沈黙の魔法少女 (708)

某所ヘリポート

ババババババババ・・・

ガラッ


「ふぅ・・・やっと着いたか」バタン スタッ

「日本も久しぶりだな・・・」


老人「おっ、あんた観光かい?」

「おいおい・・・あんたには俺がそう見えるのか?」ハハ

老人「ははっ!その様子だと病気はしてないみたいだな!」

「頑丈さには自信があるんでな。そっちは?」

老人「相変わらずさ。まぁ腰がちと痛いが」

「あまり無茶はするなよ? で、早速なんだが・・・」


「見滝原は向こうであってるよな?」


老人「ああ。なんなら地図でも貸そうか?」

「そうしてもらえると助かる」ヘヘ

老人「そうか。じゃあコイツをやろう。といっても古いヤツだけどな」

「悪いな」

老人「日本語は読めるよな?」

「じいさん・・・俺をバカにしてるのか?」

「あっはっはっは!スマンスマン」

(この様子だと、当分死なねぇなこのじいさん)ハハ


老人「それじゃあなセガール!良き旅をな!」


セガール「ああ、世話になったな」スタスタ



老人「友達との約束、果たせるといいな!」



セガール「・・・そうだな」スタスタ




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さやか「まーどーかーっ!」ダキッ

まどか「うわぁっ!ちょっ、ちょっと・・・」

さやか「むふふ、まどかはいつもリアクションが新鮮でいいですなぁ~」ウリウリ

まどか「わわっ!ちょとっ、まって!くすぐったいよぉ」アハハ

さやか「そんなこと言われると、ますますってね~♪」ウリウリ

仁美「相変わらずお二人とも仲がよろしくて、羨ましい限りですわぁ」

さやか「お二人ともぉ? 随分他人行儀じゃないの仁美ぃ~・・・・・・。・・・そんな仁美にはこうだっ!」ガバッ

仁美「あっ、さっ、さやかさん待って・・・くすぐるならまどかさんを・・・」アハハハハ

さやか「んふふー、仁美もなかなかにういヤツじゃのう。だがしかぁーし!まどかの方がカワイ・・・」

セガール「そこのお嬢さん達?」


さや仁「?」


まどか「?・・・なんですか」


セガール「いや、少し聞きたい事があってね。時間はとらないから、いいかな?」

まどか「なっ・・・・・・なんで、しょうか・・・?」オドオド

セガール「この地図のココなんだけど、この場所ってまだあるかな?」

まどか「えっ・・・あっ・・・・・・ちょっと、分からないです・・・」

セガール「分からない? そうか弱ったな・・・」

まどか「すみません・・・」ショボン

セガール「なぁに気にする事じゃないさ。そっちのお嬢さん方もいいかな?」

仁美「?」

さやか「・・・あたし・・・ですか・・・?」キョトン

セガール「いいかな?」

さやか「・・・・・・・・・いいですけど・・・」スタスタ

セガール「そりゃあ助かる。ここなんだけど」

さやか「えーっと・・・ここですよね?」

セガール「そうだ」

さやか「ふ~ん・・・教会なんてあったんだぁ・・・」

セガール「君も知らないのか?」

さやか「実は・・・」エヘヘ

セガール「はぁ・・・」

さやか「まぁまぁ、そんなに気を落とさなくても大丈夫ですよ。行けばなんとかなりますって」ニコッ

セガール(打ち解けるのが早いな・・・)


仁美「私、この場所知ってます」


さやか「おおっ!流石は我がクラスの華仁美ちゃん!」

セガール「本当か?」

仁美「はい」

-----
---




セガール「なるほど・・・・・・廃墟にはなっているが、取り壊されてはいないんだな?」

仁美「はい、そうお聞きしております」


セガール「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


さやか「・・・あのぉ、どうかしましたか?」

セガール「ん? いやぁなに、少し思う所があってな」

さやか「?」

まどか「?」

セガール「悪いね、登校中に引き止めちゃって」

さやか「え? あっ、はい・・・」

セガール「本当に助かったよ、ありがとう。それじゃあな」スタスタ

さやか「あっ・・・」


スタスタ・・・



さやか「・・・?・・・・・・」

まどか「いっちゃったね・・・」

仁美「不思議な方でしたね・・・」

セガール「あーそうだ! 一つ言い忘れてた!」タッタッタッ

さやか「へ?」

仁美「?」

セガール「俺はこう見えても牧師をやっててね。あそこの教会を元通りにした暁には、そこで悩める子羊のために開業しようと思ってるんだ」

さやか「は、はぁ・・・」

セガール「悩み多き時は相談に乗るぞ? 恋の悩みなんていうのは特に大歓迎だ」

さやか「!?」

セガール「それでは今度こそさよならだ。君達に神の御加護があらんことを」


スタスタ・・・



まどか「・・・・・・?」

さやか「・・・・・・・・・」

仁美「・・・・・・・・・」


老婦人「ありがとうございました」ペコリ

八百屋「いいえこちらこそ!またきてくださいよ!」ハハハ

老婦人「はいはい、明日もお願いねぇ」


ガシッ


老婦人「?」

八百屋「ん?・・・あっ!」


杏子「・・・・・・」ダッ


八百屋「!? お、お嬢ちゃん! 会計!」

老婦人「あらら・・・」

タッタッタ・・・

八百屋「行っちまったよ・・・」







教会の中


杏子「ふーっ・・・」ヨッコイショ

杏子(警察は来てないな・・・)キョロキョロ

杏子「あー・・・スられてんのに通報もしねーなんて、バカっつーかお人よしっつーか・・・」シャクッ

杏子「ン・・・」シャクシャク・・・


杏子「んー・・・微妙・・・」シャリシャリ・・・





-------------------------------

教会の外



セガール「こいつを修理するのは骨が折れるぞ・・・・・・そこらの廃墟とはてんで違う」ジー



セガール「やれやれ・・・」スタスタ





杏子「・・・・・・」シャクシャク

杏子「・・・・・・」ポイッ


杏子「りんご一個じゃ全然足りねぇ」フン

杏子(つっても、残りはアタシのじゃないし・・・どうしたもんかね・・・)

杏子(やっぱりもう一回行くか・・・)スタッ


バターン


杏子(!)ピクッ


セガール「おおっと。・・・ん?」

杏子「・・・・・・・・・・・・・」

セガール「ああ、先客がいたのか。いや悪気は無かったんだ。触るだけでドアが外れるとは思わなかったんでな」

杏子「誰だよアンタ」

セガール「誰って・・・その前にお嬢ちゃんは何やってるんだ? こんな所で」

杏子「アンタには関係無いだろ。質問に答えな」

セガール「そう言われても困る。俺は職業柄、家出中の少年少女を放っておけないタチなんでな。家は何処だ? 父さん母さんはお嬢ちゃんの事心配してるぞ?」

杏子「・・・・・・・・・・・・・・」

セガール「・・・なぁ、その怖い顔はどうにかならないのか?」

杏子「なるほどね・・・」フフッ

スタッ

セガール「おお、案外素直じゃないか」


杏子「アタシとやろうってんだね」


セガール「ん?」

杏子「黒いスーツにでかい図体にその目つき・・・」

セガール「お、おいおい・・・」

杏子「たったそれだけで出て行けっていうんだから、アタシも嘗められたもんだよ。それとも外に何人かいるのかい? 最後の警告として言っとくけど、早く出て行かないとぶっ潰すよ」

セガール「・・・君、なんか誤解してないか?」

杏子「言ったからね。もう知らないよアタシは」


パッ


セガール「!」

杏子(命までは取らないけど、怖い目には会ってもらうよ。せいぜい見えない相手に奮闘しな)



セガール(なるほど・・・・・・やっぱり魔法少女か)

セガール(あの目つき…どうやらやっこさん、バレてないと思ってるようだな)

杏子(へぇ…敵が目の前で消えても驚かないんだ)フン

セガール「……」キョロキョロ

杏子(そっちじゃねーよ)ヒュン スタッ

セガール「……」キョロキョロ

杏子(敵はアンタの後ろさ。まずは脚を折ってやるよ)ブン


セガール「……」ピョン


杏子(!?)スカッ

セガール「うーむ困ったな。見えないんじゃ戦いようがない」スタッ

杏子(なっ、なんだコイツ!?なんで分かった!?)

セガール「いやー困った困った」ハッハッハ

杏子(笑ってんじゃねぇ! クソっ!後ろとってんのに何で…)

セガール「……」ヒョイッ

杏子(なに木の枝拾ってんだコイツ…)

セガール「こんな時はダウジングに限る。おーいお嬢ちゃん出ておいでー」ピロピロ

杏子「……」イラッ

セガール「おかしいなぁ…やっぱ木の棒じゃ駄目か」ピロピロ

杏子(バカにすんな…!)ビュン!

ギャリン グサッ

杏子「へっ?」

セガール「おお! 何か引っ掛かったぞ!木の棒もイケるんだな!」ハハッ

杏子(なんだ今の…。!? 槍が壁に!?)

セガール「と思ったらまた反応無くなったよ……やっぱいい加減だな」ピロピロ

杏子(掃い飛ばされたのか? まさかあの…)

セガール「……」ピョンコピョンコ

杏子(枝に…?)


セガール「ふぁ~ぁ…なんかダウジングも飽きてきたなぁ」ポイポイッ

杏子(は?)

セガール「寝るか」スタスタ

杏子(なっ…!?)

セガール「長旅だったし、少しは休まないとなぁ」セノビー

杏子(こ…こんの野郎…!!)ダッ

セガール「おっと、寝る前に体操するか」

杏子(はぁっ!)ビュンビュン

セガ「1・2」サッサッ

杏子(かわすなっ!)ブンブン

セガ「3・4」サッサッ

杏子(この!)バッ ブオン

セガ「5・6」サッサッ

杏子(このっ!!)シュバッ シャッ

セガ「7・8」サッサッ

杏子(このっ!!このっ!!こんのやろぉ!!)ビュン ブン バッ

セガ「たまには太極拳もいいな」ゆるりら~


杏子「こっ…こっ……」


セガール「ん? この教会ニワトリ住んでるのか?」キョロキョロ


杏子「こんちくしょおおおおおおおおおお!!!!」ガシャッ ジャララララ

ジャラララ ガシィン シャリン シャキン

杏子「クソっ!なんで当たらねぇんだよ!」ジャララッ

セガール「5・6・7・8…」サッサッサッ

杏子「ちくしょう!!このクソヤロー!!」ブンブンブン

セガール「1・2・3・4…」サッサッサッ

杏子「うおりゃああああああ!!!」シュバババ

セガール「ん~…涼しいなぁ」ソヨソヨ

杏子「はあっ、はあっ、くそっ…ちくしょぉぉ…」ブルブル

セガール「……」バサッ ←扇子開いた

杏子「…………」フゥ-…

セガール「……」パタパタ

杏子「でぇやあああ!!!」ブンッ!

セガール「……」ガシッ

杏子「!!」

セガール「……」パチッ ←扇子畳んだ

杏子「あ…」

セガール「……」スッ

杏子「ぅ……クソっ…」ギュッ


ペチッ


杏子「ぇ……」


セガール「お前の負けだ」


杏子「……………」



---------

------

---

セガール「意外と繊細なんだな」

杏子「…うるせぇ…」グス

セガール「まぁそう気に病むな。お嬢ちゃんより強いヤツなんざこの世に五万といる。今回はたまたまそいつと出会っただけだ。君のせいじゃない」

杏子「………」ツーン

セガール「…なぁ、少しは会話を楽しもうとかそういう気はないのか?」

杏子「ねぇよ」フン

セガール「やれやれ…取り付く島も無いとはこの事だな」

杏子「………」

ガチャッ キィ…

セガール「ん?」


モモ「おねぇちゃ…」


杏子「……」ダッ

セガール「……」

タッタッタ…

杏子「どうした?ん? 起きちゃったのか?」ダキッ

モモ「うん…おっきな音したから」ゴシ…

杏子「うんうん、もう大丈夫だからな。ほら、大きな音しないだろ?」

モモ「うん…」

セガール(ん~…なるほどね~)

杏子「腹減ってないか?」

モモ「うん」

杏子「頭痛いとか、そういうのもないよな?」

モモ「だいじょぶだよぉ」エヘヘ

杏子「そっか…」ギュウ…

モモ「ん~」ニコニコ


セガール「さっきまで眼に一杯の涙を溜めてた理由が、なんとなくわかったぞ」


杏子「……」ケッ

モモ「? あの人だあれ?」ユビサシ

セガール「お姉ちゃんのお友達だ」

杏子「ちっげぇだろバーカ!!」

モモ「ふぁ…」ウル

杏子「あっ、ごめん、びっくりしたよな……ごめんな…」

モモ「ぅぅ…」スン

セガール「……」スタスタ

杏子「! く、くんなよっ…」カバイ

モモ「?」

セガール「よっ、おちびちゃん」シャガミ

モモ「おちびちゃ?」

杏子「おいこらモモ…」

セガール「モモ?お嬢ちゃんモモっていうのか?」

モモ「うん。モモはモモだよ?」

セガール「そうかぁ。かわいい名前だなぁ」

モモ「えへへ」ニパー

杏子「ちょっ、おいアンタ…」

セガール「モモちゃんはお姉ちゃんの事好きかい?」

杏子「えっ?」

モモ「うん!だぁいすきー!」ニコニコ

杏子「う…///」

セガール「そうかぁ…。良い妹持ったなお前も」

杏子「なっ…なんなんだよアンタさっきから…」

セガール「いや、ちょっと仲直りしようと思ってな」

杏子「は?」

セガール「出会い方はどうあれ、出会った場所は教会という神聖な領域だ。コレも神のお導きかもしれん」

杏子「アンタ…いきなり何言ってんだ?」

セガール「運命という物の存在を、信じるか信じませんかってやつだ。俺は信じるぞ?なんたって牧師だからな」

杏子「牧師ぃ!?」

セガール「なんだ、何か文句でもあるのか?」

杏子「い、いや、ないけど……どう見てもヤクザにしか…」

セガール「失礼な奴だな。俺のどこがジャパニーズヤクザなんだ?確かにニンジャソードは好きだしゲイシャガールも最高だ。だがいいか?俺はヤクザは嫌いだ。目の前にもしヤクザが群れを成していたら、神の御名の下皆殺しにしてやるところだ」

杏子「ホントに牧師かよアンタ……」

モモ「みなごろし?なぁにそれ?」キョトン

セガール「ん?皆殺しってのはだな、怒りに任せて力の限りに…」

杏子「バッ、バカやめろ!モモにそんな事教えんな!!」ガバッ

モモ「ぅ?」

セガール「なんだここからが良いところだってのに…。…っていうか、もしかして君が俺を襲った理由ってのは、俺がヤクザに見えたからっ…ていうやつか?」

杏子「えっ…いや……まぁ…」

セガール「………」

杏子「そんな感じ…」

セガール「…………」

杏子「………悪かったよ」

セガール「はぁ…」

モモ「あのね、お姉ちゃん」

杏子「うん?」

モモ「…ううん、なんでもない」

杏子「?」


ググゥ~…


モモ「う…」

杏子「………」

セガール「お腹が空いてるけど、お姉ちゃんが我慢してるから私も我慢する。…そんなところだろう」

杏子「モモ…」

モモ「えへへ」ニコッ

セガール「ちょうどいい、皆腹が減ってるなら早いとこメシにしよう」ポン スタスタ

杏子「気安く触んじゃ…おい、食べ物は…」

セガール「だいじょーぶ。一日分のメシは確保してある」ヨッコラセ

杏「一日分? じゃあ、アンタ…」

セガール「心配するな。見るからにホームレスの女の子二人からメシふんだくって懐に溜め込むようなマネは、俺の主義主張に反する」

杏子「見っ…そういうこと言ってんじゃねえよ」

セガール「じゃあなんなんだ?」

杏子「いや…アンタもなのかなって…」

セガール「だから心配するなって。金はそれなりに持ってきてる。…隣来るか?モモ」

モモ「わぁーい!」タタタ

セガール「おお、よしよしいい子だ。お前もどうだ?」ナデナデ

モモ「お姉ちゃーん!」ノシ

杏子「あ…アタシは…」

セガール「いいから来いよホラ。とって食おうってんじゃないんだ」ハハ

杏子「………」

セガール「みんなで食うメシは旨いぞ?」ムシャムシャ


杏子「あぁもう…わかったよ。ったく…」スタスタ


セガール「あー食った。運動の後の食事は腹に染みるな」

モモ「……」スー スー


杏子「あのさ」

セガール「ん?」

杏子「アンタって、一体なんなんだ?」

セガール「ただの牧師だ。なんだ、薮から棒に」

杏子(ただの牧師なわけねーだろ)
  「薮から棒はアンタだろ…次から次へと勝手に進めやがって、少しは考える時間をくれってんだよ。アンタのせいで、こっちはずっと調子狂わされっぱなしなんだ」

セガール「おお、そりゃ悪いことしたな。済まなかった」

杏子「そういうのじゃねーよ。アタシの質問に答えろって言ってんの」

セガール「質問ねぇ…例えば?」

杏子「アンタ、魔法少女でもないのにアタシの槍を見切ってた。アレはどういう事だ? ……あー、魔法少女ってのは…」

セガール「知ってるよ。インキュベーターと契約する事によって、魔力を操る力を得た少女の総称だ」

杏子「…はっ、アンタやっぱただの牧師じゃねーな。アイツは中年オヤジとも契約するのか?」フフ

セガール「流石に魔法中年は無いだろ。二重の意味で」

杏子「契約してないのか?だったらなんで変身したアタシが見えるんだよ」

セガール「なんだ?俺のコスプレ姿でも期待してるのか?」

杏子「見たくねぇよ! 真面目に答えろよ」イラッ

セガール「わかったよ、真面目に答える」ハハ

杏子「……」

セガール「俺には見えない」

杏子「は?」

セガール「変身したお前の姿は見えないし、お前の使ってた武器もよく分からん」

杏子「え…じゃあ…アレは、なんで…」

セガール「感じるのさ。俗に言う野性の勘とか霊感とか、第六感って物だ」フフ

杏子「どういう事だオイ……」

セガール「どういう事も何も、それ以外の呼び方が分からないんでな。まぁ、なんとでも言ってくれ」


杏子「ちょっと待ってくれ、じゃあアンタ…見えないで闘ってたのか…?」

セガール「だからそう言ってるだろ」

杏子「ウソだろ…」

セガール「いや、紛れも無い事実だ」

杏子「…だったら、アタシの槍を掃った時も…」クラッ

セガール「おいおい、そんなショック受ける事でもないだろ」ハハ

杏子「ショック受ける事だよ。……はぁ」ショボン

セガール「俺には分からないなぁ」ヘラヘラ

杏子「そりゃアンタはね…。見えてないヤツ相手に、なんであんだけ振って掠りもしないんだよ。ずりぃよ…おかしいよ…」ブツクサ

セガール「まぁ…あれだ、神の御加護ってヤツだ」ハハハ

杏子「ちくしょう…あ~超うぜぇ~…」ハー…

セガール「ところで君、名前は?」

杏子「今聞くことかよそれ」ウンザリ

セガール「いいだろ名乗るぐらい。俺も後で名乗るから」

杏子「わかったよ、しかたねーな……でも、あと一つだけ質問がある。それにアンタが答えてからだ」

セガール「OKだ。なんでも聞いてくれ」


杏子「アンタがここに来た理由が知りたい」


セガール「理由かぁ…」

杏子「言わないんなら名乗んねーよ」

セガール「ん~…」

杏子「………」


セガール「この教会を元通りにした後、弱き者達の助けとなるために、ここで神の教えを人々に授ける……ってのはどうだ?」


杏子「…………」

セガール「……どうした?名乗らないのか?」

杏子「やめといた方がいいよ。それ」

セガール「?」


杏子「教えを広めようったって、誰も聞く耳なんて持ちゃしない。どんなに正しくて、人として当たり前な事を話しても、それを真摯に受け止める奴なんて一人もいないよ。ただ理想を語ってるだけの変人だって馬鹿にされて、気味悪がられて、差別されて、それでおしまいさ」


杏子「希望なんて持たない方がいいんだよ。それが叶う事はほとんどありえねーし……叶っても、いつかは全て奪われるんだ」


セガール「……………」

杏子「………ごめん。今日会ったばっかのアンタに言う事じゃないな…悪い…」

セガール「…………」

杏子「………………」




セガール「君、名前は」

杏子「え? ああ、名乗るんだったな…」

セガール「………」

杏子「佐倉杏子だ」

セガール「そうか。………いいか杏子。君に何があったかは正直計りかねるが…俺が思うに君にはまだ希望がある。それも、何があっても守り続けられる希望がな」

杏子「やめろよ…今のアタシに希望なんて…」

セガール「一人で守れる自信がないってんなら心配はいらない。いつでも俺は君に力を貸す。なんたって牧師だからな」

杏子「…………」

セガール「妹には幸せな人生を用意してあげたい…そう思う君の気持ちは、誰にも奪えやしないだろ」

杏子「……………」

セガール「………………」


杏子「ははっ……いい奴なのかヤバイ奴なのか、どっちかわかんねーな、アンタって…」


セガール「………」フフ


杏子「アンタの名前、聞かせてくれないかな…」


セガール「ああ、今度は俺の番だったな」


セガール「俺の名前はセガール」



セガール「スティーブン・セガールだ」



老人「んー…夕日が眩しいな」

老人「セガールの奴、ちゃんと見滝原に着けたのか?」

老人「まぁいいか子供じゃあるまいし、杏子ちゃんとも……ん?」


老人「はて…何か忘れとるような……」


老人「ん~………ん!?」


老人「あっ!こりゃいかん!」


老人「アイツに銃を渡しとらんじゃないか!!」


老人「こりゃえらい事になった…」ガタガタ

老人「このままではあのバカ、最悪の場合杏子ちゃんを半殺しにしかねん!」

ピッピッピッ…オカケニナッタデンワハ…

老人「なんという事だ…セガールのやつ携帯の電源を切っとる!!」ブルブル

老人「こうしてはおれん!すぐにでも向かわねばならん!」ガチャッ バタン

カチカチ

老人「よし!発信機は生きている!」

老人「待ってろ杏子ちゃん!今行くぞ!!」ブロロロ…

杏「わーまてまてー!」タッタッタ

モモ「きゃーっ!早いよおねぇちゃ!」タタタ

杏「おりゃ!」ガバッ

モモ「うきゃっ!」タタッ

杏子「あっ、この~モモめ~」ジリジリ

セガール「おいおい、俺の後ろに隠れるなよ」フフ

モモ「えへへへ」ニパー

セガール「そんなところにずっといるとなぁモモ…」

モモ「ずっといると?」

セガール「俺に捕まるぞ!」バッ

モモ「うきゃーっ!」タタッ

セガール「ああっ逃げられたか…速いなぁモモちゃんは」

モモ「モモちゃん速いー!」キャッキャッ

セガール「はっはっはっは」


杏子「悪いね。モモの遊びに付き合わせちまって」

セガール「なぁに、こういうのには慣れてる。自分も一緒になって楽しむのが子供と長く遊ぶコツさ。がおーっ!」バッ

モモ「うひゃーっ!」タタタ

セガール「はっはっはっは!」

杏子「ふふっ…。あっ、教会からは出るなよー」

モモ「わかってるーっ!」タタタタ

カァッ


杏子「!!」


セガール「ん?」

杏子「……………」

セガール「…どうした?」

杏子「ソウルジェムに反応がある……これは多分魔女だ。それも、ここからそう遠くないとこにいる」ピカーッ

セガール「そうか。…それならあまりのんびりとはしてられないな」

杏子「………」


モモ「おねぇちゃどうしたの?」トコトコ


杏子「モモ、鬼ごっこはおしまいだ。お姉ちゃん、ちょっと出掛けてくる」

モモ「…また魔女?」

杏子「うん……お姉ちゃんとの約束、覚えてるか?」

モモ「お姉ちゃんが帰ってくるまで地下室に行ってて、危なくなったら一生懸命逃げる」

杏子「よし」

モモ「…………」

杏子「じゃ、行ってくる。アンタはモモを見ててくれ」

セガール「分かった」


杏子「……」ダッ


セガール「…………」

モモ「あの…」

セガール「なんだ」

モモ「あの、モモは……モモは大丈夫だから…」

セガール「……………」

モモ「お姉ちゃんを、手伝ってほしい…」

セガール「……そう言ってくれると思ったよ」スタスタ

モモ「えっ?」

セガール「大人しく待ってろよ?」フフ

------
----
--



杏子「近いな…」スタスタ

  ピカーッ

杏子(ソウルジェムの反応が強い…ここだな)ギュッ


ビシィン


杏子「ふぅ…さぁーってっと、やるかな」ブン

ズバッ




セガール(閉じた結界にはああやって入るのか。…生で見るのは初めてだ)



杏子「……」スタスタ






セガール「………」ソロリソロリ






杏子「……」スタスタ


?「キンニクモリモリ」ヒョコッ


杏子「!……なんだ使い魔か」

使い魔1・2「マッチョマンノ」

使い魔3・4「ヘンタイダ」

杏子「ザコが群れやがって…」ガシャッ ジャラララ

使い魔達「セツメイショヲヨンダノヨ」バッ

杏子「………」ブン

ズバ ズバ バシュッ バシッ


杏子「………」シュッ

使い魔5「シタイダケデス」グサッ

杏子「上からったってそうはいかねーよ」スタスタ



セガール(やるな…全ての方角からの攻撃に対応している)モノカゲ

セガール(流石はベテランって感じだな)


杏子「使い魔が少ねーな…」

杏子(魔女はまだ奥か)ダッ

セガール(あっ)


シュバババ…


セガール「ヒューッ、凄い速さだなぁ」ハハ

タッタッタ

杏子「……」ババババ


使い魔6「イタゾォォォ!」

使い魔7「バケモノメェ~!」

杏子「……」ブン

使い魔6「ジュウマンドルポントクレタゼ」グサッ

使い魔7「ナルホドソウイウノモアルノカ」ズバッ


杏子「けっこう進んだし、もうそろそろ出て来てもいいんじゃねーか?」

セガール(!?)モノカゲ

杏子「おっ」

魔女「テメェナンカコワカネェ!」

杏子「いったじゃーん」ニヤ

セガール(俺の事じゃなかったのか…)

魔女「ヤロウブッコロシテヤラァアア!!」バッ

杏子(手足のある風船って感じの奴だな)ヒョイッ

魔女「ヤローオブクラッシャー!」ブン

杏子(だったら弱点は風船の中身か糸かのどっちかだな)サッ

魔女「オコサナイデクレシヌホドツカレテル」ブウン

杏子「遅いね」サッ


ガシャッ ジャラララ


杏子「もらった!」ブン

魔女「!」ズバッ パーン!!

杏子「………」

魔女「ザンネンダッタナ トリックダヨ」プクーッ

杏子「チッ、風船の方じゃねーのか」

魔女「デリャアアア」ズルン

杏子(! 手が増えたって事は本気だしたのか)

魔女「ミテコイカルロ」ブンブンブン

杏子「んなもん当たるかっ!」ガイン バシッ

ズボッ

杏子(!? 地面から…!)

ガシッ

杏子「ぐっ……」ギリギリ


魔女「ナンテミニクイカオダ」グググ


杏子(うっ…クソっ…………今日…負けてばっかりじゃん…)ミシミシ


ギリギリ


杏子(モモ………)ミシミシ




セガール「うおおおおおおおおおおおおお!!!」アーアアアアー


ドカッ


魔女「!」ドシーン

杏子(!!?)パッ

セガール「はぁ、はぁ……久しぶりのターザンは酔うな…」ウップ

杏子「ゲホッ、ゴホッ……な…なんで…」ヨロ…

セガール「モモちゃんに頼まれたんだ。お姉ちゃんを助けてってな」

杏子「モモが?」

セガール「ああそうだ。だから帰ってもモモに説教かましたりすんなよ?」

魔女「グルルルル…」

セガール「こいよ魔女! 悪いが俺は結界の中で負けた事が無いんだ」

魔女「…」シャキン

杏子(アイツ、剣まで持ってたのか…)ジャキッ

セガール「おっとストップだ。杏子…お前は手を出すな」

杏子「はぁ!? なんだよそれ!?アイツはアタシの獲物だ!」

セガール「俺も出来れば見てるだけでいたかったさ。でもな、お前の闘い方は正直40点だ」

杏子「なっ…」

セガール「お前に本当の闘いを教えてやる」

杏子「……」


スタスタ


杏子「あっ!?」

セガール「………」スタスタ

杏子「バカ!迂闊に近づくんじゃ…」

魔女「イチバンキニイッテルノハ」ブン


パシッ  ガイーン ズン ドン ドスン


セガール「どうした?それで終わりか?」フフ

杏子(全部弾きやがった…)

魔女「ネダンダ」ババッ ブン ブンブン

セガール「あ~あ~駄目じゃないか、迂闊に殴りに来ちゃ」サッサッサッ

ガシッ ボキボキボキッ

セガール「そんな事されると、腕を折りたくなる」メキメキ

魔女「クギュウウウウウウウウウ」ベキベキバキバキ


セガール「攻守交代だ。今度は俺の番だろ?」ガバッ

ドカバキドスドスバシドゴボグッ

魔女「ハウァッ」ダッ

セガール「ははっ、逃がさねぇよ」ガシッ

ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ!

杏子「すげぇ…」

魔女「エアアアアアア!」ジタバタ

セガール「おおっと、そう暴れるなよ」シュッ

ボキィッ

魔女「!!」ガクッ

セガール「悪いがもう片方の足も潰させてもらう」ニコッ シュッ

ベキィッ

魔女「!!!」ドサッ

杏子「うぁ…」


魔女「!……!…!…!!……!」ピクプク


セガール「ふぅ~…。四本の手に二本の足、それぞれが砕かれて仰向けの達磨さんみたいな格好になったコイツを、後はどうするか……杏子、お前ならどうする?」

杏子「えっ…」

セガール「…………」

杏子「あっ、アタシならトドメを刺すけど…」

セガール「どうやって?」

杏子「へっ?」

セガール「急所の分からない敵にどうやって止めを刺すんだ?」

杏子「そりゃあ……それっぽい所をぶった切って…」

セガール「違うな。正解は[結界が消えるまでひたすらブチのめす]だ」ブン

ドカッ バキッ ボゴッ ドズッ ガズッ ドゴッ 

セガール「もちろん全身余すところ無く、ペーストになるんじゃないかってくらいの勢いでな」ガッ ガッ ガッ

ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ

ガコッ ガキッ グヂャッ


魔女「」グッチャグチャ


杏子「うぇ……」


ブイィーン


セガール「おっ、結界が消えたな」ハハッ

杏子「……な、なぁ、今のはちょっとやり過ぎなん…」

セガール「杏子…お前に三つ程言いたい事がある。一つ目…お前は攻勢では圧倒的だが、防戦…つまり相手の攻撃をかわしながら戦略を練るのがあまり上手じゃない」ツカツカ

杏子「え……」

セガール「二つ目…お前の動きには無駄が多すぎる。お前の得物が槍か多節棍かは、魔法が見えない俺には分からない。しかし、リーチの長い武器を振り回しまくるのはお世辞にも良いとは言えない。なぜならそのアクションは体力を余計に消耗させ、その体力を回復するのに使う魔翌力の消耗すらも早めるからだ」ズイッ

杏子「ぅ…………」タジ…

セガール「そして三つ目は甘さだ。俺の見たところ、敵の戦力に合わせて力加減を調節出来るほど、お前は歴戦の猛者じゃない。なのに必要最低限の攻撃だけを魔女に食らわし、短期決戦を狙っている」

杏子「…………………」

セガール「いいか杏子。自分の実力を見極めた上で徹底した戦略を選び、完膚無き迄に敵を叩きのめして殲滅するのが、他人の信頼を得るに足る戦士の闘い方だ」

杏子「………悪かったな。甘ちゃんで…」フン

セガール「そっぽ向くんじゃねぇ!!」

杏子「!!」ビクッ


セガール「俺は怒ってるんだ」


杏子「………………っ」

セガール「お前は妹から信頼を得ている。必ずお姉ちゃんは生きて帰って来てくれるって、あの娘はお前が出掛ける度に思ってるはずだ。…お前はその想いを自分の命ごと亡くすところだったんだ」

杏子「………………」

セガール「俺が結界の中に居なかったら…お前があの時絞め殺されていたら、あの娘のこれからの人生を一体誰が保障するんだ?」

杏子「………………」ウル…

セガール「長々と説教するのは俺の性に合わないからここで終わりにするが、俺に言われた事は忘れるなよ。分かったか」

杏子「…わかった」ウルウル

セガール「そうか。ならいいんだ」


杏子「…………ごめん…」ウルウル


セガール「………………」


杏子「ごめんなさい……」ウルウル


セガール「……………」フー…




老人「おーい!セガール!」ブロロロ

セガール「? じいさん、アンタここで何してんだ?それよりどうやって俺を見つけたんだ?」

老人「発信機だよ!突然反応が消えてびっくりしたが、どうやら杞憂だったようだな!」ガチャ バタン スタスタ

セガール「いつの間にそんな物付けたんだ?」ハハ

老人「苦労したんだぞ?お前の目をコソコソ盗んで……おっといかん、こんな話より…」ゴソゴソ

スチャッ

杏子「!」ピクッ

セガール「オイじいさん…ここは日本だぞ?コルトパイソンなんて物騒な物渡されても困る」

老人「念の為ってやつだ。わしの車に弾がどっさり積んである。ちょっと待ってろ、今持ってくる」スタスタ

セガール「いらねぇよ…」

杏子「あの…」

老・セガ「ん?」

杏子「………………」モジ…

老人「?」

セガール「……わかったぞ杏子。このジジイが何をしてるのか説明してほしんだな? そうだろ?」

杏子「ぅ…うん」

セガール「だそうだ」

老人「ふむ……まぁ、支援のようなものだよ」

杏子「銃なんて…何に使うんだよ………牧師にはいらないじゃん…」

老人「うむ、お嬢ちゃんの言ってることは御尤もだ。だがコイツは只の牧師ではない」バシバシ

セガール「はぁ……」

杏子「まぁそうだけど…でも、銃なんか…」

セガール「その通りだ。今の俺には必要無い。第一なんでそんな物を届けに、わざわざ車を走らせてまで俺の所に来たんだ? テロリスト相手にドンパチやるならともかく、魔女相手に普通の銃じゃ効果が薄い事ぐらい、アンタも知ってるだろ?」

杏子(テロリスト!!?)

老人「うーむ…」

セガール「それとも、単に俺の世話がしたかっただけか?」

老人「いやいや、お前の世話なんかじゃない。どれもこれもお前と関わる人々の生活のためだ」

セガール「…ちょっと待て、そりゃどういう意味だ?」

老人「ここはお前の考えを尊重して、銃を渡すのはやめておこう。だが、かわりにコレを受けとってもらう」サッ

セガール「………」

杏子(封筒…?)

老人「ではわしはここで失礼する。またな!セガール!」ガチャッ バタン

ブロロロ



セガール「わけがわからん…」パリッ カサカサ

セガール「……………」ジー

杏子「………」

セガール「はぁ…」クシャッ

杏子「……なんて書いてあったんだ?」

セガール「つくづくお節介が好きなジジイだ」フフ

杏子「?」


セガール「なぁ杏子……アパート暮らしに憧れた事は無いか?」

次の日の朝


ピンポーン


マミ「? こんな時間に? 誰かしら…」
マミ(早くしないと学校に遅れちゃうのに)タタタ

マミ「はーい」

<昨日このアパートに越してきた者です。挨拶の方で、同じ階の方々の部屋を回らせてもらってるんですが

マミ「は、はい」

マミ(どんな人なんだろう…)ノゾキ


セガール「…………」


マミ「!」ギョッ

マミ(うぅ…なんか怖そうな人ね……外人さん?)

マミ(!? あの子達は…!)

セガール「あ~…何か忙しそうなので、また後ほど…」

マミ「あっ!すみません、今出ます」

ガチャッ


セガール「どうも初めまして。私スティーブンセガールと申しまして、牧師などをやっております」


マミ「あっ…どっ、どうも」

セガール「ホラ、隠れてないでお前も挨拶しろ」コイコイ

杏子「やっ、やめろよぉ…」

モモ「…」ニコニコ

マミ「!」

セガール「なに恥ずかしがってんだ」フフ


マミ(やっぱり…やっぱり佐倉さんとモモちゃんだわ…)


杏子「ょ……よぉ」

マミ「…………」

杏子「久しぶり…だな」

モモ「えへへ」ニコニコ

マミ「……………」

セガール「知り合いなのか?」

杏子「うん…」

セガール(なるほど…昨日ウダウダ言ってた理由はこの子か)

マミ「佐倉さん」

杏子「…なんだよ…」

マミ「病気とか、怪我とかしてない?」

杏子「…アタシがするわけないだろ」

マミ「グリーフシードは足りてる?」

杏子「マミにはどうでもいいだろ…そんなこと…」ブツブツ

マミ「どうでもよくなんかないわ!」

杏子「!」
モモ「!」

マミ「ホントに心配したんだから…」


杏子「……ごめん」


マミ「ふふっ……でも、元気そうでよかった」

杏子「…………」

マミ「今日は、学校休んじゃおっかな…」フフッ

杏子「えっ」

マミ「せっかくこうして、久しぶりに会えたんですもの。積もる話もあるだろうし…。そちらの…スティーブンさんも、ご一緒にどうですか?」

セガール「ん…いいのか?」
    (えらく大人びた子だな)

マミ「佐倉さんとそこまで打ち解けている人に、悪い人はいないですから。それに、三人でお茶にする方が、きっと楽しいですよ」ニコッ

セガール「なんか悪いなぁ」ハハ

マミ「大丈夫ですよ。さ、どうぞ」

セガール「それじゃあ、お言葉に甘えて」スタスタ

モモ「わーい!」タタタタ

杏子「あっ…」

マミ「さぁさぁ、貴女も早く入って。紅茶はすぐに出せるから」ニコッ

杏子「…………」

モモ「お姉ちゃん、早く行こうよっ」

杏子「……………わかったよ…」スタスタ

モモ「マミさんも早くっ」

マミ「はいはい。モモちゃんも久しぶりね」ニコニコ

モモ「お久しぶり!」ニコニコ


------
----
--



マミ「教会の再開?」


モモ「………」ケーキモグモグ

セガール「まぁ、そんなところだ。仕事の合間ちょっと息抜きでもと思ってそこらをぶらついてたら、ボロボロに寂れた教会を見つけてな。無視するのも手だったが、牧師の身でそれを決め込むのは良心が許さなくてね。日曜大工が趣味な俺が、やる気を出しつつ教会の中に入ったところで、コイツらと出会ったってわけだ」ナデナデ

モモ「ん~…♪」ナデラレ

杏子「あんた仕事でこの街に来たのか?」

セガール「話さなかったか?」

杏子「聞いてないね」

セガール「おかしいなぁ…」

杏子「とぼけてんじゃねーよ、わざとらしい。つーか仕事って何のだよ?」

マミ「佐倉さん、目上の人にその言葉遣いはダメよ? それにそんなプライベートな事も聞くものじゃないわ」ムッ

杏子「いいじゃんか別に。アタシの勝手だろ?」

マミ「もう…何回言っても直さないんだから」

杏子「で、仕事ってなに?」

セガール「ん~~~…布教と世界平和かな?」

杏子「いい加減な答え方すんなよ。アタシはマジで聞いてんだ」

セガール「俺もマジで答えたつもりだぞ?」

杏子「んなわけねーだろ…じゃあ昨日アタシが見た銃はなんなんだ?」

マミ(銃…?)

杏子「あと封筒と、それにあの変なじいさんもスッゲー怪しいんだけど」

モモ「?」モグモグ

杏子「あとテロリストがどうとかも、アンタ言ってたよな?」

マミ「!?」


杏子「どういう事か説明してくれ」


セガール「はぁ……」

マミ「私からもお願いします」

セガール「ふ~……………わかった。じゃあ俺についての事を大まかに話してやる」


セガール「俺は今でこそ聖職者だが、昔は軍人でな。祖国であるアメリカに仇なす独裁者やらテロリストやらを、片っ端から地獄と病院へ放り込んでいた」

セガール「当時の仕事には不満は無かった。社会秩序を蝕む悪党共、に暴力で立ち向かうのは楽しかったし、国からの支援で私生活が潤っていたからな」

杏子(全然ただの牧師じゃねえ…)

マミ「…………」


セガール「だが友人の死をきっかけに、俺の価値観は変わった」

セガール「そしてそれをきっかけに、俺はアメリカ合衆国の上層部に不信感を抱くようになり、軍から離れ、忠誠心を捨て、神に遣える身となったってわけだ」


セガール「だが軍人時代の悪友が、未だにちょくちょく世話を焼きに来やがる。昨日杏子の見たジジイがその一人だ」

マミ・杏「……………」

モモ「?…?…」

セガール「これでいいか?」

杏子「……なんで今まで言わなかったんだよ」

セガール「アメリカ海兵隊のOBでCIAにコネがあり、軍人から金を受け取ってる見た目が厳つい牧師が、何の警戒もされずに日本社会に溶け込めるわけがないからだ。だから身分は伏せてた」

マミ「確かに、あまり良い印象は受けないですね…」

杏子「…………」

セガール「さ、俺の方は全部話したんだ。今度は君達の関係を教えてくれないか?」

杏子「なんでそうなるんだよ」

セガール「いいじゃないか別に。俺の勝手だろ?」フフ

杏子「てめっ!……あーもう…」

セガール「ははっ」

マミ「申しわけないですけど、あまり人には言えない話なんです。それに、言っても多分、貴方は信じないと思うので……」


セガール「グリーフシードはソウルジェムの穢れを吸い取った後、インキュベーターの手によって回収される」


マミ「!!?」

セガール「信じる信じない以前に、もう俺は知ってる。これでも駄目か?」




------
----
--

昼頃

ガチャッ  バタン


モモ「♪」スタタタ…

杏子「あ~疲れた…」スタスタ ゴロン

セガール「帰って来ていきなりソファーか」ハハ

杏子「うるせーな、疲れたんだよ」ダラリ

セガール「紅茶を飲みながら、旧友と共に昔話に華を咲かせる…。コレが疲れる事とは、俺には思えないけどな」

杏子「アイツといると疲れるんだよ……。世話好きなのかお人よしなのか知んねーけど、お前はアタシのお袋かっつーの」

セガール「まぁそう言ってやるな。只の淋しがり屋かも知れないぞ?」

杏子「そんなの、アタシの知ったこっちゃないね」ファ~…

セガール「冷たい奴だなぁ、師匠が泣くぞ?」フフ

杏子「うぜぇ…」

モモ「♪~♪~」クルクル~



〈佐倉さん!大変よ!〉


杏子「!?」ビクッ

セガール「?」

モモ「?」ピタッ

杏子〈なんだよマミ…いきなりテレパシーとかびっくりするだろ?〉イラッ

マミ〈ごめんなさい。でも、魔法少女である貴女にどうしても聞いてほしくて…〉

杏子〈………〉

マミ〈キュゥべぇが何者かに襲われてるらしいの〉

杏子〈はぁ? アイツがなんで襲われるんだよ〉

マミ〈わからない。…でも、キュゥべぇの話によると、キュゥべぇを攻撃してるのは、私達と同じ魔法少女みたいなの〉

杏子〈なんだそれ? ますますわかんねぇ…なんで魔法少女がアイツを…?〉

マミ〈キュゥべぇを助けるのに、協力してもらえないかしら?〉

杏子〈……………はぁ…〉

マミ〈お願いよ〉

杏子〈……後で面倒な事になられても、アタシが困るしね。分かったよ〉ハァ

マミ〈そう言ってくれると思ったわ〉

杏子「…………あーめんどくせぇ…」ボソッ

セガール「テレパシーを使って内緒話とは、近頃の子供が進んでるとはいえ関心しないな」

杏子「おまっ…! なっ、なんで分かったっ!?聞こえてたのか!?」ガバッ

セガール「聞こえちゃいないさ。だが、お前の顔を見れば、面倒な事が起きたって事ぐらい分かる」フフ

杏子「アンタ……マジでなんなんだよ…」

セガール「軍上がりのただの牧師だ。それより早く行こう」

CDショップ

 助けて…

まどか「!?」

 助けて…

まどか(なに…この声…)

カチャッ

まどか「…………」


 助け…て…


まどか(ヘッドホンからじゃない…!)

まどか「誰?…誰なの?」

 助け………

まどか「どこにいるの?」

 …………


まどか「聞こえなくなった…」

まどか(どうしよう…なんか苦しそうだったけど…)

まどか(怪我してるのかな…)


 誰か…助けて………痛い……!


まどか(!!)

 助……け……


まどか「やっぱり怪我してるんだ…」


まどか(助けなきゃ…どこにいるか分からないけど…)

まどか(とにかく、助けなきゃ…!)ダッ



さやか「あった!コレコレ!」

さやか「恭介、喜んでくれるかな…」ワクワク

さやか「まどか、あんたの方…って、あれ?」


さやか「まどか…どこいったの?」

タッタッタッ


まどか(さやかちゃん、勝手にいなくなってごめんね。……でも、言ってもきっと、信じてくれないから…!)タッタッタッ

タッタッタッ


まどか「はぁ、はぁ……どこ? どこにいるの?」


まどか(暗くて周りが見難い……。あっ、携帯の明かりで…)

パチッ 

まどか「どこにいるの?……お願い、返事して…」

ガダン ドサッ

まどか「きゃあっ!」ステン

まどか「なっ…なに…?」


QB「うう……」


まどか「!!」ダキッ

QB「助けて……」

まどか「この声…っ! あなたが呼んだの?」

QB「ぅ……」ケホッ

まどか「しっかりして! 今病院に…」

?「その必要は無いわ」

まどか「!!」ビクッ



ほむら「………………………」



まどか「ほむら、ちゃん……?」


ほむら「そいつを渡しなさい」


まどか「……渡して、ほむらちゃんはこの子をどうするの…?」

ほむら「どうもしないわ。貴女には関係無い」

まどか「それって…どういう意味なの?どうもしないって…」

ほむら「そのままの意味よ。いいから早く渡して」コツコツ

まどか「ぁ………」タジッ


バシューーッ


まどか「!」

ほむら「! くっ…」

さやか「まどか!大丈夫!?」シューッ

まどか「えっ…さやかちゃん!?」

さやか「えいっ!」ブン ガコーン

まどか「どうして…」

さやか「話はあと!逃げるよまどか!!」ガシッ ダッ

タッタッタッ

さやか「なんだよあの転校生…! まどか、怪我はない?」タッタッタッ

まどか「うん……」タッタッタッ

さやか「無口な美少女電波さんかと思いきや、コスプレ姿で女の子を襲うヘンタイだったとはね…」タッタッタッ

まどか「…………」タッタッタッ

さやか「それよりアンタの抱えてる白いヤツなに!? なんかの生き物!?」タッタッタッ

まどか「えっ…これはその…よく分かんないけど、ケガしてるみたい…」

さやか「もしかして転校生のヤツ、そいつ狙ってんじゃないの!?」タッタッタッ


グニュウウウ


さや・まど「!?」ピタッ

グググググ…

さやか「えっ……なにこれ、なんか周りが…」

まどか「さやかちゃん…なんか変なのが出て来たよ…」


使い魔1・2「※!#!*!%!」シャキンシャキン

使い魔3・4「×!∴!仝!⇔!」シャキンシャキン


さやか「うわあぁぁ……」

まどか「さやかちゃん、怖いよ…」

さやか「逃げっ……うしろも!?」

使い魔5・6「*!※!%!⇔!」シャキンシャキン

使い魔7・8「仝!∴!÷!#!」シャキンシャキン

さやか「囲まれた……っ」

まどか「……」ガタガタ


使い魔達「∴∴∴∴∴∴∴!!」バッ


さやか「うわあああああああ!!!」

まどか「ひいぃっ!!」

ズバババババッ


さやか「うわっ!! ……? あれ?」

まどか「ぇ……えっ…?」


杏子「ったく……なんでアタシがこんな事…」ブツブツ


まどか「!?」

杏子「ま、しょーがねーか…」フー

さやか「だっ……だれよ!ぁ、アンタ!」

杏子「あ?助けたにアンタ呼ばわりかよ。口の聞き方がなってねーな」ギロッ

さやか「ぅ……」

マミ「それは貴方もよ?佐倉さん」スタッ

杏子「うっせーな…」フン

さやか「ぇ………なに?…コスプレの集会とかじゃ…ない、よね…?」

セガール「ああそうだ」ヌゥッ

さや・まど「!!?」

セガール「また会ったな」ニッ

まどか「あなたは……」

さやか「あの…牧師さん、でしたっけ…? なんで、こんな所に?」

セガール「神のお導きってやつだ」フフ

さやか「…………」

杏子「またアンタの知り合いかぁ?」

セガール「知り合いって程じゃない。前に会った事があるってだけだ」

杏子「へっ、どーだか」


さやか(何がどうなってんのよ…)


マミ「ごめんなさい、ちょっとその子いいかしら」

まどか「えっ?あ…はい……」

パアァァ


まどか「光ってる…。これって……」

マミ「治癒の魔法よ。この子の怪我を癒しているの」

まどか「魔っ…!?」

マミ「はいOK。大丈夫キュゥべぇ?」

QB「大丈夫だよ!ありがとうマミ!」ピョコン

さやか「!!?しゃっ、喋った!?」ビクッ

杏子「なんだようっせーな!耳元で叫ぶなよ」チッ

さやか「あっ、ごっごめ…」

マミ「驚くのも無理はないわ。佐倉さんも怒らないであげて?」

杏子「あーはいはい」フー

さやか(過呼吸になりそう…)

まどか「?…?…??」

セガール「で、これからどうする?」

杏子「どうするも何もねーよ。キュゥべぇは助けたんだ。次は魔女狩りだろ」

まどか「魔女……」

さやか「わけわかんないよ…」

セガール「だろうな。まぁ、今に分かる」


カシャカシャカシャカシャ…


杏子「あ、来たぞ」

カシャカシャカシャカシャカシャ…

マミ「そうみたいね。スティーブンさんはそこの二人と一緒に遠くへ…」

セガール「おっと、そうはいかない。それじゃあ俺が何のために来たか分からないだろ?」

マミ「?……まさか、闘う気で来たんですか!?」

セガール「当たり前だろ」

マミ「そんな…! ダメですよ!相手は…」

杏子「マミ。そいつは放っといて大丈夫だよ」

マミ「佐倉さん!貴女まで何を言って…」

杏子「そいつアタシより強いから」

マミ「えっ」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャッ



魔女「……………」ズズズ…



さや・まど「!!!!」ビクッ


セガール「へっ…出るもんが出たな」コキペキ

杏子「どーする? アタシは手伝った方がいいのか?」

セガール「そうしてもらえると助かる。……昨日俺が言った事は覚えてるな?」

杏子「覚えてるよ。いちいち確認すんな」

セガール「それならいい。ところで、マミちゃんは加勢してくれるんだよな?」

マミ「し、しますよ!当たり前じゃないですかっ!」

セガール「ははっ…じゃ、行こうか」ニヤッ

スタスタ

マミ「!! スティーブンさん!無闇に…」

魔女「∴∴∴∴∴」ブン

セガール「……」サッ

マミ「!?」

魔女「∴#∴÷」ブンブン ビュンビュン

セガール「……」サッ バッ トスッ


マミ「……よけてる…の…?」

杏子「何発かはもらってるけど、それは全部いなせてるから……まぁ、よけてんじゃねぇの?」


魔女「÷∴###!!」ブオン

マミ「!! 危ない!!」チャキッ

セガール「……」ガシッ

マミ「へっ?」

セガール「ふん!!」ブワッ


ドズーン


杏子「ぅぉ……」

マミ「あんな大きな魔女を投げるなんて…」

さやか「すごい……」


セガール「はっ、はっ、感心してないで早く加勢してくれ。こっちはもうヘトヘトなんだ」ゼエゼエ

マミ「えっ、ぁハイ!」チャキン

杏子「………」ダッ

ズバッ バシッ ザシッ


杏子「まだだっ!」

ガシャッ ジャラララ

杏子「ふん!」ブン

ジャラジャラッ ガシン

魔女!」

杏子「動きは封じた!マミ!」

マミ「ええ!一気にいくわ!」


ジャキン


マミ「ティロ…」

使い魔群「÷×※仝%*」ぶわっ!ババババババババ


さや・まど「いっ…!!」ビクッ

ババババババババ

杏子「うっ…」ババババババ

マミ「あっ…!」ババババババ

バキン ガシャン バリン

杏子「! アイツら鎖を!」バババババ

マミ「使い魔が邪魔で魔女が見えない…!」バババババババ

杏子「このっ…どけぇ!」ジャキンジャラララ


ズバババババッ


マミ「魔女は!?」

杏子「………」

セガール「いないな…逃げられたか」

杏子「くそっ!」

マミ「………」フー

セガール「使い魔を煙幕に、自分は逃げる…。魔女にしては中々狡猾なヤツだ」ハハハ

杏子「笑ってんじゃねーよ! ったく、これじゃ魔力の使い損だよ」イライラ

マミ「仕方ないわ。こういう時もあるわよ。…キュゥべぇとこの二人を助けられたから、私には不満は無いけど」フフ

さやか「あ…どうも、ありがとうございます。…いや、ホントに…」

まどか「ありがとうございますっ…」ウル

マミ「いいえ、こちらこそ。キュゥべぇを助けてくれて、二人とも本当にありがとう」ニコッ

QB「僕からもお礼を言うよ。ありがとうまどか!ありがとう、さやか!」

さやか「っ…なんであたしの名前を…?」

杏子「コイツは誰の名前でも知ってるよ。どこで仕入れてんだか…」


セガール「…………」

ほむら(結界が消えた。…どうやら魔女は逃げたようね)タッタッタッ

ほむら(この後は……巴マミがまどかと美樹さやかに接触して、二人に対してインキュベーターが一度目の勧誘を行うはず…)タッタッタッ


ほむら(この流れを止める事が出来た時間軸なんて、私は一度も経験してない。魔法を使っても、裏目に出るばかりで……)タッタッタッ


ほむら「…………」ギッ タッタッタッ


タッ


さやか「ん?…あっ!」

マミ「?…あら」

まどか「ほむらちゃん…」


ほむら(やっぱり、こうなるのね…)

マミ「貴女が例の魔法少女ね?」

ほむら「…………」

マミ「魔女は逃げたわ。それなりに弱ってると思うし、今なら簡単に倒せるはずよ」

杏子「おい、なんでコイツに殺らせるんだよ。アタシ達の獲物だろ?」スタスタ

ほむら「!?」

マミ「口実を与えただけよ。それで、貴女はどうするの?」


ほむら(何故…どうして佐倉杏子がここにいるの?)


ほむら(敵対関係にあるはずの二人が、どうして……)


杏子「…なんだよ。アタシの顔がそんなに気に入らないの?」

ほむら「…………」

杏子「やろうってのかい?」

ほむら「……そのつもりは無いわ」

杏子「ホントにそう思ってんのか?その割には目つき悪いじゃん」

セガール「おい、そう人をやたらと挑発するもんじゃない」スタスタ

ほむら「!!?」

杏子「アンタが言えた事かよ…」チッ

セガール「ははははっ」


ほむら(誰!?)


セガール「ところで、マミちゃんの肩に乗ってる小さいヤツを狙ってたらしいけど、よかったらその理由を聞かせてくれないかな?」

ほむら(さっきの佐倉杏子との会話を聞く限り、彼女とこの男は知り合いらしいわね。……それに変身した私やインキュベーターが見えてる。…………魔法少…いや、それは有り得ないわね)

セガール「…もしだが、言えない理由とかだったりするか?」

ほむら(ここは一旦退いた方がよさそうね)サッ

ガシッ

ほむら「!」

セガール「おぉっと、魔法は使わせない」

ほむら(速い…)


パッ


ほむら「!」


セガール「行けよ」


ほむら「……………」


杏子「何言ってんだアンタ!コイツに魔女を取られるだろ!」

セガール「いいじゃねぇか。マミちゃんは逃がすという選択肢を彼女に与え、インキュベーター…いや、キュゥべぇも生きてる。当初の目的は果たされたはずだ。…それにたかがグリーフシード一つの為に、魔法少女同士が魔力をフルに使って互いを傷付け合うなんてのは、不毛もいいところだ。失う物はあっても、得るものなんざ一つも無い。第一、魔女を倒せば必ずグリーフシードは必ず出てくるだろ?」

杏子「……そりゃあ…そうだけど」

マミ「佐倉さん。ここは穏便に済ませましょう? 余計なトラブルとは、貴女も無縁でいたいでしょ?」

杏子「……………」


セガール「という事だ。どうだ君も、今日の事件は無かった事にしてくれないかな?」

ほむら「………わかったわ」

セガール「ありがとう。話が早くて助かる。じゃあな」

ほむら「ええ、さよなら」スタスタ


杏子「……………」ムッスー


まどか「…………」


マミ「……………」



QB(弱ったな。このセガールという男は、魔法少女についての知識を持っているようだ。その知識の程度が分からない以上、彼の前では迂闊な行動はとれない。……ここは機会が訪れるのを待つとしようか)





ほむら(あの男…確かにグリーフシードと言った。…それに、魔法少女とも…)


ほむら(佐倉杏子の立ち位置も、前とは全然違う…)




ほむら(この時間軸に、何が起きているというの?)



ほむら「ここは時間停止で…」

セガール「ほう、これがお前の魔法か」

ほむら「」


あると思います

杏子「あーあ。妙な魔法少女には出会うし、魔女は取られるし、最近ホントいいことねーな…」シュバァッ

まどか「!」

さやか「変身した……」

杏子「戻ったんだよ。……じゃ、アタシ先に帰るから」スタスタ

マミ「あっ、ちょっと佐倉さんっ」

杏子「なんだよ。やる事は全部やったろ?」

マミ「そうだけど、この子達に事情を説明してあげないといけないわ。さっきの子とも、交流があるみたいだし」

杏子「そんなのマミがやれば良いだろ?アタシは帰るよ。モモが心配する」スタスタ

マミ「あ…」

杏子「じゃーな」スタスタ



マミ「…………」


セガール「仕方ないさ。今回は大目に見てあげよう」

マミ「まったくもう。………それじゃあ、今日は…」

さやか「あの~…」

セガ・マミ「?」

さやか「えっと…お二人は、その……」

マミ「? あっ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね」


マミ「私は巴マミ。魔女を狩る魔法少女で、見滝原中学校の三年生よ」ニコッ


さやか「えっ、見滝原中学校って…」

まどか「私達の……先輩…?」

マミ「そういう事になるわね。ほらっ」シュバァッ

まどか「わっ……あ!」

さやか「あたし達と同じ制服だ…!」

マミ「えーっと、それでこちらの方が……」


セガール「スティーブンセガールだ。牧師をやってるってのは、前にも言ったかな?」


さやか「あっ…はい、それは聞きました」

セガール「じゃあ俺の名前のスティーブンの[ブ]の発音が、[フ]に点々ではなく[ウ]に点々だったってのは?」

さやか「いやぁ、それは別にいいんじゃないですかね」ヘヘ


マミ(発音間違えてた……)

まどか「あの…巴さん……」

マミ「なぁに?」

まどか「あのっ…魔女って……魔法少女って、なんなんですか?」

まどか「ほむらちゃん…どうしちゃったんですかっ?」

さやか「…………」


マミ「まどかさんに、さやかさん…だったわよね?」

まどか「はい……」

マミ「ここで立ち話ってわけにもいかないし、私の家で話の続きを…なんてどうかしら?」

まどか「えっ……」

さやか「い、いいんですか?ファミレスとかでも良いような気も……」

マミ「お店の中でするにしては、話があまりにも浮世離れしてると思わない? 周りの人に、変な目で見られるかもしれないわよ?」

さやか「うぅ…確かに…」

マミ「それとも他に用事があるの? あるんだったら、そっちを優先した方がいいわ。私達魔法少女に関わって、私生活に支障をきたすのは良くないから」

さやか「う~ん……」

まどか「…………」



セガール「あ~……マミちゃん。君には悪いけど、俺も先に帰っていいかな?」


マミ「へ?」

セガール「ちょっと用事を思い出したんだ。ホントに済まない。じゃな」ダッ

マミ「ぁ…」

タッタッタッ…


マミ「…………」キョトン


QB「まどか、さやか。突然で悪いけど、僕の話を聞いてくれるかい?」

まど・さや「?」

マミ「! ちょっとキュゥべぇ、いきなり過ぎじゃない?」

QB「仕方がないよ。この二人はあまりに多くを見てしまったからね。例え今日の事を無かったことにしても、いずれは話す時が来ると思うんだ」


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---

セガール「………」スチャッ ピッピッピッピッピッピッ

プルルルルッ プルルルルッ プルルルルッ




老人<よぉセガール。元気か?>


セガール「じいさん。アンタに頼みがあって掛けたんだが、今は仕事入ってないよな?」

老人<お前専用の飛行場に仕事などあるものか>ハッハッハ

セガール「って事はヒマなんだな?」

老人<ああヒマだ。退屈過ぎて、老化に更なる拍車が掛かるくらいだ。 それでなんだセガール。昔みたいに、一緒にやんちゃでもしたくなったか?>ニヤッ

セガール「んなわけねぇだろ。……じいさん。アンタ、俺に付けた発信機からの信号を、どんな機器で受信してる?」

老人<そりゃあ今時は携帯電話だろ。古い奴は化石みたいになって、倉庫で埃かぶってるぞ>

セガール「そうか。…その携帯の受信データを、俺の携帯に送信出来るか?」

老人<……そりゃあ受信履歴が欲しいと言っとるのか?>

セガール「言い方が悪かったな。機能と記録が欲しいんだ。……出来るか?」

老人<ん~…出来る事は出来るが、色々とリスクを背負うハメになるぞ? ここは日本で、今は昔と違って不自由だからな>

セガール「構わねぇよ。やってくれ」

老人<分かった。じゃあこれからお前の携帯にお望みの物を送るから、一旦電話を切る。無事届いたならばメールを確認しろ。機能の使い方は……まぁお前なら見て大体分かるだろう>

セガール「適当だな」

老人<ここまでやるんだから、後は自分でやれって事だ。ところでセガール。自分の信号を自分でキャッチして一体何が楽し…>

セガール「…」プチッ



ツーッ ツーッ ツーッ ツーッ







老人「……………全く…」ツーッ ツーッ





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夜 教会の中



ほむら「やはり、何も変わってないわね……」



(佐倉杏子が巴マミと行動を共にしているから、佐倉杏子に関わる何か……例えば家族に、今までの時間軸とは違う動きを見せている運命があるかと思ったけれど…)



(この教会の様相を見る限り、彼女の家族は他の時間軸と同じく、既にこの世にいない)

(そう考えると、あの男は佐倉杏子の父親ではなく、ただの他人……もしくは家族関係に無い、単なる知り合いという事になる)

(だとしたら……)




(あの男は、佐倉杏子の何だというの………?)








セガール「おっと失礼。また先客がいるとは思わなかった」


ほむら「!!」クルッ


セガール「やはりここは俺にとって特別な場所らしいな。来る度に、いつも新しい出会いが待っている」


ほむら「……………………………」


セガール「そう怖い顔しないでくれないか? この通り、俺に敵意は無い」フフ

ほむら「……そう」スタスタ

セガール「おおっと、待ちな」サッ


ほむら「………………………」


セガール「…………」ニッ

ほむら「…何のつもりなの?」

セガール「君にいくつか聞きたい事があってね」

ほむら「話す事なんて無いわ。消えなさい」

セガール「随分酷い言いようだなぁ」ハハ

ほむら「私に関わらないで」

セガール「スマン…そりゃ無理だ」テヘッ

ほむら「……」ビシィン


セガール(おっ、変身したか)


ほむら「……」スッ




   カチッ





ほむら「……………」






セガール「」







ほむら「さよなら」スタスタ







セガール「おおおスゴイなぁ! こりゃ時間が止まってるのか!?」キョロキョロ ハハッ



ほむら「!!??」クルッ

セガール「見てくれ!鳥が空中で止まってる! 風も無いぞ! いや~これは大したもんだぁ!」


ほむら(この男…! 何故!? どうして動けるの!?)


セガール「これ君がやったのか? スゴイぞこれ」ハハハ

ほむら「なぜ…なぜ貴方は……」タラ…

セガール「ん? ああ、俺の事か」

ほむら「…………」


セガール「俺が君の手を掴んだ時、いやに君が大人しかったからな。今回、試しにと思ってやってみた」クイクイッ


ほむら「?…?…」クイクイッ


セガール「右手に何か感じないか?」

ほむら(?……!? これは…!)

セガール「さっき君の行く手を阻んだ時、ついでに君の右手小指にアラミド繊維を引っ掛けてみたんだ。気付かなかっただろ? 流石は現代の暗器だ」

ほむら「くっ…!」グイッ

セガール「おおっと」バッ ガシッ

ほむら「!!!」


セガール「無理に取ろうとすると指がちぎれ飛ぶぞ? それに、もう俺に捕まってるんだから無駄な抵抗は止めて、ここは一つ平和的に行こう。お互いにな」

ほむら「………」ヒュッ!!

セガール「おっ」サッ

ガゴッ


セガール(とんでもない踏み付けだな…危うく足の指を潰されるところだった)


ヒュッ!! ガンッ ヒュッ!! ドガッ ヒュッ!! ズドンッ


セガール(床板が陥没している。魔法で身体か靴のどちらかを強化してるらしいな)サッ サッ サッ

ほむら「ふっ!」ブン

セガール(今度は頭突きか)サッ


ヒュッ ドズン


ほむら「うっ……」クラッ




ドサッ




セガール「はー…危なかった。話し合いには素直に応じて欲しいもんだ」


ほむら「」グッタリ


セガール(それにしても、魔法少女に当身が効くとは思わなかったな。覚えておこう)



セガール「さてと……やっかいな事になったな。ここに放置する訳にもいかないし…」


ほむら「」グッタリ


セガール(……とりあえずは俺の家だな)カツギ

ほむら「」ダラーン

セガホーム


テレビ<ハナサナケレバ バクハツシナイ


モモ「あったかいねー」ホケー

杏子「ん……ああ、そうだな」

モモ「?」


杏子「……………………」



モモ「…お姉ちゃん、あったかくないの?」


杏子「え? いや、あったかいよ」

モモ「ほんとに?」

杏子「ホントだよ」

モモ「……なんかうれしくなさそうだよ?」

杏子「嬉しいよ。風が無いし、暗くないし、モモが隣にいるし」ナデナデ

モモ「えへへ」ニコッ


杏子「…………」ナデナデ




杏子(……でも、なんか実感わかねーんだよな…)


杏子(アイツと会って、戦って、負けて…そしたら変なじいさんが出てきて、それで………)





杏子(…なんでこんな事になったんだ…?)



杏子(つか、こんなんで良い………いや、良いか。前の暮らしよりは断然…)



テレビ<メガサメタゼ…

モモ「……」ワクワク

杏子(でもなぁ…なんつーか……)

テレビ<キンキン シャッ バッ ゴロゴロゴロゴロ…

モモ「おおおお…」キラキラ


杏子(しっくりこね~な~…)


テレビ<ドッドッバキッドスッ ブッ ブッ ブゥエッ ブルルァ

モモ「おおおおお…!」キラキラ


杏子「はぁ…こういうのを貧乏性っていうのかなぁ…」

モモ「?」

テレビ<ガシャシャシャ ブルルゥアアアア!!!

杏子「あっ、こいつセガールに似てね?」


ガチャッ バタン


杏子「ん?」

セガール「はぁ…あー疲れた」ヨッコラショ

杏子「どこ行ってたんだよ。今もう7時……っておい!そいつ…!」ガタッ

セガール「あ?」

杏子「あ、じゃねーよ! こいつアタシ達から魔女奪ったヤツだろ!」


ほむら「」グッタリ


セガール「そうだが、どうかしたか?」

杏子「そうだがってお前……っていうか、なんでコイツ気絶してんだ?」

セガール「向こうから来たからな。一応は正当防衛って事でね」フフ

杏子「ぶちのめしたのか?」

セガール「まぁそんなところだ」

杏子「ホントとんでもねぇな…魔法少女相手だってのに…」


モモ「?」ツンツンプニプニ

ほむら「」サレルガママ


セガール「どうしたモモ。気になるのか?」

モモ「このお姉ちゃん誰?」

セガール「俺の友達だ。それより早いとこ飯にしよう。腹が減った」セノビー

モモ「ご飯?わーっ!」タタタ


杏子「晩飯にするのは良いけどさ、肝心のメシは誰が作るんだよ」

セガール「誰って、もちろん俺だろ?」ヘヘ

杏子「は? アンタ料理出来んの?」

セガール「完璧だ。元コックの俺に作れない料理は無い」ドヤッ

杏子「!? アンタ軍人じゃなかったか!?」

セガール「軍人でしかもコックだったのさ。 モモ、冷蔵庫に昨日の夜買ってきた七面鳥があるだろ? そいつを取って来てくれ。今日は可愛い客人が来てるからな、盛大にパーティーでもしよう」

杏子「七面鳥……」

モモ「うん!」スタタタ


杏子「…………………」ポカーン


セガール「杏子。その子をソファーに寝かせといてくれ。いつまでも床の上じゃ、魔法少女でも風邪引くかもしれないからな。あーあとついでに毛布でも掛けてやってくれ」

杏子「えっ……」



杏子「…………」チラッ


ほむら「」グッタリ





杏子「………………」メンドクセー


  暑い……



  上に何か乗ってる……

  …違う。覆っているんだわ。


  起き上がれない……身体が怠くてしょうがない…


  それに眩しい。…これは…蛍光灯…?



<すげぇうめぇんだけど…

<だからって食い過ぎるなよ? ちゃんとお客さんの…


 話し声…

 ……この香りは何? とてもいい匂いだけど…


<えいっ

<あっ! モモそれアタシのだぞ!

<はむっ ん~~♪


 桃? いや、これは……人名…?
 それよりこの声は、佐倉杏…





ほむら「!!?」ガバッ



モモ「あっ」

セガール「おっ、目が覚めたみたいだな」モグモグ


ほむら「……………」


モモ「? なぁに?」



ほむら「生きてる………?」



モモ「………?」

セガール「?」モグモグ

杏子「……アンタこいつに何したんだよ」モグモグ

セガール「首筋に一発入れただけだ。女の子をボコボコにする趣味は持っちゃいねえよ」モグモグ

杏子「ふーん」モグモグ

ほむら(モモ…佐倉杏子の妹……)


ほむら(父親の無理心中に巻き込まれたはず……)


ほむら「…………………」



セガール「君も一緒にどうだ? ボーっとしてるだけじゃ、何かとつまらないだろ」

ほむら「…いえ……私は帰…」

セガール「いいからホラ、座って座って。席もちゃんと用意してある」

モモ「モモのとなりだよーっ」ノシ


ほむら「…………」


セガール「早くしないとメシが冷めるじゃないか。 まぁ、冷める前に食い意地の張った杏子が君の分も食べちまうんだろうが」

杏子「まーな」モグモグ


ほむら「……………」





ほむら(ここは…誘いに応じる? …………いえ、駄目だわ。 場の流れによっては、向こうだけでなく、私も自分についての情報を開示しなければならなくなるかもしれない)



ほむら(あの男とモモについては色々と知りたいけど、今この場で全てを知ろうとするのは、リスクが高い…)

ほむら(でも、佐倉杏子とこの男は明らかに友好関係にある。…ここを出た後、佐倉杏子と敵対せずに、男とモモを調べ切る機会があるとは思えない)


モモ「おねーちゃん早くーっ」フリフリ

ほむら「……………」


モモ「むーっ」ガタッ タタタ


むんず

ほむら「!」

モモ「はーやーくーっ」ブンブン

ほむら「離して」ブンブン

タタタ

ほむら「っ……」ヨタタタ


モモ「ここ!」ビシッ

ほむら「えっ」

モモ「ここ! おねーちゃんの席だよっ」ビシッ

ほむら「……私はまだ食べるとは言ってな…」
セガール「……」シュッ

ほむら「むぐっ」

セガール「食ったな。さて、パーティーを始めるか」つクラッカー

ほむら「何を勝手に…」

杏子「……」パーン

セガール「……」パーン

モモ「はいやーっ」パーン


パチパチパチパチパチパチパチパチパチ




ほむら(わけが分からない……。 こうなったらここは適当に付き合って、向こうが満足するのを待つしかないわね)モグ…

ほむら(それにしてもこのチキンナゲット、結構美味しいわね…)モグモグ


杏子(へぇ……意外と素直に食うんだな)モグモグ


モモ「はふっ はふっ」ホクホク

セガール「急いで食べると舌火傷するぞ?」

モモ「だいひょひゅっ」ホクホク

セガール「だと良いけどな。 ところで君、名前はなんて言うんだ?」

ほむら「…暁美ほむらよ」

セガール「ほぉ~…良い名前じゃないか。燃え上がれーって感じで。 俺の名前はスティーヴンセガール。こいつは杏子で、君の隣にいるのはモモだ。よろしくな」

ほむら「………………」


モモ「ねーねー」

ほむら「なに…」クルッ

プニ


ほむら「…………………」


モモ「えへへへ」ニパー



ほむら「…………………………………」



モモ「………」シュン…

杏子「反応してやれよ。無愛想な奴だな…」ムスッ

ほむら(貴女も人の事言えないじゃない)モグモグ

杏子「ったくよぉ。…おーい、モモ」

モモ「ん……」

杏子「あーんしろ。ホラ、あーんって」

モモ「! あーんっ」


モグッ


モモ「んーっ♪」ニコニコ

杏子「んふふ」

モモ「お姉ちゃんっ お姉ちゃんっ」

杏子「ん?」

モモ「おかえしっ」サッ

杏子「はぁ? いいよアタシは。一人で食えるよ」


モモ「あーん♪」ニコニコ


杏子「……しょうがねえなぁ」パクッ

モモ「♪」キャッキャッ

杏子「浮かれ過ぎだよモモ…恥ずかしいだろ」







ほむら(こんなに楽しそうにしている彼女、初めて見る気がする)



ほむら(…………きっと、妹の存在が、彼女の心の平穏を支えているんだわ)





ほむら(インキュベーターとの契約……………一家心中……)





ほむら(あんな不幸が無ければ、今までの時間軸の彼女も、こんな笑顔を見せたのかしら……)



ほむら(……何十回と過去を繰り返しているのに、私は佐倉杏子を今だに理解出来ていない)


ほむら(そして多分、美樹さやかの事も、巴マミの事も……)





ほむら「…………………………」


セガール「……………」モグモグ

杏子「あっ、そういえばさ、さっきテレビにアンタそっくりの奴がいたぞ?」

セガール「へー、珍しい事もあったもんだな。どんな番組だ?」

杏子「確か…沈黙のなんとかってヤツだった。列車の中でドンパチやってたよ」

セガール(俺のドキュメント映画じゃないか)

杏子「動きもアンタそっくりだったよ。 風船みてーな魔女をアンタが倒した時みたいに、手加減無しでもうメッチャクチャやってた。もしかしてっとは思うけど、あれって実は…」

ほむら「待って」

モモ「?」モグモグ

杏子「なんだよ、アタシが喋ってんだろ?」

ほむら「魔女を…誰が倒したですって?」

杏子「コイツ」ユビサシ



セガール「……………」ニヤッ



ほむら「えっ…………………………」

杏子「………………」

ほむら「………………………………」

杏子「……………」


ほむら「………あまり意味が分からないのだけれど」

杏子「あぁ、うん。やっぱ誰でもそう思うよな」

セガール「…………」ニヤニヤ

杏子「コイツ、大分おかしいんだよね」


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--

ほむら「素手で魔女を………」

杏子「しかも見えないってんだからオカシイって言ってんだよ」

ほむら「それは、何が見えないという意味なの?」

杏子「そこまでは知らないね。魔法少女が見えないってのは聞いたけど、他は知らないよ。 つーかホントに見えてねーのか疑問だけどね」

ほむら(魔法少女が見えてない? そんなはず無いわ。でないと…あんな回避の仕方……)


セガール「俺が見えるのは魔女の結界だけだ。変身した君達がどんな格好をしているのかは分からないし、君達の武器も見えない。使い魔も見れないし、当然魔女も見た事がない」


杏子(見えない敵にあそこまで出来るとか人間じゃねえなコイツ)

ほむら「……ちょっと待って。言ってる事とやってる事が矛盾してるわ」

セガール「矛盾? どこが?」

ほむら「見えない敵を倒すなんて、例え魔法少女でも不可能だわ。どれだけ強力な攻撃でも、当たらなければそれに意味なんて無いもの」

セガール「甘いな。君達が不可能だと思っているのは、君達が目と耳と魔力のみに頼って、敵を探知しようとしているからだ。 自分の心と身体を信じ、精神を研ぎ澄ませ、迷いを完全に捨てて敵に立ち向かう時、そこに不可能は存在しない」

杏子(どんな理論だ)

ほむら「……でも私の攻撃を避ける時、私の攻撃の軌道を目で追っていたわ」

セガール「あれは君の気配を少しばかり呼んだだけだ」

ほむら「……………」

ほむら(おかしい……やはりこの男、普通じゃない)

ほむら(魔法を使わないにしても、何かトリックがあるはず…。魔法少女より強い一般人なんてありえない)


杏子「なぁ、ところでアレってどうやったんだ


セガール「具体性が無さすぎて分からん。なんの事だ?」

杏子「あー…魔女ぶん投げただろ。デカい奴」

ほむら「…………」

セガール「あれか……あれは合気の一つみたいなものだ」

杏子「なんだよ、そのアイキとか言うのは」

セガール「そういう格闘技があるんだよ。パワーを使わない投げ技…と、言った方が分かりやすいな」

杏子「ふーん………それって、アタシにも出来るか?」

セガール「10年間血の小便が出るような鍛練に耐えて見せるって言うのなら、教えてやらん事もない」

杏子「今のままでいいわ……」

ほむら「……」ガタッ


セガール「ん…もう帰るのか?」

ほむら「ええ。ご馳走様」

モモ「え~~……」

杏子「………」


ほむら(好奇心に負けて長く居すぎた。 これ以上ここにはいられない。正体を探られる前に、早々に立ち去らないと)スタスタ

セガール「送って行こうか? こんな夜中に女の子が一人で外出なんて危ないだろ」ガタ…

ほむら「必要無いわ」スタスタ

セガール「そう言われてもなぁ」

杏子「コイツ本人がいらねーって言ってんだから別にいいだろ。っていうか、魔法少女なんか心配してどうすんのさ? するだけ無駄だっての」

ほむら「……」スタスタ

ガチャッ


セガール「待った。俺は夜の散歩に行きたくなった。今この瞬間に」スタスタ


ほむら「………………」

杏子「なんだそりゃ? アホくさ」ケッ

セガール「どうだお嬢さん。これなら良いだろ?」

ほむら「…………………………………」


杏子(めんっどくっせぇーヤツだなぁ)


ほむら「……好きにして」スタスタ

杏子「んん?」

セガール「ありがとう。じゃ、行ってくる。戸締まりは忘れるなよ?」キィ…

杏子「おいアンタ…」


バタン





杏子「………………」




モモ「行っちゃったね……」




杏子「訳わかんねぇなホント…」

セガール「ふぅ~、涼しいなぁ」スタスタ



ほむら「…………………」スタスタ



セガール「…………………」スタスタ



ほむら「…………………………」スタスタ



セガール「…………………」スタスタ







ほむら「……ついて来ないで欲しいのだけれど」スタスタ



セガール「進行方向が同じなのさ。たまたまな」スタスタ



ほむら「…………………………」スタスタ










ほむホーム前


ほむら「……………………」

セガール「…………………」


ほむら「…貴女、何がしたいの?」

セガール「実は、君と会った時から、一つ気になってる物があってな」

ほむら「………………………」

セガール「いつ魔法で逃げられるか、正直の所冷や汗物だったが……君も俺に興味を持っててくれてたんだな」

ほむら「逃げ切れそうにないと判断しただけよ。 気になってる物って何?」



セガール「君の眼差しだ」



ほむら「………………………」


セガール「勿論他にも気になってる事はある。だがそんな事は、君の瞳の深さに比べたらどうでもいい問題だ。 勘違いするなよ?俺は君を口説きに来たんじゃない」


セガール「君は……今まで一体何を見てきたんだ?」



ほむら「………………………」



セガール「モモと杏子の二人を見つめている時…さやかとまどかとマミちゃんを見つめている時、君の目は何処か哀愁を帯びていた。………何があの目を生み出すのか、俺は知っている」






セガール「ほむら……君の目は前線兵の目だ」




ほむら「……………………」


セガール「やむを得ず仲間の兵士を見捨てなきゃならなくなった時。 急行が間に合わなかったおかげで、本来助かった筈の同期が命を落とした時」

ほむら「……………………」

セガール「死を覚悟したフリをする親友の脳天に向かって、短銃の引き金を弾いた時」

ほむら「…………………………」


セガール「……その時の気持ちを、一人で背負い込むつもりなんだな」



ほむら「………………………………………」



セガール「悪い事は言わない。…君はまだ子供だ。俺みたいに老けちまって、人生に融通が効かなくなる前に、そんな物は忘れろ」


ほむら「無理よ」


セガール「………………………」


ほむら「今の私には………背負う以外に道は無いの」


セガール「本当にそう思ってるのか? 自分に新たな道を示してくれる物が、何処かにあるはずだとは思わないのか?」

ほむら「そんな物、ありはしないわ」

セガール「君が勝手にそう思っているだけかもしれないぞ」

ほむら「いいえ、もう無いのよ」


セガール「……………………」



ほむら「奇跡なんて………もう、どこにも……」



セガール「……………………」



ほむら「………………」スタスタ



スタスタ…








セガール「………………」

まどホーム


まどか「………」

まどか「…………」ネガエリ


 鹿目まどか。君にはとてつもない素質がある。
 君が願うのなら、どんな魔女でも敵わない魔法少女になれるだろうね。





まどか(素質があるって言われても…私には信じられないよ…)

まどか(私なんかがセガールさんや佐倉さんみたいに戦えるわけないし……それに、負けたら…死んじゃうかもしれない…)

まどか(そんな事ばっかり考えちゃうのに…素質なんてあるわけない)

まどか(…………でも…)



 君が魔法少女になってくれるのなら
 どんな奇跡や魔法でも、一つだけ僕が叶えてあげるよ。



 魔女と使い魔が原因で起きる事件や事故は少なくないわ。
 人の心の闇に付け込んで、生きる気力や自制心を奪ってしまうの。

 事件の動機が不自然だったり、普通の人が衝動的に自殺したりする…
 それらの背景には、かなりの確率で魔女が潜んでいるわ。


まどか「…………」




  そんな呪いの象徴である魔女を倒し、皆の平和を守る。
  ……それが魔法少女なのよ。




まどか(何のとりえも無い私でも…魔法少女になって、強くなって…)

まどか(いつかマミさんみたいに…佐倉さんみたいに…)

まどか(誰かを守って、誰かを癒してあげられるようになったら…!)



まどか「決める前によく考えてって言われたけど…」


まどか「これが願いでも、いいんだよね…マミさん」

さやホーム


 まどかには及ばないけれど、君にも魔法少女としての素質がある。

さやか「………」

 何を願うかはさやかの自由だ。
 じっくり考えて、願い事が決まったら僕に言って欲しい。


さやか「願い事ねぇ……」



 くれぐれも言っておくけど
 安易な願いで魔法少女になろうとは思わないで。

 魔女との戦いはいつ終わるとも知れないんだから
それだけの月日に耐えられるような…
 耐えるに値するような願いにしておいてほしいの。

 あっ、もちろん、魔法少女になりたいのならって話ね。



さやか「……いつまで魔女と戦い続けるか分からないって…」

さやか「それって、一生戦い続けるハメになるかも…って事だよね」


さやか「それはちょっとキビしいかな……」

さやか「…………」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さやか。今日は何を持って来たんだい?

ん? これって…

いや、気に入らないとかじゃないんだ!
むしろ嬉しい…

だけど、こんな立派な物…大変だったんじゃないか?

え? レンタル? あははっ、なんだビックリした。そういう事か。


いつもありがとう、さやか。
手が治ったら、この曲も練習しないとね。

なんでって? それは言えないよ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



さやか「…いや、そうも言ってらんないかもね…」

さやか「でも、明日の見学が終わってから決めても、いいか…」



さやか(それにしても……転校生のヤツ、一体なんなの? マミさんは知らないって言ってるし、キュゥべぇも契約した覚えは無いって言うし…)

さやか(キュゥべぇに怪我させたし…悪いヤツなのかな?)

さやか(でも…魔法少女になってるって事は、皆を守る為に魔女と戦ってるって事だから…)ネガエリ

さやか(いや、グリーフシード目的かもしれない)

さやか「…………」ネガエリ


さやか「…………」





さやか「ま、いっか……そのうち分かるでしょ…」フア…

セガホーム


ガチャッ バタン

セガール「ふ~、ただいま」スタスタ

杏子「………」

セガール「おお、お出迎えされるなんて久しぶりだ」

杏子「どうせあの゙ほむら゙とか言うヤツについて回ったんだろうから聞くけど、アイツについて何か分かったか?」

セガール「いいや何も」


杏子「…………」ジロ…


セガール「?」

杏子「…まぁいいや。アタシはもう寝るから、大きい男とか立てたりすんなよ」スタスタ

モモ「……」スピー クカー

杏子「まーた床で寝てるよ。ったく、しょうがねえなぁ」オンブ

モモ「むにゃにゃ…」オブサリ

セガール「おやすみ~」

杏子「あー、おやすみー」スタスタ



ガチャッ バタン



セガール「……」

セガホーム


ガチャッ バタン

セガール「ふ~、ただいま」スタスタ

杏子「………」

セガール「おお、お出迎えされるなんて久しぶりだ」

杏子「どうせあの゙ほむら゙とか言うヤツについて回ったんだろうから聞くけど、アイツについて何か分かったか?」

セガール「いいや何も」


杏子「…………」ジロ…


セガール「?」

杏子「…まぁいいや。アタシはもう寝るから、大きい音とか立てたりすんなよ」スタスタ

モモ「……」スピー クカー

杏子「まーた床で寝てるよ。ったく、しょうがねえなぁ」オンブ

モモ「むにゃにゃ…」オブサリ

セガール「おやすみ~」

杏子「あー、おやすみー」スタスタ



ガチャッ バタン



セガール「……」

セガール「…………」



  そんな物、ありはしないわ。
  奇跡なんて………もう、どこにも……



セガール(あの子が何を抱えているかは知らないが…あの様子じゃ、いつ重圧に負けるかわからんな)

セガール(正気を保っていられるのは、最長で一ヶ月といったところか)

セガール「はぁ……この調子じゃ、俺の給料が増えるのも時間の問題だな」フフ


プルルルルッ プルルルルッ プルルルルッ



セガール「…あー、またか」ピッ


老人<よおセガール! 調子はどうだ?>

セガール「俺の体調はそうコロコロ変わんねえよ。 俺には神が付いてるんだ」

老人<神? なんだセガール、まだ牧師の真似事をしてるのか?>

セガール「そっちの方が信用を得やすいんだ。杏子とモモを騙してるようで気が引けない訳じゃないけどな」

老人<セガール……まさかとは思うが、あいつの言った使命とやらを本気で継ぐつもりじゃないだろうな?>

セガール「今は[それとは似て非なる事はする]とだけ言っておこう。永遠に続く世界平和は無理かもしれないが、もう一つの方は叶えられる」

セガール「で、こんな真夜中に何の用だ?」

老人<お前、わしに発信機の事でなんやかんやと頼んできただろ? あの件に関して、どうにも腑に落ちない問題がある>

セガール「ああアレか。アレは今、ちょっと別の事で使ってる」
老人<何?別の?>

セガール「…あまり詮索はしないでくれ、俺も結構負い目を感じてるんだ」ニヤニヤ

老人<あ゙ぁ~~……悪い予感がしてたんだよなぁ。やっぱりやったか>

セガール「俺にあんなもん付けたアンタが悪い。予感がするなら、今度は止めとくんだな」フフ

老人<そうさせてもらうよ。……そう言えばなセガール>

セガール「なんだ?」

老人<最近になって、おまえに相応しい立場に[空席]が出来たらしい。 向こうは、もうお前を迎え入れる準備を完了させた>


セガール「…………」


老人<これが最後のチャンスかもしれんぞ>

セガール「………………はぁ…」

老人<どうする>

セガール「決まってるだろ。 断る」


セガール「元とは言え、俺は自分の上官を殺したんだ。 あの野郎が我が娘を犠牲にして得た研究データを、私欲の為にテロリストに売り払うヤツだったとしても、これは事実だ」


セガール「それに魔法少女の軍事利用を企んでいたのはヤツだけじゃなかったはずだ。そいつらを皆殺しにするまで……いや、皆殺しにしたとしても、俺の決意は変わらない」


老人<…………>



セガール「…軍には戻らない」

老人<…………>

セガール「…………」


老人<…そうか…わかった>

セガール「悪いな」

老人<いいさ。わしもあいつらが死滅していく事を祈る人間の一人だ。謝る事じゃない>

セガール「…………」


老人<お前は本当の牧師ではないし、わしも神なぞ信じておらん。 だが、今日は彼女達の心に平穏が訪れる事を祈ろう>


セガール「そうするよ」


老人<じゃあな>



プツッ  ツーッ ツーッ ツーッ


セガール「……………」











地下倉庫最深部にある部屋。
セガールはそこのドアを蹴破った。
毛羽々々しく着飾った薄汚い資材置場の中央に、ターゲットは立っていた。

「やはり、送られたのはお前達か」

味方など一人もいないこの空間で、その男は不遜な態度を改めようともせずにセガール達を見据えた。


セガール「あれは何だ」


セガールは男に聞いた。
彼はわざとらしく惚けた。


元上官「あれ? 何の話か分からないが?」

セガール「俺達の見た子供の死体の山は何だって聞いてんだ」


ここにたどり着く途中の部屋で、自分達が見たものは何なのか…セガールは男に問う。
男を包囲した仲間達の顔が一層硬くなる。


元上官「ああ、アレか。 何の事は無い。只の燃料だ」

セガール「……なに?」

元上官「なんだ聞かされてないのか? これだからお前達のような馬鹿共は相手にしたくないんだ。何をするにしても、一々説明しなきゃならんからな」

セガール「どういう意味だ」

元上官「お前達、ここの資料は読んだか?」

セガール「どういう意味だと聞いている。答えろ」

元上官「はぁ……読んでないのか」


男は呆れ顔を大袈裟に浮かべると、露骨に面倒臭がりながら語り始めた。



元上官「セガール……お前は魔法の存在を信じるか?」


セガール「……それは何かのジョークか」

元上官「ジョークで済ませていいのかな? 俺がジョークでアメリカを裏切ったって?」フフ


セガール「……………」


元上官「この世には様々な兵器が存在する。 戦闘機に戦車、戦艦。弾道ミサイル。そして戦術核 戦争ってのはこれらが無いと成り立たない。思想や欲望も必要だが、手駒が無いならそれらには意味が無い」

元上官「しかし今は、兵器も思想も欲望もあるのに戦争が無い。それは何故か分かるか?」


セガール「…平和がそんなに嫌いなのか」

元上官「違うな。俺は人生をより楽しみたいんだよ」


セガール「……………………」


元上官「現代の戦争は飽和状態にある。強力な抑止力とやらを色んな奴が持ちすぎて、差異が全くない。 需要と供給、生産と消費のバランスが乱れて、経済がストップしてるんだよ」

元上官「だったら俺達はどうやって稼げば良い? 万年床のようなつまらん職場で、少ない給料を貰いながら隠居生活を送れっていうのか? 野心も無く夢も無い人生を、この先死ぬまで続けて何の意味がある?」

セガール「…………………………」

元上官「だから俺は、戦争経済に刺激を与える事にした」

元上官「戦艦・核・衛星兵器を凌駕する第四の戦力を作り出し、それを各国に売り込んでな」


男は己のやった事を自慢げに話すと、懐に手を入れた。
セガールの仲間が男に銃を向けたが、セガールは彼等を目で制した。


元上官「そして、これがその新兵器だ」バサッ


男はファイルを懐から取り出し、セガールに投げて寄越した。
セガールは兵器の全容を知るべくファイルを開いた。
仲間達もセガールの元へ集まる。

男に逃げる気配は無い。
彼の目は自信に満ち溢れていた。



セガール「………………」


ファイルの始めには、男の言う兵器にまつわる様々な情報が記載されていた。

[兵器の材料は14~5才の少女が最も適しているらしい]

この一文を見た瞬間、セガールは友人の子供達の顔を思い出し、次に子供の死体の山を連想した。
嫌な汗が、彼の米噛みを流れる。

[インキュベーター] [契約] [願いを叶える]

[魔法に関わる物は、通常の人間には知覚されない]

[グリーフシード] [ソウルジェム]


現実からは遠い、兵器としてはあまりにメルヘンな言葉の数々は、セガールの感じる嫌悪感をじわじわと大きくしていった。
そして彼は、自身の感じた嫌悪感が間違いではなかった事を知る。


[魔力の過剰消費、または絶望により、魔法少女は魔女になる]

[魔女になる時、魔法少女の魂はグリーフシードへと変わる]

[インキュベーターの目的は、魔法少女のソウルジェムがグリーフシードへと変わる時に発生させる「希望が絶望へと変わる瞬間の相転移エネルギー」の摂取にある]

[インキュベーターの目的が何であれ、我々の提唱する「魔法少女人間兵器化計画」には一切影響は無い]

[魔法少女である彼女が持つ高い再生能力は、肉体への強化施術に耐え得るだろう]



セガールの頭にリフレインする[燃料]という言葉。
死体の山。その年齢層。
魔法少女を維持する為に使われるグリーフシードなるもの。

元上官の手に握られた、黒い宝石のような物。

部屋の隅には、元上官の娘である少女の変わり果てた姿。
彼女の身体には様々な機械が埋め込まれていた。



セガール「……………」



セガールはファイルを閉じると、AK47を持ち直し、安全装置を外した。
彼の仲間達も、一斉に攻撃体勢を取り直した。


一人は拳に力を込め、一人は鉄パイプを拾った。
一人はナイフを抜き、一人は重機関砲を担いだ。


元上官「なんだ? ムカついたから殺そうっていうのか?」

男が彼等を嘲る。
セガールは無言。

元上官「俺を殺しても計画にはなんの影響も無いという事が、どうやら分かっていないらしい。 勇敢で勇壮、だがしかし愚か者だな」

セガール「…………………」

元上官「貴様らのような馬鹿共はいつか敗れるだろう。私のような卑怯者に」

セガール「……………………」

元上官「そんなの御免だろ? そこでだ、俺に提案がある」

元上官「俺を殺さずに捕らえれば、奴らの情報が手に入…」



そこまで男が言った所で、セガールは男の右膝を撃ち抜いた。

男は息を喉に詰まらせ、床に崩れ落ちた。
セガールの右手にはワルサーという短銃が握られている。



セガール「俺を殺しても計画にはなんの影響も無い……お前、確かそう言ったな」


返事は無い。
男は右手で右膝を押さえ、悲鳴を噛み殺している。
前に伸びた彼の左手が訴えている。
許してくれ。情けをかけてくれ。と…

セガール「じゃあここでお前を惨たらしく殺しても、誰も文句は言わないって事で良いんだよな」

男からの返事は無い。
代わりに掠れた声が男の喉から聞こえた。

セガール「安心しろ、お前らの情報は自力で見つけてやる」

セガール「それより喜べ。お前を殺すのは俺じゃない」


シュワ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ウィリス「があああああああああああああああああああ!!!!!」
スタローン「ぬぅうおおおおおおおおおあああああ!!!!」
リー「ほおおおおあああああああああああああああああああ!!!!」


ひざまずく男の胸を鉄パイプが通った。
心臓を打ち損ねたそれは、男の右肺を押し潰すのみに止まった。
鉄パイプを投擲した男を残して、三人の猛者達は猛り狂った獣の様な気迫で駆け出す。

次に男を襲ったのは急所攻撃だった。

単純に殴るのでは無い。シンプルに蹴り飛ばすのは手緩い。
セガールの仲間の一人は、元上官の睾丸を素手で引きちぎり、彼の口に詰め込んだ。
そして睾丸で一杯になった彼の口を、別の獣が襲う。

絶叫と共に繰り出された回し蹴りは口内の睾丸を破裂させ、元上官の下顎をえぐり飛ばした。

スタローン「どけぇ!!!!!!!!!」

重機関砲を携えた男が、その砲身を元上官に向ける。
仲間二人が元上官の元から跳び退いたのを確認し、彼は引き金を弾いた。

部屋中を駆け巡る爆音と共に、元上官はミンチを通り越した肉色の液体へと変わった。
それでもスタローンは銃撃を止めなかった。
仲間達にも、彼を止めようという気持ちは全く浮かばなかった。


彼が機関砲に装填された弾丸を全て撃ち尽くす頃には、部屋の半分は無惨にも瓦礫へと変わっていた。


元上官だった液体は、もはや何処に付着しているのかも分からない。




男達は部屋を後にした。




セガールは、退室間際にピンの抜けた手榴弾を置いて行った。

男達は屋敷の制圧を完了した。
セガールは接収部隊を呼び、手柄をもらいに来た彼等は今、屋敷の中と外を歩き回っている。

男達は、瓦礫に塗れた庭園のベンチに座っている。



シュワ「貧民街周辺での誘拐騒ぎは奴が原因だったらしい」

セガール「そうか…」

シュワ「恐らくは、浚って来た子供達の魂をグリーフシードとやらに変え、娘に与えていたんだろう」

セガール「魔法少女にした後に、その子供を魔女に変える……そんなところか?」

ウィリス「だろうな。だからヤツぁ貧民街の子供を狙ったんだ」

セガール「……………………」

スタローン「じゃあ何でヤツの娘が死んでたんだ?」

シュワ「それは分からん。だが、あの様子じゃ何が死因でもおかしくはない。 ただ、クソ野郎の握っていたグリーフシードを見るからに、多分魔女に変わったんだろう」

スタローン「……………………」

リー「奴のファイルの最後辺りに実験の様子が載ってあったが……あれで絶望しない子供はいない。 俺の祖国にいるマフィアでも、こんな実験は思いつかないだろうな」パラ

スタローン「…見せてくれ」

リー「………」スッ

スタローン「……………」


リーはファイルを開いたままスタローンに渡した。
そのページには、写真の他にそれについての説明文が添えられ、その時の被験体のデータが書き込まれていた。

--------------------------------
洗脳。インキュベーターとの契約。

契約による願いの成就と、その法則性。改造手術。

拉致した魔法少女との実戦テスト。兵器としての魔女の有用性の検討。

各国の軍産複合体が秘密裏に研究に参加。
テロ活動を偽装した験体の実戦投入。

験体の精神に異常発生。

験体の破棄。

世界各地で魔女が増加。実験との関係性は高い。



--------------------------------



スタローン「酷いな…」

リー「…………………」

スタローン「…………………」


リー「どうする」


スタローン「ん?」

リー「このまま見逃すのか?」

スタローン「…………………」

シュワ「無茶言うな。この敵はアメリカの中だけじゃ無いんだ。そう簡単には動けない。アメリカ軍という一勢力に所属する俺達が下手に動くと、アメリカ全体がヤツらの標的になるかもしれない」

リー「じゃあ軍を抜ければいいだろ」

シュワ「……本気なのか?」

リー「軍との繋がりを一切断ってフリーポジションを得れば、誰にも迷惑は掛けない。 俺は本気だ。アンタはどうするんだ」

シュワ「………………………」


ウィリス「抜けるんなら、俺もだ」


シュワ「!」

ウィリス「自分の娘がああなっちまうくらいなら、不名誉除隊した方がましさ」

セガール「……………………」

スタローン「俺も抜ける」

シュワ「スタローン……」

スタローン「傭兵でもやりゃ食いぶちぐらい稼げるだろう。偽名でも使ってな。 上手く行けば、同士も集められる」

シュワ「…………………」




セガール「………………………」






セガール「……………………」



彼の誇りを取り戻さねばならない。
彼の願いを護らなければならない。

あいつは友達だったから。
あいつにとって、自分は唯一の友達だから。

彼の遺した、愛と理想を護らねばならない。

例えそれが罪滅ぼしでも。今更手遅れだったとしても。




セガール「俺も抜けよう」





やらねばならない。


シュワ「お前まで何を…!」

セガール「悪いが俺はもう決めた。考えを曲げるつもりはない」

シュワ「………………」


セガール「……………………」



シュワ「……仕方ないな。 じゃあ俺も抜ける」

ウィリス「そうした方が懸命だ。 ここまで反乱分子が増えたんだ。全員同時に抜けないと、残ったヤツが割を食っちまう」

スタローン「で…どうやって抜けるんだ? 英雄扱いされてる俺達が黙って出て行くなんて出来るのか?」

リー「大統領の机にC4爆弾でも置いとけば十分だろ」

スタローン「おいおいそれじゃ殺されちまうだろ」

リー「そこは俺達の持ってる勲章の出番だ。それに本物使わなければいい話だし、線香花火にでも中身詰め替えとけ」

スタローン「線香花火ね……気に入った。あの野郎驚くぞ」フッフッフ



セガール「それじゃ、全員で抜けるって事でいいな?」



シュワ「OK」

リー「了解だ」

スタローン「分かった」

ウィリス「よろしくどーぞ。で、いつ出るんだ?」


セガール「………………」

スタローン「………………」

シュワ「…………………」

リー「……………………」



ウィリス「………………………」



セガール「…………………」

スタローン「……………………」

シュワ「……………………」

リー「………………………」






ウィリス「今日?」

俺達は早速行動に出た。


手始めに接収部隊を襲撃して、連中が押収した様々な情報を誰一人として傷付ける事なく奪い取り、連中全員を気絶させて、本国に帰還した。

第二に大統領執務室の壁一面に、マザーテレサが見たら一発でブチ切れそうな悪口雑言の数々をクレヨンで書き殴った後、大統領の椅子にC4爆弾の形をしたブーブークッションを仕掛け、それらを仕掛けている時の様子を録画したビデオテープを、縛り上げた美人秘書の胸の谷間に突っ込んでおいた。

幸運な事に、俺達の除隊は一度目の申請で認められた。
しかも極秘裏に。いやぁまいったね。

本当は、ただ単に大統領が切れたからってだけじゃ無かったんだがな。
裏で色々あったらしい。


第三に、俺達は傭兵をやりながら情報を集め、魔法少女に関わる悪党共を探っていった。
接収部隊から色々ぶん取って来ていたお陰で、ヤツらの全体像を把握するのに、そう時間は掛からなかった。

そして第四は、奴らとの戦いだった。

魔法少女が関係していると思われる依頼を片っ端から請け負い、世界各国を飛び回って無我夢中で殺しまくった。


そして気が付けば二年もの月日が流れ、魔法少女を利用しようとしていた奴らは全滅していた。


そして分かった事が一つ。

世界中の軍産複合体の約70パーセントは、魔法少女の利用を企んでいた。


セガール(だが、アイツらは全てが終わったとは思っていない。そして俺も…)

セガール(アイツらは今も、企業という名の死の商人である奴らの残党を狩るべく、世界各国を奔走している。)

セガール(しかし、魔法少女と魔女の問題を解決する糸口だけは、今だに見えない。 だから俺は、その糸口を掴むという名目で、杏子とモモのいる日本へと渡った)


セガール「………………………」




そして、セガールは予感していた。

魔法少女という存在にとって、ここ日本は、大きな転換点になるだろうと。







セガール「…………………………………」








投下完了!書き溜めに入ります!
セガールの回想はこれにて終了です。次からやっとストーリーが進行します。ああ疲れた…

元上官をぶちのめすシーンの元ネタを紹介します。

胴体に鉄パイプをぶっ刺す
   ↓
シュワ主演の映画「コマンドー」

キンタマぶっちぎる
   ↓
ブルースウィリス出演の映画「シン・シティ」

ひざまずいた相手の顔面に回し蹴り
   ↓
ジェット・リー主演の色んな映画。例が上げれない。

重機関砲で人間ミンチ
   ↓
スタローン主演の映画「ランボー最後の戦場」


ではでは

次の日


女子1「じゃーねーっ」

まどか「うん。またね」オテテフリフリ

さやか「バイバーイ!」

仁美「さやかさんとまどかさんは先に行ってて下さい。私、少し用事がありますの」

さやか「うん、わかった。じゃあペース遅めに帰りますか!」

まどか「うん!」ティヒヒ



ほむら「……」


女子2「暁美さんも、さような…」

ほむら「さよなら」スタスタ

女子2「えっ…」


スタスタ…


女子2「………」

女子1「…なんか、そっけないね…」

女子2「うん……」

さやか「ふいぃ~、今日も疲れたぁ~」スタスタ

まどか「ティヒヒッ。さやかちゃんっていっつもそれだよね」スタスタ

さやか「いっつもって…まぁいつもだけど、今日は特に疲れたわ」スタスタ

まどか「…また、ほむらちゃんの事?」スタスタ

さやか「まーね。 あいつが良い奴なのかそうでないのか、今は分かんないけどさ。一応警戒しとこうと思ってね」スタスタ

まどか「それって…考え過ぎじゃないかなぁ…」スタスタ

さやか「だから一応だって。マミさんもしてるみたいだし」

まどか「でも……」スタスタ

さやか「転校生は悪い奴じゃないって?」スタスタ


まどか「…………」スタスタ


さやか「……まどかってさ、ほんと…」

仁美「すみませんっ、遅くなりましたわっ」タッタッタ

さや・まど「!」

仁美「? どうかしたんですか?」

さやか「えっ? ぃ、いやぁ、何でもないよ」アハハ

仁美「?」


ほむら(今日は巴マミが美樹さやかとまどかを呼び出す日…)スタスタ

ほむら(名目は見学だったわね)

ほむら(出来る事なら、巴マミが魔女と戦う姿を、二人には見せたくないのだけれど…乱入は余計な誤解を招いてしまう)スタスタ


ほむら(先回りして魔女を倒しても、別の魔女の元へと向かうだろうし…)スタスタ

ほむら(だからといって、あの三人が行く先の魔女を皆倒せば、今度は私の砂時計の残量が危うい。 時間停止が使えない私では、ワルプルギスの夜と戦うどころか、武器の調達すら出来なくなる)スタスタ

ほむら(佐倉杏子は巴マミと仲違いしていないみたいだから、彼女を三人にけしかけたり、先回りさせて魔女を倒させる事も出来ない)スタスタ


ほむら「……」ピタッ






ほむらの脳裏にふと、光を背に立つセガールの後ろ姿が浮かんだ。







ほむら「………………」




ほむら(…駄目。あの男が関わってくると、何が起きるか分からない)

ほむら(イレギュラー要素に頼ろうなんて、どうかしてる……まだ敵か味方かも分からないのに)


ほむら(…………)


ほむら(…でも何もせずにいては、結局元の時間軸と同じか、あるいはもっと悪い状況になる)


ほむら(乱入はしないしても、行っておいた方が良いわね)スタスタ

セガホーム



テレビ<エイドリアアアァァン!! ウェイドゥリアアアアアアンン!!!

テレビ<サイシアイハ? 
        ソンナモンシルカァ! エイドリアアアァァン!!


杏子「………」ウルウルウル


テレビ<ロッキー! ロッキィーッ!!

杏子「…………」ウルウルウルウル

テレビ<ロッキー! ロッキッ!! アイシテル! アイシテル!!
    オレモアイシテル… アイシテル… アイシテル…

杏子「ッ…ッッッ……ッッ…」ぶわっ


テレビ<バン バン バー-ン バー-ン バーーーーー-------ーン♪




杏子「ゔゔゔゔゔぅ゙ぅ゙ゔぅ゙ゔゔぅ゙~」ボロボロ


モモ「お菓子持って来…おねえちゃん?」

杏子「ゔゔゔゔゔゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙!!」グシュグシュ

モモ「大丈夫!? おねえちゃん!」

杏子「ロッキー…よかったなぁ…ホント、よかったなぁぁぁ…」グッシュリ

モモ「…?」

ピンポーン


杏子「ふぇ?」グッスン


<ごめんくださーい。佐倉さんいますかー?


杏子「この声…マミ?」ゴシゴシ

モモ「そうだねー」オカシモクモク

杏子「……あーあ、人が感動に浸ってるってのに、間の悪いヤツだな」ゴシゴシッ スタスタ


ガチャッ


杏子「んだよ」ムスッ

マミ「急にごめんなさい。ちょっとお願……その目どうしたの?」

杏子「え? あ、ああコレな。何でもねーよ」

マミ「そう……」

杏子「気にすんなって。 …ん?」



さやか「あはは…どうも…」ソ~

まどか「こ…こんにちは…」キンチョウ


杏子「お前ら……」

再びセガホーム


杏子「はぁ!?」

まど・さや「っ!」ビクッ

モモ「……」ミミフサギ


マミ「どうかしら? 二人を守ってくれるだけでいいから」


杏子「ふざけんな!! なんでアタシが魔法少女見学とやらに付き合わなきゃなんねーんだよ!!」

マミ「そっ、そんなに怒ることじゃないでしょ? グリーフシードはちゃんと貴女にも分けるから…」

杏子「そういう話じゃねえ! 魔法少女ってのは、度胸も覚悟も無いようなボンクラ共がおいそれと憧れて良いようなもんじゃねーんだ! マミだって分かってるだろ!?」

さやか「ボンクラって…」

杏子「何だよ文句あんのか?」

さやか「ぁ、あるわよ! あたしだって…覚悟くらい…!」

杏子「へーそうかよ。じゃあどんな望みを叶えたいんだ? 言ってみなよ」

さやか「それは……まだ考え中だけど、でも…」

杏子「あっそ。 言っとくけど、他人の為に一度きりの願いを使う気だったら、今ここでお前をぶっ殺す」

さやか「! 何よそれ、脅しのつもり!? 悪いけどそんなの全然…」

杏子「……」シュバァッ

まど・さや「!?」

モモ!!」


ジャキイン



さやか「あっ……」



杏子「アタシは本気だよ」

変身した杏子が槍を構えた。
彼女の得物の矛先は、さやかの喉仏に向いている。

さやかに魔法少女の攻撃から身を守る力が無い以上、生殺与奪は杏子にあった。



モモ「おねえちゃん! やめてぇ!」グイグイユサユサ

まどか「さやかちゃん…っ」フルフル

杏子「……………」



マミ「佐倉さん。武器をしまって」


杏子「…………」

さやか「………」

マミ「早くしまって」

杏子「……………」

マミ「……………」


杏子「……」チャキ…

さやか「!」

杏子「……」シュバァッ


杏子は変身を解き、下げた槍を消した。
さやかは壁に背を付けたまま。



マミ「この子達には、魔法少女がどんな物なのか説明してあるわ」

杏子「………」


マミ「だから私は、この二人を連れて貴女の所へ来れたの」

杏子「………」

マミ「………」


杏子「…おい、お前」

さやか「えっ…」

杏子「マミの言ってる事、ホントか」

さやか「ぅ…うん、そうだ、けど…」

杏子「お前は」

まどか「本当…です…」


杏子「…………」


マミ「…………」


杏子「そうかい。…マミ、コイツらは魔法少女について分かった上で、見学してえって言ってんだな?」

マミ「ええ、そうよ。だから…」

杏子「でも嫌だね。アタシは付き合うつもりねーから」

マミ「………」


杏子「つーかさマミ……アンタ、一緒につるめるヤツらが欲しくてこんな事してんだろ?」


マミ「っ……」

杏子「今回アタシの所に来たのだってそうさ。…セガールの奴がアタシとモモを連れてここに越してきた時、アンタは[今が仲直りのチャンス]って思った。 アタシとアンタが話してる所にセガールが茶々入れて、なんとなく場が盛り上がった時、アンタは[これでまた仲良くなれる。一緒に戦ってくれる]って思った。……違うかい?」


マミ「………………」


杏子「アンタは所詮そんなヤツなんだ。 寂しさを紛らわせる為に、他人の人生を曲げる事を躊躇わない自分勝手なヤツのくせに、正義の味方ぶってさ。 何だ? 新人になるかもしれないコイツらの前で、格好悪いとこ見せられないから、アタシとつるんでカッコ良く魔女を退治したいって?」

マミ「…………………」

モモ「おねえちゃん…」

杏子「っていうかさぁ、アンタ本当に魔法少女について全部話したのか? なーんか、怪しいんだよねー」ニヤ

さやか(……こいつ…っ)

マミ「…………………」

杏子「ひょっとしてさぁ……アンタ、コイツら仲間にしたいからって、嘘喋って連れて来たんじゃねーの? アンタだったらやりそうなんだよねー」フフン

さやか「あんた、ちょっと言い過ぎじゃないの!? マミさんは…」

マミ「待って美樹さん。いいの…ありがとう…」


さやか「…………」


マミ「佐倉さん…今日は、ごめんなさい。時間をとらせてしまって」

杏子「うっせーな。さっさと帰れよ面倒くせーな」

まどか「っ…」ムカッ

さやか「マミさん、やっぱりあたし…!」

マミ「やめて!」キッ


さやか「…………」

マミ「…帰りましょう」

さやか「……………はい」

まどか「………」

マミ「佐倉さん」

杏子「あぁ?」


マミ「………ごめんなさい…」


杏子「……」フン


マミ「………」スタスタ

さやか「あっ、マミさん…! 」タタタ

まどか「……」タタタ


ガチャッ バタン





杏子「…………はぁ」


モモ「おねえちゃん…」

杏子「ん?」

モモ「マミさん…泣いてたよ」

杏子「泣いちゃいなかっただろ」

モモ「そうだけど、でも…泣きそうだったよ」

杏子「…………そうだな」

モモ「謝りに行こうよぉ…」


杏子「…謝んないよ」


モモ「!……ひっ、ひどいよぅ。ダメだよ、そんなの…」

杏子「うん。ダメだよな。 ………でも、謝っちゃいけないんだ」

モモ「…………」

杏子「ごめんな、モモ。 ……だけど、ダメなんだ」


モモ「………」シュン…

杏子(これで、あの二人の中での魔法少女の印象は悪くなったはずだ。…少なくとも、魔法少女は全員いいヤツだとか、かっこいいだとかは思わなくなるだろう。ほむらの事もあるし)

杏子(マミも、あの二人組の前でここまでボロクソに言われたんだ。しばらくはアイツらを誘ったりはしないだろ)


杏子(魔法少女なんてなるもんじゃないんだ)

杏子(親とか友達とかがいるヤツは、特にな)




杏子「……………………」





モモ「……おねえちゃん」


杏子「…いつか、ちゃんと謝るよ。 お菓子持って行って、頭下げて」


モモ「……うん」


杏子「マミは……いや、マミさんは…悪い人じゃ、ないからさ……」


モモ「…うん…」

マミ「…変なとこ見せちゃったわね」

さやか「ぃ、いえいえ、そんな…」ハハ…

まどか「…………」

さやか「……………」


マミ「今日の見学だけど、やっぱりやめましょっか……」

さやか「へっ!? なんでですか?」

マミ「私…私ね、佐倉さんの言ってた通りの人間なの………わがままで、自分勝手で、いい子ぶってて……」

さやか「マミさん……」


マミ「あの子の言う通り、本当は一人で戦うのが寂しいし……貴女達を魔法少女にして、一緒に戦いたいって気持ちも…心のどこかにはあったから。……魔法少女の過酷さを知りながら、ね」

さや・まど「…………」


マミ「だから……見学の事は、これで…」

さやか「待ってください!」

マミ「!」

さやか「寂しくなった時に、友達が傍にいてくれたらいいなって思って、何が悪いんですかっ? 魔法少女は、絶対に一人で戦わなくちゃいけないなんて、そんなのおかしいじゃないですか!」

マミ「それは…」

さやか「グリーフシードの奪い合いになるからって、マミさんは昨日言ってました。 けど、グリーフシードなんて分け合えばいいんですよ。一回使ったら消えるとか、そんなんじゃないみたいですし」


マミ「……………」


さやか「間違ってるのはアイツです! マミさんじゃない!」


さやか「だから…見学をやめる事なんてないです!」

マミ「………」

さやか「……」フンス!


マミ「美樹さん。そう言ってくれるのはとても嬉しいわ、本当に……」

マミ「でも…佐倉さんにも色々事情があるの。 どんな事情かは私の口からは言えないけど、あの子を悪い子だって決め付けないであげて」

さやか「う……すみません」


まどか(事情…事情って、なんだろう…)

まどか(そういえば、佐倉さんの隣に居た子…おねえちゃんって言ってたから、姉妹、だよね…)

まどか(…とっても悲しそうだったけど……)


まどか(いつか、仲良くなれたら…教えてくれるかな…)



マミ「さて…これだけ美樹さんにプッシュされると、止めるものも止められなくなっちゃうわね」フフ

まどか「!」

さやか「…ってことは…」

マミ「佐倉さんには悪いけど、今日のパトロールは内緒ってことで」ニコッ

さやか「やったぁ!」

マミ「それじゃ、早速行きましょう」スタスタ

さやか「はい!」スタスタ

ほむホーム


誰もいない広大な空間。その隅で、小さな音が鳴っていた。
音の出所は巨大な振り子ではなく、天井にある歯車でもない。

カチャカチャ

凹凸のある小さな金属を、擦り合わせているかのようなその音は、空間に入る為のドアから漏れていた。

カチャカチャ ガチャッ



セガール「はぁ…久々にするだけあって時間が掛かったな」スタスタ


白昼堂々の不法侵入に成功したセガールは、何の警戒もせずに部屋を見渡す。

セガール(予想していた物以上に変な部屋だなぁ、こりゃ)

セガール(しかも透けてるときて……ん? 別の部屋が重なって見えるぞ)


セガール(…魔法で映像を作り出し、それで元の部屋を隠しているのか)

セガール「素質が無くて助かったな。 下手に見える、何がなんだか分からんだろうな」

ほむホーム


誰もいない広大な空間。その隅で、小さな音が鳴っていた。
音の出所は巨大な振り子ではなく、天井にある歯車でもない。

カチャカチャ

凹凸のある小さな金属を、擦り合わせているかのようなその音は、空間に入る為のドアから漏れていた。

カチャカチャ ガチャッ



セガール「はぁ…久々にするだけあって時間が掛かったな」スタスタ


白昼堂々の不法侵入に成功したセガールは、何の警戒もせずに部屋を見渡す。

セガール(予想していた物以上に変な部屋だなぁ、こりゃ)

セガール(しかも透けてるときて……ん? 別の部屋が重なって見えるぞ)


セガール(…魔法で映像を作り出し、それで元の部屋を隠しているのか)

セガール「素質が無くて助かったな。 下手に見えると、何がなんだか分からんだろうな」

ガチャッ

セガール「……」スタスタ


セガールは全ての部屋を順番に探って行き、最後に訪れた寝室で、お目当てのパソコンを発見した。

セガール「机にキーを表示するヤツぁ、好きじゃないんだよなぁ」タンタン タタタタ…

パソコンを起動し、ファイルを次々と開いては閉じて、ほむらの素性や目的を探っていく。
中学生離れした彼女とて、ファイルにパスワードを設けるほどの事はしなかったらしい。

セガール「……」ピタッ

突然、セガールの手が止まった。



セガール(こいつ、株に手ぇ出してやがる)

セガール(しかし…これであの子の正体が分かってきたぞ)


セガール(彼女は時間を止める魔法を使えて…株式市場を、まるで未来を予知するかの如く察知し、法の目を巧にかい潜る手法を身につけている)


セガール(時を止めれるという事は、時間を文字通り[操れる]という事。市場変動の未来を予知しているのが、時間を止めれるだけではないという、何よりの証拠だ。 恐らくはビデオテープやDVDのように、一時停止・再生・巻き戻しが出来るんだろう)


セガール(法を簡単に破れるのは、なりふり構っていられない、何か重大な問題に彼女が直面しているという事)


セガール(兵器を猛烈な勢いで買いあさるのは、近々現れる何かを撃退する為)


セガール(これらが意味するものは一つ。 彼女は何度もここ最近の時間を繰り返し、近い将来出現する強大な何かに、何度も戦いを挑んでいるタイムトラベラーであるという事)



セガール「……こんだけ人事を尽くしてまだやれってんだ。そりゃ奇跡も信じなくなるわけだ」パチッ


セガールはそう言いながら携帯電話を開いて、老人からもらった機能を起動させた。

携帯電話の液晶には、見滝原の地図と、その中を動き回る紫色の点が表示されていた。



セガール「信じられないなら、実際に目で見てもらわないとな」



ガチャッ バタン


タッタッタッタッ…





廃ビル付近


タッタッタッ ピタッ

ほむら(まだ来ていないみたいね)フ-

ほむら(魔女の反応はある。ここで待っていれば…)


<スタスタ…


ほむら(! 来たわね)ササッ

さやか「あれ? 今誰かいませんでした?」

マミ「そう? 誰も見てないけど」

さやか「おっかしいなぁ…」

まどか「! マミさん!あそこに人が!」ユビサシッ

マミ「!」


OL「……」フラフラ


さやか「あれって…もしかして、飛び降り!?」

OL「……」タッ

まどか「!!」

マミ「そのようね。はっ!」シュバァッ ヒュンヒュン


 ボスン



マミ「ふぅ。危なかった…」ヒュルルルッ

OL「……」グッタリ

まどか「大丈夫…なんですよね…」

マミ「ええ。リボンで作ったクッションで受け止めたから、怪我は無いはずよ」

まどか「ほっ…」

さやか「はぁ~…よかった。どうなるかと思った…」



ほむら(ここまではどの時間軸でも同じ)モノカゲ

ほむら(後は魔女を倒すだけ。無事に済めばいいけれど…)

結界内部


ボヒュンボヒュン ドン バシッ

マミ「まだまだ行くわよ!」チャキッ

ボヒュボヒュボヒュボヒュン

さやか「マミさん!後ろ!」

マミ「大丈夫っ」クルッ ボヒュン

使い魔「;÷-∩!」ビシッ シュワワワ…

さやか「おお!」

まどか「すごい…!」


ほむら「…………」モノカゲ


マミ「さっ、進みましょう」スタスタ

結界深部


ゲルトルート「。<゙*%」


さやか「うわぁ…グロイ…」ウエ…

まどか「あれが魔女なんですよね……」

マミ「そうよ。前も見たと思うけど、そう簡単には慣れないわよね」フフ

まどか「はい……」



ほむら(何か事故があったら、時間を止めて魔女を倒さないといけないけれど…)モノカゲ

ほむら(…巴マミが魔女を倒したように見せ掛けないといけないから、少し面倒ね)モノカゲ

ほむら(でも、やるときが来たら必ず成功させないといけない。 状況を好転させる事が出来なくても、そうすれば少なくとも[前の時間軸の時と同じ結果]には出来る)

ほむら(状況の悪化だけは、なんとしてでも食い止めないと……)モノカゲ


マミ「貴女達はそこから動かないでね。今日はパパッと終わらせるわ」ニコッ

ほむら(張り切ってる……)

ほむら(こういう時の彼女、ろくな事にならないのよね)モノカゲ

マミ「はっ!」バッ スタッ

セガール「……」スタッ

マミ・ほむ「!!?」

まど・さや「えっ!?」

セガール「ショータイムだ」チャキッ


ガガガガガガガガガガガガ!!

ゲルトルート「?」チュインチュイン キンキンキン


セガール「あー…やっぱ魔翌力の篭ってない弾丸じゃ効果無しか」ポイッ


ほむら(セガール!? どうしてここに?)


マミ「えっ…あ……な、なん…」

セガール「よっ、また会ったな」クルッ

マミ「なんで、貴方がここに…?」

セガール「気配がしたんで、ついな」フフ

さやか「!! あぶなああああああい!!」




さやかの発した警告を聞いたセガールは、目を使わずして自分の後頭部目掛け飛んで来る魔女の触手を感知した。

その触手の尖端部は鋭く、速さ自体も相当にある。
まともに喰らえば人骨など一たまりも無いだろう。


だがしかし、セガールの心に乱れは無かった。


どんなに重いトラックでも、路面を覆う氷の上を、全速力で走って転ばない訳は無いからだ。

例え路面上のそれが、厚さ2ミリに満たない薄氷一枚であったとしても、チェーンタイヤでも無い限り、転倒は必至なのだ。


クルッ パシッ


セガールは目にも留まらぬ速さで頭を左へと傾け、右耳のすぐ傍を通過する触手に掌を当てた。
軌道を僅かにずらされた触手は、セガールの右肩の上を超高速で飛び抜けていく。

あとは背負い投げの要領だ。
通り過ぎ行く触手を右肩で突き上げ、右手で掴む。

スピードは殺さない。むしろ上乗せしてあげるのだ。

力は必要では無い。力は既に魔女が発揮してくれている。



マミ「…………」



マミが唖然とする中、セガールは薄氷となり…


ほむら「うそ………」


魔女は宙を舞う。

ほむら(なにこれ……私、何を見て…)


何を見ているのかは解っていた。
乱入してきたセガールがおもむろに魔女を投げ飛ばし、魔女がこちらへと飛んで来る。杏子の話は嘘では無かったのだ。

ほむら(!!!!)

そこまで考えたほむらの背中が凍った。
魔女が飛んで来るのだ。今まさに、自分が隠れているここに。


ほむら(時間停止!!)カシャッ

カチッ




ほむら「…………」





マミ「」



さや・まど「」



ゲルトルート「」



セガール「」





ほむら「はぁ………」スタスタ





セガール「おぉいやめてくれよ。ペースが乱れるじゃないか」


ほむら「!!?」ホムァッ!?

セガール「気付かなかっただろ? またやらせてもらった」クイクイ
ほむら「……………」クイクイ

セガール「そんな怪物でも見るような目で俺を見るんじゃない。こっちは種も仕掛けもあるんだ。魔法と違ってな」

ほむら「貴方…何なの…?」

セガール「元軍人で元コックだ。今は牧師をやっている」

ほむら「そんな事聞いてるんじゃないわ…!」

セガール「じゃあなんだ?」

ほむら「貴方、本当に人間なの!? 何が目的なの!?」

ほむら「私に付き纏うのは何故!?」

セガール「………」

ほむら「答えなさい!!」

セガール「……んー」フー

ほむら「……」ゼェゼェ


セガール「言いたい気持ちはあるんだが、下手な事を言って君にこれ以上警戒されたくないんでな。悪いが今は言えない。 だがこれだけは信じてくれ」


セガール「俺は君の味方だ」


ほむら「!…」



プツッ

ほむら「あっ」



セガール「」



ほむら「……………」

ゲルトルート「!?」ドドドドオン


さやか「ぅぁぁ……」

まどか「さやかちゃん、怖いよぉ…っ」ギュッ


セガール「ふー……あ、マミちゃん」

マミ「ふぁっ!? はっ、はい!」

セガール「後方支援を頼みたいんだが、行けるか?」

マミ「だっ、だだだ大丈夫ですっ!」チャキキッ

セガール「おいおい、つい最近も魔女が飛ぶ所見ただろ? 本当に大丈夫なのか?」フフ

マミ「大丈夫です!!」

セガール「それなら良いんだけどな。……それじゃ行こうか、相棒」

マミ「ぁ、相棒って、そんな…//」

セガールだけでこの惨状なのに他の木曜洋画劇場勢も来たらどうなるやら

>>247
エイリアン「……」

プレデター「……」

遊星からの物体X「……」

QB「……」

結界の外(廃ビルの中)


ほむら(どうにか脱出は出来たみたい)フー

ほむら(セガール…後で貴方には色々聞かなければならないようね)

ほむら(! 魔女の反応が消えた?)

ほむら(……)ハシラノカゲッ



さやか「あ、景色が戻った……って事は…」

マミ「魔女退治、どうやら成功みたいね」フゥ

まどか「はぁ…助かった…」カックリ

マミ「ほんとね。一時はどうなるかと思ったわ…」トオイメー

セガール「危なくなった時なんてあったか? 終始優勢だったじゃないか」

マミ「優勢でしたけど私達も酷い目にあったじゃないですか! 地面が抜けて私は落っこちるし!鹿目さんは一人で取り残されましたし!美樹さんは生き埋めになりかけたんですよ!?」

さやか「いや~飛んできた魔女が頬っぺた掠めた時は死んだかと思っちゃいました」アハハ…ハ…


ほむら「………」ゴクリ…


セガール「いや悪い。思いの外軽かったんでね。久々に投げまくったら気持ちよかったんだ」

マミ「次からは気をつけて下さい!」

セガール「スマン」

廃ビルの外


OL「!」ハッ

マミ「大丈夫ですか?」

OL「あれ…私……」

OL「! ああ…そんなっ…うぅぅ」グスッ

マミ「安心してください。怪我はしてませんでしたから」

さやか「………」ジーン

まどか「…………」





まどか(皆を守る魔法少女……強くて、格好良くて…)


まどか(佐倉さんは、人の為に願う事は駄目だって言ってた。それに、とっても怒ってた。 でも…)


まどか(やっぱり…私には…人の為に願って戦うのが、悪いことだなんて……思えない…)



まどか(………どうしよう…やっぱり、決められないよ…)





ほむら(トラブルが起きたけれど、一応前と同じ展開にだけはなった)モノカゲ

ほむら(セガールの存在を除いてだけど……)モノカゲ


マミ「立てますか?」

OL「はい。…ごめんなさい、迷惑かけてしまって」フラ

マミ「迷惑なんかじゃありません。よろしかったら、家までお送りさせてもらっても…」

OL「い、いいですよ。そこまでしてもらうと、なんだか悪い気がしますから……」

マミ「そうですか……。それでは、お気をつけて」

OL「ええ。今日は本当にありがとう。 さようなら、お元気で」

マミ「はい。そちらもお元気で」


スタスタ…


マミ「ふぅ…さて、私達もそろそろ帰りましょうか」

さやか「はい!」

まどか「………」

マミ「鹿目さん?」

まどか「あ…すみません、ちょっと考え事してて…」

さやか「考え事? なあにまどか、あたし気になっちゃうなー?」ニヤニヤ

まどか「なんでもないよぉ」ティヘヘ

  マミ「あっ!」

さやか「! どうしました?」

マミ「セガールさんはどこ?」

さやか「え? あ、あれ?」

まどか「いなくなっちゃった……?」

さやか「みたいだ、ね…」

マミ「どうしたんでしょう…」

廃ビル 最上階の廊下


ほむら(ここなら外からも見えないはず。窓も無いし)

セガール「こんな所に連れて来て、一体俺に何をするつもりだ?」

ほむら「何もしないわ。私は貴方な話を聞きたいだけ」

ほむら「貴方は何故……何の理由があって、私に味方しようと思ったの?」

セガール「こんな所に連れて来て、一体俺に何をするつもりだ?」

ほむら「? 貴方私の話を聞いていなかったの? ふざけ…」

セガール「こんな所に連れて来て、一体俺に何をするつもりだ?」

ほむら「人を馬鹿にするのもいい加減にして。それにさっきから何故私の方を見ようとしな…」

セガール「こんな所に連れて来て、一体俺に何をするつもりだ?」

ほむら「…………」チャキッ パン


ドシャーン  カラン カラン




ほむら「……………………」





マネキン「」バラバラ


カセットテープ「こんな所き連れて来て、一体俺に何をするつもりだ?」





ほむら「っ………」




ほむら「…………………」








ほむら「……………はぁ…」



夜 セガホーム


セガール「はぁーただいま」スタスタ

杏子「おう、おかえり」

モモ「おかえりー! セガールさんも神経衰弱やろーよ!」

セガール「悪いが遠慮しとく。あー、疲れた」ヨッコラショ

モモ「ちぇーっ」プクー

セガール「ヘソ曲げないでくれよ。ホントなんだ」

モモ「ふんだっ」プイッ

セガール「おいー…お前なぁ」

杏子「アンタが疲れたって言っても、あんまり説得力ねーからな」ニッ

セガール「そうかぁ?」

杏子「そうだよ」フフ

セガール「やれやれ、弱っても心配してもらえないんじゃ、メシを作る気力も沸かないな」

杏子「! おいっ!それは勘弁してくれよ!」

セガール「冗談だよ。 少し休んだら晩メシ作るから、その時は手ぇ貸してくれ」

杏子「わかった。 あっ!モモはっずれー」ニッ

モモ「んー!」><

セガール「…………」フー



セガール(顔には出してないが、なんかあったみたいだな。 ありゃ空元気ってもんだ)

セガール(深く探りはしないが…コイツらの好きなラーメンでも作ってやるか)


セガール(っと、その前にメール打っとくか)チャッ カチカチ…

ほむら「………………」


セガールに逃げられたほむらは、彼を追わなかった。
今は一騒動あった廃ビルとは別の廃ビルで、取引相手を待っている。
取引の相手はいわゆる武器商人という者達で、今日のこの時間に一度目の取引を行うのだ。

取引に来る人物は三人。黒人が一人に白人が二人。
いずれも長身で、黒人がどの時間軸でも金を受け取る。


ほむら(結局、セガールはあれ以降私の前に姿を見せなかったけれど、向こうが私に構わないのならそれでいい)

ほむら(彼の場合、こっちが下手に追うと今回の取引を嗅ぎ付け可能性もあったし…)

ほむら「…………………」


ほむら(…遅いわね)キョロキョロ


<君が取引先か?



ほむら(……)クルッ

背中に受けた声を聞き、ほむらは声の方へと半身を向け、目と耳を澄ませた。
逆光により相手の顔は見えない。
ほむらは異変に気付いた。

ほむら(一人?………それに、さっきの声…)

背中に月光を浴びる黒いシルエットが、一つしか見当たらない。シルエットが発した声にもまるで聞き覚えが無い。

?「学生服にブリーフケース……俺がいつも見る客とは違うな」

口調も違う。それどころか使う言語すら違っている。
ほむらの背中が、相手の発するあまりに流暢な日本語に反応し、しっとりと冷や汗を浮かべる。


ほむら「………貴方は、誰?」


ステイサム「君の取引相手だ」



逆光に慣れはじめたほむらの瞳に、黒いスーツ姿の男が映った。

ステイサム「時間が無いからさっさと済ませよう。モノがモノなだけに長居が出来ないんだ」

ほむら(こんな男、見たこと無い。 ………! まさか、そんな事って…)

ステイサム「外に商品を置いてある。確認してくれ」スタスタ

ほむら(セガールみたいなのが…他にも…?)


ステイサム「…早く来てくれないか。時間が無いんだ」

ほむら「あっ、はい…」

ステイサム「?」

ほむら「……ぇ、ええ、行きましょう」スタスタ

ステイサム「………」スタスタ

廃ビルの外


ステイサム「武器で一杯のコンテナを積んだトラックが150台ある。足が着く物は無い」


ほむら(こんなに注文した覚えない……)


ステイサム「どうかしたか」

ほむら「…こんなに頼んでないわ……」

ステイサム「サービスみたいな物だと思ってくれ」

ほむら「サービス……」

ステイサム「ああサービスだ。こっちとしても言いにくい事があってな」スタスタ

ガチャッ ギイィィ…

ステイサム「このトラックに積んであるRPGを見てくれ。手に取ってもいい」

ほむら「………」ノゾキ…

ステイサム「問題があるんだ」

ほむら「え?」


ステイサム「性能に変化は無いんだが、君の指定したカラーリングがどれもこれも施されていない状態だ。 君が指定した色は黒だったな?」

ほむら「ええ、そうだけど……これは全部、灰色……?」

ステイサム「つまりこれは君にとって不良品だ。注文内容と違うからな」バタン ガチャッ

ほむら「でも、色は適当に決めたから…どうでも…」

ステイサム「このコンテナの武器に限らず、他のも全部色が違う」

ほむら「…貴方は何が言いたいの?」

ステイサム「不良品を押し付けて金を取る道理は無いって事だ」

ほむら「えっ」

ステイサム「でも一応サインはしてくれ。受取確認だ」

ほむら「ぇ? え?」

ステイサム「サインは英語で頼む。 各コンテナの武器の種類と隠し場所はこの説明書に書いてある」サッ

ほむら「どういう事……?」

ステイサム「無料なんだよ」

ほむら「無料ってそんな…」

ステイサム「早くしてくれ。何度も言ってるが時間が無いんだ」

ほむら「は、はい…」カキカキ

ステイサム「……………」

ほむら(手が震える……)カキカキ

ステイサム「…………」

ほむら「……」スッ…

ステイサム「ありがとう。じゃあな」スタスタ

ほむら「あ…待って…」


スタスタ…




ほむら「…………」



トラック運転手「お嬢ちゃん。そこ危ないぜ」

ほむら「えっ…あ、すいません…」サガリ

運ちゃん「ありがとよ」

ブロロロロ…

ほむら「……………」

他のトラック<ブロロロロ…



ほむら「………………」



ほむら「……………………………」






ほむら「……………」スタスタ…

セガホーム 深夜の杏子ルーム


杏子「…………」スー…スー…

モモ「んぅ……」スー…スー…


------------------------------
深夜のリビング


プルルルルッ プルルルルッ プルピッ


セガール「よぉ、元気か」

ステイサム<元気じゃないな>

セガール「へへっ、まだ怒ってんのか?」

ステイサム<当たり前だ。アンタらの活躍のお陰で俺の客が減ったんだ。怒ってるさ>

セガール「争いが減るのは良いことじゃねえか。お前もこの際休暇だと思って、羽でも伸ばしてきたらどうだ?」

ステイサム<伸ばしてるところにアンタが連絡を寄越したんだろ>

セガール「そういやそうだったな。で、荷物の方は<」

ステイサム<無事に済んだ>

セガール「流石だな」

ステイサム<じゃあな>

セガール「おっと待った。 今回の取引やお前に頼んだ一連の作業について、本当に何も聞かないのか? 武器の流れとか俺の目的とか……あとマネキンの使い道とか」

ステイサム<ああ、詮索はしない>

セガール「おお…そこんとこも流石と言うべきか」

ステイサム<昔からそうしてる。 切るぞ>

セガール「おう」

プツッ  ツーッ ツーッ ツーッ




セガール「と言っても…当分の間、お前には付き合ってもらうけどな」

深夜のほむホーム


ほむら「はぁ……」クター


ほむら(あの武器の山…それにあの男……)

ほむら(無料なのは何故なの? あんな下らない理由なはず、ないわよね………)

ほむら(私の知らない所で、きっと何かが起きているんだわ。……それも、大きな何かが…)


ほむら「!!」ガバッ


ほむら「……」ビシィン

ほむら「……」ポケット サグリサグリ

ほむら「……」タテノナカ サグリサグリ

ほむら「……………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

セガール「ショータイムだ」チャキッ


ガガガガガガ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ほむら「銃を取られてる……」ゾッ


投下完了!書き溜めに入ります。
なんだよこの誤字率の高さは。この>>1頭がお詳しいぜ。
投下は遅いしもーダメダメやないですかヤダー!

次の日の夕方


杏子(セガールに夕食代貰っちまったけど、いざ金を持つと使い道に困るな)スタスタ

杏子(モモへのお土産もあるし…何食うかなぁ)スタスタ

杏子(あ?)ピタッ


さやか「そっか。…まぁ、あたしもなんだけどね」スタスタ

まどか「さやかちゃんも?」スタスタ

さやか「うん。でも今はどっちかって言うと…」スタスタ



杏子(アイツら、昨日も……つーか三日連続かよ)

杏子(………ま、構うこたねえな。下手に関わり過ぎると後が面倒だ)

杏子(言う事は言ったし、もう魔法少女には…)


さやか「それにしてもさぁキュゥべぇ。あんたまどかの鞄から顔出してて本当に大丈夫なの?」

QB「心配いらないよ。僕の姿は普通の人には見えないからね。 もちろん、声も聞こえない」

まどか「へぇ~」スタスタ

QB「魔法少女の素質がある人には見えるけどね」

さやか「お~…そこはいかにも魔法って感じじゃん」スタスタ



杏子「………………」

杏子「………………」


杏子「……ケッ、勝手にしろっ」スタスタ

さやか「?……あっ、ねえキュゥべぇ。あれって……」

QB「! それはグリーフシードだ! しかも、この様子だと孵化するのにそう時間は掛からない!」

さやか「!!」

まどか「えっ…じゃあ、あともう少し経ったら、魔女が出てくるの?」

QB「そういう事だよ!マミが近くにいればテレパシーで呼ぶけれど…」

QB「………駄目だ!僕とマミとの距離が離れすぎてて、テレパシーが通じない!」

まどか「そんな…ここ、恭介君がいる病院なのに…!」

さやか「…………まどか、あんたはマミさん捜してきて。佐倉って奴でもいい。 あたしはここに残ってグリーフシードを見張るから」

まどか「! う、うん! さやかちゃんも無茶しないでね!」タタッ

杏子(あれだけ言ってもまだキュゥべぇと連んでんなら、もう知らねえ)スタスタ

杏子(そんなに魔法少女になりたいんならなれば良いさ)スタスタ

杏子(てめぇの願いで周りのヤツを傷付ける前に、アタシがアンタ達のソウルジェムを砕いて、アンタらをボコボコに叩きのめして反省させてやるよ!)スタスタ


まどか「佐倉さん!」タッタッタ

杏子「あん?」

まどか「あのっ…今、大変なんです…その、魔女が…」ハァハァ

杏子「魔女が出たんだろ?知ってるよ。アタシのソウルジェムにも反応があった」

まどか「! それなら、あの…」

杏子「アタシは行かないよ」

まどか「!!」

杏子「魔法少女になりたいんだろ?ちょうど良いじゃん。いい練習になるし」

まどか「……それって…」

杏子「アンタらが倒せばいいんだよ。じゃーな」スタスタ

まどか「! 待って下さい!」

杏子「やーだ」スタスタ

まどか「そんな…お願いですから!」

杏子「………」スタスタ

まどか「お願いします!早くしないとさやかちゃんが…」

杏子「しつけえな!! うぜえってんだよ!!」

まどか「!っ」ビクッ


杏子「フン」スタスタ


まどか「…………」


まどか「…………」


まどか(……どうしよう、私…マミさんの連絡先、知らない…)

まどか(携帯の番号…聞いておけばよかった…)グスッ

まどか(…………! 携帯の番号…?)

まどか「そうだ!学校に…」ピッピッピッピッ

プルルルルッ プルルルルッ ピッ

まどか「もしもしあのっ、見滝原中学校の二年生の鹿目まどかです! 三年生の巴マミさんの連絡先を……」

まどか「連絡先を…えっと、あの……」

まどか(理由……駄目、全然思い付かないよ…)

まどか「ああっ!違います!悪戯なんかじゃ……切らないでください!!」

プツッ  ツーッ ツーッ

まどか「うぅっ…マミさぁん……」グスッ



セガール「お、まどかちゃんじゃないか。どうした?そんなに泣いて」

まどか「!!」

セガール「…なんかただ事じゃないみたいだな」

まどか「は、はい!大変なんです! それが…」

セガール「病院の壁にグリーフシードか……やっぱりそんな事だろうと思ったよ」

まどか「えっ……やっぱり…?」

セガール「今朝から随分と濁った気配がしてたんだ。校舎裏を待ち合わせ場所にしておいたのは正解だったな」

まどか「待ち合わせ……」

マミ「家から出たらすぐセガールさんが居たんですもの。驚いて転んじゃったわ」スタスタ

まどか「!?」

マミ「こんにちは鹿目さん。話は聞かせてもらったわ」

まどか「マミさん……」ウルウル

マミ「ふふっ、泣くのは魔女を倒してから」ナデナデ

まどか「うぅ……」ゴシゴシ

セガール「それじゃ行こうか」

マミ「ええ、行きましょう」

結界内部


タッタッタッタッ…


ほむら(今回は今までのループの中で一番早く結界に到達出来た!)タッタッタ

ほむら(上手くいけば、巴マミがここへ来る前に終わらせられる!)タッタッタ

ほむら(少し悔しいけれど…兵器を隠すのに時間を掛けなかった分、私の行動がスムーズになってる)タッタッタ

ほむら(あの商人……私が彼に「貴方は敵か」と尋ねたら)タッタッタ

ほむら(彼も「味方だ」と言うのかしら…)タッタッタ

ほむら(セガールのように……)タッタッタ


セガール「よう、こんにちは」ヌッ

ほむら「!!? セガール!」キキッ

セガール「だけじゃないぞ? ホラ」

まどか「! ほむらちゃん!」

マミ「貴女は……」


ほむら「………………」ポカーン


マミ「………? 何か用?」

ほむら(そんな! なんで……)

ほむら(折角早く来れたのに、これじゃまるで意味が無いじゃない!)

ほむら「セガール…!」

セガール「?」

ほむら(……仕方ない。…もう、やるしかない)

ほむら(時間を止めてる間に先行して、三人から十分に距離をとった後に時間停止を解除。三人が魔女のいる場所にたどり着く前に、私が魔女を倒す!)

ほむら(きっと巴マミには敵視されるだろうけど、それはやむを得ない)

ほむら(巴マミを死なせたらまどかは哀しみ、無力感に囚われ、力の無い自分に不満を抱く。 そしたらきっと、遅かれ早かれ魔法少女になる事を望むようになる)

ほむら(全てはまどかの為よ)カシャッ

セガール(あ)

カチッ




ほむら「……………」

マミ「」

まどか「」

セガール「」

ほむら「ワイヤーは仕込まれて……」ガサゴソ


ほむら「……る?」


ボグッ


セガール「アラミド繊維と言ってくれ」



カチッ  ドサッ




マミ「!?」

まどか「?……!? ほむらちゃん!?」

ほむら「」グッタリ

まどか「ほむらちゃん!ほむらちゃん起きて! ほむらちゃん!!」ユサユサ

マミ「気絶してる…わね」

まどか「ほむらちゃん!こんな所で寝てたら危ないよ!早く起きて!」ユサユサ

マミ「鹿目さん、下手に揺らすのはまずいわ。それに…」

まどか「?」

マミ「彼女が敵か味方か分からない以上、このままにしておくのも手よ」

まどか「……放っておくんですか…?」

マミ「…………」

セガール「大丈夫、俺が見といてやる」

まどか「!」パアッ

マミ「助かります」

セガール「気にするな。それより早く行った方がいいんじゃないか?」

マミ「ええ、そうですね。 行きましょう鹿目さん」タタッ

まどか「はいっ」タタッ


セガール「…………」

結界深部


QB「まずいよさやか。グリーフシードからの反応が強くなってきてる」

さやか「うう……」

QB「もしもの時の為に、僕と契約を交わす事も考えに入れておいてね」

さやか「わかってるよぉ……うぅー早くまどか来ないかなぁ…」

QB「大丈夫、もうすぐ来るよ。マミを連れてね」

さやか「ホント!?」

QB「本当さ。マミからテレパシーによる返事が来たから、もうそろそろ…」


スタッ


マミ「お待たせキュゥべぇ。美樹さんも無事ね?」

さやか「はい! いや~いつ魔女が出てくるかってヒヤヒヤしてましたよ」アハハ

まどか「さやかちゃん、怪我とかしてないよね?」ハァハァ

さやか「元気元気! 問題ナッシング!」

まどか「よかった…」ホッ


マミ(! この気配……そろそろね?)


QB「マミ!」

マミ「分かってるわ。美樹さんに鹿目さん!安心するのはまだ早いわ!来るわよ!」

さやか「おおっとっと…」モノカゲ

まどか「!」モノカゲ

グググググ…


シャルロッテ「……」シュポン


まどか「あっ、かわいい…」

さやか「…あれでも魔女なんですよね?」

マミ「ええそうよ。ていっ!」ブン

バキッ

シャルロッテ「!」コロン ヒュー…

マミ「今度こそっ…!」ブン

バシッ

マミ「一気にいくわ!」チャキッ

ボヒュボヒュボヒュボヒュン

マミ「ティロ!」

ジャキン

マミ「フィナーレ!」ドン!


シャルロッテ「!」 ドゴオッ


さやか「やったぁ!」

マミ「ふー…」


シャルロッテ「……」カパッ

ズオッ


マミ「え」

さやか「!?」

まどか「あっ!!」


第二形態「………」ガパァ…


マミ「ぁ………」





胴を貫かれた魔女の口から、誰もが予想だにしないものが姿を現した。

ぬいぐるみのような小さな姿は只の入れ物に過ぎず、マミはそれを壊したに過ぎなかったのだ。

そして今や、魔女の巨大な口はマミの眼前に位置している。




ザクッ









だがしかし、魔女の口内にマミの頭が入る事は無かった。


今、魔女は右目を庇うようにとぐろを巻き、マミの頭部には構う暇も無い。

肉を切るような音の出所は、マミの首筋ではない。


音の出所は魔女の右目。


結界内の食べ物からナイフを抜き取り、投げつけたのだ。

魔女の右目目掛け…



セガール「…………」



誰あろう、スティーヴン・セガールが。





セガール「来いよ寿司野郎。まずそうだが相手してやるぜ」

セガール「マミちゃん、銃だ」

マミ「えっ……」

セガール「銃だよ。出せなくなったとかは無いよな?」

マミ「は、はい…」

セガール「ホラ早く。さっさとしないとヤツが来ちまうだろ」


第二形態「………」ギロッ


マミ「!! はっ!はい!!」サッ

セガール「ありがとう」チャキッ

第二形態「………」ビュン!


マミがセガールにマスケット銃を渡すと同時、もしくは直後に、黒い体躯の魔女が身体をしならせてセガールに躍りかかった。
さやかとまどかは息を詰まらせ、目を見開き、キュゥべぇはセガールの挙動を目で捉え、マミは身体を退かせる…

ビュバキィン!

…暇も無く…


セガール「………………」


…セガールの行動は終了し、魔女の行動は中断させられていた。

セガールの右手が握るマスケット銃は原形を留めておらず、のたうち回る魔女の口からは、大小様々な何かの破片のような物が、白い粉末に塗れて断続的に噴出している。

セガール「そりゃ痛いよな」フフ

第二形態「!!!!」ビュン!


速さを増した二撃目がセガールを襲う。

ババッ


第二形態「!!  ……!?…!?」グネグネ

さや・まど「!?」

セガール「…………」


飛んできた大口を回避すると同時に、セガールが打ったワン・ツー。
初弾は命中。次弾は届かず。
命中率は芳しくない。

だが、魔女の右目にナイフを完璧に埋め切るには、それでも十分だった。

セガール「マミちゃん、援護射撃だ」

マミ「!!」ピクッ

セガール「俺は囮になる。右目を狙え」ダッ

マミ「はい…!」


第二形態「!!!!」ブワーッ


セガールは三度猛進する魔女の真下を潜り抜け、次に振り戻って来た口を半身によって回避。
怒り狂う魔女の攻撃意識は、更にセガールへと傾倒していく。

マミ「はあっ!」ヒュンヒュン ジャキィン

マミは自身の両腕にリボンを纏わせて二門の大砲を形成。一騎打ちに夢中な魔女に照準を合わせる。

マミ(狙いは…魔女の右目……)


第二形態「…………」フー…フー…


マミ(動きが止まった!今だわ!!)ドオオォン!

第二形態「!!」バガァン!!

セガール「うおっ! 凄い火力だな……ゴホっ」モワモワ

マミ「魔法の威力には、それなりに自信がありますから。セガールさんは大丈夫ですか?」フゥ…

セガール「怪我は無いだろうが、髪はちょっと焦げてるかもな」ハハ

さやか「……倒した……?」

セガール「ん? うーむ……」



第二形態「………」グググ…



セガール「…やっぱな」フフ

ズルン


第二形態「………」ニィ…


まどか「!?」

さやか「あっ!!」

マミ「……これは、再生…?」

セガール「というより脱皮だな。適当に寿司と言ったが、こいつは言い得て妙だな。恵方巻きそっくりだ」フフ

マミ「笑い事じゃありませんよ!これじゃ…」

セガール「なぁに、まだ方法はある。全部試せばどれかには引っ掛かるだろう。面倒な事には変わりはないけどな」

マミ「方法って……大体何通りあるんですか?」

セガール「ざっと53通りってところだ」

マミ「…………………」ズーン

セガール「大丈夫。気長にやれば良いだけの話だ」スタスタ


スタッ

セガール「!」

まどか「!!」


ほむら「…………」フゥ…フゥ…


さやか「転校生…!?」

セガール(回復が早いな。……ちと浅かったか)

ほむら「まどか、怪我は無い?」

まどか「えっ……ぅ、うん。大丈夫だよ」

ほむら「巴マミ。貴女は?」

マミ「? ええ、無事よ。……それより、なんで貴女が私の名前を知っているの?」


第二「…………」ギロッ


セガール「待て。お喋りはそこまでだ」

第二形態「!!!!!」グワッ!

高速で接近する魔女を打ち落とすべく、セガールは前羽の構えを取った。
しかし魔女の牙は、セガールの両腕に掛かる寸前に軌道を変え、別方向へ。


さやか「!! マミさん!よけて!!」

マミ「!!」

矢継ぎ早に変化する状況に、マミは半歩だけ遅れた。
再度姿を現したほむらに気を取られ、向かい来る魔女への対応が疎かになったのだ。

マミは反射的に、回避ではなく迎撃を選択してしまった。

魔女の頑強さを知りながら…


ほむら「くっ!」チャキッ カチッ

だが、ほむらはそんなマミの行動を読んでいた。
知っていたと言っても良い。
実力は折り紙付きだが、咄嗟の判断力に欠けるのが巴マミ。
ほむらはそう認識していた。

時間を止め、ゴルフクラブを盾から取り出し…

ほむら「ふんっ!!」ブン!

マミ「はうっ!」バゴォ!

魔女の前で止まっているマミの横っ腹をそれで殴り付け、彼女をぶっ飛ばした。
マミの身体は空中を一瞬だけ進むと、地面に落下せず、そのまま静止した。

ほむら「手間の掛かる…」ポイポイッ

大口を開けた魔女の口内に手榴弾を投げ込む。
セガールが手榴弾の位置を調節している間、ほむらは次にロケットランチャーを取り出し、魔女の口から見える魔女の最奥部へ向けて構え、弾頭を発射した。

時が進みだせば魔女は口を閉じ、内側から焼却される。
その時にはマミは爆発の範囲外。ほむらはギリギリ範囲内。

ほむら「…………」シュタッ チャキッ

20メートル程バックステップ。その後に盾を構え…

スッ…

しゃがみ込んで爆炎に備える。

カチッ


時は動き出す。


ガブッ  ドゴオオオォォン!!

さや「うわっ…!」

まどか「きゃあ!」

QB(! これは……)

マミ「うぐっ!」ドサッ ゴロゴロゴロ…

セガール「おー」バチパチ


ほむら「……………」シュウウウ チリチリ…


さやか「えっ……何? どういう事?」ボーゼン

まどか「! さやかちゃん、景色が変わってくよ……」


グニュウウウ…



さやか「戻った…?」

セガール「らしいな」

さやか「じゃあ魔女は…… ! マミさんは!? マミさんはどこ!?」


マミ「げっほ! げっほげほっ!」


さやか「マミさん!!」タッタッタ

まどか「!」タッタッタ

マミ「へ…平気よ。魔法少女だもの…ケガしてても治せるわ」ヨロ…

マミ(さっきの爆風で飛ばされたみたいね。……私の攻撃は間に合ってなかったし、今のはやっぱり……)


まどか「あの、休んでた方が…」アワアワ

まどか「鹿目さんまで……もう、本当に大丈夫なんだから」フフ


ほむら「…………………」フー…


マミ「そこの貴女…確かほむらさんって言ったわね? 一先ずはお礼を言っておくわ。ありがとう、助けてくれて」

ほむら「…何故、貴女が私の名前を知っているの」

マミ「鹿目さんが教えてくれたわ。学校の中でね」

ほむら「……………………」

マミ「さて、戦いも終った事だし、どうやってさっきの魔女を倒したのか教えてもらえないかしら?」

さや「さっきのって転校生がやったんですか?」

マミ「それしか考えられないわ。私は撃ってないし、そんな暇も無かった。セガールさんは爆発なんて起こせないし、鹿目さんと美樹さんは魔法少女になってない。 そしたら、最後はほむらさん……いえ、暁美さんしか有り得ないじゃない」

ほむら「…………………」

マミ「言いたくないのならそれも良いわ。私も興味本位で聞いただけだし、貴女が手の内を明かしたくないと思うのも分かるから。 でもせめて、私達とこれからどう接していくのかくらいは教えて欲しいわ」

ほむら「………………………」

マミ「…………………」


ほむら「…貴女が冷静でいられるなら、私は貴女の味方。そうでないなら私は貴女の敵よ」

マミ「……その時々によるって事ね」

ほむら「私の魔法は瞬間移動。いい仲になりたいのなら、冷静でいなさい」

マミ「……………………」

ほむら「……………」クルッ スタスタ…




ほむら「……」パンパンパパン パンパパンパン ピョンピョン カクカク

マミ「えっ」

さや・まど「!!?」

ほむら「」パスパスパスススス パパスパス ブンブブン ブンブブン

まどか「ほ…ほむらちゃん?…どうしたの!?どうしたのほむらちゃん!!」

さやか「ちょ……て、転校生!?」

マミ(何あの動き…)

まどか「ほむらちゃんしっかりして!!」ウル…


プツッ


セガール(おっ)


パッ


まどか「!? !?…!?」

さやか「消えた……何よ、今のあいつ…なんなのよ…」ウワアァ…

マミ(…………瞬間移動の儀式? …そんなわけないわよね…)

セガール(逃がしたかぁ…糸外されちゃ、そりゃ俺も追えんわな)フフ


杏子(あーイライラする……くっそ!アイツらなんか見ずにさっさと行きゃあ良かった!)ムカムカ

店員「はい、お待ちどうさん。餃子定食三つね」

杏子「ん」チャリン

店員「毎度あり。今日は随分買ったね?お金の方、大丈夫なのかい?」チャラチャラチャキン

杏子「心配いらねーよ」ムカムカ スタスタ

店員「あんまり怒ってると、そのうち怒った顔のままになっちゃうよ?」

杏子「んー」スタスタ…


ガラララ… ピシャッ





杏子「はぁ……」





杏子「あーあ、帰るかぁ」セノビー スタスタ…

路地裏


杏子(やっぱこういう所が一番落ち着くな)スタスタ

杏子(人も少ねーし、静かだし)スタスタ

杏子(出てくる魔女も丁度いい奴ばっかりだし)スタスタ

杏子「………………」スタスタ ソヨソヨ

杏子(背中が涼しいのが一番だけど…」スタスタ


カン コロコロコロ…


杏子(おっ、ジュース…)タタタッ

杏子(コーラじゃん。ラッキー♪)サッ

杏子(………んだよ。空じゃねーか)ポイッ カン


杏子(!!)ハッ




何気なく行った動作。それらが終った時、杏子は動きを止めた。
ここは涼しい。 それは何故か。

日の光が強くないのが主な要因だが、路地の中を通り抜けるそよ風にも、要因の一端がある。

そよ風はどこから来たのか?

自身の後ろ。

では空き缶は?



自身の前。






杏子「………………」ジリッ




立ち上がった杏子は、右足を一歩後退させた。
そして空き缶の来た方向に向かって半身になった。

両手に持つ弁当の入った袋は、緊急時には中身ごと激しく飛び散らせて、煙幕がわりに使うつもりだ。
食べ物を粗末にするのは、杏子にとっては罪悪だ。
しかし死んでしまえば元も子も無いのだ。

自分以外誰もいない路地裏。
今までそう思っていた。
人影は無く、人の気配も無く、魔翌力も感じなかったのだから。

路地の先……自身の行く先から、若干の眩しさと共に人々の行き交う姿が見える。

自身のいる道の端から端までを風が通り、その間には自分以外に何の障害物も無いと感じている。

だが違った。空き缶に疑問を持った時に察知してしまった。



居るのだ。



杏子「………………」


そいつは前か、後ろか。
右か左か。
上か。
それとも下か。
杏子の米噛みと背中、首筋に汗が浮かぶ。
ヤツは何者か。
目には見えず、音も無く、臭いも無い。
そんなヤツは知らない。

魔翌力を発しない者など、尚更。



ズン


杏子「!!」ピクッ




音がした。

どこからしたのかと杏子は耳を澄ませた。
後ろを振り返り、真上を見上げ、また元の方向へ顔を戻す。
そして程なくして気付く。

鼻先の空気が生暖かい事に。

杏子は来た道を走った。
両手にあった弁当袋をほっぽり出し、息を吸うのも忘れた。

自分が魔法少女である事にも気が付かなかった。

魔女や使い魔は、今や杏子の人生の一部であり、違和感は感じない。
しかし、あれは彼女の人生の外にいる者だった。
その正体は全くの未知であり、何者も関わってはならない存在だった。
ヤツは人の心に住み着く、原初的恐怖そのものだったのだ。

目の前に明るさが見える。出口だ。
だがしかしヤツは居る。今は分かる。
ヤツは背後。それも息が掛かる程の距離にいるのだ。


杏子「!!!!」


背中に突風が当たり、杏子は前のめりに転倒した。
背中の風は、直接吹き付けるものでは無く、下から上へと吹き出す風が生み出した余波のようなものだった。

四つん這いになった杏子の背中の上を何かが通過する。
跨いだり飛び越えたりというより、まるで飛び去るようにして。

杏子は荒くなった息を正さぬまま、ヤツの行く先を見た。

だが、見た先には何も無かった。

見えるのは通行人と車だけで、その誰も彼もが、いつもと変わらない日常を過ごしていた。



杏子「……………………………なんだよ…今の……」







緊張から解かれた手足は言うことを聞かず、杏子は十数秒間四つん這いになったまま、立つ事が出来なかった。

セガホーム


ガチャッ バタン


セガール「帰ったぞー」スタスタ

モモ「おかえりーっ!」タタタッ

セガール「はぁー今日も大変だった」ハハ

セガール「…ん? 杏子はまだ帰ってないのか?」

モモ「いるよ。でも、なんか元気ないんだー……」ショボン

セガール「元気がない? そりゃなんで?」

モモ「わかんない……でも、お弁当は買って来てくれたんだ」

セガール「おお、そうか。じゃあメシは食ったんだな?」

モモ「モモは食べたよ? でも、お姉ちゃん、食べたくないって……」

セガール「……………」

モモ「から揚げ、お姉ちゃん大好きなのに……ずっと怖い顔のままなんだー…」

セガール「…………はぁ…」


杏子「………………」



セガール「隣いいか?」ガタッ

杏子「!!」ビクッ

セガール「?」

杏子「………なんだ、アンタか…」

セガール「なんだじゃないだろ。どうした?何かあったのか?」フフ

杏子「………………」

セガール「………………」

杏子「アンタ……見えない敵と闘う時、どうしてるんだっけ」

セガール「ん?」

杏子「いや悪い、忘れてくれ…今、なんつーか…具合悪いんだ」

セガール「……よくわからんが、体調不良は魔法じゃ治せないのか?」

杏子「マミなら出来るかもしんねーけど、アタシには無理だ」

セガール「そうか。なら隣のマミちゃんに頼んでみるか?今さやかとまどかの三人でお茶してるみたいだか…」

杏子「やめろよ」

セガール「…………」


杏子「放っといてくれ……マジで……」


セガール「………はーあ、分かったよ」ガタッ スタスタ

杏子「…………………」



セガール(身体の不調ぐらいどんな魔法少女でも治せる事ぐらい、俺が知らないわけないだろ)

セガール(見えない敵、か………)

セガール(……………………)

セガール(今晩にでも聞いてみるか)


モモ「お姉ちゃん……お弁当…」オロオロ

杏子「あとで食うよ。…心配すんなって」フフ

モモ「うん……」


夜のほむホーム


ほむら(巴マミについた嘘…バレないかしら…)

ほむら(念の為に爆風をわざと盾で防いで、ぎりぎりで間に合った様には見せたけれど……問題は変に勘の良い美樹さやかね)

ほむら(表情がわざとっぽかったとか、なんとなくとか……変な理由で巴マミに話題を振っているかもしれない)

ほむら(グリーフシードを奪うようなそぶりは可能な限りしないようにした。実際、奪う気は無いし)

ほむら(だから、彼女達にあからさまな敵意を向けられる要因となり得るのは、考えられる限り美樹さやかだけ)

ほむら(いえ、インキュベーターの件もあったわね)

ほむら(でも…あれは仕方なかった。あの時は他に手があるとは思えなかっ…)


ほむら「!!」チャキッ




ほむら「………………………」





ほむら(セガールはいないわね)ホッ…

ほむら(………美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子…この三人と友好関係を築くことは出来る。昔のように)

ほむら(でも、その絆が崩れてしまった時、まどかは必ず魔法少女になる道を選んでしまう。ある時はさやかを生き返らせる為。ある時はマミを助ける為。ある時は皆を守る為に)


ほむら(あの三人をまどかに近付けないように動いても、その場合はまどかの方から三人に接触してしまう)

ほむら(私がどんなに止めても……)


ほむら(……………………)



夜のまどルーム


まどか「……………」


 魔法少女になりたいんだろ? ちょうどいいじゃん、いい練習になるし

まどか「………………」ネガエリ

 アンタらが倒せばいいんだよ。それじゃーな

まどか「……………………」


 魔法少女ってのはこんな度胸も覚悟もねーようなボンクラ共がおいそれと憧れていいもんじゃねーんだ! マミだって分かってるだろ!?


 他人の為に一度きりの願いを使う気だったら、今ここでお前をぶっ殺す




まどか(佐倉さん……ただ怒ってるだけじゃ、ないんだよね)

まどか(本当は、私達に魔法少女になってほしくないから……ううん、誰にも魔法少女になってほしくないから、怒ってたんだよね)

まどか(きっと、魔法少女になって辛い目にあったから、それで……)


 一人で戦うのは寂しいし…貴女達を仲間にしたいって気持ちも、心のどこかにはあったから。……魔法少女の過酷さを知りながら、ね


まどか(でも、辛いのはマミさんも一緒で……だから、私はマミさんの力になりたいって……)

まどか「……………………」


まどか「結局、私……迷ってるだけだ…」

 鹿目まどか。貴女は自分の人生が尊いと思う?
 家族や友達を大切にしてる?

 尊いと思い、大切にしているのなら、今とは違う自分になろうだなんて思わない事ね


まどか(大切だから変わりたいって思ってるんだよ?ほむらちゃん。……でも、変わるのが怖い……戦うのが怖いの……)

まどか(そんなので、変わっては駄目って言われちゃったら…私……)


まどか「もう…わかんないよ……」ウル…





ガチャッ

まどか「!」ピクッ


タツヤ「まろか…」ウツラウツラ


まどか「タッくん?……どうしたの?」ムクッ

タツヤ「んむ~…」フラフラ

まどか「……トイレに行くの?」

タツヤ「うん…トイレいく…」フラフラ

ジャー…


タツヤ「……」ガチャッ バタン…

まどか「大丈夫?もういいの?」

タツヤ「うん」ニパー

まどか「そっか。じゃあ、ママとパパのとこ、一緒に行こっか」ニコ…

タツヤ「うん」


スタスタ…

トテトテ…



タツヤ「あ!」ピタッ

まどか「? タッくん?」

タツヤ「まろかー、あれみてー!」ユビサシ

まどか「……タッくん、何も見えないよ」ティヘヘ

タツヤ「ほらー!あれぇー!」ニコニコ

まどか(?……窓に何か映ってるのかな?)

まどか(何も見えないけど…)


タツヤ「ボールとってくえたんだよー!」ニコニコ

まどか「えっ?」

タツヤ「ともらちなのー」ニコニコ

まどか(友達って…あれ、ご近所さんの木だよ?)

まどか「タッくん、嘘ついちゃ駄目……」

ガサッ

まどか「? なに、あれ?」



ガサ…



まどか「!!!!」

タツヤ「?」

まどか「……………………」

タツヤ「……まろかー?」

まどか「……………………」ガタガタガタ…

タツヤ「……まろ…」

まどか「タッ、タッくん!!こっち!!早く!!」グイッ タタタ…

タツヤ「ぅ?」タタタ


ガチャッ! バタン!

再びまどルーム


まどか(あれ…魔女だよね…!? だってあんなの、普通じよないよ!!)ハァハァ

タツヤ「まろか?」

まどか「今日はっ…今日は、お姉ちゃんと一緒に寝よう!?ね!?」

タツヤ「?」キョトン

グイッ バサッ



まどか「…………」フルフル

タツヤ「まろか、さういのー?」

まどか「う、うん!今日は、寒い、からっ……」エヘヘ フルフル


まどか(結界の外には…出てこれないって、マミさんが…!)フルフル

まどか(でも、だったらどうして、木の上に……)フルフル

まどか(!! もしかして……)



まどか(魔女じゃ…ない…?)



まどか(それなら……)フルフル


まどか(それなら、あの緑色の目は……!?)フルフル

まどか(あれ…魔女だよね…!? だってあんなの、普通じゃないよ!!)ハァハァ

タツヤ「まろか?」

まどか「今日はっ…今日は、お姉ちゃんと一緒に寝よう!?ね!?」

タツヤ「?」キョトン

グイッ バサッ



まどか「…………」フルフル

タツヤ「まろか、さういのー?」

まどか「う、うん!今日は、寒い、からっ……」エヘヘ フルフル


まどか(結界の外には…出てこれないって、マミさんが…!)フルフル

まどか(でも、だったらどうして、木の上に……)フルフル

まどか(!! もしかして……)



まどか(魔女じゃ…ない…?)



まどか(それなら……)フルフル


まどか(それなら、あの緑色の目は……!?)フルフル



深夜 街の鉄塔の上


QB(セガール……まさか君が…いや君達が、僕らと魔法少女について研究していたなんて、予想していなかったよ)

QB(君達が所属する集団の上層部が、僕らを調査し、利用しようとしていた事は知っていたし、同時に黙認していたけれど…)

QB(まさか君達が自分から集団を抜け出して、単独で行動し、それによって得た成果を二年間も隠し通していたなんてね)

QB(彼らが業を煮やしてこの星に到来していなければ、僕らの計画は大きく狂わされていたかもしれない)



月の照る夜、キュゥべぇは見滝原の町並みを見下ろしていた。
街の明かりは点々として少なく、小さな光が弱々しく闇に埋もれている。

そんな中、キュゥべぇの後方8メートルで、静寂を切り裂く音が響いた。
200キロを超える固い肉の塊が、勢いよく鉄を叩いたような音だ。


QB「焦る事は無いよ。僕らは期限を守る。それに、ワルプルギスの夜が来るんだ。暁美ほむらとスティーヴンセガールを始めとしたイレギュラー要素はあるけれど、エネルギー回収の成功率はかなり高いだろう」


キュゥべぇは、背後の何かに語りかけるように言葉を発した。
背後の者は身動き一つせず、ただ…



 「アト イッカゲツ ダ」



と、言い残し、高さ60メートルの鉄塔から飛び降りた。





QB「わかってるさ」


QB「万が一僕らが失敗するような事があれば、後は君達の出番だ」


QB「君達の言う思想と信条に基づいて、望むままに動けばいいさ」





誰に言うとも無く声を発し、キュゥべぇも鉄塔から姿を消した。





次の日の放課後


さやか「お隣りさんの庭の木の上に、光る緑の目! なんともホラーちっくですなぁ」スタスタ

まどか「茶化さないでよ…」スタスタ

さやか「ごーめん。 でもそれが本当ならさ、マミさんに相談した方がいいんじゃない?」スタスタ

まどか「そうは思ったんだけど……」スタスタ

さやか「けど?」


まどか「…それは魔女じゃないって、言われたら…怖いから……」スタスタ


さやか「はぁ? 何よそれ。それじゃ結局分からないままじゃん」スタスタ

まどか「うん……」スタスタ

さやか「はぁ~~………  あっ!やばっ!」ピタッ

まどか「?」ピタッ

さやか「ごめんまどか!あたしもう病院行くね!」ダッ

まどか「あっ…うん…」


さやか「見えないお化けの事、ちゃんとマミさんに相談するんだよー!」タッタッタッタ…



まどか「………………」

さやか(やばいって!約束した時間過ぎまくってんじゃん!)タッタッタッタッ

さやか(いっそげっ! いっそげっ!)タッタッタッ



さやか(それにしても……う~ん、緑色の目ねぇ~~)タッタッタッ

さやか(なんなんだろ本当)タッタッタッ

さやか(当事者じゃないあたしが考えても、答えが出るわけないって分かってるけど……気になるなー…)タッタッタッ


ドスン


さやか「あいてっ!」ドタッ

?「?」

さやか「あいててて…いったぁ~……」スリスリ…

?「怪我は無いか?」

さやか「あっ、大丈夫です。すいませんぶつかってしまっ!!?」

?「…………………」

さやか「……………………」





?「怪我は無いか?」ズイッ

さやか「ひいっ!」

?「?」

さやか「ごっ…ごごごごめんなさい!お金はありま…じゃなくて…えっと…」

?「…………………」

さやか「ア、アイノットハブマネー!!」

?「それはどういう意味だ」

さやか「お金は持っていません!……ってあれ?」ハッ

?「………………………………」

さやか「……日本語話せるんですか?」

?「………………………」スタスタ

さやか「あ、あれ?」


スタスタ…



さやか「行っちゃった……」



さやか「……病院行こっと」ヨッコラショ


タッタッタッタッ…

病院


コンコン

恭介「どうぞ」

ガチャッ


さやか「ごめん恭介。ちょっと遅れちゃった」エヘヘ

恭介「…………」

さやか「いやー病院に行く途中で凄いゴッツい外人さんに会ってさ。なんかこう、黒い革ジャンをバリって着た…」

恭介「……………………」

さやか「……恭介?」

恭介「……さや…」

さやか「あっ、ゴメン恭介!今日急いで来ちゃったから、CD持ってこれなかった!本当ごめん!」

恭介「………………」

さやか「次はちゃんと持ってくるから、今日…ごめん…」

恭介「いいよ。気にしないから」


さやか「?」


恭介「むしろ…今日は何の音楽も聞きたくないから、都合がいいよ」

さやか「…恭介…?」

恭介「今日の朝、主治医の先生に言われてね。………治らないんだってさ、僕の左手」

さやか「…えっ……」

恭介「だから…もう、CD持って来なくていいから」

さやか「恭介……」

さやか「あ、あのさ……」


恭介「……………………」


さやか「それじゃあリハビリ…とかも、もう…」

恭介「しないよ」


恭介「やっても意味が無いんだ。……それに、やるつもりも無い」


さやか「どうして……」

恭介「足が治ったら退院するよ」

さやか「…………諦めるの…?」

恭介「…うん」

さやか「……諦めて、退院したら……そしたら恭介、どうするの?」

恭介「何もしない」


恭介「何も出来ない僕に、出来る事なんて無いよ。……だから何もしない」

さやか「恭介は、それでいいの…?」

恭介「それしか無いんだよ」

さやか「それしかないなんて……そんなわけ、無いよ……」

恭介「そんな訳無いなんて、どうしてさやかは言えるんだい? テレビでやってる奇跡とか魔法とかが、本当に起きるって確証がさやかにはあるの?」

さやか「………………」

恭介「下手に希望を語らないでくれないか」

さやか「そんな事、言わないでよ。……諦めたら…諦めたらホントに駄目になっ…」

恭介「うるさい!!放っといてくれ!」

恭介「もう治らないんだよ!痛みも感じなければ熱も感じない!指だって動かない! 今の医学じゃ無理だって言われてるんだ!」

さやか「ゃ、やめてよ恭介!そんな事言わないで…!」

恭介「僕には何も無いんだ!!」

さやか「あるっ!!」

恭介「!」ピクッ



さやか「…………………」ウルウル



恭介「……さやか……」


さやか「あるんだよ……奇跡も、魔法も!」ウルウル


恭介「…さやか、一体何を……」

さやか「………」ダッ

恭介「! さやか!」

マミホーム


マミ「魔女が木の上に……」フーム

まどか「魔女かは分からないんですけど、そうとしか思えなくて……」

マミ(魔女が結界から出てくるなんて話、聞いたこと無いけれど……使い魔…にしても、やっぱり変よね……)

まどか「ぃ……いえ!やっぱりあのっ!」

マミ「うん?」

まどか「私……ほんとはアレ、魔女でも使い魔でもないのかなぁって、思ってて……」

マミ「うーん………」


ピンポーン


マミ「あら、お客さん? 鹿目さん、ちょっと待っててね」

まどか「はい……」

マミ「どなたですかー?」スタタタ


<マミサン! マミサン!


マミ「? 美樹さん?」ガチャッ

さやか「マミさん……」グスッ

マミ「!? どうしたの美樹さん!?」

さやか「キュゥべぇ…キュゥべぇいますか?」ウルウル

マミ「えっ?」


QB「いるよさやか。どうしたんだい?」


さやか「キュゥべぇ……あたし、契約する」

マミ「!?」


QB「…………」



さやか「魔法少女になる!」

セガホーム


セガール「遅いなぁ……」

杏子「? 誰か来んの?」

セガール「ああ」

杏子「!? なんだよソレ聞いてねーぞ!」

セガール「言ってないからな。それにお前さっきまで寝てただろ」

杏子「……………」スタスタ

セガール「昼寝の続きか?」

杏子「あーそーだ」ガチャッ

セガール「自分の部屋でか」

杏子「悪いかよ。リビングにいるままだと、厄介事に巻き込まれそうだからね」

モモ「モモもお姉ちゃんの部屋行くーっ」タタタ


セガール「厄介事ねえ……悪いが今回ばかりは抜けられなさそうだ。むしろ抜けると損をするぞ」

杏子「なんだそれ」

セガール「見えない敵に殺されるのが小さい頃からの夢だったのなら、無理には引き止めないがな」

杏子「…………放っとけって言っただろ」ムスッ

セガール「モモちゃん含むその他諸々の因子により無理だ。 自力で克服するとか、誰かに頼りっぱなしは嫌だとか考えてても無駄だぞ?」

セガール「俺は親切を押し付ける。相も変わらずな」クックック

杏子「ケッ…そーかよ」フン

モモ「モモ、リビングに戻るーっ」ピョンピョン スタッ


ピピッピッピピーンポーン

   ピピッピッピピーンポーン

セガール「お、来たか。杏子、悪いけどでてくれないか」

杏子「なんでアタシが…」
セガール「頼む」

杏子「……はぁいはい。わかりました!」スタスタ


ガチャッ






シュワ「…………………………」





杏子「ひょっ?」

シュワ「邪魔するぞ」ズカズカ

杏子「!? おいアンタ! ちょっ……」

セガール「よく来てくれた。とりあえず適当な椅子に座ってくれ。早速始めよう」

シュワ「ああ」ガタッ

モモ「セガールさん。この人だあれ?」チョンチョン

セガール「俺の戦友さ。杏子、お前も早く来い」

杏子「お、おい…なんだよこの…」

セガール「いいからホラ。さっさと来いって」

杏子「ぅ………うん…」ガタッ

セガール「よし。アーノルド、こいつが昨日話した魔法少女だ」

杏子「話した!? オイ何アタシの事勝手に…」

シュワ「見えない何かに会ったっていうのは君だな?」ズイッ

杏子「えっ」

シュワ「違うなら違うと言ってくれ。嘘を聞かされるくらいなら、そっちの方がいい。どうなんだ?」ズイッ

杏子「………見たのはアタシ…です」ボソ…

シュワ「そうか、じゃあこれから三つの質問をする。君はそれに答えてくれ。あと、そう固くなる事もない」

杏子「………………」コクリ…

シュワ「一つ。君はヤツに対して何かを構えたか?」

杏子「構えた…?」

シュワ「砕いて言うなら、戦う意志をヤツに示したかどうかだ」

杏子「……戦う気は無かったよ。…見えないんじゃこっちはお手上げだし、それに気味ワリぃっていうか……」

シュワ「そうか。じゃあヤツと会った場所で悪臭を嗅いだ覚えは無いか? 鼻を突くようなアンモニアの臭いだ」

杏子「アンモニア………いや、そんな臭いはしなかったね。埃の臭いはしたけど」

シュワ「うむ。……じゃあ奴の存在に気付けたのは何故だ?」

杏子「空き缶が風の吹いてる方向とは逆に転がってきたからだ。あとはイヤな気配がしたとか、そんなもんだよ」

シュワ「……………………」



セガール「何か分かったか?」

シュワ「まずいぞ。ヤツらめ学習している」

セガール「…………………」

モモ「?」

シュワ「自分達の体臭が、人間の『形を変える文明』の中では目立つという事に気付いたんだ。考えてみてくれ。今まで奴らが選んできた戦場の条件を」

セガール「ジャングルに、スラム街に、海上……成る程、悪臭は目立たないな」

シュワ「森や海には動植物の腐敗臭。スラム街には加えて化学物質まである。今まではいくら自分達が臭かろうが、姿さえ隠せればそれで良かったんだ」

セガール「臭いは周囲の環境がごまかしてくれる。 だが、汚ればあれど悪臭が殆どない見滝原では、そうはいかなかった訳か」

シュワ「そうだ。………しかしいつもの奴らにしては不自然過ぎる。奴らは自分達の文化や習慣を変えてまで、周囲の状況に溶け込もうとはしないはずなんだ。いつもなら戦場が何処であれ己のスタンスを貫き、ある意味で正々堂々と闘うだろう」

セガール「…………………」


シュワ「セガール。 俺には、今度のヤツらには闘い以外にも目的があるように思える。恐らく、この地域でなければならない『何か』があるんだ」

セガール「……とすると、目標は魔女か魔法少女か、それともインキュベーターか?」

シュワ「いや、その線は薄い。 ここに来る前に調べたんだが、ヤツらの存在が確認されたのは見滝原だけだ。お前の言った通りだったら、奴らは今頃世界中に散らばっているはずだ」

杏子「なぁアンタ。……その、ヤツって何?」

シュワ「狩猟民族だ。ただし、奴らは人間ではない」

杏子「は…?」


シュワ「宇宙人だ」



杏子「ぅう宇宙人!!?」

モモ「うちゅうじん?」


シュワ「驚くものでも無い。素性が知れているだけインキュベーターよりはマシだ」

杏子「けど…………けどよ…宇宙人って…」

シュワ「信じられないか」

杏子「んな事いきなり言われてっ、信じられるわけっ、ないだろ……」

セガール「魔法があるんだ。宇宙人の一匹や二匹いて当たり前だろ?」

杏子「う………」


セガール「う~ん…別の目的か~」

シュワ「成人の儀式でもなさそうだ。新成人にしては現場に残す痕跡が少なすぎる。今回の奴らは間違いなくベテランだ」

セガール「向こうは初めから本気か。……とは言え何に本気になっている分からない以上、無闇に矛を交えるのは危険だな。…ここはしばらくの間、様子見で行くか」

杏子「ちょっと、いいか?話に水差すみたいで悪いんだけど…」

セガール「ん?」

杏子「この人、何なんだ?」


シュワ「………………………」


セガール「……分かった、説明してやる」



------------
--------
----
--

セガール「分かったか?」

杏子「………………」ゴクリ…

セガール「簡単に言うと?」

杏子「え!? お、おう…えーっと…」

シュワ「………………」

杏子「アンタの仲間で、バケモン」

セガール「よし正解だ」

シュワ「複雑な気分だ」

セガール「的を射てるだろ。お前の背景を知った上でこの呼びようだ。観念しろ」


セガール「杏子。お前にこんな話をしたのにはちょっとした理由がある」

杏子「………その、なんとかって言う宇宙人と関わるな、とか?」

セガール「そうだ。よく分かってるな」

杏子「バカにすんなよ。つーかアタシは端っから関わる気なんて無ぇ。 得体の知れない化け物とやり合ったって、何の得にもなんねえからな」

セガール「何言ってやがる。昨日は対策練る気満々だったじゃねえか」ハハハ

杏子「…あれは念の為ってヤツだって言ってんだろ」フン

セガール「それでも駄目だ」

杏子「んだよ。だったらアイツと会った時は何もすんなってのか?」

セガール「そうだ。奴らは戦士以外の者には基本的に手を出さない。例外があるとするのなら、それは相手が挑戦の意志を示した時だけだ」

セガール「お前が手を出さない限り向こうも牙を剥かない。万が一向こうの方から来たら、その時は逃げればいい。いくら奴らが俊足とは言え、魔法少女のスピードには敵わないからな」

杏子「ふーん……」

杏子「!!」ピクッ


シュワ「?」

セガール「ん?」

杏子「………………」


モモ「…お姉ちゃん?」


杏子「……いや、なんでもないよ。足痙りそうになっただけさ」

セガール「おかしいな。食事の栄養バランスは良いはずなんだけどなぁ」

モモ「えいようばらんす? 何それ?」

セガール「ん? あー…説明が難しいな。悪いが後で良いか?」

モモ「えー!?やだぁー、教えてよー」タムタム





杏子(あのボンクラ共っ……!)



マミホームからの帰り道


さやか「……………」

まどか「………………」

さやか「………………」


まどか「……さやかちゃん…」

さやか「なに?」

まどか「ごめん……私だけ……」

さやか「ごめんって、何がさ?」

まどか「えっ……だって、私だけ…」

さやか「ははーん…また変な事気にしてるな?」ニッ

まどか「…………………」

さやか「だいじょーぶだって!あたしは魔法少女になりたくてなったんだもん。まどかが気にする必要なんてないよ」フフン

まどか「…でも、私も、なりたいって思ってたのに…なのに……」

さやか「あたしはあたし、まどかはまどかでしょ?『友達がなったから私もなりまーす』なんて、考えたって言わないんじゃない?」

まどか「…………………」


さやか「…ねえまどか。もしかして、佐倉の言ってた他人の為のうんちゃらって話、考えてた?」

まどか「!!」

さやか「心配しなくても、あたしは平気だよ? ずっと闘い続けてもいい理由、見つけたからさ」

さやか「それに、今出来る事はやっておきたいんだよね。でないとあたし、きっとずっと後悔するから」

まどか「………………」

さやか「とにかく!まどかは落ち込まなくていいの!さっさっ、元気だして!」

まどか「うん……」

さやか「そういやさ、緑色の目の話、マミさんにした?」

まどか「うん。話したけど、途中でさやかちゃんが来たから……」

さやか「あれ、もしかして来るタイミング最悪だった? あーそしたら契約した後も居ればよかっ…」

仁美「さやかさんにまどかさん、ここで会うなんて奇遇ですわぁ~」フラフラ

さやか「わっ!びっくりしたぁ~…」

まどか「仁美ちゃん…?」

仁美「あ~れ~♪」クラッ

さやか「うおっとぉっ! ちょっと仁美!?」ガシッ

仁美「うふふふ……」ヘラヘラ

さやか「仁美……あんた、どうしたの?」

仁美「お二人共、私はこれから素晴らしい所へ参りますの」ヘラヘラ

さやか「へっ……?」

まどか「さやかちゃん………仁美ちゃん、おかしいよ…」

仁美「よろしければ、お二人もご一緒しません?」

ガシッ

さや・まど「!?」グイッ

仁美「さぁ、遠慮なさらずに♪」グイッグイッ

さやか「ひっ、仁美!?どうしちゃったのよあんた!」ヨロヨロ

まどか「仁美ちゃん!放してぇ!」ヨロヨロ

仁美「そうですわぁ。それが素晴らしいですわぁ」ウフフフ

さやか「放しなさいって!……ああもう、ここは変身して無理矢理…」ヨロヨロ

まどか「だっ、駄目だよ!そんな事したら、仁美ちゃん怪我しちゃうかも…」ヨロヨロ

さやか「じゃあどーすればいいってのよ!」ヨロヨロ

まどか「ええっと…待って!携帯でマミさんを…」サッ


パシッ


さやか「なっ!?」

まどか「あ…………」


中年男性「そんな物持ってちゃ、素晴らしい所へは行けないよ?だからこれは没収だぁ」

まどか「そっ…そんな、待って…!」

女子高生「あなたのもね」スッ

さやか「! 返せ!このっ!」ジタバタ


ゾロゾロゾロゾロゾロゾロ…


まどか「さやかちゃん……人が…人がいっぱい集まって…」グスッ

さやか「何よ、これ……」


仁美「それでは皆さん、参りましょうか」ニコッ

本当はこの後数レス続くのですが、眠気が限界の為、今日の所はこれにて…

申し訳ありません。

夕方の空き倉庫


まどか「さやかちゃん……」フルフル

さやか「ダメ、テレパシーが全然効かない…」

さやか「変な音は聞こえるんだけど…やっぱり練習とかしなきゃ出来ないのかな…」

まどか「! さやかちゃん!あの人の首筋!」ユビサシ

さやか「あれって……魔女の口づけってやつ?」

まどか「きっと、付いてないの私達だけだよ…」

さやか「じゃあやっぱり、これって魔女がやってるの!?」

中年男性「……………」ゴト…

さやか「なに? あのバケツ……」

まどか(? この臭いって……洗剤…?)


まどか「!!!」ハッ


仁美「さぁ、素晴らしい世界へ旅立ちましょう」スッ

さやか「!? なにしてんのよ仁美!」

まどか「だめぇ!!」ダッ

ガシッ タッタッタッタッ…

さやか「あっ!?」



仁美「いけませんわ鹿目さんったら。皆さん、あの子を捕えて殺して下さい」


さやか「!? ひっ、仁美!?あんた何てこと言ってんのよ!!」

「うあああああ…」ヨロヨロ

  「あああああぁぁ…」ヨロヨロ

さやか「! このっ!止まれえ!!」グイッグイッ

女子高生「うああぁあぁ…」ヨロヨロ

まどか「さやかちゃんも早くっ!! 急いでぇ!!」ガチャッ

さやか「え? う、うん!」ダッ

まどか「早くうっ!みんな来てるよぉ!!」グスッ

中年男性「ああああああ…」ガシッ
さやか「わあっ!!」ググッ

まどか「さやかちゃあん!!」ポロポロ

さやか「こんのぉ…っ! 放せぇ!!」ゲシッ

中年男性「あああ…」グラッ

さやか「だああああああああ!!」タッタッタッ


ガチャッ バタン カチッ

ドンドンドン ドン ドスン


さやか「はぁ、はぁ、はぁ…ま…間に合った…」

まどか「はぁっ、はぁっ、はぁ…ぐすっ はぁっ、はぁっ…」

さやか「そのバケツ…なんなの? 毒?」ハァハァ

まどか「!! ええいっ!!」ポイッ

ガシャーン

さやか「わっ!」

まどか「はぁ…はぁ…あ、危なかったあぁ…」ガックリ

さやか「意外と大胆な処理だね……」

ドンドンドン ドドン バンバン

さやか「なんて言ってる場合じゃない! まどか!なんかドア補強出来そうなのない!?」

まどか「けほっ……えっと…」キョロキョロ

さやか「よいしょっ…!」ゴトゴト

まどか「さやかちゃん、全然見当たらないよ…」

さやか「じゃあこのテレビ運ぶの手伝って!こいつでドア塞ぐから!」ズリズリ

まどか「うん…」


ヴ ン


まど・さや「!?」


ザーーーーーーーーーー…




さやか「なにコレ……なんで、テレビ…点いてんの…?」




ガシッ ガシッ

さやか「!? まどか!?」

まどか「さっ、さやかちゃ…」


ズルン



さやか「まどかあああああああああ!!!」

廃ビルの中に、一人の戦士が潜んでいた。


彼は常人の目をかい潜りながら、黒髪の少女を追い、機の到来を待った。
少女は戦士に気付かないまま走り、知らぬ内に戦士の真下を通り過ぎる。

天井にて彼女を見つめる戦士に与えられた任務は一つ。

その一つの為に、彼はグリーフシードの所持を特別に許されている。

ビュン


ドカァッ


ほむら「あぐぁあっ!!」



だが、投げた槍で少女の右足首を貫くのは、彼が承った任務における必須事項ではない。
箱の魔女のグリーフシードが孵化した時点で、彼には時間が与えられたのだ。
時間は有効に使わなければならない。
特に、自由という時間は。

戦士は跳躍して、少女の前に立つ。
少女はまだ転倒の途中で、変身する暇もない。

少女の黒髪が遅くなびく。
戦士には全てが遅く感じる。
一瞬で終わる高揚と恍惚を、少しでも長い時として認識していたいのだ。



ガシッ

ほむら「!」

ブチッ




戦士は餌を得た。

あとは獲物が掛かるのを待つのみだ。
ここまでやればもう安心。ヤツらはすぐに嗅ぎ付けてくれるから。

ただ獲物を待つ間、断ち切った少女を加工したい欲求を抑えるのは彼にとって苦痛だ。
下準備とは言え、うんざりするのだ。
名誉を前にお預けを喰らった気分を味わうのだから。

これは獲物が勝った時の為の戦利品でもある。

戦士は思う。
だがソウルジェムは無事だ。
少しくらいなら加工しても良いだろう。
勝ったのは俺なのだから。




プレデター「………………………」ガリガリ…ミチッミチッ…




彼は少女の身体を椅子がわりにして、少女の頭を器具で剥きながら待つ事にした。

強敵の出現を…


勇者の挑戦を…


しかし、苦痛は快楽と同様に終りがある。


ドスッ

戦士の右掌の甲に、木製の手投げ針が刺さる。
彼は作業を中断して、解体用のナイフを手放した。
少女の頭が地に落ちる。

プレデター「………………」


待ち侘びていた敵が現れたのだ。






リー「………………」クイッ





手招きだ。

戦士の左肩に装着されたプラズマキャスターが起動し、未知なる敵へ向け照準を合わせる。
戦士はゆっくりと立ち上がる。
この弾で終ってくれるなと思いながら。

  バヒュン!

発砲。

  ドガン!

命中。



リー「…………………」



しかし、破壊されたのは戦士の前方数メートル先にある天井だった。

狙いを逸らさせたのは、一瞬にして間合いを詰めた敵が放った右拳。
プラズマキャスターの銃口は、それにより歪んでいたのだった。


リー「ほあああああああああああああ!!!!!」


漢の咆哮と共に、戦士のヘルメットが飛んだ。

さやか「まどか!まどか!!返事してよ!!」

さやか「い、今助けるから!」ゴソゴソ サッ


シュバァッ

さやか(よし、変身はオッケー…結界の入り方は…)

さやか「…………」スー…ハー…

さやか「………………」フー…



さやか「でやあ!!」ブン


スパッ


さやか「!! ょ、よっし!開いた!」

ダッ


結界内部


さやか(わっ、わっ、ぁ、あたし飛んでる!?)

さやか(…っていより、浮いてるって感じかな……どうやって移動すればいいのよ…)

さやか「このっ!このっ!」ジタバタ

ヒュン

さやか(おっ)

ヒュン ヒュン

さやか(そうか!行きたい所に飛んで行けるんだ!)

さやか(あたしの魔法ってコレなんだ!)ヒュンヒュン

さやか(あっ!)ピタッ


使い魔1・2「」ググググ…

まどか「っ……っっ……!」ミリミリ

使い魔3・4「」ググググ…



さやか「やめろ!!」ヒュン


ズバズバッ!

使い魔1・2「」パラパラ…

さやか「まどかを…!」ヒュン ザクッ

使い魔3「!」パラパラ…

さやか「離せっ!」ヒュン ズバッ!

使い魔4「!」パラパラ…


まどか「?……さやかちゃん!?」

さやか「まどか!そこから動かないで!」

まどか「! うん……」


エリー「………」


さやか「やい魔女!それに使い魔!あんたらの相手はあたしだ!!」チャキッ

使い魔達「※※※※※※※」バッ


使い魔5「。><;%」シュッ

さやか「!」カキィン!

使い魔6「、♪・/。;」シュッ

さやか「ていっ!」ザシュッ


使い魔6「!」パラパラ…


さやか「やあっ!」スパッ

使い魔5「!」パラパラ…

さやか「捕まってちぎられるさちゃんじゃないよ!はぁ!」

ヒュンヒュンヒュン

ザザザザシュッ


使い魔達「!!」パラパラパラパラ…


さやか「まだまだぁ!!」バババッ!

ザシュザシュザシュッ!

使い魔達「」パラパラ……


エリー「!? !?」


さやか(よーし!残りは魔女だけ!)チャキッ

エリー「~~~~!!」

さやか「これで終わりだーーっ!!」ビュン!


ガキィン!




さやか「っ!!?」


まどか「!!!」






プレデター「………………」グググ…





ドカッ!


さやか「ぐはっ!?」


まどか「さやかちゃん!!!」


エリー「♪~」


弾丸のように飛び出したさやかが振り下ろした刃は、真っ直ぐに魔女を射抜くはずだった。

だが突如現れた巨人により進路を阻まれ、さやかは前蹴りによって元の位置まで押し戻されてしまった。

さやか「くうっ…!」チャキッ

再び剣を構えるも、脇腹に降って湧いた痛みに顔をしかめる。
手で押さえみると、肋骨が何本か折れているのが分かった。


さやか「なんなのよ…コイツ……」ハァハァ

痛みによるショックで霞む視界の中心に、巨人と、その陰に身を隠す魔女が映る。
まどかは口を両手で押さえ、涙を流す。
さやかはそんな彼女の顔を横目で確認した。

まどか「あ……あああ…!」フルフル

さやか「………………」ハァハァ

そして、巨人の正体を予想し、証拠足らずにもかかわらず一人確信した。


さやか「なるほどね……コイツがお化けだったんだ…」


緊張により、さやかが頬を引き攣らせる中、戦士は彼女達から背を向け…



ズン!

エリー「!!?」


魔女にリストブレイドを突き刺し…


さやか「えっ…?」



彼女の命を終わらせた。

結界は崩壊。地形は現世へと戻りゆく。
まどかとさやかは結界の入口へと戻された。
異形の戦士と共に。


さやか「嘘…でしょ………」



結界の入口があった場所は、彼女達二人が逃げ込んだ部屋の中。
窓はあるが、あくまで小さく、位置も高い。
ドアには鍵が掛けられ、物が乱雑に散らばっている『暗くて狭い』密室。

そんな場所で、さやかはたった一人、怯えるまどかを守りながら…


プレデター「………………」



この怪物と闘うのだ。

まどか「ひ…ひいぃ…!」ガタガタ

さやか「…………」フーッフーッ


数秒の静寂の後…




シャキン!

さやか「!!」ピクッ

怪物が槍を構えた。まどかが一瞬だけ悲鳴を上げる。

ブオン! ドカアッ!

怪物が右手で振った槍の矛先は、壁に深々と刺さった。

ガガガガガガガ!!

しかし怪物はそんな物は問題にせず、強引に壁を砕いて物品を吹き飛ばしながら槍を振り切った。

ドガン!!

さやか「ぐうっ!」

さやかは辛うじて防御に成功。
しかし着弾の瞬間、彼女の掌から感覚が消えた。
肘は痺れ、肩は軋み、両足が宙に浮く。

ブン!

さやか「!!!」

ドオン!!
さやか「ぬぐっ!!」

二発目は縦斬り。
これも防いだが、今度は腰と両足に電流のような痛みが走った。
肘は既に限界で、剣を握る指の間からは血が噴き出る。
しかし、さやかは剣を離さない。
ビュン!

怪物は身を引いて、右手に持つ槍の先端を、足元が覚束ないさやかの顔に向け突き出す。

さやか「っ!!!」バッ!

さやかはその槍を突進にて潜り抜けた。
そして怪物の鳩尾目掛け、全霊を込めた刺突を試みるも…


バキィッ!


怪物の放った左手による裏拳を左頬に食らい、宙を舞ったのちに全身を壁に打ち付けた。

ドズン!!! ボゴッ!

そして怪物はさやかに着地を許さなかった。
怪物はさやかのテンプル(側頭部)に全力で拳を叩き込み、次に前蹴りを彼女の横っ腹に突き刺して彼女を壁に固定し、逃走を防ぐ。
さやかの頭は裂傷により出血。更に衝撃によって思考を奪われた。

まどかの叫び声が部屋に響く。
腰が抜けてしまって、彼女はもはや立つ事も出来ない。

ドン!!

さやか「はっ! あっ……かっ…」ピクッ

まどか「いやああああああさやかちゃああああああああ!!!」


左肩に槍を打ち立てられ、さやかは再び思考力を取り戻した。
怪物の右手に、鎖骨と肩甲骨を砕いた感触が伝わる。
さやかは虫ピンを刺された昆虫のように、壁に縫い付けられてしまった。

彼女の血が、彼女の影を埋め尽くしてゆく。

>>395手直しです。



使い魔達「※※※※※※※」バッ


使い魔5「。><;%」シュッ

さやか「!」カキィン!

使い魔6「、♪・/。;」シュッ

さやか「ていっ!」ザシュッ


使い魔6「!」パラパラ…


さやか「やあっ!」スパッ

使い魔5「!」パラパラ…

さやか「捕まってちぎられるさやかちゃんじゃないよ!はぁ!」

ヒュンヒュンヒュン

ザザザザシュッ


使い魔達「!!」パラパラパラパラ…


さやか「まだまだぁ!!」バババッ!

ザシュザシュザシュッ!

使い魔達「」パラパラ……


エリー「!? !?」


さやか(よーし!残りは魔女だけ!)チャキッ

エリー「~~~~!!」

さやか「これで終わりだーーっ!!」ビュン!


ガキィン!




さやか「っ!!?」


まどか「!!!」






プレデター「………………」グググ…



ドカッ!


さやか「ぐはっ!?」


まどか「さやかちゃん!!!」


まどか「いやぁ!!いやぁああ!!さやかちゃん!!さやかちゃん!!!」ポロポロ

さやか「ま…ど、か………あたし、もう……」

まどか「さやかちゃん!!さやかちゃああ!!!」ポロポロ

さやか「だめみたい……」


ジャキン!


まどか「!!!!」

再びリストブレイドが輝いた。



ドッ




プレデター「………………」





さやかの下腹部へと向けられた刃は、彼女のソウルジェムに触れる寸前で動きを止めた。


さやか「まど……か………?」


まどか「ふぅぅっ…ふぅぅっ…ふぅぅっ…」ブルブル…



まどかの両手には回転箒が握られていた。
精一杯の勇気を振り絞り、友達を助けんとして怪物を殴打したのだ。
だが、怪物の背面にはかすり傷一つ無い。

プレデター「………………」

しかしどんなに無力でも闘志は闘志。


ボコッ

さやか「うあっ…!」ドサッ

左肩の激痛と共にさやかは解放された。
意識を強引に引き戻されたとはいえ、頭と腹部に浮けた打撃の影響は今だに強く、さやかは立ち上がるどころか、意識を保つのも満足に出来ないでいる。

さやか「まどか……だめ…逃げ、て……」


怪物がまどかの方へ振り向く。

まどかの呼吸は急速に早まり、すぐさま不規則なリズムを刻みはじめ、合間に嗚咽を混ぜるようになった。

怪物が歩き出す。

まどかは尻餅をついた。

さやか「やめ…ろ……!」グ…

一刻も早く立ち上がろうとさやかは足掻く。

さやか「やめろっ…! やめろ!」ググッ

ソウルジェムから魔力が溢れ始め、さやかの身体に活力を吹き込んでいく。
さやかは無自覚のまま固有魔法を行使していた。

ガッ

まどか「はぐっ…」

胸倉を掴み上げられたまどかの足が、床から離れた。


さやか「うわあああああああああああ!!!」


それを見たさやかのソウルジェムから、強力な魔力が解放された。
出血は止まり、負傷部は瞬時にして再生。
身体の麻痺も消えて、全身に力がみなぎった。

そしてその力がさやかの手に刃を握らせ、両足を跳ねさせた。


ドスッ

プレデター「ゴオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!!」


さやかは怪物の背中に剣を突き刺し、怯んだ怪物からまどかを取り上げて…

ドガッ!

ドアを体当たりで突き壊して逃げていった。



プレデター「………………」ゴルルルルル…



戦士は二人を追わなかった。
追えなかったのではない。

任務が完了したのだ。





背中に刺さった剣を引き抜くと、戦士はそれをぞんざいに放り投げ、姿を消した。


廃ビルの中


ドガッ!バキィッ!ガコッ!

戦士のテンプル、首筋、喉の順に、世にも恐ろしい威力を秘めた凶拳が次々に激突した。
特殊な合金で出来たヘルメットは一発目で飛び散り、プラズマキャスターは二発目で粉々になっり、三発目は200キロを超える巨体を浮き上がらせた。

リー「あああああああああああ!!!!!」バヒュッ

漢は戦士にトドメを刺すべく跳び上がり…

ズバン!!

跳び回し蹴りを、剥き出しになった戦士の顔面にぶち込んだ。
ぶち込まれた側は、コマのように回転しながら舞い上がり、暴走する放水ホースが如き様相で辺りに血をばら撒いた。


ドウン


異形の戦士が地に付す。

漢は追い打ちなど無用と判断して踵を返し、少女の亡きがらへと歩み寄った。


リー「……………………」


頭と身体を分断された遺体。
彼女の右足首には槍が刺さり、頭からは頭皮が消えている。

リー「…………」チャリ…

遠心力によって、怪物から離れた紫色の宝石。
漢はそれを拾うと、彼女の足首から槍を抜き取り、引きはがされた頭皮を彼女の頭に被せ、次に彼女の頭と身体をくっつけると、彼女の胸元に宝石を当てた。


リー「………………」



少女の身体は澄んだ紫色の光に包まれた。

十数秒か経ち、光が弱まってやがて消える頃には…



ほむら「…………」スー…スー…



少女の身体は元の美しさを取り戻していた。

漢は彼女を無理に起こそうとはせず、彼女が目覚めるのを待つ事にした。

廃ビルの中


ドガッ!バキィッ!ガコッ!

戦士のテンプル、首筋、喉の順に、世にも恐ろしい威力を秘めた凶拳が次々に激突した。
特殊な合金で出来たヘルメットは一発目で飛び散り、プラズマキャスターは二発目で粉々になり、三発目は200キロを超える巨体を浮き上がらせた。

リー「あああああああああああ!!!!!」バヒュッ

漢は戦士にトドメを刺すべく跳び上がり…

ズバン!!

跳び回し蹴りを、剥き出しになった戦士の顔面にぶち込んだ。
ぶち込まれた側は、コマのように回転しながら舞い上がり、暴走する放水ホースが如き様相で辺りに血をばら撒いた。


ドウン


異形の戦士が地に付す。

漢は追い打ちなど無用と判断して踵を返し、少女の亡きがらへと歩み寄った。


リー「……………………」


頭と身体を分断された遺体。
彼女の右足首には槍が刺さり、頭からは頭皮が消えている。

リー「…………」チャリ…

遠心力によって、怪物から離れた紫色の宝石。
漢はそれを拾うと、彼女の足首から槍を抜き取り、引きはがされた頭皮を彼女の頭に被せ、次に彼女の頭と身体をくっつけると、彼女の胸元に宝石を当てた。


リー「………………」



少女の身体は澄んだ紫色の光に包まれた。

十数秒か経ち、光が弱まってやがて消える頃には…



ほむら「…………」スー…スー…



少女の身体は元の美しさを取り戻していた。

漢は彼女を無理に起こそうとはせず、彼女が目覚めるのを待つ事にした。



ビュン!

リー「!」

バシッ!


突然飛んできた槍を反射神経のみで捌く。
使ったのは中段回し蹴りだ。


プレデター「…………」ヌウウゥゥ…


吐血程度で倒したと思うな。

戦士はそう言いたげにニヤついていた。

通常の人間が相手ならば、一発で五人は殺せるくらいのキックだった。
しかし彼に対しては致命傷になり得ないようだ。
戦士の顔には、袈裟掛けに斬られたような傷がある。

リー「……………」スッ

漢は眠る少女を抱えて、座禅を組んだ。



その漢の態度を見て、戦士は顔をしかめる。

偽るな。
本質は違う。
騙されはしないぞ。
何故戦わない。
嘘をつくな!

戦士の心が沸々と煮えたぎる。


リー「……………………」


だが漢は動かない。



プレデター「ヴォ゙ア゙!!!!!」

ほむら「!!」ピクッ



戦士はリストブレイドを漢に向け、怒りの声を上げた。

ほむらはその声に驚いて、身体を少し跳ね上げて目覚めた。

ほむら「………?…」

リー「……………」

ほむら「……貴方は…」
リー「待て。静かに」

ほむら「?」


目が覚めたほむらには、今何が起きているのか分からなかった。

足首に鋭い痛みを感じた瞬間、視界が目まぐるしく動き回り、気付けば、見知らぬ男に抱えられている。
男が何者で、何故自分は普通に喋ってはいけないのかも分からなかった。

リー「あれを見てみろ」ヒソヒソ

ほむら「?…」チラッ

リー「いや待て」サッ

ほむら「あっ」

リー「俺の手が君の目から離れても、動いてはいけない。叫び声も上げるな」ヒソヒソ

ほむら「ぇ…ええ」

リー「……………」サッ




プレデター「…………………」カカカカカ…



ほむら「!!?」



リー「…………………」

ほむら「………………」


異質な怪物が、ほむらの霞みがかった思考に衝撃を与えた。
始めて魔女を見た時と同じ恐怖が心に甦り、少女は目を見開いた。

それは2メートルを大きく越える長身で、鋼鉄と見紛う筋肉に覆われ、更には原始的にも見える形状の鎧を纏っている。

正体不明だが、魔女では決してなかった。



ほむら「…………あれは、何?」

リー「俺の国では血士と呼ばれている。強者を求めて星々を渡り歩く鬼だ」ヒソヒソ

ほむら(星々を…………渡り歩くって、まさか…!)

ほむら「宇宙…人…?」

リー「そうだ」


プレデター「………」ピクッ


リー「! 静かに」サッ

ほむら「っ……」


プレデター「………………」グルルル…


リー・ほむ「………………」


プレデター「………………」キュイイイイ…

ほむら「!!」


イイイイイィィン………




リー「……消えたか。何か用事でも出来たか」

ほむら「…………………」ウル…

リー「怖がることは無い。もう安心だ」

ほむら「まどか…」

リー「?」

ほむら(なんで…なんであんな物が出てくるのよ…)

ほむら(今までこんな事……インキュベーターだけでも、もううんざりなのに…)


ほむら(何度も時間を戻して、その度に状況が悪化するのは分かってた…)

ほむら(初めの頃は美樹さやかも魔法少女にならなかった…佐倉杏子とも、巴マミとも上手くやっていけてた…)

リー(!)ハッ

ほむら(それがいつからかおかしくなって…あんな怪物まで…)

ほむら(これじゃいつまで経っても、何度繰り返しても、結局私は……)


ドスッ


ほむら「うっ…」ガクッ

リー「……………」



音は耳。香りは鼻。味は口。世界は目。

魂が外界からの刺激を受けるには、肉体という中継地点が必要不可欠であり、それが無い魂には何も伝わらず、また、何も生まれない。
よって中継地点の根幹たる脳を止めれば、希望も、絶望も、思考も、魂にはもたらされはしない。

漢は知っていた。
だから少女の首筋に手刀を入れたのだ。

彼の知識の出所は、皮肉にもかつて見たあの資料だった。


リー「………………」


少女のソウルジェムの濁りを止めたのは良い。
それは良いが、いつまでもこうしてはいられない。

だからと言って携帯電話を使う訳にもいかない。
そもそも、リーは携帯を所持していないのだから。

リー「…………」スッ タッタッタッ…


仕方が無いので、漢は知人を訪ねる事にした。
少女を抱えての突然な訪問になってしまうが、運が悪かったと思ってもらうしかない」

空き倉庫



ヒトミチャン!


(…? 誰?)

ヒトミチャン! ヒトミチャン!!

(…………まどかさん?)パチッ


まどか「!! さやかちゃん来て!仁美ちゃん起きたよ!」

仁美「起きた? ……私、眠ってていたのですか?」

さやか「仁美!!大丈夫!? あたし達の事分かる!?」ガシッ

仁美「ぇ…ええ、分かりますわ。……あの、これは何事ですか?」

さやか「よかった…ほんとよかった…」ウルウル

仁美「?」

まどか「うわあああああああああん」ポロポロ

仁美(……私、何かしてしまったのでしょうか…お二人にこんなに心配を掛けさせてしまうなんて…)

仁美(周りに倒れている方もいますし…何かの事故が起きたのかもしれませんわね)


さやか「あっ…仁美?」

仁美「っ、はい」

さやか「変な事くけどさ…なんか、変なの見なかった?お化けっていうか、怪人っていうか……」

仁美「怪人? 存じておりませんけれど…」

さやか「そっか……うん、そうだよね。ごめん」

仁美「あの…それより、先程から気になっていたのですけれど、この方達は何故倒れているのですか?」

さやか「! あー…これね。えーっ、と……」


一般人達「」グッタリ


さやか「よく、わかんない……あたし達が来た時には、もうこうなってたんだよね……」

仁美「そうですか……」

まどか「うああああああああああん」ポロポロ

仁美「ごめんなさいまどかさん。心配をおかけしてしまいまして」

まどか「うう…ぇぐっ……ふぇえええぇ」ポロポロ



マミ「……………」スタスタ…


さやか「マミさん、どうでしたか?」

マミ「美樹さん、ちょっと来てもらえないかしら?」

さやか「仁美、まどか、ちょっと待ってて。すぐ戻るから」タタタ…

仁美「? あのお方は?」

まどか「えっ、えっとね……ぐすっ マミさんって、言って、私達の先輩なの…」ゴシゴシ




マミ(怪しい人影は見なかったわ。ソウルジェムにも反応無しね)

さやか(そうですか… すみません、パトロールの途中だったのに……)

マミ(気にしないで。大切な後輩を守るのも、先輩の勤めですもの)フフッ

マミ(…それより、ソウルジェムの方は大丈夫?話を聞いた限りだと、かなりの苦戦を強いられてたみたいじゃない?)

さやか(えっ……あ!ほんとに黒ずんでる!ええっと、グリーフシードをくっつけるんでしたよね)サッ


シュワアアア


さやか「はぁ……」

マミ(テレパシーの不調に、魔女との戦いに、謎の怪物……前の二つは私達で対処出来そうだからいいけれど、問題は怪物ね)

さやか(そうですね……)

マミ(私は今から怪物について調べてみるわ。貴女達は警察に電話して、ここに来てもらうように言って)

さやか(ぅ……はぃ……)

マミ(どうしたの?)

さやか(いえ……正直、早く家に帰って寝たいなーって……)

マミ(駄目よ。気持ちは分かるけど、まだ意識が戻ってない人達もいるのよ? このまま放っておくのは良くないわ)

さやか(はい……)

マミ(魔女や怪物の気配を感じたら、この次からはテレパシーじゃなくて電話で連絡してね? すぐ駆け付けるから)

さやか(わかりました。すみません、ホントに……)

マミ(いいのよ。……それじゃあ、また明日ね美樹さん。)ニコッ


マミ「鹿目さんも、また明日ね」ニコッ

まどか「あっ…はっ、はい」


スタスタ…




さやか(マミさんに頼りっぱなしだ、あたし………こんなんで、これからやって行けるのかな……)


仁美「さやかさん?」

さやか「ん、なに?」

仁美「あの……マミさん、でしたよね? 失礼を承知でお尋ねするのですけれど…あの方と、何について話されていたのですか?」

さやか「あ~…ちゃんと警察呼んで、事情聴取受けなさいって……まぁ、そんな話かな」

まどホーム


ガチャッ


詢子「たっだいまー」

和久「ただいまー。ほらタツヤ、ただいまは?」

タツヤ「たあいまー!」テテテ…


まどか「ただいま……」


タツヤ「わー!」ピョンピョン

和久「おっと、こーらっ駄目じゃないか。怪我しちゃうよ?」

詢子「よっこいしょ。……まどかもとんでもない目に遭ったねえ。警察から会社に電話が入った時は、ちょっとは覚悟しておいた方がいいかなって思ったよ。」

和久「はい」コトッ

詢子「ん、ありがとっ」グビッ


まどか「…ごめんなさい…」


詢子「謝るもんじゃないよ。友達を助ける為だったんだろ?目の前にぶっ倒れてる知り合いがいたら、アタシだって助けに行くよ」

詢子「それに、おかげで連日のタルい接待に付き合わなくて済んだしね」フフッ

まどか「………………」

詢子「まぁそれは冗談にしても………? まどか?」

まどか「! なに?」

詢子「顔色悪いけど、向こうで他に何かあったのか?」

まどか「え……な、ない、けど…」

詢子「ほんとか?」

まどか「うん」

詢子「ん~…………まどかが無いって言うんなら、本当に何も無いんだろうけどさ。相談したい事があったらいつでも言いなよ?」グビッ

まどか「うん……」


和久「さて、ちょっと早いけど晩御飯にしようか。三日ぶりに皆そろったから、今日は少し豪勢にするよ」ニコ

詢子「おお!いいじゃーん!楽しみ~」ニー

タツヤ「み~」ニパー



まどか「…………………」





詢子「ふい~食った食った!やっぱりムサい接待メシよりこっちの方が断然おいしいよ。なータツヤ?」

タツヤ「おいひかったー」ニコニコ

和久「ふふ、どういたしまして」


スタスタ…


詢子「?」

タツヤ「……まろかー?」


ガチャッ  バタン




詢子「うわ~…まどかの奴、本当に大丈夫なのか?」

和久「しょうがないよ。まどかは優しい分、ああいう事件とか事故とかには弱いだろうから……」

詢子「う~~ん、下手に元気過ぎるよりはいいかもしんないけど、あの子のこういう所は心配だねぇ……」

タツヤ「まろかー?ねーまろかはー?」

和久「うーん……お姉ちゃん、ちょっと眠いんだってさ」

タツヤ「ねういのー?」




詢子(………本当に大丈夫なんだろうね、まどか…)




まどルーム


まどか「う……ぅ…ぐすっ…」


リビングから逃げるように立ち去り、まどかは自分の部屋に入って、誰も部屋に入れないようにドアにもたれ掛かった。

両親と弟には、魔法少女…延いては怪物の存在を知られてはいけないと思った。

あんな危険な戦いに家族を巻き込んではいけない。
知らない方が良い事だってある。

それに、何かに触れているという感触が無いと、再び恐怖が忍び寄って来るかもしれない。
そんな怯えもあった。





まどか(ほむらちゃん……佐倉さん…っ)ポロポロ


まどか(変わらないなんて……魔法少女に、なるなって……っ……そんなの、無理だよ……出来ないよ……)ポロポロ


まどか(私だって戦いたいよ……もう、さやかちゃんも…仁美ちゃんも……誰も…あんな、目に…遭わせたくない…)ポロポロ


まどか(でも……でも、私…怖い………戦うのが、すごく怖くて…何も……何も、出来なくなって……)ポロポロ



まどか「もうやだぁ………もうやだよぉ…こんなの……」ポロポロ











夜の病院



カチッ カラカラカラ…



さやか(うわ本当に窓開けれちゃったよ……魔法って犯罪だぁ…)ヒョコッ


さやか(夜這い少女さやかちゃん!ただいま参上!なんつってね)スタッ

さやか(どーれ、恭介君の左手は治っているのかなー?)

さやか(……って、見ただけで分かるわけないか)

さやか(ん?)


恭介「………………」スー…スー…


さやか「恭介…」







ベッドで眠る幼なじみは、掛け布団の上に両手を乗せていた。

その両手に、ヴァイオリンと弓を大切そうに握りしめて。



さやか(……治ったんだ、左手……)

さやか(ヴァイオリン持ったまま寝るなんて、古典的だよ?ほんとに)フフッ


恭介「………」スー…スー…


さやか(そんなに喜んでくれるなら、もっと早く契約すればよかったな……)







さやか「ねえ、恭介……聞こえてる?」





さやか「…………………」








さやか「あたし、頑張るから」



さやか「本当はすっごく怖いけど……………あたし…何が来たって、絶対負けないから」




さやか「…………………」







さやか「えっと……じゃあね、恭介」スタスタ 













      カラカラ…  カチッ




申し訳ありませんが、用事が出来たので一時中断します。
やっと書き込めるようになったのに…

夜には再開したいです!

さやか「あー緊張した……本当に聞こえてたら、さっきのヤバいよね」

さやか(恭介も、まどかも、仁美も、みんな魔法少女さやかちゃんが守りまくっちゃいますからね!)フフン




?「なるほどねー……こういう訳だったんだ」



さやか「!? 誰!」クルッ

杏子「よう!」ニッ

さやか「!……あんたは…!」

杏子「一回アタシに助けられてんのに、なんだよその目は。ひっでぇヤツ~」

さやか「っ……」

杏子「ま、別にいーけど。 で、どうだい?魔法少女になった気分は」

さやか「…なんであんたがその事知ってんのよ」

杏子「そりゃアンタ、隣の部屋で契約結ばれて気付かないわけないじゃん。アタシは魔法少女だよ?ソウルジェムが感知するんだよ」

さやか「隣の部屋……?」

杏子「ハッ、マミの奴言って無かったのか。 アタシ、今マミん家の隣の部屋に住んでんだよね。色々あったお陰で」

さやか「………いつから、つけてたの?」

杏子「アンタが病院の壁登ってる時からさ。派手にピョンピョン跳んで、ろくに使えもしない魔力を撒き散らしてりゃ、バカでも気付くってもんだ」

さやか「……………………」

杏子「あーあ……どんな下らない願いをしたのか確かめに来てみたら、あんな間抜け面見せられるなんてねー。『あたし、頑張るから』……だったよね?」フフ

さやか「……うるさい」

杏子「は?」

さやか「うるさいって言ってんのよ。あたしの願いは、あんたとは関係ない」

杏子「ああ関係ない。だけど関係ないアタシでもすぐ分かったよ」


杏子「アンタ…やっぱ救い様の無いバカだ」ヘラッ


さやか「!? なっ…なんであたしがバカなのよ!」

杏子「ここは病院で、アンタはそっから出て来た。 大方、ここに友達だの彼氏だのが入院してて、アンタはそいつを治すために契約したクチだろ? ほんっと、くっだらねぇ事に願いを使ったもんだよな」アハハ

さやか「………下らなくなんか無い…!」

杏子「下らねえよ」

さやか「違う!! 恭介がどれだけ苦しい思いをしてたか、これっぽっちも知らないくせに!! 口出ししないでよ!!」

杏子「じゃあ手なら出してもいいんだね?」

さやか「!っ……」



杏子「他人の為に魔法少女になる事がどういう事か……お前、分かってねーよ」





杏子「面貸しな」






橋の上



杏子「ここら辺、下に車は通ってるけど、人はほとんど来ないんだよね。特に夜は誰も来やしない」

さやか「…………………」

杏子「ずっと黙ってるけどさぁ……それって準備出来たって事でいいんだよね?」

さやか「うるさい。やるならさっさとしなさいよ」

杏子「あははっ、いいんだね」スッ


シュバァッ


さやか「……………」スッ


シュバァッ




さやか「…………………」チャキッ


杏子「アンタのソウルジェムは今日ぶっ壊れる。悪いけど、早くも戦い納めだよ」ニッ


さやか(そんな事、させないっ…!)ジリッ



杏子「…………………」チャキッ






さやか「はあっ!!」ダッ



杏子「…………」ブン!



?「そこまでだ」ガシッ

さやか「?」

杏子「!?」



シュワ「………………」グググ…



さやか(えっ……この人、確か…お見舞いの時の……外人さん?)

さやか(な、なに? わけわかんないよ……)


杏子「はっ、離せ!止めんじゃねぇ!」ググ…

シュワ「無理だ」グッ…

バキン

杏子「!!?」

さやか「えっ」


セガール「槍の矛先なんて物はな、以外と折れやすいもんだ」スタスタ


シュワ「………………」パキパキ…

杏子(コイツ……素手で…)


セガール「よぉさやかちゃん。元気そうでなによりだ」

さやか「セガール…さん?」

セガール「夜遅くにこんな所まで呼び出しちゃって。お前この子に何するつもりだったんだ?」

杏子「ぅ、うるせー!!」

セガール「うるさかねぇ。 先に言っとくがな、今のお前は反論出来る立場じゃない。それに俺も反論を許すつもりは無い。質問したいなら言え。それ以外なら黙ってろ」

杏子「アンタなぁ…いきなり出て来てそんな事…」

セガール「それ以外なら黙ってろって言ったはずだ。二度も言わせんじゃねぇ」

杏子「っ……」

セガール「…………………」

杏子「…………くそっ……いいよ、もう…」

セガール「……………………」


杏子「…………………なんで気付いたんだよ」


セガール「足を痙る原因は、主に運動不足とビタミン不足の二つが挙げられる。だが、お前みたいに魔女を狩る為に日夜奔走する魔法少女に、運動不足は有り得ない」

セガール「そしてビタミンの不足も有り得ない。 何故なら、お前の食事を作っている俺は『元海兵隊所属のコック』だからだ。 完璧な栄養バランスで兵士達をサポートし続け幾星霜、ビタミンを蔑ろにした日は無い。 よって、お前が足を痙ったってのはウソだ」

セガール「次に、お前が急に自分のソウルジェムに目を向け…………まぁいいか。バレちまった今、長々と言う事もねえな」


杏子「…………………」


セガール「何がしたかったのかは知らないが、互いに変身してしかも武器を構えたとあっちゃあ、止めるしかないだろ」

杏子「余計な事……すんじゃねえよ……」

セガール「おい、俺が言った事が聞こえなかったのか?」

杏子「うるせえ!!コイツに魔法少女なんて無理なんだよ!!」

さやか「!」

セガール「………………」


杏子「正義の味方気取ってアホ面さらして、自分がやった事にどんな結果がついて来るかも録に考えねぇ…!」


杏子「そんなバカな奴に魔法少女なんて絶対やらせねー!! バカが契約したって誰も幸せになんかならないんだよ!! 契約した奴も! そいつの周りも! みんな結局……!」

セガール「………………」

杏子「結局っ………っ……」ゴシッ


さやか「………………」



杏子「……だから、アタシはそいつをブチのめさなきゃならないんだ。……そいつのソウルジェムをぶっ壊して、魔法少女になんか一生なれなくしてやるんだよ!!」

シュワ「!?」

セガール(危ねえ……本当にぎりぎり間に合っ…)

スタッ



QB「どうやら間に合ったみたいだね。危なかった」



杏子「!」

セガール(いや、こいつはまずい)

さやか「キュゥべえ…? なんであんたが?」

QB「魔法少女になってまだ日が浅い君が、上手く魔法を使いこなせているか、心配になって来てみたんだ」

QB「本当に危なかったよ。何せ、君があと少しで杏子に殺される所だったんだからね」

さやか「!! やっぱりあんた…!」チャキッ

杏子「殺しはしねーよ…痛めつけるだけだ。………ソウルジェムはオシャカにするけどな



シュワ「セガール。ここはインキュベーターを殺すべきだ」ヒソヒソ

セガール「無駄だ。殺した所で、次のヤツが真実を告げに現れる。どうやら先に王手を切られたようだ」ヒソヒソ





QB「それがまずいんだよ杏子。体の方は再生が利くけれど、君達の魂であるソウルジェムは、一度壊れたが最後、もう二度と再生しないんだよ?」


さやか「!!?」


杏子「ソウルジェムが………魂……!?」




セガール(やられた……)



さやか「なに、それ………あたし…そんなの、聞いてないよ……」

QB「聞かれなかったからね」

さやか「そんな………なんで…!? なんで言ってくれなかったの!?」

QB「不満なのかい?僕としては、魔女との戦闘に耐え得る身体を提供したつもりだよ? 魔力さえあれば、どんな損傷を負っても修復出来るし、戦闘に邪魔な痛覚だって遮断出来る」


杏子「ふざけんじゃねえ!! それじゃあアタシ達、ゾンビにされた様なもんじゃねえか!!」


QB「そこで怒る意味が僕には分からないよ。今になって怒るのなら、何故契約する前に契約内容を確認しなかったんだい? 『聞きたい事があったら何でも言ってほしい』って、質問を受ける時間は十分に設けたはずだ。 君達の情報処理能力の不確かさを、僕のせいにしないでもらいたいな」

杏子「!っ……」

QB「それに、僕は君達のその不確かさを補うため、説明時に『魂』を意味する単語をジェムに付けてたじゃないか。君達にとって、魂という存在はとても重要らしいから、質問が出やすいようにね」

杏子「なんだよそれ!! だったらなんで初めから言わねえんだよ!!!」

QB「質問した上で内容を理解し、契約に成否を出すのが君達の権利だからさ。それを否定して契約を推し進めるのは、君達の社会では不正行為に値するんだろう?」

杏子「……てっ、めぇっ!!」


さやか「嘘よ………こんなの…酷い……」


QB「さやか。僕は嘘を言ったりはしないよ。騙して契約を成立させるのは、それこそさっき言った不正行為そのものだからね」

QB「この契約に落ち度を感じたとしたら、その落ち度は僕にではなく君に…」

ガシッ


QB「!」ギュウウウ…



シュワ「それ以上余計な事を言うと口を縫い合わすぞ」



セガール「…………………」


QB「余計な事ではないと思うな。僕はあくまで…」

シュワ「みんな先に帰っててくれ。俺はコイツに用がある」スタスタ…

QB「どこに連れていくつも…」モゴッ


スタスタ…



セガール「………………」

杏子「…………………」



さやか「ひっく………うぅっ…くっ…」



セガール「……帰るぞ杏子」


杏子「…………………」


セガール「今夜は冷える」


杏子「……………畜生……」



さやか「どうして……どうしてぇ………っ」ポロポロ



セガール「…………………」


杏子「…………………」


セガール「さやかちゃん、君もどうだ?こんな時間だし、家からこっそり抜け出して来たとかだろ?」

さやかちゃん「恭介ぇっ……恭介ぇぇ…っ」ポロポロ

セガール(……どころじゃねえ、か…)

杏子「…………………」



杏子「っ………」グイッ

さやか「んぅ…っく……っ」タタッ

杏子「…行くぞ…」スタスタ


さやか「……………」グスッ スタスタ




セガール「…………………」




夜のセガホーム


セガール「………………」モグモグ


杏子「………………」モグ…


さやか「…………………」


モモ「………ぉ、お姉ちゃん」

杏子「ん……」

モモ「これ、あげるね…」ポトッ

杏子「……うん」



モモ「………………」チョンチョン


さやか「…………………」


モモ「………………」チョン…


さやか「……なによ」


モモ「えっ、あのぅ……これ……」


さやか「…………………」


モモ「……………」ポトッ


さやか「………………ごめん…」



ガタッ



セガール「ん? もういいのか?」


モモ「うん。モモ、もうお腹いっぱいだから」エヘヘ


モモ「モモのご飯、みんなにあげるね」ニコッ



スタタタ…   ガチャッ バタン



杏子「………セガール」

セガール「ん」

杏子「アンタ…魔法少女について詳しかったよね…」

セガール「ああ」

杏子「…なんで教えてくれなかったんだよ…」


セガール「すまない」


杏子「…………………」


さやか「…………………」

杏子「………食わないのか、それ」

さやか「…………………」

杏子「……もらうよ」


さやか「……………………」



杏子「…………………」ガツガツ


さやか「………………」



杏子「……………………」ウル…  ガツガツ


さやか「………………」


杏子「っ………っ…っ!……っ」ガツガツガツ




あんルーム


ガチャッ バタン


杏子「………………」バサッ

さやか「………………」

杏子「さやかって言ったよね。アンタ、いつまで突っ立ってるつもりさ」

さやか「…………………」

杏子「アタシは布団で寝るから、アンタはベッド使いな」ポンポン

さやか「……………なんでわざわざ、布団敷くのよ…」

杏子「勘違いすんな。アタシがベッド嫌いってだけだ」ゴソゴソ


さやか「……………………」ボフ…



杏子「ああ…そうだ。電気……」ガバッ スタスタ…




パチッ







杏子「…………」ゴソゴソ

さやか「………………」

杏子「………………」


さやか「…………あの子…」


杏子「ん」

さやか「あの子…あんたの妹?」

杏子「ああ、モモって言うんだ」

さやか「そう…」

杏子「…………………」

さやか「………………」

杏子「…………………」


さやか「…ごめん。……今まであんた、ずっと止めてたのに…」

杏子「……………………」

さやか「あたし………自業自得だよね……」


杏子「…まぁ……そうだね…」

さやか「………………」

杏子「でも、それはアタシも同じさ。 今更言う話じゃないけど」

さやか「…切り替え、早いね……」

杏子「切り替えちゃいない。 正直…ショック受けてる」


杏子「でも……メシ食ってる時、思ったんだ。 ゾンビだろうがなんだろうが、アタシはアタシだって」


さやか「…………………」


杏子「味も香りも感じる。 キュゥべえのヤツにブチ切れて、アンタに同情だって出来た」


さやか「……………………」


杏子「これだけ出来れば、別になんだっていいやって……『アタシは人間だ』って、胸張って言える気がするんだ」


さやか「……………ねえ、あんたは…」

杏子「杏子」

さやか「っ……」

杏子「人の事、散々アンタ呼ばわりしてるけど…アンタって呼ばれるの、嫌なんだ。………良い思い出、ないから」

さやか「……………杏子は…どんな願いで魔法少女になったの?」

杏子「ん…ん~………」

さやか「………………」


杏子「ちょっと暗い話になるから、今はやめとく」

さやか「……そっか……」

杏子「………もう寝るよ。眠くなってきた」

さやか「うん…おやすみ」

杏子「んー……」



杏子「あ……ちょっといいか」



さやか「なに?」



杏子「アンタ……いや、さやかはゾンビじゃないよ」



さやか「!っ」



杏子「おやすみ……」




さやか「……………………」





杏子「……………」







リー(ふぅ、やっと着いた)

ドンドンドン

リー「居るんだろ?開けてくれ」ドンドンドン

ドア<誰もいないよ!

リー「おい早くしろ!大変なんだ!」ドンドンドン

ドア<こっちも大変なの! こんな夜中に来ないでくれ!

リー「子供が倒れてたんだ」


ガチャッ





ジャッキー「それホント!?」




リー「この子だ」


ほむら「…………」スー…スー…


ジャッキー「あ~可哀相に……また誰かに捨てられた子なのか?」

リー「いや違う」

バタン

リー「おい、なんで閉めるんだ」

ジャッキー「帰ってくれ!ウチは不良、ヤクザ、ヤンキーはお断り! 家出娘もだ! こんなにスカートを短くして!孤児院はたまり場じゃないんだぞ!」

リー「魔法少女だ」


ジャッキー「!!」ガチャッ


リー「…………………」



ジャッキー「ホント?」

リー「俺は嘘が苦手だ」

ジャッキー「……………………」



ジャッキー(長い黒髪に、黒のスパッツ、それと……なんだっけカチューシャか! この特徴は間違いないな)




ジャッキー「よし分かった。さ、入ってくれ」

夜の孤児院


リー「!」

ジャッキー「この子で良かったのかい?」

ほむら「…………」スー…スー…


ステイサム「ああその子だ。で、アンタは何なんだ?」


リー「…………………」


ジャッキー「あ! この人は僕の先輩で、名前はブルース・リー。流派は…」

ステイサム「ああそうか、アンタが例の……」

ジャッキー「!! ぼ、僕の首の話はしないでくれ!トラウマなんだよ!」

ステイサム「…………」フフ…


リー「ブルース・リーだ。よろしく」サッ


ステイサム「ジェイソン・ステイサムだ。運び屋をやってる。よろしくな」ギュッ


!っ…眩しい…っ

今度は何…っ?




ほむら「っ……………」ムクッ


ほむら(あのビルに明かりなんて無かったはず………いえ、ここは別の場所ね)

ほむら(……今度は、違う男に連れてこられたのね…)


ステイサム「おはよう」


ほむら「!?」クルッ

ステイサム「ひどい災難にあったらしいな」

ほむら「貴方は……何故…いえ、ここは何処なの?」

ジャッキー「ここは僕が管理する孤児院だ」


ほむら(また知らない男が……)


ジャッキー「と言っても、死んだ僕の老師が遺した少林寺を、恵まれない子供達の住まいにしようと無理矢理改装したから、色々ガタが来てるけど…」

ゆま「せんせぇ~…」トテトテ

ほむら(あの子は……)


ジャッキー「ああごめん! うるさかったかい?」

ゆま「ううん、トイレ…」

ジャッキー「あ、なんだ。よし、じゃあ先生と…」

あすみ「すみません先生。私が連れていきます。ゆま、こっちだよ」スタスタ

ほむら「!?」

ゆま「んうぅ~…」テッテッテ…


リー「また増えてるな」

ジャッキー「あの子は『神名あすみ』って子で、僕が引き取った子だ。まだ部屋を用意してやれないのが残念だけど、同じ部屋のゆまちゃんにとっては、お姉ちゃんみたいな子だね」

ほむら「………………………」



ステイサム「さてと、そろそろ取引の話をしよう」

ジャッキー(え? 取引?)

ほむら「?………あっ」


ほむら(忘れていたわ………取引場所の下見で、あのビルに言ったんだったわね)


ほむら「ええ、始めましょう」

ほむら「でも、その前に質問があるわ。私がここにいる理由は大体分かるけれど、貴方がどうやって先回りをしたのか教えて」

ステイサム「発信機だ。君の制服のリボンの中に入ってる」

ほむら「っ!?」

ステイサム「セガールに付けられてるのさ」

ほむら「…………」ゴソゴソ


スポッ


ほむら「……いつ、こんな物を…」

ステイサム「それの信号を追いながら進路を予測したら、ここに辿り着いたんだ。 もちろん、運び屋なんて言うと入れないから、身分を偽ってな」

ジャッキー「!? じゃああんた、人権保護団体からのボランティアって言うのは……!」

ステイサム「出任せだ」

ジャッキー「…………………」

ほむら「…………………」


ステイサム「じゃあ、この領収書にサインを頼む。今回も悪いが、不良品しか用意出来なかった」サッ


ほむら「…………………」



ステイサム「……?」


ほむら「貴方……何の為に、私にこんな事をするの?」

ステイサム「そういう商売だからだ」

ほむら「いえ違う。こんなやり方で利益を得る商売なんて、私は知らないわ」

ステイサム「子供の君には分からないさ。詮索はいけない」


ほむら「貴方が何者なのかはどうでもいい。でも、貴方が私に武器を無制限で提供する理由を、私は知りたいだけ」


ステイサム「……………………」

ほむら「答えないのなら、私に手を出すのもこれっきりよ。二度と会わないように努力させてもらうわ」


ステイサム「……………………」フフ



ステイサム「…………リー」

リー「なんだ」

ステイサム「あんたとは初対面だから、一応確認したい」

リー「………………」

ステイサム「………………」


リー「俺は言っても良いと思う。だがセガールがどう判断するかは分からない」


ほむら(!! この男達、やはりセガールと何か関係が…!)


ステイサム「そうか。それならまず、俺の目的を教えよう」

ほむら「…………………」


ステイサム「俺の目的は、依頼主であるスティーヴン・セガールの目論みを支援する事」

ステイサム「そしてセガールの目的は二つ」

ステイサム「一つは『魔法少女の軍事利用を阻止する事』」

ほむら(軍事利用……)


ステイサム「そしてもう一つは、見滝原町内に発現するであろう『宇宙規模の強大な何か』の解消と、その『何か』と戦おうとしている魔法少女を支援する事」



ほむら「!!!」




ステイサム「それらの目的を達成する為、俺とリーは動いている。俺はついさっき会ったリー以外知らないが、他にも俺達と同じ目的を持ったヤツらがいる」



ほむら「………………………」






ジャッキー(……な…なんか凄い話が展開されているけど、僕は関係無いよね? リーさんの知り合いってだけだし……)

ステイサム「これで、俺の事を少しは信用する気になってくれたかな?」

ほむら「……………」

ステイサム「……………」

ほむら「……少し、考えさせて……」

ステイサム「……………」


ジャッキー「……リーさん、いいかい?ちょっとだけ」ヒソヒソ

リー「?」

ジャッキー「なんかここの子供達にも関係ありそうな話をしていたけど、巻き込んだりはしないでくれよ? ゆまちゃんはともかく、あゆみちゃんは一度魔法少女になろうとしたんだ。刺激したくない」ヒソヒソ

リー「分かってる。心配するな」ヒソヒソ

ジャッキー「……………」ソワソワ…



ほむら「…………………」



(……馬鹿げてる)


(見ず知らずの他人に支援だなんて…そんなの有り得ない)

(嘘に決まってる。希望を与えたあとに絶望へ突き落とすのが、インキュベーターのやり方だもの。 契約した覚えの無い魔法少女を念の為に消しておこうと、私を罠にはめようとしている)

(この時間軸のインキュベーターなら、本当にやりかねない。 実際に別の宇宙人の力も借りている。きっとまどかとの契約の為なら、どんな事だってするつもりなんだわ)

(だから、この男達も、セガールも……)



俺は君の味方だ。



(…………………)





(…でも……嘘でも、あの言葉を信じてみたい)

(この出口の見えない迷路に、何でもいい、光が欲しい。………そう思ってしまう…)

(甘い考えだって、自分でも分かっているのに……今まで何をしても駄目だったから、何かに縋ろうとしてるだけだって…)




ほむら「………………」


ステイサム「………………」


ほむら「…悪いけど、まだ信じられない」


ステイサム「………………」


ほむら「でも、貴方達と敵対するつもりも無いわ」

ステイサム「つまり、現状を維持する?」

ほむら「ええ」

ステイサム「これじゃ話した甲斐もないな」フッ

ほむら「今の私にはどうしても決められないの」

ステイサム「いいさ。それがセガールの狙いだ。むしろここで全面的に信じられると困る」

ほむら「それはどういう事?」

ステイサム「…………」サッ

ほむら「…これは…?」

ステイサム「セガールの電話番号だ。信じたいなら、明日にでもヤツに連絡を入れて会いにいけばいい」

ほむら「………………」

ステイサム「じゃ、サインを貰おうか」



ジャッキー「あー…すまない!ステイサムさんもちょっといいかな?」

ステイサム「?」

ジャッキー「『町』じゃなくてー……『市』じゃないかなぁ」

ステイサム「……………」






朝の杏ルーム


モモ「…………」ソロリ…ソロリ…


杏子「くかー…」スピー

モモ「…………」ビスッ

杏子「ふげっ」

モモ「…………」コチョコチョ

杏子「ッ………ッ…ッ」プルプル

モモ「…………」ガバッ

杏子「おいっ!やめろって!」ジタバタ


モモ「おはよー」ニコニコ


杏子「はぁ~……なんだよもう、朝から」

モモ「元気になった?」

杏子「そりゃあ……まあ…」


さやか「…………」ムクッ


杏子「おっ」

モモ「あっ」


さやか「はぁ………」

さやか「………………」



さやか「…あれ、ここどこ?」


杏子「アタシの部屋だよ」

さやか「っ?……あぁ、そっか………あたし泊まったんだっけ…」

杏子「忘れてたのか?」

さや「うん。色々あったから、わけわかんなくてさ」

杏子「……ふーん」


モモ「あのう…お姉さん、お名前は?」

さやか「さやかだけど? 美樹さやか」

モモ「さやかさんも…朝ご飯、一緒にどうですか?」

さやか「えっ」

モモ「セガールさんが、さやかさんの分も作ったんです。とっても美味しいので、えっと~…よかったら…」

さやか「……………」


セガール「いただきます」

杏・モモ「いただきます」

さやか「………………」

セガール「うん?」

さやか「あ……ぃ、いただきます」

杏子「残すんじゃねーぞ」モグモグ

さやか「…………」モグモグ


モモ「ね?おいしいでしょ?」


さやか「……うん、おいしい……」モグモグ

モモ「やったっ」グッ

杏子「なんでモモが喜んでんだよ」モグモグ

モモ「だって嬉しいんだもーん」フフン



さやか「…………」モグモグ





さやか(……………ホントにおいしい………)






さやか「…………」モグモグ



杏子「ふー…ごちそーさまでした」


さやか「!」

杏子「ん……なんだよ?」

さやか「いや、あんた…じゃなくて杏子って、食べ終わったあとに挨拶するタイプに見えなかったから……」

杏子「はぁ? 当たり前の事だろ? 日々の糧に感謝も出来ないヤツなんておかしいじゃねーか」

さやか「え、まぁ…そうだけど……」

さやか「ん、あれ?」

杏子「?」

さやか「今日って…平日だよね?」

杏子「さぁね。曜日の感覚なんてもう忘れちまったから分かんないよ。アタシには関係ないし」

さやか「えーっと………うわ、やっぱり平日だ」

杏子(携帯って日にちも分かんだな)


さやか「どうしよう……制服は家だし、昨日はお風呂にも入ってないし…」

杏子「あー、そーいやアタシも入ってないなー」

モモ「モモは入った!」

セガール「今からシャワー浴びれば済む話だろ」

杏子「そうだね。んじゃお先に…」

さやか「なんでそうなるのよ。こういう流れならあたしが先でしょ?」

杏子「えー」

さやか「えーってあんた…あたし学校…」

セガール「二人で入ればいいだろ」

杏子「ん、その方が手っ取り早いね」

さやか「えっ!?」

杏子「んじゃお先」スタスタ…

さやか「えっ、えっ?二人?マジで?」

杏子「なにキョドってんだよ。女同士で裸見たってなんも悪い事ないだろ?」

さやか「そっ、そうだけど! アパートの浴槽なんて狭いし…なんか気まずいじゃん……」

杏子「気まずかねーって。アタシはモモと毎日一緒に入ってるぞ」

モモ「二人でお風呂に入ったら楽しいよ!」

さやか「そういう問題じゃないって! っていうか制服も取りに行かなきゃなんないのに、そんな悠長な事やって…」

杏子「んじゃ先行ってるからなー」スタスタ…

モモ「さやかさんも一緒に入ろーよ!」グイグイ

さやか「わあぁっ、まっ、待って!心の準備が…」ヨタヨタ…


セガール(さらっと人ん家の悪口言いやがって)フフッ

学校の屋上


さやか「あ~涼しい~っ」セノビー

さやか「……………」

さやか「………………」スッ




さやか(この宝石みたいなのが……あたしの魂なんだよね……)





さやか「冗談きついよ、ほんとに……」




仁美「やっと見つけましたわ」


さやか「!」ビクッ

仁美「随分探しましたんですよ? さやかさん、一体今までどこにいたのですか?」ムー

さやか「い、いや~それが~…」ハハ…


-----------

--------

-----

仁美「お昼休みに来たのは、そのような理由からでしたのね」

さやか「うん……」

仁美「それにしてもです!」

さやか「うぅ~……面目ない…」

仁美「面目無いじゃありません! 事件のあったその日の内にご友人のお宅へ泊まりに行くなんて、いけない事だとは思いませんでしたの!? 」

さやか「だから反省してるって……ごめん、ほんと」

仁美「ほんとにもう、さやかさんったら本当に……まどかさんへのお見舞いがありますから、このお話はここで一旦終わりにしますけれど、本当なら…」

さやか「!? まどか怪我したの!?」

仁美「! ぃ、いえ、ただの貧血らしいんですけれど、疲れが溜まっているとの事で、今は保健室でお休みになっていますわ」

さやか(貧血……やっぱり、昨日のあれのショックとかだよね……)

仁美「せっかくですから、さやかさんもご一緒しません? 私だけで行くより、さやかさんも居た方がまどかさんも喜ぶと思いますの」

さやか「うん、そだね。あたしも行…」

ピリリリリッ  ピリリリリッ

さやか「? ちょっと待って仁美」ゴソゴソ  ピッ

ピッ

さやか「もしもし」

マミ<美樹さん、今どこにいるの?>

さやか「学校の屋上ですけど」

マミ<そう。それならいきなりで悪いけど、今から図書室に一人で来てくれる?伝えたい事があるの>

さやか「今ですか? いや~…あの、まどかが貧血で倒れちゃったみたいで、そのお見舞いに行く所なんですけど……放課後でもいいですか?」

マミ<大丈夫よ。それより貧血って……>

さやか「昨日のアレのせいだと思います。今は保健室で休んでるみたいですよ?」

マミ<そう…… じゃあ、私も美樹さんの後でお見舞いに行くわね。クラスのお友達の中に上級生が混じってると、鹿目さんに気を遣わせちゃうし>

マミ<それじゃあ、また後でね。話の続きは図書室で>

さやか「はい」


プツッ  ツーッ ツーッ ツーッ


さやか(伝えたい事、かぁ……)


さやか(なんだろう……ちょっと、今日は聞きたくないかも…)


放課後の図書室


ガチャッ


さやか「こんにちはマミさん」スタスタ

マミ「来てくれてありがとう。さ、座って?」ガタッ

さやか「…………」ガタッ

マミ「それで、伝えたい事なんだけど、コレを見…」

さやか「あのっ…まどかは呼ばないんですか? 大事な話なら、まどかにも聞かせた方がいい気がするんですけど…」

マミ「…ええ。鹿目さんが元気ならそうしたかったわ。この話は、あの子の見た緑色の目に関係する話ですもの」

さやか「!」


マミ「でも、今の鹿目さんには刺激が強すぎる内容なの。……もし真実だったら、魔女の存在より恐ろしい……そんな話なのよ」


さやか「…………っ」

マミ「コレを見て」パサッ パラパラ…

さやか「なんですか?これ」

マミ「そうね…俗に言う『オカルト本』よ。悪魔とか天使とか、宇宙人とか超常現象とか、そういった変わった存在をまとめてる娯楽本ね」

さやか「へ?」

マミ「えーっと、どこだったかしら……」パラララ…

さやか「オカルトって……マミさんそんなの信じてるんですか?」

マミ「そうねー……魔法の存在以外はあんまり信じてないかな。 この本を手に取った時だって、駄目で元々って思ってたし」パラパラ

マミ「家のパソコンで調べても、見つかったサイトの殆どが、年齢制限に引っ掛かってしまってダメだったわ。見れたとしても、色々削除されてしまってる物ばかりで、まともな情…あ、ここね」パサッ


さやか「!!」ビクッ


マミ「保健室で鹿目さんから聞いた怪物の特徴が、この挿絵にある怪物と一致したわ」


さやか「……これが、あの怪物の正体……」


マミ「ええ、多分ね」




マミ「貴女達が闘ったのは、恐らくこの『プレデター』よ」




マミ「1987年にバル・ベルデとグアテマラの国境付近で存在が確認されて以来、長年に渡って世界各地に出没しては、現地の人々と交戦しているみたい。 ……彼らに関わって命を落とした人は、彼らが最後に目撃された日から数えて、延べ二万人に上るそうよ」

マミ「彼らは南極で発見された遺跡から、古代人と思われてるみたいね。宇宙人って言う人も少し居るみたい」


さやか「…………………」


マミ「性質は極めて獰猛かつ残酷で狡猾。狙われたが最後、逃げ切る事は不可能と書いてあるけど…」

マミ「彼らは自分達に絶対のルールを設けているとも書いてあって、子供や妊婦さんは見逃すそうよ。 無用な殺生をしないって事は、何か目的があって闘っているのは確かかもね」


さやか「目的って…何ですか? どうして人殺しなんてするんですか!?」

さやか「それに、まどかもあたしもまだ子供なのに…あいつ普通に攻撃してきましたよ!?」

マミ「こうも書いてあるわ。『武器を所持していたり、戦闘意欲を持っていれば、除外されるべき弱者でも狩りの対象にする』って」

マミ「美樹さんの場合は剣と戦闘意欲に、鹿目さんの場合は回転ほうきに反応したんじゃないかしら?」

さやか「!……」


マミ「彼らの目的は想像つかないし、この本にも載っていないけれど……魔女と違って、多彩な戦闘力と知能を持っている分、対処が難しいわ」

マミ「それに、狙われてしまった時点で手遅れとなると、貴女達にとっては本当に恐ろしい敵になる」

さやか「まどかも、あたしも……危ないって事ですか…?」

マミ「そうよ。 決して敵を逃さない彼らが、一度闘った相手である貴女達を逃すはずがないもの」

さやか「…………………」


マミ「……今の鹿目さんに、こんな話なんてとても聞かせられないわ。 聞かせたら、あの子の事だもの……きっと塞ぎ込んでしまう」

マミ「恐れや不安は、魔女にとっては付け入る為の隙でしかない。 話してしまったが最後、鹿目さんは魔女とプレデターの両方に追われる身になる」

さやか「……………………」

マミ「美樹さん。……鹿目さんを護りましょう。 貴方と私の二人で、この街にいるプレデターを全て倒すその日まで」

さやか「…分かってます……でも、その日がいつになるのか、あたしには正直……」

マミ「私も分からないわ。 何人いるか分からない彼らの目的が、万が一にも『鹿目さんを殺す事』だったら……一生戦い続けるって事も、無いわけじゃないと思う」

マミ「もしそうなってしまったら、いつか私達だけでは手に負えない状況が来るかもしれない……」

さやか「そんな…じゃあ、まどかは…」

マミ「でも大丈夫。危なくなったら、その時は私が貴女達を守るわ。全力でね」フフッ


さやか「マミさん………」




マミ「……」ニコッ



まどホーム前


まどか「さやかちゃん、ごめんね。…迷惑だったよね……」

さやか「あたしが送ってくって言ったんだから、気にしなくていいって」アハハ

まどか「……うん」

さやか「てゆーか、あれさ。悪いって思うなら、今日はゆっくり休む事! 疲れ溜めちゃったら、良い事も悪い方にしか行かないからね!」

まどか「……うん、そうだね」ティヘヘ…

さやか「そうそう!その調子! 笑顔の方がまどかは可愛いんだから!うりゃ!」ガバッ

まどか「きゃー!やっ、もう!やめてよぉ!」ティヒヒヒ

さやか「うりゃうりゃ~」コチョコチョ





さやか(………マミさんの言うとおり、話しちゃダメだよね)



さやか(やっぱり、まどかが本当の事を知る前に、プレデターっていうのを倒すしかないのかな…)



さやか(まどか…恭介…仁美…………絶対にあたしが守ってあげるからね…!)

ほむホーム


ほむら「……………」

プルルルルッ プルルルルッ

ほむら「?……」スタスタ

カチャッ


ほむら「暁美ほむらです」

早乙女先生<暁美さん!?どうしたんですか今日は!とても心配したんですよ!?>

ほむら「すみません。あまり体調が優れなかったので」

ほむら(家でずっと考え事をしてた。……なんて、理由にならないわよね)

先生<それでも、学校に連絡しないだなんていけません! 先生の事そんなに信用してないの!? 明日は先生と相談ですからね!>

ほむら(……もう学校には行かない方がよさそうね。行っても時間の無駄にしかならないわ)

先生<暁美さん!聞いてるんですか!?無断欠席は…>

ほむら「黙りなさい。それ所じゃないのよ」

先生<ぇ…>

ガチャッ


ほむら「ゆっくり考えさせて。 集中できないわ」



ほむら「……………………」

さやか(まどかも無事に家まで送ったし、今日も恭介のとこ行こうかな)スタスタ

ピロリーン

さやか(? メール? どれどれ)パチッ


さやか(!!)


さやか「ふふっ…恭介もニクい事やってくれるね」

さやか「久しぶりだな……恭介の演奏…」


さやか「…………よしっ!そういう事なら急がなくっちゃね!」ダッ

タッタッタッタッ…


病院の屋上

さやか「へぇ~…へぇ~…つ、疲れたぁ」ゼェゼェ

ガチャッ バタン

さやか「はぁ、はぁ、いやーもーいきなりだったから、走って来ちゃった」

恭介「やあ、さやか。待ってたよ」ニコッ

上條父「いらっしゃい。わざわざすまないね。恭介の為に」

さやか「いえいえ、こういうドッキリは大歓迎ですよ」アハハ

上條母「あらあら、髪に埃まで付けちゃって。そんなに慌てて来たの?」サッサッ

さやか「えっ…は、はい」

上條母「はい取れた。恭介の言う通り、貴女って今もおっちょこちょいなのね」

さやか「えへへ…」テレテレ


仁美「上条君、これを」スッ

恭介「うん」

上條父「ちゃんと調整したままにしてあるから、思うように弾きなさい」

恭介「はい!」

さやか「………」ドキドキ




恭介「父さん、母さん、主治医の先生に、看護師の皆さん」


恭介「志筑さん……そして、毎日お見舞いに来てくれたさやか」


さやか「!!///」


恭介「今まで、本当にありがとうございました。 皆さんのお陰で、僕はこうして、またヴァイオリンを弾く事が出来るようになりました」



さやか「…………」ウルウル



恭介「この曲は、僕からの感謝の気持ちです。 聴いて下さい」

演奏会は拍手の内に終わり、恭介とさやか達は病室への帰路についた。
主治医を先頭に、恭介は父親の押す車椅子に座って、さやかと仁美は車椅子を挟んで歩いた。


ガチャッ

主治医は病室のドアを開け、先に中へ入った。
すると、彼の白衣にそよ風が当たった。


主治医「? おかしいですね…」

上條父「どうかしましたか?」

主治医「いえ、窓が開いていたんですよ。 あー、掛け布団も落ちてますね」バサバサ…

恭介「窓はちゃんと閉めましたけど……」

主治医「しょうがない。この窓の鍵が緩いせいなんだ。 それに窓自体も軽い作りだからね。自然に開いたんでしょう」

上條母「危ないですねー…」

主治医「全くです。最新の設備は良いんですけれど、市の方々にはこういう所にも気を配っていただきたいものです」

上條母「そうですよねぇ」



開いていた窓についての話を皮切りに、恭介の両親と主治医は世間話を始めた。

恭介は少し困ったような笑顔をさやかと仁美に向け、さやかも苦笑いを浮かべて、それとなく窓に目をやった。


さやか「!」



そして窓枠の一辺に、今まで見たことの無い二本の切り傷を見つけた。
幅広なノコギリを力強く2回叩きつけた様な傷だ。

恭介「……?」

仁美「……さやかさん?」

さやかの顔色が急に変わったのを見て、二人の表情に少しだけ影が入る。


上條父「? 先生、これは……」

主治医「? あ、これは~……あ、分かりました。これは風で開いたんじゃありませんね」ハハ

上條「風じゃない? ではこれは…」

主治医「鳥ですよ。きっとカラスか何かがこの窓にぶつかって入ってきてしまったんです。 これは爪痕で、出る前に色々漁っていったんじゃないですかね」

上條母「あら~……」

主治医「私はこの部屋を掃除するから、君はこのシーツと掛け布団を頼む」

看護師「分かりました」スタスタ

主治医「困った事もあるものです。もう少し気をつけて空を飛んでいただきたいですね」ハハハ…

上條父「ははは、そうですね」


上條母「それにしても気味が悪いですね……恭介と一緒に屋上に上がる前は、こんな風になっていなかったのに…」



さやか「!!」

すみません用事が出来てしまいました。
明日には続きを

マミから聞いた怪物の特性をさやかは覚えている。
プレデターは残酷である事。彼らには何か目的がある事。彼らは人を殺す事。

まどかが襲われ、自分も深手を負ったあの事件の記憶が薄れぬ内に、昨日の話をマミから聞かされ、今日は爪痕を発見。

怪物がこの世に実在するという真実を知っているさやかが、最近の自分に降り懸かった事態と、この爪痕とを結び付けない訳が無かった。

仁美「!?」

恭介「!? さやか!」


さやかは病室を飛び出し、火が点いたロケット花火のように廊下を駆けた。
あの傷はカラスの爪では付けられず、ましてやノコギリでも付けられない。
あの傷を付けた物は、もっと鋭く、重く、狂暴な形状の刃物だ。

そんな恐ろしい凶器は、今まで見てきた物の中では一つしか思い浮かばない。


シュバァッ!


病院を出た直後に変身し、猛烈な勢いで街中を移動する。
車を追い越し、ビルを駆け上がり、あるいは跳び越し、さやかは上下に縛られる事の無い機動力で怪物を探した。
不慣れな魔力の制御など無視して、壁に肩を擦ろうが、着地に失敗しようが、お構い無しに跳ね回った。


場を取り繕う器用さも、嘘をつくだけのズルさもあまり無い。
さやかは自分のそういう所は理解していたからこそ、今すぐ怪物を倒さなければと思っていた。

長期間戦う事は出来る。だがそれをまどかや恭介、仁美の目から隠し続ける自信が無い。

そして彼女のその思考を、最高の幸せに水を注され、大切な人を脅かされた怒りが後押しし、今やそれには義務感と正義感が更に加わっていた。


さやか「!!」


彼女の目の前に透明な人影が映る。
その人影を逃すまいと、さやかは速度を増しながら、マミにテレパシーを送った。


さやか(マミさん!! マミさん!!)ババババ…

マミ(!? どうしたの? 何があったの?)

さやか(プレデターってヤツ見つけました!今追っかけてます!)ババババ…

マミ(!! わ、分かったわ! 今どこ!? 私もすぐに向かうわ!)

さやか(口じゃ説明しづらいんで、あたしの魔力を追って来て下さい!)ババババ…

マミ(え!? それはちょっと無茶が…)

さやか(!! やばい!逃げられる!)ババババ…

さやか「待ちなさいよ!!」ババババ…

さやかは声を張り上げるが、透明な影は当然止まらない。
さやかの声に反応したのは、一般人達の内の数人だけで、その彼らも声の正体を掴む事が出来ず、ただ慌てふためくばかり。
彼らにとって、今のさやかは只の突風に過ぎなかった。

プレデター「………」バッ

さやか「待て!!」ババッ!


影がビルの角を曲がって路地裏へ姿を消すと、さやかも同じ挙動で日の当たらぬ闇へと突入していった。

さやか「っ……」タッ

しかし、その勢いのまま突撃などせず、彼女は脚を止めた。
影に包まれた袋小路の中、怪物の存在を感じるのは目の前だけでは無い。


さやか(一匹だけじゃ……無い……)

マミ(!? そんな…!)


さやかの左右を囲むビルの屋上から、二人の巨人がまるで阿吽の像の様に彼女を見下ろしていたのだ。

プレデター「…………」ドン!

目の前の怪物が跳び、見えない何かに掴まると、怪物が何かに牽引される様に高速で飛び上がった。
さやかもそれを逃すまいと跳び上がり、怪物の足らしき部分へと手を伸ばす。

さやか「!!?」ドガン!!

しかし、その手が透明な足を掴む前に、緑色の光弾がさやかを襲った。
全身にその光を浴びたさやかは、身体中に激痛を感じながら落下していく。

さやか「うあああっ!!!」

視界が淀む中、彼女は最後の力を振り絞るつもりで叫んだが…

さやか「!……」

期待していた飛行能力は発揮されなかった。


まどかを魔女の手から救い出した時の飛行は、もう二度と出来ない。



重力の無いあの結界での出来事は、現実世界には適用されないんだと、さやかは静かに理解し…




ドズン!!


墜落して、意識を十数秒程失った。



事の一部始終を、キュゥべえが遠くのビルの屋上から見ていたなどと、彼女とマミは思ってもいないし、知るよしも無かった。

セガホーム

セガール「なる程。『感情が無い』か……」

シュワ「そうらしい。 あの後散々痛めつけたが、声色一つ変えなかった」

セガール「……それで、キュゥべえの言う『大きな目的』ってのは、一体なんだ? まさか感情の無い自分達では生産不可能な『相転移エネルギー』を、自分達が生きる為に他者から奪うっていう、いかにも在り来りで、こじんまりとした理由じゃ無いだろうな?」

シュワ「それは俺も考えた。しかしそれでは、不完全な答えらしい」

セガール「……………」

シュワ「ヤツらがエネルギーを集める理由が、ヤツらの『大きな目的』と関係があるのなら、俺達も手詰まりという事になる」

セガール「……そうなるな」フー…


ガチャッ バタン


杏子「弁当買って来たよ。それにしても、アンタが昼ご飯作らないなんて珍しいじゃ……っ!?」


シュワ「………………」


杏子「…まだアタシに話あんの?」

シュワ「無い」

モモ「ただい……こ、こんにちは」

シュワ「こんにちは」


プルルルルッ プルルルルッ プルルルルッ

セガール「………」ピッ


ステイサム<セガール。例のほむらって子に全部言っておいたぞ>

セガール「一から十までか?」

ステイサム<あんたの企みの中身、全部だ>

セガール「……って事は、チャンス到来ってわけか」

ステイサム<そうだ>

セガール「分かった。向こうの反応は?」

ステイサム<五分五分を装ってはいるが、あれは8-2だろうな。 俺の予想だと、今日あたりにアンタの所へ顔を出してくる>

セガール「そうか」フフッ

ステイサム<これもアンタの計画通りなのか?>

セガール「予想と言ってくれ。『布石を各所に撒いた出たとこ勝負』でも構わねえがな」

ステイサム<どっちでもいいさ。じゃ、後はアンタ次第だな>

プツッ



セガール「フフッ……アーノルド、もしかすると手詰まりじゃ無くなるかもしれないぞ?」

シュワ「?」


セガール「杏子。お前確か、魔法少女について色々知ってるにも関わらず、その事を黙ってた俺に文句言ったよな?」ニヤ…

杏子「ん、ぁ、ああ。まあね」

セガール「今でも知りたいって思ってるか?」

杏子「…………知っちゃいけないのかよ」

セガール「悪いが、それはお前次第になる」

杏子「……はっきり言えよ」

セガール「言えりゃ気苦労しねえよ。……もう一度聞く。今でも知りたいか?」

杏子「知りたいよ」

セガール「そうか。じゃあ俺がこれから何をしても、横でピーピー喚くんじゃねえぞ?」チャッ

杏子「はぁ?」イラッ

シュワ「………」ニヤ…

セガール「…………」ピッ ピッ ピッ プルルルル…

ピッ



セガール「俺だ。作戦を開始しろ」


プツッ ツーッ ツーッ


杏子「………?」



セガール「…………」ククク…

十数分後。

プルルルルッ プルルルルッ ピッ

セガール「そろそろ来る頃だと思ったよ。用件はなんだ?」

ほむら<今日、会えないかしら?>

セガール「また随分率直だな。 まあいい。メールで地図を送る。今来てくれ」

ほむら「今? 話が早過ぎるわ。もう少し私の話を聞いて。……その前に、何故貴方が私の携帯のメールアドレ…>

セガール「そんなのどうでもいいだろ。それより早く事の真偽を確かめなきゃな」フフ…

ほむら<……………>

セガール「メールするから早く来いよ?」

プツッ

セガール「……………」ピッ ピッ ピッ ピロロン



セガール「よし。あいつらも……」ピッ ピッ ピッ

杏子「なぁ、アンタさっきから何やってんの?」

セガール「喚くなって言ったはずだ」プルルルルッ

杏子「いいじゃねーか、聞くぐらい……」

セガール「お前の声が入ると色々面倒なんでな。悪いが黙っててくれ」

杏子「……………」ツーン

セガール「そう拗ねるな。こいつは隠蔽工作で…まぁ、かくれんぼみたいなもんだ」プルルルルッ

杏子・モモ「?」

ピッ





セガール「よー、元気してたか?」


スタローン<ああバッチリだ>


セガール「そりゃよかった。ウィリスは今どうしてる?」

スタローン<俺が電話に出たとたんゴネだした。相変わらずケツの重いヤツだよ>フッフッフ

セガール「俺の壮大な自作自演に付き合わされんだからな。当然だ」

ウィリス<こんのクソ忙しい時にこの野郎……>

セガール「絵が浮かぶぞ。大方ソファーに踏ん反り返って悪態ついてんだろ?」

スタローン<正解だ。じゃあ通信を切るぞ。成功を祈っててくれ>

セガール「頼むぞ」

プツッ ツーッ ツーッ ツーッ


ほむら(ここね)ピーンポーン

ガチャッ


モモ「あ、こんにちは!」エヘヘ

ほむら「っ…こんにちは」

モモ「どうぞこちらへー!」テテテ…

ほむら「…………」スタスタ…




セガール「よく来てくれた。さぁ、座ってコーヒーでも飲みながら情報交換といこう」


ほむら「ええ、そうしま……っ!!?」サッ

セガール「ん?」


シュワ「………………」


ほむら「………この男は、何者なの?」

セガール「そいつは俺の仕事仲間だ。見た目は確かにサイボーグみたいだが、根は気のいい筋肉男だよ」

ほむら「……………」

セガール「ホラ、身構えてないで、早く始めよう」ガタッ…

ほむら「…………」ガタッ




セガール「はぁー……さてっ、どこから話そうか?」

ほむら「そうね……私は貴方の目的と、私に付き纏う理由が知りたいわ」

セガール「それってジェイソンから聞いてないか? あのスーツ着た坊主頭の」

ほむら「貴方の口から聞きたいの。他人を通しての言葉なんて信用出来ないもの」

セガール「そうか。……わかった。話そう」

セガール「今の俺の目的は二つ。一つは何かとの戦いに備えている君への支援。もう一つはインキュベーターの目的を探り当てる事」

ほむら「魔法少女を利用しようとする奴らはどうしたの?」

セガール「あいつらは殆ど潰した。あと一世紀は出て来ねえよ」フフフ


杏子(なんの話だよ……全然ついて行けねえ……)


セガール「おおっと!忘れる所だった。 君に聞きたいんだが、魔法少女について何処まで知ってる?」

杏子「!」


ほむら「……いきなり何を言うのよ」

セガール「大事な話なんだ。答えてくれないか?」


ほむら「…………………」チラッ…

杏子「…何見てんだよ」

ほむら「いえ、何でも無いわ」

セガール「杏子の前じゃ言いにくいか?」

ほむら「色々複雑なのよ。この話は後にしましょう?」

セガール「それは無理だ。今聞きたい。杏子も知りたがってる」

杏子「……………」

ほむら「……わかったわ。ただし、これからここで何が起きても、私は一切手出ししない。事の収拾は全て貴方達がして」

セガール(あーあ、当てが外れちまった)

シュワ「……………」カチャッ…チャキッ

杏子(銃!?)

モモ「!? !?」


ほむら「佐倉杏子」


杏子「っ……」


ほむら「今から貴女が聞く話は、全て真実よ。 知りたいと言った以上、貴女はそれを受け止めなければならないわ」


杏子「………勿体ぶってねーで、早く教えろ……」


ほむら「受け止めるのね。 ……それなら教えてあげるわ。魔法少女の全てを」




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ほむら「以上よ」



杏子「…………………」



モモ「お姉ちゃん…魔女になっちゃうの?」


ほむら「ええ。遅かれ早かれ、例外無く」


モモ「………………」


杏子「…魔女にならない為にはどうすりゃいいんだ?」

ほむら「グリーフシードを使ってソウルジェムを浄化し続けるか、魔女になる前に自殺する。魔女化の運命から逃れる方法はこの二つだけ」

杏子「つまり…アタシには、一生魔女と戦うか、魔女になって狩られるか、魔女になる前に死ぬか以外の道は無いってわけか」

ほむら「全ての魔法少女の宿命よ」


杏子「はっ………そりゃ言えねえよな。こんな話……」


セガール「大丈夫か?」

杏子「最悪だよ。………実はそーなんじゃねえかって、思ってたけどな…」

セガール「予想はしてたってわけか」

杏子「まあね。 魔法少女になるヤツがいるんだから、魔女になるヤツもいんじゃねーかなって、薄々はね……」

ほむら「………………」

杏子「アタシはいいから、話を続けなよ。 もう何聞いても驚かねーからさ」

セガール「つっても、今度は俺が質問するけどな。 君の正体と目的を教えてくれ。俺はもうバラしたから、次は君の番だ」

ほむら「………言えないと言ったら、貴方はどうするの?」

セガール「引き上げる。君とは二度と関わらないと約束するし、君に提供した武器、弾薬類も全て回収する。日本に俺達が居たという痕跡も消し去って、この件は終わりだ」


セガール「どうする?」


ほむら「…………………」



セガール「なんだ、まただんまりか?」


ほむら「…ここでは言えないわ。話すなら別の…」

セガール「いや、言えるね」カチッ

テレビ< パッ

ほむら「?」



テレビ<え~…依然として状況は変わっておりません!!今もこのビルの中で銃撃戦が続いているようです!!窓からは火の手が上がり、ビルの上にはですね!ヘリコプターが2機!確認出来ます!!



ほむら「…………?」

杏子「…………映画?」

セガール「いや、現実だ。 偶然が重なるってのは恐ろしいもんで、ついさっきテロリストがあのビルに突入したらしいんだ」

セガール「なんでも向こうのお偉いさんから金をせびる為だったらしい。 だがそのビル、今日に限って警備が阿保みたいに厳重でな。ケチな占拠事件が一大スペクタクルになっちまった」


テレビ<ああっ!!今屋上から車が……あ、あああ!!?ヘリコプターに直撃しました!! 早く逃げて下さい!!下の人は早く逃げて下さい!!!

事件現場


レポーター「!? 今犯人グループの一人らしき人影が……!!うわああああ逃げろぉおおぉぉ!!!!」



ドガガガガガガガガガガ!! ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

バゴーン!! バゴーン!!


スタローン「おおおおおおおおおおお!!!!」ドドドドドドドドド!!


レポーター「スっ、スーツを着っ……け、警備員!? 警備員の一人が何か巨大なマシンガンのようなも…ひぃっ!!」ヂュイーン!

犯人「助けてくれぇ!!!!! 助けてくれぇ!!!!!」

レポーター「ぅ、撃ってます…… 逃げ回る犯人グループに向け銃を撃ってます!!本当に警備員なのでしょうか……ぅ、うわああああ来たああああああ!!!」

ウィリス「死ねえええええええええええ!!!!!」ガガガガガガガ!

レポーター「無差別です!!!!もう一人が窓から無差別に…」

 ドガーン!!! ガラガラガラガラ…

「うわああああああああ!!!」 「屋上が吹っ飛んだぞ!!」

 バガーン!!!

「逃げろおぉぉ!!パトカーが飛んで来るぞおぉぉぉぉ!!!」

レポーター「まるで戦争です!!!!」

ガガガガガガガガ!! ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ…

杏子「うわ……」

シュワ「賑やかだな」

ほむら「……………………」


セガール「インキュベーターの注意は今の所この事件に集まっているはずだ。隙あらば契約をむしり取ろうってな」

セガール「折角の話し合いに水を注されちゃかなわない。人の不幸に群がるアイツらの仕事熱心ぶりを利用させてもらった」

ほむら「……こんなの只の大量殺人だわ」ギリッ

セガール「誰も死んじゃいねえよ。ビルの中の一般人は皆避難してる」

セガール「テロリスト共には見せ掛けだけの武器と無人ヘリを渡した。 俺の依頼を聞いて、ホイホイとビルを乗っ取ったは良いものの、中に目的の金は無し。代わりにベトナム帰還兵と不死身の男が詰まってるって寸法だ」

セガール「それに、あの二人が撃ってるのもゴム弾だしな」ハハハ


テレビ<てめえら皆地獄行きだあああ!!  ガガガガ…


杏子(殺す気じゃねーか……)

ほむら「……つまり、この事件はこの話し合いの為に…?」

セガール「そうだ。 さー邪魔者も来ないと分かった事だしよ。そろそろ聞かせてくれないか?」

ほむら「…………ええ…そうするわ」



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やっと投下完了!書き溜めに入ります。

本当は40レスほど消費するような文量だったのですが、それでは長すぎると判断して圧縮しました。お陰で投下が遅れてしまいましてごにょごにょ。

セガール「なるほどね~……」



ほむら「驚かないのね」


セガール「期待してたか?」

ほむら「いいえ。 …でも、予想外ではあったわ」

セガール「ああー…まあ、普通は家にまで入って来てるとは思わないからな」

ほむら「!? 貴方、もしかして私の家に!?」

セガール「入ってねえよ。それくらい腹の内を読んでたって例えだ」フフフ

ほむら「くっ……」

セガール「ははは。 まぁ、そんな訳で、君の目的と正体については大体予想がついてた」

ほむら「…それなら、こんな回りくどいマネをした理由は何?」

セガール「キュゥべえの野郎に嗅ぎつかれない為だ。 念には念って意味で、君にも細かい事は言わなかった」

ほむら「それにしたって、分かりづら過ぎるというものよ」

セガール「スマンな」

ほむら「………………」フー



セガール「そこのお嬢ちゃん達」

杏・モモ「!」

セガール「話は分かったか?」

杏子「ぉ…ぉぅ……」

モモ「………」コクコクコク

セガール「じゃあ何か質問は?」

杏子「あるけど…どっから聞きゃあいいのか……」

モモ「………」フルフルフル

セガール「そうか。聞きたい事があるなら、これからの話もよく聞いとくんだな」

杏子「うん……」

セガール「よし。 という訳だ、俺も情報を出すから、続きを頼む」


ほむら「ええ」






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ガチャッ

セガール「おお、ちょっと長話が過ぎたみたいだな。もうすっかり夜だ」


杏子「………………」


ほむら「………」スタスタ

セガール「君、本当に言って良かったのかって思ってるだろ?」

ほむら「ええ、思ってるわ」

セガール「安心してくれ。 俺達は君を驚かせるかもしれないが、君を裏切りはしない」

セガール「プレデターが出たら俺の携帯に連絡してくれ。すぐに駆け付ける」

ほむら「分かったわ」

セガール「それとさやかちゃんの事なんだが、本当に俺達が手を出す必要は無いのか?」

ほむら「必要ない。というより不可能よ。 彼女の問題は私達には解けない。彼女が自分で乗り切るしか無い」

ほむら「一度『そうなって』しまったが最期、誰からの物であっても、あの子は差し出された手に噛み付いてしまう。 そして、いつかは罪悪感や劣等感を抱いて、周囲を巻き込みながら自滅する」

セガール「そうなる前に手を打てばどうなる?」

ほむら「打てた覚えが無いから分からないわね。 ……でも、多分彼女を止める事は出来ないわ。 私が何をしても、あの子は制止を振り切って魔法少女になるし、なった時点で、あの子が自滅の道を辿るのは決定的」

ほむら「そして貴方と杏子の話によれば、彼女は既に魔法少女になっている」

セガール「…つまり手遅れだって?」

ほむら「そういう事よ」

セガール「………………」


杏子「なあ。 帰り道、アタシついて行っていいかい?」


セガール(お?)

ほむら「聞きたい事があるのなら、ここででも良いと思うのだけど」

杏子「歩きながら考えた方が頭が回るタイプなんだよ。迷惑掛けないから、いいだろ?」

ほむら「そう。……それなら構わないわ」

杏子「サンキュー」スタスタ

セガール「おいおい、今日中には帰るんだろうな?」

杏子「さーね、どうかな」ニッ

セガール「はぁ……」

ほむら「お邪魔しました」スタスタ…

杏子「んじゃ、行ってくる」スタスタ…



セガール「……………」


スタスタスタ…


ほむら「それで、聞きたい事って何?」ピタッ

杏子「さや……いやその前に、『前の時間軸』ってヤツ? そこのアタシって、どんな感じだったんだ?」

ほむら「今の貴女より残酷で、容赦が無かったわ。 他人に入れ込む前の彼女は、人の命は愚か自分の命にさえ興味を失いはじめているみたいだった」

杏子「えっ……」

ほむら「人をエサにして使い魔を放し飼いにしようと思った事、貴女もあるでしょう?」

杏子「!!!」


ほむら「やっぱり、ほんの一瞬でも考えた事があるようね」


杏子「………………」


ほむら「彼女はそれを実行するような子だったわ」


杏子「…ウソだろ……」


ほむら「本当よ。 彼女は貴女が辿ったであろう運命の一つ。 家族を亡くし、パートナーを捨てて、助けたかった人も助けられないまま、最期は一人で魔女と心中したわ」

杏子「…………………」

ほむら「そしてそんな最期を迎える可能性が、貴女にもある」

杏子「……それがさやかだってのか」

ほむら「美樹さやかに入れ込んでいても、その思いは彼女には伝わらない。 距離を取っておかないと、貴女は必ず命を落とす」


杏子「………………」


ほむら「他に用が無いのなら失礼するわ」スタスタ




杏子(もう遅いよ)ヘッ…




ほむら「一つ、言い忘れていたけど」ピタッ

杏子「!」

ほむら「今日話した魔法少女に関係する真実は、決して巴マミには言わないで」

杏子「なんでだよ」

ほむら「死ぬかもしれないからよ。私も、そして貴女も、魔法少女の運命を悲観視した彼女の魔法で」

杏子「! なんでそんな事ここで言うんだよ!セガールがいる時に言えよ!」

ほむら「話す必要は無かったわ。 彼らは、魔法少女に真実を伝える事がどれだけ危険な行為なのか、分かっていた様だから」

杏子「………………」


ほむら「……他に用はある?」


杏子「………もういいよ。迷惑掛けないって約束だったしな」


ほむら「そう。それじゃさよなら」スタスタ…




セガホーム


セガール「…予想以上にデカイ話になってきたな」


シュワ「『インキュベーターは宇宙存続の為にエネルギーを搾取している』……これがもし事実なら、プレデターがこの街に集まっている理由も分かる」

セガール「インキュベーターとプレデターの共同戦線、か」

シュワ「『鹿目まどか』という女の子から契約を取るのがヤツらの目的であり、その目的を達成する最大のチャンスとなるのが……」


セガール「ワルプルギスの夜」



シュワ「宇宙連合軍と最強の魔女が相手となると、いくら俺達でも些か歩が悪いぞ?」

セガール「そうだなぁ~……」

シュワ「総力戦でもするか?」

セガール「そいつは遠慮しとこう。俺達はともかく街が危ない」



セガール「いよいよ、あのジジイに頼る時が来たのかもしれない」



シュワ「!」


セガール「それに、ほむらちゃんの言ってる通りなら、これはアイツの専門だと思わないか?」


シュワ「…………………」


セガール「さやかちゃんは、俺がなんとかするさ。あの年で手遅れになる事なんてそうは無い。 お前はチームを編成して対ワルプルギス戦に備えてくれ。何を用意するかは後で連絡する」




モモ「お茶持ってきました!」テテテ


セガール「おう、いただきます」ズズ-

シュワ「ん、苦いな」ズズ

セガール「なに、そのうち癖になる」ズズ…

夜の電波塔


プレデター「………………」


QB「やあ。 計画の進行状況と、これから…」ピョン

プレデター「…………………」

QB「……レーザーポインターを向けないでくれるかい? 僕達は今の所協力関係にあるんだから、警戒する必要は無いんじゃないかな?」

プレデター「…………………」スッ

QB「現段階では、計画に大きな支障は無いよ。 さっきの騒動も、僕らには何の関わりも無い出来事だった」

QB「本題に入る前に説明をさせてもらうよ」


QB「巴マミは責任感が強く、正義感があり、人との結び付きを大事にする傾向がある。 その分、結び付きに固執するあまり物事に対してやや内向的で、自分周辺のコミュニティー間でのみ、トラブルを処理しようとする」

QB「美樹さやかは巴マミ以上に正義感が強く、他者を思いやる気持ちも人一倍ある。 でもその一方で、言動が直情的・狭窄的になりやすく、失敗を犯した時は内罰的思考に陥りやすい」

QB「ある意味では人間の言う『美点』と『汚点』を、他の人間達より多く持っているとも言えるね」

QB「そんな二人が、敵か味方か判断のついていない暁美ほむらと、協力関係を結ぶはずが無い。 巴マミは美樹さやかと佐倉杏子以外の魔法少女は信頼しないだろうし、美樹さやかは巴マミに憧れを抱いているから、マミの方針に従うだろう」

QB「さやか自身、暁美ほむらに対しては好印象を抱いているとは決して言えないからね」


QB「そこで君達には、彼女達とセガール達の接触を防ぎ、美樹さやかを魔女にする為の準備を頼みたい」


プレデター「…………………」


QB「美樹さやかの心に激しい動揺が見られた時が、第二段階開始の合図だ」


プレデター「……………………」カカカカカカ…


QB「当然、僕達インキュベーターも協力するよ。 必要なら彼らも呼び寄せる」

QB「彼らも宇宙に住む者には変わり無い。 きっと力を貸してくれるはずだ」





昼休憩投下(小声)
短いですけどこれにて。

二日後



マミ「はあっ!」チャキッ

ボヒュボヒュボヒュン!

マミ「ふう…あらかた片付けたわね」クルクルクルッ チャキン



さやか「すみませんマミさん!遅れちゃいました!」タッタッタッ…


マミ「あらあら、もう遅いわよ美樹さん。 使い魔はみんな倒しちゃったわよ?」フフ

さやか「あれま…… ! うわっとぉ!?」グラグラッ

マミ「危ない!」ヒュンヒュン パシッ

さやか「ふぎゅっ!」ギュッ

マミ「足元に気をつけて。踏み外したら一番下まで真っ逆さまよ?」

さやか「はうぅ…胸がぐるじいでずマミざん…」ギュムー

マミ「よいしょっ」ヒュン スタッ


さやか「はぁ…入った瞬間綱渡りだなんて、魔女の結界の中って本当想像つかないですよね……」

マミ「まったくね。 ……で、なんでパトロールに遅れたのか、説明してもらえない?」

さやか「え?えっと、それは……」

マミ「んー?」ニー


さやか「じ、実はちょっと仁美に呼ばれちゃってて…」エヘヘ…


マミ「ふーん……それで仁美さんの方を優先したって訳なのね」

さやか「意地悪しないでくださいよぉ……」

マミ「ふふっ、ごめんなさい。ちょっと楽しかったから」


マミ「それで、前の怪我の具合はどう?

さやか「大丈夫です。痛みとかもありません」

マミ「それなら安心だけど……あんまり無茶はしないでね?」

さやか「わかりました」




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-------
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パトリシア「………」ユラユラ



さやか「うわぁ~…なんかクモみたい……」

マミ「あれが魔女みたいね。踏み込む前に作戦を立てましょう?」

マミ「美樹さん。私が合図したら…」


さやか「…………」


マミ「…聞いてる?」

さやか「! はいっ」ピクッ

マミ「ほんとに大丈夫なの?」

さやか「すみません。 ……あたしはどうすればいいんでしたっけ?」

マミ「私が合図したら、まず貴女は魔女の周りの足場を切って、それから魔女を引き付けて。 狭くなった足場の上じゃ、魔女も身動きが取れなくなるだろうから、貴女は多分安全よ」

マミ「私は、貴女に向かう使い魔を撃ち落としながら、魔女を狙い撃つわ」

さやか「分かりました」



パトリシア「…………」ガサガサ…


マミ(魔女が動きはじめた!)



マミ「今よ!」


さやか「!!っ」バッ



タン タン タン スタッ

さやか「おぉっ…とっ…!」グラグラ

マミ「落ち着いて美樹さん。落ちても私がリボンで受け止めるから、自信を持って!」

さやか「…………」フゥー…



タン!



パトリシア「………」ドババッ!

さやか「!?」

ボヒュボヒュボヒュボヒュン!


マミ「大丈夫よ!そのまま行って!」ボヒュン! ボヒュン!


さやか「はい!」


タン!


さやか「せいっ!」ズバッ!

さやか「やあ!!」ザシッ!

マミ「その調子よ。そのままお願い」チャキッ ボヒュン!

さやか「りょーかい!」タッタッタッ…



ドシン



さやか「あっ!!」

マミ「!!」

パトリシア「?」




プレデター「………………」

さやか(…………マミさん、見えますか?)

マミ(ええ。……絵で見たのと少し違うけど、あれは間違いなく……)

さやか(退いた方が良いですよね、この状況)



プレデター「……………」シャキン キュイイイイイ…



マミ(美樹さん離れて!プレデターの様子が変よ!)

プレデター「……」ガチン  バッ!

さやか「!!」ハッ!

マミ(魔女を爆破する気!?)


さやか(やばっ…!)




ドオオオオオオオオン!!!












さやか「うう……」ググ…

さやか(煙で何も見えない……)


さやか(あたしが倒れてるって事は、地面があるって事だから……魔女はやられたの?)


さやか「いっ……つつっ…」ムクッ…


マミ「美樹さん! 美樹さん!」


さやか「! マミさん、どこにいるんですか…?」ヨロヨロ…

マミ「美樹さん!」

さやか「こっちですー…いてて…」


さやか「あ、いた。よかった~マミさんも無事で」ハハ…


マミ「美樹サン!」

さやか「え?」




プレデター「ミキサン」




ドカッ!

さやか「ごぼっ」

プレデター「ミキサン」メリメリメリ…


さやか「あっ、がっ……ぁ……」


マミ「!!!!」




プレデター「……………」グリュッ

さやか「かはっ……」ブシュウウウウ…

ボタボタボタ…



マミ「あ……あ…あ……!!」



プレデター「ソノ チョウシ  ミキサン」




マミ「わあああああああああああああああ!!!」ダッ!


ズボッ

さやか「……」ドチャッ


さやかの胸からリストブレイドを抜き、戦闘体勢を取ろうとプレデターが構えた時には、既にプレデターの眼の前にはマミが迫っていた。

怪物のリストブレイドが彼女の腹部を貫く。だが今のマミに、痛みに反応する程の理性は無い。

ガギン!!

彼女はマスケット銃でプレデターの頭を全力で殴打すると、もんどりを打って倒れるプレデターに追い打ちを掛けるべく、怪物の髪らしき部分を左手で強く握り…

 ドガン!!

大きく弧を描くような軌道で、怪物の後頭部を猛スピードで地面へと叩き付けた。

砕けたアスファルトがマミの眼や肩に当たったが、マミは怯むどころか瞬きもせず、ヘルメットの左半分が砕けてプレデターの顔があらわになった時、彼女の怒りは頂点に達した。


油を注がれた炎のように、更なる獰猛さでプレデターに掴み掛かり、馬乗りになって無我夢中で拳を打ち下ろす。

彼女の両手は瞬く間に緑色の粘液に塗れ、彼女の顔もまた、怪物の血で染まっていく。


ブチッ!

プレデター「!」

マミ「ぬあぁっ!!」ズン!

プレデター「ゴ オ゛オ゛オ゛!!」

バヒュン!



拳の雨に曝され、引き抜かれた牙で片目を貫かれた怪物は、怒りの咆哮と共にプラズマキャスターを起動させてマミを撃った。

強烈な光と共にマミの右肩から先が吹き飛び、彼女の血と肉片が辺り一面に飛び散った。

衝撃を受けたマミが大きくのけ反っている間に、プレデターは第二射のエネルギーを充填しながら照準を変える。

バキッ

しかしそのプラズマキャスターは、マミの左手にもぎ取られた。


マミ「死になさいッ!!!」チャキッ

プレデター「!!」



ドオオオオオオオオオオン!!!!











緑色の閃光が消えた時、そこに残ったのは、腹をえぐられ両腕を失った血だらけマミだけだった。






マミ(もう……動けない…)


マミ(こんな怪我…いくら魔法少女でも、治せるはず無いものね…………)




マミ(死んじゃうのね…私……)





  すみません。 …あたしはどうすればいいんでしたっけ?



  すみませんマミさん!遅れちゃいました!



  寂しくなった時に、友達が傍にいてくれたらいいなって思って、何が悪いんですかっ?

  魔法少女は、絶対に一人で戦わなくちゃいけないなんて、そんなのおかしいじゃないですか!




マミ(ごめんなさい……美樹さん……)


マミ(私が貴女を誘わなければ……一人でいる事に、耐えていたのなら……)


マミ(貴女は戦わなくて済んだのに……)


マミ(あんな死に方する事も無かったのに……)






マミ「美樹さん……」








マミ「美、樹…さん………」




















工事中とされているビルの中


シュワ「これで全員なのか?」

スタローン「出来るだけ集めた」



ヴァンダム「…………」

ラングレン「…………」

ほむら「…………」

杏子「っ……っ………」ソワソワ

テリークルーズ「…………」

ミッキーローク「っぐ…っぐ…」グビグビ



シュワ「心配だな」

スタローン「タイミングが合えばもっと呼べたんだが、俺の仲間にもプライベートタイムってのがある。簡単にはいかん」

ミッキー「ゴぇぷ」

ほむら「!」

ミッキー「おぉっと失礼、気を悪くしないでくれ。へへへ」

スタローン「ツール。早く酒を飲み干せ」

ミッキー「ツールじゃねえ今はミッキーだ。ここじゃ偽名は無しだって言ったのはお前だぞ?」

スタローン「揚げ足を取るのはやめろ。あとテリー」

テリー「ん~?」

スタローン「剃刀はしまえ」

テリー「ククク…」

杏子(危ねえぞコイツ…)



シュワ「これよりワルプルギス撃滅作戦を開始する!! 今日はその第一段階として、兵器の取引と設置を同時に行う!!」


スタローン「ヴァンダムとラングレンは兵器大好きっ子のテリー主導の元、受け取った武器でこのビルに武装を施せ。ミッキーとお嬢ちゃん達は取引役だ。ビルの地下で待機してる商人共から武器を巻き上げ、テリー達に渡してくれ」


ミッキー「ああは言ってるがなお嬢ちゃん。実際はただ紙切れにサインしまくるだけの仕事だ。有名人になったつもりでパパッと済ませちまおう」ヒソヒソ

ほむら「…形だけの取引なら、そんなの省略すればいいと思うけれど」ボソ…

ミッキー「それは駄目だ、向こうにもメンツってもんがある。そいつを一度破っちまえば、後は皆殺しだ」ヒソヒソ

ほむら「それはごめんだわ。私はまだ死ぬ訳にはいかない」ボソ…

ミッキー「バカ言っちゃいけねえ俺らが皆殺すんだ」ヒソヒソ

ほむら「!?」

シュワ「ここの準備が完了し次第、別のビルへ向かう!!行動開始だ!!時間は無いぞ急げ!!!」


タッタッタッタッ…


シュワ「ほむら、ちょっと来てくれ」

ほむら「…………」スタスタ



シュワ「アイツらには君の事情を話してない。君の目的は教えたが、君が時間遡航者である事や、君が守りたいものが何なのかは秘密にしてある。スタローンは別だが」

ほむら「そのスタローンという人は、あの人?」

スタローン「……………」

シュワ「アイツだ」

ほむら「何故彼には話したの?」

シュワ「過去に俺と同じ部隊で、魔法少女の秘密を知った仲間だからだ」

ほむら「………そう」



杏子「なぁ、アンタ……」

スタローン「なんだ」

杏子「………ロッキー?」

スタローン「?」

杏子「…ぃ、いや!何でもない!忘れてくれっ」

スタローン「……………」



ミッキー「おい頼むぜ。早くしろよォ」

ほむら「……………」スタスタ

杏子(絶対ロッキーだアイツ)タッタッタッ


夜のまどホーム


ピーンポーン


まどか「!」

詢子「?」

タツヤ「んむ?」モグモグ


和久「…誰だろう、こんな時間に」

詢子「大方宗教の勧誘とかじゃないかい? ったく、一家の団欒くらいそっとしといてやろうって思わないのかねえ」ガタ…

和久「あ、いいよ。僕が出るから」ガタッ…

まどか「………………」

タツヤ「……まろかー?」




和久「まどかー、美樹ちゃんが来てるけど」スタスタ


まどか「!?」

詢子「え?こんな時間にかい?」

タツヤ「ふわーい!」キャッキャッ




さやか「ごめんなさい、こんな夜遅くに訪ねてしまって」


詢子「どうした? こんな夜中に来るなんて珍しいじゃないか」

さやか「それが、財布の中に家の鍵入ってたんですけど、財布ごと落としちゃいまして……両親も今日はいないし、途方に暮れちゃって……」

詢子「警察に事情は話したかい?」

さやか「話しました。 そしたら、今日は知り合いの家を訪ねなさいって言われまして……」

詢子「へえ~……それにしては、付き添いの警官さんがいないじゃない? 最近の警察って、財布を落とした女子中学生に一人で夜道を歩かせるんだねぇ~」ニヤ…

さやか「うっ……ぁ、あのそれは…ちょっと理由がありまして…」

詢子「いいよ。アタシだってそういう経験、一度や二度はあるからね。 まぁ、いい女になるための通過儀礼みたいなもんさ」フフフ

まどか「? ?」

さやか「ぃ、いいんですかね……」モジ…

詢子「パパはどう思う?」

和久「うーん…家出は良いことだとは思えないけど、友達の家に遊びに行くのはいいんじゃないかな?」


まどか(家出…?)


詢子「まどかはどうだい?」

まどか「えっ?………いいけど…」

詢子「うん。 …ほら、ウチの家族は結構こういうのには緩いんだ」フフン

詢子「今日は親御さんもいないんだろ? 遠慮なんてしないで、泊まっていきなよ」

さやか「すみません。えへへ…」

まどルーム


タツヤ「…………」コックリコックリ


さやか「ごめんねまどか。シャワーまで使っちゃって」

まどか「ううん、そんなの気にしないよ。ママが使ってって言ったんだし」

さやか「でも晩御飯も頂いちゃったしさぁ、これはちょっと甘えすぎかなって思ったりして」

まどか「そんな事ないよ」

さやか「そっかなぁ……」


まどか「………」


さやか「………」






まどか「……あの、さやかちゃ…」

さやか「ごめん。本当はあたし、財布持ってる」

まどか「え……」

さやか「お父さんとお母さんがいないって話も嘘。 本当は今も、あたしが帰ってくるのを待ってる。さっきも携帯に電話来たし」

さやか「あと家出でもないよ? お父さんとお母さんとは仲いいし、喧嘩もしてない」


まどか「さやかちゃん……そしたら、なんで…」


コンコン


まど・さや「!」

ガチャッ


詢子「おっ、さっそく修学旅行か~?」

まどか「どうかしたのママ?」

詢子「ん、アタシ達先に寝るから、あんまり騒がないでねって言いに来ただけさ。タツヤを取りに来たってのもあるけどね」

タツヤ「………」ポケー

詢子「美樹ちゃんも早く寝なよ?」

さやか「っ…はい~」

詢子「うん。じゃ、おやすみー」

タツヤ「おやふいらはい」

さやか「うん、おやすみ」


バタン

さやか「…それで…まどかの家に来た本当の理由っていうのは…」

まどか「べ、別にいいよ言わなくても! …明日でもいいから、そんなに焦らなくても…」

さやか「そういう軽い話じゃない! 大事な事なのよ!!」

まどか「っ…………」


さやか「あの怪物の正体が分かったの」


まどか「!!」


さやか「まどかには言わないようにって、マミさんには言われてたけど……あたし達だけじゃ、もう手に負えなくなってきてるから…」


まどか「……それって、どういう事なの?」


さやか「まどかとあたしを襲った怪物はプレデターって言って、人を殺す狂暴なヤツなんだ。 そいつに今日、あたしは襲われたの」

さやか「あたしはやられちゃったけど、死んではいなかった。 気が付いたら、どこかのビルの屋上に寝かされてた」

さやか「それでまどかの事が心配になったから、ここに来たの」
まどか「ここにって……さやかちゃん、怪我したんでしょ!? …なんで私なんか…」

さやか「なんかとは失礼ね。まどかはあたしの一番の友達だよ? 心配するに決まってんでしょ」

まどか「でも…そんなの……さやかちゃんが…」

さやか「だから良いって。 大丈夫!さやかちゃんは負けません!」


まどか「………ぅぅ…」グスッ


さやか「ああああぁ…んもーまどかは面倒くさいなぁ」ギュッ

まどか「っ……っ…」

さやか「よしよし。 本当にもー、まどかはちょっといい子すぎだよ? 少しは自己中でもいいのにさぁ」アハハ

まどか「ぐすっ……うぅぅ…っ」

さやか「はぁ……ちょっとあたしトイレ行ってくるから、あたしが帰って来るまでには、いつものまどかに戻っててよね」

まどか「うん……」

ガチャッ バタン

まどか「……ん……」ゴシゴシ

ガチャッ

まどか「?」


さやか「ばきゅーん!」


まどか「ふぇ?」

バタン

まどか「……………」




まどか「………」クスッ

ジャー


詢子「…………」

ガチャッ トテトテ

詢子「もういいかい?」

タツヤ「うん、もういい」ニパー

詢子「よし!じゃ、寝直すか!」

タツヤ「…………」テテテ…

詢子「! おいタツヤ、今日はまどかとは…あーあ行っちゃった」


タツヤ「………」テテテ

さやか「……」

タツヤ「あ、さやかねーちゃ」

<タツヤー、そっちじゃないぞー

タツヤ「ねーちゃ!」テッテッテッ


タツヤ「ね……」









「………………」









タツヤ「………………」





「………………」















タツヤ「……だーれ?」





さやか「…………」



詢子「あーやっぱりいた。そっちは違うだろ」スタスタ

タツヤ「…………」テテテ…ピトッ

詢子「ん? タツヤ?」



さやか「……………」



詢子「お、美樹ちゃんもトイ…」

スタスタ…


詢子(…じゃなかったみたいだね)

詢子「ま、いっか。あ~あ、ねみぃー……」



詢子「って…おい、それじゃ歩けないだろ? よっこいしょっと」

タツヤ「…………」

詢子(タツヤをおんぶするのも久しぶりだな)フフ

ガチャッ バタン

詢子「ふー」

和久「おかえり。 あれ?何かあったのかい?」

詢子「タツヤが急に足にしがみついてきたからさ、おんぶして来ただけだよ」

和久「何か怖いものでも見たのかな?」

詢子「怖いものねえ……別に無かったと思うけど」

詢子「あ、突然美樹ちゃんに会ったから驚いてんのかもね」

和久「美樹ちゃんに?」

詢子「なんかあの子ぼーっとしてたから、タツヤから見ればアレはアレで怖かったんじゃないの?」フフ


和久(…よく分からないけど、なんでもなさそうだね)


和久「でも全然降りないね、タツヤ」ハハ

詢子「そうだねぇ~…はぁーまいったー」



バタン



まどか「あ、おかえりさやかちゃん」


まどか「目の辺りとか、赤くなってないかな…」ティヒヒ




さやか「……………………」




まどか「…?……さやかちゃん?」


さやか「………………」



和久「さ、タツヤ。もう降りないとだめだよ」ヒョイッ

タツヤ「…………」トン


詢子「ふあ……あー眠い」

和久「お疲れ様。僕らももう寝よう」

詢子「そうだねぇ。明日も仕事あるし…」

タツヤ「おねーちゃんじゃらい」

和久「?」

詢子「?」


タツヤ「さやかおねーちゃん…おねーちゃんじゃらい」



詢子「………どういう意味?」

和久「さあ……僕にもよく分からないよ」






<いやあああああ!! やあああああああああ!!!





和久「!!」

タツヤ「……………」


詢子「……今の声って…」


和久「…まどかの…」




ダッ

和久「あっ!」

ガチャッ タッタッタッ

タッタッタッ

詢子「まどか!!入る…」ガッ


<オ゛オ゛オ゛オ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛! !


詢子「!!!!」





詢子(……なんだよ…今の………)





<ママぁ!! パパぁ!!! 


詢子「!! まどかぁ!!!」


ガチャッ


詢子「………ぇ……?」



「ああああああああぁあぁああぁぁぁああああああ」



まどか「ママぁ!!ママあぁ!!!」







詢子「美…樹……ちゃん…?」











何故『それ』をそう呼んだのか、理由は分かっていた。
目の前の何かに美樹さやかの面影があったからだ。

大きく歪んでいたとしても、誰しもが紙に描かれた犬を『これは犬だ』と思うように。 犬であって欲しいと願うように。

それの手と、足と、顔の上半分は、紛れも無く美樹さやか本人の物だった。

青い髪に、年相応の手足。 くりっとした目の中で輝く瞳。
見間違う訳が無かった。



だが、見間違うはずの無い物が、人知を超えた異物であった時。

ほんの2時間前までは照れたり笑ったりしていた子供が、その時と同じ目つき、同じ顔つきで、密集した夥しい量の牙と舌を蠢かせた時。







物体「ぁあああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」







親しき人は心の底から戦慄する。


友達だったからこそ、愛情や友情を感じていたからこそ、それ以上の親しみや愛を模倣してこの部屋まで来た『それ』に。



投下完了!書き溜めに入ります!

今回はミッキーと愉快な仲間達が出てきましたが、キャラクターを増やしすぎるとSSの流れが冗長になってしまうため、今回の投下限りのゲストとしてご容赦下さい。

あと「物体さやかの声のイメージが掴みづらい」という方は
ひらがな表記の叫びをオクタヴィア発現時の叫びで、カタカナ表記を物体の叫び声(野太い方)で脳内再生すればOKです。

だ か ら 和 久 っ て 誰 だ よ

和久ではなく知久でした。
事前に確認せずに書いた事をお詫びします。本当に申し訳ございませんでした。

私も書いた直後に気付きましたので、ここに訂正させていただきます。

まどかパパの名前は和久ではありません。知久です。

本当に申し訳ありませんでした。

夜のまどホーム


ピーンポーン


まどか「!」

詢子「?」

タツヤ「んむ?」モグモグ


知久「…誰だろう、こんな時間に」

詢子「大方宗教の勧誘とかじゃないかい? ったく、一家の団欒くらいそっとしといてやろうって思わないのかねえ」ガタ…

知久「あ、いいよ。僕が出るから」ガタッ…

まどか「………………」

タツヤ「……まろかー?」

詢子「? どうしたまどか?」



知久「まどかー、美樹ちゃんが来てるけど」スタスタ


まどか「!?」

詢子「え?こんな時間にかい?」

タツヤ「ふわーい!」キャッキャッ




さやか「すみません、こんな夜遅くに訪ねてしまって」


詢子「どうした? こんな夜中に来るなんて珍しいじゃないか」

さやか「それが、財布の中に家の鍵入ってたんですけど、財布ごと落としちゃいまして……両親も今日はいないし、途方に暮れちゃって……」

詢子「警察に事情は話したかい?」

さやか「話しました。 そしたら、今日は知り合いの家を訪ねなさいって言われまして……」

詢子「へえ~……それにしては、付き添いの警官さんがいないじゃない? 最近の警察って、財布を落とした女子中学生に一人で夜道を歩かせるんだねぇ~」ニヤ…

さやか「うっ……ぁ、あのそれは…ちょっと理由がありまして…」

詢子「いいよ。アタシだってそういう経験、一度や二度はあるからね。 いい女になるための通過儀礼みたいなもんさ」フフフ

まどか「? ?」

さやか「ぃ、いいんですかね……」モジ…

詢子「パパはどう思う?」

知久「うーん…家出は良いことだとは思えないけど、友達の家に遊びに行くのはいいんじゃないかな?」


まどか(家出…?)


詢子「まどかはどうだい?」

まどか「えっ?………いいけど…」

詢子「うん。 …ほら、ウチの家族は結構こういうのには緩いんだ」フフン

詢子「今日は親御さんもいないんだろ? 遠慮なんてしないで、泊まっていきなよ」

さやか「すみません。えへへ…」

まどルーム


タツヤ「…………」コックリコックリ


さやか「ごめんねまどか。シャワーまで使っちゃって」

まどか「ううん、そんなの気にしないよ。ママが使ってって言ったんだし」

さやか「でも晩御飯も頂いちゃったしさぁ、これはちょっと甘えすぎかなって思ったりして」

まどか「そんな事ないよ」

さやか「そっかなぁ……」


まどか「………」


さやか「………」






まどか「……あの、さやかちゃ…」

さやか「ごめん。本当はあたし、財布持ってる」

まどか「え……」

さやか「お父さんとお母さんがいないって話も嘘。 本当は今も、あたしが帰ってくるのを待ってる。さっきも携帯に電話が来た」

さやか「あと家出でもないよ? お父さんとお母さんとは仲いいし、喧嘩もしてない」


まどか「さやかちゃん……そしたら、なんで…」


コンコン


まど・さや「!」

ガチャッ


詢子「おっ、さっそく修学旅行か~?」

まどか「どうかしたのママ?」

詢子「ん、アタシ達先に寝るから、あんまり騒がないでねって言いに来ただけさ。タツヤを取りに来たってのもあるけどね」

タツヤ「………」ポケー

詢子「美樹ちゃんも早く寝なよ?」

さやか「っ…はい~」

詢子「うん。じゃ、おやすみー」

タツヤ「おやふいらはい」

さやか「うん、おやすみ」


バタン

さやか「…それで…まどかの家に来た本当の理由っていうのは…」

まどか「べ、別にいいよ言わなくても! …明日でもいいから、そんなに焦らなくても…」

さやか「そういう軽い話じゃない! 大事な事なんだよ!!」

まどか「っ…………」


さやか「あの怪物の正体が分かったの」


まどか「!!」


さやか「まどかには言わないようにって、マミさんには言われてたけど……あたし達だけじゃ、もう手に負えなくなってきてるから…」


まどか「……それって、どういう事なの?」


さやか「まどかとあたしを襲った怪物はプレデターって言って、人を殺す狂暴なヤツなんだ。 そいつに今日、あたしは襲われたの」

さやか「あたしはやられちゃったけど、死んではいなかった。 気が付いたら、どこかのビルの屋上に寝かされてた」

さやか「それでまどかの事が心配になったから、ここに来たの」
まどか「ここにって……さやかちゃん、怪我したんでしょ? …なんで私なんか…」

さやか「なんかとは失礼ね。まどかはあたしの一番の友達だよ? 心配するに決まってんでしょ」

まどか「でも…そんなの……さやかちゃんが…」

さやか「だから良いって。 大丈夫!さやかちゃんは負けません!」


まどか「………ぅぅ…」グスッ


さやか「ああああ…んもー、まどかは面倒くさいなぁ」ギュッ

まどか「っ……っ…」

さやか「よしよし。 本当にもー、まどかはちょっといい子すぎだよ? 少しは自己中でもいいのにさぁ」アハハ

まどか「ぐすっ……うぅぅ…っ」

さやか「はぁ……ちょっとあたしトイレ行ってくるから、あたしが帰って来るまでには、いつものまどかに戻っててよね」

まどか「うん……」

ガチャッ バタン

まどか「……ん……」ゴシゴシ

ガチャッ

まどか「?」


さやか「ばきゅーん!」


まどか「ふぇ?」

バタン

まどか「……………」




まどか「………」クスッ

ジャー


詢子「…………」

ガチャッ トテトテ

詢子「もういいかい?」

タツヤ「うん、もういい」ニパー

詢子「よし!じゃ、寝直すか!」

タツヤ「…………」テテテ…

詢子「! おいタツヤ、今日はまどかとは…あーあ行っちゃった」


詢子「…………」スタスタ



タツヤ「………」テテテ

さやか「……」

タツヤ「あ、さやかねーちゃ」

<タツヤー、そっちじゃないぞー

タツヤ「ねーちゃ!」テッテッテッ


タツヤ「ね……」









「………………」









タツヤ「………………」





「………………」









タツヤ「……だーれ?」





さやか「…………」



詢子「あーやっぱりいた。そっちは違うだろ」スタスタ

タツヤ「…………」テテテ…ピトッ

詢子「ん? なんだタツヤ?」



さやか「……………」



詢子「お、美樹ちゃんもトイ…」

スタスタ…


詢子(…じゃなかったみたいだね)

詢子「ま、いっか。あ~あ、ねみぃー……」



詢子「って…ちょっとタツヤ、それじゃ歩けないだろ? よっこいしょっと」

タツヤ「…………」

詢子(タツヤをおんぶするのも久しぶりだな)フフ

ガチャッ バタン

詢子「ふー」

知久「おかえり。 あれ?何かあったのかい?」

詢子「タツヤが急に足にしがみついてきたからさ、おんぶして来ただけだよ」

知久「何か怖いものでも見たのかな?」

詢子「怖いものねえ……別に無かったと思うけど」

詢子「あ、突然美樹ちゃんに会ったから驚いてんのかもね」

知久「美樹ちゃんに?」

詢子「なんかあの子ぼーっとしてたから、タツヤから見ればアレはアレで怖かったんじゃないの?」フフ


知久(…よく分からないけど、なんでもなさそうだね)


知久「でも全然降りないね、タツヤ」ハハ

詢子「そうだねぇ~…はぁーまいったー」



バタン



まどか「あ、おかえりさやかちゃん」


まどか「目の辺りとか、赤くなってないかな…」ティヒヒ




さやか「……………………」




まどか「…?……さやかちゃん?」


さやか「………………」


知久「さ、タツヤ。もう降りないとだめだよ」ヒョイッ

タツヤ「…………」トン


詢子「ふあ……あー眠い」

知久「お疲れ様。僕らももう寝よう」

詢子「そうだね。明日も仕事あるし…」

タツヤ「おねーちゃんじゃらい」

知久「?」

詢子「?」


タツヤ「さやかおねーちゃん…おねーちゃんじゃらい」


詢子「………どういう意味?」

知久「さあ……僕にもよく分から…」




<いやあああああ!! やあああああああああ!!!




知久「!!」

タツヤ「……………」


詢子「……今の声って…」


知久「…まどかの…」




ダッ

知久「あっ!」

ガチャッ タッタッタッ

タッタッタッ

詢子「まどか!!入る…」ガッ


<オ゛オ゛オ゛オ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛! !


詢子「!!!!」





詢子(……なんだよ…今の………)





<ママぁ!! パパぁ!!! 


詢子「!! まどかぁ!!!」


ガチャッ


詢子「はっ」



「ああああああああぁあぁああぁぁぁああああああ」



まどか「ママぁ!!ママあぁ!!!」







詢子「美…樹……ちゃん…?」











何故『それ』をそう呼んだのか、理由は分かっていた。
目の前の何かに美樹さやかの面影があったからだ。

大きく歪んでいたとしても、誰しもが紙に描かれた犬を『これは犬だ』と思うように。 犬であって欲しいと思うように。

それの手と、足と、顔の上半分は、紛れも無く美樹さやか本人の物だった。

青い髪に、年相応の手足。 くりっとした目の中で輝く瞳。
見間違う訳が無かった。



だが、見間違うはずの無い物が、人知を超えた異物であった時。

ほんの2時間前までは照れたり笑ったりしていた子供が、その時と同じ目つき、同じ顔つきで、密集した夥しい量の牙と舌を蠢かせた時。







物体「ぁあああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」







人間は心の底から戦慄する。


友達だったからこそ、愛情や友情を感じていたからこそ、それ以上の親しみや愛を模倣してこの部屋まで来た『それ』に。



投下完了です。名前の読み間違い、書き間違いには皆さんも気をつけましょう。

>>555さん、ご指摘感謝します。

体中を軋ませながら絶叫する『それ』を前にして、詢子は忘れて久しい恐怖を感じていた。

頭から血の気が引いていく感覚と共に、脚からは力が抜け、視界がぐるぐると回り出す。
それらは強烈な吐き気と疲労を詢子にもたらし、彼女は倒れるように後ずさると、壁にもたれ掛かった。

…ママ  …ママ

目の前の娘の声が、遥か遠くから反響して聞こえる。
部屋の隅のベッドで泣き叫んでいるのに、その声はあまりに遠かった。


バキャッ


『それ』の腹部が生々しい音を立てて開くと、その肉塊からさやかに食べさせた晩御飯が現れた。

消化されかけの具材とご飯とが複雑に絡み合い、筋肉と骨を形成しながらさやかの顔を再現するが、『それ』は完成を前にして舌を長く伸ばし、ムチのようにしならせ始め、部屋にある物全てを無茶苦茶に攻撃し始めた。

壁紙は切り裂かれ、ぬいぐるみからは綿が噴き出す。
パソコンの液晶も粉々に打ち破られた。


まどか「ママあああああああああああああ!!!!」

狂乱状態に陥ったまどかの一際大きい叫びが部屋に響いた時、詢子の頭からタガが外れた。


詢子「やめろおおおおおおお!!」


脚に力が戻るのも待たずに詢子は駆け出して、何も持たずに『それ』へと飛び掛かった。


だが、『それ』が伸ばした舌の異常に発達した力に腰を捕まれ、部屋の隅にあるベッドまで放り投げられてしまった。

詢子はそれでも抵抗の意思をあらわに、素早く起き上がってまどかと『それ』の間に割って入り、落ちていた液晶の破片を拾った。


詢子「まどか!! コイツはアタシが何とかするから、お前は逃げろ!!」

まどか「いやぁ!やめてぇ!!ママ死んじゃうよぉ!!」

詢子「うるせえ!! そんな事知るかぁ!!」

まどか「やめてええぇ!!!」



知久「詢子さん!!」




詢子が捨て身の最終手段に出る寸前、部屋の入口から彼女の夫が現れた。

彼の手には刃渡り15センチ程の包丁が握られている。


知久「………………」


しかし知久は『それ』を見て呆気に取られた。
聞いた事の無いような声を聞いて刃物を調達してきた彼だが、部屋の中に居る者が動物ですらない事など予想していなかったのだ。


物体「ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ぁぁあああ!」バウン バシャアアア!


詢子「!!」

まどか「ひっ!!」



窓を破って部屋を出た『それ』は半裸のまま走り去り、部屋には破れた制服の切れ端が残った。

夜の廃工場

マミ「はっ!?」ガバッ



マミ「………………」ハァハァ








マミ(…私……生きてるの?)


マミ(手も治ってる…お腹の穴も…)


マミ(あの状態から回復出来るなんて…信じられない…)




マミ(!! それなら美樹さんだって、もしかしたら…!)ダッ

タッタッタッタッ スタッ









マミ「…いない……」



マミ(でも、ここに美樹さんの遺体が無いのなら、きっと……どこかでまだ生きてるはずよね)

マミ(美樹さん!どこなの!?返事して!)

マミ(……やっぱりテレパシーは通じない)

マミ(携帯は…)ピッピッピッ…



携帯<お掛けになった電話は、現在電波の届かない所に…



マミ(ダメね…)パチッ

ピピピピピッ ピピピピピッ


マミ「!! 美…」チャッ




マミ「…鹿目さん?」




ピッ




まどか<マミさん…ひっく……うぅぅ…>

マミ「鹿目さんよね? ……何かあったの?」

まどか<はい……今、警察の人が家に来てて…グスッ………それで…>

マミ(警察!?)


マミ「…落ち着いて。何があったのか知らないけれど、警察の方が来てるなら安心よ」

まどか<あの……今……>

マミ「鹿目さん?」


警察官<お電話代わりました。こちら見滝原署の者ですが、貴女が巴マミさんでよろしかったでしょうか?>


マミ「!……はい。私ですけど……」





夜のまどホーム前



タッタッタッタッ 


マミ「!」

警官1「あ、そこの規制線越えないでね」

マミ「っ…」


警官2「君が巴マミさん?」

マミ「! はい」

警官2「わかりました。ではこちらの方へ」スタスタ

マミ「…………」スタスタ




マミ(パトカーが5台も停まってる……)スタスタ


マミ(見た事の無い車もある。警官の人数も…普通じゃない…)スタスタ


マミ(こんな形で鹿目さんの家に来る事になるなんて……)スタスタ




マミ(鹿目さん…無事よね……)スタスタ






警官2「警部、お連れしました」

警部「どうも。貴女が巴さん?」

マミ「はい」

警部「私は見滝原署の警部です。正式な名称とかもあるのですが…まぁ、今は省きましょう。 さ、こちらへ」スタスタ

マミ「?」スタスタ



警部「事件解決の為に協力していただきたいのですが、よろしいですか?」スタスタ

マミ「出来る範囲でなら……それより、ここで何があったんですか?」スタスタ

警部「それについては調査中なので詳しくは言えませんが、私達は夜分を見計らっての強盗の線で捜査を進めています。証言を取りたいので、貴女に鹿目まどかさんを安心させてほしいんです」スタスタ

マミ「…………」スタスタ




まどか「グスッ…ヒック…」



マミ「……鹿目さん?」

まどか「! …ま…マミさん!!」タタッ ギュッ

マミ「!」


まどか「ふっ、うぅっ……うええええぇぇええぇ…」ポロポロ


マミ「大丈夫…大丈夫よ…」

マミ「どう?落ち着いた?」

まどか「はい……」ヒック

マミ「お父さんとお母さんはどこ?」

まどか「パパは…現場の説明にって、連れてかれました。…ママは…」

まどか「ママは、肋骨にヒビが入ったって…グスッ…それで、救急車で……」


マミ「病院に搬送されたのね?」

まどか「はい…」ポロポロ

マミ「……………」


まどか「…………タッくん…タッくんは…」グスッ

マミ「タッくん?」

まどか「弟なんです!……タッくん!…タッくん!!」

警部「我々が保護していますので心配はいりません」

婦警「さっきまでは泣いてたんですが、今は大分落ち着きましたよ」


タツヤ「……」スー…スー…


まどか「よかったぁ…」グスッ




警察無線<警部、警部>

警部「ん、失礼」カチッ

警部「どうした?」

無線<その……奇妙な物を発見しました>

警部「妙な物では分からん。見たままの状況を話せ」

無線<事件現場付近のバスルームで、鑑識の一人が誤ってネズミを踏んでしまったようなのですが…>


無線<……そのネズミ、致命傷と一目で分かる傷を負ったにも関わらず生きてるんです。 それに……>


警部「…それにの次は?」

無線<……ネズミの頭が分裂しているんです…傷口から、生えるようにして…>

警部「何?」

無線<バスルームの他にも、キッチンの排水溝にも同様の動きを見せる肉のような物が詰まっています。…これは最悪の場合、我々のいる現場は何らかのウイルスや薬物による汚染を受けている可能性が……>



警部「………………」カチッ

警部「君、二人を頼む」

婦警「はい」


スタスタスタ…





マミ「…鹿目さん。ここで何が起こったのか聞かせてもらえないかしら」

まどか「……………」


マミ「……ごめんなさい。…まだ言えないわよね」


まどか「さやかちゃんが…」


マミ「?」


まどか「さやかちゃんが…怪物になったんです…」


マミ「………それってどういう事?」

まどか「でも変わっちゃう前は普通のさやかちゃんだったんです! 声も、見た目も、変なところとかも、全然無くて……それなのに…」グスッ


マミ「と…とにかく、美樹さんが貴女の家に来た後に『怪物』に変わったのね?」

まどか「あとっ…あと、それから…!」ポロポロ

マミ「待って鹿目さん!落ち着いて。いきなり色々聞いたのは悪かったわよね?順を追って…」

まどか「さやかちゃんが言ったんです! プレデターが人を殺すって!」

マミ「!!」


まどか「私達だけじゃ手に負えないって!」


マミ「…………」



まどか「教えてください! プレデターって何なんですか!?さやかちゃんに何があったんですか!!?」



タッタッタッタッ



警部「はぁ、はぁ……捜査は、中止だ。…何か分からないが、我々の手に負えない事が起きてるらしい。この家は異常だ」

婦警「?」


カチッ

警部「各員、捜査中断!ここを我々ごと封鎖する!誰一人として出る事は許さない!」

マミ「!?」

警部「この家の中で見つかった動植物に異常が確認された!何らかの汚染の可能性がある以上、汚染拡大のリスクを防ぐための措置として…」

婦警「!! 警部!屋根に何かいます!」

警部「?」




カカカカカカカカ…






まどか「あ……あ、ああ…!」




マミ(なんて事……)










片目のプレデター「………」チャキン キュイイイイイ…



投下完了!
予想以上にハードな諸事情によって、投下予定が伸びに伸びてしまいました。
申し訳ありません…

マミホーム


ガチャッ バダン!


マミ「はぁ、はぁ、はぁ…」

まどか「はぁっ、はぁっ……けほっ…」

マミ「はぁ…何とか、逃げ切れたみたいね……タツヤ君、いる?」

まどか「はい…」グスッ


タツヤ「……」スー…スー…


マミ「ふふっ、こんな時でも寝てるなんて、この子将来は結構な大物になったりして」


まどか「……もう家に帰れない……パパとママにも…ヒック…会えない……警察の人達も、みんなやられちゃった」ポロポロ


マミ「…大丈夫。貴女のパパとママはきっと無事よ。お母さんは病院にいるから平気だし…お父さんも警察の人と逃げれてたじゃない」


まどか「なんで…どうしてこんな事に…なっちゃったんですかね…」グスッ


マミ「……私にも分からないわ」


テレビ<昨日の高層ビル警備員乱射事件に関して、新たな情報は今のところ…


マミ(…テレビつけっぱなし……消したと思ったけど)




テレビ<只今、臨時ニュースが入って参りました。今日の夜10時頃、見滝原市内のコンビニを謎の怪物が…




マミ「……………!!!」



ダッ

まどか「! ま、マミさん…?」


タッタッタッ


マミ「……」タタッ





テレビ<これは監視カメラの映像です。何か金属の輪のような物を…



ピピピピピッ ピピピピピッ ピッ


老人「よおセガール。何か用か?」

老人「……ふむ。つまりまたわしの力を借りたいという訳だな?生憎だが…」


老人「!?」





老人「………………」







老人「…まさかお前がわしの、いや私の正体に気付いていたとは思わなかった。…うーむ…変装にはそれなりには自信があったんだが…」

老人「ふむ…うむ、それは分かった。だがしかしだ。正体がバレた今でこそ言うんだが、それは既に私自身何度も試しているぞ?」

老人「…………」

老人「要するに、もう一度試せと言うんだな?」

老人「では結果が出るまで待っていてくれ。いや、電話をしようにも出来ないだろうがな」ピッ



老人「やれやれ、旧型モデルだったら滑走路を走り回るところだった」カチャカチャ

老人「生ゴミは満タン!ミスターフュージョンも万事良好!」

老人「あとは天才的頭脳が導き出した理論という壁を超えるだけなのだが……まあ、引け腰になっていても進歩はあるまい」

老人「前回は過去へ飛んで未来を変えようとしたから失敗したのだ。未来に飛ぶだけなら負担が減るかもしれん」


老人は大きな声で独り言を言いながら物々しい車に乗り込むと、車内にある謎の機械に数字を入力した。







ドク「これも人類の未来を守るため!私の研究をインキュベーターの手から守るためなのだ!」



ドク「おお!私の愛しいデロリアンよ!今こそ私のタイムトラベル史史上最新にして最難関の理論の壁を打ち破るのだ!」





デロリアンと呼ばれる車は宙に浮くと、加速しながら青い光を発して、あっという間に消えてしまった。

ドク「んぬうぅぅおおお!」ガタンガタン

七色の光に包まれたデロリアンは、激しく揺れながら未来へと向かって飛び続けた。
しかし目的の未来には一向にたどり着かない。
揺れは一層激しさを増し、車内のメカは火花を跳ばす。


ドク「む!?」


そして、何かを引き裂くような音と共に七色の光が消え、ドクの目に未来が映った。

破壊の嵐に見舞われて荒廃しきった見滝原の全景を、ドクは自分の脳に刻む。


その直後に激しい揺れが再びデロリアンを襲い、デロリアンはまるで跳ね返される様に後進して、現代へと戻った。






ドク「………やはり駄目だったか」ピッピッピッ プルルルッ

セガホーム

ピッ


セガール「どうだった?」

ドク<失敗だよ。万全の状態で挑んだのだが、やはり奇跡でも起きない限りは成功せんようだ>

セガール「原因は?」

ドク<科学的見地から言えば皆目検討がつかん。だがしかしだ。これはあくまで既存の科学的見地から見た場合の推理であるというだけで、私の科学の推理ではない>

セガール「……………」


ドク<私はこれは何か超自然的に強力な力……仮に運命や因果とでも言おうか。それが作り出した何らかの結界じみた物に進路を塞がれているのではないかと推測した>


セガール「…そいつはどういう事だ?」


ドク<タイムトラベルをするにあたって、旅行者の前に立ち塞がり妨害する物理法則の強弱が、仮にその未来や過去が抱えている『運命の糸』の量や力によって決定されるならば……という、私個人の考えだ>

セガール「……そりゃなんだ?つまり…」


ドク<蝶の羽ばたき、時空レベルの『バタフライエフェクト』だよ。 過去や未来に飛ぶという行為は、どんなにささいな物にせよそれらに干渉して変化を生じさせる事に外ならない>


ドク<その羽ばたきが生む波紋の影響力は計り知れず、人間や物体、文化や、最悪の場合地球全体に影響を及ぼす可能性すらある>

ドク< 大袈裟に言えば、未来や過去で人を助けたり空き缶を蹴飛ばしたりするだけで、国を一つ消すケースも考えられるのだ>


ドク<そして改変したそれらの過去や未来に、万が一にも改変した者本人が行けば、その人物はかなりの確率でそこの運命に閉じ込められ、一生を終える事になる>


セガール「…それがアンタにどう関係するんだ? 閉じ込められる以前に、アンタは通れないんだぞ?」

ドク<そう!通る事が出来ない!私のデロリアンではかの未来へは行けないのだ!それは何故か!?>

セガール「なんでだ?」

ドク<未来そのものが背負う運命の規模があまりに巨大過ぎるのだ。タイムトラベラーの持つ影響力を抑え、その未来に元からいた者達か、あるいはその未来の中心に位置する者でなければ変化を生じさせる事が出来ない程にな>


セガール「巨大ってのは…さっき言った国家消滅のレベルか?」

ドク<分かっとらんなセガール。それどころではない>

セガール「?」





ドク<全宇宙の法則が変わるかもしれんのだ>





セガール「…………」


ドク<つまり、これからの宇宙の在り方は、この時間軸に元からいた者と、未来の中心部の動向に掛かっているという訳だ>

ドク<もちろんこれは仮説の域を出ないし証明する手段も無いが……もし事実ならば、私のデロリアンが時を越えられないのも、お前の話に出てきた『暁美ほむら』という少女が、今だに運命を変えられないのも頷けるというものだ>


ドク<暁美ほむらは鹿目まどかの為だけに『時を一度ゼロに戻して、別の運命を持つ新たな時間軸として再生する』という方式のタイムトラベルを行い続けた>

ドク<だからこの時間軸の中心は鹿目まどかになっている>

ドク<だが繰り返した分だけ、タイムトラベラーを妨害する因果のパワーも溜まっていき、そのパワーが暁美ほむらの努力を帳消しにする程強力になった>

ドク<そして因果のパワーは未来を変えようとするデロリアンにまで影響を及ぼし、デロリアンは時を超える事が出来なくなった。 プレデターの出現も、恐らくは暁美ほむらのタイムトラベルによってこの時間軸に蓄積された因果のパワーによるものだろう>

ドク<このままでは、暁美ほむらは半永久的に続く時の負のスパイラルに囚われ事になる>

ドク<だが、この時間軸に限っては、そのスパイラルを断ち切れる可能性を秘めた者…『元々その時間軸にいた者』がいる>


ドク<それがお前なのだセガール>



セガール「……………」



ドク<宇宙の命運は、お前の双肩に掛かっているのだ>



セガール「はぁー……背負う物が増える一方だな」

ドク<? そうなる事を予想していたんじゃないのか?佐倉杏子の父親の遺志を継ぐと言っていたじゃないか。 世界の平和を守り、彼の娘達を守ると約束したのはお前なんだぞ?>

セガール「何も継ぐとは言っちゃいねえよ。意志表示はしたけどな」

ドク<そんな理屈は私には通用しないぞ。それで、お前はどうするんだ?>

セガール「敵が強大な力ってシチュエーションには慣れてるからな。断ち切るさ」


セガール「宇宙だのなんだのはよく分からんが、14~5歳の子供に宇宙の寿命を任せるインキュベーターは悪徳経営にも程があるし、そんな事でもしないと生き永らえる事が出来ない宇宙なんざ、どうせロクなもんじゃねえだろうよ」フフフ





タッタッタッ


杏子「おい!ちょっと来てくれ!」

セガール「待ってくれ。今大事な…」

杏子「電話なんか後ですりゃいいだろ!早く!!」

セガール「分かった分かった行くよ…」スタスタ



テレビ<速報です。今日の夜10時頃…





セガール「…………………」




杏子「な…なあ、コレって…」

セガール「杏子。グリーフシードのストックはあるか?」

杏子「……一応あるよ」

セガール「そうか。モモはどうしてる?」

杏子「今は寝てる」


セガール「…………………」



杏子「クソッ……さやかの奴、どうしてこんな…」ギリッ






セガール「書き置きを書け杏子。捜しに行くぞ」



QB「なんとか上手く行ったみたいで良かったよ」

QB「鹿目まどかはこの計画の中心だからね。恐怖や絶望を感じるのは一向に構わないけれど、それが原因で死なれたり、精神に異常をきたされたりしては困るんだ」

QB「彼女という存在の損壊が僕らにどんな不利益をもたらすのか、彼らも理解してくれているようだ」



QB「さあ、次の段階に入ろう」



プレデター「……………」






カチッ


チクッ

さやか「痛っ!」ガバッ


さやか「っ…てて…何よもう…」



さやか「……あれ? ここどこ?」



さやか(あたし、なんでこんなとこ……ん?何これ?)

さやか(ブレスレットってやつ? にしては、なんかゴツい…)

さやか(こんなの付けてた覚えないんだけど…全然外れないし…)ガチャガチャ


さやか(マミさーん!)


さやか(…やっぱ通じないね、テレパシー)


さやか(っていうか、あたしいつまでここに居たの?)

さやか(マミさん…それにプレデターとか…どうなっちゃったんだろ…)


ガチャッ バタン

さやか「?」



OL1「でもさーそれって大変じゃない?」

OL2「そう本当大変。重労働だわ本っ当」



さやか「………あのー」



OL1「?………!?」

OL2「えっ…」

さやか「おかしな事聞くみたいですけど…ここってどこなんですか?ビルの屋上だから、ここってどっかの会社っぽ…」


バタン


さやか「い……」


さやか「………………なんで逃げるの?」




さやか「……」スタスタ



カチャッ


さやか「!」

カチャッ カチャッカチャッ


さやか「鍵掛けられてる……」


さやか「もー本当訳わかんない…分かったよもー!変身して降ります!」


シュバァッ

スタッ シュバァッ


さやか「ふぅ…早くマミさん見つけないと…」



さやか「!!」ササッ



さやか(……って、今ピンピンしてるんだし、怪我は治ってて当然だよね)


タッタッタッタッ…


さやか(マミさーん!)タッタッタッ


さやか(あーダメだ。もうテレパシーとか諦めよ)タッタッタッ

さやか(! 携帯あったじゃん!気付くの遅すぎじゃ…)サッ

パキャッ パラパラ カチャッ


さやか(!?)





さやか「…なんで…バラバラになって…」





通行人1「うわぁ!」



さやか「!」ビクッ


通行人2「お、おいあの子…」



さやか(え……何?……なんなのコレ?)




さやか(あの時、あの人達はなんで逃げたの?)

さやか(なんであたし、さっき避けられたの?)

さやか(このブレスレットはなんなの?)

さやか(なんであたしの…あたしの携帯が、こんなんになってんの?)


さやか(……おかしい…おかしいよ、なんか…)

警官1「きみ!」

さやか「!?」

警官2「……」ピーッ!



警官達「………」タッタッタッ



さやか「……な…なんなんですか…?」


警官3「美樹さやかさんですね?」

さやか「はい…あの…」

警官3「昨日の事件について話を聞きたいので、署までご同行願います」

さやか「あ、あのっ、あたし…!」



さやか「ぐっ……」ズキッ



警官達「!」

警官3「………」

さやか(いっ…あ、頭がっ…!)


さやか(なに、これ……クラクラする…吐きそう…)


さやか「うぶっ」ガクッ


警官達「……」



さやか(…なんでそんな目で見るの?)


さやか(あたし…何も知らない…)


さやか(何もしてないよ…)



さやか「うっ…げぼっ」ビチャビチャ

警官1「動くな!」

さやか「はぁ、はぁ…げぶっ…げへっ」ビシャバシャ

警官2「やめろ刺激するな。様子が変だぞ」

警官3「下がれ。吐いた物に触るな。汚染されるぞ」



さやか(…なんで…)



シュバァッ



警官達「!?」


警官2「消えた…?」

さやか「はぁ…はぁ…」

さやか「なんなのよ…汚染って、どういう事なのよ…」

さやか「あたし何もしてないじゃん…」ウルウル

さやか「なんであたしを汚い物みたいに言うのよ…」ポロポロ



通行人3「なにあれ?すげー渋滞じゃん」

通行人4「誰だよクラクション押しまくってるの、うるさくてかなわんわ」

通行人5「緊急封鎖だってさ。なんかアレの犯人が近くにいるんだって」

通行人6「…あーテレビの奴か…」


通行人7「そーそー、人間そっくりの化け物が出たって事件。制服とか着てるらしいよ?なっつったっけ?見滝原中の…」


さやか「違います…」


通行人6「?」

通行人7「ん?…!?」

さやか「それ、違います…あたし…」

通行人7「き、君いつからそこに…」

通行人6「! ぉおい!話すなって!」ダッ

通行人7「っ…あ…そういう事だから…」ダッ

さやか「待って!話を聞いて!」

通行人7「ひぃ!」タッタッタッ

通行人6「来るなぁ!」タッタッタッ



さやか「…………」




「ねぇ、あの子」  「うわマジかよ…これヤバイんじゃないの?」

  「関わんなって…」  「ははっ、あいつらめっちゃ走ってる」

「すっげ、ねぇあのさ、今見滝原いんだけどさ、今スゲーって」

カシャ-ッ   ピロリーン

「警察!警察に電話だって早く!!」 「ママ、あの人…」

「やめなさい!」

さやか「なんで…」ポロポロ

「ドッキリとかだろ?襲って来るわけ無いじゃん。カメラ探そーぜ」

「んなわけあるか。番組であんな事しないだろ」

「絶対バケモンだって」


シュバァッ


「あっ!!」 「きゃあああああああああ!!」
    「消えた!」
「ホラ本物だって!」 「逃げろ逃げろ!邪魔!」

「スゲー!!」

タッタッタッタッ…



さやか(…違う…)

さやか(あたしは…あたしは化け物なんかじゃ…)

<見滝原市内で確認されたこの人に似た何かは、周囲の建物に無差別に侵入しては、破壊活動を繰り返していたという。ジャーナリストの…>


さやか(そんなの知らない!あたしはやってない!!)


「まだ捕まってないんだってさ」

  「気持ち悪いな」


さやか(……うるさい…)


「撃ち殺せよそんなのよー」

さやか(うるさい!!)

「チッ」
     「ムカつくわ」
「死ねよ本当…最悪」

「なんで撃たないの?」 「警察仕事しろよなー」
「学校休みになるかな?」
      「バス止まってんじゃねーかよ!ふざけんな!」
「なんか不気味だよね」 「はぁ!?意味わかんね!」
「都市伝説だろ」「怖い…」「行ってみよって。居るかもしんないじゃん」
「警察どうするんだろうな」「未知の相手だしなぁ…」
 「酷い…ちょっと見てよコレ」
「あー知ってる!それって昨日の…」


さやか(うるさい!!あたしはっ!あたしは…)





  「化物」




さやか「!!!」








さやか「っ……っああああああああああああああああ!!!」


見滝原中学校周辺

ステイサム「…………」



セガール「んー、ここは外れかぁ…じゃあやっぱり…」

杏子「あっ」

ステイサム「ん?」

杏子「さやかだ。ソウルジェムに反応がある」

セガール「場所は?」

杏子「分からない。でも、どっちに居るかはこれで分かるよ。方向は…」

杏子「………分かった。あっちだ。あっちにさやかが居る」

ステイサム「向こうにあるのは確か…」

セガール「病院か……まぁやっぱりって所か」

杏子「ああ、今のアイツなら確かに行きそうかもね」

セガール「本当のさやかちゃんならな。車を出してくれ」

ステイサム「ん」

病院

ガチャッ バタン

まどか「…………」



マミ「お母さん、元気そうだった?」

まどか「…はい…」

マミ「そう。それは良かった」

まどか「タッくんの方、どうですか?」

マミ「大丈夫、ちゃんと寝てるわ。ベンチの上はちょっと気の毒だけど」フフッ

タツヤ「……」スー…スー…

まどか「そうですか……」

マミ「………」ナデナデ


まどか「…………」


マミ「鹿目さん」

まどか「っ、はい」

マミ「一緒に外の空気でも吸いに行かない?私、病院の匂いってどうにも慣れなくて」

まどか「……………」

マミ「…ごめんなさい。今そういうのは、いいのよね…」

まどか「! ご、ごめんなさいっ、ママの怪我、たいしたことなかったって言われたので、安心してしまって……あの、なんでしたっけ」

マミ「いえ、何でもないわ。隣来る?」

まどか「はい」トスッ



マミ「………」


まどか「………」


マミ「………………」



マミ「……鹿目さん……ショックかもしれないけど…」


まどか「ニュースに映ってたのってさやかちゃんですよね」


マミ「…………」

マミ「ええ…多分あの子だと思う。事件が起きてから、どこも美樹さんの事ばかり報道してるわ」

マミ「犯人は複数とか何かの陰謀だとか、中にはふざけ半分であの美樹さんは幽霊だって言う人もいる」

マミ「人に注意を促すだけならまだ分かるわ。けど、それを見世物みたいに面白がって………いい気なものだわ…わざわざ番組まで作って…」

まどか「…………」

マミ「他人に起きた不幸を周りに撒き散らして喜ぶなんて、そんなの魔女のする事よ」


まどか「きっと怖いんですよ…今何が起きてるか、誰にも分からないから…」


マミ「…………」

まどか「私の家も、マミさんのマンションの周りも、この病院も、警察の人で一杯じゃないですか。学校だって通えなくなってるじゃないですか」

まどか「みんな怖がってるんです。どうすれば良いか分からないんです」

まどか「それに…私もマミさんも…さやかちゃんに何があったのか、分かってないじゃないですか…」

マミ「っ……」


まどか「私、思うんです……もう元には戻らないんじゃないかって……」


まどか「誰にも止められないって…逃げる事も出来ないって……そうとしか…………思えなくて……」


まどか「っ…くっ……ぅ…」グスッ



マミ「手の打ち用が無いなんて、そんなのまだ分からないじゃない」


まどか「分からないなんて嘘です!本当はマミさんだって…」

グイッ

まどか「!!」


マミ「例え本当にやり用が無くても私は認めないわ。絶対に諦めない」

マミ「どんなに追い込まれていても手を伸ばすの。抜け出したいってもがくの。いいわね?」パッ


まどか「…ごっ…ごめんなさい……ごめんなさいっ、マミさん、私…」ポロポロ

マミ「いいのよ。私だって本当は怖いんだから… でも私達が何もしなかったら、誰が美樹さんを助けるの?」

まどか「マミさんっ……うぅぅぅ…っ」グスッ

マミ「大丈夫。きっと皆、元の暮らしに戻れるわ。約束する」



マミ(でないと私、貴女達に顔向け出来ない)

マミ(こうなったのは私のせいでもあるんだから……私が貴女達を、魔法少女の戦いに巻き込んだせいで…)



<きゃあああああああああ!!


まどか「ひっ!」

マミ「!」

タツヤ「……?」ムクッ


<下がって!皆さん下がってください!

<離れて!
<あの子、ホラ…ニュースの…

<うわああっ



マミ「…………」

まどか「……さやか…ちゃん?」

マミ「鹿目さんはタツヤ君を連れてお母さんの部屋へ行ってて」

まどか「は、はいっ!…タッくん、ママのとこ行こうねっ」スタスタ

タツヤ「? うん」テテテ…

ガチャッ バタン



マミ「……さ、行きましょうか」



バシャアアアアアン!


マミ「っ!?」


プレデター「…………」ドスン


マミ(プ、プレデター!?)

<うわああああああああ!!
<なっ、なんだコイツ…!
<キャアアアアアアアアア!!

マミ(そんな…こんな人の多い場所に、堂々と出てくるなんて…)

マミ(これじゃあ…美樹さんどころじゃ、ない…)

プレデター「………」キュイイイイ…

マミ「! やめなさい!!」シュバァッ

プレデター「!」


マミ「貴方も本当にしつこいわね……プレデターさん…」


プレデター「………」



マミ「……」チャキ…




恭介「……………」

仁美「……………」



『あるんだよ…奇跡も、魔法も!』



恭介「……………」


テレビ<周囲の建物に立て続けに侵入しては破壊活動を行ったとして、警察は見滝原市在住の中学生、美樹さやか14歳を、この事件の容疑者として全国に指名手配しました>


恭介(僕がヴァイオリンの弓をまた持てるようになったわけは、多分薬のおかげとか、手術をしたからとか、そんな理由じゃない)
恭介(第一、あの時僕はリハビリさえ諦めていた)

恭介(…病院の先生にも説明できない奇跡が本当に起きた)


仁美「上條君」

恭介「…なんだい、志筑さん」

仁美「上條君は信じてませんよね……今騒がれてるあれが、さやかさんだなんて、思っていないのですよね?」

仁美「上條君は、さやかさんの味方ですよね?」ウルウル

恭介「………」



恭介「うん……あれはさやかじゃない。さやかはあんな事、しないと思うよ」


恭介「さやかのはずが無い」


仁美「さやかさん……」

恭介(さやか……君が何をしたのか、僕には見当もつかない)

恭介(けど、僕の手を治したのは君なんだろ?)

恭介(変な考えだって、僕も思うよ。でもそうとしか思えないんだ)

恭介(だっておかしいじゃないか。僕の手が奇跡的に治って数日後に、君がこんな……)


仁美「…ううぅ…」グスッ



恭介(さやか。君は何をしたんだ?)



恭介(僕は君に何をさせてしまったんだ?)



恭介「さやか……」








ドオオオォォ…ン









ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!


恭介「!!」

仁美「っ!?」


ガチャッ 



さやか「……」バタン



恭介「…………さやか…?」



さやか「やっ、恭介。具合どう?」エヘヘ


仁美「さ、さやかさん!?」


さやか「あ、仁美?……あれれ、あたしもしかしてお邪魔?」ニー

恭介「さ…さやか、これは…」

さやか「いいってもー分かってるって!さやかちゃんは空気だと思って、どうぞ続けになってつかーさい!てか警報うるさいなぁ……」

恭介「茶化さないでくれよ!!」

さやか「えへへー」ニコニコ


さやか「えふェふェええ」ブチブチ


恭介「えっ?」

仁美「さっ…さや…か……さ、ん…?」




物体「恭、介ぇ」





恭介「そんな……さやか……」






投下完了!書き溜めに入ります。
本当に長い間お待たせしてすみませんでした。
引き続き、沈黙の魔法少女をお楽しみ下さい。

「ベッドから離れな。怪我するよ」


恭介「……!」


恭介「志筑さん!伏せて!」バッ

仁美「!?」ドサッ



ガシャアアアアン!!




杏子「………」スタッ




物体「ムグアアア!!」ババッ

杏子「………」


叫び声を上げながら躍り掛かってきた怪物を目にして、杏子はほんの一瞬戸惑った。
認めたくなかった疑惑が紛れも無い事実に変わってしまい、彼女の心の中を悲しみと絶望が一瞬だけ支配してしまった。

その隙を怪物に突かれた。


ガゴン!


杏子「んっ……!」


本来余裕を持って避けられたはずの拳を、杏子は槍で防いだ。
怪物の拳は衝撃で潰れたが、怪物はひき肉状になった傷口から新たな指を形成し、杏子の持つ槍を掴む。

グチャグチャグチャ…

杏子「!!」


その腕が数刻みに強固な構造へと変化していく様は、悍ましいものだった。
変化は怪物自身にとっても劇的な速度で起こっているらしく、怪物の腕の筋肉は膨張と破裂を繰り返し、血管は無秩序に張り巡らされ、脈動し、断裂し、どくどくと血を吐き出した。

そして不安定な変化ながらも、槍を掴んだ怪物の腕力は、あっという間に杏子の腕力を凌駕する程にまで強力になってしまった。


だが杏子は槍の感触から怪物の腕力の上昇を看破し、槍を手放す。
力の掛け所を失った怪物がよろつく瞬間、杏子は怪物の懐に潜り込み、新たな槍を手元に出現させ…

物体「ぎゃあああああ!!!」

怪物の腹部をそれで貫いた。
さらに杏子は駄目押しとしてまた新たに槍を出現させ、怪物の頭部をそれで下顎から頭頂部まで貫き、刺さったままの槍を殴り飛ばして怪物の顔面を粉砕した。

杏子「ああああ!!!」ドガッ!

ベシャッ!  ドドドドドドドッ!!


しかし悲しみと絶望の裏返しによる怒りはそれでも収まらず、杏子は死に体にあるであろう怪物を蹴り飛ばして壁に埋め、出現させた十数本の槍で、怪物を壁に張り付けにしてしまった。




杏子「……………」




怯えた視線を首筋に感じ、杏子は冷静さを取り戻した。

取り戻した気になった。

杏子「……」シュバァッ


物体「……クゥ…ぉ…あ」


杏子「チッ…コイツまだ動けるのか」



恭介「き…君は…なんなんだ?…さやかは…?」

仁美「っ………」フルフル


杏子「そこの緑のヤツ、この坊やに肩貸してやれ。早くここから出ないと痛い目に遭うよ」


仁美「! かっ、上條君!行きましょう!早く!」グッ

恭介「…ちょっと待って……何が…」



恭介(何が起きてるんだ?…この子は誰なんだ?何をしたんだ?)

恭介(さやか…さやかはこの…化け物……なのか…?)

恭介(まさか…)

恭介(まさか本当に…?)



恭介「待ってよ…さやかは…」

恭介「さやかは……?」


仁美「上條君っ……」グイッ

恭介「仁美?……離してよ…ちょっ、ちょっと待ってよ!何が…」


杏子「説明してる暇はないよ。さっさと消えな」

仁美「上條君、早く!」ググッ

恭介「そんな!待ってよ!!さやかは!?さやかはどうなるんだ!!?」


杏子「戻ってきたらアンタを殺す。脅しじゃないからね」


恭介「!!」



グイッ




バタン!

杏子「…………」

物体「があああ…くああっ…」ズルズル


杏子「ひどいよな…」

杏子「アンタの魔力を追って来てみればさ……いたのはテレビで見た化け物より、もっと化け物みたいになったアンタなんてさ…」

杏子「ホント酷い冗談だよ」


杏子「何がゾンビじゃないだ…」


杏子「ゾンビより酷い化け物になってんじゃねえか…」グスッ



杏子「アタシ、何もしてやれなかったじゃねえかよ…!」ポロポロ



物体「…きゅるるルルル」ズボッ



杏子「どうすれば元に戻ってくれるんだ?」

杏子「その腕輪みたいなヤツを外せば、着ぐるみみたいに中から出てきてくれるのか?」


物体「オオオオオオオオオオオオ!!」ブン!

杏子「!」ザッ


ガキン!



杏子「…そうか…分かったよさやか」ギリギリ

物体「グルルルルル」ギリギリ


杏子「腕ごとぶった斬っちまうのが一番早いって事か」ギリギリ

セガール「…………」


ステイサム「遅いな」

セガール「そうだな。予備の携帯は持たせたはずなんだが……」

ステイサム「掛かって来ないぞ」

セガール「可能性は二つ。使い方が分からないか、掛けるだけの余裕が無いか」

ステイサム「使い方の説明はあの子が行く前にしただろ」


セガール「…………」


ステイサム「…………」


セガール「………」サッ カチカチ…

ステイサム「……あまり他人のプライベートを探る方じゃないんだが、その携帯もアンタの…」

セガール「俺の第三助手だ」カチカチ…

ステイサム「………」

セガール「よし。さて、俺はちょっくら入院と洒落込むか」ガチャッ

ステイサム「俺はどうすればいい?」

セガール「じいさんがここに来たら分かる。あとはお前次第だ」

セガール「自分の考えで動くの得意だろ?」ニヤ


バタン



ステイサム「……じいさん?」

病院の屋上

QB「動いたね」

QB「病院への送電網を止めるよ。ここからは君達の仕事だ」


「………」


QB「君は今悩んでいるみたいだね。いや、怒っているのかな」

QB「確かに、この地球で僕らが始めた計画は、君達のような種族に対しては屈辱的かもしれない」

QB「だけど、今はそんな事にこだわっている時ではないはずだ。これは個人の狩りでもなければ、名誉という物を賭けた戦いでもないんだ」

QB「目的の達成の為には、ある程度のチームワークも認めなければいけないと思うよ?ましてや僕らは違う種族…」

グシャッ!



エルダープレデター「………」ズボッ



QB「」





エルダープレデター「ムシケラメ」




ボヒュボヒュボヒュボヒュン!

ドガガ! パラパラ…


プレデター「………」


マミ「大したものね。私のリボンを全部かわすなんて」


プレデター「………」


マミ(これじゃ駄目だわ。全然らちが明かない)

マミ(前のプレデターとは違うみたいね…)

マミ(まさかこんなタイミングで…私は美樹さんの所まで行かなきゃいけないのに…!)チャキッ


バキッ ガシャン!

マミ「?」


マミはここで起きた事を確かに見ていた。
さやかが病院の入口を潜ったのも、倒れたさやかに病院の職員が数人駆け寄った事も覚えている。
プレデターが入口の自動ドアを蹴破って入って来たのも、気が動転して一目散に逃げ出す人々が、倒れたさやかを置き去りにしたのも覚えている。

だが、受付を終えて階段へと足を運ぶさやかの姿は、一度も見ていない。

さやかはずっと倒れたままだった。
今この瞬間のマミには、目の前のさやかが本物かどうかなどの思考は無かった。一番大事なのは、今何が起きているのかを理解する事だ。

マミは、異常に強く、そして歪んだ魔力をさやかから感じている。しかし魔女の結界に入った感覚は無い。プレデターが魔力を放っている訳でもない。
テレビの中のさやかは変わらずに血を流し続けている。

プレデターは倒れているさやかを無視している。


さやか「っ…けほっ、ごほっ」


さやか(何これっ…凄い埃…)ゲホゲホ


さやか(うっ…だめだまた吐きそう)ハァハァ

さやか(恭介…あたし、もうやだよ…)

さやか(会いたいよ…恭介ぇ…)

さやか「っ、く…うぅぅぅ…」グスッ


「動かないで!!」



さやか「!!」




マミ「貴女…何なの?」


さやか「えっ…」


マミ「答えて!!」


さやか「……違っ…違います…あたし…」ポロポロ


さやか「化け物なんかじゃないですよ…あんなの…ヒック…」ポロポロ


さやか「あんなの嘘です…信じて下さい…お願いです……お願いですから…」ポロポロ


マミ「………」

マミは銃口を下ろさなかった。
しかし撃つことも無く、辺りにはマスケット銃が震える音がカチカチと響くばかり。
さやかは座りこんだまま立ち上がらず、どうしようも無く打ちひしがれた目でマミを見つめ、泣いている。

ジリッ

マミが一歩近づく。
プレデターは依然微動だにせず。


カシャッ


さやか「!!」



さやかのブレスレットが三つのグリーフシードを吐き出した瞬間…


バッシャアアアン!!


窓を突き破って、十二体のプレデターが病院内に雪崩込み…


セガール「………」バッ


その直後に、セガールが病院の正面入口から飛び出してきた。
プレデター達はセガールに出会った瞬間、一斉に咆哮を上げて彼に襲い掛かった。
さやかとマミはいきなりの事態に硬直した。

ブン!!!

先頭のプレデターが放った拳を…

パシッ グキィ!!

プレデター「ウゴオオオオオオオオ!!」


セガールはリストブレイドごと捩り折った。

セガール「……」ブン

セガールはそのまま折った腕を軸に、300キロを越えるプレデターを投げ飛ばして、別のプレデターに激突させた。

次に、いつの間にか背後に回り込んでいた三体目の心臓目掛け肘打ちを叩き込み、心室細動を起こさせると、前のめりに倒れる三体目の右膝をトーキックで壊したのち、後頭部を踏み付けて倒した。

四体目は頭上から、五体目はベンチを蹴り飛ばしてセガールを攻撃する。
しかしセガールは慌てずにベンチを回避。かわし際にベンチから抜き取った金属パイプを床に立て、その場から身を引いた。
四体目の足の裏をパイプが貫くが、それでも四体目は闘志を全くそのままに、セガールの顔面目掛けスピアを突き出す。

だがセガールは待ってましたと言わんばかりにスピアを奪い、発勁による崩拳中段突きで、四体目の胸骨の縫合をバラバラにしたあと、向かってくる五体目の腹にスピアを突き刺した。

六体目は、四体目が泡を噴いて崩れ落ちている間に、セガールの肩を掴んでいた。
左手に持った円盤状の刃物を、彼はセガールの脳天目掛け振り下ろす。
しかしそのレイザーディスクは白刃取りの餌食となった。
そして彼は己の武器で左膝から先を失う事になる。

ズムッ  ドドォオオン!!!

だが、セガールの行動は未遂に終わった。
一際体格の大きいプレデターが、六体目の頭を掴むと、彼を床に叩き付けたのである。

舞い上がるタイルと埃の中、六体目は深紅の兜を取り、巨大な刀をも投げ捨てて、セガールの前に立ちはだかる。

六体の同胞を三秒で行動不能に至らしめたこの男に対して、武器を使うは無礼であり、愚劣極まる行為であると感じたのだ。



ビッグレッド「カカカカカ…」



セガールは構え直し、受けの型でのカウンターを狙う。
今のセガールの掌に触れれば、いかにプレデターとはいえただでは済まない。
しかし六体目『サムライ・ビッグレッド・プレデター』の真の特殊性は、その名前の由来にある。


セガール「なるほど…面白いマネするじゃねえか」


彼は地球の、こと日本においてのあらゆる闘術に精通していた。

セガール「マミちゃん、悪いがグリーフシードは何とかしてくれないか」

マミ「ぇ……え…?」

セガール「俺も出来る事ならこういう状況は避けたかったんだがな、プレデターがこうも多いとは予想してなかった」

セガール「しかもこのデカブツは物が違うらしい」

八・九体目「………」ズシン…ズシン…

十体目「カカカカカ…」

十一・十二体目「……」ジャキン


セガール「頼んだぞ」



ビッグレッド「オオオオオオオオ!!」ババッ

セガール「!」ガッシィ!



ビッグレッドがセガールに取っ組み合いを挑んだのを皮切りに、プレデター達は動いた。マミも動かざるをえなかった。

回転を再開したマミの思考は、己の混乱を収める事も無く、大量の情報を処理した。

強い魔力はグリーフシードから?
プレデターが美樹さんを襲わなかったのは何故?
武器を持っていなかったから?
プレデターが火器を使わないのは何故?
何かを庇ってるの?
テレビの中の美樹さんは何?

それらの疑問は矛盾した答えにしか変化しなかった。目の前の美樹さやかは本物でもなければ、偽物でもない。
だが、今最も優先すべきは三つのグリーフシードの処理だ。もし孵化を許せば、大変な異常事態が発生してしまう。

マミ「!!!」ビュオ!

ザザザッ!


グリーフシードを搦め捕るはずだった無数のリボンは、全てプレデターによって切り裂かれ、焼き切られた。
マミはリボンの召喚をやめ、プレデター達を排除すべくマスケット銃を新たに生成する。

さやか「あうっ!」グイッ

マミ「!」

だが、プレデターの一体がさやかとグリーフシードの一つを掴んでマミの前に立った事により、マミの行動に戸惑いが生じた。
プレデターの思想と社会をなまじ知っていたが為に、プレデターが人質という肉壁を使用するなど考えていなかったからだ。

カッ!

床に落ちた二つのグリーフシードが光を発する。

マミ「あぐっ!」

セガール「ん?」

その強い輝きは、プレデターの持つグリーフシードからの光を飲み込み、より大きく、より邪悪に強さを増した。

それを合図とするかのように、プレデター達はビッグレッドを残して撤退した。

>>680
×六体目は深紅の兜を
○七体目は深紅の兜を

ブワッ!!!



同時に発現した三つの結界は病院内の隅々までを覆っていく。

プレデターから解放されたさやかは、マミへと手を伸ばした。
マミもその手を取ろうと、さやかの元へ駆け寄った。

しかし、マミがさやかの手を握った時、さやかの手は握り返す事もせず垂れ下がった。


マミ「!!!!」


さやかはいなくなっていた。

マミが手を取った時には、既に結界によって身体を三つに引き裂かれており、さやかはこの場に左手だけを残して消えていた。


マミ「…!!……!!!…」フルフル





ビッグレッド「グオオオオオ!!!」グググ

セガール「ぬおおおおっ…!」グググ

セガール(流石に強いな…ぶん投げようにも下手に動くと返される…)

セガール「マミちゃん、さやかちゃんはどうなった?」グググ…


マミ「み…美樹さ…ヒック…美っ、樹っ……さ…」ポロポロ

マミ「ごっ……ごめん…なさいっ…わっ、私っ……!」ポロポロ



セガール(クソ、駄目だったか……)グググ…

結界は病院にいる全ての人々を飲み込んだ。

恭介と仁美はお菓子の迷路へ落ち、杏子は青空に張った蜘蛛の巣に引っ掛かった。

患者と病院職員達も例外無く飲み込まれ、警備員達も成す術無く囚われていった。


マミ「美樹さん…ごめんなさい…」ポロポロ

マミ「貴女の事、化物だなんて…ヒック…そんなつもりじゃなかったのに…私、なんで……」ポロポロ


泣き崩れたマミは、冷たくなったさやかの手を握っていた。

マミの両手の上に、ゲルトルートの影がゆっくりと覆い被さっていく。


セガール「ぬん!」ブン

ビッグレッド「!」ドザッ!


セガール「立てマミ!泣いてる場合じゃねえ!」


ビッグレッド「グルルルル…」


セガール「マァミ!!」

恭介「!?」


松葉杖をつきながら、仁美と共に結界内をさまよっていた恭介は、うごめく血まみれの肉塊のような物に背筋を凍らせた。
逃げようと仁美の手を掴んで引っ張るが、彼女を連れて何処に逃げるかを考えた恭介は、仁美の手を放した。

ここが何処なのかも、ここから外が今もあるのかも分からない脱出法の有無さえ不明な状況下では、中学2年生の彼に、逃げた先での安全が保証出来る訳がない。

彼が今出来る抵抗は、立つだけでも精一杯な両足を震えさせながら、松葉杖を肉塊に向け構える事だけ。



「きょう……」

恭介「っ!!」サッ


「きょう…す…け…」


恭介「……さやか?」


「きょうすけ……」



仁美「上條…君…っ」フルフル


恭介「…………」


仁美「上條君落ち着いて下さい!それはさやかさんじゃありません!逃げましょう!」

恭介「!! ご…ごめん…そうだよね…」

恭介「そうだ…こんなの、さやかじゃない…違うんだ…」

「きょうすけ…でしょ…?」ズルッ

仁美「ひっ!」

恭介「く、来るな!!」ブン

「?」

恭介「お前は違う!お前はさやかじゃない!」

恭介「お前はさっきの化け物だ!さやかが化け物の訳ないだろ!」


「…………」


恭介「志筑さん、行こう!」

仁美「行くって何処にですか?」グスッ

恭介「そんなの分からないよ!でも、ここにいたらさっきみたいに襲われる!早く!」グイッ

仁美「はい…」



「…………」

カツッ  カツッ  カツッ

仁美「あのっ、上條君…私達、一体どこに…」

恭介「どこだっていいよ!!とにかく逃げるんだ!志筑さんもついさっき逃げようって言ってたじゃないか!」

仁美「そ、そうでしたわね…気が動転していまして、申し訳ありません…」

恭介「………」




恭介(くそ!なんでこんな…!)

恭介(こんなの有り得ないだろ!無茶苦茶じゃないか!)


『あるんだよ…奇跡も、魔法も!』

『周囲の建物に立て続けに侵入しては…』

『えふェふェええ…恭、介ぇ』


『戻ってきたらアンタを殺す。脅しじゃないからね』




恭介(奇跡って…魔法ってなんなんだ?)

恭介(こんなのが奇跡なのか?さやかはコレを望んでたって言うのか!?)

恭介(僕の怪我を治すために、怪物に…?)


恭介(!! 違う、そんな事考えちゃ駄目だ!)

恭介(さやかは何処かで生きてるに決まってる)

恭介(この病院に来てるわけない…さやかはたまに見舞いに遅れたり、学校を寝坊しそうになったりするから……今日は、ただ遅れてるだけなんだ)

恭介(きっとそうだ)

恭介(きっと…)




ヒュン! スタッ


杏子「やっと観念したんだ。…にしても、腕輪を取ればなんとかなると思ったんだけど、当てが外れちゃったね」

さやか「………杏…子……」

杏子「黙れ、偽物のくせしやがって。気安く名前を呼ぶんじゃねーよ」

さやか「あた、し…ばけもの…なんか、じゃ……ない…よね…」

杏子「うるせぇ。本物のさやかの居場所を言いな」

杏子「言えば楽にしてやるよ」


さやか「杏…子…」ピシピシ…



杏子「?」


ブワッ!!!


杏子「!? なっ…!?」ドガッ
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…

杏子「なっ、何がどうなって……」



杏子「!!!!」



『お姉ちゃん…魔女になっちゃうの?』

『ええ。遅かれ早かれ、例外無く』

『…魔女にならない為にはどうすりゃいいんだ?』

『グリーフシードを使ってソウルジェムを浄化し続けるか、魔女になる前に自殺する。魔女化の運命から逃れる方法はこの二つだけ』

杏子「そんな…嘘だろ…」

杏子「ア、アタシが……さやかを…?」

『つまり…アタシには、一生魔女と戦うか、魔女になって狩られるか、魔女になる前に死ぬか以外の道は無いってわけか』

杏子「違う…違う、違う!!さやか違うんだ!!そんな…そんな…!」


『全ての魔法少女の宿命よ』」





杏子「さやかあああああああああああああああ!!!」


病院の外



ステイサム「……」


ブオオオオオオ… ギャギャギャギャギキキィーッ!

ガチャッ


ステイサム「遅いぞ。もう始まってる」

シュワ「道が混んでてね。状況は?」バタン

ステイサム「杏子とセガールが病院にいるが、二人と連絡が取れない。一人はまず間違いなく無事だろうが、もう一人が心配だ」

シュワ「なるほど。他には何かあるか?」

ステイサム「二人の突入後、病院にプレデターが複数侵入。病院正面入口で七色の閃光が発生した」

ステイサム「その直後に病院から人の気配が消えたんだが、あの程度で院内の全員が死んだとは思えない。しかし避難者の姿も見当たらない。恐らくは、あんたらの言う結界とやらが院内の人間をさらったんだろう」

シュワ「そうか分かった」

シュワ「ところで、なんでお前はその一部始終を黙って見てたんだ?」

ステイサム「今の俺は連絡係だ。請けた依頼に闘う事は含まれていない」

シュワ「そうか。じゃあ今から新しい仕事をお前にくれてやる。俺達に協力しろ、OK?」

ステイサム「OK」


ほむら「…………」



シュワ「怖いのかほむら。お前らしくもない」

ほむら「何言ってるの、怖いに決まってるじゃない」

ほむら「あの中から複数の魔女の魔力を感じる。混ざり合ってるみたいで正確な数は分からないけれど、強力なのは確かだわ」

ほむら「こんな現象、見たことない……」

シュワ「怪奇現象なんていつも起きてる事だろう。いまさら御託を並べるんじゃない」

ほむら「……そうね、ごめんなさい」

シュワ「それに、相手がなんだろうと、俺達のやる事は変わらない」

シュワ「そうだろ?」


スタローン「ああそうだ」

リー「弱きを助ける」

ラングレン「強えヤツぁ潰す」

ヴァンダム「邪魔する奴は」

ウィリス「皆殺しだ」

ほむら「…………」

ミッキー「俺は楽しけりゃいいかなぁ?ハハハハ」

テリー「俺は愛娘を遊ばせてあげたいだけさ…」チャキン

ほむら「…本当に物騒な連中だわ」

シュワ「だから強い」


シュワ「行くぞ!ヤツらが待ってる!」


ドク「了解した。ではアンチ・ウィッチ・デロリアンよ!今こそ!!我等の道を切り開くべく、魔女の結界を突き破るのだ!!」

ドク「発進!!!」ガチッ ギュウィイイイ!



ドオオオオォォォン!!!


投下完了。書き溜めに入ります。
戦争は次の投下からだと言ったな、あれは嘘だ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月15日 (月) 03:06:16   ID: 2XdvVf1W

何卒、続きをお願いしますm(__)m

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