エレン「飲み会」(193)

進撃の巨人SS

男子寮

エレン「ふあぁ……」

アルミン「眠いの?」

エレン「ああ、消灯前だけどもう布団に入るわ」

アルミン「そうだね、明日に備えて僕もそろそろ寝ようかな」

ジャン「おいお前ら! ちょっといい話があるぞ、聞いてくれ!」

アルミン「ジャン?」

ライナー「いい話?」

マルコ「少し声が大きいよ、ジャン。いったい何事?」

ジャン「悪い悪い。だがお前たちもこれを見れば興奮せざるを得ないと思うぜ」

コニー「なんだ? そんなすげぇものなのか?」

ジャン「おう……これだ!」

マルコ「それって……お酒?」

アルミン「しかも瓶で八本も。これどうしたの?」

ジャン「今日とある商店街に行ったらたまたま福引の券を貰えてな、試しにやってみたらこれが当たったんだよ」

コニー「おーすげぇ! 酒なんか貰えるのかよ!」

ジャン「一発で二等だ。なかなかできるもんじゃねぇだろ? まあ持って帰ってくるのは大変だったが」

エレン「いい訓練になったんじゃないのか?」

ジャン「はっ、なんで休日まで訓練しなきゃならねぇんだよ」

ジャン「まあそういう訳でだ。これをオレが一人で飲むって手もあるんだが、どうだお前ら、飲んでみたくはないか?」

コニー「マジかよジャン! いいのか!」

ライナー「珍しいこともあるもんだな」

ジャン「一人で消費するにはさすがに多過ぎてな。そこで皆でパーっと飲んじまおうと、そういう話だ」

コニー「いいな! 俺も前から酒には興味あったんだ」

ジャン「まあ待て、まだ続きがある。実は偶然にもサシャがオレと全く同じ状況らしい。つまり酒瓶は全部で十六本だ」

エレン「二等ってそんなに出るのか。一等が気になる」

ジャン「で、さっきサシャと相談したんだが、次の休日の夜に男女合わせて飲み会をしようって話になった」

ジャン「どうだ、お前らも来るだろ?」

ライナー「確かに興味深いが、どこでやる気だ? 男子寮の一室で飲むのとはわけが違うぞ」

ジャン「今じゃ全く使われてない部屋があるのを知ってるか? さっき行ってみたら都合よく鍵がかかっていなかった」

ジャン「教官室からも離れてるし、多少騒がしくしても気付かれねぇはず。あんな場所、見周りも来ないだろうしな」

ライナー「なるほど、そこなら大丈夫か……?」

ジャン「女子と一緒に酒が飲めるんだぞ? 今頃サシャが何人か誘ってる。やらねぇ手はないだろ?」

コニー「いいじゃねぇか! やろうぜ! つーか酒飲みたい!」

ジャン「よし、決まりだ」

エレン「待てよジャン」

ジャン「あ?」

エレン「お前分かってんのか? 休日の夜にやるってことは、次の日からまた訓練が始まるんだぞ」

ジャン「それがなんだよ?」

エレン「今の話を聞くと酒瓶全部あけるつもりなんだろ。何人呼ぶのか知らないが結構な量だ」

エレン「酒を初めて飲む奴らばかりで強いのか弱いのかも把握できてないだろうし、二日酔いになることだってある」

エレン「もしそうなった場合、次の日の訓練に支障を来たすかもしれない。オレは反対だ」

ジャン「はあ? なにを堅いこと言ってんだ。だったらてめぇは来なけりゃいいだろ」

マルコ「いや、確かにエレンの言う通りだ。もう少し慎重になるべきかもしれない」

ジャン「おいおいお前もかよ」

マルコ「万が一ということもある。僕もだけどジャンは憲兵団志望だろ? もしお酒のせいで訓練中に何かあったらそれを逃すことになってしまう」

ジャン「万が一の話だろうが。ちゃんと寝てアルコールを抜けば問題ない」

ジャン「マルコ、てめぇも本当は飲みてぇんだろ? 優等生面してんなよ」

マルコ「それは……確かに興味はあるけど」

アルミン「待って。僕に提案があるんだけど、いい?」

マルコ「アルミン」

アルミン「本音を言えば皆お酒を飲んでみたいと思ってるはずだ。本当はダメだから、尚更」

アルミン「普段の訓練は大変だし、そのストレス解消も兼ねて、たまには皆で楽しくはしゃぐのも悪くないと思う」

ジャン「なんだ、分かってるじゃねぇか」

アルミン「でもエレンやマルコの言うことも尤もだ。人によってはアルコールが抜け切らない場合もあるだろう」

アルミン「だから、飲み会を開くのは休日の夜じゃなくて、その前日の夜にすればいい」

アルミン「それなら、一日の訓練の疲れも癒せるし、もし二日酔いになっても休日にしっかりと休むことができる」

アルミン「これなら余程のことがない限り訓練に支障は出ないだろうし、皆でお酒も飲める。どうかな?」

ライナー「いいんじゃないか。俺は賛成だ」

マルコ「うん、僕もいいと思う」

アルミン「エレンはどう?」

エレン「……まあ、それだったら」

アルミン「よし、決まりだね。ジャンもそれでいいだろう?」

ジャン「オレは飲み会ができるなら何だっていいぜ。日にちの変更をサシャに伝えとかねぇとな」

コニー「よっしゃ! なんかやる気出てきたぜ!」

ベルトルト「皆、話しているうちにそろそろ消灯時間だ」

ジャン「おおそうか。この酒瓶はどうするかな……ベッドの下にでも隠しておくか」

エレン「オレはもう眠気が限界だ……」

翌日 女子寮

サシャ「……というわけで、ジャンとの話し合いの結果、飲み会は休みの前日の夜に行わることになりました」

ミーナ「いえーい!」

サシャ「それでは改めて飲み会に参加する人を募りますから、挙手をお願いします」

サシャ「あ、ちなみに男子で参加するのは、ジャン、コニー、ライナー、ベルトルト、エレン、アルミン、マルコの七人の予定です」

サシャ「それでは飲み会に参加する人! 手を挙げてください!」

ミーナ「もちろん参加で!」

クリスタ「本当はダメだけど、私もお酒飲んでみたいし……参加!」

ユミル「楽しめそうだし、私もだ」

ミカサ「エレンとアルミンが参加するなら、私も」

ミーナ「ほら、アニも!」

アニ「はいはい」

サシャ「では女子から参加するのは、私ことサシャ、ミーナ、クリスタ、ユミル、ミカサ、アニの六人ですね」

サシャ「男子と合わせて参加者は十三人となります」

クリスタ「ほとんどが成績上位の人だね」

ユミル「これなら万一教官に見付かっても、なんとかなるかもな。教官たちも成績上位者をごっそり失うのは痛いだろうし」

ミーナ「うわーユミル悪ー」

サシャ「楽しみですねー。私お酒を飲むのなんて初めてです。皆はどうですか?」

ミカサ「私も初めて。酔うとどうなるか想像できない」

ミーナ「それは気になるね。特に……アニとか」

アニ「知らないよ。私だって飲んだことないし。それに飲み過ぎなければ大した変化はないでしょ」

ユミル「おいおい、せっかくの機会だぞ。飲み過ぎなくてどうするんだよ。べろんべろんになっちまえ」

アニ「どれだけ飲むかは私の勝手でしょ。そう言うあんたはどうなの?」

ユミル「一度だけ飲んだことがある。大した酒じゃなかったのか、不味かったけどな」

ミーナ「でも飲んだことあるんだ。羨ましいなぁ」

ユミル「サシャとジャンの酒も福引の景品だろ? そんなに味は期待しない方がいいかもな」

サシャ「安物かもしれないと? でも二等ですよ二等! 大丈夫です!」

クリスタ「その自信はどこから来るの?」

ミカサ「サシャはどんなお酒でも美味しく感じるのでは?」

サシャ「し、失礼ですね。まるで私を味音痴とばかりに」

ユミル「ここの飯に毎日がっつけるんだからな。そう思われても不思議じゃない」

サシャ「ひ、ひどいですよ! そんなこと言うならお酒飲ませてあげませんよ! もともとは私が当てた景品なんですから!」

ユミル「ならジャンが当てたやつを貰おうかな。お前は一人で飲んでろ」

サシャ「今度は仲間外れですか!?」

クリスタ「もうユミル、やめなよ。サシャ、私と一緒に飲もうね」

サシャ「クリスタ! やっぱりあなたは女神ですね! お礼に酒瓶三本あげちゃいます!」

クリスタ「そ、そんなには無理だよ」

ユミル「ち、クリスタを味方につけられたか」

今日は終わり

読んでくれてありがとう
今日はラストオーダーが終わる前に書き始める

数日後 夜

サシャ「それでは皆さん! ただいまより、男女混合飲み会を始めまぁす!」

コニー「よっしゃあ!」

ミーナ「遂に来たー!」

ジャン「感謝しろよお前ら! オレとサシャが飲ませてやるんだからな!」

アルミン「うん、二人ともありがとう」

マルコ「始める前に注意事項がある。時間は22時までの約3時間。騒ぐのはいいけど度を過ぎないように。嫌がってる人に無理矢理飲ませない」

マルコ「用足しなどのやむを得ない場合を除いてこの部屋から出ないこと。教官に見付かる可能性が上がる」

マルコ「後片付けは皆で協力すること……あとはえーと」

ジャン「堅苦しいなマルコは。もういいだろ、ほら始めるぞ」

アルミン「皆グラスは行き渡ったー?」

クリスタ「うん、あるよー」

ライナー「こっちも大丈夫だ。準備万端だぞ」

アルミン「それじゃあ、サシャ」

サシャ「はい! 皆さん、この時間だけは日頃の辛い訓練を忘れて存分に楽しみましょう!」

サシャ「それでは……かんぱーいっ!」

一同「かんぱーいっ!」

サシャ「これが念願のお酒……お、おおっ! 不思議な味ですがいけますね!」

コニー「うめぇ! これならいくらでもいけるんじゃないか!?」

ジャン「これが大人の飲みもんか。はっ、大したことねぇな」

マルコ「そんなこと言って。顔がにやついてるよ」

ジャン「そりゃそうだろ、味が大したことなくても人生初の飲酒だぞ」

サシャ「私は味も素晴らしいと思いますが」

コニー「そうだそうだ。不味いならジャンは飲まなくていい。俺たちが全部飲んでやるからよ」

ジャン「何様だコニー。オレが当てた酒だぞ」

マルコ「まあまあ」

エレン「あいつら、早速はしゃいでるな」

アルミン「ジャンとコニーは特に楽しみにしてたからね」

ミカサ「それより二人とも、初めてのお酒の味はどう?」

エレン「……そうだな、悪くはないけど大人みたいにがぶがぶは飲めないかな」

アルミン「僕も。ちびちび飲むなら良さそうだけど。ミカサは?」

ミカサ「私はいけそう。美味しい」

アルミン「へえ、いいなぁ」

エレン「お? アルミン、違う種類の酒もあるみたいだぞ。ほら」

アルミン「本当だ。一種類じゃなかったんだね……全部で四種類?」

エレン「福引で当たる酒瓶は八本だから、二本ずつってことなんだろう。これはオレたちに合わなかったけど他のならいけるかもしれないぞ」

アルミン「じゃあいろいろ飲んでみよう」

ミカサ「二人がそうしている間に、私は既に三杯目」

エレン「おいおい、そんなに飛ばして大丈夫か?」

ミカサ「美味しいので大丈夫」

アルミン「理由になってないと思うけど」

エレン「こりゃすぐに酔っぱらいそうだな」

ミカサ「あなたたちも自分に合うお酒を見つけてたくさん飲んで。早く酔った姿を見せて欲しい」

エレン「人が酔うところってそんなに見たいもんか?」

ユミル「ほらクリスタ、どんどん飲め」

クリスタ「ち、ちょっと待ってよ。私には私のペースがあるんだから」

ユミル「そんなこと言ってるうちになくなるぞ。いいからぐいぐいいけ」

クリスタ「もう、ユミルこそあまり飲んでないじゃない」

ユミル「そりゃクリスタの酔ったところを早く見たいからな。私が先に酔ったら意味ないだろ」

クリスタ「なに企んでるの?」

ユミル「なにも? ただ顔真っ赤にしたクリスタは可愛いだろうなと思ってるだけだ」

クリスタ「むう、絶対酔わないから!」

ユミル「せっかく飲んでるんだ、酔うのも楽しみの一つだと思うがな」

ライナー「クリスタ、横いいか?」

クリスタ「あ、ライナー。遠慮なくどうぞ……グラス空じゃない。私が注いであげる」

ライナー「おお、悪いな。瓶は重いだろうから気を付けろよ」

クリスタ「私だって毎日訓練してるんだからこれくらい平気だよ……ほら」

ライナー「ありがとう。改めて乾杯してくれるか?」

クリスタ「いいよ。かんぱーい!」

ライナー「乾杯」

ユミル「……ライナーさんよ、クリスタは私と二人きりで楽しんでたって言うのにお前は」

ライナー「そう言うな。飲み会なんだ、少数より皆でワイワイ騒いだ方がいいだろう?」

クリスタ「そうだよユミル、二人だといつもと変わらないよ」

ユミル「まあクリスタがそう言うなら……ん? おいベルトルさん、あんたもこっちに来たらどうだ?」

クリスタ「一緒に飲もうよ」

ベルトルト「分かった。じゃあ失礼して」

クリスタ「はい、ベルトルトにも注いであげる」

ベルトルト「ありがとう」

ライナー「……よし、クリスタの隣は確保した。後はクリスタを酔わせていい感じの雰囲気に持っていくだけだ」

ベルトルト「……その前にユミルをどうにかしないとその野望は成功しないと思うけどね」

ライナー「そうだな、まずはユミルからだ」

ユミル「ん? 何か言ったか?」

ライナー「い、いや何も。ははは」

アニ「……」

ミーナ「アーニ、なに一人で飲んでるのー。皆のとこ行こうよー」

アニ「あんたすでに結構酔ってるでしょ。開始三十分でどれだけ飲んだの?」

ミーナ「えー? ちょっとだよちょっと。てゆーかアニだって顔赤いし」

アニ「え、そう?」

ミーナ「そうだよ、分かりやすく酔ってるじゃん。アニってお酒に弱いんだー」

アニ「……ま、少しぼうっとしてきてるかな」

ミーナ「でしょお? だから皆のとこで飲もうよ」

アニ「話が繋がってないけど……確かに、せっかくの飲み会で一人で飲んでてもつまらないか」

ミーナ「よし決まりー。あそこ行こ、ミカサたちの所」

アニ「ああ」

ミカサ「……ふう」

アルミン「ミカサ大丈夫? 大分酔ってきてない?」

ミカサ「そうかもしれない。なんだか体が熱い」

エレン「顔も赤いぞ。それにちょっとぼーっとしてる」

ミカサ「でも美味しいから飲んでしまう」

ジャン「よーうミカサ! ちゃんと飲んでるか、オレが当てた酒!」

ミカサ「ジャン。ええ、とても美味しい。ありがとう」

ジャン「そ、そうかそうか! そりゃあ良かった!」

ミカサ「グラスを出して、お酌してあげる」

ジャン「い、いいのか!? なら頼む!」

アルミン「嬉しそうだなぁ」

エレン「なあ、ミカサの奴、ジャンに対する態度がいつもより柔らかくないか?」

アルミン「酔ってるから気分が良いのかな? それかお酒を提供してくれたことへのお礼とか?」

アルミン「あ、でもジャンの方も酔ってるね。いつもならこんなに積極的じゃないし」

エレン「なるほどな、お互いに酔った結果か」

ジャン「と、隣座っていいか?」

ミカサ「どうぞ」

ジャン「……なんだ? 今日はとんとん拍子に事が進むぞ。これが酒の力……!」

ミカサ「でも近づき過ぎるのはダメ」

ジャン「……だよな」

ジャン「まあいい、まだまだ時間はある、オレの戦いはこれからだ」

ミーナ「ねー私たちも混ぜてー」

アルミン「ミーナ、アニ」

エレン「構わないぞ。でもミカサやジャンより酔ってるな、ミーナ。見た目で分かる」

ミーナ「気にしない気にしない」

アニ「……ここ座るよ」

ミーナ「ほうほう、エレンの右にミカサ、左にアニ。じゃあ私は前かなー」

アルミン「つまり僕の隣なわけだね」

ミーナ「完成! エレン包囲網!」

エレン「は?」

ミーナ「ミカサ、アニ、そして私。エレンを女子で囲んでみましたー。これでエレンは逃げられませーん」

エレン「意味が分からん。酔い過ぎだぞ。それに後ろから逃げられるし」

ミーナ「じゃあじゃあサシャ呼んでこよう! サシャー」

サシャ「……ぷはぁっ、最高です! あれぇ、コニーっていつから坊主でしたっけ?」

コニー「てめぇと初めて会った時から坊主だ! 記憶飛ぶほど酔ってんのかよ!」

サシャ「酔ってませんってぇ……あれぇ、マルコはいつからそばかすありました?」

マルコ「それも初めから。それにさっきからミーナに呼ばれてるよ」

サシャ「ミーナー? どこですかー?」

ミーナ「ダメだありゃ、連れてきても機能しそうにない……じゃあジャン! エレンの後ろに回って!」

ジャン「ふざけんな、オレは今ミカサと談笑してるんだよ。何が悲しくて死に急ぎ野郎の後ろに回らなきゃならねぇんだ」

ミカサ「ジャン、エレンの悪口は止めて」

ジャン「お、おう、すまん」

ミーナ「ちぇー残念」

アニ「ジャンは男でしょ。女子の包囲網にならないじゃない」

ミーナ「あ、そっか」

アニ「まったく……ミーナはアルミンに任せる」

アルミン「ええっ!? なんで僕が!?」

アニ「席隣だし」

アルミン「それだけの理由で!? 酔っぱらいを僕一人に押し付けないでよ!」

ミーナ「ひどいぞアルミーン。よし、じゃあ私の相手はアルミンに決定!」

アルミン「ちょ、僕はそろそろ席を移動しようかと思っていたのに……」

アニ「頼んだから。……で、エレン。ミカサに比べてあんたはあまり酔ってないようだけど?」

エレン「ああ、そこそこ飲んでるんだけどな」

アニ「飲んでるのこれ? あまりアルコール強くないね」

エレン「強いのも飲んでみたんだが、あまり口に合わなかったんだよ……アニはどうだ?」

アニ「四種類とも全部美味しかった。あんたはまだ味覚が子供なんでしょ」

エレン「む……でも四種類全部か。じゃあ結構飲んでるな? 顔も赤いし」

アニ「ミーナにも言われたけど、そんなに?」

エレン「鏡見れば分かる。アニも顔に出るんだな、ミカサと同じだ」

アニ「そう……その赤くなったミカサは、どう?」

エレン「どうって?」

アニ「普段見れないミカサを見てどう思ったかって聞いてるの」

エレン「どう思ったって……」

ミカサ「……なに、エレン?」

エレン「ああ、酔ったお前を見てどう思ったかアニに聞かれてな」

ミカサ「私?」

ジャン「色っぽくて可愛いぞ!」

アニ「あんたには聞いてない」

ミカサ「……エレン、私も聞きたい」

エレン「いや、そう言われても……人が酔ったところ見てもなぁ。あまり飲み過ぎるなとよ、とか?」

ミカサ「……」

ジャン「バカかてめぇ! そんな答えがあるか! もっと気が利いたこと言えよ!」

アニ「ちょっとうるさい……でもその通りだね。そういうことを聞いたんじゃないんだけど」

エレン「じゃあなんなんだよ」

ミカサ「分からないのら仕方がない……では私からも質問」

ミカサ「私とアニ、どっちが可愛い?」

エレン「は?」

アニ「は?」

ジャン「は?」

エレン「き、急なんだよ。脈絡が分からんぞ」

アニ「勝手に私を巻き込まないでくれる?」

ジャン「酔い過ぎだミカサ! いったん水飲んで落ち着け!」

ミカサ「必要ない。さあエレン、答えて」

エレン「いやなんでだ。そんな話をしてたんじゃないだろ。それになんでわざわざアニと比較するようなことを」

アニ「……まあ、巻き込まれたからには仕方ないね。せっかくだし、言いな」

エレン「アニまで何言ってんだ。ミカサを止めてくれ」

アニ「断る」

ジャン「くそ、くそ。選ばれるのがどっちだろうと辛いぞこれ」

ジャン「アニが選ばれるとミカサがかわいそうだし、逆にミカサだとエレンはミカサを意識してるってことで……ぬおお」

ミカサ「さあエレン」

アニ「正直に答えて」

エレン「ま、待て待て! 左右から迫ってくるなって! あ、アルミン! 助けてくれ!」

エレン「……あれ、アルミンは?」

ミーナ「一気飲みサイコー!」

エレン「いつの間にかミーナは一人で飲んでるし……どこ行ったんだよ」

ミカサ「さあエレン、早く答えて」

アニ「さあさあ」

エレン「か、勘弁してくれー!」

ジャン「ぬおお、オレはどうすれば」

アルミン「ほらクリスタ、もう空になってるよ」

クリスタ「あ、うん。ありがとう」

ライナー「始まってから一時間半経ったが、かなり酔ってきたんじゃないか?」

クリスタ「そうかも。なんだかぽわぽわして、変な感じ……ふにゃあ」

アルミン(か、可愛い! クリスタと一緒に飲めるだけでなくこんな姿が見られるなんて。こっちに来て良かった)

アルミン(……けど)

ライナー(計画は順調だ。完璧だ。幸せだ。クリスタ可愛いだ)

ライナー(……だが)

アルミン(ライナーがここまで積極的に仕掛けているとは。そういう意味でも来て良かった)

ライナー(途中からアルミンという新たな障害が来てしまった。その前に勝負を決めるべきだった)

アルミン(僕がいることでライナーに対する抑止力になる。けれどこれだと動けないのは僕も同じだ)

ライナー(この状態から俺が優勢になるには、ベルトルトの協力が必要だが……)

ベルトルト「……」

ユミル「いやー、まさか一杯飲んだだけでダウンとはな。弱過ぎるだろ」

クリスタ「ほんとにね。勝手な印象だけど、ベルトルトは飲めそうな気がしてたなぁ」

アルミン(ベルトルトが早々に潰れたのは好都合だ。これでライナーとは対等の条件だ)

ライナー(俺一人でアルミンを出し抜くしかない。だがその前に、最も大きな障害になるであろうユミルは……)

ユミル「赤くなったクリスタはやっぱ可愛いな」

クリスタ「ま、またそんなこと言って。すでに四回聞いたよ」

ユミル「何回言ってもいいだろ。ほら、もっと飲んでもっと酔え」

クリスタ「う、うん」

アルミン(全く酔ってない! そもそもお酒をほとんど飲んでない!)

ライナー(ユミルが飲んだ酒はたったの二杯。それもアルコールが一番弱いやつばかり)

ライナー(俺が注いでやろうとしてもまだ残っているからと拒否ばかり)

アルミン(おそらくユミルは酔う気がない。彼女の目的はやはり……)

ライナー(俺とアルミンからクリスタを守ることと、クリスタの可愛い姿を楽しむこと)

アルミン(ライナー一人なら何とかなったかもしれないけど、さすがにほぼ素面のユミルが一緒じゃあ迂闊に手を出せない)

ライナー(くそ、どうすれば……)

一旦ここまで
今日はもうちょい書く予定

アルミン「陰謀渦巻く宴会」
の焼き直しにならないようにな

>>51
そのSS知らなかったので読んでみたらユミルのくだりがかぶってた
少し考えてくるので今日はここまでにしておきます

いろいろありがとうございます
書き始めます

ユミル「ライナーにアルミン、お前らクリスタに注ぐばかりであまり飲んでないだろ。ほらグラスよこせ、注いでやる」

アルミン「い、いや僕はあまり得意じゃないみたいだし、遠慮しておくよ」

ユミル「この私がわざわざ注いでやるって言ってるんだぞ? さっさと出しな」

アルミン「いやでも……」

ライナー「ユミル、嫌がっている相手に無理矢理飲ませるのは禁止だと、マルコが言っていただろう」

アルミン「それに弱いのならまだしもユミルが持っているのは四種類の中で一番強いやつじゃないか。無理だよ」

ユミル「ふーん……なあクリスタ、お前はどうだ? 強い酒を一気に飲める男って格好いいと思わないか?」

クリスタ「あ、思う思う。素敵だよね」

アルミン「なっ!?」

ユミル「だよな。どうするアルミン、クリスタはこう言っているが?」

アルミン「くっ……」

ライナー(ユミルの奴、クリスタを使って無理矢理にでも飲ませる気か!?)

ライナー(飲めばクリスタに格好いいところを見せることはできるが、それで潰れてしまっては元も子もない)

ユミル「おいライナー、なに他人事のように眺めてやがる。あんたにもグラスを出せって言ったよな?」

ライナー「……やはりそうくるか」

アルミン「ライナー、どうする?」

ライナー「難しいところだな」

ユミル「……クリスタ、どうやらあいつら飲んでくれるみたいだ。お前が注いでやれ」

クリスタ「私が?」

ユミル「ああ、私よりお前が注いだ方があいつらは喜ぶ」

クリスタ「そう? じゃあ……」

クリスタ「ライナー、アルミン。私がお酌してあげるから、グラス出してくれる?」

クリスタ「二人の格好いいところ見せて欲しいな!」

アルミン「……ライナー、これは断れないね」

ライナー「……ああ、この笑顔で頼まれたら、差し出さざるを得ない」

アルミン「覚悟を決めよう。これに耐えればまだ希望はある」

ライナー「ふ、何故かな。俺たちはライバルであるはずなのに、今は親近感を得てしまっている」

アルミン「僕もだよ。この峠を越えるまで、お互い頑張ろう!」

ライナー「おお!」

ユミル「こいつらバカだな」

サシャ「コニー! あそこに大量のパンがありますが、食べちゃっていいですよね!」

コニー「……どこにもねぇぞ」

マルコ「サシャ、ついに幻覚まで……」

コニー「おい、このままにしておいて大丈夫なのか?」

マルコ「記憶障害に幻覚……まずいかもしれない。これ以上飲ませるのは止めよう」

コニー「だよな。おいサシャ、お前もうその辺にしとけ」

サシャ「はあ? 何がですか?」

コニー「酒だよ酒! いくら明日が休みだからって飲み過ぎだ」

サシャ「あはは! 大丈夫ですよ! 人はそんなに柔じゃありませんから!」

コニー「脳に異常が出てるんだから十分柔だっての!」

サシャ「脳に異常? コニーのことですか? 確かにコニーはバカですね、あははっ!」

コニー「違うわ! なに笑ってやがる! お前もバカだろうが!」

コニー「あーくそ、イライラする! マルコ、お前が言ってやれ。俺じゃどうしようもねぇ」

マルコ「かなり飲んでるのに潰れないところがサシャらしいというか、言葉での説得は無理そうだなぁ」

コニー「じゃあ締め上げて動けなくしちまうか」

マルコ「それはさすがに……もっと穏便に済ませないと……うーん」

サシャ「あははははっ! なんかどんどん気分良くなってきます!」

ジャン「……エレンの野郎、用足しに行ったきり帰って来ねぇ」

ミカサ「答えを聞く前に逃げられてしまった」

アニ「やっぱり包囲網を完全にしておくべきだったね」

ジャン「オレとしてはエレンが逃げてくれて助かったわけだが……はっ!」

ジャン「エレンのいない今こそミカサにアプローチをかけるチャンスじゃねぇか!」

ミーナ「んんー……」

ジャン「うるさかったミーナは飲み過ぎたのか逆に大人しくなってやがる」

ジャン「いけるぞ! あとはアニをどうにかしてミカサと二人きりに持ち込めば……」

ジャン「な、なあミカサ!」

ミカサ「エレンが帰って来ないのなら仕方がない。アニ、二人で飲まない?」

アニ「え、なんで?」

ミカサ「たまにはいいでしょう? 普段あなたはあまり喋らないし、この機会にどうかと思って」

アニ「……ま、いいよ。なんだか他のテーブルは騒がしいし、隅の方へ行こうか」

ミカサ「ええ」

ジャン「お、おーいミカサ」

ミカサ「ごめんなさい。あなたとはもう話したし、今度はアニと話してみたいの」

ジャン「だったら別にここでも……」

アニ「女同士の会話に入るつもり? あんたはミーナを見てて」

ミカサ「お願い」

ジャン「わ、分かった……」

ミーナ「んんー……」

ジャン「……ちくしょう。飲んでやる、飲んでやるぞ!」

エレン「……さて、帰ってきたが、結構状況が変わってるな」

ジャン「ち、最初はいい感じだったのによ……ぶつぶつ」

エレン「ジャン、ミカサとアニは?」

ジャン「はあっ!? 話しかけんなクソが。全部てめぇのせいだ」

エレン「急にどうしたんだよ。オレのせい?」

ジャン「うるせえ、どっか行け。一人で飲ませてくれ」

エレン「オレが用足しに行く前はほろ酔い程度だったのに、今じゃべろべろだな。何があったのやら」

ミーナ「んんー……」

エレン「ミーナもか。まあこっちは最初からがぶがぶ飲んでたし、いつかはこうなるだろうとは思ってたけど」

エレン「ミカサとアニはどこ行ったんだ……ん?」

ミカサ「なかなかいい飲みっぷり。アニはお酒に強かったのね」

アニ「あんたこそ。どれだけ飲んでも少し酔うだけで、深みにはまらないじゃない」

ミカサ「確かに。気分も悪くならないし、むしろ良い。まだまだ飲めそう」

アニ「ふーん……そうだ、一度聞いてみたかったんだけど」

ミカサ「なに?」

エレン「あんな隅で二人で飲んでるのか、珍しいこともあるもんだ。まあ二人とも楽しんでるようだし放っておこう」

エレン「それじゃあオレはどうするかな……えーと、マルコたちのところは」

サシャ「ひゃははははははははははは!」

コニー「おいどうすんだよこいつ! さっきからずっと笑ってるぞ!」

マルコ「も、もう締め上げるしか手はないのか……」

エレン「サシャが怖い……やめとこう」

エレン「となると、一番人数の多いあそこかな。アルミンがいるし」

エレン「それに、あいつもいるし……」

一旦ここまでで
まだ書きます

アルミン「はあ、はあ……の、飲み干したぁ」

ライナー「よくやったぞアルミン、お前は男だ。まあ俺もかなりきついが」

クリスタ「二人ともすごい! 瓶に半分以上残ってたのを二人で全部飲んじゃうなんて! 格好よかったよ!」

アルミン「あぁ、この言葉が聞けただけで満足してしまいそうだ……まだ目的は達成できてないのに」

ライナー「お前は十分にがんばった。あとは俺に任せてゆっくりと休め」

アルミン「ふ、ふふ……そうはいかないよライナー。君にクリスタは渡さない」

ライナー「くっ、得意じゃない酒をあれだけ飲んでまだ倒れないか」

アルミン「最強の酒を飲み干したからね、これでもう怖いものなしさ」

ユミル「ほう。だがその最強の酒はまだ二本残ってる。他のテーブルから持ってきた。強いから皆あまり手を出してないようだな」

アルミン「なっ、まさか……」

ライナー「二回戦、だと……!?」

エレン「ようアルミン、隣座るぞ」

アルミン「エレン!」

ライナー「お前もこっちに来たか」

エレン「ここが一番よさそうだったからさ、人も多いし」

アルミン「助かったよエレン! ほら、ここからはエレンも合わせてみんなで楽しく飲もう!」

エレン「助かったって?」

ユミル「……ち、邪魔が入ったか」

エレン「にしてもアルミン、だいぶ辛そうだな。もしかして結構飲んだか?」

アルミン「あはは、まあいろいろあってね。でも大丈夫だから」

エレン「ライナーもそこそこきつそうだな、アルミンほどじゃないけど」

ライナー「ま、まあな、いろいろあったんだよ」

クリスタ「二人ともすごかったんだからー。エレンにも見て欲しかったなー」

エレン「クリスタは辛そうではないけどかなり酔ってるな」

エレン「ユミルは……なんだ、全然平気そうだな」

ユミル「そりゃあな。私が酔うのは邪魔者がいなくなってからだ」

エレン「邪魔者?」

ユミル「お前が邪魔者かどうかもこれから見極めさせて貰うから、そのつもりでな」

エレン「よく分かんねぇけど……で、ベルトルトはどうしたんだ?」

ベルトルト「……」

クリスタ「ベルトルトはねー、たった一杯飲んだだけでダウンしちゃったの」

ライナー「それからずっとこのままだ」

エレン「大丈夫なのか? 心配だな」

アルミン「いくら弱いと言っても飲んだのは一杯分だし、そこまで問題ないと思うけど」

エレン「まあ、そっか」

ユミル「それよりお前こそ全く酔ってるように見えないぞ」

エレン「そうかもな。もともと弱いのしか飲んでないし、さっき用足しに行ったからちょっと気分転換にもなった」

ユミル「なんだつまらん。たくさん飲んでおかないと損だぞ、飲め飲め」

エレン「お、おう」

アルミン「……ユミルは全く飲んでないけどね」

ライナー「まだ三杯」

ユミル「あ?」

ライナー「い、いやなんでも」

アルミン「人にはそれぞれ自分のペースがあるよね、うん!」

クリスタ「だよねー……あ、ねえねえ、皆ちょっといい?」

ユミル「ん?」

クリスタ「あのね、皆の好きな人聞いてみたいなーって」

ユミル「んん?」

アルミン「え?」

ライナー「なに?」

エレン「……随分と急だな」

クリスタ「たまにはそういう会話もしようよ。酔った勢いで! お酒飲んでる勢いで!」

エレン「いや、オレとユミルは全く酔ってないんだが」

クリスタ「じゃあもっと飲もうよ! ほらほら!」

ユミル「う……酔ったクリスタはいつもより押しが強いな」

ライナー(クリスタの好きな相手……知りたい!)

ライナー(だがここで聞いてしまえば、どんな結果であろうとごまかすことはできない)

ライナー(俺だった場合はもちろん嬉しいが、もし違う人だったら……俺の恋はここで終わる!)

クリスタ「好きな人がいない場合は、一番いいなって思ってる人で。ね、いいでしょ?」

ユミル「聞くまでもないだろ、私はクリスタが」

クリスタ「あ、もちろん異性でね」

ユミル「……おい」

クリスタ「当たり前でしょー。仲の良い友達言っても意味ないじゃない。私が聞きたいのは好きな人だよ」

アルミン「……ここが正念場か」

ライナー「アルミン、まさか……」

アルミン「ふ、一番乗りは貰ったよライナー」

アルミン「僕が好きなのはクリスタ、君だあああ!」

クリスタ「え?」

ライナー「こ、こいつ言いやがった……」

エレン「おおー、そうだったのかアルミン」

ユミル「お前は幼馴染のどこを見てたんだよ、分かり切ってるだろ」

ユミル「しかしまさか躊躇なく叫ぶとは……少し甘く見ていたか」

アルミン「はあ、はあ、はあ……い、言ったぞ。言ってやったぞ!」

ライナー「く、クリスタの反応は!?」

今日はここまでにします

今日はちょっとだけ多めに書く予定

クリスタ「……アルミン」

アルミン「は、はい!」

クリスタ「ありがとうね、嬉しいよ」

ユミル「なっ!?」

ライナー「礼を言った!? しかも嬉しいだと!?」

アルミン「そ、それじゃあクリスタ」

クリスタ「……でも、ごめんなさい」

アルミン「……」

クリスタ「私のことを想ってくれるのは本当に嬉しいんだけど、その気持ちには応えられないの」

アルミン「……そ、そっか……そうだよね……」

アルミン「なんとなく気付いていたさ、君の気持ちは僕に向いていないって」

アルミン「でも後悔はしていない。届きはしなかったけれど、正直な気持ちを伝えることができた」

アルミン「だから、ありがとう、クリスタ」

エレン「アルミン……」

ユミル「……なんか、さすがに茶化せないな」

ライナー「お前は立派な奴だ。尊敬するぞ」

クリスタ「本当にごめんね、アルミン」

アルミン「いいんだ……その代わり、君の好きな人が誰か、教えてくれるかい?」

クリスタ「あ、うん。私が言い出したことだしね」

クリスタ「私が好きな人は……」

アルミン「う、うん」

ライナー「……ごくっ」

ユミル「……」

クリスタ「……キース教官なの」

アルミン「……は?」

ライナー「……キース、教官?」

クリスタ「うん!」

ユミル「はあああああっ!?」

エレン「……マジか」

ユミル「ちょっ、クリスタ!? 本気で言ってんのかお前!?」

クリスタ「え? 本気だよ、当たり前じゃない」

ユミル「あの鬼教官のどこがいいんだ! ただのハゲじゃねぇかあいつ!」

クリスタ「そこがいいんじゃない! すごく格好いい!」

クリスタ「それにキース教官って普段は厳しいけどしっかり私たちのこと考えてくれてるし、大人の魅力もあって最高!」

クリスタ「私は体力使う訓練だとよく叱られちゃうけど、あの人が怒ってくれるなら頑張ろうって思えるもの!」

クリスタ「それからそれから……」

アルミン「……は、ははは」

ライナー「なあアルミン、俺たちは夢を見ているのか? それか幻覚とか」

アルミン「まぎれもなく現実だよライナー……仕方ないね、キース教官が相手じゃあ敵いそうにない」

ライナー「せめて訓練兵の誰かだったらな……まだチャンスはあったかもしれないが」

アルミン「……ちくしょう! こうなったらやけ酒だ! 忘れてやるぅっ!」

ライナー「俺もだ! 酒ってのはこういう時のためにあるんだぁっ!」

エレン「……ん? キース教官だったらクリスタの思いが届く可能性は低いと思うけどな」

エレン「だったらアルミンにもまだ希望はあるんじゃ……もう聞いてねぇか」

エレン「あんまり無茶するなよ、特にアルミンは」

アルミン「知るかぁ! この最強の酒一気飲みしてやるぅ!」

ライダー「乗ったぁあ! 俺もだぁあ!」

エレン「……ベルトルトもあんなだし、何かあった時のためにオレは酔わないでおこう」

クリスタ「ほら! キース教官って素敵でしょユミル!」

ユミル「ああうん、そうだな。私が間違ってたよクリスタ……もう私も潰れちまおうかなぁ」

クリスタ「あ、そうだ。次はエレンの番だよ、好きな人言うの」

エレン「オレ?」

クリスタ「そう! アルミンと私も言ったんだし、エレンもね!」

ユミル「この流れで続けるのかよー」

エレン「オレ全然酔ってないけど、なんか今だったら言える気がする」

クリスタ「言っちゃお言っちゃお!」

ユミル「いつもなら気になるところだけど、もうどうでもいいわー」

エレン「そうだな、オレの好きな人はユミルだよ」

ユミル「へー……」

ユミル「……」

ユミル「……んん?」

アルミン「ぶはあぁっ!?」

ライナー「ぶふぅっ!?」

アルミン「げほげほっ……え、エレン!? 今なんて!?」

ライナー「今度こそ幻聴か!?」

エレン「なんだお前ら、酒の一気飲みはどうしたんだよ」

アルミン「そんなことどうでもいい! エレン、もう一度言ってくれ!」

エレン「いや、目の前に本人いるのに二度も言わせるなよ。一応恥ずかしいんだぞ」

アルミン「じゃあ本当にユミルなのか!?」

エレン「だからそうだって、しつこいな」

クリスタ「へえ! 意外だな、全然気付かなかった」

エレン「そりゃまあ、今までそういう態度は出さないようにしてきたし」

ライナー「そ、それは何故なんだ……?」

エレン「ああ、ユミルが一番大事にしてるのはクリスタだからな。告白しても無理かなーって」

クリスタ「もうエレンったら。確かに私たちはよく一緒にいるけど、女の子同士だし気にする必要ないよ」

エレン「けどなぁ」

クリスタ「何でもやってみないと分からないでしょ。告白することで意識して貰えるかもしれないじゃない」

エレン「あ、なるほど。その発想はなかった」

30分ほど休憩します

クリスタ「私だってキース教官にちゃんとアピールしてるもん。お互い頑張ろうよ!」

エレン「そうだな! オレやってみるよ!」

クリスタ「うん!」

アルミン「……なんだか話がおかしな方へ……ミカサが聞いてなくてよかった」

ライナー「エレンの奴、実はしっかり酔ってるんじゃないか? ノリがおかしい」

アルミン「そうかも。顔に出ないだけで……素面でこんなこと普通は言えないよ」

ライナー「見てみろ。固まってるぞ、あいつ」

ユミル「……」

ユミル「……はっ。なんだ? 一瞬記憶が飛んだような……」

エレン「ユミル!!」

ユミル「ひゃいっ!? な、なんだよ急に。びっくりするだろうが」

エレン「オレはお前が好きだ! 付き合ってくれ!」

ユミル「――な!? なななな何言ってんだお前!?」

エレン「オレの渾身の告白が聞こえなかったのか? ならもう一回」

ユミル「待て待て待て! 聞こえた! 聞こえたから!」

エレン「そうか! だったら早速返事を聞かせてくれ!」

ユミル「い、いやでも、き、急にそんなこと言われても心の準備ってもんが」

アルミン「うわーすごく動揺してる」

ユミル「そ、それにお前も今言っただろ? 私にはクリスタが……」

クリスタ「私なら大丈夫! 一人前になれるよう頑張るから! そしてキース教官に認めて貰うの!」

エレン「クリスタはこう言ってるぞ! どうなんだユミル!?」

エレン「もしそれでもクリスタが心配ならオレが手伝ってやる! だからオレと一緒にいてくれ!」

ユミル「はうっ……」

ライナー「あ、今確実にときめいたな、あいつ」

アルミン「案外ちょろいね」

エレン「それとも……オレのこと嫌いか……?」

ユミル「そ、そんなことはっ」

クリスタ「ユミル! いつもの威勢の良さはどこに行ったの? 早く答えてあげなよ!」

ユミル「クリスタぁ」

エレン「ユミル!!」

ユミル「う、うぅ……か、か」

エレン「か?」

ユミル「厠行ってくるううぅっ!」

エレン「あっ、おい!」

クリスタ「逃げた!」

アルミン「……行っちゃったね」

ライナー「意外な一面が見られたな」

エレン「……はぁ、逃げたってことはやっぱりダメなのかな」

ベルトルト「そんなことはない。彼女のあの反応、可能性は十分にあるはず。諦めずに続けてアタックするべきだ」

ライナー「ベルトルト!? お前いつ起きたんだ!?」

ベルトルト「最初から。そもそも僕は酔い潰れてなどいない――まんまと騙されたね?」

アルミン「な、何故そんなことを!?」

ベルトルト「なんとなく。面白そうだったから」

アルミン「……ライナー、僕はもうこの怒涛の展開についていけない」

ライナー「俺もだ。本当に夢じゃないのか、これ」

ベルトルト「現実から逃げてはいけないよ。逃げてばかりじゃ何も始まらない。目を背けず、受け入れることで人は大人になるのだから」

ライナー「なにを良いこと言おうとしてやがる」

アルミン「まったく心に響いてこないよ」

エレン「分かったぜベルトルト! オレ、ユミルを追いかけてくる!」

クリスタ「がんばってエレン! あともう一息だから!」

ベルトルト「応援しているよ」

エレン「おう!」

アルミン「……エレンまで行ってしまった」

ライナー「帰ってきた時が楽しみだな」

クリスタ「本当に……あ、そうだ。起きたのならベルトルトも聞かせて、好きな人」

ベルトルト「ああ、いいよ……ライナーとアルミンだ」

ライナー「……ん?」

アルミン「……んん?」

クリスタ「同性じゃなくて、異性の好きな人でお願い」

ベルトルト「違うんだクリスタ。僕は本当に二人が好きなんだ。それこそ女性に感じるのと同じように」

ライナー「……お、お前、アニが好きなんじゃ」

ベルトルト「ああそうだ。でもそれは過去の話。今は君たちが一番だ」

アルミン「……ど、どうして……?」

ベルトルト「さっきまで酔い潰れたふりをしながら窺っていたけど、君たち二人が周りに翻弄される姿にきゅんときた」

ベルトルト「さあ、一緒に飲もうじゃないか!」

アルミン「……」

ライナー「……」

クリスタ「あ、二人とも倒れちゃった……息してない」

ベルトルト「マウストゥーマウスが必要だね!」

アルミン「――いやだあああっ!!」

ライナー「逃げるぞアルミン! こいつ本気だ!」

アルミン「ジャンの所に避難しよう!」

ライナー「あそこが一番平和そうだ!」

クリスタ「……あーあ、一気に人が減っちゃった。つまんないの」

ベルトルト「……ほんの冗談だったのにな。まさか本気にされるとは」

クリスタ「二人ともかなりお酒飲んだし、冷静な判断ができないくらい酔ってたんだよ」

ベルトルト「なるほど」

クリスタ「それよりライナーが言ってたけど、ベルトルトはアニが好きだったの?」

ベルトルト「ああ、まあね……クリスタはキース教官だって?」

クリスタ「あ、そっか。それも聞かれてたんだ。うん、そうなの」

ベルトルト「お互い難しい相手だよね」

クリスタ「じゃあ二人でどうやったらうまくいくか考えようよ、飲みながら」

ベルトルト「ああ、そういえば僕は一杯飲んだだけだった」

サシャ「うきゃきゃきゃきゃきゃきゃっ!」

コニー「くけけけけけけけけけけけけけけ」

マルコ「……どうすればいいんだ……イライラし過ぎてコニーまで壊れてしまった……」

マルコ「暴走状態の二人を僕一人で止めるなんて無理だ……ここは誰かに応援を頼もう」

マルコ「誰がいいだろう……やはり、ミカサとアニかな」

マルコ「……二人とも、ちょっと助けて欲しいんだ、けど……え?」

アニ「ふふ……赤くなってるミカサ、なんだかいいね」

ミカサ「あ、アニ……? 何を言っているの? 少し酔い過ぎでは……」

アニ「そんなことないって。私はいつも通り。あんたが可愛く見えること以外は」

ミカサ「そ、それはあなたが酔っているから。もう飲んではダメ。代わりに水を」

アニ「いらない。酒も水みたいなものでしょ。そんなことより今はあんたが気になる」

ミカサ「待ってっ……どうして距離を詰めるの……や、やめ」

アニ「二人で飲もうって誘ったのはあんたでしょ。逃がさないよ」

ミカサ「アニっ……あっ……!」

マルコ「……これはどういうことなんだ」

ミカサ「ま、マルコ! お願い助けて!」

マルコ「あれー助けを求めに来たのは僕の方なんだけどなー」

アニ「ちょっとマルコ、どっか行って。今いいところなんだから」

マルコ「そういう訳にもいかないんだ。サシャとコニーが暴走して僕一人じゃどうしようもない。二人の力を貸して欲しい」

ミカサ「それは大変! 今すぐ行こう!」

マルコ「アニもお願いできるかな?」

アニ「……ち、仕方ない」

サシャ「ここはどこ? わたしはだぁれ? あなたはじゃがいも?」

コニー「我々ハ宇宙人ダ」

マルコ「ああ……さらにひどくなっている」

ミカサ「……これはもう」

アニ「気絶させるしかないね」

マルコ「やはりそれしかないのか……」

ミカサ「――ふっ!」

アニ「――しっ!」

サシャ「はうっ!?」

コニー「ぐぎゃっ!?」

マルコ「……すごい、一撃で意識を刈り取った。二人に頼んで正解だったよ、ありがとう」

ミカサ「どういたしまして」

アニ「じゃあ飲み直そうか、ミカサ」

ミカサ「い、いやっ……私はそろそろエレンと飲もうかと……」

アニ「エレンはいないよ。少し前に出て行った。先に飛び出したユミルを追いかけて行ってみたいだね」

ミカサ「……なぜユミル?」

アニ「さあ? まあエレンはいないんだ、これで私と飲めるね」

ミカサ「わ、私もエレンを追いかける!」

アニ「それはダメ。やむを得ない事情がない限り部屋から出てはいけない、だったよね。ねぇマルコ?」

マルコ「あ、ああ確かにそう言ったね」

ミカサ「え、エレンとユミルに何かあったら一大事! これはやむを得ない事情に含まれる!」

アニ「そんな曖昧な根拠で逃げようったってそうはいかない。それがありなら適当な理由でいつでも出られることになる」

ミカサ「うぅっ……ま、マルコ!」

マルコ「すまないミカサ、もう厄介事に巻き込まれるのはごめんなんだ。コニーとサシャの件で懲りた」

ミカサ「マルコぉっ!」

アニ「さ、マルコも許してくれたことだし、行くよ」

ミカサ「い、いやああっ!」

マルコ「さよなら、君のことは忘れないよ」

マルコ「……さて、僕は一人で飲もうかな」

ジャン「……はあ、やってられねぇよ。せっかく酒の力でミカサと良い感じになろうと思ったのによぉ」

アルミン「僕なんてお酒の勢いで告白して振られた挙句、想い人の好きな人はまさかのハゲ教官だったんだよ……」

ライナー「俺は告白するまでもなく失恋して、あやうく同郷の男に唇を奪われるところだった」

アルミン「それは僕もだけどね」

ジャン「そうか、失恋したのかお前ら……辛いな」

ライナー「だがジャン、お前には朗報があるぞ……実はエレンの好きな相手は、ユミルだったんだ」

ジャン「なに……?」

アルミン「ユミルも満更でもなかったみたいだし、もし二人がくっ付けば君にはまだチャンスがある」

ジャン「そっか……そうだよな! オレはやるぞ!」

アルミン「がんばれジャン! 応援するジャン!」

ジャン「……」

ライナー「……」

アルミン「……ごめん」

ジャン「酔ってるからって何でも許されると思うなよ」

ライナー「次はないぞ」

アルミン「……はい」

ミーナ「んー……私の髪型をバカにするなぁっ!!」

ライナー「うおっ!?」

アルミン「び、びっくりしたぁ」

ミーナ「……あれぇ? 私どうしてたんだっけ?」

ジャン「酔い潰れて寝てたんだよ。大人しくしてたと思ったら急に大声出しやがって」

ミーナ「あーそっかそっか! えーと……あと時間どれくらいあるの?」

アルミン「30分くらいかな」

ミーナ「ふーん、なるほどなるほど……」

ライナー「何を企んでいる?」

ミーナ「今までいくつかのグループに分かれて飲んできたでしょ? 席移動とかは好きにやってたけどさ」

ミーナ「だから最後に皆で何かやりたいなーって」

アルミン「なるほど、それはいいかもね」

ライナー「だがエレンとユミルがまだ帰って来てないぞ」

ミーナ「そうなの?」

ジャン「いや、今帰って来たぞ。ほら」

ユミル「ったく、わざわざ追いかけて来るなよ」

エレン「結局厠に行ってなかったじゃないか。なるべく部屋から出ないようにって話だっただろ?」

ユミル「そ、それはお前があんなこと言うから……」

エレン「あー、確かに急過ぎたよな、すまん」

ユミル「ふん……まあ、一応考えといてやるから、今からは飲み直すぞ」

エレン「ああ、分かった」

アルミン「……どうやら告白に対する答えは保留、みたいだね」

ジャン「ちっ、さっさとくっ付いちまえよ」

ミーナ「へーあの二人いい感じなんだー……あ、いいこと思いついた。ふふふ」

ミーナ「ねーみんなー、聞いてー! 今から全員でゲームしたいから、集まってくれなーい?」

クリスタ「全員でゲーム? いいね!」

ベルトルト「楽しそうだ」

ミカサ「やろうやろう! 皆早く集まって!」

アニ「全力で逃げなくてもいいでしょ……でもミカサってああいうのに弱かったんだね。少しからかっただけなのに」

マルコ「できれば僕は一人で飲んでいたいけど……やらないわけにはいかないか」

エレン「ゲームだってさ、行こうぜ」

ユミル「発案者はミーナか……嫌な予感がするなぁ」

サシャ「……」

コニー「……」

ライナー「あそこで倒れてる二人はどうする?」

アルミン「一応全員ってことだし、連れて来てはおこうよ。ジャン、手伝ってくれ」

ジャン「しゃあねーな」

ミーナ「皆集まったね! 今からやるゲームは……王様ゲームです!」

ユミル「ベタだな」

ミーナ「やっぱりこれが一番盛り上がるんだって! ルールは一つ、王様の命令は絶対。これだけ!」

ミーナ「集まったのは13人だけど、サシャとコニーが寝てるから11人でやりまーす」

ミーナ「はいクジ引いてー」

ジャン「仕事速いな。いつ作ったんだよ」

エレン「オレ王様ゲームとか初めてかも。やり方は知ってるけど」

ベルトルト「今みたいな状況でないとやる機会ないしね。男子だけでやってもつまらないだろうし」

アルミン「……後半の発言は嘘にしか聞こえないよ」

ライナー「参加したのは迂闊だったか? もしベルトルトが王様になったら……」

アルミン「やめてくれ、想像してしまうじゃないか」

ライナー「すまん……」

ジャン「ビビり過ぎだお前ら。11人でやるんだ、そんな状況簡単になるかよ」

アルミン「だといいんだけど」

ミカサ「どうかアニが王様になりませんように。なっても私を指名しませんように」

クリスタ「ミカサどうしたの? アニと何かあったの?」

ユミル「さっきまで二人仲良く飲んでたじゃねぇか」

ミカサ「そう思ったのは初めだけ……私はアニの本性を見てしまった」

マルコ「僕もだ。あれは衝撃だったね」

ミカサ「マルコ黙って。私を見捨てたこと、このゲームで後悔させてあげる」

マルコ「あ、あはは」

アニ「……さて、どうなるかな」

ミーナ「全員引いたねー? じゃあいくよ、皆で合わせて……せーの!」

一同「王様だーれだ?」

ミーナ「……私だ!」

ユミル「いきなり発案者かよ。仕組んでないだろうな?」

ミーナ「失礼だよー。そんなことするわけないじゃん」

ミーナ「えーと、どうしようかなぁ……ま、最初だし軽くいこっか」

ミーナ「3番と5番がキス!」

ジャン「どこが軽くだ! 最初から飛ばしてるじゃねぇか!」

アルミン「そういえばミーナもかなり酔ってたよね。一度寝たから少しはましになってるかと思ったけど」

ミーナ「うるさいうるさーい! 王様の命令は絶対って言ったでしょ」

ベルトルト「そうだ、ルールなんだからちゃんとやろう」

アニ「同感だね。このゲームは一人でも乗ってない奴がいると白けるんだ。参加した以上文句言わないでくれる?」

ジャン「わ、分かったっての。やりたくないとは言ってないだろ」

ミーナ「ならよろしい。はい、3番と5番は誰ー?」

ライナー「……さ、3番だ」

エレン「お、ライナーか。じゃあ5番は?」

ライナー「ベルトルトだけはやめてくれええっ!」

ベルトルト「さすがに少し傷つくな……」

クリスタ「5番……わ、私です」

早いですが今日は終わります

ライナー「何だとおおおっ!?」

ユミル「ライナーてめええええっ!!」

エレン「お、おいユミル落ち着け!」

ユミル「放せエレン! 今すぐこいつを殺せば命令は無効だ!」

エレン「バカ! そんなことさせられるか!」

ミーナ「これはいきなり面白い展開になったね! ナイス私! ほらさっさとブチュっといけー!」

ジャン「なんだライナー、お前にとっちゃ最高の状況じゃねぇか。やっぱ心配する必要なかったな」

クリスタ「は、恥ずかしいな……でも命令は絶対だし」

ライナー「つ、遂にこの俺にツキが回ってきた」

ライナー(クリスタがキース教官を好きなことも、俺が失恋したことにも変わりはない)

ライナー(だがこれはゲームだ。たとえどんな組み合わせでキスしても笑って済ませられる)

ライナー(つまり……)

ライナー「最高じゃないか王様ゲーム!」

クリスタ「じゃあライナー、よろしくお願いしますっ」

ライナー「お、おうっ」

ユミル「やめろぉぉ!」

アニ「いい加減うるさい。強制的に黙らせるよ」

アルミン「ユミルにとっては辛い展開だね。まあ僕もだけど……振られたけど、やっぱり羨ましいなぁ」

マルコ「僕、人がキスしてるところをこんな至近距離で見るの初めてかもしれない」

ミカサ「なんだかドキドキしてきた」

ミーナ「ちゅーう! ちゅーう!」

ライナー「い、いくぞクリスタ!」

クリスタ「は、はいっ」

ユミル「エレン! 私の目を塞いでくれぇ!」

エレン「……分かった」

ライナー「……ん」

クリスタ「んぅ……」

ミーナ「おおーっ!」

ジャン「ひゅーひゅーっ!」

アニ「ひゅーひゅー」

ライナー「……はっ」

クリスタ「ぷは……えへへ、私のファーストキス、ライナーにあげちゃったね」

ライナー「……ぐはあっ!!」

ベルトルト「ライナーが倒れた!」

ジャン「あの台詞と笑顔は反則だろ……至近距離でくらったらライナーでなくともああなる」

アルミン「あぁクリスタ……好きでもない人にそんなことするなんて……なんて残酷なんだ」

クリスタ「ライナー? 大丈夫ー?」

ミーナ「えーライナー選手は戦闘不能だね。一発目から人が減っちゃったけど10人で再開しよう」

エレン「……ユミル、大丈夫か?」

ユミル「大丈夫じゃない……」

ミカサ「……」

ミーナ「はーい皆引いたねー。せーの……」

一同「王様だーれだ?」

マルコ「……僕だ」

ミカサ「ちっ」

エレン「マルコか、この中じゃ一番平和そうだな」

マルコ「そうだな、えーと……8番が自分の性的嗜好を一つ言う」

エレン「まあ、平和な方だよな」

クリスタ「8番は誰かなー?」

ミカサ「……私……マルコぉ」

マルコ「ひっ!? ぐ、偶然だから! 運だから!」

ジャン「ミカサの性的嗜好だと!? ひゃっほーっ!」

アニ「興味深いね」

ミーナ「ミカサ、分かってるとは思うけど……王様の命令は?」

ミカサ「……絶対……くっ……まあいい、大したことじゃない」

ミカサ「私は……黒髪の男性が好み」

ジャン「……」

アルミン「ジャン、髪の色が全てじゃないから。あくまで嗜好の一つだから」

ミカサ「でも……たとえ黒髪でもマルコは嫌い」

マルコ「……」

アニ「これはあんたが悪いね。自業自得」

マルコ「元はと言えばアニがミカサに無理矢理……」

エレン「ミカサがはっきり嫌いと言うとは。それもマルコに対して。何したんだ?」

アニ「今度機会があったら教えてあげる。今はゲームの続きをしよう」

ミーナ「はーいテンポよくいこう! 三回目引いてー」

一同「王様だーれだ?」

アニ「……私」

ミカサ「あ、アニ!?」

エレン「アニか。どんな命令にするか予想できないな」

ミカサ「私を指名しませんように私を指名しませんように私を指名しませんように」

アニ「さすがにそこまで怯えられるとね……よし、じゃあ気絶してるサシャとコニーを使おう」

アニ「6番が男ならサシャの胸を揉む。女ならコニーの股間を触る。服の上からでいいから」

アルミン「どえらいの放りこんできたーっ!」

ミーナ「女性の場合は最悪の罰ゲームだけど、男性にとってはむしろご褒美?」

クリスタ「6番誰ー? 私は違ってほっとしたけど、ちょっと興味あったかも?」

ユミル「ああ……クリスタが穢れていく……」

エレン「ユミル、気をしっかり持て!」

ジャン「6番は……お、オレだ」

ミカサ「……はあ、助かった」

アニ「ジャンか。じゃあサシャの胸を揉みな、私がいいと言うまで」

ジャン「お、おう……」

サシャ「……」

ジャン(女の胸を揉む……そりゃあミーナの言う通り褒美みたいなもんだが、相手は気絶してるんだぞ)

ジャン(寝込みを襲うみたいで気が引けるな。そもそもサシャは王様ゲームをしてることすら知らないわけだし……)

アニ「……ジャン、これは王様の命令だからね。もし何かあったらその責任は私が負う」

アニ「だから……存分に揉みな!」

ジャン「……う、うおおおおおっ!」

アルミン「いったー!」

ベルトルト「凄まじい勢いだ! 日頃溜めていた性欲を一気に発散しているのか!?」

ジャン「す、すげえぞこれは! 服越しでも伝わる独特の柔らかさ! 病みつきになるぜ!」

サシャ「ん、んん……んっ」

ミーナ「起きることはないけど反応はしてるね。もしかして気持ちいいのかな?」

サシャ「ん……う、うへへへへ」

クリスタ「笑い始めた……気持ちいいというよりくすぐったいんじゃない?」

ジャン「オレが下手だって言いてぇのか? だったら胸で最も敏感であろうあそこを探り当てて……」

アニ「はいそこまで」

ジャン「なに!? もう終わりかよ!? こっからがいいところなんだぞ!」

アニ「さすがにそこを好きにさせるわけにはいかないね。同じ女として」

アルミン「自分であんな命令出しておいて……」

エレン「王様だからな。どんな理不尽でもまかり通るんだってことがよく分かった」

ジャン「ちくしょう……まあいい、女の乳揉めただけでも僥倖だ。できればミカサがよかったが」

ミカサ「ジャン、何か言った?」

ジャン「な、何も言ってねぇです、はい」

ミーナ「気絶してる人を利用する命令は面白かったね。じゃあ次行こう!」

一同「王様だーれだ?」

クリスタ「私でーす!」

ベルトルト「クリスタか……彼女もかなり酔ってるし、怖いな」

ミーナ「さーあ、女神クリスタ様の命令はー?」

クリスタ「じゃあ2番の人が……この、一番強いお酒を一瓶一気飲みで!」

アルミン「あ、あれはっ……! かつて僕とライナーを苦しめた、最強のお酒!」

アルミン「それを一人で一瓶だと……」

エレン「うわ、それ少し飲んだけどきつ過ぎてすぐやめたやつだ」

ユミル「そういやまだ残ってたか」

エレン「お、立ち直ったかユミル」

ユミル「取り乱してて悪かったな。もう大丈夫だから」

エレン「気にするな」

ミカサ「……」

ミーナ「これはかなりきつそうだぞー。さあ2番はだーれ?」

マルコ「……僕だ」

ミカサ「っしゃあ!」

アルミン「ミカサ、さっきからおかしいよ」

アニ「どれだけ飲んでも大丈夫かと思ってたけど、そうでもなかったのかな?」

マルコ「天国から地獄か……」

クリスタ「はいマルコ。私ね、強いお酒を飲んでる男の人がすごく格好いいことに気付いたの」

クリスタ「だから……期待してるね!」

マルコ「くっ……」

ジャン「また女神の微笑みか。やるしかねぇぞマルコ、男を見せてみろ」

マルコ「……分かった! いっけー!!」

ミーナ「いーっき! いーっき!」

クリスタ「いーっき! いーっき!」

アニ「いーっきいーっき」

いったん休憩します

マルコ「ごくっ、ごくっ、ごくっ……ぷはあっ!」

エレン「おお! あの酒を一気に飲み干したぞ!」

クリスタ「すごい! 本当に格好いいよマルコ!」

ミカサ「感動した。その男気に免じて、私を見捨てたことは忘れよう。いろいろひどいこと言ってごめんなさい」

マルコ「は、はは、は……あり、がと……うっ」

ジャン「倒れた……マルコ、よくやったぞ。お前のことは忘れない」

ミーナ「さあ久々に脱落者が出て残りは9人! 次はどうなるかなー?」

ベルトルト「ゲームの主旨が変わってきてるような……面白いからいいけど」

一同「王様だーれだ?」

ユミル「……私か」

アルミン「ユミルはこの中で一番酔ってない……そのことがどう出るか」

ユミル「そういやまだ王様を絡めた命令はなかったな……1番が王様の良いところ三つ言う」

アニ「褒められたかったんだ、あんた」

ユミル「う、うるせえ。いいだろ別に……で、1番は誰だ?」

エレン「あ、オレだ」

ユミル「……」

クリスタ「おー! これは見応えありそう!」

ミーナ「私が思い描いていた二人の絡みが、まさかこうも簡単に実現するとは……くくく」

ミカサ「……」

エレン「……じ、じゃあ言うぞ?」

ユミル「は、はい」

エレン「えーと、身長が高くて格好よく顔も凛々しいけどそれだけじゃなくて、笑ってるところはすごく可愛い」

ユミル「……はぅ」

エレン「普段のきつい言動からがさつで無神経だと思われがちだけど、実際はちゃんと周りのことを見てるのが素直にすごい」

ユミル「……うぅ」

エレン「最後に……いつもクリスタにしか向けられていない優しさを、オレにも向けて欲しい。つまりオレは……」

エレン「……お前が大好きだ!!」

ユミル「もうやめてくれー!」

ベルトルト「完全に墓穴を掘ったね。最後のは褒め言葉じゃなくて告白になってるのは無視しておこう」

ミカサ「……」

アルミン「ミカサ! しっかりするんだミカサ! 気をしっかり持って!」

アニ「気絶したか。いきなりだったから無理もないね。私も驚いたし」

ミーナ「いやー期待通りの展開ですな。満足満足」

クリスタ「こういう罰ゲームっぽくない命令もいいね!」

ジャン「っしゃああああ!! もうお前ら付き合っちまえよ! 祝福するぞ!」

エレン「ユミル、さっきは保留って言われたけどさ、やっぱり今聞きたいんだ! 答えてくれ!」

ユミル「ほ、保留って言ったら保留なんだよ! ちゃんと後で答えるから! 今答えたら恥ずかしくて死ぬかもしれないだろ!」

ベルトルト「答え言ってるようなものだよね、それ」

ユミル「うるさいうるさい! 次行くぞ次!」

クリスタ「今の参加者は8人だね。第六回戦いってみよー」

アルミン「いつの間にか戦いになってる……ある意味間違ってないけど」

一同「王様だーれだ?」

ベルトルト「僕だ」

アルミン「……べ、ベルトルト!?」

ジャン「初めは気にする必要ないと言っていたが、次々と参加者が減っているこの状況では楽観できねぇ」

ジャン「そうなるとクリスタとキスしてゲームから離脱できたライナーは幸せだったな」

アルミン「ま、まだ大丈夫だ。僕とベルトルト以外に6人もいるんだ、下手な命令はできないはず……」

ベルトルト「じゃ、王様と2番がディープキスで」

アルミン「正気かベルトルトおおおっ!!!」

エレン「あ、アルミン落ち着けよ!」

ミーナ「今までで一番激しい命令だね。それに自分を含めるとは、侮れないなぁ」

アニ「2番はさっさと名乗り出な……ま、命令の直後に叫んだ奴が一番怪しいんだけどね」

アルミン「……」

ジャン「おいアルミン、嘘だろ? 七分の一の確率だぞ? そんな都合よくお前になるわけが……」

アルミン「あ、あはははは! もう好きにしろよベルトルト! 僕は君のものだあああ!」

ベルトルト「じゃあ遠慮なく」

アルミン「んんんんんっっ!?」

クリスタ「うわー……すごい」

ミーナ「めちゃくちゃ濃厚……」

アニ「ベルトルト……実はテクニシャンだったのか」

ユミル「もし私が2番だったと思うと……ひいぃ」

アルミン「ん、ん……ん……」

エレン「お、おい、もういいんじゃないか? アルミンが痙攣してるぞ」

ジャン「ベルトルトは王様だからな、王様が満足するまで続くのさ」

ベルトルト「……ふう」

アルミン「……ほへぇ」

ジャン「やはり気絶したか……しかし、どこか幸せそうな表情をしているように見えるのは気のせいか?」

ベルトルト「現実から逃げずに全てを受け入れた結果だ。大人になったのさ、アルミンは」

ジャン「そ、そうか」

クリスタ「でもベルトルトがアルミンとライナーを好きだっていうのは冗談だったんだよね?」

ベルトルト「ああ、本当はアニを狙ったんだけどね、ディープキスの相手」

アニ「……は?」

ベルトルト「命令は絶対だから仕方なくやったけど、本当は男同士でなんて嫌だよ」

ユミル「その割には積極的にやってたように見えたが」

ベルトルト「命令は絶対だからね!」

クリスタ「ベルトルト、なんだか素敵!」

ユミル「クリスタぁ……お前はどこに行ってしまうんだ」

アニ「……こわいこわい。ベルトルトこわい」

ジャン「今度はアニが恐怖で震えだした……どうなるんだこのゲーム」

ミーナ「ここに来てベルトルト選手が圧倒的な強さを見せつけました! この男に勝てる者は果たして存在するのかー!?」

エレン「やっぱミーナが一番楽しんでる。こいつも倒れる気がしない」

クリスタ「盛り上がってきたね! 七回戦いくよー!」

ジャン「クリスタもかなり乗ってるな。ベルトルト、ミーナ、クリスタの三強だ」

一同「王様だーれだ?」

ベルトルト「……どうやら、僕の時代はまだ終わらないみたいだね」

ユミル「に、二回連続で王様だと……!?」

ジャン「ここに来て運も味方に付けやがったか!」

アニ「こわいこわいこわい」

ベルトルト「そうだな、今度の命令は……王様と2番がディープキス」

アニ「ベルトルトおおおっ!!!」

クリスタ「この流れは……アニが2番だね」

ミーナ「さっき自分で言ってたもんね、命令の直後に叫んだ奴が一番怪しいって」

アニ「……く、くそぉ」

ベルトルト「まさかアニとできるだなんて……感激だ」

アニ「ま、待ってよベルトルト……ねえ、さすがにおかしいよこれ。いったんやめない?」

クリスタ「もうアニったら、今まで六回もやってきてまだそれ言うの? 王様の命令は絶対だよ!」

ミーナ「これも自分で言ってたよね? 乗ってない奴がいると白けるって」

アニ「は、はは……これまでか」

ベルトルト「じゃあ今度は、全力で」

アニ「ぅむぐうううううっっっ!!??」

ジャン「……アルミンとやった時は全力じゃなかったんだな。恐ろしい奴だ」

クリスタ「ディープキスを二回も見られるなんて、感激!」

ユミル「もう私の知ってるクリスタはいないのか……うぅ」

エレン「泣くなユミル。しっかりしろ、オレが支えてやるから」

ユミル「えれぇん……」

ベルトルト「……ふうっ! とてもよかったよ、アニ。やっぱり君は最高だ」

アニ「……こ、こんなの……耐えられるわけ、ない……ぐはっ」

ミーナ「はーい、アニ選手も脱落ー。ベルトルト選手の二連勝です。すごいですねー」

ジャン「脱落者を退かせる動きがスムーズ過ぎだろ……」

ミーナ「これで残りは6人。男も女も3人ずつね。八戦目はどうなるかなー?」

一同「王様だーれだ?」

クリスタ「二回目来たー!」

エレン「クリスタか」

ユミル「もうあいつが何を言い出すか分からない。頼むからこれ以上おかしくならないでくれ」

クリスタ「ベルトルトを見てたら私もディープキスしてみたくなっちゃった」

クリスタ「だからぁ……王様と4番がディープキス対決!」

ユミル「……もう、無理なんだな……4番が私じゃなくてよかったと考えよう」

ジャン「だ、誰だ? オレは違うぞ」

ミーナ「私も違うよ?」

ベルトルト「僕も。クリスタとならやってみたかったんだけどな」

ユミル「……ということは……そ、そんな……」

エレン「……オレだ」

ユミル「だ、ダメだエレン! それはダメだ! クリスタ、エレンだけは許してくれ!」

クリスタ「何回言わせるのユミル、王様の命令はぁ」

エレン「絶対だ」

ユミル「え、エレン……?」

エレン「安心しろユミル、オレは絶対に勝つ! お前一人を置いて脱落なんてするものか!」

ユミル「エレン……」

ジャン「お、オレはお前を応援するぞエレン! クリスタだってディープキスは初めてだ! 条件は同じ、勝機はある!」

エレン「ジャン、お前……」

ジャン「常々お前は気に入らない奴だと思っていたが、今は違う!」

ジャン「あのクリスタ相手にビビることなく好きな女を守ろうとする姿に感動したんだ!」

ジャン「だから、絶対に生きて帰って来い!」

エレン「……ああ、もちろんだ!」

エレン「じゃあユミル、行って来るよ。少しの間、待っていてくれ」

ユミル「……うん、信じてる」

クリスタ「お話は終わった? 待ちくたびれちゃったよ」

エレン「悪かった。全力でいくからな、クリスタ」

クリスタ「もちろん、手を抜くなんて許さないから」

ミーナ「それでは第八回戦……始めっ!」

今日はここまでです
明日完結する予定です

申し訳ないですが今日は書けません
明日にします

今日で完結です

クリスタ「んーっ!」

エレン「んぐうっ!?」

ミーナ「おーっと、先手を取ったのは三巨頭の一人、クリスタ選手だ!」

ベルトルト「このディープキス対決、重要なのは先手を取れるかどうかだ。ここで受けに回ってしまったエレン選手には辛い展開だね」

ミーナ「なるほど、さすが三巨頭の一人にしてディープキスの名手、ベルトルト選手」

ベルトルト「さらに付け加えると、先ほどジャン選手が二人の条件は同じだと言っていたが、それは大きな間違いだ」

ベルトルト「ディープではないとはいえ、クリスタ選手は一度キスを体験している。対してエレン選手はおそらく初めて」

ベルトルト「そして最も注目すべきは、これまでのディープキス対決をクリスタ選手はしっかり観察していたということ」

ベルトルト「ディープキスに興味津々の彼女は、それによって僕の技術を吸収し、さらに独自のものに昇華させていると予想できる」

ベルトルト「……つまりこの勝負、最初から結果は見えている」

ミーナ「素晴らしい解説ありがとうございました! さあ、両選手の状況は――?」

ユミル「あぁ……そんな……」

ジャン「くっ、エレン……」

エレン「ん、ん、んむぅ……」

クリスタ「んふふふふっ」

ミーナ「やはりクリスタ選手が優勢のようです。というかエレン選手はもうダウン寸前だー!」

ベルトルト「クリスタ選手はすっかり楽しんでるようだね」

エレン(なんだこれ……ディープキスってこんなにすごかったのか……)

エレン(あつくて、ぼうっとして、きもちよくて……酒なんて目じゃねぇ)

エレン(対決なんて、どうでもよくなっちまう……何も、できない……)

エレン(絶対勝つとか、安心しろとか大口叩いておいてこの様か……はは、世界一かっこ悪いな、オレ)

エレン(でもそれも仕方ないよな。クリスタの奴、めちゃくちゃ上手いんだから。とても初めてとは思えない)

エレン(ああ……もう限界だ。アルミンやアニみたいに、堕ちてしまう……)

エレン(ユミル……不甲斐ない男で本当にごめんな)

エレン(できれば最期に……告白の返事だけでも、聞きた……かっ……)

ユミル「――えれぇんっ! 負けないでぇっ!!」

エレン(――!!)

クリスタ「――っ!?」

ベルトルト「むっ!」

ユミル「私を支えてくれるって言っただろ! こんな所で脱落してどうすんだよ! 男なら自分の言葉に責任持ちやがれ!」

エレン(……ゆみ、る)

ユミル「てめぇは本当に勝手な野郎だ! あんな告白かましておいてそのまま死ぬ気か! 振り回される私の身にもなってみろ!」

エレン(……ゆみる)

ジャン「そうだぞエレン! てめぇがここで無様に負けたらオレの感動が台無しになるだろうが! だからとっとの目を覚ませ死に急ぎ野郎!」

エレン(……じゃ、ん)

ジャン「それにてめぇはこの程度で諦めるような奴じゃないはずだ! 常日頃から巨人を駆逐するなんてバカみたいな夢見てる奴なんだからな!」

エレン(……じゃん)

ユミル「……なあ、エレン。お前は、私を大好きだと言ってくれたよな」

エレン(ああ……その通りだ。オレはお前が大好きだ)

ユミル「その告白の返事、まだしてなかっただろ? 保留じゃ嫌だとお前は言った。今答えが聞きたいのだと」

エレン(そうだな。保留なんて我慢できなかった。本当は一秒でも早くお前の気持ちを知りたかった)

ユミル「……その答え、言ってやる。お前が生きて私のもとに戻ってきてくれるなら」

エレン(本当か……?)

ユミル「本当だ。私は自分を偽らない。そう生きていくと決めたんだ」

ユミル「だから……だから……!」

ユミル「だから勝って! エレン!!」

エレン(――ユミル!!!)

クリスタ「――んむっ!?」

ベルトルト「こ、これはっ……!?」

エレン(そうだよな、オレがバカだった。なんで途中で諦めようとしていたのか。なんで告白の返事を聞かないまま死んでもいいと思ったのか)

エレン(そんなのオレじゃない……エレン・イェーガーじゃない!)

エレン(……クリスタ、お前には悪いが、オレはここで負けるわけにいかない)

エレン(オレには大切な家族がいる。幼馴染の親友がいる。口の悪い仲間がいる)

エレン(そして……オレを信じて待ってくれる、大好きな人がいるんだ!)

エレン(ユミル……お前のために、オレは勝つ!!!)

クリスタ「んっ!? んんっ!? んんーっ!?」

ミーナ「こ、これはすごい! もはや虫の息と思われたエレン選手! 反撃開始だー!」

ベルトルト「こんなことが……」

ユミル「がんばれエレーン!」

ジャン「やっちまえー!」

エレン(うおおおおおおおおおおおっっっ!!!)

クリスタ「んんんんんんんんんっっっ!!!???」

ミーナ「おおぉっ!? エレン選手の体から蒸気が吹き出した!? 状況が全く分からない!」

ベルトルト「……蒸気が晴れるまで待とう」

ジャン「……」

ミーナ「……」

ベルトルト「……」

ユミル「エレン……」

ベルトルト「蒸気が……晴れた!」

ミーナ「勝者は!?」

クリスタ「……」

エレン「……」

クリスタ「……ま、参りましたぁ」

ミーナ「クリスタ選手ダウン! よってこの第八回戦……エレン選手の大逆転勝利です!!」

エレン「よっしゃあああっ!」

ユミル「やったあああっ!」

ジャン「うおおおおっ!」

ミーナ「いやー、凄まじい戦いでしたね」

ベルトルト「ああ、技術ではクリスタ選手が圧倒的に勝っていた」

ベルトルト「だが、エレン選手とユミル選手、そしてジャン選手の想いがそれを上回った」

ベルトルト「ふっ……柄にもなく感動してしまったよ」

ミーナ「実は、私も」

ユミル「エレンっ!」

エレン「わっ、おいおい急に抱きつくなよ。ふらふらなんだぞ」

ユミル「うるさい、これくらいどんと受け止めろよ。心配したんだぞ」

エレン「……悪い、不安にさせて。でもユミルの声がオレに力をくれたんだ。そのおかげで、勝つことができた」

エレン「ありがとう、ユミル」

ユミル「うん……帰ってきてくれて本当に良かった」

エレン「ジャンもありがとな。お前の応援にも助けられた」

ジャン「はんっ、勘違いすんな。てめぇが死んだらつまらねぇと思っただけだ。それ以上でも以下でもねぇよ」

エレン「はは……」

ユミル「……エレン。告白の返事、今していい?」

エレン「ああ。聞かせてくれ、ユミルの気持ちを」

ユミル「うん……」

ユミル「――私も、エレンのことが大好きだ!」

エレン「……へへっ、オレもだユミル!」

ユミル「きゃっ! もう、強く抱き過ぎだバカ」

エレン「悪い悪い。嬉しさが溢れてきてさ、止められないんだ」

ユミル「……私だって、最高に嬉しく思ってるよ」

エレン「はははっ」

ユミル「ふふふっ」

ジャン「ふん、よかったなお前ら。今だけはオレの目の前でいちゃつくのを許してやる」

ベルトルト「おめでとう、二人とも」

ミーナ「おめでとう」

ジャン「――!! ベルトルト! ミーナ!」

ユミル「……そうか、三巨頭はクリスタだけじゃない。更に上の力を持っているであろうこいつらがいた」

エレン「……」

ベルトルト「そう身構えなくていい。この王様ゲーム、君たちの勝利だ」

ジャン「なに……? どういう意味だ?」

ミーナ「今の戦いに感動したの。本当だよ、今だって必死に涙を堪えてるんだから」

ベルトルト「それにもし戦ったとしても、君たちの想いの強さには勝てないだろうしね」

ミーナ「だから私たちは負けを認めて降参するの。勝利の栄光は、あなたたち三人のものよ」

ジャン「じ、じゃあオレたち……」

エレン「……この王様ゲームを乗り越えたんだ!」

ユミル「はは……マジかよ」

ベルトルト「そしてこの王様ゲーム、自ら負けを認めた者も強制的に気絶する仕組みになっているんだ」

ミーナ「だからその前に、あなたたちに伝えておくことがあるの」

エレン「なんだ?」

ミーナ「王様ゲームを制した者に与えられる、ご褒美のことよ」

ジャン「褒美!? そんなのあったのかよ!」

ユミル「いったい何が貰えるんだ?」

エレン「これだけの激闘を潜り抜けたんだ、それはすごいものなんじゃないのか!?」

ミーナ「ええ、そうよ。勝者へのご褒美、それは――」


ミーナ「――この飲み会の、後片付けよ」

三人「――は?」

ベルトルト「ほら時計を見て、もう22時だ。飲み会は終わりだよ」

ベルトルト「そして最初にマルコが言っていたよね、後片付けは皆で協力することって」

ベルトルト「でも他の参加者は皆気絶しているし、僕たちもじきにそうなる」

ミーナ「だから後片付けができるのは、この飲み会で最後まで立っていたあなたたちだけってわけ」

ベルトルト「あ、それから気絶した僕たちのこと、ちゃんと寮まで送り届けてね。何をしても一時間は起きないから」

三人「……」

ベルトルト「納得して貰えたみたいだね。それじゃあそろそろ……」

ミーナ「お休みなさい」

ベルトルト「……ばたん」

ミーナ「……ばたんきゅー」

エレン「……」

ユミル「……」

ジャン「……」

三人「……」

三人「……」

三人「……」

三人「……せーの、」

三人「――ふっっっざけんなああああああああ!!!!!」






お わ り

以上です
ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年10月13日 (日) 01:10:02   ID: tpf2P0ZZ

早くぅ!☻

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