梓「Forest」(164)

HAPPY BIRTHDAY AZUSA

空腹は

梓「……帰ってきちゃった」

電車を降りて改札口を出ると懐かしい街並みが広がる。
高校生の頃毎日見ていた景色。
歩道に並ぶ街路樹や昔よく使ったコンビニなんかもそのままだ。

ただ今日の天気のせいでちょっと暗い。
街の彩りも薄い気がする。
もうすぐ冬だからかな。

雲が低いけど真っ直ぐ実家に帰るっていう気分じゃない。
傘は……いらない。

梓「って文法書もってます?」

未来設定はクソ

唯梓ですか?

駅を出て宛もなく歩く。
気付いたら家とは逆方向へ向かってた。
帰るのがめんどくさくなりそう。
でもいいや。

人通りの多い道を避けていたら閑静な住宅街に出た。
馴染みのない場所だけど知り合いにも会いたくないし丁度いい。

……あ。
手の甲に小さな水の粒。
頬にも。
やっぱり振ってきちゃった。

元々人通りの少ない道の上に雨も降ってきて辺りには誰もいない。
ある意味アッチと変わらないかも。
何となく帰ってきたけど、私は何がしたいんだろう。

大学を出て都会で一人暮らしして今までやってきたけど……。
周りに友達はいないし仕事はきついしで気が付いたらいつも一人。
会社は賃金、労働時間、人員全て最悪。
転職先を探してる最中だったけど辞表を提出してしまった。

最初はスッキリしたけど次の就職先は中々決まらなくて、ズルズルとそのまま生活して……。
そんなだったから友達や先輩からの連絡に応え難くて気が付いたら音信不通状態。
地元に戻って来た所で友達に連絡も出来ない。

梓「はぁ……」

雨で髪の毛も顔も濡れてる。
それにこんな場所で、涙が零れても誰にも気付かれないだろう。

と思ったら人がいた。
女性らしい傘を差して、道の脇にしゃがみ込んでいる。
空き地の草むらを見てるみたいだけど……どうしてこんな雨の中で?
少し気になったけど視線を逸らした。
雨を拭うふりをして目を擦り、女性を避けるように道路の反対側へ。
そうして気付かれないように通り過ぎようとした時。

  「あずにゃん」

梓「えっ」

懐かしいフレーズに思わず声が出てしまった。

たこつぼや

ゆゆゆ、ゆりなのですか?

うむ

答えたからには振り向かない訳にもいかない。
恐る恐る顔を向けるとしゃがんでいた女性もこちらを見ていた。

梓「あ……」

  「あっ!」

一年以上会っていなかったけど顔を見てすぐにわかった。
あだ名で呼ばれた時点で薄々気付いてたけど。

  「あずにゃん!?」

梓「あ、はいっ……」

私は体裁を激しく気にしつつもなるべく自然な感じで受け答えた……つもり。
というか、どうして呼んだ本人が驚いてるんだろう。

  「あ、あ、あずにゃんっ……!」

梓「え、っと、お久しぶりです」

  「あずにゃーん!!」

唯先輩が傘を投げ捨ててこちらに駆けてきた。

明日は梓の誕生日SSが立つんだろうなぁ

それくらいしかネタがないし

ポッキーで開発されちゃうんですねわかります

中野がForestっていうESPのギターに乗り替えるSSかと思った

梓「ちょ、ちょっと……ぐえっ」

そのままタックル風味に抱き付かれて執拗にハグされた。
大人びた顔つきになったと思ったけどやってる事は昔と変わらない。
あの頃の唯先輩のにおいがする。

唯「あずにゃん久しぶりだよー!」

梓「そ、そうですね」

懐かしい感覚に気持ちがほころぶ。
その一方で今まで連絡を無視していた言い訳を考える。

唯「ああぁ~会いたかったよあずにゃ~ん」

梓「……」

どうしよう、どうしよう。

唯「あずにゃんてば全然連絡くれないんだもーん」

きた。

梓「あ、ええと、それには事情がありまして……ですね……」

携帯が壊れて……違う。
仕事が忙しくて……だめだ。
ええと、ええと……!

梓「ちょっと、仕事やめちゃいまして……」

嘘が下手くそな前に、私ってこういう場面で嘘がつけないんだった。

唯「そうだったんだぁ」

梓「あは、ははは……」

唯先輩はそれ以上追及せず私との再会をとにかく喜んでいる。
正直に言ってしまったけど、先輩の反応を見てほっとした。

唯「ふう~」

唯先輩のにおいが遠ざかり、ちょっとだけ後ろ髪を引かれる。
先輩は一歩下がって私を見つめてきた。
まだ後ろめたさが残っていて目を逸らしてしまう。

梓「な、なんですか?」

唯「あずにゃんびしょ濡れだね」

梓「え、あ……」

傘を投げ捨てた唯先輩も濡れていたけど、私はそれ以上にびしょびしょだった。
でも泣いていたのは誤魔化せたっぽい。

唯「そうだ、私の家に来なよ!」

梓「えっ……」

唯「どしたの?」

梓「あ、いや……」

唯先輩の家という事は憂の家でもあって、
音信不通してた身としては同級生の友達と会うのは特に気まずい。

唯「大丈夫」

梓「え?」

唯「私の家ここの近くだから」

そう言うと唯先輩は私の手を引いて歩き出してしまう。
投げ捨てた傘もそのままに行こうとしたので慌てて指摘すると、先輩ははにかんで傘を拾った。

梓「それから、こっちって逆方向じゃあ」

唯「私今アパートで一人暮らししてるんだぁ」

その言葉にいくらか気が休まった。

二人で静かな雨道を歩く。
私達以外に誰もいないとは言え、手を繋いで相合傘はかなり恥ずかしい。
それに唯先輩は手を繋ぎながら二人の間に傘を差しているので歩き辛そうだ。

梓「あの、ちゃんとついて行くので手離して下さい」

唯「やだ」

梓「え……」

唯「……すぐそこだからさ。ね?」

お願いっ!
という顔をされて、しぶしぶ了承する。
二十歳を超えた辺りから「○○歳って思ったより大人じゃないんだなぁ」と感じていたけど、
流石にこれは高校生じゃないと恥ずかしい。
いや高校生でも恥ずかしいか。
対する唯先輩はそんな事お構いなしでとても楽しそうにしている。
こういう所も変わってないなぁ。

久しぶりにまともそうな唯梓キタコレ

そうして連れてこられたのは小ぢんまりとした二階建てのアパートだった。
その一階の端っこが唯先輩の部屋らしい。……私の住んでたアパートより綺麗かも。

唯「ここが私のマイホームだよっ」

得意気にドアを開けて私を中へと促す。その仕草は昔の唯先輩よりも上品に見えた。
ちゃんと大人やってるんだな……。

私が玄関へ一歩踏み入れた時、何かが私の足をすり抜けて行った。

梓「うわっ!」

  「にゃーん」

梓「……ねこ?」

唯「あっおかえり~」

梓「唯先輩猫飼ってるんですか?」

唯「え? ああこの子はお隣さんのねこちゃんだよ」

栗色の毛並をしたネコがずかずかと入っていった。
私と初対面なのに警戒心がないというかなんというか。

梓「自分の家の様に入っていきましたよ……雨に濡れてはいないみたいですけど」

唯「たまに遊びに来るの。かわいいよね~」

これはきっといつもの事で、唯先輩の事だからお隣さんとも仲が良いんだろうな。

猫に続いて私もお邪魔させてもらう。

唯「狭い所だけど適当にくつろいでね」

玄関の左手に台所、右手にお風呂とトイレがあって、その奥にあるリビングに腰をおろす。
思いのほか片付いていて綺麗だ。
……トイレとお風呂別々なんだ、いいなぁ。

唯「ほい、タオルだよ」

梓「ありがとうございます」

部屋を見回すと可愛らしい小物やインテリアが目につく。
唯先輩らしい趣味だな。
それにギー太もちゃんと置いてあって、その後ろにもう一本ギターがあるみたい。
唯先輩もギターを複数持つようになったんだ……。
あんまり家の中をキョロキョロ見回すのは良くないと思いつつも気になってしまう。
と、その中にケージを見つけた。

梓「このケージって、この猫のですか?」

唯「んーん、それは私が飼ってるねこちゃんのだよ」

梓「唯先輩も飼ってるんですか。でも見当たりませんね」

唯「あーうん、今はお出かけ中……かな?」

梓「そうですか。でも勝手に縄張り荒らして大丈夫なんですか?」

唯「うん、仲良いんだよ」

こうやってまた唯先輩と話せるなんて……嬉しいな。
会ってからまだほんの少ししか経ってないのにどんどん元気を貰ってるみたい。

唯「今お風呂沸かしてるからあずにゃんお先にどーぞ」

梓「え?」

唯「シャワー浴びてるうちに沸くと思うから」

梓「……いや、そんな、悪いですよ」

唯「えーそんな事ないよ?」

梓「そ、それに着替えもないし」

唯「貸してあげるっ!」

梓「そう言われましても……」

唯「いいからいいから、このままじゃ風邪引いちゃうよ?」

梓「でも……」

唯「はいこれ着替えね! それとも……一緒に入る?」

唯先輩がわざとらしくもじもじし始めた。

梓「一人で入らせて貰います」

唯「あずにゃんのいけずー」

梓「……じゃあ失礼して」

唯「ごゆっくり~」

上手く丸め込まれた気もするけどとりあえず頂こう。

冷え切った身体だとシャワーが熱く感じる。
自宅以外のお風呂場に入ったり人のシャンプーを使うのなんていつ以来だろう。
あ、このシャンプー唯先輩のにおい……。
泡を洗い流しながらお風呂場の曇った鏡にもお湯をかける。
自分の顔を見ると、涙の跡も目の赤みもなかった。

梓「はふぅ……あ゛~……」

ぴりっとした熱さの後に心地よい感覚。
最近はシャワーばっかりだったから余計に気持ちよく感じる。
あったかいなあ。
湯船ってこんなによかったんだ。

何となく地元に帰ってきたら唯先輩と会えて、おかげでわだかまりが少しずつとけてきた。
後で音信不通の事謝っておかないと。みんなにも近いうちに……。



迷路を彷徨っているような、出口の見えない感覚。
そのうちもがく事もしなくなって、迷路は霧に覆われて。
そこに唯先輩が……。



梓「ふー……」

身体は十分温まった。
そろそろ上がろう。

出戻りにゃん

梓「ありがとうございました」

唯「どういたしまして」

リビングに戻ると唯先輩がティーカップを手に一息ついていた。

唯「あずにゃんの分もあるよ」

梓「どうもです」

唯「やっぱり紅茶だよね~」

梓「はぁ……おいしいです」

唯「よかった」

梓「こうして唯先輩と紅茶を飲んでると昔に戻ったみたいです」

唯「そうだねえ。でも高校生のあずにゃんはオヤジ臭くなかったのに……」

梓「へ?」

唯「『あ゛~……お湯がしみるぅ』」

梓「きっ、聞こえてたんですか!? ていうか後半は言ってません!」

支援

それから高校の時の話になって、部活みたいにずっとお喋りした。
毎日紅茶を飲んでお喋りしていただけだと思っていたけど、
今こうして話してみると毎日が楽しかったんだなと実感する。

唯「おっと、もう外真っ暗だね」

梓「あ、ほんとだ……」

話に熱中してて気付かなかった。
家に連絡も入れてない。

唯「そろそろ夕ご飯の支度しなきゃ」

梓「そうですか、じゃあ私そろそろ……」

唯「あれっ食べていかないの?」

梓「えっと……いいんですか?」

唯「もちろん!」

梓「それじゃあ、お言葉に甘えて」

もっと唯先輩と話したかったし。

唯「なんていうかあずにゃんって高校の時と比べて……劣化したよね……?」

梓「えっ」

唯「ごめんごめん嘘ウソ。 あずにゃんはかわいいよ~」

梓「……」

なぜか夕ご飯がダニご飯に見えた

私は家に連絡を入れて、リビングで暇を潰していた。
栗色の猫も自分の家に帰ってしまい少し寂しい。
唯先輩には夕飯の手伝いを申し出たけど断られちゃうし。
……あんな生活を続けてろくに食事も作っていなかった私じゃあどっちみち足手まといか。
一人暮らししてたのに……よし、料理を覚えよう。

ぼーっとテレビを眺めていると唯先輩が料理を運んできた。
私もこのくらいはしなければ。

唯「ありがとーあずにゃん」

梓「いえ、こちらこそ何から何まですみません……」

唯「それより早く食べよ? 私けっこー自信あるんだよね」

ごはん、お味噌汁、煮物に炒め物。
確かにどれも美味しそうだ。
それに……

梓「久しぶりだな」

唯「何が?」

梓「誰かの作った料理を食べるのってほんと久しぶりです」

唯「そっか~、それじゃあたくさんお食べ。味もいいから!」

ペロペロ

むむ、

梓「ありがとうございます。いただきます」

唯「いただきまーす」

煮物を一口。
味がしみてて、あったかくて。

梓「おいし……」

唯「でしょー?」

梓「凄いですね唯先輩。私てっきりチョコカレー鍋みたいなのが出てくると思ってました」

唯「えー!」

梓「えへへ……」

唯「あ、でもねーチョコカレー鍋って意外と美味しいんだよ!」

梓「ええー……」

ふむ

唯「ところであずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「あずにゃんはギターの練習続けてる?」

梓「うっ」

ギターなんてたまにさわる位になっちゃってたな。

梓「え、えっと、昔ほどじゃないですけど少しは……」

唯「そっか、続けてるんだね……よかったぁ。あずにゃんなら続けてると思ったよ」

梓「うぅ……そ、そうだ、唯先輩ギー太以外のギターも持ってるんですね」

唯「え゛っ?」

支援

ギー太意外に手を出すとは...

梓「ギー太の後ろに置いてありますよね。……あれ? よく見たらそのギターってムスタングですね」

唯「え、あ、ああぁそうなんだよ~楽器屋さんで見てたらつい欲しくなっちゃってさ!」

梓「私のギターと同じモデルかも」

唯「な、何でも最近人気があるモデルらしいよ!」

梓「色もむったんと一緒……」

唯「そ、そうでしたっけ? いやー偶然だね! それより私の作った味噌汁どう? おいしい?」

梓「? はい、おいしいですけど……」

唯「ソレハヨカッタナー! あずにゃんの大好物のなめこをいっぱい入れておいたから!」

梓「えっと、大好物ってほどでは……」

唯「それからこの煮物がね――」

唯先輩と食べるご飯はとても美味しくて話も弾んだ。
食後はせめてものお礼にと食器を洗った。
ゆっくり食べていたからいい時間になっている。
今度こそおいとましないと。

梓「今日は本当にありがとうございました。美味しかったです」

唯「あずにゃん!!」

梓「な、なんですか?」

唯「せっかくだから泊まっていかない?」

梓「せっかくって何ですか。唯先輩明日仕事あるんですよね?」

唯「そうだけどさ、久しぶりに会ったんだよ?」

梓「でも悪いですよ……」

唯「お願いですっ、このとおり!」

梓「なんで唯先輩がお願いするんですか……うーん、唯先輩のご迷惑にならないなら、私からお願いします」

唯「ほんと!? よかったぁ~」

何故かとっても引き留められてしまい、私はまたまた唯先輩の好意に甘える事にした。

今んとこ盛り上がりも面白みのかけらもないな

唯が憂みたい

>>51
ネタバレいくない!

>>50
雰囲気系SSじゃないかな

けいおんSSにありがちだった、展開よりも文章力で見せるタイプ

その夜。
布団を敷いて並んで寝るなんてこれまた久しぶりだ。
暗い部屋、布団の中でぽつぽつと言葉を交わす。

唯先輩と会って、たった一日で今までの私が解きほぐされていく。
自分から連絡を絶ってそれでも私は平気だって思ってた。
けど私は強がってただけで本当は寂しかったんだ。
だから唯先輩の優しさとぬくもりが嬉しくて。
こんなに暖かい気持ちになれた。
地元に戻ろうと思ったのだって心の底でこれを求めていたからかもしれない。

唯先輩には感謝してもしきれない。
こんな私でも手を差し伸べてくれた。

梓「あの、唯先輩。聞いてほしい事があるんです」

唯「ん、なにー?」

梓「私が都会で暮らして、今ここに戻って来た理由です」

唯「……うん」

梓「どうしても唯先輩に聞いてほしくて……」

唯「うん、私からもお願い。あずにゃんの事、聞かせて?」


――――――――――――

――――――――





暖かい光に包み込まれる。
目を開くと、覆われていた霧が晴れていく。
迷路の出口は見えないけれど、私の手を取ってくれる人がいる。
その手を握り返して立ち上がる事が出来た。
私はまだ歩ける。
出口を探して、その先へ――


紫煙

梓「…………ふぁあ」

梓「……あれ、唯先輩がいない」

身体を起こして辺りを見回すと、テーブルの上に朝食と書置きがあった。

  『あずにゃんへ。ご飯作ったから食べてね! それから今日の夕方以降空けておいてね!』

梓「あちゃあ……」

唯先輩が出掛けるまでに起きられなかった。
日々の不規則な生活と毎日たっぷり寝ていた所為だ……ごめんなさい唯先輩。


まだ一切読んでないけど、スクロールして雰囲気はだいたい掴んだ
ちょっと前に見かけた律梓のSSぽいかんじ

書き溜めてないの?

四葉さんこんばんみ

とりあえず布団をたたんで唯先輩が用意してくれた朝食を頂く。
トーストと目玉焼きと輪切りの魚肉ソーセージと炒めたほうれん草。
それにデザートのりんご……すごい。
あの唯先輩が朝からこんなにしっかりしている。
……なんて今の私じゃそんな冗談すら言えないけど。
これを食べて、それから私は変わるんだ。
もう一度頑張ろう、今度は多分大丈夫。

梓「それにしてもおいしいなあ」

優雅な朝食を楽しんでいると、台所の方で音がした。
そんなに大きな音じゃなかったけど確かに何かが擦れる音が……。

梓「な、なに……?」

実は唯先輩がまだ出かけてなかったり?
昔の先輩ならありうるけど……。

梓「まさか、ゴ……」

昔の先輩の生活なら数匹出てきそうだけど……。
どのみち確認しなければ。
もしGだったなら一宿一飯の恩義に報いなくてはいけない。
ああぁ……。

私はなるべく音を殺して立ち上がり台所へと向かった。
おっかなびっくり様子を窺うと、台所の隅で黒いかたまりがうごめいている。
それは私と同じくおっかなびっくりこちらを見つめていた。

梓「……ねこ?」

  「なー」

黒猫がこそこそしている。
昨日の猫じゃない。
これが唯先輩の飼い猫なのかな。
ていうか私警戒されてるけど大丈夫なの?
置き手紙には猫の事なんて書いてなかったし……どうしよう。

梓「ええと、よろしくね……あっ」

逃げられた。
あんまり構わない方がいいのかな。
もっと猫を見ていたいけど……諦めよう。

forestは分厚すぎて持ち歩けない
これ受験の豆知識な

なるべく猫を気にしないようにしつつ食器の後片付けを終わらせた。
それから昨日着てた服に着替えて帰り支度。
唯先輩の家に私一人で居るのも悪い気がするから一旦家に帰ろう。
昨日の雨は止んでいて、太陽が透けて雲が光っている。
傘はいらない。

梓「よし、忘れ物ないよね。おじゃましました」

ドアを開けて、こちらをチラ見する猫に挨拶して家を出た。

梓「……あれ」

私鍵閉められないじゃん。
鍵の場所もわからないし見つけても私が持ってたら唯先輩が家に入れないかもしれない。
もう一度ドアを開けるとリビングで伸びていた猫が慌てて起き上がっていた。

梓「ごめんね、おじゃまします……」

仕方なくリビングに戻ると黒猫が私と距離を取った。
申し訳ないと思いつつテレビを見させてもらう。
でも平日の午前中って面白い番組やってないんだよね。

梓「……あ、教育テレビ懐かしいな」

適当にチャンネルを回す。

梓「散歩番組って意外と見れるなぁ」

まあ暇が潰せれば……。

梓「わぁ……欧州の街並みって綺麗だなぁ」

  「にゃー」

……。

梓「……ふぅ。あ、もうお昼の時間だ」

あれ、結構楽しかったな……。

>>66
OCか

これはあかんわ…

梓「外で食べたら家を空ける事になっちゃうしなあ」

等と言い訳しつつ台所を物色。
ごめんなさい唯先輩。
申し訳ないのですが昨日の夕飯の残りを頂きます。

それらを温めてリビングへ持っていってさあ食べようという時、
猫用のケージからペシペシという音がした。

  「にゃーん」

黒猫が透明のケースを叩いてるみたい。
中身は入ってないけどこれって自動給餌器なんじゃあ……。
私の朝食に気を取られて忘れたとなると黒猫に申し訳ない気がしてくる。

梓「えっと、キミもお腹空いてるのかな?」

  「にゃあ」

age

最初に四葉なら四葉と言えよ…

猫用のご飯を探して自動給餌器に補給をしてあげると黒猫は早速食べ始めた。
かわいいなぁ。

私もお昼ご飯を頂いて一息つく頃、黒猫は満足そうに寝転がっていた。
いつの間にか私から逃げなくなってる。
少しは警戒を解いてくれたのかな。

そういえばこの子の名前は何て言うんだろう。
……。

梓「……あずにゃん3号」

  「にゃああ」

梓「あっ返事した」


今のところは面白いとは到底……

>>75
文章力どこいったのさ!

>>76
こっから面白くなるような予感がしただけ


つか、四葉て何よ?

梓「ご飯あげたら懐くなんて現金な子だなぁ」

  「にゃあ」

あずにゃん3号が私に寄って来た。
実は甘えん坊だったり?

梓「あずにゃん3号」

  「んにゃぁ」

名前を呼んでるって分かるのかな?
返事を返してくれるのが嬉しくてあずにゃん3号の方が飽きるまで呼び続けた。


――さて、午後は何をしようか。
テレビ……あずにゃん3号……あ。

梓「ギター……」

オールドキャンディアップルレッド。
色までむったんと一緒のギター。
弦にはピックが挟んである。

梓「ちょっと弾いてみようかな……あれ?」

そういえばムスタングの手前にギー太がない。
空のギタースタンドだけ。
まさか通勤もギー太と一緒にとか……そんなわけないか。
なんでだろ。

しえん

梓「とりあえず、ちょっとお借りしますね。ええと……」

軽く指の運動をしてから曲を思い浮かべる。
そこそこの数の曲を弾いてきたけど練習していない今ではほとんど忘れてしまっている。

梓「ふわふわなら弾けるかな」

最初は思い出すようにゆっくりと。テンポは少しずつ上げていく。
……うん、まずまず。
ふわふわ時間はギターを触った時に指ならしとして弾いていたから身体が覚えている。
私のパートも唯先輩のパートも。

唯先輩はずっとギター続けてるんだよね。
昔は私がよく教えてたっけ。
懐かしい。

梓「……ふわふわターイム」

  「にゃあ」

梓「ふわふわターイム」

  「にゃぁ」

梓「ふわふわターイム」

  「にゃぁあ」

>>77
作者の名前だよ
他人のSSトレースするのが得意

>>82
名前か……ん、この人は他人のSSをトレースしてるの?

何も知らねーなら黙ってろよ糞もしもし

にゃん

ふわふわ時間はちゃんと弾ける。
これなら他の曲も弾けるかも。

梓「……でも指痛い」

久しぶりだからしょうがないか。
だけど楽しいや。

梓「あずにゃん3号も歌うまいね」

  「にゃん」

曲に合わせて歌っているような気がした。
ギターの音に慣れてるみたいで嫌がったりしないし。
いつも唯先輩のギターを聞いてるんだろうな。
いいなあ。
私も唯先輩とギター弾きたくなっちゃった。


>>84
お前が黙れよ

黙って支援

読むだけ無駄にゃん!

遅い>>1だな
早くしろよ四葉とかいうゴミクズ

>>87
怒られてやんの~ざまあw
一ヶ月以上SS書いてないのに偉そうにしてる老害死ーね死ーね

事情通さんは終わってから書き込んでくれ





指で弦を抑えるのがつらくなるまでギターに没頭して、その後あずにゃん3号と遊んでると眠くなってきて……。
唯先輩の電話で起きた時にはすっかり日が暮れていた。

唯先輩とは外で待ち合わせする事になり、あずにゃん3号にお別れをする。
先輩は理由も言わずに電話を切ってしまったけどこの時間なら多分夕食だろう。
私もお腹空いてるし。

鍵は結局唯先輩が持っていて、私はスペアキーの場所を教えてもらって家を出た。


>>92
SSなんか書かないし、なんで書いてると思ったのかな?

                     /j
                   /__/ ‘,

                  //  ヽ  ', 、
                    //    ‘  ! ヽ             …わかった この話はやめよう
                /イ       ', l  ’
               iヘヘ,       l |  ’
               | nヘヘ _      | |   l            ハイ!! やめやめ
               | l_| | | ゝ ̄`ヽ | |〈 ̄ノ

               ゝソノノ   `ー‐' l ! ¨/
            n/7./7 ∧        j/ /     iヽiヽn
              |! |///7/:::ゝ   r===オ        | ! | |/~7
             i~| | | ,' '/:::::::::::ゝ、 l_こ./ヾ..     nl l .||/
             | | | | l {':j`i::::::::::::::::`ーr '         ||ー---{
              | '" ̄ ̄iノ .l::::::::::::::::::::::∧       | ゝ    ',
      , 一 r‐‐l   γ /、::::::::::::::::::::::::〉ー= ___  ヘ  ヽ   }
    / o  |!:::::}     / o` ー 、::::::::::::i o ,':::::::{`ヽ ヘ     ノ
   / o    ノ:::::∧   /ヽ  o  ヽ::::::::| o i::::::::ヽ、 /   /
   /    ノ::::::/    /::::::::ヽ  o  ヽ:::| o {::::::::::::::Υ   /

池沼唯氏ね

>>97 アンチ活動ご苦労様です

唯先輩に指定された場所は繁華街からは少し離れている。
何でこの場所なんだろう。
集合場所に着くと既に唯先輩がいて私に手を振ってくれていた。

唯「あずにゃーん! よかった来てくれて」

梓「別に逃げたりしませんよ」

唯「そんな事言って今まで音信不通だったくせにー」

梓「うぐ……ごめんなさい」

唯「許す! それじゃ行こっか」

梓「どこにですか?」

唯「ついてからのお楽しみ!」

>>98
俺にアンカ付けんな
おぞましい豚が

猫とあずにゃんの新和性は異常

>>100 そっくりそのままお返しします

顔真っ赤で必至ですね?

梓「いいですけど……そうだ」

唯「ん?」

梓「猫が帰ってきてるなら何か書置きしておいてください。びっくりしましたよ」

唯「あははごめん」

梓「名前何て言うんですか?」

唯「……え、何の?」

梓「先輩の飼ってる黒猫の名前です」

唯「……あー、名前ね」

梓「はい」

唯「……えと、あ……あ……」

梓「あ?」

唯「あーっと目的地についちゃった! この話は後でね!」

梓「はあ……」

支援

唯先輩に連れられて来た場所は……

梓「ライブハウス?」

唯「そ。私たまに見に来てるんだ~。今日ライブやるからちょっと見ていこうよ」

梓「それならそうと最初から言ってくださいよ」

唯「ごめんごめん」

唯先輩らしいと言えばらしい。
この人のこういう行動は今に始まった事じゃないし。

先輩に続いてライブハウスへ入る。
あまり広くない、というか小さめのライブハウスで天井も低い。
どことなくアットホームな感じのする場所だ。
そんな事を思っている間、唯先輩は受付の人と仲良さそうに話していた。
顔なじみっぽい感じ。
私がチケット代を払おうとしたら唯先輩がさっさと払ってしまい、
お金を渡そうとしても頑なに拒否されてしまった。

梓「なんだかすいません」

唯「いーのいーの、私が連れて来たんだから」

ふむふむ

唯「これがチケットでこっちがドリンク引換券ね。あっちのカウンターで交換してもらってきなよ」

梓「唯先輩は飲み物頼まないんですか?」

唯「ええっと、私トイレ行ってくるから後にするよ!」

梓「そうですか……」

言うや否やさっさと人の群れの中に消えてしまった。
私はとりあえずコーラを頼んで、客席の端に移動する。
それを飲みながら改めて室内を見回してみた。
ステージと客席は三十センチ程の段差しかなく、演奏者とお客の距離が近い。
今も弾き語りで一曲終えた歌手がお客さんと談笑している。
店内の雰囲気からしても大体の人が顔見知りや身内なんだろう。
その歌手が最後に一曲歌ってステージから退場した。
一旦ステージと客席共々明るくなり、次のバンド用にセッティングが始まる。
それにしても遅い。

梓「何してるんだろう」

もうすぐ次の演奏が始まっちゃうのに……。
と思っていたら客席の照明が消えてお客さんがステージに注目する。
唯先輩を探すのを諦めて私もステージへ目を向けた。
コーラを噴き出した。

唯「どーもー! 平沢唯でーす!」

マイクに向かってMCをしていた。
ギー太を担いで。

あとちょっとであずにゃん誕生日

梓「な……なにぃ……」

唯先輩と目が合った。
私の驚いた顔に満足したのか、ふんすと言わんばかりのドヤ顔を見せつけてくる。
要領を得ない連絡や行動はこのサプライズのためだったわけですね。
私は鼻から垂れてきたコーラを拭いつつもステージを眺めた。

唯「今日は特別な日なので張り切って行こうと思います!」

特別な日?
私と同じく疑問に思った前列の知り合いらしき人が問い正している。

唯「ええとね、今日は私にとって大切な人の誕生日なの! と言う訳で今日のライブをプレゼントします!」

梓「えっ……あ!」

前列の知り合いらしき人達が驚きと歓声を上げつつ客席を見回す。
それに釣られて他のお客さんも。
私も恥ずかしくなって周りや後ろをキョロキョロしてしまった。

唯「それじゃあ一曲目いきまーす!」

曲が始まるとみんなステージに集中し始める。
久々に人から注目されそうになった所為で心臓が痛いし額から変な汗が噴き出す。

すっかり忘れてた……今日って私の誕生日だったんだ。

Forestって名前のエロゲを思い出した

やっぱりけいおんSSを荒らすのは楽しいな

一応私以外にそれらしい人がいないか確認してみたけどいないっぽい。
という事はやっぱり私の事を言ったんだよね。
私今日誕生日だし。
でも、大切な人って……。
私の事、なんだよね?

いやいやせっかくの唯先輩からのプレゼントなんだからそういうのは後にしよう。
私は一旦考えるのをやめて唯先輩に集中した。
先輩は楽しそうに歌って、食い入るようにギターを弾いている。
ずっと音楽を続けていただけあって昔よりも上手くなっていた。
すごいなあ……今日だって仕事帰りなのに。

私もこうなりたい。
そしてもう一度唯先輩と一緒にライブやりたい。
そう思わせてくれる演奏だ。

再び逸れた意識をステージに戻して、全身全霊で唯先輩を感じる。
こんな風に見るライブはいつ以来だっけ。

約三十分ほどで唯先輩の出番が終わった。
最後には『私の恋はホッチキス』の弾き語りを披露してくれたりも。
私の所に戻って来た先輩は満足気な笑顔を浮かべている。

唯「あずにゃん誕生日おめでとう! 私のライブどうだった?」

梓「びっくりしましたよもう! それにすっごく恥ずかしかったんですけど」

唯「ごめんごめん」

梓「でもよかったです」

唯「ありがと」

梓「私もギター弾きたくなっちゃいました」

唯「私はあずにゃんと一緒に演奏したくなっちゃった」

梓「あ……私もです」

唯「へへへ……そっか。ねえあずにゃん、ちょっと外に出ない?」

梓「いいですよ」

あずにゃん誕生日おめでとおおおおおおお

おめでとうあずにゃああああああんんんんん

外は十一月の夜だし風も冷たくなってきている。
だけど色々な意味で熱くなった身体には丁度よかった。

唯「はぁー、風が冷たいねー」

梓「もうすぐ冬ですからね。そうだ、唯先輩これ」

唯先輩の家の鍵を差し出す。

唯「おっと忘れてた。……あ」

鍵を取ろうとしていた唯先輩の手が止まった。

梓「唯先輩?」

唯「んー……いや……でも……」

何やらぶつぶつと思案したのち結局私から鍵を受け取った。
何だったんだろう。

唯「あのね、あずにゃん」

梓「何ですか?」

唯「……あー、その」

梓「どうしたんですか? さっきから変ですよ」

唯「えと、あずにゃんに言いたい事がありましてですね」

梓「それってもしかして……」

唯「あ……あずにゃん!!」

梓「は、はいっ」

唯「私にとってあずにゃんは、ずっと前から……」

梓「っ……」

唯「ずっと前から……っ……大切な人だったのっ!」

梓「はいっ! ……え?」

唯「……」

梓「それさっきも聞いたんですけど……」

唯「……ですよねー」

梓「……?」

唯「だからね、その……」

梓「わかってます」

唯「えっ! わかってくれたの!?」

梓「はい。私にとっても唯先輩は、その、大切な人ですから」

唯「あずにゃぁん……!」

梓「だからもう突然音信不通になったりしません。ご迷惑をおかけしました」

唯「うんうん……!」

梓「……」

唯「……」

梓「……」

唯「…………え、終わり?」

梓「え? そうですけど……」

唯「あ…………うん、そだね」

あれ、何でがっかりしてるの?

今日はあずにゃんの誕生日なのにゃん!
あずにゃん誕生日おめでとうにゃん!
今日で一体何歳になるのにゃん?18歳?もしかして19歳?
いつもは幼く見えるあずにゃんも、どことなく大人びて見えるのにゃん!
ぼくはもう誕生日を喜ばしく思わない歳になっちゃったのにゃん
人間なんて20代前半が人間としての若さのピークで、
半ばを過ぎると後は劣化していくだけの存在に過ぎないのにゃん…
だからこそあずにゃんのお誕生日を祝福したいのにゃん!
誕生日が嬉しいような時は、歳を取れば二度と帰ってこないのにゃん
あずにゃんには、今この瞬間生まれては過ぎていく今を大事にしてもらいたいのにゃん
このぼくが大事にできなかったからこそ、尚更あずにゃんには後悔しない今を生きてもらいたいのにゃん

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

梓「唯先輩この事を言いたかったんですよね?」

唯「いや、まあ、うん」

梓「よかった。私本当に感謝してるんですよ」

唯「うん……」

梓「この後どうしましょうか。ご飯でも……あ、先輩は打ち上げとかありますよね」

唯「……」

梓「唯先輩?」

唯「……あずにゃん」

梓「はい」

唯「やっぱりさっきの嘘」

梓「……へ?」

唯「語弊があったみたい」

梓「えっと、それはどういう……」

唯「だからぁ! 好きっていう意味なの!!」

梓「は…………うえっ!?」

唯「言うのやめようかと思ったけどやっぱり言う事にした!」

梓「え……あう……」

唯「本当はあずにゃんの事ずっと前から好きだったの」

唯「でも言うつもりなかった。一緒にいられればいいやと思って諦めてた」

唯「だけどあずにゃんと連絡が取れなくなった時に、死ぬほど後悔したから……」

唯「だからあずにゃんと再会したら絶対にこの事を伝えるって決めてたの」

唯「昨日あずにゃんと会えた時は本当に嬉しかった」

唯「実は無理矢理家に連れ込んだのもお泊りさせたのも、あずにゃんがまたいなくなっちゃいそうな気がしたからなんだ」

唯「それに告白する最後のチャンスだと思って……。今の今まで言い出せなかったけどね」

唯「本当は誕生日プレゼントも買おうかと思ってたんだけど、もしフラれちゃった時に形に残るものだとアレだし」

唯「スペアキーも預けようと思ったけどフラれた後にあずにゃんから返されるの嫌だし」

唯「……って、まだ返事貰ってなかったや」

唯「あはは……」

キタワァ*・゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゚・* !!!!!

>>120
あっちのかずにゃんとこっちのかずにゃん、どっちが本物なんだ

分裂したのか

梓「唯先輩」

唯「は、はい」

梓「改めてご心配かけてすみませんでした」

梓「何度も言いますけど私はもう消えたりしません」

梓「それから、唯先輩の事は昔から頼りにして……あ、頼りになる時もありましたし」

梓「最初はすごく憧れてました。……あ、いや、ずっと憧れて……はいなかった、かな」

唯「……ぐすっ」

梓「そ、それから! 一緒にいると楽しいですし、いつも雰囲気を明るくしてくれて」

梓「今回だって沢山お世話になって、私もう一度頑張ろうって思えるようになりました」

梓「昨日までダメダメだったのに唯先輩と会って話しただけで、です。自分でもびっくりしてます」

梓「だから私にとって唯先輩は大切な人で、好きか嫌いかで言われたら……好き、です」

梓「唯先輩と同じ好きなのかは自分でもわからないけど……」

梓「唯先輩にそんな事言われるなんて思わなかったから、ちょっと、かなり、ビックリしたって言うか」

素晴らしいな

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

毎回毎回同じパターンやね

梓「だからその……えと……」

唯「……あ、あうと?」

梓「いや……」

唯「じゃあ……セーフ?」

梓「どちらかと言えばセーフ、だと思います……」

唯「……ほんと?」

梓「えっと、はい」

唯「……あ、あ、あずにゃん」

梓「は、はい」

唯「あずにゃああああああんっ!!」

梓「うわあっ!?」

HAPPY. END!!!

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

唯「よかったあああああぁぁぁ……!!」

梓「う、あ……抱き付かないで下さいよ……私達いい年なんですから」

唯「……いい年して引きこもってたくせに」

梓「ぐあ……」

唯「そんなんだからにぶちんなんだよー」

梓「しょ、しょうがないでしょ! ずっと一人身だったんだから!」

梓「唯先輩こそさっき顔赤くして震えてたじゃないですか」

唯「あずにゃんだって」

梓「……」

唯「……」

梓「私達ってあんまり成長してないんですかね」

唯「そんなことないよ」

支援!支援!

いいものだ

梓「……あの」

唯「うん?」

梓「さっきも言いましたけど私まだ気が動転してて、冷静に考えられてないっていうか……」

唯「……もしさ」

梓「え?」

唯「もしあずにゃんの好きが私の好きと一緒じゃなかったら遠慮なく言ってね」

梓「唯先輩……」

唯「じゃあ……」

梓「はい……」

唯「ご飯食べに行こっか!」

梓「……えっ!?」

唯「私片付けと挨拶してくるからちょっと待ってて~!」

梓「……切り替え早いですね」

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

フヒッ

ライブハウスの前で待つこと数分。
ギー太を連れて出て来た唯先輩と夜道を歩く。
少しずつ冷静になってくると段々唯先輩と一緒にいる事が恥ずかしくなってきた。
当の本人は背筋を伸ばして私の数歩先を軽い足取りで歩いている。
私はまだはっきりと返事していないのに……。

唯「どうしたあずにゃん元気ないぞ!」

梓「なんでそんなに元気なんですか」

唯「いやー言いたい事言ったら気分良くてさ!」

梓「でも私まだちゃんと返事……」

唯「ゆっくり考えてよ。でも返事は早く聞きたいかなぁ」

梓「どっちですか」

唯「えへへ、まあ今日の所は残塁出来たから良しとするよ!」

梓「残塁はあまりよくないと思いますけど……」

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

あずにゃん!誕生日おめでとう

唯「あれーそうだっけ?」

やけにテンションの高い唯先輩。
もしかして……先輩も恥ずかしいのかな?
ふるまいからして多分そうなんだろう。
あの唯先輩でも恥ずかしがるんだ……。
それなのに行き当たりばったりで告白後にご飯誘ったり。
そう考えると気持ちがほぐれてきた。
私は唯先輩に駆け寄り肩を並べて話し掛ける。

梓「先輩、どこに食べに行きます? ……あ」

唯「な、なに?」

梓「唯先輩の顔まだ赤い……」

唯「ええっ!? き、気のせいじゃないかな!」

梓「そうですね、暗くてよく見えませんし」

唯「だまされたっ!?」

梓「あははっ」

唯「もうっ、あずにゃん!」

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

梓「ふふ、ごめんなさいっ」

唯「くそー、そんな事言うと奢ってあげないぞ」

梓「奢ってくれるつもりだったんですか?」

唯「もちろん。あ、そうだ! あずにゃんにごちそう買ってあげなきゃ!」

梓「へ?」

唯「モンプチを買ってあげよう。あずにゃんに会えたのはあずにゃんのおかげだからね~」

梓「それキャットフードじゃないですか。ていうか意味わかんないです」

唯「かわいい子には旅をさせてみるもんだね! ……まあ、勝手に家出してたんだけど」

梓「……何の話?」

唯「そのうち教えてあげる!」

梓「はあ」

ひきこもにゃんには唯先輩だな

唯「それから、あずにゃんにこれあげる」

唯先輩が手渡してくれたのはさっきまで私が預かっていたスペアキーだった。

梓「これって……でもさっきは返されるのが嫌だって」

唯「せっかくあずにゃんと再会できたんだし、やっぱりもっと一緒にいたいし」

梓「でもこれは気が早いというか……」

唯「それは大事なものだからあずにゃんに預けるの。それを持ってる間は勝手に消えたらだめだからね」

う、信用されてなかった……。
なんか首輪つけられてるみたい。

唯「ダメかな……?」

梓「いえ、預からせて頂ます」

唯「よかった~。じゃあこれも誕生日プレゼントって事で!」

もう……強引なんだから。

おい、素晴らしいぞ
はやくしろ

梓「誕生日と言えば唯先輩も今月誕生日ですよね」

唯「覚えててくれたの!?」

梓「ええまあ」

唯「あずにゃぁん……!」

梓「はいはい。先輩は何か欲しい物とかありますか?」

唯「あずにゃん」

梓「物ですよ」

唯「んー、じゃあ二人で出掛けるのはどうかな?」

梓「構いませんけど……旅行とかですか?」

唯「旅行……いいねえ! 高校の卒業旅行みたいに思い切って海外とか行っちゃおうか!」

梓「海外ですか……いきなり跳ね上がりましたね」

唯「あずにゃんはついて来てくれるだけでいいよー」

梓「そういう訳にもいかないでしょう」

唯梓!唯梓!唯梓!唯梓!
早くもう一つの唯からのあずにゃんへの誕生日プレゼントを見せるのにゃん!
あずにゃんにおいしくて、ぼくにもおいしくて、お前らにもおいしいのにゃん!

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

唯「よーし有給パワー発動しちゃうぞ! 当日は海外で過ごすよ!」

梓「え!? 急過ぎませんか?」

唯「んーん、もう決めた! そうだなー26日に出発して……あったかい所のプールで泳ぎたいな」

唯「そうだプール! すごいプールがあるんだよあずにゃん!」

梓「なんかもう行く場所決まりそう……」

唯「ホテルの屋上に空中庭園とプールがついててね、すぐ隣が空なんだよ!」

梓「ちょっとよく分からないんですけど」

唯「カジノもあってとにかくすごいホテルがあるんだよ~」

梓「どこにあるんですか?」

唯「確か……シンガポール!」

梓「シンガポールですか。一年を通して暖かいですよね」

唯「そうそう! ね、どうかな?」

梓「んー、まあ、唯先輩が行きたいならOKです」

唯「やったぁ! わっくわくだね~」

梓「まったくもう……」

唯「私の誕生日はシンガポールだよ~! 楽しみだねっあずにゃん!」

梓「ふふ、そうですねっ」




唯先輩がいると引きこもってる暇なんてないや。
私を元気付けてくれたと思ったら、逆戻りしてもおかしくないくらいの衝撃を与えられて。
地元に帰って来ていきなりこれだもんなぁ。
でもどこか嬉しくて、振り回されるのも悪くないって思っちゃたり。
そんな唯先輩ともっと一緒にいたいから、私だって頑張らなきゃだし。
おまけに課題を増やされて、ちゃんとした返事も考えなきゃいけないけど……
もう少しだけ甘えていてもいいですか?

ねえ、唯先輩。



END


ぼくもあずにゃんに誕生日プレゼントあげたいにゃん!
ぼくの24年間守り通してきた童貞をあげるのにゃん!
下手に高いものを用意するよりは、ぼくの真心がこもった無形物の方がよっぽど心に残るのにゃん!
形に残るものよりも、あずにゃんの心に残る思い出!
ぼきゅの一度きりしかない童貞は何物にも変えがたいのにゃん!

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!

第2部シンガポール編
はっじまーるよー!

え、ええ話や……面白かった
おつおつ

まだ呼んでないけど乙

これから読むが乙

あずにゃんおめでとう乙

なんか唯梓久しぶりに読んだ気がする

あずペロおめ

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