響「身長あと10cm伸びなかったけど」 (56)

 ── 4月初旬 765プロ事務所 ──


P「我那覇響さん……だったね」

響「うん! よろしくねプロデューサー!」

P「こちらこそよろしく」

響「自分のことは響でいいよ」

P「そうか? じゃあ早速だが、響」

響「なに?」

P「今度から君のプロデュースを担当させてもらうことになった」

響「ほんと? やっと自分にもプロデューサーがつくんだ」

P「大変なのはこれからだぞ?」

響「へっちゃらさー。自分、完璧だからな」

P「……」

響「ん? なんだ?」

P「背伸びしなくていい」

響「してないよ!」

P「完璧って言うには、あと10cmは早いな」ポンポン

響「頭ポンポンするなー!」


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うぅ、身長気にしてるのに……。

ちょっと前まで小学生だった亜美と真美よりちっちゃいし……。

そのうちやよいにも……。


響「うがー! やめやめ!」


貴音やあずささんぐらい……は無理かもしれないけど。

10cmぐらいは軽く伸びて、あのセクハラプロデューサーを見返してやるぞ!


春香「声が聞こえたけど、どうしたの響ちゃん?」

響「セクハラプロデューサーに宣戦布告!」

春香「あはは、セクハラって……」

響「言っていいことと悪いことがある!」

春香「ん~、たしかに言いにくいことを言う人だけど」

響「だけど?」

春香「それだけじゃないかなって……思う」

響「……よくわかんない」

春香「なんとなく、そう思うってだけだから」

響「ふ~ん……」


竜宮小町以外の9人は、みんなあのプロデューサーが担当するみたい。

ほんとにそんなことできるのかな?

ふふん、お手並み拝見だね。

 ── 4月中旬 765プロ事務所 ──


 ガチャ

響「はいさーい!」

いぬ美「わん!」

雪歩「ひゃあぁぁぁぁ!?」

響「うわっ!? どうしたの雪歩?」

雪歩「い、犬……犬ぅ……」

響「う、うん。いぬ美は犬だけど……」

真「あはは、雪歩は犬が苦手なんだよ」

雪歩「笑い事じゃないよぉ……」

いぬ美「わんっ」

雪歩「ひいぃぃぃ!?」

響「いぬ美は噛んだりしないから大丈夫だよ?」

雪歩「そういう問題じゃなくて……」

P「おお? ずいぶん大きい犬だな」ナデナデ

いぬ美「くぅん」

P「よしよし、いい子だ。ほら、大丈夫だぞ雪歩」

雪歩「む、無理ですぅ……」

響「プロデューサー、犬好きなの?」

P「動物はだいたい好きだよ」

響「そうなんだ。じゃあヘビとかも?」

P「ヘビはさすがに無理」

響「そ、そっか」

真「ヘビはボクも苦手だなぁ」

響「あはは、やっぱりそうだよね」

雪歩「犬より、まだヘビのほうがいいよぉ……」


へび香と……ワニ子のことは、もうしばらくみんなには黙っておいたほうがいいか。


それにしても、プロデューサー動物好きなんだ。

いぬ美も懐いてるし、悪い人じゃないのかな?


ううん! まだわからないけどね!

 ── 5月上旬 駅前 ──


響「あ! 春香、真、雪歩!」

春香「響ちゃん、遅いよー」

響「ごめん、みんなのゴハン作ってて……」

真「響って一人暮らしじゃなかったっけ?」

響「いぬ美の他にも家族がいるんだ」

春香「動物?」

響「うん」

春香「わぁ、見たい!」

真「ボクも!」

響「あはは、また今度ね」

雪歩「わ、私は遠慮するね」

響「雪歩じゃなくてもびっくりすると思うけど」

春香「?」

真「?」

響「そういえば千早は?」

春香「誘ってはみたんだけど……ほ、ほら! 千早ちゃん、シャイだから」

響「自分、話しかけようとすると睨まれるんだけど……」

春香「ほ、本人はそんなつもりないと思うよ、うん!」

真「千早は誤解されやすいからね」

雪歩「そうだよね……うん、私も頑張って話しかけてみよう」

真「雪歩もか!」

春香「あはは……」

響「その意気でいぬ美とも仲良くしてみない?」

雪歩「ごめん、それは無理だよ!」

響「なんで!?」

今日は歳の近い、事務所の高校生組でお出かけ。

上京してから、同世代の友達と遊ぶ機会ってあんまりなかったから、集まるだけでもすごく楽しい!

千早も来てほしかったなぁ……。


自分、嫌われてないよね?


春香「それにしても、あれだね~」

響「あれ?」

春香「アイドルが4人もいるのに、誰にも気づいてもらえないね~」

響真雪「「「うっ」」」

真「ま、まだまだこれからだよ!」

雪歩「そ、そうだよね」

響「プロデューサーが、もっと仕事を取ってきてくれれば……」

春香「そんなこと言っちゃダメだよ。プロデューサーさん、あんなに頑張ってるんだから」

響「う、うん」


わかってるけど……あんまり仕事が無くて、レッスンばっかりやってるのも事実だし。

仕事がもらえないと、プロデューサーを見返してやることだってできないよ!


うん、見返してやりたいだけ。

感謝なんかしてないからね!

 ── 5月中旬 レッスン休憩中 ──


響「そ、それじゃいくよ、雪歩!」

雪歩「う、うん!」

響「千早!」

雪歩「千早ちゃん!」

千早「萩原さん、我那覇さん……なに?」

響「あのさ、千早は自分たちのこと嫌い?」

千早「え?」

雪歩「ひ、響ちゃん。それはいきなりすぎるよ」

響「そ、そっかな?」

千早「……」

響「あの……」

千早「別に嫌ってなんかいないわ」

響「ほんと?」

雪歩「私のことも……?」

千早「もちろん。二人とも嫌いになる理由なんかないし」

雪歩「えへへ、よかった」

響「じゃあさ、これからもっと仲良くしような!」

千早「え、ええ」

P「お、ちょうどよかった。三人揃ってるな」

雪歩「ひぁ!?」

響「あ、プロデューサー」

響「……って、なんで自分の後ろに隠れてるの、雪歩?」

雪歩「急に声をかけられたからびっくりしちゃって……」

響「あ~……苦手なの犬だけじゃないんだっけ」

P「まあ、それはゆっくり慣れていけばいいさ」

雪歩「はい……」

千早「それで、なにか御用でしょうか?」

P「ああ、これから当面、この三人で組んで活動してもらうことになった」

響「ユニット?」

P「いや、正式にユニットとして活動するわけじゃない」

P「三人ともあくまでソロが主体だが、都合がつく限りスケジュールを合わせて活動してもらう」

響「ふ~ん、自分は構わないけど」

千早「決定事項ですか?」

P「そうだ。もちろん社長には報告してある」

千早「それなら、まあ……」

雪歩「私は……一人じゃないほうが気楽かも」

P「あ、暫定リーダーは雪歩な」

雪歩「ええぇ!? 無理ですよぉ!」

P「やる前から無理とか言わない」

雪歩「そんなぁ……」

千早「……」

響「リーダーって言ってもユニットじゃないんだし、なんくるないさー」

雪歩「ふぇぇ……」

 ── 6月上旬 イベント会場控え室 ──


千早は思ってたほどとっつきにくくはないし、趣味は違うけど音楽の話とかは盛り上がる。

必要以上に干渉されるのは嫌がるけどね。

猫みたい、っていうと怒られそう。あはは。


雪歩はリーダーなんてタイプじゃないし、見ててかわいそうになることもあるけど……。

自分の欠点を自覚して克服しようと努力できるのは、素直にすごいと思う。

だからプロデューサーは、雪歩にリーダーを任せたのかな?


自分は……二人と一緒になにができるんだろ。

わかんないや。

こういうの、春香のほうが向いてると思うけど……。


あーもー、あのプロデューサーの考えることは、わからないことばっかりさー!


春香「響ちゃん、また難しい顔してる」

響「うぇ!? 春香、戻ってたんだ」

春香「うん、いま竜宮の出番」

響「そっか」

春香「悔しいけど、まだまだ竜宮にはかなわないよね」

響「春香でも悔しいって思うことがあるんだ?」

春香「どういう意味かな、それは?」

響「あはは、ごめんごめん」

春香「ねえ、響ちゃん」

響「なに?」

春香「悩みがあるなら、プロデューサーさんに相談してみれば?」

響「なっ……別に悩みなんか」

春香「ふ~ん……」ジー

響「う……」

春香「響ちゃん、嘘つけないよね」

響「うぅ……」


自分って、そんなに顔に出てるのかな?

そんなつもりないんだけど……。


響「春香は、プロデューサーに相談したりするの?」

春香「うん、よく話を聞いてもらってるよ。自分じゃわからないこととか、よく見てくれてるし」

響「そうなんだ……」

春香「一緒に相談しに行ってあげようか?」

響「いいよ! 子供じゃないんだから」

春香「あはは、頑張ってね」

響「まだ相談するなんて決めてないってば!」

 ── 6月下旬 765プロ事務所 ──


響「千早」

千早「……」

響「千早!」

千早「……なにかしら我那覇さん? 今、昨日買ったCDを聞いて……」

響「それは後でいいでしょ? 今日の打ち合わせをしないと」

千早「萩原さんと二人で決めてもらっていいわ。それに従うから」

響「そういう問題じゃなくて! もう、雪歩もなにか言ってよ!」

雪歩「う、うん。あのね、千早ちゃん……」

千早「なに?」

雪歩「あ、あの……」

響「雪歩ぉ……」

千早「なにもないなら邪魔しないでもらえるかしら?」

雪歩「……」

響「邪魔って……!」

千早「私は馴れ合いがしたくてアイドルをやってるわけじゃ……」

雪歩「千早ちゃん!」

響「!?」ビクッ

千早「な、なに萩原さん?」

雪歩「それやめて!」

千早「え?」

雪歩「萩原さんとか我那覇さんとか……私たちと同じように名前で呼んで」

千早「名前で?」

雪歩「うん、名前で」

響「そ、そうだよ。自分のこともいいかげん響って呼んでほしいぞ」

千早「そんなの、いまさら……」

雪歩「私は……アイドルとか事務所の仲間とか以前に、千早ちゃんのこと友達だと思ってる」

千早「萩原さん……」

響「雪歩……」

雪歩「千早ちゃんは?」

千早「……」

雪歩「千早ちゃんが私たちのこと友達だと思ってないなら、これ以上なにも言わない」

響「……」

千早「私は……」

雪歩「うん」

千早「言わなきゃダメ……かしら?」

雪歩「ダメだよ!」

響「ダメ!」

千早「うぅ……わかったわ」

雪歩「……」ジー

響「……」ジー

千早「もちろん友達だと思ってる。はぎ……雪歩も響も」

響「うん! 自分たち友達だよね!」

 ガバッ

千早「きゃっ!? がな……響」

雪歩「ふぁぁ……よかったぁ……」

 ヘナヘナ…

響「ど、どうしたの雪歩?」

雪歩「偉そうなこと言っておいて、友達じゃないって言われたらどうしようかって……」

千早「……」

響「……」

雪歩「穴掘って埋まりたいぃ……」

響「ふぅ……これがなければ、リーダーとしてかっこよかったのに」

千早「ふふっ、そうね。このほうが雪歩らしいけど」

雪歩「二人ともひどいよぉ!」


でも、やっぱり雪歩はすごいなぁ。

いつもは頼りないのに、いざとなるとしっかり自分たちのリーダーだもんね。

本当に強いと思う。

そろそろ、いぬ美とも仲良くなってほしいけど……。


自分は……どうなのかな。

雪歩を見てると、プロデューサーが最初に「背伸び」って言ったのも、なんとなくわかる。


負けを認めるみたいで悔しいけど……ううん、春香も言ってたしね!

プロデューサーと話してみよう、うん。

 ── 翌日 765プロ事務所 ──


響「プロデューサー、今いいかな」

P「ああ、構わないけどなんだ?」

響「プロデューサーには、自分が背伸びしてるように見えるんだよね?」

P「ん? ああ、そんなこと言ったっけな」

響「それって、なにか足りないものがあるってこと?」

P「あ~……」

響「あ! 今、身長って思ったでしょ!」

P「オモッテナイヨー」

響「棒読みだし!」

P「気にしすぎだって」

響「ふんっ! プロデューサーなんかに相談するんじゃなかった!」

P「まあまあ、そう言うな。話ぐらいはしていってもいいだろ?」

響「……イジワルしない?」

P「シナイヨー」

響「信用できないんだけど……」

P「ははは……で、なんだ?」

響「うん……」

千早と雪歩は、なんでグループで活動させたのか、今ならわかる。

雪歩がリーダーを任されたことも。

確実に良い方向に結果が出てるからね。


でも、自分はわからない。

三人の中でなにができるのか。なにをすべきなのか。

千早と雪歩のように、自分もなにか成長できてるのか……。


実感できることがなにもない。

自分だけ取り残されてるみたいで、少しだけ……不安。

いや、ほんとに少しだけ。少しだけだよ。


P「そうか……話はわかった」

響「うん」

P「最初はな、響じゃなくて春香を入れるつもりだったんだ」

響「でも、それだと雪歩より春香のほうがリーダーっぽくなるよね?」

P「だろうな。結局、俺も含めて春香に頼りっきりになるだけだ」

響「それはわかるけど……」

P「けど?」

響「自分、春香より頼りないってこと?」

P「少し違うな。響にしかできないことに期待したんだ」

響「自分にしか、できない……?」

響「それが聞きたいんだけど」

P「教えない」

響「なんで!?」

P「もっと悩んで、自分で答えを出さないとな」

響「もう、やっぱりイジワルだ!」

P「ははっ、じゃあ意地悪ついでに」

響「?」

P「響がいてくれてよかったよ。ありがとな」

響「え? えぇ!?」

P「これからも頼むぞ」

響「う、うん……わかった」


やっぱり自分のことはよくわからない。

プロデューサーの言ったこと、いつかわかるのかな。


プロデューサーのことは、もっとわからない。

でも、自分たちのことをちゃんと考えてくれてるのだけは、なんとなくわかった。

どんな人なのか、もっといっぱい知りたいな……。

 ── 7月中旬 ダンスレッスン ──


響「ここで……タタンターン!」

 タタンターン

響「……でしょ?」

真「違うって。タンタターン!」

 タンタターン

真「……だよ」

響「それだと右足のステップがおかしい!」

真「そっちこそ左足がずれてる!」

ひびまこ「「ぐぬぬ……!」」

雪歩「ふ、二人とも落ち着いて?」

響「雪歩はどう思う!?」

真「ボクのほうが合ってるよね!?」

雪歩「いや、あの……私には速すぎてわから」

真「ボクたち親友だよね!?」

響「雪歩は自分たちのリーダーでしょ!?」

雪歩「えぇ!?」

響「親友だとなんなの!?」

真「そっちこそ、リーダーだったらなんだよ!?」

ひびまこ「「ぐぬぬぬぬ……!」」

雪歩「そ、それとこれとは……」

ひびまこ「「どっち!?」」

雪歩「ふぇぇ!?」

P「お、モテモテだな雪歩」

雪歩「え?」

響「あ、プロデューサー」

真「プロデューサー、お疲れ様です」

P「ん、お疲れさん。真と響、ちょっといいか?」

真「はい?」

響「なに?」

雪歩「はぅぅ、助かったぁ……」


雪歩、プロデューサーが近くにいても平気みたい。

ちょっと前までは自分の後ろに隠れたりしてたのに。

いつのまにそんな……。


ふ、ふ~ん! 自分にはイジワルなのに、他の娘には違うんだ!

別にどうでもいいけどね!

真「なにむくれてるの、響?」

響「別にっ!」

真「?」

響「それより、プロデューサーなんの話し?」

P「ああ、真と響にオファーが来てる」

真「仕事ですか?」

響「え? どんな仕事?」

P「テレビだ」

ひびまこ「「おお!?」」

P「二人のダンスパフォーマンスが買われたみたいでな」

P「バラエティ番組内のダンスコーナーでレギュラーをもらえた」

響「ほ、ほんとに!?」

真「やった! すごいや!」

雪歩「おめでとう、真ちゃん、響ちゃん!」

ひびまこ「「ありがとう、雪歩!」」

P「二人だけじゃない、これからみんな忙しくなるぞ」

雪歩「は、はい!」

響「うん!」

真「望むところです!」

最近みんなランクも上がって、着実に仕事は増えてきてはいたけど……。

へへっ、やっと竜宮に負けないぐらい大きな仕事をもらえた!

よしっ! もっともっと頑張るぞ!


真「それじゃ、響!」

響「うん、ケリを付けよう!」

雪歩「え?」

真「どっちのステップがいいか、雪歩に決めてもらう!」

響「絶対にどっちかに決めてね!」

雪歩「えぇ!?」

P「ははっ、責任重大だな雪歩」

雪歩「プロデューサーが決めてくださいぃ!」

P「じゃ、あとは任せた」

 スタスタ

雪歩「ほ、ほんとに行っちゃうんですか!?」

ひびまこ「「雪歩!」」

雪歩「うわぁぁぁぁん!」

 ── 数日後 765プロ事務所 ──


雪歩「え?」

千早「……」

響「自分たち、解散?」

P「ユニットじゃないんだから、解散とは言わないな」

響「でも、もうグループでの活動はしないって……」

P「まず、単純にスケジュール調整の問題がある」

P「三人ともランクが上がって、今後も仕事は増える見込みだ」

響「たしかに、最近は忙しくなったけど……」

雪歩「うん……」

P「中には、個々のステップアップのために絶対に外せない仕事もある」

P「三人のスケジュールを合わせようとするとな、そういう仕事を諦めることになりかねないんだ」

千早「なるほど……」

雪歩「……」

P「三人とも、ソロでの活動メインが当初からの方針だしな」

P「今のお前たちなら、もう大丈夫だろう」

千早「自分ではわかりません。いえ、プロデューサーの判断は信じますが……」

雪歩「わ、私も急に一人でなんて、自信が……」

響「大丈夫さー!」

千早「え?」

雪歩「響ちゃん?」

響「自分が一番近くで二人を見てきたからわかるよ! 大丈夫!」

千早「……」

雪歩「……」

響「ね?」

千早「なにが大丈夫なのか、よくわからないわ響」

雪歩「ふふっ、響ちゃんらしいね」

響「うん……ん?」

千早「まあ、響がそういうのなら、きっと大丈夫ね」

雪歩「そうだね」

響「う、うん」

千早「でも……響こそ、一人で大丈夫?」

響「じ、自分は最初から一人で平気だったし!」

雪歩「ほんとかなぁ? 響ちゃんが一番寂しがりだと思うけど」

響「雪歩に言われたくないぞ!」

P「あはは」

響「笑うなー!」

───

──




P「千早と雪歩は?」

響「帰ったよー」

P「そうか、響はまだ帰らないのか?」

響「うん、ちょっと話ししてもいい?」

P「ああ、なんだ?」

響「プロデューサーが言ってた、自分にしかできないこと……」

P「……」

響「自分、ちゃんとできたかな?」

P「わからないか?」

響「うん……」

P「今の千早と雪歩を見て、どう思う?」

響「変わったと思う。たぶん、いい方向に」

P「そうだな。それは二人が自分を変えようとしたからだ」

響「うん」

P「そのきっかけを作って、それがいい方向に向かったのは響のおかげだよ」

響「え? ほんとに?」

P「ああ、自信を持っていい」

響「そっか、へへっ」

P「二人だけじゃなく、響も成長したしな」

響「そうかな?」

P「今の響なら、もう背伸びする必要もない」


プロデューサーが最初に言ってたこと……。

こう思うのはなんか悔しいけど……どうしてかな、すごく嬉しい!

プロデューサーの言葉って、ほんと不思議だ。


少しだけ、信頼してもいいかも……。


P「これから忙しくなるぞ。覚悟は出来てるな?」

響「自分完璧だから、なんくるないさー!」

P「お、久しぶりに聞いたな、それ」

響「そう?」

P「あとは身長だけだな」

響「うがっ!? このイジワル!」


前言撤回! やっぱり信用できない!

 ── 7月下旬 765プロ事務所 ──


 ガチャ

響「はいさーい!」

いぬ美「わん!」

P「お、またいぬ美が一緒か」

響「うん、今日は定期検診があったから」

P「そうか。でも困ったな」

響「?」

真美「ひびきん、今日はいつもよりモフモフだね~」ナデナデ

いぬ美「くぅん」

響「そっちはいぬ美!」

亜美「いぬ美、ちょっとちっちゃくなった?」ナデナデ

響「自分、いぬ美じゃないぞー! って、頭撫でるなー!」

P「お~い、二人ともそのぐらいにしとけー」

あみまみ「「はーい」」

響「もっとちゃんと注意してよ!」

P「それは律子の仕事」

律子「プロデューサー殿も一緒に、三人まとめて説教してあげましょうか?」

P「それは亜美と真美の仕事だ。俺は今からミーティング」

亜美「うあっ!? ずっこいよ兄ちゃん!」

真美「真美たちを売る気か! この裏切り者ー!」

P「あーあー聞こえなーい。さて、ちょっといいか響」

響「あ、うん。さっきの困ったって、なにが?」

P「今日の現場は、いぬ美を連れていけなくてな」

響「そうなの? 今から帰って、また事務所に戻ってきてで間に合うかな?」

P「そこまで余裕はないな」

響「そっか、どうしよ……」

小鳥「響ちゃんが戻ってくるまで、事務所で面倒見てますよ」

響「いいの?」

小鳥「いぬ美ちゃんなら、お利口さんだから大丈夫よね~?」

いぬ美「わんわんっ」

響「ありがとう、ぴよ子!」

P「助かります、音無さん」

小鳥「いえいえ」

P「事務所のことは頼んだぞ、いぬ美」ナデナデ

いぬ美「わんっ」

P「雪歩は、あまり驚かさないでやってくれよ」ナデナデ

いぬ美「くぅん」

P「人間の言葉がわかってるみたいだなぁ」

響「プロデューサーの言ってることは、たぶんわかってるよ」

P「ほんとか?」

いぬ美「わんわんっ」


いぬ美だけじゃないよ。ハム蔵だってねこ吉だって、みんなそう。

心が通い会えると信じられるかどうか……それだけ。


プロデューサーは自分ではわかってないかもしれないけど、それができる人なんだ。

ちょっと……嬉しいかも。

 ── 移動中 社用車車内 ──


響「ねえ、プロデューサー」

P「なんだ?」

響「今度……自分の家族に会ってくれる?」

P「は? プロポーズか?」

響「えぇ!? そうじゃなくて、ハム蔵とかいぬ美たちのことだよ!」

P「ははは、わかってるって」

響「もう、なんでそんなイジワルなんだ」

P「可愛い子はからかいたくなる性分なんだよ」

響「ふ~ん……って、ええぇ!?」

P「いいね、そのわかりやすいリアクション。テレビ映えする」

響「そうやって、すぐごまかす!」

P「今度の休みにでも会わせてくれるか?」

響「え? あ……うん。びっくりすると思うけど……」

P「響の家族だろ? だったら大丈夫だ」

響「うん!」


へへっ、仲良くなってくれるといいな。

あれ? ってことは、プロデューサーうちに来る?

うわっ、急に照れくさくなってきたぞ……えへへ///

 ── 後日 ペットショップ ──


P「おおう……」

響「ね、びっくりしたでしょ」


今日、自分はオフ。プロデューサーは半日だけお休みをもらえたって。

せっかくだから、一日一緒にいたかったな……

なんて思ってないよ!? 思ってないからね!


いつもお世話になってるペットショップにみんなを連れてきて、そこでプロデューサーと対面。

一人暮らしのアイドルの部屋には、絶対に行けないって言い張ってた。


自分にはすぐにイジワルするのに、そういうところは真面目なんだもん……。

お料理なに作ってあげようかとか、色々考えてたのに……。


P「ヘビは予想してたけど、ワニはさすがに想定外だった……」

響「ワニ子は噛み付いたりしないから大丈夫だよ」

P「噛み付かれたら最期だな、ははっ……」

響「大丈夫だってば」

店員「私たちでも、ワニ子ちゃんに慣れるのは苦労しましたから」

P「慣れるものなんですね」


ワニ子は、顔はおっかないけど優しい子だからね。

プロデューサーが悪い人だったら、噛み付かれるかもしれないけど。


それにしても……自分のことほったらかして、店員のお姉さんとばっかり話してない?

なんかデレデレしてるし!

店員「あら? 響ちゃん、やきもち?」

響「ちがっ! そんなわけ……」

P「?」

響「うぅ……///」


ちょっと時間はかかったけど、みんなプロデューサーと仲良くなれたみたい。

店員のお姉さんともね!


店員「また来てくださいね」

P「ええ、ぜひ」

響「むっ」

P「なんだ?」

響「なんでもない! ふんっ!」プイッ

店員「ふふっ」

P「?」


もうプロデューサーなんか知らない!

 ── 8月上旬 ライブ会場控え室 ──


変な感じ……。

あれからプロデューサーと一緒にいると、変に意識してうまくしゃべれない。

どうしちゃったんだろ、自分……。


春香「はぁ……」

響「あれ、どうしたの春香?」

春香「あ、響ちゃん……」

響「すぐに出番でしょ? なんか元気ないよ?」

春香「響ちゃん……最近プロデューサーさんと仲良くなったよね?」

響「べ、別にそんなことないけど」

春香「そう? 最初の頃と全然違うよ」


まわりからは、そう見えるんだ……。

ご、誤解されないように気を付けないと!

響「それで、プロデューサーがなに?」

春香「うん。私、やっぱり……」

響「やっぱり?」

春香「……」

響「……」

春香「ごめん、やっぱりなんでもない!」

響「そ、そう……」


そっか……わかっちゃった。

春香、プロデューサーのこと……。


響「よ、よくわからないけど応援するよ!」

春香「え?」

響「春香は友達だもんね!」

春香「うん……ありがとう、響ちゃん」


春香は大切な友達。

だから……これでいいんだ。

 ── 翌日 テレビ局楽屋 ──


真「今まで気づいてなかったの?」

響「え?」

雪歩「響ちゃん、それはさすがに……」

響「えぇ?」

真「千早も気づいてたよね?」

千早「ええ、それはまあ……」

響「ええぇ!?」


千早まで春香の気持ちに気づいてたの!?

自分、そんなに鈍いってことは……な、ないよね?


響「とにかく、みんなで春香のこと応援してあげようよ!」

真「う~ん……」

雪歩「……」

響「ね?」

千早「それは、他人が口出しする問題じゃないと思うわ」

響「え?」

千早「春香が悲しむようなことには、もちろんなってもらいたくないけど……」

響「だから……」

真「ボクたちはアイドルだよ。簡単な問題じゃない」

雪歩「うん、私もそう思う」

真「もう、誰も顔も知らなかった頃とは違うしね」

響「それは……」

雪歩「私たちは、いつでも春香ちゃんを支えられるように、見守るしかないよ……ね?」

響「う、うん……」


自分たちはアイドル、か。

恋愛なんてしちゃいけない……んだよね、うん……。


真「それに、響だってさ……」

千早「……真」

真「あ……ごめん、これも大きなお世話だね」

響「?」


言いかけてやめられると気になるんだけど……。

自分だって、なに?

言われるようなこと、自分は別になにも……。

 ── 8月中旬 765プロ事務所 ──


響「プロデューサーは……」

P「ん?」

響「好きな人いる?」

P「いるけど?」

響「ふ~ん、やっぱりいな……いるんだ!?」

P「そんな驚くようなことか?」

響「え、いや……それって恋人?」

P「違うよ」

響「そ、そっか」ホッ


あれ? 自分安心してる?

う、うん! 春香のためだからね!


響「あ、もしかしてペットショップのお姉さん!?」

P「一度会ったきりだぞ……」

響「それじゃ……自分の知ってる人?」

P「ん~……まあ、そうとも言えるかな」

響「知ってる人なんだ?」

P「さぁね」

響「ケチ!」


知ってる人なら、春香の可能性はあるよね。

他の誰かってこともあるけど……。

たとえばその、じ…………な、なに考えてんのさ自分!


そんなこと、あるわけないよ……。

 ── 9月中旬 ライブツアー初日 ──


響「みんなー! 今日は来てくれてありがとー!」

 ウオォォォォォォ…!

真「今日はボクたちが最高のステージを用意したから……」

雪歩「みんなも最後まで応援お願いします!」

 ウオォォォォォォ…!

春香「……」

響「は、春香」

春香「え……あっ、それじゃいくよ! START!!」


春香……気持ちがここにないみたい。

アイドルとして、ステージの上では絶対にやっちゃいけないこと。


でも……17歳の女の子が、ただ誰かを好きになっただけなのに……。

それって、そんなに悪いことかな?

春香「~~♪」

響「~~~~♪」


こんな春香、たぶん自分たちの誰も知らない。

いつも自分たちを引っ張ってくれた春香が……一人だけ取り残されてる。

隣にいるのに、手も声も届かないぐらい……。


はるひび「「~~~♪」」


ごめんね、春香。

自分、春香に嘘をついてる。


嘘って……え? なにを?

なにも嘘なんて……ううん。


春香「……」

響「……」


そっか、やっぱり自分も……。

 ── ライブ終了後 控え室 ──


P「みんな、お疲れさま」

一同「「「お疲れさまでしたー!」」」

P「充分に練習できる時間のない中、よくやってくれた……と言いたいところだが」

一同「「「……」」」

P「今日の出来はどうしたんだ、春香。今までで最低のパフォーマンスだったぞ」

春香「はい……」

響「ちょっ、そんな言いかた……!」

P「響、お前もだ」

響「え?」

P「途中から意識が散漫になってたな。自覚は?」

響「……うん、あるけど」

P「だったら、次からは最後まで集中するんだ」

響「……はい」

P「春香は、今のままなら次のステージには出せない」

一同「「「!」」」ザワ…

雪歩「そ、そんなに厳しくしなくても……」

響「そうだよ!」

P「せっかく楽しみに来てくれたファンを失望させてもか?」

雪歩「……!」

響「それは……」

春香「雪歩、響ちゃん、ありがとう……。でも、悪いのは私だから」

響「……」

春香「次までには、必ず気持ちを切り替えます」

春香「アイドルとして、これ以上ファンの期待を裏切るようなことはしません」

春香「だから、みんなと一緒にステージに立たせてください! お願いします!」

P「……」

一同「「「……」」」

P「わかった、信じるよ」

春香「ありがとうございます!」

P「ただし、一人で抱え込まずに、必ず誰かに相談すること」

P「俺に話しにくいことなら、律子でも音無さんでもな」

春香「はい! あの……」

P「なんだ?」

春香「いま聞いてもらっていいですか?」

P「ここでか?」

春香「はい、今ここで」

響「春香、なに言って……」

春香「大丈夫だよ、響ちゃん」

響「え……」

P「わかった、聞くよ。なんだ?」

春香「私は、プロデューサーさんが好きです!」

響「!」

一同「「「!」」」

春香「返事を……聞かせてください」

P「……」

春香「……」

一同「「「……」」」ゴクッ

P「すまないが、春香の気持ちを受け入れることはできない」

春香「はい……」

響「あ……」

一同「「「……」」」

春香「えへへ、わかってました! ありがとうございました!」ペコッ

P「いや……」

響「春香……」


たぶん、誰も悪くない……。

ただ切なくて、もどかしくて……悲しいだけ。

自分たちが……アイドルが恋をするって、そういうこと……。

 ── 翌日 屋上 ──


春香「わぁ~! 風が気持ちいいね!」

響「うん……」

春香「もう、響ちゃんがそんな顔しててどうするの?」

響「だって……」


たしかに、これじゃどっちが失恋したのかわからないけど……。


響「春香……無理してない?」

春香「全然! すっきりしちゃった!」

春香「ほんと言うと、ふられるのわかってたし」

響「だからって、そんな簡単に割り切れるものなの?」

春香「割り切らなきゃいけないから、あそこで告白したんだよ」


なんで、春香はそんなに強いの?

自分だったら、春香と同じようになんて……できない。


春香「響ちゃんも、そろそろ素直にならないとね」

響「へ? なにが?」

春香「ごまかさなくてもいいよ。私の恋敵なのに」

響「こ、恋敵!?」

春香「あ、私は脱落しちゃったか。あはは」

響「べ、別にそんなことないし! なに言って……」

春香「みんな気づいてるよ?」

響「ぅえぇぇ!?」

春香「ふっふっふ~」

響「いや、それは……」

春香「言い訳は聞きません!」

響「えぇ~……」


わかってるよ、自分だって!

自分が誰を好きかぐらいはね!


響「でも、春香だってまだ……」

春香「うん、まだ好きだよ」

響「ほら……」

春香「そんなの関係ないけどね」

響「え?」

春香「響ちゃんが私を応援するって言ってくれたのは、ウソ?」

響「違うよ! あれは本当に……」

春香「わかってる、私もそうだもん」

響「あ……」

春香「響ちゃんは、大切な友達だから応援したい。それだけ!」

響「春香……」

春香「うん?」

響「ありがと……」

春香「うん! 私の分も頑張ってね!」

響「そう言われると、ちょっと複雑だけど……」

春香「あはは」

響「春香は強いなー」

春香「強くないよ。強がってないと心が折れちゃうもん」

響「そっか……」

春香「うん……」

響「……」

春香「……ひぅっ……ぅ……ぁ」ポロポロ


悲しくないわけないよね……。

とても大切な想いだったんだから……。


こういうときは、思い切り泣いちゃったほうがいい。

誰のためでもない、自分自身のために。


響「春香……」

春香「ん……?」ポロポロ

響「自分も一緒に……ひぐっ、泣いていいかな?」グスッ

春香「へへっ……響ちゃんの、泣き虫……」ポロポロ

響「う、うっさい……ぅぁ……」ポロポロ


二人で一緒に泣いて、自分たち強くなろう。

これからなにがあっても、どんなことにも負けないように。

 ── 10月10日 バースデーパーティ終了後 ──


17歳の誕生日。

今日、プロデューサーに告白する。

この想いを押し込めたままアイドルを続けるなんて、自分にはできないから。


春香みたく、みんなの前でできればかっこよかったんだけど……。

やっぱり無理。


自分は春香ほど強くないからね。背伸びしてもしょうがない。

そうだよね、プロデューサー……。


響「プロデューサー、今いい?」

P「おう、17歳の誕生日おめでとう」

響「うん、ありがと……」

P「どうした?」

響「うん……」

響「プロデューサーは、春香から告白されて心が動かなかった?」

P「ん? そうだな……」

響「春香ってほら……可愛いし、すごくいい子だし」

P「たしかにな」

響「アイドルとプロデューサーだからダメ?」

P「いや、それを考えなくても断ったよ」

響「なんで?」

P「前に響が聞いただろ? 好きな人いるのかって」

響「えっ……あ」


それは思い出したくなかったかも……。

自分の気持ちを受けて入れててもらえるかもなんて、ほんの少しでも……

まったく期待してなかったわけじゃないけど。


でも、やっぱり無理だよね、うん!

それならそれで、自分の気持ちにけじめをつけないと!


今よりもっと強くなって、前に進むために。

響「プロデューサー!」

P「なんだ?」

響「自分はプロデューサーが好き!」

P「おう、俺も響が好きだぞ」

響「……」

P「……」

響「へ?」

P「告白だろ? その返事だ」

響「そ、そっか、自分のこと好きなんだ……」

響「……って、好きぃ!?」

P「いちいちいいリアクションするなぁ、響は」


じ、自分はもちろん告白のつもりで言った。好きって。

プロデューサーは、その返事で……好きって。


響「プロデューサーが言ってた好きな人って……」

P「もちろん響のことだ」

響「そ、そうだったんだ……あはは///」


な、なんかもう、どうしていいのかわからない。

抱きついたりしちゃって……いいのかな?

で、でもここ事務所だし……。

P「わかってるとは思うが……」

響「え?」

P「響がアイドルである以上、俺は担当プロデューサー以上にはなれない」

響「あ……」

P「これだけは、な」

響「うん……でも」

P「ん?」

響「もし、自分がアイドルをやめたら……」

P「やめたいのか?」

響「やめたくないよ! 今はまだ……やめたくない」

P「俺も、響がIAを制覇するまではやめさせるつもりはない」

響「IAを……」

P「それまでは、今までどおりアイドルとプロデューサーだ」

響「……」

響「ひとつだけ……いいかな?」

P「なんだ?」

響「普通の女の子に戻れるまで、自分のこと好きでいてくれる?」

P「もちろん」

響「絶対に?」

P「絶対に」

響「うん! 自分もプロデューサーのことずっと好きだよ!」

P「ああ、俺もだ」

響「あは……///」

 ガチャ

春香「えへへ、響ちゃんおめでとう!」

響「は、春香!? それにみんなも?」

P「お前たち、盗み聞きか?」

真「そうです! しっかり聞いちゃいましたよ~」

響「うぁ!?」

P「マジか……」

雪歩「こ、これはもう責任を取らないと」

響「責任!?」

P「おいおい……」

千早「私たちの友達を泣かせたりしたら、許しませんよ?」

響「千早……」

P「もちろんだ。絶対幸せにする」

響「は……」

一同「「「おおー!」」」

P「……」

響「あはは……も、もうプロデューサー! みんなの前でそんなこと///」

P「みんなの前だから嘘はつけないだろ」

響「うん……///」

一同「「「……」」」

春香「ちょっと早くもノロケですよ、ノロケ……」ヒソヒソ

真「これはもう、邪魔者は退散するしかありませんなぁ……」ヒソヒソ

響「なにヒソヒソ話してるの?」

春香「なんでもないよー」

真「へへっ、お幸せに!」

響「う、うん」

雪歩「おめでと、響ちゃん!」

響「あ、ありがと」

千早「響なら大丈夫よ」

響「うん!」

春香「プロデューサーさん」

P「なんだ?」

春香「響ちゃんのこと、よろしくお願いします」ペコッ

P「ああ、任せろ」

響「春香……」

春香「響ちゃん」

響「なに?」

春香「IA制覇だけは、響ちゃんにだって譲らないよ?」

響「自分だって負けないさー!」

 ── エピローグ ──


あれから一年半。

自分たちの後輩アイドルも増え、765プロも少しだけ様変わりした。


自分と同期の仲間たちの何人かは、一足先に違う道に進んでいる。

これからもアイドルを続けるみんな。引退したみんな。

選んだ道はそれぞれだ。


自分、我那覇響は高校の卒業と同時にアイドルを引退した。

アイドルとしてやり残したことは、本当になにもない。

同じ時間を過ごした仲間たちが、みんなそうだったように……

とても誇らしくて、ええと……ああもう、こういうの上手く言えない!


とにかく最高の2年間だったさー!

うん、これだけは完璧だったって断言できる!


でも、もし……

もし、ひとつだけ心残りがあるとすれば──

響「なんで16歳から1cmも身長が伸びないんだー!」

P「1cmもか」

響「1cmもだよ! 悪かったね!」

P「縮んでないだけよかったじゃないか」

響「全然フォローになってないよ!」

P「ははっ、まだまだ10cm早いままだな」

響「うぐっ……どうせ、もう伸びないよ!」

P「そうか~」

響「……ちっちゃくちゃダメ?」

P「ま、急に大きくなったら、誰だかわからなくなるだろうしな」

響「ふーんだ! そうやってイジワルばっかりするのは照れ隠しなんでしょ?」

P「響が可愛いからな」

響「う……///」

P「んん?」

響「うるさい、このイジワル!///」

P「こんな奴は嫌いか?」

響「ううん、大好き!」



おわり

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