娘「お医者さんごっこしよっか!?」(168)


男「あ、もしもし? おふくろ? いや、たまには声が聞きたいかなーって。」

男「んーやっぱりバレちゃうか。実は会社が潰れちゃってさ。」

男「まぁね、でも、ちょっと蓄えが残ってるし、このまま新しい仕事探すわ。」

男「いやいや、そうならないために仕事を探すわけでね。」

男「ああ、ホントにそうなったら一回戻るから。」

男「うん。今日のところはそれだけ。」


――――――――――

男「あ、もしもし? おふくろ? いや、たまには……って昨日の今日だっけ。」

男「ま、バレるもなにもないか。実はアパート燃えちゃってさ。」

男「いや、どうも放火みたいだわ。というわけだから……その。」

男「通帳は燃えたけど、キャッシュカードは持ってるから。」

男「うん。かなり予定が早まったけどね。」


男「というわけで、不肖の息子ただいま戻りました。」

母「ああ、おかえり。」

男「親父は?」

母「仕事に決まってんでしょ。」

男「愚妹は?」

母「大学。もうすぐ戻ると思うけど。」

男「そうか。」

母「あんた荷物それだけなの?」

男「アパート全焼したし。コレもパソコンと途中で買った着替えしか入ってないよ。」


男「俺の部屋ってまだ残ってる?」

母「半分物置になってるわ。あんたあの部屋使う気なの?」

男「そこ以外のどこで生活しろと?」

母「居間でいいじゃない。」

男「プライバシーねえじゃん。」

母「家族なんだし気にしないわよ。」

男「俺が気にするんだよ。」


母「ほんとにあの部屋使うのかい?」

男「そのつもりだけど、なんか不味い事でもあんの?」

母「あの部屋、出るっぽいんだよ。」

男「蜘蛛か? 百足か? 今に始まったことじゃないでしょ。」

母「幽霊だよ。ユーレー!」

男「俺そんなもん信じてないし。」


母「じゃあ、適当に片付けて使いなよ。どうなっても知らないよ。」

男「うん。使わせてもらうわ。」

母「あ、あの部屋はエアコン付けてないからね。」

男「という事は、他の部屋には取り付けたってことか。」

母「思い切っていろいろ電化にしたけど、あの部屋は使う予定なかったしね。」

男「ストーブあまってるのない?」

母「やめてよ。アパート火事になったんでしょ。」

男「火元は俺じゃないっての。」


男「あー、懐かしいな。てか、こんなに狭かったっけ?」

男「つーか、物置にするにしても、もう少し規則的に収納しとけと。」

男「テレビはつくな……映らないのはアナログだからか。チューナー買うか。」

男「これはコタツか。エアコンあるから出してないのな。」

男「丁度いい。この部屋の暖房はコレ使おう。」

―くすくす―

男「?」

男「近所のおばさんでも来てんのかね。」


母「お? 出かけるの?」

男「テレビが映らん。チューナー買ってくる。」

母「じゃあ、帰りに卵買ってきてよ。」

男「いいよ。ん? 誰か来てたんじゃなかったの?」

母「何が?」

男「何でもない。」


男「とりあえずこれでテレビは映るようになった、と。」

男「たまにはコタツも風情があっていいもんだよね。」

―うん!―

男「?」

男「テレビの音か? ちょっとボリュームを……」

男「ていうか、リモコンどこ行った? コタツの中とか?」

―きゃっ!えっち!―

男「…………」


男「…………」

娘「こ、こんにちは。」

男「俺にこんな小さい妹いたっけ?」

娘「こんな、って? 見えるんですか?」

男「何が?」

娘「私が。」

男「テレビのリモコン握りしめてコタツに潜り込んでる女の子以外は何も見えんな。」

娘「それ、私です。」


男「で?」

娘「はい?」

男「誰?」

娘「何が?」

男「君が。」

娘「私?」


男「質問文に対し、質問文で答えるとテスト0点なの知ってた?」

娘「私は会話が成り立たないアホじゃないです!」

男「その返答には百点満点あげる。で、誰?」

娘「えーと、う―…私はコタツワラシです。」

男「なにそれ?」

娘「コタツに住む神様? みたいな?」

男「座敷ワラシみたいなもん?」

娘「座敷ワラシじゃないです!」


男「ふーん……」

娘「信じていただけるんですか?」

男「いや、ぜんぜん。」

娘「じゃあ、信じてください。」

男「無理。」

娘「どうしてですか?」

男「勝手に人の部屋に入り込んでリモコン隠した半袖・短パンの子供にしか見えないから。」

娘「ああ、あなたには私が見えてるんでした。じゃあ、ちょっとついてきてください。」


娘「どうです? あなた以外に私に気付いた人、いました?」

男「隣のおばさんや、ウチのおふくろがグルじゃないっていうなら、いなかったかな。」

娘「私は子供にしか見えないんです。」

男「うん、どう見ても大人だとは思えないね。」

娘「そうじゃなくて、私を見ることができるのは子供だけなんです。」

男「でも、俺には見えてるわけで。」

娘「じゃあ、あなたは子供なんですね。」

男「いや、俺25ですよ? 酒も煙草も合法だし。この歳で子供って無理があ……!?」

娘「今、思い浮かべた基準で間違いないと思いますよ。」

男「ヤメテ!そんな憐みの眼差しを向けないで!」


男「はぁ……」

娘「もともとこの部屋に住んでた人ですよね?」

男「そうだけど。」

娘「なんで戻って来たんですか?」

男「彼女に振られて、勤めてた会社が潰れて、住んでたアパートが全焼した。」

娘「弱り目にたたり目というやつですね。」

男「そんな簡単に済ませないでよ。」

娘「踏んだり蹴ったり?」

男「余計に簡素になってるから。」

娘「泣きっ面に蜂?」

男「マジで泣きたい。」


娘「落ち込まないで、禍福はあざなえる縄のごとしって言うじゃないですか。ね?」

男「今のところ禍禍禍だけどな。縄じゃなくてミサンガ編めるぞ。」

娘「でもまあ、これからはいい事ありますよ。」

男「良く当たる占い師が言いそうな言葉だよね。」

娘「ほんとですって。私を追い出さなければ……ですが。」

男「なにそれ?」

娘「私を見た人には幸運が訪れるんです。」

男「座敷ワラシじゃん。」

娘「あ、いや、違います。コタツワラシです。」


男「そもそもコタツワラシとか聞いたことないし。」

娘「とにかく、座敷ワラシじゃないんです。」

男「座敷ワラシが嫌いなの? 同一視されんの嫌?」

娘「座敷ワラシってバレたら奥座敷に閉じ込められちゃうでしょう?」

男「…………」

娘「あちゃー……」

男「だが……マヌケは見つかったようだな。」

娘「シブくないです!まったくぜんぜんシブくないですから!」


男「まあ、別に何ワラシだっていいけど。」

娘「閉じ込めたりしないですか?」

男「そもそも閉じ込めるってなんだよ?」

娘「私達がいる所は栄えるんです。でも、ずっといるわけじゃなくて、適当な時期に他へ移るんです。」

男「ああ、家が廃れるのが嫌だから立ち去れなくするわけか。」

娘「別に、いなくなったからって即座に家が潰れるわけもないですけどね。」

男「じゃあ、我が家は君が居るから順風満帆ってこと?」

娘「私はこのコタツに憑いているので。家計には干渉してません。」

男「このコタツだけが人生バラ色ってこと?」

娘「そうですね。このコタツに入る人だけ幸運を授けます。」


男「でも、このコタツは使われていなかった、と。」

娘「だからこそ憑いたわけです。人目を忍ぶ意味でも。ね?」

男「なんで? 人を幸せにするのが嫌になったとか?」

娘「嫌じゃないですよ。でも、私は下手っぴだから幸せに出来なくて。」

男「どういう事?」

娘「大体の人は幸運が続くとそれが当たり前になっちゃって、欲に溺れてしまうんです。それが嫌で……」

男「そんなのは本当の幸せじゃない(キリッ!ってことですね。」

娘「その言い方、なんか癪に障りますね。」


娘「それに、そういう感じになっちゃった人は私を閉じ込めようとするんです。」

男「閉じ込められるのは、まあ、嫌だろうね。」

娘「そしたら子供も遊んでくれなくなっちゃうし。」

男「遊ぶって何? おはじきとか毬つきとか……あとアレ、お手玉とか?」

娘「そんな時代遅れの遊びはしないです。バカにしないでください。」

男「バカにしたわけじゃないよ。ルールとかよくわかんないことだと遊べないな。と思ってね。」

娘「遊んでくれるんですか?」

男「内容によるってば。」

娘「時代はハミコンですよ!」

男「ナウい……って言えば君の時代に追い付けそうだね。」


男「で、俺はこのコタツ使うつもりなわけだ。」

娘「どうぞどうぞ。」

男「どうする? 次の家を探して移る?」

娘「追い出さなければって言ったじゃないですか。しばらくは居ますよ。居てもいいならですが。」

男「嫌じゃない?」

娘「あなたはカラ元気振りまわしてますけど、心が泣いてるじゃないですか。少しくらいいいかと。」

男「心が泣いてる……だってお!」

娘「照れ隠しですよね? 茶化さなくてもいいですよ。」

男「…………」

娘「今度は怒ってみせる気ですか?」

男「……いや、ごめん。」

娘「あ、すいません、私も短慮でした。」


男「ところで、閉じ込めるのってどうやるの?」

娘「聞いてどうするんですか?」

男「気になっただけ。教えたくないなら別にいいよ。」

娘「部屋の周りに縄をはわせてお札を貼るんです。」

男「結界っていうので合ってるかな? そういうのを張るわけね。」

娘「ええ、ちなみに蔵や土間に縛られる事もありますよ。自分で憑く事もありますが。」

男「座敷ワラシなのに?」

娘「そういう場合はクラボッコとかコメツキワラシって呼ばれますね。」


男「今のところ追い出すつもりは無いけどさ、具体的にはどうなの?」

娘「何を訊かれているのか分かりません。」

男「寝る場所とか、食う物とか、いろいろ。」

娘「私は寝なくても大丈夫ですし、食べなくても死にません。」

男「経済的だな。」

娘「気分次第で寝る事もあれば、食べる事もありますけど。」

男「あくまで、出来ないんじゃなくて、しなくていいだけか。」


娘「寝るときはコタツで寝ようと思います。私は風邪も引かないし。」

男「座し……コタツワラシって何食べるの?」

娘「人間の食べるものなら食べられます。ただ、食べると、その……後で出すことになりますが。」

男「吐くの?」

娘「吐いたりしません!人間と同じです!」

男「ああ、要するにウンk……痛っ!蹴るなよ!」


男「ちなみに何歳?」

娘「あなたモテないですよね? まあ私が見えるくらいですから……」

男「関係ねえし。言いたくないならそう言えよ。」

娘「数えてないから正確にはわかんないです。三百歳くらいかと。」

男「つまりロリババアですね。わかります。」

娘「でも、その半分くらいは閉じ込められてました。」

男「そりゃまた……」


男「まあいいや、質問タイムおわり。」

娘「信じるんですか?」

男「一応はね。てか、疑ってほしいの?」

娘「子供ならともかく、大人の人にしてはアッサリしてるなと……あ、子供でしたね。」

男「なんなら、今この場で大人の階段登ってやろうか?」

娘「この鬼畜!ロリコン!AC-10!」


男「根拠っていうのも変だけど、見た目より達観してるしさ。」

娘「上から目線ですこと。」

男「即席で思い付いた設定でも無さそう。」

娘「当然です。」

男「おかっぱ頭で着物でも着てればもっとスムーズだったとは思うけどね。」

娘「このご時世でそんな格好してたら浮き過ぎますよ。」

男「ま、そういう事だから、とりあえずは信じる。」

娘「では、私は童女 コタツワラシ コンゴトモヨロシク。」


男「じゃあ、何して遊ぶ?」

娘「お医者さんごっこしよっか!?」

男「……え?」

娘「ウソに決まってるじゃないですか。なに赤くなってるんですか。」

男「いやいや、俺は断じてそんな趣味は……」

娘「ドキドキ……しました?」

男「……うん。ちょっとだけ。」

娘「プッ……あはは、このロリコンどもめ!」

男「遊ぶって、俺で遊ぶってことか。」


娘「まあまあ、この部屋にはハミコンあるのでこれで遊びましょう。ね?」

男「ファミコンだ。ハじゃなくてファ。つか、まだ残ってたのかこれ。」

娘「しまいっぱなしになってるのを発掘したんです。」

男「でも無理。」

娘「どうしてですか? カセットもいっぱいありますよ?」

男「これワンコンのAボタン効かないし、このテレビ、同軸ケーブルつなぐとこが無い。」

娘「ワンコンはジョイスティックつなげばいいじゃないですか。」

男「そもそもテレビにつながらないから画面も音も出ないんだってば。」


娘「はうー……今度こそヴ○ルガードIIをクリアしようと思ったのに。」

男(ループゲーとか、世の中には知らない方がいい事もあるよね。うん。)

娘「じゃあ、歌いましょう。せめて気分だけでも。ね?」

男「何だよ? 歌?」

娘「♪れんしゃ~れんしゃ~ ♪ついたぞれんしゃ~……」

男「ごめん、ついていけない。」


男「というか、女の子らしい遊びとかしないの?」

娘「別に楽しければなんだっていいんです。私にとって遊びに貴賤はありません。」

男「カッコ良さそうで全然カッコ良くないから、それ。」

娘「遊び相手が楽しめることなら私も楽しく感じるようにできてますから。」

男「できてるとかいう表現はちょっと引くなぁ。」

娘「あー……どんな相手とも楽しさを共感できる程度の能力。だったらどうです?」

男「程度って部分に作為的な何かを感じずにはいられない。」


男「まあ、ゲームだったらノートパソコンに入ってるからそれで遊ぶか。」

娘「えっちなゲームですか?」

男「いやいや、シューティングですから。パッドないからキーボード操作だけど。」

娘「じゃあやりましょう。」

~操作説明中~

娘「左手で移動だから、ファミコンとは手が逆なんですね。」

男「パッドはその内買ってくるよ。高い物じゃないし。」


娘「では早速、失礼しまーす。」

男「……おい。」

娘「どうかしましたか?」

男「なんで俺の上に座る?」

娘「重たいですか?」

男「そんなに重くない。でも、問題はそこじゃないでしょ?」

娘「重くないなら問題ないですよ。」

男「ありますよ。」

娘「これなら一緒に画面見れるし。二人ともコタツに入れます。」

ファミコンが左手で移動だろ


男「ボク男の子ですよ?」

娘「まさか欲情するっていうんですか? あ、おっぱい揉んだりしたら絶好ですから。」

男「揉むほど無いじゃん。」

娘「そんなだから、いまだに私が見えるんですよ。」

男「何この敗北感。」

娘「おぉ!あぁぁ!うわっ!」

男「一緒に体が動いてるぞ。」

娘「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り。」


>>72 やらかした 右手に脳内変換お願いします


男「初見で河童のポロロッカ取得……だと?」

―ご飯だよ~―

男「どうやら飯の用意ができたみたい。ちょっと行ってくる。」

娘「そうですか。残念です……」

男「食ったらすぐ戻るから、そのまま遊んでていいよ。」

娘「駄目です。」

男「?」

娘「一人で遊んでても楽しくないです。戻ってきてから続きしましょう。ね?」

男「なにこれ可愛い。」


男「久方ぶりの一家団欒てやつだな。」

妹「兄貴ちょっと痩せたんじゃないの?」

男「お前は相変わらずのビヤ樽っぷりだな。マイシスター。」

妹「信じらんない。のたれ死ねクソニート!」

男「開口一番がおかえりなさいじゃなくて傷付いたお返しだ。」

父「顔会わせて早々に喧嘩するな。」


男「タマネギageとか言えば丸く収まる?」

妹「逝ってヨシ!」

母「オマエモナー」

妹「それよか、話声がしてたけど? 長電話でもしてたの?」

男「ん? ああ、そんなとこだな。ノートでボイスチャットとかもするだろうから気にするな。」

父「これからどうするんだ?」

男「職探しするしかないでしょ、明日履歴書買いに行って来るわ。」


母「いい仕事が見つかればいいんだけどねえ。」

男「とりあえず、貯金が尽きるまでは足掻いて見る。」

妹「尽きたら?」

男「バイトしながら職探しに切り替える。」

妹「そして、そのままフリーターで一生過ごすわけね。」

男「そこは応援しろよ、このム○シュビバンダム!」

妹「ムッシュ……何?」

男「ggrks……じゃ、ごちそうさま。」


男「戻ったぞ。どこだ? またコタツか?」

娘「……えっち!」

男「スカートめくったわけじゃないでしょうが。」

娘「コタツ布団も同じようなものです。」

男「そもそもなんでコタツの中に居るんだよ。」

娘「コタツワラシですから。」

男「まだ言ってるよこの人。」


男「じゃあ何? 俺はスカートの中に足や手を突っ込んで温もりを分けてもらってるの?」

娘「そんなわけないじゃないですか。」

男「もしかして、また俺で遊んでる?」

娘「あなたは面白い人ですから。つい、悪戯したくなっちゃいます。」

男「まあ、今はその方が気が紛れて楽だな。考え込むと潰れそうだもん。」

娘「そういうことは言葉に出さないでください。」

男「あ、紛らわしてくれてたのか。ありがとうな。」

昨日の童貞の最後ふうぞくじょうのひと?


―クソ兄貴!アトデコロス!(ググった)―

娘「ふふ、兄妹仲がいいんですね。」

男「どこが?」

娘「当たり前すぎて自覚が無いだけです。私は兄弟とか無いからちょっと羨ましい。」

男「俺は君みたいな妹がいたほうが嬉しいけどな。」

娘「え? ……じゃあ、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」

男「へ? あー……うん、そのほうがいいなら、構わない……けど?」

娘「まあ、呼びませんけどね。」

男「クソがぁぁぁぁあ!」


>>89 投下するのは二週間ぶりくらいなので別人かと


娘「まあまあ、テレビでも見てくつろぎましょう。ね?」

男「そうしよう。」

娘「では再度、失礼しまーす。」

男「またですか。」

娘「テレビが見える角度からしてここに座るのがベストでしょう。嫌ならどこか行ってください。」

男「ここ俺の部屋だし。」

娘「私のコタツです。」

男「私のじゃないが。」


男「後ろで匂い嗅いだり、息を吹きかけたりするかもしれないぞ?」

娘「それで満足するならそうしてください。襲われるよりはマシです。」

男「いや、別に襲いませんけど? 子供に欲情するほど壊れてないわ。」

娘「私、ある程度なら、見た目を成長させたりできますよ?」

男「まあ、しませんけど。だろ?」

娘「さすがに耐性ついちゃいましたか……」

男「頭、撫でてもいい?」

娘「特別に許可します。」

男「……」

娘「なんだか、落ち着きますね。」


娘「もうテレビもつまんないですね。ニュースばっかりの時間になっちゃいました。」

男「…………」

娘「無視ですか? それとも私に見とれてます?」

男「…………」

娘「ちょっ!苦しいです!襲わないって言ったじゃ……む?」

男「Zzz……」

娘「……テレビは私が消しておきますね。」


――――――――――

男「寒いと思ったら、コタツで寝てたのか。もう朝……っつーか昼近いな。」

娘「きゃっ!」

男「え!?」

娘「みみみみ、見ましたか?」

男「見てない!何も見てないから!」

娘「見られたぁ……紐パンなんか履いてる淫らな子だと思われたぁ。」

男「いや、クマさんのプリントでしたよ?」

娘「……やっぱり見たんじゃないですか。」

男「くっ……なんて初歩的な……」


娘「もう、お嫁に行けない……」

男「待って待って、いろいろとおかしいでしょ?」

娘「獣のような眼差しで着替えを覗いておいて、この上さらに私を辱めるつもりですか?」

男「というか、ここで着替えてたのはそっちでしょ。俺は目を覚ましただけだし。」

娘「責任……とって下さいね。」

男「あー……要するにプリンとか、クレープとかで良いのかな?」

娘「話が早いですね。あなた見込みがありますよ。」

男「かなわないわー……」


娘「でも、誤解はしないでください。ホントに恥ずかしかったんですから。」

男「最初の反応だけは素だったのね。」

娘「はい。おとし入れるために待ち構えて着替えてたわけじゃないです。」

男「じゃあ、もう少し目を覚ますのが早ければ……」

娘「パンツ換える瞬間を見られてたでしょうね。」

男「そういう事みなまで言わない。」

娘「意識しちゃいますか?」

男「しませんよ。」


娘「家の人はみんな出掛けちゃってますよ。」

男「おふくろもか。」

娘「なんか、町内会の婦人部がどうのこうのと。」

男「飯どうするかな。」

娘「あなたの分も用意してありました。もう冷めてると思いますが。」

男「見て来たのか。まあ、大人からは見えないしな……ん?」

娘「それです、それ、妹さんに見つかるかとヒヤヒヤしました……」

男「まあ、バレて困るもんでもないか。」

娘「……でも、妹さんも私が見えないみたいですね。」

男「俺はあのハークルビースト以下かよ!!」


>>100 おとし入れる× → 陥れる


男「とりあえず飯食って買い物に行こう。」

娘「プリンですね。」

男「ああ、それもあったか。」

娘「ワッフルも買ってきてくれるんですか?」

男「違うし、履歴書とか求人誌とかを買うの。」

娘「ついてってもいいですか?」

男「家から出れるの?」

娘「当たり前です。家を移る時だってワープしてるわけじゃないんですよ?」


男「火のもとよーし!戸締りよーし!では出発。」

娘「私を忘れてますが?」

男「誘導いるの? 迷子とかになったりする?」

娘「なりません。でも、どうせなら一緒に歩きましょう。ね?」

男「こら、裾を引っ張るな。」

娘「じゃあ、手を繋いでください。」

男「んー……まあ、いいけど、なんで?」

娘「そのほうが、きっと楽しいからです。」


男「コンビニで履歴書が買えるとか、便利な時代になったもんだ。」

娘「プリンもちゃんと買ってください。」

男「大丈夫、忘れてないよ。どれがいい?」

娘「じゃ、これを。……あと、私が見えない人もいるので独り言に気を付けてください。」

男「ああ、はたから見たらアブない人になるな。」

娘「既に何人かに奇異の目で見られましたけどね。」

男「そういう事は店に入る前に言って欲しかったな。」

娘「すいません、人と歩くのは久々だったので。」

ちらほらでるWIZネタが理解できるぞwww


男「せっかく外出したんだし、商店街のほうも行ってみる?」

娘「いいですね。でも、もし知り合いに会っても話し込むのはやめましょう。ね?」

男「見えない人だと困る?」

娘「逆です、見える人だと困ります。」

男「んん?」

娘「私について訊かれたらどうします? そして、その様子を見えない人が見ていたら?」

男「アブない人として勘定される人数が増えるな。」

娘「ね? 可哀想じゃないですか。」

男「まて、それは暗に俺だけなら思われてもいいって言ってないか?」


>>108 とてもうれしい


娘「あ、みかんがありますよ。買いましょう!」

男「プリン買ってあげたじゃないですか。欲張りはダメです。」

娘「コタツがコタツであるためにはみかんが必須なのです。」

男「よくわからん理論を説いてもだめです。」

娘「コタツにみかんが無い家は日本の心を無くしてるんです。心が和めば世界は一つです。」

男「まあいいや、このままじゃ奇異の視線に晒されてしまうしな。」

娘「やった。日本の心を取り戻しましょう。ね?」


男「あの人、明らかに俺に向かってきてるんだが。」

娘「そうですね。」

女「ね? あなたもしかして……」

男「見えてる……のか?」

娘「私はコタツワラシです。あなたが思ってるようなものじゃないです。」

女「あら、そう。まあいいわ。何か相談に乗れることあるかしら?」

娘「今のところは無いです。」

女「私、この辺に住んでるから、何かあったら相談してね。」


女「あなたはこの子の保護者さん?」

男「うーん……友達、かな?」

娘「…………」

女「免許は持ってる? 車を買う予定とか、ないかしら?」

男「免許はありますが、予定は今のところ無いですね。」

女「宝くじでも当たったら、考えてくれるかな?」

娘「むっ……」

女「じゃ、またね。」


男「うちのマシュマロマンより断然綺麗だったのに、人は見掛けによらないな。」

娘「さっきの人は、あなたの同類じゃないですよ。」

男「でも、君が見えてたじゃないか。」

娘「あの人は、私の同類です。元……ですが。」

男「じゃあ、その気になればあんな風にもなれるわけか。」

娘「あくまで元、ですよ。私はまだあそこまでは発育できません。」

男「条件を満たせばなれるってことか。まあ、教えませんけど?」

娘「ええ、教えませんけど。」


男「おまたせ、買ってきたぞ。」

娘「その箱がゲーム機の箱? 案外と小さいんですね。」

男「そして商店街の福引券が2枚だな。」

娘「それはそれは、楽しみですね。」

男「特等は温泉旅行か……興味無いわ。」

娘「早速引きに行きましょう。」


男「まさか、2回とも2等を引き当てるとは……」

娘「その商品券? ってなんですか?」

男「商店街の加盟店でお金の代わりに使える券だよ。一応、儲かったって事になるかな。」

娘「早速いい事あったじゃないですか。」

男「てことは、これは君のご利益というわけか?」

娘「それは分かりません。ただ、そう思うんなら感謝してほしい……かなぁ。」

男「じゃあ、ここで待ってて。すぐ戻る。」


※風呂入って来ます。

※再開

娘「何か買って来たんですか?」

男「内緒。帰ってからのお楽しみって事で。」

娘「焦らしプレイですか。あんまり感心しないですね。」

男「いつも思うんだけど、そういう知識はどこで培ったの?ねえ?」

娘「私達って、人からはどういう関係に見えてるんでしょうか?」

男「親子っていうには俺が若すぎるだろうな、兄妹?」

娘「あ、ロリコンの誘拐犯と、その被害者がベストマッチしますね。」

男「じゃあ、せめてロリに含まれない年齢を装ってよ!」

娘「そしたら援助交際カップルでしょうか。ね?」

男「犯罪者は確定路線かよ。」


男「あ、鍵あいてる。」

娘「お母さんが帰ってきてるみたいですね。」

母「おかえり。買い物かい?」

男「うん、履歴書とかいろいろ。」

母「お昼は?」

男「朝食べるの遅かったし。いらないわ。」

母「あっそ。」


娘「さあ、早くプリンを出してください。ね?」

男「そういえば、買った事すっかり忘れてた。はい、どうぞ。」

娘「まさかこのまま食べろなんていう気じゃないですよね?」

男「いう気ですが?」

娘「プリンに対して失礼ですよ。お皿にプッチンすべきです。」

男「至極どうでもいい。」

娘「どうでもよくないです。カラメルだけ底に残るのも味を損ねますし。」

男「それは一理あるか。」

娘「それに、これが償いだってこと思い出してください。」

男「仰せのままに……」


男「それ食べたらしばらくおとなしくしててね。」

娘「遊んでくれないんですか?」

男「履歴書を書くから。それが終わったら遊ぼう。」

娘「それを書いたら働き口が見つかるんですか?」

男「そうとは限らないよ。でも、先に書類で自己紹介するのが決まりで、これがその紙なの。」

娘「よくわからないけど、とりあえずはめんどくさいんですね。」

男「君って、知識にかなりの偏りがあるよね。」


男「…………」

娘「…………」

男「…………」

娘「…………」

男「…………」

娘「つまんない。」


男「つまんないのは俺も一緒だよ。」

娘「じゃあ、一緒に遊びましょう。ね?」

男「みかん出すから。これでも食べてなさい。」

娘「コタツの本懐ですね。」

男「…………」

娘「♪~♪~」

男「何してるの?」

娘「みかんは揉むと甘くなるんです。」


男「…………」

娘「♪はちほうこう~♪はーちほうこう~♪に~ごうきついたらろーくほうこう~♪」

男「減ってるじゃねえか!」

娘「終わったんですか?」

男「いや、言わずにはいられなかっただけ。もすこし静かにしてて欲しいかな。」


娘「…………」

男「…………」

娘「♪みどりの~だ~いちは~♪は~る~かなゆめ~♪」

男「…………」

娘「♪ごーほぶれーか~ ♪ごーほぶれーか~ ♪ここは~コリい…ゲホッ!コホッ!」

男「うん、あるある。」


男「お待たせしました。遊ぼうか。」

娘「待ちくたびれましたよ。」

男「じゃ、君はこれ開けて。」

娘「え、同じの二つ買ったんですか?」

男「そっちは君にあげる。」

娘「こんな高価なもの、ダメですよ。」

男「商品券で交換しただけだよ。君のおかげなら君に還元するのが筋かな? って。」

娘「でも、一緒に遊ぶなら、一個を使いまわせばいいじゃないですか。」

男「一緒に遊ぶから、二個必要なの。」


男「流石と言うか、遊びに関しては飲み込みが凄い早いな。」

娘「当然です。あ、シビレ置きました。」

男「おっけー!かかったら尻尾切るね。」

娘「思いっきり空振りじゃないですか。もう罠無いですよ。」

男「ぐぬぬ……」

娘「閃光投げます。それで何とか。」

男「お、切れた!あとは捕獲で……」

娘「だから、罠が無いんですって。」


男「あ、さっきまで弓だったから砥石忘れた。」

娘「私ヘビィですから、持ってきてないです。」

―ご飯できたわよ~―

男「もうそんな時間になるか……リタイアして今日は終ろう。」

娘「面白かったです。それにしても最近のゲームウォッチは凄いですね。」

男「いや、32ビット機だし、第七世代だし。」


父「どうだ、仕事のほうは、見つかりそうか?」

男「いやいや、昨日の今日で見つかるとか無理だし。」

母「良さそうな求人はあったの?」

男「とりあえず3社ほど、履歴書5枚書いたし、明日送るわ。」

妹「どんな業務?」

男「刺身の上にタンポポのせる会社とか、依頼人の代わりに壁を殴る会社……です。」

妹「ちょっと、なんでそんなにかしこまるのよ。私が何かした?」

男「いえ、矮小な自分を恥じているだけです。」


妹「ようやく自分の立場を理解したってわけね。」

男「おっしゃる通りです、返す言葉もございません。」

妹「いい心がけだけど、ちょっとキモい。」

男(今に見ていろクソビッチが……)

母「焦って決めなくてもいいからね。下手すりゃ一生に関わることだし。」

男「まあ、ブラックじゃなければどうにかなるよ。ごちそうさま。」


男「またコタツに隠れてるのか?」

娘「コタツワラシなので。」

男「続きやる?」

娘「次はパソコンがいいです。」

男「あ、そう。じゃあ、パッドも買ったから接続するわ。」

娘「では早速、失礼しまーす。」

男「また俺に座るのね。」

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