みちる「ウサミンロボとバケットとスズメ」 (28)

 
 【モバマスSS】です



 天才科学者池袋晶葉によって開発されたお月見ウサちゃんロボは、団子を作ったり配ったり踊ったりする優れロボである。
 その開発に関わったウサミン星人安部菜々は、晶葉にウサミン科学を提供した。
 斯くしてお月見ウサちゃんロボは、ウサミン科学により改造強化されたのだ。
 
 その名は、ウサミンロボ!

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 ウサミンロボは今日も朝早くからお掃除です。
 みんなが出勤してくる前に、まずは事務所ビル周りの掃き掃除です。

「ロボちゃん、おはよう」

 ウサ

 新聞配達のおじさんにご挨拶。

「よぉ、ロボ」

 ウサ

 牛乳配達のお兄さんにご挨拶。

「はいさーい!」

 ジュッ!

 ばうっ

 
 ウサ

 毎朝、ペットの犬とハムスターを連れてやってくるお姉さんにもご挨拶。
 このお姉さんは何処かで見たことあるような気もします。

 お姉さんを見送ると、だいたいちょうどいい時間になっています。

「おはようございます」

 千川ちひろの出勤です。

「いつもご苦労様、ウサミンロボ」

 ウサミンロボは、千川ちひろの後ろについて行きます。
 そして今度は、事務所入口のお掃除です。
 アイドル達が来る前にお掃除を終わらせなければなりません。とても重要なお仕事です。
 重要なので、入口は千川ちひろと一緒にお掃除します。


 ウサウサ

 入口のお掃除が終わるころ、モバPやアイドル達がやってきます。

「おはようございまーす」

「おひゃー!」

「zzz」

 諸星きらりに担がれた双葉杏。

「早く来いってば」

「……フヒッ……ついたよ」

「うう、無理矢理連れてくるなんて……」

 早坂美玲と星輝子に挟まれるように引きずられるようにしてやってくる森久保乃々。


「ふごっ!!! おはようございます!」

 バケットを囓りながらやってくる大原みちる。

 今日もシンデレラプロの一日が、こうして始まるのです。

 お掃除を一通り済ませると、ウサミンロボはウサミン竹槍を持って事務所前に立ちます。
 これからは門番のお仕事です。
 不審者をウサミン竹槍で突いて、追い出します。
 ウサミン竹槍は先端がソフトボール仕様の非殺傷兵器です。だから突かれた人は痛いだけで怪我はしません。
 でも、ウサミンロボが全力で突くと、鉄板もぶち抜いてしまうので注意です。

 ちゅんちゅん
 ちゅんちゅん

 スズメの鳴き声が聞こえます。
 

 
 メカニック スイッチオン
 センサーライト

 ウサミンロボは事務所ビルに面した駐車場にたむろするスズメを発見しました。
 それだけではありません

 パン ノ クズ ハッケン

 なんと、駐車場にはパンクズが撒かれているではありませんか。さっき掃除したばかりなのに。

 パン ノ クズ ハイジョ

 ウサミン竹槍を置いて、箒を手に取ります。
 
 と、その時でした。
 ウサミンセンサーライトが別の異常を察知します。


 ニンゲン ノ クズ ハッケン

 人間のクズです。パンのクズどころの騒ぎではありません。
 それはアイドルを追いかけるストーカーです。事務所に通い詰めてはおかしな写真を撮ったりする人間です。
 無言電話をかけてきたり、ゴミを漁ったりする人間です。
 慈悲は無用です。
 
 ウサ

 ウサミンロボ緊急出動命令発令
 第一種戦闘態勢、第一種戦闘態勢

 駐車場前に置かれている二台の自販機。その下半分がパクンと開きます。
 そこから出てくる二機のウサミンロボ。勿論ウサミン竹槍を構えています。


 日頃は自販機の中でジュースを選んだり冷やしたり温めたり、おつりを出したりしています。
 ジュースが無くなると補充もします。
 そして、緊急事態になると出撃するのです。
 最近では色々なところに、ウサミンロボが隠れるようになりました。安全のためです。

 事務所ビル屋上からは第四のウサミンロボが飛び降りてきました。
 四機のウサミンロボが揃ったのです。

 人間のクズ、もとい、ストーカーは慌てています。

 ウサ!

 最初のウサミンロボがジャンプすると、次のウサミンロボがそのキャタピラを掴み、ジャンプします。
 そのウサミンロボのキャタピラを掴む三番目のウサミンロボ。
 三番目のウサミンロボのキャタピラを掴む四番目のウサミンロボ。
 最初のウサミンロボがくるりと円を描くと、四番目のウサミンロボのキャタピラを掴みます。


 四機のウサミンロボが輪となって回り始めました。

 ウサ! ウサ! ウサ! ウサ!
 ウサミン陣形が一つ、ウサミンロボ円月回転です。

 グルグル回ってストーカーに激突します。
 円月回転に続いて一文字崩しや不動組みも行う予定でしたが、ストーカーが円月回転の一撃で逃げていったので中止になりました。

 自販機の中へもぞもぞと帰っていく二機。中に入って蓋を閉めています。
 屋上へ壁づたいに昇っていく一機。

 ウサミンロボは掃除を再開することにしました。
 パンクズを掃いて集めます。
 
 ひらりひらり

 新しいパンクズが降ってきます。


 ウサ……?

 ウサミンロボは頭上を見上げました。

 捕食者と目が合います。

 ふごふご

 大原みちるが窓から顔を出してパンを食べていました。
 パンクズはなおも降り注ぎます。ウサミンロボに降り積もります。

 ちゅんちゅん

 スズメがウサミンロボに集ります。
 ウサミンロボは瞬く間にスズメまみれになってしまいました。

 ウサーーー!!
 
 飢えたスズメ、餓雀(がじゃく)は容赦なくパンクズをついばみます。ついでにウサミンロボもつつかれています。

 ウサーーー!!


 痛くはないのですが、突かれ続けるのは気持ちのいいものではありません。
 だけど、心優しいウサミン科学の子、ウサミンロボは我慢することにしました。
 スズメはご飯を食べているのです。餓雀なのです。

 ぷりぷり

 ウサミンロボは頭に何かがくっついたような気がしました。
 すぐに屋上待機のウサミンロボに連絡をし、頭上から確認して貰うことにしました。

 アタマ ナンカ ツイテル?

 返事は速やかに来ました。

 スズメ ノ ウンコ

 !!!!!!!!

 ウサミンロボは身体を震わせるとスズメたちを逃がします。そして急いで事務所に入りました。
 ちょうどそこには、モバPと打ち合わせている安部菜々がいます。
 
「どうしたの?」


 ウサウサ

「頭? ……なにこれ、汚れてる!」

 すぐにごしごしと頭を拭いてくれます。ウサミンロボは大喜びです。
 綺麗になってさっぱりしたウサミンロボは、今度は大原みちるを捜します。パンクズをこぼした犯人です。

 すぐに見つかりました。
 パンクズ犯こと大原みちるは、まだパンを食べています。証拠は充分です。

「ロボちゃん、スズメのご飯を邪魔しちゃ駄目だよ?」

 だからといって、自分をパンクズまみれにすることはない。とロボは思います。
 
「ん? みちる、駐車場のスズメに餌与えるのは禁止だぞ?」

 ウサミンロボの後ろをついてきていたモバPが言うと、大原ミチルは首を振ります。

「あたしは景色を見ながらパンを食べているだけですよ?」


 二人のやりとりを見ていたウサミンロボは気付きます。
 今も大原みちるはパンを食べているけれど、パンクズは一切こぼれていません。
 ウサミンセンサーにもパンクズ反応はありません。
 
 部屋にパンクズはないのに、大原みちるはパンを食べている
    ↓
 大原みちるはパンクズをこぼさずにパンを食べることが出来る
    ↓
 駐車場にはパンクズがたくさんこぼれている  
    ↓
 駐車場には餓雀が沢山いた
    ↓
 餓雀に餌を与えるのはモバPが禁止している

 つまり、これは。
 
 餓雀を救うために、大原みちるはパンクズをわざとこぼしているのでないだろうか。
 ウサミンロボは驚きました。まさかパンクズにそんな意味があっただなんて。


「……あのな、みちる。気持ちはわかるけどな」

「あたしはパンを食べているだけですよ?」

「わかった、わかったよ。でもな、これを見ろ」

 モバPはウサミンロボを指さします。

「ロボの頭にさっきスズメのフンがついてた」

「あ……」

「それだけじゃない、駐車場にもフン害はある」

「……」

「可哀相だが、フン害が続くようなら見逃すことは出来ない」

「……」

「晶葉に、スズメ妨害装置(ジャク・ジャマー)を依頼してある。完成は三日後の予定だ」 


 ウサミンロボは部屋を出ると、第一休憩室へ向かいます。
 第一休憩室は一番最初、事務所が大きく建て替えられる前からある古い休憩室です。
 今では広くて新しい休憩室があるので誰も使おうとしません。
 それに、今は溜まり場になっているのです。シンデレラプロ人外部門の。

「ん? どうした、ロボ。そんなに急いで」

「なに? みちるくんがスズメに餌を?」
「ああ、その件なら知っている。プロデューサーは反対のようだが、なに、所詮アイドルには逆らえんよ」

「フン害……? なるほど、そんな実害があるのならプロデューサーも強硬手段に出ざるをえないと言う訳か」

「ふむ。そうだな、スズメたちを説得して、トイレを別の場所にするというアイデアは悪くない」
「だが、君はスズメの、いや、鳥の言葉がわかるのか?」
「私やアッキー、ブリッツェン、あの子とは会話が出来ているようだが」

「生憎だが、私にも鳥の言葉はわからない、すまんな、力になれなくて」

「待ちたまえ。確かに私自身は鳥の言葉がわからないが……」

「ふむ、試してみる価値はあるやもしれんな」
「少し知り合いに問い合わせてみよう」


 そう言うと、ヒョウくんはのったのったと、古賀千春の荷物に近づいていきます。
 ぱくり、と荷物を開けると携帯電話を取り出しました。そして、電話をかけます。

「やあ、私だ。久しぶりだな」
「すまないが用件を手短に済ませたい」
「そうだ、君は確か、鳥と……オウムと一緒に暮らしていなかったか? それに、実家にはニワトリもいると聞いているが」
「鳥の言葉を……なに? そうか、知っているなら話は早い」
「では、よろしく頼む」

 ヒョウくんは電話をバッグに戻すと、再びのったのったとウサミンロボの所へ戻ってきます。

「なんとかなりそうだぞ、ロボ」


 ――翌日

 今日の早朝清掃は、いつもと様子が違います。
 ウサミンロボの頭にはヒョウくんが乗っています。

 まずはいつものように、事務所周りの掃き掃除です。

「ロボちゃん、おはよう」

 ウサ

 新聞配達のおじさんにご挨拶。

「よぉ、ロボ」

 ウサ

 牛乳配達のお兄さんにご挨拶。

 次にやってくるのははいさーいお姉さんのはず。
 なのに。


 そこへ現れたのは犬。確かにいつもお姉さんと一緒に現れる犬なのですが。
 犬の上には蛇とオウムが乗っています。

 なんだろう、このイレギュラーなブレーメンの音楽隊は。もしやキメラの一種か。
 ウサミンロボは悩みました。

 と、その時、ヒョウくんが言うのです。

「ロボ、紹介しよう。彼女たちがへび香、いぬ美、そしてオウ助君だ」

 ウサ

「君の言葉を私がへび香に伝え、へび香からオウ助君に伝えて貰う。そしてオウ助君がスズメたちに伝えるのだ」

 ウサ

「駐車場にスズメが餌を得るために集まっているのだが……」

 ……………………
 ………………
 …………
 ……


 どうしよう。

 大原みちるは悩んでいました。
 
 確かにモバPの言うことは解ります。だけど、なんとかスズメに餌をあげることは出来ないだろうか。
 でも、周りに迷惑はかけられません。

 ウサウサ

「……ロボちゃん? どうしたの」

 ウサウサ

「なに? 手を引っ張って何処行くの?」

 ウサミンロボは大原みちるを駐車場に連れて行きます。
 
「……嘘」

 そこには、一斗缶の中に行儀良くフンをしているスズメたちが。
 スズメのトイレが完成していました。


「まいったな……」

 いつの間にかモバPも来ています。

「これじゃあフン害の文句は言えないな」

「プロデューサー……」

「スズメが増えすぎないように、餌をやりすぎないように気をつけろよ」

「はいっ!」

 ウサッ!

 こうして、スズメたちは餓雀でなくなり、美味しいパンを食べ続ける幸せなスズメになったのです。

 そしてまた、翌日。

 ウサミンロボがいつものように掃除を始めると、大原みちるがなにやら荷物を抱えてやってきます。


 ウサ

「おはよう、ロボくん」

 荷物の中から、なにやら細長いものを取り出しました。

「これ、ロボくんのために焼いたんだよ」

 美味しそうなバケットです。
 ウサミンロボは喜びました。バケットは食べられないけれど、それでもロボは喜びました。
 早速ロボは、博士にお願いしてバケットを真空パックにしました。

 シンデレラプロ事務所ビルの第一休憩室には、今でも真空パックにされたバケットが、大事に保管されているということです。
 

 
 以上、お粗末様でした

 スズメまみれのウサミンロボが書きたかった。
 今は満足している。

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