不二咲「出来たよ苗木君。葉隠君の頭上に人工衛星を落とすアプリが」 (168)

苗木「流石不二咲さん!」

不二咲「iphoneにアプリを入れるだけで楽々ワンタッチで葉隠君の頭上に人工衛星を落とすことが出来るんだ」

苗木「かがくのちからってすげー」

不二咲「人工衛星をハッキングしたり、墜落の角度を計算したり、実際の距離も結構あるからタッチした後に墜落するまでに若干のラグがあるから気を付けてね」

苗木「ありがとう。後で試してみるよ」

不二咲「このアプリは本当に危険だからくれぐれも悪用しないでね? 絶対だからね」

苗木「分かってるって」

不二咲「苗木君のことは信じてるけど、それでも心配だなあ……そうだ。苗木君のiphonにアルターエゴを入れてたんだった。いざとなったらアルターエゴに止めて貰おう」

苗木「んーむにゃむにゃ」

江ノ島「絶望……絶望……絶望するといいよ……世界を絶望に塗り替えちゃえ」

苗木「ぜつ……ぼう……?」

江ノ島「そうそう、いい感じに洗脳されて……」

石丸「コラ! 苗木くん! 授業中の居眠りはダメだぞ!」

苗木「はひぃ」ビク

江ノ島(ち……もう少しで絶望睡眠学習が完了するところだったのに。まあいいや。これで苗木も絶望堕ちするかな?)ワクワク

葉隠「よぉ苗木っち! 戸籍くれねえか?」

苗木「やだよ」

葉隠「いいじゃんいいじゃん減るもんじゃねえし」

苗木「良くない! 全然良くない!(なごむわー! ずんずんなごむわー!)」

葉隠「頼むって! 借金の返済日が近づいてるんだべ」

苗木(自分は蓄えがある癖にボクの戸籍を奪おうとするなんて……なんて絶望的に酷いやつなんだ……!)

苗木(そうだ! 不二咲さんに貰ったアプリを使えば……ククク、こいつは生かしてはおけんな)

アルターエゴ『ダメだよ苗木君……』

苗木「アルターエゴ? どうしたの?」

アルターエゴ『ご主人タマが悪用しちゃダメだって言ったじゃない』

苗木「でもこんな屑を生かしておけないよ! 今こそが正しい使い道じゃないか! 屑は粛清される! それこそがこの世界の真理だよ!」

アルターエゴ『苗木君はそれでいいの? 絶対に後悔しない? それなら起動するけど……』

苗木「ボ、ボクは……」

アルターエゴ『葉隠君はクラスメイトじゃないの? クラスメイトが間違った道に進もうとしている時は全力で止めるのが仲間じゃないの? ちょっと気に食わないからって簡単に殺しちゃうの?』

苗木「ぐぬぬ……」

アルターエゴ『葉隠君だってきっと更生できるはずだよ。それをタッチ1つで、葉隠君の未来を奪うっていうの? 苗木君はそれで本当に自分が正しい使い道をしたって胸を張って言える?』

苗木「それは……そうだね……ボクが間違ってた。ごめん」

アルターエゴ『思いとどまってくれた?』

苗木「うん。ボクはどうかしてたんだ」

苗木(そうだ。人は簡単に人を殺せる武器を手にしたら何をしでかすかわからないんだ……だからこそ、それ相応の物を持つには責任を持たなければならない)

苗木(この人工衛星墜落のアプリは決して悪用してはいけない……ちゃんと正しい使い道をしないと。ましてや他人に渡してはいけない代物)

苗木(このアプリはボクが責任持って管理するよ)

苗木「ボクはもう絶望に堕ちたりなんかしない! ボクが間違いそうになった時に止めてくれたアルターエゴのためにも! 希望は前に進むんだ!」

江ノ島(あれあれ? 計画失敗。まあいいや)

THE END



もうちょっとだけ続くんじゃ

くぅ~疲れましたw これにて完結です! 
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、ご家族のみんなへのメッセジをどぞ

寅之助「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒な汚職事件も見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

仁「いやーありがと! 
宇宙の恐ろしさは二十分に伝わったかな?」

こまる「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

千秋「見てくれありがとう! 
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

大亜「・・・ありがと」ち~ん

では、

寅之助、仁、こまる、千秋、大亜、俺「皆さんありがとうございました!」

終里

寅之助、仁、こまる、千秋、大亜「って、なんで俺くんが!? 
改めまして、ありがとうございました!」

モノクマ「うぷぷぷぷこれで終われると思ってんの? そんなの甘いよ! そんなの大甘だよ! デビル甘だよ! 地獄甘だよっ!! むしろ本番はこれからじゃん!」

モノクマ「ということで本編スタート!」

モノクマ「あ、これから先は2のネタバレがあるから、プレイ済み推奨だよ」

モノクマ「ギャグ要素はありません。純度100%のシリアスをお届けします」

不二咲「ふあーあ……徹夜でアプリ作ったからなんだか眠いや」

??? 「動くな!」ガバ

不二咲「んぐ……」

??? 「貴様が開発した人工衛星ミサイルを落とすプログラムはどこだ?」

不二咲「んんー」

??? 「シラばっくれるつもりか? まあいい。連れ帰ってたっぷり聞き出してやる」



九頭龍「遅かったな……お前がしくじるとは思ってないが少し心配したぜ」

辺古山「ハッ。申し訳ございません。探すのに手間取ってしまいました。結論から申し上げます。人工衛星を落とすプログラムは見つかりませんでした。代わりに製作者と思われる少女の拉致に成功しました」

九頭龍「そうか、それだけで十分だ。よくやった。後は俺がこいつから情報を聞き出してやる」

辺古山「ハッありがとうございます」

終里「なあ。ところで人工衛星ってなんだ? 食えるのか?」

詐欺師「衛星とは惑星の周囲を回っている星のことだ。人工衛星とは人工的に作られた衛星のこと。地球の周囲を回って様々なデータを収集・解析する目的がある」

左右田「ついでに言うなら、人工衛星とミサイルの基本構造はほぼ一緒だぜ。弾頭部分に爆弾や生物・科学兵器を入れればミサイル。通信衛星を入れれば人工衛星としての役割になるんだ」

左右田「今回のプログラムは人工衛星の通信衛星部分をハッキングして、軌道を無理矢理修正させてミサイルとして人工衛星を落下させるものだ。兵器として作られたミサイルに比べれば威力は少ないけど、それでも被害は尋常じゃないぜ!」

終里「なんかよくわからんが食えないってことはわかったぜ」

左右田「大気圏に入る時の入射角によって、人工衛星が途中で分解・炎上し、燃え尽きる可能性がある。超高校級のプログラマーと評される不二咲千尋なら最適な入射角をプログラムに計算させ、ほぼ燃え尽きてない状態で地上まで運ぶことが可能なはずだぜ」

罪木「ふゆぅ。人工衛星が落ちたら危ないですよぉ」

左右田「危ないからこそ意味があるんじゃねえか! 落ちた人工衛星の残骸は俺が貰っていいか? 結構いい素材使ってそうなんだよな。へへへ」

西園寺(ビッグバン)「まさか怖気づいたとか言わないでよ? 人類に絶望を振りまくのが今更怖いですぅとか言い出したら怒るからね!」

罪木「す、すみません。そういうわけじゃなくて、ただ、人工衛星が落ちたらあの人も危ないんじゃ……」

西園寺「あの人ならお前に心配されるまでもなく、安全な場所に避難するはずだよ。ゲロブタの分際で一々余計な心配しなくていいんだよ!」

罪木「はいすみません。ゲロブタですみません」

九頭龍「なあ……いい加減吐いてくれよ。こっちはやろうと思えば極道仕込みの拷問だって出来んだぜ?」

不二咲「し、知らないよ! そんなプログラム」

九頭龍「うるせえ! テメーの穴に酒瓶ぶっこむぞ!」

不二咲「ひ、ひい!」スッ

九頭龍「おい、何で尻隠した? テメーの穴にぶっこむぞって脅してんのに、尻の心配するとかよ……なんだんだこいつは。普通前の穴だろ!」

不二咲「あ、いや、そ、それは……」

九頭龍「お、おい。お前まさか男か?」

不二咲「………………」

九頭龍「なんてこった!」

不二咲「と、とにかく言うことは何もないよ」

九頭龍「チッ。ダメだこいつ。ちょっとやそっとの脅しには屈しないし、かといって拷問に耐えられる体力もなさそうだ……一番やりづれー野郎だな」

江ノ島「うぷぷぷぷ。もっと頭使いなよ」

罪木「あああん!!」ビクンビクン

江ノ島「私様の姿を見ただけで絶頂するとは……ニンゲン風情かと思ったが、既に調教済みのニンゲン以下の家畜のようだな」

九頭龍「頭を使うってどういうこった?」

江ノ島「不二咲がそこまでして頑なに秘密を守るってことは、例のプログラムはこいつの身近な人間が持ってる可能性が高い」

九頭龍「仲間に危険が及ぶのを防ぐためか……く! こいつ漢じゃねえか! 絶望に染まってくれれば、オレの舎弟にしてやってもいいな」

江ノ島「ハイハイ。敵に感情移入しない。ってことは、こいつの仲間がこの場所に来るように仕向けるのが一番手っ取り早いと思わないかい?」

九頭龍「なるほどな……」

江ノ島「というわけで、既に脅迫状は出しておきましたー。みんなで協力して奴らを返り討ちにしてねーうぷぷぷぷ」

九頭龍「仕事はえーな」


江ノ島(さて、これからどうなるのか楽しみ楽しみ。センパイ達はまだ完全に絶望に染まりきったわけじゃないし、まだ良心の欠片が残ってるいるのもいる。私のクラスメイト達をけしかけて、コロシアイをさせればどっちが勝つにせよ面白いことになりそう)

石丸「み、みんな大変だー!」

苗木「どうしたの石丸クン?」

石丸「ふ、不二咲くんが誘拐された!」

大和田「なんだって! チクショウ! どこのどいつだ! 教えろ兄弟!」

石丸「落ち着きたまえ兄弟。僕の下駄箱にこんな脅迫状が……」

不二咲千尋は誘拐した
返して欲しければ、人工衛星落下プログラムを持って廃工場まで来い
警察に言えば不二咲千尋の命はないと思え

超高校級の絶望一同

霧切「超高校級の絶望……厄介な相手ね」

石丸「知っているのか霧切くん!?」

霧切「私も詳しいことは知らないわ。ただ、ここのところ増えている行方不明者や死亡者が出た事件の裏には超高校級の絶望がいると噂されてるの」

葉隠「おいおい。そんな危険な相手なのかよ」

苗木(人工衛星……多分アレのことだな。でも、アレを誰かに渡すわけにはいかない! 超高校級の絶望が相手なら尚更だよ。そうなると答えは1つしかないよね?)

苗木「みんな行こうよ! 不二咲さんはボクらの仲間だ! 助けないわけにはいかないよ!」

大和田「よく言った苗木! それでこそ男だ! アイツを……不二咲を助けに行くぞ!」

桑田「マジかよー……でも、行かないわけにはいかないか。よっしゃ! オレも協力してやんよ!」

セレス「お待ちください。これが悪戯の可能性はありませんか?」

大和田「あ? そん時はそん時だ! こんな下らねえ悪戯しやがった奴をオレがぶっ殺すだけだ!」

十神「悪戯ならまだいい。これが俺たちを陥れるための罠だったらどうする?」

大和田「だったら、何だって言うんだよ! 不二咲を見殺しにするつもりか!」

苗木「ん? メールだ……知らないアドレスから……こ、これは!!」

石丸「どうしたんだ苗木君!」

苗木「このムービー……不二咲さんが縛られている映像だよ」

大和田「んだと! おい! 不二咲無事か!」

十神「ムービーに語り掛けてどうする」

??? 『うぷぷぷぷ……これは悪戯でも罠でもないよ。でも、本当に来ないと不二咲千尋さんは死んじゃうかもねー』

大神「一番体の弱い不二咲を狙うなんて……許せん!!」ゴオオオオオ

朝日奈「ひい! さくらちゃんが燃えている!」

苗木(結局、ドラマの撮影で欠席してる舞園さん。何故かいない江ノ島さんと戦刃さん。疑い深いセレスさんと十神クンと腐川さんを除くみんなで例の廃工場まで来たけど……)

石丸「よし。みんな集まったな。それぞれが持ってきた武器を確認しようではないか! 僕は毎朝素振りに使っている竹刀を持ってきたぞ」

苗木「ボクは体育館にあった模擬刀だよ。こんなのでもないよりマシかなって……後は不二咲さんが開発したアプリが入ってるアイポンかな。一応何かの役には立つと思う」

大和田「オレは修学旅行で買った木刀と愛用の単車だ」

山田「脅威の刀率!?」

大和田「あ? そういうオメーは何持ってきたんだよ」

山田「僕はガンガン(鈍器)を持ってきましたぞ。本当は薄い本専門なのですが、今回ばかりは攻撃力と防御力を重視しましたぞ。服の下に仕込めば防御にもなります故」

桑田「ブーデーの服と腹の間にそんなもん仕込むスペースなさそうだけどな」

山田「なんですとぉ!」

桑田「ぱっつんぱっつんで今にも服が破裂しそうじゃねえか! 少しは痩せろ!」

大神「我に武器はいらん! この拳一つで十分!」

朝日奈「さくらちゃんかっこいいー! 私はお弁当用にドーナッツとプロテインを持ってきたよ」

桑田「ドーナッツとプロテインってやる気あんのか!」

朝日奈「むー腹が減っては戦は出来ぬって言うじゃない!」

大神「く……我としたことがプロテインを忘れるとは不覚……!」

苗木「そんなに落ち込むこと!?」

朝日奈「大丈夫だよさくらちゃん! 私の分も分けてあげるから」

大神「すまぬ……すまぬ……」

桑田「オレは硬式のボールを何球か……後は金属バットだな。やっぱり使い慣れた形状のものが一番だぜ」

石丸「君は使い慣れるほど練習に参加してないではないか!」

桑田「オレは実戦で実力を発揮するタイプなの!」

葉隠「俺はいつでも逃げられるように煙幕やら閃光弾やら爆竹やらを……」

大和田「チッ考えることがせこすぎだろ」

霧切「いいえ。葉隠君にしてはいいものを持ってきたわ。今回の目的はあくまでも不二咲さんの救出……敵を殲滅することではないわ」

苗木「確かに不二咲さんのところに辿り着いたとしても、脱出できないことには意味がないからね」

大和田「チッ。敵を全員ぶっ潰せばそんなもん必要ねえっつーの」

苗木「霧切さんは何を持ってきたの?」

霧切「応急手当できるように救急セットをいくつか持ってきたわ。今いるメンバーの血の気の多さを考えたら武器以外持ってきてる人は少なそうだもの」

苗木「確かに……そんなところにまで気が回るなんて霧切さんは将来いいお嫁さんになりそうだね」

霧切「それは口説いてるのかしら?」クス

苗木「あ……いや、そんなつもりで言ったんじゃ」

桑田「ヒュー妬けるねえ!」

山田「リア充爆発しろ」

石丸「こら! 不純異性交遊の話なんてしてる場合ではないぞ! 不二咲くんの救出が先だ!」

山田「ところで苗木誠殿。不二咲千尋殿が開発したアプリとやらはどんなものがあるのですかな?」

苗木「それは……全部は言えないけど……とりあえず、不二咲さんのアルターエゴが入ってるよ」

アルターエゴ『こんにちは。僕はアルターエゴiphon版です。PC版のお兄さんに負けないように頑張ります』

山田「な、なんと! 携帯の中に美少女がいるなんて……うらやまけしからん!」

苗木「欲しいならiTunesで落としなよ。無料でDL出来るよ」



石丸「しかし……入口には見張りがいるぞ。どうやって侵入すればいいものか」

苗木「なんかヤが付くヤバそうな人がいっぱいいるんだけど……」

大和田「敵はそれだけデカイ組織が後ろ盾にいるってことか。チッ」

霧切「とにかくあの見張りに見つからないように潜入するしかないわね」

大神「我が全員まとめて……」

朝日奈「ちょっとさくらちゃん! 危険だよ!」

大神「危険でもいくしか……」

霧切「待って……よく観察すれば必ず突破口は見つかるはずよ」

山田「うう……勢いで来たはいいけど、なんか怖くなってきましたなあ。拙者ヒーローよりモブキャラの方が向いてるようですぞ」

桑田「おいおい。今更怖気づくなよブーデー」

山田「だって……せめて戦刃むくろ殿がいてくれたらこちらも戦力的には充実するというのに」

大神「我では不服か?」

山田「いえいえ滅相もございません」でぶでぶ

葉隠「むしろオーガを相手にする敵の方に同情するべ」

大和田「考えても仕方ねえ! オレが囮になるからお前らはその隙に入口から堂々と入れ」

苗木「大和田クン! いくらなんでも無茶だよ!」

大和田「おいおい苗木よぉ。オレを見くびってるのか? 超高校級の暴走族のこの俺様を!」ブウォン

霧切「なるほど。機動力ならバイクがある分、大和田君がこの中で一番優れているわ。風貌も目立ちやすいし、囮役としては最適ね」

葉隠「おいおい。何も戦力になる大和田っちじゃなくても……」

霧切「じゃあ、葉隠君が囮役やる? そのドレッドも十分目立つから敵の注意を引きつけるのに役立つわ」

葉隠「遠慮します」

山田「ですよねー」

石丸「兄弟ッ! 君を止めても無駄だということは僕が一番良く知っている……だからあえて止めるようなことはしない! だが、これだけは言わせてくれ」

石丸「死ぬなよ兄弟」

大和田「おうよ。兄弟より先にくたばってたまるかよ! ……行くぞゴルァ!!」ブオオオオオオ

893「んだテメエは!!」

石丸「よし、兄弟のお陰で見張りがいなくなった! 今の内に内部に侵入するぞ!」


苗木「ここが敵の本拠地か……」

霧切「苗木君……余り前に出過ぎないで慎重に進んで……敵に見つかるわよ」

苗木「ゴメン……」

葉隠「そうだぞ苗木っち。ここは隠れながらコソコソ行くもんだべ」コソーリ

桑田「お前は隠れすぎなんだよ!」

葉隠「だってよー。もし、あのヤーさんの中に俺の借金取りがいたらただじゃ済まないべ」

朝日奈「そういう問題じゃないでしょ」

893「おい! 貴様らそこで何してる!」

葉隠「ゲ! 中にもいたのかよ!」

大神「やるしかないのか……」

??? 「全くだらしないな貴様らは……やはり俺が付いてないとダメなようだな」


苗木「十神クン? 来てくれたんだね!」

桑田「テメーは怖気づいて帰ったと思ったぜ」

十神「フン。十神財閥次期党首が仲間を見捨てたとなっては、体裁が悪いんでな……よし。第一部隊突撃!」

SP「ハッ」

朝日奈「すご! 本物のSPだ! 初めてみた!」

893「あ? なんだてめえらは!」

SP「ここをどいてもらう!」

十神「さあ。俺のSPが気をひきつけているうちにお前たちは早く行け! 俺もここを片付けたら後を追う!」

苗木「ありがとう十神クン」

十神「礼を言われる覚えはない。俺もお前も不二咲を助けるために動いてるだけだ」

桑田「へ。カッコつけやがって」

九頭龍「チッ……構成員の見張り網を突破したか。うちの組のやつらでも精鋭を集めたつもりなんだがな」

詐欺師「それだけ十神財閥の力も強大だということだろう」

左右田「なんでオメーが得意そうなんだよ! オメーは関係ないだろ!」

ソニア「うーん……わたくしの国からも兵を何人か取り寄せた方がよろしかったでしょうか?」

田中「今更言っても仕方ない。むしろ、奴らとの血で血を洗う争いを繰り広げられると思うと俺様の邪気腕が疼くから丁度いい!」

終里「よっしゃ! いっちょオレがやつらとバトってみるか!」

弐大「気を付けろよ。やつらの中にも手練れはいる」

終里「心配すんなオッサン。オレもアンタに鍛えらえて強くなったからな」

石丸「さて、ここから先はどうしよう。工場内は迷路みたいになっていて道が幾重にも分かれている」

霧切「とりあえず、固まっていては却って見つかりやすくて危険だわ。ここはバラバラに行動しましょう」

苗木「そうだね」

終里「おいバトれよ!」

石丸「なに! 刺客か!」

葉隠「ひ、ひい! 見逃してくれ! 俺たちは別にアンタらと戦いにきたわけじゃ……」

終里「悪いがそういうわけにもいかないんでね!」シュバ

石丸「葉隠くん! 危ない!」


葉隠に向けられた終里のパンチを石丸が身を挺して受け止める。


葉隠「あ、ありがとよ石丸っち。お陰で助かった……」

石丸「ぐは……みんな気を付けたまえ! 女子だと思って舐めてかかっていい相手ではないぞ。今の一撃はかなり効いた……」

終里「テメーらの誰かか? えーと……なんだっけ? ……そうだ思い出した! 淫行先生だ! その淫行先生のミサイルを発射するプログラムを持ってるのは!」

桑田「淫行……先生……?」

山田「エロゲか何か? 淫行先生のミサイル(意味深)」

終里「しらばっくれるんじゃねえ! ぶっ飛ばすぞ!」

山田「ひい! 理不尽!」

終里「オラオラオラオララオラオラァッ!!」

山田「ぷぎゃー」ズバーン

苗木「山田クン!?」

終里「まずは一人……」

葉隠「おおおお、うわああ! た、助けてくれ! こいつヤベーって」

大神「我に任せろ……」

終里「ほう! テメーが大将か?」

大神「不二咲を助けるため……山田の仇を取るために参る!」

終里「おもしれえ! かかってきな!」

大神「フン!」ブフォン

終里「へっ遅いぜ! パンチの威力はあるようだが、オレに当てられなきゃ意味はないぜ」

大神「今のはほんの挨拶代りだ。次は容赦しないぞ」

終里「言うねえ……だけどオレは二発目も譲る程優しくはないぜ」

葉隠「い、今のパンチ見えたか? アレで遅いらしいぞ」

朝日奈「ギリギリ見えたかな?」

石丸「僕もなんとか見えたぞ」

霧切「わ、私も少しだけ見えたわ」ドヤァ

桑田「オレは余裕で見えてっけどな。野球選手の動体視力舐めんな」

苗木「ボクは集中すればなんとか……」

葉隠「マジかよ……皆すげーぞ! 俺は全く見えなかったべ」

霧切(今更本当は見えてなかったなんて言えない……静止しているものなら私の観察眼の方が有利だから別にいいし)

終里「食らいな! オラァ」


終里の蹴りが大神の急所を捉える。


大神「軽い身のこなし……しなやかな動き……中々面白いタイプだ……されど……」

大神「我はお前と同じタイプの格闘家を何人も倒してきた……」


大神は体勢を変え、急所の位置を逸らしつつ、終里と同じように蹴りのカウンターを入れる。


終里「ぐへえ」

大神「く……今のは効いた。急所に入っていれば我とて無事では済まなかった」

葉隠「やったか?」

大神「いや、まだ浅い……」

終里「チッやるじゃねえか! そうこなくちゃあ面白くねえな!」

大神「来い! 決着をつけるぞ!」

終里「言われなくても!」

終里が大神と距離を詰める……が、しかし


終里(う……さっきの蹴りでダメージ食らったせいで……)グラッ

大神「そこだ!」ドコォ! 

終里「ぐわあああああ!!」


終里は大神の渾身の一撃を食らい吹っ飛ばされて壁へと叩きつけられた。


終里「」

大神「ふぅ……中々の強敵だった……我が本気を出したのは久々だ」

葉隠「はは……すげーぞ! オーガ! あいつに勝っちまうなんて!」

石丸「みんな! 大神くんが道を開いてくれた! 山田くんの犠牲を無駄にしないためにも先を急ごう!」

桑田「そうだな。不二咲を助け出さないとブーデーも浮かばれねえ」

朝日奈「山田……必ず戻ってくるからね。必ずちゃんとした所で弔ってあげるから、一緒に帰ろう」

苗木「山田クンまだ死んでないけどね」

山田:リタイア

罪木「あわわわわわ……た、大変です! すぐに終里さんの手当しないと」

弐大「次はワシが行く……選手の仇はマネージャーが取るものじゃ」

左右田「どんな理屈だよ! よく考えるとその理屈おかしいから!」

辺古山「奴らはバラけて動こうとしている一人ずつ行くのは効率が悪い」

田中「ククク……それぞれが狩りの相手を見つけろということか面白い!」

九頭龍「ペコ……ちょっといいか? 敵を重要な情報を持ってる可能性がある。余程のことがない限りは殺そうとするなよ? 無力化してから俺のところに連れてくることを優先させろ」

辺古山「仰せのままに」

・苗木 葉隠 桑田 1F 地下入口前

葉隠「お、おーい……苗木っち桑田っち……そっちに敵はいないか?」

苗木「大丈夫だよ」

葉隠「ほ、本当だな!」

桑田「おいおいビビリすぎだっつーの」

苗木「この扉は開かないみたいだね……」ガチャガチャ

桑田「看板には地下室入口って書いてあるな」

苗木「地下室……後で行くかも知れないから覚えておこう」

葉隠「そんなことより早く不二咲っちを見つけて帰ろうぜ」

桑田「だからその不二咲を探すために探索してんだろうがよ!」

苗木「それと葉隠クン。コソコソ隠れても無駄だと思うよ」

葉隠「へ?」

苗木「監視カメラが至る所にある。ボクたちの位置は敵に筒抜けだよ」

葉隠「な、なんじゃそりゃああああ」

苗木「敵がボクたちを集団で襲ってこないってことは、十神クンのSP相手に手間取っているってことだよ。隠れて移動するよりは、手早く動いた方がいいよ」

葉隠「そういうことは早く言ってくれ! よし先を急ぐぞ!」

桑田「調子のいいヤローだぜ」

苗木「ハハ……」

・霧切 朝日奈 大神 石丸 1F 入口付近

霧切「これでよし……手当は終わったわ」

石丸「助かったぞ霧切くん」

大神「ふう……朝日奈のくれたプロテインのお陰で傷が癒えた」

朝日奈「良かったねさくらちゃん!」

石丸「どういう体の構造をしているんだね!」

霧切「それより早く先に進みましょう。増援が手配でもされたら面倒だわ」

石丸「うむ。それに賛成だ!」

・苗木 葉隠 桑田 1F 地下室前

苗木「足音が聞こえる……誰か来るよ」

桑田「敵か?」

葉隠「マ、マジかよ……よし、桑田っち。戦闘は任せた。俺は2人を囮にして逃げる」

桑田「お前何しに来たんだよ!」

西園寺「あ……た、助けてください!! わたし追われてるんです!!」

桑田「ウヒョー! 着物美人来た!」

苗木「追われてるって誰に?」

西園寺「黒服の怖いお兄さんたちが……わ、わたし何が何だかわからないままここに連れてこられて……隙を見て逃げ出そうとして……」

桑田「よし! オレに任せとけ! お姉さんは必ずオレが守ってみせる!」

西園寺「わあ! ありがとうございます! お兄さん格好良くて頼りになりそうですね」

桑田「そ、そっすか?」デレデレ

葉隠「な、なあ……苗木っち。桑田っち」ヒソヒソ

桑田「ん? どした?」

葉隠「あの女どう見ても怪しいだろ」

桑田「は? お前あんなかわいこちゃんが怪しいとか寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞ!」

苗木「待ってよ桑田クン。葉隠クン、どうして怪しいと思ったの?」

葉隠「それは俺の占いだ! あの女は何か企んでいると出ているぞ!」

桑田「根拠はお前の占いだけか。じゃあ、オレはあの子を信じる」

葉隠「桑田っちそれはないべ」

桑田「うるせえ! 7割外れる根拠のないお前の占いより、オレはかわいこちゃんを信じる!」

葉隠「苗木っちは俺を信じてくれるよな?」

苗木「うーん……葉隠クンの占いは外れることもあるし、もしあの人が本当に助けを求めているだけだったら、突き返すのは可哀想だよ」

葉隠「お、おい! 苗木っちまでひでーぞ」

苗木「ただ、葉隠クンの占いも決して無視できる確率じゃないのは確かだよ。3割も怪しい要素があるなら、警戒して損はないと思う」

葉隠「流石苗木っちだべ! 女たらしの桑田っちとは違って冷静な判断力だべ」

苗木「一応桑田クンにも警戒だけはするように言っておこうかな……」


西園寺「へー野球をなさるんですか?」

桑田「うっす! これでも甲子園の英雄だかんな! ハハハ」

西園寺「すごーい! かっこいいー!」

桑田「お姉さんも可愛いっすねー。結構タイプっすよ」

西園寺「本当? 嬉しいー」


苗木「…………」

葉隠「苗木っち……言うだけ無駄なようだべ」

苗木「とりあえず、霧切さんの携帯に連絡してみるよ。石丸クン達の手当てをしているからまだ入口付近にいるはずだ」ピッ

苗木「あ、もしもし霧切さん? うん。こっちは平気……今のところ敵らしい敵には会ってないよ」

霧切『そう良かった……え? 入口の様子? 残念だけど見張りが戻ってきているようね……大和田君を取り逃がしたらしいから警備が更に厳重になってるわ。ここから出る時は強行突破せざるを得ないわ』

苗木「そうか。入口から出るのは不可能か……ああ、うん。実は不二咲さんの他にも囚われていた女の人がいたんだ。その人を逃がしてあげたかったんだけど……」

霧切『そういうこと。全く相変わらずお人好しね』

苗木「わかった。こっちで彼女を安全な場所に避難させるように手は打っておくよ。ありがとう……じゃあ、また後で」ピッ

葉隠「なあ、もしかして、ここから出られないのか?」

苗木「みたいだね。とにかく、こうなってしまった以上は彼女を連れて行動するしかないよ」

葉隠「マジかよ……」

西園寺「ええーわたしまだ帰れないのー」

桑田「大丈夫ッス! オレが必ずお姉さんを帰してみせますから!」

西園寺「クスクス。ありがとう。そんなことばかり言われると好きになっちゃいますよ」

桑田「ああ^~その悪戯っぽい笑い方もいいんじゃ^~」

葉隠「桑田っちがああなった以上、頼りになるのは苗木っちだけだべ!」

苗木「とりあえず、安全な部屋を探そう。いつまでも通路側にいると危ないよ」

桑田「部屋ってよお……この辺りには鍵がかかってる地下室くらいしかねーぞ」

西園寺「あ! そうだ! わたし、逃げ出す時にあいつらから鍵を盗んだんですよ! もしかしたら、地下室の鍵かも!」

桑田「お! 流石! 一旦地下室に入って中から鍵を掛ければ敵も入ってこられないっすね」

苗木「スペアキーあったら逆に袋の鼠だけどね」

西園寺「心配ないと思うよ。この鍵は複製不可の特別製だからスペアキーを作るのは不可能なんだよ」

葉隠「それなら安全だな! ワハハハハ」

苗木「…………」

西園寺「これがその鍵だよ」

桑田「ヨッシャ! それじゃ早速試すぞ……」ガチャリ

葉隠「開いたぞ!」

西園寺「やったー! これで助かる!」

桑田「中に入るぜ」ギイイ

葉隠「おい、どうしたんだ苗木っち? 置いてくぞ」

苗木「ああ……ごめんごめん」

苗木(どうしてあの人は地下室の鍵を複製不可能だって知ってたんだろう……)

西園寺(スケベ心丸出しの軽薄そうな男とバカそうな男と人が良さそうなチビの3人。これは楽勝だね)

・苗木 葉隠 桑田 B1F 地下室 資材置き場

葉隠「よし、鍵をかけた、これで安心だべ」ガチャガチャ

桑田「へー。地下室には監視カメラがないんだ。じゃあ、ここに隠れていれば敵に発見される可能性も少ないな」

苗木(いつの間にか葉隠クンの警戒も解けてる……安全な地下室に逃げられた安心感のせいかな……それにしても、この資材置き場って乱雑に荷物が置いてあるな……まるで迷路のようだ)

桑田「お姉さん日本舞踊やってるんですか! ああ、通りでお淑やかなわけだ。お淑やかな女性っていいっすよねー」

西園寺「もうそんなに褒めて、嬉しい」

桑田「どっすか? ここから出たらオレと付き合わないっすか?」

西園寺「うーん。どうしようかなーお兄さん結構かっこいいから迷っちゃうー。考えておきますね」

桑田「マジすか!」

西園寺「あ、そこ荷物が邪魔して通れないよ。こっちからじゃないと」

桑田「あ、本当だ……死角になってて分かりづらいな」

苗木(間違いない……あの人は単なる逃亡者じゃない。この迷路のような資材置き場をスタスタと歩いている。中の構造を知ってたんだ!)

苗木(でも、あの人が超高校級の絶望側の人間だったとしても、絶望を脱却したいから逃げ出したって可能性も十分考えられる。そうした場合、突き返したら取り返しのつかないことになる)

苗木(むしろ、絶望側の情報を知ってるならこっちとしても十分ありがたい。味方に付けて損はないと思う……けど……この地下室に誘い込んだこと自体罠だったとしたら……)

苗木(うーん……ボクの考えすぎかな……)

苗木(とにかく、警戒を続けよう。少しでもおかしな挙動を見せたら模擬刀で先制攻撃すればなんとかなる)

苗木(彼女のことも警戒が必要だけど、この部屋の特徴もよく見ておく必要がありそうだ……霧切さん直伝の観察眼を使おう!)カッ

苗木(ん……あれ? この地下室って換気口が2つもある……覚えておいた方が良さそうだ)

西園寺「助けて頂き、どうもありがとうございました」

桑田「全然気にしなくていいっすよ! 困ってる女性を助けるのはオレのジャスティスッスから!」

苗木「彼女を安全なところに連れていけたからさ。早く不二咲さんを助けに行こうよ」

葉隠「えー俺は安全な地下室の方がいいべ」

苗木(このドクズ!)

桑田「そうだな。ちょっと寄り道しちまったが、不二咲を助けるのが本来の目的だしな」

西園寺「待って下さい……そ、その……わたし、やっぱり独りじゃ心細いです」

苗木「ごめん……でも、今は 桑田「そっすよね! オレが付いていてあげます!」

苗木「ちょっと桑田クン! 不二咲さんはどうするの!?」

桑田「その辺は……大神達がなんとかしてくれるだろ。っつか、ぶっちゃけさ、大神一人で十分じゃね?」

苗木(こいつもクズだったー!!)

苗木「クラスメイトを見捨てるつもりなの?」

桑田「不二咲は他の奴らが助けることができるけど、このお姉さんはオレ達が助けないで誰が助けるんだよ!」

苗木「安全な地下室に連れてっただけでも十分だって」

西園寺「ごめんなさい……わがまま言って……えっぐ……こ、怖いけど我慢します……お友達を無事に助けられるように祈ってます……うわああああん」

苗木(まさかの泣き落とし!?)

桑田「おい苗木! 女の子泣かすんじゃねえ!」

苗木「ボクのせい!?」

葉隠「そうだぞ苗木っち! 見損なったぞ!」

苗木「えー……」

西園寺「この女泣かせ!」

苗木「何でキミまで!?」

苗木(クソ! 涙は女の武器だって言うけど、本当にそうだよ……不二咲さんを助けに行こうとしているボクが何故か悪者に……)

苗木(ボクだけでも不二咲さん救出に向かうって手もあるけど……それだと、この人が絶望側の人間だった場合に無警戒の桑田クンと葉隠クンが危ないことは確か)

苗木(3人で残るしかないのか……)

苗木「わかったよ……残ればいいんでしょ残れば」

西園寺「わたしのためにご迷惑をおかけしてすみません」

苗木(さっき、ボクを女泣かせだと罵った癖によく言うよ)

西園寺「そうだ! お礼にわたしの日本舞踊をお見せしましょうか!」

桑田「うひょー! マジいいんすか?」

西園寺「ええ。退屈でなければ……」

桑田「そんなわけないっすよ! オレ日本舞踊超大好きっす!」

苗木(嘘だ! 絶対その人を合法的に視姦するためだよ)

西園寺「それじゃあ、わたしはここで踊りますから、お兄さんたちはこちらの席に……」

苗木(席っていってもこれ背が低い積み荷じゃん……もしかして、今ボクたちってこの場所に誘導された……? 近くにボク達の近くに換気口がある……彼女の近くにはもう1つの換気口?)

苗木(それより、この下の積み荷には何が入ってるんだろう……)ガサゴソ

苗木(こ、これは!!)

西園寺「それじゃ演目始めますよ……曲がかからないのは残念ですけど」

葉隠「クカー」

苗木(始まる前から寝てる!? どんだけ興味なかったんだよ!)


数分後――


桑田「zzz」

葉隠「んがー」

苗木「…………」


西園寺「どうやら全員寝たようね……しかし、こうもあっさり罠にかかるとはねー。まるでバカの見本市だねー」クスクス

西園寺「この部屋は換気口が2つあるタイプだから、片方の換気口に睡眠ガスをわたしのところまで届かない程度の分量を仕込んでおけば、私が舞をしている間にこの三バカトリオは催眠ガスが回ってお寝んねってこと」

西園寺「万一わたしのところにガスが来ても、わたしの背後にある換気口がガスを吸い取ってくれるからわたしには何の影響もなし」

西園寺「わたしはステージ。こいつらは客席に固定するし、興味ないド素人の人間からしたら見てるだけで眠くなるのが自然の日本舞踊はこの作戦には打ってつけだよねー」

西園寺「何の疑いもなくわたしの舞を見た時点でアンタらの負けは確定的だったんだよ」

西園寺「この資材置き場に置いてある台車でこいつらを拷問部屋まで運べば、後は九頭龍に任せれば済むから楽だよねー」

西園寺「まずは体重が一番軽そうなこのチビから運ぼうっと……顔を俯けてるし……どんな間抜け面で寝てるのか拝んでやろっと」スッ

苗木「…………」ガシ

西園寺「!!!!」

苗木「やっぱり……思った通りのことをしてくれたね。換気口が2つある時点で怪しいと思ったんだ」

西園寺「て、てめえ! 起きてたのか! 離せ変態! 何で起きてるんだよっ!!」

苗木「ボクの座席として使っていた積み荷の中にガスマスクがあったからね……これを被って寝たフリをしてやり過ごしたんだ。顔を俯けていればガスマスクを被ってることがバレないからね」

西園寺(ガスマスクだって……! こんな大量にある積み荷の中までは調べてる余裕はなかった……たまたまガスマスクの積み荷の下に座るなんてどんだけ“幸運”なんだこいつは……!)

苗木「悪いけど、キミが敵であることが確定したから容赦はしないよ!」

西園寺「模擬刀!? ちょ……かよわい女の子相手にそんな物振りかざす気!? や、やめてよ!」

西園寺(こいつに腕をつかまれてるから逃げられない……ってことはこれしかないか!)

西園寺「てやー!」

苗木(と、突進!? しまった体勢を崩して……)

西園寺(あ、こいつに掴まれてるからわたしも引っ張られて……)

ドンガラガシャーン

苗木「いてて……なんか薄暗いな。なんだこの黄色くて花柄の布は……」

西園寺「え……きゃ、きゃあああああいやあああああああ! ア、アンタ! どこに顔突っ込んでんだ!」

苗木「え? え?」

西園寺「離れろ離れろ!」ゲシゲシ

苗木「いで!! わあ!!」

ガラガラ

苗木「な、何なんだよ……」ムニ

苗木「ん? なんだこの柔らかい感触は……」ムニムニ

西園寺「ひゃっ!!! ど、どこ触ってんのよおおおおお!! もうやだこいつ!! うわあああああああん!! 小泉おねぇ!! 助けてええええ」タッタッタ


西園寺は逃げ出した

苗木「一体何だったんだ……ん? あの人何か落としていったぞ? ヘッドホン? 一応貰っておこう」

桑田「ハッ……あ、あれ? おい! 苗木! 今スゲー物音がしたけど知らねえか?」

苗木「敵に襲われてたよ……ハハ」

桑田「マ、マジかよ! 怪我はねえか!」

苗木「うん……大丈夫だと思う」

桑田「で、敵はどこだ!? ってか、あのお姉さんは無事か?」

苗木「そのお姉さんが敵だったんだよ……ついでに撃退済みだよ」

桑田「え? マジかよ! あんな綺麗なお姉さんが敵だったなんてえええ。ショックだわ……」

苗木「キミのやましい心に振り回されたボクの方がショックだよ」

桑田「しかし苗木。よくあのお姉さんが敵だって気づいたよな。オレなんて全然警戒してなかったぜ」

苗木「葉隠クンの占いのお陰だよ。彼の占いのお陰で警戒心を強めて怪しい言動に気づくことが出来たんだ」

桑田「葉隠の占いもたまには役に立つんだな」

苗木「実際、葉隠クンの占いは凄いと思うよ……ただ、能力を持ってる人が使いこなせてない残念な人なだけで」

桑田「そうだな。葉隠の占いは評価してやるべきだったな」

苗木「ボクも占いがなかったら、彼女を完全に信じてたと思う……そうなったら、本当に全滅寸前だったよ。思い返してみるとゾッとする。裏表を使いこなせるえげつない相手だったよ」

桑田「人は見かけによらないんだな……綺麗な薔薇には棘があるって言うしな」

葉隠「むにゃむにゃ」

桑田「まだ寝てんのかこいつは……いっそのこと置いてくか」

苗木「そうだね。この地下室は鍵を掛ければ安全だし、置いて行っても大丈夫でしょ多分……」

桑田「ついでだし、葉隠が持ってきた道具を拝借してこうぜ! 使い道ありそうだし」

葉隠:リタイア

桑田「そうだ苗木。お前どうして途中で怪しいって気づいたのにオレに教えてくれなかったんだ?」

苗木「あんなデレデレした状態の桑田クンに言っても仕方ないでしょ」

桑田「う……結構グサって来たぜ。すまねえな苗木……でも、何で逃げなかったんだよ。下手したら苗木までやられてたかも知れないのに」

苗木「何言ってるんだよ。ボクだけ逃げたら無警戒の桑田クンと葉隠クンが無事に済むわけないじゃないか。仲間を危険に晒す可能性があるなら逃げちゃダメだ!」

桑田「苗木ー! お前ってやつは……マジでマキシマムにカッケース!」ワシャワシャy

苗木「わっ桑田クン痛いって……」

桑田「よっしゃ! 苗木! オレもお前をリスペクトして、仲間を危険に晒すような真似はもうしないぜ!」

苗木「本当かな? また同じ手には引っ掛からないでね」

桑田「……………」

苗木「何で黙るの!」

桑田「ま、このことは借りにしておくぜ。オレが借りを返すまでは敵にやられんじゃねえぞ!」

・霧切 朝日奈 大神 石丸 1F 梱包室

霧切「梱包室ね。工場で生産されたものを梱包する作業をする場所だけど……今は緩衝材の束と段ボールくらいしかないわ」

石丸「この工場は閉鎖されているから当然といえば当然だな」

霧切「それでも何か手がかりになるようなものはないかしら……」

大神「いや、何も見つからんだろう。それより早く不二咲を探さねば」

朝日奈「霧切ちゃんいくよー」

霧切「待って……私はもう少しこの部屋を探索したいの」

石丸「何を意地になっているんだね! そんなことしている場合ではないだろ!」

霧切「確かにそうかもしれない。でも、この部屋……どこか違和感があるわ」

朝日奈「違和感だって? さくらちゃんはわかる?」

大神「………………ダメだ。神経を研ぎ澄ましても人の気配1つしない。この部屋には何もないはずだ」

霧切「でも、何か引っかかる……全く使われていないはずなのに埃や段ボールの屑が積もってないもの……工場が閉鎖されてかなり経つのにおかしいわ」

石丸「きっと絶望の連中が掃除したんだろ」

霧切「そうかしら? 掃除したのにこの部屋を使った形跡がみられないのも気になるわ」

石丸「いいか! 霧切くん! 君は好奇心を優先して友達を見殺しにするつもりなのか!」

霧切「そんなつもりじゃ……」

朝日奈「ちょっと石丸! いくらなんでもそんな言い方酷いよ!」

石丸「ぐ……確かにそうだったな。すまな霧切くん」

霧切「いいえ。石丸君の言ってることの方が正しいわ……早く別の場所を探索しましょう」


・???

???「何やら騒がしいですね……話声が聞こえます……学園の連中でしょうか……」

???「しかし、学園の連中には僕を見つけられることは出来ないでしょう……気配を完全に消せる超高校級の諜報員の能力のお陰でこのかくれんぼは100%勝てます」

???「アア、ツマラナイ……」

???「誰か僕を見つけてくれる幸運な人はいませんかね……いませんか」

・大和田 工場裏口前

大和田「ふう……なんとか巻いたぜ。超高校級の暴走族を舐めんなよ! マッポに散々追い回されてるからこういうのは慣れてんだよ!!」

大和田「しかし……今更入口から入るわけにもいかねえな。警備が更に強力になってきてやがる」

大和田「しゃあねえ……別の入口を……お、こんなところに裏口があったぜ」

大和田「よっしゃ! 待ってろよ不二咲! 今オレが助けてやるからな! ……それと不二咲を攫った連中はオレがぶっ転がしてやるからケツを洗って待ってろ!」

大和田「あれ? 洗う場所ってケツだっけ? まっいいか!」ガチャ


花村「ふんふんふーん♪」ゴシゴシジャア

大和田「…………」ギイバタン

大和田「あ、ありのまま……今起こったことを話すぜ……オレは裏口から入ろうと思ったら、豚野郎がシャワーを浴びていた……な、何を言っているのかわからねーと思うがオレも何をされたのかわからなかった」

花村「やあ! ちゃんと言いつけ通りケツの穴をじっくり洗っといたよ! ぼくはいつでも準備万端さ!」ガチャ

大和田「ぬわあ! 折角、閉めたのに開けるんじゃねえ! っつーか、せめて服着やがれ!!」

花村「トンカツとバター。同じ食材にされる者同士仲良くしようよ」

大和田「何の話してんだテメーは!」

花村「あ、シャワー空いたから入っておいでよ。ぼくはもう済ましておいたから」

大和田「あ? テメー舐めてんのか? あ? やんのか? おおん?」

花村「もちろんさ! 犯る気満々だよ」

大和田「上等だコラ!」ブン

花村「おお! 立派な木刀だね」

大和田「丸腰の相手をボコっても気分わりぃ。テメーも得物出しな」

花村「これかい?」ヴィイン

大和田「誰が動くこけしを出せっつった!!」

花村「ナイスツッコミ! ついでにぼくの穴に突っ込んでもいいんだよ?」

大和田(さっきから何なんだこいつは……薄気味わりーな。ペースを乱れっぱなしだぜチクショー……)

大和田「チッ……テメーと乳繰り合ってる場合じゃねえんだよォ!」

花村「なんだ。戦うの? それならそうって言ってくれないと……ふふ、料理してあげるよ」

大和田(な、なんだ? こいつ雰囲気変わったぞ……こいつの目は深い闇を抱えているようだ……まさかこいつが超高校級の絶望なのか)

花村「君が木刀を使うなら、ぼくはこの鉄串を使わせてもらうよ。体格差を考慮した場合これくらいいいよね?」

大和田「リーチはそっちの方がなげーな……だが丁度いいハンデだぜ! うおりゃ!」ブン

花村「そんな単調な攻撃は通じないよ!」パリィ

大和田「なにぃ!」

花村「ふっふーん。ぼくは守備範囲が広いからね。これくらいの攻撃なら防げるんだよ」

大和田「ヤロー……舐めやがって! しゃらくせえんだよ!」ブウォン

花村「無駄だよ!」カキン

大和田「チッ……意外とやるじゃねーか」

花村「マスコットキャラみたいな見た目だからと言って侮ってもらっては困るよ……こっちは深い絶望を経験してるんだよ……潜ってきた修羅場の数が違うのさ」

大和田「ケッ。オレだって、喧嘩に明け暮れた毎日だ……潜ってきた修羅場の数なら負けねえんだよ!」タッタ

花村「距離を詰める気だね? 積極的なのは嬉しいけど近寄らせないよ」ブン

大和田「うおっ……」

花村「惜しい……後、数cm近づいてくれたら、傷を負わせられたのに」

大和田(っべーな……思ったより木刀と鉄串のリーチ差を活かした戦い方をしやがる。相手の形状が槍なだけにやり辛いな)

大和田「あー……すまねえ。確かにオレはお前を見た目で判断して弱いだろうなって決めつけてたわ。お前は強い……それを認めないと勝てそうにねえわ」

花村「フフン。そりゃどうも。でも君はぼくには勝てない! ここで絶望するほどあんなことやこんなことされる運命なんだよ。今夜のオカズに決定!」

大和田「だから、こっちも本気でいかせてもらうぜ……一番得意な武器を使わせてもらう……ぜ!」ブフォン

花村(な、木刀を投げた……最後の足掻きってことかな……これを鉄串で弾いて終わりだよ!)カキン

大和田「へ……木刀に気を取られたな!」スタタ

花村「な、いつの間に距離を詰めて……」

大和田「これでしめーだ!」ドコォ

花村「げほ……」

大和田「ダメ押しにもう一撃!」ベキッ

花村「お母ちゃあああああああああああああん」ヒデブ

大和田「やっぱり大神じゃねえけど、オレも素手での戦闘スタイルが合ってるな」

花村「」ピクピク

大和田「けっ本体は鉄串がなかったら、拳二発で沈む程度の紙じゃねーか。武器に頼り切ったやつがオレに勝てると思うなよ」

大和田「んじゃ気を取り直して……不二咲、今行くからな!」ガチャ

・1F 入口付近

罪木「誰かいますかー」ソロソロ

罪木「誰もいませんね……」ソロリソロリ

罪木「大丈夫ですかー」

終里「」

罪木「ひ、ひい! 凄い痣ですぅ……こんな攻撃食らったら私なら死んじゃいます」

終里「う……お、オメーか……」

罪木「待っててください。今すぐ治療してあげますから」

終里「わりー……しくじっちまった」

罪木「喋らないで下さい。傷に障りますよ」

終里「ありがとうな……お陰でまた動けるようになった」

罪木「応急処置だけですから、まだ完治はしてませんよ……そんな状態で戦うのは無茶ですよぉ」

終里「問題ねーぞ……これくらいの怪我を負った時もオレは大会で優勝した経験あるからな」

罪木「確かに終里さんの実力ならそうかもしれませんが、今回は相手が悪すぎますぅ。相手も超高校級の人達ばかりなんですよぉ。またあの怖い顔の人と戦ったら……」

終里「そうだ……オレはあいつに負けたんだった……うおおおおおおおお!!! リベンジだ! リベンジしてやる!!」ドドドド

罪木「ひい! 余計なこと言わなきゃ良かった」


十神「おい、貴様! そこで何してる!」

罪木「ひっ……許して下さい。ほんの出来心だったんですぅ……って十神さん!? ダイエットしたんですか?」

十神「何の話だ? どうして俺の名を知っている」

罪木「あ、あのぉ……せめてダイエットする時は私に相談して欲しかったです。急激なダイエットをすると体に負担が……」

十神「だから何の話だ!! 俺は昔からこの体型だ!」

罪木「ひ、ひい……すみません人違いのようでした。ごめんなさぁい」

SP「こいつも超高校級の絶望の一員のようですね。白夜様、ここは私にお任せを」

十神「おい! 不用意に近づくな……」

罪木「ひい……来ないで下さい」

SP「大人しくしr……ウッ」バタ

十神「な、なんだ!!」

罪木「うふふふふ……だから来ないで下さいって言ったのに……」

十神「あいつが手に持っているのは針……? バカな! 十神家のSPを針一本で倒しただと」

罪木「あははははは!! こんな針一本で人は簡単に倒れちゃうんですよ? 下手したら死んじゃうんですよ? これって絶望的ですよね?」

十神「こいつ狂ってる……これが超高校級の絶望か」

罪木「貴方は私を許してくれますよね? ね?」

十神「ふざけるな! 俺の配下をよくも……!」

十神「ふざけるな! 俺の配下をよくも……!」

罪木「えっぐ……許してくれないんですか……」

十神(なんだ急に泣き出して……情緒不安定なやつだな)

罪木「許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許してぇ!!」バッ

十神「チッ……俺に先制攻撃を仕掛けるとは……どうやら消されたいようだな」

罪木「うふふふふ許してくれないと貴方を殺さないといけないんです」ニコ

十神「フン。人体の急所を的確に捉える術を持っているのは褒めてやろう……だが、そんなトロい動きで俺を捕捉できると思うなよ」

罪木「えいっ」シュッ

十神「無駄だと言っているのが判らんのか! 貴様の身体能力では、俺が油断でもしない限りは攻撃を当てることは出来ん!」サッ

罪木「きゃあっ」ズル

十神(え? 何もないところで……?)

ガシャーン

十神「く……転んだと見せかけて突進するとは……ハッ」

十神(こいつの体が俺に覆いかぶさってる……まずい)

罪木「うふふふふ捕まえましたよ……私を許してくれない人は死んじゃえ♪」

十神「や、やめろ! 俺はいずれ世界を総べる帝王になる存在だ! こんなところで死ぬわけにはいかない!」

罪木「ん?」ギチギチ

十神「な、なんだ?」

罪木「ぁれ……? あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれ?」

罪木「わあああん……包帯が腕に絡まって身動きが取れませ~ん」

十神「どうなったらそんな状況になるんだ!! ……ま、これで形勢逆転だな」

罪木「はわわ……ゆ、許して下さああい! じょ、冗談ですよ。殺すとか私にそんな大それたこと出来るはずないじゃないですか……ハハハハハ」

十神「このオレを怒らせたことを後悔するがいい!」ドス

罪木「あぅ……」バタ

十神「人体の急所を知っているのは貴様だけではない。俺もある程度の医学は叩き込まれた……しばらくは目を覚まさないだろ」

罪木「」ビクンビクン

十神「さて、早いところ苗木達と合流しないとな……勢いで来たのはいいが、この建物の状況が全く掴めん」

・コントロール室

左右田「ケケケ。オレの開発した絶望兵器を見せてやるよ」ポチ

ソニア「うわぁ……自分で戦おうとしないで、機械任せにするなんて見下げた根性ですね」

左右田「そんな……」


・霧切 朝日奈 大神 石丸 1F 通路

霧切「ねえ、何か聞こえない?」

石丸「ん? 何だこの妙な機械音は……」

掃除ロボ「ヴィイイン」

朝日奈「あ、これ知ってる! 決められたルートを掃除してくれるロボットだ! へー面白いな」

霧切「危ない! 近づいてはダメ!」バッ

朝日奈「え?」

掃除ロボ「侵入者発見……排除スル……」バン

霧切「うっ……」

朝日奈「ひっ……」

石丸「な……銃声だと」

大神「大丈夫か! 朝日奈! 霧切!」

朝日奈「私は大丈夫……でも霧切ちゃんが私を庇って……」

霧切「あ、危なかった……山田君の持ち物からこっそり抜き取った雑誌がなければ即死だったわ。流石にガンガンは服の中に全部入らなかったから何ページか抜き取ったけど」

石丸「雑誌で銃弾の威力を減少させたのか! 少し痣になっているが、命に別状はないだろう」

朝日奈「きっと天国の山田が霧切ちゃんを守ってくれたんだよ!」

石丸「死してなおクラスメイトを守るために……なんとも泣かせる話ではないか!!」

霧切「いえ、山田君はまだ死んでないわ」

石丸「そうだな! 僕達の心にいつまでも生き続けてるんだからな! 友情は生死を飛び越えるんだからな」

掃除ロボ「侵入者発見……侵入者発見……」

朝日奈「あのロボットまだいるよ!」

石丸「まずい! 気を付けるんだみんな! また銃弾が飛んでくるかも知れない!」

大神「させぬ!」

掃除ロボ「センター感知……回避スル」スッ

大神の渾身の一撃を掃除ロボは回避した。

大神「なぬ!」

朝日奈「さくらちゃんの攻撃を避けるなんて」

石丸「あの掃除ロボ只者ではないぞ!」

掃除ロボ「ピー……排除スル……」

霧切「まずいわ……このままだと二発目の銃弾が来てしまう……弱点を探さなければ」

霧切(私の観察眼で視たものを思い出すのよ!)キッ

霧切(あのロボットはセンサーで対象の動きを把握して大神さんの攻撃を避けた……私に銃弾を撃ったのは、私が咄嗟に朝日奈さんを庇おうとしたためセンサーに反応したから……ならどうして、わざわざ雑誌で防御してある箇所を……)

霧切(わかったわ!)

霧切「石丸君! 竹刀を掃除ロボットに向かって投げて」

石丸「なぜだ! これは僕の大切な……」

霧切「説明している暇はないわ! 私を信じて!」

石丸「む……わかった! トリャ!!」

霧切(私の推理が正しければ、あの掃除ロボは熱を持ったものしか感知できない……!雑誌は熱を持っていないから銃弾が遮断されるとは思わなかったようね)

石丸の投げた竹刀が掃除ロボットの中枢コンピュータ部分に直撃する。

掃除ロボ「ピーガー……機能停止……強制シャットダウン……」ブフォン


石丸「やった! 掃除ロボを倒したぞ!」

朝日奈「良かったー石丸やるじゃん!」

石丸「僕は竹刀を投げただけだ。霧切くんが奴の弱点を見抜いてくれたお陰だ」

大神「今回ばかりは我ではどうにもならなかった。確かに霧切の頭脳があってこその勝利だな」

霧切「私は別に探偵として出来るだけのことをしただけよ」ドヤァ



さるさんが来たのでちょい休憩

・コントロール室

左右田「あーあ。オレが作った試作品をあんな風に壊しやがって……まあいいさ。あの型は量産に成功してるからなケケケ」

狛枝「流石超高校級の機械技師だね。あの機械は敵味方の区別がつきづらいから量産化は危険だって話だったけど、その弱点は克服できたのかな?」

左右田「うわあ! てめえいつからいた!」

狛枝「……来ちゃった」

左右田「呼んでねえよ! 帰れ帰れ!」

狛枝「何でボクを呼んでくれたなかったのさ。ひどいなあ」

左右田「テメーは関係ねえだろ!」

狛枝「関係なくないよ……絶望こそ希望の踏み台。ボクは自らが絶望に堕ちることによって、本当に希望の輝きを持つ超高校級の人の踏み台になりたいんだよ」

左右田「チッ……絶望に堕ちたのか希望を心酔するのかどっちかにしやがれ」

狛枝「ま、ボクはキミたちのことが大嫌いだけどね……絶望に堕ちたキミなんて顔も見たくないし」

左右田「じゃあ何で来たんだよ! かーえれ! かーえれ!」

狛枝「ボクはただ、後輩の希望の踏み台になるべくここに来たってわけだよ……それに、キミ達だって後輩を全員呼び出せた訳じゃないんでしょ?」

左右田「まあな……来なかった奴らの中に人工衛星プログラムを持ってるやつがいたら……って、テメーにそんな重要な情報教えられるか!」

狛枝「まあいいけど……人質として約2名程捕まえたのになー」

左右田「本当か!?」

狛枝「は? ボクがキミに協力すると思ってんの? 身の程を知ってよね」

左右田「何なんだよテメーはよぉ!!」

・???

狛枝「やあ。気分はどうだい?」

セレス「最低な気分ですわ」

狛枝「だろうね。ボクも昔誘拐されたことがあるからキミ達の気持ちはわかるよ」

舞園「私達を帰して下さい! なんでこんなことするんですか! 私にこんなことしたら世間が……」

狛枝「ああ、大丈夫だよ。超高校級の絶望の中には裏の世界に顔が利く人もいるからね。彼に事後処理を頼んでおいたら、騒ぎになるなんてことはないよ」

狛枝「例えキミが超高校級のアイドルだったとしてもね」ニコ

舞園「そんな……」

狛枝「大丈夫。今のところキミ達に危害を加えるつもりはないよ」

セレス「嘘おっしゃい! どうせわたくし達に乱暴する気でしょ! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

狛枝「しないよ」

・霧切 朝日奈 大神 石丸 1F 通路

石丸「しかし、この掃除ロボットは中々厄介な相手だな……もし、こんなのが大量にいたら僕達は全滅しかねないぞ」

朝日奈「やめてよ縁起でもないこと言わないでよ」

ウィーンウィーンウィーンウィーン

霧切「こ、この音は……」

掃除ロボ「「「排除スル……排除スル……」」」

朝日奈「ひい! 石丸が余計なことを言うから本当に来ちゃったじゃない!」

石丸「僕のせいなのか!?」

大神「言い争っている場合ではない。逃げるぞ」

石丸「大丈夫だ! 竹刀での一撃ならこいつらも攻撃を避けることはできない! せいっ!」

掃除ロボ「攻撃確認……回避スル……」スッ

石丸「バカな! 避けただと……」

霧切「逃げて石丸君。どうやらこいつらはさっきのより高性能なようよ」

石丸「あ……ああ」

掃除ロボ「逃亡確認……追跡スル……」

石丸「追ってくるではないか!」

霧切「このままだと危険だわ。苗木君にも注意を呼びかけないと」ピッ

・苗木 桑田 1F 事務所

桑田「おーい! 苗木! こっちに電話回線とパソコンがあるぞ!」

苗木「電話回線なんてどうでもいいよ。携帯があるし」

桑田「そっか。どうせなら、ここの電話使って高額請求される番号にかけてみっか?」

苗木「そんな悪戯してる場合じゃないよ! ボク達は遊びに来たんじゃないんだよ!」

アルターエゴ『このパソコンは中々高性能みたいだね』

苗木「そうなんだ。貰って帰ってもいいかな? 丁度新しいパソコン欲しかったし」

桑田「おい、遊びに来たんじゃねーっつったのは誰だよ」

アルターエゴ『苗木君。霧切さんから電話だよ』

苗木「繋いでくれる?」

霧切『苗木君……大変なことになったわ。掃除ロボが人類に反逆をしたの』

苗木「霧切さん? ふざけたこと言ってる場合じゃないよ」

霧切『ほ、本当よ! 掃除ロボットが人類というゴミを一斉に排除しようと武装して勢力を拡大するつもりだわ。人類に希望は残されてないわ』

苗木「とりあえず一回落ち着こ? ね?」

霧切『多少大袈裟に言ったけど、今言ったことは本当よ。この工場内に武装した掃除ロボが徘徊してるわ……恐らく、超高校級の才能を持つ絶望側の誰かが改造したんでしょうけど』

苗木「本気なの? ふざけてるとかじゃない?」

霧切『私がこんな時にふざけるわけないでしょ』

苗木「でも、人類規模の話じゃないでしょ」

霧切『今はそうだけど、これが量産化されたら現実化してくるわ』

苗木「大事なのは今でしょ! なんで話盛るの」

霧切『女子は話を盛る習性がある生き物なの! その辺りを考慮しないと思わぬミスリードに引っ掛かるってことを身をもって教えたかったの』

苗木「それは今やることじゃないよね!?」

霧切『とにかく、現状で判っていることは、掃除ロボは人間が持っている熱に反応する。熱を持ってない竹刀の攻撃を何故か避けたってことの2つよ』

苗木「情報が早速矛盾してるんだけど……」

霧切『その矛盾の答えが突破口になるかも知れない……武器を使っても攻撃を避けられたんじゃ意味がないわ。正直苦戦してる……とにかく必要なことは伝えたわ。通路を出歩く時は気を付けて』プツ

苗木「切れちゃった……一体何だったんだろう。アルターエゴはどう思う?」

アルターエゴ『うーん……熱を感知して動く自動制御の他に攻撃を回避する何かが組み込まれていると思うよ』

苗木「でもさ、この工場内ってボク達だけじゃなくて、絶望側の人間もいるし雇われている構成員の人もいるよね? 熱を自動的に感知して攻撃したら、その人達も巻き添えになっちゃうと思うんだ」

アルターエゴ『あ……もしかしたら、誰かが遠隔操作で指示を送っているのかも』

苗木「遠隔操作……なるほど。そうすれば、敵と味方の区別がつくね」

アルターエゴ『でも、近くに指示を送ってる人がいたら霧切さんが大神さんが気づきそうだけど……』

苗木「近くにいないとすると……そうか! わかったぞ! アルターエゴ! 霧切さんにもう一回電話出来る?」

アルターエゴ『うん。繋いでみるね』

石丸「こっちに逃げるんだ!」

掃除ロボ「侵入者発見……」

石丸「な! 別のロボに先回りされてただと……!」

朝日奈「どうしよう! 挟み撃ちにされちゃったよ」

大神「やるしかないのか?」ボキボキ

霧切「待って大神さん! この数を相手にするのは無理よ」

大神「我の精神統一させ、全身全霊を込めた一撃なら攻撃を当てられるやもしれん」

石丸「バカなことを言うのはやめたまえ! そんなパンチ何発も撃てるわけないだろ!」

朝日奈「みんな……私が囮になるよ」

石丸「な、なんだと」

大神「やめろ朝日奈! 危険すぎる!」

朝日奈「私の才能はスイマー。だから、陸の上じゃ皆みたいに役に立てそうもないよ……私に出来るのは陸上部の助っ人時代に鍛えたこの脚力で敵を引きつけることしかないよ」

石丸「冗談はよすんだ! きっと何か打開策はあるはずだ! 全員が助かる方法が!」

朝日奈「無理だよ……このまま全滅するよりは私一人が……」

石丸「滅多なことを言うんじゃない!」

霧切(電話……? 苗木君から)

霧切「もしもし苗木君? 今追い詰められてるから要件は手短にお願い」

苗木『霧切さん……監視カメラの死角を探して。そこに敵を追い込めば勝機はあると思う』

霧切「監視カメラの死角……? なるほど。そういうことね」

霧切(私の観察眼で監視カメラの位置とおおよその視野を分析する)キリ

霧切(…………あった!)

霧切「朝日奈さん! あの地点まで敵を誘導して! これはあなたにしか出来ないことよ」ビシッ

石丸「な、何を言ってるんだ! 君は朝日奈くんを見殺しに……」

大神「いや、霧切には何か考えがあるはずだ。信じてやろうではないか」

朝日奈「わかった! 任せて!」タッタ


朝日奈「ほらほら! こっちだよ!」

掃除ロボ「追跡スル……」

霧切「あの掃除ロボの大群はセンサーの他に遠隔操作の命令で動いている……でも、遠隔操作をしている人間は近くにはいないわ」

石丸「それではおかしいではないか! 近くにいなければこちらの状況がわからないのに、どうやって指示を送っているのだ」

霧切「それは監視カメラの映像よ!」

石丸「な……!」

大神「ということは、監視カメラの死角に追い込めば……」

霧切「指示が出せずに攻撃を当てることが出来るわ!」

掃除ロボ「排除スル……」ダン


掃除ロボの放った弾丸が朝日奈の足に命中する。


朝日奈「っ!!」

大神「朝日奈!!」

霧切「監視カメラの死角に入ったわ! 今よ!」

石丸「よくも朝日奈くんを!! オリャアア!!」


石丸の渾身の一撃が掃除ロボに命中した。


掃除ロボ「アポ……?」

大神「朝日奈の仇は我が討ち取る!」カラン


落ちていた鉄パイプを拾い大神も石丸に続き応戦をする。

・コントロール室 左右田

左右田「なななな! 監視カメラの死角に移動しただと!! クソ! 状況が判らないんじゃ指示が送れねえ!!」

11037号機機能停止...

左右田「ぎゃあああああああああオレの作った掃除ロボがああああああ!! 制作時間も製作費もバカになんねーんだぞ!!」

左右田(まずい。どんどん機能停止していく数が増えている……こうなったら)

左右田「多少の兵を失うのはしょうがねえ。肉を斬らせて骨を断つ! 増援だ!!」


・霧切 朝日奈 大神 石丸 1F 通路

霧切「朝日奈さん大丈夫? 今手当てするわ」

朝日奈「いてて……ごめん。この足じゃもう動けそうにないよ」

霧切「ありがとう……貴女のお陰で助かったわ」

石丸「く……こうも数が多いと全部始末するのが大変だぞ」

大神「石丸! 後ろ!」

石丸「後ろだと……? ぬわ!」


石丸の背後に掃除ロボが迫っていた。反応が一瞬遅れたため攻撃が間に合わない。

「助太刀するぜ兄弟!」


掃除ロボは何者かの木刀による一撃を受けた。石丸に銃口を向けたまま機能を停止する


大和田「よお! 苦戦してるようだな」

石丸「兄弟! 無事だったのか!」

大和田「ったりめーよ! ……合流が遅くなって悪かったな。こっちも絶望相手に足止めされちまったからな」

石丸「兄弟がいれば百人力だ! このままこいつらを片付けよう!」

大和田「おうよ!」

掃除ロボ「侵入者発見……」

霧切「!!!」

大神「増援だと……!」

霧切(まずい。あの位置は……!)

大和田「へ……いくら増援が来ようと変わらねえ!」

石丸「待て兄弟! そっちはまずい!」


大和田は勢いよく木刀を振り下ろすが、掃除ロボに避けられてしまった。


大和田「な、なんだこいつ! 妙な動きしやがって!」

霧切(監視カメラ内の死角にいる掃除ロボを駆除することに気を取られていた……! 監視カメラの死角外から掃除ロボを呼ばれるなんて……)


・左右田 2F コントロール室

左右田「ケケケ。バーカ! 監視カメラの死角なんてこっちは把握済みなんだよ!! 監視カメラに映ってないってことは逆に自分の居場所を教えているようなもんだぜ」

左右田「後は、熱センサーによる反応で銃弾を撃てば終了だ! 攻撃を仕掛けようにも掃除ロボの方は監視カメラの視野内にいるから、回避命令を出すことは可能だ」

左右田「さあ! 絶望しろ! 助かるかもという希望を潰されて絶望しろ!」

ERROR

左右田「……………ありゃ?」

左右田「おい! な、なんだ! 掃除ロボの機能が次々に停止していく!?」

アルターエゴ『僕がこのシステムを乗っ取ったよ。非常時の停止命令を実行させて貰ったよ』

左右田「ぎゃあああああああ!! な、なんだ!? ウイルスか!?」

左右田「ま、まずい! 今すぐネットワークを切断だ!」


・苗木 桑田 1F 事務所

アルターエゴ『やった! 掃除ロボの機能を全部停止させたよ』

苗木「流石アルターエゴ! キミのお陰で助かったよ!」

桑田「事務所にあったPCにアルターエゴのプログラムを移して電話回線を使って、ネットワークに侵入か……よくわかんねーけどスゲーってのはわかったぜ」

アルターエゴ『iphon版だとスペックの関係上、パスワードの解析やシステムの把握に時間がかかるからね。その間に敵に気づかれたら阻止される可能性があったんだ』

苗木「間に合って良かったよ。これで掃除ロボの恐怖に怯えなくて済むね」

桑田「まあ、とにかく一件落着だ! これからも頭脳労働は苗木とアルターエゴに頼むぜ!」ポン

アルターエゴ『そうそう。ネットワークに侵入した結果、この工場の見取り図が出てきたよ。データは苗木君のiphonに入れておくね』

苗木「ありがとう。助かるよ」

・霧切 朝日奈 大神 石丸 大和田 1F 通路

大和田「なんでい。もう動かねえポンコツになっちまったじゃねえか」ゲシゲシ

石丸「なんか拍子抜けだな」

霧切「あ、苗木君? ……そう、やっぱりアルターエゴのお陰ね。お陰で助かったわ。じゃ、お互い生きてたらまた逢いましょう」ピッ

霧切「掃除ロボの機能は完全に停止したそうよ」

大和田「ケッつまんねーの。もっと派手に暴れたかったぜ」

霧切「大和田君。流石に不謹慎よ」

朝日奈「…………」

大和田「……あ、悪い。朝日奈は足をやられちまったんだったな」

大神「朝日奈よ大丈夫か?」

朝日奈「うん……霧切ちゃんに見て貰ったけど弾丸は貫通しているし、止血しておけばとりあえずは問題ないって」

霧切「でも、これから先彼女を連れていくのは不可能だわ。どこかに身を隠してもらうしかないようね」

朝日奈「ゴメン……あんまり役に立てなくて」

石丸「そんなことはないぞ! 朝日奈くんがあの時勇気を出して囮になってくれなかったら、僕達は全滅していたかも知れないんだからな」

大神「朝日奈よ……ここは危険な場所だ。我が朝日奈を護衛を買って出たいのだが」

朝日奈「気持ちはありがちけど……さくらちゃんは行かなきゃダメだよ! そんなことしたら一気に戦力ダウンじゃん!」

大和田(確かに)

朝日奈「私は大丈夫だからさ……うまいこと敵に見つからないようにするって。みんな不二咲ちゃんのことは頼んだよ……」

朝日奈:リタイア

・教室 腐川 戦刃

腐川「うう……超高校級の絶望なんてヤバい連中に立ち向かうなんて正気じゃないわ……」

腐川「それにしても最近肌寒いわね……は、は、ハクション」

ジェノ「肌寒い季節は白夜様に温めて貰うのが一番よねえええ!! 白夜様どこにいるのかしらぁ~ん?」

ジェノ「白夜様の携帯にこっそり仕込んだ追跡アプリを使えば、白夜様がどの位置にいるかマップに表示されるのよねん」

ジェノ「ん? なんだここ? 閉鎖された工場? 辛気くせーとこにいんなおい」

ジェノ「それじゃ白夜様に添い寝で温めてもらい隊出陣じゃああコラ!!」

戦刃「あ、あの……」

ジェノ「あ? どうした残念バカ」

戦刃「盾子ちゃんと苗木君がいない……」

ジェノ「見りゃわかんよ。それがどうしたってんだ?」

戦刃「折角野戦から戻ってきたのに……私の活躍ぶりを二人に報告しようと思ったのに……うぅ……」

ジェノ「お前本当に残念だな。ハブられてやんのー。ウケルー」

戦刃「二人がどこにいるか知らない?」

ジェノ「アタシが知るわけないっしょー。ってかクラスの連中全員いねーし、やっぱりアンタもあの根暗もハブられてやんの! ゲラゲラゲラ」

戦刃「えっぐ……」

ジェノ「泣くなよ。女子が泣いても萌えねえからな。っつーかさ、携帯に連絡すればよくね?」

戦刃「携帯は野戦中に壊れた……」

ジェノ「残念すぎんよー。あれか? 敵の弾丸が当たって壊れたってオチか?」

戦刃「弾丸は全部避けるから平気だもん。うっかり地雷の上に落としちゃったんだもん。でも、爆発には巻き込まれなかったもん。無傷の記録は更新中だもん」

ジェノ「だせえええええ!! ねえ、今どんな気持ち? どんな気持ち?」

戦刃「うぇええん」

ジェノ「ああ。もうわかったわかった。きっとまーくんは白夜様と一緒に廃工場でいけない野外プレイをしてる最中だと思うから一緒に連れてってやんよ」

戦刃「ほんと!?」パアア

ジェノ「嘘に決まってんだろぉおおおぉぉおお!! 悔しかったらアタシに追いついてみな」スタタ

戦刃「…………」プッツン

戦刃「逃がさない……」ビュン

ジェノ「うおおお!! い、いつの間に先回りして……ああもうわかった。今度こそアタシの降参だよ。ったく、そんなムキになるなっつーの」

戦刃「ありがとう腐川さん」

ジェノ「だからアタシは腐川じゃなくてジェノサイダー翔だって何度言ったらわかんだこのボケ!」

・苗木 桑田 2F

桑田「勢いのまま二階に上ったけど……ここから先はオレらが初めて行くんだよな」

苗木「そうだね。今まで以上に気を引き締めよう」

桑田「ヨッシャ! この部屋に入ってみようぜ」

苗木「ここは休憩室だね……行ってみよう」ガチャ


・苗木 桑田 2F 休憩室

苗木「この休憩室って結構床が古いね……歩くたびにギィギィ言ってる」

桑田「案外床が抜けたりしてな」

苗木「ちょっと止めてよ……ん? 人の気配がする?」

狛枝「やあ……待ってたよ」

苗木「待ち伏せ!?」

桑田「テメー! 絶望側の人間か?」

狛枝「やだなあ……そんな身構えないでよ。そんなに凄まれるとウッカリ人質をナイフで刺しちゃいそうになるよ」

苗木「人質?」

舞園「苗木君! 桑田君! こっちに来ちゃダメです!」

桑田「な! 舞園ちゃん? テメー何してんだ!! っつか縛られている? アイドルになんつー変態プレイ仕込んでんだよ!」

苗木「それは違うよ。よく見て、縛られているどころか吊るされている」

桑田「余計に最悪じゃねえか!」

セレス「すみません。わたくしともあろう者がこんなビチグソに捕まってしまうなんて」

苗木「セレスさんまで……お前は一体何者なんだ!!」

狛枝「名乗るほどの者じゃないよ。ただの超高校級の幸運なんてゴミみたいな才能しか持たない人間だよ」

舞園「幸運がゴミだなんて、そんな言い方許しませんよ!」

狛枝「いやいや。幸運なんてキミ達の希望溢れる才能に比べたらゴミみたいなものだよ」

舞園「訂正して下さい!」

狛枝「あれ? もしかして、この中に幸運で選ばれた人がいるの? ……舞園さんは違う。セレスさんも違う。勿論、優れた野球選手である桑田クンも違うよね。ってことはキミかな?」

苗木「…………」

桑田「こいつオレ達の情報知ってるのか?」

狛枝「当たり前だよ。ボクはキミ達のファンだからね。新入生の情報は調べさせて貰ったよ」

桑田「テメーに応援されても嬉しくねえっつーの! どうせなら可愛い女の子に応援されたいぜ」

狛枝「あはっ嫌われちゃったみたいだね」

桑田「ったりめーだ! クラスメイト誘拐したり、人質にとったりする奴を嫌わねえやつなんていねえ!」

苗木「ねえ。キミ達の目的は不二咲さんが開発した人工衛星を落とすプログラムだよね。なのに何で無関係の舞園さんとセレスさんを巻き込むんだよ!」

狛枝「キミは苗木クン……って呼ばれてたね。ボクの目的がプログラムだって?」

狛枝「それは違うよぉ…」

狛枝「ボクの目的は希望に倒されることだよ。ボク自身がより大きな絶望になって、希望とぶつかり合う。そうして絶望を倒せば希望はより大きな物になる」

狛枝「本当は希望同士のぶつかり合いってのが理想なんだけどね。所詮、幸運程度の能力しかないボクには希望の踏み台になることしかできないよ」

狛枝「同じ幸運の才能を持つ苗木クンなら分かってくれるよね?」

苗木「それは違うよ!」

苗木「希望を持つのに才能や能力なんて関係ない! ましてや誰かを犠牲にして希望を得ようとするなんて間違ってるよ!」

狛枝「ふーん……キミって傲慢な考え方をするんだね。希望は優れた才能を持つ人間にのみ持つことを許されるものなんだよ」

苗木「そうじゃない! 例え才能がなくても前に進もうとする意思があれば誰でも希望を持つことは許されるんだ!」

狛枝「まさか、キミはたかが幸運で選ばれたからって、他の超高校級の皆と肩を並べられると思ってるの? 同じ希望を目指すことを許されると思ってるの? 恥知らずもいいとこだね。最低だよ」

桑田「テメー! さっきから黙って聞いていれば! お前がなんと言おうと苗木はオレ達の仲間だ! 才能があってもなくてもそれは変わらない! オレのダチをこれ以上悪く言うとぶっ潰すぞ!」

舞園「そうですよ。私は苗木君だからこそ、一緒のクラスになって嬉しいし楽しいんですよ! 仮にどんなに優れた才能があってもあなたみたいな人とは一緒のクラスにはなりたくありません!」

セレス「そういうことですわ。あなたの歪んだ考え方はここにいる全員が否定することですわ」

狛枝「はぁ……どうして分かってくれないんだ……絶望的だよ」ゾクゾク

桑田「おい、こいつなんかヤベーぞ」

セレス「知ってますわ。こんなのと長時間一緒にいるわたくし達の気持ちを考えて下さるかしら?」

狛枝「ねえ。これからちょっとしたゲームしようよ」

桑田「急に何言ったんだ! んなもんするわけねーだろ! こっちだって暇じゃねえんだ!」

狛枝「ふーん。あっそ別にいいよ。人質が死んでもいいならね」スッ

舞園「ひっ……や、やめ……」

桑田「ナイフだぁ? そんなもんでオレがビビると思っているのか? お前がナイフで人質を殺す前にオレの剛腕から繰り出される投球が火を噴くぜ!」

苗木「ダメだ桑田クン!」

桑田「あ、なんで止めるんだ苗木」

苗木「あいつが切ろうとしているのは人質じゃない……人質の体を支えている縄だよ」

桑田「縄?」

狛枝「はあ……バレちゃったか。幸運しか取り柄がないと見せかけて、観察眼は優れているようだね」

桑田「どういうことだ?」

苗木「舞園さんとセレスさんは二つの縄で縛られている。一つは体を宙に浮かせて体重を支えるための縄……もう一つは首を吊るための縄だよ」

桑田「く、首吊り!? でもまだ二人は生きているじゃねーか!」

苗木「首吊り用の縄はまだ長さにゆとりがあるんだ……体を支えている縄のお陰だよ。逆に言えば、体を支えている縄を切られた瞬間に自動的に首が吊られるようになってるんだよ」

狛枝「正解。見てごらん……これが二人の命綱だよ。ボクの手元に丁度あるんだ。桑田クンがボールを取り出す動作をした瞬間に縄を切ることだって出来るんだよ」

狛枝「今はまだ首が吊られる地点より高い位置に体を支えているから大丈夫だけど……体を支えている縄が切れたら、二人の体は降下し、首吊りが完成するってわけだよ」

桑田「マ、マジかよ」

苗木「ここは下手に相手を刺激しない方がいい。素直に従うべきだよ」

狛枝「早く決断しないとまずいよ。命に別状はないけど、縄だけで体を支えられるってのも案外キツいものだからね」

桑田「チッ……ゲームってのは何をすればいいんだ?」

狛枝「そうだね。ブラックジャックでもする? ボクに勝ったら人質を解放してもいいよ」

桑田「は? そんなもん超高校級の幸運のお前が有利に決まってんだろ!」

狛枝「相手は苗木クンでもいいよ。どっちの幸運が上か勝負してみる気はないかい?」

苗木「わかった。勝負してもいいよ」

狛枝「そうこなくっちゃ」

苗木「でも勝負するのはボクじゃない……」

狛枝「は?」

苗木「人質交換を要求するよ! ボクが人質になる代わりにセレスさんと舞園さんを解放して欲しいんだ」

舞園「な、何言ってるんですか苗木君! そんなのダメです!」

狛枝「なるほど……でも、その要求は呑めないな」

苗木「どうして!」

狛枝「だって、考えてもみてよ。優れた超高校級の才能を持つ人とただの幸運の人。人質の価値が釣り合わないじゃないか。ましてや二人も解放するなんて出来るわけがないよ」

苗木「つまり人質の価値が釣り合えばいいんだね?」

狛枝「そういうこと。桑田クンが人質を買って出てくれるならいいけど?」

桑田「おい! 何勝手に話を進めてんだ!」

苗木「いや、桑田クンはダメだよ。桑田クンの野球選手としての才能は貴重……こっちの戦力としても失うわけにはいかない」

狛枝「ようやくキミも自分の身の振り方がわかってきたね。そうだよ。才能という希望を保護するために自らを犠牲にするのがボク達才能がない人間の役割なんだよ」

狛枝「しょうがないな。キミのその心意気に免じて1対1の交換なら認めてあげてもいいよ。感謝してよね」

苗木「分かった……それじゃあセレスさん。キミにこの勝負を預けてもいい?」

セレス「その言葉を待ってましたわ。わたくしをこんな目に合わせた不埒な輩をこの手で成敗しますわ」

狛枝「それじゃ……セレスさんの代わりに苗木クンを縛って吊るすよ」





苗木「ごめん舞園さん……キミまでは解放してあげられなかった」

舞園「いいんです。苗木君が来てくれただけでも嬉しいです」

舞園(それに人質でいた方がヒロイン力がアップしますからね。これでメインヒロインの座確定に待ったなし)

苗木「セレスさんを信じよう」

セレス「桑田君。貴方はこの場にいるべきではありませんわ」

桑田「で、でもよお……」

セレス「お気持ちはわかります。しかし、貴方がいたところで勝敗は変わりません。それでしたら、本来の目的である不二咲さん救出に力を注いだ方がよろしくて?」

桑田「すまねえ……負けんじゃねえぞ!」


狛枝「ゲームの時間だ……ルールを説明するよ。まず、セレスさんはどっちの人質の命を賭けるか選んでよ。選んだ方の人質の解放か命を賭けて勝負だ」

セレス「苗木君ですわ」

セレス(相手は超高校級の幸運……普通にやればギャンブラーのわたくしでも苦戦は必至。その対策として、苗木君の命を巻き込んで彼の幸運の分も上乗せすればこちらが有利になりますわ)

狛枝「わかった。キミが一度でも勝てば苗木君を解放する。キミが勝てなかったら、このナイフで少し縄を切る。それだけだ」

セレス「あら、随分と余裕がありますわね。わたくし相手にそんな舐めた条件でよろしいのでしょうか? わたくしが初戦で勝てば、その時点で勝負は終了ですよ」

狛枝「構わないよ。その代わりに引き分けでも人質の命綱は削られるからね」

狛枝「ディーラーは一回毎の交代制でやるよ。最初のディーラーはボクでいいよね?」

セレス(ブラックジャックはディーラーが圧倒的に不利なルール……そっちは、一度でも負ければゲーム終了なのにこの余裕が癪に障りますわね。とはいえ、文句は言えません。何しろ仲間の命がかかっているのですから)

狛枝「勝負はこの未開封のトランプを使って行うよ」

セレス「中身を確認してよろしいでしょうか?」

狛枝「構わないよ」

セレス(見たところ細工はしてありませんわね……)

狛枝「確認は終わった? それじゃいくよ」サッサッサッサッ

セレス(随分と慣れた手つきですわね……百戦錬磨のわたくしが見てもイカサマはしてないように見えます)

狛枝「ボクのアップカードはスペードのKだね」

セレス(わたくしのアップカードは2と8……合計10ですわ)

セレス「ヒットします」クイクイ

狛枝「はい」スッ

セレス「あら。Aが来ました。わたくしのカードは2と8とAです。ウフフフフ」

舞園「やったあ! Aを11として扱えば合計は2+8+11=21です! セレスさんの勝ちは決まったも同然ですね」

用事があるので出掛まちゅ
再開は夜の予定でちゅ らーぶらーぶ

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