体…」

響「ちょっと強情な奴だったけど、話してみれば悪い奴じゃなかった。許してやってほしい」

雪歩「犬と話せるなんて…ちょっと変わってるね…」

響「う、そういうこと言われるとちょっとショックだぞ…」

雪歩「ご、ごめん…うん、そうだね」

響「ま…いっか。雪歩に何もなくてよかったぞ」

雪歩(助けてもらったんだ…こういう時は、ちゃんとお礼言わないと)

雪歩「あ、あの…待って…」

響「ん?」

雪歩「その…」

雪歩「助けてくれてありがとう。響ちゃん」ニコッ

響「~っ!?」ドッキーン

雪歩「あれ、響ちゃん? どうしたの?」

響「な、なんでもない!」

響(な、なんだこれ!? なんで自分今、雪歩にドキっとしたんだ!?)

響(おかしいぞ、自分!)

雪歩「ひ、響ちゃん…?」

響「あっ!」

雪歩「えっ?」

響「じ、自分こっちだから! そ、それじゃ! また明日!」

雪歩「あ…」

雪歩(もしかして私、響ちゃんに嫌われちゃったのかな…)

雪歩(そうだよ…普通に「すごい」って言えばよかったのに、なんで「変わってる」なんて言っちゃたんだろ…)

雪歩(それに、犬が苦手なんて、動物大好きな響ちゃんからすれば信じられないよね…)

雪歩(うう、どこかに埋まりたいよぉ…)

ちはゆき&ゆきまみはよ!!

次の日…

雪歩「あ…」

貴音「面妖な」ペチャペチャ

響「だぞー」クチャクチャ

雪歩(響ちゃん…)

雪歩(昨日はちょっと気まずいまま別れちゃったけど…)

雪歩(でも、遠慮する必要なんて、ないよね?)

雪歩「おはようございます、四条さん」

響「~っっ!」ビクッ

貴音「おや。おはようございます、雪歩」

雪歩「響ちゃんも、おはよう」

響「………」ソワソワ

雪歩「響ちゃん?」

響「ご、ごめん雪歩! 自分…えーと、あれだ! エサやらないとだから!」ダッ

雪歩「え…? あの…」

雪歩(四条さんと二人きりになれたのはいいけど…)

雪歩(私、響ちゃんに避けられてる…?)

雪歩(やっぱり、昨日のことが原因なのかな…)

貴音「雪歩」

雪歩「はっ、はい!? なんですか四条さん!」

貴音「響と何かあったのですか?」

雪歩「えーと…四条さんにご迷惑をおかけするわけには…」

貴音「そういうわけにはいきません。雪歩も響も私の大切な友人」

貴音「その二人の仲が気まずくなっているとあれば、私にとって無関係ではありません」

貴音「私に出来ることがありましたら、遠慮なく言ってほしいです」

雪歩(四条さん、優しい…)

雪歩「実は昨日、響ちゃんと一緒に帰ったんですけど…」

貴音「ふむ」

貴音「なるほど…そういうことですか」

雪歩「四条さん、私、響ちゃんに嫌われてるんでしょうか…」

貴音「そうでしょうか…? 私にはそうは思えませんが」

雪歩「え…? で、でも…」

貴音「大丈夫ですよ、雪歩。響は貴女のことを嫌ってなどおりません」

雪歩「嫌ってない…?」

貴音「今は、そう…少し時間が必要なのです」

雪歩「は、はぁ…」

雪歩(よくわからないけど…四条さんがそう言うのなら…そうなのかな…?)

雪歩(だけど、響ちゃんはどうして私のことを避けたりするんだろう…?)

貴音「仲良きことは素晴らしきことです」

雪歩「…? ??」

響「はぁー…」

響(なんだろ、雪歩に話しかけられた瞬間…つい逃げちゃった…)ボーッ

伊織「あら? 何黄昏れてんのよアンタ」

響(雪歩に変に思われたかも…)ズキン

響(うぅ…それはなんか、すっごく嫌だ…)

伊織「ちょっと…この伊織ちゃんを無視するだなんていい度胸ね」

やよい「響さん! おはよ…」ポン

響「うわっ!?」ビクッ

やよい「はわっ!?」

伊織「ちょっ!?」

響「あ、ああ…やよい…と伊織か…」

伊織「伊織か…じゃないわよ!」

やよい「ちょっと、びっくりしちゃいました」

やよい「響さん、おはようございまーす!」

響「………」

やよい「響さん?」

響「あ、うん、おはようやよい」

やよい「もう、ぼーっとしてちゃ駄目ですよ響さん! しゃきっとしないと!」

響「そ、そうだな! しゃきっとしないと!」

伊織「…?」

やよい「そうだ響さん。これからお昼ごはん食べに行くんですけど、一緒にどうですか?」

響「えっと…いや、自分はいいや」

やよい「響さん、ごはん食べれば元気もりもりーですよ!」

響「今、そういう気分じゃないんだ」

やよい「でも…」

伊織「やよい、そっとしておきましょ」

伊織「私達は行くけど…本当にいいのね?」

響「悪いな、伊織。せっかく誘ってくれたのに、ごめんやよい」

伊織「さ、行きましょやよい」

やよい「響さん…ちょっとヘンだったかも」

千早「そうなの?」

伊織「そうね…心ここに在らずって感じだったわ」

やよい「響さん、何かあったんでしょうか…」

伊織「何かって?」

やよい「それはわからないですけど…」

千早「高槻さんでもわからないのね」

伊織「…………千早、アンタいつからここにいたの」

千早「私はいつでも現れるわ。高槻さんがそこにいるならば」

やよい「響さんはどうしちゃったんでしょう?」

千早「思春期特有の症状じゃないかしら」

伊織「アンタの口からそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかったわ…」

千早「けれど、あながち間違いとは言えないのでは?」

伊織「あの響が…って言いたいけど、あの様子を見ると確かに否定はできないわね…」

千早「我那覇さん、もしかして高槻さんのことを本気で好きになったとか…」

やよい「私、響さんのこと好きですよ?」

伊織「うーん…でも、さっきの態度はやよいに対してって感じじゃなかったわ」

千早「じゃ、じゃあもしかして私…かしら…? こ、困るわ…私には高槻さんが…」

伊織「千早、アンタ病院行った方がいいわよ…」

やよい「へっ!? ち、千早さん、びょーきなんですか…?」

千早「ええ、これはきっと高槻さんに対する恋の…」

伊織「頭のよ。いつからこうなったのかしら…」

その夜…

雪歩「ふぅ、今日も頑張ったなぁ」

雪歩(結局…あの後、私は響ちゃんと顔を会わせることはなかった)

雪歩(最近仲良くなってきたし、ちょっとは気になるけど…)

貴音「雪歩、お疲れ様です」

雪歩「はっ、はい!」

雪歩(まぁ、いいよね。それより四条さんともっと仲良くしないと!)

貴音「それでは御機嫌よう」

雪歩「ちょ、ちょっと四条さん!?」

貴音「はい? なんでしょうか雪歩」

雪歩「今日、これから何か予定は…?」

貴音「本日は外に夕食をと思っておりますが」

雪歩「それ、私もご一緒してもいいですか?」

貴音「折角の申し出ですが、雪歩を…いえ何人たりとも私の食事に付き合わせるわけにはいきません」

雪歩「えっ? ど、どうしてですか?」

おつ

雪歩「何かあったんですか?」

貴音「…以前、仕事の帰りに事務所の皆で軽く夕食をと…居酒屋へ行く機会があったのです」

雪歩「居酒屋…」

貴音「個室の四人掛けのテーブルに座り、プロデューサー様は酒を注文すると同時に我々にこう言いました」

貴音「『今日は奢りだ。好きなだけ注文していいぞ』と」

貴音「焼き鳥におでんに雑炊に、沢山の料理が運ばれてきて…」

貴音「そして私が気づいた頃には…そこには何も残ってはいませんでした」

雪歩「そ、それは…」

貴音「周りには引いた目で私を見る者! うんざりした顔で私を見つめる者…!」

雪歩「し、四条さん、そんなこと気にする必要ないですよ!」

貴音「普段ならば気にしません、しかし親しいと思っていた者にまであのような顔をされるのは…堪えます」

貴音「それ以来、私は悟ったのです…食事は孤独であると! 独り静かで豊かであるべきだと!」

貴音「ですので、雪歩。申し訳ありませんがご一緒してもらうわけには」

雪歩「待ってください四条さん! 私は変な顔なんて、しません!」

貴音「しかし…」

雪歩「私は四条さんと一緒にお食事がしたいんです!」

貴音「雪歩…」

雪歩「駄目ですか…?」

貴音「…私は誰かにそう言ってもらえるのを待っていたのかも…しれません」

雪歩「四条さん…!」

貴音「そこまで言うのであれば、断る理由はありませんね。よろしくお願いします、雪歩」ニコッ

雪歩「は…はいっ!」

雪歩(やった! 四条さんと一緒にお食事…)

雪歩(それに、この笑顔…これって結構好感触!?)

雪歩「どこに行くんですか?」

貴音「最近見つけたらぁめん屋なのですが…雪歩はらぁめんは嫌いではないですか?」

雪歩「大丈夫ですぅ。私、こってりしたのも結構好きですから」

貴音「そうなのですか、それならちょうどいいですね」

雪歩「それじゃ、行きましょう!」

雪歩(四条さんと、二人きり~♪)

ガチャ

雪歩「ひゃぅぅ!?」ビクッ

?「あ!? ご、ごめん! 急に開いたから…脅かしちゃった?」

雪歩「ま、真ちゃん…」

真「あ…雪歩。大丈夫? 怪我はない?」

雪歩(真ちゃんに見られちゃった…)

雪歩(いや、別にいい…んだけど…いいはずなんだけど、なんか嫌な感じ…)

貴音「真。お疲れ様です」

真「貴音さんもおつかれさま。何の話してたの?」

貴音「ただ今、雪歩とらぁめんを食べに行こうと話していたのです」

真「へぇ、そうなんだ」

雪歩(ふ、普通の反応…)

雪歩(って、そうだよね…真ちゃん、私のことそういう目で見てるわけじゃないよね…)

真「雪歩、貴音さん、ボクも行ってもいいかな? ちょうどお腹空いてるんだ」

貴音「よろしいですよ。この際です、食事の感動は分かち合えた方がいいですから」

雪歩「えっ? し、四条さんがいいのなら、もちろん!」

真「本当? 迷惑じゃない?」

雪歩「そんなこと、あるわけない! だって、私達みんな…」

貴音「仲間だもんげ」

雪歩(こ、これは…四条さんと真ちゃんと、三人でお食事…!?)

雪歩(真ちゃんのことはちょっと諦めかけてたけど、こんな素敵なイベントが来るなんて!)

雪歩「あ…その前に、ちょっと…」

真「ん? どうしたの雪歩?」

雪歩「えっと…お手洗いに…」

貴音「ええ、どうぞ」

雪歩「失礼しますぅ!」

雪歩(フヒッ、ハーレムですぅ…)

雪歩(お手洗い? そんな場合じゃないよ、この感動を詩にしなきゃ…!)

ドンッ!

?「わっ!?」

雪歩「いたっ…ご、ごめんなさ…」

美希「…雪歩…」

雪歩「あ…美希ちゃん…」

雪歩「ご、ごめんなさいぃ…わたし、ちょっと急いでて」

美希「フーン…これから二人とデートだから?」

雪歩「ふぁっ! な、なんでそれを…」

美希「さっきから見てたの! 真クンだけじゃなくて貴音まで…雪歩の節操なし!」

雪歩「せ、節操なしって…そんなんじゃないって」

美希「嘘だよ! 雪歩、すっごく嬉しそうな顔してたモン!」

雪歩「だ…だとしても、美希ちゃんには関係ないでしょ!」

美希「関係あるもん! だって…」

雪歩「だって?」

美希「あれ…? なんでだろ?」

雪歩「…美希ちゃん…?」

美希「うーん…」

雪歩(よくわからないけど、今のうちに…)コソコソ

~らぁめん屋~

雪歩「うわ…」

貴音「雪歩はこのような所に来るのは初めてですか?」

雪歩「えっと、初めてではないですけど…あまり来ないですね」

店主「ラッシャェ! チューモンドウシェス?」

真「貴音さん、何かオススメってあります?」

貴音「特製葱味噌叉焼めん特盛で」

真「じゃ、ボクもそれで」

雪歩「わ、私もそれでお願いしますぅ」

店主「ヘイ! トクセイネギミソチャートクモリサン!」

貴音「結構大盛りなのですが…大丈夫ですか?」

真「お腹空いてるし、大丈夫だよ」

雪歩「わ、私も…」

雪歩(勢いで言っちゃったけど…なんかすごそうだし、やめとけばよかったかも…)

コンモリ

真「うわっ、すごいな…スタミナつきそうだ」

雪歩「こ、これどこから食べれば…」

貴音「箸の赴くまま…自由に食すといいでしょう。誰も咎めはしません」パクパク

雪歩(箸の赴くままって言われても…)

雪歩「えーと、う、上に乗ってるネギから…?」

真「辛っ! このネギ辛い!」

雪歩(そんなに辛いかなぁ…)シャギシャギ

貴音「スープを飲むといいですよ。味噌の風味が辛みを和らげてくれます」

真「なるほど」ズズッ

真「あちちっ」

雪歩「わっ、真ちゃん大丈夫!?」

真「うん、大丈夫。辛いもの食べた直後って熱いのが舌にしみるんだよね…」

真「はぁ…」プハ

真「白髪ネギって言うんでしたっけ? 赤いけど。このピリ辛風味、味噌のスープに合いますね」

貴音「ここの葱は何にでも合いますよ」

真「味噌ラーメンってチャーシュー入ってる印象あんまりないんですけど…」

真「ここのはいいですね。1枚で出すんじゃなく一口サイズに切ってあるし、これもまたネギと合う」

貴音「葱もよろしいですが、やはりこの店の特筆すべき点は麺ですね」

真「うんうん、この太いちぢれ麺にスープが絡み付いて…」ズルルッ

真「あーっ、暑い! 上着脱いでいいかな!」ズリッ

パサッ

雪歩「………」ポエー

貴音「雪歩? どうしたのですか。箸が止まっておりますが」

雪歩「え? あ、はいっ! そうですね!」ズルズル

そして…

真「ふぅ…ごちそうさま!」

貴音「ふむ、まだ足りませんね…もう少し、替え玉をお願いできますか」

真「あれ、そんなのあるんだ? じゃあボクも替え玉貰おうかな」

貴音「食べられるのですか、真? 一般的にはかなりの量だと思われますが」

真「今日は腹ぺこなんですよ。だからもう一玉くらいは…」

雪歩「う…うぅ…」プルプル

真「ゆ、雪歩? 大丈夫? 少し食べようか?」

貴音「雪歩、あまり無理はなさらずに…」

雪歩「は、はいぃ…」ウップ

雪歩(流石に、二人と同じ量は無理があったみたい…)

雪歩(四条さんや真ちゃんに心配かけて…)

雪歩(うぅ…穴掘って埋まりたい…)

おつ

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