銭形「亀有公園前派出所?」(39)

警視総監「そうだ、君には暫く派出所の勤務をして貰う」

銭形   「何故、私が下町の交番なんぞに行かにゃならんのですか」

警視総監「私も心苦しい。ルパン逮捕を行えるのは、君しかいないと確信している。
       しかし、警察関係者全員がそう思っているわけではないのだよ。
       銭形君にやらせ続けるよりも、他の者にやらせたほうが、という意見も少なくない」

銭形   「つまり、左遷というわけですな」

警視総監「おいおい、勘違いをしないでくれ」

銭形   「ルパンを逮捕できないのなら、警察組織に未練はありません。
       交番で道案内をやるくらいなら、ここに手帳を置いていきます」

警視総監「先走らんでくれ。さっきも言ったとおり、ルパン逮捕が出来るのは君だけだ。
       それとも、エリートが束になればルパンを捕まえられると思うかね?」

銭形   「ちょっと頭の良い連中がいくら集まったところで、ルパンの影を踏むことすら出来ません」

警視総監「そうだろう、私もそう思う。エリート集団を組織したらしいが、
       連中もすぐに音を上げるに決まっている」

警視総監「外野が十分に思い知ったところで、君には復帰してもらうつもりだ。
       ICPOの現地視察ということにしてあるから、勤務時間等は君の裁量で自由にやってくれて構わない。
       まぁ、時期外れの休暇だとでも思ってくれたまえ」

銭形   「そもそも、私は埼玉県警の人間ですが」

警視総監「そこも分かっている、しかし日本の警察組織と言うのは、非常に融通が利かない。
       君がいつでもルパン捜査に戻れるような、柔軟な現場というのは中々無いのだよ」

銭形   「しかしですなぁ」

警視総監「銭形君、私は君のルパン捜査には協力を惜しまなかったつもりだ。
       たまには私の我侭も聞いてもらえんかね。
       それに、連中の失敗を後ろ目に大手を振って復帰すれば、今後の融通も色々と利きやすい」

銭形   「そうを言われると、うーむ……」


新葛飾署

署長  「そういうわけで、君の派出所でICPOの銭形警部を受け入れることになった」

大原  「なぜ、うちなんですか。正直、視察に向いているとは思えませんが」

署長  「色々、理由があるらしい。銭形警部も型破りな人らしいからな、
      両津と型破り同士、気が合うかもしれないとのことだ」

大原  「奴は型を破った後に、自分で型を作って商売を始める奴ですよ」

署長  「頼むよ、大原君。主人公を飼っている以上、仕方ないんだ」

大原  「それを言われると、うーむ……」



両津  「昔、お化け踏み切りと言うのがあってな」

中川  「何ですか、それ?」

両津  「今の東武東上線の朝霞台のあたりに踏切があって、
      深夜、電車なんか通らない時間にも関わらず、
      突然、カンカンカンと音が鳴り出して、遮断機が下りるんだよ。
      そして、電車が通らずにまた遮断機が上がるんだ」

麗子  「でも、ただの都市伝説でしょう?」

両津  「いや、実際にあった。何しろ、わしが見に行ったからな」

麗子  「えー、うそー!?」

両津  「しーんと静まり返った暗闇の中で、突然赤い警告灯が光りだして、
      かぁんかぁんと鳴り響くのを暫く見ていたが、電車は通らなかったな。
      今から考えれば、遮断機の動作テストだったんだろうが」

大原  「うぉっほん、楽しそうにおしゃべりしているね、両津君」

両津  「げっ! 大原部長!」

大原  「君もお化けみたいに消えてくれれば、私も楽になるんだがね」

両津  「いや流石、冗談のセンスも一流で」ハハハ

大原  「そうだ、今日はお前に構っている時間は無いんだ。
      今日から暫くの間、ICPOの方が視察にやってきて下さる」

両津  「中川、ICPOってなんだ? PAPICOの新商品か?」ヒソヒソ

中川  「国際刑事警察機構の略です。インターポールのことですよ」ヒソヒソ

両津  「おお! インターポールか! かっこいいな!
      ゴルゴ13に出てくる猟官・バニングスのような敏腕刑事だろうな」ウーム

大原  「お前とは、細胞の一つからして違う方だ、くれぐれも失礼が無いようにな」

両津  「そこまで言わなくても良いじゃないか」クソッ

大原  「もうすぐ、ここにいらっしゃる筈なんだがな……」

銭形  「あのーすみませんー」

両津  「ん? 何だ、このオッサンは」

銭形  「公園前派出所というのはー」

両津  「はいはい、この道まっすぐ行けば駅の方に行くからね。
      こちとら忙しいんだ、行った行った」シッシッ

大原  「馬ッ鹿もん!!」

両津  「ひえっ」

大原  「こ、この方が、ICPOからいらっしゃった、銭形警部だ!」

両津  「ええ!? この冴えないおっさ……素敵なオジサマが!?」

大原  「銭形警部、こちらへどうぞ」

銭形  「えー、いまー、ごしょーかいにあずかりましたー」

両津  (覇気が無い……とても優秀な捜査官には見えんぞ)

銭形  「よろしくーおねがいーしますー」


パチパチパチ

銭形  「」ボー

両津  「大丈夫か、あのオッサン」

中川  「優秀な方だそうですから、捜査のときは凄いんですよ、きっと」

両津  「そうは見えんがなぁ」


翌日

麗子 「両ちゃん、お昼はどうするの?」

両津 「そうだな、昨日の夜パンだったから……」

銭形 「ルパン!? どこだ、ルパン!?」

大原 「どうされたんですか、銭形警部!?」

銭形 「はっ……いや、何でもありません……」



翌々日

中川 「部長、腕時計を変えたんですか?」

大原 「お! わかるか? この間の誕生日に、英男君がくれたんだ」

※大原部長の誕生日は都合でコロコロ変わります。

中川 「カルバンクラインですね、良いものですよ」

銭形 「ルパン!? 逮捕だルパァーン!!」

麗子 「警部さん、落ち着いてください」

銭形 「はっ……取り乱しました、済みません」


数日後

本田 「よう、両津の旦那!」ガォオオン

両津 「どうしたんだ、本田?」

本田 「せんぱぁ~い、聞いてくださいよぉ。AKB48のぱるるのサイン貰っちゃいましたぁ~」

銭形 「パル……ルパァン!? でてこぉい!!!」

本田 「な、なんですか、この人!?」

中川 「しっかりしてください警部!」

銭形 「はっ……また幻聴が……」

両津 「一体、何なんだよ、もう!」



麗子 「警部さん、お茶です」

銭形 「あー、どうもー」ズズズ

両津 「普段はしょぼくれてる癖に、突然スイッチが入るからな。
     本田の仲間じゃないのか?」

本田 「違いますよぉ」

中川 「先日から、ルパンの名前を叫ばれてましたけど、
     もしかして、ICPOでルパン三世の専任捜査をされていたんですか?」

銭形 「ルパン! そう、奴はわしの生涯の敵だ!」ギラッ

期待

期待

中川 「やっぱり、聞いた事がある名前だと思ったら、ルパン捜査の銭形警部だったんですね」

両津 「有名なのか、このおっさん?」

麗子 「両ちゃん、失礼よ」

銭形 「いや、構わんよ。暫くルパン捜査から外れろと言われて、僅か数日でこの有様だ。
    今はエリート集団が奴を追っとるよ。もうわしの時代じゃないのかもしれん」ズズズ

麗子 「そういえば新聞に載ってたわよ、ルパン三世の事件」バサッ

本田 「うわぁ凄い。この間、美術館を丸ごと盗んだばかりなのに、
    地中に埋まった大金庫の中身を根こそぎ盗んだんですって!」

中川 「地上から大量の水を流し込んで、浮いてきた金品を回収か」

両津 「うーむ、大胆不敵とはこのことだな」

銭形 「ルパンよ……お前も変わっちまうのか」ハァ

麗子 「何だかおじいちゃんみたい」

両津 「銭形警部、一緒に警らに行きましょう」

銭形 「わしのことは気にせんでくれ」

両津 「辛気臭い顔が横にあると気が滅入るんですよ。ほらほら」グイグイ

銭形 「お、おい。わしは……」チャリン

麗子 「両ちゃんたら強引なんだから」

中川 「銭形警部も、先輩の元気を少し分けてもらえれば良いんだけど」

麗子 「あら、何かしら」

中川 「5円玉だね、銭形警部が落としたのかな?」

麗子 「銭形警部って、やっぱり小銭を投げたりするのかしら」

中川 「……いや、どうだろう?」

麗子 「流石に、それは無いわよね」ウフフ



両津 「あれがスカイツリーですよ」

銭形 「ほぉ、東京タワーの倍近くも高さがあるのか」

両津 「2020年にはオリンピックもあるし、これから更に変わって行きますよ」

銭形 「そうか、時代は変わって行くのか……」

両津 「また老けこんでる……」

ピーピー

両津 「ん? 中川か?」

中川 『先輩! すぐに戻ってきてください!』

両津 「何かあったのか?」

中川 『爆弾魔です!』

両津 「そんなもん珍しくもない。どうせ馬鹿な学生がツイッターで呟いたんだろ?」

中川 『違います! 本当に爆発したんですよ!』

両津 「なにぃ!?」

銭型のスペックって糞高いんだぜ。両津と組んだら天下無敵



派出所

大原 「先ほど、秋葉原駅で爆発があった。
    犯人からと思われる犯行予告もユーチューブで公開されている」

銭形 「犯行予告も変わったもんだな」

大原 「それによると、オリンピック開催に向けて、秋葉原一体をテーマパークにしろ。
     その為に上野と秋葉原を爆弾で吹き飛ばすという内容だ」

両津 「要求の低レベルが低過ぎる」

大原 「銭形警部と、中川、麗子君は私と一緒に新葛飾署へ。
     両津は、現地で爆発物捜査に加われ」

両津 「何で私だけ現場なんですか!?」

大原 「銭形警部は、ICPOの現役捜査官。中川と麗子君はエリートだ。
     それに、お前なら爆発に巻き込まれても死なないだろう」

両津 「酷いっ」



捜査本部

捜査官「上野・秋葉原の爆発物ですが」

大原  「見つかったんですか?」

捜査官「両津巡査長が、既に3個見つけて、その場で解体まで済ませています」

麗子  「こういう時には役に立つのよね」

中川  「先輩は、裏道の排水溝の中まで知り尽くしているから」

大原  「最後の爆弾と一緒に、吹き飛ぶことを祈ろう」

銭形  「とんでもない扱いされとるんですな」

捜査官「しかし、数が多い上に、いくつ仕掛けられているか分かりません。
     念の為、周囲の住民の退去命令を出していますが……」

大原 「上野と秋葉原を吹っ飛ばすと言っているんだから、かなりの数が仕掛けられているのでは」

銭形 「いや、それにしては見つかった数が少なすぎますな」

中川 「銭形警部、ルパンならこんな時どうしていますか?」

銭形 「ん? ルパンなら……人目を集めたなら、盗みを働きますな」

大原 「秋葉原で盗むと言えば。そうか、家電だ!」

中川 「警察を爆発物にひきつけて、その間に量販店から奪うんですね!」

大原 「こうしちゃおれん! すぐに現地に連絡だ!」

銭形 「……」

麗子 「警部さん、どうされたんですか?」

銭形 「ルパンじゃないんだよなぁ」

中川 「すぐにルパン捜査に戻れますよ」

銭形 「悪いが、わしは一人で行かせて貰うよ」

大原 「銭形警部、後は我々にお任せください!」


御徒町

両津 「うーむ、爆弾を探しながら歩いていたら、ここまで来てしまった。
    もう10個は見つけたが、この辺にはなさそうだな」

銭形 「両津巡査長、ここで何を」

両津 「あ、銭形警部。爆弾の捜索と解体ですよ、あいつら人に押し付けやがって」

銭形 「そうか、ちょうどいい。一緒に来てくれ」

両津 「え、私はまだ爆弾が」

銭形 「犯人がいるかもしれんのでな」

両津 「え?」


宝石店

ガシャン

犯人 「ふふふ、俺は天才だな」

両津 「そこまでだ!」

犯人 「げっ! 警察か!?」

両津 「この野郎! 誰もいない宝石店に白昼堂々強盗とは、ふてえ野郎だ!」ガンガン

犯人 「痛い痛い! 参った! 降参だ!」

両津 「逮捕する!」ガチャン

銭形 「爆弾の数が多いから複数犯だとは思っていたが、貴様が首謀者か」

犯人 「畜生! 何で分かったんだ!?」

銭形 「家電なんて、かさばる割りに金にならん。手間の割に、獲物が小さすぎる。
     強引に奪うだけならともかく、爆弾を作るだけの知識のある人間のすることじゃない」

両津 「なるほど、だから宝石を狙うと踏んだんですね!」

銭形 「外国人の手下を囮にして、自分だけ上手いこと逃げるつもりだったんだろう」

両津 「この野郎! 自分だけ助かろうとしやがって!」ガツンガツン

犯人 「ひぃっ! 助けてくれぇ!」


ピーピー

銭形 「はい、こちら銭形」

大原 『上野と秋葉原の家電量販店で、外国人の男を複数名、捕まえました!』

銭形 「こちらも御徒町で犯人を捕まえたところです」

大原 『ええ!?』

銭形 「犯人は引き渡しておきます」

プッ

順番間違えた…
>>26>>27は逆です。



両津 「無事に犯人も引き渡して、一件落着ですね」

銭形 「ああ、腹減ったから何か買ってきてくれんか」

両津 「じゃあ、そこのコンビニで買ってきますよ」

銭形 「……」

ピーピー

銭形    「はい、こちら銭形……」

警視総監 『銭形君か』

銭形    「はっ、これは警視総監!」

警視総監 『件のエリート集団だが、ルパン追跡中に全員リタイアした』

銭形    「随分と早いですなぁ」

警視総監『逃走の為にビルとビルの間をスパイダーマンのように飛び移り、
       自由の女神に素手で登り、そのまま海に飛び込んだ後、5時間泳いで、
       地下鉄構内で見失ったところで、全員が諦めた。口を揃えてバケモノだと言っていたよ。
       そんなバケモノを捕まえられるのは君しかいない。戻ってきてくれ』

銭形   「畏まりました、直ちに捜査に取り掛かります!」

プッ

両津  「警部、醤油と味噌どっちがいいですか」

銭形  「ん、カップメンか。醤油をくれ。
     この味だけは何年たっても変わらんな」ズズズ

両津  「少しずつだけど変わってますよ。味付けとか、具も」ズズズ

銭形  「そうか? しかし根本的なところは変わっとらん」ズズズ

両津  「本当に良いものっていうのは、少しずつ変わりながら長く続くもんです」ズズズ

銭形  「そうかもしれんな」ゴクゴク

プハー

ガチャン

両津 「へ?」

銭形 「貴様を逮捕する」

両津 「嫌だなぁ、銭形警部。ジョークも一流なんだから」ハハハ

銭形 「いつまで猿芝居を続けるつもりだ、ルパン」

両津?「いつ気づいたんだ、とっつぁん」

銭形 「派出所で秋元巡査が新聞を読んだときだ。ルパンならもっとスマートにやるはずだからな。
     あれじゃあ、蟻の巣に水を流し込む子供のいたずらだ」

ベリリッ

ルパン「んふふふふ。嬉しいねぇ、そんなに評価してもらっちゃって」

銭形 「それに、新葛飾署で中川巡査が教えてくれたぞ。
     わしの落とした5円玉に反応しないなんて、先輩がおかしい、とな」

ルパン「あちゃー、失敗したなぁ。確かにあのお巡りさんなら1キロ先の1円玉でも拾いにいきそうだ」

銭形 「差し詰め、捜査から外れたワシを小馬鹿にでもしに来たんだろうが、ここで会ったが百年目よ!」

銭形  「時代は変わる、優秀な人材も出てくる。だが、貴様を逮捕するのは、このわしだぞ、ルパァン」

ルパン「でも、とっつぁんは、今捜査から外れてるでしょ?」

銭形 「残念だったな、今さっき復帰したところだ」

ルパン「あららー。まぁ、とっつぁんがいないと、張り合いが無くていけねえや」スポッ

銭形 「手錠を抜けたところで無駄だぞ! 何度でもかけ直してやる!」

ルパン「うへぇ、おっかねぇ。こりゃあ、逃げるが勝ちだ!」

ボフン

銭形 「煙幕なんぞ使いおって! 待てぇルパーン!! 逮捕だあああ!!!」

ルパン「いやなこった! あーばよー!!」


数日後 派出所

中川 「銭形警部、すぐにルパンを追いかけて行っちゃいましたね」

麗子 「素敵な人ね、あんなに情熱的になれるなんて」

大原 「両津に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ」

麗子 「その両ちゃんは、どこにいっちゃったのかしら?」

大原 「ルパンが入れ替わってから行方不明だが、その内ひょっこり戻ってくるだろう」

中川 「でもまさか、本当に先輩がルパンだったなんて」

麗子 「未だに信じられないわね。いつ入れ替わったのか、全く分からなかったもの」

大原 「見た目は、身長ら歩き方まで完璧に両津だったな」

麗子 「あら……? でも、それなら金庫を襲ったのは誰なのかしら?」

TV  『お昼のニュースです。ニューヨークの大金庫に侵入した男が逮捕されました』

麗子 「あら、また金庫破り?」

TV  『……この男は、銀行の大金庫に保管されていたワインで酒盛りをし、寝ていたところを
    かけつけた警備員に取り押さえられました』

大原 「なんとも間抜けな犯人だな」

TV  『金庫の警報装置は無効化されていましたが、酒に酔った男が自分で通報したとのことです』

中川 「あれ、これって」

TV  『男は、「ルパンに頼まれて入れ変わった。俺が電話しなかったか。そいつがルパンだ」等と、
     意味の分からない供述を繰り返しているとのことで……』

中川 「あまりにも酷い」

麗子 「入れ替わったままのほうが良かったんじゃないかしら」

大原 「さぁ、諸君。仕事に戻ろうか」



両津「おのれー!! ルパンめー!!!」



(おわり)

おつ
脳内再生余裕だった

流石とっつぁん


読みやすくて面白かった

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