京子「一緒にいようよ」(91)

京子「ねえ、結衣知らない?」

いつもの昼休みのことだった。
見慣れた結衣の姿が教室にない。

千歳「さあ、いーひんの?」

綾乃「わ、私が一緒に探してあげてもいいけど……!」

京子「うん、綾乃ありがとっ!」

綾乃「べ、別にお礼言われるほどでも!」カアッ

千歳「ふふっ」ダバー

京子「けどいいや」

綾乃「えっ」

京子「自分で探してみる」

ダダダッ

綾乃「……行っちゃった」

千歳「なんや急いでるみたいやなあ」

綾乃「うぅ……」ズーン

千歳「まあまあ、綾乃ちゃん」ナデナデ

アッカリ~ン

期待


京子「ねえねえ、結衣知らない……って知らないよね」

一年生「はあ……」

いない。
どこにもいない。
私は途方にくれて廊下のど真ん中で立ち止まった。一体どこに行ったんだ。

別に、
結衣に用があった?
→No
結衣に言うことがあった?
→No

うん、その他全部Noなわけだけど。
結衣がいないとどうにも落ち着かない。

いいね

わ、わっふる…

ワッホォ

支援

昼休みの最初はいつもどおり結衣と綾乃、千歳で食べていて、それからどうしたっけ。
必死に思い出そうとするものの、何も浮かばない。
あー、確か私が調子乗ってミラクるんの絵をノートに描いてるとき出てった気もしなくはない。

京子「さて、どうしよう」

私は考えをめぐらせた。
この歳納京子にひらめかないことはないわけだが。

1:ちなつちゃんに聞きにいく。
2:西垣ちゃんとこ。
3:綾乃千歳コンビと一緒に探す。
4:生徒会の一年生コンビに訊ねる。
5:千鶴を訪ねて三千里
5:\アッカリーン/

京子「よし、まずはちなつちゃんだな!」

支援

しえん

まあ単純にちなつちゃんをいじりにいきたいだけなわけだけど。
とりあえず、一年生の教室に向かうことにする。

長い廊下を一人歩いていると、隣につい誰かの存在を探してしまう。
その時ちょうど、背後で足音がした。
後ろに結衣が歩いてないかなーなんて思いながら私は振り向く。

京子「あっ!」

ちなつ「げっ!」

京子「さすがちなつちゃん!」

げって言われたのはこの際気にしないでおこう。
一年生の教室まで一人で行かなくてすんだわけだし。

ちなつ「さすがって、なにがですか……」

京子「ちょうどちなつちゃんを探しててさー」

ちなつ「私をですか?またろくなことじゃないんじゃ……」

京子「違うよー、そんなに警戒しないでほしいよちなつちゃん!」

ちなつ「そりゃしますよ。で、なんなんですか?」

京子「結衣知らない?」

ちなつ「結衣先輩っ!?」

おぉ、すごい食いつき。
やっぱりさすがちなつちゃんだ。

京子「うん、いつも教室で本読んでるくせに居なくてさ」

ふむ

支援

ちなつ「トイレなんじゃないですか?」

京子「覗いた」

ちなつ「覗いたってどうやってですか……」

京子「えーっと、下から全部」

ちなつ「変態じゃないですか!」

京子「まあ嘘だけど」

ちなつ「どんな嘘ですかそれ」

京子「でもトイレなはずもないし……」

ちなつ「結衣先輩がいつも行きそうなとこは?図書室とかはどうです?」

京子「あー、なるほど、図書室!」

そういえば結衣、もうすぐ本を返さなきゃとかなんとか言ってたっけ。
なら早速。

ちなつ「京子先輩?」

京子「ちなつちゃん、ありがと、図書室行ってみるよ!」

シェン

しえんた


で、どうして私がこんなに本を持って図書室に向かっているのか。

『図書室行くならこの本とこの本とこの本とこの本とこの本返しに行ってください!
 あと結衣先輩にくれぐれもへんなことしないでくださいよそんなこと許しませんから!
 あぁ、私も探しに行きたいけど先生に呼ばれてるんですよおっ、あの先生どうにかしてやりたい!
 だいたい結衣先輩はきっと京子先輩に愛想つかせて……(長いので以下略)』

とかなんとか。
ちなつちゃんも本当に結衣のことが好きだよなあ。
ちなつちゃんは私のものなのに、ぬう、結衣め。
やっぱり早く探し出さないといけないようだ。

図書室の前に辿り着くと、けれど私は思い切り立ち止まってしまった。
両手一杯本で扉があけられない。

京子「……」

しばらく扉とにらめっこ。
もちろん開くはずもない。仕方無い、ここは蹴り飛ばすしか。
そこで扉を蹴りつけようとしたとき、お約束と言うかなんというか、扉が開いた。

京子「あたっ!」

千鶴「……」

前のめりになって大量の本とともに転んだ私を受け止めることもせずに華麗に避け、
足元に転がった私をつめたい視線で見下ろしているのはもちろん、千歳の妹、千鶴だった。

京子「あ、千鶴ー」

千鶴「死ね」

ちょうどいい。
本を返すついでに千鶴に聞いておこう。

京子「ねえ千鶴」

千鶴「くたばれ」

京子「結衣知らない?」

千鶴「……消えろ」

お、そうは言いながらも千鶴は首を振ってくれた。
返事してくれたのはいいけど結局役に立たなかったというわけか。

支援

結京祭りじゃああああああああああああああああああああああ

京子「図書室の中には?」

千鶴「……」

扉の外から中を覗く。
ざっと見た限り結衣の姿はない。

これははずれみたいだ。

千鶴「近付くな」

京子「えー」

そう言われれば言われるほど近付くなるのが私ってもんだ。
私は本を適当に返却ボックスに突っ込むと、私を押し退けて歩き出した千鶴の後に
続いた。

しえん

千鶴「ついてくんな」

京子「どこ行くの?」

千鶴「教えるか」

まったく、千鶴はツンデレだなあ。
それにしても結衣は本当にどこ行ったのか。

と、突然千鶴が立ち止まった。
ここは――生徒会室の前?

京子「千歳に用?」

千鶴「違う」

噛み付くように言われた後、千鶴が「船見さん」と一言。
あ、なるほど。
わざわざ私を連れてきてくれたのか。さすが千鶴だ。ツンデレだ。

これはワッフォウ

期待

京子「けどなんで生徒会室?」

千鶴「知るか。さっき入ってくのを見ただけだ」

京子「ふーん」

結衣が一人で生徒会室に来るなんて珍しいな。
とりあえず、千鶴にお礼言わなきゃ。
そう思って千鶴を振りかえったときにはもう千鶴は歩き出していた。

京子「おーい、千鶴!」

千鶴「……」ギロッ

京子「教えてくれてありがとー!」

千鶴「……船見さんのためだ」

結衣のため?
よくわからないけど、千鶴も結衣のことは好いてるらしいし。

京子「……」

まあいいか。
考えるのはあとだ。私はノックもせずに生徒会室の扉を開けた。

京子「たのもー!」

向日葵「はい?」

櫻子「あ、先輩!」

むっとする空気が扉を開けた途端伝わってきた。
その空気の中心にいた生徒会の一年生二人。

京子「あれ?結衣は?」

向日葵「船見先輩、ですか?」

京子「うん、千鶴にここに来たって言われて来たんだけど」

向日葵「さあ……少なくとも私たちが来たときはいらっしゃいませんでしたけど」

櫻子「歳納先輩、船見先輩探してるなら私もお供しましょうか!」

向日葵「あなたは仕事から逃げたいだけでしょう」

京子「ぬう、そっかあ」

千鶴の言うことだから信憑性は高いと思ったんだがなあ。

支援

いないなら仕方無い。
違うところを探すしかないみたいだ。

京子「邪魔しちゃってごめんねー」

櫻子「あ、そういえば先輩」

京子「なに?」

櫻子「杉浦先輩たちと同じクラスでしたよね?」

京子「うん、そうだけど」

櫻子「この書類、先輩たちに持ってってくれませんかー?」

京子「いいよー」

向日葵「ちょっと櫻子!先輩にそんなお願いしちゃって」

京子「あー、いいっていいって」

支援

しえんた

しえん

差し出された書類の束を受取る。
結構な枚数があるようだ。生徒会もこれじゃあ大変だろうなあ。

とりあえず一旦教室戻るついでに綾乃たちに渡しに行こう。

京子「おじゃましましたー」

書類を抱えて生徒会室を出る。
なんかこうして歩いてると自分がかしこくなった気分。
かしこくなったついでに結衣が見付かるとも思って辺りを見回してみたけど、やっぱり
そんなことはなくきょろきょろしながら自分の教室に戻ってきてしまった。

京子「たっだいまー」

綾乃「あ、歳納京子!」

千歳「おかえりー。船見さん見付かった?」

京子「そう聞くってことは結衣、まだ戻ってきてないんだ」

綾乃「えぇ。……それよりその書類は?」

京子「あ、これね。生徒会の一年生たちに渡された、はい」

綾乃「あ、ありが、と……」

千歳「ふふっ、助かったわあ、歳納さん」

京子「なんのなんの」

千歳「ほんで、また船見さん探しに行くのん?」

京子「えっ、なんで?」

綾乃「……すごく船見さん気にしてる顔してるもの」

京子「そ、そう?」

綾乃に言われて慌てて自分の顔に触れてみるが、
当たり前に何もわからない。

京子「なんか落ち着かないんだよねえ、結衣がいないと」

千歳「どこ行ったんやろねえ」

綾乃「やっぱり私たちも手伝……あぁー!千歳、大変!この提出期限今日までよ!」

千歳「えっ、嘘やん!?」

綾乃「ど、どうしましょう!」

京子「あー、なんか忙しそうだからいいや」

千歳「ごめんなあ歳納さん」

京子「結衣探しは一人でも充分だからね!」

綾乃「あっ、そういえば……」

もう一度教室を出て行こうとしたとき、
綾乃が思い出したように声を上げた。

京子「なんだ!?」

綾乃「い、いえ……そういえば朝ね、船見さん、なにか探してるみたいだったわよ」

しえn

千歳「そういえばそうやんなあ」

京子「結衣が落し物?」

それはなんとも珍しい。
やっぱりここは私がヒーローの如く参上するべきだろう。

京子「どこの辺り?」

綾乃「……そこはわからないわね」

千歳「でも一階の廊下あたりやったで。昇降口に出るとこらへん」

京子「なるほど。そこに行ってみる!」

千歳「あ、ちょっと待って歳納さん!」

京子「なに!?」

千歳「はい、これ」

寝る前最後の支援


千歳も案外人使いの荒いというかなんというか。
確かに昇降口に続く廊下に実験室はあるけれども。

京子「まあいいか」

西垣ちゃんなら何か知ってるかもしれないし。
千歳に渡された書類をひらひらさせながら、私は実験室に入り込んだ。
そしていきなりの爆発音。

西垣「けほっ、けほっ、大丈夫か松本!」

りせ「……」

西垣「そうか、良かった良かった」

京子「……」

西垣「そうかそうか……って、歳納か」

京子「また実験?」

西垣「おぉ、そうだぞ。な、松本」

りせ「……」

けど本当に千歳の言う通りだ。
西垣ちゃんのとこに絶対会長がいるって言ってたけど。

京子「書類、持ってきた」

西垣「書類?」

りせ「……」

西垣「あぁ、生徒会のか。松本が受取った」

京子「ところで西垣ちゃん」

西垣「なんだ?」

京子「結衣、知らないよねー」

西垣「おう知らんな」

りせ「……」

京子「まあそりゃそうだ。んじゃお邪魔しまし」

西垣「けど松本が知ってるそうだぞ」

支援

しえん

京子「えっ、ほんと!?」

りせ「……」コクッ

西垣「校門の脇に花壇があるだろう?」

京子「あったようななかったような」

りせ「……」

西垣「そこにいたらしいぞ」

結衣が花壇のとこに?
あかりじゃあるまいし。

京子「とりあえず行ってみる」

西垣「おう」

りせ「……」ヒラヒラ

西垣ちゃんと会長に送り出され、私は実験室を出た。
あまり長居して爆発実験に巻き込まれるわけにもいかない。

支援

靴を履き替え、私は外に出た。
昼休みもそろそろ終盤。今日は結衣を探して終わっちゃったなあ、なんてことを
考えながら花壇の方に寄って見た。

一瞬クマがいるかと思ったあかりを通り過ぎ、(あかりは如雨露で花に水をやっていた)
ぽけーっと歩く。
そういえば昼休みに外に出ることって滅多にない。

結衣はいったい何やってるんだろ。

京子「……」

なんだかすごく物足りない気分。
ぽっかり空いた隣に私らしかぬ溜息を吐きかけたとき。

「……あっ」

声を上げたのは同時だった。

しえん

支援

京子「結衣!」

結衣「……京子」

やっと見つけた結衣は、学校の敷居の一番ぎりぎりくらいのところでしゃみこんでいた。
いったい何をしてるのやら。

京子「もう、探したぞー」

結衣「ご、ごめん……!」

あまりに勢いのある謝り方で私は「へ?」と首をかしげてしまった。
探したぞって言ったくらいで結衣が私にこんなふうに謝るわけはあるまい。

京子「なにが?」

結衣「……そ、それは」

京子「私結衣に謝られるようなことされたっけ。そりゃあ昼休み探しに探したけど」

結衣「ていうかなんで探してたの?」

京子「結衣がいなかったから」

結衣「そうじゃなくって」

如雨露ってこんな字を書くのか
知らなかった

京子「結衣がいなきゃ物足りない」

結衣「……京子」

京子「だから綾乃とかちなつちゃんとか色んな人に結衣の情報聞きまわってここに辿り着いた」

結衣「探偵みたいだな」

京子「かっこいい?」

結衣「べつに」

京子「みんな結衣のこと好きなのかなあって思った」

結衣「なんで?」

京子「なんとなく」

結衣「……逆に京子のほうが好かれてるんじゃない?」

京子「え、そう?それで結衣はどうしてこんなとこいんの?」

結衣「……怒ったりしないでよ」

京子「しないしない」

結衣「……なくしちゃったんだ、昔京子に貰ったの」

ほう

>>57
ローゼンでしったなぁ

>>60
金糸雀もローゼンで知ったよな

京子「私に貰ったの?」

結衣「うん……赤い糸」

あまりに真剣に言うものだから、笑うに笑えなかった。
赤い糸……赤い糸……赤い糸?

京子「あ、それって私が小さい頃結衣にあげたやつ?」

結衣「そう」

京子「まだ持ってたのかー」

結衣「あれ、ミサンガにしてつけてたんだけど」

すっかり忘れていたから怒りようもない。
というより、まだあんなものを持っていたことじたい驚いて、それでいて嬉しかった。

京子「結衣も健気だなあ」

良いよ良いよ

結衣「……ほんと、嫌になるくらい」

京子「……」

結衣「小さい頃、私と京子とあかりと三人ずっと一緒だっただろ」

京子「うん」

結衣「けど大きくなってきてからだんだん京子もあかりも離れてっちゃって。
   年齢違うからあかりは当たり前だけど」

京子「……うん」

結衣「京子にあの赤い糸、貰ったときさ、それで繋がってるよって言われたとき、
   すっごい嬉しかった。今だから言えるけど」

京子「ん」

結衣「あれがあったらすごい落ち着いてさ、京子ともずっと一緒にいられる気がして」

良いね

バカだなあ。
思わずそう言いそうになりながら、私は笑ってしまっていた。

結衣「ちょ、なんで笑うんだよ!わかってたけどさ!」

京子「いやー、わるいわるい、けど……ははっ」

結衣「せっかく人が真剣に……」

京子「だって、おかしいんだからしかたないじゃん」クククッ

結衣「私だってわかってるけど……」

京子「そんなのなくても私らずっと一緒じゃん?」

結衣「……京子」

京子「もしあの糸がなくて不安なんだったら、これから私が結衣の傍をくっついて
   離れない」

結衣「それはいいや」

京子「そこで冷めないで……でもそんなの、もういらないでしょ」

結衣「もう?」

絶対言いたくないけど、私だって不安なときはあった。
新しい学年になるたび結衣が離れて行っちゃうんじゃないかと思った。
だからあの赤い糸(まだ運命の糸だって信じてた時もあったなあ)を結衣に渡した。
ずっと繋がれていますようにとお願いして。

しえん

支援

キュンキュンする

俺はこのスレに骨を埋める覚悟ですわ

けど今は、そんなの必要ないって思う。
それくらい結衣とは一緒に居るし、これからもきっとそうだ。

京子「一緒にいようよ、結衣」

自分たちがずっと一緒だって思ってれば、
きっとそれは変わらない。

京子「結衣がいなきゃやっぱりやだ」

結衣「……うん、私もやっぱり、本物の京子といたほうが楽しい」

京子「へへっ、だろー?」

結衣「……ありがとな」

京子「なんか言った?」

結衣「いや。もうすぐチャイム鳴るぞ、帰ろ」グイッ

京子「……ん」

結衣に手を引かれ、私たちは校舎に向かって走り出す。
ようやく傍に誰かの存在。結衣の隣は心地いい。

心が満たされて、私はつい笑みを漏らした。

終わり


これぞゆるゆり

乙 良かった

すばら


良かったよ

京子「結衣はバデレ」
結衣「何か言ったか」
京子「なんでもねえっす」

可愛いのが書きたかった。
最後まで見てくださった方ありがとうございました、それではまたー

たまらんねぇ 

あかりちゃんが可哀想過ぎて死にたい……

バデレの人?
今回も素晴らしかった
また書いてね!


いい話だった

良かったよ

イイハナシダー

結京が二つも同時に見れて幸せだった

京子がいなくなるのは怖いけどあかりはどうでもいいってことか

せやなー

とても乙

すごく良かった

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