京子「ゆるゆり・オブ・ザ・デッド!」(115)

~部室~

京子「ねえねえ、皆さ、一番怖いものって、なに?」

結衣「唐突だな、お前」

京子「いいから教えてよ~!」プンプン

ちな「私は怖いものが怖いですよ…」ガクプル

京子「どんな謎かけだそれ!けど、そんなちなちゅも可愛い!」ダキー

ちな「ちなちゅ言うな!そして抱きつくな―!」ササッ

京子「うう、酷いよちなつちゃん…」ガク…

あか「…私は忘れられるのが怖いよ~」

京子「あかりは深刻だな…」

あか「うううー!だって、だって災害の時とかに一人だけ忘れられたら怖いよ…」

あか「一人だけ取り残されて、助けを求めても誰にも届かないとか…」ウルッ

ちな「あかりちゃん、たとえ話だから!そんなに深刻にならないで!」

京子「大丈夫!そんな時はお姉さんが駆けつけてくれるよ!」

あか「きょ、京子ちゃん…ありがとう!」パァー

ちな(京子先輩は駆け付けないんですか…)

京子「えへへへ、結衣はどうかな?」

結衣「うーん…私は、ほら、交通事故とか怖いかな」

結衣「常に身近にあり得る可能性だからさ」

京子「りっありすーと!」

結衣「そんな京子はどうなんだよ」

結衣「こんな話を振ってきたって言う事は、相当なネタ持ってるんだろ?」

京子「よくぞ聞いてくれました!」

京子「えーとね、みんな、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』って知ってる?」

結衣「ああ、古い映画でしょ。見た見た。ゾンビが人間社会を乗っ取るってヤツ」

ちな「…私は当然見てません。話聞いてるだけで気絶しそう…」サァー

あか「ち、ちなつちゃん顔が怖くなってるよ…」

あか「私はお姉ちゃんと一緒に見たよぉ。お姉ちゃん怖がりだから近くにいてほしいって言われたから」

京子(あかりさん、抱きついたりしてたんだろうなあ)

京子「あの映画って、実話を元に作られたって知ってた?」

結衣「…いや、あのな。さっきも言ったけど、ゾンビが人間社会を乗っ取る話なんだぞ」

あか「そ、そうだよ。今の世界にゾンビなんていないんだから、実話じゃないよぉ」

京子「その辺はだいぶ変更されてるんだよ」

京子「実際に有ったのは…1975年にあった事件でね…」

京子「政府がとある薬品会社に作らせてた薬が地面にこぼれて地下の死体置き場に流れ込んだらしいんだけど」

京子「その死体達が、なんと飛び起きたんだって!」

ちな「あーあーあーあー聞こえなーい」

京子「それを知った政府は薬と死体を密封してを闇に葬って…映画を作った監督に圧力をかけたんだ」

京子「事実をそのまま映画にしたら放映出来なくしてやるって」

京子「だから映画は事実とは異なる事を描かれてるんだよ」

あか「えええ…それって、本当なの…?」

ちな「あーあーあーあーあー」

結衣「いや、本当だとしても何でお前がそれを知ってるんだよ。政府の人間かお前は」

京子「そりゃー、あれだよ、政府のやる事には穴があるからさ」

京子「実は、薬と死体を密閉した容器の一つが…間違った場所に送られだよ」

京子「…そう、この学校の化学室に、さ」

結衣「ごくり」

あか「ごくり」

ちな「あーあーあーあーあー」

結衣「き、京子の冗談にしては手が込んでたな」

あか「じょ、冗談なの?ほ、本気にしちゃったよお」

京子「いや、マジだって。奈々ちゃんから直接見せてもらったもん」

結衣「またまたー」

京子「………見に行く?」

あか「み、見に行くって…その、容器を?」

京子「……」ピッピッピッ

京子「あー!最近、学校って携帯つながりにくいよね!」

結衣「あ、ああ。何か中継基地が故障してるらしいよ。来週には治るんじゃない?」

京子「仕方ない、メールで…」

あか「何処にメールしたの?」

京子「奈々ちゃんのとこー。…お、返事来た」

京子「明日見せてくれるってさ!」

結衣「…マジか」

京子「じゃ、明日の放課後は旧校舎の化学実験室に集合ね!」

あか「明日はお姉ちゃんがお料理してくれる日だから、早く帰らないといけないんだよぉ…」

京子「なーに、すぐに終わるって!」

ちな「あーあーあーあーあー」



~翌日放課後~

~旧校舎~



結衣「京子のヤツ、遅いなあ…」

あか「本当だね、どうしたんだろ…」

ちな「じゃ、じゃあ!あ、あの!もう帰りません!?」ガクガク

結衣「ちなつちゃんは怖がりだなあ。大丈夫、私が守ってあげるから」

ちな「はう!///」

ちな「結衣先輩にそこまで言われるなら、この身、全てを捧げますぅ!」ベッタリ

結衣「ハ、ハハハハ」

あか「あれ、化学室の鍵…開いてるよ?」ガラッ

結衣「あー、じゃあ京子は先に準備室に入ってるのかもな」

結衣「ちょっと行ってみようっか」

ちな「はい!先輩、守ってくださいね!」ベッタリ

あか「ふ、2人とも待ってよお」

結衣「おーい、京子~。いるか~?」

京子「ゆ、ゆい!たすけて!たすけて!!!」

一同「!!!」

あか「きょ、京子ちゃんの声だ!」

ちな「い、いったいどこから…」

結衣「…準備室の扉の向こうからだ!」ダッ

ちな「あ、結衣先輩待って!」ダッ


ガチャッ


~旧校舎・化学準備室~

結衣「な!?」

ちな「な…なにこれ、ロッカーのノブに鎖が巻きついて…引っ張られてる…?」

あか「結衣ちゃん!この鎖、間切カーテンの向こうに引っ張られてる!」

ちな「か、カーテンの向こうに誰かいるの!?京子先輩!?

結衣「な、なんだこれは…!く!カーテンの裏から姿を現せ!」


シャー


ゾンビ「ノウミソオクレー!!」


ガブリッ


結衣「うああああああああああああああああががががががが!!!」

ちな「ゆ、結衣先輩ぃぃぃぃぃ!」

あか「結衣ちゃん!?」


ガチャンッ


京子「ひゃあああああ!」

京子「こ、こわかった…!」

あか「ロ、ロッカーの中から京子ちゃんが…?」

ちな「ゆ、ゆいせん…ぱい…」

京子「ゆ、結衣!」

結衣「」ガクガクガク

ゾンヒ「ムシャ・・・ムシャ・・・」

京子「くっ!この化物…!結衣を離せ!」バケツポイ



ガンッ


ゾンビ「………」

ゾンビ「モット、ノウミソォォォォ!」

一同「ひいいいいいいいいい!!!」ダッ


ガチャガチャ


京子「はぁ…はぁ…鍵は閉めたから…これで…」

ちな「ゆい先輩…ゆ、結衣先輩まだ向こうにいるじゃないですか!」

あか「だ、だめだよぉ、ちなつちゃん!頭齧られたんだから…もう無理だよお…」ガクブル

ちな「そ、そんな…ゆいせんぱい…」

京子「け、警察に…警察に電話!」ピッポッパッ

京子「あああ!!!!電話つながらない!!」

あか「京子ちゃん!本校舎に行けば固定電話機があるはずだよ!」

京子「そ、そうだな!よ、よし、本校舎に戻ろう!」

ちな「ゆい…せんぱい…」

京子「ちなつちゃんも!早く!」グイッ


ザーーーーーーーーーーーーー


あか「うわっ!何時の間にか雨が降ってる!す、凄い雨!」

京子「くっ、本校舎への道の途中に部室があるよね!」

京子「あそこでもう一回携帯を試してみよう!」

ちな「………」

~部室~

京子「ふあああー!一息つける…!」

あか「携帯試すね!」ピッピッ

あか「……だめ、繋がらない…」

ちな「……ねえ、この、声…」

京子「くっ、じゃあ本校舎までもう一っ走り…」

ちな「ねえ!こ、この、声!何なの!」

あか「ちなつ…ちゃん?」

京子「声って……」

ちな「しっ!」


ウアアアアアアアアアアアアアアアア

ヒィィィィィィィィイイイイイイイイ

アアアアアアアアアアアアアアアアアア


京子「な、何なの…この声…」

あか「ああああ…き、京子ちゃん…あそこ…!」

京子「…!」

ちな「…!」

あか「地面から…地面から…!死人が…!」


ゾンビ「アアアアアアアアア」


京子「う、うわあああああああああああああああ!!!」ダッ

ちな「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」ダッ

あか「あ、あ、待って、待ってよおおお!」ダッ

あか「み、みんな!待ってよお!置いていかないでよお!」

あか「あかり、ここだよお!忘れてかないでよお…!」

あか「あっ!」ドシャァッ

あか「うえええ…水たまり…こけちゃった…」

あか「だ、だれれいないのぉ…きょうこちゃん、ちなつちゃぁぁぁん…」

あか「泥が目に入って…前が…」ゴシゴシ



アアアアアアアアアアアアアアアア

ウウウウウウウウウウウウウウウウ

ウァァァァァァァァァァァァァァァ


あか「やっと、泥とれた…え…?」

あか「いや…」

あか「いやあああああああ!誰か!誰か助け、いやああああああああああああああ!!!!」


ガブリッ

~生徒会室~

綾乃「はぁ…やっと一息ついたわね」ガクッ

綾乃「西垣先生、これは一つ借りですよ?」チラッ

西垣「ああ、判ってる。焼却炉の鍵貸してくれてありがとうよ」

ひま「それにしても…まさかあんな物が存在したなんて想いもしませんでしたわ…」フゥ

櫻子「動く死体なんてさー、ホラー映画みたいで面白かったじゃん、小動物だけど」

綾乃「実際見ると面白いなんて言ってられないわよ…」

綾乃「先生、本当にあの1体だけなんですよね、その、ゾンビは」

西垣「ああ、誤って空けてしまった保管容器に入ってた死体は空気に触れて燃え尽きてしまったみたいだからな」

西垣「漏れたガスに触れて蘇った動物の標本もさっき焼却炉で燃やしたし…」

西垣「これで一件落着!楽しい週末を迎えられるって訳だ」

西垣「…それにしても、滝のような雨だな」

りせ「………」

綾乃「…会長、どうかしたんですか?顔色が…」

西垣「うん?松本、気分が悪いって?」

西垣「うーん、松本は保管容器が割れた時にモロにガスを吸ったみたいだからなあ…」

西垣「どれどれ、脈は、と……あれ?」

綾乃「…どうしたんです?」

西垣「いや、なんでもない…松本、ちょっと体温計咥えててくれ」

りせ「……」パクッ

西垣「…よし、もういいぞ」

西垣「……27℃」

ひま「…え?」

西垣「室温と同じだ」

綾乃「ちょっと、先生?」

西垣「……」

綾乃「先生!黙ってたら判りませんよ!」



ガンガンガン


一同(ビクッ)

京子「あやの!開けてくれ!あやのー!!!!」

綾乃「と、歳納京子!窓からどうしたのよ…!」ガラッ

京子「あ、あやのお!!!」ダキッ

綾乃「歳納京子///って、ずぶ濡れじゃない!どうして玄関から入ってこないの!」

京子「い、い、い、いますぐ窓を閉めて扉を閉めてバリケード作って!」

綾乃「あ、あなた、何言ってるの?またウイスキーボンボンでも食べたの?」

京子「い、いいから!あの声聞いて!」

綾乃「…声?」


ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ


ひま「な、何あの声…」

櫻子「きっちもわるーい!」

京子「ゾゾゾゾ、ゾンビが!旧校舎の化学準備室に!」

綾乃「…え」

西垣「わ、私の準備室に!?」

ひま「…先生、これ、ちょっと私達の手に負える事態じゃなくなってきてるんじゃ…」

京子「化け物みたいなのが100人以上いるんだよ!」

一同「ひゃくにん!?」

~旧校舎~

ちな「うううう!本校舎と逆の方に逃げちゃった…」

ちな「京子先輩とあかりちゃん…大丈夫かなあ…」

ちな「と、取りあえず鍵がかかる化学室に来たけど…」

ちな「あ、あの、準備室の向こうに……結衣先輩が…」

ちな「ゆい、せんぱいいいいい…」


ドンドンドン!


ちな「ひ、ひい!」ビクッ

ちな「誰かが準備室の扉叩いてる…!」

結衣『…その声は…ちなつちゃんだね』

ちな「…!」

ちな「結衣先輩!生きてたんですか!?」

結衣『…酷いよ、ちなつちゃん、私を見捨てて逃げるなんて…』

ちな「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

ちな「け、けど結衣先輩が無事で…良かった…!」ウルッ

ちな「そ、そういえば結衣先輩、化物はどうしたんですか!?」

結衣『…ああ、何とか倒したよ…』

結衣『あいつら、映画と違って頭潰しても平気だけど、バラバラにしたら動けないみたい』

ちな「流石、結衣先輩!い、いま扉開けますね!」

結衣『うん、ありがとう、ちなつちゃん。はやく、ちなつちゃんのかおが、みたいよ』


ガチャッ

ちな「結衣先輩…!…え?」

結衣「ちなつちゃん、あけてくれて、ありがとう」

ちな「ゆ、結衣先輩…頭が、半分……半分、ないで、す、よ?」ポカーン

結衣「ああ、さっきのヤツに食べられちゃってね」

ちな「は、ははは、ははははははは、へ、平気なんですか?結衣先輩、痛くないんですか?」

結衣「……痛いよ」

結衣「正直、凄く、痛い。痛くて痛くてたまらない、死にそうだけど、何故か死ねないんだよね」

ちな「あは、あははははは、あはははははははははははははははは」

結衣「けどね、この痛みを和らげる方法、今わかったんだ」

ちな「あははははははは!な、なんです?それ、手伝いますよ、結衣先輩の為なら」

結衣「ありがとう、ちなつちゃん」

結衣「ちなつちゃんなら、そう言ってくれると、思った」

結衣「だからね」


結衣「ノウミソオクレ!」ガッ


ちな「い、いやああああああああああああああああああああああああ!!!!」

~娯楽部庭~


プルルルー

プルルルルー

ガチャッ


あかね『あかり?随分帰りが遅いようだけど、どうしたの?』

あかり「…あはは、大雨のおかげで帰れなくなっちゃったんだ」

あかり「お姉ちゃん、傘持って学校まで迎えに来てくれない?」

あかね『わかったわ。今すぐ行くから待っててね』

あかね『今日は美味しいシチューを作ったから、帰ったら食べさせてあげるね』

あかり「うわあ、食べるの楽しみだなあ。お姉ちゃん、きっと美味しいんだろうなぁ」

あかね『うふふ、あかりったら///』

あかり「待ってるね、お姉ちゃん。急いできてね」ガチャッ


ピッピッピッ


あかり「…あ、ちなつちゃんのお姉さんですか?私、あかざあかりと申します」

あかり「実は大雨のせいでちなつちゃんが帰れなくなって」

あかり「はい、傘がないみたいだから、迎えに来てあげてくれると…」

~生徒会室~

ひま「はぁ…はぁ…なんとか、バリケードできましたわ…」

櫻子「ちかれたよー!」

綾乃「先生!電話はどうです!?」

西垣「…駄目だ、繋がらない」

京子「なんで!?固定電話なら繋がるはずじゃ!?」

西垣「どうやら、誰かが電話線を切ったみたいだな…」

京子「誰かって、あのゾンビが!?あの化け物がそんなことしたっていうの!?」

綾乃「と、歳納京子!落ち着きなさい!」

りせ「………」

西垣「ああ、そうだな、松本。それしかないだろう」

綾乃「せ、先生?」

西垣「今から私は外に出て車を取ってくる」

一同「!?」

西垣「生徒会室の外に止めるから、脱出する準備を進めてくれ」

ひま「む、無茶ですよ!外にはゾンビ達がいるんですよ!?」

西垣「けど、行くしかないんだよ。松本はちゃんとした病院に見せないといけないからさ」

綾乃「せ、せんせい…」

西垣「全ての責任は…私にあるからな。すまない。皆は私が絶対に助けるから」

京子「奈々ちゃん……」

綾乃「先生…」

櫻子「先生!バット!」ポーイ

西垣「ナイスだ、大室」

りせ「………」

西垣「松本、もう少しの辛抱だからな…」ナデ

綾乃「…先生、焼却炉の借りの件、忘れてないですよね」

西垣「ああ」

綾乃「……返すまで死なないでください」

西垣「ふっ…」

西垣「…よし、行くぞ!扉を開けてくれ!私が出たらすぐに閉めるんだよ!?」」

ひま「はい!」



バァン

スルッ
スルッ


綾乃「よし、閉めて!」

櫻子「くっ!」バーン

ひま「先生……頑張って……」

~旧校舎~

ちな「ぅぅぅぅぅ…」ガクガクガク

結衣「ちなつちゃん、酷いよ、目に鋏を突き刺して逃げるなんて…」

結衣「おかげで全然見えない…」

結衣「けど、許してあげるよ…私は、ちなつちゃんを愛してるからね…」

結衣「ちなつちゃんも、私を愛してるんだよね…?」

ちな「ぃ、ぃゃぁ…」ガクガクブルブル

結衣「だからちなつちゃんの生きたノウミソ食べさせてよ…」

結衣「ちなつちゃぁぁぁぁぁぁぁん」


バーン!


ちな「ひぃ!?」

結衣「ちなつちゃん、このロッカーの中にいるんだよね…」

結衣「目が見えなくても、判るよ…」

結衣「ちなつちゃんの美味しそうなノウミソのにおいがするからさぁぁぁぁ」

ちな「ゆいせんぱいぃぃぃ…もうやめて…」


バーン!


結衣「うあああ…腕の骨が折れちゃった…」

結衣「酷いよ、こんなにしてるのに出てきてくれないなんて…」

結衣「けど、ちなつちゃんの為なら、腕が落ちたとしても、悔いはないよ…」

結衣「ちなつちゃぁぁぁぁぁん」

ちな「もういやああああ…」ポロポロ

~生徒会室~

京子「………」

綾乃「……歳納京子、大丈夫…?」

京子「あ、綾乃…ごめん、さっきは取り乱して…」

京子「……ちなつちゃんと…あかりの行方が判らないんだ…」

京子「私…2人を置いて、一人で…」ウルッ

綾乃「歳納京子…」

京子「結衣も見捨てたし…私、最低だ…生きてる資格ないよ…」ポロポロ

綾乃「そんなことない…!」

京子「……綾乃は、何時も優しいね…」グスッ

綾乃「違うの、聞いて、歳納京子」

綾乃「貴女は私達の命の恩人なの」

京子「…え?」

綾乃「だってそうでしょ?貴女が生徒会室に来てくれなかったら」

綾乃「きっと私達は無防備に殺されてた」

京子「そ、それは…ただの偶然だよ…」

綾乃「偶然でもなんでも!」

綾乃「私達を救ってくれた事は確かなの!」

綾乃「貴女がここに生きてたどり着いてくれたことが嬉しいの!」

京子「あ、あやの…」

綾乃「///」

綾乃「そ、それに逸れた2人だってまだ死んだって決まったわけじゃないでしょ」

綾乃「案外、もう校外まで逃げ延びてるかもよ?」

京子「………」

京子「うん、そうだよね…私がここでいじけてても、仕方ない」

綾乃「そうよ!」

京子「綾乃……」


チュッ


綾乃「!?」

京子「何時も、ありがとうね…」

京子「私、私、綾乃の事が…」

綾乃(あわわわわわわわわわ///)

ひま「先生の車来ました!」

一同「!!!!」ダッ

ひま「ちょ、狭いですわ!バリケードの隙間はこれだけしかないのですから!押さないでください!」

櫻子「もーうるさい!」

京子「先生の車…ゾンビ達にめちゃくちゃ追いかけられてる…!」

ひま「というか、なんで連中はあんなに速いんですの!ゾンビの癖に!」

櫻子「映画と現実は違うにきまってるだろ、バーカ」

ひま「その口、ねじ切りますわよ!」

ひま「というか、貴女どうしてそんなに呑気ですの!」

櫻子「次期副会長の私がこんなところで死ぬはずないもーん」

ひま「な、なんですってぇぇぇぇぇ!!!」

綾乃「2人とも、黙って!」

京子「駄目だ、あの調子だと車止められない…」

京子「止まったら、囲まれて動けなくなる!」

綾乃「あ……生徒会室の前、通り過ぎて……」

櫻子「ありゃ、行っちゃった」

ひま「せ、先生!私達を見捨てて…!」

京子「し、仕方なかったんだよ、あのままだと止められないし…仕方なかったんだよ…」

ひま「皆を助けるとか言ってた癖に!う、うそつき!先生の嘘つき!会長まで見捨てるなんて!」

櫻子「…あれ?会長は?」

綾乃「そ、そういえば先生が出ていった時から姿を見かけてないけど…まさか、外に!?」

~焼却炉前~


プルルルル

カチャッ


西垣「松本か?大丈夫、心配するな」

西垣「生徒会室は確かに通り過ぎたが…なーに、ゾンビ達を振り切ったら直ぐにUターンして戻るさ」

りせ「………」

西垣「…何?おい、松本、お前、今どこにいるんだ?」

りせ「………」

西垣「し、焼却炉の前って…まさか、お前!」

りせ「………」

西垣「さよならって、お前!やめろ!何やろうとしてるんだ!」

西垣「早まるなお前は私が治す!絶対に奴らみたいにはならないから!おい!おi」ガチャン

りせ「………」


ガチャン


りせ「………!」ジュゥゥゥ

りせ「………!」シュボッ

りせ「………!」ゴウゴウ

りせ「……」

りせ「…」

りせ「」

~旧校舎前~

~車内~


西垣「くそ!くそくそくそ!松本、早まった真似を!」

西垣「……今から焼却炉に行けば間に合うか!?」

西垣「いや、そんな事をしたら生徒会室の皆を助けられなくなる…」

西垣「くそ!ゾンビども!どけえええええええええええええ!!!」


キキキキィィィィィィィィー


西垣「しまった!タイヤが…!旧校舎に、突っ込む…!」


グワシャァァァァン!


西垣「ぷっ!くっ…化学室に突っ込んじまったか…」

西垣「車は…もうだめだな…」

西垣「連中が追い付いてくる前に準備室に立てこもるか…!」



ガタガタ、キィー


西垣「しまった!もうゾンビが!?」

ちな「ごほっ…ごほっごほっ…」

西垣「吉川…か?ロッカーの中で何してたんだ?」

西垣「というか、運が良かったな、へたすりゃ車がロッカーに突っ込んでたぞ」

ちな「ごほっ…せ、せんせい!?」

ちな「はっ!?」

ちな「結衣先輩は!?」

西垣「船見?」

西垣「……ひょとして、車の下で潰れてる、彼女が…」

ちな「ゆ、結衣先輩…です…」

西垣「なんてこった…私は、生徒を殺してしまったのか…」

ちな「……いえ、結衣先輩は…もうゾンビでした…」

ちな「私を食べようと…」

西垣「…そうか」


アアアアアアアアアア

ウウウウウウウウウウ


西垣「む、いかん、奴らが追い付いてきた」

西垣「吉川!準備室に逃げ込むぞ!」

ちな「え!?け、けど、準備室にも1体いるはずなんです…!」

ちな「ゾンビ化した結衣先輩がバラバラにしたって言ってましたけど…」

西垣「1体か、それなら…これで十分だ」

ちな「バッド?」

西垣「連中は頭をふっ飛ばしても倒せないが、無力化は出来るんだ」

西垣「頭なかったら噛みつく事も出来ないからな」

ちな「な、なるほど!」

西垣「よし、じゃあ行くぞ!準備室への扉を開けてくれ!」

ちな「は、はい!」

~化学準備室~

ちな「ほ、ほんとにバラバラになってる…」

西垣「多分…船見が正気を失う前にやったんだろうな…」

西垣「お前達を守るために…」

ちな「結衣先輩…」

西垣「準備室は爆発に耐えられるほど頑丈にできてるから、連中が来ても突破はされないだろう」

西垣「今のうちに生徒会室に残った生徒達を助ける手立てを考えなければ…」

ちな「わ、私達の他に生きてる人いるんですか!?京子先輩とあかりちゃんは!?」

西垣「生徒会メンバーと歳納は無事だ。…だが、赤座は…わからん」

ちな「そ、そうですか……」

ちな「せ、先生!何時もの変な発明で連中を倒せないんですか!?」

西垣「ここは旧校舎だからな…何時も爆発実験で使ってるような物は置いてない」

ちな「こ、ここに硫酸って書かれたビンがあるんですけど!」

西垣「確かに硫酸は効果あるだろうが…それっぽっちの量ではな」

ちな「じゃあ…どうすれば……」

西垣「……保管容器に…そういえば、無線機が備え付けられていたな」

ちな「保管容器?」

西垣「ああ、ゾンビが入ってた容器だ」

西垣「確か『緊急時連絡先』と書かれていたはずだが…」

ちな「そ、それです!きっと政府が緊急時の為に無線機を備え付けておいたんです!」

ちな「試してみましょう!」

~校門前~

あかね「あら、ともこじゃない」

ともこ「あかねさん!あかねさんもお迎えですか?」

あかね「ええ、あかりからラブコールが来て♪」

ともこ「あ、うちもあかりちゃんから電話あったんですよ」

ともこ「何か、ちなつの携帯は調子が悪いみたいで、繋がらないですし」

あかね「あかりが基地局が故障してるって言ってたわね」

あかり「………」

あかね「あ!あかりだわ!」

あかり「………」

あかね「あかりぃ~♪」ダッ

ともこ(もう!もう少し話していたかったのに!)

あかね「あかり!びしょ濡れじゃない!校舎内で待っててくれても良かったのに!」

あかり「………」

あかね「…あかり?」

ともこ「きゃあ!?」

ゾンビ「ウウウウウウ」


ガブリッ


ともこ「あ、うああああ…!」

あかね「と、ともこ!?」

ウアアアアアアアアアアアアアアアア

ウウウウウウウウウウウウウウウウ

ヒィィィィィィィィィィィィィィィィ


あかね「な、何!貴方達!」

あかね「あかり!私の後ろに来て!速く!」ガッ

あかり「お姉ちゃん……」

あかね「あか…り?どうしたの、その怪我、あかr」

あかり「ノウミソオクレェェェェェ!」


ムシャリッ








あかり「美味しいよ、お姉ちゃん」

あかり「だから、もっと、もっと皆を呼ばないと、ね…」

~生徒会室~

ドンドンドンドン!

ウアアアアアアアアアアアアアアア

ヒィィィィィィィィィィィィィィィ

ノウミソォォォォォォォォォォォォ


ひま「……」グッタリ

櫻子「グゴー」zzz

京子「綾乃…」

綾乃「なに…歳納京子…」

京子「さっきの話の続き…なんだけど…」

京子「私は、さ。綾乃が好き…」

京子「何時も私と遊んでくれる綾乃が好き。真面目な綾乃も好き。ちょっと怒った綾乃も好き」

京子「照れてる綾乃も、頑張ってる綾乃も、落ち込んでる綾乃も、全部好き」

京子「綾乃が私の事を嫌いでも、この気持ちは変わらないから」

京子「けど、何かある前に…綾乃の気持ち…聞いておきたい」

綾乃「歳納京子……」

京子「京子でいいよ、綾乃」

綾乃「き、京子……///」

綾乃「私は……///」

~旧校舎・化学準備室~

ちな「ど、どうですか!先生!」

西垣「しっ!…やっぱり政府への直通無線だったみたいだな」

西垣「どうやら、こういう事態に備えて事前に計画が立てられてたみたいだ」

ちな「す、凄いじゃないですか!私、政府を見直しました!」

ちな「け、けど、どうやって解決するんでしょ、やっぱり自衛隊とか来るんですかね?」

西垣「………いや、私の勘が告げている」

ちな「え?」

西垣「…何か、凄くわくわくする事が起こる」

~生徒会室~

綾乃「わ、私も…京子の事を…///」

京子「あ、綾乃…聞かせて///」ジッ

綾乃「あわわわ、ち、近いわよ、きょうこ///」

櫻子「ねえねえ、何か、音聞こえない?ほら」

ひま「………ええ、聞こえますわね、何か…ヒューッていう音が」


~校門の外~

あかり「…おねえちゃん、あれ、なんだろうね」

あかね「…ながれぼし、みたい」

ともこ「…きれいね、あかねさん」

ゾンビ「ウアアアアアアアアアアアアアアアア」

ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ








カッ!






TV「先日起こった七森中学周辺での大爆発事件の続報です」

TV「生存者0という痛ましいこの事件」

TV「当初はガス漏れによる爆発事故と予想されていましたが、人為的な事件だった事が発覚しました」

TV「捜査本部はこの件を七森中学に化学教師として勤めていた西垣奈々容疑者の犯行と断定」

TV「西垣容疑者は普段から校内で爆発事件を起こしており、今回も同様の……」








最後まで付き合ってくれてありがと。
暇な人はもう一度読み返すと何か発見があるかもね!

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