照「菫ってレズなのかな」 (50)


———七月、都内のファミレスにて

カラカラン

菫「お待たせ」

照「久しぶり」

菫「ああ。久しぶり」

菫「そっちの調子はどうだ?大学」

照「普通」

菫「そうか。妹とは上手くやってるか?」

照「やってる」

菫「そうか。よかったよかった」


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照「菫は」

菫「私も普通だよ。そう対して変わり映えしないな」

照「そう」

菫「………」
照「………」

菫「何か頼んだか?」

照「ドリンクだけ」

菫「そうか。じゃあ選ぶか」

照「うん」

菫「………」
照「………」


菫「お前は何にする?」

照「うどん」

菫「……へえ」

菫「………」
照「………」

菫「決まった」

照「………」

菫「押すぞ」

照「うん」


ピーンポーン

店員「お待たせしましたーご注文をどうぞー」

菫「ドリンクバーとトマトスパゲッティを」

照「私はこのわかめうどんを」ニコニコニコ

菫「………」

店員「かしこまりましたーごゆっくりー」

照「………」
菫「………」


菫「……最近暑いな」

照「うん」

菫「長野と東京、どっちの方が暑い?」

照「東京」

菫「そうか……」

菫「………」
照「………」

菫「……暑いのにうどんなんて食べて大丈夫か?」

照「大丈夫」

菫「ああ……」

菫「………」
照「………」


菫「そういやいつまでいるんだっけ」

照「明後日」

菫「そうか。明日の予定は?」

照「淡たちと約束してる」

菫「そうか。私は明日も部活だから、あいつらによろしく言っといてくれ」

照「うん」

菫「………」
照「………」

菫「……飲み物取ってくる」スクッ

照「うん」


テクテク……

照(………)

照(……はぁーっ!)

照(どうしよう久しぶりに会ったのに全然会話弾まない多分十二割方私のせいだけど怒ってないかな菫)

照(怒ったら怒ったで久々に怒った顔見たい気もするけど別に怒らせたいわけでもないしどちらかといえば笑顔見たいし)

照(……はあ)

照(菫菫菫菫菫すみれスミレヴァイオレットパンジーシャープシューター菫……)

照(菫超可愛い明後日からまた暫く会えなくなるとか何なの一体大学出たら絶対東京行く)

照(東京……菫と二人暮らしとかしてみたいな無理かなしてみたいけどしてみたいけど)

菫「……おい照!」

照「!!!」ビクッ


菫「どうした?呼んでも返事しなかったけど……」

照(も、戻ってたんだいつの間に)ドキドキ

照「……なんもない」

菫「そうか。お前のコップ空だけど何か入れてくるか?」

照「別に」

菫「………」
照「………」

菫「……何かさ」

照「ん」


菫「クサいこと言うようだけど……この時期になると思い出すよ。高校生活の事」

照「………」

菫「楽しかった。そして……今こうして、あの時の仲間と一緒にいれて嬉しいよ」

照「私も」

菫「ふふっ。そうか」

照「………」

照(仲間……仲間だよね)


———その夜、ホテルの部屋

バタンッ

照「……はあ」

ドサッ

照(結局……何も口に出せなかったなぁ)

照(………………)

照(菫……)

照(『仲間』……まぁ、そんなに深い意味で取らなくてもいいとは思うけど)


照(……そもそも、私が変なんだよね)

照(菫は……私の事を恋愛対象として見てくれるのかな)

照(女同士気持ち悪いけど、長い間一緒にいたんだから……分かってくれそうな気もする)

照(でももし、分かってくれなかったら……)

照(………)


———翌日、白糸台高校

ガチャッ

誠子「先輩!」

照「みんな、久し——」

淡「テーーーールーーーーー!!!」ガバッ

照「うわっ」

淡「会いたかったよテルーーーー!!!」ギュゥゥゥゥ

照「痛い……」


誠子「こら淡。先輩を離してやれ」

淡「えー?今日はずっとぎゅーってしてたいー」

堯深「でも宮永先輩苦しそうだけど……」

照「」

淡「あわわっ!ごめんテル!」バッ

照「げほ……」

誠子「先輩、どうぞソファ座ってください」

堯深「お茶です……」コトッ

照「ありがと……」ゲホゴホ


淡「ぎゅー」

照「暑い……」

淡「私は暑くないもーん」ギュゥゥゥ

誠子「やれやれ……久しぶりに会えたからってはしゃぎすぎだよ」

淡「えへへ」

照(別に誉めてないと思うけど)

照「で……三人とも虎姫でまだ一軍って先生に聞いたけど」

堯深「はい……」

誠子「そうですね。昨年は足引っ張って優勝逃しちゃいましたけど、今年こそは期待しててください!」

照「期待してる」


淡「ねーテルー」

照「なに」

淡「サキとはどうなってるー?」

照「麻雀教えてるよ」

堯深「えっ……」

誠子「先輩が!?」

照「うん。今まで何もしてあげれてなかったから、せめて麻雀をと思って……」

堯深「まずいね……」

誠子「あの宮永咲に先輩の指導が……」


照「頑張ってね、淡」

淡「今度こそはちょちょいのちょいでやっつけちゃうもんね」

堯深「……頑張ってね」

誠子「期待してる……」

淡「え、何で声のトーン落ちたの!?」

照「で、こんな時期で忙しいところ悪いんだけど相談があって」

堯深「?」
誠子「?」

淡「なになにー?」

照「菫ってレズだと思う?」

堯深「ぶっ!?」


誠子「ちょっ、堯深!ティッシュティッシュ……」

堯深「げほっ、ごほっ」

淡「………」(凍結中)

照「あ……ごめん」

堯深「い、いえ……でも何で急に……」

照「……菫ってモテそうだよね」

誠子「そ、そうですね。それこそ同姓にもモテモテな気もします」

照「だから私がツバ付けとこうと思ったけど……そもそも菫ってレズなのかな」


堯深「み、宮永先輩は……その……」

照「……誰にも言わないでね」

誠子「まぁ、ここまで来れば分かってはいますけど……」

照「……二人はノーマルなの?」

堯深「は、はい……」

誠子「そうですね……私も普通です……」

誠子「……あ!普通って言っても宮永先輩が異常とかそういう意味じゃ」

照「……ううん。異常だと思う」

堯深「………」
誠子「………」


照「だから……その」

照「今日こうして話すのもちょっと勇気必要だった」

照「でも、いい後輩持てて嬉しい」

誠子「先輩……」

照「で……実際どうだと思う?」

誠子「そうですね……世の中のレズとノーマルの割合を考えたらノーマルの方が確率高いとは思いますけど……」

堯深「そもそも弘世先輩って恋愛に興味無さそうですよね……」

照「ああ……分かる」


誠子「でもそれって逆にチャンスじゃないですか?」

照「……?」

誠子「ほら、言い方悪いですけど、興味ないってことは先に仕込めるって事じゃないですか?」

照「仕込む……」

堯深「じゃあアタックかけた方がいいのかな……」

誠子「うん。私はそう思う」

照「仕込む……」

誠子「……先輩?」

照「誠子……催眠術のやり方知らない?」

誠子「そういう意味じゃなく!」


———その日の夕方

Prrrrrr...

菫(……照?)

ピッ

菫「もしもし?」

照『菫?』

菫「何か用か?」

照『会いたい』


菫「……今から?」

照『うん。用事ある?』

菫「いや、丁度部活終わったところだから……」

菫「会うって言ったってどこで……」

照『……菫の家、行っていい?』

菫「今は一人暮らしだが……」

照『うん、いいよ』


菫「わかった。××駅で落ち合おうか」

照『うん。切るよ』

菫「ああ……」

プツッ

菫「……?」


———夜、菫のマンションルーム

照「狭いね」

菫「ワンルームだからな」

照「……ねえ、菫」

菫「何だ?」

照「菫って今——好きな人とかいる?」

菫「な……」

菫「な、なな、なに言って……!」カァァ

照「………」


照「……私の知ってる人?」

菫「………」

菫「い、いや……知らないと思う……。大学の同級生だから」

照「………」
菫「………」

照「……そっか」

菫「……何なんだよ、いきなり」

照「どんな人?」

菫「そ……そこまで言う必要はないだろ?!」

照「……ま、そうだね」


菫「で、何なんだ。恋バナでもしにきたのか」

照「うん」

菫「マジかよ」

照「うん」

菫「へえーじゃあお前にも好きな人とかって出来たのかー?」

照「ずっと昔からいたよ」

菫「え?」


照「……菫ってレズ?」

菫「な……え、はぁ!?」

照「………」

菫「……お前どうしたんだ?!様子がおかしいぞ?」

照「どっち?」

菫「ノ、ノーマルだけど」

照「……ま、だよね」

菫「………」
照「………」


菫「お前、まさか」

照「じゃ、私は帰るね」

菫「おい」

照「……さよなら、菫」

菫「おい待てよっ!」ガシッ

照「………」

菫「その……つまりそういうことなんだよな」

照「そうだよ」


照「私は菫が好き」

菫「……っ」

照「今までありがと」

菫「おい、ふざけんな」

照「……?」

菫「私はお前と別れたくなんてないぞ。昨日も言ったよな?『こうやって会えているのが嬉しい』って」

照「………」

菫「私はお前のことを大切な親友だと思ってるし、これからも変わらない。だから——」

照「……だから?」


菫「納得できない。こんな形で別れて、もう二度と会えないだなんて」

照「『こんな形』……ね」

菫「………」

照「……菫、分かってる?」

菫「何が……」

照「私と菫は、根本的に違うんだよ」

菫「………」


照「今日こうして会いに来るのも、告白するのも、私にとっては苦しかった」

照「もし嫌われたらどうしようって」

照「菫は優しいから……私がレズだって言っても『親友』であることに変わりはないって言ってくれたけど」

照「それなら、私が菫から離れられないから……」

菫「……よく分からない」

照「それが違うってことだよ……」

菫「……そうか」

照「……じゃあね」

菫「待て」ガシッ


照「……なに」

菫「まだ納得してない」

照「……そんな風にされると辛い」

菫「……ただ諦めが悪いだけじゃないか」

照「レズなんて、一人ぼっちだから」

菫「………」

照「優しくされたら、離れられないんだよ……」

照「だから、もう離して。帰る」

菫「……分かったよ」


ギュッ

照「……っ!?」

菫「お前がそこまで忘れたいんなら、私も忘れられる理由を作る」

照「すみ——」

どさっ

照「……菫」

菫「……一度だけだから」

照(……ずるい)

照(こんなことされたら、もう二度と)


照(もう二度と、忘れられないような気がするのに)

菫「脱がすぞ」

照(……私も雌なんだな)

くちゅ……

菫「濡れてる……」

照「……うるさ……っ」

菫「指、入れるぞ」

照「……っ!」


くちゅくちゅ

照「……はぁ……っ」

菫「もっと声出せよ」

照「……はっ、はっ……」

菫「襲ってる気になれないだろ」

照「あッ……!」ビクッ

菫「……!すまん、痛かったか」

照「……優しいね、菫は」

菫「………」


照(もう何でもいいから……)

照「何でもいいから……滅茶苦茶にして」

菫「……ああ」

 ・
 ・
 ・

バサッ

照「……今日はごめんね」

菫「謝ることじゃない」

照「今日はありがと」

菫「襲われてありがとうも変だけどな」


照「………」
菫「………」

照「……じゃあ」

菫「ああ……」

照「………」
菫「………」

照「菫……最後にお願い聞いて……」

菫「………」

照「一回だけでいいから……キスして……」

菫「……ああ」スッ


チュッ

照(……額、か)

菫「……すまん、口は」

照「ううん……それじゃ」

菫「……ああ。……じゃあな」

照「………」

照「……うん」

バタンッ


———ホテルの部屋前

テクテク……

照「……?」

照(あれは……)

淡「………」

照「淡……?何してるのこんな所で」

淡「……テルのバカ」

照「え?」

淡「バカバカバカバカバカーーーーー!!!!」ポカポカポカ

照「ちょ、痛……!」


淡「テルの……大バカ!アホー!オタンコナスー!!レンチャンオバケー!!!」

照「お、落ち着いて……部屋入って」


ガチャッ


淡「うわああああああああああああああああああん!!!ああああああああああああああん!!!」

照「ど、どうしたの……」

淡「酷いよテルぅ……酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い!!!!!」

照「……私、淡に何かした?」

淡「あーーーーーーーもうバカ!!バカバカバカ!!!」

照「も、もうちゃんと言ってくれないと分かんないけど……」


淡「うぅっ……ぐすっ……私もテルのこと好きだったのにぃ……」

照「えっ」

淡「酷いよー!!あんなにアタック仕掛けてたのに!!全ッッッ然気づいてくれないんだから!この鈍感!アホー!!」

照「スキンシップ的なアレかと……」

淡「バーーーカ!!もう帰る!!」

照「ちょ、ちょっと待って……」

淡「なに!今更謝っても……」

照「菫にフラれた」

淡「へ?」

照「フリーだよ私……」

淡「え?」


照「………」
淡「………」

照「……気付かなかったことは謝るから、殴ったことは土下座して」

淡「……申し訳ございませんでした」ドゲザッ

照「うん……」

淡「と、ところで〜〜……」

照「ちょっと待って」ピポパ

淡「?」

Prrrrrrr...

照「菫?」

淡「!?」


菫『……どうしたんだ?』

照「ごめん、一つ言うこと忘れてて」

照「……いやむしろ、言えなかったんだけど」

菫『………』

照「……さよなら。今までありがとう」

菫『……ああ。こちらこそな……』

照「でも……私が変われたら」

菫『……?』


照「また会って話したい……かも」

菫『変われたら……?』

照「うん……全部吹っ切れたら」

菫『……わかった。その時を楽しみにしてる』

照「うん。待ってて」

菫『じゃあ……またな』

照「また、ね」


おわり


百合独特の孤独感とか異常性書きたかったけどこの世界観じゃ苦しいかなと思って「いっそのこと失恋させるか!」と思ったら照菫にならなくて本末転倒感溢れる方向性意味不明のSSですけど読んでくれた方ありがとうございます。おわり。

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