男の娘「相撲部に、入ろう」(80)

男の娘「ぼ、ボクだって、男らしくなるんだ!やるぞ!」

男の娘「すいません!入部希望です!」

先輩1「うぉ!?にゅ、入部希望!?」

先輩2「わ、我が部にもまさかマネージャーが!?念願のマネージャーが!!」

先輩3「ありがたやありがたや……」

男の娘「ま、マネージャーじゃありません!選手として入りたいんです!」

先輩達「えっ」

先輩1「いやしかし……」

男の娘「ダメなんですか!?」

先輩2「華奢だし……」

男の娘「だから、入って鍛えたいんです!」

先輩3「練習も大変だから」

男の娘「それは覚悟してます!」

先輩1「っていうかそもそも女の子はほら、なあ?」

先輩2「そうそう。相撲は男のスポーツだし……」

先輩3「相撲好きなのは嬉しいけどやっぱりマネージャーとして……」

男の娘「ボク、女の子じゃありません!れっきとした男です!」

先輩達「えっ」

男の娘「うう、やっぱり女っぽいとダメですか……?」

先輩1「女っぽいっていうか……どうみても女だし、声も高いし……」

男の娘「そういう体格なんですよぅ……」

先輩2「だ、だって髪だって長いし……」

男の娘「それはその、力士さんって髷を結ってるから長くなきゃいけないかと思って冬から伸ばしたんです!」

先輩3「っていうか、男である証明がないと……」

男の娘「じゃあここで脱ぎます!見てもらえば流石にわかるでしょう!?」

先輩達「えっ」

男の娘「じゃあ脱ぎますから刮目してください!」

先輩1「いやいやいや、ちょっとまって!」

先輩2「こんなところ、顧問か誰かに見られたらそれこそ問題だから!廃部と停学、下手すりゃ退学のセットだから!」

先輩3「そういう手口なの?今はそういう美人局の手口なの!?そうやって脅して部費を狙ってるの!?」

男の娘「狙ってません!男同士なのに問題が起きるわけないじゃないですか!ここは相撲部なんだから裸でもおかしくないでしょう!?」

先輩1「いやいや、問題だから!それが問題だから!ここ相撲部だからね!?」

先輩2「むしろ相撲部だからね!?上半身裸の俺たちと裸の君だとまずいでしょ!?」

先輩3「っていうか相撲するにしても下は脱がないからね!?」

男の娘「下は一瞬だけですから!見ててください!」

先輩達「だから脱がないで!」

同級生「すいません、遅れましたー……」

先輩1「いいタイミングできてくれた!」

先輩2「頼りになる後輩よ!こいつをどうにかしてくれ!」

先輩3「お前だけが頼りだ!顧問を呼んできてくれ!」

同級生「どうしたんで……あれ?男の娘じゃん、相撲部にどうしたの?何か用?もしかして入部希望とか?」

男の娘「あ!同級生君!うん!そうだよ!」

同級生「そうかー、お前は相撲やればいい線いくとおも……えっ?」

男の娘「ん?」

同級生「えっ、いや、まじで入部希望なの?」

男の娘「そうだよ!マジでマジの大マジだよ!」

同級生「マネージャーとして?」

男の娘「選手として!」

先輩1「おい、同級生、お前この子の知り合いなのか?」

同級生「ええまあ、同じクラスです」

先輩2「じゃあ知ってるんだな?本当に男なのか!?」

同級生「あ、ああ、こういう見た目ですけど男っすよ。最初はびっくりしたけど」

男の娘「だから言ったじゃないですか!」

先輩3「本当に男なのか……いや、しかしなぁ……」

男の娘「やっぱり、だめなのかな……」

同級生「……。いいんじゃないですか?新入生も俺だけなんですよね?四人しかいないと廃部ですし、こいつ入れば先輩達合わせて五人で、部はなくならないし」

先輩1「う……確かに廃部は嫌だ……」

先輩2「まあ、本当に男なら断る理由もないし……」

先輩3「というか新入部員はありがたいからお願いしたいくらいだけど」

同級生「じゃあ……」

男の娘「あ、ありがとうございます!一生懸命頑張ります!ありがとう!同級生君!」

先輩1「ま、まあ悪くはないかな」

先輩2「そ、そうだな。これからよろしくな!」

先輩3「ビシビシいくからな、厳しいぞ!」

男の娘「頑張ります!よろしくお願いします!」

同級生「ははっ、こちらこそよろしくな」

先輩1「じゃあ着替えるか」

先輩2「そうだな」

先輩3「予備のまわしだけど、今日はこれを使ってくれ。締め方は教える」

男の娘「はい!」

同級生「あれ?先輩達、なんで上だけ体操服に着替えてるんですか……」

先輩1「ば、馬鹿野郎!忘れたのか!?」

先輩2「きょ、今日から上着は体操服着用って決めただろ!」

先輩3「そ、そうだそうだ!暑さを耐える精神鍛錬のために夏場にむけてそういうことにしただろ!」

同級生「……あ」

男の娘「ん?」

同級生「あー……、はい!忘れてました!すいません!体操服、教室からとってきます!」

男の娘「精神も鍛錬するんですね!すごいです!」

先輩1「ま、まあね。一応相撲も武道だからね!」

先輩2「そうそう、相撲道って言ってね、だから精神鍛錬も重要なんだ!」

先輩3「だから、今日からそういうことでね。いやあ、ははは、た、タイミングがよかったね!」

男の娘「はい!精神修行だなんてかっこいいです!」

先輩達「は、ははははは……」

おやすみー!

先輩達「準備体操終わりー!」

同級生「おす!準備体操終わりー!」

男の娘「えっ、あ、えと、準備体操おわーりー!」

先輩1「おう。じゃあいつものようにぶつかり稽古一本からな!」

同級生「ぶつかり稽古?」

先輩2「あ。そういや、新人向けのメニューなんか準備してねえぞ……同級生は経験者だったし……」

同級生「まずはお手本見せてから、真似させればいいんじゃないですか?」

先輩3「それもそうだな。受けなきゃ怪我はしないだろ」

同級生「ってことで、俺が今から先輩にぶつかっていくから、見ててくれ、真似してくれればいいから」

先輩1「よっしゃこいやぁ!」

同級生「同級生、いきます!」


先輩1「ふんぬ!まだまだぁ!」

同級生「うおっ!こなくそ!」

男の娘「わぁ!すごい!」

先輩2「いっつ見ても力強いなあ、あの二人は」

男の娘「ぼ、ボクもあれくらいできるようになりますかね!?」

先輩3「努力次第かな。頑張らないとね」

男の娘「はい!」

先輩2「おし!五分たったぞ!」

同級生「ぜぇはぁ……きっつ……」

先輩1「おーし、次は男の娘だな!」

先輩2「とにかく気にせずぶつかって来い!」

男の娘「は、はい!男の娘、いきます!」

男の娘「よいしょお!」

先輩1「ほい!弱いぞ!まだまだ!」

男の娘「んむむー!とりゃあ!」

先輩1「腰が入ってない!」

男の娘「はい!」

先輩1「ほら、足元がおぼついてないぞ!ふんっ!」

男の娘「きゃっ!」

先輩1「うおっと、だ、大丈夫か!?」

男の娘「だ!大丈夫です!続けます!」

先輩1「おう!こい!」

先輩2「ああやって見てると、じゃれあってるカップルに見えるな」

先輩3「そうか?なんていうか年の近い親子みたいにも思えるが」

同級生「はは、先輩1は老けが顔ですしね」

先輩2「……」

先輩3「楽しそうだな……」

同級生「……ですね。ぶつかり稽古ってきついもんだと思ってましたけど……」

先輩2「おい!次は俺な!受け手やる!」

先輩3「なっ、ずるい!じゃあその次は俺な!」

同級生「そんなにぶつかり稽古してたら怪我するじゃないですか……」

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