京子「あらしのよるに」(194)

ビュウウウウウウ

結衣「…風、すごいな」

あかり「台風来てるからね…」

京子「明日学校休みにならないかなー♪」

ちなつ「今日の夜ごろにこの街を通るみたいですけど…」

ちなつ「っていうか明日は土曜日です」

京子「台風なんて、日曜日の夜からくればいいのに…」ブー

結衣「…………」

七森中 
 ごらく部部室

ビュオオオオオオォ ガタガタガタガタ

あかり「部室の戸、飛ばされないかなぁ」

京子「こりゃ帰りに雨戸閉めてったほうがいいな…」

ちなつ「っていうかなんで台風来てんのに部室に集まってんですか」

あかり「そういうちなつちゃんも部室来てるよ…」

ちなつ「わ、私はあかりちゃんについてきただけ!」

京子「分かるよ~、この風の中を一人で帰るのは怖いよね~」

ちなつ「そんなんじゃありませんったら」

京子「だいじょうぶ!私が守ってあげるよぉー!!」ガバッ

ちなつ「きゃー!結衣せんぱーい!!」

結衣「…………」

京子「…おい、結衣ー?」

京子「ちなつちゃん持っていっちゃうぞ」

ちなつ「た、助けて下さい結衣先輩!!」

結衣「はっ」パチン

結衣「…あ、ごめん…ぼーっとしてた…かも」

結衣「ほ、ほら京子、ちなつちゃんから離れろって」

京子「ちぇー」

ちなつ「…結衣先輩、どうしたんですか?」

結衣「大丈夫…なんでもないから…」

京子「…………」フト

京子「今日、結衣ん家泊まりにいこっかなー」

結衣「な、なんだよいきなり」

ちなつ「京子先輩…台風くるんですよ?」

京子「だって台風の夜ってわくわくするじゃんか!!」

京子「こんな夜に一人だなんて…体が火照って寝られないよぉー」

結衣「妙な言い回しをするなっ!!」

結衣「ま…まぁ来たいなら勝手にくれば…いいよ…」ポソッ

京子「ん?今なんて?」

結衣「別に何も言ってないぞ?」プイ

あかり「あかりは台風の夜って苦手だなぁ…」

京子「なんで?風とかすっごい吹いて楽しいよ」

あかり「でも、窓がガタガタしたり…雨がすごい降ったり…」

結衣「……!」

あかり「あと雷もすごいし…あかりにはとっても耐えられないよぉ」

結衣「………ぅ」

あかり「だからこういう時はお姉ちゃんと一緒のお布団で寝るんだぁ」

京子「…あかり」

あかり「なぁに?」

京子「…イヤ、ナンデモナイヨ」

あかちなゆい「「「?」」」

ザアアァァ…

ちなつ「…って言ってるうちに雨降ってきちゃいましたよ」

あかり「わわ、早く帰らなきゃ…!」

ちなつ「湯呑み洗っちゃいますね、あかりちゃん手伝って?」

あかり「うんっ」ドタバタ

京子「………」

結衣「………」

京子「…結衣ー?」

結衣「…何だ?」

京子「ひょっとして、台風怖い?」

結衣「!!」

結衣「な、なに言ってるんだよ、そんなわけないだろっ!?」

京子「そうだよねー、あかりじゃあるまいしねー」ニヤニヤ

結衣「そ…そうだよ、別にちっとも怖くなんか…」

京子「あかりと違って結衣は大人だもんねー?一人で大丈夫だよねー?」ニヤニヤ

結衣「うん大丈夫!大丈夫…」

京子「それならいいんだけどさー」スクッ

結衣「あ…」

京子「じゃあ、私達もちなつちゃんたち手伝って、帰ろっか?」

結衣「………」

結衣「……うん」

ビュゴオオオオオオオオオ ズザァアアァァァアア

ちなつ「きゃあっ!?雨つよっ!」

あかり「あ、あかりのかっぱ飛ばされちゃうよぉ!!」バタバタバタ

京子「は…早く帰ろうっ!!」

あかり「わ、わああああ」バサバサバサバサ

ちなつ「あ!?あかりちゃーーん!!」

京子「おぅ…もーれつー…」

あかり「わあぁん見ないでよぅー!!」バサバサバサバサ

結衣「……うわあー」

ビュザァァァァァアア ズザシャシャシャ

ちなつ「じゃあ…私達はここでっ…!」ビュオオオ

京子「うん、気を付けてね!」

ちなつ「はい、先輩達も気を付けて!」

京子「あかりは…強く生きるんだよ」

あかり「………うん、ばいばい京子ちゃん、結衣ちゃん…」ボロッ

京子「…がんばれー」バイバイ

京子「あかり…大丈夫かなぁ」

結衣「そ、そうだな…」

ビュシャアアアアアア

京子「じゃあ、私もここで…」

結衣「……え」

京子「結衣も気を付けてね、じゃっ」クルッ

結衣「………っ」

グイッ

京子「おっ?」

結衣「あっ……」

京子「ゆ、結衣?」

結衣「…あの、その」

結衣「い、家にラムレーズンがあるんだっ」

京子「ん?」

結衣「お得用の…『どすこい、質より量パック』」

結衣「た、食べにこないか」

京子「…………!」ピコーン

京子「いや~今日はほら、風も強いし遠慮しとくよー」ニヨニヨ

京子「また今度行くからさ」

結衣「えっと…賞味期限、今日までなんだ!」

京子「結衣、アイスに賞味期限はないよ?」ニヨニヨ

結衣「うぐっ…」

京子「…結衣、台風こわいんでしょ?」

結衣「ち、違うけど…アイスが…ほら、アイスがさ」

京子「だからアイスはまた今度貰うって」

結衣「賞味期限が…」

京子「だからないってば」

結衣「………」

京子「………」

結衣「………」

京子「………」ニヤ

結衣「…あぁそうだよ!怖いんだよ!台風!!」ガァッ

結衣「だから…だから泊まりに来てくれっ!!」

アパート
 結衣の部屋

京子「やっと着いたー!」ガチャッ

結衣「ばか、早く閉めろ!!」ビュオオオオ

京子「はいはいっと」バタン

京子「うへえー上から下までびちょ濡れだよ」

結衣「お風呂入っちゃおう、ちょっと待っててタオル持ってくるから」

京子「早く頼むよ結衣にゃんや」ブルブル

結衣「はいはい」スタスタ

わしゃわしゃ

結衣「かゆいとこ無いか?」

京子「…ん、大丈夫」

結衣「流すぞー、目つぶれ」ザバー

京子「ふぅ、さっぱりした」

結衣「雨が降ると、髪が長いんじゃ大変だろ」

京子「うん…湿気で髪先ははねるし、ふくらんじゃうし」

京子「綾乃みたいに縛っちゃえば楽そうだよね」

結衣「…それでも綾乃の毛先は丸まってる時あるけど」

京子「雨降ると綾乃のもみあげ(?)、すごい事になるよね…」

結衣「あぁ…」


綾乃「っくし!」クシュン

チャプン…

結衣「………」

京子「いやぁ極楽ですなぁ」

結衣「おっさんかよ」

結衣「っていうかなんで一緒に湯船入ってるんだよ狭いだろ」

京子「なんてひどいお方かしら…出て行けと仰るの…?」キャルッ

京子「あなたが『台風怖い』と仰るからわざわざ泊まりに来ましたのに…」

結衣「っ…!仕方ないだろ!怖いものは怖いんだよ!!」カアァ

京子「はいはい、分かってるよ」

京子「結衣にも怖いものがあったんだね」

結衣「あ、当たり前だろ…私だって人間なんだから」

京子「だってさぁ、…ふふっ」

結衣「笑うなよ!」

京子「そう言う意味じゃなくて…」

結衣「じゃあなんだよ?」

京子「結衣ってなんていうか…クールで、かっこよくて」

京子「苦手な事もないし、なんでも出来るイメージで」

京子「そんな結衣が、台風が怖いって…」

京子「なんか、すごく可愛いな、って」

結衣「………」カアァ

結衣「…そんなこと無いよ」

結衣「台風は嫌いだし…数学とか苦手だし…」

結衣「ドアの向こうから急に手が出てきたらと考えると部屋から出れなくなる」

京子(ほんとにそれ怖いんだな…)

結衣「…けっこう、寂しがり屋だしな」

京子「ふふ、じゃあ今日はずっと一緒にいてあげるよ~」ダキッ

結衣「…ありがと」

京子「結衣はかわいいなー」スリスリ

結衣「おい、調子乗るな」

京子「いや本当にかわいいよ」スリスリ

結衣「………」

結衣「はい、買い物行かなかったからこんなのしかないけど」コトッ

京子「ころっけ!!」キラキラ

結衣「…お前そんなにコロッケ好きだったっけ?」

京子「えーなに言ってんの!?台風と言えばコロッケだろぉ!!」

結衣(そういうもんなのか?)

京子「かにクリームうめえ」サクサク

結衣「かにクリーム好きなの?」

京子「大好き、ラムレーズンと同じくらいすき」サクサク

結衣(おかずとデザートで語られても…)

京子「もぐもぐ…」サクサクサク

京子「はふはふ」モフモフ

京子「んっ…」ゴクゴク

京子「ぷはぁ」コトン

京子「うめえー」モフモフ

結衣「…ふふっ」

京子「ん?なに?」

結衣「お前といるとご飯がおいしいよ」

結衣「お茶飲むか?」コポコポ

京子「うん」

京子「落ち着きますなぁ」ノホホン

結衣「そうだなぁ」

京子「台風がくるなんて嘘のようだ」

結衣「……!!」ビクッ!

京子「あっ…」

結衣「………おい」プルプル

京子「ごめん☆」

結衣「なんで思い出させるんだよ…!」プルプル

京子「まぁまぁ…」

ビュオォォオオオォオォ シュザザザザザザザ

テレビ『台風8号は勢力を増してー…』

京子「いよいよ来たなー…」

結衣「お、おい窓開けるなよ…!」ビクビク

京子「ちょっと面白いよ、結衣も来てみ?」

結衣「誰が行くか!」

テレビ『非常に強い雨と雷を伴ってー…』

結衣「くっ」ピッ

京子「テレビ消しちゃうの?」

結衣「ゲームやるんだよ」カチャカチャ

ズバシューン ギヤアァー

結衣「あれ、ボスのいる所ってどこだっけ…」ピコピコ

京子「縄の廊下の隣じゃなかったっけ」

結衣「あぁそうだった…」ピコピコ

ザァァァアァァァ… ゴロゴロゴロ…

京子「雨強いなー」

結衣「だから言うなって…」

ピシャーーーーーーーーーーーーーン!!!    …フッ

京子「!!?」

結衣「きゃああああああああああああああああ!!!?」

結衣「わーっ!わぁぁああぁぁぁあ!?」ドタバタ

京子「お、落ち着け結衣!停電しただけだから!!」

結衣「うぅぅぅ…!」ガタガタ

京子「今日の結衣はキャラが違うぞ!?」ナデナデ

結衣「うぅ……」ギュッ

京子「…よしよし」

結衣「きょうこ……」グスッ

京子「怖くないよ…怖くないから…」ナデナデ

京子「そうだよね、結衣も女の子だもんね」

京子「怖い物くらいあるよね」

結衣「………」グスッ

京子「…結衣、覚えてる?」

京子「昔、私がいじめられて泣かされてたらさ」

京子「結衣とあかりは必ず助けに来てくれたよね」

結衣「…うん」

京子「…ほんとに嬉しかった」

京子「だから今夜は私が結衣を守るよ!」

京子「ほら、泣かないで?」ニコッ

結衣「……」ドキッ

結衣「ほんとに一緒の布団で寝るのか?」

結衣「大体まだ9時だぞ…」

京子「停電も直んないし、たまにはいいんじゃない?」

京子「それに一緒の布団なら結衣もさみしくないでしょ?」

京子「ほらほら入った入った!おやすみー!!」バサッ

結衣「お休み…」モフッ

ビュザザザザザザザ ゴロゴロビシューーン

結衣「………」プルプル

京子「結衣」ギュッ

結衣「!」

京子「へへ、くっつくとあったかいね?」

結衣「…そう、だな」ギュ

結衣「…ありがとな」

京子「ん?」

結衣「ほんとに怖いんだ、台風」

結衣「雷とか、風とかいつもよりずっと強くて」

結衣「一人でいるとその中に巻き込まれていきそうで…」

京子「大丈夫だよー、私がいるよー」ナデナデ

結衣「……」ギュ

京子「……」ナデナデ

京子「…そんなに台風が怖いのに」

京子「結衣はなんで一人暮らし始めたの?」

結衣「…ほっとけない奴がいてさ」

京子「?」

結衣「ちっちゃい頃から泣き虫べそかきで」

結衣「でっかくなったと思ったら無鉄砲で」

結衣「いつもハラハラさせてくれる奴が」

京子「………」

結衣「ずっと一緒だった」

結衣「そいつといると、楽しいんだ」

結衣「一人でいるよりずっと楽しい」

結衣「そいつがそう思わせてくれるんだ」

結衣「…あかり達がごらく部に入ってから」

結衣「そいつと二人っきりになれる時間が減っちゃって」

結衣「みんなと遊ぶ時間も好きだけど」

結衣「そいつと二人っきりでいれる時間も、私は同じくらい大好きなんだ」

結衣「だから、無理言って家を飛び出しちゃった」

京子「………」カアァ

京子「ば、馬鹿だな結衣は!」

結衣「?」

京子「寂しがりのくせに、台風嫌いなくせに!」

京子「そんなことも忘れて、出てきちゃったのか?」

結衣「そうだな…」

結衣「忘れちゃったなぁ」

結衣「そいつの事しか頭の中に無かったかな」

京子「…ほんと、馬鹿だな」

結衣「ふふ、そうだな?」

ギュッ

京子「………」

結衣「………」

京子「大丈夫」

京子「ずっと、一緒だよ?」

結衣「…うん」

チュンチュン

京子「…あぁーっ!よく寝た!」

結衣「…ん、朝?」パチ

京子「おっ、おはよう結衣!」

結衣「おはよう…」ムク

京子「昨日はずっと結衣がくっついてたから腕が痺れちゃったよ」ヒリヒリ

結衣「すまん…」カアァ

京子「えへへ、でもあったかかったよ」

京子「そんなことより、ほら!」

ガラッ

京子「いい天気だよ」

結衣(まぶしい…)

結衣(雲一つない、青くて高い空)

結衣「…あぁ、そうだな」

結衣(…快晴だな)

京子「朝ごはん食べたら、どっか行かない?」

結衣「うん」

結衣「そうしようか」









京子「そういえばラムレーズンは?」

結衣「…停電で溶けてるな」

京子「えぇぇー!?」


おしまい

おしまい

元ネタ
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/21(水) 23:25:02.48 ID:JzOZ9g9MO
台風で夜一人で過ごすのが怖い結衣ちゃん
しかし京子に台風が怖いから泊まり来てなどと恥ずかしくて言えない結衣ちゃん
そんな結衣の心情を察し「今日結衣ん家に泊まり行こっかなー?」と焦らす京子ちゃん
「別に来たいなら来ても良いよ」と本当はすごく来てほしいけどちなつとあかりの手前そっけない態度の結衣ちゃん
そして空気を読まず「今晩雷すごいみたいだねーあかり雷苦手だなー」と言ってしまうあかり
さらに不安になる結衣ちゃん
「まあ結衣はあかりと違って大人だから一人でも平気だよなー」とニヤニヤしながらからかう京子ちゃん
「あ、当たり前だろ小さい子供じゃないんだし」と強がる結衣ちゃん
部活が終わり京子と二人きりになりさりげなく京子を家に誘う結衣ちゃん
さらにからかう京子ちゃん
そして根負けし顔を赤くしながら台風が怖いから泊まりにき来てと頼み結衣ちゃん

こんなSS誰か書かないの?

この速さなら言える
結衣「…気まずい」も書いた

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