綾乃「キマシタワーが建てられない」(150)

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私は石を積み上げる。

雲の上に居る天使に会う為には、高い塔を作らなければいけないから。

けど、私が持っている石は、どれもゴツゴツしていて、小さくて。

簡単な事で、崩れてしまう。

何度も。

何度も。

石は転げ落ちていく。


それでも、私は、沢山の石を積み上げて、何とかここまで来た。

けど、雲はまだ遠い。

早く、天使に会いたい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

綾乃「……!」ガバッ

綾乃(……夢か…変な夢…)

綾乃(……まだ朝は遠いし、寝なおそう…)

~翌日~

~2-5教室~

綾乃「うう、結局、あんまり寝れなかったわ…」ドヨーン

京子「おっはよう!綾乃!」

綾乃「と、歳納京子!お、おはよう///」

綾乃(歳納京子、今日も元気で可愛いな…)

京子「あれ、綾乃…」ジー

綾乃「ちょ、歳納京子、か、顔が近いわよ///」

京子「綾乃、寝不足?目の下に隈が出来てるよ?」

綾乃「え、そ、そう…かしら?」

京子「また遅くまで勉強してたんでしょ~?」

京子「頑張るのもいいけど、無理しちゃだめだよ?」

綾乃「あ、あ、あ、貴女に言われなくても判ってるわよ///」

京子「ほんとに~?」プニプニ

綾乃「頬を突かないで///」

綾乃(うう、何気ないスキンシップでも、ドキドキしちゃうのに///)


結衣「綾乃、おはよう」

綾乃「す、杉浦さん、おはよう」

結衣「京子、そんな事より、ちゃんと宿題やってきた?」

京子「うお、忘れた…!」

京子「どうしよう、もう時間ないのに…!」

綾乃「……!」

綾乃「……と、歳納京子、あの」

綾乃(頑張れ、私!今日こそ、歳納京子に宿題見せてあげるって言うのよ…!)

結衣「仕方ないな、京子は」ガサゴソ

結衣「はい、もう時間もないし…私の、写していいよ?」

京子「本当!?結衣、大好き!」ダキッ

結衣「お、おい、いいから急いで写せって///」

綾乃「………」

綾乃(今日も…ダメだった…)

綾乃(どうして、一歩踏み出せないんだろう…)

間違えましてー

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転げ落ちた石を見送りながら、私は隣に建つ高い塔を眺める。

船見さんが建てたその塔は、とても立派で、もう、雲の真下まで届いている。

石も、四角くて大きくて、すごく積み易そう。

それに引き換え、私の塔は、低くて惨め。


…けど、それは仕方ない事なのだ。

だって、彼女は、ずっと昔から塔を建て続けているのだから。

幼い時から、コツコツと。


不安を覚えながらも、私は、再び石を積みあげ始める。

雲の上を目指して。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

綾乃「……」ガバッ

綾乃「…また、あの夢…」

綾乃「……なにか嫌だな…」

~翌日~

~生徒会室~

綾乃「はぁ…」

千歳「綾乃ちゃん、大丈夫?」

綾乃「え、ええ、勿論、大丈夫よ」

千歳「けど、あんまり寝れてへんみたいやし…」

千歳「歳納さんも言うてたけど、あんま無理したらあかんよ?」

綾乃「……うん、ありがとね、千歳、気をつける」

綾乃(無理は、してないんだけどね…)

綾乃(ただ、あの夢を見た後は、良く寝られないだけで…)

綾乃「あ、歳納京子、またプリント出してない…」

綾乃「も、もう、仕方ないわね///」

千歳「また、綾乃ちゃん、嬉しそうな顔して」

綾乃「う、嬉しそうになんかしてないわよ!///」

綾乃「さ!行きましょう!千歳!」

千歳「んー、せやけど、うちは書類整理せなあかんし…」

千歳「綾乃ちゃん、今日は1人で行ってみたらどやろ?」

綾乃「え、ひ、1人で…」

千歳「今日は、船見さんは用事で娯楽部に居てへんみたいやし」

千歳「もしかしたら、2人っきりになれるかもしれへんよ?」

綾乃「ふ、2人っきりって////」

綾乃(歳納京子と2人っきり///歳納京子と2人っきり///)ドキドキ

綾乃「し、仕方ないわね!今日は1人で行ってくるわ!」

千歳「頑張ってなぁ~」

~廊下~

綾乃「と、歳納京子と2人きり///」タッタッタッ

綾乃(い、いやいや、赤座さんとかも居るかもしれないんだから、期待しちゃだめよ、私!)

綾乃(け、けどももしかしたらって事もあるし///)

綾乃「……あら?」

綾乃(あそこの階段の踊り場に居るのは、歳納京子…?)

綾乃(それと…千鶴さん?)

京子「千鶴だ~!ちゅっちゅー!」

千鶴「う、うぜえ、やめろ!」

京子「もう、千鶴、そろそろデレてくれてもいいんじゃない?」ダキー

千鶴「で、デレる訳ないだろ!」ドンッ

京子「あわわっ」フラッ

綾乃(あ、歳納京子が、階段から…)

綾乃(危ない…!)タッ

千鶴「危ないっ!」グイッ

京子「おっとっとっ…あ、危なかった…」スタッ

京子「千鶴、ありがと///」

千鶴「い、いや、私こそ、押して、すまん…」

京子「いや、それは私が強引に抱きついちゃったからだし///」

京子「と、というか…千鶴、あの、ずっと抱き締められてると、恥ずかしいっていうか///」

千鶴「え、あ、ご、ごめん///」パッ

京子「///」

千鶴「///」

京子「え、えへへ、千鶴って、わりと柔らかいよね///」

千鶴「な、な、な///」

千鶴「……もういい、お前とは口利かない///」プイッ

京子「え、えー!千鶴、怒らないでよ~!」

綾乃「……」

綾乃(あの二人、何時の間に、あんなに仲良く…)

綾乃(……あそこに割って入る勇気は、私には…)

綾乃(…生徒会室に…戻ろう…)タッ

~生徒会室~

綾乃「ただいま……」ドヨーン

千歳「あれ、綾乃ちゃん、早かったやん」

千歳「歳納さん、居なかったん?」

綾乃「……まあ、そんな感じ…」ガクッ

千歳「そう、気を落とさんと…」

綾乃(どうして、上手くいかないのかな…)

綾乃(それなりに、頑張ってるつもりなんだけど…)

綾乃(歳納京子、気付いてくれないかな…)

京子「たのもー!」バーン

綾乃「……!」ビクーン

千歳「あら、歳納さん、どうしたん?」

京子「うん、プリント出し忘れたから、届けに来た~」

千歳「あ、そうなん?綾乃ちゃん、入り違いになるとこやったねえ」

綾乃「……」プイッ

千歳「綾乃ちゃん?」

京子「綾乃、どうかしたの?」

綾乃「な、なんでも、無いわ…」ムスー

綾乃「プリントはそこに置いておいて、処理しておくから…」ムスー

京子「あれ、もしかして何か怒ってる?」

綾乃「お、怒ってなんかいないわよ!」

京子「うおお、綾乃こええ…」

京子「えと、綾乃、何時も、プリント、ごめんね」

京子「今度、アイスでもおごるからさ、機嫌治してよ?」プニプニ

綾乃「ちょ、だから頬を突かないで///」

京子「綾乃が笑ってくれるまで、続けよっかな~?」プニプニコチョ

綾乃「く、首をくすぐらないで!もう、判ったから///」

京子「お、綾乃が機嫌治してくれた~」ニコ

京子「じゃ、2人とも、頑張ってね!」

千歳「歳納さんも、部活頑張ってなあ」

綾乃「……」フゥ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

気がつくと、別の塔が建ち始めていた。

千鶴さんが積み上げる石は、私のと同じようにゴツゴツとしていたけど。

1つ1つがとても大きくて、頑丈で、一度積むと、なかなか崩れない。


彼女の塔の高さは、あっという間に私の塔に並んで、そのまま、追い抜かしていった。


……どうして、私には、彼女のように大きくて頑丈な石がないんだろう。

また、不安を覚える。

けど、私にはこの石しかない、手を止めるなんて出来ない。

だから、一つ、一つ、大切に積みあげ続ける。

「…今度こそ、崩れませんように」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

綾乃「……」ガバッ

綾乃「……」

綾乃「胸が痛くて、眠れない…」

~翌日~

~生徒会室~

綾乃「……」ボー

千歳「……綾乃ちゃん、ちょっと、仮眠したらどうやろ?」

綾乃「あ、い、いえ、大丈夫よ、ちょっとボーっとしてただけだから」

千歳「んー、歳納さんの事で、悩んでるん?」

綾乃「……うん」

千歳「うちでよかったよ、話、聞くよ?」

綾乃「……ありがとう、千歳…」

綾乃「……あのね」

綾乃「最近、歳納京子が、他の子と仲良くしてるのを見ると…」

綾乃「何か不安になるって来るの…」

千歳「綾乃ちゃん…」

綾乃「それに、変な夢も見るし…」

千歳「変な夢?」

綾乃「そう、こう、高い塔を建てる、夢」

綾乃「私は、頑張って石を積んで、塔を高くしようとするんだけど」

綾乃「全然上手く、積めないのよ…」

綾乃「積んでも積んでも、積み上がらない…」

綾乃「早く、高い塔を作らなきゃって焦る所で、何時も目を覚ますの」

綾乃「毎晩見るから、寝不足で…」

千歳「綾乃ちゃん…相当悩んでるんやね…」

千歳「わかった、綾乃ちゃん、ちょっと耳貸してみ?」

綾乃「え?」

千歳「ゴニョゴニョゴニョ」

綾乃「え、け、けどそれは…」

千歳「大丈夫やて、うちもサポートするさかい、な?」

綾乃「う、うん///」

~娯楽部~

綾乃「と、歳納京子!」バーン

千歳「お邪魔しますな」ニコ

京子「お、綾乃だ~、どしたの?」

綾乃「きょ、今日は茶道部部室の無断使用の件で来たのよ!」

京子「ほえ、なんだろ?」

綾乃「こ、今回、生徒会で娯楽部の茶道部室無断使用について話し合われたんだけど…」

綾乃「条件付で、使用を認められることになったの」

京子「え、ほんと!?」パァ

綾乃「喜ぶのはまだ早いわよ!歳納京子!」

綾乃「条件をクリアしないと、認められないんだから!」

京子「そ、その条件とは!?」

綾乃「簡単よ、娯楽部から1人、生徒会の補佐役を出して欲しいの」

綾乃「一週間、補佐を続けてくれたら、茶道部室の使用を認めてあげるわ!」

京子「な、なんて横暴な…!私たちの中から1人、生贄に差し出せというのか!」

結衣「京子、頑張ってね」

ちなつ「京子先輩、ありがとうございます!」

あかり「え?京子ちゃん、行ってくれるの?」

京子「私が行くのが既に決定してる!?」

結衣「だって、お前、部長だし」

ちなつ「こんな時こそ、役に立ってくださいよ」

京子「くっ!この裏切り者どもめ!」

千歳「歳納さん、生徒会に来たら毎日プリン食べれるんよ」

京子「行きます!」キラッ

綾乃「じゃ、じゃあ、今日から、早速手伝ってもらうから」

綾乃「生徒会室まで、ついてきてちょうだい!」

京子「はーい♪」テコテコ

綾乃(やった、やったわ///)

綾乃(こ、これで1週間、歳納京子は生徒会室に来てくれる///)

千歳「綾乃ちゃん、良かったなあ」ニコ

~生徒会室~

京子「それで、私は何すればいいのかな?」

千歳「せやね、綾乃ちゃんと一緒に資料室の整理してくれへんやろか?」

綾乃「え、ち、千歳!?」

千歳「これやったら、二人っきりになれるで」ボソボソ

綾乃「で、でも、でも////」ボソボソ

千歳「大丈夫やさかい、勇気、出して、な?」ボソボソ

綾乃「う、うう……ありがと///」ボソボソ

~資料室~

京子「あ、綾乃、初めての共同作業だね///」

綾乃「ちょ、へ、変な言い方しないでよ///」

京子「だ、大丈夫、優しくするから、安心して///」

京子「ほ、ほら、綾乃、入れちゃうよ、いいよね///」

綾乃「書類を箱詰めしてるだけでしょ!もう!///」

京子「うー、普通に疲れた…」ペタン

綾乃「歳納京子、床に座ったらスカート汚れるわよ?」

京子「大丈夫、ちゃんとダンボール敷いてますって」

京子「綾乃も、座ろ?ちょっと狭いけど、ここにおいでよ」

綾乃「え……し、仕方ないわね、ちょっとだけ休憩に付き合ってあげるわよ///」

京子「はー、疲れたねえ」ノビー

綾乃「そ、そうね…」

綾乃(背中に、歳納京子の背中の重みがかかってる///)

綾乃(歳納京子の髪が、私の首筋に当たって…)

綾乃(むずがゆい///)

綾乃「///」プシュー

京子「綾乃は、最近どう?」

綾乃「どうって…?」

京子「また、無理して遅くまで勉強してないかなーって」

綾乃「……自分の体ですもの、壊すほど無茶はしないわ」

京子「そんな事言って~、こないだ風邪ひいてたじゃない?」グイー

綾乃「ちょ、もたれかからないで///」

京子「……あんまり、千歳に心配かけちゃだめだよ?」

綾乃「……」

京子「綾乃?」

綾乃「と、歳納京子は…」

綾乃「歳納京子は、心配してくれないの?」ジッ

京子「そりゃあ、勿論、私も心配してるよ」

京子「け、けど、綾乃にとって一番親しいのは、その、千歳でしょ?」

綾乃「……え?」

京子「私にとっての結衣みたいな存在が、千歳なのかなーって」チラッ

綾乃「……」

京子「綾乃?」

綾乃(どうしよう、ひょっとして、千歳との事を歳納京子に誤解されてる…?)

綾乃(け、けど、確かに千歳は一番親しい友達だし…)

綾乃(というか、そもそも…)

綾乃「と、歳納京子…」

京子「ん?」

綾乃「一つ聞くけど…貴女にとって、船見さんって、どんな存在なの…かしら?」ズイ


京子「え、あ、綾乃、顔、近いよ///」サッ


綾乃「お願い、答えて…」ズイ


京子「え、私にとっての結衣は、えっと、幼馴染で」サッ


綾乃「幼馴染で?」ズイ

京子「友達で」サッ


綾乃「友達で?」ズイ


京子「えっと、えっと///」サッ


綾乃「そ、それで…?」ズイ


京子「結衣は、私の…」ゴトン


京子「え?」



ズドドドドドドドドドト




ズーン


綾乃「ぷっ!な、なにごと!?」ゴホゴホ

京子「あ、綾乃が押してくるから、ダンボールが崩れてきちゃった!」ケホケホ

綾乃「と、歳納京子、だ、だいじょう…ぶ…?」

綾乃(うわ、歳納京子の顔が私の胸の前に…)

綾乃(というか…私達、ダンボールに埋まってるから)

綾乃(私が上で、歳納京子が下で///)

綾乃(身体が、み、み、み密着してる///)カーッ

京子「う、うん、私は大丈夫だけど…えっと///」

綾乃「///」

京子「あの、綾乃、動ける?」

綾乃「や、やってみるわ///」

綾乃「……」モゾモゾ

京子「あ、ちょ///」

綾乃「え、ど、どうしたの、歳納京子、変な声上げないでよ///」

京子「だ、だって、綾乃の太股が、私の、あの///」

綾乃(あ…私の太股が歳納京子の股間に密着してる////)

綾乃(丁度、ダンボールの重みがかかってるから)

綾乃(強引に抜け出そうとすると、歳納京子の股間をこすって抜けないといけない///)

綾乃(よ、よし、頑張ろう///)

綾乃「と、歳納京子、行くわよ、大丈夫、優しくするから///」

京子「あ、綾乃、だめ、もうちょっと待って///」

綾乃(私の腕の中に居る歳納京子、髪の毛が乱れてて、凄く、可愛い…)ポー

綾乃(そ、それに、凄く熱くなってる歳納京子の体温が伝わってきて…)

綾乃(私も、何かどんどん変な気分に///)ポー

綾乃「と、歳納京子、大丈夫、私に任せておけばすぐ終わるから…ね?」ナデ

京子「ほ、本当に?乱暴にしない?」ウルッ

ドキドキドキドキドキドキ


綾乃(だ、だめ、気持ちが抑えられない…)

綾乃(ちょ、ちょっとだけ、いいわよね…ちょっとだけ胸に抱きしめるだけだから///)

京子「あ、あやの?あ、んむっ///」

綾乃(歳納京子、好き、大好き…!)ギューッ

京子「むぐむぐ///」

綾乃(ああ、歳納京子の息が、制服越しに胸に感じられる…もう、私///)

千歳「綾乃ちゃん、何か凄い音がしんやけど、だいじょ」ガラッ

千歳「うわっ!ダンボールに二人が埋まってるやん!」

千歳「は、はよ、助けださな…!」ポイポイ

千歳「ふ、二人とも、だいじょ」

綾乃「あ、千歳、あの、ありがとう///」

京子「むぐ…ぷはっ、やっと解放された///」

千歳(え、二人がダンボールの下で絡み合って、発掘され…)

千歳「ぶはーーーー!」ドバッ

綾乃「ち、千歳!?大丈夫!?千歳!?」

~帰路~

綾乃「ごめんなさい、歳納京子、あんな目に合わせて///」

京子「うん、事故だったから、仕方ないよ///」

綾乃(うう、振り返ってみると、恥ずかしいどころの話じゃないわ///)

綾乃(完全に変態じゃない、私///)

京子「けど、資料室、前よりも散らかっちゃったね…」

京子「あれ、整理するのに1週間以上かかりそうだよ」ハァ

綾乃「え、ええ、そうね…あそこの整理を終わらせるのが、生徒会補佐役の仕事…ってなると思う…」

綾乃「だから、期間延長することに、なるかも…」

京子「あー、やっぱりそうなる?」ガクー

綾乃「……」

綾乃「……あの、歳納京子は、私と一緒に作業するの、嫌?」

綾乃「もし、嫌なら、他の役員と、変わってもらう、けど…」

京子「え、嫌じゃないよ」

京子「今日も、色々あったけど、楽しかったしね」

京子「最近、綾乃とあんまり喋れてなかったから、たくさん話できて良かった!」

綾乃「と、歳納京子…」キュン

綾乃「……ま、まあ、頑張ってくれた分はプリンご馳走するわよ!明日を楽しみにしておきなさい!」

京子「やった!綾乃がチョイスしてくるプリンは美味しいから好き♪」

綾乃「////」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

雲が近い。


私はとうとう、ここまで来た。

小さくてゴツゴツな石を積み上げて。

もう、雲に手が届きそう。


待っててね、私の天使。

もうじき、会えるから…。


大丈夫、時間はまだ十分ある…。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

綾乃「むにゃ…」zzzz

~翌日~

~生徒会室~

綾乃「~♪」

千歳「綾乃ちゃん、今日は具合よさそうやね」

綾乃「もっちろん!昨日は何かグッスリ眠れたのよね!」

綾乃「だから、体力が有り余ってる感じ!」シュッシュッ

綾乃「この全てを、歳納京子にぶつけてあげるわ…!」

千歳「ひ、一晩で綾乃ちゃんがこんなに頼もしく…!」

綾乃「おっと、そろそろ歳納京子が資料室に来る時間だわ…!」

綾乃「じゃ、千歳、こっちは宜しくね!」

千歳「頑張ってな~」フリフリ

綾乃「千歳、ありがと…あと6日間、私、頑張るね!」

綾乃(ま、待っててね、歳納京子!)タッ

綾乃「あ、あれ、何か資料室、騒がしいな…」

綾乃「歳納京子?」ガラッ

ちなつ「あ、杉浦先輩、お疲れ様です~」

結衣「綾乃、手伝わせてもっらてるよ」

あかり「あわわ、このダンポール、どこに置けばいいのぉ?」

千鶴「それは、こっち」

綾乃「……え」

京子「綾乃~、遅かったね!」テコテコ

綾乃「と、歳納京子、こ、これは…」

京子「うん、事情を説明したら、皆手伝ってくれるって言ってくれて」

京子「これなら、1週間もかからずに生徒会補佐の仕事、終わりそうだね!」

綾乃「……」

ちなつ「まあ、京子先輩に任せてると何時までも終わりませんからね」

ちなつ「仕方なくです!」

あかり「ちなつちゃん、昨日は京子先輩居なくて寂しいみたいな事言ってたんだよぉ」

京子「まじで!?もう、ちなちゅ、寂しがり屋さんだなあ!」ダキッ

ちなつ「ちょ、誰もそんな事は言ってません!というか、抱きつかないでください!」

結衣「けど、ちなつちゃん、昨日、寂しそうにしてたのは事実だよね」クスッ

ちなつ「ゆ、結衣先輩まで///」

綾乃「……」

京子「あ、千鶴、その箱は私が貰うよ~」

千鶴「……そうか、ほらよ」ポイッ

京子「うわわ、もう、千鶴は乱暴だなあ」パシッ

千鶴「悪かったな、乱暴で」

京子「こないだ、階段で抱きしめてくれたみたいに、優しくしてよ///」

千鶴「な///」

千鶴「……帰る」

京子「あーん、冗談だよ、千鶴!帰らないで!」ダキッ

綾乃「……」

結衣「え、階段で抱きしめたって、どういう事?何があったの?」

京子「な、何がって、それは愛の抱擁と言うか///」

結衣「京子、何があったの?」

京子「え、結衣、ちょっと怖いよ、顔近過ぎ」

千鶴「別に、歳納なんたらが階段から落ちそうになってたから助けただけ」

綾乃「……」

結衣「そ、そうなんだ」ホッ

ちなつ「階段から落ちそうにって、大丈夫だったんですか?怪我とかは?」

京子「心配ご無用!京子ちゃんには傷一つありませんでした!」

あかり「よ、よかったねえ、階段から落ちたら、また性格が…」

京子「え?性格?」

結衣「…何でもないよ、京子、気にしない気にしない」ポンポン

京子「うー、何か子ども扱いされた気がする」プー

綾乃「……」

綾乃「……」ボソッ

京子「綾乃?どうしたの?」

綾乃「う…さい…」

京子「え?」

綾乃「うるさいって言ったの」


綾乃「貴女達!うるさい!!!」




シーーーーーーーーーーーーン


綾乃「生徒会補佐は、一人なの!一人でいいの!」

綾乃(あれ、私、何言ってるんだろ)


綾乃「だから、だから他の人はもう帰って!」

綾乃(手伝ってくれてありがとうって)


綾乃「歳納京子以外、帰って!」ウルッ

綾乃(言うべき所なのに)


綾乃「もうここから出て行って!」ポロ

綾乃(とまらない)


綾乃「邪魔なのよ!」ポロポロ

綾乃(私、なんで泣いてるんだろ)




シーーーーーーーーーーーーン



綾乃「……」タッ

京子「あ、綾乃!」


綾乃(終わった)

綾乃(全部終わった、あははは)

綾乃(ざまあみろ、連中の顔)

綾乃(驚いてた、私があんな事言うの、そんなに意外だった?)

綾乃(けど、けど、ずっと思ってたの)

綾乃(ずっと思ってた、貴女たち邪魔だって)

綾乃(すっきりしたわ、もっと早くに言ってやればよかった)

綾乃(あははははははははははは)

~生徒会室~

綾乃「……」ガラッ

千歳「あら、綾乃ちゃん、忘れ物でも…て、どうしたん?」

綾乃「なにが」

千歳「綾乃ちゃん、凄い、泣いてるし…何かあったん?」

綾乃「ええ、あったわ」

綾乃「けど、貴女には関係ない」

千歳「え……」

綾乃「千歳」

千歳「な、なに?」

綾乃「何時も、相談に乗ってくれてありがとう」

千歳「え、うん、そんなん気にせんで…」

綾乃「けど、それももう今日までにして」

千歳「え?」

綾乃「私の事はもういいから」

綾乃「これからは、放っておいて」

綾乃「生徒会も、もう辞める、やってる意味、ないし」

綾乃「それだけ会長に伝えておいて、それで、私と千歳の縁もおしまい」

千歳「待って、そんな突然…綾乃ちゃん、何があったん!」

綾乃「……本当に、今まで、友達でいてくれて、ありがとうね…」

綾乃「さよなら…」タッ

千歳「綾乃ちゃん!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

私が建てた塔が崩れていく。

ガラガラガラと。

何でだろう。

どうしてだろう。


私は泣きながら石を掻き集めるけど。

石はどんどん塔から落ちていく。


お願い、行かないで。

崩れないで。

この石は全部、私の大切な、思い出なのに。

歳納京子との思い出なのに。

どうして崩れて行っちゃうの?

私、ちゃんとやったよ。

ちゃんと努力したよ。


歳納京子の成績が良かったから、私も努力して成績を上げた。

歳納京子を守るために、生徒会にも入った。

歳納京子が困ってる時は、手を差し伸べてあげた。

歳納京子を見守り続けた。


あんなに努力したのに。

私が悪かったの?

やり方が悪かったの?

塔は完全に崩れ去った。

また地の底から、最初からやり直し。


やり直す?

何時も助けてくれた千歳を拒絶したのに。

手助けに来てくれた船見さん達を罵ったのに。

何より、大切なはずの歳納京子を傷つけたのに。

もう手元に石は1つも残ってないのに。

そんな状態で、もう一度、塔を建てて雲の上の天使に会いに行く?

そう、私はもう無理だ。

塔を建てることなんて出来ない。


空を仰ぎ見る。

雲を目指す高い塔が、4つ。


船見さん

千鶴さん

吉川さん

赤座さん


彼女たちのうち、誰が天使に会うんだろう。

もう、私には関係ないけど。

どうか、天使を幸せにしてあげてください。



お願いします。


けど。


地の底に落ちても想いは消えて無くならない。


積み上げる石はないけど、声は出せる。


なら、塔は建てられないけど、せめて、声だけは。


声だけは、雲の上に届けたいな…。


「歳納京子」


「私は、貴女の事を」


「愛しているわ」


「ありがとう、綾乃」


「私も、杉浦綾乃の事が」


「好き」


「大好き」


そうだった、これは夢なんだった。

雲の上の天使に会う為に、高い高い塔を建てる夢。


けど、笑ってしまう。

雲の上まで登らないと会えないはずの天使が。

自分から降りてきてくれたんだから。


凄く、都合のよい夢。

けど、もう少し、この夢を見続けていたいな…。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「あやの、起きて、おーい」ペシペシ

綾乃「ふご…」

綾乃「あ、天使だ…」

綾乃「ありがとう、私に会いに来てくれたんだ…」スリッ

京子「ちょ、綾乃、寝ぼけないで///」

綾乃「私、私、ずっと貴女に会いたかったの…」

綾乃「会って、思いを告げたかったの…」

綾乃「けど、それはもう、無理だから…」

京子「綾乃…」

綾乃「む、り、だか……ら?」

綾乃「あれ、歳納京子…?」

京子「目が覚めた?綾乃」

綾乃「え、歳納京子、ど、どうしてここに…」

綾乃(ここは、塔…じゃなくて、私の部屋…)

綾乃(そっか、私、帰ってきてそのまま、ベッドに倒れて…)

綾乃(泣きながら、寝ちゃってたんだ…)

京子「綾乃」

綾乃「は、はい…」

綾乃(歳納京子、顔が怖い…そうだよね…私、歳納京子を傷つけた…)

綾乃(船見さん達や千歳の事も…)

綾乃(どんな罵倒を受けても、仕方ない…)

京子「資料室での事だけど…」

綾乃「はい……」

京子「スーッ」

京子「駄目じゃない!綾乃!折角、手伝いに来てくれた子達にあんな事、言っちゃ!」

京子「ちなつちゃんとか、超怒ってた!」

京子「だから、明日、謝っておいてね!」

綾乃「……え」

京子「結衣と千鶴、あかりとかは、怒るより心配してたよ!」

京子「疲れが溜まってたんじゃないかって!気付いてあげられなかったって!」

京子「煩くしてごめんなさいって!」

京子「千歳なんて、綾乃が自殺するんじゃないかって、泣いてて」

京子「私も、不安になって、綾乃が死んじゃったら、私、どうしようって」ポロ

京子「けど、家を訪ねても誰もいなくて、もしかしたら、本当に、本当に」ヒック

京子「あやの死んじゃってるんじゃないかって」グスン

綾乃「と、歳納京子…」

京子「だ、だから、お、大目に見てね」ヒックヒック

綾乃「お、大目に…?」

京子「げ、玄関とか、鍵掛かってたから」

京子「窓……」グスン

綾乃「窓…?」


ヒュー


綾乃「窓超割られてる!?」

京子「わ、私、綾乃がどうしてあんなに怒ったか、判らないよ」ヒック

京子「だ、だから、今日はもう帰らないつもり」ヒックヒック

綾乃「え、か、帰らないって…」

京子「綾乃、何か悩んでたでしょ」グスン

京子「ずっと、気になってたけど」

京子「綾乃って、近づくと猫みたいに逃げちゃうから、聞いてあげられなかったの」ゴシゴシ

京子「けど、あんな風に、爆発するほど辛かったのなら、無理にでも、近づいて、聞き出すよ」

京子「それまで、帰らないから」

綾乃「と、歳納京子は…怒ってないの…?」

京子「だから、怒ってるって」

京子「何で、あんなになるまで相談してくれなかったの?」

京子「私、そんなに、頼りにならないかな」

京子「あー、恥ずかしい…ガチ泣きしたのなんて、小学生以来だよ…」ゴシゴシ

京子「もう、泣かないって、決めてたのに、綾乃のせいだ」

綾乃「ご、ごめんなさい…」

京子「ん、許す!」ニコ

綾乃「と、歳納京子///」

京子「だから、聞かせて?綾乃、何があったの?」

綾乃「……話すと、長いわよ?」

京子「全部聞くよ、残さず」

京子「朝までかかって終わらなかったら、明日は学校休も?」

綾乃「歳納京子…」

綾乃「判ったわ、じゃあ、聞かせてあげる」

綾乃「雲の上の天使に会う為に、塔を建てていた少女の話を」

~翌朝~

綾乃「うう、眠い…」

綾乃「って、もうこんな時間…!」

綾乃「と、歳納京子、起きて!そろそろ学校に行かないと!」

京子「むにゃ…んー、もう、今日は学校休もうよ…」

綾乃「そういう訳にはいかないでしょ!今日中に、皆に謝って回らないといけないんだから!」

京子「メールですませようよぉ…」スリスリ

綾乃「そんな訳には…って」

綾乃「と、歳納京子、そんな格好でスリよらないで///」

京子「もう、今さら、照れる事ないじゃん、昨日は、凄くかわい可愛かったのに…」

綾乃「その話は、やめて///」

綾乃「ほ、ほら、ちゃんと服着て///」

京子「はーい…あれ、パンツ何処行った…」

綾乃「ごめんなさい、間違えて履いてた…」

京子「もう、綾乃、変態ちゃんだなあ」

綾乃「だ、誰が変態ちゃんよ!あ、貴女の方こそ…!」

京子「あやの、うるさい」チュー

綾乃「////」

京子「さて、ご飯食べて、学校行こうか」

綾乃「う、うん///」

京子「さーて、みんな、どんな剣幕で怒るかなあ?」

綾乃「自分がやったこととはいえ、気が重いわ…」

京子「取りあえず、千歳からはぶん殴られる事を覚悟したほうがいいかもね」

綾乃「あの子、怒ったら、本当に怖いのよ…」

綾乃「あ、やっぱり、今日は休みに…」

京子「だーめ、ほら、私がついていてあげるから…ね?」

綾乃「あ、ありがとう…歳納京子///」

京子「名前で呼びましょう週間ー」コチョコチョ

綾乃「ひゃっ///わ、判ったわよ、京子、京子、これでいいんでしょ///」

京子「まだまだー、そのまま愛の囁きプリーズ」コチョコチョ

綾乃「ふぁ///わ、わかったから、京子、愛してる…好き、大好き///」

京子「うん、私も、好き、綾乃の事を愛してる」

京子「綾乃がどんな過ちを犯しても、私は一緒についていくよ」

京子「例えば今日、怒った皆の剣幕に耐えられずに、綾乃が誰かを殺してしまったとしても」

京子「私は、綾乃と一緒に、逃げるから」

京子「雲の上は無理でも、地平線の向こうくらいまでなら行けるんじゃないかな?」

京子「だから、安心してね」チュ

綾乃「////」

綾乃「きょ、京子…良い事言ったみたいな感じでキスしてくれるのはいいけど」

綾乃「私は人なんて殺さないから!ここから猟奇展開なんてないから!」

京子「もう、判ってるって、ただの例え話だよ~」

綾乃「……けど、そう言ってくれて嬉しかったのは、確かよ」

綾乃「ありがとうね、京子…」チュ

京子「////」

綾乃「さ、そろそろ出ないと、遅刻するわ」

京子「うん、じゃあ、まずは結衣とあかりからね」

京子「この時間なら、追いつけるはずだから」

京子「行こう?」

綾乃「……うん!」

雲の上に居る天使に会う為に、高い塔を建てよう。

けど、良く考えると、塔なんて建てなくても、想いを伝える方法はある。

好きだよって、声をかければよかったのだ。

想いさえ届けば、天使は地上に降りて来てくれるのだから。


今、天使は私の横に居て、微笑みかけて来てくれる。

それだけで、私は幸せだ。




長い間支援アリガトでしたー。

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