不二咲「出来たよ苗木君。葉隠君の頭上に人工衛星を落とすアプリが」 (201)

希望は前に進むんだ

え?なんだって?

さるさん食って落ちた…

・苗木 2F 隠し部屋

苗木「よく考えさせてもらったけど……ボクは絶望に屈したりしない!」

アルターエゴ『苗木君!』パアァ

小泉「そっか。それがアンタの答えなら仕方ないね……唯吹ちゃんお願い」

澪田「了解っす!」ポチ

ガラガラガラガラ

苗木「ん?」ガシン

苗木「こ、これは鎖!? ボ、ボクの体に巻き付いて……」

小泉「ちょっと待ってね。すぐにお友達も来るから」

ズルズルズルズルズル

舞園「いやあああああ」

霧切「な、何なのよ」

苗木「!?」

舞園「苗木君! 無事だったんですね!」

霧切「いえ、どう見ても無事には見えないわ。苗木君も舞園さんも私も……鎖で拘束されてしまったわ」

ソニア「控えおろー! これからあなた達にはボタンを押すだけの簡単なゲームをして頂きます」

苗木「は?」

ソニア「これから2つのボタンを渡します。全員が白いボタンを押せば、セレスさんを含めてこの場にいる全員の拘束が解かれます。そうなった場合はあなた方は全員生き残れます」

苗木「そんなの全員白いボタンを押すに決まってるじゃないか!」

ソニア「誰か1人でも黒いボタンを押せば……セレスさんと白いボタンを押した人全員が死にます。黒いボタンを押した人だけが拘束を解かれて生き残ることが出来ます」

苗木「そんなことしたら、余計に黒いボタンなんて押さないよ!」

ソニア「本題はここからです……もし、誰かが白いボタンを押した状態で黒いボタンを押せば……」ピッ

ジャラジャラジャラジャジャラ

苗木「!!」

ソニア「はい、今出てきた金銀財宝を黒いボタンを押した人にプレゼントしますわ。ノヴォセリック王家に伝わる財宝ですよ?」

苗木「な、何だよ! そのルール!」

ソニア「あら? 説明が難しかったですか? それでは順を追って説明しますね」

ソニア「全員白いボタンを押した場合は、先ほども言いました通り、セレスさんを含めて全員生還です。この場合は財宝のプレゼントはなし」

ソニア「全員黒いボタンを押した場合は、セレスさんだけが死亡。苗木さん 舞園さん 霧切さんの3人は無事に生還できます。しかし、この場合も財宝のプレゼントはなし」

ソニア「誰か1人でも白いボタンを押した上で、黒いボタンが押された場合。白いボタンを押した人とセレスさんをその場で処刑されます。生き残った黒いボタンを押した人は解放され、財宝を手にすることが出来るのです!」

ソニア「確実に助かりたい場合や財宝が欲しい場合は黒いボタンを押せばいいんですよ。セレスさんを助けたいなら、自分が死亡するリスクを負ってまで白いボタンを押さないといけませんが」

苗木「誰か1人でも黒いボタンを押せばセレスさんは死ぬんだね……」

ソニア「そういうことです」

苗木「それじゃあ、みんな! 白いボタンを押そうよ! それで済む話じゃないか」

舞園「そうですね。こんなのゲームするまでもありませんわ」

小泉「なるほど。そうやっていい子ちゃんぶって、白いボタンを2人に押させて自分は黒いボタンを押す作戦だね。苗木黒いね」

苗木「何言ってんだよ! ボクがそんなことを考えるわけないじゃないか!」

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

ソニア「あ、言い忘れてました。財宝の他にもノヴォセリックに移住して、それ相応のVIP待遇までついてますよ……例えば、苗木さんならわたくしのお婿さんになるとか」

苗木「は?」

舞園「!」

苗木「それでも関係ない!」

舞園「…………」ガタガタ

苗木「ど、どうしたの舞園さん?」

霧切「なるほど……これが狙いというわけね」

苗木「霧切さんまで……どうしてそんな怖い顔をするの?」

・回想

詐欺師「やあ、君達! 喧嘩は良くないよ!」

舞園「あ、あなたは!!」

霧切「よく私達の前に姿を現すことが出来たわね」

詐欺師「どういうことだい?」

舞園「とぼけても無駄です! 罠にかけようとした癖に!」

詐欺師「罠? 何のことかわからないよ」

霧切「ふざけないで!」

詐欺師「ふざけていないよ……あ、そうだ。君達にいいものをあげるよ」ペラ

舞園「写真……? こ、これは!!」

詐欺師「苗木誠……金髪の着物美人を押し倒し卑猥なことをしようとする決定的瞬間だよ」

舞園「あ、あ、あ……」

詐欺師「どうやら、苗木君は金髪の女性が好みみたいだね。君達の好意に気付かないのもそういった経緯があるのかもね」

霧切「な、何を……!!」

詐欺師「だって、君達のクラスには金髪の女子なんていないだろ? そういうことだ。じゃあね」

詐欺師(西園寺の作戦を遂行する時に、小泉が換気ダクトに潜んで睡眠ガスを送る役割をしてた。その時、偶然撮った写真がまさかこんなところで役に立つとはね。流石決定的シャッターチャンスを逃さない超高校級の写真家というわけか)

詐欺師(超高校級の幸運という称号の割にはとんだアンラッキースケベだったね)

舞園(苗木君は思わず無理矢理押し倒すほど金髪美女が好き……ということは、あのノヴォセビッチの王女の甘言に乗ってしまえば、黒いボタンを押す可能性があるってことですか?)

霧切(まずいわ……誰か1人でも欲をかいたら死ぬという状況……私は2人を信じることが出来るのかしら。信じる……)ズキ

霧切(っ……どうしてこんな時に手の火傷の疼きが……あの時のトラウマが再発しようとしてるの?)

苗木(何でだよ……何で2人共ボクをそんな目で見るんだよ……やっぱりボクのことを見捨てようとしたのは本当だったの? すぐに助けに来てくれなかったのは、ボクが死んでもいいってことだったの?)

ソニア「時間はたっぷりありますわ。ゆっくり考えて下さいね」

小泉「いいね! 3人のその絶望した表情頂き!」パシャ

苗木(ど、どうしよう……2人がボクを疑っている以上は、白いボタンを押すように言えば言うほど、ボクが怪しく見えてしまう。何でだよ! なんでこんなことになったんだよ!)

霧切(このゲームの最大のポイントは自分が白を押すにしても黒を押すにしても、残りの人には絶対に白を押してもらいたいということ。白を押すように説得しても、裏切られるんじゃないかという疑心暗鬼に陥る。囚人のジレンマとは厄介ね)

舞園(ど、どうしよう……今からだと金髪に染めることなんて出来ないし、このままだと苗木君があの王女に取られちゃう。何とかして苗木君を誘惑出来ないものですか。苗木君が私の虜にさえなってくれれば白を押してくれて一石二鳥なのに)

・大和田 3F 監禁室

「不二咲ィ!!」

不二咲「い、今の声は大和田君!?」

九頭龍「チッここまでたどり着けるヤローがいたなんて……ヤロー共! 配置に付け!」

893「御意!」

大和田「オラァ!」バン

九頭龍「おいおい、随分とうるせえドアの開け方だな。そんなことしたらドアが壊れちゃうだろうが!」

大和田「あ? テメーが絶望の大将か?」

九頭龍「悪いがオレは絶望の大将なんてモンじゃねえ」

大和田「チッどうでもいいけどよォー不二咲返さねえとぶち殺すぞ」

九頭龍「敵陣のど真ん中に突入してんのに強気だな」

大和田「聞こえなかったのか? もう一度だけ言ってやるぞ。不二咲を返せ」

九頭龍「やなこった」

大和田「この野郎がああ! ぶっ転がしてやんよ!」バキポキ

893「動くな」カチャ

大和田「!」

不二咲「大和田君!!」

893「そのお方に指一本でも触れることは許さん」

大和田「何なんだテメーらは!」

893「人工衛星のプログラムのことについて話せ。情報を何も知らなければ黙って立ち去れ」

大和田「偉そうに命令してんじゃねえぞカス」

893「死にたいようだな」

九頭龍「よせ。殺したら面倒だ。事後処理は狛枝のお守りだけで十分」

大和田「不二咲……すまねえが、ちーとばかり待ってくれや。絶対に助けてやるからな」

不二咲「そ、そんな僕のために大和田君がこんな危険な目にあうなんて……うぅ……ひっぐ……」

大和田「男なら泣くんじゃねえ!!」

不二咲「!」ビク

大和田「今はまだお前が男だって知ってんのはオレしかいねーけどよ。いつかはアイツらにも打ち明けてえんだろ? だったら、ここで泣いてちゃ男が廃るってもんだぜ! 打ち明ける時には最高の漢になってからの方がいいだろ?」

不二咲「うん! 僕もう泣かない! 守れてばかりじゃダメだ! 僕も力にならなきゃ!」

九頭龍「盛り上がってるとこ悪いんだけどよーリーゼントは帰ってくれねえか? 情報知らねえならいる意味ねーし」

大和田「ああ……帰ってやるよ。テメーらを地獄へ落とした後に、不二咲を連れてな!」カキン

893「ぐお!」

893集団「貴様!」カチャ

九頭龍「よせ。たかが高校生1人相手に大の大人がよってたかって拳銃を向けるんじゃねえ! 組の名前に泥を塗るつもりか? あぁ!?」

893集団「ハッ申し訳ありません坊ちゃん」

大和田「どういうつもりだ? オレとタイマン張ろうってのか?」

九頭龍「ちげーよ。弟分のためにそこまで命張れるテメーみたいな男を無駄に殺したくない。それだけだ」

大和田「あ?」

九頭龍「どうせなら……弟分が死ぬ絶望を味合わせてやりてえからな」カチャ

不二咲「えっ」

大和田「テ、テメー! 何してんだ!」

九頭龍「動くなよ? 動いたらこいつの頭は吹き飛ぶぜ?」グリグリ

不二咲「あっ……大和田君……た、助け……」

大和田「下らねえハッタリかましてんじゃねえ!」

九頭龍「ハッタリ? 何言ってるんだ? オレはやれるぜ」

大和田「テメーぜってーぶっ潰す!」

九頭龍「テメーが一番大事にしている者が死んでいく……残された者にとってこれほどの絶望はねーよな?」

大和田「もし、不二咲の頭をぶち抜いたらテメーをまずぶっ殺してやるからな!」

九頭龍「ああ。頼むぜ? 派手にオレのドタマをぶち抜いてくれ」

大和田「!?」

九頭龍「そうすれば、ペコが絶望してくれるはずだ……ずっとオレを影ながら見守ってくれていたアイツだ。最大級の絶望をしてくれるはずだ」

大和田「頭沸いてんのかこいつ……」

九頭龍「テメーもその内わかるさ。守り通すと決めた者が死んでいく絶望こそが最上のものってことに」

大和田「ケッ死んでもわかりたくねえよ。んなもん」

・苗木 舞園 霧切 2F 隠し部屋

小泉「ほら、早くスイッチ押さなくていいの? 千尋ちゃん助けに行くんでしょ?」

苗木(もし、あの写真が真実なら舞園さんと霧切さんは自分の利益のためならどんなことでもするような人間だってことになってしまう……いや、ダメだ! そんなこと考えちゃいけない! 仲間を信じないでどうするんだ)

「あーあ。そんな絶望した顔しちゃって。キミ達の希望ってその程度だったんだね」

苗木「!」

舞園「この声は……」

狛枝「やあ! また逢ったね」

小泉「狛枝! アンタどうしてここに!」

狛枝「決まってるだろ? 苗木クン達を助けるためだよ!」

小泉「は?」

狛枝「写真に歪められた真実を見せて楽しいかい? まあ、楽しいだろうね。ボクも自分がやってみるところを想像するだけでワクワクしてくるよ」

小泉「ゆ、歪められた真実って何! アタシは写真に合成なんてしていない!」

狛枝「写真なんて連続する映像のたった一部分を切り抜いただけなんだよ? 撮り方によってはいくらでも歪められた解釈をすることが可能なんだよ」

狛枝「例えばこれ。舞園さんが世間にバレたらお先真っ暗な営業をしようとしている写真とかさ……」

舞園「そ、その写真は!」

狛枝「これ舞園さんが撮影してたドラマのワンシーンなんだよね。その証拠にほら、舞園さんが持ってた脚本を借りてきたよ……あった。このシーンだ……いたいけな少女を騙そうとするオッサンをこの後主人公が格好良く静止するんだね」

苗木「じゃあ、舞園さんは……」

狛枝「そう、清廉潔白。超高校級のアイドルが如何わしい営業なんてするわけないよ。せいぜい、お漏らししそうになるだけだ。苗木クンは小泉さんに騙されただけなんだ」

小泉「くっ! それじゃあ、響子ちゃんのはどう説明するの?」

狛枝「はあ……そんな単純なこと。見てよこの膝。さっきタクシーに轢かれて擦りむいちゃった」

苗木「話の流れと全く関係ないよね」

狛枝「関係あるんだよ……その時の乗客がこちらの方です」

BBA「あら、あの時のお嬢さん? あの時は助けてくれてありがとうねえ」

霧切「…………なるほど。あの時の写真を撮られたってわけね」

苗木「えっ」

狛枝「霧切さんはお婆さんを突き落したんじゃない。助けようと手を伸ばしただけなんだ! あ、お婆さんもう行っていいですよ」

小泉「な、なんで……ありえない。どうしてあの時のお婆さんを証人として連れてこられたの……」

狛枝「偶然だよ偶然。その代償に車に轢かれちゃったけど……」

小泉「でも、苗木が日寄子ちゃんにセクハラしたのは事実! これは曲げようがないよ!」

狛枝「確かに触ったの事実だろうけど、故意かどうかによって彼に対する印象が変わってくると思わない? ほら、これねボクが仕掛けた盗聴器」

小泉「はぁ!? 何でそんなものを……」

狛枝「再生するね」

『まさか日寄子ちゃんと戦わずして勝つなんてね。本人は真面目に戦おうとしてたはずなのに、幸運の偶然って恐ろしいね』

『本当ですわ。偶然であんなことになるって世間の男性から羨ましがられるんじゃないでしょうか』

小泉「ぐぬぬ」

狛枝「今のは小泉さんとソニアさんの声。どう考えても写真撮った本人が自分から偶然って認めてるよね?」

霧切「なるほど。どう見ても故意ではなく事故ね」

舞園「私は最初から信じてましたよ」

日本よこれがダブルヒロインだ

狛枝「苗木クンが捕まった後に2人が助けに来なかったのも来なかったんじゃなくて、来れなかっただけ……だって、キミ達苗木クンが入った後にすぐにロックをかけたでしょ?」

小泉「ロックはかけてないよ! ただ、軽く3回叩けって条件に反応しなかっただけ!……ハッ」

舞園「あ、私壁を思いっきり5回叩いちゃってました」

苗木「そうか……そういうことだったのか」

小泉「でも、響子ちゃんが苗木を実験台に罠を確かめようとしたのは事実だよ」

霧切「それは……ごめんなさい。言い訳するつもりはないわ」

苗木「それはもういいよ。例え、霧切さんに止められたとしてもボクはセレスさんを助けられる可能性に賭けてたと思う。だから、ボクは犠牲だとか実験台だとかになったとは全く思ってない」

狛枝「ほら、これで皆を疑う材料はなくなったよね。キミ達の希望を見せてくれないか!」

苗木「ありがとう……」ポチ

舞園「まさかあなたに助けられるなんて」ポチ

霧切「疑心暗鬼に陥ってのがバカみたいだったわね」ポチ

ソニア「そ、そんな……まさかの全員白!?」

狛枝「素晴らしいよ! 絶望の思惑を打ち砕くなんて流石は希望の皆だ! ……じゃあ、ボクはこれで失礼するよ。後はキミ達自身の手で希望を掴み取ってね」

・石丸 2F 階段前

石丸「破ァ!」ブン

辺古山「見切った!」シュ…ベシ

石丸「ぐおお!!」

辺古山「貴様の太刀筋は型通りの太刀筋だ。その分、動きが読みやすい」

石丸「まだだ……諦めるわけにはいかない!」

辺古山「貴様の太刀筋は既に全て見切っている。万一にも貴様に勝ち目はない!」

石丸「万一にも勝ち目がないだと……?なら、十万回でも百万回でも君に切りかかってみせるだけだ!」ブン

辺古山「数をこなせばいいという考えでは私には勝てん!」カキン

石丸「何故だ! 何故攻撃が当たらない! 君の剣はこんなにも型から外れた剣術なのに」

辺古山「私の剣は我流だ。読もうと思って読める動きではないぞ」

石丸「僕は希望を捨てないぞ!うおおおおお」

辺古山「貴様の剣は既に完成されている。完全に型通りの動きだからな。だからこそ、そこで成長が終わってしまっているのだ……私の剣を受けてみるがいい!」

辺古山(紫電一閃!)ベシィ

石丸「がっ……」

辺古山「いくら真剣ではない竹刀とはいえ、今の一撃で骨を損傷したはずだ。良くて骨折、運が悪ければ骨が砕け散ってるだろうな」

石丸「ま、まだだ」

辺古山「やめろ! それ以上立つな! 骨折した状態でまともに戦える訳がない! 貴様死ぬぞ!」

石丸「くっ」 カラコロ

辺古山「竹刀すらまともに持てないではないか! 先ほども言った通り、私は貴様の命までは取るつもりはない」

石丸「君は本当に絶望なのか?」

辺古山「何?」

石丸「何らかの事情で絶望のフリをしているのではないか? 敵である僕をこんなに気遣うなんて不自然ではないか! 君は本当は絶望になど堕ちてないのではないのか!」

辺古山「バカなことを言うな!」

石丸「そうだな……例えば、絶望した友を救うために、自分から絶望の道に入ったとか……」

辺古山「それは……ふっ、そうだな。確かに私には貴様に対する甘さがあった」

辺古山(こいつの真面目な立ち居振る舞いがあの人を思い出させてしまう……そのため、無意識に殺害を躊躇ってしまったか)

辺古山「いいだろう! 貴様が望むのなら死をくれてやる!」

・大神 2F コントロール室前

大神「せいや!」ガギン

左右田「無駄だって言っているのがわかんねーのか?」

大神「くっ」

左右田「鋼鉄の肉体に攻撃すればするほど、アンタの拳は傷つくんだぜ?」

大神「食らえ!」ブウォン


大神の渾身の蹴りがメカケンイチロウに命中する。


左右田「効かねえのがわかんねーのか! いい加減諦めろよ!」

大神「ハァハァ……」

左右田(各パーツの損傷はそれほど甚大ではない。いくら霊長類最強のオーガでも、バズーカを耐えるオレのメカには敵わねえようだな)

大神「まだまだ!!」

大神「まだまだ!!」

左右田「しつけーな! やれ! メカケンイチロウ!」

メカケンイチロウ「コーホー」ドゴォ

大神「ぐわあああああ!! だが、我は退かぬ!」ベキ


大神は攻撃をガードしつつ、反撃を試みる。


左右田「うわあ、今の音絶対自分にもダメージ食らったぜ。そうまでして、反撃するかよ普通」

大神「この身朽ち果てようとも、ケンイチロウの紛い物を倒してみせる!」

大神(勝機はある……だが、我の肉体が耐えられるかどうかはわからん。されど、やるしかない! 我が負ければ、誰がメカケンイチロウを止めらえると言うのだ……)

・桑田 2F 燃料保管庫

桑田「へへ! パワーアップした今なら図体のでけえテメー相手にも負ける気はしねーぜ!」

弐大「そう上手くいくかな?」

桑田「食らえ!」ブン

弐大「遅い!」ドゴォ

桑田「アポ……?」

弐大「どうやらアレの効力が少しずつではあるが切れているようじゃの」

桑田「な、な……」

弐大「そろそろお別れの時間か。寂しいのう」

桑田「ま、待ってくれよ!」

弐大「生き残りたければ、己を成長させ高みを目指してワシを越えろ! でなければ死ね!」

桑田「う、うわあああ! 来るな! 来るんじゃねえ! 来るなアアアアアアア!」

・苗木 舞園 霧切 2F 隠し部屋

苗木「本当に解放されたね」ジャラ

霧切「これで形勢逆転のようね」

舞園「絶望なんかに私達の絆は断ち切れませんよ!」

ソニア「あらあら、さっきまで絶望した表情してたのに調子づいてしまいましたね」

小泉「これはただの余興だったから別にいいよ。本番はこれからだから」スチャ

舞園「ただの負け惜しみですか?」

ソニア「負け惜しみかどうかは、これからわかりますよ」スチャ

苗木(何でヘッドホンを付けたんだろう)

澪田「はーい! 注目! 今から唯吹がムーンサルトでステージに上がるっすよ!」ピョーン

苗木「すご、なんてジャンプ力!」

霧切「ステージには上るための階段がない……どうやら、ステージに上がるには今みたいに高いジャンプをしなければならないようね」

澪田「やっほー! おはようございまむ! 今日は唯吹が絶望に至る曲を工場内に流すっすよー!」

苗木「絶望に至る曲? たかが音楽で絶望なんてするわけないじゃないか」

澪田「チッチッチ。誠ちゃんは甘いっすね。いくっすよ! ミュージックスタート!」
http://www.youtube.com/watch?v=z3x5sedptNY

苗木「うわああああああ!! な、なんだこれは……」

舞園「耳があああ耳があああああああ」

霧切「もうダメ……終わりよ……世界は絶望に包まれるんだわ」


桑田「うぎゃあああ! な、なんだこの絶望的なノイズは……」

弐大「始まったようじゃのう」

桑田「お、終わりだ……パワーアップの効果は切れかけるし、絶望しかないんだ……」


石丸「うおおおお!! 誰か!!! この風紀の乱れる雑音を止めろおおおおお!!」

辺古山「心を乱したか。そんな状況で私の刃を止めることなど不可能!」

石丸「希望が……僕の中の希望が消えていく……」


大神「ぬおおおおお!! い、いくら我とて耳まで鍛えられん……こんな呪詛をかけるなど卑怯だぞ……」

左右田「霊長類最強のオーガも絶望には勝てねえみてーだな」

大神「ケンイチロウ……みんな……済まない……我は志半ばで倒れる運命なのか」

カムクラ「な、な、何なんだこの絶望的にツマラナイ不快な音波は!」

カムクラ「ぐおおおお!! だ、誰か止めてくれ!」

戦刃「ど、どういうこと? 何が起きてるの?」

十神「戦刃……! 貴様は平気なのか? こんな夏場の蚊以上に鬱陶しい低俗な音を聞いても絶望しないというのか」

戦刃「よくわかんないけど、私は別に平気みたい」

カムクラ(な、なんてことだ! 軽音部の耳のせいで余計に音を拾ってしまう! ま、まさか! 全ての才能を持つ僕にこんな弱点があったとは!!)

カムクラ「ぐわああああ!! き、消えていく……希望である僕の存在が絶望に消されていくううう」

苗木「な、なんとかして止めないと……」

小泉「無駄だよ。唯吹ちゃんの曲で、絶望して精神が参っている状態でステージに上れる程のジャンプ力を出せるわけがない」

ソニア「澪田さんを止めるためにはステージに上がらなくてはなりませんからね」

霧切「…………」

舞園「…………」

ソニア「霧切さんと舞園さんは既に絶望しきった表情ですのに、苗木さんの目はまだ希望を秘めてますね。正直言って鬱陶しいです」

小泉「早く絶望すれば楽になれるのに」

苗木「諦めちゃダメだ! 二人共! なんとかして曲を止めないと! この曲は工場全体に流れている! 止めないと皆が絶望してしまう!」

霧切「…………」

舞園「…………」

苗木「ど、どうして! どうして何の反応もしてくれないんだ!」

苗木(そうか! 曲が煩くて僕の声が聞こえないんだ! なんでこんな糞みたいな曲にボク達のセリフが掻き消されないといけないんだ! これじゃあ、二人を励ますことができない)

超高校級の絶望の歌い手:そらる

ヴヴヴ


苗木(な、何だ? 振動? アルターエゴか!)

『苗木君へ
 文字なら相手の雑音に遮られないから、文字で伝えるね。
 音を打ち消す音っていうのがあるんだ。それを、自動的に発生させるヘッドホンがあるよ。
 そのヘッドホンを耳に付ければ、不快な音をシャットアウトできるよ。』


苗木(雑音を自動的に打ち消すヘッドホン……ノイズキャンセリングヘッドホンか!)

苗木(で、でもヘッドホンなんて……あ、そういえば地下室で拾ったやつがあった!)スチャ

苗木「やった! 聞こえない! 雑音が全く聞こえないぞ! たまたま拾ったヘッドホンがノイズキャンセリング仕様だなんてツイてた!」

小泉「あ! あのヘッドホンは日寄子ちゃんが落としたって言ってたやつじゃない?」

ソニア「左右田さんがわたくし達に作ってくれた不快な雑音だけを打ち消して、快感を感じる音だけを増強させるっていうあの……」

小泉「唯吹ちゃんリサイタルの影響をアタシ達が受けないための物を何で苗木が持ってるの!」

苗木「なるほど……確かに雑音だけ聞こえない……二人の会話は聞こえるぞ!」

小泉「な、何なのよ! さっきより希望に満ちた目をしてるじゃない!」

ソニア「きっと物凄い絶望から解放されたことにより、内に秘めた希望が高まっているのですわ!」

小泉「あ、あの目はまさしき超高校級の……」

苗木「希望はこんな雑音なんかじゃ潰せない! 今からそれを証明するよ!」

苗木(舞園さん。キミが教えてくれたスキルを使わせてもらうよ!)

澪田「いえーい! この曲最高っす! アンコールいっちゃってもいいっすか?」

苗木「それは違うよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!(美声)」

小泉「ちょ……急に叫んで何なのよ! うるさいじゃない」

ソニア「無駄に美声な分ヘッドホンの効果で余計に増強されてしまいますわー」

澪田「!!!!」キーン

澪田「あぶあぶあぶ耳があああああ唯吹の耳がああああ!!」

小泉「唯吹ちゃんは超高校級の軽音部の耳を持ってるから、アタシ達よりも耳に受けるダメージが大きい……!」

ソニア「しかもヘッドホンで増強された叫び声(美声)を……なんてことでしょう」

澪田「」

霧切「お、音が止まった?」

舞園「な、何が起きたのでしょう」

苗木(ステージの上のモニターに監視カメラの映像が流れている……みんな大分絶望しているみたいだ)

苗木「希望は前に進むんだ! 奴が工場中に流していたスピーカーを逆に利用してやる! みんなに希望を伝染させるんだ!」

・大神 2F コントロール室前

苗木『大神さん! キミがこんなところで倒れたら、ケンイチロウさんとの再戦はどうなるんだ? 負けたまま終わってもいいの?』

大神「苗木……?」

苗木『しっかりしてよ! 超高校級の格闘家のキミが負けちゃダメなんだよ! 今回みたいに戦闘が重視される場面でキミが皆を引っ張っていかないんでどうするんだ!』

大神「そうだったな……我には我の使命がある。諦めるわけにはいかない! 苗木よ、お陰で目が覚めた! 我は決して負けない」

左右田「強がりはよせ! オメーの体はもうズタボロなんだよ!」

大神「どうかな? 既に我の勝利が決している……」

左右田「うっせうっせ! メカケンイチロウ! オーガに止めを刺せ!」

メカケンイチロウ「ピーガー」

大神「よせ。もう勝負はついている」

左右田「絶望して死ね!」

大神「貴様はもう……壊れてる」

ガラガラガシャーン

左右田「は?」


メカケンイチロウが攻撃を仕掛けようとした瞬間、機体がバラバラに砕け散り、物言わぬスクラップと化した。


左右田「ぎゃああああああ!!! う、ウソだろオイ!! な、何故だ! 全体の損傷箇所もそんなになかったはずじゃ」

大神「痛みを知らない機械の体が仇になったようだな。我は攻撃の時に人体の支えになる部分……すなわち急所を重点的に攻撃をした」

大神「一つ一つの箇所は小さな損傷でも、放置し、動き回り、傷を庇うことをしなければ次第に損傷は相乗的に大きくなる」

大神「そして、攻撃の瞬間! その時、体に負担が大きくかかる! 負担の許容量が限度を超えた時、体は朽ち果てる! 痛みさえあれば気づけたことだ! 痛みを知ってる人間なら、このような事態にはならん! 所詮機械は機械でしかない!」

左右田「バ、バカな……無敵の機械の体だったのに……」

大神「たわけ! 何が無敵なものか! 所詮、痛みを知らない者の拳など我には届かん!」

左右田「ハ、ハハ……終わりだ。絶望だ……どうした? オレを殺せよ……オレの作り上げた最高傑作が壊れたんだ。これ以上の絶望はない」

大神「命は取らん……武術の心得がない者を殴っても我の格闘家としての魂に傷を付けるだけだ。立ち去れ!」

・石丸 2F 階段前

苗木『石丸クン! キミは希望ヶ峰学園の風紀を守るって言ってたよね? キミがここで死んだら、誰が希望ヶ峰の風紀を守るんだ! 絶望を取り締まらないで何が風紀委員だ!』

石丸「絶望……」

苗木『キミなら絶望した人も更生させることが出来るはずだよ! それを出来る力を持ってるからこそ、超高校級の風紀委員なんでしょ?』

石丸「そうだ……僕は諦めるわけにはいかない! 不二咲クンのためにも! 兄弟のためにも! そして、皆のためにも!」

辺古山「目に希望が宿ったか。だが、そんな勢いだけの希望で私に勝てるとでも?」

石丸(確かに……何も考えずに攻撃して勝てる相手ではない……何か手はないものか)


『兄弟よぉ……オメーは難しく考えすぎなんだよ。何でもかんでも型にはめようとしてさ。もっと適当にやってもいいんじゃねえのか?』


石丸(兄弟……? 何故だ。何故この場で兄弟の言葉が重くのしかかる)


『おうよ! 型破りなことをしてこそいっぱしの男ってモンだろ?』


石丸(型破りか……やってみるぜ兄弟!)

石田「うおおおおおおお!!!!」

辺古山「な、なんだこいつ! いきなり変身した!?」

石田「石丸の体に大和田の魂が宿り、石田ってとこか! オレ達二人の魂を併せれば無敵だぜ!」

辺古山「な、何をわけのわからないことを!」

石田「行くぞ! うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

辺古山「バ、バカな! 骨折してまともに竹刀も持てないはずなのに……!」

辺古山(だが、こいつの攻撃は既に見切ってある。型通りの剣術なんて……)

辺古山(ち、違う! この型は今までの型じゃない!)

石田「食らえ!!」ブフォン ベキィ

辺古山「ぬあああああああああああああ」

辺古山(バ、バカな! 私が対応しきれなかっただと……完全に不意をつかれた……)ドサ

石田「ぜーはー……や、やった……やってやったぜ……兄弟……だが、今ので力を使い果たした……後は…………頼んだ……ぜ……」ドサ

石丸「」シュウゥウ

石丸:リタイア

・桑田 2F 燃料保管庫

苗木『桑田クン! キミは将来スターになるって言ってたよね? スターならピンチくらい乗り越えられるはずだよ! カッコよく逆転ホームラン決めてみせてよ! キミなら出来るはずだよ』

桑田「へっ……苗木。わかってんじゃねえか!」

弐大「応?」

桑田「こんなむさいオッサンにやられたんじゃあ、スターなんて言えねえよな……ここはオレが華々しく勝ってやるぜ!」

弐大「バカなことを! 今こうしている間にもどんどんアレの効力が失われているというのに」

桑田「その前にテメーを倒すだけだ! こいつでな!」

弐大「ボールか……アホの一つ覚えみたいに投球ばかり使いおって」

桑田「うるせえ! パワーアップしたオレの投球を受けてみやがれっつんだ!」シュイン

弐大「ぐおおおおおお!!!」

桑田「やった命中したぜ!」

弐大「何のこれしき……墳ッ!」バイン


弐大は桑田が投げたボールを筋肉で受け止め、気合いで跳ね返した。


弐大「自分の投げたボールでも食らっとけ」

桑田「オッサン……オレを誰だと思ってる?」


桑田はバットを構え、ホームラン予告のポーズを取る。


弐大「何?」

桑田「テメーがボールを跳ね返すなら、オレもバットで打ち返す! 何度でもだ!」カキン

弐大「無駄じゃ! ワシにその程度の威力のボールなど効かぬ!」

桑田「どうかな?」

弐大(ん? このコースは……まさか!! や、やばい! このままでは……)

弐大「ぐほえ……」ギュルギュル

桑田「さっき、ボール当てた箇所と全く同じところに打ち返してやったぜ。流石に同じ箇所を二連続で食らったら流石のおっさんも無事じゃすまねーだろ?」

弐大「苦ッ! バ、バカな……簡単な理屈だが、正確に同じ箇所に打ち返すバッティング技術を持っていたとは……流石は超高校級の野球選手……」

桑田「ったりめーだろ? オレは桑田怜恩! 将来のビッグスターだ! 覚えとけ!」

弐大「そうか……お主の名覚えとくぞ……」ガク

桑田「っべー! マジで勝っちまったよ! っつーかオレマジでデビルヤバくね? 絶望側で最強クラスの敵を立て続けに倒してね? オレの時代到来ってか? 舞園ちゃんが見てたらぜってー俺に惚れる(確信)」

桑田「つっても……もうアレの力は完全に切れちまったみたいだな……ここからはいつも通りのオレで戦わないといけないのか……」

・十神 腐川 戦刃 1F 梱包室

十神「やっと雑音が鳴りやんだか」

カムクラ「ぐおおおお消える! 消える! 僕が消える!!」

十神「あいつはまだ怯んでいる! チャンスだ戦刃!」

戦刃「了解」

カムクラ「く、クソ!!」ベシ

戦刃(怯んでいてもなお、私の攻撃に対応できるなんてこの人やっぱり強い)バシバシ

十神「そろそろいいか。おい起きろ!」ペチ

ジェノ「はぅ!」

十神「戦刃を手伝ってやれ」

ジェノ「おっけー白夜様!」

カムクラ「な、何ィ!」

十神「腐川の人格の方は血が苦手で見るだけで気絶をしてしまう。カムクラ! 貴様の吐血した血を見て腐川は気絶したんだ! 気絶から目覚めればジェノサイダーとの人格が自動的に入れ替わるってわけだ」

ジェノ「意外と家庭的な殺人鬼 ジェノサイダー翔です」

カムクラ(アイツのハサミによる攻撃はまずい。なんとしてでも防がなければ)

カムクラ「オラァ!」ビシ

ジェノ「うぐ……」

カムクラ「指圧師の才能くらい持ってます。人を一瞬にして気絶させるツボを付きました。これで、この殺人鬼も元通りに……」

戦刃「よそ見した……」ドグォオオ


ジェノサイダー翔に一瞬気を取られた隙を付き、戦刃は全力の蹴りをカムクラへと食らわせた


カムクラ「プギャア」

戦刃「…………今の一撃で倒せなかったら、私はもう知らない」

カムクラ「」ピクピク

十神「どうやら、勝てたようだな」

戦刃「みたい……」

カムクラ?「んん……」

戦刃「!!」

カムクラ?「ここはどこだ……俺は今まで何をしてたんだ」

戦刃「まだ生きてたの!?」

十神「待て戦刃! 様子がおかしい」

カムクラ?「いてて……なんでかわからないけど体中が痛い」

十神「カムクラ! 貴様どうしたというのだ!」

カムクラ?「カムクラ? もしかして俺のことか? 俺はカムクラなんて奴知らねーぞ……俺の名前は……」

日向「俺の名前は日向創。よろしくな」

・苗木 舞園 霧切 2F 隠し部屋

小泉「そ、そんな嘘だよね? 左右田の作ったメカやペコちゃんや弐大がやられるなんて……!」

ソニア「あ、ありえませんわ! こ、こんなのって……冗談はよしこちゃんですわ」

霧切「苗木君。行きましょう。こんなところにずっといるメリットはないわ」

苗木「そうだね。皆はもう大丈夫みたいだし」

霧切「セレスさんは適当にその辺の台車に乗せましょう。そして適当な場所に放っておけばいいわ」

苗木「適当って……」

霧切「うっ……」

苗木「霧切さん!? ……凄い熱」

霧切「へ、平気よ……これくらい」

苗木「ダメだよ無理しちゃ。まだあの蛇の毒のせいで本調子じゃないんだよ」

舞園「そうですよ。無理しないで後は私と苗木君に任せてください!」

霧切「ごめんなさい苗木君……最後まで付いていけなくて」

苗木「気にしなくていいよ。ここまで来たら、後は不二咲さんを連れて帰るだけなんだから」

霧切:リタイア

・大和田 不二咲 3F 監禁室

大和田(クソ! あいつが不二咲に拳銃突きつけてるからこっちから攻撃することができねえ)

九頭龍「なあ、そろそろ心の準備はできたか? 引き金引くぞ?」カチャ


九頭龍が引き金に手をかけた瞬間、野球ボールが飛んできて彼の手の甲に命中した。

九頭龍が怯んだ隙を見て、不二咲は大和田の元に駆け寄る。


九頭龍「って……な、ナニモンだ!」カラコロ

桑田「ういーっす! 助けに来たぜ。大和田! 不二咲!」

大和田「桑田!」

不二咲「桑田君!」

大和田「お、おい! 桑田! 兄弟は無事か? 無事なのか?」

桑田「イインチョはひでえ怪我負っちまったみたいだけどとりあえず生きてるぜ。多分骨が何本かイッちまってる。苗木と舞園ちゃんと合流したから心配ねーと思うけど」

大和田「そうか。生きてんのか!! あ、いや、オレは兄弟信じてたし、心配なんてしてねーけどよ」

九頭龍「テメーら調子乗ってんじゃねえ! 死ね!」バン

不二咲「えっ」

大和田「不二咲! 危ない!! ……ぐ」ドン

不二咲「大和田君!!」

桑田「お、おい! 大和田! お前不二咲を庇って……」

大和田「がはっ……」

九頭龍「チッ……しくじったか」

不二咲「そ、そんな……大和田君……僕のせいで……」

桑田「テメー! ゼッテェー許さねえからな!!」

大和田「チッ……んなオレの仇なんてどうでもいいから桑田……オメーは不二咲連れてさっさと逃げろ」

桑田「バ、バカ言ってんじゃねえ! んなこと出来るかっつーの!」

大和田「は、早くしやがれ……オレにも男の意地があんだよ……命張ってでも不二咲助けるって決めた以上は、何が何でも助けねえといけねんだ!」

桑田「チッ……す、すまねえ大和田! 行くぞ不二咲……」

不二咲「や、やだあああ!! 大和田君!!」ジタバタ

大和田「けっ……これでいいんだ……これで……」ガク

893「坊ちゃん。こいつどうしましょうか?」

九頭龍「つまんねえ……」

893「は?」

九頭龍「こいつ殺しても、こいつは大事な弟分を守り切った希望を抱いて死んでいく……そんな奴殺す必要なんてねーよ……止めなんて刺す必要なんざねえ」

893「では、あの不二咲連れて逃げた顎鬚を追うってことですかい?」

九頭龍「やめとけ……もうオレ達の出る幕じゃなさそうだ……」

893「はあ……」

九頭龍「左右田から連絡が来た。あの人の分身を起動させるとよ」

893「ま、まさか!!」

九頭龍「後はあの人に任せればいいだけのこと。オレ達は負傷した絶望の仲間を連れてとんずらするぞ」

・苗木 舞園 桑田 不二咲 2F 階段前

桑田「おい! 舞園ちゃん! 苗木! やべーぞ! 大和田が撃たれちまった」

不二咲「は、離して桑田くぅん! 大和田君が!」ジタバタ

苗木「なんだって! 助けにいかないと!」

桑田「いや、苗木と舞園ちゃんは不二咲連れて逃げてくれ」

苗木「は?」

桑田「オレが助けに行く! 今ならまだ間に合うはずだ」

苗木「一人で行くなんて無茶だよ! ボクも行く!」

桑田「お前まで来たら、舞園ちゃんと不二咲と負傷した石丸はどうすんだ?」

苗木「そ、それは……」

桑田「いいから、オレに任せろって。な?」

桑田(決まった。今ので絶対舞園ちゃんオレに惚れたぜ)チラッ

舞園「苗木君……私、正直言って怖いです……でも、苗木君と一緒にいると安心しますから、離れないで下さい」ウルウル

苗木「う……しょ、しょうがないな」

桑田「」

桑田「と、とにかくオレは行くからな! 苗木はとっとと帰れ! アホ!」

苗木「え……ボクなんかした!?」

大神「待て桑田……我も共に戦う」

苗木「大神さん! す、すごい傷……拳の皮が完全にめくれちゃってるじゃないか」

大神「これくらいプロテイン飲めば三日程度で治る。些細なことだ」

桑田「ありえねー」

不二咲「プロテインってそんなに凄いんだ……」

舞園「とにかく大神さんがいれば安心ですね。行きましょう苗木君。不二咲さん」

桑田「え? オレは?」

・十神 戦刃 1F 梱包室

十神「日向と言ったな……貴様一体何者だ? ジェノサイダーと同じ多重人格か?」

日向「多重人格って何のことだ……俺にはさっぱりだ」

戦刃「でも、この人はさっきのカムクラって人と雰囲気が違う。きっと本当に別人なんだと思う」

日向「んーなんか妙に頭が重いな……って、なんだこの髪の長さは!」

十神「そこにハサミが転がってるだろ。それで切っとけ」

日向「お、おう。よくわかんないけど」ジャキジャキ

戦刃(それ、ジェノサイダーのマイハサミだよね? 殺人に使われたハサミで髪切るなんて……)ヒソヒソ

十神(あえて教えてやる必要もなかろう。世の中知らない方がいいことはある)ヒソヒソ

日向「よし、いつもの髪型に戻った。何でか知らないけど、自分で切った割にはカリスマ美容師顔負けの出来栄えだな」

十神「自画自賛か。おめでたいやつだ」

戦刃(十神君も人のこと言えないと思う)

十神「とにかく、カムクラが無害そうな奴に人格が変わったんだ。俺達の勝利ってことでいいだろう。先を急ぐぞ」

戦刃「ごめん……私はこれ以上戦えない」

十神「そうか。今頃苗木も苦戦してるだろうが、貴様には関係……」

ピュー

十神「光の速さで動いただと!」

日向「なあ、一体何が起きてるんだ? 俺にも教えてくれよ」

十神「知るか。自分で考えろ」

日向「じゃあ、お前に付いていくぞ」

十神「何故そうなる」

日向「だって、俺ここがどこかわかんないし、家に帰れないんだよ! 何でも手伝うから後で家まで送ってくれよ」

十神「はぁ……愚民が。好きにしろ……腐川は置いていくか。ジェノサイダーの状態で気絶したってことは、次目覚める時は戦闘に役に立たん方だからな」

・コントロール室 左右田

江ノ島アルター『え? 何々? やっと私の出番なの? 待ちくたびれて死にそうだったんですけど』

左右田「絶望側の最終兵器……江ノ島アルターエゴ搭載のモノケモノ(人型)! これが正真正銘の希望との最終決戦だ!」

左右田「ケケケ、オーガの奴……オレに止めを刺さなかったことを後悔させてやる!」

江ノ島アルター『ねえ、絶望ある? 絶望させていいの?』

左右田「ああ。好きなだけ絶望していいぞ」

江ノ島アルター『うぷぷぷぷ。兵器を搭載したボディなんて生身の体よりいっぱい絶望振りまけそうだもんね。楽しみ楽しみ』

江ノ島アルター『そうそう。一応、敵もウチのクラスメイトなわけだし、私の顔がバレたらきまずいじゃん? だから、顔は隠すプレイバシー保護仕様にしてよ』

左右田「あーはいはい。わかったわかった」

・大神 桑田 3F 監禁室

893「ひ、ひい! た、助けてくれ! バケモノだ!」

九頭龍「バカ! 怯むんじゃねえ!」

大神「うおおお!!!」グシャ ベキ ゴキ

桑田「ちぇ……殆ど大神の無双状態だけど、オレだってバットで応戦してやるもんねーだ!」ガキン

九頭龍「なんてことだ……オレの組でも精鋭を集めたつもりなのにこんなのって……」

大神「大人しく投降しろ! さすれば命までは取らん」

九頭龍「死ぬのが怖くて極道なんてやってられるか!」

大神「そうか……では、うおおおおおお!!!」ゴオオオオオ

九頭龍「ゴメンナサイ。降参します。許して下さい」

大神「フッ。貴様が賢明なやつで助かった。我も無益な殺生はしたくないからな」

桑田「あ、ありえねー……オレまでビビっちまったぜ」

九頭龍(ドサクサに紛れて構成員を何人か逃がした……アイツらが負傷した仲間を回収してくれるだろう……)

…寝ちゃった

・苗木 舞園 不二咲 2F 休憩室前

苗木「やっと休憩室前までこれた……ここまで来れば、もうすぐ1Fへ降りる階段が見えてくるはずだ」

舞園「あ、あの……苗木君。石丸君を背負ってますけど重くないですか?」

苗木「はっきり言って重いけど……見捨てるわけにはいかないからね」

石丸「すまない……苗木くん……」


ガショーンガショーン


不二咲「え? な、何の音?」


ガショーンガショーンガショーンガショーン


舞園「何か来ます!」

江ノ島アルター『やっほー! 逃がさないよ』

苗木「げ……また新手の敵!? しかも巨大メカだなんて」

舞園「そ、そんな……」

江ノ島アルター『いいね。その絶望した表情! サイッコーじゃない!』

苗木(何か対抗策を考えないと……ここまで来たんだ! 後は皆で脱出するだけで済むんだ! ボクは諦めない!)

江ノ島アルター『気に入らないね。こんな状況でも希望を捨ててない目をしてる』

???「苗木クン!! 会いたかったよ!」

苗木「え……キミは確か狛枝クンだっけ? 絶望の人達がそう呼んでた……」

狛枝「お。嬉しいね。ボクの名前知っててくれたんだ。あまりにも嬉しく漏らしちゃいそうだよ」

苗木(なにこの人……)

狛枝「さっき、クソみたいな超絶望級の雑音が流れた後の苗木クンの希望にボクは感激したよ! もう、苗木クンのせいでボクのパンツがドロドロのカピカピになっちゃった」

不二咲(なんか妙にイカ臭いと思ったら……)

狛枝「苗木クン! ボクはキミの力になりたい! そのためにもう一度戻ってきたんだ」

江ノ島アルター『ごちゃごちゃとうぜーんだよ! とっとと消え去れ!』

狛枝「それは違うよぉ……消えるのはキミだよ!」

狛枝「皆伏せて」カチ


狛枝がスイッチを押した瞬間に、モノケモノが爆発をした。

苗木(ば、爆発!?)

江ノ島アルター『な、何だと!』

狛枝「実はスパイ工作として、このモノケモノにこっそり爆弾を仕掛けてたんだよね」

江ノ島アルター『小癪な真似を……! ニンゲン風情がああああぁぁああああ!!!』

狛枝「アレ……今の爆発にも耐えるの? 参ったねこりゃ……もっと強い攻撃じゃないと倒せないみたい」

江ノ島アルター(チッ今の爆発でメインカメラが故障したか……だが、私様の目はメインカメラだけではない! 工場内に設置された監視カメラの映像を受信することができる!)

狛枝「ねえ。苗木クン。キミはこの状況をどうやって打開する? ボクには絶望しか見えないんだけど……」

苗木「そう言われても」

舞園「あ、あの苗木君……あのモノケモノさんが考えていることはがなんとなくわかりました……あのモノケモノさんは……」ゴニョゴニョ

苗木「そ、それ本当!?」

舞園「ええ。本当です。エスパーですから」

苗木「それなら、手はある! 希望を失っちゃダメだ! アルターエゴ! 工場内のマップアプリを起動して!」

アルターエゴ『任せて』

狛枝「流石、苗木クン! キミの希望は底なしだね! 素晴らしいよ!」

江ノ島アルター『は? 今更マップ見て何になるわけ?』

苗木「狛枝クン……負傷した皆の救出をお願い……」

狛枝「何するつもりなの?」

苗木「ボクが決着つけてくる!」タッ

江ノ島アルター『負傷した仲間を置いて自分だけ逃げるつもりなんてずるいんだー。そういうずるい子には私がお・し・お・き・しちゃうぞ☆』

苗木(追って来い……ボクの作戦がうまくいえばこのメカを倒せるはず!)

・苗木 2F 燃料保管庫

苗木「はぁはぁ……なんとか燃料保管庫に辿り着いた。ドアが無理矢理壊された形跡があるけど、何があったんだ?」

江ノ島アルター『燃料保管庫? フッ……人間の浅知恵なんて読めている! 私様に燃料をぶっかけて、もう一度爆弾を仕込み爆発の威力を底上げする作戦か!』

江ノ島アルター『そんなの甘いぜ! オイラに通用しない!』

苗木「アルターエゴ……ロックを解除して」

アルターエゴ『え……使うの? 悪用しちゃダメってご主人タマが……』

苗木「悪用じゃない! 皆を守るために使うんだ!」

アルターエゴ『わかったよ……そこまで言うなら……』カシャ

苗木「アプリ起動!」スッ

江ノ島アルター『は? アプリ?』

苗木「葉隠クンの頭上に人工衛星を落とすアプリだよ!」

江ノ島アルター『葉隠……? ああ、あの逃げ出した奴だな! そんなやつの頭上に人工衛星落として何になる』

苗木「やっぱり気づいてないんだね……葉隠クンは監視カメラがない地下室で寝ているんだ! 逃げ出してなんかいない!」

江ノ島アルター『な…な、なんだと!! バカな! 私様の分析能力では葉隠は臆病者という情報と監視カメラに映ってない情報から導き出した結論が葉隠の逃亡なのに!』

苗木「その結論が間違っているんだ! 葉隠クンは地下室……つまり、この燃料保管庫の真下にあるところに寝ているんだ!」

江ノ島アルター『この真下だと……バカな! 地下にいる人間に向かって人工衛星を落としたら地上のオレ達は……』

苗木「確実に巻き込まれるだろうね」

江ノ島アルター『この私様を出し抜くなんて……許さんぞニンゲンめ!』

苗木「…………あれ? 人工衛星中々落ちてこないよ」

アルターエゴ『今ハッキング中だから、もうしばらく待っててね』

苗木「」

江ノ島アルター『フン。とんだ愚者がいたものだな。 ニンゲン風情が知恵を働かせたかと思いきや、軌道から墜落までのタイムラグを計算に入れてないとは』

江ノ島アルター『それじゃお仕置きタイムいっくねー』



戦刃「させない!」タッ

江ノ島アルター『チィ! 邪魔が入ったか』

苗木「戦刃さん!」

戦刃「苗木君は殺させない。私が時間稼ぎをする……」

桑田「苗木! 最初の方に言った通り、借りを返しに来たぜ!」

十神「愚民が……仕方ない。この俺が苗木の失態の尻ぬぐいをしてやろう」

苗木「桑田クン! 十神クン! 助けにきてくれたんだね」

桑田「大神は皆を運んで脱出させるのに忙しいから、オレ達しか来れなかったけど我慢してくれ。主に最初にリタイアしたブーデーのせいだけどな。アイツは大神にしか運べねえ」

日向「おーい! 俺を忘れてんじゃないだろうなー!」

苗木「誰……?」


江ノ島アルター『雑魚キャラが何人集まってきたところで私様には勝てない』ブン

戦刃「危ない! みんな避けて」タッ

バコォ

桑田「うお! 地面が抉れた」

十神「パンチ一発でこれだけのパワーか。恐ろしい馬力だな」

日向「マジかよ……こんなバケモノに勝てるのかよ」

桑田「へ。腕の射程外から遠距離で攻撃すりゃいいんだろ? オレの出番だ! 唸れオレの剛腕! うおりゃ!!」ブン

江ノ島アルター『桑田怜恩……貴様の投げる玉の特徴は既にインプット済み……叩き落とすことは容易い』ベシィ

桑田「な、な、な、な、なんだとおおおおお!!」

江ノ島アルター『超高校級の分析能力を持つ私様なら、貴様等の行動を全て先読みすることができる!』

江ノ島アルター『とはいえ、偶然クリーンヒットする可能性もなくはない……最初に桑田! お前から始末してやる!』

桑田「お、おい……嘘だろ……」

戦刃「させない!」カチャ


戦刃は銃を構える。


江ノ島アルター『ちっ……銃か……九頭龍組の構成員から奪っていたのか』

桑田「銃……? バ、バカ! 戦刃! 撃つな!」

戦刃「えっ」カチャ


戦刃が銃を撃った瞬間、爆発を起こした。

桑田「がっ……さっき、オレが揮発性の燃料を撒いたせいで……」

戦刃「み、みんな……ごめん」

十神「俺がこんな間抜けな目にあうなんて」

苗木「みんな! 大丈夫!?」

江ノ島アルター『うぷぷぷぷ。本当に残念な人。この部屋では、銃が封じられていることに気付かないなんて。お陰で味方を撒き込んじゃったね』

日向「おいおい。どうなってるんだ」

江ノ島アルター『ん? どうやら爆発から逃れられた幸運な人がここにもいたようだね』

江ノ島アルター『でも、無駄だよ! オマエラはこのままボクに殺されて死ぬ運命なのさ ぶひゃひゃひゃひゃ』

日向「十神模擬刀を貸せ!」バッ

十神「お、おい! 何をするつもりだ!」

日向「その言葉斬らせてもらう!」ジャキ


日向の一撃はモノケモノの鋼鉄のボディに弾かれた。


日向「うわああ」

江ノ島アルター『あなたバカですか? 自分の尻尾を追いかけ回している犬くらいおバカさんですね。そんな切れ味の攻撃でこの鋼鉄のボディに傷を付けられるわけないじゃないですか』

日向「おかしいな。行けると思ったのに」

十神「むしろ何で模擬刀で行けると思った」

日向「うーん……記憶が曖昧だけどあらゆる才能を集結させた手術を受けたはずなんだけどな……使いこなせそうな奴とそうじゃない奴があるのか?」

江ノ島アルター(違う。こいつの才能はカムクラの存在が消えたことにより、徐々に才能が失われているんだ。カムクラのままここに来られたら正直、勝ち目はなかったかもね)

十神(チッ。こいつそんなに使えるやつじゃないのか? これならカムクラのまま仲間になってくれた方が良かった)

江ノ島アルター『日向の能力は所詮予備学科程度……インプット完了』

日向「予備学科……」

江ノ島アルター『ただの予備学科が超高校級の才能を持った奴ら同士の戦いに参加してる時点でおかしいんだけどね』

日向「お、俺は……」

苗木(日向クンの希望が消えていく……なんとかならないのか)

苗木「あ、あのさ日向クン……ボクも何の取り柄もないけど、ここまで来れたんだよ。だからさ……」

江ノ島アルター『苗木君には幸運がありますからね。でも、日向君には何かあるのですか』

日向「」

苗木(しまった! 励ますつもりが逆効果に)

江ノ島アルター『もういいでしょう? 私は早くこの部屋から脱出したいのです。あなた達と遊んでる時間はないんですよ』

カムクラ(日向……聞こえますか……)

日向(お前は……)

カムクラ(絶望の雑音によって、僕の存在は殆ど消えましたが、残った部分は少しあります……その部分を集めて、あなたの力にします)

日向(力って、何があるんだ)

カムクラ(そうですね……今のところ残っているのは、本当に限られてます……例えば、同人作家とか)

日向「同人作家の才能がこの場面で何の役に立つんだよ!」


『日向君!』

日向「!!」

苗木「ア、アルターエゴ? 違う……これは別の人格? いつの間にボクの携帯に入ってたんだ……」

七海『七海千秋だよ よろしく』

日向「な、な、な……」

七海『もう、日向君がこんなところで負けたら、私達会えなくなっちゃうじゃんか。お父さんが折角、希望更生プログラムを頑張って作ってるのに』

日向「うおおおおお!!!」

江ノ島アルター『!?』

七海『ね、だから頑張ってね。私は日向君を応援してるから』

日向「な、なるほど……虹嫁に希望を見出す! それが同人作家の才能だったのか!」

七海『ふあーあ。なんだか眠くなってきちゃった』

日向「!!!」ズキュン

日向「二次元こそ至高! 嫁に会いに行くために俺はお前を倒す!!」シュインシュイン

苗木「日向クンの雰囲気が変わった!?」

江ノ島アルター『バ、バカな……日向の戦闘力がどんどん上がっていく……! こ、これはまさか、カムクラが復活したのか!?』

アルターエゴ『どうやら上手くいったみたい。残された同人作家の才能の可能性にかけて良かった』

苗木「アルターエゴ! もしかしてキミが?」

アルターエゴ『えへへ。本当は僕の妹の存在は開発が終わるまで秘密にするつもりだったんだけどね。でも、こんな事態だし、仕方ないよね』

アルターエゴ『苗木君! ハッキングは終わって今、人工衛星が落下してる最中だよ。早くこの部屋から脱出しないと危ない』

苗木「みんな聞いた? 早く脱出して」

桑田「で、でもよ……オレ達が脱出したらこいつは……」

十神「いや、爆発で負傷した俺達がいても意味はない……悔しいがな」

戦刃「ごめんなさい」

日向「大丈夫だ。ここは俺に任せろ!」

江ノ島アルター『また模擬刀で切りかかるつもりか? 鋼鉄のボディには効かないって言ったはずだ』

日向「食らえ!」ブン


日向の一撃がモノケモノの足に命中した。


江ノ島アルター『な、何だ! バカな! 足のパーツが損傷しただと! たった一撃で!』ガクン

日向「足を封じれば、こいつは逃げられない! みんな逃げるぞ!」

苗木「そうだね。もう人工衛星の墜落まで時間がない! 早くしないと……」

江ノ島アルター『逃がさん……お前だけは……』


苗木の足がモノケモノの手に掴まれる。


苗木「うわあああ!!」

日向「お、おい! 大丈夫か!」

戦刃「苗木君!!」

江ノ島アルター『こいつも道連れだ!』

苗木「受け取って」バシ


苗木はアルターエゴが入ってるiphonを日向に向かって投げた、


日向「お、おい……どういうつもりだ」

苗木「アルターエゴまで巻き込むわけにはいかないよ」

戦刃「!!」

苗木「みんな……さようなら」

江ノ島アルター『うぷぷぷぷ。仲間の死なんて絶望的だねえ』

工場に人工衛星が墜落し、一瞬にして工場は瓦礫の山と化した。


舞園「そ、そんな……苗木君……」

桑田「すまねえ舞園ちゃん……苗木を助けられなかった」

十神「チッ。後味悪すぎだ。こいつらを裏で操ったやつは許さん! 十神の名にかけて」

不二咲「な、苗木君……ごめんね……僕が絶望に捕まったりしなければ……」

戦刃「えっぐ……な、苗木君……」

大神「うおおおおお!!! 苗木いいいいいい!!」

朝日奈「こんなの……酷過ぎるよ! どうして苗木が死ななきゃいけないの!」

狛枝「折角、素晴らしい希望の持ち主に会えたと思ったのに……」

日向「くっ……会ったばかりだってのに……」

ガタ

舞園「い、今そこの瓦礫が動きました! まさか苗木君が!」


江ノ島アルター『苗木かと思った? 残念私でした!』

十神「な、バカな! まだ生きているだと!」

戦刃「…………あなたのせいで苗木君が…………!」

江ノ島アルター『は?』

戦刃「許さない!」ガキン

江ノ島アルター『ザナドゥ』

戦刃「まだまだ!」ガキン

江ノ島アルター『ファザナドゥ』

戦刃「…………」ガキンガキンガキン

江ノ島アルター『』

大神「もうよせ戦刃……とっくに機能停止してる」

戦刃「…………」

ガタ

舞園「こ、今度はなんですか……」

???「イテテ……ここは……天国とかじゃないよね?」

舞園「そ、その声は! 苗木君!!」

苗木「舞園……さん?」

桑田「おおおお!!苗木!!心配かけんじゃねえよ!!まあ、とにかく生きてて良かったけどよー」

舞園「良かった……本当に良かった……」ギュ

苗木「あ、ちょ、ちょっと……」

桑田(やっぱり死ね)

十神「フン。人工衛星が直撃しても生きているとか幸運すぎて呆れるレベルだな」

狛枝「まあ、よくあることなんじゃない? ボクも飛行機が墜落しても生き残ったし」


戦刃「…………」

大神「おい、戦刃どうした?」

戦刃「私……決着をつけないといけない……」スタスタ

大神「戦刃?」

・私立希望ヶ峰学園

弐大「うおおおお!! トレーニングじゃああ!!!」

桑田「勘弁してくれよー! オレは練習しねーって言ってんだろ!」

弐大「待て! 桑田! ワシにはお前が必要なんじゃああ!! また、アレしてやるから、ワシと共に青春を謳歌しようではないか!」

桑田「ぎゃあああ」


山田「いやあ、不二咲千尋殿はわかってますな。七海千秋殿を制作するとは、いやはや。僕も負けてられませんぞ」

不二咲「えへへ。何だか照れるな」

日向「お父さん! 娘さんを僕に下さい!」

不二咲「え、あ、ダ、ダメだよぉ! そういう目的で作ったんじゃないから」

日向「じゃあ、ジャバウォック島にだけでも! 頼む! な?」

花村「僕はお父さんを美味しく頂きたいんですがね」

不二咲「!?」

田中「これが俺様が契約した魔犬の写真だ」

大和田「うおおおお!! 可愛いじゃねえか!」

田中「そうだろそうだろ。だが、これは敵を欺く仮の姿。こいつの本性は血塗られし闇の牙を持つ飢狼だ!」

大和田「あ? どういう意味だ?」

苗木「餌代がかかるってことじゃないかな?」


終里「もう一度オレと戦え!」

大神「いいだろう! 何度でも相手になってやる!」

朝日奈「さくらちゃん頑張れ!」


苗木(あれから、数週間が経った……絶望した先輩達は、みんなそれぞれ希望の心を取り戻している。もう少し絶望に浸食されていたら、荒療治をせざるをえなかったみたいだけど)

苗木(日向クンはカムクライズルの才能の中で結局残ったのは超高校級の相談窓口だけだったみたい。その才能が認められて本科に編入することが出来たんだ。本人は、絶望しかけている人の相談に乗ってあげたいって言ってた)

苗木(江ノ島さんと戦刃さんがいなくなって50日くらい経ったのかな……二人は今頃どうしてるんだろう……)

不二咲「みんな……見せたいものがあるんだ」

石丸「見せたいもの? なんだそれは」

七海『ふあーあ……眠い……』

日向「うひょおおお!! 七海!! 会いたかったぜ!」

苗木(同人作家の才能が消えてもそこは相変わらずなんだ)

七海『日向君おはよう。今日は報告があって来たの』

霧切「報告? 何かしら」

七海『みんなの仲間が帰ってくるんだよ』

江ノ島『はあ……退屈な50日間だった……退屈すぎて絶望すぎてもう絶望に飽きちゃった……』

苗木「江ノ島さん!」

罪木「江ノ島さん……! 会いたかったですよぉ……ぐす」

戦刃『えっと……黙っていなくなってごめんなさい。やっぱり私はクラスメイトの皆のことが好きだし、盾子ちゃんも私が付いていてあげないといけない……だから、こうするしかなかったっていうか……』

石丸「一体何が起きてると言うのだね!」

不二咲「僕が説明するね。これは希望更生プログラム。絶望に堕ちた人を希望に更生する目的があるんだ。そのプログラムに超高校級の絶望の大元である江ノ島さんを入れたんだ」

狛枝「素晴らしいよ! 流石超高校級のプログラマーの不二咲さんだ! キミはボク達の希望なんだね!」

七海「私は更生プログラムを受けている人の監視役なんだ」

日向「マジかよ! 絶望したら毎日七海とらーぶらーぶ出来るのかよ! 絶望したわー。俺絶望したから、希望更生プログラム受けたいわー」

十神「貴様は黙ってろ」

七海「今日でこの希望更生プログラムも終わり、江ノ島さんと戦刃さんもいつも通りの学校生活に戻しても大丈夫……だと思うよ」

葉隠「おう、めでたしめでたしってことだな! ハッハッハ」

朝日奈「なんでアンタが締めるのよ」

小泉「はい、皆並んで。写真撮るからね」

西園寺「わたし、苗木の隣はヤダからね! またセクハラされそう」

苗木「だからアレはわざとじゃないんだって」

朝日奈「セクハラって何!? 苗木は不潔だよ! 不潔大臣だよ!」

左右田「ソニアさん! こっちっすよ! ここ空いてますよ!」

ソニア「なにかおっしゃいましたか?」

大和田「おい、兄弟何敬礼してんだ? こういう時は肩を組みながら取るって決まってんだろ?」

石丸「む? そういうものなのか?」

大和田「おうよ! こうやってな! ハハハハハ」

石丸「なるほど。また1つ賢くなったぞ! ハハハハハ」

腐川「あ、あの……白夜様……」

「おい、もっと近寄れ。じゃないと写らないだろ」

腐川「は、はい! ……ハァ?」

豚神「どうした? 俺の顔になんかついてるか?」

腐川「ぐぎいい! だらしない脂肪が付いてるわよ!」

辺古山「ぼっちゃん。もっと真ん中に寄らないと……」

九頭龍「る、るせえ! 別にオレは写真なんて……」

唯吹「あれー?冬彦ちゃん照れてるんすか!」

九頭龍「んだとこら!」

狛枝「ほら、元予備学科の日向クンは端っこの方がお似合いだよ」

日向「なんだよその言い方」

狛枝「まあ、ボクもゴミクズみたなもんだし、端っこ同士で丁度いいね」

日向「一緒に撮りたいなら素直にそう言え!」

戦刃「盾子ちゃんどう?」

江ノ島「これが希望ね……最悪の気分よ。それと、勘違いしないでよね。また、あの島で生活させられるのが嫌だから、更生したフリをしてるだけだから」

戦刃「うふふふふ。照れちゃって可愛い!」

江ノ島「て、てめえ! ぶっ殺すぞ!!」

小泉「はい、撮るよー!」パシャ

苗木(こうして、不二咲さんが誘拐されたことから始まったボク達と絶望との戦いは一人の犠牲者も出さずに幕を閉じることが出来た。この学園生活もきっと平凡に過ぎていくことだろう。平凡な毎日が一番幸せなことかも知れない)

今度こそ本当に終わり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年10月18日 (金) 12:45:52   ID: -F3Df9RI

あれ?葉隠は?

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