阿笠「できたぞ、新一! 光彦君に****させるスイッチじゃ!」 (63)

コナン「サンキュー博士! 早速、次のキャンプで試してみるぜ!」

阿笠「くれぐれも悪用するんじゃないぞいー」

コナン「バーロー、分かってらあ!」

~翌日 米花キャンプ場~

歩美「わあー、おっきなキャンプ場ー!」

光彦「あそこに湖もありますよ!」

元太「うおー! 釣りしようぜ、釣りー!」

阿笠「これこれ、余りはしゃぐでない」

灰原「土曜日だっていうのに、私達以外、誰もいないわね……」

コナン「博士が見つけた穴場だからな」

歩美「博士すごーい! ありがとう!」

コナン(さて、そろそろボタンを押そうかな……)ポチッ

光彦「そうそう、僕、昨日ナイフを買ったんですよー! かっこいでしょう?」

歩美「は?」

光彦「……え?」

歩美「ナイフも包丁も、博士がいつも持ってきてくれるから要らないじゃん。何でそんなもの、わざわざ持ってきたの?」

光彦「え、いや、つい……」

歩美「きもーい」

阿笠「ほれ、テントを建てるぞい。遊んでないでこっち来なさい」

歩美「はーい」タッタッタ

光彦「……」

コナン「よーし、これで完成だ」

元太「うな重か!?」

コナン「バーロ、キャンプでどうしてそんなもん作らなきゃいけねえんだよ」

阿笠「ふむ、タコライスじゃな」

コナン「ああ、ハワイで親父に作り方を習ったんだ」

歩美「わー、美味しそーコナン君すごーい///」

コナン「バーロ、こんくらい普通だっつーの」

光彦「……」

灰原「……?」

元太「ぷっはー! 美味かったー! うな重みてえだ!」

阿笠「確かに海産物とご飯のセットという意味では一緒かもしれんのう……」

コナン「バーロ、全然違えだろうがよ。ん?」チョンチョン

灰原「ちょっと来て、探偵さん」

コナン「何だよ灰原、わざわざ呼び出して」

灰原「円谷君の様子がおかしいと思わない?」

コナン「え? そ、そうか? 別にいつもと大して変わらないと思うけど……」

灰原「……また、博士のろくでもない発明品かしら?」

コナン「ば、バーロー、博士がそんなもん発明したことあったか? 光彦に何かする道具なんて」

灰原「言われてみればそうね……」

コナン「だから、何でもないに決まってるだろ!」

コナン(あ、危ねー)

~翌朝~

歩美「きゃあああああああああ」

コナン「!?」ダッ

コナン「どうした、歩美?」

歩美「げ、元太君が、元太君が……」

阿笠「こんな朝から何じゃぞ……い……!? げ、元太君!?」

コナン「死んでる……」

灰原「心臓を刃物でグサリ、ね。骨まで達しているみたい」

歩美「コナン君、これ見て!」

阿笠「わ、ワシが持ってきたカッター!? な、何でそんな血まみれに……」

コナン「ペロ、これは凶器……!」

灰原「……何、舐めてるの? 舌切ってるわよ」

コナン「いや、何となく……」

光彦「……」

コナン「博士、通報はしたか?」

阿笠「あ、ああ。じゃが、ここに来るまでの道が渋滞しとるようで……」

コナン「糞、バーロー……一体、誰が元太を……」

歩美「へ、変質者じゃないの? 通りすがりの」

コナン「バーロー……犯人は、俺達の中にいるんだよ」

阿笠「なっ!?」

コナン「このカッターは何処にあったと思う?」

阿笠「そ、そりゃあ、その机の下の箱の中……」

コナン「つまり、犯人はカッターがそこにあったってことを知ってなきゃならねえんだ」

コナン「外部の奴が凶器になりそうなものを探すのなら、そっちの俎板だとか鍋だとかがあるところにある包丁を使う筈」

コナン「ってことで、犯人はカッターの場所を知っていた俺達の内の誰かってことになる……」

阿笠「そ、そんな、元太君を殺したのがワシらの内の誰かじゃと……?」

コナン「……」コクッ

灰原「……一体、誰が…………」

光彦「……」

コナン「皆のアリバイは調べたけれど、全員、夜は寝ていただけ、か」

灰原「当然ね」

コナン「糞、一体、誰が元太を……」

歩美「で、でも、おかしいよ! 元太君を殺す理由があった人なんて……」

灰原「確かに、あの子は障害者じゃないかと疑うくらい頭の具合は悪かったけれど、恨みを買う様な子ではないわね」

コナン「ああ、全く、その通りだ……一体、誰が……どうして……」

阿笠「どうしてと言えば……」

コナン「ん? 何だ、博士」

阿笠「いや、どうして犯人は包丁を使わなかったのかと思ってのお……」

阿笠「確かに、カッターを使ったということはワシらの内の誰かが犯人と言うことになるんじゃろうが、でも、不自然じゃろ?」

コナン「!?」

歩美「どうしたの、コナン君?」

コナン「そうか、そういうことか! ありがとう博士!」

灰原「もしかして……」

コナン「ああ、その通りだ。分かったんだ、この事件の犯人が!」

光彦「……」

コナン「皆、このカッターを見てくれ!」

歩美「そ、それが、どうかしたの?」

コナン「……このカッターが、ただ一人の犯人を示してくれるんだ……」

灰原「指紋でも残っているっていうの?」

コナン「バーロー、そういうことじゃねーよ。それに指紋があったって、今の俺達には調べることもできない」

灰原「じゃあ、一体、何なの? ただの凶器じゃない」

コナン「ただの凶器?」

灰原「?」

コナン「違うんだよ、灰原。……実は、元太を殺したのは、このカッターじゃないんだ!」

灰原「!?」

阿笠「ど、どういうことじゃ新一!」

コナン「考えてもみてくれ。骨まで達する程の傷をつけたカッターの刃が……」プツッ

コナン「こんなに鋭いままでいられると思うか? ちょっと指で触っただけで切れるくらい」

阿笠「あっ……」

灰原「確かに、さっき、あなたが舐めた時、舌が切れてたわね……」

コナン「つまり、このカッターは元太を殺すのには使われていなかったんだ!」

歩美「ど、どういうことなの? コナン君……」

阿笠「そ、そうじゃよ、それなら、犯人は何を使って殺したと言うんじゃ……」

光彦「……」

コナン「博士。ここからで問題になるのは、何を、というよりも、どうして、なんだ」

阿笠「?」

コナン「どうして、犯人はこのカッターが凶器だと見せかける必要があったのか?」

コナン「理由は一つしか考えられない。実際の凶器が何かバレると不都合だったからだ……それだけで、犯人が誰か分かっちまうからだ」

コナン「じゃあ、その実際の凶器とは何だ? 博士の包丁か? バーロー、それはない」

コナン「だって、包丁は誰にでもとれる位置にあったんだからな。見つかっても不都合じゃない」

コナン「それなら、考えられるのは何か?」

コナン「このキャンプで、博士の他に刃物を持ってきているのは、一人しかいないよな?」

コナン「光彦、お前だよ!」

阿笠、灰原、歩美「!?」

光彦「……ご名答です、コナン君」

光彦「その通りですよ。僕が元太君を殺してやったんですよ!」

歩美「そんな……どうして……」

コナン「そうだ! 光彦、てめえ、どうしてそんなことを!」

光彦「自分の身を、守るためですよ」

コナン「!?」

光彦「キャンプに来てから、また、皆の様子がおかしくなりました……」

光彦「コナン君はいつも以上にバーローとかハワイとか言い出しましたし」

光彦「歩美ちゃんは何か僕に異常に厳しくなってコナン君にいつも以上に媚を売るようになりました」

光彦「灰原さんはコナン君とひそひそ話をあからさまにやりだしましたし」

光彦「元太君はうな重うな重と連呼するようになりました」

光彦「分かってるんです。こうなると、決まって、僕が酷い目にあうんです!」

光彦「コナン君! 博士!」

コナン、阿笠「!?」

光彦「今度は、何を開発したんですか?」

光彦「僕をピクミンにする装置ですか? 僕に強制的にオナラをさせるスイッチですか? それとも、もっと別のものですか?」

光彦「もう、うんざりなんです!」

光彦「わけが分かりませんよ! 気が付いたら不死身キャラにされてますし!」

コナン「……」

歩美「……?」

光彦「だから、僕の方から攻めてやろうと思ったんです」

光彦「マジキチ話ではなく、本格推理物語にすれば、犯人は最後の方まで生き延びられますから!」

阿笠「なっ……」

コナン「光彦……」

光彦「何ですか? コナン君? そのシューズで僕を蹴り飛ばすんですか? それとも、原作では黒歴史にされたあのサスペンダーで僕の首を吊るんですか?」

コナン「バーロー、違えよ……一つ、聞きたいことがある」

光彦「何ですか? お姉ちゃんのスリーサイズですか?」

コナン「どうして、元太なんだ?」

光彦「……!」

コナン「お前の理由からすれば、殺すのは普通、俺か博士じゃないのか? なのに、どうして元太を?」

光彦「消去法ですよ」

コナン「消去法?」

光彦「コナン君は殺せません。主人公ですから。僕が殺そうとすれば、返り討ちに遭うパターンです」

光彦「博士も駄目です。下手したら僕のケツを掘られます」

光彦「歩美ちゃんと灰原さんは論外です。読者のみなさんに気に入られてますから、殺せるわけがありません」

光彦「だから、元太君しか残らなかったんです。物語的に僕が殺せるのは……」

コナン「バッキャロー!」バキイッ

光彦「!?」ドゴオ

コナン「何が物語だ! 何が本格推理だ! まるで、この世界がフィクションみたいなことを喚きやがって!」

コナン「読者って何だ? 意味がわからねえよ! この話はなあ、紛れもない、ただ一つの真実なんだ!」

コナン「お前が殺した元太は……元太は……もう、二度と、戻って来ねえんだよ!」

光彦「!」

コナン「それを、それを……お前は……現実と虚構の区別もつかなくなっちまったのかよ!」

光彦「え、そ、そんな……」キョロキョロ

歩美「う、うう……意味が分からないよお……」

灰原「……」

光彦「ほ、本当に、これは、現実なんですか? そんな、まさか、でも……う、うわあああああああ」

~後日~

コナン「こうして、米花キャンプ場殺人事件は、光彦の後悔の慟哭によって幕を閉じた」

コナン「現実と虚構の区別をつかなかった悲しい少年は、おとなしく警察に捕まり、公判を待っている……」

コナン「けれど、この事件。もしかしたら決して他人事ではないのかもしれない」

コナン「巷では現実をフィクションの世界と混同しているような馬鹿騒ぎが毎日の様に起こっている」

コナン「ヒーロー気取りで冷蔵庫に入ったり、洗濯機に入ったり……」

コナン「そして、この事件を間接的に引き起こしてしまった俺と博士もきっと……」


~阿笠「できたぞ、新一! 光彦君に元太君を殺させるスイッチじゃ!」 完~

終わりです。
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