結衣「え?京子、アメリカ行くの?」(318)

京子「うん。やっぱり私がやりたい研究はアメリカでしか出来ないから」

結衣「そう…なんだ…」

京子「それに、教授が向こうの教授に話つけてくれてるみたいだし」

京子「これを逃すともう行く機会無いしね」

結衣「………よ」

結衣「よ、よかったじゃん!京子、ずっと向こうで勉強したいって言ってたもんね!」

結衣「夢だったんでしょ、京子の」

京子「…うん」

京子「ごめんね、結衣」




エログロなし
書き溜めあり
おかしいところは各自補完してください

幼稚園の頃は、京子はいつも私の後ろを歩いてた

小学生の頃から、京子は私の隣を歩くようになった

中学生になると、京子は私の半歩前を歩くようになった

高校生では、京子は私の手を引いて歩くようになって

大学生になると、京子は私の手の届かない場所にいて

そして今、京子は私の目の届かないところに行こうとしている

京子は天才だった

手先も器用で、人付き合いもうまく、勉強も出来る

中学の頃から、頭のいいヤツだとは思ってたけど

大学に入ってから、本気で勉強に取り組みはじめると

すぐに最先端に追いついていった

私が考えてたよりもずっと、

京子は天才だった

<中3の頃>
結衣宅

京子「ねー結衣ー」

結衣「んー?」

京子「高校どうするか決めたー?」

結衣「んー京子は?」

京子「私は○○高校か△△高校かなー?」

結衣「○○高校!?あそこ、かなり難しいんじゃないの!?」

京子「なんか先生がお前ならいけるってさ」

結衣「そうなんだ…」

京子「でも」

京子「私、結衣と同じ高校に行きたいな」

教室

綾乃「歳納京子ぉーーーー!!!」

京子「綾乃じゃん!どしたの?そんな慌てて」

綾乃「あなた、△△高校にしたってホントなの!?」

綾乃「あなたならべつに○○高校でも余裕でしょ!?」

京子「うん、でも結衣が△△高校にするっていうし」

京子「綾乃と千歳もいるみたいだし」

京子「みんながいた方が楽しいでしょ!」

綾乃「…」

綾乃「歳納京子、これはあなたの人生にも関わることなの」

綾乃「ちゃんと考えた方がいいわよ」

京子「え?なに?綾乃は私と同じ高校行きたくないわけ?」

綾乃「べつにそういうわけじゃないわよ」

京子「じゃあ、京子たんと一緒の高校行けてうれしい?」

綾乃「なななななな何言ってるのよっ!べつにうれしくなんてないわよっ!」

綾乃「でも歳納京子が△△高校行きたいって言うんなら…一緒に行ってあげてもいいわよ」

京子「あっはは!綾乃は面白いなー!」

綾乃「でも…ちゃんと考えなさいよ」

京子「わかってる」

京子「ありがとう、綾乃」

正直、成績優秀な綾乃や千歳と違って私は△△高校もあやしかった

でも、京子と同じ学校に行きたくてちょっと厳しくても目指してみることに決めたんだ

そのせいで中学3年生はあんまり遊べなかったけど

みんなと勉強するのも嫌いじゃなかった

3年生になってから京子は私の勉強の邪魔をしなくなった

京子はそんなに勉強する必要が無いはずだけど

私が勉強するときは一緒に勉強するか、なにやら難しそうな本を読んでいた

ほんとはもっと遊びたいはずなのに

でも、そうやって京子が私に付き合ってくれてるのがうれしかった

だから、私は最後までがんばれた

卒業式

向日葵「先輩方、ご卒業おめでとうございます」

千歳「ありがとうな、古谷さん」

向日葵「ほら、櫻子も何か言いなさいよ」

櫻子「グスッ…せんぱぁい……グスッ」

綾乃「いいのよ古谷さん、もう気持ちは伝わったわ」

櫻子「せんぱあああいっ!…ありがとうございまじだぁ…!」グスッ

千歳「大室さん…」

綾乃「こちらこそ、今までありがとうね!」

ちなつ「結衣先輩が卒業しちゃうなんて寂しいです…」

京子「ちなつちゃん私は?」

ちなつ「京子先輩はいない方が静かでいいです!」

京子「ええ~?ホントは寂しいくせに~」

結衣「ちなつちゃん、あかり、いままでありがとう」

ちなつ「私の方こそお世話になりました」

ちなつ「私も先輩と同じ高校に行きますので一年間まっててくださいね!」

結衣「うん、まってるよ」

京子「あかり、どしたの?」

あかり「え?ううん、おめでとう!京子ちゃん、結衣ちゃん」

京子「…あかり、ごめんね。また、置いてっちゃうね」

あかり「そんな!気にしないで!京子ちゃんは何も悪いことしてないよ…」

ちなつ「あかりちゃん!」

ちなつ「△△高校目指して、一緒に勉強がんばろうね!」

あかり「!…っうん!」

部室

結衣「私たち、卒業するんだね」

京子「なんか実感わかないね」

結衣「そうだね」

京子「…」

京子「なんかここに二人でいると一年生の頃思い出すなぁ」

結衣「…覚えてる?最初にここに来たときのこと」

結衣「いきなりここに私を連れてきて」

結衣「『今日からここが我々娯楽部の部室です!』って言ったんだよね」

京子「あったねー!そんなことも」

京子「いやー当時の私は若かったね!」

結衣「京子は今も変わってないよ」

京子「そう?」

結衣「あかり、泣いてたね」

京子「…そうだね、でも仕方ないよ」

結衣「そういえば小学校の卒業式の時はあかり号泣してたっけ」

京子「あはは!そういえばそうだったね!」

結衣「結局登校は一緒だからってなだめたんだよね」

京子「そうだったそうだった」

結衣「でも、今回はそれも出来そうにないね」

京子「大丈夫」

京子「あかりにはちなつちゃんがいるよ」

結衣「そうだね」

卒業式から1週間後くらいに試験があった

あの4人の中では私が一番成績危なかったのに綾乃が一番緊張してて

それ見てたら全然緊張しなかった

会場行く時も京子はおちゃらけてて、卒業しても京子は変わらないなって安心した

千歳は『試験中は鼻血ださんようにせんとな!』って張り切ってた

合格発表の日

結衣「あーさすがにドキドキするな」

京子「大丈夫だって!あんだけ勉強したんだし」

結衣「だといいけど」

………

結衣「えっと…209…212…213…215…」

結衣「…京子っ!」

京子「どう?」

結衣「あった!あったよ!」

京子「おおーーー!」

京子「おめでとう、結衣」

結衣「ありがとう、京子」

京子「これからも、一緒だね」

結衣「てことは京子も合格したのか」

京子「へへーブイッ!」

綾乃「歳納京子!」

京子「綾乃に千歳!どうだった?」

綾乃「もちろん合格よ!当たり前じゃない!」

千歳「ふふふ、昨日の晩、綾乃ちゃんから眠れへんって電話があってなー」

綾夫「ちちち千歳!?それは言わないで~!」

千歳「………船見さんは…だめ、やったん?」

京子「へ?」クルッ

京子「!」

京子「な」

京子「何泣いてるんだよ!結衣!」

結衣「ごめん、なんかこれからも京子と…みんなと一緒だと思うと…うれしくて…」グスッ

京子「大げさだなー結衣は、キャラじゃないぞ!」

千歳「うれし涙やったんか、紛らわしいわ~」

綾乃「でもよかった、これでまた4人一緒ね」

結衣「…うん!」

高校は電車通学で綾乃と千歳も一緒に登校するようになった

千鶴は別の高校に進学したらしい

高校生になっても私たちは相変わらずで

綾乃と千歳は生徒会に入ったし私と京子は帰宅部だった

そして、梅雨に入ったぐらいの頃

綾乃「歳納京子」

京子「どしたの?」

綾乃「あの…これ…」

京子「なにこれ?小会議室の鍵?」

綾乃「4階端っこの小会議室の鍵よ、先生方はまず使わないしお咎めする人もいないわ」

綾乃「使用許可は私が取っておいたし、少し汚いかもしれないけど…その…」

綾乃「…娯楽部の部室として使いなさいよ」

京子「っ!」

京子「綾乃最っっ高!!!」

綾乃「か、勘違いするんじゃないわよ!!べつにあなたのためにやったんじゃないんだからね!」

千歳「綾乃ちゃんはここんとこずっと誰も使ってない部屋がないか調べとったんやで」

綾乃「っもう!千歳!」

千歳「ごめんごめん」

結衣「でもいいの?使っちゃって」

綾乃「いいわよ、和室は茶道部が使ってるからとれないけど」

綾乃「来年入ってくる子たちのためにも娯楽部はあった方がいいのよ」

綾乃「でもいい?あんまり私物置くとダメよ!あと、埃がたまってるだろうからちゃんと掃除するのよ!」

京子「ありがとう!綾乃!」

京子「んじゃ早速いくぞ!結衣!」

結衣「おいまて!…ごめんね、綾乃、迷惑かけて」

綾乃「いいわよべつに、いつものことじゃないの」

結衣「あはは!そうだね、いつもありがとう、綾乃」

綾乃「っもう!いいから早く追いかけなさいよっ!」

結衣「うん!ホントにありがとね!」

というわけで娯楽部が再開した

京子は相変わらず暴れ回っていて

そんな京子のそばにいるのが好きだった

2年生に上がると無事、あかりとちなつちゃんも入学してきた

結衣「久しぶりにまた4人そろったね」

あかり「あかり、またみんなと一緒に学校行けてうれしいよ」

ちなつ「私もまた結衣先輩と一緒にいれてうれしいです」

京子「ちなつちゃんは茶道部にも入ったんだよね」

ちなつ「はい、やっぱり茶道はずっとしてみたかったので」

ちなつ「でも茶道部無いときも多いのでそのときはこっちに来ます」

結衣「ちなつちゃんはちゃんとやりたいことがはっきりしててすごいな」

ちなつ「やーん!もう、先輩ったら!」

京子「あかりはどうするの?」

あかり「あかりは毎日ここに来るよ」

京子「そっか」

………

京子「最近ちなつちゃん来ないね」

あかり「なんか再来週茶道部で大きなイベントがあるっていってたよ」

結衣「まぁ忙しいんなら仕方ないよ」

京子「ちなつちゃんクラスではどんな感じなの?」

あかり「えっとね…ちなつちゃんは茶道部の友達といつも仲良くしてるよ」

あかり「あかりとは、なんていうか…その…」

京子「グループが違う?」

あかり「…うん、そんなかんじ」

あかり「あ!べつに仲が悪いわけじゃないよ!教室でもほとんど毎日おしゃべりしてるし」

あかり「ただ…なんとなく…」

京子「疎遠になっちゃった?」

あかり「…」コクッ

結衣「………」

高2の冬休み開けたぐらいからちなつちゃんはほとんど来なくなった

さらに言えば私にもあまりひっつかなくなった

聞くところによると茶道部の部長をすることになったらしく

月に2、3回顔を出すのがやっとらしい

ちなつちゃんがいない娯楽部はやっぱりちょっと寂しかった

べつにちなつちゃんが悪いわけじゃないけど

中学の頃には戻れないんだなって思うと、やるせない感じがした

高3に上がると私と京子は受験勉強が始まって塾に通うようになり

私たちも娯楽部には週2回ぐらいしか行けなくなった

その週2回の娯楽部でさえ、私と京子は勉強することが多かった

あかりはいつも私たちの邪魔をしないように部屋で漫画を読んでた

私が『無理して付き合ってくれなくていいんだよ』というと

『無理なんてしてないよ、あかりは二人といるだけ楽しいから』って笑ってた

いつの間にか部室は漫画でいっぱいになった


そしてたしか五月ぐらいのころ

あの日はたまたまあかりが用事でいなくて、部室に私と京子だけだった

京子「結衣」

結衣「ん?」

京子「私ね、東大目指してみようと思う」

結衣「…マジ?」

京子「大マジ」

結衣「…そうか…がんばれよ」

結衣「東大は一夜漬けで行けるほど甘くないぞ」

京子「わかってるよ!」

京子「でさ」

京子「結衣は…どうするの?」

結衣「私?んー少なくとも東大は無理だなあ」

京子「…」

結衣「京子は京子でがんばりなよ、私も私でがんばって行けるところに行くよ」

京子「…結衣」

結衣「ていうかお前、東京で一人暮らしできるのか?」

京子「ゔっ…ま、まあどうにかなるよ!」

あの時の京子は、もう泣き虫の京子でも、好き放題やってる京子でもなく

私の知らない、大人の京子だった

自分の道を自分で決め、楽しかった過去にすがりつかず、きちんと前を向いて歩く、そういう大人だった

それに比べて、私は…

そういう意味ではちなつちゃんも大人だ

自分のやりたいことをちゃんと持ってる

一番子供なのは、私だった

夏、一度だけ模試の判定に東大を書いたことがある

ひょっとしたら、京子と一緒に行けるかもしれないと、淡い期待をしていた

良い判定が出るわけ無いのはわかってた

それでも、心のどこかで、Cぐらいは出るんじゃないかと思ってた

結果は、E判定だった

『志望校についても慎重に検討しましょう。』の文字が胸に刺さった

何となく京子には見せられなくて、かくしてしまった

京子はA判定だった

12月に入ると、私も京子も毎日塾にいるようになった

塾では京子とは違うクラスだったけど、毎日一緒に行ってお互いが終わるまで待ってた

娯楽部の部室にはまったく行けなくなった

一度、塾行く前に覗いてみたら、あかりは居なかった

漫画も、無くなってた

その頃、私も一つの決心をしていた

prrrrrrr
結衣「あ、もしもし、お母さん?」

結衣母『あら、結衣、どうしたの』

結衣「今からそっちに行っていい?話があるんだけど」

結衣母『…いいわよ、帰ってらっしゃい』

………

結衣母「で、どうしたの?」

結衣「あのさ…大学のことなんだけど…」

結衣「第一志望、変えようと思う」

結衣母「…どこにするのよ」

結衣「東京××大学」

結衣母「どうして?」

結衣「どうしてって…その…」

結衣「東京××大学もいい大学だよ、偏差値はちょっと高いけど、ぎりぎり手が届くぐらい」

結衣母「…京子ちゃんでしょ」

結衣「!」

結衣母「結衣」

結衣母「いつまでも変わらないものはないのよ」

結衣「…わかってるよ…それくらい」

結衣母「わかってない」

結衣「わかってる!!」

結衣母「………」

結衣母「京子ちゃんもね、きっと結衣のことは大好きよ」

結衣母「でも、結衣の人生は結衣のものなの」

結衣母「京子ちゃんにはそれがわかってる」

結衣母「だから…」

結衣「わかってるってば!!」

結衣母「………」

結衣「…ごめん」

結衣母「わかったわ」

結衣「え!?」

結衣母「その代わり、条件があるわ」

結衣「な、なに?」

結衣母「東京××大学って私立でしょ?併願で受けて、今の志望校の準備もちゃんとしときなさい」

結衣母「それで受かったら、東京でがんばりなさい」

結衣「…うん!」

それから私は必死にがんばった

京子に志望校のことを言うと

京子は本当にうれしそうな顔をした後、すぐに目を伏せて

『ごめんね』といった

当時の私にはなぜ京子が謝ったのかよくわからなかった

私は『自分で決めたことだから』というと

『…うん』とだけ言った

正月、私の家で京子と勉強していると、あかりが差し入れを持ってきてくれた

後ろからちょっと気まずそうにちなつちゃんも入ってきた

京子が『ちなつちゃん!私のために差し入れを!?』というと

顔を上げて笑顔で『京子先輩は結衣先輩のついでです!』と言った

少し懐かしいやりとりだった

センターも無事終わり、私の2次試験が2月の頭にあった

いいって言ったのにわざわざ京子は私と一緒に東京に付いてきた

『東大の下見もしてなかったし!』と、京子は笑って言った

ホテルに泊まり試験当日の朝、

京子「結衣、緊張してる?」

結衣「そりゃするだろ」

京子「結衣、私ね」

京子「結衣が東京の大学に行くって言ったとき、本当にうれしかった」

結衣「京子…」

京子「だから、がんばってね」

結衣「…うん!」

結衣「じゃあ行ってくるよ」

京子「おう!行ってこい!」

結衣「京子」

京子「なに?」

結衣「無事に二人とも合格したらさ…」

京子「うん」

結衣「二人で一緒に暮らそう」

京子「!」

京子「…実は私もそれ考えてた!」

結衣「…っ!なら!」

京子「もちろんいいともさ!そのためにも、まずは受かってこい!」

結衣「うん!行ってくる!」

試験は緊張したけど、不思議と落ちる気は全くしなかった

結局、手応え十分で試験が終わり

京子の試験の3日前、うちに合格通知が届いた

ちなつちゃんは笑って、あかりは泣いて喜んでくれた

京子は、まあ当然の結果だろ、となぜか自慢げだった

ちょっと、むかついた

京子の試験には私もついて行った

大丈夫だと信じてはいたが、正直、京子の試験は私と違って甘くない

試験が終わった後の京子のVサインに安心したのも確かだった

卒業式ではやっぱりあかりは泣いて、綾乃も泣いてた

綾乃は地元の大学に合格したと言っていた

千歳とは別の大学だ

千歳も初めは笑顔だったけど、綾乃が泣いてるのを見て、一緒に泣いてた

京子と私はちゃんと笑顔でみんなとお別れできた

ちょっと涙目だったけどね

合格発表の日
結衣宅にて

結衣「なんでうちで見るんだよ」

京子「いいじゃん、せっかくパソコンもあるんだしさ」

結衣「まあいいけど」

結衣「そろそろ結果出てると思うよ」

京子「おおう、そうか」

結衣「なに?今更不安になってきた?」

京子「…ちょっとね」

結衣「試験ちゃんと出来たんだろ」

京子「出来てても不安になるの!」

結衣「まあわかるけど」

京子「結衣…」

結衣「ん?」

京子「結衣が見てくれない?」

結衣「…相当不安になってるじゃないか」

京子「だ、だって」

結衣「もう…受験票かして」

結衣「………」

京子「ど、どう?」

結衣「…おめでとう、京子」

京子「っっっいよっしゃあっ!!!!」

結衣「ま、当然の結果だな」


なぐられた

それからの日々はすごく楽しかった

京子と一緒にアパート探して、家具をそろえて、引っ越しして

これからの大学生活を考えるとすごくウキウキして

二人ならなんでも出来るとさえ思った

大学生活は意外と忙しかった

特に京子は一年生のうちから研究室を覗かせてもらってたみたいで

サークルにも入ってないのに帰ってくるのは夜遅くだった

自然と家事は私がするようになった

京子も暇なときはちゃんと家事をやってくれるし、京子との共同生活は全然苦じゃなかった

あかりは保育士になると言って地元の専門学校に

ちなつちゃんは綾乃と同じ大学にそれぞれ入り

自分の好きなことをやっているようだ

何でもちなつちゃんは演劇サークルに入り、演劇に目覚めたらしい

大学4年になると京子は泊まりがけで研究することが多くなった

私も就活や卒論で忙しくなり京子と一緒にいる時間が少なくなってしまった

京子はすでに最先端の研究をどんどん進めていた

結衣「京子!聞いてくれ!」

京子「あ、おかえり、どしたの?」

結衣「就職が決まった!」

京子「………」

結衣「京子?」

京子「や、やったじゃん!結衣!」

京子「今日はケーキでも買ってくるか!」

結衣「いや、そこまでしなくても」

京子「だめだめ、こういう時はちゃんとお祝いするの!」

結衣「はは、そりゃどうも」

結衣(京子のヤツ、なんかごまかしたな)

………
京子「ケーキうまかったなー」

結衣「そうだな、でも二人でホールケーキはやっぱり多かったと思う」

京子「そう?言ってくれれば私が食べたよ?」

結衣「…太るぞ」

京子「…それをいうな」

京子「んじゃ電気消すよー」

結衣「ん」

京子「おやすみ結衣」

結衣「おやすみ京子」

結衣「………」

結衣「…京子」

京子「なに?」

結衣「私になんか隠し事してるだろ」

京子「…やっぱわかる?」

結衣「当たり前だろ」

京子「実はさ…」

結衣「うん」


京子「来年からアメリカに行くことになった」

いつの間にか京子は、もうそんなに先にいたのだ

私は、京子と一緒に過ごせて、それだけで満足で、

特にやりたいこともなく大学生活を送り、

特に興味も無い仕事を必死に探してる間に、

京子はもう、ずっとずっと遠くにいた

京子「結衣はさ」

京子「こっちでがんばりなよ」

京子「せっかく見つけた仕事なんだしさ」

京子「このアパートと家具そのまま使っていいし」

京子「私、結衣がどれだけがんばって就活してたか知ってる」

京子「一番近くで見てたんだし」

京子「うまくいかなかったとき、結衣ってばちょっとピリピリしてたんだもん」

京子「家帰ったら、結衣が眉間に皺よせてるんだよね」

京子「私がなんか悪いことしたのかと思っちゃったよ」

京子「………結衣?」

京子「………」

京子「おやすみ、結衣」

次の日からまたいつも通りの日常が始まったけど、やっぱりお互いすこしギクシャクしてた

京子も私も、気持ちの整理が出来てなかったし

どうしたいのかもわからないまま

私たちは大学を卒業した

出発前日

京子「もう明日なんだね」

結衣「早く寝ろ、明日朝早いんだろ」

京子「うん」

京子「…なんかさー」

京子「実感わかないんだよねー」

京子「だって、明日の今頃はアメリカにいるわけじゃん?」

京子「どんなところなんだろうね、ちょっと楽しみ」

結衣「…」

結衣「私は、あんまり楽しみじゃない」

京子「…結衣」

結衣「…ごめん、忘れて、おやすみ」

空港

京子「えっと…まだちょっと時間あるな」

京子「ねー、ちょっとそこの喫茶店行かない?」

結衣「そうだね」

………

京子「はあ~、私とうとう日本を離れるんだね」

結衣「なんだ、今更実感わいてきたのか?」

京子「うん、そうかも」

結衣「なんだよそれ」

京子「あかり達、元気にしてるかな?」

結衣「元気だろ、みんな」

それからいろんな話をした

小さい頃のこと、あかりのこと、小学校のこと、娯楽部のこと、
ちなつちゃんのこと、綾乃のこと、千歳のこと、高校のこと、
受験のこと、二人で一緒にアパートを探したこと、大学のこと、

私たちのこと、

二人でケーキを食べたあの日以来のギクシャクはなく

次から次へと話題が移って、たわいもないことをいっぱいおしゃべりした

私たちは、必死に、おしゃべりをした

京子「それからさー」

結衣「京子」

結衣「そろそろ行かないと」

京子「…あっ……うん…」

今までで一番楽しいおしゃべりだった

でもだんだん時間が近づくにつれて京子が時計を見なくなった

ずっとこうしてしゃべっていたいのは私も同じだった

でも、いつかはやめなければいけない

きっと、私が言わないと京子はずっとおしゃべりしてただろう

京子「んじゃ、行くね」

結衣「…うん」

京子「…」

京子「…結衣」

京子「私ね」

京子「私、結衣にたくさん言いたいことあるのに…」グスッ

結衣「私もだよ、ばかぁ…」グスッ

京子「結衣ぃ…」

京子「今ま゙で…本当にありがどゔっ!」

結衣「泣くな、ばか」

京子「結衣だって泣いでるくぜにいい!」

京子「…ゆ゙い゙ぃ…!」

結衣「なんだよ…」

京子「結衣結衣結衣結衣結衣ぃっ…!!」

結衣「なんだよお!」

京子「大っっ好き!!!」

結衣「…」

結衣「知ってるよ、それに…私もだよ」

京子「!へへっ!」

京子「それも知ってる!」

京子「じゃあね、また帰ってくるからね」

結衣「うん」

京子「バイバイ結衣」

結衣「バイバイ京子」

………

結衣「京子ぉ!」

京子「!」クルッ

結衣「風邪引くなよぉ!」

結衣「怪我するなよ!無茶もするな!人に迷惑ばっかりかけるんじゃないよ!」

結衣「車には気をつけろよ!悪い人にだまされるなよ!」

結衣「いつでも帰ってきていいからな!」

結衣「それから………それからぁっ!!!!!」

結衣「がんばれよぉ!!!」

結衣「私の大好きな京子ぉーーーーーーー!!」

京子「はずかしいよ!バカ!」

ひとまず、ここで一区切り

以下、二人のその後の話

……………

………




あれから、もう5年が経つ

京子とはメールのやりとりはあるものの、もう全然会ってない

京子が隣に居ないことにはまだちょっと慣れない

前、買い物をしているとラムレーズンを見つけた

懐かしくなって、買って食べてみると、あんまりおいしくなかった

京子はいつもぺろりとたいらげていた1カップを私はやっとのおもいで食べきった

仕事はやっぱり忙しい

学生の頃とは違い一つ一つの作業にも責任が伴うので精神的にも疲れてしまう

でも、京子もアメリカでがんばってるんだって思うと私もがんばれた

若い頃は、朝早く起きてゲームとかしてたけど

今は1分でも長く寝ていたいと思うようになった

あれだけ好きだったゲームもかれこれ触ってない

最近、やっと仕事が軌道に乗り始めて、ちょっとずつ楽しくなってきた


そして、一昨日のこと

同僚「船見さん!電話!」

結衣「何?誰?」

同僚「わかんないわ、とにかく変われって」

結衣「はい、お電話変わりました船見d」

京子『あ!結衣!?今大丈夫?』

結衣「京子!久しぶり!でも今あんまり大丈夫じゃない」

京子『あ、そう!まあいいや、とにかく聞いて!』

結衣「じゃあ『大丈夫?』とか聞くなよ」

京子『私ね、賞とったの!』

結衣「賞?何の?」

京子『論文!◇◇賞っていう賞!』

結衣「おいそれ聞いたことあるぞ!そ、それって…かなりすごいことなんじゃないか!?」

京子『かなりすごいぜ!』

京子『とにかく今すぐテレビ見て!』

結衣「へ?テレビ?なんd」
ガチャ
ツーツーツー

結衣「切られたし…」

結衣「…」

結衣「すみません!休憩入ります!」

結衣「ていうかテレビって何チャンネルだよ…」

ピロリロリン ピロリロリン
結衣「ん?」

<ニュース速報>」

アメリカの☆☆大学の歳納京子教授が

世界最年少で日本人初で女性初の◇◇賞受賞


結衣「…何チャンネルでも良かったのか」

同僚「どうしたの?」

結衣「え?いや、あの…」

同僚「あら、日本人が◇◇賞受賞!良いニュースね」

同僚「最近暗いニュースが多いから、明るいニュースはうれしいわね」

結衣「…さっき電話してきたのこいつですよ」

同僚「へ?」

………

結衣宅

結衣「はあー疲れたー」

結衣(…京子が◇◇賞ねー)

結衣(…ニュースでやってるかな)

ピッ
アナウンサー『えー、ニュースの途中ですが、ここで歳納教授による記者会見を…』

結衣(記者会見だって?なんてタイミングの良い)

パチパチパチパチ
京子『や、どもども』

京子『えーこのたび、大変栄誉ある賞を頂きました、歳納京子でございます』

結衣(へんな口調だなおい!)

prrrrr
結衣「はい、もしもし」

あかり『テレビ!テレビつけて!京子ちゃんが!』

結衣「今見てるよ」

結衣(なんか説明し始めたぞ…)

結衣(…すごいな、京子は、何言ってるかさっぱりわからん)

結衣(………まるで)

結衣(まるで知らない人みたいだ)

京子『それでは、何か質問のある方』

記者『今、一番誰に喜びを伝えたいですか?』

京子『そうですね…やっぱり両親と』

京子『幼なじみですかね』

結衣「!」

京子『いやー幼なじみのヤツが意外と泣き虫でね、アメリカ来るときに泣きながら応援してくれたんですよ』

結衣(…何を)

京子『あいつ昔はあんなに泣き虫じゃなかったのになー?』

結衣(…何を言ってるんだ京子は)

京子『結衣ー!見てるかー!』

結衣「…見てるよ」

京子『明後日帰るから例の喫茶店で待ってろ!』

記者『すみません、次の質問良いですか?』

京子『ああ、すみません、どうぞ』

結衣「…変わらないな、京子は」

というわけで私は今、例の喫茶店でコーヒーを飲んでいる

たくっ、京子のヤツ、ちゃんと時間も指定しろよな

もう、半日ここに座ってるっての


京子「結衣!!」

結衣「…遅いよ、京子」

京子「アーロハー」

結衣「…お前はハワイにいたのか?」

京子「いやーごめんごめん、取材陣まくのが手間取っちゃって」

結衣「そんなことしていいの?」

京子「いいよ、結衣に会いに戻ってきたんだし」

結衣「………おかえり京子」

京子「ただいま!結衣!」

結衣&京子宅

京子「ただいまー!」

京子「いや、久しぶりだね!ここも」

結衣「京子のものはだいたいそのままにしてあるよ」

京子「おおー」

パカッ

京子「あ!ラムレーズン発見!さっすが結衣!」

結衣「…ご飯食べてからな」

京子「んじゃ、電気消すよー」

結衣「ん」

京子「おやすみ結衣」

結衣「おやすみ京子」

京子「…」

京子「私さ」

京子「この5年間、はじめて結衣と離れて暮らしてみてわかったことがあるんだ」

結衣「何?」

京子「私、結衣なしじゃダメだわ」

結衣「私も」

結衣「私も京子なしじゃ…その…」

京子「なに?」

結衣「その…」

京子「その?」

結衣「…」

京子「京子たん居なかったら寂しくて死んじゃいそう?」

結衣「…そうだよバカ!早く寝ろ!明日実家帰るんだろ!」

京子「はーい」


ああ…

京子の寝息が聞こえる…

帰省途中
電車内にて

京子「うわっ人いねー」

結衣「ホントだ、東京での生活に慣れすぎたせいか人が居ない電車って変な感じがする」

京子「すっかり結衣も都会っこですなー」

………

京子「ねね、家に帰る前にさ、ちょっと寄り道してかない?」

結衣「…いや、まっすぐ帰ってやれよ、お母さん待ってるぞ」

京子「ちょっとだけ!ちょっとだけだからさ!」

結衣「…しょうがないな、京子は」

結衣「で、どこに連れて行くつもり?」

京子「すぐわかるよ」

………

結衣「中学校か…」

京子「懐かしいね」

結衣「勝手に入っちゃだめだろ」

京子「大丈夫!今日休日だからバレないって!」

娯楽部室

京子「うわっ!なつかしいいいい!」

結衣「お前よく合い鍵なんて持ってたな」

京子「ほら!座って座って!」

結衣「へいへい」

結衣「で、なにするんだ?」

京子「大事な話をします!」

京子「私さ、自分で言うのも何だけど結衣が居ない5年間ホントによく頑張ったと思う」

結衣「そうだな、◇◇賞までとっちゃうなんてな、ホントたいしたヤツだよお前は」

京子「どうしてだと思う?」

結衣「なにが?」

京子「だーかーらー、どうして私がここまでがんばれたと思う?」

結衣「…研究が面白いから?」

京子「それもある」

結衣「…実験設備がいいから?」

京子「それもある」

結衣「えっと…」

京子「結衣だよ」

結衣「ん?」

京子「結衣があの時、がんばれよって言ってくれたからだよ」

京子「私さ…結衣にあれ話そうこれ話そうっていろいろ考えてたのに」

京子「結衣にあったら忘れちゃった」

結衣「…私もだよ」

京子「結衣、ほんとはね」

京子「二人でケーキ食べたあの日」

京子「私、結衣に一緒にアメリカ行こうって言うつもりだったんだ」

京子「でも、結衣の努力が実を結んで、結衣が大人の一歩を踏み出して」

京子「それは、私も本当にうれしくて」

京子「…言い出せなかったんだ、最後まで」

結衣「………バカだなぁ京子は、そんなこと気にすること無いのに」

京子「私はね、結衣」

京子「私は結衣の人生を変えてしまうのが怖かった」

京子「大好きな結衣だからこそ、結衣の幸せを見つけてほしかった」

京子「でも………でもね、思ったんだ」

京子「私は、結衣になら人生を変えられてもいいなって」

京子「大好きな結衣がそばに居るなら、それはすっごく幸せだなって」

結衣「私もだよ、京子」

京子「!…へへ、知ってる!」

結衣「…ちょっと不安だったくせに」

京子「そんなことないよーだ!」

京子「…結衣」

結衣「何?京子」

京子「一緒にアメリカで暮らそう」

結衣「…しょうがないな、京子は」

~~~~~~~~~fin~~~~~~~~~~

オナニー鑑賞ありがとうございました

京結SSが増えますように!






さて、さくひまSS見に行くか

乙!

>>1って結衣がちなつと、京子が綾乃と付き合った挙句にふたりとも振られて旅に出るSSの人?

>>275

違うよ
なんだそのSS、興味あるぞ

>>1が書いたss他にある?

>>284
京子「私たちってどういう関係なの?」

>>287
綾乃「私、歳納京子に好きだって言う」結衣「…好きにすれば」

>>293
読んでくる

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