鈴羽「比翼恋理のだーりん?」岡部「やむを得まい」(847)

岡部「うーむ……」

岡部「いい天気だ」

岡部「…………」

岡部「…………」

岡部「………フ」

岡部「………フゥーーーーハハハハハハハ!!!」

岡部「……この鳳凰院凶真には……眩しすぎるがな……ククク!」

岡部「さてと……太陽の照らすさなか、“狂気の徘徊”をはじめるとするか……」

まゆり「オカリンお散歩いくのー?」

岡部「だぁーっ!! 言うな!!」

まゆり「えへへー、まゆしぃにはわかってしまうのです」

岡部「だからだなまゆりそこはわかってしまっても言わぬが花というかな!」

まゆり「♪」

岡部「ええい! もういい! 俺は散歩してくるぞ! 留守はまかせた!」

まゆり「はーい」

岡部(………ふぅ)

岡部(色々あってすべてがうまくいったはいいが、うーむ)

岡部(あれだけ命を張っておいていうのもなんだが)

岡部(……狂気のマッドサイエンティストとしては、うむむ)

岡部(………)

岡部(………)

岡部(………何かが足りん!!!)

岡部「足ぁぁぁぁりんのだーーーーーー!!!」

ダル「うわーーっ?! ……なんだオカリンか。朝から厨二病乙」

岡部「おお、我が右腕ダルよ」

ダル「またその設定? オカリンほんと進歩しないよねー」

岡部「お前もそうやって俺を現実に戻しおって……」

ダル「はいはいどいたどいた! こっちは今度のイベントのチェックで忙しいんだから!」

岡部「ぐぬぬぬぬ」

ダル「オカリンもいつまでもおかしなことしてないで、現実みろってjk」

岡部「うるさい!! あっちいけ!!」

ダル「ふんふん~♪ フェイリスちゃん元気かなーフンフン♪」

岡部(ダルに現実を見ろといわれるとは……)

岡部(やはり何かが足りぬのだ……)

岡部(刺激……)

岡部(………!! そうか!!)

岡部「刺激が足りんんんんんんんん!!」

綯「!?!?」 

岡部「あ」

綯「お、お父さぁん……おじさんが変なこといってこっち見てるよぉ!」

Mr.B「あぁん?」

岡部「あ。あ。」

Mr.B「おい、岡部。テメェうちの綯を見ながら『刺激が足りない』ってなぁどういう了見だコラ」

岡部「うぐっ……、な、なにを言う……。ク、クククク!! 今日という今日は立場をはっきりさせてもらうぞミスターブラウン!!」

Mr.B「あ?」

岡部「つまぁーーり、だ。このラボが貴様に与えている恩恵というものをきっちりと理解してもらお」

Mr.B「テメェ、殺されてえか?」

岡部「はいすいませんもう見ません」

Mr.B「そういやよお」

岡部「はひ?」

Mr.B「んー。……って、はは、テメェに聞いてもどうだかわかんねえか」

岡部「? 何のことだ?」

Mr.B「ここんとこよ、妙な夢ばっかみるんだよな」

岡部「夢?」

Mr.B「おう、夢だ」

岡部(なぜこのオヤジは俺に夢の話をする……??)

Mr.B「なぁんだかおかしな夢でよ。うちにバイトが入るんだ」

岡部「はははは、誰がこんなオンボロに」

Mr.B「死にてえんだな?」

岡部「続けてくださいすいません」

Mr.B「……綺麗な瞳をした若い姉ちゃんなんだが……。どーもサボり癖がある女でよ。つってもまぁ、明るくて根はいいやつってのはわかるんだが……。
    あんまり夢に出てくるもんでよ。気になって気になって」

岡部「………」

Mr.B「夢の中じゃあどうやらお前らと仲がいいみたいなんだが、まあ、知らねえよな。忘れてくれ」

岡部「………」

Mr.B「おい? どうした岡部」

岡部「いや……」

Mr.B「……わりい、変な話してよ。急いでんのか? もう行っていいぜ」

岡部「………うむ」

岡部(……妙だな)

岡部(クリスティーナのときもそうだったが……)



岡部(鈴羽を知っているはずがない)



岡部(一連の事件を観測できるのは『リーディング・シュタイナー』を持つ俺だけのはずだ)

岡部(……何か起きているのか? いや、まさか)

岡部「俺だ。“機関”がすでに動き出している可能性がある。連携を怠るな」

岡部「安心しろ。すべては運命石の選択だ。エル・プサイ・コン」

?「グルゥ」

岡部「っ!?」

?「遅かったな。“機関”に気づかれていないとでも思ったか?」

岡部「え……、な……っ!?」

?「無駄だ。拘束してある。素人の手じゃほどけない」

岡部「……ッ!!」

岡部(どういうことだ、とりあえずラボメンに……)

?「連絡を取る? 誰と? さっきまで冗談を言ってた仲間にか? 信用されるか?」

?「それが無理ならDメール? しかし電子レンジは解体してしまったんだろ?」

?「諦めなって」

岡部「……く」

岡部(この声、変声機か……!! 誰だ、こいつは……!?)

?「そうそう、そうやってリラックスして」



?「準備ができたら、来てもらおうか。岡部倫太郎。キミの力が必要なんだ」

岡部「……くそおおおおおお、俺はこんなところでは……!!! ………!!? えっ」

鈴羽「……ぷっ!! 必死になりすぎだって! やっほー、おひさしぶり」 

岡部「え、は?」

鈴羽「あ、ゴメンゴメン、変声機、はいってたね。……はい、これでどう?」

岡部「おま、ちょ、鈴羽か!? え、さっきのは……」

鈴羽「もおー、手の感触とかでわかってよね。あまりにも必死だったから調子にのっちゃったよ」

岡部「いや、もうなにがなんだか……」

鈴羽「詳しい話は後!! とりあえず、乗って」

岡部「乗る!? 乗るって、何にだ?」

鈴羽「決まってるじゃん」

鈴羽「タイムマシーン、だよ」

10分休憩させてください。なるべく早く投下していきます

岡部「タイムマシーン、って……例のあれか?」

鈴羽「うーん、オカリンおじさ……、じゃなくて、君が指しているのがどのあれかはわかんないけど……」

鈴羽「あ、そっか。わかるんだ」

岡部「何?」

鈴羽「ごめん、こっちの話。準備はいい?」

岡部「待て待て待て待て。準備も何もまだ具体的なことを何も聞いていないぞ!?」

鈴羽「うーん、だって面倒なんだもん。中で話すよ。これ、多分君が前に乗ったやつとは別型だし、安定してるから」

岡部「……本当だろうな?」

鈴羽「何だよその目! あたし、嘘つかないじゃん! 知ってるでしょ!」

岡部「隠し事はするがな」

鈴羽「あ、それも知ってるんだ」

岡部「当たり前だ」

岡部「しかし行こうにも準備ってものがだな」

鈴羽「なにそれ。あたしじゃ不満?」

岡部「そんなことは一言も言っとらん!!」

鈴羽「あは、相変わらずだね。準備って聞いたのは心の準備だよ。メールとか送ろうとしたんでしょ?」

岡部「あ、ああ。一応、ラボには連絡を入れておかんと」

鈴羽「岡部倫太郎は天才なのに馬鹿なんだなあー」

岡部「んむ?」

鈴羽「とにかく、このまま乗って平気だよ。事情は後で話すから、ほら、乗った乗った」

岡部「どわっ!! ひ、引っ張るなおい!!」

鈴羽「~♪」


――タイムマシン内部――

鈴羽「よっと。そこ、座れるから」

岡部「う、うむ……」

岡部(前に乗ったときと全然違うな……)

鈴羽「とりあえず、はい。これつけて」

岡部「うむ……、ってなんだこれは!!」

鈴羽「深く考えなくていいよ。後で説明するから」

岡部「なっ……!! こ、こんなもの狂気のマァァッドサイエンティストがつけられるか!!」

鈴羽「えーなんでー? かわいいじゃん」

岡部「天使の羽のバッジなんぞ無理だ!!」

鈴羽「まぁまぁそう言わずに。ラボメンに免じてさ。ほら、あたしもう半分つけてるし」

岡部「それはお前が女の子だから許されるのだ!! 断固!! 断る!!!」

鈴羽「うーん、これがないと困るんだってばー。まあいっか」

岡部「ハァ……ハァ……」

鈴羽「とりあえず、タイムトラベルするね」

岡部「おいおいおいおい待て待て待て待て!」

鈴羽「え?」

岡部「事情を説明すると言ってたではないか! お前はなんでもかんでも後回しにしすぎる!」

鈴羽「うーん……そうなんだけどさぁ。どっから説明していいかわかんないんだよねー」

岡部「1からだ」

鈴羽「1から? ……わかった、じゃあまず、この毛糸について説明するね」

岡部「け、毛糸……?」

鈴羽「あれ? 前にいたあたしはそう説明してなかった?」

岡部「……む。もしかして世界線の話か?」

鈴羽「そうそう。ダイバージェンスメーター、α世界線。牧瀬紅莉栖を救うため。その中で、世界線は毛糸の糸って言ったよね?」

岡部「確かにそういっていたが……」

鈴羽「こうも言ってなかった? Dメールができることは、毛糸の糸に対して、きっかけを与えるだけ」

岡部「言ってた……か?」

鈴羽「あれ。そこまでは言ってない? まあとにかくそうなんだけど、タイムリープができることは、
    世界線にそって移動することって言ったよね」

岡部「ああ……。それによって俺は二つの世界線を移動していた」

鈴羽「ところが、実はそうじゃないの」

岡部「ん?」

鈴羽「タイムリープにできることは、世界線の移動じゃないんだ。正確には“世界線を飛び越えるためのきっかけ”を与えること」

岡部「きっかけ……?」

鈴羽「そう。意識を投影してきっかけをつくるの。最終的な移動は結果として起こる」

岡部「……そうか、たしかにそうだな」

岡部(リーディング・シュタイナーを持つ俺からして見れば、移動したように感じるが……)

鈴羽「時間的、空間的に、自由に移動することはできていない。でも、このマシンは……」

岡部「……それは、つまり、まさか」

鈴羽「そういうこと。このマシンは、世界線の毛糸星を移動できるんだ」

岡部「!? 好きな世界線を選べるということか?」

鈴羽「うん。だから実際は、タイムトラベルというより、次元超越って表記が正しいんだけどね」

岡部「……な………」

鈴羽「えっと、口でいってもなんだし、外見てみる?」

岡部「え?」

鈴羽「外。毛糸星の銀河」

岡部「ちょちょちょちょちょおおおっと待て。もしかしてもう動いているのか?」

鈴羽「え? とっくだよ?」

岡部「おおおおおおおおおおおお前は本当にせっかちだな!!!!!!!!!!!!」

鈴羽「別に時間がないってわけじゃないんだけどね。ほら、時間はあたしたち二人が持ってるから」

岡部「一言くらい言えっ!!」

鈴羽「えへ」

鈴羽「待ってて。今ウィンドウあけるから」

岡部「なっ!?! 待て、窒息するーーー!!?」

鈴羽「もう、あわただしい人だなあ。窒息なんかしないよ。ほんとの宇宙とは違うんだから」

岡部「……そ、そうなの……か?」

鈴羽「そうなの。オカリンおじさんって、話に聞いたよりも肝っ玉小さいんだね」

岡部「おじさんってのはやめい! 狂気のMAAAAADサイエンティイイスツにむかって……」

鈴羽「はいはい。開けるよー」

岡部「ぐぬぬ……」

岡部(おのれ小娘! というか前に会った鈴羽はもう少し可愛げがあったぞぐぬぬぬぬぬ)

鈴羽「ほら、見てみて」

岡部「お……これはまた……」

鈴羽「ね、綺麗でしょ? といっても、概念を視覚化したものだけど……」

岡部「………」

鈴羽「最初はみんな感動するんだよね。さっき宇宙じゃないっていったけど、この世界線の集合体が作る映像のイメージは、惑星。
   チキューだって外から見たらこれくらい綺麗なんだよ? 感動した?」

岡部「………フフ、フ、」

鈴羽「?」

岡部「フゥーーーーハハハハハハ!!! なるほど、ついにこの俺のリーディング・シュタイナーが世界を牛耳る日がきたのだぁぁぁああl」

鈴羽「……???」

岡部「ご苦労であった、バイト戦士よ。我らラボメンの悲願をこうも早く達成することになろうとは……」

鈴羽「……ねえ、岡部倫太郎?」

岡部「ククク……、Xデイはついにやってきたのだ……!! この鳳凰院凶真の真価を発揮するときが、ついに……!!」

鈴羽「……あちゃー、これが父さんの言ってたビョーキってやつか……」

岡部「さぁぁぁてヴァアアアアイト戦士よ!!! 今宵、我ら二人で歴史をつくろうではないかッ!!」

鈴羽「うん、つくるよ」

岡部「えっ」

鈴羽「歴史を、かえなきゃいけないんだよね」

岡部「そう来たか」

鈴羽「といっても、今度は単一事象じゃないから大変なんだよ」

岡部「たん……たんいつ事象?」

鈴羽「んーーー。簡単にいうとね。毛糸の星って言ったでしょ? そこに起きた“ほころび”みたいのを治さなきゃいけないわけ」

岡部「ほ、ころ……び……?」

鈴羽「概念で説明するのって難しいなあ。とにかく! 岡部倫太郎はあたしとセットで世界線を越えてもらうよ」

岡部「だからそれがなんで俺なんだ!?」

鈴羽「……、もおー、それ聞くかなー」

岡部「???」

鈴羽「女の子にそういうこと聞いちゃだめって、母さんが言ってたんだけどなー」

岡部「おい待てバイト戦士」

鈴羽「あたしはバイト戦士じゃなくて鈴羽だってば。何回も言われてない?」

岡部「うぐ……」

鈴羽「だいたいさー、こーんな狭い部屋で女の子と二人なわけだよ?」

岡部「……え?」

鈴羽「……なるほど、これは牧瀬紅莉栖も手を焼くなぁ」

岡部「???? さっきから何だ?」

鈴羽「なんでもないー」

鈴羽「……とにかくそういうわけで、跳ぶよ」

岡部「もう跳んでるだろうが」

鈴羽「あーそうなんだけど。で、ルールが二つあるから、これだけは覚えておいてね」

岡部「ルール?」

鈴羽「そう。時間の超越者が守るべきルール。神様にバレないための鉄則」

岡部「よくわからんが、わかった」

鈴羽「オーキードーキー?」

岡部「オーキードーキー」

岡部(ここらへんは変わらないな……)

鈴羽「ルールそのいち! 『あたしたちのどちらかが死亡したら、ゲームオーバー』」。
    だから死んだらダメ」

岡部「それはまあ、当たり前といえば当たり前だな。お前が死ぬ時点でそんな世界線はいらん」

鈴羽「え」

岡部「……あ。へ、変に解釈するんじゃない! 次だ次!」

鈴羽「ー? えっと、これは別に気持ちの問題じゃなくて、タイムトラベルをしている人間が死んだ場合のバタフライエフェクトがすごいからなの。
   毛糸がぐちゃぐちゃになっちゃうから」

岡部「感覚的にはわかるな」

鈴羽「ルールそのに。『どちらかが死んだ、と錯覚してもダメ』」

岡部「……? 実際は死んでいないんだろう?」

鈴羽「んー、わっかんないかなあ。岡部倫太郎、ついこの間それやったでしょ?」

岡部「……え? ………あ」

鈴羽「そう。牧瀬紅莉栖を救うとき。錯覚は世界線を越える手段なんだけど、この場合はダメ」

岡部「理由はあるのか?」

鈴羽「さっきのと同じ理由。観測者たるあたしたちには、いかなる時間、空間の超越が許されているけど、あたしと君の存在は相互に連動しているんだよ。
   この連動性を保たないと、毛糸の星がコナゴナになっちゃう」

岡部「それもバタフライエフェクトか……」

鈴羽「そういうこと。この前のはあたしが指示してたはずだから(といっても不慮の事態が起きてたけど)、影響は最小限に抑えられていた。
    でも、あれって本当はすっごくリスキーなんだよ。ピンポイントで帳尻が合う様な行動をしないといけないから」

岡部「うむむむ、こういうときは助手がほしいな……、頭が混乱して……」

鈴羽「………」

岡部「……ん? どした」

鈴羽「べっつにー」

鈴羽「以上二つが観測者のルール。えっと、ルールに一応名前はあるんだけど……」

岡部「名前? 何だ?」

鈴羽「……いいや。混乱しそうだからとりあえずはこれで覚えておいて」

岡部「すでに混乱しかけているが……」

鈴羽「でね、さっきのバッジなんだけど」

岡部「ぐおっ!? 知らん、知らんぞ!! 俺はあの手のファンシーものは身に着けない主義だっ」

鈴羽(さっきこっそりポケットに入れたけど)

鈴羽「んーと、あれはお互いの生存確認ができる目印なんだよ。
   時間軸とリンクしていてね、どちらかが危なくなるとコールがかかるんだ」

岡部「ほ、ほお………?」

鈴羽「たとえば、行動によってきっかけが与えられるよね? 
    その結果として、あたしたち二人にとって“都合の悪い”時間が形成されると鳴る」

岡部「……ふ、ふむ……」

鈴羽「だから例えば……」

鈴羽「えい」

岡部「どおおっ!?!? な、ななな」

鈴羽「今から君を殺すね。さよなら。バイバイ」

岡部「ちょおおおおおお!? け、拳銃はよせ!!! ま、まままま待て!? 俺は別にやましいことは……ッ!?」

鈴羽「ばーん」パンッ

岡部「お……ぐ………、く、クソ……この鳳凰院凶真がこんなところで……ぐふ……」

鈴羽「なんちゃって」

岡部「そうだ……なんちゃってだ……って、ん?」

鈴羽「ほら、鳴ってる」ピリリリリリリ

岡部「……ど、どういうことだ……?」

鈴羽「君が死んだと思い込んだら、結果的にあたしがいなくなることになるから」

岡部「……kれもカオス理論の派生か。すごいな、その装置」

鈴羽「父さんが作ったんだから、当たり前でしょ? えっへん」

岡部(……ダルのやつ、この腕をなぜラボで発揮できん…)

鈴羽「そういうわけで、そういうわけ」

岡部「なるほどな」

鈴羽「わかった? “気持ち”で毛糸は変わってしまうの。今のだって、タイミングをミスって君が死んだと錯覚しきってたら、危ないんだけど。
    だから……」

岡部「?」

鈴羽「何があっても、諦めないでね。約束だよ?」

岡部「う、うむ………?」

岡部(鈴羽のやつ……さっきの目は本気と書いてマジだったぞ)

岡部(薄々感づいてはいたが……こいつSっ気があるんじゃないか?)

岡部(っと、それよりもバッジ……ぐぬぬ、ああ言った手前つけられん……!!)

鈴羽「でも、岡部倫太郎ってなんだか頼りないし、うーん。あたしが見ていればいっか」

岡部「ぐぬ……」

鈴羽「あーあ! 父さんに無理言って天使の羽にしてもらったのになー! 片方ずつなのになー!」

岡部「ぐぬ、ぬぬぬぬ……」

岡部「ま、まあ気分が向いたら、つけてやらんでもない」

鈴羽(いつ気づくのやら……先が思いやられるなあ)


鈴羽「そんなかんじで余興は終わり。着いたよ、外でよう?」

岡部「だからせっかちすぎると言っておろうに!!!! じゅ、順序を決めてから行動しないか!!」

鈴羽「ごめん、父さんにもよく言われるなーそれ。ってわけで、日本の中心地についたよ」

岡部「む。それはつまり……東京か?」

鈴羽「東京は君の時間軸から日本の首都でしょ。そりゃ東京なんだけど、どこだと思う?」

岡部「ん? すると……新宿とかあっちのリア充AREAか? もしかして変わったのか?」

鈴羽「変わったっていうか、うーん。まあ、見てみればわかるよ。はい降りた降りた」

岡部「おおおおおおすな!! バッジが鳴るぞ!! くそ、他のラボメンは俺を放っておいて何をしているのだ!!」

鈴羽「そんなにヤワにはできてませーん。平気だって、みんなにはすぐ会えるよ

岡部「何?」


鈴羽「ここ、秋葉原だから」


岡部「………は?」

鈴羽「……西暦2011年のこの世界線。

             日本の中心街は―――秋葉原だよ」

ご飯たべてきます。
キャラについてなんか批評あったらください。
一時から続きやります。最後までいけるようにがんばります

                /\___/\
               / ⌒   ⌒ ::: \
                  |  (●), 、(●)、│
                  |  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |  < 道路標識です
     _,,,r-- 、       |   ト‐=‐ァ'  .::::|     ,,,.....-‐-、
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┃   /└───‐--、r─────┘\  | フンッ!   | ┃
┃   \┌──―‐┐  r‐―┬┬─┐/  .|uwa nandakorel ┃
┃.          「 フ |  |   ││.  ´ .、    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ┃
┃ まっちょしぃ .レ、.\|  |   │└──┘\           ┃
┃  macho     \   |   │┌──┐/   SERN     ┃
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┃                2.8yr                     ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


――A.D.2011年 “首都”秋葉原の世界線――

鈴羽「うーーん、いい天気!」

岡部「っておいバイト戦士よ。こんな場所にマシンを置いていいのか?!」

鈴羽「大丈夫だって。ちょっとした光学迷彩はいってて、あたしたち以外には見えないから」

岡部「げ、原理はどうなってるんだ……?? まさか“機関”の……!?」

鈴羽「んー、説明は後あと! ほら、行くよ」

岡部「まぁーたそうやってお前はごまかして……、ん? 行くってどこに?」

鈴羽「この国の中枢に、だよ」

岡部「……秋葉原の……中枢?」

鈴羽「そういうこと」


岡部「待て待て待て。また展開が急だな。そもそも俺はここで何を……」

鈴羽「説明するより見てもらった方が早いんだもん。御託はおいといて、岡部倫太郎。ちょっと運ばれてくれるかな?」

岡部「えっ」

鈴羽「ごめんね。でも、死んじゃうわけじゃないから安心して。……スゥーーーー。よーし」

岡部「な、なぜお前は空手の正拳突きの構えをとっている……?」

鈴羽「……やぁーーーーーーーーーーーーッ!!!」ボコォッ

岡部「ぐっ……ふ……ッ!?」

岡部(なんなんだ……、わけがわからん……)

岡部(これも運命石の選択なのか……エル・プサイ……)

鈴羽「エル・プサイ・コングルゥ。後でね、オカリンおじさん」

岡部(だからその呼び名はやめろって……)

岡部(………)

岡部(……)

岡部()


岡部()

岡部(……)

岡部(…………………)

岡部「……ぐ………、……ん?」

鈴羽「………ようやくお目覚め?」

岡部「鈴……羽……? ん………―――ッ!」

岡部「き、ききききき貴様っ! なんてことをしたんだ!! し、死んじゃったらどうするんだおいこらっ!! ってあたた……」

鈴羽「……みぞおちに一発いれただけじゃん。そんな簡単に人は死なないよ」

岡部「そ、そーゆー問題ではなかろうがっ!! 打ち所とかあるだろうがっ!!」

鈴羽「いいんじゃないのー。なーんか楽しそうな夢見てるみたいだったし。ふーん」

岡部「夢も希望もあるかっ!! だいたいお前は………ん」

岡部(なんかこのバイト戦士、怒ってる? なぜ? Why?)

鈴羽(さっきの分さっきの分さっきの分さっきの分……)

岡部「あのー……バイト戦士よ」

鈴羽「す・ず・は!」キッ

岡部「ひいっ!? す、鈴羽よ、この状況で怒るのはどう考えても俺の方だと思うのだが……」

鈴羽「なんで? どうして? 理由を言ってみてより・ゆ・う・を!」

岡部「おおおおお怒るんじゃない、鈴羽よよよよよ、落ち着け、落ち着け!」

鈴羽「別に怒ってないもん」

岡部(明らかにスネているではないか!! なんだ……? 何したんだ俺……?)

鈴羽「そりゃあ、まあ……牧瀬紅莉栖は確かに美人だけどさぁ……あたしだってそれなりに……」ブツブツ

岡部「おい」

鈴羽「へ!? あ、な、なんでもないよ! ……寝言言ってたの! 岡部倫太郎が!」

岡部「俺が寝言……? それがどう関係するんだ……?」

鈴羽「…………。わっかんないならいいよ。ばーか」

岡部「……ばっ……!!」

岡部(こいつどんどん口が悪くなってないか!? どうなってるんだダル!! ちゃんと教育しろ!!)

だーりんやってないけどネタバレある?


岡部「で、ここはどこだ?」

鈴羽「総理官邸」

岡部「……そうか、官邸か……。ってなにぃぃいいいいいいいいいいい!?!?」

鈴羽「しっ!! 声が大きい!!」

岡部「むぐむが!」

鈴羽「静かにして。離れちゃだめだよ。……もう、これだから。岡部倫太郎が素人じゃなかったら気絶なんかさせなくてもよかったのに」

岡部(む、胸があたって……)

鈴羽「あたしと君は今連動してるの。まったく、これじゃあ何のために警備のスキを縫って移動してたんだか。
    比翼連理って聞いたことない? 運命共同体ってやつ。だからうかつな行動は控えて」

岡部「むぐむぐ」コクリコクリ

鈴羽「わかったら、下を見て。音はたてないでね」

岡部「……ぷはっ。お、お前ってやつはほほほ本当に……」

鈴羽「いいから、下」

岡部「はいわかりました」

>>87
だーりんとは別世界のお話ですが、一部設定を出してしまうかもしれません。ご了承ください。


岡部「………!? フェイリス……!?」

鈴羽「うん」

岡部「も、もしや……ついに日本の総理大臣に……」

鈴羽「さすがにそこまではいってないよ。国土交通省の大臣だね」

岡部「だ、大臣だぁぁっ!?」

鈴羽「静かにしてってば」

岡部「おっとそうだった……。ふう、いかんな、この右手がうずいて……」

鈴羽「秋葉留未穂は日本人としては異例のスピードで国立大学を卒業、官僚試験に合格後、大臣までさらに飛び級で着任した」

岡部「(華麗にスルーしやがった)……、それは本当か? バカな、ここは2011年といったはずだ。
    あいつはまだ学生のはず! 確かに頭の回転は早いが……」

岡部(あの歳で大臣なんてどの国でも聞いたことないぞ? コネか? いや、にしてもありえん……)

鈴羽「コネと運と実力だけじゃたどり着けない場所だね。まあ、あたしたちもだけど……」

岡部「……! これも、バタフライエフェクト……」

鈴羽「ご名答」

鈴羽「日本の統治機構が変動したのはこの世界線―――仮に『Σ世界線』とするけど―――の2000年に入って間もない頃。
    大きな技術革新があったの」

岡部「Dメール、およびタイムリープマシンの発明か」

鈴羽「あ、冴えてきた? その通り。発明したのはもちろんラボメンのみんな」

岡部「……たしかに、秋葉原は俺たちの世界線においても、土地としてのバリューはあった。
    技術革新によって導かれた結末が、ディストピアでなくユートピアだったということか……」

鈴羽「発明したのは当時まだ小学生だった少年グループ。
   彼らはタイムマシンをめぐって“機関”であるSERNと一進一退の戦いをくりひろげ、そして」



鈴羽「勝ち取った。この未来を」




岡部「うむ、さすが我がラボのメンバーたちだな。めでたしめでたしではないか」

鈴羽「……それはどうかな」

岡部「ん?」

鈴羽「よーし、次は別の人に会いにいくよ」

岡部「なにっ」

岡部「おい待て鈴羽。せっかく来たんだから挨拶くらいはしていかないのか?
   もしや、バタフライエフェクトの関係で面倒なことになるのか?」

鈴羽「んー。いや、その点は多分会っても平気だけど……、別の意味で面倒になるかもよ?」

岡部「どういう意味だそれは。説明をしろ説明を」

鈴羽「まあ、多分平気か。あーでも秋葉留未穂はなぁ……目が肥えてるから……」ブツブツ

岡部「まーたブツブツいいおって。そういうことは包み隠さず俺にも共有させどわあああああああああああああああああああああああああああ」

鈴羽「んじゃ、適当にいってらっしゃい!」

岡部「俺を落とすなあああああああああああああああああああああああああああああああ」


岡部「おおおおおわっ!?!?」

フェイリス(仮)「―――!? うニャッ!?」

岡部「あ」

岡部(……っ!!! い、いかんいかんいかんいかん!!!)

岡部(すっ鈴羽の大馬鹿者!! こっこの時間軸の俺が何をしているか教えてもらってなかった!!!)

岡部(いや、それ以前に首相官邸に潜入して上から降ってきたなんぞどんな立場であろうがありえん!! ま、まずい……)

岡部「あ、ふぇ、フェイリス……、あはは……いやー……ひさしぶ」

フェイリス(仮)「……っ!」

フェイリス(仮)「誰……ニャン?」

岡部「えっ」

岡部(相変わらず語尾はそれなのか……って違う!!)

岡部「俺を……知らないのか?」


岡部(……の割りには落ち着いているな……)

岡部「なあ、フェイリス、えーーっと」

岡部(どこから説明すればいいのやら……)

フェイリス(仮)「留未穂」

岡部「へ?」

留未穂「私の名前は、秋葉留未穂だよ。どうしてその名前を知ってるの?」

岡部「う。それは、だな……。俺が……」

留未穂「―――どうやってここに入ってきたの? あなたは誰? 目的は? 手段は?」

岡部「ぐぬ………!」

岡部(な、なんという圧力だ!! 動けん!! まさか、これがヤツの魔眼の力……!?)

留未穂「でも、悪い人じゃなさそうだね。名前は……?」

岡部「そ、そうだ!! 俺は悪い人ではないぞ!! きょ、狂喜のマァァーーッドサイエンティストだ!
    フゥーーーーーハハハハ!!!」

留未穂「!!!!! きょ、凶真……?」

岡部「ハハハハハハハ! ……え?」

岡部「お前、やっぱり俺を覚えて……」

留未穂「っ!! そんなわけない!!」

岡部「へ?」

留未穂「誰かーーーーー!!! 警備員っ!!

ヂリリリリリリリリリリ

岡部「おおっ!? な、なんだ!?」

鈴羽「伏せて!!」

岡部「っ!?」

留未穂「こ、今度は誰……!? あっ―――」

鈴羽「ここらへんが潮時だよ。行こう、岡部倫太郎。挨拶は済んだでしょ?」

岡部「げほげほ、なんだこれは……煙幕?」

鈴羽「よいしょっと。じゃあね、秋葉留未穂。またどこかの世界線で」

留未穂「……今度は誰? うっ……」

鈴羽「ガスマスク一個しかないや。ごめん、また寝ててもらえるかな」

岡部「ぐ………」

おまえを見ているぞ


岡部「……う」

岡部「また……気絶か……」

鈴羽「人聞きの悪いこと言わないでよ。今度のは眠らせただけだってば」

岡部「ここは?」

鈴羽「とりあえずはタイムマシンの中。官邸は今頃大騒ぎじゃないかな。あはは、君ってばほんとにトラブルメイカーだねー」

岡部「……どうなってる」

鈴羽「え?」

岡部「ようやく目が冴えてきた。この世界線は何かがおかしい。そうだろう」

鈴羽「……」

岡部「フェイリスの性格については環境のせいだろうが……、俺は何をしてる。この世界線で俺たちに何があった?」

鈴羽「……それは……」

岡部「ええい、まどろっこしい!! 状況を説明してもらわないことには、もう一歩も動かんぞ」

鈴羽「……うーん………」

岡部「ここはΣ世界線と言ったな。俺がまだ訪れたことのない『毛糸』のはずだ。
    少しくらいのことでは驚かん」

鈴羽「どうしよっかなあ……、順番ってものがあるし……」

岡部「それともなんだ? 上から口止めされてるのか? “機関”の連中はそんなにうるさいのか?
    ええい、そいつらを出せ!! この鳳凰院凶真が一言、文句いってくれる!」

鈴羽「はー。マニュアル通りにはいかないもんだなあ。わかったよ、全部説明するよ」

岡部「全部というのは本当に全部なんだろうな? バイト戦士よ」

鈴羽「すーずーはー。……もう。全部は厳しいけど、岡部倫太郎がほしがってる情報はあげるよ。
    本当はもっと色々この街を廻ってから教えようと思ってたんだけどなあ」

岡部「そのやり方がまどろっこしい」

鈴羽「オーケー。ちゃんと説明する。……その前にもう一度だけ、タイムトラベルしていい?」

岡部「何?」

鈴羽「次で最後。向かうのは―――Ω世界線」


岡部「おめが?」

鈴羽「仮称だよ。区別、つかなくなっちゃうから。ついたらちゃんと説明する」

岡部「ふーーーーーむ」

鈴羽「な、何?」

岡部「鈴羽よ……、お前もなかなかネーミングセンスがあるといえる」

鈴羽「………へ?」

岡部「ククク……やはりラボメンたるもの表記にはこだわらなくてはな……。
   オメガ……ッ!! すばらしい響きではないかッ!!」

鈴羽「………」

鈴羽「……父さん、ほんとにこの人なの?」ボソ

岡部「フゥーーーーーハハハハハハハハハ!!!」


――A.D.2011 Ω世界線:秋葉原――

鈴羽「よし、到着」

岡部「……なあ、鈴羽よ」

鈴羽「なあにー?」

岡部「このマシンってすごいんだな」

鈴羽「え? どこが? どこらへんが?」

岡部「いや、小型なのに日常生活のほぼすべてができるように改良されている。
    スペースについて、若干狭いのが気になるが……」

鈴羽「何かあったときに、姿を隠せるところが必要になるからね。この中で、一週間くらいだったら生活できるようになってるよ」

岡部「以前のタイムマシンは過去未来に行き来するだけでもギリギリだったようだが……進歩したんだな」

鈴羽「有用なエネルギーが見つかったんだよ。奇跡みたいな確率らしいんだけど……、父さんが言ってた」

岡部「ほう」

岡部「ところで、聞きたいことがあるのだが」

鈴羽「ん。さっきのとは別件?」

岡部「いや、微妙にかすめているな。大きくわけて二つだ。まず一つ。お前はどの世界線のどの軸から来たんだ」

鈴羽「……んー」

岡部「2036年のβ世界線か? たしかβ世界線だと第三次世界大戦を回避したはずの……」

鈴羽「えっと、それは……秘密」

岡部「え? 秘密?」

鈴羽「ウン」

岡部「なぜだ?」

鈴羽「………なんでも」


岡部「なぜだ! それくらいいいではないか! 何の不都合がある」

鈴羽「~~っ! いいの! それで? もう一つは?」

岡部(意図的に質問をズラしているな……)

岡部「あー、もう一つは世界線の解釈についてだ」

鈴羽「それはさっき話したじゃん」

岡部「確かに話した。これは科学者としての純粋な好奇心からだ」

鈴羽「?」

岡部「お前はさきほど、タイムトラベルのことを次元超越と言ったな」

鈴羽「うん」


岡部「矛盾している」

鈴羽「ええっ? どこが?」

岡部「以前お前が俺の元に現れたときに語っていた理論とは別種だ。世界線は無限に存在するが、収束は一箇所に限ると言っていたはずだ。
    つまり、あのときのお前は同時多世界の存在を否定していた。パラレルワールドの存在ってやつをだ」

鈴羽「あー、うん、そうかも(知らないけど)」

岡部「だが、このタイムトラベルマシンの性質を見るに、明らかに同時に存在する世界線を移動しているではないか。
    さきほど映像でも見た。これはパラレルワールドの存在に他ならない。そうだろ」

鈴羽「……説明してもいいけど、長いよ?」

岡部「構わん」

鈴羽「あーもう……時間ないのに。いや、あるけど……」

岡部「?」

鈴羽「……あれはね、方便だよ。そういわないと、ダメな理由があったの。えっと、簡単にいうと、なんだろう」

鈴羽「観測者の不在」

岡部「何……?」

休憩します。
長丁場なので暇なときに読んでください。ぱんつはまだ脱がなくて大丈夫です。



④___/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /

  ( ´,_ゝ`)           (゚д゚ )  来たの!?  
    .r   ヾ    ガタッ     .r   ヾ   ガタッ
  __|_| / ̄ ̄ ̄/ _____|_| / ̄ ̄ ̄/_

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    ( ´,_ゝ`) 来てない     ( ゚д゚)  そう  
    .r   ヾ            .r   ヾ
  __|_| / ̄ ̄ ̄/ _____|_| / ̄ ̄ ̄/_

    \/    /          \/    /


鈴羽「つまり、観測者である岡部倫太郎が認知しているのかどうかっていうのが、最大の争点だったんだよ」

岡部「俺が? 認知?」

鈴羽「そう。あたしは君の前に以前現れたジョン・タイターとは別人だから、どう説明してたか細かくは知らないんだけど……。
    パラレルワールドの存在はありえないって言ってたんだよね?」

岡部「うむ。確かにそうだった」

鈴羽「このΩ世界線と、さっきのΣ世界線は、惑星で考えたら丁度君たちのいた世界線の反対側に位置してるんだ。
    こちらの世界線のほとんどが、パラレルワールドの存在を容認している」

岡部「根拠は?」

鈴羽「見てくれた通り、結果ありき。岡部倫太郎が持つ、『リーディング・シュタイナー』をもってして、
   “世界を観測すること”によって、時間軸は多世界的に存在しえる」

岡部「……うーむ」

鈴羽「納得できない?」

岡部「まったく」

_ / ̄ ̄ ̄/
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  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
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   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


鈴羽「仮説だけど……。君のリーディング・シュタイナー(以下RS)は、比喩的にだけど、
    世界を形成しうる力なんじゃないかって学説があるんだ」

岡部「学説? なんだ、そんな大事になってるのか?」

鈴羽「まあ、有名人だよ。その力も」

岡部「フッ……この俺のチカラに気づくのが遅い……」

鈴羽「つまりね、君がタイムトラベルをして、事象を観測した瞬間に“その光景”は現実になるんだ。
    これってすごいことだよ」

岡部「ハハハハ、褒めるな褒めるな、かゆいかゆい」

鈴羽「問題は他にもいろいろあるんだけど……、とにかく、この時代において君が『時間の超越者』たるゆえんは、それ」

岡部「『時間の超越者』……だと……?」

鈴羽「だからパラレルに世界線の移動ができる。さらにそれぞれの世界線を観測、することができるの。
    ……ただ、RSについては研究が進んでるけど、この世界の構成についてはまだ仮説しかないんだよね。
    さっきのもイメージって言ったでしょ。それはそういうこと」

岡部「……ふむ」


鈴羽「多分、そっちの世界線ではRSについての研究が進んでないんじゃないかな」

岡部「なるほど。毛糸の星の表と裏側で、技術について差があるというわけか」

鈴羽「というか、距離が離れてれば離れてるほど、世界が乖離してるってことなんだけどね」

岡部「ふむ。……解釈については一応のところ、納得した」

鈴羽「………」

岡部「ん? どうした?」

鈴羽「いや、なんでもない」

岡部「……さて、次は本題に入っていこうか。
    この世界線……Ω世界線とΣ世界線に俺を連れてきた理由はなんだ? いったい何が起こっている?」

鈴羽「螺旋みたいに、からまってる」

岡部「そうか……螺旋か………。はい?」


鈴羽「外、出よっか」

岡部「む。まあ、いいだろう。この世界線の秋葉原には興味がある」

鈴羽「あ、マスクつけて! ここ、下だから」

岡部「した?」

鈴羽「はい、ガスマスク。出たらわかるよ」

岡部「う、うむ」

鈴羽「あっ」

岡部「へっ?」


鈴羽「……そ、それ、あたしのだった……かえして」

岡部「む? このガスマスクがか? しかし見た目もサイズも一緒だろう」

鈴羽「……右側にうーぱーのマークがついてる」

岡部「ん? おお、確かに。だが、それだけで用途は特に変わら」

鈴羽「い、いーから! 岡部倫太郎はこっち! はい!」

岡部「お、おおう……?」

鈴羽「……ま、間違えると困るから、あとで名前かいておいて」

岡部(何をこいつは慌てている?)

鈴羽「……な、なんだよぉー、ジロジロ見るなよぉー」

岡部「いや……まぁ、いいんだが……」

間にすいません。
VIPの長編SSってどれくらいで完結するんですかね?
期間とか、レス数とか


鈴羽「よし、これで外に出られるね」シュコー

岡部「このガスマスクについてはつっこまなくていいんだな」シュコー

鈴羽「うん。大丈夫、“上”にいったら外せるから」シュコー

岡部「さっきから上だの下だのわけがわからん」シュコー

鈴羽「―――出るよ。せーのっ」

岡部「……くっ……! ………!? ここは………」

鈴羽「これが、Ω世界線の秋葉原だよ」シュコー

岡部「…………なっ………?」


岡部「ひどい。まず、埃であまり前が見えん。今は何時だ? なぜこんなに暗い?」シュコー

鈴羽「さっきと時間軸は合わせてあるから、真っ昼間だよ」シュコー

岡部「何がどうなってこうなったんだ?」

鈴羽「秋葉原が二分割されてるの、この世界線」

岡部「に、二分割?」

鈴羽「そう。それが、上の世界と下の世界。貧富の差が生んだ悲劇だね」

岡部「悲劇だねってお前……。じゃあ、ここは要するにスラム街みたいなところなのか?」

鈴羽「うん」

岡部「…………」


岡部「Σ世界線と場所も日付も同じなんだろう? それにしたってここまで変わるものか……」

鈴羽「変わるんだよ。世界線はあっという間に変動する。それは岡部倫太郎が一番よく知ってるはずだよ」

岡部「にしてもだな……」


ウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


鈴羽「あっ」

岡部「!? 何の音だ?」

鈴羽「やっばー、見つかった!! 走って!! 九時の方向!!!」

岡部「どどどっどどっちだそれは!?」

鈴羽「あーもう面倒くさいなあ! あたしに捕まって! おんぶする!」

岡部「え?! おんぶ!? いや、お前この歳でおんぶはさすがに……」

鈴羽「うるさいっ!」バキィ

岡部「おぶっ!?」


鈴羽「どいたどいたぁー!!! やぁぁーーーーーーーーーーー!!!」

岡部(な、俺をかついだまま戦闘するのか!?)

鈴羽「あちょおーーーーーーーーーーー!!!」

岡部(さすがはバイト戦士……この俺の懐刀……って違う)

岡部「おい鈴羽、わかったぞ!」

鈴羽「なにがー!? おっりゃあーーーーーーーーーーー!!!」

岡部「(正直話しかけていいのかわからんが)このカオスな世界線を変えるんだな! 俺たちの目的は!」

鈴羽「どういうことーーー!? たぁぁーーーーーーーー!!」

岡部「Σ世界線に移行すればいいんだろ? Ω世界線を!! なるほど、ようやくつながった!!」

鈴羽「違う」

岡部「何?」


鈴羽「う。やばいかも」

岡部「な、何? って……」

鈴羽「囲まれちゃった。あは」

岡部「あは、じゃない!!! どうするんだこれ!! ゲ、ゲームオーバーか?」

鈴羽「(とりあえず、口合わせて)」ヒソヒソ

岡部「(ええっ? い、いきなりか?)」ヒソヒソ

鈴羽「(簡単にいうとこいつら、レジスタンス組織。身なりが裕福そうだととりあえず襲ってくるんだ)」ヒソヒソ

岡部「(かっ、簡単に言いすぎだっ!)」ヒソヒソ

鈴羽「あーー。コホン。……この集団のリーダーは誰だ?」

レジスタンス「ここにはいない。投稿しろ。お前ら上の人間だな」

鈴羽「ああ、あたしはそうだ。こいつはさきほど拘束したお前らの同胞だが?」

レジスタンス「信じる根拠はない」

鈴羽「RS」

レジスタンス「―――っ!」


鈴羽「顔色が変わったな。お前らにとってもぞんざいに扱っていい品じゃない」

レジスタンス「……ち。だが、お前は逃がさんぞ」

鈴羽「さーてとー……」

レジスタンス「動くな。妙なマネをしたら射殺する」

鈴羽「何もしやしない。迎えが来るのを待ってるだけだ」

レジスタンス「何……?」




ババババババババッ




?「乗って!!!」

鈴羽「んもー、おっそいよ! それでもラボメンのリーダーなわけ?」

紅莉栖「う、うっさいわね!! こちとら急にヘリ出せって言われてテンパってんの!」

岡部「……クリスティーナ?」


鈴羽「というわけで、ばいばーい! またね、レジスタンスのみなさーん!」

岡部「っておおおおおおおおおおおおおおおおい!!!! お、俺は!? 俺は!?」

岡部「……ん?」ピピピ


――――――――
from Suzuha.A
――――――――

ごめん、失敗した。
あとで合流しよ。
とりあえず、
拘束されてて

だーりんへ☆
________



岡部「ってなんでメールじゃあああああああああああああああああああ!?!?」

紅莉栖「ちょっと、あの人はいいわけ?」

鈴羽「あ、なんか口裏合わせちゃったから、いいや。出して!」

岡部「裏切り者ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


――A.D.2011 Ω世界線:ヘリ機内――

鈴羽「ふー。ありがと、牧瀬紅莉栖。ちょーっと遅かったけど、助かったよ」

紅莉栖「一応限界まですっ飛ばしてきたんだけどー? まあ、無事で何よりね」

鈴羽「うーん、オカリンおじ……じゃなくて、岡部倫太郎は大丈夫かなぁー。
    下手にこちら側に入れるよりは、あっち側でチヤホヤされてもらったほうが安心なんだけど……」

紅莉栖「どうせあの厨二末期自称MAD(笑)サイエンティストなんでしょ? さっきの。
     だったら多分大丈夫。ああ見えて人当たりはよかったから」

鈴羽「………」ジーーー

紅莉栖「な、何………?」

鈴羽「ふーん。やっぱり詳しいんだ」

紅莉栖「へっ!? い、いや違うわよ、記憶の中ではーーーの話よ。実際はどうだか知らないってば」

鈴羽「なんだかなー」

紅莉栖「…………」


紅莉栖「―――で? 首尾はどうなわけ?」

鈴羽「おおむね順調。だけど、何があるかわかんない」

紅莉栖「ダイバージェンスメーターは?」

鈴羽「まだ大きくは動いてない。っていうことは、まだアイツの手中にいる。
   いい意味でも、悪い意味でもね」

紅莉栖「そっか………」

鈴羽「神様を騙すって、大変なんだね」

紅莉栖「私は経験ないから、なんともいえないけど……」

鈴羽「うん、大丈夫だよ。きっと元に戻してみせる。この世界線も、あの世界線も」

紅莉栖「……諦めたくなったら、いつ言ってもいいんだからね。私がいえた義理じゃないけど」

鈴羽「諦めないよ」

紅莉栖「………」


鈴羽「うーーん、だけど、うまいこと合流しないとなあ。どうしよ」

紅莉栖「とりあえずラボに戻るわよ。桐生さんが待ってるし」

鈴羽「えっ! 帰ってきたの!?」

紅莉栖「ついさっきだけどね」

鈴羽「よかったー! そこだけ気がかりだったんだ。そっかぁ、これでラボメンも四人にまで戻ったね」

紅莉栖「………でも」

鈴羽「うん、ここからだね。頑張ろう、牧瀬紅莉栖!」

紅莉栖「うん………」

鈴羽「あ」

紅莉栖「? どうしたの?」


鈴羽「大事なこと言うの忘れてた、あの人に」

紅莉栖「えっ。何を?」

鈴羽「やっばーーーーー。……おかしなことになったらどうしよ。……まあなんとかなるか」

紅莉栖「???」

鈴羽「あっはー、気にしないで! ほら、急いだ急いだ! いざ! 上の世界へ!」

紅莉栖「え、ええ……」
 
鈴羽(……ってゆーかさっきメール送ったのに返さないし! そりゃあんな状態だったけどさあ!)

鈴羽(初メールだったんだけどなあ。岡部倫太郎ってゼッタイ鈍い!)



紅莉栖「……孤独の、観測者」

鈴羽「へ?」

紅莉栖「ううん。なんでもない。上がるわよ」



――A.D.2011 Ω世界線:レジスタンスアジト――


岡部「ぐぬぬ……どうしてこの俺が拘束されにゃならんのだ……、おのれバイト戦士ェ……!!」

レジスタンス「黙って歩け」

岡部「あいたっ!! き、貴様ァ! この鳳凰院凶真に向かって何という口の効きか」

レジスタンス「別にここで殺してもいいんだぜ?」

岡部「はい歩きます」

岡部(……くっそーーー!! どうなってるんだここは!? 本当に秋葉原か!?)

岡部(完全に内乱状態のゲリラサバイバルゲーム状態ではないか!! ……ん? 内乱?)

岡部(さきほど鈴羽はこいつらをレジスタンス、と表現していたな)

岡部(となるとやはり秋葉原の内部で組織の分裂があったのか……?)

レジスタンス「ボス、失礼します」

?「どうぞー」

岡部「ん………?」


ダルらしき人物「ほほおーーー、これはたしかに」

岡部「ってダル!?!? な、何してるんだお前!?」

ダルらしき人物「おー、確かに声までオカリンに似てるお。完全に一致とまではいかないけど……」

岡部「お、おいダル。馬鹿なこと言ってないで早くこいつを……」

レジスタンス「ボス、どうやらこの男、『RS』を持っている可能性があるとか……」

ダル「RSを? どこ情報? それどこ情報よー?」

レジスタンス「わかりませんが、キーワードを知っているという時点で只者ではないと思われます」

ダル「ふーん。でも、うーん。どこか冴えないなあこいつ」

岡部「なっ……!?」

ダル「とりあえず、部屋に入れといて。拘束は解いても大丈夫っしょー」

レジスタンス「了解」

岡部(ダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われたダルに冴えないって言われた)

ご飯たべてきます。
なんとかこのスレで終わりたいですが、平気かな・・・・

ごめんなさい遅くなりました。
11時から投下します。本日は深夜までかかるのでご了承ください。


 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   来たか…
       / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f

      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +
     〈_} )   |

        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
――――――――――――



ダル「それでさー、上の奴らは調子どうだったわけ?」

レジスタンス「と言っても、今回は小娘と接触しただけなのですが……」

ダル「あー、最近入ったってやつ? すごい武闘派らしいねその子」

ダル「そりゃあ、取り逃がしちゃうよねー」

レジスタンス「す、すいません」

岡部(な、なんだこの風格は……ダルのくせに……!)

岡部「おいダル」

ダル「あ、まだいたの」

岡部「ずっとおるわ!!」


ダル「なーんだよオカリン似の男子。まだ何か?」

岡部「くっ……! 上の世界といったな! まさか、クリスティーナやバイト戦士と戦争でもするつもりか?」

ダル「もうしてるっつーの」

岡部「何?」

ダル「何人も人が死んで、勝ったほうが正義になる、そういうものだろ戦争ってjk」

岡部「なっ………」

ダル「そうじゃなかったら何なの? バカなの? 死ぬの?」

岡部「し、しかし相手はラボメンだぞ……、一緒に汗を流しただな……」

ダル「君ってどこの誰なわけ? オカリンのマネ正直うざいよね」

岡部「だから俺は―――ッ!」

岡部(く……言ってもいいのかがわからん……!! しかし……)


ダル「……RSを持ってるって本当?」

岡部「あ?! あ……ああ」

ダル「タイムワープできるの?」

岡部「う、うむ。タイムトラベルは経験している」

ダル「いや、それはそれ、これはこれ。タイムワープとタイムトラベルは違うから」

岡部「………?」

岡部(どういうことだ? 鈴羽は俺に嘘をついていたのか? いや、しかし……)

ダル「んー、どうも信用できないけど、どうも只者ではなさそうだよねー。
   とりあえずおとなしくしててくれる? こっちも騒ぎを立てたいわけじゃないんだよね」

岡部「……どうやら、その点においては利害が一致しているようだな」

ダル「そゆことー」



――A.D.2011 Ω世界線:レジスタンスアジト、捕虜室――


岡部(ふう)

岡部(なんだかやっと落ち着いた気がする)

岡部(上辺は変わっていても中身はやはりダルだな、話せばわかる)

岡部(しかし……)

岡部(どうも情報がごちゃごちゃしていて頭がすっきりせん)

岡部(Ω世界線……)

岡部(! そうだ、鈴羽に連絡を……)

岡部「……っと。携帯は取り上げられてなかったか」

岡部(随分ユルいな。それだけ重要視されていないってことか……)


岡部「……えーと」

岡部「とりあえず抑えておくべきポイントは……」

岡部(結局俺たちの目的についてはうやむやにされていたな)

岡部(……Σ世界線は平和なようだったし……、世界線の移動が目的じゃないのか?)

岡部(って、いや、待て)

岡部「……そうか、俺が移動しても意味がない」

岡部(毛糸の構造を知ってしまった以上、俺が移動したところで世界線は収束せず、こちらの世界は常に存在し続ける)

岡部(……え。それならば目的とは一体……)

岡部「……どうしろっていうんだ? ん?」

岡部(歴史をつくると言っていたが……、この世界線の歴史を改変するということか?)


岡部「とりあえず、とっつきで聞いてみるか」



――――――――
To Suzuha.A
――――――――

調子はどうだ?
この世界線で、
俺たちがすべきこと
を教えてくれ。
連絡待ってる

あとだーりんは
恥ずかしいから、
やめろ!

――――――――


岡部「これでよし、っと」

?「は、入ります」コンコン

岡部「? どうぞ?」


?「失礼します……」

岡部「うむ、食料ならそこに置いておくがい……!?」

岡部「!! ルカ子!?」

ルカ子「わぁ……本当に凶真さんにそっくりですね」

岡部「な、なにをしてるんだお前は……なぜメイド服だ?!」

ルカ子「っ!! へ、変ですか?? やっぱり普通の服のほうが……」

岡部(いや、変ではないむしろハマりすぎててびっくりしている)

岡部「あー、ルカ子よ。そこに座れ」

ルカ子「? は、はい……」


岡部「おっほん。ひさしぶりだな我が弟子よ」

ルカ子「えっ? ボク、あなたの弟子なんですか?」

岡部「ぐぬっ……い、いや、なんとなくな」

ルカ子「はぁ……」

岡部(う……設定が入りきってないとわかりにくい……。何をしておったのだこの世界線の俺は!)

岡部(……仮称を決める必要があるか)

岡部「あー、聞くがいいルカ子よ。我が名はジョン・キョーマー」

ルカ子「はい?」

岡部「ジョン・キョーマー!! 唯一無二の魔眼、『リーディング・シュタイナー』を有する……時間の超越者だ……ククク」

ルカ子「時間の……超越者?!」

岡部(おっ。いいかんじだ)


岡部「そうだ。数多の世界線を潜り抜ける神の代理人にして漂流者……、それがこのジョン・キョーマーの素性だ」

ルカ子「か、神の代理人……!!」

岡部「うむ」

ルカ子「す、すごい……、まさかキョーマーさんも『時間の超越者』だったなんて!」

岡部「うむうむ。……ん?」

岡部「俺“も”?」

ルカ子「あ、いえ……なんでもないです……」

岡部(気になるな。少し掘ってみるか。……いや、情報を。もう一度言うぞ、情報をだ)

岡部「それで、だ。この時代の背景がまだわからずにいるのだが……ルカ子よ」

ルカ子「は、はいっ」

岡部「いくつか聞きたいことがある」


岡部「現在、この秋葉原では二つの組織が対立しているな?」

ルカ子「……はい。ボクたちのレジスタンスと、旧ラボメンメンバーです」

岡部「旧ラボメン……だと?」

ルカ子「はい。上の世界は、牧瀬紅莉栖さんたちが率いる旧ラボメン―――現在は臨時政府を表明していますが―――が仕切っています」

岡部「発端はなんだ? なぜダルやお前がこちら側にいる?」

ルカ子「ボ、ボクは直接関わったわけじゃなくて……、そうですね、どこから説明したら……」

岡部「落ち着け、我が弟子よ。深呼吸だ」

ルカ子「は、はい……(いつ弟子になったんだろう)」

岡部(やはり助手とダルが仲違いしたのか? にしても……どうも腑に落ちないな)


ルカ子「タイムリープマシンやDメールを発明したのは、実質的には牧瀬さんとボスの二人です。
     ですが、どうもその権利を巡っていさかいがあったみたいで」

岡部(すると権利問題か? ますます腑に落ちん。そんなことでモメるような仲だったか?)

ルカ子「最初の発端はそれだったんです。でも、あまりにも注目されているうちに、両者のバックに勢力が結集していって……」

岡部「ふむふむ。よくある展開だな」

ルカ子「実質的な内乱状態になったんです。そんな中で牧瀬さんたち旧ラボメンは、日本政府との国交を重視するために、秋葉原を一時独立、
     自分たちの国の問題としてこの内乱を扱うことにしました。そして―――」

ルカ子「世界を二つにわけたんです。日のあたる場所と、日のあたらない場所」

岡部「それが上の世界と下の世界、というわけか……。というか、するとここはすでに日本の領土ではない?」

ルカ子「はい。独立した一個の国という扱いです」

岡部(それで治安が乱れていたのか……)

岡部(……助手にしては随分強行策を取ったな……。うーむ)

岡部「ルカ子はなぜここに?」


ルカ子「ボクは……えっと……」モジモジ

岡部「ん? どうした」

ルカ子「……えっと……その……」

岡部「?」

ルカ子「~~っ!! ほ、本当は女の子だっていうタイミングを逃して、気づいたら……うう……」

岡部「んなっ!?」

ルカ子「ボスが『男の娘ってこれから流行るっしょjk』とかなんとか言われて、でもいい出せなくて……」

岡部「おおおおおおおおおおおお前、女だったのか!!」

ルカ子「っ!!」

岡部(っていやいや、落ち着け俺。この世界線では、ってことだな)

岡部「す、すまん、忘れてくれ……」

ルカ子「………ぐす」

岡部(し、失敗した……傷つけてしまったか)


ルカ子「そうですよね……、ボク、女の子に見えないですよね……」

岡部「いやいやいや何を言う!! お前は立派な女の娘だぞ!!」

ルカ子「キョーマーさんまでそういうこというんですね……、う、ううううう」

岡部(いっ、いかん……!! 俺としたことがルカ子のデリケートな部分を刺激してしまったか!!(他意はない))

岡部「ル、ルカ子よ……安心しろ。お前はどこからどう見ても女だ。むしろ男であったほうがおかしい。
   うむ。それこそ非実在うんたらだ。ゲームとかだけの設定だ。うむ」

ルカ子「………本当、ですか?」

岡部「ああ、本当だ」

ルカ子「…………」


ルカ子「―――じゃあ、お願い聞いてください」

岡部「ああ! なんでも聞くz………おおっ!?」

ルカ子「キョーマーさんは、RSを持っているんですよね」

岡部「あ、ああ持っている……が……」

岡部(な、なぜ俺を押し倒す?)

ルカ子「本当ですか? ボク、嘘つきは嫌いですよ?」

岡部「な、なななななななぜ服を脱ぎだすすすすすす!?!?」

ルカ子「……ボクみたいな子、嫌いですか?」

岡部「おおおおおおおおおおおおおおおちょちょちょちょおまおまおまおま」

岡部(み、見えてしまう!!! くっそおおおお耐えろ、耐えるのだ鳳凰院凶真!!!!
    相手はルカ子だぞ!!! ……ん、でも今は女なのか……ってをおおおおおおおおい)

ルカ子「キョーマーさん……」

岡部「まっ待てルカ子!! 落ち着け!! 早まるな!!」


ピピピピピ……


岡部「……ん?」



――――――――
from Suzuha.A
――――――――

うわきもの

――――――――



岡部「すず……は?」

ルカ子「―――ッ!」

鈴羽「はァッ!!!」

ルカ子「くッ!」

岡部(な、どっから入ってきたんだこいつ!?)


鈴羽「お楽しみ中失礼ー! 漆原るか、見かけによらず積極的なんだねー」

ルカ子「どこから入ってきたんですか? すごいですね。警戒してたのに気づきませんでした」

鈴羽「こういう建物はね、どこか一箇所でもきしみや歪みがあったら簡単に潜入できちゃうんだよ。
    次から覚えておくといいよ? あ、でもオカネないんだっけ?」

ルカ子「ち……」

岡部「な、何がどうなってるんだ?」

鈴羽「RSについてあたしが触れちゃったからね。危ないところだったよ」

岡部「何?」

鈴羽「……どうする? 応援呼ぶ? それとも一対一でやる?」

ルカ子「………」

鈴羽「あー、こう見えてもあたし、そっちには武闘派で通ってるみたいだよ?」

ルカ子「く……盗聴器……!」

鈴羽「そ。橋田至の会話から何から、全部筒抜け」

ルカ子「………!!」


鈴羽「ってわけでばいばい、漆原るか。いくよ、岡部倫太郎」

岡部「ま、また逃亡か! しかし、今度はどこへ? 上の世界とやらか?」

鈴羽「ダイバージェンスメーターが変動してる……。ううん、今度はΣ世界線に戻るよ!」

岡部「……まったくお前は、行動が先に来るんだな。今度こそ教えてもらうぞ、洗いざらいだ!」

鈴羽「えへへ、それはオカリンおじさん譲りかも」

岡部「何?」

鈴羽「って、そんなことしてる場合じゃなかった! 行こう! 今度こそちゃんと話すから!」

ルカ子「逃がさない……っ!!」



タッタッタッタッ……


鈴羽「ううー追っ手が多いなあ」

岡部「す、すずひぁ……もうひょっとスピードを落とし……」

鈴羽「もう! だらしないんだから! またおんぶする?」

岡部「そ、そりはそりで……」

鈴羽「………まったく。漆原るかが気づいたらメイド服着てたとか、そんなの嘘にきまってるじゃん。
    君のRSを狙ってたんだよ」

岡部「俺のRSを?」

鈴羽「マシンに乗ったら、長くなるけど、目的をちゃんと話すね。Σ世界線とΩ世界線の関係についても。
    それから―――」



鈴羽「岡部倫太郎。君がすべての原因だってことも」



岡部「え」




岡部「俺が……?」



鈴羽「ああっ、だめだってば! 止まったら! 追いつかれるー!」

岡部「はっ! すまん!」

鈴羽「マシンに飛び込んだらすぐ跳ぶからね!」

岡部「うむ!」

鈴羽(バッジは鳴ってない……大丈夫はなず……)

岡部「鈴羽! 跳ぶぞ!!!!」

鈴羽「オーキードーキー!」


岡部「………」

鈴羽「………ふう。逃げ切ったみたいだね」

岡部「………ぐ……お、おも、重……」

鈴羽「あ。ごめーん。苦しかった?」

岡部「ぷはっ! 飛び込むって本当に飛び込む気だったのか! ひ、一言いえ!!」

鈴羽「だってー! そんな余裕なかったじゃん! 岡部倫太郎だって『跳ぶぞ』って言ってたし!」

岡部「ぐぬぬぬぬ」

鈴羽「うぬぬぬぬ」


岡部「……で、だ。いい加減吐いてもらうぞ」

鈴羽「うん、もう大丈夫。話せるよ」

岡部「話せる……だと?」

鈴羽「そう。ダイバージェンスの変動を感知したから。ついさっきの軸までは揺らぎが発生していたから話せなかったんだけど」

岡部「???」

鈴羽「あーひらったくいうと、バタフライエフェクト」

岡部「便利な言葉だな」

鈴羽「ホントだね」

この笑顔やばくね


鈴羽「どこから聞きたい? とっかかりがほしいな」

岡部「この世界線――Ω世界線の事情はルカ子の話でおおむね合っているのか?」

鈴羽「んー、合ってるけど、牧瀬紅莉栖は自分から強行策に出たわけじゃないよ。
    個人の意見ではどうしても押し切れない一論があって、
    仕方なくって感じだったみたい」

岡部「だったみたい……って、お前はここの世界の人間じゃないのか?」

鈴羽「っ! そ、それは関係ないよ」

岡部「へ?」

鈴羽「えっと、まあ細かいところ以外はその説明で合ってるよ
    そう、ここは独立した秋葉原の世界」

岡部「権力闘争の真っ只中ってわけだ」

鈴羽「うん。結果的には、ね」

>>418
やばい


鈴羽「そしてΣ世界線はΩ世界線とは対極的に、日本という国の中心地になった」

岡部「そしてどういうわけかフェイリスがそのさらに中枢に………」

岡部(………ん………? まさか)

岡部「なあ、もしかして他のやつらも中枢に関わってるのか?」

鈴羽「そうだね。Σ世界線において中枢に関わっているラボメンは三人。秋葉留未穂、牧瀬紅莉栖、とうさ……橋田至」

岡部「まゆりはいないのか」

鈴羽「………椎名まゆりは、勢力外だよ」

岡部「なん……だと……?」

鈴羽「色々あってね」

眠気がやばいので寝ます。
朝まで残ってたら続き書きます
落ちてたらSS速報いきます
お疲れさまでしたこれから本番なので楽しみにしていてください

おはようございます。
保守ありがとうございました。着替えて精神統一してから続き書きまぬるぽす


岡部「まゆりが勢力外? ま、まさかまた殺されたりしてるんじゃないだろうな?」

鈴羽「……ううん、ちゃんと生きてるよ」

岡部「ほっ。それならいい」

岡部(以前はあいつを助けるために無限とも思える時間を旅していたからな)

鈴羽「……Σ世界線が平和な国だと思ってる?」

岡部「えっ。違うのか」

鈴羽「あたしはあっちの世界線がユートピアだとは一言もいってないよ。
    ラボメンで中枢に関わっているのは三人って言ったよね?」

岡部「うむ……、あ」

鈴羽「残りのメンバーが何してるか、知らないでしょ」

岡部「たしかに」


鈴羽「Σ世界線は決してユートピアなんかじゃない。秋葉原と敵対している“機関”があるんだ」

岡部「……“機関”。SERNか?」

鈴羽「Σ世界線において、SERNはとっくに解体してるよ。現在、日本と敵対している“機関”のトップは……」

岡部「………??」

鈴羽「……、店長」

岡部「ミ、ミスターブラウンかっ!? あ、あんのおっさん凝りもせずにまた!!」

鈴羽「待ってよ。早とちりはよくないってば。別に君の命を狙っているわけじゃないんだから」

岡部「た、たしかにそうだが……」

岡部(あの光景が頭を過ぎって離れん……悪役のイメージだったからな……)


鈴羽「いい、岡部倫太郎。固定観念で敵と味方を区別しちゃだめだよ。
    あたしたちはこの世界線の外側の人間なんだから、目的に合わせて二つの組織をすり抜ける心得がないと」

岡部「多角スパイのようなものか。俺と、お前、二つでワンセットの」

鈴羽「そういうことだね。Ω世界線では君がレジスタンス側、あたしが臨時政府側の人間になったほうがやりやすかった。
    でも、Σ世界線ではおそらく“機関”側に接触したほうが何かと都合がいい」

岡部「なぜだ? その理由は? バックグラウンドについては共有できたが、核心についてはまだノータッチだぞ」

鈴羽「………」

岡部「ここで黙るのか? ダイバージェンスメーターの影響だとかいうんじゃないだろうな?」

鈴羽「………君は」

岡部「ん?」

鈴羽「それぞれの世界線で君が何をしているか、わかった?」

岡部「俺が……?」


岡部(たしかに……俺がどこで何をしているのかまったくわからなかったな)

岡部(Ω世界線については、おそらくどこかに存在しているような口ぶりだったが……)

岡部(Σ世界線についてはわからん。名前を出しただけで警備員を呼ばれたし……)

岡部(………フェイリスのあの言葉。『そんなわけがない』……だと?)

岡部「……推論になってしまうが」

岡部「……もしかしてもしかするんだが」

鈴羽「………」



岡部「―――俺、死んでるのか?」



鈴羽「半分正解で、半分ハズレ」

岡部「シュレティンガーだな」

鈴羽「あれ、詳しいの? 量子論」

岡部「かじっただけだ」


鈴羽「Σ世界線において、岡部倫太郎はタイムマシンを巡る一連の事件の中で死亡している」

岡部「……、他人事だが自分事というのも妙な気分だな」

鈴羽「岡部倫太郎の死をきっかけにして、Σ世界線の構造が決まったと言っても過言ではない。
    元ラボメンのうち牧瀬紅莉栖、秋葉留未穂、橋田至の三人は政府に残留する。
    一方、岡部倫太郎の意志を継いだとされる桐生萌郁、漆原るか、あと……店長も“機関”の人間」

岡部「? 俺の意志を継いだのが“機関”側なのか?」

鈴羽「そういうことになってる。でも、実際はわからない。あたしもね、さっきのΩ世界線については最近合流したんだけど、
    Σ世界線についての細かい探索はできてないんだ。さっき、“機関”側についたほうが都合がいいっていったのはm
    そういうこと」

岡部「なぁるほどな」

岡部(……だからフェイリスはあんなにびっくりしていたのか。まるで死人を見るような顔だったというわけだ)

岡部「しかし、それならΩ世界線の俺は何をしているのだ? やはり死んでいるのか?」

鈴羽「………」


鈴羽「Ω世界線の君は……生きているよ」

岡部「おおっ、やはり狂気のオメガ・サイエンティストとして世界を支配しているのだな? フゥーーーハハハハハ!!!」

鈴羽「よくわかったね。その通りだよ。あたしの口からは言いにくかったんだけど……」

岡部「そうだろうそうだろう!! クククク!! この鳳凰院凶真が……………………えっ」

鈴羽「あれ、あてずっぽうだったの?」

岡部「え………?」



鈴羽「Ω世界線において、君は『リーディング・シュタイナー』をタイム・ワープ理論の中核素材として理解し、
    時空を飛び回る『時間の超越者』として、暗躍している。
    観測史上、どの世界線においても、タイムリープでもなく、タイムトラベルでもなく、
    タイムワープを実現したのは岡部倫太郎、君ただ一人」



岡部「えっえっ」


岡部「そ、そそっそそそれはどういうことなのだ?」

鈴羽「簡単にいうと、黒幕だね。Ω世界線とΣ世界線は、さっきも言ったけど、お互いに干渉しあってるの。
    あちらの世界で一定のきっかけを与えると、即座に世界線を越えてこちらに影響が出る。
    本当ならこんなことはありえないんだけど……、二つの世界線がよじれて、螺旋みたいな構造になってる。
    おそらく、この状態の起点となったのが岡部倫太郎の死と、タイムワープ理論完成」

岡部「そっ、それだって俺が起点かどうかはわからないであろう?? ほら、バタフライエフェクトで……」

鈴羽「残念だけど、それはありえないんだ。岡部倫太郎が二つの世界線の特異点になっていることは間違いない。
    Σ世界線における君の死と、Ω世界線における岡部倫太郎の“覚醒”がぴったり重なるんだ。1000万分の1のズレもなくね」

岡部「…………」

鈴羽「世界線の特異点になった君の目的は不明。でも、どちらの世界線にも影響を及ぼしている。
    ダイバージェンスメーターを使って、この一連の事件を裏で操っているのは間違いない」

岡部「お、おーい鈴羽よ、ちょっと目が怖いぞ。そ、それではまるでこの俺が悪役みたいではないかっ」

鈴羽「何いってんの? 思いっきり敵だよ! 敵!」バキボキ

岡部(これは大変なことになった帰りたい)


岡部「整理しよう」

鈴羽「うん」

岡部「二つの世界線はそれぞれ、日本と機関、臨時政府とレジスタンスというように、異なる二つの組織が対立している」

鈴羽「うんうん」

岡部「どういうわけかこの二つの世界線は螺旋構造をしていて、ダイバージェンスメーターにお互い連動して作用する」

鈴羽「そうそう」

岡部「両方の世界線に干渉していると思われるのは、Ω世界線の俺。さらにその俺はタイムワープができると」

鈴羽「そうだね」

岡部「ここまではわかった。……で?」

鈴羽「あたしたちの目的?」

岡部「うむ」


鈴羽「それは簡単。Σ世界線とΩ世界線の絡まりを、どうにかして解除すること」

岡部「理由は?」

鈴羽「……そのうちわかるよ。ラボメンたちが、どうやって生きているかを観察すれば。
   それが誰かの手のひらの上で行われていることなら、なおさら……!!」ギリギリ

岡部「ま、まあまあ落ち着け(なんだかこの鈴羽は短気だな……)」

鈴羽「Ω世界線の君―――えっと、コードネームは“OMEGA”なんだけど」

岡部(!!! くっ、ちょっとかっこいいではないか!! オ、オメガ。おおおなんと崇高な響き!!
    ずるいぞ黒幕の俺!!)

鈴羽「OMEGAと接触するのが当面の目的。交渉の余地はないかもだけど……、そのために君を呼んだの」

岡部「話し合いが通じるような俺なのか?」

鈴羽「そんなのわかんないよ。あたし、君じゃないし」

岡部「……ふむ。で、とりあえずはΣ世界線で作戦会議というわけか」

鈴羽「そうだね」


岡部「なあ、鈴羽よ」

鈴羽「うん?」

岡部「さっきルカ子は俺のRSを狙っていたと言っていたな?」

鈴羽「あ……、うん」

岡部「そもそもRSは盗むことができるようなものなのか?」

鈴羽「盗むっていうとちょっと語弊があるんだけど……。“伝染”っていうのが一番正しいかもね」

岡部「“伝染”?」

鈴羽「そう。これも別に科学的根拠があるわけじゃないんだけど。
    RSは一定の要件を満たすと他人に伝承するのではないかと言われてる」

岡部「一定の要件……とはなんだ?」

鈴羽「……それは……その……」

岡部「?」


鈴羽「……で、でもまだ仮説だから、本当にそうかどうかはわかんないし」

岡部「なぜ赤くなる」

鈴羽「…………き、キスするんだったかな、多分」

岡部「は?」

鈴羽「あーーーーーーもう知らないよ! きすだよきす! 接吻!」

岡部「ほ、ほおおおう?」

鈴羽「あ、あたしだって専門で研究してるわけじゃないからわかんないけど、
    口付け? とか、気持ちが通じあったとか、そういう行為をしたときにね、特殊な物質が頭から出てそれがどうとか……」

岡部(なるほど……。なんとなくわかるな)

岡部(さすがにミスターブラウンの場合は偶然だろうが……クリスティーナのときもそうだったか?)

鈴羽「………」ジーーーー

岡部「……む? どうした」

鈴羽「岡部倫太郎って、したことあるの」

岡部「へ? 何を」

鈴羽「キス」


岡部「う……む……」

岡部(あれは経験に入るのか? といってもあのときの紅莉栖はもういないわけで……)

岡部(再会は果たしたが……、今のところ恋愛とか、そういう関係ではないわけで……)

鈴羽「……ふーん。あるんだ」

岡部「ま、まだ何を言ってないだろう!!」

鈴羽「顔に書いてあるよ。へーそうですか、岡部倫太郎は大人だねー」

岡部「また子供のようなことを言い出す……」

鈴羽「じゃあないってこと? 経験なし?」

岡部「じゅ、十代の娘がケーケンという言葉を軽々しく使うんじゃない!」

鈴羽「ええっ、そういうもん? 父さんがよく聞いてたよ、女の子に」

岡部(ダルの遺伝子が入ってることを忘れていたな……)


鈴羽「でも、あたしと君は多分、キスできないね」

岡部「は? どういうことだ?」

鈴羽「言ったじゃん、あたしたちの因果は連動してるって。
    RSなんて因子を抱えた行動をしたら、相当な影響が出るもん。試してみよっか」

岡部「え―――」



鈴羽「ん。キス、してみて」



岡部「は!?」

鈴羽「べつに変な考えがあってするわけじゃないんだから。ほら。君なら平気だよ、あたし」

岡部「お、おおおおお前が平気でも俺が平気かどうかは全く別問題だっ!!」

鈴羽「どうして? 科学者は実験するのが基本って、自分で言ってたよ」

岡部「それはいつの俺だっ!! とっとにかく目を開けろっ!!」

鈴羽「やだ。バッジが鳴るまで開けない」

岡部「~~~~っ!!」


岡部(ぐぬ……、あ、相手はダルの娘だぞ……)

岡部(しかし……くそ、改めてみると鈴羽の顔は本当に整っているな……)

岡部(まつ毛……長いな)

鈴羽「あっ」

岡部「えっ」

鈴羽「着いたみたい。あれ? 岡部倫太郎、顔赤いよ?」

岡部「お、おうふ」

鈴羽「えへへ。続きはまた今度、だね! 先に外出てるよー!」

岡部「うむ。……ってまた今度!? おーい、鈴羽ー!!!」


岡部(やれやれ……。元の世界線に戻れるのはいつになるやら)

岡部(―――それにしても)

岡部(OMEGA、黒幕の俺の意図がわからないな。私利私欲のためにラボメンを利用しているのか?)

岡部(タイムワープとタイムトラベルの違いもわからんし)

岡部(……とりあえずは様子見か。鈴羽を頼って行動するかない………な)

ご飯くってなかったので食います
投下ペース遅いとか色々あったら遠慮せずにいってください
では

ちょっと話つめてるので一時からになります~
ごめんなさい。このスレで終わらなかったらSS速報いったほうがいいのかな

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内



――A.D.2011 Σ世界線:首都秋葉原、街路――


鈴羽「おーい岡部倫太郎! こっちこっち!」

岡部「……これでいいのか」

鈴羽「ありがとう。わぁ、おいしそう。ほら、一緒に食べようよ」

岡部「……金は」

鈴羽「ん? 通貨は変わってなかったでしょ?」

岡部「………いや、そうなんだが……」

鈴羽「物価も急に上がっちゃったみたいで、こーーんなソフトクリーム一個が800円もするんだよねーここ」

岡部「ぐ……」

岡部(なぜ俺は自腹を切ってソフトクリームを頂戴しているのだ?)


鈴羽「いやほら、固いコトばっかしてても疲れちゃうしさあ。適度に息抜きしてかないとね。
    時間ならそれこそいーっぱいあるわけだし」

岡部「しかしそれはOMEGAも同じだろう? 
    相手と俺たちには同じ時間が流れていると仮定して差し支えないわけだ」

鈴羽「それはまぁ、そうなんだけど……。いくらOMEGAって言ったって人間なわけだし、
    年中『フゥーーーハハハハ! 時間を超越せしこの俺のリーディング・シュタイナー!』
    とか言ってるわけじゃないと思うし」

岡部「鈴羽よ、それは俺に対するあてつけか?」

鈴羽「ん? なにがー?」

岡部(呑気なものだ……)

岡部(―――だがまあ、今までの行動からして普段は相当なストレスを抱えているに違いない)

岡部(こうして抜けるときに抜いておくのが、戦士のたしなみというやつなのかもしれないな)


鈴羽「―――さっきのレジスタンスとの一件で」

岡部「ん?」

鈴羽「ダイバージェンスメーターが多少変動してた。相手の想定内か想定外なのかはわからないけど。
    こちらの世界線に何かの影響が出ているはずだよ。小さくはなかったからね」

岡部「前から思っていたのだが、どこに数値が出ているのだ? 何かそういった装置を持っているのか?」

鈴羽「んーと。そっか、君は共有してないんだっけ」

岡部「む……?」

鈴羽「あたしの所属していた組織では、ダイバージェンスメーターは脳内でチップによって補完されてる。
    感覚的にわかるの。変動率を掴むまでは訓練が必要だけど」

岡部「何っ?! バイト戦士はサイボーグ化していたのかっ!?」

鈴羽「すずはだってば。……サイボーグといっても、チップは物質的なものじゃないよ。
    概念を脳内にプロットする、一種のアイデアみたいなもので……」

岡部「……ややこしくなりそうだからそれはいい」

鈴羽「そう? 結構面白いんだけどなー。今度頭に入れてみる?」

岡部「断固拒否だっ!!」


鈴羽「あたしの観測によると、このΣ世界線の起点となる変動率は、-20%代。Ω世界線は-10%代だね」

岡部「求めるべき変動率の解はどこに位置するんだ?」

鈴羽「わかんない」

岡部「は?」

鈴羽「だってそうでしょ。
    以前みたいに約束された未来を目指すわけじゃなくて、今回は対抗馬がいる。
    一対一のゲームなんだよ?」

岡部「……問題が与えられて、それを解くだけでは不十分……」

鈴羽「そう。相手の指し手を読んで、こちらにとって最も有益な世界線を選択しなきゃいけない。
    たとえば仮に-3%台の世界線を目指していたとしても、それが相手にとっても最良だった場合は……」

岡部「時と場合に応じて、別の世界線を目指す必要があるということか」

鈴羽「そういうこと」


岡部「世界線のよじれを解き、元に戻すという目的すらも、本当にベストなのかはわからないということか」

鈴羽「そうなんだよね。そもそも世界線を分離させることがどうなのかも、正直いってわかんない。
    それもこれも、相手次第ってこと」

岡部「頭が痛くなるな……」

鈴羽「狂気のマッドサイエンティストなんでしょ? がんばって!」


岡部(以前は一人であちらへ行ったりこちらへ行ったりしていたわけだが……)

岡部(ん? でも実際の相手は俺自身ってことになるのか? ならある程度考えそうなことは……)

岡部(……いやいや、そうじゃない。要するに自分と将棋を打って勝つということか?
    ぐぬぬ、そう考えるとこれは……)


鈴羽「難しい顔してる。やっぱりあたしとじゃ不安?」

岡部「え?」


鈴羽「……いや、一応これでも訓練とかそういうのはパスしてきてるんだけどさ。
    実戦経験はホントに少ないから、あたし」

岡部「そうなのか? その割りに、さきほどの一件では大活躍だったじゃないか」

鈴羽「あんなの全然ダメだよ。一時的とはいえ、君を危険に晒してしまったしね。
    ワルキューレの教官に言ったら、『ばっかたっれ! 腕立て200回!』とか言われちゃうんだろうなー」

岡部「ワルキューレ?」

鈴羽「あ。やば」

岡部「…………」

岡部「なあ、鈴羽」

鈴羽「……うん? どこから来たかは教えないよ」

岡部「どの世界線から来たのかは置いておくが……。お前のいた世界はどうだったんだ?」

鈴羽「……どう、って?」

岡部「ちゃんとダルやお前の母親は元気にしてるのかとか。秋葉原はどうなのかとか」

岡部「俺たちは、まだ笑ってるのかとかだな」

鈴羽「………」


鈴羽「そろそろ、いこっか」

岡部「む。またはぐらかす気か?」

鈴羽「そんなの聞いてもつまんないよ。でも大丈夫、みんな笑ってるよ」

岡部「……なんだか妙に聞こえるぞ、その言い方」

鈴羽「そう? あーおいしかった! ごちそうさま! お代はツケといてね!」

岡部「まったく……」


岡部(どうも影があるような印象を受けるな)

岡部(たしかに八月の事件ではある意味もっとも苦労していた人間だったわけだが)

岡部(………ク、ククク……)

岡部(………だぁが、それもまた一興。安心しろバイト戦士鈴羽よ。貴様の未来はこの鳳凰院凶真が保証してくれる)

岡部(そして……ゆくゆくは狂気乱舞のOMEGA・マァァァッドサイエンティストとなるこの俺の懐刀として活躍してもらうのDAッ!!)


岡部「……フ、フフフ………フゥーーーーハハハハハ!!」

鈴羽「?」


鈴羽「ま、そういうわけで、とりあえずは探索だね。OMEGAの手がかりを探さないと」

岡部「って待て。何の目印もなく探すというのか? 運命石の扉もびっくりだぞ」

鈴羽「機関のトップはさっきも言ったとおり、天王寺裕吾なんだけど、コンタクトを取るのが難しいんだよね。
    電波は首都にほぼ網羅されてるし。アナログなやり方じゃないとつかめないよ」

岡部「だからと言ってあてもなくこの街を歩き回ってもだな……」

鈴羽「あたしはちょっとコネが効くから、桐生萌郁に会って来るよ」

岡部「ちょちょちょっと待てって。それなら俺もそこに行けばいいのではないか?」

鈴羽「忘れたの? キミは死んでるんだよ? 説明したりなんだりで時間がもったいないじゃん。
    時期が来たらちゃんと会わせるよ。今はOMEGAの位置を掴むほうが先決」

岡部「いや、それを言うならさっきのソフトクリームはなんだったのだ……」

鈴羽「……でも、そうか。それなら、椎名まゆりに会ってみる?」

岡部「まゆりに?」


鈴羽「あ、といってももちろん素性は隠さないとダメだよ。特に彼女の場合はね」

岡部「う、うむ(フェイリスのときは大丈夫だったのか?)」

鈴羽「携帯で位置を送るね。迷っちゃダメだよ?」

岡部「侮るな。これでも地図は読める男だ」

鈴羽「それから、バッジは絶対持っていてね。なくしたら代え、ないんだから。
    あれ、原理は簡単なんだけど組むのが大変ですっごい高いんだよー」

岡部「え……い、いくらぐらいだ?」

岡部(あれ……バッジって……どこやったんだ? そもそも俺、受け取ったか?)

鈴羽「ゼロが8つくらい」

岡部「んなっ!?!?」

鈴羽「じゃ、また後でね! 何かあったら連絡するー!」

岡部「…………」


岡部(……ま、まあなんとかなるか。はっはっは)

書き溜めます

     σ   λ
     ~~~~ 
    / ´・ω・)   < トゥットゥル~♪ ほしゅしぃです☆

 _, ‐'´  \  / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ  
{ 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl  
'い ヾ`ー~'´ ̄__っ八 ノ  
\ヽ、   ー / ー  〉  
  \`ヽ-‐'´ ̄`冖ー-/    

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

紅莉栖「まゆしぃはどの世界線でも役立たずなのですぅ(^q^)」

紅莉栖「どうだった?結構似てたでしょ?まゆしぃ()の物真似」

まゆり「……うん、似てたと思うよ へへ」

紅莉栖「似てるって言われるのも腹立つわね」

まゆり「…………ごめんね、クリスちゃん えへへ、ごめん」



――A.D.2011 Σ世界線:首都秋葉原 病院前――


岡部「………」

岡部「ここか……」

岡部「………はぁ」

岡部「まったく、鈴羽のやつ……」


―――――――――
from.Suzuha.A
―――――――――
椎名まゆりはね、キミ
が亡くなるとほぼ同時
期から、精神的に不安
定になってるみたいな
んだ。
励ましてあげてよ。
あたしじゃ無理だと思
うから。

でも素性はバラしちゃ
ダメ!><
―――――――――


岡部(まさか病院とは……いや、今はここにいるだけってことか?)

岡部(……俺の死でまゆりが? 程度はどれくらいなんだ。回復の見込みはあるのか)

岡部(俺は馬鹿だ。ここがユートピア? ラボメンすべてが幸せになる世界線なんて、
    そんな保証はどこにもない)


岡部「あの……、すいません」

看護士「はーい?」

岡部「椎名まゆりという女性に会いたいのですが」

看護士「あら。あなたも? さっきもたずねてきた人がいたのよ」

岡部「さっき?」

岡部(入れ違いか……。気になるな)

看護士「それで、あなたの名前は?」

岡部「鳳凰い……」

岡部(って待て待て。素性は隠さないと……)


岡部「ジョ、ジョン・キョーマーだ」

看護士「は?」

岡部「ジョン・キョーマー、です」

看護士「……海外の方?」

岡部(ぬっ! このシチュエーションは……!!)

岡部「フッ……海外などという小さなレベルでの話ではない」

看護士「……はい?」

岡部「いずれは海外はおろか、この街すらもこの手中に収める……ククク、
    ジョン・キョーマーの魔眼、『リーディング・シュタイナー』をもってすれば……」

看護士「もしもし、ちょっと外来で変な方が……」

岡部「あっおいこらっ通報はやめろっ! 今のは嘘だっ!」


看護士「……あなた、本当に椎名さんのお知り合い?」

岡部「ほ、本当だ! この顔が嘘をついているように見えるか!!」

看護士「見えます。何か、身分を証明できるものはありますか?」

岡部「ぐぬぅ………!!」

岡部(し、しまった。明らかに墓穴を掘ったぞ。これではあのソフトクリーム戦士に、
    『えー、病院の中にも入れなかったの? それって戦士失格だよ?』とか言われて
    ナメられてしまう!!!!)

岡部「……身分証は今すこし……き、きらせていてな」

看護士「身分証ってなくなるものじゃないです。ごめんなさい、ちょっと通せないかな」

岡部「ど、どうしてもだめか? 本当に知り合いなんだが……」

看護士「ダメです。規則なので」

岡部「く……っ」


?「あら」

岡部「だから本当に知り合いなのだ!! どうしてわかってくれない!!」

看護士「ちょっと、静かにしてください! あんまりうるさいようなら本当に通報しますよ!」

岡部「うぬぬぬぬぬぬ」

?「ねえ、もしかしてまゆりの友達?」

岡部「ああそうだ!! 友達どころか幼馴染だ!! お前のようなセレセブとは違うのだ!!」

紅莉栖「だぁれがセレセブよこの厨二の権化が!! ……って、あれ」

岡部「……!! クリスティーナ、か……?」

紅莉栖「!? 岡部……?」


岡部(な、なんでこいつがここに!? というか、まずい!)


岡部「お、岡部? 人違いだ。俺の名前はジョン・キョーマー。時空の超越者だ」

紅莉栖「……その口調」

岡部「え? く、口調がに、似てるもクソも? 岡部倫太郎は? し、死んでるぞ?」アセアセアセ

紅莉栖「…………でもさっきセレセブって。クリスティーナって」

岡部「ああああああれはついうっかり口がすべってしまったのだ。本心ではない」

紅莉栖「………」

岡部「………」


岡部(や、やばい。鈴羽、ダイバージェンスメーターが変動してしまうかもしれんっ!!)

岡部(というか、こいつが俺を知ってるということは……この世界線の紅莉栖も、俺と面識があるのか?)


紅莉栖「ま、空似ってやつよね」

岡部「そ、そうだ空似だ」

紅莉栖「まゆりに何か用なの?」

岡部「……う、うむ。そういうお前も用事か?」

紅莉栖「ええ。……最近、あんまり顔出せてなかったから。すいません、面会の手続きをお願いします」

看護士「はーい」

岡部「……」


岡部(なんだ? この違和感)

岡部(……助手は確か、この国の中枢に関わっている人間だったといっていたな)

岡部(俺が死んだのは鈴羽の話だと……まだ小学生のとき)

岡部(こいつが知っている俺はいつの俺だ? まさか)


岡部「OMEGA」ボソ

紅莉栖「ッ!?」


紅莉栖「あ、あんた今何て!?」

岡部「ぐおっ!? く、首元を掴むなっ!?」

紅莉栖「あ……ご、ごめんなさい……」


岡部(食いついてきたか。間違いない。こいつはOMEGAと接点を持っている。
    しかもそんなに昔の話じゃない。“今の俺を見て、OMEGAと錯覚できる程度には”
    近い過去の俺と会っているはずだ)


岡部「……話がしたい。そっちもだろう?」

紅莉栖「……はぁ。仕方ないわね。でも、本当に岡部じゃないの?」

岡部「俺は俺であって、俺ではない」

紅莉栖「その口調……ほんっとイライラするわ」


岡部(今回は本当のことなんだがな……)


紅莉栖「とりあえず、まゆりの病室に行ってからでいい? あの子の様子だけでも確認したいから」

岡部「構わん。だが、俺も連れて行ってもらうぞ」

紅莉栖「……病院だからって、HENTAI行為はしないわよね」

岡部「するかっ!! ダルと一緒にするなっ!!」

紅莉栖「え」

岡部「あ」

岡部「ダ、ダルというのはうちで飼っている犬のことでな。最近さかりがついて大変なんだ、フ、フハハハ」

紅莉栖「……どーも怪しいわね。まぁいいわ。話がしたいのは私も一緒だし。こっちよ」


岡部(ふぅ………)


紅莉栖「それで? ジョン・キョーマーさんは何をしてる人なわけ?」

岡部「特には何も」

紅莉栖「なんだ、ニートか。自宅警備員乙」


岡部(こいつ……相変わらず@ちゃんねらーなのか)


岡部「そういう貴様は何をしているのだ?」

紅莉栖「研究職よ」

岡部「大雑把すぎる! もっとわかりやすくいえないのか」

紅莉栖「機密事項に関わるからこれ以上はいえないわー。素性が知りたいなら助手を通してくれる?」

岡部「じょ……しゅ……?」

紅莉栖「ええ。一応主任だから」


岡部(……しゅ、出世してるだと……!!! なんだこの焦燥感は……!!)


岡部(……おっと。忘れないうちに鈴羽に報告しておくか)


―――――――――
To Suzuha.A
―――――――――

俺だ。
OMEGAの手がかりを
つかんだ。
牧瀬紅莉栖と接触し
たが、問題はないな?

そちらも健闘を祈る。
エル・プサイ・コング
ルゥ。

―――――――――


紅莉栖「ちょっと。病院内で携帯は禁止よ。マナーもしらないの?」

岡部「あ、ああすまん。急用でな」

紅莉栖「……ズボラなところもほんっとそっくりね。不思議なこともあるもんだわ」


岡部「まゆりの容態はどうなんだ」

紅莉栖「ファーストネームで呼ぶのね」

岡部「……ま、まぁ、親しい仲といったら親しい仲だからな?」

紅莉栖「元気よ。たまに発作が起きるみたいだけど」

岡部「発作……?」

紅莉栖「心因性のストレス障害。あんた、何も知らないの?」

岡部「……う、うむ……」

紅莉栖「それさえなかったらこんなところ、すぐにでも出て行けるのに。
     日本の医療ってそういうところのケアが遅れてるわよねー」

岡部「い、命に関わるようなことは……」

紅莉栖「変なこと言わないで。まゆりは死なないわ。私が守るもの」


岡部(お前も相当痛々しいぞ、助手よ)


紅莉栖「まゆりに変なことしたら、コロスからな」

岡部「そっちこそ変なことを言うな」

紅莉栖「まあ、見る限りあんた、悪いやつじゃなさそうだけど……っと。ついたわ。ここよ」


紅莉栖「まゆりー? 入るわよー?」コンコン

まゆりっぽい声「はーい。どうぞー」


岡部(さて、バレずに会話できるか……? とりあえずサングラスをっと……)


まゆり「あれーーー? オカリン、どうしたの??」

岡部(っていきなりバレた!!!?!!!)

岡部「お、オカリン? 誰のことだ? 俺の名前は……」

紅莉栖「まゆり、この人は岡部じゃない。ただのニートよ」

岡部「ぐ、お、覚えてろよ貴様……」

紅莉栖「自分で言ったんでしょ」



岡部(ってあれ? まゆりは俺の死をきっかけにこうなったんじゃないのか?)


まゆり「んー? でもまゆしぃにはどうみてもオカリンに見えてしまうのです」

紅莉栖「まあ、確かに似てるけど……ってあんたら知り合いじゃないの?」

まゆり「まゆしぃはオカリンの人質だよ?」

岡部「お、俺はジョン・キョーマーだ。椎名まゆり、ひ、ひさしぶりだな!」

まゆり「……???」


岡部(ぐっ……お、俺は何をやっているんだ!? 通じるわけがなかろうが!!)


紅莉栖「なーんかおかしいわねー。わかってたけど。本当はやっぱり岡部なんじゃないの?」

岡部「ち、ちがっ、俺は……」

まゆり「んー、でもよく考えたらそんなはずはないのです。オカリンはさっき、黒いコートを着てたし……」

岡部「何?」


岡部「ちょっと待て。俺が、いつ?」

まゆり「え? やっぱりオカリンなの?」

岡部「あっ、ち、ちがう。その……岡部倫太郎がいつ、ここに?」

まゆり「ついさっきだよ? えへへー、ひさしぶりにおしゃべりしたのです」

紅莉栖「………」

岡部「そ、それはいつだ!? ついさっきって……」

まゆり「えー? 急に言われても覚えてないのです……」

岡部「思い出してくれ。大事なことなんだ」

紅莉栖「ちょっと。一応患者なのよ? 大きな声ださないで」

岡部「……う……、す、すまん」


まゆり「そうだ! ねーねークリスちゃん。オカリンがね、またみんなで遊びたいねって言ってたよ?」

紅莉栖「そう……」

まゆり「ラボメンのみんなは元気かな? 早く会いたいなぁ……」

紅莉栖「……まゆり」

まゆり「オカリンがね、まゆりはほんと変わらないなーって。えへへ、自分はかっこよくなってたくせにね」

紅莉栖「………」

岡部「つ、つかぬことを聞いていいか?」

まゆり「はい?」

岡部「その……い、言いにくいんだが……。岡部倫太郎は……もう……」



まゆり「生きてるよ」



岡部「う……ん……?」

岡部(何だ? 様子がおかしい……)


まゆり「オカリンは、生きてる」

岡部「……そうなのか? 紅莉栖」

紅莉栖「…………」

まゆり「生きてるよね、クリスちゃん」

紅莉栖「……え、ええ……」

まゆり「ほら、クリスちゃんも言ってる。だからね、まゆしぃはもうちょっとがんばれるのです。
     トラさんとウマさんが喧嘩しないように、せんせーの言うこと聞いていたら、オカリンとまた会えるから。
     それまでちゃーんと、ビョーキと向き合うって決めたんだよ? えへへ」

岡部「………」

紅莉栖「キョーマーさん。悪いんだけど、外しててもらえる?」

岡部「……ああ」


岡部(…………)

岡部(まゆり……)

岡部(………)

岡部(………だが、これで確定した)

岡部(OMEGAとまゆりは接触していた。ついさっきまで、この部屋にはOMEGAがいた!)

岡部(問題は紅莉栖が知っているという俺が、OMEGAと同一人物かどうかだ)

岡部(………)

岡部(………ふざけるな)


岡部「ふざけるな……!!」


岡部(何を冷静に分析しているんだ、俺は……!!)

岡部(まゆりをあんな状態にしたのは、他でもない俺自身だ)

岡部(……どの面下げて客観視していられる……!!!)


岡部(待ってろよ岡部倫太郎。交渉なんて生ぬるいことじゃ終わらせてやるものか。
    お前には言いたいことが山ほどある……ッ!!)


ピピピピピピ


岡部「……ん?」

岡部(鈴羽か……?)


―――――――――
From.Ω
―――――――――

おまえをみているぞ

―――――――――


?「動くな」

岡部「―――っ!!!!!!」

?「どこから出てきたって? それは俺のことを知っているならわかるだろう。
   これより貴様に許されているのは呼吸だけだ。それ以外何をしても殺す」

岡部(な)

?「次からは病院に入ったらマナーモードにするんだな。心臓がいくつあってももたないぜ」

岡部「………う」

?「ん? 今のはうめき声か? なら、サービスしてやる。次からは殺す」

岡部(こいつ……くそ、変声機を使ってるな)

?「質問をする。イエスならまばたきを一回、ノーなら二回しろ。曖昧な返事をしても殺す」

岡部「………っ」


?「まず一つ。お前は岡部倫太郎本人で間違いないな?」

岡部「……」

?「イエス。次。牧瀬紅莉栖に俺のことを聞いたか?」

岡部「……」

?「ノー。次。タイムワープ理論について、お前は知っているか?」

岡部「……」

?「ん。この質問じゃ答えられないか。質問を変える。
  タイムワープ理論とRSの関係について、お前は十分に知っているか?」

岡部「……」

?「ノー。なるほど。俺の分身だと知って警戒していたが……大したことはないな」


岡部(やはりこいつがOMEGAか……!!)

お風呂はいってきますね。
きょうの投下が終わったら、保守が大変だと思うのでSS速報にいこうかと思います
ご迷惑おかけしますぬるぽ


?「さて、ここからは雑談タイムだ。俺に聞きたいことはあるか? 無能な観測者さん」

岡部「お前がOMEGAなんだな……?」

?「その呼び名はふさわしくないな。世界線の名称もお前たちが勝手に決めたものだ。
   とは言っても、俺と同じ名前を有するお前がそう呼びたいなら、そう呼べばいい」

岡部「お前の目的はなんだ」

?「やけに真剣だな。それでお前に何かのメリットが?」

岡部「答えろ!!」

?「銀河の特異点になった以上は、管理する義務があるだろう? 俺がやっているのはそういうことだ。
  わかるか? 才ある者には果たすべき義務がある。その延長が、この世界線だ」

岡部「はっ……厨二病もここまでいくと末期だな」

岡部(くそ……銃口をおしつけられているか。姿が確認できない)

?「戯言だろうが何だろうが。叶えてしまえば冗談でもなんでもない。世界線を観測したお前ならわかるだろう。
  “俺たちが見たことが、真実なのさ”」


?「ここで俺からアドバイスだ。―――今のうちに手を引いておけ」

岡部「なんだと……?」

?「お前は慈善活動のつもりで動いているんだろうが、必ず後悔する。俺はお前で、お前は俺なんだ。
   何、悪いことは言わないさ」

岡部「……?」

?「お前がなすことやること、すべてが裏目に出る。しかも結果がわかるのは、事態が起こってしまってからだ。
  お前が二つの世界線で為した善行が、ことごとくお前を苦しめることになる」

岡部「口先でごまかせるような相手だと思うか?」

?「まあ、やるならやるでいいけどな。こちらには圧倒的なアドバンテージがある。
  タイムワープ理論については勉強しておくことをお勧めするぜ。じゃないと―――」

?「死ぬぞ」

岡部「―――ッ!」


?「最後にパーティのお誘いだ」

岡部(よくしゃべるやつだな……。世界線が違うとはいえ、どういう経緯で俺はこうなった?)

?「招待状は二つ。一つは明日、この街で大規模なイベントがある。
  主催はお前らが“機関”と呼んでいる組織のリーダーだ」

岡部「何……?」

?「驚くことはない。レジスタンス活動の基本は嘘、偽り、詐称だ。ひっそりと都市の営みに自分を隠すのが最良だろ?
  天王寺親子は頭がキレる。木を隠すなら森だからな」

?「俺もそこに顔を出す。話がしたいなら阿万音鈴羽と一緒に来い。詳細はメールで送ってやる」

岡部「わざわざ自分を晒す気か……? お前に何のメリットがある」

?「もちろんメリットがないならこんなことはしない。だが、それを考えるのがお前らの仕事じゃないのか。
   来るも来ないももちろん自由だ。足りない頭を使って考えてみろよ。俺の分身なんだろ?」

岡部「………」


岡部(いま、俺を始末しないのは病院だからか? ……それとも)


?「もう一つ。もしもお前がこの先俺を捕まえようとし続けるなら、ある場所で俺たちはまた会うだろう」

?「ニールス・ゲート。これも仮称だがな」

岡部「ニールス……?」

?「おや、物理学はそんなに詳しくないのか。天才のライバルはやはり天才であってほしいからな」

岡部(何の話をしている……?)

?「……だが、そこに至るときにはすべてが手遅れだ。お前が真実を知りたいというのなら話は別だが―――」

?「ん。まあ、根性はありそうだしな。もしもお前がたどり着けたら、世界の話をしよう。
  運命という名のアトラクタフィールドの収束……。世界線を超越しても尚、あるのか否か」



       「楽しみにしているよ、岡部倫太郎。

              また会うその時まで。エル・プサイ・コングルゥ」


岡部「…………」

岡部「………っ」

岡部(いなくなっ……た………?)


岡部「……くっ!!」



岡部(……圧倒的だった。くそ、足がまだ震えて……)

岡部(あれが俺? 嘘だろ?)

岡部(……どこまでが本当で、どこまでが嘘なのかもわからない)

岡部(一度鈴羽と合流したほうがいいな。一人じゃ抱えきれない。何より、まだ共有していない情報がある)

岡部(……くそ、どのみち明日のイベントとやらに行くしかないってことか)



岡部「後手に回っている……」

紅莉栖「ゴテがどうしたって?」

岡部「どわぁっ!?!?」

紅莉栖「きゃっ!?」


岡部「おおおおおおまおまおま……!! びっくりさせるな!!」

紅莉栖「そ、そんなにびびるかフツー。何なの? 汗びっしょりかいちゃって」

岡部「こっちは嫌味なキザ厨二病男と命をかけたバトルをしていたんだ!!」

紅莉栖「誰それ? あんたのこと? そうよねー、岡部って昔っからそうだもんね」

岡部「何をいうか!! 俺はあんな回りくどくてやらしい言い方はせん! お前なら知ってるだろうが!!」

紅莉栖「とかいっちゃって、なんだかんだここぞというときは臭いこと言っちゃうんじゃないのー?」

岡部「なななななななんなんな!! おのれ、助手の分際で……!!」

紅莉栖「そうそう、岡部はそんなかんじ」

岡部「……助手の……分際……で……」

紅莉栖「………ふふん」ニヤニヤ

岡部「あ……」

紅莉栖「やっぱりね。さすがにもう騙されてやらないのだぜ」


紅莉栖「さぁーて、洗いざらい話してもらうぞ。私を騙した罪は重い!」

岡部「ちょ、ちょっとまて。そういうわけにはいかんのだ……!」

紅莉栖「なんでよ。別にDメールを送るわけじゃないし、平気でしょ?」

岡部「もうそういう規模の話じゃないんだ! 俺の行動一つでこの世界が……」

紅莉栖「……? 嘘はついてなさそうだけど……」


ピピピピピピピ


岡部「あ」

紅莉栖「こら。電源切っとけって言ったでしょ? もお、貸しなさい。
     ったくさっきから誰よいちいちメールしてくるのは……」

岡部「あっ、おい!! み、みるな!!」

―――――――――
From.Suzuha.A
―――――――――

ねえ、大丈夫?
すごい勢いでバッジが
鳴ってたけど!
すぐに連絡して!

何かあったら助けに行
くからね!だーりん!

―――――――――


岡部「………鈴羽………」プルプル

紅莉栖「…………ほおーーーー?」

岡部「な、何だその目は!! その人を馬鹿にしたような目はァッ!! やめろ!! こ、これは訳があって……」

紅莉栖「ぷ……だ、だーりん……だーりんって……ぷくく」

岡部「おおおおおおおお前だって!! 相対性理論が甘くて切ないとか言っちゃうだろうが!!
    そんでもってもっかいしたいとか言っちゃうだろうが!! 忘れたのか!!」

紅莉栖「はぁ? 何の話? 妄想乙」

岡部「ぐ、ぬぬぬぬぬ………」

紅莉栖「すずは……? はて、どこかで聞いたことがあるような……」

岡部「ええい、とにかく俺はもう行く!! お前とじゃれるのはここまでだっ!」

紅莉栖「あ! ちょっと! 待ちなさい!」



岡部(やってられるか!! 助手に見下されるこの感覚、たまら……じゃなくて許せん!!
    とにかく鈴羽と合流せねば……!!)


岡部「……あ」

紅莉栖「待ちなさいってば! まだあんたには聞きたいことがあるの!!」

岡部「クリスティーナよ。ニールス、って何だ?」

紅莉栖「ニールス? ニールス・ボーアのこと?」

岡部「む? そういう名前なのか?」

紅莉栖「専門じゃないから概要しか知らないけど。ニールス・ボーアは物理学者の名前よ。
     アインシュタインのライバルとして有名ね。確か専門は量子論」

岡部「なるほど……。すまない! 助かった! 礼は今度かならずする!!」

紅莉栖「あ、ちょ、おま!! 逃げるなーーーーーーーーーーー!!!」



――A.D.2011 Σ世界線:首都秋葉原 タイムマシン前――


岡部(ふう。なんとか振り切ってここまで戻ってきたはいいが……)

岡部(さすがに今日は疲れたな。時空を越えすぎて時間の感覚がマヒしているが……)

岡部(朝から数えると……うぐ)

岡部(鈴羽はまだ来ないか……?)


鈴羽「岡部倫太郎っ!!!!!」

岡部「ほわっ!?!?」

鈴羽「よかった。生きてた!! 生きてた……!!」ギューーー

岡部「あたたたた!! そっそんなにきつく抱きつくなっ!! し、しんでしまうぞ!!」

鈴羽「あ。ご、ごめん、つい……」

岡部(さっきメールしたんだから、生きてるのは当たり前だろうが……まったく)


鈴羽「ねえ、本当に大丈夫? 何があったの? あたし、そばにいなくてごめんね。
    助けにいけなくてごめんね。来るの遅くて、ごめんね……」

岡部「何をいうか。パートナーに助けてもらってばかりでは立つ瀬がない」

岡部「この俺の力、リーディング・シュタイナーをもってすれば…………、ん」

鈴羽「……ごめんね……」

岡部「お、おい。もう大丈夫だから、離れても……」

鈴羽「…………」


岡部(……泣いてる、のか? 珍しいな……)


岡部「す、鈴羽。ここだと目立つから……」

鈴羽「…………うん……。中、入る……」


岡部(やれやれ……。俺が慰めてどうする)

岡部(……………)

岡部(…………まあ、たまにはいいか……)


岡部「………ふむ」

鈴羽「……ごめん、重い? 頭、どける?」

岡部「いや、俺は平気だが……。お前はまったく、殴ったりスネたり笑ったり泣いたり、忙しい戦士だな」

鈴羽「……な、泣いてないもん」

岡部「馬鹿者。それくらいお見通しだ。この俺の魔眼でな」

鈴羽「ええっ? RSってそういうのも見えるの?」

岡部「そんなわけなかろう。方便だ。本当はついさっき横顔で確認した」

鈴羽「何それ……。ずっるー……」

岡部「タイムトラベルには方便がつき物なんだ」

鈴羽「…………、」


鈴羽「OMEGAと接触したの?」

岡部「ああ、おそらく、な」

鈴羽「どんなヤツだった?」

岡部「キザで厨二でねちっこくて。最低のクズ野郎だった」

鈴羽「あはは。でもそれ、キミなんだよ?」

岡部「あんなやつと一緒にするんじゃない。俺は俺。あいつはあいつだ」

鈴羽「……岡部倫太郎はすごいね。あたしなんか、ちっとも手がかりつかめなかったのに。
    それに比べて、あたしは……」

鈴羽「ダメダメだなぁ……」

岡部「まーたそうやって卑屈になる。お前は一人前の戦士なんだろ。自分で言ってたではないか」

鈴羽「そう言ってないと、自信なくなっちゃうんだ。自分で自分を鼓舞してるの。そういう風に、訓練されたから。
    でも実際は……」


岡部(これは重症だな。俺を危険に晒した負い目があるのか? それとも……)


鈴羽「本当はね、自信なんてないんだ。打たれ弱いよ。多分、キミよりも」

岡部「どうしてそう思う?」

鈴羽「……それは……」

岡部「俺はお前がパートナーでよかったと思っている。他に証明する手立てがあるか?
    言っただろう。“観測したことが真実になる”と。俺は今日、確かに観測したぞ」

鈴羽「え……?」

岡部「レジスタンスを蹴散らすお前を。啖呵を切るお前を。俺を先導して、世界線を飛び回るお前を。
    これは真実だ。なぜなら、俺が見ていたから」

鈴羽「……」

岡部「俺とお前は漂流者だ。一人だけで事象を観測しているなら、確かに客観性はないし、不安になるのもわかる。
    だけど、お前には俺がいるじゃないか。俺はちゃんと、“観測”するぞ。お前の、どんな気持ちだって」

岡部「だから」

岡部「自分がダメだなんていうな。俺の世界が崩れてしまう」

鈴羽「岡部倫太郎……」


岡部(っと。少しキザったらしかったか。はは、これではあの厨二ナルシスト野郎と一緒に……)


鈴羽「………」

岡部「………えっ」

鈴羽「………」

岡部「おい………すず……」

鈴羽「………ん。いーよ」


岡部(そ、そういうつもりでは……あ、うぐ……)

岡部「し、しかし、バタフライエフェクトが……」

岡部「あ、ほら、鳴ってるぞ、バッジが……」ピリリリリ

鈴羽「………」ピリリリリリ

岡部「………」ピリリリリリ


岡部(い、いかん!! 私欲にまみれてしまったらあいつと同じではないか!
   し、しかしこの鈴羽のく、くち、くちくちくちび、くちくちんdさn)


鈴羽「……ごめん、ズルいよねあたし」

岡部「へっ?」

鈴羽「……うん、やっぱりやめた。キスしたら、おかしなことになっちゃうもんね」

岡部「……」ホッ

岡部「ま、まあそうだな。お、俺も変なこと言ってすまん」


鈴羽「その代わり……今日は手、握っててもらっていいかな」

岡部「うむ」

鈴羽「あと……ぎゅってしてもらっていいかな」

岡部「うむ」

鈴羽「あとあと……明日、ソフトクリームまた買ってもらっていいかな」

岡部「うむ………?」

鈴羽「えへ」


岡部「油断の隙もないな、バイト戦士」

鈴羽「あー! またバイト戦士っていった! 鈴羽だよ! あーまーねーすーずーはー!」

岡部「だが、明日のソフトクリームはお前のおごりだ。落ち着いただろう?」

鈴羽「……うー。岡部倫太郎だって今ちょっと、『うわーおれドキドキしてるー』とか思ったくせに!」

岡部「おおおおおお思うわけがなかろう??? だ、ダルの娘に欲情するなどこの俺がががががががが」

鈴羽「へー、そうなんだ。じゃあお風呂一緒に入る? ここ、シャワーだから簡単に入れるよ」

岡部「ぽぁ!?」

鈴羽「あれ。心臓の音が聞こえる。もしかして本気にしたの?」

岡部「こっこの小娘!! 弄ぶのもいい加減にせんか!! とっとと水でもなんでもあびてこい!」

鈴羽「もー、そんなに怒らないでよ。すぐ入るから。でも―――」

岡部「……?」


鈴羽「もうちょっとこのままでいさせて」

岡部「…………」

鈴羽「だめかなあ」

岡部「………構わん」

鈴羽「♪」


岡部(これでよかったのか……?)

岡部(……どちらにせよ、明日からが山だな)

岡部(戦いはこれからだぞ、バイト戦士)

岡部(…………)

岡部(…………鈴羽)

岡部(………お前は何を抱えている? どこから来たんだ。俺が聞いてはいけないことなのか)

岡部(願わくば)

岡部(―――お前の世界線が、明日も安定していますように……)

今日はここまで
おつかれさまでした

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