なの「さようなら……大好きです」(148)


ピチャッ

なの「はかせ…… どこにいるんですか……?」



「痛い…… 痛いよ……」



なの「はかせ……?」



「痛い…… 助けて…… なの……」



なの「はかせ? どこにいるんですか? ……はかせ? はか……」



なの「はかせ!!」

なの「はかせ!? 大丈夫ですか!?」ガバッ!

チュン チュン チチチチチ


なの「はあっ、はあっ……夢?」


なの「はかせ……? はかせっ!」

はかせ「なに……?」

なの「あっ……はかせ、その、何とも、ありませんよね……?」

はかせ「なにいってんの……?」

なの「はぁ……やっぱり夢か…… よかったぁ……」

はかせ「んー……? まだ四時なんだけど……はかせはまだ起きなくていいんだけど……」

なの「あっ、すみませんでした……」

はかせ「む~……」

なの「…………」


ピチャッ


なの「嫌な夢だったなあ……汗びっしょりだ」




ピチャッ

私はロボットです。 名前は東雲なの。

一緒に住んでいる東雲はかせが、私を作ってくれました。


はかせは何かの研究をしていて、一日中家に居ます。 私は、そんなはかせの身の回りの世話をして暮らしていました。

今は、はかせの粋なはからいで、学校にも通わせてもらっています。

学校では友達がいっぱい出来て、とても楽しいです。


……出来れば、背中のネジ回しもどうにかしてもらいたいんですけど……


ともかく、私は充実した日々を送っています。

ロボットだなんて思えないくらいに。



ずーっとこのままだったらいいなって、思ってしまうくらいに。


なの「それじゃあはかせ、行ってきますね」

はかせ「いってらっしゃーい」


なの「ふう…… 今日はずいぶん余裕があるなー」

なの「寄り道でもしてこうかな?」

   「……の」

なの「相生さんの所に行ってみようかな……」

   「なの!」

なの「へっ?」


なの「……えっと、どちら様、ですか?」

博士「……博士、って呼ばれてるけど」

なの「博士、さんですか……?」

なの(はかせの知り合いかな……)

博士「…………」

なの「えーっと…… 家になにか、ご用でしょうか……?」

博士「……私と……」

なの「えっ?」

博士「いや、やっぱりいい」

博士「今日はもう時間が無いから、帰る」

なの「あ……はい」

博士「じゃあ、また来るから」スタスタ

なの「……はい」

なの(行っちゃった…… なんだったんだろ?)

ゆっこ「あ、なのちゃん! スラマッパギー!」

なの「相生さん……おはようございます」

ゆっこ「なのちゃんにまでスルーされるの……? やっぱりララバイしたほうがいいかな?」

なの「…………」

ゆっこ「なのちゃん?」

なの「えっ? あ、すみません、なんでしたっけ?」

ゆっこ「どうしたの? ぼーっとして…… なんかあったの?」

なの「あー…… さっき、変な人に会って」

ゆっこ「変な人? どんな?」

なの「えーと、金髪で、目が青くて……白衣を着た女の人です」

ゆっこ「……それってはかせのこと?」

なの「え?……そういえば似てますね……でも、私より年上で、大学生くらいの人でした」

なの「あと、確か…… 右目に眼帯をしてました」

ゆっこ「はかせの知り合い?」

なの「ああ、たぶんそうだと思います……自分のことを博士って言ってたし」

ゆっこ「その人も博士なの?」

なの「研究仲間、とかですかね?」

ゆっこ「んー、そうかな? ……お姉さんとかじゃない?」


なの「お姉さん……?」

ゆっこ「だって、金髪で青い目って珍しくない? 家族だよ、きっと」

なの「家族……」

ゆっこ「あー、そういえば一度も見たことないけど、はかせのお父さんとお母さんってどうしてるの?」

なの「えっ…… ああ、その…… そ、そうだ、外国に居るんです! お、お仕事で!」

ゆっこ「そうなんだー 外国人なの?」

なの「えーっと…… お父さんが外国の方で、お母さんが日本人で……あっ、私はそっちの方の親戚……です」

ゆっこ「へー、はかせってハーフなんだ」

なの「は、はい、まあ……」

ゆっこ「じゃあ、お姉さんだけ外国から帰って来たのかな?」

なの「そうなんでしょうか……?」

ゆっこ「そうだよ、会わせたら喜ぶよきっと」

なの「はあ……」


なの(はかせの家族、か……)

なの(そういえば、一度も聞いたことなかったっけ)

なの(私が出来る前の、はかせの話……)


なの(私、はかせのこと何にも知らない……)

……

なの「ただいまー」

はかせ「あ、なのおかえりー」

なの「すぐに夕飯にしますねー」

はかせ「はーい」

なの「……あっ、そういえば」

なの「あの…… はかせ」

はかせ「なにー?」

なの「えっと、その…… いえ、やっぱり何でもないです」

はかせ「そうなの?」

なの「はい…… すぐに出来ますから、おかし食べ過ぎないで下さいね」


なの(どしよう、怖くて聞けない……)

なの(はかせの家族、か…… 一度も連絡は無いし、家には一枚もそういう写真が無いけど)

なの(やっぱり、どこかにいるのかな……)


博士「…………」


博士「……やっと捕まえた……」


博士「……今度こそ、取り返してやる」


翌日

チュンチュン チチチッ チュン

なの「ふわぁ…… う~ん」

なの「……今日はよく眠れたなぁ……」


なの「はかせ、朝ですよ……っと」

なの(きょう日曜日だっけ……)

はかせ「すう……すう……」

なの(この前は早くに起こしちゃったんだっけ)

なの(もう少し寝かせておこう……)

カラカラカラ

なの「ふう…… 今日もいい天気」

なの「そうだ、洗濯物干そうっと……」


ピンポーン


なの「……お客さん?」

ピンポーン ピンポーン

なの「はーい」トタトタ

なの(こんな朝早くに誰だろう……?)

ガララララッ

なの「はい、すみませ……」

博士「……おはよう」

なの「あ……博士さん、でしたっけ」

なの「えーっと、何のご用件でしょうか……?」

博士「……迎えに来たんだけど」

なの「…………!!」

博士「とりあえず、中に入れてくれる?」

なの「えっと、そ、それは……」



はかせ「……なのー? だれ……?」

なの「あっ……!!」

ガラララララララッ ピシャッ!

博士「ちょっ…… どうしたの!?」

なの「いえ、そのっ……」

はかせ「なのー? どしたの?」


なの「えっと、ああ、その、きょ、今日はお引き取り下さい!」


はかせ「どーして? 開けてあげないの?」

なの「はかせ!ちょっと向こうに行っててください!」

はかせ「なんで?」

博士「その声……!!」

博士「そこに居るのは……はかせ!? ……ここを開けて!」

バンッ!!

なの「ひっ……」

博士「時間が無いの! 早くしないと…… もうっ!!」

バンッ!! バンッ!!

博士「さっさと開けろっ!!」

バンッ!! バンッ!! バンッ!!

なの「……やめてください!」

バンッ!! バンッ!! バンッ!! バンッ!!

なの「やめてくださいっ!! ここには誰もいませんっ!!」

なの「もう帰って下さい!!!」

博士「…………」

なの「…………」

博士「…………」


博士「……わかった、今日はもう帰るよ」

博士「……また来るからね」


なの「…………」

はかせ「…………」

なの「はかせ……」

なの「ごめん、なさい」

はかせ「なの……? なんで泣いてるの?」

なの「だって…… 私……」

はかせ「はかせはずっといっしょだよ……?」

なの「……!」

なの「……は」ウルッ

なの「は、かせ……」ポロポロ

はかせ「……はかせがずっといっしょにいるから」ギュッ

なの「うっ……ひっく……ふぇぇぇ……」



はかせ「ずっと……いっしょにいるから」


博士「あーっ…… 面倒なことになったなー……」

博士「やっぱりおとなしく渡してくれないかぁ……」

博士「どうしよっかな……?」

コンコン

「……私です」

博士「……入って」

助手「失礼します」

博士「で? 何の用?」

助手「昼食が出来たので、呼びに来ました」

博士「いらない」

助手「でも博士、昨日から何も……」

博士「……いらないったらいらないの!」

助手「……すみません」

博士「それよりさ、何か武器になるもの無い?」

助手「武器、ですか?」



博士「出来れば…… ロボットでも壊せるくらい強力なやつがいいんだけど」


なの「……いいですか? ちゃんと戸締りして、誰が来ても出ちゃダメですよ?」

はかせ「わかったー」

なの「本当に大丈夫ですか? ……うーん、またあの人が来るかもしれないし、やっぱり今日は学校を休んで……」

はかせ「いーいーのー! なのは学校に行くの!」

なの「……無理しなくてもいいんですよ? 一日くらい平気ですから……」

はかせ「いいから! なのはなのなんだからはかせにたよってればいいの!」

なの「はあ……」

なの(昨日のことで、ちょっと調子に乗ってるなあ……)


まったく…… これだからガキは……


なの(……あれ?)

なの(今何か…… 聞こえたような……?)

なの(……? まあいいや)


はかせ「じゃあいってらっしゃい!」

なの「あっ、はい……行ってきます」

ガラララララッ ピシャッ


なの「ふう…… 本当に大丈夫かな……?」

なの「……あ、もうこんな時間だ……」

なの「……せっかく行かせてもらったのに、遅刻しちゃいけないよね」

なの「急がないと……」


タッ タッ タッ タッ タッ タッ

タッ タッ タッ タッ タッ タッ

  「なの」

タッ

なの「……!」

博士「そんなに急いでどこに行くつもり?」

なの「……博士、さん」

博士「学校? ……なのは学校が大好きだったもんね?」

なの「えっ?」

博士「でも、ちょっとはおかしいと思わない?」

なの「ど、どうして私のことを知ってるんですか?」

博士「……何も覚えてないんだね」

なの「どういうことですか?」

博士「要らない記憶だから忘れたんでしょ? ……ショックだなー」

なの「……? 何を言ってるんですか? 私とあなたは、一昨日会ったばっかりじゃないですか」

博士「…………」

なの「そ、それより……その、は、はかせは、連れて行かないで下さい……」

博士「?……そっちこそ何言ってんの?」

なの「え?だって……はかせを、その、連れ戻しに来たんですよね?」

博士「……なんで私がはかせを連れていかなきゃいけないわけ?」

なの「えっ? そ、それは……だって、家族、だから」

博士「家族……? 私とはかせが?」

なの「は、はい……」

博士「ぷっ、あははははっ!!」

なの「なっ……何で笑うんですか?」

博士「はー…… 誰がそんなこと言ったの?はかせ?……いや」


博士「そいつかな?」


なの「えっ?」

ゆっこ「あ、なのちゃん!スラマッパギー!」

ゆっこ「あれ?誰?……ああ、この前言ってたはかせのお姉さん?」

なの「あ、相生さん!」

なの(あれ?いつのまに……?)

博士「相生さんか……なるほどねえ……」

ゆっこ「あ、初めまして、相生祐子です」

博士「…………」

なの「相生さん、その……その人はちょっと……」

ゆっこ「はかせとも結構仲良いんですよー?」

博士「…………」

ゆっこ「研究とか手伝ったりもしててー」

博士「!…………黙れ」

ゆっこ「実は私にもそういう才能あるのかなー、なんつって」

博士「黙れっ!!」ブンッ!


バキッ!

なの「…………え?」

博士「はあっ……はあっ……」

ゆっこ「…………」

なの「あ、相生さん……?」ユサユサ

なの「あ……あっ、あ……相生さんが……相生さんがっ……!!」

なの「なんでっ……!」

博士「はあっ……よく、見てみなよ」

なの「え?」

博士「ほら、もう一度呼びかけてみたら?」

なの「……相生さん?」



ムクッ



ゆっこ「なに?なのちゃん?」グルンッ

なの「ひっ……」

ゆっこ「どうしたの?そんな顔して」プラン

なの「あ、相生さん、く、首が……」

ゆっこ「え?首?」



ゆっこ「あー、こうか」グルン ゴキンッ!

ゆっこ「えへへ、折れちゃってたね」コキッ コキッ



なの「…………うそ、なんで」

博士「まだわからないの?……それは本物の相生祐子じゃない」

偽ゆっこ「何言ってるの?私はゆっこなんだけど」

偽ゆっこ「ね?なのちゃん?」グルッ ゴキン

なの「いやっ……いやあっ……」

偽ゆっこ「そんなあ……ひどいよ……あれ?また外れた?」プラン

なの「やだ……こないで……」

博士「ほら、逃げるよ」ガシッ

なの「あっ……」

偽ゆっこ「え? あ!待ってよ!」ヨロッ ドテッ

偽ゆっこ「あいたたた~」

博士「……走って!」

なの「は、はいっ!」

タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ

なの「はあっ、はあっ……」

博士「はあっ……もう平気かな?」

博士「何年も引きこもり同然だったから……はあっ……きついなあ……」

なの「はあっ、はあっ、は、博士……」

博士「昔は速い方だったのに……ん?何?」

なの「あ、あれは一体……本物の相生さんはどこへ行っちゃったんですか!?」

博士「それは……いや、そんなことより、一緒に来てくれる気になった?」

なの「へ?……博士さんは、私を迎えにきてたんですか?」

博士「そうだよ」

なの「どうして……? さっきの、あの、変な相生さんと、関係があるんですか?」

博士「まあ、ぶっちゃけそうなんだけど…… そうだな、一つ質問してもいい?」

なの「……?はい」


博士「……なのはさ、ペットを飼ったことある?」


なの「えっ?……何のことですか?」

博士「……質問を変えよう」



博士「阪本、って名前の猫に、心当たりは無いの?」




なの「……なんですか? それ」


博士「やっぱりそうか…… そりゃあ心当たりなんてないだろうね」

博士「もう忘れちゃったんだから……」

なの「ちょっと……なんのことですか? 阪本ってなんなんですか? 教えてください!」

博士「……ここで全部教えることは出来ないよ」

博士「余りに量が多いし……なのにとっては辛い記憶だから」

なの「辛い……?」

博士「でも私についてくれば、いずれ全部思い出すことになるよ」

博士「だから、ついてきて欲しいんだ、私に」

なの「ついていくって…… どこへですか?」

博士「それは……」


ザザザザザザザザザザザザザ


なの「え……?何の音?」

博士「なっ……」


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ


ドパンッ!

シャアアアアア!



なの「サ、サメ……?」

博士「やっぱり感づかれてたか……!」

ドパンッ!

博士「くそっ!」ジャキッ

なの「さ、散弾銃!?どこからそんなもの……あっ!」


ガブッ


博士「ぐっ」


ブチブチブチッ


博士「ああああああああっっ!!!」


なの「え…… あ……」

なの「博士、さん…… う……で、が……きゅ~」バタッ

…………
………
……

博士「あああああっ!!」ガバッ

助手「博士! 大丈夫ですか!?」

博士「はあっ……はあっ…… このくらい、平気だよ」

助手「でもっ……!」

博士「どうして、接続を、切ったのっ……? いいとこだったのに……」

助手「……馬鹿なこと言わないで」

博士「……何? その口の利き方」

助手「こっちの方が普通でしょ?……友達なんだから」

博士「ははっ……友達? そっちこそ、馬鹿なこと言わないでよ」

助手「…………」

博士「もう、手段は選んでられないね…… はかせの方から攻めよう」

博士「持たせてくれたショットガンはダメだったし……」

博士「そうだ、首輪! 持ってきてくれた?」

助手「……はい」

博士「よし…… これでなんとかなるかもしれない」


助手「…………」ギリッ


ピチャッ


なの「はかせ……? どこに居るんですか……?」


ピチャッ


「痛い…… 痛いよ……」


ピチャッ


なの「どうして…… はかせ」


ピチャッ


なの「なんで、こんなこと」


ピチャッ

…………

はかせ「ふんふん ふーふん ふふんふふんふんふーふん」ポリポリ

ガララララララッ

はかせ「?…… あ、はかせだー!」

博士「…………」

はかせ「はかせも食べるー?」ポリポリ

博士「……なのをどこに隠したの」

はかせ「ぷぷっ、教えてあげなーい」


ズド゙ンッ!

博士「……次は当てる」チャキッ

はかせ「ぷぷぷっ、それおどしにならないんだけど」

はかせ「なのははかせとずーーっといっしょだもん」

はかせ「はかせなんかに教え」


ズドンッ!

グシャッ

博士「…………」

はかせ「……だからいみないんだけど」

博士「……ロボットって便利だよね」


博士「頭を半分吹き飛ばされても死なないんだから」


はかせ「あー、目とれちゃった」ポロッ

はかせ「いる? おそろいの方が良いとおもうけど」

博士「ふう……やっぱりショットガンくらいじゃどうしようもないか……」

博士「ロボット設定をつけられるとほぼ不死身だし、やっかいだなぁ……」



博士「……本物は首を絞めただけで死んだのにね」



はかせ「……そんなこと忘れちゃったー」ニタァ

…………

ピチャッ


なの「はかせ…… 何をしてるんですか?」


ピチャッ


なの「どうしてこんなことを」


ピチャッ


なの「私の…… 私の友達に」


ピチャッ



はかせ「……苦しいよ、なの」


偽はかせ「はかせ、そろそろ出てって欲しいんだけど」

偽はかせ「はかせがはかせになったのは嬉しいけど、なのはこのはかせだけの物だから」

偽はかせ「だからもう出てって」


ザザザザザザザザザザザザ


偽はかせ「じゃないとまた、がぶーって、するよ?」


ドパンッ!

博士「……知らないよそんなこと」ポイッ

 
ポスッ

偽はかせ「………?」


偽はかせ「くびわ……?」

ボムン

偽はかせ「うわっ!」

オグリキャップ「へっへっへっへっへっへっへっ」

偽はかせ「えっ、あっあ、ああ」ガタガタ

偽はかせ「うわああああっ……」

博士「なのは……なのちゃんは物じゃない」

偽はかせ「い、いぬ……なんで?」

博士「ましてやお前の所有物であるはずがない」

偽はかせ「は、はかせの、義眼で……なのに接続してるの?」

博士「……あの子は一人の人間だよ」



博士「だって……私の、一番の友達だったんだから」


偽はかせ「いっ、いぬ……違う、にせもので、ただの、きおくなんだから……」

オグリキャップ「へっへっへっへっへっへっへっ!」

偽はかせ「ひゃああっ!」

博士「……そろそろ私の友達を返してもらうから」

博士「居場所を吐かないんだったら、この世界ごと壁を壊してから探すだけだよ」

偽はかせ「そ、そん、なことしていいの? ここはなのの記憶の中枢なんだけど……」

博士「……ここには阪本が居ない」

博士「なのちゃんが阪本を忘れるはずがない…… ここはお前が作ったことの証拠でしょ?」

偽はかせ「…………」

博士「そして本物のはかせだって、阪本を忘れることはない」

偽はかせ「……やめて そんなの知らない」

博士「お前は本物のはかせですらない、ただの記憶のかたまりだ」

偽はかせ「はっ、はかせははかせなんだけどっ! 偽物なんかじゃ……」

博士「……やれ、オグリキャップ」

オグリキャップ「ふへっふへっふへっふへっふへっ」

偽はかせ「や……いや……許して」

偽はかせ「だって……阪本が……ゆっこが悪いんだもん……」

偽はかせ「はかせは……はかせは何も悪く、ないもん!」

オグリキャップ「へっへっへっへっ!ふしゃあああああああ!」

偽はかせ「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガララララララララララララララララララララララララララッ!!!

…………


ピチャッ


博士「なのちゃん……」

なの「…………」

博士「全部、思い出したの?」

なの「……はい」


なの「はかせは……私が、殺したんですね」


ピチャッ


…………

相生さんは、学年が上がってから、はかせの研究に興味を持つようになっていきました。

いつも二人で地下室にこもって、色々なものを作ったり、分解したり……

相生さんには、はかせについていけるだけの才能が有ったんです。

はかせもそれを感じて、相生さんになついていたのかもしれないですね……



……あの日、地下室で何があったのかは、正確にはわかりません。

私が悲鳴を聞いて見に行った時には、ぼーっと突っ立っているはかせと、左目から血を流している相生さんと、

阪本さんの、……死体があるだけでした。


……ただの事故だったのかもしれないし、喧嘩だったのかもしれません。

もしかしたら、ちょうどその時二人が作っていたのが、青い瞳が綺麗な……

義眼だったから、そのせいかもしれません。


とにかく、はかせがその時言った言葉を聞いて、私は頭が真っ白になりました。

自分は悪くない、悪いのはゆっこだ、阪本だ、って……


……普通の人間だったら、死ななかったでしょう。 

いくら相手が子供といっても、ただの女子高生の握力で、そんな簡単に死ぬはずがありません。

でも、私は普通じゃなかった。 人間じゃなかった。


それから先は、よく覚えてないんです。 だけど予想は付きます。

私はずっと…… 記憶を元に作りあげた、頭の中の小さな町で、はかせと相生さんの幻影と暮らしていたんですよね? 現実から目をそむけるために……

だって、あそこには、長野原さんも、水上さんもいなかったから。 学校も、本当は無かったんです。

………どこに行って、何をしてたんでしょうね? 私……

あははっ…… 何も、覚えてない……


それなのに、相生さんは私を迎えに来てくれた。 そんなにやつれて……

元々色が薄かったけど、白髪が交じって……

……本当に、ありがとうございます。 最初に気付かなくてごめんなさい。



……でも、私はもう帰れないみたいです。


もう……泣かないで下さい…… あなたはもう、こんなことする必要は無いんです。

私は所詮、人間じゃありません。 はかせが、自分の孤独を埋めるために作ったロボットです。……人形なんです。

今となっては、もう本当のことはわからないですけど……

……はかせには家族が居なかったのかもしれません。 だから、私を作ったんだと思います。


だから私は……あなたには、最初から要らないものなんですよ…… あなたは孤独な博士じゃなくて、相生さんなんですから。

相生さんには、もっと大切な人が居るはずです。

もう、私にこだわらなくて良いんです。 既にこの世にはいない、あなたの友達として……死なせて下さい。

そろそろ、本当に……お別れです。

相生さんは…… え? あ、えーっと、ゆ、ゆっこは、私の、一番の友達でした。

なんか、恥ずかしいですね…… えへ、でも嬉しいです。




……さようなら。 大好きです、ゆっこ。


…………

………っこ


………ゆっこ


「ゆっこ!」


ゆっこ「…………」


助手「ゆっこ…… 起きて、ゆっこ!」

ゆっこ「……麻衣、ちゃん?」

麻衣「ゆっこ…… 良かった……」

ゆっこ「なのちゃんは……?」

麻衣「……ごめん」

麻衣「もう、時間がたち過ぎてて…… こうするしか、なかった」

なの「…………」シュウウウウウ……

ゆっこ「……そっか、麻衣ちゃんが電源を切ったんだ……」

ゆっこ「これでもう、なのちゃんが戻ることは無いんだね」

麻衣「ゆっこ……でも……」ギュッ

麻衣「私……ずっと昔から……ゆっこのことが」

ゆっこ「……ねえ麻衣ちゃん」


麻衣「……何?」

―――相生さんには、もっと大切な人が居るはずです。

ゆっこ「私、この前ひどいこと言ったよね」

麻衣「…………」

ゆっこ「今までずっと、迷惑かけちゃって……放っておいて」

ゆっこ「もう、友達には戻れないかもしれないけど」

ゆっこ「でも……私と、一緒に居てくれる?」


麻衣「……うん」

麻衣「ずっと……一緒だよ」


ゆっこ「ありがとう……」



ゆっこ「私も、大好き」



--------------------------------------------------------

ゆっこ「ぎゃあああああああああああああああああ」ガバッ


生徒「・・・・・・」


ゆっこ「廊下に・・・立ってます!」



というわけでした ちゃんみお、教師陣、二年生その他もろもろ好きの人には申し訳ないことをしたと思ってる

この後本当は幸せにくらすゆっこを麻衣ちゃんの後日談が入る予定だったが、諸事情により無くなった

自分でも分かりにくいと思うが、見てくれてありがとうございます

乙…だけど地下室の出来事がよく分からない…
物語の発端であり根幹だと思うのだがなぜ阪本殺した

>>131
その辺はゆっこが知ってる設定だから、後日談に入れるつもりだった でもだれると思って……

一応、はかせがゆっこを義眼の実験体にして目を潰す
→それを止めようとしてはかせに思いっきり噛みついた阪本がはかせにレンチで殴られてあぼん のはずだった

ぴちゃっ、は首を絞められたはかせのよだれが垂れる音、眼帯を義眼と反対にしてたのはなののイメージ空間だったから

わかりにくくてごめんな

あ、青い義眼を試しで移植しようとしてゆっこの目を潰したのね

>>141
そう ペガサスの千年眼と同じ方法で
高性能な義眼で、神経と接続するタイプだったから、それを通じてなのに接続したという厨二設定

つまり義眼が青いのはミスリードのため以外に特に理由はないのね

>>144
そうです はかせが碧眼だから青にしてみただけです

それにしても無事に終わってよかった また立てることがあったらその時はよろしくな では

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