妹「兄さん、気持ち悪いです」(603)

◆◇家◆◇

兄「母さん、俺……誕生日プレゼントに欲しいものが決まった」

母「誕生日……?」

兄「兄にデッレデレな妹が欲しい!」

妹「……っ!?」

父「ゴブォッ」

母「はい。お父さん、ティッシュよ、うふふっ」

兄「だっ、だめ……かな?」

兄「どうしても、欲しいんだけど」

母「あらあら、もう妹ならちゃんといるでしょ?」

兄「やだぃ、やだぃ」

兄「だって、だってぇ……」

兄「妹ちゃんは俺と目を合わせてくれないし」

兄「しかもお話もしてくれないんだもん!」

妹「…………」

父「……あー」

母「…………」

兄「ね、妹ちゃん!」

妹「……なんですか?」

兄「こっち向いて」

妹「…………」ジーッ

兄「…………」ジーッ

妹「…………」ジーッ

兄「…………」ジーッ

妹「……もういいですよね」すっ

父(父親の前でなにをしてるんだよ、こいつぅぅううううっ)

父(……糞が)

母「…………」

兄「うぅー」

兄「ほらぁー……母さん、父さん!」

兄「妹ちゃん、三秒以上、俺と見つめ合ってくれないよぉ!!」

妹「…………」

妹「悪いですか? だって兄さん気持ちわるいんですもんっ」

兄「うっ……」

妹「……見つめ合わせるなんてどうかしてますよ、本当に」

兄「……」

妹「変態さんをを長い間見つづけるなんてできるわけないです!」

兄「うぅー」

兄「酷いよーぉぉ」

兄「しかも、俺のことを『お兄ちゃん』って呼んでくれない……」

兄「せめて、『兄さん』は止めてほしいよぉ、うぅー」

妹「『兄さん』……以外……?」

妹「はぁ……じゃぁ何がいいんですか?」

兄「にぃたま……とか呼ばれた日には」

兄「ば……ばくはつ……しちゃうなぁ……えへへ」

妹「素で……気持ち悪いんですけど……」

兄「ゴミでもいいから呼んでみてよ!」

妹「嫌ですっ」

妹「気持ち悪い」

兄「うっ……」

兄「もういいもん!」

兄「分からず屋! 寝ちゃうもんねーっ!!」
バタンッ

妹「…………」

妹「…………はぁ」


父「……」

母「……うふふっ」

母(本当にこの子達の仲は――)

母(……)

母(まぁ、面白いからいいけど)

母「うふふふっ」

父「か、かあさん?」

母「何でもないですよ、ふふ」

◇◆学校◇◆

兄「……ということがあったんだけど、なぜ妹をくれないんだろう?」

兄「生誕ってなんなの? バカなの? 死ぬの?」

友「あー……じゃあ、まぁ、座れば……そのへん……」

兄「わかった、失礼する」
ガタッ

友「お前さ……見た目普通なかんじなのに……」

友「よくそんなバカっぽいこというよな」

兄「何ですと? 俺が……バカですと?」

兄(……毎日勉強してきたのに……)

兄「……バカ……なのか……」

友「いや、学力とかのバカじゃなくてさ……」

友「なんつーか、その……マジキチ?」

兄「妹が貰えるなら、マジキチでもなんでもよい」

友「あー、つーかさ、お前、妹……いるじゃん?」

兄「足りない……妹ちゃんには妹成分が足りない……んだよぉおおぉぉっ!」

友(こいつは……贅沢言い過ぎだろ……)

兄「ていうか、妹ちゃんには好かれてないっぽいんだよぉ!!」

友「ああね」

友「それはなんとなくわかるわ」

「兄くん、はよー」

「おはよ、兄ー」

兄「おはよっ」

兄「ていうか今日は早いんだね?」

「あー、ひどいー……」

「私がいっつも遅刻してるみたいじゃん」

兄「あははっ、ごめんねっ」

友(『妹』が関わらないと結構普通なヤツだよな……)

「――――」
兄「――――」
「――――――」
兄「――――あははっ、本当に?」
「あはははっ」

友(ただ、『妹』の話になるとマジキチ)

◆◇体育館(剣道場)◆◇

兄「ふぅー」

兄(妹欲しいなぁ)

後輩「メーン!! メーン!!」

兄「あっ、後輩さん頑張ってるなぁ」

兄「よしっ」

後輩「こんにちはっ、先輩!」

兄「こんにちは」

兄「よし、続けようか」

後輩「はい」

後輩「いちっ、にいっ、さんっ、しっ」

後輩「ごっ、ろくっ、ななっ、はちっ」

兄「もっと声だしてっ、声! ほら、じゅうはちっ」

後輩「はいっ、じゅうきゅっ! にじゅっ!」

兄「ほら、にじゅういちっ! にじゅうおにいちゃんっ!」

後輩「にじゅういちっ! にじゅうおにいちゃんっ!!」

後輩「ん、あれ? まぁ、いっか」

兄「…………」

兄「……よし、やめ」

後輩「はいっ!」

後輩「はぁ、はぁ、はぁ」

兄「お疲れ様、後輩さん。タオル」


後輩「はいっ、先輩。ありがとうございます!」

兄「ほら、ドリンクも用意したから。飲んで良いよ?」

後輩「うれしいですっ。先輩は優しいなぁ、うふふっ」

兄「でへへっ」

後輩「うふふっ」

兄「…………」ジーッ

後輩「あっ……」ジーッ

兄「…………」ジーッ

後輩「うふふっ」ニコッ

兄「……」

兄(後輩さん、可愛い……)

後輩「せ、先輩……どうしたんですか……?」

兄「なんでもないよっ!」

後輩「ヘンなせーんぱいっ、ふふふっ」

兄「でへへへっ」

妹「…………」

妹「メーン、メーン、メーン、メーン……」
しゅっしゅっしゅっ



妹「いち、にぃ、さん、しっ、ごっ、ろくっ」
しゅっしゅっしゅっ

妹「18っ、19っ、20っ」
しゅっしゅっしゅっしゅっ

妹「……ふぅ」

兄「妹ちゃん、お疲れ様」
タッタッ

兄「ほら、タオルと飲み物」ニコッ

妹「………………」

妹「ありがとう……ございます。兄さん」

兄「足捌きも凄く上達してるし、キレもよくなってるね」

兄「このまま頑張ろうね」

妹「……はい」

兄「さっ、休憩5分とったら、次のメニューいくよ!!」

妹「はい」

後輩「はいっ!」

◇◆帰り道◇◆

兄「はぁ……」
てくてく

妹「…………」

妹「……兄さん、ため息ばっかりついてウザイんですが」

妹「……」

妹「どうしたんですか?」
てくてく

兄「いや……」

兄「まだまだ修行が足らないのかなーと」

妹「えっ?」

兄「いや、何でもないよ」

妹「……そうですか……」

妹「……」

◆◇家◆◇

兄「母さーん、おなかーすいたー」

兄「まだれすか、まだれすか」

妹「兄さん、はしたないですよ……」
すたすた

兄「あっ、妹ちゃん!」

兄「メガネかけてるんだー、へー」

兄「可愛いねっ、ふふっ」

妹「あっ、こっ、これ、ちがっ」

妹「…………最悪……です……」

兄「俺的には、家ではそのメガネかけていて欲しいなぁ」

妹「……」

妹「に、兄さんが気持ち悪いので……かけるのを止めます」

兄「ええー……」

兄「可愛いのになー、可愛いのになー」

妹「止めて下さい」

妹「気持ち悪さが留まるところをしりません。通報しちゃいますよ?」

兄「わかった、じゃあ、だまるよぉ……」

妹「……ほんと……気持ち悪……」

父「ふんっ! ごほっ」


兄「うわっ」

妹「……」

父「母さん、飯はまだか?」

母「はいはい、今はこびますよー」

父「で、妹は」

妹「はい、お父さん」

父「妹もそろそろ誕生日だよな」

父「何が欲しいんだ?」

父「パパが何でも買ってあげようじゃあないか」

妹「…………えと――」

兄「――はいっ、はいはいはいっ!」

兄「俺、可愛い妹が欲しいです!!」

ブチッ
父(久しぶりにキレちまったぜ……)

父「てめぇ、バカむすこがぁぁあああぁぁぁ!!」
ドガっ

グイッグイッ
父「ふんぬぬぬっ…………はぁはぁはぁ」

妹「卓袱台じゃないのに、ひっくり返そうなんて無謀です」

母「あらあら」

父「おい、バカ息子!」

兄「あっ、ひっ、う、はいっ、父上どのっ!」

父「何が不満なんじゃあ!?」

父「こんなに……っ、こんなに妹はっ」

父「妹は美人に育ったのに!!」

父「身内びいきとか抜きにして、ふっつぅーに美人だぞっ!?」

父「娘じゃなかったら、エンコーしてたぞ、こるるるるぅあああぁあぁぁぁ!!」

妹「大きな声で……恥ずかしいです……この人消えないかな……」

母(エンコー……?)

兄「父さんは分かってない!!」

兄「見てみろ、よく、ほらっ!!」
ビシッ

妹「……こっち指さないで下さい」

兄「ここっ、むね。む・ね・っ!」

兄「F……いやGはあるぞ、これは!!」

兄「しかも、階段下りるときになんかなぁ」

兄「ゆれるんだぞぉっ!? このっ、ふたつのっ、スイカは!!」

父「きょにう!! いいじゃねぇかよぉぉおお、きょにうぅぅうう!」

兄「しかもほら、すっと長い脚、腕! 筋の通った鼻! ぱっちりおめめ!」

兄「俺と身長あまりかわらないしさぁぁああぁぁ!!」

兄「妹ちゃんは、『妹』というより『姉』っぽいんだよぉ……」

妹「……」

兄「とびっきり美人で、しかもスタイル抜群の『姉』っぽいんだよぉ!」

妹「はぁ…………」

兄「しかもー……しかもー……妹ちゃんは、しっかり者だし……」

父「…………そうか」

父「すまなかった」

父「おれの娘としては最高だ」

兄「絶対にそれは間違いない。……全くそのとおりだよぅ!!」

兄「でも、『妹』っぽくは……」

父「そうだな……兄の妹っぽくはないのかもしれんな……」

妹「……勝手に完結させないで下さい」

母「ごめんね、妹」

母「私が……私が、スタイル良かったばっかりにぃ……うぅ……うぅうふふふっ


妹(お母さん……笑ってる……)

妹「はぁ……」

妹「もう良いです、ごちそうさまでした」
ダッダッダッダッ

妹「大丈夫ですよ。私も、兄さんとお父さんなんか大ッキライですから!!」
バタンッ!

兄「はうっ!」

父「……あー」

母「あらあら」

兄「妹ちゃん怒っちゃってた……」

兄「……はぁ」

兄(俺……サイテーだったな……)

兄「……」

兄「――ふぅ」

兄「予習はこのへんで大丈夫かな」



兄(色々あっても、日課は欠かせないよな)

こそっ
兄「っし」

兄「……」

兄(誰もいないな)

◆◇道路◆◇
兄「さて……」

兄(ランニングに行きますか)
たったったっ

兄(妹ちゃんどうしようかなぁ……)

兄「……はぁ」

◇◆食卓◇◆

妹「…………」ぱくぱく

妹「…………」ぱくぱく

母「あらあら?」

母「今日は部活、朝練だったわよね?」

妹「……そうですよ?」ぱくぱく

母「今日は兄を起こさないでいいの?」

母「もうこんな時間だけど……」チラッ

妹「いいんです、おにいちゃ……――」

妹「――……こほん、こほん、愚兄なんてっ」

母「うふふっ」

母(ひとりのときは『おにいちゃん』って呼んでるのね)

妹「私は……」

妹「私は『妹』らしく……振る舞えばいいんでしょうか……」

妹「はぁ……」

母「あのね、妹ちゃん」

母「あなたは私の娘だし、もちろんお父さんの娘だし」

母「兄の『妹』なの。事実なの。変わらないの」

母「あなたはただ一人の兄の『妹』なの」

母「兄が、どういうのが『妹』なのか」

母「どういうのが『妹』じゃないのかを勝手に決めてるけど」

母「あなたが『妹』なのは事実。だから、あんな発言は無視して」

母「自分の好きなように振る舞いなさい」




母(その方が面白くて、楽しいもの。うふふっ)

妹「……お母さん……」

母「はい」

妹「私、このままでいます」

妹「兄さんの思う『妹』像とはかけ離れてるかもしれません」

妹「でも……、でも、自分なりの『妹』になります……」

母「うふふっ」

妹「あっ、時間だっ」

妹「では行ってきますっ」
タッタッタッ

母「うふふっ、いってらっしゃい」

ガチャッ

父「…………」

父(娘……成長したなぁ……)

父(パパは……パパは嬉しいぞ……)

兄「うわっ、寝坊したぁぁあああぁぁぁ!!」

父「…………」

父「……はぁ」

◆◇体育館◆◇

後輩「いち、にぃ、さん、しっ」
しゅっしゅっしゅっしゅっ

妹「ごっ、ろくっ、ななっ、はちっ」
しゅっしゅっしゅっしゅっ

……
…………

後輩「先輩……遅いね……はぁはぁ」

妹「そうですねっ、ふぅー」

後輩「今日は一緒に来なかったの?」

妹「はい、ちょっと昨日……喧嘩をしちゃいまして」

後輩「あははっ、喧嘩かぁ」

後輩「うらやましいなぁ」

後輩「私一人っ子だから兄弟喧嘩とかしたことなくて」

後輩「それに……欲しかったなあ」

後輩「あんなお兄ちゃんが……」

後輩「妹ちゃんが羨ましいなぁ」

妹「!!」

妹「こ……こうちゃ……っ!!」

後輩「あっ……あはは」

後輩「何焦ってんのー?」

後輩「大丈夫だよ、とらないよっ。安心して、ふふふっ」

後輩「なんだ、いつも罵倒してたけど、結構好きなんだね。兄先輩のこと」

後輩「ふふっ、よきかなよきかな」

妹「…………」

後輩「……それに、本当の兄に兄先輩がなったら、恋愛ができ――」

兄「ごめんねーっ、後輩さん、妹ちゃん!」

後輩「もうっ、せーんぱいっ、遅いですよーっ」

兄「……ごめんねっ、お詫びとして」

兄「はい、キットカット。い、妹ちゃんも……いる?」

妹「兄さん……」

妹「はい、ありがとうございます」

兄「妹ちゃん、昨日はごめんね?」

兄「妹ちゃんのお兄ちゃんとして……あんなこと言っちゃだめだったよね」

妹「おにい――兄さん……」

兄「反省してる」

兄「俺の方が、お兄ちゃん失格だったよね」

妹「……そうですね」

妹「兄失格でしたね」

兄「うぅ……はっきり言われたぁあ……」

妹「兄さんは、確かに世間の『兄』像としてはだめかもしれないけど」

妹「気持ち悪いゴミみたいでも」

兄「うっ」

妹「でも」

妹「私の兄さんですから」

兄「うぅ……妹ちゃん……」

後輩「本当に羨ましいなぁ、妹ちゃんは」

妹「えっ、ええっ」

後輩「ふふっ」

後輩「じゃあ、兄先輩っ! 遅刻のバツ……覚えてますか?」

兄「あっ……うっ……はい……」

後輩「先に来ていた部員の言うことを一つ聞くこと――でしたよね?」

兄「……何でも聞きます……。はい」

後輩「うふふっ」

後輩「じゃあ、妹ちゃんから、どうぞ?」

妹「はい、えっと、では……」

妹「今日の昼ご飯をおごって下さい」

兄「は、はい。じゃあ、お昼に迎えに行きます……」

後輩「じゃあ次は私ですね」

後輩「先輩は、今日だけ――」

後輩「――……私のお兄ちゃんです。わかりましたか?」

妹「……っ?」

兄「えっと……」

兄「…………はい」コクッ

兄「わ、わかりました」

後輩「じゃあっ、えと……お、おに……」

後輩「……お兄ちゃん」ボソ

兄「でへへっでへへへへへっ」

後輩「お兄……ちゃん?」

兄(どぅふっ、どふふふふひひひ)

兄(だめだ、ニヤニヤが治らない……ふひひ)

妹「………………」

妹「………………」

後輩「おにーちゃんっ」

兄「は、は、はいっ!」

後輩「じゃあっ、そろそろ時間だし、着替えてくるね、お兄ちゃん」

兄「でへへ、後輩ちゃんはひとりでお着替えできるかなぁ?」

妹「…………」

後輩「もうっ、お兄ちゃんっ? 私を何歳だとおもってるの?」

兄「そっか、着替えられるのかー、でへへ」

後輩「うふふっ」

兄「でへへっ」

妹「………………」




妹「兄さん……?」

兄「でへへ……――ってなんだー? 妹ちぁん?」

妹「――っのっ!!」
バシンッ

兄「はぅあっ!?」

妹「ロリコンッ!! 不健全!!」

妹「気持ち悪い!! ゴミ虫!!!」

妹「おにいち――じゃなくて、あぁ、もうっ!」

妹「兄さんなんて!」

妹「大嫌いですっ!!!」

兄「あうっ!?」

妹「知りませんっ!」
ダッダッダッダッ

バタンッ

後輩「あー……あはは……怒っちゃった」

兄「妹ちゃん……なんで」

兄「なんで怒ったん?」

後輩「えっ?」

兄「えっ?」

……
…………

◇◆教室◇◆

兄「おはよっ、昨日のCDありがとう」

「あー、おー、どだった?」

兄「良かった。さすが、『うにうに』だと思った」

「おう、とうとう『うに』の良さがわかったか!!」
「でさ、兄――」
「あっはっはっ」

兄「あははははっ」

友(本当に、フツウのときは普通だよなぁ)

兄「あっ、おう」

友「うっす」

兄「実はなぁ、俺……とうとう」

友「ん、何かあったのか?」

兄「ああ。妹ができた!!」

友「…………っ!!」

友「妹ちゃん以外で……か……?」

友「お前の両親っていくつ――」

兄「いや、そっちの方は無理らしい」

友「じゃあ、まさか……誘拐とかしてな――」

兄「違う!! そこまで逝ってない!」

友(いや、おまえならヤりかねないから……)

兄「後輩さん、いや後輩ちゃんが『妹』になってくれました!!」

友「っ!!」

友(兄の妹に自らだと? とんだバカがいたもんだな)

友(それは、まるで……水着で通勤するグラドルのようだ……)

兄「おうい、聞いてるかー友ー?」

友「ああ、すまんすまん」

兄「ふっ、しっかりしてくれよな」

友「おまえには言われたくねーよ」





……
…………
……

兄「――で、妹になったというわけ」

友「まじかよ……」

友「お前が統合失調症だったなんてな……」

ガラガラ
後輩「……えーと……」

「ん?」
「だれあれ?」
「学年下の子じゃね?」

後輩「あっ、いた!」
てくてく

兄「あっ」

友「えっ……?」

後輩「お兄ちゃん、これ。実習で作ったの、ふふっ」

兄「でへでへでへへ、ありがとう。でへへっ」

友「…………」

後輩「焦げてるかもだけど……その……」

後輩「ちゃ、ちゃんと食べてね、クッキー」

兄「はっ、はいっ!」

兄「食べます! 絶対食べます!!」

兄「たとえ水がかかろうとも、泥をつけられたとしても!」

兄「俺は、こここ後輩ちゃんの兄として! すべて! 美味しく!」

兄「いただきます!!」

後輩「ふふっ」

友「…………」



友「…………は?」

「なー、友ー、タキツバどっちが好き――」

友「――タキツバっ!?」

友「俺、チョー好きなんだよねっ」

友「話いれてくれよーっ」
タッタッタッ

「うっわ、テンションたっけぇ」
「食いつきよすぎだろ……」

友「あっ、あははははっ」

友(俺はなにも知らないなにも知らないなにも知らない)

兄「ありがとうね、後輩ちゃん」

後輩「うふふっ」

後輩「じゃあねっ、お兄ちゃん」
タッタッ
後輩「あっ、そうそう」

後輩「放課後の部活は遅れちゃだめだよっ!」
タッタッタッタッタッ

後輩「失礼しました」
ぺこっ

兄「後輩ちゃん……ガチで妹に欲しいなぁ……」

友(あっ、行ったみたいだな、あの人)

「――あははっ、で結局さ、友はどっち派なんだよー?」

友「知らね。んじゃあ、髪みじかい方で」

「……」
「結局、キョーミなかったのかよ…………」

兄「な、じゃんぼ、みばばぼ?」もぐもぐ

友「食ってから話せ」

兄「……」もぐもぐ

兄「――……はぁ、うまかった」

兄「な、ちゃんと、見ただろ?」

友「ああ」

友「よくわかったよ」


友(あの子も兄と同族だってな……)

◆◇昼休み◆◇

兄「……さて」

兄(後輩ちゃんとの約束で忘れかけてたけど……)

兄(妹にお昼をおごらないとな)

兄「はぁ……」

兄(でも、なんか凄く怒ってたからなぁ、妹ちゃん)

兄「よしっ」

兄(謝って謝って謝り倒して、一緒に食べよう)
タッタッタッ

◇◆妹の教室◇◆

妹「…………」

「ね、妹ちゃん、一緒にたべよっ」
「おいでおいでー」

妹「あっ、ごめんなさいっ」

妹「今日は食堂ですので……」

「あっ、そなんだぁ」
「じゃー仕方ないねー」

妹「ごめんなさい……。また誘って下さい」

妹(でも……、兄さんにキツく怒鳴ってしまいましたので)

妹(もしかしたら、来てくれないかもしれません……)

妹「……」

ガラガラ
兄「えっと……」

「ん、誰かきてる」
「あーっ、あーっ、あの人さ、上の先輩だよねっ」
「あっ、うん」
「名前なんだろう?」

妹「!!」

「あっ……」

兄「あのさ、妹ちゃんいるかな?」

「妹ちゃんですか?」

「妹ちゃんをお探しみたいでしたー」
「あー、また告白かぁ」
「多分ねー……」
「凄い……本当にモテるよね、妹ちゃん」

妹「あっ」

妹(お兄ちゃん……来てくれたぁ!)

兄(あやまらなきゃ)

妹「…………」

「…………」ジーッ
「…………」ジーッ

兄(みんなに見られてるなぁ……)

兄(とりあえず、外にでよう)

兄「じ、じゃあ、いきましょうか……」

妹「あ、はい」

◆◇廊下◆◇

兄「ふぁ……よしっ」

妹「兄さん……来てくれたんですね」

兄「――えっ、そりゃあ、うん」

兄「約束、したからね」

兄「そ、それより……デレデレしてるとこ見せてごめん――」

妹「――ごめんはもう良いですよ」

妹「いまさら気持ち悪いのは変わりませんし」

兄「うっ……」

妹「早く食堂に行きましょう?」

兄「あっ、うっ、うん」
タッタッタッ

妹「ほらっ、早くっ! A定、売り切れちゃいますよ」

兄「うんっ!」
タッタッタッ


「…………妹さん……」

「つき合ってる人……居たんだな」

「でも……諦められない……」

「俺は……もう一度、思いを伝えるぞ!!」

◇◆食堂◇◆

がやがや
「ねぇ――」
「――これさ――」
「うま――」

兄「じゃあ、俺が買ってくるよ」

兄「妹ちゃんは、ここ座ってて?」

妹「あっ、はい。わかりました」

妹「兄さん、あの……」

兄「わかってるよ、A定だよね?」

妹「あぁ、はい。そうなんですが……その……」

兄「ん?」

妹「プ……プリン、も……」

兄「あははっ、可愛いねっ。了解しましたー」
タッタッタッ

妹(かっ……かわ……いぃ……うっ)

妹(えへへ、よ、よかったです。お兄ちゃんがもう行ってくれて、えへへ)ニヤ
ニヤ

妹(ニヤニヤがとまりません……から、えへへ)ニヤニヤ


「あそこ、見て」
「うわー、ニコニコしてて可愛い」
「やべ、食堂いつもきてるけど」
「あんな子見たこと無かったぜ……」

「おっぱいでけぇし!」
「一期一会……この機会のがしたら、もうあえない気がする」
「よし、ちょっと、声かけてくるわ」
「お……おう」

妹「…………」ニヤニヤ

「ねー、そこのきみぃー」
「あのさ、ここ、空いてるかな?」

妹「あっ、えと」

妹「す、すみません。そこは――」

兄「お待たせいたしました、姫」

妹「いえ……――って、なんですかっ、姫って」

妹「気持ち悪い」

兄「えっ……嫌だった?」

妹「い、イヤですよ」

兄「あはは、それはゴメンなさい」

兄「あっ、そうそう、さっき声掛けられてなかった?」

妹「あっ! そでしたっ」キョロキョロ

妹「……あれ……?」

兄「いないね、あはは」

妹「そうですね……」

妹「……」

妹「はぁ……」

兄「じゃあ食べよっか」

妹「……いただきます」

兄「いただきます」

妹「……」ぱくぱく

兄「……」ぱくぱく

◆◇体育館◆◇

兄「失礼します!!」

兄「…………」

兄(ん、どうやら他の部員――まぁ妹ちゃんと後輩ちゃんだけだけど)

兄(まだ来てないみたいだな)

兄(……先に着替えてくるか)

ぬぎぬぎ
兄(……妹ちゃんのことを考えたら、後輩ちゃんとの関係)

兄(やっぱり、できるだけ慎むべきだよなぁ)

兄(気を付けないとな)

兄「……うん」
バッ


兄「さぁて」

兄「先に自主練やっておくかな」

兄「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」
シュッシュッシュッシュッ

兄「きぇえっ! はっ、はっ、はっ、きぇえっ! きぇえっ! はっ、はっ」
シュッシュッシュッシュッ


後輩「あ……おにちゃ……」

後輩「……はぁ」

後輩「やっぱり、カッコいいなぁ……」

後輩「スジが鋭いし」

後輩「本当にカッコいい……」

妹「…………」

妹「…………後輩ちゃん……」

後輩「はぅあっ!?」

後輩「居たんだったら声かけてよぉっ、もうっ」

妹「あはは、ごめんなさい」

妹「兄さんは、剣道を小学校からやってたんですよ?」

後輩「そうだったんだぁ」

妹「でも理由は不純……というか、兄さんらしいというか……」

妹「『まぁ、それで長い間よくやれるなぁ』って言われるような」

妹「理由でやってるんですけどね」

後輩「…………」

後輩「…………ねぇ」

後輩「ねぇ、妹ちゃん。私ね……私……おにいち――」

後輩「ううん、兄先輩が……好きっ」

後輩「好きなの」

妹「っ!!」

後輩「妹ちゃん……のお兄ちゃんだけど……」

後輩「本当に好きなんだ」

妹「で、でも……っ」

妹「気持ち悪くて、どヘンタイで」

妹「いい加減な兄さんのどこがいいんですか……っ?」

後輩「…………じゃあさ」

後輩「妹ちゃんは、兄先輩のことが嫌いなの?」

妹「に、兄さんのこと……」

妹「嫌いじゃあ――」



兄「あっ、おぉぉうい!」

兄「なに入り口で話してるんだー?」

兄「早く部活、始めるよー」

後輩「妹ちゃんも、家族として大好きだもんね、『お兄ちゃん』のこと」

妹「……っ」

後輩「応援してっ、なんて言わないけど……」

後輩「――伝えたからね」


兄「はーやーくーっ!!」

後輩「すっ、すみません――……お兄ちゃんっ♪」
タッタッ

兄「ぐっ……そんな使い方卑怯だ……ぐふっ」

兄「怒れないじゃないか……くそぅ……」

後輩「ふふっ、ごめんねっ、お兄ちゃん?」

兄「うん、いいよ」


兄「あっ」

兄「おーい、妹ちゃん? どうしたの?」

兄「ほら、練習するから着替えておいで」ニコッ

妹「……は、はい……」
タッタッタッ


兄「妹ちゃん……どうしたんだろ……?」

◇◆帰り道◇◆

妹「…………」

兄「……?」

兄(妹ちゃん、元気ないみたいだけど……)

兄(な、何かあったのかな)

妹「……あの」

兄「なっなんだいっ!?」

妹「……兄さんは」

妹「その……彼女とか欲しいんですか?」

兄「かっ、彼女!」

兄「……あー、考えたこと……なーかったなぁー」

妹「そっそうですかっ、そうですよねっ」

兄「まぁ、でも欲しくないわけじゃないけど……」

妹「……っ!?」

兄「ん、どうしたの?」

兄「やっぱり今日どっか妹ちゃん、おかし――」

妹「兄さん」

兄「うん?」

妹「も……もしも、ですよ」

兄「は、はい」

妹「小さくて、ふにゃふにゃで、ふわふわした感じの」

兄「ふにゃふにゃ? ふわふわ?」

妹「はい」

妹「そんな子で、しかもめちゃくちゃ可愛い女の子が兄さんに告白したら……」

妹「どうします……か?」

兄「んー、そういう子がいたら、彼女よりも……うん、『妹』に欲しいなぁ」

兄「彼女にするなら、逆に――」



父「ああ、今帰りか」



兄「おー、お疲れ」

妹「……っ」

父「お疲れー……ってあれ?」

父「妹……ちゃん?」

父「妹ちゃん、怒ってる?」

妹「っ!」こくっ

父「おぃこるるるらぁぁああぁぁ!」

父「愚息ぅぅう、また何かしやがったなぁぁあああ?」

兄「おっ……俺っ?」

兄「何もしてない、ちょっ、右手おろして、パパ怖いよぅ……ねぇ」

父「だまりいぃいきぃぇぇえええぇぇええっ!!」

兄「ひうっ!」

妹「お父さん止めてくださいっ!」

妹「兄さんには別に怒ってませんし」

妹「どちらかと言えば、むしろ、お父さんに怒ってますっ!」

妹「もう少しで……」

妹「もうすこしで聞けたのに……」ぶつぶつ

父「うっ、えっ……俺ですか……?」

妹「そうですっ!!」

父「うわぁぁあああぁぁ、ごめんよぅ、ごめんよぅ」

妹「あぁ、もう……うるさいなぁ」

妹「近所迷惑ですから、とりあえず中に入りますよっ」

妹「もうっ」

父「はぅ……」

兄「ヴァーか、ヴァーか、げらげらげら」

兄「おこられてやんのー」

父「うぅーっ!!」

ガチャッ

◆◇家◆◇

妹「はーぁ……」

妹「お兄ちゃんがさっき言い掛けていたことが」

妹「どうしても気になります……」

妹「……ふぅ」

妹「よしっ!」

妹「もう、聞きに行ってしまいましょう!!」

妹「兄さん」コンコン

兄「――――――」

妹「…………ん?」

妹「失礼しますね?」
ガチャッ

◇◆兄の部屋◇◆

妹「……暗い」

妹「兄さん?」

カチッ

妹「あれ、出かけてる……?」

妹「……スンスン」

妹「……」

妹「……ごほん」

妹「兄さんが来るまで、お邪魔させてもらいましょう」

妹「……スンスン」

>>21
今更だけど
>後輩「メーン!! メーン!!」
でラッパーなのかと思った。
後輩「Yo!Yo!ヘイメーン?」
とか言い出すのかと思った。

妹「兄さん、だめですね」

妹「勉強道具が出しっぱなしです」

すたすた
妹「それにベットの布団もキチンとできていません」

妹「もう……」
すっ

妹「ほんといい加減でダメな兄です」

ぎゅっ
妹「……」

妹「スンスン……」

◆◇公園◆◇

タッタッタッ
兄「……ふー」

兄「今日はこんなもんでいいかな」

兄「疲れた……」

兄(はやく家かえって風呂入ろっと)

兄(そのあとは寝る前の単語の暗記くらいか)

兄「――よし」

兄「さて、着替え着替え……っと」

兄「……」

兄(ドアの隙間にはさんでいたシャーペンが折れているだと……?)

◇◆兄の部屋◇◆

ガチャ
兄「……」

妹「スー……」

兄「っ!?」

兄(い、妹ちゃんが……ベットで寝て……る?)

兄(と、とりあえず……)

兄(服を着ないと)

兄「……」
すっすっ

兄「あとは……単語だ」

兄「……」

兄「compromise……発音に注意しないとな」

兄「……」

妹「スー……」

兄(あああああああ! 集中できないよ!!)

妹「……んーン」
ばさっ

兄(あ、ふとん捲れちゃった)

兄(直しとこう)
すたすた

妹「……スー」

兄「……っ」

兄(う……パジャマ胸元開きすぎ……けけけけしからんっ)
ぱさっ

兄(こうして見ると、やっぱり綺麗な顔してるなぁ)

兄(学校でももててるらしいしなぁ)

妹「……」

兄(今は彼氏とかいないみたいだけど)

兄「……」

兄(いつ彼氏ができてもおかしくない)

兄(覚悟……しとかないといけないのかな……)

兄「妹ちゃん」
なでなで

妹「……ス-」

妹「……んん」

兄「……」
なでなで

妹「……っ」

兄「あ、ごめんね、起こしちゃったかな?」ニコ

妹「えっ、えっ!?」

妹「おにい――兄さん?」

兄「どうやら俺の部屋で寝ちゃってたみたいだね」

妹「……――っ!」

妹「な、なななでていましたよね、頭っ」

妹「セクハラ……ドメスティックセクハラっ!!」

妹「気持ち悪いですっ!」

兄「あっ、ごめんね、つい……なつかしくなっちゃって……」

妹「そ、そうですか」

兄「どうしてここで――」

妹「う……っ」

兄「――いや、なんでもない」

兄(あんな顔されたら聞けないよね)

妹「……」

兄「妹ちゃん、今日はこのままここで寝る?」

兄「俺は別にかまわないけど」

妹「私は、じ自分の部屋に帰ります……」

妹「この部屋ニオイますし」

兄「ふぇえええっ? 嘘っ!? すんすん」

妹「そ、そういうわけで」

妹「じ、じゃあ、おじゃましましたっ」
すたすた

兄「あっ、妹ちゃん、おやすみ」ニコッ

妹「っ……はい、おやすみなさい」

ガチャッ

妹「やってしまいました、やってしまいました」

妹「あのまま……お兄ちゃんの布団で……私寝ちゃってたんですね」

妹「でも頭を――」

兄「ふー」

兄「妹ちゃんのかわいい一面を見れた」

兄「夜に徘徊してみるもんだなぁ」

兄「なんちゃって」

兄「でもどうしてここにいたんだろうなぁ」

兄「聞かれたくなかったみたいだし、まぁいっか」

兄「単語やって、はやく寝よっと」

兄「続きは――」

……
……………
……

兄「うう」

兄「どうしよう寝られない」

兄「布団の中が良い香りすぎる」

兄「えっと」

兄「そうか、妹ちゃんか」

兄「ああ、だめだ、嗅いではいけないっ」

兄「無心……無心……」

◇◆朝の食卓◇◆

妹「……」
すたすた

妹(昨日はあまり寝付けなかったです……)

妹(昨夜のことを思いうかべてたら)

妹「……っ」

妹(だめだ、切り替えないと)


兄「おはよう」

妹「にっ、兄さん……」

妹「おはようございます」

妹(兄さんは、昨日のこと気にしてないのでしょうか)

妹(私は寝られないくらい意識していたのに)


妹「今日は早いんですね」、兄さん

兄「ああ、ん、今日は朝連ないけど、朝練用のアラームに設定してたから」

兄(本当は一睡もしてないから早起きも何もないんだけどね)

兄「妹ちゃん、一緒に学校いこっか?」

妹「えっ、あ、はい」

妹「仕方ないですね」


妹「あ、そうだ」

妹「時間も大丈夫そうですし、今日はバスじゃなくて徒歩にしませんか?」

兄「おっけ、いいよ」

妹「…………」ニコニコ

兄(妹ちゃん、あまり変わってなかったから良かった)

……
…………
……

◆◇廊下◆◇

兄「……でね」

「へぇ、そうなんだー」
「あははっ、兄くんって物知りなんだねっ♪」

兄「いや、はは。それ程でもないよ」

「いやいや、すごいよぅ」

兄「あははっ、それでね――」

兄「あははっ」
「ね、ウケるでしょ、ふふっ」

妹(あ、お兄ちゃん!)

妹(廊下で話してる相手は……お、女の人……?)

妹(しかも二人)

妹(お兄ちゃんデレデレしちゃってます)

妹「……」

妹「ふんっ」スタスタ

兄「あっ」

兄「い、妹ちゃん!」


妹「はい」

妹「なんですか?」

兄(もしかして)

兄(――いや、もしかしなくても機嫌悪い?)

兄「今日は、練習館の設備点検とかするらしくて、部活休みだからね」

妹「休み、ですか」

兄「それで……」

妹「伝えたいことは以上ですか」

妹「以上ですね、失礼します、先輩」ペコ
スタスタ

兄「……あー」

兄(久しぶりに買物とか遊びにでもどうかな、と誘うつもりだったのに……)

妹「気持ち悪、女ったらし」ボソッ

兄「うっ……」

兄(機嫌悪いみたいだなぁ)

「さっきの子、兄くんの部活の後輩?」
「可愛い子だったね?」
「うん、すごい美人さんだった」

兄「あー、さっきの子、妹なんだ……」

「へぇ、そうなんだー」
「あっ部活休みなんだよね?」
「良かったら遊びに行かない?」
「私たちカラオケ行くつもりなんだけどさ♪」

兄「あはは、ごめんね。先に決めてたことがあってさ、あは」

「そっかぁ残念」

兄「もし良かったらさ、また誘ってくれないかな?」

「うん♪」
「まかせてーっ」

兄「あはは、ありがと」


兄(あんな感じだったけど)

兄(妹ちゃんを誘えるかな……)

兄「はぁ」

◆◇妹の教室◆◇

妹「……」

妹(あの流れだと、きっとさっきの女の人たちと遊びに行くんでしょう)

妹「……っ」

妹(もしかして、部活休みにしたのって)

妹(設備とかじゃなくて、私用でだったり)

妹(クズですね! 本当ゴミです!)

妹「最低っ!」

「!?」
「ご、ごめんなさい!」

妹「えっ!?」

妹「あ、すすみませんっ」

妹「ち、違う人のことですからっ」

「あはは、そっか……えっと……」
「あ、そうだ! さっき皆でこれから遊びに行くって流れになったんだけどさ」
「もしよかったら、妹ちゃんも来ない? なんて……部活か……」

妹「…………」

妹「良いですよ」

「そっか、やっぱりダ――」
「えっ!? 良いの?」

妹「よろしくお願いします」ペコ

「こ、こちらこそ。お願いします、はい」
(っしゃあああ! 妹ちゃんにアプローチできるチャンスだ!)

妹(お兄ちゃんも遊びに行くだろうし)

妹(……私だって……遊びに行っちゃいますっ)

◆◇校門◆◇

兄「ほうかご!」

友「ど、どうしたんだ?」

兄「いや、放課後すげぇ楽しみだった系かましちゃってんスよね」

兄「マヂでぇ、あげぽよ~!!」

友「うっわ、きめぇよ……」

兄「ふひひっ、我が『妹』の教室に行ってくるのでありますぅ、ふひ」

友「それも……きめぇよ……」

兄「ふんふんふ~ん」スタスタ

友(どっちの『妹』なんだろうな)

◆◇妹の教室◆◇

兄「こんにちは」

後輩「あ、先輩!」

後輩「こんにちは」ニコッ

兄「あのさ」

兄「今日部活休みになったの聞いた?」

後輩「はい、妹ちゃんから聞きましたよ♪」

兄「良かった~。でもごめんね」

兄「これからは、伝達事項は早めに知らせるようにするからね」

兄「ところで、妹ちゃんはいるかな?」

後輩「妹ちゃんですか?」

後輩「クラスの皆と遊びに行っちゃったみたいですよ」

兄「あー、そうなんだ」

兄(一足遅かったみたいだなぁ)

兄「あっ、そういえば後輩ちゃんは一緒に行かなかったの?」

後輩「ええ……まぁ……」

兄(あれ? もしかして、しちゃいけない質問したのかな?)

後輩(兄さんと遊びに行きたかったから、なんて言えない)

兄「あー……」

兄「あ、そうだ!」

兄「せっかくの休みだしさ、もし用事とか無かったら」

兄「これから一緒に遊びに行かない?」

後輩「えっ、あっ、はいっ!!」

後輩「是非! 喜んで!!」

兄「よっしゃ、行きますか!」

後輩「はいっ」

◆◇カラオケ◆◇

兄「最初はコレを入れよう……」
ピピー

後輩「『制服の芽』?」

兄「あ、後輩ちゃん知らないの?」

後輩「えっと、はい」

兄「聞いてみてね――」

兄「~♪~♪」

後輩(す、凄い……上手い……)

後輩(甘い声が素敵すぎる……)

後輩(……でも……歌詞がよくわかんないなあ……)

兄「――ふぅ、どうだった?」

後輩「先輩の……凄くて……びっくり……」ゴクリ

兄「……」

兄「よし。今のをもう一度」

兄「今度は『先輩』じゃなくて『おにいちゃん』と言ってくれませんか」

兄「お願いしますお願いしますお願いしますお願いします」

後輩「えっと」

後輩「おにいちゃんの……凄くて……びっくり……」ゴクリ

後輩「――こうですか?」ニコッ

兄「ふぅ……ありがとう」ビクンビクン

兄「いきなりでごめん、トイレに行ってくるね♪」

後輩「えっ、はい」

兄「その間にゆっくり曲でも決めててよ♪」

後輩「了解でーす」

ガチャ

兄「ふぇ……ズボンの中がぐちゃぐちゃだよぉ……」

……
…………
……

兄「…………」
スタスタ

「ねぇ、こっちに来なよ?」
「なぁ、良いだろ?」

兄(うっわぁ、チャラいなぁ。ナンパかよ)

兄「……」
スタスタ

兄(って、うちの個室やないか!!)

兄「……」

兄「おい」

後輩「あっ、先輩っ」

「――えっ」

兄「君らさぁ、俺のカノジョに何手だしてんの?」

後輩「っ!?」
ぎゅっ

兄「この子は、俺の」

兄「君ら欲しいの?」


後輩「……ふあ」

「いや……その……」
「後輩、俺ら誤解されてる?」
「その彼氏さんに説明してあげて」

後輩「……あわ」ドキドキ

「えっと……後輩?」

後輩「えっ」

後輩「あっ、ごめんなさい!」

後輩「先輩、この人たちはナンパとかじゃなくて、私のクラスメートです」

兄「……えっ?」

兄「ほ、本当に?」

「はい、そうです」
「い、妹さんのお兄さんですよね、あの……こんにちは……」

兄「あ、あはは、そうだよ」

兄「ご、ごめんね、間違えて……あは」

兄(俺のバカぁ……ああ)

「後輩ちゃん、つき合ってる人いたんだー」

後輩「あ、そ、それもちがいます、よね?」

兄「あ、う、うん」

兄(恥ずかしい逃げたい恥ずかしい逃げたい恥ずかしい……)

「えっ、そうなんですか?」
「いや、でも凄く怖かったっすよ、マジでマジで」



スタスタ
妹「あ、××君たち……」

妹「えっと……ほかの部屋の人と……もめてる?」

スタスタ
妹(どうしたんでしょうか?)

「えー、本当は付き合ってるんじゃないんスか?」

後輩「彼氏・彼女にみえる?」

スタスタ
妹(……えっ、後輩ちゃん? ――――それにお兄ちゃん……)

兄「あはは」

「どうみても二人、カレカノっすよ、あはは」

妹(二人で個室……カラオケ……彼氏……彼女……)

……
…………
兄『ふにゃふにゃ? ふわふわ?』

妹『はい。そんな子で、しかもめちゃくちゃ可愛い女の子が兄さんに告白したら……』

妹『どうします……か?』

兄『んー、そういう子がいたら、彼女よりも……うん、『妹』に欲しいなぁ』
…………
……


妹「……っ」

妹「……嘘つき」

妹「お兄ちゃんの……嘘つきっ」
スタスタ

◆◇パーティーボックス◆◇

「お帰り~」
「次、妹ちゃんだよ♪ 何歌う?」
「なぁ、俺とこの曲を――」

妹「あはは、ごめんなさい。ちょっと用事ができてしまって」

妹「空気読めてないですが、お先に失礼しますね」

妹「お金、ここに置いときますから……」

ガタッ

妹「…………っ」ポロッ
スタスタ

「……えっ」
「妹ちゃんどうしたんだろう……」
「…………」

……
…………
……

◆◇帰り道◆◇

兄「今日は色々ごめんね、あはは」

兄「クラスメート、誤解させちゃったみたいだしね」

後輩「いえいえ、ふふっ」

後輩「あんな誤解なら大歓迎ですから」ぼそっ

兄「ん?」

後輩「なんでもないですよっ」

後輩「今日は楽しかったです」

兄「そうだね、楽しかったね」

兄(後輩ちゃんは可愛いなぁ)

後輩「おくってくれて、ありがとうございました♪」

兄「いえいえ。じゃあまた明日」

後輩「はい、さよなら」

……
…………
……

◆◇家◆◇

兄「ただいまぁ」

兄(今日は失敗したなぁ)

兄(幸いな事に、妹ちゃんには聞かれてなかった様だけどね)

母「おかえりなさい」

母「……あら? 妹ちゃんは?」

兄「えっ?」

兄(クラスの人たちと遊びに行ってたらしいけど)

兄(あの子たちは、自分たちより先に帰ってたはず……)

兄「まだ……帰ってないの?」

母「そうよ」

兄「ちょっと行ってくる」

母「えっ、えっ?」

ガチャッ

すみませんねむたいです

兄「…………っ」
タッタッタッ

兄「妹ちゃん、どこっ」
タッタッ

兄「電話……」
ピッピッピッ

プルルルル
兄「繋が――」

ツーツー
兄「繋がらない」

兄「……切られた?」

兄「妹ちゃん……」

兄「もう一回、カラオケに――いや、その前に後輩ちゃんから、今日のメンバー
の連絡先を聞かないと――」
タッタッタッ

……
…………
……

「もしもし」

兄「ああ、ごめんね、妹の兄なんだけど」

「えっ、あっ、おお兄さん!?」

兄「うん」

兄「妹カラオケ終わりにどこに行ったのか知らないかな?」

「えっ、妹ちゃ……妹さんですか?」

「妹さんは途中で帰ったので、わからないです」

兄「えっ、君らの先に妹は帰ったの?」

「ええ――」

……
…………
……

兄「妹ちゃんっ」
タッタッタッ

兄「もうこんな時間か……早く……早く捜さないと……っ!」

兄「妹ちゃん、どうか無事で……」

兄「っ、くそ、どこにいるんだよ」

妹『……ふぇ』
兄『はぁはぁ、妹ちゃん! 見つけた!』
妹『に、兄さん』
兄『ここにいたんだね』
妹『何で直ぐに見つけてくれないんですかっ!』
妹『兄の人は女性をすぐ見つけられなきゃダメなんですっ』
兄『……わかったよ。ごめんね、妹ちゃん』
妹『この公園にいれば――』


兄「そうだ……あの公園に行けば……」
タッタッタッ

兄「妹ちゃん……妹……!」
タッタッ

……
…………
……

兄「はぁはぁ」

妹「……」

兄「妹ちゃん……」

兄「見つけたよ」

妹「また、すぐには見つけられなかったんですね」

兄「ごめんね」

妹「……」

妹「寒いです」

兄「えっ」

妹「お兄ちゃん、私、今寒いのっ!!」

兄「あ、うん」
ぎゅっ

兄(お兄ちゃん……か……)

妹「…………」

兄「……」

妹「今日は、ね」

兄「今日は?」

妹「告白します」

兄「え……こ、告白って……」

妹「あ、勘違いしないでくださいね。気持ち悪い」

妹「ただ、言わないといけないことがあります」

兄「ああ、うん。言ってみて」

妹「私は精神的にまだ兄離れできていなかったようです」

妹「いつも蔑んだりしてましたが、実は兄さんが必要だったみたいなんです」

妹「兄さんが好きだったんです」

妹「兄さん」

妹「これが告白です」

兄「……」

兄「うん……」

妹「それで、これからなんですが」

妹「兄さん、私……兄離れをします。精神的に」

妹「あ、兄さんのことを嫌いになるってわけじゃないですよ」

兄「……妹ちゃん……」

兄「でも、まだまだ俺は妹ちゃんに『兄』らしいことなんかできてなくて――」

妹「ううん。それは私が判断することです」

妹「もう大丈夫です。あったかくなりました。離して下さい」

兄「え、う、うん」ぱさ

妹「今まで、ありがとうございました。先に帰ってください」

兄「え、でも……夜は危ないし……」

妹「いいえ大丈夫です。私は腕に自信がありますから。その棒切れで戦えます」

兄「あ、あはは、そっか。もう……」

兄「……」ぽろ

兄「さき帰るね」ぽろ
すたすたすた

妹「…………」

妹「いっちゃった」

妹「お兄ちゃんが泣かないでくださいよ……」

妹「泣きたいのは私なんですよっ」

妹「……ふぇ……ぐすっ」ぽろぽろ

妹「……ぐすっ」ぽろぽろ

一部完()

すみません
睡MAXです・・・

保守ありがとうございました!
投下していきます。

……
…………
……

◆◇家◆◇

すたすた
男「ふぁあぁ」

男(昨日は勉強も日課も出来てない)

男(妹ちゃんのことがあったし……)

男「おはよう」

父「……」プイッ

男(なんだこいつ)

母「あら、おはよう」

男「はよー……」

男「あ、そうだ、妹ちゃんは?」

母「もう学校に行ったけど」

母「兄に声――いや、罵声もかけないで行ったのかしら」

男「……え」

父「ん!?」

父「なっなんだ! また妹を怒らせたのか? ざまぁああああ!」

男「……」

母「あら、そうなの?」

男「違うよ」

男「『兄』離れするようにしたんだってさ」

父「……『兄』ばなれ、か……」

母「……」

男「あ、朝ごはん今日はいいや。もう学校行くから」

父「あ、ああ……」

母(……妹……)

……
…………
……

◆◇教室◆◇

男「……」

男「…………」

友「……あれ?」

友(コイツ、今日全然元気ないみたいだな)

友「お、おい、どうした?」

男「あ……友、おはよう」

友「ああ、おはよう」

友「んで、何かあったのか?」

男「えっ? あ、ああ。妹が兄離れするってさ」

友「ん? えっ?」

友「もともと兄離れできてたんじゃ……?」

男「……」

友「……無視かい……」

友(相当やられてるみたいだな)

……
…………
……

◆◇体育館◆◇

後輩「めーんっ!」

バシッ

妹「はぁ、はぁはぁ」

男「よしっ」

男「今日はここまでにしようか」

男「お疲れ様」

後輩「お疲れ様です!」

妹「お疲れ様です」

兄「ああ、うん」

兄(妹ちゃん……)

後輩「あのっ、先輩!」

後輩「今日、一緒に帰りませんかー?」

後輩「私、今日は用事あって駅まで行きたいので、道一緒なんですよ」

兄「ああ、うん。いいよ」

妹「……」

兄(後輩ちゃんも一緒なんだし)

兄「ね、妹ちゃんも一緒に――」

妹「……えっと」

妹「お誘いは嬉しいのですが」

妹「すみません、先約がありまして」

兄「せ、先約? 一緒に帰る相手?」

兄「誰なの……? 男なの?」

妹「それは――」

妹「それは、兄さんには関係ありません」

兄「えっ……ああ……うん……」

妹「じ、じゃあ」

妹「待たせてるので、先に行きます」
すたすた


兄「行っちゃった……」

兄(……妹ちゃん……)

つんつん
後輩「……先輩?」

兄「えっ、あっ、うん」

兄「何でもないよ」

兄「今日は二人で一緒に帰ろうねっ」ニコッ

後輩「二人……えへへ」ボソッ

後輩「はいっ!」


……
…………
……

◆◇駅◆◇

兄「――」

後輩(こころなしか……どこか落ち込んでるみたい)

後輩「先輩っ」

後輩「ありがとうございました」

兄「あっ、うん。帰り道は気を付けてね」

兄「夜遅くなる前には帰るんだよ」

後輩「ふふっ、先輩、私のお父さんみたい」

後輩「先輩も――いろいろ頑張ってくださいね」

兄「う、うんっ」

◆◇帰り道◆◇

兄「はぁ」
とぼとぼ

兄(妹ちゃんと後輩ちゃんの前では)

兄(できるだけいつも通りでいようって思ってたのにな……)

兄(気をつけないと)


兄(妹ちゃん無事かな……)

兄(ちゃんと帰れてるのかな)

◆◇家◆◇

ガチャッ
兄「ただいま」
すたすた

兄「ねぇ、妹ちゃん帰ってる?」

母「おかえりなさい、今は部屋にいるんじゃないかしら」

兄「そ、そっか」

兄「よかった」

母(兄の方は妹離れできなさそうね)

◆◇兄部屋◆◇

兄「ふー……」

兄「勉強終了……しとくか」

兄(剣道やってるのに、集中できないなんて)

兄(まだまだだな)

兄「日課に行きますかぁ」
ガチャ

◆◇家の廊下◆◇

兄「あ」

妹「……」

兄(パジャマ姿だ。髪は少し濡れてるみたい)

兄「もう寝るところ?」

妹「……もう少ししたら」

兄「髪――」

兄(余計なお世話、かな)

兄「ごめん、なんでもないよ。おやすみ」

妹「あ、はい……」

◆◇道路◆◇

……
…………
……

兄「……」
たったったっ

「……」

兄「……?」
たったっ

兄「はぁはぁ……」

兄「そろそろ帰るか」

兄「あとは古典単語覚えて終わり――だな、うん」

……
…………
……

◆◇家◆◇

すたすた
男「……」

男(やっぱり今日も)

男(妹ちゃん先にいったのかな……)

男「おはよう」

父「……」プイッ

男(なんだこいつ。今日もか)

母「あら、おはよう」

男「はよー……」

兄「妹ちゃんは――」

父「もう行った」

兄「そっか……」

母「ふふふ」

兄(急にこんな風になると、本当に辛いなぁ)

兄(シスコンだからなぁ、俺……)

……
…………
……

◆◇グラウンド◆◇

妹「はぁ、はぁはぁ」
たったったっ

後輩「はぁはぁ」
たったっ


兄「はいっ」

兄「お疲れ様」

兄「今日はここまでにしようか。体冷やしといてね」

兄(で、今日は妹ちゃん……俺と一緒に帰ってくれるのかな……)

兄「……あのさ、妹ちゃん、後輩ちゃん」

兄(う……体操服で体育座り、そして汗……)

兄(くそ、いつも見られる体育の先生うらやましいなぁ)

兄(いや、そうじゃないだろ俺)

後輩「はい、何ですかー?」

妹「……」

兄「えっと、今日は一緒にパフェ食べて帰ろう――かなって、久しぶりに」

兄(あそこのパフェ、妹ちゃんは気に入ってるし)

兄(……うん、これなら来てくれるハズ)

後輩「あのお店ですよね? いきます! 私そこのパフェ大好きっ」

兄「あはは、良かった」ニコッ

後輩「ふふっ」

妹「……」

兄「――で、妹ちゃんは……?」

妹「ご、めんなさい、私はいいです」

妹「二人で行ってきて下さい」

兄「……」

後輩「妹ちゃん……?」

妹「人を待たせてるので――」

兄「そっか、ごめんね、無理言って……」

後輩「先輩……」

兄「あ、あはは」

兄「また二人だけど、いいかな?」

後輩「は、はいっ」

◆◇カフェ◆◇

兄「パフェとカフェって似てるよね」

後輩「えっと……」

兄「いや、ごめん忘れて下さい」

後輩「ふふっ」

兄(妹ちゃんも来てくれたらよかったのになぁ)

兄(はぁ……妹ちゃん)

後輩「最近、二人になること多いですよね」

兄「ふぇ? ごめん、なんか言った?」

後輩「っ、……な、なんでもないですっ」


後輩「先輩は私のことどう思ってるんだろ……」

兄「すごく可愛い『後輩』だよ」ニコッ

後輩「――っ!」

後輩「もうっ、そこは聞かなくていいところだったのにっ!」

後輩「先輩こういうのは耳にはいるんですねっ」

兄「あはは、ごめんごめん」

兄「パフェ食べて機嫌直して? 今日は奢るよ?」

後輩「あっ、ありがとうございます」

……
…………
……

◆◇家の前◆◇

兄「……」
すたすた

兄(楽しかったけど、妹ちゃんとも一緒に食べたかったなぁ)

兄(あの日から……見事に何を誘っても拒否されてる……)

兄(妹……ちゃん)

兄「何をしてるんだろう……」

兄「……あれ?」

兄「郵便ポストに……なんだろう……」
パカッ

兄「っ!?」

手紙
『妹ちゃん大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大
好き大好き大好き大好き大好き大好きおっぱいちゅぱちゅぱしたいちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱ脚も綺麗すりすり撫で回したいよすりすりすりすりす
りすりすりすりすりすりすりすりすりすり妹ちゃんいつも見てるよ!!』

兄「…………」

兄「おい……」

兄「さずかの俺もこれはドン引き」

兄「妹ちゃん……」

兄(まるでストーカーされてるみたいだな)

ぺら
兄「誰からかは書いてない……」

兄「宛先住所や切手から察するに、直接ポストに入れたわけじゃないみたいだな……」

兄(確かに妹はモテてるみたいだし)

兄(しょっちゅう告白されてると聞く)

兄(噂では、みんな断ってるみたいだけど)

兄(前にもこんなことがあったな)

兄(俺が守ってたから大丈夫だったけど、今の妹ちゃんは……)

兄「妹ちゃん大丈夫かな……?」

ガチャ
兄「……ただいま」

母「あら、お帰りなさい」

兄「妹ちゃんは帰ってる?」

母「えっと……」

母「今日は少し遅いみたいね」

兄「!?」

兄(パフェ食べて寄り道してたのに、妹ちゃんより先に家に着いた……?)

兄「ご、ごめん少し出てくる!」
たったったったったったっ

母「あらあら?」

母「男の子は速いわね」

……
…………
……

たったったったっ
兄「ハァ……ハァ」

たったっ
兄「妹ちゃん! 妹! どこだ!」

たったっ
兄「ハァハァ、こっちか?」
たったっ

兄「くそ……」

ピッピッ
兄「……」

兄「電話繋がらない……電源切れてる……?」

兄「……はぁはぁ」
たったっ

兄「っん……はぁはぁ」
たったったっ

兄「日頃鍛えていても、こんなもんかよ……くそ……っ」

兄「……」
すたすた

兄「あ」


妹「――」


兄「い、妹ちゃん!」

妹「――それは嫌ですね」

青年「――――はは」


兄「!!」

兄「妹!!」

兄(アイツがストーカー男なのか!?)

兄「オイコラぁぁあ!!」

ドガッ ボゴッ

青年「いッッ!!」

妹「!?」

妹「青年くん、大丈夫ですかっ!?」

妹「何でいきなりこんなっ――――えっ、兄さん……?」

兄「はぁはぁ……」

妹「兄さん、何で……? 青年くんをいきなり……」

兄「えっ、あっ、え?」

兄「だって、こいつストーカーなんじゃ――」

妹「失礼なこと言わないで下さい! 私のクラスメートです!」

青年「……いてて……」

青年「……えっと、妹ちゃん、この方はお兄さん?」

妹「は、はい……」

妹「兄がすみません、本当に……」

青年「ううん、えっと――」

ペコッ
青年「はじめまして! 青年と言います!」

兄「えっ、ああ、はじめまして……」

妹「兄さん……」
パシンッ

兄「い……ッ」

兄(はじめて……妹にぶたれてしまった……)

妹「最低」

妹「ちゃんと青年くんに謝って下さい」

妹「それから――」


妹「もう、ほっといてください」


兄「……っ!」

妹「……」

青年「えっと……」

兄「青年……くん、だよね」

兄「ごめんなさい、本当に」
ペコ

青年「あ、いえ……」

妹「いきましょう、青年くん」
すたすた

青年「えっ、ああ、うん」
すたすた

妹「大丈夫でしたか?――」

青年「――――」
すたすた


兄「…………」

兄(何しちゃってんだよ、俺は……)

兄「はぁ……」

兄(こんな『兄』なら離れて当然だよな……)

……
…………
……

すみません、一旦外します><

◆◇家◆◇

母「ごはんできたわよ~」

父「うむ」

妹「…………」

母「あらあら? 兄がまだみたいね。妹ちゃん呼んできてもらえるかしら?」

妹「イヤです」

母「……」

父「ふむ」

兄「ごめん、ごはんできてたんだね」
すたすた

妹「…………いただきます」

母「いただきます」

兄「……いただきます」ぱくぱく

妹「……」

兄「ごめん、ソースとってくれない……かな?」

妹「……」

兄(妹ちゃん、一瞥もない……)

兄(無視されちゃってる)

兄(もう嫌われたんだ……)

兄(でも)

兄(あの手紙のことは……まだ解決されていない)

妹「……」ぱくぱく

兄「……」ぱくぱく

父「かあさんのご飯はうまいなぁ」

母「うふふ。総菜屋さんのですよ、それ」

父「……」

兄(妹ちゃんは、まだストーカーに気付いていないと思う)

兄(俺がなんとかして、妹ちゃんが何も知らないまま、事を終わらせる!)

……
…………
……

◆◇家◆◇

兄「……ふあ」

母「あらあら、今日はすごくはやいのね」

母「妹ちゃんより早いなんてね」

兄「ああ、うん。昨日は早く寝たから、ね」


すたすた
妹「おはようございま――っ」

兄「おはよう」

母「おはよう。今日は早いでしょ、兄」

妹「……そうですね」
すたすた

兄「……」

……
…………
……

妹「じゃあ、行ってきます」
ガチャ

兄(あ、もう出るんだ、はやいっ)

すたすた
兄「同じく、行ってきます!」
ガチャ

母「ふふふ、いってらっしゃい」

妹「……」

兄「……」

兄「どしたの?」

妹「いいえ」フイッ
すたすた

妹「……」

兄(妹ちゃんとは、いつもあんまり話す方じゃなかったけど)

兄(今日はやっぱり、空気が重い……)

兄(勝手に一緒に登校してること、やっぱり嫌だったのかな……)

兄「……な、なかなかバス来ないね……あはは」

妹「……」

兄「あ……あはは……」



兄「――あ、バス来たね」

兄「……うっ」

ざわ
「……っ」
「……」

兄(この時間帯って、こんなに混んでたんだ)

妹「……」
すた

兄「あはは、人多いんだね」

妹「……」

兄(人が多い場所はすごく危険だ)

後輩ルートまだー?

兄(押しつぶされないように、あと痴漢されないように)

兄(スペースつくって俺がガードしてあげないと)

兄「ぐっ……すいません……」

兄「妹ちゃん、ここおいで」

妹「……」


妹「…………」こく



「発車しまーす」

……
…………
……

◆◇教室◆◇

兄(周りの人にめちゃくちゃ押されたし、しかも睨まれた……)

兄(時間は短かったけど、朝からいい筋トレになった)

兄(それに、妹ちゃんが楽そうでよかったぁ)

ガラガラ

兄「おはよう」

「はよー」
「おはよっ、兄くん」

兄「おはよ」ニコ


兄「友、おはよう」

友「ああ、今日は落ち込みモードから立ち上がったんだな」

兄「んー、まぁ、落ち込んでいられないような出来事が、あったからね」

友「……?」

兄「ストーカーってどう思う?」


友「おまえ……そこまでするようになったのかよ……」

友「それは……流石にアウトだろ……。はやく捕まってこいよ……」

兄「いや、俺じゃないですよ!?」

兄「いや、俺の妹が、されてるみたいなんだよね」

友「妹!? じゃあ、やっぱりお前だろ!!」

兄「いや、違うんだって」

友「んー、まぁあんな可愛い子だったら、されてもおかしくないよな」

兄「……でさ」

兄「なんかヘンなやついたら教えてくれないか?」

友「ああ、わかった。みんなにも聞いとく……」

兄「あ、でも妹ちゃんがストーカーされてるっぽいって所は黙っててくれる?」

友「えっ? なんで?」

兄「妹ちゃんには、秘密裏におさめたいんだ」

友「……」

友「ああ、わかったよ」

友「本当に妹ちゃんには優しいね~」

兄「んー、あたりまえだろ」

兄「妹ちゃんの兄なんだから」

(^p^)「ニヤッ」

……
…………
……

◆◇体育館◆◇

兄「よし、今日も練習お疲れさまでした」

後輩「……ふー」

妹「……」

兄「えっと、今日はみんなに、アイスがあるよー。俺のおごりだよ」

後輩「わぁい! 先輩だいすきっ」

妹「……っ」

兄「お、おう」


兄「はい、どうぞ」

後輩「ありがとうございまーす! いただきますっ」

妹「……ありがとうございます」

兄(今日は妹ちゃんと一緒に帰らないと……)

後輩「……おいしー」シャリシャリ

兄「……えっとね、妹ちゃん」

妹「……」シャリシャリ

妹「はい」

兄「今日は誰かと一緒に帰るの……?」

妹「……」こくっ

兄「そっか。それって、青年くん?」

妹「……はい」

兄(やっぱり青年くん、か)

後輩「……」シャリ

後輩「青年……」

兄「ん? 後輩ちゃん、どうかしたの?」

後輩「いえ、なんでもないですよっ」


妹「ごちそうさまでした」

兄「あ、いえいえ」

兄「あの……妹ちゃん」

兄「気をつけて帰ってね」

妹「……はい」

後輩「……」

妹「お先に失礼します」ぺこ

妹「バイバイ、後ちゃん」
すたすた

後輩「あ、うん、ばいばい」

兄「……お疲れ様」

後輩「……」

後輩「先輩、さっき話してた青年くんって?」


青年「(^p^)」

兄「えっと、最近妹ちゃんと、仲良くしてくれてる男の子のことだよ」

後輩「えっ、あー。私と同じ学年ですよね?」

兄「うん、そうだよ」

兄「知ってるの?」

後輩「私、同じ中学だったんですが、女性とお話してるとこ見たことなかったです」

後輩「妹ちゃんみたいな美人だったら、あの青年くんも反応するんだぁ」

兄「……?」

後輩「女性関係については、とても純粋そうな人ですよ」

兄「そうなんだ……よかった」

兄(よかった……っていったけど)

兄(なんだかモヤモヤする)

兄(もし妹の相手が不純そうなら……反対できたから……?)

兄(……はぁ、俺って最低だな)

後輩「先輩?」

兄「ううん、なんでもない」

兄「ところで、青年くんって部活とかやってるの?」

後輩「中学は運動部でしたよ。今も、たぶんやってると思いますよ」

兄「そっか」

兄(邪魔しちゃ悪いし、二人のままにしておいたほうがいいのかな)

兄(兄からしたら好ましくないけど)

兄(妹ちゃんが男の人に興味もつなんて、たぶんこれが初めてなんだし)

兄「あの、後輩ちゃん」

後輩「はい」

兄「今日も一緒に帰ってくれるかな?」

後輩「喜んで」ニコッ

……
…………
……

◆◇家の前◆◇

兄「…………」

キィ
兄(今日もポストに例の手紙が……)

兄(うわぁ……)


手紙
『えへへえへへえへへへへ可愛いよぅ可愛いよぅ可愛すぎるよぅ妹ちゃん可愛い
すぎて僕はぼっきぼきでおさまらないよぅ!! えへへえへへチュウしたいよぅ
! 唾液で顔中べとべとになるまでキスしまくりたいよぅ!』


兄「今日もタイヘン気持ち悪い内容で……おぇえ」

兄「妹ちゃんには見せられないよなぁ」

兄「まぁ、帰り道は、一応青年くんと帰ってるから大丈夫かな」

兄「でも、それ以外はちゃんと俺がカバーしないとな……」

兄「うん……」

兄「…………」

兄「とりあえず、トレーニングがてらに」

兄「このへんで怪しそうな人を探すとするか」

妹「そうなんですか」

青年「うん。逆に妹ちゃんは何で剣道部なの?」

妹「私は――」

妹「私は強くなりたかったから」

妹「一人で立てるくらい」



兄「……」
タッタッタッタッ

兄「――っ!?」
さっ

兄(邪魔したらいけないという一心で隠れてしまった)

兄(う……ばれませんように……っ)

青年「一人で立てる……?」

妹「ふふっ、喩えですよ」

妹「ま、ついこないだまでは、立てるのに支えを求めていましたが……」

青年「ん?」

妹「いいえ、一人ごと、です」ニコッ

青年「そっか」


兄「…………」

兄(今、犯人らしい人は周りにいないな)

兄(ま、ストーカーみたいなのはココにいるけどな)

兄「……」

兄(そうさ! ぼくだよぉぉおお!!)

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