右京「エスター?」 (263)

相棒×エスターのクロスSSになります。

相棒は知っているがエスターは知らないという方はググってみればわかりますので…

あまり需要はありませんがそれでもいいという方は読んであげてください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1381803663

~特命係~


その日、警視庁特命係に一通のエアメールが届けられる、その貰い手は特命係の長である杉下右京であった。


右京「…」

カイト「ハァ…」

届けられた手紙を暫くの間集中して読み上げている右京、その光景を唯一の職場の同僚であり部下でもある
甲斐亨は半ば呆れ顔で眺めていた。
そんな最中にいつもの如く特命係のコーヒー求めて隣の部署からあの男が声を掛けてくる。

角田「よ、暇か?あれ…警部殿何の手紙を読んでんだ?」

カイト「それがさっきからずっとあの調子で…俺が訊ねても云とも言いませんよ…」

角田「ふぅん…って事はだ!あの手紙はラブレターじゃねえのかい?」

カイト「ラブレター?杉下さんに?まさかぁ!」

角田「いやいや馬鹿にしちゃいかんよ!
警部殿だって一度は結婚していたんだ、もうそろそろ次の恋をしたっていいんじゃないかな?
ちなみに俺はそういう事したくても出来ないんでね…女房いるし…」

右京「ラブレターではありませんよ。」

カイト「うわっ!?」

角田「あ…聞いてたのね…けどいいじゃないか、奥さんと別れたんだからラブレターくらい読んだってさ…」


右京「「ラブレターではありません!!」」


カイト「そこは頑なに否定するんですね…」

角田「わ…わかったよ…じゃあラブレターじゃなきゃその手紙は何なんだ?」

右京「そうですね…この手紙を説明するのならその前に…ある事件の事を話さねばいけませんね。」

角田「ある…?」

カイト「事件?」

右京「もうあの事件から4年も経つのですね…」

右京が語る事件、その内容は…

右京「4年前の4月頃でしたか、僕は休職届を出して暫くの間イギリスのロンドンへ滞在しに行こうとしてたのですが…」

カイト「ロンドンへですか?それまた何で?」

角田「警部殿は何故だか知らんがたま~に4月くらいから10月までロンドンに行く事があるんだよ。」

右京「まあその事は兎も角…ロンドンの友人にある事を頼まれ…
そしてどういう訳だかある人の付き人も兼ねる事になりましてね」

カイト「ある人の付き人?」

(回想)


4年前…

2009年、アメリカ


右京「まさかあなたの付き人としてアメリカまで来る事になるとは…」

小野田「まぁいいじゃないですか、お前もこの国に所用があったみたいだし。
僕としても顔見知りがいてくれると心強いからね。」

右京:2009年の4月、僕はロンドンへ滞在する前に小野田官房長と一緒にアメリカに
行く事になってしまいました。

カイト:小野田官房長って確か何年か前に警視庁の幹部職員に刺されたっていう?

角田:あぁ!その小野田元官房長だよ!警部殿と官房長は個人的にも仲が良かったからなぁ…
けどアメリカまで何しに行ったんだい?

右京:官房長はあちらのFBIやCIAの首脳陣とお話し合いをしていたらしいですよ。
一応僕が通訳代わりの真似事をしていましたのでこれ以上は守秘義務が発生しますので言えませんが…

角田:ハハ…FBIにCIA…それに警察庁の官房長さまの会話内容か…
外部に公表したら俺たちのクビくらい簡単に切られそうだわ…クワバラクワバラ…

右京:まぁ官房長の方の所用も終わりいよいよ僕の所用を果たそうかと思ったのですが…

カイト:『ですが…』って何か困った事でもあったんですか?

右京:官房長が自分も付いていきたいと駄々を捏ねましてね…

右京「これはあくまで僕の個人的な要件ですよ、国家の要人たるあなたが同席する必要は…」

小野田「固い事言わないでよ、いつもお前たちの捜査に便宜を図っているんだからさ。」

右京「ですが日本での公務はどうなさるおつもりですか?
僕のような窓際部署と違い官房長の場合は十分ご多忙でしょうに…」

小野田「それについては問題ありません。
実はこの仕事が終わったらちょっと早い春休みを取りましたので、さあ行きますよ♪」

右京「…」

右京:今にして思えば最初から付いていく気だったのでしょうね…

カイト:何か話の感じだと官房長って変な人なんですね。

角田:まぁ…死んだ人の事は悪く言えんが掴みどころのわからない人だってのは確かだったからな…

官房長は過去に一晩で三十人殺したり神様と結婚して化け物殺したりしてるからそこらのホラーでは敵わんぞ……

カイト:それで杉下さんの所用は何だったんですか?

右京:それは…

小野田「孤児を引き取る?」

右京「えぇ、ロンドンでの僕の友人がとても素晴らしい芸術を持った子供がいると言っていましてね。
僕にその少女を施設から引き取ってロンドンに連れてきてほしいと頼まれたのですよ。」

小野田「まったく…妙な事を引き受けましたね。
そのお前のロンドンでのお友達は何で自分で引き取りに来ないのかしら?」

右京「多忙な友人でしてね、だからこそ暇な僕に依頼してきたのですよ。」

小野田「頼まれたら何でもやる特命係…だからって私生活までやる事はないでしょ。」

右京「まぁ…普段の僕ならそうかもしれませんがこんな絵を見せられたらその子供に
興味が湧いてくるじゃないですか。」

小野田「携帯の画像か…どれどれ…ほぅ…これは…」

右京:その友人はどうもネットで描かれていたある絵に注目してその絵を描いていたのが
施設にいる孤児である事を突き止めたそうです。
ちなみにこれが僕にも届けられたその絵の画像です。

カイト:へぇ、これは…

角田:油絵か、スゴいな…これを子供が描いたってのかい?

4年前右京の下に届けられた絵の画像、それは動物が戯れる可愛らしい絵であった。
だが右京はその絵に対して何故か憐みのような眼差しで見つめていた。

右京:思えばこの絵を見た時に気付くべきだったのかもしれませんね…

カイト:へ?

右京:まぁそんな訳で僕は官房長を連れてその絵を描いた子供がいる孤児院へと向かったのですが…

~孤児院~


右京:幼い孤児たちが大勢集まる孤児院を訪れた僕たちはその孤児院の責任者である
シスター・アビゲイルに事の詳細を説明し
その絵を描いた子供を引き取ろうとしたのですが…

カイト:何かあったんですか?

右京「こちらの絵ですが…」

アビゲイル「確かにその絵はウチの孤児が描いたものに間違いありません、ですが…」

小野田「どうかしたのですか?」

アビゲイル「先日…その絵を描いた子供は余所の家庭に養子縁組されたのです。」

右京「おやおや、一足違いだったようですね。」

小野田「この場合はどうする気なの?」

右京「そうですねぇ、このまま無駄足を踏みたくもありませんが
かといってせっかく決まった養子縁組先に僕たちのような者が勝手に踏み込むわけにもいきませんしね…」

小野田「ごく普通の幸せの家庭か、もしくはその才能を高く買ってくれる教育機関か…
正直そんな選択を子供にさせるとは大人って醜いですね。」

右京「あなたが言うと…どうしても勘ぐってしまうのですが…
まぁそれはともかくとして、せめてその子供の事を少しお話頂けますか?」

アビゲイル「わかりました、実は…その絵を描いたのは9歳の女の子なんです。」

右京「おやおや、9歳の少女ですか?」

小野田「何?9歳が養子に引き取られたのがそんなに珍しいの?」

右京「この孤児院の子供たちを見ればわかると思いますが
ここにいる子供たちの大半が年齢10代以前の幼稚園~小学生低学年の子供たちです。
そんな子供たちばかりなのに9歳の少女というのはいかにも年長です。
大抵の場合、養子を引き取る家庭は物心つく前の子供を引き取っていくものなのですよ。」

小野田「なるほど、ペットと同じで小さい頃の方が躾とかも楽ですしね。」

右京「ですからそのような含みのある言い方は控えてもらえますか…」

アビゲイル「あの…もしよろしければお会いしてみるのはどうでしょうか?
子供には選択権があります、あなたたちのお話を彼女が承諾すればそれもまたいいのではないかと…」

小野田「子供の選択権は幅広くって事でしょうかね、どうする杉下?」

右京「ここまで来てこのまま手ぶらで帰るのも気が引けますしね、わかりました。
その少女と一度会ってみようかと思います、ところでその少女のお名前は?」

アビゲイル「少女の名前はエスター、エスターはこの近隣に住むコールマン夫妻に
引き取られていきました。」

右京:僕がエスターを知ったのはこの時でした、それから僕たちはすぐにコールマン夫妻の所へ向かいました…

調べてみたら、ホラーでした

とりあえずここまで

一応話の流れとしては2009年の過去の回想が本題になりますので現代の右京さんが語り手役になります。

おまけに今回の右京さんの相棒役は亀山さんでも神戸さんでもカイトくんでもなく官房長という異色コンビで

やっていこうかなと…

>>9

マジですか?官房長スゲェな…でも今回はホラーではないのでご安心を…
リングと呪怨のクロスでホラーはもうお腹いっぱいですので…

>>17-19

調べてみると確かにエスターってホラー扱いなんですよね

けど超能力もなければ別に幽霊でもないのに解せぬ…

ちなみに参考資料にエスターのDVD借りに行こうとしたら近所のレンタル屋からエスターのDVD軒並みレンタルされまくって
いたので遅くなりました…

近隣のレンタル店5軒以上回って全滅とかマジあり得ないし…

ところでSSLって何すかコレ?

>>20
SSLについては管理人のツイッターにあるで

~コールマン家~


右京:4月とはいえまだ雪の残る時期、僕と官房長はコールマン夫妻の家を訪ねました。
まずはコールマン一家の事を説明しましょう。

カイト:コールマン一家?その家には夫妻の他にも家族がいるんですか?

右京:えぇ、まずは…
夫のジョン・コールマン、建築士で二児の父親です。
建築士なだけあって家の地下室に作業道具が多数あり、おまけに庭の大きな木に
子供たちの秘密基地のような小さなウッドハウスを作っていましたよ。

妻のケイト・コールマン、以前は学校でピアノを教えていたそうですが現在は専業主婦です。

次に子供ですが…

ダニエル・コールマン、年齢12歳でコールマン家の長男で夫妻の実の息子です。

マックス・コールマン、年齢7歳でコールマン家の次女です。(本来は長女であるがエスターが養子になったために次女)
ちなみにマックスは先天性の難聴のため、耳が聞こえず補聴器を付けていました。

カイト:ちょっといいですか、コールマン夫妻には実の子供が二人もいた…
なのに…養子を取るって…普通養子って子供がいない家庭が引き取るものじゃないんですか?

角田:まぁそういうケースも多いだろうがアメリカは養子斡旋がよく行われているからな。
その辺大らかなんじゃないかな?

カイト:それにしても実の子供たちは思春期の難しい年頃ですよ、特に長男なんか生意気盛りでしょ!
そんな時に養子なんか引き取ったら家庭内が荒れるんじゃないッスかね?

右京:その事実を知らされた時に僕も少し疑問に思いましたが…
まぁとにかくそんな訳でコールマン家を訪ねてみると子供たちは学校へ行くために登校の準備をしていました。

右京「初めまして、我々はイギリスの大学の者ですが…」

ケイト「はぁ、どういったご用件でしょうか?」

小野田「そちらに引き取られたエスターという少女についてなんですよ。」

右京「えぇ、彼女の芸術のセンスを我々は評価してましてね。
出来れば彼女と話をしたいのですが…彼女はどちらに?」

ケイト「エスターならそろそろ出てくるはずですけど…」

ダニエル「母さん、エスターが来たよ…って何だあの恰好!?」

ケイト「ちょっとダニエル…何を言って…なっ!?」

右京:ケイトさんとダニエルが驚くのも無理はありませんでした。
エスターは首と手首に大きなリボンのようなチョーカーを巻いてフリルの付いたドレスのような服で学校に
行こうとしていたのですからね。
思わず官房長も苦言してましたよ…

小野田「まるで不思議の国のアリスがやってきたみたいね…」

右京「そのような事は仰らずに、服装は個人の自由ですよ。」

右京:僕はそう言いましたがさすがに転校初日ですからね。
母親のケイトさんはその服では駄目だと助言されましたが…

ケイト「ねぇ…エスター、さすがにその服は…買ってあげたジーンズはどうしたの?」

エスター「この服が良いの、お母さんだって言ってたでしょ。
『他の人と違っててもいい』って!」

ケイト「…」

右京:結局エスターはケイトさんの助言も聞かずにその恰好のまま学校に行きました。
ちなみに僕たちもその時点で少しエスターという少女に興味が出ましたので
子供たちが通う学校に一緒に向かったのです。


~学校~


右京:そして僕たちはエスターの通う学校にやってきました。
ちなみに次女のマックスは近隣の聾学校に通ってましたので別々の学校でした。
転校初日のエスターですが、先ほどのケイトさんの心配通りの事が起きました…

カイト:それってもしかして…

右京:えぇ、彼女は服装に関してクラスの全員から嘲笑されました。

角田:そういう点は日本もアメリカも一緒なんだな…

先生「エスターよ、みんな仲良くしてあげて。」

ブレンダ「おとぎの国が衣装返せって!」


クラスメイトたち「「アッハハハハハハハハハ!!」」


右京:こんな事言うのもどうかと思いますが…クラス中が大笑いしていましたね。
その笑い声は廊下にまで響いてましたよ

カイト:どんだけ浮いてんだよエスター…

右京:そして休み時間、僕たちが学校を剣がしてる頃に彼女が教室から離れたトイレに
駆け込む姿を目撃しましてね…

右京「それにしても米国の学校とはいえあまり日本と変わりはありませんね。」

小野田「同盟国ですからね、一々変わりがある方がおかしいんですよ、おや?
あのトイレに駆け込むのはエスターさんじゃありませんか?随分と涙目ですね。」

右京「恐らく、服装を笑われたのが悔しくてこうして教室から離れたトイレに駆け込んだのでしょうね。」

小野田「自業自得ですね、『郷に入っては郷に従え』のまさに日本語の諺通りですよ。」

右京「まったくあなたという方は…少しは情緒というものを…」

右京:その時でした!トイレから猿声の奇声と物に対して激しく当たる音が響いてきたのです!




エスター「「グギャァァァァァァァァ!!!!!!」」



ドガッ  バシッ  ガンッ


右京:我々はその音に驚き、隠れて様子を伺っていましたが彼女の初印象とはまったくかけ離れていました。

角田:癇癪か、まぁ子供なら珍しくもないな、ウチのもそんな時期があって大変だったよ…

右京:僕もその時は単なる子供の癇癪かと思いましたが…しかしそれこそ
普段は隠されている彼女の凶悪な部分が迂闊にも露わになったのかもしれません。
そして放課後、僕と官房長は改めてコールマン家にお邪魔して彼女にイギリスへ来ないかと打診したのですが…

~コールマン家~


右京「朝は慌しくてろくにご挨拶も出来ませんでしたね。
初めましてエスター、僕は杉下右京と言います。」

小野田「僕は小野田公顕と言います。」

右京「僕たちはイギリスの大学からあなたを引き取りに来ました。
どうでしょうか、将来のためにその類まれない才能を生かしてみては?」

エスター「答えはNOよ、まずあなたたちは東洋人でしょう。
そんなあなたたちがイギリスの大学から来たというのは少し怪しいと思えるわ。」

小野田「なるほど、ご明察だわね。」

右京「我々の身分は後で照会してくれればよろしいですよ、間違っても僕たちは怪しい者ではありませんので。」

ケイト「あの杉下さん、遥々遠方からきてくださったけど…その…なんというか…」

ジョン「既にエスターは我々の家族なんです、今更そんな事を言われても困りますよ!」

エスター「ごめんなさい杉下さん、私この家が気に入ったの。
私はこの家族の一員になりたい、だから…」

右京「そうですか…」

右京:結局エスターに断わられてしまいました。

カイト:まぁ無理もないでしょうね、やっと決まった養子先でいきなり変な外人に
遠いイギリスに行けだなんて無茶な話なんですよ。

右京:そんな訳で帰ろうとした矢先でした、庭で長男のダニエルがペイント弾を使った
射撃ゲームで遊んでいたのですよ。

ダニエル「うらー!当たれ!」


パシュッ   パシュッ


右京「クレーン射撃の真似事ですか。」

小野田「この銃社会の国を代表するような遊びですね、日本でも一昔前にエアーガンとか流行ってましたよね。」

右京「僕はこのような下品な物に興味を持つのが未だに理解出来ませんが…」

小野田「まったくお前は潔癖だね、そうやって警察官の必須である射撃訓練を毎回サボっていると
前に亀山さんから聞いた事がありますよ。」

右京「…」

右京:その時でした、ダニエルが射撃の的付近に迷い込んできた一匹の鳩を撃ってしまったのです!


パンッ


バサッ


ダニエル「やばっ!?」

右京「なんと!」

小野田「当たっちゃいましたね、しかも鳩はショック状態を起こしている。
もうこれは助かりそうもないですよ…」

ダニエル「そ…そんな…だってペイント弾だから致命傷になるわけが…」

右京「たとえ我々人間にはそうであっても鳩のような小さい生き物には致命傷にはなりかねないのですよ!
銃を使うならその自覚をなさい!!」

カイト:なるほど、射撃ゲームの途中で鳩を誤って怪我してしまった。
子供ならちょっとしたトラウマですよね…

右京:えぇ、僕もダニエルに説教をしてあとは鳩をなんとか応急処置しようかと思った
まさにその時でした、エスターが次女のマックスを連れて現れたのですよ!

角田:マックスを連れて?

右京:エスターは養子に来てから家に居る間はいつもマックスの世話を進んでしていたそうです。
まぁ…これも後で重要な手掛かりになるのですが…

右京「エスターにマックスですか、ここはあまりキミたちに見せるような光景ではありません。
すぐに家の方に戻ってください。」

エスター「いいえ、ご心配なく。それよりさっきの事は全部見てたわ、可哀想な鳩さんね…」

小野田「そうですね、これというのも…」

右京:官房長が言い掛けたその時でした、エスターが石を持ち出してそれをダニエルに渡し
こう告げたのです!

エスター「ダニエル、あなた責任取ってこの鳩を楽にしてあげて!」

右京「!」

小野田「?」

マックス「!?」

エスター「鳩は苦しんでいる、あなたが撃ったからこうなった。
死ぬまで苦しませるつもり?可哀想でしょう。」

ダニエル「お…お前…何を言ってるんだよ!そんな事出来る訳が…」

右京「そうですよ、あなたの言う事は極端過ぎ…」

右京:僕が言い掛ける前にエスターは行動を起こしてしまいました…




グシャッ



右京:瀕死の鳩はエスターが石で潰してしまいました、そして彼女は僕たちの前でこう言いました。

エスター「もう大丈夫、天国に行ったから。」

右京:それから母親のケイトさんに呼ばれ子供たちは家の中に戻って行きました。
残った僕たちは死んだ鳩を供養し、改めてエスターに対して思う事がありました。

小野田「正直僕はこれ以上あの少女に関わりたくはありませんね。
あの子は危険過ぎます、杉下…お前はどうするの?」

右京「僕はまだここを離れません、あの少女にはまだ何か秘密があるはずです!」

とりあえずここまで

ところで…昨日の相棒シーズン12の1話でまさか三浦さんが退職とは…

やばい…話の内容を変更しないといかんです…

>>22
なるほど、そういう事でしたか、わかりやした!

>>40
×右京:そして休み時間、僕たちが学校を剣がしてる頃に彼女が教室から離れたトイレに
駆け込む姿を目撃しましてね…

〇右京:そして休み時間、僕たちが学校を見学してる頃に彼女が教室から離れたトイレに
駆け込む姿を目撃しましてね…

変換ミスってたんで直しました…

~コールマン家~


右京:翌日、僕と官房長は再びコールマン家を訪れました。
するとどういう訳か家には夫のコールマン氏とエスターしかいなかったのです。

右京「おや、今日は平日のはずですが何故エスターは家に居るのですか?」

ジョン「実は…」

エスター「今日は学校で歯の診断があって恐くてサボっちゃったの。」

右京「おやおや、ズル休みですか?それはいけませんね。」

小野田「まぁその気持ちは僕もわかりますよ、僕も奥さんに油っこい物を食べるのを控えるように
口酸っぱく言われてますから。」

カイト:鳩を平気で殺したくせに歯の診断が恐い?俺に言わせればお前の方が恐いっての…

右京:確かに僕もそれについて疑問に思いましが…しかしそれ以上に気になる事がありました。

角田:そりゃ一体何だい?

エスター「ねえねえパパ、私が描いたパパの絵この人たちに見せてあげてもいい?」

ジョン「ああ、いいとも。」

右京「お二人は仲がよろしいのですね、まるで恋人みたいな感じですが…」

ジョン「ハハハ、エスターはいい子ですよ!
ここに来た日なんかマックスと二人で私たち夫婦の寝室にやって来て一緒に添い寝したくらいですからね♪」

右京「なるほど、ちなみにエスター、その時あなたはお父さんと一緒に寝ましたか?
それともお母さんとでしょうか?」

エスター「勿論パパとよ、それがどうかしたの?」

右京「失礼、ただ興味があったものでして。」

小野田「…」

右京「ところでちょっとお手洗いを借りてもいいでしょうか?」

ジョン「えぇ、どうぞ。」

右京:そして僕はトイレを借りるついでに少し家の中を調べてみました。

カイト:まったく事件が起きてないのに外国まで来て何してんですか?

右京:ですがその甲斐あって洗面所の戸棚で奇妙な物を発見しましてね。

角田:一体何を見つけたんだい?

右京:鎮痛剤です、それもかなり効き目の強い薬ですよ。

カイト:まさかそれをエスターが飲んでたんですか?

右京:いえ、あの戸棚は大人でないと届かない位置にありました。
そんな場所に子供の背丈であるエスターが置いたとは考えにくい…

カイト:それじゃあ誰が?

右京:話を続けます、洗面所をあらかた物色した後で僕は室内植物が飾られている部屋に行きました。
するとそこにはたくさんの白い薔薇の花が咲いていました、まだ4月の雪の残る時期なのにですよ。
そしてその花にはあるメッセージが書かれていました。

カイト:メッセージ?

右京:メッセージはこう記されていました。


“あなたのぬくもりを感じる” 


“あなたの声が聞こえる” 


“会えなかったけど愛している”


そう記されていたのです。

カイト:なんだか…意味深なメッセージですね…

角田:俺にはさっぱりわからんな…

右京:えぇ、僕も気になってコールマン氏に伺おうと席に戻ったのですがその間に官房長が
お二人と仲良く話をしてましてね…

角田:まったく…官房長に対して恐れ多いな…

カイト:まぁ外国の人間に警察庁のお偉いさんだとか言っても説得力無いですかね…

右京:しかし面白い話は聞けましたよ。

右京「おやおや、みなさん盛り上がってますね。」

ジョン「いやぁ、我が家のお恥ずかしい話ばかりですよ。」

エスター「けどママったら心配性なんだから…
庭の近くにある池でマックスと遊んでたら氷が割れたら大変だって言うし!
おまけにお風呂浴びる時だって鍵は掛けるなって、私だって年頃なのに失礼しちゃうわ!」

右京「鍵を…ですか…なるほど。」

小野田「まあ確かにお嬢さんくらいの年齢だと羞恥心を嗜むお年頃ですからね。
娘さんの事をもう少し信頼してあげるべきだと僕は思いますよ。
あ、これは子育てをした年上からのアドバイスだと思ってください。
けど実際に子供を育てたのは妻ですけど、僕は仕事人間でしてね、家の事は全部妻に任せっきりでしたよ。」

ジョン「ハハ、肝に銘じておきますよ。」

角田:鍵か、そういえばウチのガキも反抗期の頃は部屋の鍵付けさせろってうるさかったな…

カイト:子供だってひとりだけの空間欲しいですからね。

右京:まあその話は置いといて僕は例の白い薔薇のメッセージを聞いてみたのです

右京「そういえば室内植物がある場所に気になるメッセージがあったのですが…」

ジョン「…」

右京:その瞬間ジョンさんの顔色が間違いなく変わりました。

ジョン「ジェシカ…」

右京「はぃ?」

右京:それっきり彼は白い薔薇については触れませんでした、その時気まずくなった雰囲気を
改善してくれたのはエスターでした。
彼女は急にピアノを弾き始めチャイコフスキーを見事に弾いたのですよ!

カイト:へぇ、そいつはスゴイや!

角田:チャイコフスキー弾けたのがそんなにスゴイ事なのか?

カイト:そりゃ勿論!9歳でそんな芸当出来たら間違いなく天才ですよ!!
ちなみに俺もピアノ習わされましたけどこれがてんでダメで…

角田:ハハ…さすがお坊ちゃんだ…

右京「見事なチャイコフスキーですね…」

小野田「本当に…」

ジョン「エスター、キミはピアノが弾けたのか?」

エスター「どうパパ?上手く弾けたでしょ!」

ジョン「あぁ!素晴らしい才能だ!!」

右京:その場にいた誰もが認める素晴らしい演奏でした、思わず僕も拍手するほどに…
その後僕たちはコールマンさんが街を案内してくれると言うので家を出て近くの公園に散歩に出掛けました。

~公園~


公園にはある少女が先に遊んでいました、その少女は先日学校でエスターの格好を真っ先に嘲笑した張本人でした。

ブレンダ「あらアンタは昨日の転校生?」

エスター「…」

ブレンダ「アンタ今日ズル休みしてたよね、もしかして傷ついちゃったのぉ~?」

カイト:いじめっ子ってどこの国にもいるんだな…

右京:ちなみにこの時コールマン氏は偶然通りかかった知り合いのジョイスという女性と談笑してました。

小野田「あら、何か険悪な雰囲気ね。」

右京「それなら止めてはどうですか?」

小野田「それもちょっと…子供の喧嘩に大人が手を出すのは大人げないですから。」

右京:この時止めておくべきでした、しかしこの事態があったからこそ後に重大な手掛かりが
掴めたのもまた事実なわけですが…

カイト:手掛かり?

右京:ブレンダはエスターを突き飛ばしたのです、その時にある古い本が彼女のポケットから出てきました。

ブレンダ「うりゃっ!」

エスター「きゃっ!?」


ドンッ  バサッ


右京「おやおや、これはいけませんね!」

小野田「あら、本のページが破けてますよ…」

エスター「!」

右京「これは聖書ですね、しかもこの古さからして20~30年は経過しているものですが…」

小野田「それに何かしら、男性の写真もいくつかあるね。」

右京:僕は破けた聖書のページを拾いながらあるサインに注目しました。
それは…

右京「『SAARNE・INSTITUUTE』(サールン・インスティチュート)?」

エスター「!?…か…返して!!?」

右京:その瞬間彼女が物凄い剣幕で破れたページを取りに来たのです。

エスター「ハァハァ…」

右京「失礼、大事な物でしたか。」

エスター「そう、とても大事な…物…」

ブレンダ「聖書なんか持って変な子!
そんなの持っているの精神病患者くらいしか持ち歩かないんだから!?」

エスター「…」

右京:そう言ってブレンダは公園にあるアスレチックジムに遊びに行ってしまいました。
僕と官房長がエスターを気遣おうとした時、丁度タイミング悪くコールマン氏がジョイスさんを紹介してくれましてね。
結局僕たちはエスターから目を離してしまい、その直後事件は起きました。



ブレンダ「「キャァァァァァァァァァァ!!???」」



右京:ブレンダの悲鳴が聞こえたのです、彼女はアスレチックジムに付いている滑り台から
落っこちてしまったのです!

カイト:それじゃ死んで…

右京:いえ、その時は幸いにも足の骨を折るだけの全治2か月の怪我ですみました。

角田:だが何でそんな事が…事故か?

右京「何故こんな事に?」

小野田「何があったかわかりますか?」

ブレンダ「突き落とされた…あいつに…」

右京:ブレンダが指を差したところにエスターが立っていました、しかし彼女は…

エスター「私じゃないわ、私は今さっきここに来たばかりよ!ブレンダの悲鳴が気になって…」

ジョン「あぁわかっている、なんて子だ!ウチのエスターが犯人だと決めつけるとは!?」

ブレンダ「ち…違う!私は本当にエスターに…」

ジョン「黙れ!聞きたくもない!」

右京:結局ブレンダの証言は嘘だと思われ、怪我もあり彼女はそのまま病院に直行しました。
エスターもコールマン氏が連れ帰り僕たちだけが現場に残ったのです。

角田:現場って…そんな大した事もない事件に警官なんか来ないだろ。

右京:えぇ、ですので僕たちだけでちょっと現場検証をしてみたのです。

右京「ここがブレンダが落ちた滑り台の上り場ですか。」

小野田「確かに足を躓いて落ちたというならわからなくもないですね。」

右京「しかしブレンダは9歳ですよ、年少の子ならともかくそんな子が滑り台から落ちるにしても
どう落ちるというのですか?」

小野田「そりゃ勿論滑ろうとして…」

右京「落っこちたと?しかし滑り台にはこのように囲みがあります、どう落っこちろというのですか?」

小野田「ではお前は…」

右京「えぇ、ブレンダの証言通り突き落とされたとみて間違いないでしょう。」

小野田「それをエスターがやったと?」

右京「それも間違いなく殺す気で!」

小野田「殺す気で?」

右京「この滑り台は大体3メートル近くの高さがあります、9歳の子供がこんなところから
突き落とされたらどうなると思いますか?
下手をすれば首の骨を折って死んでいたはずですよ!」

小野田「足の骨を折っただけですんだのは運が良かった、そういう事かしら?」

右京「えぇ、エスターは恐ろしい少女です。あの子は絶対に本性を隠しています!」

とりあえずここまで

何で右京さんたち警察官の身分隠すんという疑問がありますが
現段階で殺人事件すら起きてませんしおまけに外国で日本の警察官だと言っても正直説得力がない
つまりそんな事言っても無駄なので言わないだけです

~喫茶店~


右京:その夜、僕と官房長は晩御飯を取りながらコールマン一家とエスターについて
話し合っていました。

小野田「やはり本場のハンバーガーとコーラは違いますね、日本とは味が違います!」

右京「確かにハンバーガーは本場アメリカの方が大きさがそこら辺にある日本のチェーン店の物よりも
大きさが違いますが、コーラは飲料水ですよ…」

小野田「まったくお前はすぐに揚げ足を取る、それでは出世しませんよ。」

右京「ご心配なく、その予定はありませんので。それよりも話したい事があるのですが…」

小野田「エスターの事ね。」

右京「えぇ、エスターも勿論ですがそれにあの家についてもいくつか気になる点が五つあります。」

小野田「フーン、それって何?」(モグモグ)

右京「まず一つ目は、鍵について…
エスターは子供とはいえ一応女性です、これを男親である夫のジョンが言うならわかります。
しかし鍵の云々について言ったのは女親であるケイトです、彼女だって同じ女性なら
エスターの心境はわからなくもないはずですよ。
まだ慣れない家で裸姿になる、年頃の少女なら抵抗があるはずだと思わないのですかねぇ…」

小野田「そういう無粋な事考えるの…男が言うと変態だと思われますよ…」

カイト:その意見には俺も官房長に賛成ですね。

右京「二つ目、鎮痛剤です。
洗面所で発見した効き目の強い鎮痛剤、何故そんな物が置いてあったのか…」

小野田「旦那さんが飲んだとは思えませんね、話してみてわかったけどあの人僕と違って
裏表なさそうな性格だし…」

右京「エスターはあの戸棚には手が伸ばせない、他の子供たちは論外。
だとしたら飲んでいるのは奥さんという事になりますね!」

小野田「それは何のためでしょうか?」

右京「三つ目、白い薔薇のメッセージ。あのメッセージは一体何なのでしょうか?」

小野田「確か“あなたのぬくもりを感じる”とかそんな内容でしたっけ?
女性ならわかりそうですけど、僕たち男の子だからね…この手の話は門外漢ですよ。」

右京「四つ目、そもそも何故コールマン夫妻は養子を取ったのでしょうか?」

小野田「アメリカでは養子を取るのはそう珍しくもない事だと聞いてるけど?」

右京「確かに、しかし長男のダニエルは生意気盛りの手の掛かりそうな子で
妹のマックスも耳に障害を持つ障害児です。
正直僕にはそんな手の掛かる子供たちがいるのに更に養子という余所の子供を引き取る必要と
余裕があの一家にあるようには思えないのですがね…」

小野田「もしかして夫妻が養子を引き取ったのは育てる以外の目的があるのかしら?」

右京「五つ目、ジェシカとは誰の事でしょうか?」

小野田「確かコールマン氏の口から咄嗟に出た名前ですね、名前からして女性でしょうが…」

右京「この名前を言った直後コールマン氏の顔色が明らかに変わりました、恐らく何かあるはずですよ!」

小野田「ここまでがコールマン一家の謎ですか、それでエスターに関しては?」

右京「公園で彼女が落とした聖書、アレいくらなんでも古過ぎではありませんか?」

小野田「親御さんの物というのはどうかしら?もしくは孤児院で使ってたのを貰ったというのは?」

右京「なるほど、それも考えられなくはない。
しかし彼女は孤児、親から貰ったというのはどうかと思いますが…
それに孤児院で使っていたのを使用しているという事ですがそれも恐らく違うでしょうね。」

小野田「それはどういう事かしら?」

右京「あの本には印が押されていました、サールン・インスティチュートと…」

小野田「ヘェ、お前はよく見てるよね。」

右京「もしあの聖書が孤児院の物なら孤児院の名前の印が押されていたはず!
なのに孤児院の名前とは全く関係ない名前の印があった、何故でしょうか?」

小野田「それに本に挟まれていた男性たちも気になるよね、あの人たち何なのかしら?」

右京「そして彼女の服装、僕の目からしても他の子供とは明らかに違います。」

小野田「あのブレンダという少女が言うように、彼女浮いてるよね。」

右京「まるで自分が大人の女性である態度がいくつか見受けられますね。」

小野田「本当にね、そういえばお前が扱った事件に以前子供が犯罪を犯した事件がありましたよね。」

右京「えぇ、当時小学生であった手塚守少年がボーガンを用いて犯行に及んだ起こした殺人事件ですね。
そういえばあの事件はあなたが死体の第一発見者でしたね。」

小野田「彼女もその類だと思いますか?」

右京「確かにあの少年は同学年の子供たちよりも知的な面がありましたが…
守くんと同一の犯人像かというなら…僕の見解を言わせてもらうと恐らく違います。」

小野田「ほぅ、それは何故?」

右京「守くんは担任の前原恭子さんを守るために致し方なく殺人に及んだ、つまり大切な人を守るために犯行に及んだのです。
守くんは両親がいなくて唯一自分に優しく接してくれた先生のためにですよ!」

小野田「あら、同じかと思っちゃった…」

右京「まったく…あなたは…守くんの名誉のために言っておきますが
守くんは癇癪を起して殺人を行ったわけではありません、それだけはお忘れなく!」

小野田「ハイハイ、それはともかく調べるんでしょ、そのサールン・インスティチュートの事…」

右京「えぇ、ですが…」

右京:調べたくてもあの街は小さな街でしてね、日本みたくそこら中にネットカフェみたいな
ネット環境が整っているわけでもない…
それに連絡が取れたからといって現在休職中の僕においそれと孤児の情報を教えてくれるのは望み薄だと思いましてね…

カイト:じゃあ諦めたんですか?

右京:まさか、ですが…官房長からちょっとした提案をもらいましてね…

角田:提案?

右京「こんな時亀山くんが居てくれたら日本の警察という事で捜査協力の名目で
調べられる事が出来るのですが…」

小野田「あら?今になって亀山さんの存在をありがたがってるの?
けどお前のとこにも新しい人がいるじゃないの。」

カイト:新しい人?

角田:その当時に特命にいたヤツといえば……そうか!あいつか!?

右京:えぇ、彼です。

カイト:へ?だ…誰?

~特命係~(2009年)


トゥルルルルルル  トゥルルルルルル


神戸「はいもしもし、特命係ですけど?」

右京『僕です。』

神戸「僕?もしかして杉下さんですか?」

右京:角田課長の察する通り、僕は当時特命係に配属されたばかりの神戸くんに連絡を取りましたが…

カイト:何か嫌そうな顔してますけどどうしたんですか?

右京:…

右京『確か…僕が把握している限り日本時間は午前9:30だと思うのですが…』

神戸「それが何か?」

右京『僕は1時間前の午前8:30から国際電話を掛けていたのですが一向に繋がりませんので、
キミが隣の部署の角田課長のお手伝いでもなさっているのかと思ったのですが…』

神戸「お言葉ですが、現在の特命係は僕が係長代理を立派に勤めていますので
現在休職中の杉下警部に文句を言われる筋合いはありませんけどね!
大体杉下さんは僕に引き継ぎも無しで急に休職しているんですからそんな文句を言われたくはないですよ!!」

右京『おやおや、僕はちゃんと引き継ぎをしたはずですよ?』

神戸「まさか『角田課長が飲むためのコーヒーを欠かさずに注いでおくように!』とか言ってたのが
引き継ぎだったっていうんですか!?冗談にも限度ってものがありますよ!!」

右京『まぁ…それはともかく実はキミに調べてほしい事があるのですよ。』

神戸「ふむふむ、『エスター』という孤児の少女と『サールン・インスティチュート』という場所についてですね。」

右京『恐らくそのサールン・インスティチュートは孤児院かもしくは学校だと思いますので、ではお願いします。』

神戸「お任せください、すぐに調べてみせますよ!」


ガチャッ


再びアメリカ


~喫茶店~


小野田「ようやく連絡が取れましたか。」

右京「えぇ、一時間掛けてようやく…まったく弛んでますねぇ。」

小野田「まぁ…仕方ないでしょう、神戸尊…警視庁からの推薦組で特命係に来る前は
警察庁警備局警備企画課課長補佐で階級は警視!
それが何の因果か警視庁の陸の孤島特命係に追いやられておまけに階級も二階級降格…
これでやる気を出せと言う方が酷って話ですよ、もっと優しくしてあげなさいよ。」

カイト:警察庁の課長補佐って出世街道まっしぐらじゃないですか!
そんな順風満帆な警察官僚の道を歩んでいた人が何で特命に来たんですか!?

角田:俺から言わせればアレだな、あいつ上の人間に楯突く事があったからそれでだと思うよ!

右京「かつて僕を切り捨てたあなたがその台詞を言いますか?」

小野田「まったくお前は昔の事を一々根に持つんだから、そういうのはね大らかな心で許してあげるのが一番ですよ。
このアメリカ大陸のような広大な大地を見ながらそう思いませんか?」

右京「思いませんね、大体神戸くんに関して言えば気になる事があるのですが…」

小野田「気になる事?」

右京「実は大河内監察官に神戸くんが特命係に左遷された理由を問い合わせたのですが…」

小野田「あら?お前でもそういう事気になるんだ。」

右京「これでも彼の上司ですので、そしたら神戸くんの左遷理由が警察庁で止まっていて
その詳細が一切明かされていないと言われましてね…
そんな素性の彼を送り込んで一体何が目的なのですか?」

小野田「もしかして僕が黒幕だと疑っているの?」

右京「そうでなくてもあなたなら神戸くんが特命係に送られた理由をご存じなのでは?」

小野田「実はねぇ…僕も知らないの。」

右京「…」

小野田「本当だよ、そんな疑わしい顔で睨んでも何も出ませんから…」

角田:なんてこった…神戸が特命係に送られたのに深い理由があったとは…

カイト:神戸さんの特命係への配属理由か、気になりますね!

右京:盛り上がっているところ悪いのですが…神戸くんの特命係への配属はこの事件とは
何も関係ないので…

カイト、角田:……

とりあえずここまで

先ほど右京さんが述べた事件は皆さんがレスしたように相棒シーズン1の第5話「目撃者」

神戸さんが特命に配属された理由はシーズン8最終話「神の憂鬱」からそれぞれ参照しました。

このSSでは上記の事件についてこれ以上詳しい事は書きませんのでどうしても知りたい方は昼間の再放送か
レンタルで見て確認なさってください。

官房長ってあの事件の捜査にはそこまで関わってないはずだが
手塚守の事件で死体を最初に孫の付き添いでみつけたから気になって調べたのか

右京:そして我々は翌日もコールマン家にお伺いしたのですが…

カイト:何かあったんですか?

右京:コールマン家の前でエスターがいた孤児院の責任者であるシスター・アビゲイルが車でやって来ていたのですよ。


~コールマン家~


右京「シスター・アビゲイル、ご無沙汰しています。」

アビゲイル「あなたたちは確か杉下さんに小野田さん、まさかまだ交渉なさっていたの?」

小野田「えぇ、こちらの杉下がエスターにぞっこんで。」

アビゲイル「ぞ…ぞっこん!?」

右京「誤解のある発言は控えてください、ところでシスターは何故こちらへ?」

アビゲイル「じ…実は…」

右京:シスター・アビゲイルがコールマン家を訪れた理由は昨日エスターが、
ブレンダを突き落とした一件でエスターに問題がある事を危惧してとの事でした。
僕たちはコールマン夫妻と一緒にシスターの話を改めて聞くと、
エスターは数年前ロシアから引き取られ、引き取られた先のサリバン一家が火事が起こり
その時エスター一人が助かった事、そして孤児院に居た時も泥棒騒ぎや喧嘩があるたびに
必ずその現場にはエスターが居たとの事です。

角田:それって偶然じゃあ…

カイト:いくらなんでもそんな立て続けに偶然は重なりませんよ!

右京:えぇ、カイトくんの言う通りです!
シスターはコールマン夫妻にエスターの危険性を訴えたのですが…

ジョン「エスターはそんな事しません!いいですか、あの子は親を亡くした哀れな娘なんだ!
そんな可哀想な子が犯罪なんか犯すもんか!?」

右京:夫のジョンは頑としてシスターの助言を聞き入れてはくれませんでした。
この時彼がシスターの話にちゃんと耳を傾けてくれたらあのような悲劇は起きなかったのに…

カイト:悲劇?

右京:話を続けます、結局コールマン氏はシスターの助言を聞き入れずシスターは車で帰って行きました。

小野田「せっかくシスターが助言してくれたというのにコールマンさんたら聞く耳持たないのね。」

右京「コールマン氏はシスターの事を大変気に入っていますからね。」

ダニエル「あいつがネコ被っているのはパパの前だけさ、僕の前じゃ…」

右京「おや、ダニエルくん。今の言葉はどういう事でしょうか?」

ダニエル「し…知らないよ!?」

小野田「あら、駆け足で逃げちゃって…何かあったのでしょうか?」

右京「…」

右京:その時でした、妻のケイトさんが家の中で何かを探していたようなのです。

右京「おや、どうされましたか?」

ケイト:実は…エスターの白いブラウスが一着見当たらないの。
もう、どこへ行ったのかしら?

小野田「エスター?そういえば家の中では見かけませんね。」

ケイト「きっとマックスと一緒に遊んでいるんでしょう、二人はいつも一緒だから…」

右京「ところで奥さん、先ほどのシスターの話ですがあなたはどう思いますか?」

ケイト「エスターの事ね、実は私も思い当たる事があるんですけど…」

右京:ケイトの話はこうでした、エスターは何故か自分の買った服を着ようともせずに
いつも自分の服ばかり着たがる。さらに…

ケイト「…これはここだけの話にしてもらえますか、エスターったらその私たちが一緒に
寝ているところを覗いて…そこであの子ったらこう言ったんです…
『知ってる、ファッ○してたんでしょ?』って…」


カイト、角田:○ァック!?


角田:いやぁ…あっちの子供は進んでんだな!

カイト:え…9歳でそんな事普通言うかな…

右京:えぇ、ケイトさんもその事を危惧していて思わずエスターを施設に追い返そうとコールマン氏に訴えたそうです。

右京「そういえばケイトさん、エスターは昨日僕たちの前でピアノを弾いてくれたのですが…」


ケイト「えっ!?」


小野田「見事なチャイコフスキーでしたけど…何でそんなに驚くのかしら?」

ケイト「だってあの子…私の前じゃ弾けないって言ってたから教えてあげてたんですよ!
それなのにチャイコフスキーだなんて…」

小野田「もしかしてあなたの教え方が上手だから覚えたとか?」

ケイト「ありえないわ!?あの子がウチに来てからまだ1週間よ!
それに私はチャイコフスキーなんて教えてすらいないのに…」

右京「という事はですよ、エスターは最初からピアノを弾けたという事になりますね。」

小野田「けど何でそれを秘密にする必要があるのかしら?」

右京「失礼ですがケイトさんは以前教職に就いていたのではありませんか?」

ケイト「えぇ…確かに以前学校で音楽を教えてましたが何故それを?」

右京「やはりそうでしたか、あのような立派なピアノをお持ちで
子供たちの躾にも厳しく、尚且つ鍵を掛ける事を許さないという事はあなたが
元は教職の人間である可能性が高いと思いましてね。」

ケイト「けどそれがどうしたというの?」

右京「恐らくエスターはこう思ったのでしょう。
あなたのお子さんであるダニエルは父親同様活発な男の子でピアノには一切興味無し、
妹のマックスは聴覚障害を患い音楽を習わす事自体が不可能…
つまり現在のあなたの周りにはピアノを教えるにも相手がいない、そう思ったエスターが
あえてピアノについて何も知らないふりをしていた、そういう事になりますね。」

ケイト「私が教えたがっていたから教わっていた?何よそれ!バカにしているの!?」

右京「恐らくそうでしょうね、彼女が優しさからそんな行動に出たとは考えづらいかと思いますが…」

右京:僕たちはエスターから詳しい話を聞こうかと思いエスターを探したのですが
何故かエスターは見つからず諦めて帰る事にしました。
しかしこの時恐ろしい事態が既に起こっていたのですよ!!

カイト:恐ろしい事態?

右京:車での帰り道に、僕は家に帰るエスターとマックスを見つけました。
ですがエスターに連れられたマックスは顔面蒼白で何かあったのか気になったのですが、
子供たちは僕たちに気付かず、森の方へと向かって行きました。
それから僕たちは車を走らせましたがそのすぐ先の河原の橋付近で乗り捨てられた不審な車を発見しました。

角田:車?

右京:その車は先ほど一足早くコールマン家を去ったシスター・アビゲイルを乗せた車だったのですよ!


カイト、角田:なにぃっ!?


右京「車の中には誰もいません、争った形跡もない、ですがこのブレーキ跡は一体…」

右京:シスターの車はどうも急ブレーキを掛けたようでして、道路にその時のブレーキ痕がはっきりと残っていました。
それと同じく官房長が河原付近である発見をしました?

カイト:官房長は一体何を発見したんですか?

小野田「杉下!ここに何かを引きずった跡がありますよ!この跡は…川に向かっているようですね…」

右京「川…無人の車…まさか!?」

右京:それからすぐに僕たちは地元の警察を呼び河原付近を捜索してもらいました。
そして出てきたのですよ!

角田:出てきたって何が?

カイト:まさか…出てきたのって…

警官A「大変です!川の中から死体が…」

警官B「なんだと!?」

右京「失礼、僕たちにも見せてもらえますか?」

小野田「おい杉下…これは…」

右京「えぇ…間違いありません…この死体は…」

右京:そう、川から発見されたのは先ほど僕たちと別れたシスター・アビゲイルの死体でした!!

とりあえずここまで

>>105
そう解釈して頂ければよろしいかと…

~一旦回想が中断され現在の特命係~


右京の過去の話の最中に大木と小松がある要件のために角田課長を呼びに来ていた。

大木「課長!城南金融のガサ入れ…早く行きますよ!」

小松「もうみんな準備出来てますよ、あとは課長だけなんですから!」

角田「しまった、警部殿の話に夢中になってもうそんな時間だったか…じゃあちょっくら行ってくるわ!」

カイト「今回は結構大捕り物なんですか?」

角田「あぁ、なんでも海外のマフィアと取引するって匿名のタレコミがあってな!
その海外のマフィアってのがとんでもない連中でな…
貧しい国の子供たちの人身売買やら違法の臓器提供だとか真っ黒な連中なんだわ!」

右京「それなら僕たちもお手伝いに…」

角田「いや、今回は末端のヤツらしかいないらしいからな。
ここのところお前さんたちには色々と手伝ってもらってるし…そう何度も頼んでちゃ悪いだろ、それじゃ!」

角田課長は部屋から出て行き、残ったのは右京とカイトのみとなった。

カイト「行っちゃったな、俺たちはどうしますか?」

右京「今回は角田課長に甘えておきましょう、それよりも話しの続きよろしいですか?」

カイト「そりゃ勿論!あんな中途半端に終わっちゃ気持ち悪いですからね!」

右京「では話を続けます、シスター・アビゲイルの死体を発見した僕たちはそのまま地元の
警察署に聴取に連れていかれました。」


再び回想


~警察署~


カイト:連れて行かれたってまるで強制的にって感じですね、何があったんですか?

右京:簡単な話です、僕と官房長が疑われていたのですよ。

イッタミーン「ハケ!ユータチガキルシタンダロコノヤロ!!」

セリザッワー「センパイオチツイテ…」

小野田「あら?どうして僕たちが殺した事になっちゃうのかしら?」

右京「なるほど、長期滞在している外国人の僕たちが第一発見者である事が真っ先に怪しいという訳ですか…」

ミッウラー「ソウイウコトダ、ワカッタラハクジョウスルンダナ!」

右京:まあ彼らが疑うのも無理はありません、碌に事件も起きない片田舎の街でいきなり起きた殺人事件、
そこに素性もわからない外国人がいたとすればまず真っ先に疑われるでしょうね。

カイト:どうでもいいけど…

米沢:その刑事たち…どこかで覚えのある方々ばかりですな…

カイト:うわっ!米沢さん…こんなとこで何してんですか!?

米沢:杉下警部に落語のチケットの購入を頼んでいたのですがお二人がなにやらお話に夢中でしたので…
それで続きは?

右京:官房長が身分を明かして取り調べをやめさせようとしましたがそれを僕が止めました。

カイト:な…何で?警察庁の官房長だって言えば疑いが一気に晴れるじゃないですか!

右京:だからですよ…

小野田「何で止めるのかしら?」

右京「僕はあなたのためを思って言っているのですがね、もしこの場で身分を明かしてごらんなさい。
アメリカの片田舎で何をしていたのか疑われますよ。」

小野田「あら、何も疾しい事なんてしてないけど?」

右京「あなたがそう思わなくても他の人間はどう思うかわかりませんがね…」

小野田「ならこのまま黙秘を続ける?」

右京:さすがにそういう訳にもいかず無罪を訴えようとした時でした、我々の味方になってくれる人物が現れたのです。

米沢:異国の地で随分とまあ粋な人物もいたものですな!

カイト:一体誰なんですか?

カメヤッマー「オイテメーラ!マチヤガーレ!」

イッタミーン「テメコノッ!コウツウガカリノカメヤッマー!
シャシャリデテンジャネーゾコノヤロー!?」

カメヤッマー「シャラップ!ガイジンダカラッテウタガウノハヨクネーヨ!!」

右京「そういう訳でそのカメヤッマーという刑事のおかげでなんとか僕たちの無罪は証明できました。」

米沢:どこかで聞いた事あるような名前の警官ですな…

カイト:それで事件の方は…って海外じゃ調書すら満足に見れないよな…

右京:いえ、ちゃんと見れましたよ

カイト:そんな!どうやって?

右京:それは…警察署を出ようとした時の事でした。

小野田「あら、カメヤッマーさん。さっきはありがとうね。」

右京「おかげで助かりました。」

カメヤッマー「レイニハオヨビマセンヨ!アイツラノソウサガズサンナンスカラネ!
マッタクオレガイマデモケイジダッタラカンタンニハンニンアゲテヤルノニ!」

右京「おや?あなたは刑事なのですか?」

カメヤッマー「YES!ムカシハケイジダッタンスヨ!ソレガ…」

右京:どうも彼は以前に犯人の人質になってしまうという失態を行ってしまい
それが原因で交通課に配属になったとか…

米沢:犯人逮捕しようとして逆に人質になるとはとんだ間抜けですな…

カイト:まったく…犯人逮捕が刑事の役目なのに…それじゃ刑事の面汚しですね!
日本にそんな間抜けがいたらとっくにクビか…もしくは窓際部署に転属されてるんじゃないですかね?

右京:…



その頃遠い異国サルウィンにて…


亀山「へっくしゅん!」

美和子「こんな熱帯国で風邪引くかね?」

亀山「きっと誰かが俺の噂してんだよ、キャッ!亀山さんカッコいいってさ♪」

カメヤッマー「イズレオレガヤツラノハナヲアカシテヤルツモリデスヨ!」

小野田「本当にどこかの誰かにそっくりだね。」

右京「それなら僕たちもあなたの協力したいと思うのですが…
出来たら…事件の捜査資料などを閲覧する事は可能でしょうか?」

カメヤッマー「NO!NO!ダメ!ゼッタイ!ソンナコトユルサレナイデスヨ!!」

右京「えぇ、それはわかっています。しかし先ほどあなたは僕たちの事を助けてくれた訳ですし…
僕としてもあなたのお役に立つ事があるかもしれないと思いましてね…」

カメヤッマー「…OK!シリョウモッテクルヨ!」

右京:その後すぐに資料を持って来てくれましたよ、今にして思えば彼…
警官としてはさすがに思慮が浅すぎますね…あれでは彼の今後の警察人生が不安に思いますよ。

カイト:捜査資料持ってこさせた張本人が何言ってんですか…

米沢:可哀想に…そのカメヤッマーという警官…杉下警部と関わった所為で絶対出世しませんな…

右京:…その話はともかくとして…事件の捜査資料を閲覧していくつか判明した事がありました。
シスター・アビゲイルの死因は頭部を鈍器で殴打されての撲殺、ですがそれも一撃ではなく
何度も殴打された形跡がありました。

カイト:何度もって事は…

米沢:恐らく犯人は確実に殺すために一撃だけでなく何度も殴打したと考えられるでしょうな。
現場に居なかったのでわかりませんが…

カイト:うぇぇ…けどそれだと犯人は行きずりの犯行じゃなく最初からシスターに
殺意を抱いていた人物って事じゃ?

右京:凶器となる鈍器物ですがこれは現場からは発見できずに犯人が持ち去ったようです。

米沢:凶器なんて現場に置いておけばいいものをわざわざ持ち去るというリスクを冒すとは…
つまり凶器を調べられた場合、すぐに自分が犯人だと特定されてしまう可能性があるから持ち去った訳ですな!

カイト:たぶんそうでしょうね、そうでなきゃ凶器を持ち去る必要なんてありませんから。

右京:シスターが乗っていた車のブレーキ跡の近くから特定するのは困難でしたが
小さな子供の足跡らしきモノを発見しました。

カイト:足跡?それってもしかしてエスターのじゃ!?

右京:いえ、エスターのモノにしては小さ過ぎる足跡でした。
下足跡を調べようにも他の足跡なども重なり判別するのは困難でしたし何より
そんな小さな小柄では大人の女性を撲殺するのは不可能でしょう。

右京:そして最後に現場の河原まで引きずられた後、もし大の男が犯人であった場合
わざわざ引きずる必要はないはずです。
シスターの死体を橋からそのまま落とすなりすればそもそも犯行が起きた事すら疑われずにすみますからね。
あの道は交通量も少ない場所ですし、あの時は偶然僕たちが発見出来ましたが下手をすれば
1週間以上は捜索が続けられていたはず!
それを考えると犯人は男ではなく…女である可能性が高いと思ったのです!
そしてこの推理をカメヤッマー警官に話したのですが…

カメヤッマー「OK!ハンニンハオンナ!コレデジケンカイケツデスYO♪」

小野田「けどまだ犯人が女だってわかっただけで事件は進展してないけど…」

カメヤッマー「アノシュウヘンデオトナノオンナハヒトリダケイマシタ、コールマンノオクサンデス!」

右京「それはありえません、彼女は犯行時間僕たちとお話していましたかね。」

カメヤッマー「OH!ソレハザンネン…ゼッタイアノヒトダトオモッタノニ…」

右京「失礼ですが何故その様に思ったのですか?」

カメヤッマー「ソレハ…」

右京:彼は何故かその事について口籠ってしまいました。
それから僕はある事件についても捜査資料を見せてほしいとお願いしたのです。

カイト:ある事件?

カメヤッマー「サハリンファミリーノカジニツイテシラベタイ?」

右京「えぇ、もしかしたらこの事件と関係があると思いましてね。」

カメヤッマー「OK!スグモッテクルYO!」

小野田「杉下、お前何かわかったのかしら?」

右京「たぶん僕の考えが正しければ…」

右京:カメヤッマーさんが持ってきてくれたサハリン家の火事の資料を見ると
やはり放火の疑いがある事がわかりました。

右京「やはり…放火ですね。」


カメヤッマー「「ホワッ!?」」


小野田「僕にはよくわからないけどどういう事なのかしら?」

右京「これ…火の出火元が台所からですか、それに出火時間も深夜になっている事から…
あえて特定されないように行ったのでしょう。」

小野田「けどそれじゃエスターがやったっていう証拠がないけど?」

右京「証拠は彼女が生きていた事ですよ、サハリン家の夫妻はふたりとも二階の寝室にて焼死体で発見されています。
ですがエスターはどうでしょうか、彼女の寝室も夫妻とは別の部屋ですが二階と記述されていますよ。
同じ二階に寝ていて何故エスターだけ気付いて家から避難できたか、そう考えれば辻褄が合うと思うのですがね…」

小野田「ふ~ん、まぁいいけど…あら?このサハリン家のご主人の写真だけど…
これエスターが聖書に挟んでいた写真の人物に似てない?」

右京「そういえば…確かに!」

小野田「どういう事かしら?彼女が死者を悼む程、愁傷な心の持ち主だとは思えないけど…」

右京「…」

小野田「それでお前はやはりエスターが犯行を行ったと思っているわけだよね。
けどそれは不可能ですよ。」

右京「えぇ、僕もそう思います。」

小野田「…だよね、シスター・アビゲイルの身長は165㎝で体重が60キロくらいかしら。
女性としては身長が高い方のシスターを身長140㎝程度のエスターが大人の死体を
持ち運ぶのは困難ですよ。
しかも死因は頭部を撲殺、身長差があるから子供のエスターにシスターの頭部を撲殺は
不可能だと僕は断言しますね。」

右京「…」

右京:とりあえず僕たちは無実が証明されて警察から解放されたのですが…

右京「もしもし、えぇ…そうです、なるほど!参考になりました、どうもありがとう。」

小野田「誰に掛けてたの?」

右京「たまきさんに…あの白い薔薇のメッセージについて興味深い意見を頂きました。」

小野田「なるほど、僕たち男の子よりも女の子の方が詳しそうだよね。
ところでだけど…」

右京:そこで官房長があるモノを発見したのです。

カイト:また何を発見したんですか?

右京:官房長が発見したのはコールマン家の車でした。
僕たちと同じくケイトさんも警察に事情聴取のために呼び出されたのですよ。
その時ケイトさんは子供を…といってもマックス一人だけ連れていたのですが…
そこでもまた事件が起こりました。

米沢:それは一体どんな事件なのでしょうか?

右京「この車はコールマン家の物ですね。おやおや、中にマックスまでいるとは…」

小野田「スヤスヤと寝ていますね、いけませんねぇ…子供を車に放置するなんて…」

右京「夏ならともかく今はまだ冬の気温ですから熱中症になる事もないでしょうが…」


ガサッ


右京:僕が一瞬目を離した隙でした、誰かが車から出てきた気がしたのです。

そして次の瞬間…




ガタッ



ゴロゴロゴロ



右京:運転手のいない車が動き出したのです!

カイト:それってつまり…

右京:えぇ、中でマックスが眠っていた状態で!

右京「この道は坂道です!いけない…このままでは!?」

小野田「その前にT字路の交差点がありますね、これじゃ対向車と衝突してしまいますよ。」

右京:そう!
官房長の言う通りマックスを乗せた車はT字路の交差点に向かっていたのです!
交差点の信号は赤信号を表示しており対向車線には車が進行していたのですからね…
そんな中に突っ込めばまさに大惨事になるのは間違いありませんでした!
幸いなのはアクセルが踏まれていなかった事ですかね…

カイト:へ?

右京:僕は全速力で走り車に飛び移る事に成功しました、急ぎ車内に侵入して
サイドブレーキを引きなんとか事なきを得ました。


キッキーッ!!


右京「ハァ…ハァ…マックス…大丈夫でしたか?」

マックス「ビェェェェェェ!?」

右京:マックスは顔面蒼白で自分の身に何が起きたのかわからずに泣き崩れてしまいました。
ちなみにその後すぐに官房長が追い付いたのですが…

小野田「無事で…ハァハァ…なによりです…ハァハァ…」

右京「まったく…こんな事でもう息切れするとは、少し体を動かした方が良いのではありませんか?」

小野田「無茶言わないでください…ヒィヒィ…僕は…孫がいるお爺ちゃんですよ…」

右京:そんな軽口を叩いているとケイトさんとカメヤッマーさんが警察署から飛び出してマックスの下へと駆けつけてきました。
それはそうでしょうね、大事な娘が危うく事故で死にそうになったのですから…

ケイト「マーックス!?あぁぁぁぁぁ!大丈夫なの!?怪我は?どこも痛くないの!?」

右京「ご心配なく、怪我はありません、マックスは車の中で眠っていただけですからね。」

ケイト「あぁ…よかった…」

カメヤッマー「ヨクネーヨ!アンタコレデナンドメダ!?
カウンセリングデヨクナッタンジャナイノカ!?」

ケイト「そんな…私はちゃんと…」

カメヤッマー「ヤッパリアンタマダ…」

右京:見かねた僕はケイトさんに助け船を出しました、といってもありのままの事実を話しただけですがね。

右京「失礼、よろしいですか?」

カメヤッマー「スギシタサン!ドウシタンデスカ?」

右京「僕が車に飛び移り中を確認しましたが、車が勝手に動き出した原因はサイドブレーキを
引いていなかった事ですね。
このような坂道です、ちゃんとサイドブレーキを引いておかないと車が下り坂に動いてしまうからご注意してほしいのですがねぇ…」

ケイト「そんな!?私はちゃんとサイドブレーキを引いていました!」

右京「ですが…車は坂道を走っていたのは事実ですよ、これはどう説明するのですか?」

ケイト「そ…それは…」

カメヤッマー「ヤッパリアンタマダナオッテナカッタンダヨ…」

ケイト「あ…あぁ…」

小野田「まあまあ御二方、こうしてみんな無事だったし良かったじゃないの。
とりあえずケイトさんには今日のところご自宅に戻って頂いて聴取はまた後日という事でよろしいかしら?」

右京「…」

右京:とりあえずその場は収まりました。
情緒不安定気味なケイトを連れコールマン家に戻った僕たちは急いである事を確認したのです。

カイト:ある事を確認?

~コールマン家~


ケイト「ハァ…ありがとう、助かったわ…」

小野田「いえいえ、人として当然の事をしたまでですよ。」

右京「それよりもエスターは何処にいますか?」

ケイト「さぁ、部屋の中じゃないかしら?」

右京:そこで僕は官房長にケイトさんの介抱をお願いしてエスターの部屋を
確かめたのですがやはり部屋の中にはいませんでした。
しかし部屋の中で気になる物を見つける事は出来ました。

カイト:気になる物って何ですか?

右京:化粧品と蛍光塗料です。

カイト:9歳の子供が化粧品?あっちの子供はませてんな…

米沢:失礼ですが…その二つが事件とどう結びつくのですか?
私には皆目見当も付きませんが…

右京:僕もこの時点では皆目見当も付きませんでした、しかしこの二品こそ
後で犯人の本性を現す重要な手掛かりとなったのです!
話を続けますが部屋を捜索していた僕のところへマックスが現れました。
彼女はまるで何かを訴えるような表情で僕に数枚の画用紙を見せてくれました。
そこに描かれていた絵こそ重要な証拠だったのですよ!

カイト:その絵には一体何が描かれていたんですか?

右京:話を続けます、その頃長男のダニエルもまたエスターの日頃の態度に不安を感じて
庭の木の上にあるツリーハウスの秘密基地で怯えていました。
するとそこへエスターがダニエルを追ってやってきたのです!

エスター「…」

ダニエル「お前一体何なんだよ!?お前の周りにいると碌な事ばっかりだ!
全部…全部お前の所為じゃないか!!」

エスター「そうよ、だって私とパパ以外邪魔なんだもの。」

ダニエル「なっ…」

エスター「私はパパと二人きりで幸せな生活を送りたい、そのためにケイトと…
そしてあの女が生んだお前とマックスが邪魔だから…だから…」

右京「シスターを殺したのですね…そして先ほどはマックスも!」

エスター「あら、あなたは確か杉下右京…どうしてここに?」

右京「あなたが事を運ぶならここに来るかと思いましてね…」

エスター「それで…何か用があるわけ?」

右京「やはり…直接見たわけではありませんがあなたが前もって車の中に隠れてサイドブレーキの
操作を行えば容易く出来る事ですからね。」

エスター「ふぅん、けどシスター・アビゲイルについてはどうなのかしら?
彼女の殺人を証明する証拠はないはずよ!」

右京「ほぅ、何故あなたは自分が犯人ではないと断言出来るのですか?」

エスター「アッハハハハハ!だって私は子供よ、殺人なんか出来る訳がないわ!」

右京「瀕死の鳩を平然と石で潰してはその言葉に説得力はありませんね。」

エスター「フンッ、それに子供の私じゃシスターの身体を持ち運ぶ事すら出来ないわ!
これはどう説明するのかしら?」

右京「確かにあなた一人では犯行は不可能でしょう。
えぇ…確かにあなた一人の犯行では…しかし共犯者がいたとしたらどうでしょうか?」

エスター「!?」

ダニエル「こいつに共犯者?一体誰なんだよ!?」

右京「それは…あなたの妹であるマックスですよ。
何故エスターは普段からマックスの世話をしていると思いますか?
それはいざという時にマックスに犯罪の片棒を担がせるために他なりません。
エスター、貴女の様な知的な犯罪者は絶対に無駄な行動に出る事はない、
そう考えれば普段からの行動には納得がいくのですよ!」

ダニエル「そんな…妹のマックスが…殺人の片棒を担がされたなんて…」

エスター「…聞いてあげるわ、私がどうシスターを殺したというの?」

右京「手口は至ってシンプルです。

マックスに恐らくこう言ったのでしょう、『あのシスターが私を家から追い出そうとしている!助けてくれ!』と…

その言葉を本気にしたマックスはあなたの計画に賛同しあの橋の小道で二人して待ち伏せをした。

そして…シスターが家を出てくるまであの橋に差し掛かった時、エスター!あなたは恐ろしい行動に出たのです!!」

ダニエル「一体こいつは何をしたっていうんだよ!?」

右京「一緒に隠れていたマックスを道路に突きだしたのですよ!

シスターは慌てて急ブレーキを踏んだ!辛うじてマックスは無傷で助かり、

シスターはすぐにマックスの安否を確かめに近付きしゃがんだ…

その時のマックスの足跡が現場で採取された子供の下足痕であるとみて間違いありません!

この瞬間!エスターは鈍器を手にしシスターの頭部を思い切り殴った!

恐らく強烈な一撃だったのでしょう、大人のシスターが反撃出来なかったのですからね…

そして何度も鈍器で殴打しシスターを撲殺する事に成功した。

さて、後は死体の後始末だけです…

しかし死体の後始末をするにしてもエスターだけでは165㎝もあるシスターの身体を

運ぶのはどう考えても困難のはず、そこであなたはある人物に手伝わせた!」

ダニエル「まさか…その人物って…」

右京「そう、マックスですよ!
恐らく殺人の現場を直視して青ざめているマックスを半ば無理矢理に脅して手伝わさせたのでしょうね。
そして河原まで運び川に死体を投げた、この辺りはあまり人気の無い場所ですからね。
下手をすれば1週間以上死体が発見される事はなかったはず、車の方も後で処分する予定だったのでしょう。
しかし…予定が狂った!」

エスター「…」

ダニエル「な…何で予定が狂ったの?」

右京「僕たちが早々に死体を発見してしまったからですよ!
恐らく当初の予定では凶器等の処分を行うはずが警察の捜査が早く安易に
凶器の処分が出来なかった、そうなるとどうすると思いますか?」

エスター「何が言いたいのかしら?」

右京「大人の手が届かないこの秘密基地に…凶器を隠しましたね!
ちなみに凶器は恐らくコールマン家の地下にある地下室の作業場から持ち出したのでしょう。
先ほどあなた方を探す際に作業場を確認したところ、作業用のスパナが1個ありませんでした。
エスター、あなたが持ち出していた事は分かっています!調べればすぐにわかる事ですよ!!」

エスター「フッ…フフ…アッハハハハハハハ!!スゴいわねあなた、全部正解よ!」

右京「自白したと受け取ってよろしいのですか?」

エスター「勝手にすれば、凶器はほら…ここよ。」


ゴトッ


右京:エスターは観念したのか秘密基地に隠していた証拠品を僕の目の前に持ち出しました。
凶器に使われた作業用のスパナ、それにもう一つは血染めの白いブラウスを…

米沢:白いブラウス?なるほど、それを使えば…

右京:えぇ、そういう事です?

カイト:な…何がですか?

右京「白いブラウス、犯行時にケイトさんが探していたエスターのブラウスですね。
やはりこれも犯行に使われていましたか。
犯行時にこの白いブラウスを着込んでいれば返り血が付着しても、犯行後に脱いでしまえば
誰にも気づかれずに移動が出来ますからね。」

エスター「当然よ、本当なら返り血なんて浴びたくもないのに…
しかも警察の介入が早かったせいで処分することが出来なかったわ、アンタ…疫病神ね!」

右京「僕が厄病神ならあなたは死神ですよ、あなたにとってこの家は乗っ取るには実に都合がいいのですからね!」

エスター「あなたも気付いてたんだ、この家の事情に…」

ダニエル「ウ…ウチの事情って何言ってんだよ?」

右京「ダニエル、この家にはもう一人マックスの妹が…いたのではありませんか?」

ダニエル「う…うん…けど…」

右京「そう、その子は生まれる事が出来ず死産してしまった…
その死は悼まれ室内に白い薔薇とあのメッセージが置かれました。
あの白薔薇はまだ何も知らない真っ白な心のまま死んだ事を現していた。
つまりあの花に置かれたメッセージはこう解釈できるのです。


“あなたのぬくもりを感じる” 


これは…生まれるはずであった子のぬくもり…


“あなたの声が聞こえる” 


生まれるはずであった子の産声


“会えなかったけど愛している”


本来出会うはずであった母と子…


あの白い薔薇は無垢で純粋で…そして何も知らないまま真っ白な心のままで亡くなった
ダニエル…キミのもうひとりの妹であるジェシカの追悼碑であったのですね!」

ダニエル「うん…ママは数年前に生まれてくるはずだった赤ちゃんを流産したって…
それからママは落ち込んでお酒をいっぱい飲んで…」

右京「やはり、カメヤッマー警官の言っていたカウンセリングとは、
その時極度のアルコール中毒に陥ってしまったための治療ですね。
そしてその治療は今も続けられており、洗面所に置いてある鎮痛剤はそのための物という事ですか。」

ダニエル「そうだよ、その頃のママはお酒ばかり飲んでいて…
その所為でマックスが池で溺れちゃって…なんとかマックスは助かったけど…
その後ママはその事をスゴく後悔してカウンセリングを始めたんだ。
それからずっと僕たちの子供部屋には鍵を付けさせないんだ、マックスの時の事故を防ぐために…」

右京「なるほど、室内で鍵を掛けさせなかったのはそのためでしたか。
ケイトさんは過去の行いを後悔して…全ては不幸の結果が招いた事なのですね。」

エスター「フンッ!子供が一人死んだくらいで泣き喚くなんて情けない!」

右京「そんな事はありません!
親とて完全な存在ではないのです!失敗もすれば傷つく事もある、やっと授かった命を…
理不尽にも奪われた母親の気持ちが…エスター!子供を生んだ事もないあなたにわかるはずがない!!」

エスター「!?」

右京:僕とした事が…迂闊でした、思えばこの時感情任せにエスターを問い詰めなければもっとスムーズに事が運べたのに…


カイト、米沢「「?」」


右京:僕の推理によりエスターの犯罪は暴かれ、そして証拠品も見つかりました。
しかし何故かエスターはこの時妙に冷静で、僕には追い詰められたという感じがしなかったのです。
そして丁度いいのか…それとも悪いのか妙なタイミングで日本の神戸くんから連絡が来たのですが…



ヴィー、ヴィー、ヴィー、


右京「おや、電話が…杉下です、あぁ…神戸くんですか。」

神戸『杉下警部の言われた通りにサールン・インスティチュートについて調べたのですが…』

右京「結果はどうでしたか?」

神戸『お言葉ですが、杉下さんの期待するような結果はありませんよ。
ここの職員に尋ねたところエスターなんていう少女はいませんでしたが…』

右京「はぃ?そんなはずはありません!ちゃんとよく調べたのですか?」

神戸『再度お言葉ですが…これでも普段の業務を全て後回しにしてわざわざルーマニアから
連絡を取ったんですからね!
少しは感謝してください!』

右京「ちょっと待ってください、今何と言いましたか?」

神戸『いや…だから感謝してくださいって…』

右京「いえ…そこではなくもっと前の…確かキミは気になる国名を言いましたよね!」

神戸『えぇ、言いましたよ。
サールン・インスティチュートなんて名前の施設を調べたらロシア付近にあるルーマニアという国にしかありませんでした。
おまけにここは孤児院でも学校でもありませんよ、担当者から精神病院だって言われたんですからね!?』

右京「はぃ?」

右京:僕はてっきりサールン・インスティチュートは孤児院の施設かと思っていましたが
実際には精神病院だったのですよ!
その事を知りさすがに驚愕しましたが…しかし目の前で更に驚愕する事態が起きていたのです!

米沢:驚愕する事態?

カイト:一体何が起きたんですか!

右京:その異変に真っ先に気付いたのがダニエルでした、彼は真っ先にある事を僕に指摘してくれたのです!

ダニエル「す…杉下さん!
あ…あいつ…エスターが血染めのブラウスと凶器に油を注いでいるよ!?
それに…あれ…あれは…」

エスター「これ?ママの大事にしている白薔薇、全部切り取ってきたわ。」

右京「エスター!何をする気ですか!?」

エスター「やっぱり証拠は燃やすに限るわ、そう…いつも通りの事よ…」

右京「エスター!!」


ボッ


右京:驚く事にエスターは油まみれの証拠品とそして切り取った白薔薇に火を点け
木の上にあるあのツリーハウスの秘密基地を火事にしたのですよ!

右京「エスター!待ちなさい!」

エスター「…」



ガチャッ


右京:エスターは秘密基地の入り口の鍵を掛け、僕とダニエルを閉じ込めたのです。
僕はエスターがこのような恐慌に及ぶとまでは考えておらず、さすがに焦りました。
あの秘密基地はすべて木造で出来ていたので火の回りが予想以上に早く、消火道具もない状況では成す術もありませんでしたからね!

カイト:そんな状況下でよく助かりましたね…

右京:窓が…秘密基地の窓が開いていたのですよ。
僕はダニエルを抱えすぐにそこから脱出する事に成功しました。
ですがそこは高さが10m以上ある木の上、普段は梯子で昇り降りする場所を飛び出したので
抱き抱えていたダニエルは煙を吸い一酸化炭素中毒に…僕も身体を強く打ち意識は朦朧としていました。
そこへエスターが僕たちに止めを刺そうと近付いてきたのです!

カイト:それって…絶体絶命のピンチじゃないですか!?

右京「な…何故このような暴挙に…?
こんな事を仕出かせば…あなたの仕業だと見抜かれるのも時間の問題ですよ…」

エスター「えぇ、私も本当はもっと慎重に事を運びたかった…
けどさっきのあなたの一言…『子供を生んだ事もないあなたにわかるはずがない!』って言葉が異様に苛ついたのよ!
なら…あなたにはわかるの?子供を生めない…女の気持ちが!!!?」

右京「!?」

右京:そこで僕の意識は途切れました、その時のエスターの言葉の意味をこの時の僕には知る由もありませんでした…

とりあえずここまで

更新長々となってまいました。

今回出てきたイッタミーン、セリッザワー、ミッウラー、カメヤッマーの三人は
日本の捜一トリオ、それと亀山さんをなんちゃって金髪外人にしたモノだとイメージしてください。

それにしても今週の相棒…先週三浦さんが退職したというのにその事について誰も触れないとは…
さすがにドライ過ぎじゃねとか思います…

~またも一旦回想が中断され現在の特命係~


米沢「では私はこれで…」

カイト「あれ?もう帰るんですか?」

米沢「えぇ、実は今日とあるお金持ちの私立小学校の職場見学でして…
ウチの鑑識課にも来るのでここで油を売っている訳にもいかないのです、では失礼。」

カイト「警視庁を職場見学ねぇ、お金持ちの学校はやる事がスゲえな…」

米沢は特命係の部屋を出て行き、再び右京とカイトのみとなった。

右京「おや、あともう少しで話が終わるのですが…カイトくん、キミはまだ話を聞く気がありますか?」

カイト「当然ですよ、こんな中途半端で終わらせたら後味悪いじゃないですか!」

右京「では話を続けます、僕は気を失っている間…ある夢を見ていました。」

カイト「夢?」

右京が語る夢、それは…

――

―――

――――

右京:それは過去に起きたある事件の現場でした、そこで僕はかつての相棒である
亀山くんと共に一人の犯人を追いつめる事に成功したのです。

右京『なるほど、これではお父様の存在が希薄なはずですねぇ…』

亀山『酷え…実の父親になんて惨たらしい事しやがる…』

右京:そこにいたのは犯人と…そして朽ち果てミイラと化した死体が…
犯人はその死体に恋人のように寄り添い、こう呟いていたのです。

―『パパ…』

右京:そこで目が覚めました、気が付くと僕は病院のベッドで寝ていたのです。
既に時刻は深夜になり、そして付添に官房長と…それに警察署の署長と副署長らしき人物がいたのです。


~病院~


ウチ・ムラー「ミスターオノダ、コノケンハFBIノチョウカンニオツタエクダサイ!」

ナカゾーノ「ワレワレガンバッタノデチュウオウノコネクダサイーイ!」

小野田「えぇ、あなた方のおかげで助かりました。中央政府にはその旨をしっかりと伝えておきましょう。」

右京「身分を明かしたのですね。」

小野田「あら、起きたんだ。
感謝してくださいよ、そうでもしなければお前は今頃独房行きだったんだから。」

右京「はぃ?」

小野田「例の子供たちの秘密基地で火が上がり僕やケイトさんたちも急いで向かったの。
そしたら気絶したお前とダニエルくんはいるわ、エスターが腕を骨折しているわで大変だったの。」

右京「待ってください、エスターが腕を骨折していたとはどういう事ですか?」

小野田「そのままの意味ですよ、エスターは左腕を骨折していたんです。
そしてエスターは駆けつけた僕たちにこう証言したのです。
『あの杉下という男がダニエルを誘拐しようとした、彼は大学から来た人間じゃない!
人身売買を企む悪い人たちなんだ!!』とね…」

右京「なるほど、エスターは自分の話に信憑性を付けるためにわざと自分で腕を骨折したようですね。
この執念さに計算深さ、並の犯罪者ではありませんよ!」

小野田「それでこのままじゃ我々の立場が不味くなると思いましてね。
背に腹は代えられず身分を明かしたの、まったくお前らしくもありませんね…
犯人逮捕を焦るあまりに犯人に返り討ちにされるとは、間違いなく失態ですよ。」

右京「面目ない、そういえばダニエルは?」

小野田「彼は無事です、軽い一酸化炭素中毒でむしろお前よりも軽症ですよ。
それよりも先ほど問題が起きましてね…」

右京「問題とは?」

右京:官房長が告げた問題は、僕が目覚める1時間ほど前にケイトさんが
ダニエルが寝ているベッドで急に暴れ出して医者に麻酔を打たれてやっと静かに眠っていたとの事でした。

小野田「急に暴れ出してね、お医者さんが言うにはダニエルくんの事故が原因で
アルコール中毒のストレスの発作じゃないかってさ…」

右京「そうですか、ところでその時エスターはどこに?」

小野田「エスター?そういえば…僕は署長と話してたりで忙しかったから見てなかったけど
たしか父親のジョンさんと一緒に付き添いで来ていたはずだよ。」

右京「なるほど、そういう事ですか。
つまりエスターは病室にいるダニエルに止めを刺そうとした、その光景を偶然にも
目撃してしまったケイトさんは止めようとしたがエスターの方が一枚上手で…
逆に罠に陥り、こうして気を失わされた…それでエスターは今どこにいますか?」

小野田「どこって…家に帰っちゃいましたよ、ジョンさんがエスターとマックスを連れてね…」

右京「帰った?つまりあの家にはもうエスターの邪魔をするものが一人もいないという事に…
しまった…僕とした事が…」

右京:もし彼女が事を起こすなら今夜しかない、そう思いましたが僕も怪我の所為で
満足に体を動かせませんでした…

小野田「心配しなくても大丈夫でしょう、事件が起きたばかりなんですから…
こんな時に何か仕出かすほど彼女はそんな馬鹿じゃありませんよ。」

右京:官房長はさすがに事件の後に事が起きるとは思ってはいませんでしたが…
僕には彼女が間違いなく事を起こす確信がありました、それは…

右京「官房長、覚えていますか…
かつて父親を殺害し、さらには父親と同世代で社会的地位にある男性を次々と殺害した小暮ひとみの事を…」

小野田「小暮ひとみ?あぁ…覚えていますよ、彼女とは食事をする仲でしたからね。
けど何でこんな時に彼女の話をするのかしら?」

右京「彼女の犯行動機は父親の愛を独占する事、そのために父親を殺害して
死体を自分だけが知る秘密の場所へ隠した。
さらに父親の幻影を追い求めて父親と似た風貌の男たちと付き合い、彼らが父親に値する男ではないと知ると…
次々と彼らを殺害したあの連続殺人、僕は今回のエスターの犯行に彼女と同じ匂いを感じるのです!」

小野田「あら?僕はてっきりあの家の財産目当ての犯行だと思ってたのだけれど…」

右京「それは無いでしょうね、養子のエスターに財産が相続されるわけがありませんし、
こんな短期間で犯行を重ねては財産は取れるはずがありません!」

小野田「確かに…サハリン家の遺産も取れなかったみたいだしエスターの目的は遺産絡みじゃないのかしら?」

右京「僕の考えが正しければ彼女は恐らく…」



ヴィー、ヴィー、ヴィー、


右京:その時でした、日本の神戸くんから再度電話が掛かってきたのです。

神戸『杉下さん、さっきは突然切って一体どうしたんですか?』

右京「いえ、僕は大丈夫ですよ。それよりも何かご用ですか?」

神戸『ハイ、実はあの後もう一度サールン・インスティチュートに連絡を取ったのですが

驚くべき事実が判明しました!』

右京「はぃ?……なんですって!?」

右京:神戸くんからの連絡を受けた僕たちはすぐにコールマン家に急行しました。
その頃、コールマン家ではエスターがついにその本性を現していたのですよ!

カイト:エスターの本性?



~コールマン家~


右京:エスターは化粧をして黒いドレスを着て、父親であるジョンに誘惑し迫ろうとしていたのです!

カイト:ハァッ!9歳の子供が誘惑!?

エスター「パパ、愛してる…私を抱きしめて…」

ジョン「ふ…ふざけるな!やはりケイトやダニエルの言う通りだ!
キミが来てからというものの家のみんながおかしくなっている!
もうたくさんだ!明日、シスターに連絡する、もう君をこの家に置いておけない!!」

エスター「そう…わかったわ…」

右京:しかしジョンはエスターの愛を拒んだ。
当然でしょう、見た目が9歳の子供にしか見えないエスターがまともな大人に
恋愛の対象と見てもらえることはまずあり得ないのですからね…

カイト:杉下さん、今の言い方何かおかしくないですか?

右京:どういう意味ですか?

カイト:今確かに…『見た目が9歳の子供にしか見えないエスターが』って言いましたよね。
なんだかまるで…エスターが子供じゃないみたいに聞こえるんですけど…

右京:……話を続けましょう、僕と官房長はコールマン家に辿り着きましたが
そこは真っ暗な暗闇に閉ざされていました。
後で知った事ですが、この時エスターは家のブレーカーを破壊していたとの事です。
そして僕たちは恐る恐る二階のエスターの部屋に行くとそこで恐ろしい光景を目にしたのですよ!

カイト:一体何を見たんですか!


小野田「部屋が散乱していますね、まるで台風が来たようだ、それにこれは…」

右京「恐らく部屋にあった蛍光塗料で描いたのでしょう、この狂気な絵の数々は…」


右京:散乱するエスターの部屋で見つけた絵は…

炎上する家

血の涙を流す女の顔

裸の男女が性行為を行う隠微な絵、

無数の死体

9歳の子供が描けるはずがない絵が暗闇の中浮かび上がったのですよ!



「「びぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」


右京:僕らが2階で驚いている時に1階で子供の泣き声が聞こえたのです。
駆けつけてみるとそこにはジョンが血塗れで倒れており、その横にはマックスが泣き崩れていました。

マックス「……」

右京「マックス、もう大丈夫ですよ!」

ジョン「う…うぅ…」

小野田「ジョンさん…辛うじて生きていますね、エスターはどこに?」

マックス「……」

右京:彼女は喋れないとはいえ手話での会話は得意でしたので、それで居場所を教えてもらったところ
エスターがいたのは室内植物が…いえ…今は亡きジェシカの墓標が飾られている部屋でガソリンをばら撒いていたのです。

右京「エスター!もうやめなさい!」

エスター「杉下…どうしてここに?警察に逮捕するよう言っておいたはずなのに…」

右京「騙すような形で申し訳ありませんが僕のもう一つの身分を教えましょう。
改めて自己紹介します、日本の警視庁特命係の杉下右京です!」

小野田「そして僕は日本の警察庁長官官房室長の小野田公顕といいます。
甘かったですね、いくら異国でも日本も海外も権力ってちゃんと有効なんですよ。」

エスター「日本の警察?まったくとんだ誤算だわ、けど証拠品は燃やしたし…
もう私が犯人である証拠はないわよ!」

右京「証拠ならあります!日本の僕の同僚から連絡がありました。
『SAARNE INSTITUUTE』ご存知ですね!」

エスター「どこでそれを?…まさか!?」

右京「えぇ、あなたが持っている聖書に押されていた印を調べ辿り着きました。
サールン・インスティチュートはルーマニアの精神病院です、あなたはそこの患者だった!」

エスター「…」

右京「あなたの担当であったバラバ医師があなたの事をよく覚えていたそうですよ。
あなたはとても凶暴な患者であったために普段は拘束具を付けられていたとか…
つまりその首のチョーカーや手首のリボンはあなたが病院で暴れないように拘束具で固定していた時に
無理矢理拘束具を取ろうとした痕のようですね!
それもそうでしょうね、あなたは精神病院を脱走する際に7人もの人間を殺害したのですから!」

エスター「クッ…」

小野田「子供がそんな傷痕残していたら十分怪しまれますからね。」

右京「そしてもう一つ、あなたが犯人である重大な真実があります。
エスター、あなたは子供ではない!あなたは下垂体機能不全による発育不全で身体が子供のままである…
本名リーナ・クラマー、年齢33歳の成人女性ですね!!」

エスター「やはりその事に気付いてしまったのね…」

小野田「なるほど、彼女が大人なら歯の検査を拒否した理由がわかりましたよ。」

右京「そうです、いくら見た目が子供だからといって老いがないわけではありません。
歯を調べられれば間違いなくエスターが成人女性だという事がバレてしまいますからね!」

小野田「つまり彼女の言動や服装は全部…」

右京「彼女が『大人のような子供』ではなく本当に大人だからこそ、あのような立ち振る舞いをしていたのです!」




エスター「「ぐぅぅぅぅ…ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」」



右京:彼女は僕に正体を見破られた所為なのでしょうか突然大声で泣き出したのです。
その時涙の跡が化粧を溶かしてしまいまるで悪魔の形相をしていました。

カイト:悪魔の…

エスター「ハァ…ハァ…もう…正体を隠す必要はないのね…」

小野田「その顔…」

右京「なるほど、そういう事でしたか。」

右京:彼女の素顔は普段は美肌メイクの化粧で若く見えていますがやはり年相応というべきなのでしょうか
肌年齢は隠せるものではなく33歳といえばそう見えなくもない…そんな顔をしていました。
そして彼女はナイフを持ち僕たちに迫ろうとしました、ですが…



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エスター「サイレン?」

小野田「凶悪犯のあなたを僕たちだけで捕まえきたと本当に思っていたのかしら?」

右京「既に先ほどの真実を地元警察のみなさんにお伝えしています、今回は僕たちの方が一手勝っていましたね!」

エスター「…」

右京「これでエスターは捕まり事件は幕を閉じる、僕と官房長はそう思いました。
しかしエスターはまたもや驚く方法で僕たちを出し抜いたのです!」

エスター「アハハ!私がムショ行き?それともまた精神病院送り?冗談じゃない!
もう二度とあんなところに閉じ込められてたまるモンか!!」



ガッシャーン



右京「なんと!?」

小野田「窓を割った!」

右京:そして彼女はまだ氷の張った池に飛び込んだのです!


ドッボーン!!


右京「エスター!?」

小野田「こんな氷の張った池に飛び込むなんて自殺行為ですよ、これではすぐに凍死してしまいますね。」

右京:それから地元警察の総力を上げてエスターの捜索をしましたが…
結局エスターは見つかりませんでした、その後地元警察はエスターが死亡したと判断しました。

カイト:それでその後は…?

右京:後の捜査は地元警察に任せて僕たちは町から去りました。
これ以上あの町にいる必要はありませんからね、ただ一つ心残りがあるとすればエスターを逮捕できなかった事でしょうかね…

回想が終わり現在…


~特命係~


ワイワイ ガヤガヤ


カイト「うるさいな、一体なんだ?」

右京の過去の話もようやく終わったところで廊下からなにやら話し声が聞こえてきた。
気になったカイトが様子を見るとそこにいたのは…

陣川「やぁ、甲斐くん久しぶりだね!」

カイト「じ…陣川さん!それにその子供たちはどうしたんですか?」

陣川「あぁ、この子たちは…今日警視庁に職場見学に来てくれた子たちだよ!」

カイト「職場見学?そういえば米沢さんがそんな事を言ってたような…」

陣川「実はだね、未来ある子供たちに警視庁でも難事件を扱う我が特命係をちゃ~んと見学してもらおうと思ってね!」

カイト「いやいや…待ってください!
特命係って普段は超窓際部署で頼まれたら裏AVのチェックとかやってる…ある意味警視庁の暗部みたいな場所ですよ!
そんなとこ案内しちゃダメです!?」

陣川「じゃあキミはどこを案内するというんだ?」

カイト「わかりましたよ、じゃあ俺が一緒に付いていきますから。
さぁみんな、お兄ちゃんと一緒に警視庁を探検しようね!」

「「ハーーイッ!」」


こうしてカイトは陣川と共に組対5課は留守、部署には右京が一人先ほどの手紙の続きを読んでいた。

右京「おやおや、静かになったものですね。まぁ…これで落ち着いて手紙を読めるのですが…」

そんな時…

―「…」


ガサッ


誰かが唯一人部屋にいる右京に近付いて来ようとしていた。

しかし…

右京「そうそう、一つ言う事がありました。
今から3日前の事ですが、僕とカイトくんは大河内監察官と警察庁に移動になった神戸くんに呼び出されたのです。
そこである事を聞かされましてね、とある海外マフィアが日本国内に不法入国した形跡があると…
その時見せられた犯人グループの中に気になる顔がありましてね、その顔は僕の見知っている顔でした。」

―「…」

部屋で様子を伺っている何者かはいきなりの右京の発言に驚き様子を伺っていた。
だがそんな何者かの事情など露ほども知らず右京はさらに話を続ける。

右京「もしもこの僕が知る顔見知りが『ある個人的な目的』のために来ていたのだとしたら
どうするのか…そこで考えました。
その者は…ある身体的特徴を持っていました、それは自分にとっては恐らく嫌悪する程の
悩みだったかもしれませんが犯罪行為に及ぶ際はそれが長所ともなりました。
そこで恐らく考えるでしょうね…この身体的特徴を駆使して、楽にそして堂々と正面から僕に近付ける方法を!」

―「!?」

右京「そこでその者はどこからかある情報を聞きつけました。
近々警視庁に職場見学にやってくる小学生たちがいると、恐らくこれこそ千載一隅のチャンスだと思ったのでしょうね。
その者はすぐに小学校に侵入してそこの小学生と偽り、そして今日他の小学生たちと共に
この警視庁に堂々とやって来た。
そして今…ここまでやって来て僕の命を狙おうとしている者…」


ヴィー、ヴィー、ヴィー


右京の携帯が鳴った、電話の相手は角田課長からであった。

右京「ハイ、わかりました、どうもありがとう。
角田課長からの連絡でした、先ほどあなたが属していた海外マフィアを摘発したようですが…
その中にあなたの姿はなかったという事でした。」


ガタッ


カツ コツ


右京は椅子から立ち上がり部屋にやって来た何者かのところへ近付いていった。

右京「お久しぶりですねエスター、あなたは相変わらず若作りがお得意のようで…」

エスター「杉下…最初から私の行動は全部お見通しだというの!?」

右京「あなたが日本に来る理由、間違いなく僕への復讐だと思いましてね。
既に官房長は亡くなっている身、狙うなら僕一人だけなのは容易に想定出来ましたよ。
それにあなたが小学生の集団に紛れて来る事はわかっていました。
それでどうやって子供たちを安全に避難させるか考えました…」

エスター「なるほど、あの若い刑事を使って子供たちを別の場所へ誘導したのね。
けど甘いわ、あなた一人殺すのに手間は掛からないんだから!」

右京「まだ…そう思っているのですか?」

エスター「何が言いたいの?」

右京「あなたは物事に集中する余り、周囲が見えなくなる傾向があるようですね。
まったく成長がありませんね…」

皮肉を口にする右京、エスターは苛立ち周りを見るが確かに何かおかしい。
ここは東京都を守る警察組織の中枢部、その内の部署が見事に無人に近い状態というのは
確かに何か違和感を感じた。

右京「どうやら気付いたようですね、今度は僕が先手を打たせてもらいました。
みなさん出てきてください!」


ザッ  ザッ


右京の号令の下三浦係長が率いる捜査一課の刑事たちがぞろぞろと部屋に集まりエスターを囲うように包囲した。

伊丹「この娘が10人以上もの人間を殺した凶悪な殺人鬼だと!?」

三浦「警部殿…本当にこの子供が…」

芹沢「杉下警部の話を聞いて待機してましたけど…まだ半信半疑ですよ…」

右京「間違いありません、本名リーナ・クラマー、精神病院で7人もの人間を殺害し
サハリン家を放火、さらにシスター・アビゲイルの殺害、それにコールマン一家の殺害未遂…
もう逃げ場はありませんよ、ここであなたとの因縁に決着を付けます!」

エスター「フフフ、因縁?決着?そんな事私にはどうでもいい…私はただ…」

右京「?」


プシュゥゥゥゥゥゥゥ


エスターがそう呟いた瞬間、彼女は隠し持っていた催涙弾を部屋に撒き部屋はガスで覆われ何も見えなくなってしまった。

伊丹「ゲホッ!ゴホッ!催涙弾だと!?」

三浦「こりゃ酷い…辺りが何も見えん!」

芹沢「あの子…エスターは何処行ったんですか?」

伊丹たちが催涙弾に怯んだ隙を伺いエスターは急いで部屋から脱出した。
その事に一足早く気付いた右京はエスターを追いある場所に辿り着いた。

右京「ここは…警視総監室!?」

エスターが辿り着いた先は警視総監室であった、彼女は部屋に立てこもり何かをしていた。

右京はある人物にメールをした後、エスターと話をすべく警視総監室に入った。
幸いにもこの時警視総監は留守であったので人質の心配はなかった、しかし…

~警視総監室~


そこで右京が目撃した光景は目を疑うものであった。
彼女は警視総監室に逃げ込んだ後、すぐに着替えを済ませドレス姿をしていた。
だが驚くべきことはそこではない、彼女の身体にある物が括り付けられていた。
それは…

右京「プラスチック爆弾…」

エスター「こんな部屋くらい簡単に吹き飛ばせるわよ、最初から杉下…あなたと心中覚悟でここに来たの。」

右京「何でこんな事を!?」

エスター「決まっているわ、私の人生を滅茶苦茶にした男を許せるわけがないからよ!」

~捜査一課~


一方その頃捜査一課ではエスターの確保に失敗し現在警視総監室に立てこもられた報告を受けて
内村刑事部長と中園参事官は頭を悩ませていた。

内村「警視総監室に少女がプラスチック爆弾を持って立てこもっただと!?」

中園「いえ、現場の伊丹たちからの報告だと…その…立てこもっているのは少女のような姿をした
成人女性でして…」

内村「何だと?どういう事だ!説明しろ!」

そして伊丹たちからの報告を受けた内村はある決断をした。

内村「なるほど、現在立てこもっているのはホルモンの異常で見た目は子供だが一応成人女性で間違いないんだな!
しかも…10人以上も殺している凶悪な殺人鬼…それに警視総監室への立てこもり…
我が警視庁に泥を塗る行為を平然と行いおって…こうなれば…」

中園「部長、ここは穏便な交渉を行い犯人を落ち着かせてからじっくり対処を…」

内村「馬鹿者!我が警視庁がそのように犯罪者にペコペコ頭を下げてばかりでたまるか!
それに忘れた訳でもあるまい、以前にも同じ事をした馬鹿がいたではないか!
幸い総監は留守中で現在は私がこの警視庁の最高責任者だ。
至急SATに出動させろ、犯人の射殺を許可する!!」

内村部長の命令で、SATに対しエスターへの射殺命令が下された。

その頃、自分が殺害対象になってる事も知らないエスターは警視捜査官室で右京を相手に対峙していた。
そして右京は携帯で芹沢かSATにエスターの射殺許可が出たという知らせを受けていた。

右京「わかりました、芹沢さんどうもありがとう。」

エスター「何の話をしているのかしら?爆弾を起動させるわよ!」

右京「お待ちなさい、その前に4年前語れなかったあなたの犯行動機について…
少し僕なりの推理を語りたいのですがよろしいですか?」

エスター「フンッ、勝手にしなさい!」

右京「あなたの犯行動機が不明でした、当時官房長はあなたの犯行は養子先の家の財産目当てではないかと疑っていましたが
あなたがこれまで養子先にいたのは長くても精々1ヶ月程度、そんな短期間では
あなたに遺産が丸ごと手に入るとは思えません、そこで僕は別の理由を考えました。」

エスター「別の理由って何なのかしら?」

右京「小暮ひとみ、かつて僕が逮捕した犯罪者の一人です。
彼女は父親を恋をしていた、しかしその恋は報われず…彼女は父親を殺害。
そしてその後、父親の幻影を追い求めて父親に似通った男たちと付き合うものの
結局彼女は父親と違う理由から彼らを殺害していきました…」

エスター「…」

右京「あの夜、ジョン・コールマンを襲った日…あなたはドレスを着てジョンを誘惑していましたね。
何故そのような事をしたのか、それは先ほどの小暮ひとみの事案とそれにあなたの本当の年齢を考えてわかりました。
エスター、あなたは一人の大人の女性として誰かに愛されたかったのではありませんか!!」

エスター「そうよ…私は愛されたかった…」

右京「やはり…そうでしたか…」

エスター「私はこれまでの人生の大半を子供として過ごしてきた、その苦しみがアンタにわかるの!?
同い年の男に愛されようとしても見た目が子供だという理由でいつも嫌煙され…
それにこの身体の所為で周りからは気味悪がられて…私が一体何をしたっていうのよ!?」

エスターは涙ながらに本音を訴えた、無理もない…
生まれてから誰からも愛されなかった、だからこそ誰かに愛してほしかったのだから…

エスター「誰も私を大切にしてくれない!なら…もうここで全てを終わらせてやるわ…」

右京「いい加減になさい!あなたが誰からも愛されなかったのは…あなたに問題があったからですよ…
それこそ身体的な問題ではなく…あなたの心に問題があったからじゃありませんか!」

エスター「何も知らずに…私がこれまでどれだけ苦しんできたと思っているの!?」

右京「それが必ずしも殺人を行っていいという理由になんてなりませんよ!
そしてエスター、あなたは自分の事を誰もわかってくれていないと
本当にそう思っているのですか!?」

エスター「当たり前でしょ…それにさっきの連絡…私の射殺命令が出ているんでしょう…
ならさっさとやるように伝えなさい、その瞬間あなたたちも道連れに死んでやるけどね…」

右京「いいえ、射殺なんてさせませんよ、今…あなたにはまったく縁の無い人たちが
そのために駆け回っているのですからね!
僕の言う事が嘘だというならご自分の耳で確かめてください。
彼らがあなたの命を守るために駆けずり回っているのが証明されますよ!」

そう言って右京は自らの携帯をエスターに差し出した。

携帯から流れてくる音声は紛れもなくエスターを救うべく駆けずり回る刑事たちの声であった。

その頃SATが射撃体勢を整えているところに伊丹たちが現れた。

伊丹「おい!射殺をするのはやめろ!あそこにはまだ特命の連中や犯人がいるんだぞ!」

SAT隊員「黙れ!我々は既に命令を受けている、邪魔立てするなら取り押さえるぞ!」

伊丹「面白れえ!こちとら毎日犯人とガチンコで渡り合っている天下の警視庁捜査一課だ!芹沢行くぞ!!」

芹沢「先輩!もっと穏便に交渉してくださいよ!?」

~捜査一課~


そしてこの連絡を受けた内村部長は…


内村「なんだと!ウチの伊丹と芹沢が…一体何をしとるんだ…あの馬鹿どもは!?」

三浦「部長、ヤツらの言う事もわかってください!
我々は警察は犯人逮捕が使命なんです、断じて殺す事なんかじゃありません!」

内村「黙れ!お前も私の命令に背く気か!?
大体係長のお前が部下の不始末を見過ごしたからこんな事に…」

三浦「お叱りはごもっともです…しかし今は特命係を信じて…」

内村「何が特命だ!あんな窓際部署に頼るくらいなら射殺命令を下した方がマシだ!!」

三浦「ふざけるな!!
射殺命令下されるくらいなら捜査一課全員命張って警視総監室に突入するぞ!!」

内村「なっ…」

三浦「すみません、上司に向かって暴言を吐いてしまい…」

普段は温厚な三浦が珍しく見せた激昂する表情、これにはさすがに内村も驚いてしまった…
そんな二人のやり取りを見かねて中園がある妥協案を出した。

中園「やはり警視総監室で射殺というのは無粋な方法なのでは…
今のご時世警察の信頼を損ないますし…なにより犯人は外人です…
もしかしたら外交問題にも発展する恐れが…」

内村「ならお前たちが勝手にやれ!俺はもう知らん…」

内村はこの場にいる者たちから自分の意見を反対され遂に匙を投げ出した。

三浦「すみません課長、勝手な行動に出てしまって…」

中園「構わん…あの人にもたまにはこれくらいお灸を据えてやるのが丁度いいからな…」

そしてこの現状を右京の携帯から聞いていたエスターもまた驚き右京に尋ねた。

エスター「な…なんでよ…
何でアンタたちは私の射殺を阻止しているのよ?
この事件…私一人を射殺すれば解決するじゃない!?」

右京「そうかもしれませんね、ですが…ふざけるんじゃない!!」

エスター「え…」

右京「命がどれほど重いかあなたはまだわからないのですか!
かつてあなたがいたコールマン家のあの白い薔薇が置かれていたメッセージを読んで
まだわからないのですか!?
本来なら生まれてくるはずであったジェシカという子供を失った事への後悔…そして懺悔…
そしてエスター、あなたは何故コールマン夫妻があなたを引き取ろうとしたのかわかりますか?」

エスター「そんなの…私をジェシカの代わりにでもしようと思っただけでしょ。
それが何だというのよ?」

右京「確かにあなたの言う通りです、夫妻は失ったジェシカの代わりにあなたを引き取り育てようとした。
しかし…それでも夫妻はあなたの事を愛そうとしていたのは事実ですよ!
あなたはその愛を…そして命の重みを感じなかったのですか!」

エスター「だって…もう遅いわ…手遅れよ…」

エスターは爆弾のスイッチを押そうとしたその瞬間…



ガッシャーン


カイト「待てーッ!!」

先ほど陣川と一緒に子供たちの案内に出たカイトが窓のガラスを割り部屋に潜入して
エスターの起爆スイッチを持った手を押さえる事に成功した!

右京「カイトくん!」

右京もまたカイトに加勢してエスターが身に付けていたプラスチック爆弾を離す事に成功した。

右京「カイトくん…お手柄ですよ…よくやってくれましたね。」

カイト「ハハ…杉下さんがこの部屋に入る前に俺にメールを送ってくれましたからね
そのおかげで…部屋に入れましたからね。
それとお礼なら陣川さんに米沢さん、それと大河内さんに言っておいてください。
あの人たちの協力がなかったらこの作戦は出来ませんでしたから…」

その頃、警視総監室の真上の部屋では…


陣川「痛たた…甲斐くん大丈夫かな?」

米沢「たった今杉下警部から連絡がありました、犯人確保に成功したそうです!」

陣川「よかったー♪」

大河内「どうでもいいが何故私がこんな事に付き合わねばならんのだ…」


ポリッ  ポリッ


そう呟きながら大河内は好物のラムネを噛みしめていた。

再び警視総監室では策が尽きたエスターが部屋で座り込み観念していた。

エスター「降参するわ、もう私は抵抗しない…」

右京「その方がよろしいですよ、既に部屋の廊下には大勢の警察官が待機してますからね。
今度はいくらあなたでも切り抜ける事は出来ないでしょう。」

エスター「杉下…最後に頼みがあるのだけど聞いてくれる?」

右京「はぃ?」

そして警視総監室の扉が開けられた。
まず出てきたのは爆弾を堂々とかざし現れたカイトであった。

カイト「爆弾は確保しました!処理班、この爆弾の処理お願いします!!」

すぐさまカイトの下へ処理班が近付き爆弾の処理に当った。

そして次に出てきた者たち、それは…

右京「…」

エスター「♪」

右京とエスターであった、右京はまるでエスターをエスコートするかのように手を繋ぎ
待機していた警官たちの前に現れスカートの端を摘んで軽く会釈した。


エスター「こんにちは、私はエスターよ。」


年齢を偽り養子先の家族を次々と殺害して、
さらには警視庁も巻き込んだエスター(本名:リーナ・クラマー)による一連の殺人事件はこうして幕を閉じた。



エピローグ


~花の里~


事件が終わり右京とカイトの二人は花の里に来ていた。

幸子「まぁ、そんな大事件があったんですか?」

カイト「えぇ、大変でしたよまったく!
けどエスターって何で警視庁にまで乗り込んできたんですかね?
杉下さんを殺すだけならどこかで待ち構えてればいいのに…」

右京「以前僕が彼女の前で名乗ったのが原因でしょうね。
さすがに一般人であるエスターに警察の人事記録を閲覧する事は不可能ですから
だからこそ危険を冒してでも警視庁に行かねばならなかったのでしょう。
それにもしかしたら本当は止めてほしかったのではないでしょうか?」

カイト「何でそんな事がわかるんですか?」

右京「実はあの爆弾…米沢さんに聞いてみたところ不発だったようです。
最初から自爆する気はなかったのでしょうね。
恐らく自分ですら止める事の出来ない狂気…僕はかつてそのような犯罪者を何度目撃してきました。」

カイト「エスターは結局どうなるんですか?」

右京「母国に引き渡されるそうです、そこで実刑判決を受けるか…
もしくはまた精神病院に送られるかはわかりませんがね…」

カイト「それにしてもホルモン異常の子供に扮した大人が巻き起こした事件…
なんというかちょっとSF入ってませんか?
正直現実離れしているというか…」

右京「そうでしょうか?
TVから髪の長い悪霊が出てきたり呪いの家に行った後に呪い殺されるよりは、
よほど現実味のある事件だと思いますよ。」

カイト「何すかそのメタ発言は…
まぁ…あと俺たちに出来る事といえばエスターが更生する事を願う事だけですかね。
そういえば杉下さんが読んでいたあの手紙は一体なんだったんですか?」

右京「これは…僕があの事件で知り合ったカメヤッマー警官とそれにコールマン家の方々から
頂いた手紙ですよ。
あれからコールマン家はケイトさんのアルコール中毒も完全に治り無事平穏を
取り戻したとの事が記されていました。」

カイト「へぇ、ちょっといいですか?何々…なるほど…」

カイトが読んだ手紙の内容はコールマン家の近況とそれにカメヤッマー警官の近況も…
街は平穏を取り戻し、子供たちは無事に進学して何もかもが平和になったという。
ちなみにカメヤッマー警官は刑事に戻ったとの事であった…

カイト「カメヤッマーさん刑事に戻ったんだ、それにしてもあの警察庁の官房長を
相棒にしちゃうなんて杉下さんって何気にスゴい事じゃないですか!」

右京「そうでしょうかね、正直な話…官房長は現場に居てほしくない人材です。
洞察力は僕以下、体力は老齢のため期待できず、回転寿司に行けばお皿は元に戻す、
こういう人は上役の席でずっしり構えててもらうのが一番ですよ。」

カイト「何気に死人に鞭打つ発言してるし…そんな事じゃ呪われちゃいますよ…」

右京「ご安心を、もう呪いはこりごりですので。
ところで実は…手紙には事件のお礼にある観光地への招待券も入っていましてね。
行先はアメリカなんですが、かなり遅い夏休み…いえ今時の秋休みにキミも行く気ありませんか?」

カイト「マジで?行きます!行きます!太っ腹ですねコールマンさん!
それでアメリカの何処なんですか?」

右京「行先は…アメリカのニュージャージー州ブレアーズタウンの…」

右京が言う観光地への行先…それはホラーモノが好きな者には当然の如く知られるあの場所であった…

右京「クリスタルレイクキャンプ場だそうです。」


続く(?)

次回予告

アメリカのクリスタルレイクキャンプ場にやってきた特命係の右京とカイト。

しかしそこには恐ろしいあの殺人鬼が待ち構えていた!?

次回、右京「13日の金曜日?」にご期待ください!!


これにて終了です。

本当なら深夜に全部終わらせる予定でしたが寝落ちしてしまいました、すみません…

今回題材にしたエスターは正直以前書いた「リング」、「呪怨」よりも知名度も低いマイナーなモノだし
一応ホラー枠ですが内容はサイコサスペンスモノでさすがに前二作と比べるとどうも見劣りがあると感じてしまいます…
それと今回試しに官房長を相棒役にしてみましたが私の技量不足かあまり官房長をうまく動かせなかったのも欠点かなと。

そして次回予告は…正直すぐにやるわけではないし…もしかしたらやらないかもしれません…

なのであまり本気になさらないでください。

補足です。

ちなみに劇中に出てきた小暮ひとみはシーズン2、1話の犯人です。

>211
こちらで内村部長が言う「以前にも警視総監室に云々」というのはシーズン1の1話のアバンで
警視庁にダイナマイトを括りつけて立てこもった東大卒のあの人です。

それとカイトくんが警視総監室へ突入したネタは相棒劇場版2のネタから拝借しました。

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