「山田課糸の圧政」(24)

時は20XX年
SS深夜VIP国は一人の神の統治により支配されていた……

山田課糸「我は山田課糸……この世界の神だ」


言葉は統制され、この男を支持する文しか世の中に出回らなくなり、
SSもとうの昔に書く事、読む事が出来なくなっていた。

もしこの男を非難する言葉を浴びせかけようものなら……語るも無残である。


兵士A「おまえか!神を侮辱したという奴らは!」

兵士B「無礼者!恥をしれ!今ここで処刑を行う!」

モブ男「やれるものならやってみろ……好きにSSを立てれない世界なんてまっぴらだ!」

兵士A「アホなやつめ、そんなことを言わずに従っていれば、死なずに済んだものを」


反逆は即刻処刑だ。


モブ男(ここまでか……すまんみんな)

山田課糸「待て……その者を放すのだ」

モブ男「何ッ……?」

兵士A「こ、これは山田様!どうして町の真ん中にいらっしゃるのですか?」

兵士B「今は民の士気が高まっていて危険な状態であります!さぁ早く宮殿へお戻りください」


モブ男(そうか、こいつが山田課糸……間違いねぇ。硬貨に掘られている顔と全く同じだ)

モブ男(しかしなぜこいつがここにいるんだ?兵士の言うとおり自らの命を危険にさらしてまで来る用事でもあるのか?)


山田課糸「少し散歩をしようと思ったのだ……それに私を悪くいう者がここにいると聞いてな」

兵士A「ええ……ですので処刑を今から行うつもりなのです」

山田課糸「罪状はどのようなものだ?」

兵士B「侮辱罪……等々様々な罪がきせられています」

山田課糸「なるほど……まあよい、放してやれ」

兵士B「いえ、しかし」

山田課糸「いいから、放すのだ!」

兵士A「はっ……了解しました」

モブ男(おいおい……どういうことだ?縄をほどいているぞ)

モブ男(もしかして無罪放免って事なのか?一体なぜだ?)


兵士A「罪人の縄をほどきました……危険なので私の後ろにお下がりください」

山田課糸「ふむ」


モブ男(なぜだか知らないが、これはチャンスだ!ここで決める……)

兵士B「ありがたくお言葉をかみしめる事だな。さぁ早く見えなくなるところまで走っていけ!」

モブ男「……ふっ」


男は隠し持っていたナイフを取りだし、兵士Bの喉元を貫く。その体を前方にいた兵士Aに向かって
蹴り飛ばした。体は勢いよく飛んでいき、そのまま直撃して兵士Aは地面へと倒れ伏した。


兵士A「うぐっ……マ、マズイ!お逃げ下さい!」

モブ男「そうはさせない!くらえええええっ!!」


素早く駆け寄り、間合いを詰める。一秒の間の出来事である。
男はナイフと喉へと突きさした。よし……これですべてが終わった
そう安堵していると、突き刺したはずの男が目の前から急に消え去った。

モブ男「一体……どうなってやがる」


そう呟いた時には、もうすべてが終わっていた。


山田課糸(武)「他愛のない……軟弱者であったか」

モブ男「な……に……?」


山田は一瞬のうちに男の後ろに回り込んでいたのだ。男が刺したと思っていた山田は、
作り出した幻影であった。そして男は次の瞬間、自分が何をされたのか気付く……


モブ男「くっ……そっ……こんなはずじゃ……」


男は後ろから右手で貫かれていた。
自分の胸のあたりから延びる手を見て、男は意識を失い、地に倒れ伏した。


山田課糸「兵士Aよ」

兵士A「……はっ……はいっ!」

山田課糸「明日の一面に、この出来事を細かく取り上げるように出版へと呼びかけるのだ」

兵士A「わかりました」


一人の勇敢な男が王に殺された事は一面に取り上げられ、ある者は王の力に恐れおののき
そしてある者はモブ男の死にひどく憤慨した。

そして我らが物語の主人公は後者に属する、勇敢な男である。


男「モブ男……畜生!」

女「男、新聞を叩きつけたくなる気持ちはわかるけれど落ち着いて」

男「これが落ち着いてられるかってんだ!」


この二人は男と女。モブ男とは子供の頃からの友人であった。
友人を殺されたことで男は怒りにとらわれている。

コンコン、と男と女の住む部屋にノックの音が響く。女が来客を
確認し、誰であるかわかったら愛情を持って迎えられた。ここへ
やってきたのは大柄の男であった。


大男「男、やけに機嫌が悪そうじゃないか」

男「お前はこれ読んでないのかよ?……見てみろよ」

大男「ん?……う……嘘だろう……モブ男が……」


この大男も古くからの旧友であり、男、女、モブ男、大男でこれまで
ずっと親しくしていた。大男は新聞を見ていなかったらしく、その記事を
見ると、「許せない」と何度もつぶやきながら大粒の涙を流していた。


男「くそっ……ついに俺たちのメンバーから殉教者が出てしまった」

女「ええ……しかもそれがモブ男だなんてね」

大男「……いつかこうなるとはわかっていたが」


男は顎に手を当てしばらく何か考えた後、出来るだけ大きな声で
二人に向かってこういった。


男「レジスタンス軍を集合させる。本日の6時に、場所はここ、俺達の部屋だ!」


女と大男は真剣にその言葉を聞き取る。さらに男が続ける。


男「……モブ男の死は無駄にはできない……これを使って市民を巻き込み、今こそ反逆の時だ!」


女はうなずき、大男は手を拳にして「そうだ!」と声をはりあげる。
こう言い放った男はまた顎に手を当てて、何やら考え事を始めた。

はるちゃんは出ますか


時刻は6時、場所は先ほどの男と女の部屋。
伝令を聞きつけたレジスタンス軍のメンバーたちは
狭い部屋にぎゅうぎゅうと詰めかけている。

レジスタンス軍は別名、文字解放軍と呼ばれている。
総勢11名のメンバーで構成されていて、その代表者は
もちろん男である。

初めは旧友4人で作り上げた小さな組織だった。
自由な発言が出来る世界を求めて様々な活動を
していたのだ。その暗躍を知り、賛同する人々が
集まり、少数精鋭の今のレジスタンス軍へとなったのである。


男「よし……これで全部だな」


男が声を立てると、集まった9名は一斉にその方を向く。


男「集まってもらい感謝する……新聞で知ったものが多いだろうが、モブ男が殺された」


メンバーの落胆の声や、憤りの声が交じり、部屋の中がざわざわと煩くなる。
その中に一際目立つ甲高い声で「なんでこんなことに!」と喚くものがあった。

喚いた者は後ろにいたので、人を掻き分け、
前の方に出て来て、ついには男の目の前までやってきた。

名前はメガネ男。常に冷静沈着で、普段は感情に流されない
クールな男なのだが、この日ばかりは違っている。

男はメガネ男が肩を震わせ、唇のわなないているのを、その目で確認した。
普段冷静な分、感情が高まると抑えが利かなくなるのだろう、と腹の内で思った。


メガネ男「本当に……モブ男君が山田課糸に」

男「ああ、真実だ。あの通りで王に貫かれた」

メガネ男「くっ……」


メガネ男は膝から崩れおち、拳で地面を叩き始めた。少数精鋭のメンバーでは
あるが、メガネ男のこの姿を見て、各々動揺が隠しきれない様子である。

男はこの広まった動揺が負ける原因になってしまうと考えたので、女と大男に頼んで
メガネ男を部屋の外に連れて行き、落ちつかせることにした。


男「二人とも、メガネ男を頼む」

女「ええ」

大男「こっちは任しておけ」

二人は膝をついて倒れているメガネ男を立ち上がらせ、肩を担いで外へと連れて行った。
バタリと扉の閉まる音が鳴る。その音を聞いた男は他のメンバーを落ち着かせる為に
こう声をかけた。

男「こういう日が来るとはわかっていた。すべてを決する日の来る時が」

男「仲間のモブ男を失ったのは辛い……しかし俺達には指名がある」


この一言を聞いたメンバーたちは、それまでの動揺を吹き飛ばし、真剣な
顔つきになった。それを感じ取った男はさらに続ける。


男「モブ男の死は無駄にしてはならない。彼の出来事でこれまで受け身だった
  この民衆の間の心にも不満の種が植えられた」

男「その種に俺達が水を与え、反逆の花を民衆の頭上に咲き誇らせて王を討つ!」

男「今こそこのとき!立ちあがれ、武器を取れ!全てを終わらせ、生きよい時代に!」

男「異存はないか!?」


少しの間静まり返った後に、皆が手を打ち、腕を振り上げ声を上げる。どの顔にも指名を果たすために
命をなげうってもいいという覚悟が宿っているようであった。

「この士気があればいける」と男が思っていると、それまで外に出ていた三人が部屋の中へと
戻ってきた。メガネ男は普段の様子に戻り、冷静沈着な態度で、「取り乱してすみませんでした」
と他のメンバーに一言声をかけ、男のもとへとつかつかと歩み寄った。

メガネ男「男さん、先ほどは無様な姿をお見せしてすみませんでした。これが内部調査して
      得てきた宮殿内の見取り図です」

鞄から丸めた紙を取りだしそれを男へと手渡す。それを受け取った男は紙を広げ
そこに描かれた図面に見入り、メガネ男から委細を聞くため何度か質問をした。

なぜメガネ男が宮殿内の見取り図を手に入れられたのかというと、彼が宮廷内に仕える者だから
である。

昔、男がしくじり兵士たちに追い詰められた時の事、メガネ男が男を助けた事が契機となって
このレジスタンス軍に入ることになった。


男「助かった……これがあればもう首を取ったも同然だ」

メガネ男「はい」

女「それで作戦は、さっき私と大男に話してくれたのでいくのね?」

男「ああ、そのつもりだ」

メガネ男「僕も先ほど、お二人から作戦内容をお聞きしました……いけるはずです!」

大男「それじゃあ他のメンバーにも話さないとな」

男「ああ」


図面を机の上に置くと、男は他のメンバーの方へと向き直し、作戦内容を高らかに宣言する。
宣言の最後の言葉に続いて、レジスタンス軍、文字解放軍のメンバーは声を揃えて、「全ての民と言葉の為に!」と唱えた。


翌日街の通りでは王を祝うための祭りが開催された。露店が沿道に沿って並び、
人が大勢集まり声々にひしめき合っている。一見すると賑やかで、楽しそうに見えるが、
露店の店主や道行く人の顔には嬉々とした表情はうかがえない。
どの顔にも少しの陰りがみられる。

それもそのはずだ。武力を持って、祭りを無理やりに開催させられているからである。
一部の奇特な人々を除いてはこの祭りを楽しむものはそうはいない。
かといって参加しないところを目撃されると、反逆とみなされ罰が怖い。
そのため、民衆は嫌々ながらも祭りを開催しているのだ。


その祭りの喧騒の届かぬ所。王である山田は、その祭りの様子を高所に位置する宮廷から眺めやる。
そうして全ての民が自分の手足のように自由に動かせることを確認して悦に入る。


山田課糸「実に愉快だ。国の全てが私の言葉の通りに動く。食事も不自由しない、娯楽も飽き飽きするほどある」

山田課糸「しかし少々刺激が足りないな……神としての道はまだ遠いという事か」


そう思案しているところ、大きな音と共に扉が開け放たれ、一人の兵士が息も絶え絶えになりながら山田の元へと駆けつけた。


兵士A「山田様!街の方で暴動が起こりました!ただいま対処しています、あなた様はこちらへお越しください」

山田課糸「何?」


先ほど机の上に置いた双眼鏡を手に取り、それを両目に据え、町の方を再び眺める。
山田の目に映ったのは、民の武器を片手に城へ進軍している様であった。
兵士達がそれを制止しようと立ちはだかるものの、ことごとく蹴散らされる。

その事を報告に来た兵士がすぐに宮廷内の安全な場所に逃げるように勧めたので、
山田は「うむ、そうしよう」と兵士に声をかけ、兵士の先導についていくことに決めた。
その両の頬には不敵な笑みが浮かんでいた……


露店の商品が蹴り上げられ、リンゴ、オレンジ、焼き菓子、雑貨が宙を舞っては、地面に落ち
民衆の足に踏みしだかれる。

武器を手にして宮廷に向かっている民衆の群れの先頭には2人の人がいる。
その二人とは、華奢な体でありながら、見事な剣技で兵を退ける女。
そしてその巨体から繰り出す打撃で、兵を薙ぎ飛ばす大男だ。

民衆の不満の種を開花させることに成功した解放軍は、民衆を解放軍のメンバーに引き入れ
宮廷に向かって進軍を行っていた。
その民衆の群れの力は計り知れない。これまで抑圧されていたものが、一気に流れ出したのだから
爆発力が加わり、並の兵士などは寄せ付けることがない。


大男「今こそ革命のとき、我らが文字を暴君から取り戻す」

女「手で剣を翳せ!足で大地を踏み鳴らせ!口から自由な言葉を張り上げろ!」


大男と女の激励で、大地が進軍の歩みで震動し、各々の好きな言葉での喊声がわき起こる。
声の、思想の、言葉の塊がそこに凝縮し、それが爆発する。そう形容できる様子であった。


文字解放軍の率いる民衆の群れは数多の兵士を蹴散らし
その進軍を徐々に進めていき、ついに宮廷の前にさしかかろうとしていた。

そのまま中に攻め込むかと思いきや、そうはいかない。
宮廷の前には堀があり、その中に入るためには桟橋を降ろさなければならないのである。
群れはその場に立ち止まり、大男の支持をがやがやとざわめきながら待っている。


大男「……皆の力でここまで来ることが出来た……さあここからが本番だ。気合を入れていくぞ!」


大男の雄叫びが宮廷の堀の前の広場に響きわたり、それを聞いた他の者たちは
さらに士気を高める為に声を張り上げる。

民衆たちの「ウオーッ!」という声が、重なりに重なって宮廷の大きな扉となっている桟橋を震わせる。
その振動に呼応するが如く、桟橋が勢いよく降ろされ、宮廷とその場所を繋ぐ橋となった。

桟橋の奥、宮廷の入り口には兵が隊列をなして秩序正しく構えている。
その様は山のようで、王からしたら何とも心強い光景であるだろう。

この瞬間、レジスタンス軍率いる反逆を起こした民衆達の軍と王宮の兵士達からなる軍が相対した。
相対する軍を率いる者が叫ぶ!


兵士長「進めーッ!」

大男「前方の敵を討てーッ!」

戦いの火ぶたは切られた。民衆と王の行方は桟橋の上で雌雄を決することになった。


この時の戦いが、後世で名高い「桟橋上の戦い」である。


桟橋上で剣と剣が、拳と拳が、槍と槍が互いに音を打ち鳴らしている時、山田は兵士の
先導で宮廷内の秘密の部屋に向かっているところであった。

この秘密の部屋というのは、王の命が何らかの形で狙われたりする際に、避難する場所として
先代の時に作られたものだった。

先代の王は心優しく慈悲にあふれ、民から愛された王であった。その当時のこの国は穏やかな
気風で、各々が好きな事をして好きな生活を営んでいた。

その国に暗雲が立ち込めたのは、今から10年前の事である。

山田課糸が先代の王を退けたのだ。

先代の王は命は助かったものの再びこの国に入国することは許されず、いまではその行方を知る
者はいない。


山田課糸「懐かしいな。先代の王もここを使っていたか」

兵士A「さあ、ここでございます。中にお入りになって、暴動の治まるまで待機なさってください」


山田は兵士の言葉に従い秘密の部屋への扉に手をかける。そして一呼吸入れた後、ガチャリと
扉を開けた。

その目には質素な調度の家具一式が揃う、簡素な生活が出来る部屋が映った。


その中でも真っ先に目に映ったのは、大きなタンスである。
人が二人位隠れることの出来るほどのタンスである。

山田はそのタンスを見たのちに、座るのにちょうど良さそうな椅子が据えてあるのを
認めた。


兵士A「さあ、どこでも好きな場所でお休みください。部屋の監視は私が致します」


兵士は山田にそう言ってタンスの前に歩いて行った。そしてその場所に着くと、くるっと踵を
返して部屋全体を見渡した後に監視を始めた。山田は先ほど認めた椅子の方に歩いていき
重々しく腰を下ろした。

その椅子は質素ながらも中々すわり心地が良く、緊急事態だというのに山田はだんだんと
まどろむ。この状況で眠るなんて、と兵士は腹の内で思いながら監視を続ける。

山田がうたた寝をして少しばかりたったころ、タンスを背にした兵士が監視を続けている時、
突然タンスの扉が開いた。

これに気づいた兵士が振り返ろうとするものの、その前に首筋を打たれ意識が飛ぶ。兵士を
打った襲撃者は倒れた際に音が出るのを防ぐため、倒れる兵士の体を支え丁寧に床に寝せる。
椅子に座る山田はそれに気づいておらず、まだうたた寝を続けている。

この部屋に潜伏し兵士を襲撃したこの男こそ、まさに我らが主人公の男である。

男に続いてメガネ男がタンスから出てくる。
2人は前もってこの秘密の部屋に侵入し、潜伏をしていたのだ。


男「表の騒動は陽動で、俺たちが宮廷内に潜伏していたとは夢にも思わないだろうな」

メガネ男「……その通りですね」

男「予定通りここまでやってきたという事は、陽動も成功したみたいだ。
  モブ男の仇……民衆の自由の為にこいつを今ここでやる必要がある」


男はぼそりと呟きながら、コートの内ポケットに手を入れナイフを取り出した。
鞘を払うと滑らかな刀身が顔を見せる。研ぎ澄まされた鋭い刃である。


男「これで、全てが終わるはずだ……この長かった圧政も……流された血も」


男は山田の顔をじっと見据えて、何度も何度もナイフを持ち直す。
ようやく納得のいくことが出来たらしく、いよいよという段になった。

メガネ男は澄ました顔で男のその様子を見ている。

山田は依然と椅子に座ったままで、首をぐったりと下に垂れている。

王の命を絶つ段になった。この国の暴君である王。
言葉を奪い去った王。反逆者を有無を言わさず処刑した王。
この王を討ちとる好機が今、男の手に下った。


男「さようなら。この国の悪魔の暴君よ」

男はナイフを振りかざし、王の胸元に向けて鋭い突きを入れた。
腕が銃身にナイフは弾丸となって一直線に向かっていく。

次の瞬間、肉を切るような音が部屋に響き渡った……


前腕がボトリという生々しい音と共に地面に落下した。

その次に響き渡ったのは男の痛ましい叫び声である。


男「ぐおおおおおおおおおおっ!!」


男は膝をつき、全身から汗を拭きだしている。
その様子を見たメガネ男が急いで駆け寄り、男の血の出るのを止めようと近くにあった帯で止血をする。

一体何が起こったのかを説明すると、男がナイフを胸に突き刺す寸前、山田の左腕が突然男の右腕を
掴んだ。男は自分の腕をつかまれたのに驚いたが、突き刺そうとする勢いは止めない。しかし動かない
びくともしない。そのうち山田が顔を上げ、男の顔を見て、不敵な笑みを浮かべた瞬間、
男の腕を切り裂いたのである。

膝をついている男を下に見ながら、山田は椅子から立ち上がる。
なんということだ、座っていた椅子がただの簡素な造りの椅子であるはずなのに玉座に見えるではないか。

これが王なのだ。これが王の力であるのだ。

山田が口を開く。


山田課糸(武)「陽動を行い、そのうちに侵入し、寝こみを襲うとはなかなかよい作戦であったぞ。
          レジスタンス軍のリーダーの男よ」


メガネ男の咄嗟の介抱により、何とか止血をすることの出来た男は
なんとか立ち上がり、山田と面と向かって話し始める。


男「くっ……モブ男を倒したというから、豪傑だと思っていたが、まさかここまでとはな」

山田課糸(武)「腕だけでなく、心臓も貫こうと思ったのだが、咄嗟の判断見事であった」

男「俺の敵に褒められても嬉しくないぜ」


男は身をかがめ、左手で床の上に落ちている右手に握られているナイフを拾い上げた。


山田課糸(武)「この力の差を見ても、まだ戦おうと思うのか?」

男「……民衆の代表で来てるんだ……当たり前だっ!」


そう叫びながら再び山田に向かっていこうとするが、男への次の攻撃はなんと後ろからやってきたのだった。
メガネ男は男の左手に握られているナイフを払いのけ、そのままの勢いで床にたたきつけ拘束した。

「なんでお前が?」と口に出す前に、メガネ男がその理由をつらつらと述べ立て始めた。


自分が二重スパイであった事、この作戦が成功したら自分の給与などがかなり上がる事。
自分はそれほどまでこの圧政に興味はなく、ただ金さえもらえればよかった事を男の耳元で言って聞かせた。

男はそれを怒っているか唖然としているか、判断できない顔で聞いていた。

全ての説明が終わると、メガネ男は顔を上げて山田の方を向き、自分の君主に進言した。


メガネ男「山田様、予定通りレジスタンス軍の指導者をこの部屋にお連れしました」

山田課糸「ふむ、ご苦労であったぞ。その者の武器はすべて取り上げておけ」

メガネ男「この男の武器は先ほどのナイフのみでございます。先日山田様を
      襲撃した、モブ男、あの男が使っていたナイフと同じものでございます」

山田課糸「どこかで見たと思っていたら、あの男の使っていたナイフか。思い出したぞ」


山田は男の目の前に歩み寄り、そのナイフを拾い上げる。


山田課糸「さて、民衆がもう反逆をしないように、このナイフでこの者の命を絶つことにするか」


ナイフを逆手に持ち振り翳した時、メガネ男が山田に向かって言い放った。


メガネ男「お待ちください。ここは命はとらず牢に入れた方がよいと思われます」

貴様ら何をやっている?俺は「山田課糸」ではない。「山田課糸神」だ。

貴様ら何をやっている?俺は「山田課糸」ではない。「山田課糸神」だ。

続きはないのか

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