みくは猫アイドルにゃ
　だから、招き猫も出来るのにゃ

　片手を挙げて、福を呼ぶにゃ
　両手を挙げるとバランスが悪いにゃ

　猫は、両手を挙げると転んでしまうのにゃ
　両手を挙げるのはデンジャーなのにゃ

　みくは、片手を挙げてファンのみんなを呼ぶにゃ
　両手は、挙げないにゃ

「みく、聞いたか！？」

「にゃ？　どうしたにゃ？　Ｐチャン」
　
「ついにやったぞ！　ＣＤ売り挙げ第一位だ！」

「にゃ！！　やったにゃ！！」

「ああ、今日はお祝いだ！」

「美味しいご飯に行きたいにゃあ」

「じゃあ寿司」

「……解せないにゃあ」

「いなり寿司で」

「それは食べられるけど」

「おいおい、ただのいなり寿司じゃないぞ？」

「にゃ？」

「銀座のお店にも卸してる、高級いなり寿司だ」

「おぉう」

「そのお店で一日限定十食の、高級いなり寿司折詰だ！」

「さすがＰチャンにゃ！！」

　みくはお魚は食べられないにゃ
　だけど、いなり寿司は食べられるにゃ

　キツネさんとは喧嘩しないにゃ
　仲良くお揚げを分けてあげるにゃ

　キツネはいなかったので、Ｐチャンと二人で食べたにゃ
　嘘にゃ

　社長とちひろさんもいたにゃ
　いつの間にかのあさんもいたにゃ

「おめでとう、みく」

「ありがとうにゃ」

「本当におめでとう」

「のあにゃん、それはみくのお寿司にゃ」

「美味しいわ」

「返すにゃ」

「……」

「口から出そうとするにゃあ！！　Ｐチャンもお皿構えて待つんじゃないにゃあ！！！」

　みくはとっても売れっ子になったにゃ
　初めて凛ちゃんとライブバトルした頃とは天と地の差にゃ

　あの頃のみくは、困ってたにゃ
　そんなとき、Ｐチャンにあったにゃ

　Ｐチャンは、みくにシンデレラプロを勧めてくれたにゃ
　すごく真剣な顔で、みくをプロデュースしたいと言ってくれたにゃ

　だからみくは、Ｐチャンについてきたにゃ
　きっと、これからも
　ずっと、Ｐチャンについていくにゃ

　……まゆちゃん、どうしてそんな怖い顔してるにゃ？

「どうした？　みく」

「噂、聞いたにゃ」

「……俺が独立するって噂か？」

「そうにゃ」

「デマだよ」

「本当に？」

「……独立というか、仕事の形態を変えるのは本当だ」
「俺の担当が減らされることになる」

「にゃ？！」

「……当たり前だろう？」

「当たり前って……」

「みくがここまで売れてるんだ。そのみくのプロデューサーである俺が今まで通りじゃいられない」

「それって、もしかして」

「専属とまでは行かないが、みくメインになる」

「にゃっ！！？？」

　凛ちゃんの目が怖いにゃ

　まゆちゃんの目が怖いにゃ

　愛海ちゃんは……
　許して欲しければ揉ませろ？
　無茶言うにゃあ

　凛ちゃんもまゆちゃんも本気で怒ってる訳じゃって、みくにはちゃんとわかってるにゃ
　ただちょっと、感情の行き先に困っているだけにゃ

　だから、今は睨まれても許すにゃ

　愛海ちゃんは許さないにゃ

　だから揉むにゃあああああっ！！！

「ふぅ」

「みく、最近疲れてるか？」

「元気にゃ、疲れてる暇なんてないにゃ！」
「ファンのみんなから沢山元気を貰ってるにゃ！」

「そうか、それは良かった、その意気だぞ、みく」

「……Ｐチャン？」

「ん？」

「みくは、Ｐチャンからも元気が欲しいにゃ」

「おいおい」

「んー」

「しょうがないな、ほら」

「にゃあ」

　Ｐチャンが頭を撫でてくれると、みくは幸せにゃ
　ファンの声援も嬉しいけれど、Ｐチャンの撫で撫でも嬉しいにゃ
　元気が湧き出てくるにゃ

　Ｐチャン、もっと撫でていいよ？

　にゃあにゃあ

　ふにゃあ

「Ｐチャンは、ずっとみくのプロデューサーでいてくれる？」

「ああ」

「よかったにゃ」

「みくこそ、スーパーアイドルでいてくれよ」

「当然にゃ。みくとＰチャンは、スーパーアイドルとスーパープロデューサーの名コンビにゃ」

「おう」

　
　

　……あれ？




　あれ？




　

「Ｐチャン」

「ん？」

「みくとＰチャンは、なんだっけ？」

「スーパーアイドルとスーパープロデューサーの名コンビだろ？」

「……」

「あれ？　間違えたかな？」

「ま、間違ってないにゃ、あってるにゃ」