夜神月「囲碁ノート?」(181)

月「なんでこんなものが校庭に…」

月「とにかく読んでみるか…」ペラ

月「HOW TO USE……全部英語か、面倒だな」

月「……」ペラ

このノートは囲碁のルールブック兼棋譜です

簡単なルール説明の後、私がこれまで打ってきた碁の棋譜を
書いています

月「ふーん…囲碁、ね」

月「ここまで几帳面にノート取るなんて結構手が込んでるじゃないか」ペラ

月「うわ……こっから棋譜がびっしり…」ペラ

月「ん?最後のページだけ赤いシミ…血か?」ペラ

月「まあいいか」

月「にしても囲碁ね……」

月「ちょうど退屈だったし、暇つぶしにはいいかな…」

月「…うん」

夜神家


月「ふぅ…」パタン

月「とにかく先ずはルールからだな…なになに?囲碁はいわゆる陣取りゲームです」

月「最終的に相手の陣地(地)より自分の陣地(地)の方が多ければ勝ちという
  シンプルなゲームです…ふむふむ」

しかし、地を地として確立する為には最低でも二眼必要です

眼というのは…

月「…よし、大体覚えたし打ってみるか」パタン

月「こういうのはいくらルールだけ覚えたって実際に打たなきゃ成長しないし
  打ちながらの方がルールも身につきやすいだろうしね」

月「それじゃ…」スッ

月「…………」

月「……誰と打てばいいんだ?」

月「妹、母さん……無理だ。あの二人が囲碁なんて知ってる筈がない」

月「じゃあ父さん…?」

月「ダメだ。父さんは忙しくていつ帰ってくるか分からない」

月「………っちぇ」ボフン

月「ルール覚えても打つ相手がいなくちゃ意味ないじゃないか、チクショウ!」

月「…………待てよ?たしか昔yahoo!ゲームで囲碁があったような…」カチカチカチ

月「あった!これだ!」

月「残念ながらyahoo!ゲームは既になくなっていたが、ネットでも碁が打てる
  ところがあった!」

月「ネット碁か……相手の顔も見えないから心理的な駆け引き要素が少し
  薄れるかもしれないが、いいだろう」

月「そうと決まればさっそく…」カチャカチャ

月「む?登録したと同時に向こうから誘いが来るとは…」

月「ハンドルネームsai?」

月「いいだろう!相手になってやる!」

~~30分後~~

月「バカな!?」

月「なんだ、こいつは?」

月「いくら僕がさっき囲碁のルールを知ったばかりだからって、ここまで
  やられるか?」

月「これは罠だ!そうに違いない!」

月「じゃなきゃ、僕がこうも簡単に!」

月「くそう!」ドカッ

月「…………こいつのこの手!まさかここでこんな手を打ってくるとは…」

月「絶対に殺せると思ったのに、中央に飛ばれて上手く見会いにされてしまった。
  繋げられたら二眼作られてしまうし……くっ」

月「これじゃあ殺せない…畜生!」

月「それにしても…」プルプル

月「sai……こいつ、プロじゃないのか?」

月「いや、プロがこんなネット碁なんて……気晴らしの線は…」

月「いけない……一度の負けがなんだ!弱気になるな!」

月「もう一度!もう一度対戦すれば!」バッ

月「…………いない」

翌日。


粧裕「お兄~ちゃん♪」ガチャ

月「なんだ、粧裕か?どうした」

粧裕「実は宿題で分からない所がありまして」テヘヘ

月「良いよ、どこ?」

粧裕「数学のラプラス変換でーす♪」

月「!?」

月「ま、まあ良いよ。けどその前に参考書見せてくれないか?」

粧裕「いいよ~♪」

月「ふむふむ…」ペラ

粧裕「あれ?」

月「ん?」

粧裕「お兄ちゃん、これ何?」スッ

月「ああ、囲碁ノートだよ。学校で拾ったんだ」

粧裕「ふーん。あっ棋譜も載ってる。すごーい」

月「!?」

粧裕「どうしたの、お兄ちゃん?」

月「棋譜って……もしかして粧裕、お前碁が打てるのか?」

粧裕「えっ?うん。ちょっとだけだけどね」

粧裕「お兄ちゃんも打つの?」

月「……」

粧裕「お兄ちゃん?」

月(なんて事だ。まさか粧裕が打てるとは…)

月(ここは昨日の負けで嫌になった気分を妹で晴らす絶好の機会!)

粧裕「お兄ちゃんってば~」

月「粧裕」

粧裕「ん?」

月「一局、打たないか?」

粧裕「うわっ、お兄ちゃんも打つんだ!やるやる♪」

月「じゃあ、ちょっと遠いけど碁会所まで行こうか、碁盤も石もないし」

粧裕「あっ、それなら心配しなくても…」


~~~粧裕部屋~~~


月「まさか粧裕の部屋に碁盤と石があるなんて…」

粧裕「最近の女の子はけっこう持ってるよ?」

月(そうなのか!?)

粧裕「それより打とっ、お兄ちゃん!」

月「あ、ああ…」

月(いけない、平常心だ…こんな事で心を乱されるな。付け込まれる)

月「ふうぅぅぅ…」キッ

月「お願いします」

粧裕「お願いします」

~~~40分後~~~


月「なん……だと…?」

粧裕「やたっ!あたしの勝ち~♪」

月「まさか……こんな…」

粧裕「お兄ちゃん碁を打つのは初めて?もっと肩の力抜きなよ~」

月(そんな……昨日saiに負けてからというもの、完璧にルールを
  把握してネットで他の対戦者の対局も見た!)

月(それなのに今日も、しかも妹にも負けるなんて……)

粧裕「じゃ、検討ね。お兄ちゃんここはちょっと強引だったよ」

粧裕「この場合は一旦引くか様子を見ないと……それかこっちに飛んで
   から出た方が良かったね。あたしの薄みもつけるし」

月(こんなはず……こんなはずが…)

粧裕「あと右上を守らずに地を稼ごうとしたのもちょっとね」

粧裕「おかげであたしに荒らされちゃったし」

月「…………」

粧裕「お兄ちゃん?」

月「粧裕…」

粧裕「うん」

月「お前、どこで碁を習った?」

粧裕「え?」

月「僕が原作、Lが作画で、週刊ジャンプで連載を目指すだって?」

月「どこで習ったと聞いてるんだ!」

粧裕「どこって……棋院かな?」

月「棋院?」

粧裕「うん。そこで習ってるの。あたし院生なんだ」

月「院生?なんだ、それは…」

粧裕「なんて言うかな~、碁の塾?」

月「そうか……そこでそんなに強くなったのか…」

粧裕「うん♪」

月「院生……か、僕も行ってみようかな…」

粧裕「えっ、無理だと思うよ?」

月「!?」

月「どういう事だ?まさか僕はその塾に行くほどのレベルじゃない
  とでも!?」

粧裕「それもあるけど…」

月(あるのかよ!)

粧裕「年齢制限あるから無理だよ?お兄ちゃんが今から行っても…」

月「年齢…制限?」

粧裕「うん」

翌日。


月「けっきょく、僕は院生にもなれないし……趣味で碁を打つしかないのか…」

月「くそっ!なにが囲碁ノートだ、こんなもの!」バッ

月「いや……囲碁ノートは悪くない。悪いのは負けた僕だ…」

月「にしても妹にまであんなに負けるなんて……くそっ、イライラする…」

パチッ パチッ


月「……ん?」

月「囲碁部……うちの学校囲碁部なんてあったのか…」

月「どれ…」ガラララ


部員「あれっ、夜神くん!どうしたのさ?」

月「ちょっと碁に興味持ってね。囲碁部ってなにしてるか気になって…」

部員「本当?夜神くんが碁に興味持つなんて!」

月「部員は……三人?」キョロキョロ

部員「今日はみんな用事があってね」

月「ふぅん…」

部員「そうだ!夜神くん、一局打たない?僕、相手いなくて暇してたし」

月「いいの?」

部員「大丈夫、大丈夫♪」

月「なら……」ジャッ

部員「お願いします」

月「お願いします」


~~~1時間後~~~

部員「ふぅ…」

月「ふぅ…」

部員「いやあ、恐れ入ったよ、さすがは夜神くん!」

月「君もね。最後のヨセでひっくり返されそうになった時は焦ったよ」

部員「またまたぁ♪」

月(くくくくっ……なんだ、勝てるじゃないか)

部員「それにしても夜神くんならプロも夢じゃないかも」

月「そんな大袈裟だよ」

部員「そんな事ないって!夜神くんならなれるよ、絶対」

月「そうかなあ?」

部員「うんうん♪」

部長「なんだ、お前負けたのか?」ヒョイ

部員「あっ、部長!」

部長「そんなんじゃ下の部員に示しがつかねーぞ」

部員「てへへへへ」

部長「にしても、夜神くん凄いな、まさかうちの三将やぶるとは」

夜神「三…将?」

部員「あれ、言ってなかったけ?俺、三将なんだ」

部長「ちなみに大将は俺な」

部員「まあ、こんな弱小囲碁部の大将の棋力なんてたかが
   知れてるけどね、あはははは」

部長「てめっ!?」

部員「じょ、冗談冗談だって♪」

部長「いや、さっきのは傷ついた、傷ついたぞ!」

月(こいつが、三将?しかも弱小囲碁部だって?)

月(そんなのに勝って僕は喜んでいたのか?)

月(井の中の蛙もいいとこだ…)

部員「夜神くん?」

部長「ふむ……もしかして全国模試一位の夜神くんはうちの
   囲碁部よりももっと強い奴とやりたいのか?」

月「いや、そういうわけじゃ…」

部長「教えてあげようか?強い奴がいるとこ」

夜神「!?」

部員「部長、まさか…」

部長「どうなんだい、夜神くん?」

月「……いるのか、碁が強い奴が?」

部長「ああ、それもとびっきりな」

そして。


月「ここが部長に教えてもらった碁会所か…」

月「本当にこんなトコに強い奴が?」

月「……」

月「考えてもはじまらない…行こう!」ザッ

サイ「人間ってオモシロー」

ガララッ

市河「あら、いらっしゃい」

月「どうも…」キョロキョロ

市河「どうしたの?」

月「ここに強い人がいると聞いて…」

市河「強い人?ああ、アキラ君のことね」

月「アキラ?その人が強い人なんですか?」

市河「あなたアキラ君を知らないの?」

月「打てますか?その人と」

市河「えーっと……やめといた方が」

塔矢「呼びました?」ヒョイ

市河「あっ、アキラ君」

月(子供っ!?)

塔矢「ボクに用ですか?」

月「キミがここの碁会所で一番強いの?」

塔矢「ええ、まあ…」

月(部長はこんな子供が強いと言ってたのか?情けない)

月(こんなおかっぱ頭にやられるとは…)

塔矢「あの…」

月「塔矢くん、だっけ?」

塔矢「はい」

月「一局打ってくれないか?」

月(僕がこんなおかっぱにやられる筈がない!勝負だ!)

~~~30分後~~~


月「くっ…」

塔矢「……」パチッ

月「負け……ました…」

塔矢「ありがとうございました」

月「あり…がとう…ございました」

月(何故だ……何故こんな粧裕とたいして年も変わらなさそうな
  子供なんかに!)

月(子供……?)

月「もしかして……君は院生か?」

塔矢「いえ、違いますけど」

月「じゃ、じゃあなんでこんなに強いんだ」

月「プロじゃなきゃこんなに強いのは院生くらいじゃ…」

市河「あ~あ、やっぱり」

月「!?」

市河「あのねえ、確かにアキラ君は院生でもまだプロでもないけど、
   プロ顔負けの実力なのよ?それに、今プロ試験受けてるから
   もうすぐプロになっちゃうけど」

月「プロ!?」

塔矢「あっ、はい」

月「君がプロ試験?まだ子供じゃないか」

塔矢「碁のプロ試験は子供でも受けれるんですよ。
   というより、若くプロになる方が多い世界なんです」

月「そうなのか?」

塔矢「先程院生の話も出ましたが、たしか院生も18歳まででしたし」

月「ハッ…!?」

月「そうか……だから粧裕は…」

塔矢「あの…」

月「塔矢くん…」

塔矢「はい」

月「君と打てて良かったよ、ありがとう」

塔矢「いえ、こちらこそ…」

月「また、打ってくれるかい?」

塔矢「え?」

月「次は……負けない!」キッ

塔矢「…………いつでもどうぞ」

月「……」バッ

帰り道


月「くそっ……くそっ……くそっ!!!」

月「また負けた…」

月「しかもあんな子供に!!!」

月「何故だ!なぜ勝てない!?」

月「あいつの手は全部読んでいたのに!」

月「いくらプロ試験を受けるような奴だからって、僕があんな子供に!」

月「くそっ!」

???「ふふふふふふ、荒れてるな」

月「!?」

月「誰だ!?」

リューク「俺だ」バッ

月「う、うわあああああああああ!?」

リューク「なにをそんなに驚く?囲碁ノートの持ち主、リュークだ」

月「囲碁ノート?ああ、あれか…」

月「すっかり忘れてたよ…」

リューク「ひどっ!?」

芦原「ふーんやっぱ同年代でアキラに勝てる子はいないかぁ、ちなみに今の子何て名前だったんだ?」

アキラ「え?あぁ…忘れちゃったテヘ」

月「それでその落し主が何の用だ?ノートを返して欲しいのか?」

リューク「ノートを返してほしい?くくくっ、バカな」

リューク「もう、あのノートはお前のモノだ、好きにしろ」

月「……ふうん」

リューク「その様子だとあのノートがふつうのノートじゃないとは
     まだ気付いてないみたいだな」

月「なに?ルール説明と棋譜が書いてるだけのノートじゃないのか?」

リューク「くくくくくっ、何を寝ぼけた事を…」

リューク「そんな何の変哲もないノートを俺が落すかよ」

月「じゃ、じゃああのノートに他に何があるって…」

リューク「あのノートにはまだ余白があっただろう」

月「ああ…」

リューク「そこに勝敗をあらかじめ書き込んでおくと、その通りになるんだ」

月「!?」

月「そんなバカな!?」

リューク「嘘だと思うならやってみろよ」

月「そんな……こと…」

リューク「負けっぱなしでいいのか?」

月「!?」

月「しかし…そんないかさまみたいな事…」

リューク「どんな勝ち方でも勝ちは勝ちだ」

月「!?」

リューク「試しに一回くらい使っても良いんじゃないか?」

月「本当だろうな?」

リューク「くくくくくっ」

月「…………」

帰宅


月「……」ガチャ

粧裕「あっ、お兄ちゃんお帰り~」

月「……」ドタドタドタ

粧裕「あれ?」


~~~月の部屋~~~

バタン ガチャ

月「……ふ、ふふふふふ」

月「ふははははははははははは!」

月「囲碁ノート……本物だ!」

タイトルの賞金全部かっさらう

リューク「だから言っただろう」

月「リューク……聞きたい事がある」

リューク「なんだ?」

月「この囲碁ノート、僕は勝つと分かって書き込んだ」

リューク「ああ」

月「覚悟はできてる。僕はどうなる?魂をとられるのか?」

リューク「魂?」

リューク「なんだそれ、人間の作った勝手な空想か?俺はお前に何もしないし、訴えない」

リューク「おまえが拾った瞬間からそれはお前のモノだ」

月「僕のもの…」

リューク「いらなきゃ他の奴にまわせ。俺はそいつに憑く」

月「……」

リューク「それから元俺のノートを使ったお前にしか俺の姿は見えない」

リューク「もちろん俺の声もお前にしか聞こえない。これがどういう意味か分かるか?」

月「いかさま……しほうだい!」

リューク「けど俺に出来るのは棋譜がつかない聖地のズルくらいだ」

月「その他のズルをしようとするとバレル…か」

リューク「その通り。あとプロや院生を相手にする場合はそんなズル
     も無理だろうけどな」

リューク「あいつらレベルになると直ぐにズルに気付いちまう」

月「なんだ、意外と使えないな…」

リューク「くくくくくっ、けどな…」

月「そのために囲碁ノートがあるんだろ?分かってるよリューク」

リューク「くくくくくっ…」

月「僕は囲碁ノートを使って……プロになる!」

リューク(やっぱ人間っておもしろっ!)

月「そうと決まれば早速粧裕と打つぞ」

月「こないだ負けてムシャクシャしてたんだ」

リューク「粧裕?ああ、妹か」

月「妹といって侮るな。流石は僕の妹、しかも院生だ」

リューク「クククククッ…」

月「?」

月「まあ良い…えーっと夜神粧裕…中押しで…」カキカキ

粧裕「お兄ちゃ~ん、ちょっといい?」トントン

月(なんだ、さっそく来たか手間が省けてちょうどいい)

月(負けて僕のことを見直すがいい!)

月「待って、今開けるから!」

粧裕「えへへ~、また宿題で分かんないとこがあって」ガチャ

月(くくくっ……まだだ、まだ笑いをこらえるんだ!)

粧裕「あれっ、お兄ちゃん?」

月「なに?」

粧裕「その後ろの大きい人、誰?お兄ちゃんの彼女?」

月「!?」

月「お前、リュークが!?」

月(ハッ……そういえばあの時!)

粧裕「はじめまして~」ペコリ

リューク「くくくくっ、どうも…」ペコリ

粧裕「さっ、お兄ちゃんやっぱり宿題はいいから打とっか?」

粧裕「粧裕、イカサマする人なんかに負けないよ?」テヘッ

月「……う」

粧裕「弱虫」

月「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


この日を境にして、夜神月は碁を打つのをピタリとやめたという。
その後、彼がどうなったかを知る者は誰もいない。

しかし所説によると、なんでもあまりの無念さに囲碁ノートに 取りついて死んだとか。
そのノートは後の世でこう呼ばれている。

『DEATH NOTE』と……。


夜神月「囲碁ノート?」   終わり

やっつけSSオワタ

読んでくれた人いたらありがとうございました

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