小鳥「私は、一生ここから出られないのかもしれない」 (106)

私は閉じ込められていた。

小鳥「いつになれば、私はここから出られるのだろう」

四方を壁で囲まれた圧迫間のある狭い閉ざされた部屋

壁は真っ白に塗られており
その白さはここが『最も穢れた』空間である事を忘れさせる。

小鳥「もう...あの頃には帰れないのかしら」

独りうずくまり私は呟いた。

プロデューサーさんやアイドルの子達との楽しかった時間はもう戻らないのだろうか

苦痛に思わず顔を歪め、額からは汗が流れ落ちる

小鳥「誰か...誰でもいいから...教えて...」

しかし私の声に答える者は無く、
天井にある僅かな隙間から入り込む風の音だけが虚しく響いていた

左腕の安物だがきちんと仕事をしている時計に視線を送る。

すると、私がこの空間で身動きが取れなくなってから既に30分程が経っている事を規則正しく動き続ける針が教えてくれた。

一体何故こんな状況に陥ってしまったのだろう。

ほんのつい先程まで、プロデューサーさんやアイドルの子と穏やかな時間を過ごして居たと言うのに。

時間が経つにつれ冷えてゆく両手を口元に当て、
一つ深呼吸をする。

手を暖めつつ、苦痛により乱れる呼吸を整え、冷静に思考を巡らそうと試みる。

恐らく、このような事態になってしまったのは、すべて私自身の行いが原因なんだろう。

今にして思えば、こうなる事はある程度予測できた筈だ。

しかし、それでもこれ程までの危機に直面する事になろうとは思ってもいなかったのだ。

私は完全に油断していた。

まさかこんな事になってしまうなんて

まさか……










小鳥「ウ○コした後にトイレットペーパーが無いことに気付くなんて!」

先日の765プロオールスターライブも大成功のうちに終了し、
またいつも通りの穏やかな空気が流れる12月上旬の事務所。

今の事務所には私とプロデューサーさん、そして雪歩ちゃんの3人だけ。

雪歩ちゃんはお仕事も終わったのでソファーでぐっすり眠っていた。

私とプロデューサーさんも仕事が一段落着いたのでおしゃべりに花を咲かせていた。

プロデューサーさんとふたりきりでお話ができてとても嬉しかったし、もっとこんな時間が続けばいいのに...だなんて思っていた

P「さてと...そろそろ雪歩を送る時間ですね」

小鳥「あっ、もうそんな時間ですか」

P「そうですね...音無さんとこんなに話す事は久しぶりでしたから、嬉しかったです」

小鳥「もう、プロデューサーさんったらお世辞は...」

面と向かって言われたのが恥ずかしかったので少しはぐらかそうと思ったその時、私の体に異変が起きた

小鳥「うっ!?」

P「どうしたんですか?」

小鳥「い、いえ...なんでもないです」

P「でも...大丈夫ですか?すごい汗ですよ」

小鳥「大丈夫です。それよりプロデューサーさんは早く雪歩ちゃんを送ってあげないと」

P「あっ!そうでした!雪歩を送った後にそのまま伊織とやよいの仕事の打ち合わせに行くので早く出発しないといけないんです...」

小鳥「ふふっ、遅れたら伊織ちゃんが怒っちゃいますよ?」

P「それもそうですね...でも本当に大丈夫ですか?」

小鳥「プロデューサーさんは心配性ですね!なんでもありませんから早く送ってきてください!」

P「...分かりました。それじゃあ行くぞ雪歩、起きてくれ」

「本当に大丈夫かなあ」と首を捻りながら出ていったプロデューサーさんとまだ眠たそうな雪歩ちゃんを見送った後、私はある場所へ向かった

私の体に起きた異変とは、
洒落にならない程の猛烈な便意。

実を言うと、私はここしばらく便秘が続いており、お通じが完全に滞っていた。

恐らくはこのところライブに向けてずっと忙しかった為、不規則かつ、バランスの乱れた食生活になってしまった事が原因だろう。

ジャンクフードや、ファストフードに頼った、食物繊維が不足しがちな食生活が、恐らくは便秘の原因なのだ。

とはいえ、アイドル達の為にも私が弱音を吐くわけにはいかない。
私は自分自身の体から発せられるシグナルを無視し続けていた。

しかし、最近になってライブも終了し仕事が落ち着いてきて「流石にこのまま便秘が続くのはまずいのでは……」と思い始めていた。

そこにやって来た突然の便意。
チャンスとばかりにすぐさま席を立ち、凄まじい便意に崩れそうになる表情を隠し笑顔でプロデューサーさんを見送る。

事務所の扉がしっかり締まった事を確認すると、一気にギアをトッ プに入れ、トイレへと駆け出した。

無事トイレに到着。ドアを開け、急ぎつつも冷静に履いている物を下ろす。そして、便座に座り一息つく。

そこまでは順調だった。

そしてそれが私の長い闘いの始まりだった……

長らく腸内を根城としていた便はすっかり引っ込み思案になってしまっていたらしく、なかなか顔を出してはくれなかった。

そこで思い切り腹筋に力を込めてみると、便は私のお尻を広げ、やれやれとばかりに顔を出してくれた。

一度出てきてくれれば後はお腹の中に貯まっていた便達が自ら外へ外へと動き出す。

いまや私の心は幸福感に満ち溢れていた。

一旦、肺の中の息を全て吐き出して力を抜く。

長い間溜まっていた便を全て出しきり「さて、そろそろ」とトイレットペーパーに手をかけた

しかし、そこにあるはずの紙は無かった───

その後何度もトイレ内にトイレットペーパーが無いかを探してみるが見つけだす事は出来なかった。

いや、トイレから出れば事務所に置いてある替えのトイレットペーパーを手に入れる事は可能だっただろう。

しかし、もしトイレットペーパーを取りに行く途中で他の人が戻ってきた場合はどうなることか

2X歳にもなって尻も拭かずに下半身を露出した女が事務所をうろついている所を見られるのだ、もはや事務員どころか人間として終わってしまう

ウォシュレットを使いお尻を綺麗にして一旦済ませようかとも考えたが、
先日千早ちゃんが何をどう間違えたのか破壊してしまったのでそれも叶うことは無かった。



私は完全に閉じ込められたのだ。



そして場面は冒頭へ戻る。

それにしても、一ヶ月の間に腸内でこれ程のガチウ○コに成長を遂げていたとは便秘とは恐ろしいものだ。

これからは食事には十分気を使って食物繊維を沢山とる様にしようと強く心に誓う。

しかし、そんな反省よりも、今はこの事態を何とかする事の方が急務だ。

既に長時間放置され乾きだしたアナルも、痛みに悲鳴を上げ始めている。

更にずっと同じ姿勢を続けている為、脚は痺れて感覚が伝わらない。

そして12月の突き刺すような寒風が天井の隙間から入り込み私の体温を容赦無く奪う。

肛門痛、痺れ、そして寒さの三重苦がこの身を襲う。

事務員として皆のサポートをするはずの私が、自分の事すら出来ずにこの狭い空間に閉じ込められている。こんな虚しい事はない。

小鳥「困ったものね......」

自嘲気味に呟くと、ふとドアの向こうからこちらに近付いてくる足音がするのに気が付いた。

足音はどんどん近付き、やがてトイレ前で止まった。

P「音無さん、居るんですか?」

聞き慣れた声。足音の主はプロデューサーさんだった。

小鳥「はい...居ますよ」

本来ならプロデューサーさんは雪歩ちゃんを家に送った後にも打ち合わせの仕事があったあずだ。
なぜ事務所に戻ってきたのだろう。

思いがけぬ事に若干驚きつつも、それを表に出さぬ様に個室の中から返事をする。

小鳥「何故ここに居るんですか?」

P「いえ、雪歩を送った後にやっぱり音無さんの事が心配になって...電話したんですが出てくれなかったので事務所まで戻ってきてみました」

成る程、確かに心優しいプロデューサーさんならそれくらいの事はするかもしれない。

平静を装ってプロデューサーさんを送り出しておきながら、そんな事にも気が付かないくらい私は切羽つまっていたと言う訳か。

P「戻ってきて誰も居なかったから、もしかしたら用事でも出来て出ていったのかとも思ったんですが、音無さんの荷物が全部置きっぱなしだったので」

確かにデスクの上には私の携帯電話も何もかも置きっぱなしだったはずだ。

だからプロデューサーさんからの電話にも気づかなかった。

P「それで一応ここも覗いてみたんですが...まさか本当にトイレに居たなんて思いませんでした」

小鳥「そうだったんですか。いや、私の為なんかにわざわざごめんなさい。だけど、私はずっとトイレに居ただけなので何も心配する事はありませんよ?プロデューサーさんはこれから打ち合わせのお仕事ですよね、早くいかないと」

プロデューサーさんに余計な心配をかける訳にはいかない。

P「ずっとトイレに居ただけって……本当に大丈夫ですか?もしかして具合でも悪いんじゃ」

小鳥「いえ、大した事じゃないですよ。実は...その...このところお通じが滞ってて...久しぶりだったので少し手こずってたんです」

プロデューサーさんに便秘の事を言うのは恥ずかしかったが、これ以上みじめな私を見られない為にも紙が切れているという事は伏せておいた。

P「それは……大丈夫なんですか?」

小鳥「ええ、心配しなくても大丈夫です。すぐに済ませて出ますので、プロデューサーさんもお仕事に戻って下さい」

強がりだった。

本当は助けを求めたい程の窮地に陥っていた。でも、こればかりはプロデューサーさんの手を借りる訳にはいかない。

紙が無いのでくださいなんて言えばプロデューサーさんに紙も忘れるほどの勢いでトイレに駆け込んだはしたない女だと思われてしまう。

やはり、私自身の力で何とかしなければいけないと思い私は平然を装いながら普段通りの声でプロデューサーさんに仕事に戻る様に促した。

これで、プロデューサーさんも仕事に戻ってくれるだろう。そう思っていた。

しかし、次にプロデューサーさんが口にしたのはあまりにも意外な言葉だった。

P「……音無さん、ドアを開けてください」

小鳥「……え。今なんて」

一瞬、自分の耳を疑い思わず聞き返す。

P「このトイレのドアを開けてください」

小鳥「え……いや、でも」

やはり聞き間違いではない。
しかし、その意味を理解仕切れず混乱する。

P「開けないなら、鍵を使って無理矢理開けてでもそっちに入りますよ」

小鳥「わ、分かりました。分かりましたから。今、開けます」

プロデューサーさんの声の迫力に圧され、思考を停止した私はあわててドアを開ける為に体を動かす。

今思うと男の人に言われるがままにトイレのドアを開けるだなんて私はなんてバカなことをしたんだろう。

自分の出した便を見られるのは恥ずかしいので(下半身は丸出しなのに)一度トイレを流し、痺れる足を無理矢理動かす。

片手を壁に付きながらなんとかバランスを取り、もう片方の手を伸ばして鍵を開ける。

ドアを軽く押すと、プロデューサーさんの姿がそこにあった。

小鳥「一体どうしたんですか。何故こんな事を……」

混乱を隠しきれぬままプロデューサーさんに問う。

P「音無さん、これが必要なんでしょう」

小鳥「……え」

またもや、理解が追い付かず思考停止してしまった。

プロデューサーさんの手にあった物は事務所に置いてある替えのトイレットペーパーだったのだ。

P「紙が無くて困ってたんでしょう?」

小鳥「ど、どうしてそれを……」

P「いくらなんでもこんなに長時間トイレに籠るなんて何かあったとしか思いませんでした...こんなこと言うと悪いんですが音無さんの事だから恥をかかない為に...紙が無い事を隠そうとしていたのかなと...」

狭いトイレ内に響く、プロデューサーさんの語気が少しずつ弱くなっていく。それは言い訳をするというよりも気まずさを隠している様だった。

私が呆気に取られながらプロデューサーさんの顔を見ていると、彼は頬を赤くして視線を反らした

P「す、すみません...落ち着いて考えてみれば女の人が使っているトイレに無理矢理入るなんて...俺はなんてことを」

プロデューサーさんは後ろを向き私に背を向けると「こんな事をして俺はもう事務所にはいられません」と言いトイレットペーパーを置いて出ていこうとした。

小鳥「待ってください!」

P「な、なんですか?」

今度はプロデューサーさんが驚いて体が固まってしまっている。まさか呼び止められるとは思っていなかったのだろう。

小鳥「嬉しかったです」

P「えっ?」

まだ理解が出来ていないプロデューサーさんに、私は言葉を続ける。

小鳥「さっきは少し怖かったですけど、私が紙が無くて困っている事に気がついてトイレットペーパーを持ってきてくれて、やっぱりプロデューサーさんは優しい人なんだなって」

P「俺は...ただ音無さんが困っていると思っていただけです」

小鳥「それでも、ありがとうございます。だからプロデューサーさん、事務所から居なくなるだなんて言わないでください」

P「音無さん......」

小鳥「......さてと!それじゃあ私はお尻を拭きますから、トイレから出てもらっていいですか?」

P「あっ!すすすすみません!」

真っ赤な風船を膨らませたかのように恥ずかしがるプロデューサーさんを可愛いななんて思いつつ、ドアを閉めようとしたその時だった。

小鳥「......ぷろでゅーさーさぁん」

P「ど...どうしたんですか」

小鳥「あ、脚が痺れて...一歩も動かせませぇん...」

すでに私の脚は限界を越えていた。当然だろう、あれほどシグナルを送り続けていたのに私は無視を決めこんだのだ。

P「えっ!大丈夫ですか!?」

小鳥「は、はい...ですが...」

もはや先程から驚きの連続で私のリミッターは振り切れていたのかもしれない。どうしてこんな事を言っちゃったんだろう。

小鳥「今の私じゃ一人で出来ないので、手伝って貰えませんか...?」

P「え、ええっ!?今なんて言いましたか!?」

小鳥「脚が痺れて自分では動かせないんです...お願いします...プロデューサーさぁん...」

P「い、いや...でも...」

小鳥「プロデューサーさんなら私も、大丈夫ですから...」

P「下半身裸の音無さんにこれ以上近づくなんて...俺が大丈夫じゃないというか...本当にいいんですか...?」

小鳥「はい。ですから、お願いします」

P「......わ、わかりました」

P「そ、それじゃあまずは便座まで移動しましょう」

そう言うとプロデューサーさんは私の肩を掴み便座まで移動するのを手伝ってくれた。

小鳥「ふぅ...ありがとうございます」

P「ど、どうも...それで...あの...」

小鳥「はい...その...お尻を拭いてもらえますか...?」

P「わ、分かりました。それじゃあ...お、お尻を見せてください」

小鳥「......ハイ」

私は彼と正面に向きあい便座に座ると、大人しくその言葉に従い、尻がよく見える様に腰を上げた。

P「う……これは。マズイですね」

プロデューサーさんが言うには、私のアナルは便が乾燥したせいで赤くなっていた。恥ずかしながら便秘で元々便が固かった為に少し切れて傷がついてしまっている様だ。

P「お尻もこんなに充血して…… 痛みますか?」

小鳥「ええ、少し」

プロデューサーさんの言葉に苦笑いで答える。

P「もう、これ以上脚は動きませんか?」

小鳥「すみません。ここからピクリとも動かなくなってしまって、これ以上は自力では動かせないです」

P「分かりました、ちょっと待っててください」

そう言うとプロデューサーさんは一度トイレから出ていった。

P「お待たせしました」

そして、戻ってきたプロデューサーさんの手にはホースが握られていた。

P「これで音無さんのお尻を綺麗にしましょう」

小鳥「そんな……そんな事をしてもらう訳にはいきません」

トイレットペーパー越しで拭かせるだけでも心苦しいのに、プロデューサーさんに私の汚い所を直接触らせるなんて申し訳ない。

P「ですが、ウォシュレットは確か千早が壊してしまって使えないでしょう?他に方法はないですよ」

小鳥「でも......」

P「大丈夫です……もうここまでやってるんですから遠慮なんかしないでください。俺達は……仲間でしょう」

小鳥「……仲間」

何かを言いたかったが、上手く言葉にする事が出来なかった。

ただ、その言葉を聞いて、私は自分の胸に熱いものが込み上げて来るのを感じていた。

P「……それじゃあ、いきますよ。少し痛いかもしれませんが大丈夫ですか?」

小鳥「......はい、お願いします」

本音を言えば怖かった。

無理に触って傷をつける事をすれば、私のアナルは大きなダメージを負ってしまうのではないかという恐怖があった。

しかし、私は覚悟を決めてプロデューサーさんに身を任せることにした。

プロデューサーさんが765プロに来て随分経った。その間に私達は様々な体験を共にした。

同じ時間を共有する内に何事にも一生懸命に取り組むプロデューサーさんに惹かれ、私もプロデューサーさんからある程度の信頼は得てきたつもりでもあった。

でも、それは表面上の関係でしかない。私みたいなダメダメな人間に好意を持たれるなんてプロデューサーさんも困るだろう。だから私はこの気持ちを隠し続けてきた。

当然感じる、越えられない心の壁。

それで良いと思っていた。
私の片想いで構わないと思っていた。

それなのにプロデューサーさんは今、私のピンチを目の当たりにし、自らの手を汚す事も省みず、助けようとしてくれている。私を仲間だと認めて。

それが自分でも意外な程に嬉しかった。

それだけで恐怖を拭い去り、プロデューサーさんに身を任せる理由としては十分と思える程に。

アナルに小さな振動が伝わり、プロデューサーさんが私のアナルに触れたのだと分かる。

小鳥「あっ....んっ」

P「……思った以上に固まってしまっていますね」

彼が感想を述べホースを近づける。

P「行きますよ」

小鳥「はい……」

アナルに水が掛かる。少しずつ、少しずつ水は流れ落ちて行く。しかし便はまだ固いらしい。

P「けっこうキツいですね。音無さん、もう少し力を抜いてくれませんか」

小鳥「ん……はい」

プロデューサーさんに言われて、痛みと寒さと若干の緊張でこわばる体をなんとかリラックスさ せ、アナルを弛緩させる。

P「よし、これで落ちるか……」

プロデューサーさんがアナルを擦る力が強くなる。

小鳥「……んあっ!」

不意に鋭い痛みがアナルに走り、思わず声を上げてしまった。

P「す、すみません音無さん。痛かったですか?」

アナルを擦る手が止まる。

小鳥「だ、大丈夫です……続けて下さい」

P「でも……」

小鳥「私は平気ですから……お願いします」

私はプロデューサーさんに笑ってみせる。

P「……分かりました。続けます。」

プロデューサーさんは再びアナルを擦り始める。

今度はゆっくりと。慎重に汚れを落としていく様に。

私のアナルをなるべく傷付けない様に気を遣ってくれているのだろう。

少しずつ綺麗になっているの感じていると

P「それにしても凄いですね...どうしてここまでになってしまったんですか?」

プロデューサーさんが不意に問いかけてきた。

当然の疑問だろう。私はこうなってしまった原因と思われる事情を説明すると

P「成る程...確かに最近は忙しかったですから...今まで気づかずすみません」

プロデューサーさんは気づけなかった自分にも責任はあるといい謝ってきた。

小鳥「いいえ、プロデューサーさんのおかげで765プロは本当に変わりました。」

我ながら情けない話だ。
こんな事が原因でプロデューサーさんに迷惑をかけているのだからますます申し訳なくなってくる。

そんな理由でこの様な事態になってしまったと知れば、流石にプロデューサーさんも呆れて軽蔑するかも知れない。

でも、 私の為にここまでしてくれているプロデューサーさんの誠意に応える為にも、正直に事情を話した。

ところが返ってきた返事は予想外の物だった。

P「そう言えば...音無さんは一人暮らしでしたよね」

小鳥「はい、恥ずかしながら...」

P「でしたらご飯の仕度も大変でしょう。俺も一人暮らしで食生活には気を付けたくて自炊してますけど毎日大変ですし」

プロデューサーさんは呆れるどころか、自分を同じ立場に置き換え共感してくれている。

P「今度家にご飯でも食べに来ませんか?音無さんの分も作りますよ」

小鳥「そんな、プロデューサーさんに悪いですよ」

即座に遠慮しようとすると

P「大丈夫ですよ。ほら、この間俺と音無さんと律子で打ち合せした時に夜も遅かったんで俺がご飯作ったじゃないですか。あの時音無さんがまた食べたいと言ってくれた事、覚えてますよ」

小鳥「あの時の事...覚えてくれてたんですか...」

P「音無さんがご飯を食べに来るって言えば俺も張り切って腕を奮って作りますよ。それに...俺も...音無さんと一緒に居られるのは嬉しいですし」

プロデューサーさんのさりげない一言を耳ざとく捕らえ、思わず素でにやけそうになりつつも

小鳥「でも」

やはり遠慮しようとする私の言葉を遮り、

P「いいですから。さっきも言ったじゃないですか……俺達は仲間です」

小鳥「……はい。そ、それじゃあよろしくお願いします」

まだアナルは痛み続け、寒さで体もますます冷えきっていた。

しかし先程までの絶望感はもはや微塵も無く
私の心は暖かさに満ちていた。

私の事を想ってくれる大切な人の存在がこれ程までに心強い物だとは。

小鳥「あの...プロデューサーさんに言って無かった事があるんです」

P「なんですか?」

小鳥「私...今までずっとずっとプロデューサーさんの事が...」

最後のひと言を勇気をふり絞って伝えようとした、その時だった。

「ちょっとアンタ達!なにやってんのよ!?」

トイレの外の方から伊織ちゃんの威勢の良い声が聞こえてきた。

P「伊織…やよい…なんでお前達が。それに雪歩まで。家に送っただろう?」

私の位置からは見えないがどうやら、 伊織ちゃんと一緒にやよいちゃんと雪歩ちゃんも来ているらしい。

伊織「アンタが連絡もしないで打ち合わせには来ないし、電話にも出ないからやよいと一緒に探しに来たのよ!そしたらなんなのこの状況は?いったい何があったのよ!」

P「あっ...そうだった...すまなかったな。ちゃんと説明するから。すみません音無さん。ちょっと事情を話してきます」

伊織「ったく...久々に律子じゃなくてアンタの仕事だからちょっぴり期待してたのに...」

P「すまなかったな、今から説明するよ」

そう言うと、プロデューサーさんは伊織ちゃん達に状況を説明する為一旦手を洗いトイレから出ていった。

しばらく、トイレの外からはプロデューサーさんの説明が聞こえていた。すると

伊織「何よそれ!大変じゃない!」

P「お、おい待て伊織!」

伊織「うるさいわね!小鳥だって765プロの大切な仲間なのよ!その仲間がピンチなんでしょ!いいから放しなさいっ!」

少し揉めている様な物音と声が近づいてきて

伊織「小鳥!大丈夫なの!?」

そこには便座の上で脚をおっぴろげたままの私の前に立つ伊織ちゃんの姿があった。

雪歩「大丈夫ですか、音無さん」

雪歩ちゃんも端から覗き込む様に心配そうな顔を出す

雪歩「プロデューサーが私を送った後に慌てて事務所に戻っていったので...なにかあったのかなって心配になって戻ってきました...」

やよい「小鳥さん、大丈夫ですか?」

その後ろにこちらも心配そうに見つめるやよいちゃんも居た。

伊織「こ、これは……」

私のアナルを見て少し驚いた様子の伊織ちゃんに

雪歩「ふぇ...お尻が切れちゃって…凄く痛そうです」

雪歩ちゃんは口元を手で覆い、怯えた様な震え声を出す。

伊織「まったく!何やってるのよ小鳥!」

眉を釣り上げながら伊織ちゃんの怒声が飛ぶ。

小鳥「いや、その、ごめんなさ……」

迫力に怯みながら、思わず出た謝罪の言葉を言い切る前に、伊織ちゃんは私の隣まで近づき

伊織「……こんなに手が冷たいじゃない。寒かった?でももう大丈夫よ。皆がいるから」

一転、その顔が慈しむ様な表情に変わる。私の手を包む様に握りしめた伊織ちゃんの手から確かな温もりが伝わってきた。

伊織「そうよ、雪歩!急いで熱いお茶を準備して頂戴!」

雪歩「あ、う、うん!」

伊織ちゃんに言われて、雪歩ちゃんがスカートの裾を翻しパタパタとお茶を準備しに向かう。

再び、伊織ちゃんの眉がつり上がり

伊織「それにしてもこんな長い間便秘にしてたなんて。ちゃんと言わなきゃ駄目じゃないの!」

小鳥「ご、ごめんなさいね。まさかこれ程の事になるとは思わなくて」

伊織「バカ!それに私達は同じ事務所の仲間でしょ!まったく、こういう所は抜けてるんだから」

小鳥「あはは……」

冷や汗混じりに苦笑いを漏らすと

伊織「……でも、これは小鳥がこんなになるまで忙しい事に気づけなかった私の責任でもあるわよね。謝るわ。もし気づいてたら何がなんでも休ませたのに」

空気の抜けたボールが急にしぼんで行くように気落ちしはじめ、伊織ちゃんは落ち込む様にうつ向く。

小鳥「そんな、これは私の生活態度が原因なの。伊織ちゃんが落ち込む必要は無いわ。そんな風に自分を責めちゃダメよ」

そう、これは全て私自身の行いが招いた結果なのだ。第一、私自身がこんな事になるとは思っていなかったのだから、何も話していない他人が気づける筈もない。

伊織ちゃんが自分を責める理由なんてありはしない。

P「伊織」

と、その時プロデューサーさんが伊織ちゃんに優しく声を掛ける。

P「音無さんの言う通りさ。伊織が責任を感じる事じゃない。こんな事になるなんて誰にも予想は出来なかったんだからな。音無さんだってそんな風に責任を感じられたらかえって心苦しくなってしまうぞ。ですよね、音無さん」

小鳥「はい」

まったく持ってその通りである。

いつでもプロデューサーさんは皆の事を考えてくれている。
そういう所も私が惹かれた理由だ。

伊織「プロデューサー…ええ、そうね。こんな事で落ち込んでる場合じゃないもの。今はこの状況をなんとかする事の方が大切ね」

伊織ちゃんに元気が復活し、良かったななんて思っていると

やよい「小鳥さん、これを使ってください」

と、声が聞こえ、しばらく姿の見えなかったやよいちゃんが両手にタオルケットを持って現れた。

伊織「あ、流石ねやよい。私の も……」

そう言いながら、伊織ちゃんも自分の着ているカーディガンを脱ぎだし、やよいちゃんのタオルケットの上に置いた。

伊織「これで少しは暖かいでしょ」

小鳥「ええ。伊織ちゃん、やよいちゃん、ありがとう」

伊織「良いわよこれくらい。お礼を言われる程の事じゃないわ。ね、やよい」

やよい「はい!早く元気になってくださいね、小鳥さん!」

やよいちゃんは天使のような笑顔で私を励ましてくれた。なんて良い子なのだろうか。

その後、まだちょっぴり汚れていた私のお尻をプロデューサーさんに綺麗にしてもらい、トイレを出ると

雪歩「音無さん」

雪歩ちゃんがお茶を準備して待ってくれていた。

小鳥「ごめんね雪歩ちゃん。せっかくお仕事が終わった後なのにこんな迷惑をかけてしまって。」

雪歩「大丈夫ですよ。音無さんの気持ちも解りますから。便秘は女の子にとって大敵ですもんね。それに大切な事務所の...な、仲間が苦しんでる時は助けるのが当たり前です!」

伊織「その通りよ。私達は全員合わせて765プロなのよ。アイドルの皆や社長に律子とプロデューサー。そしてもちろん小鳥も」

伊織ちゃんの言葉に皆がそれぞれ に同意の態度を見せる。

皆の気持ちにに思わず涙ぐみそうになっていると

雪歩「はい、どうぞ」

雪歩ちゃんが私にお茶が入った湯飲みを手渡してくれた。

小鳥「ありがとう、雪歩ちゃん」

雪歩「熱いうちにどうぞ」

小鳥「いただきます」

湯飲みに口をつけると、雪歩ちゃんの遣いだろうか。湯飲みの中のお茶はいつもより熱くなっており、温かさが芯まで冷えた体に染み渡る。気付くと、湯飲みの中身は一瞬で空になっていた。

まったく、私は何を勘違いしていたのだろう。この子達はこんなにも優しい子なのに。

結局、恥ずかしいだのなんだのは私自身への言い訳だったのだ。

本当の繋がりを求めつつも、仲間を信頼しきれない弱い私自身への言い訳。

小鳥「ふぅ、御馳走さま雪歩ちゃん。生き返った気分だわ」

雪歩「ふふ、お粗末様です。よかったらもう一杯飲みますか?」

小鳥「それじゃあ...お言葉に甘えてお願いできる?」

私はとても幸せ者だと思う。
こんなにも良い仲間達に囲まれて、これ以上の喜びは無い。

P「音無さん」

雪歩ちゃんの2杯目のお茶を今度はゆっくりすすっていると、プロデューサーさんから声を掛けられた。

小鳥「どうしたんですか?プロデューサーさん」

皆の暖かさに感謝しながら、また一口お茶をすする。

P「俺、音無さんの事が好きです」

小鳥「ブフォッ!?」

伊織「キャッ!」

余りの突然の言葉に口に含んでいたお茶を伊織ちゃんに向かって吹き出してしまった。

P「音無さんとずっと仕事をしてきて...俺気づいたんです」

小鳥「き、気づいたって」

P「音無さんに対する俺の気持ちに、今日、やっと」

小鳥「え...えっ?えっ?」

混乱している私は返事の言葉を発することが出来ない。

やよい「プロデューサー、大胆です!」

雪歩「あわわわわ......」

伊織「誰か...私の心配もしなさいよ...」

P「返事を、聞かせてもらえませんか?」

小鳥「......プロデューサーさん」

ポタポタと額からお茶が流れ落ちる伊織ちゃんを見て、ようやく私は冷静さを取り戻すことかできた。

小鳥「い...いいんですか?紙がないことも気づかずにトイレに駆け込む女ですよ?」

P「構いません」

小鳥「プロデューサーさんに自分のアナルを洗わせた女ですよ?」

P「構いません」

小鳥「もし何かあったら、今みたいに質問攻めするような重たい女ですよ?」

P「......か、構いません!」

小鳥「どうしてちょっと迷ったんですか」

P「うっ」

少し動揺して目が泳いでいるプロデューサーさんを見ていると、思わず可笑しくなってしまった。

小鳥「......ふふっ」

小鳥「プロデューサーさん」

P「はい」

小鳥「私も、プロデューサーさんのことが好きです」

P「!」

やっと言えた。ずっとずっと胸にしまっておいたこの言葉を。ずっと隠し続けていた、この気持ちを。

小鳥「皆のために一生懸命に努力するプロデューサーさん」

小鳥「私がピンチだった時、イチバンに来てくれたプロデューサーさん」

小鳥「そんなプロデューサーさんが、私は大好きです。」

P「音無さん......」

小鳥「こんな私でもよければ、よろしくお願いします」

P「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

こうして、奇妙な事件から、
私はずっと好きだったプロデューサーさんと晴れて結ばれる事となった。

雪歩「ううっ、感動して涙が出てきちゃった...」

やよい「よかったですー!」

伊織「ええ、そうね。私もこの額に掛かったお茶を誰かが拭いてくれれば心の底からそう言えるんだけど」

あの一件のあと、私達は様々な出来事に巻き込まれた。

961プロによるねつ造スキャンダルやライブ妨害。

伊織ちゃんの熱狂的ファンによる襲撃?事件(未遂)

様々な妨害によって765プロは危機に見舞われた。

しかし、私達はより強く結ばれた絆を武器に、力を合わせて脅威を退け、この危機を乗り越えた。

あの、トイレで皆の力を合わせた時の様に。

余談ではあるが、あの日突然私の身に起きた猛烈な便意は雪歩ちゃんが淹れてくれたお茶が原因らしい。

あの日、事務所で雪歩ちゃんが眠る前に淹れてくれたお茶には便秘に効く成分が含まれていたらしく、それが私の体には相性が抜群だったらしい。

あの時、雪歩ちゃんもちょっぴり便秘気味であのお茶を用意したのだと後でこっそりと教えてくれた。

「恥ずかしいからみんなには内緒でお願いしますぅ...」と涙目で恥ずかしそうに顔を真っ赤にして。

ともあれ、あの日彼女が用意してくれたお茶のおかげで私は今までよりもさらに皆と絆を深められたのだ。

恨みなんてものはまったくない。
むしろ感謝してもしきれないほどだ。

そんな感慨にふけりながらお茶、
今日はごく普通の美味しいお茶の様だ、をもう一口すすると

P「みんな、良いニュースだ!」

バンッ、と扉を開ける激しい音と共にプロデューサーさんが現れた。

どこからか凄い仕事を見つけてきたのか、
はたまた何か面白い事を思い付いたのか、その顔に喜色満面の笑みを乗せて。

P「みんな、よく聞いてくれ!なんと......」

皆の前に立ち嬉々として話を進めるプロデューサーさん。

春香「凄いですねプロデューサーさん!まさか本当にできるなんて!」

太陽のような笑みを浮かべる春香ちゃんに

雪歩「本当ですか?嬉しいです...プロデューサー」

雪歩ちゃんが目を輝かせて喜びの眼差しで見つめ

伊織「まあ、アンタにしては上出来じゃない?」

伊織ちゃんも素直じゃないけど嬉しいのが丸分かりで

やよい「本当ですか!すごいですー!」

やよいちゃんは相変わらず天使のような笑顔で皆を幸せにしてくれる

千早「そうなんですか。まあ、なんでも、いいですけれど」

そんな事良いながら表情は喜びに満ちている千早ちゃん。ちなみに最近やっとウォシュレットの使い方をマスターしてくれた。

真美「さすが兄ちゃん!やりますな~」

亜美「ま、真美達の実力かな!うりうり~褒めたまえ!」

相変わらずお調子者のかわいい亜美ちゃんと真美ちゃん

律子「こら、調子にのらないの」

それを注意する律子さんも、今日は嬉しそうだ。

他のアイドルの子達もそれぞれが喜びを表してくれている。

小鳥「ふふっ、さすがですね、プロデューサーさん」

そして私も笑顔で返す。
それが765プロの日常。

これからもずっとずっと続いていくであろう、何よりも大切な仲間たちと過ごす平穏で刺激的なかけがえの無い毎日。

idかわるからトリ

そして、アイドル達がそれぞれの仕事に行った後、
先程までの騒がしさは嘘のように事務所には静寂が訪れた。

P「小鳥さん」

小鳥「なんですか?」

ふたりきりの事務所。
プロデューサーさんが突然私を下の名前で呼んだので、少し驚きもあったが平然を装って返事を返す。

P「そ、その...もしよろしければでいいんですが...」

小鳥「?」

プロデューサーさんの顔がだんだんと赤くなっていく。

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P「俺と小鳥さんが...そういう関係になってしばらく経ちました」

小鳥「はい」

P「今はお互い別々に住んでるじゃないですか......」

P「その...ひとりで自炊するのはお互い大変だと思うんですよ。ですから...その...」

プロデューサーさんは少しずつ、ひとつずつ言葉を紡いでいく。

P「ふたりで一緒に作れば...いいんじゃないですか?こ、これから...毎日」

思わずニヤけそうになった。

しかしそこは2X歳、大人の女性として堪える。

小鳥「プロデューサーさん」

P「は、はい」

緊張で体が固まってしまっているプロデューサーさんに「リラックスしてください」と頭に付け私は喋り始める。

小鳥「私、プロデューサーさんとこんな関係になれるなんて、それだけで夢のようでした。」

その通りだ。まさかあんな事でお互いの想いを知って恋人同士になるだなんて誰も考えはしなかっただろう。

小鳥「それなのに、プロデューサーさんはさらに嬉しいことを言ってくれますね」

P「えっ...じゃ、じゃあ」

小鳥「け、結婚は...まだ早いですけど...ふたりで毎日一緒に...ご飯を作るくらいなら...その」

今度はきっと私の顔が真っ赤になってるんだろう。

大人の女性だとか言っていたさっきの私が恥ずかしい。

小鳥「よろしく...お願いします」

P「......はい!こちらこそよろしくお願いします!」

これで私のお話はおしまい。

今じゃ私とプロデューサーさんの仲は信じられないほど深くなった。

時々事務所の子達から黒いオーラを感じる事もあるが負けずに今日も一日頑張っている。

おそらくこれからも765プロを脅かす存在は現れるだろう。それは961プロか。もしかしたらまだ見た事も無いプロダクションやまったく関係の無い物から現れるかもしれない。

だけど、どんな危機が来てもきっと大丈夫。何故なら私達にはこんなにも固い絆で結ばれた頼もしい仲間達がいるのだから。

アイドルの子達、社長に律子さん。
そしてプロデューサーさん。

皆で力を合わせればどんな困難に襲われても絶対に乗り越られる筈だ

この最高の仲間たちと一緒ならば……


小鳥「私は、一生765プロの皆とここに居ますよ!」


おしまい!

進研ゼミとかZ会とかばっかだったから小鳥さんもやりたかった


昔かいたやつの改変だけど

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