シャーリー「ストライカーに音声キットを組み込むと愛着がヤバい」 (205)

美緒「全員、ご苦労だったな。ゆっくり休んでくれ」

芳佳「はい!」

リーネ「芳佳ちゃん、怪我はない?」

芳佳「うん。坂本さんの後ろにいたし、大丈夫だよ」

美緒「はっはっは。宮藤が後衛にいるからこそ、今回もネウロイを撃破できたのだがな」

芳佳「そんなことないですよぉ」

シャーリー「はぁー、ハラへったー」

『マスター マホウリョク ガ テイカ シテオリマス ゴチュウイクダサイ』

シャーリー「分かってるよ。ありがとう。今日はもう出撃することはないさ」

芳佳「今の声、なに?」

リーネ「シャーリーさんのユニットから聞こえてきた気がするけど……」

シャーリー「今日もありがと」

『オツカレサマデシタ エンジン ヲ テイシシマス』

シャーリー「よっと」

芳佳「シャーリーさーん」

シャーリー「おー。宮藤ぃ。メシは?」

芳佳「すぐに用意します!」

シャーリー「頼むよ。もうハラへってさぁ」

リーネ「あのぉ。今の声は……?」

シャーリー「あれか? あれはね、あたしのユニットに音声キットを組み込んだのさ。まだそんなにバリエーションはないから、同じ言葉ばかりを繰り返すけど」

芳佳「喋るってすごいですねー! なんだかかっこいい!!」

シャーリー「そうか? なんなら試してみる?」

芳佳「いいんですか!?」

シャーリー「もちろん。ユニットを装着したら喋りだすから、やってごらん」

芳佳「わーい!!」

芳佳「いきますっ」スッ

『――マホウリョク カクニン エンジン シドウ』

芳佳「わぁ! すごいすごーい!!」

リーネ「会話もできるんですか?」

シャーリー「それはまだ無理かな。装着者の魔法力を感知して機械的に喋るだけだから」

リーネ「それじゃあ……」

芳佳「こんにちは!」

『マホウリョク アンテイ』

芳佳「こ ん に ち は!」

『ショウツゲキ カノウ』

芳佳「シャーリーさーん……」

シャーリー「おいおい。そんなに落胆するなよ。あたしが申し訳なくなるだろ」

リーネ「でも、どうして音声キットを組み込もうと思ったんですか?」

シャーリー「んー。ユニットはあたしたちの相棒みたいなものだろ? いつも大切にしてあげたい。どんなに激しい戦闘になってもできるだけ大事にしたい」

シャーリー「そう思ったとき、なら喋るようになれば愛着が今よりも沸いて自然とユニットことをもっと深く想えるようになるんじゃないかってね。それが理由だ」

美緒「ふむ。中々、いい思想だな。シャーリー」

シャーリー「少佐!?」

美緒「扶桑では物にも魂が宿ると言われていてな。九十九神など言われたりするが」

シャーリー「へぇ。そうなんですか」

美緒「物を大切に扱うと恩返しをしてくれる、などともいう話は山のように存在する」

リーネ「なんだか素敵なお話ですね」

美緒「だろう。シャーリーの考えは立派なものだ」

シャーリー「いやぁ。そこまで深く考えていたわけでもないだけど」

芳佳「……」スッ

『オツカレサマデシタ エンジン ヲ テイシシマス』

芳佳「……」スッ

『マホウリョク カクニン エンジン シ――』

芳佳「……」スッ

『オツカレサマデシタ エンジン ヲ テイシシマス』

シャーリー「宮藤、遊ぶなって」

芳佳「あ、すいません」

美緒「それにしても喋るのはいいが、どれも機械的な声で温かみが感じられんな」

シャーリー「合成音声ってやつですからね。それは仕方ないんですよ」

美緒「これからも改良を重ねていくつもりか?」

シャーリー「勿論。音声認識を可能にして、簡単な会話ぐらいはできるようにしたいですからね」

美緒「ほう。それは面白いな」

リーネ「シャーリーさん、もし出来上がったら……その……」

シャーリー「いいよ。リーネのユニットにも組み込んであげる」

リーネ「やったぁ。とっても楽しみです」

芳佳「シャーリーさん、私にもお願いします!!」

シャーリー「はいはい。わかったわかった」

美緒「……」

シャーリー「少佐はどうします?」

美緒「ん? そ、そうだな。もらえるなら、貰っておきたい。頼めるか?」

シャーリー「了解。それじゃ、がんばって作りますね」

食堂 キッチン

芳佳「すごいねー。ユニットと会話できるようになるんてー」

リーネ「そうだねー。名前とか考えておいたほうがいいかな?」

芳佳「名前かぁ。それいいね! やっぱりユニットから名前をとる?」

リーネ「んー。スピットファイアからはちょっと難しいかも」

芳佳「そっかぁ」

リーネ「芳佳ちゃんはどうする?」

芳佳「私? うーん……どうしようかなぁ……うーん……。ダメ! 決められないよぉ!」

バルクホルン「宮藤。食事はまだか?」

エーリカ「おなかすいたぁ」

芳佳「あぁ! ごめんなさい!! もう出来上がりますから!!」

リーネ「盛り付けしまーす!!」

バルクホルン「頼むぞ」

エーリカ「宮藤ぃ、おなかすいたぁ……私を殺す気かぁ……?」

芳佳「そんなことないです!! ちょっと待ってください!!」

リーネ「大変お待たせしました」

エーリカ「まったくだぞぉ」

芳佳「すいません」

バルクホルン「気にするな、宮藤。満足に料理も作れないハルトマンの文句などに耳を貸す必要はない」

エーリカ「なんだとー?」

バルクホルン「それよりも宮藤、先ほどの何の話をしていた?」

芳佳「あ、シャーリーさんがストライカーユニットと会話が可能になる機械を開発中なんですよ」

エーリカ「なんだそれ」

リーネ「今よりももっと愛着が持てるようにって、シャーリーさんは考えているみたいで」

バルクホルン「馬鹿馬鹿しい。ストライカーユニットに対する愛着など不要だろう」

芳佳「え? そうですか?」

バルクホルン「あれは飽くまでも兵器だ。大切にするのは結構だが、深い愛着を持つ必要などないだろう」

リーネ「でも……お喋りできればきっと楽しいですよ……?」

バルクホルン「楽しくする理由もない。私たちは戦っているのだ。ストライカーを用いてネウロイを撃破できればそれでいい」

エーリカ「ねえねえ。それってどの程度会話できるようになるの?」

バルクホルン「おい、ハルトマン」

芳佳「それはまだ分からないみたいですけど、簡単な会話ぐらいはできるようにしたいってシャーリーさんは言ってました」

エーリカ「へぇー。すごいじゃん。あれだね、少なくとも私がお腹すいたって呟いたら、すかさず「黙って任務に専念しろー」ぐらいは言ってほしい」

リーネ「え

>>20
ミス

バルクホルン「おい、ハルトマン」

芳佳「それはまだ分からないみたいですけど、簡単な会話ぐらいはできるようにしたいってシャーリーさんは言ってました」

エーリカ「へぇー。すごいじゃん。あれだね、少なくとも私がお腹すいたって呟いたら、すかさず「黙って任務に専念しろー」ぐらいは言ってほしい」

リーネ「ハルトマン中尉、ストライカーに叱られたいんですか?」

エーリカ「ちがうよ。で、そこから私がおかしーおかしーって騒ぐと、「もう知るかっ」って言ってくれると面白いでしょ?」

芳佳「それは確かに」

バルクホルン「おい、ハルトマン。誰がモデルだ、それは?」

エーリカ「さぁ。心当たりがあるなら、きっとその人だよ」

バルクホルン「おまえ……!!」

芳佳「そ、そういうのもきっとできるようにしてくれると思いますよ」

エーリカ「そっかぁ。それなら、訓練のときとかすっごく楽しくなるなぁ」

リーネ「ですよね!」

バルクホルン「お前たち、遊びじゃないのだぞ。わかっているのか?」

エーリカ「わかってるよ。でも、遊びも必要だろ?」

バルクホルン「遊びしかないのでは困るぞ。全く」

ブリーフィングルーム

ミーナ「ここのところ、ネウロイの侵攻パターンが不規則ね」

美緒「そうだな。攻め込んでくるコースがバラバラだ。私たちをかく乱しようとしているのか」

ミーナ「今回もネウロイがわざわざ大きく迂回するようなコースを辿っているし……。なにかあるのかしら」

美緒「まぁ、どんなに裏をかいても、私たちウィッチは出し抜けんがな」

ミーナ「出し抜くために陽動作戦の下準備でもしているのかもしれないわ」

美緒「うむ。念頭に置いておこう」

ミーナ「それはそうと、トゥルーデから聞いたのだけど、シャーリーさんが面白いものを開発しているそうね」

美緒「ああ。ストライカーユニットに音声機能をつける試みだ。まだまだ開発段階で可愛げもなにもあったものではないがな」

ミーナ「それって、ネウロイとの戦闘時に役に立ってくれるの?」

美緒「魔法力が著しく低下した場合、警告をしてくれるらしい。無茶をするような奴にはいいのではないか」

ミーナ「それは美緒のこと?」

美緒「はっはっは。そうかもしれないな」

ミーナ「もう。でも、ユニットと会話ね。考えたこともなかったけれど、想像してみると良いものかもね」

美緒「ストライカーにも魂は宿っている。そう使用者に思わせてくれるだけでも、意味はあるはずだ」

数日後 格納庫

シャーリー「ふんふーん」

ルッキーニ「シャーリー、なにしてんのぉ?」

シャーリー「ん? 音声キットを改良したから、その取り付けだよ」

ルッキーニ「あぁ! 芳佳が言ってたやつだぁ。パワーアップしたの?」

シャーリー「少しだけな」

ルッキーニ「テストしてもいいー?」

シャーリー「いいぞ。丁度、したいと思ってたところだしな」

ルッキーニ「やったぁー!! れっつごー!!」スッ

『――マホウリョク カクニン……フランチェスカ ルッキーニ ヲ マスター ト ニンテイ』

ルッキーニ「おぉ!?」

『オハヨウゴザイマス マスター』

ルッキーニ「すごーい!! にゃにこれー!?」

シャーリー「ふっふっふっふ。みんなの魔法力の波形をインプットしているんだ。誰が装着したのかを判断して、名前を呼んでくれる。ま、501のメンバーだけなんだけどな」

『マスター シュツゲキ ハ カノウデス』

ルッキーニ「よーし!! 出撃だぁー!!」

『リョウカイ』

ルッキーニ「にひぃ」

『マスター ロック ヲ カイジョ シテクダサイ ヒコウ フノウデス』

ルッキーニ「あ、そっか。――解除!!」ブゥゥゥン!!!

シャーリー「おーい! すぐ戻ってこいよー!!」

ルッキーニ「わかってるー!!」

『マスター ゲンザイノ コウド ト ソクド ヲ ケイソクシマス』

ルッキーニ「かっちょいー!!」

シャーリー「……なんとか、成功だな」

バルクホルン「シャーリー、あれが例の喋るストライカーユニットか」

シャーリー「そうだ。興味があるならバルクホルンのユニットにもつけてやろうか?」

バルクホルン「不要だ。あのような玩具など」

シャーリー「玩具とはなんだよ。あれ、結構作るの大変なんだぞ」

バルクホルン「ユニットが喋ることで我々にどのようなメリットがある? 言ってみろ」

芳佳「ほらほら、ペリーヌさんも一回見たら絶対に欲しくなりますから」

ペリーヌ「喋るストライカーユニットというだけで、はしゃぐことのできる宮藤さんが羨ましいですわ」

芳佳「えへへ、そうかなぁ」

ペリーヌ「皮肉も通じないとは……」

リーネ「でも、あれが完成したらきっと今よりもユニットにたいして優しくなれると思うんです」

ペリーヌ「ふん。わたくしは常日頃からストライカーユニットにも敬意を払っていますわよ」

芳佳「へぇー。どんな風に?」

ペリーヌ「え……」

リーネ「すごいですねぇ。どんなことをしているんですか?」

ペリーヌ「あ、ありがとうっていいながら撫でてあげたり……今日も元気ですかと話しかけながら磨いてあげたり……」

芳佳「ペリーヌさん、やさしー。私、そんなことしたことないですよー」

リーネ「私もです」

ペリーヌ「そ、そうなの……? みんな普通にやっているものだと……」

シャーリー「――別にいいだろ!! なんで文句言われなきゃならないんだよ!!」

芳佳「あ、シャーリーさんの声……。なにかあったのかな……」

バルクホルン「文句ではない。これは当然の意見だ。そのようなことに時間を費やすのなら、エンジンの出力を上げるために尽力しろといっている」

シャーリー「いいだろ。あたしがやりたくてやってるんだから」

バルクホルン「シャーリーが魔導エンジンの性能向上に時間を割けば、それだけ私たちの戦力向上にも繋がる。それが分からないのか」

シャーリー「そっちも並行してやってるって」

バルクホルン「エンジンのほうに専念しろと言っている」

シャーリー「あのなぁ……」

芳佳「な、なにしてるんですかぁ!!」

リーネ「や、やめてください!!」

ペリーヌ「大尉同士での言い争いはいつものこととはいえ、あまり見たくはありませんわね」

バルクホルン「宮藤……。だが、これは……」

シャーリー「あー、はいはい。わかったよ。なら、音声キットが完成しても、バルクホルンはいらないんだな?」

バルクホルン「いらんな」

シャーリー「なら、もう向こういけよ。しっしっ」

バルクホルン「……好きにしろ」

シャーリー「なんだよ。カールスラントの堅物はゆとりってものがないのか」

芳佳「シャーリーさん、ケンカはダメですよぉ」

シャーリー「向こうから突っかかってきたんだ。仕方ないだろ」

芳佳「でも……」

ルッキーニ「――たっだいまぁー!! シャーリー!!!」ブゥゥゥン!!!

シャーリー「よー。どうだった?」

ルッキーニ「すっごねー。あたしの魔法力の様子とか逐一教えてくれるしー、べんりだし、かっこいい!!」

シャーリー「だろぉ? いいよなぁ、これ」

ペリーヌ「シャーリー大尉? それが噂の……」

ルッキーニ「ご挨拶してぇ!」

『マスター キトウ ガ カンリョウシマシタ』

ルッキーニ「うじゅ……」

ペリーヌ「まぁ……本当に喋った……」

シャーリー「まだ音声の認識はできないから、こっちが呼びかけても応えてはくれないんだ。そっちのほうはもう少しかかりそうだよ」

ペリーヌ「あ……あの……これ……その……」モジモジ

芳佳「ペリーヌさん、どうかしたの?」

ルッキーニ「うにゃ? どうかした?」

ペリーヌ「シャ、シャーリー大尉っ」

シャーリー「なんだ?」

ペリーヌ「こ、この声……その、しょ、少佐の声にできたりは……」

シャーリー「は?」

リーネ「坂本少佐の?」

ペリーヌ「き、機械的な音声よりも、そうした肉声を使ったほうが、その、より愛着が持てると思いますわ」

シャーリー「あぁ。なるほど。確かになぁ」

リーネ「……」

芳佳「それいいですねー!! シャーリーさん、できますか!?」

シャーリー「うーん。どうだろうな」

ルッキーニ「シャーリー!! あたしのストライカーユニットに組み込むなら、シャーリーの声がいい!!」

ペリーヌ「合成音声なんて、味気ないですわ。音声認識もままならないなら、そうした創意工夫というものが必要ではないでしょうか?」

シャーリー「ペリーヌの言うとおりだな。音声認識装置にまだまだ時間がかかるなら、そっちの改良をするのも良いな。ま、合成音声には合成音声にしかない味はあるけど」

ペリーヌ「で、でしょう!? そうでしょう!? や、やはり、こ、声というのは、人の喉から発せられるほうが、その、良いですわ! きっと!!」

シャーリー「あたしは個人は合成音声のほうが、好きなんだけどなぁ。ペリーヌの言うことも分かる」

ペリーヌ「はい! でしたら、ぜ、是非!!」

シャーリー「よし。それじゃ、人の声を使ったものも作ってみるかな」

ペリーヌ「はぁ……!! 完成した暁には何卒わたくしのユニットに!!」

シャーリー「少佐が協力してくれるかが問題だけどな」

ペリーヌ「うぐ……。そ、そうですわね……」

シャーリー「そのときはどうする?」

ペリーヌ「……そのときは、宮藤さんかリーネさんの……」モジモジ

芳佳「え? 私ですか?」

リーネ「はいっ。私は喜んで協力します」

ペリーヌ「いいですこと!? 飽くまでもあなたたちの音声なんて予備ですからね!! 勘違いなさいませんように!! ふんっ」

シャーリー「とりあえず声を録音しなきゃいけないなぁ」

ルッキーニ「シャーリーバージョンには、ルッキーニがんばれーっていれてね! ぜったいだよぉ!!」

シャーリー「そんなのいつでも言ってやるぞ?」

ルッキーニ「一緒に出撃しないときとかあるじゃん! そういうときにシャーリーの応援があると嬉しいのっ!」

食堂

エーリカ「なんか、盛り上がってるらしいねぇ。例の音声キット開発」

芳佳「はいっ。ペリーヌさんの提案でもっとパワーアップするみたいですよ」

バルクホルン「その話はもういい。下らない」

エイラ「ん? なんの話だ?」

サーニャ「シャーリーさんが喋るストライカーユニットを開発しているらしいわ」

エイラ「ふぅん。シャーリーも変なことするなぁ」

サーニャ「でも、素敵なことだと思うわ」

エイラ「サーニャがそういうなら、素敵なことなんダナ」

エーリカ「宮藤、ペリーヌの提案って?」

芳佳「はい。合成音声だけじゃなくて、人の声で喋るようしたらどうかって」

エーリカ「人の声? それって肉声を録音使うってことか?」

芳佳「はいっ。一応、私とリーネちゃん、それからシャーリーさんと坂本さんが音声録音する予定なんですけど」

エーリカ「すっごいじゃん。その中で選ぶなら私は宮藤ボイスのユニットにカスタマイズしたいなぁ」

バルクホルン「……宮藤、その話は本当なのか?」

芳佳「はい。もうシャーリーさんも作業に取り掛かってます」

バルクホルン「なんだ……と……」ギリッ

エイラ「みやふじぃ!!!」ガタッ

芳佳「な、なんですか!?」

エイラ「サーニャボイスはできないのか!? サーニャの声がユニットから聞こえてくるとか、できるのか!?」

芳佳「サ、サーニャちゃんが協力してくれるならできると思いますよ……」

エイラ「おぉぉ!! やったぁー!! サーニャと一緒に飛べないときでも寂しくなくなるぞぉー!!」

サーニャ「私、協力するなんて言ってないわ……」

エイラ「えぇぇぇ!? ナンデダー!!」

エーリカ「宮藤はもう収録終わったの?」

芳佳「いえ、まだです。台詞を考えなきゃいけないみたいで」

エーリカ「台詞かぁ。例えばどんなのが候補に挙がってるの?」

芳佳「えーと、エンジン始動時には装着者の名前を言って「今日も元気にがんばりましょうね」とかいいかなぁなんて考えているんですけど」

バルクホルン「……!!」

エーリカ「いいんじゃない? 宮藤らしい台詞だし、ユニットを装着するだけで幸せになりそうだ」

芳佳「そ、そうですか?」

エーリカ「きーめた。私は宮藤バージョンの音声キットもらおーっと」

芳佳「あははは。ありがとうございます」

サーニャ「芳佳ちゃん」

芳佳「なに?」

サーニャ「台詞は、その……リクエストできたりするの?」

芳佳「うん。まだ、録音するまえだからできるよ」

サーニャ「私専用の台詞とかできるの?」

芳佳「ああ、多分、大丈夫。誰が装着したのか機械が判断してくれるみたいだし」

サーニャ「あ、あの、私の名前を呼んでからその……あの……だ……ぃ……き……とか……」モジモジ

芳佳「え? ごめん、聞こえなかった。もう一度、言って」

サーニャ「……サーニャちゃん、がんばってとか、言ってくれたら嬉しいな」

芳佳「それぐらいなら全然いいよ!! 任せて!!」

サーニャ「うれしい……」

エイラ「サーニャぁぁ……わたしのためにろくおんしてくれぇぇ……たのむぅぅ……」ギュゥゥ

バルクホルン「台詞のリクエストも可能……だと……!! おのれ、リベリアン!! 私が要らないといった後にこのようなメリットを出してくるなんて……卑怯だ……!!」

エーリカ「宮藤ぃ。それじゃあ、私からもリクエストがあるんだけど、いい?」

芳佳「はい。構いませんよ」

エーリカ「エーリカおねえちゃん、だーいすきっ。これ、お願い」

芳佳「え……」

バルクホルン「ハルトマン!!! なんだそれはぁぁぁ!!!」

エーリカ「なんだよぉ? 問題あるのかぁ?」

バルクホルン「応援の声でもなんでもない!! そんなもの許されるわけがない!!!」

エーリカ「私はこれで元気がでるんだから、仕方ないじゃん?」

バルクホルン「ふざけるのもいいかげんにしろぉ!!! なんだ、その台詞はぁぁ!!! うらや……けしからん!!!」

エーリカ「私だってさぁ、トゥルーデバージョンがあればそっちにするけど、今のところ4つしか候補ないしー。それなら宮藤だしー」

バルクホルン「だからって、その台詞はないだろう!!!」

芳佳「ハルトマンさん、その台詞でいいんですか?」

エーリカ「もっちろん。その代わり、感情こめていってよ? 私を実の姉だと思いながらじゃないとダメだから」

芳佳「は、はい。やってみます」

バルクホルン「み、宮藤!! 本当に、本当にそんな台詞まで録音するのか!!」

芳佳「だ、ダメですか?」

バルクホルン「ダメというか……うむむ……!!」

エーリカ「トゥルーデ、欲しいならそういえばぁ?」

バルクホルン「そんなもの!! 微塵も欲しくない!!」

エーリカ「あ、そう。ざーんねん。ああ、宮藤ぃ。あと一つ私専用の台詞を入れて欲しいんだけど」

芳佳「なんですか?」

エーリカ「エーリカおねえちゃん、今日も大活躍だったね。大好きっ。これを入れといて」

芳佳「え、えーと……エーリカおねえちゃん……きょうも……」メモメモ

バルクホルン「エーリカぁ……!!」

エーリカ「なに?」

バルクホルン「ぐっ……くっ……うぅぅ……!!!」

エーリカ「今リクエストを言っておいたら、音声キットが出来上がったときユニットからもう理想の宮藤ボイスが垂れ流しだね」

バルクホルン「ぎぎぎ……!!」

エーリカ「どうすんの、トゥルーデぇ? 本当に音声キットなんていらないのかぁ?」

ブリーフィングルーム

美緒「私の声を使いたい?」

シャーリー「ダメですか? ペリーヌとか宮藤とか少佐の声がいいって言ってるんですけど」

美緒「うむむ……そうなのか……」

ミーナ「シャーリーさん? そんなことが可能なの?」

シャーリー「技術的にはできます。会話することはできませんけど」

ミーナ「……美緒、やるの?」

美緒「そうだな……」

ミーナ「シャーリーさん、音声キットを組み込んだユニットはどんなことを言ってくれるの?」

シャーリー「それは今から決めようかなって。声の主によって台詞も変えていきたいし」

ミーナ「そ、装着者専用の台詞なんていうのもできるのかしら? あくまで参考としてきいておきたいのだけれど」

シャーリー「問題ないですね」

ミーナ「そうなの。シャーリーさんは素晴らしい技術者ね」

シャーリー「あはは。それほどでもないですよ」

美緒「シャーリー、どんなことを言えばいいんだ? それを聞いてから決めたいのだが」

シャーリー「エンジン始動時に「今日もがんばりましょう」とかそういう感じで」

美緒「ふむ……。「待っていたぞ!! さあ、私と一緒に飛ぶぞ!!」というのでもいいのか」

シャーリー「そうそう。少佐の思うように台詞は考えてくれていいですから、自由にやってください」

美緒「そういうことなら、やってみるか。ペリーヌと宮藤に必要とされているなら、遣り甲斐もある」

シャーリー「あぁ。よかったぁ。実はペリーヌから少佐に言って欲しい台詞をもうもらってきてて」

美緒「見せてみろ」

シャーリー「これです」

美緒「……ペリーヌ、今日のお前も魅力的だったぞ。これは?」

シャーリー「それはエンジン停止時用みたいで」

美緒「愛しているなんて台詞もあるが、どこで使うんだ?」

シャーリー「あー、まぁ、録音するだけしてみませんか?」

美緒「そうだな。やってみるか」

ミーナ「あ……あの……」

サーニャ「――すいません。失礼します」

美緒「サーニャか。どうした?」

数日後 格納庫

シャーリー「おーい、ルッキーニー」

ルッキーニ「にゃにー?」

シャーリー「ユニット装着してみてくれ」

ルッキーニ「いいよー」スッ

『よー、ルッキーニか。今日も飛ばしていくぞぉ。いいな?』

ルッキーニ「おぉぉー!! シャーリーの声だぁー!!」

シャーリー「どうだ?」

ルッキーニ「他には!? どんなのがあるの!?」

シャーリー「それは飛んでみてのお楽しみだな」

ルッキーニ「よーし!! 今すぐとぶー!!」

シャーリー「んじゃ、ロックをはずし――」

ミーナ「ルッキーニさん! シャーリーさん!! すぐにブリーフィングルームへ!!」

ルッキーニ「にゃ? 中佐?」

シャーリー「ネウロイか! 了解! 行くぞ、ルッキーニ!!」

美緒「――では、先ほど伝えた通りだ。エイラ、サーニャ、ミーナ、シャーリー、ハルトマンは基地待機」

エイラ「了解」

サーニャ「はい」

美緒「残りの者は急げ!!」

ルッキーニ「うにゃぁー!! 早速ためせるぅー!!」

シャーリー「ルッキーニ、はしゃいでくれるのは嬉しいけど、羽目は外すな」

ルッキーニ「だーいじょーぶぅ!」スッ

『おっ。ルッキーニだな。一緒に飛ぶか』

ルッキーニ「あいっ!! いこ、シャーリー!!」

シャーリー「……大丈夫か」

芳佳「いこっ!! リーネちゃん!!」

リーネ「うんっ!」スッ

『リーネちゃん! 今日も一緒にがんばろうね!』

リーネ「がんばるよ!! 芳佳ちゃん!!!」

芳佳「……」

ペリーヌ「……いきますわ!!」スッ

『ペリーヌ。待っていたぞ。さ、私と共に空へ』

ペリーヌ「は、はぁい!! いきますわぁ!!」

美緒「やれやれ……」スッ

『坂本さん! 足がキレイですね!!』

美緒「準備はいいか!!」

バルクホルン「……少佐、今のは」

美緒「なんだ?」

バルクホルン「いや……なんでもない。急ごう!!」

美緒「全員、私に続け!!」

芳佳「了解!!」

リーネ「はい!!」ブゥゥゥン!!

『リーネちゃん、気をつけて飛んでね』

ルッキーニ「いっくぞぉー!!」

『ルッキーニ、がんばれよ!』

空中

美緒「コアが見えた!! バルクホルン!!」

バルクホルン「これで終わりだ!!」

芳佳「――やったぁ!!」

美緒「よし、ネウロイを撃墜。帰投するぞ」

『坂本さん、魔法力が低下しています。気をつけてください』

美緒「分かっている。心配するな、宮藤」

リーネ「はぁ……無事に倒せてよかったぁ……」

『リーネちゃん、疲れてるみたいだよ? 無理しないでね』

芳佳「……」

ルッキーニ「ぃやったぁー!!」

『ルッキーニ、かなり頑張ったみたいだな。そろそろ戻ったほうがいいぞ』

ルッキーニ「にひぃ。ありがとー」

『ペリーヌ。よくやってくれた。愛しているぞ』

ペリーヌ「あぁ!! そんな!! もったないお言葉ぁ!!」

格納庫

リーネ「ふぅ……」

『リーネちゃん、またね。おやすみ』

リーネ「うん」

芳佳「リーネちゃん、怪我はない?」

リーネ「大丈夫だよ」

芳佳「よかったぁ」

美緒「ふむ」

『坂本さん、大活躍でしたね。ゆっくり休んでくださいね』

美緒「……ふっ」

バルクホルン「……」ギリッ

美緒「どうした、バルクホルン?」

バルクホルン「いや……なんでもない」

シャーリー「ルッキーニ、どうだった?」

ルッキーニ「さいこー!! いつでもシャーリーの声がきけりゅー!!」

ペリーヌ「はぁ……少佐のお声が……股下から聞こえてくるなんて……なんという背徳感……」

『ペリーヌ。行ってしまうのか。寂しくなるな。また共に飛ぶ時間を楽しみにしている』

ペリーヌ「少佐ぁ……あぁ……すぐにまた戻ってきますわぁ……」スリスリ

エイラ「なんか、奇妙は光景だなぁ」

サーニャ「あの……シャーリーさん」

シャーリー「ん? ああ、あれはちゃんと組み込んでおいたから」

サーニャ「無理を言ってすいません」

シャーリー「なんてことないよ」

エイラ「なんだ? なんの話だ?」

サーニャ「エイラ、こっちに来て」

エイラ「な、なんだよー」

サーニャ「装着してみて」

エイラ「私のユニットじゃないか。なにかあるのか?」スッ

『――エイラ。おはよう。待っていたわ』

エイラ「……」

サーニャ「どう?」

エイラ「うわぁぁぁ!!! サーニャぁぁぁぁ!!!」ギュッ

サーニャ「これでいい?」

エイラ「ありがとう!! サーニャぁぁぁ!!! うわぁぁぁ!!!」

シャーリー「ははっ。こんなに喜んでくれるなら、嬉しいな」

芳佳「……」

シャーリー「宮藤、どうかしたか?」

芳佳「え? あ、なんでもないです」

シャーリー「そうか」

エーリカ「私もためしにぃ」スッ

『エーリカおねえちゃん! 今日もがんばろうねっ!』

エーリカ「おぉ。いい感じの破壊力だなぁ」

バルクホルン「……」

エーリカ「トゥルーデぇ。どうどう? 宮藤ボイスのユニットになったー」

バルクホルン「――シャーリー!!!」

シャーリー「な、なんだよ?」

バルクホルン「……ぃ」

シャーリー「え?」

バルクホルン「だ、だから……ぃ……」

シャーリー「なんだって?」

バルクホルン「……ほ……ぃ……んだ」

シャーリー「はっきり言えって」

バルクホルン「わたし……も……ほしい……」

シャーリー「はぁ? 何が欲しいんだぁ?」

バルクホルン「い、いじわる……するな……!」

シャーリー「バルクホルンらしくないな。ちゃんと言ってくれないと困る」

バルクホルン「シャーリー……!! 分かっているだろう……!!」

シャーリー「音声キット、いるのか?」

バルクホルン「……うん」

シャーリー「はいはい。それじゃ、あとで組み込んでおくよ」

美緒「そういえば、宮藤」

芳佳「なんですか?」

美緒「例の音声キット、宮藤にはついていないのか?」

芳佳「はい。まだ、誰のにするか迷ってて」

美緒「そうなのか」

芳佳「坂本さんのも魅力的なんですけど、リーネちゃんもいいなぁって……」

美緒「ま、ゆっくり選べ。これは個人の嗜好によるからな」

芳佳「はい」

ペリーヌ「少佐ぁ……あぁ……少佐ぁ……」スリスリ

美緒「ペリーヌ、私はこっちだ」

ペリーヌ「あぁ!! 少佐!! あの!! ありがとうございます!!」

美緒「どうでもいいが、ユニットに愛しているといわれて嬉しいのか?」

ペリーヌ「は、はい」

美緒「ペリーヌはストライカーユニットが好きなんだな。はっはっはっは」

リーネ「ペリーヌさんは普段からユニットを労わっているから、そうなりますね」

シャーリー「ふんふふーん」カチャカチャ

シャーリー「おーし。でーきた。これでいいか」

芳佳「シャーリーさん」

シャーリー「お。宮藤か。そういえばちゃんとお礼してなかったな」

芳佳「え?」

シャーリー「ほら、宮藤だけ録音する台詞量が多かっただろ? 少佐用、リーネ用、ハルトマン用、サーニャ用、あと念のために用意したバルクホルン用でさ」

芳佳「いえ。それはいいんですけど」

シャーリー「みんな大満足してたし、いやぁー作ってよかったよ。合成音声の人気が全くないのが少し寂しいけど」

芳佳「……シャーリーさん」

シャーリー「どうした?」

芳佳「私、合成音声のキットでいいです」

シャーリー「え? 折角、少佐とリーネがお前用に録音してくれたのに?」

芳佳「ごめんなさい」

シャーリー「そ、そうか。なにか気に入らないところでもあったか?」

芳佳「いえ。なんだか、私のユニットから坂本さんやリーネちゃんの声が聞こえてくるのは違和感があるなって思って。それだけなんです」

シャーリー「ふぅん。そっか。よし、わかった。それじゃあ宮藤のユニットにはシャーロット印の音声キットを組み込んでおくから」

芳佳「ありがとうございます」

シャーリー「いいよ」

芳佳「それじゃあ、失礼します」

シャーリー「おう。またあとでなー」

芳佳「はい!!」

シャーリー「……」

シャーリー(宮藤、元気なかったな……)

シャーリー「気のせいならいいんだけど」

エイラ「うわぁぁぁぁ!!! サーニャが愛してるっていってくれるぅぅぅぅ!!!! スゴイゾ、これぇ!!!」

シャーリー「な……まだやってたのか?」

エイラ「サーニャぁぁぁ!!」

『エイラ、大好きよ。だから、ユニットを外さないで。お願い』

エイラ「わかったぁ!! サーニャ! 外すもんかぁ!! このまま食堂にいくぞぉ!!」ガシャンガシャン

シャーリー「エイラ!! 落ち着け!!」

エイラ「なんだ!?」

シャーリー「外せって。それはサーニャじゃないから」

エイラ「あ、そうか。そうだな。これはサーニャじゃないから――」

『エイラ、私と一緒にいてくれないの……? いじわる』

エイラ「やっぱり外すなんて……ムリダナっ」ガシャンガシャン

シャーリー「ダメだ。外せ」

エイラ「だけど」

シャーリー「いいか、エイラ。これはサーニャじゃない。お前のストライカーユニットだ。サーニャは向こうにいるだろ?」

エイラ「ダナ」

シャーリー「ほら、外そうな」

エイラ「わかった」

『エイラ……いっちゃうの……?』

エイラ「ごめんっ!! サーニャ!!」スッ

シャーリー「よし。よくやった」

エイラ「うぅ……サーニャ……また装着するかんなぁ……まっててくれぇ……」

シャーリー「エイラ、音声キット外しておくか?」

エイラ「それは嫌だ」

シャーリー「そうは言っても」

ミーナ「シャーリーさん」

シャーリー「中佐。なんですか?」

ミーナ「……音声キットなのだけど」

シャーリー「ああ。中佐のもばっちり組み込んでおいたから、もう使えるはず――」

ミーナ「ありがとう!」

シャーリー「あ、中佐!?」

エイラ「それにしても嬉しい反面、怖いな」

シャーリー「怖い?」

エイラ「戦闘中、ずっとサーニャに応援されるんだろ、これぇ。集中できるか不安ダ」

シャーリー「魔法力が低下していくたびに「がんばれ」って言われるようになってるからな。やっぱりキットは外すか?」

エイラ「いや。それは遠慮するんだナ」

シャーリー「なんだよ、はっきりしろって」

ブリーフィングルーム

ミーナ「今回のネウロイの侵攻コースは……こうね」

美緒「また随分と遠回りだな。どちらにせよ、我々の警戒網には引っかかるが」

ミーナ「何か意図があるとしか思えないわ」

美緒「そうだな」

ミーナ「……」

美緒「……どうした?」

ミーナ「……美緒」

美緒「ん?」

ミーナ「あ、ありがとう。その、色々と収録してくれて」

美緒「ミーナの要望では断れないからな」

ミーナ「ふふ……」

美緒「ど、どうした? 急に笑い出して」

ミーナ「え? あ、ごめんなさい。でも……ふふ……」

美緒「ペリーヌもそうだが、どうにも様子がおかしくなっているものがチラホラ見受けられるな」

食堂

エーリカ「ねー、いいだろー! トゥルーデぇ」

バルクホルン「断る。何故、私がお前のためにそんな恥ずかしい台詞を言わなくてはならないんだ」

エーリカ「いーじゃん、いーじゃん!! トゥルーデの声でユニットが喋ったら、絶対に面白いからさー!!」

バルクホルン「そんな目的で頼むなぁ!!」

エーリカ「宮藤にトゥルーデ専用の声を録音するように頼んだのは誰か知ってるのか?」

バルクホルン「え……。まさか……」

エーリカ「そう……実はね……シャーリーなんだ」

バルクホルン「……」

エーリカ「だからぁ、トゥルーデも録音しよー!!」

バルクホルン「うるさい!!」

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん。あのね、戦闘中に芳佳ちゃんの声がずっと私を応援してくれるから、とっても落ち着いて飛べたの」

芳佳「え? あ、うん。リーネちゃんの力になれたんなら、嬉しいよ」

リーネ「ありがとう、芳佳ちゃんっ」

翌日 格納庫

ルッキーニ「にゃー」スッ

『ルッキーニ!! いくぞぉ!!』

ルッキーニ「あいっ!!」ブゥゥゥン!!!

シャーリー「おーい。ルッキーニー、遠くにいくなよー」

ルッキーニ「わかってるよー!!」

シャーリー「ルッキーニはすっかり気に入ったみたいだな。音声キット」

バルクホルン「……おい」

シャーリー「おぉ!? なんだよ、いたのか」

バルクホルン「……あ……と……」

シャーリー「なに?」

バルクホルン「ろ、録音……したいのだが……」

シャーリー「は?」

バルクホルン「せ、台詞は昨晩、寝ずに考えた。時間は取らせない。ほら、録音するぞ。い、いそげっ」

シャーリー「これは……ハルトマンと宮藤用か? あー、バルクホルン。やる気になってるところ悪いんだけど……」

バルクホルン「宮藤は合成音声を使用しているのか?」

シャーリー「だから、今更録音しても宮藤は使ってくれないと思うぞ」

バルクホルン「数日前は人の声を使うことに大喜びしていたが」

シャーリー「そうだなんだよ。完成してから、急にいらないっていってさ。ま、あたしとしては合成音声を使ってくれて嬉しいんだけどさ」

バルクホルン「そうか……。ちょっと待っていてくれ」

シャーリー「あ、おい。バルクホルン、どこに……」


芳佳「……」スッ

『マホウリョク カクニン ミヤフジヨシカ ヲ マスター ト ニンテイ』

芳佳「……」スッ

『オツカレサマデシタ マスター オヤスミナ――』

芳佳「……」スッ

『マホウリョク カクニン ミヤフジヨシカ ヲ――』

芳佳「はぁ……」スッ

『オツカレサマデシタ マスター』

バルクホルン「宮藤、ストライカーユニットで遊ぶのは感心しないぞ」

芳佳「あ、バルクホルンさん。すいません」

バルクホルン「その、お前が私のために声を収録してくれたそうだから、お礼に私もお前のために録音しようと思っている」

芳佳「え? そうですか。あの、嬉しいんですけど、私は……」

バルクホルン「人の声を使うのは嫌か?」

芳佳「……」

バルクホルン「宮藤?」

芳佳「あの、バルクホルンさん」

バルクホルン「なんだ?」

芳佳「ユニット装着してみてくれませんか?」

バルクホルン「私のユニットをか?」

芳佳「はい。お願いします」

バルクホルン「わかった。いいだろう」

芳佳「……」

バルクホルン「――では、いくぞ」スッ

『トゥルーデおねえちゃん、待ってたよ!! だーいすきっ!』

芳佳「……」

バルクホルン「……」

『おねえちゃん、魔法力は十分だよ! 一緒に飛ぼう!!』

芳佳「……」

バルクホルン「宮藤。ここまで感情を込めてくれるとは、その、嬉しいぞ……うん」

芳佳「嬉しいんですか?」

バルクホルン「あ、あたりまえだ!!」

芳佳「……失礼しますっ」

バルクホルン「み、宮藤!?」

『おねえちゃん! いつでもいけるよっ!!』

バルクホルン「どうしたんだ……」

シャーリー「おい、宮藤と何話したんだ? 宮藤のやつ、走ってどっかに言ったけど」

バルクホルン「わからん。だが、何かあったようだな」

『おねえちゃん、だーいすきっ! 一緒に飛ぼうよ!』

シャーリー「改めて聞いたけど、宮藤はいい声だすよなぁ」

夜 格納庫

サーニャ「……」スッ

『サーニャちゃん、今日もがんばろうね』

サーニャ「うんっ」

『ペリーヌ!! よく来たな!! はっはっはっは!!!』

サーニャ「……!?」ビクッ

ペリーヌ「あぁ……しょうさぁ……」

『ペリーヌ、魔法力は万全のようだな。やはり、お前は美しい』

ペリーヌ「そんなこと、ありませんわぁ……はぁ……」

サーニャ「……」

ペリーヌ「は!? な、なんですの!!」

サーニャ「いえ、なんでもありません。夜間哨戒に行ってきます」

ペリーヌ「ど、どうぞ」

サーニャ「……」ブゥゥゥゥン

『サーニャちゃん、気をつけてね。現在の速度は――』

空中

サーニャ「……」

『サーニャちゃん、まだまだ元気だね』

サーニャ「うん」

『サーニャちゃん、がんばってね。いつでも応援してるよっ』

サーニャ「うん……」

『サーニャちゃん――』

サーニャ「……あ。何か、来る」

美緒『サーニャ、聞こえるか』

サーニャ「はい、聞こえます。今、ネウロイらしき飛行物体を感知しました」

美緒『こちらでも捉えた。すぐに応援に向かう。無理だけはするな」

サーニャ「了解」

サーニャ「ネウロイ……」

『大丈夫だよ!! サーニャちゃんなら、絶対に!!』

サーニャ「ありがとう。芳佳ちゃん」

翌日 食堂

エーリカ「昨日のネウロイ、変なところからきたんだって?」

バルクホルン「みたいだな。巣からやってきたのは間違いないが、かなり迂回するコースをとっているようだ」

エーリカ「気味悪いなぁ。サーニャ、何か気づいたことでもあった?」

サーニャ「いえ。分かりません」

エーリカ「そっかぁ」

芳佳「サーニャちゃん、昨日は大変だったね。怖くなかった?」

サーニャ「平気よ。芳佳ちゃんがずっと傍にいてくれたから」

芳佳「あぁ、うん……ありがとう」

サーニャ「夜の空では芳佳ちゃんの声がとても励みになるから」

芳佳「そ、そっか……」

サーニャ「芳佳ちゃん?」

芳佳「あはは。照れちゃうね」

サーニャ「うふふ」

エーリカ「……?」

格納庫

エイラ「あぁ……サーニャ……サーニャ……」スリスリ

ペリーヌ「坂本少佐ぁ……」

ミーナ「……」スッ

『ミーナ。待っていたぞ』

ミーナ「ありがとう」

『お前の傍にずっといてやる。私は死んだりしない』

ミーナ「……約束よ」

『約束だ』

ミーナ「ふふっ」

シャーリー「中佐ぁ。何も受け答えしなくても、それ一つの台詞ですから」

ミーナ「いいんですっ」

シャーリー「まぁ、気に入ってくれているならそれでいいんですけど」

芳佳「……シャーリーさん。お話が」

シャーリー「話? いいよ。向こうに行くか」

滑走路

シャーリー「で、どうした?」

芳佳「私、おかしいんです」

シャーリー「何が?」

芳佳「私の声がするユニットをつけて喜んでいるリーネちゃんやサーニャちゃん、坂本さん、バルクホルンさんを見えていると……その……」

シャーリー「ん?」

芳佳「すごく、もやもやするんです!!」

シャーリー「は、はぁ?」

芳佳「なんだか……その……みんな私じゃない私に感謝しているような……気がしてきて……」

シャーリー「宮藤、お前……」

芳佳「シャーリーさん!! 私、変なんです!! どうしたらいいですか!?」

シャーリー「ユニットにやきもち焼いてるのか?」

芳佳「……はい」

シャーリー「あー……そういうことだったのか……」

芳佳「でも、みんな本当に嬉しそうに、私の声がするユニットを使ってくれているから、私自身喜ばなきゃって思っても、リーネちゃんをユニットにとられた気がして……」

>>135
シャーリー「ユニットにやきもち焼いてるのか?」

シャーリー「ユニットにやきもち妬いてるのか?」

シャーリー「難しいな。今更、音声キットを外そうにも……」


リーネ「芳佳ちゃーん!!」ブゥゥゥン

『リーネちゃーん!!』


シャーリー「あれじゃあ、無理だろうしな」

芳佳「ですよね……」

シャーリー「宮藤……」

芳佳「ごめんなさい。やっぱり、忘れてください。私がおかしいだけなんですよね。こんなこと思っちゃうなんて」

シャーリー「……」

芳佳「ごめんなさい。話を聞いてくれて、ありがとうござました」

シャーリー「あ、宮藤!!」

エイラ「サーニャぁ……サーニャぁ……」ブゥゥゥン

『エイラ、愛してるわ。このまま遠くまで行きましょう。誰もこない、二人きりになれる遠い場所まで』

エイラ「うん。サーニャがそうしたいならぁ、いこう……ずっと遠くまで……えへへへ……」

シャーリー「エ、エイラ!! 待て!!! どこにいく気だ!!! 戻って来い!!!」

エイラ「シャーリー、助かった。あのままだと遠くまで行っちゃうところだった」

シャーリー「気をつけろよ」

エイラ「わるい。サーニャの声が私の全身を駆け巡るんだ」

シャーリー「エイラ。サーニャが嫉妬してないか、それ?」

エイラ「え?」

シャーリー「ユニットの声にばかりかまけていて、サーニャはなんとも思ってないのか?」

エイラ「あ……そうだな……」

シャーリー「ちょっとサーニャと話してきてくれないか?」

エイラ「わかった。――サーニャー」

シャーリー「嫉妬かぁ……」

ルッキーニ「ぅにゃぁー!!」ブゥゥゥン

シャーリー「……」

ルッキーニ「シャーリー!! いっくよぉー!!」

『まだまだ絶好調だな!! ルッキーニ!!』

シャーリー「嫉妬はしないな。あたし、変なのか……」

エイラ「サーニャは私のためを思ってあの声をいれてくれたんだよな?」

サーニャ「そうよ」

エイラ「なら、そのジェラシーを感じたりは、してないか? 私がユニットと仲良くしてるときに」

サーニャ「ううん。私の声でエイラが喜んでいるなら、私も嬉しいわ」

エイラ「だ、だよな。よかったぁ」

エーリカ「……」

バルクホルン「どうした、ハルトマン。音声キットを試してみるんじゃないのか?」

エーリカ「するするー。――とぉー」スッ

『遅いぞ!! ハルトマン!! 何時だと思っている!!!』

エーリカ「おぉ。いいね、トゥルーデみたい」

バルクホルン「当たり前だ。私の声なのだからな」

エーリカ「よし。もういいや」スッ

『エーリカ。おやすみ』

エーリカ「うわ、きもちわるっ」

バルクホルン「お前がやれと言ったんだろうが!!!! なんだその言い草はぁ!!!」

食堂

芳佳「はぁ……」

リーネ「芳佳ちゃん?」

芳佳「あ、リーネちゃん」

リーネ「どうしたの?」

芳佳「……ううん。なんでもないよ」

リーネ「嘘、だよね?」

芳佳「え……」

リーネ「私にも話せないこと、かな?」

芳佳「リーネちゃん……あのね……」

リーネ「うん?」

美緒「――宮藤、リーネ。格納庫に急げ」

リーネ「坂本少佐?」

芳佳「ど、どうしたんですか?」

美緒「ネウロイだ」

格納庫

ミーナ「では、私とハルトマン中尉、バルクホルン大尉が先行します」

エーリカ「了解」スッ

『いくぞ!! ハルトマン!! 気合をいれろぉ!!』

エーリカ「おぉー!! いくよ!! トゥルーデぇ!!」

バルクホルン「やめろ、恥ずかしい」スッ

『私の大好きなおねえちゃん!! 出番だね!! 今日もかっこいいよ!!』

芳佳「……」

美緒「よし。シャーリー、ルッキーニも準備しろ。私とともに出るぞ」

シャーリー「了解っ」スッ

『マホウリョク カクニン』

ルッキーニ「いっくよぉ!!」

『行くぞ!! ルッキーニぃ!!』

美緒「よし!! いつでもいけるぞ!!」

『美緒! 無茶だけはしないでね!! 約束よ!!』

ペリーヌ「少佐……お気をつけて……」

エイラ「なんで、私たちまで呼んだんだ?」

サーニャ「陽動かもしれないからって言ってたけど」

エイラ「陽動か……」

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん?」

芳佳「え?」

ペリーヌ「どうかしまして?」

芳佳「あの。音声キットなんだけど、みんなはやっぱり嬉しいの?」

ペリーヌ「そ、それは勿論ですわ。少佐の声がいつでも聴けるのですから」

エイラ「サーニャの声はキレイだぞ」

芳佳「私、ユニットが喋ることで愛着が沸くって聞いたとき、もっと違うことを想像してたの」

エイラ「違うこと?」

芳佳「新しい仲間ができた、みたいな感じになるのかなって。でも、実際はただ好きな人の声を聞いているだけで、ユニットのことなんてあまり意識してないというか……」

ペリーヌ「そのようなことは……」

芳佳「最近のペリーヌさん、見てる限りだとユニットに敬意を払っているようには……見えないですし……」

ペリーヌ「な……!!」

芳佳「リーネちゃんも、音声キットが組み込む前は名前を決めようって言ってたのに、今は私の名前を呼ぶだけだし」

リーネ「それは……」

芳佳「なんだか、嫌なの。リーネちゃんが私の声がするユニットで飛んでいるのが」

リーネ「芳佳ちゃん、どうして? 私は芳佳ちゃんがずっと傍にいてくれるみたいで嬉しいのに」

芳佳「だから……」

エイラ「あー。分かった。そもそもの目的からズレてるから宮藤は怒ってるわけだな」

芳佳「べ、別に怒っては……」

エイラ「リーネが宮藤ボイスのユニットと楽しくしているのが面白くないんだろ? 本来なら装着者がユニットを仲間として扱ってなきゃいけないのに。完璧に玩具だもんな」

芳佳「……」

エイラ「シャーリーが音声キットを開発した目的ってユニットを大切にしようってことなのに、ただの音声再生機みたいな扱いになってるし」

リーネ「うん。芳佳ちゃんの声が聞こえるからって、無理にエンジンを回してた……」

ペリーヌ「わ、わたくしも、昼夜関係なくエンジンを始動させていましたわね」

サーニャ「私も、同じ」

エイラ「私もサーニャの声がするからって、ぶんぶん回してたな」

ペリーヌ「そういえば、音声キットが組み込まれてからはユニットに声をかけてはいませんでしたわね」

芳佳「エイラさんの言う通りかも。私、みんなに怒ってた……。嫉妬とかもあったと思うけど。きっと、怒ってたんだ」

リーネ「芳佳ちゃん……」

芳佳「リーネちゃん。ストライカーユニットは、あんな風に使われたくないはずだよ」

リーネ「うん……そう、だね……」

芳佳「ストライカーユニットは宮藤芳佳じゃないよ。スピットファイアでしょ?」

リーネ「うん」

サーニャ「……」タタタッ

エイラ「サーニャ? どうした?」

サーニャ「音声キット。外すわ」

ペリーヌ「サーニャさん」

サーニャ「私のことを守ってくれるのは、芳佳ちゃんの声じゃない。この子、自身だから」ガチャガチャ

エイラ「そうだな。私も外すか」

ペリーヌ「わたくしも外しますわっ」

リーネ「私も外さなきゃ」

芳佳「リーネちゃん」

リーネ「芳佳ちゃんと一緒に飛んでるような気がして、本当に楽しくて、嬉しくて、戦闘でも落ち着いていられたけど……」

リーネ「でも、本当はユニットが頑張ってくれていたからなんだよね」

芳佳「うん」

リーネ「ごめんね……スピットファイア……」

ペリーヌ「きっと拗ねているでしょうね。あなたのことをずっと忘れていた気がしますわ」

エイラ「悪かったなぁ。お前はサーニャじゃないもんな」

サーニャ「……ごめんなさい」

芳佳「私も反省しなきゃ。声がするから愛着がわくなんてことはない。音声がつくからって仲間になるんじゃない」

芳佳「ストライカーユニットは私たちのずっと前から仲間なんだから」

サーニャ「――あ」

エイラ「サーニャ、どうした?」

サーニャ「来る……」

ペリーヌ「な、なにが来ますの?」

空中

ミーナ「コアがなかった……やはり、陽動……!!」

美緒「聞こえるか!!」

サーニャ『はい。ネウロイの気配を感知しました。迎え撃ちます』

エーリカ「大丈夫か?」

エイラ『心配すんな。こっちは味方が10人もいるからな』

エーリカ「なにそれ、怖い」

バルクホルン「私たちもそちらへ向かう!! それまで持ちこたえろ!!」

リーネ『了解!』

シャーリー「よし、いそぐぞ!!」

ルッキーニ「急がなきゃ!!」

バルクホルン「ああ!!」

『おねえちゃん、魔法力が低下してて危ないよ? 無理はしないで』

バルクホルン「黙れ!! 今は無理をしなければ仲間を助けられる状況ではないんだ!! いくぞ!!」

エーリカ「おーし! トゥルーデにつづけぇー」

>>160
バルクホルン「黙れ!! 今は無理をしなければ仲間を助けられる状況ではないんだ!! いくぞ!!」

バルクホルン「黙れ!! 今は無理をしなければ仲間を助けられないんだ!! いくぞ!!」

シャーリー「――いたぞ!!」

ルッキーニ「芳佳ぁー!!」

芳佳「ルッキーニちゃん!!」

ルッキーニ「大丈夫だったぁ!?」

芳佳「うん、もう倒したよ」

リーネ「えへへ」

ペリーヌ「これぐらい、余裕ですわ」

エイラ「まぁなぁー」

サーニャ「うん。みんながいたから、倒せた」

バルクホルン「よかった……」

『おねえちゃん! もう休んだほういいよ!! 落ちちゃうよ!!』

バルクホルン「そうだな。宮藤もこう言っているし、戻るか」

芳佳「……」

エーリカ「みやふじぃ。なに、悔しそうにトゥルーデをみてるんだ?」

芳佳「え? べ、別に……」

バルクホルン「どうかしたのか?」

ミーナ「早く帰投しましょう。みんな限界みたいだもの」

『ミーナ。早く戻れ。このままでは私が涙を流す結果になりかねないぞ』

ミーナ「分かっているわ」

エーリカ「みーやーふーじー」

芳佳「な、なんですか?」

エーリカ「トゥルーデが少し離れちゃった気がしてるんだろ?」

芳佳「ハ、ハルトマンさん……!!」

エーリカ「あのユニットがある限り、トゥルーデは宮藤のことを気にかけてはくれないかもね」

芳佳「そ、そんな!!」

エーリカ「だからさ――」

シャーリー「あーハラへったぁ」

リーネ「あの、シャーリーさん。音声キットのことなんですけど」

シャーリー「ん? 不具合でもあったか?」

サーニャ「私たち、勝手に外しました」

シャーリー「ふぅーん」

エイラ「それだけか? 折角、シャーリーが作ったものだったのに」

ペリーヌ「あの、よろしかったのですか?」

シャーリー「あたしは音声キットでユニットに愛着を持ってもらおうって思って組み込んだだけだからさ、いらないっていうなら捨ててもらっても構わないさ」

リーネ「でも……」

シャーリー「声なんて聞こえなくても愛着ぐらいもうとっくにあるってことじゃないのか?」

サーニャ「実はそうなんです。それに気がつきました」

ペリーヌ「それどころか、音声キットをつけてから雑に扱っていたようで」

シャーリー「そっか。なら、外して正解だな」

ルッキーニ「えぇー? なんでー。こんなにたのしいのにー」

『ルッキーニ、そろそろ戻れよ。みんなが心配するぞ』

ルッキーニ「ユニットがシャーリーみたいにあたしを心配してくれてるのが良いんだよぉ?」

シャーリー「あははは。そうかそうか。ルッキーニは可愛いなぁ」

ルッキーニ「にひぃ。でしょー?」

ペリーヌ「ルッキーニさんは始めから、そういう捉えかたをしていたのですか……。なるほど。素敵ですわね」

美緒「ユニットが心配をか……」

『美緒、約束は守って! お願いだから』

美緒「……分かっているさ。なぁ、ミーナ」

ミーナ「ええ……」

エイラ「でも、サーニャの声が聞こえていたのはすごくよかったのになぁ」

サーニャ「私の声ならいつでも聴けるわ」

エイラ「ま、そうだな」

サーニャ「ふふっ」

芳佳「ハ、ハルトマンさん……本当にやるんですか……?」

エーリカ「宮藤と同じ声を出す空飛ぶ鉄の塊にトゥルーデを取られていいなら、そうすれば?」

バルクホルン「さて、早く戻って風呂にでも――」

芳佳「おねえちゃん!!」

バルクホルン「……」ピクッ

芳佳「私のほうがユニットなんかよりもおねえちゃんのこと心配してるから!!! 無理しないでね!! おねえちゃん!!」

バルクホルン「……」

格納庫

美緒「皆、よくやってくれたな。ゆっくり休んでくれ。サーニャも今日は夜間哨戒はしなくてもいい」

サーニャ「わかりました」

エイラ「やったなぁ、今夜は一緒にいられるぞ」

サーニャ「ええ」

シャーリー「ハルトマン、なんであんな風に煽ったんだ?」

エーリカ「んー? 宮藤にとってリーネは勿論、トゥルーデだって大きな存在になってるからね」

シャーリー「存在……」

エーリカ「なんだかんだ一番気にかけてくれているお姉さんは誰なのか、宮藤だってわかってるはず」

シャーリー「バルクホルンがユニットの声に反応していたことが気に食わなかった。ってことか」

エーリカ「多分ね」

シャーリー「でも、あれどうするんだ?」

バルクホルン「……」ギュゥゥゥ

芳佳「い、いきが……!! バルク、ホルンさん……いきが……でき……!!」

エーリカ「嫉妬した宮藤の負けだし、放っておいてもいいと思うよ。うん」

夜 格納庫

シャーリー「仲間のためならユニットにまで無茶をさせるんじゃ、愛着なんて関係ないか。きっとユニットたちも仲間を助けるためなら、多少は無茶なことしても許してくれるよな」

シャーリー「あーあ……音声認識装置、もう少しで出来上がったんだけどなぁ」

芳佳「シャーリーさん」

シャーリー「ん? 宮藤、どうやってバルクホルンから逃げてきたんだ?」

芳佳「ハルトマンさんに協力してもらいました」

シャーリー「あははは。早く戻ったほうがいいんじゃないか? ハルトマンが可愛そうだ」

芳佳「シャーリーさん。音声キット、必ず完成させてください」

シャーリー「なんで?」

芳佳「シャーリーさんだって、ユニットの声が聞こえるようになると面白いって言ってたじゃないですか」

シャーリー「そうだけど。もう宮藤たちには必要じゃないだろ?」

芳佳「そんなことないですよ。好きな人の声が聞こえたから、その愛着がもてなかっただけで」

シャーリー「なるほど。もっと複雑な受け答えができるようにしろってことか。生意気だな、宮藤ぃ」

芳佳「そ、そうじゃないですってばぁ!! あの、私はその合成音声ならユニットが本当に喋っているみたいで、いいかなって……」

シャーリー「はいはい。分かった。それじゃ、やってみるかぁ。音声認識装置の開発を」

数日後 格納庫

シャーリー「うーん……」

エイラ「シャーリー? なに唸ってんだ?」

シャーリー「エイラ、ちょっとユニットを装着してくれないか?」

エイラ「いいぞ」スッ

『――エイラさん。こんにちは』

エイラ「お、おぉ? こ、こんにちは」

『今日は訓練ですか?』

エイラ「いや、散歩してただけだ」

『サーニャさんは一緒じゃないんですか?』

エイラ「いや、サーニャは寝てる」

『そうですか』

エイラ「……シャーリー、なんだこれ?」

シャーリー「音声認識できるようになった、ストライカーユニットだ」

エイラ「すごいな。おい。ちっちゃい人間がユニットの中にいるみたいダ」

シャーリー「撫でてみてくれ」

エイラ「よ、よし」ナデナデ

『エッチ』

エイラ「わぁ! ごめん!!」

『エイラさんなんて、嫌いっ』

エイラ「うわぁぁ……きらわれたぁ……」

『なんて、嘘ですよ。私、エイラさんのこと大好きですっ』

エイラ「よかったぁ……」

シャーリー「どうだ、エイラ。これ欲しいか?」

エイラ「……正直、いらないな。戦闘中も話しかけられそうだ」

『私、指示も出せるんですよ。あぶないっ、とか、右だーとか』

エイラ「やめろぉ」

シャーリー「やっぱりここまで人間的だとダメか」

エイラ「ところで、この声……誰だ?」

シャーリー「ああ。おーい」

エイラ「え?」

ミーナ「――私よ」

エイラ「な、なんで……」

シャーリー「中佐の声ならみんなからも不満はでないと思って」

エイラ「合成音声はどうしたんだ!?」

シャーリー「中佐の声をベースにした合成音声さ。それはそうとやっぱりダメですね。怖すぎるみたいで」

ミーナ「そう。シャーリーさんの音声キットは注目を浴びそうなのに」

シャーリー「また一から作り直すかぁ」

エイラ「中佐より、サーニャの声のほうがいいんじゃないか?」

ミーナ「どういう意味かしら?」

エイラ「いや、えっと……」

シャーリー「宮藤たちにはもうしばらく、今のままで我慢してもらうか」

ミーナ「私の声、かわいかったでしょう?」

エイラ「は、はい」

ペリーヌ「今日もお元気ですか?」

『ペリーヌサマ オハヨウゴザイマス』

ペリーヌ「午後からは訓練がありますから、よろしくお願いしますわね」

『カシコマリマシタ』

ペリーヌ「……合成音声もいいものですわね」

リーネ「なんだか、可愛く思えてきちゃいました」

ペリーヌ「そうね」

芳佳「おーい」スッ

『ヨシカサン オハヨウゴザイマス』

芳佳「今日も一緒に頑張ろうね」

『ヨロシクオネガイシマス』

リーネ「そろそろ名前も決めてあげたほうがいいかな?」

ペリーヌ「そうですわね。ここまで甲斐甲斐しく受け答えをしてくれて、わたくしたちに戦う力をくれるのですから。それぐらいあってもいいですわよね」

芳佳「うん、そうだね。今から名前を決めよう! 私たちの大事な仲間の名前を!」


END

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月20日 (金) 04:57:20   ID: eJy-SYqe

宮藤ハーレムは原作だぞ
リーネ、バルクホルン、エーリカ

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