ホロ「たまにはこんな風に苦いのも」 (36)


*このSSは
という作品内のある設定を抜き出し、リメイクした狼と香辛料SSです。


*結婚し日本へやって来たホロとロレンスの山なく落ちのないほのぼのなお話です。
*原作ベースよりなおさらあまあまと言いますか、ホロがとてもちょろい子になっています。不快な人もいるかもなのでご注意ください。



*エーブさんも登場します。ロレンスの雇い主であり恩人と言う設定です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364443281


+日曜日+


ホロ「…あふ」ゴソ

ホロ「…むぅ…もう朝かや…」

ホロ「…」

ロレンス「…」zz…

ホロ「くふ」

ホロ「(もう少しこうしておるかの)」ギュ

ロレンス「ん…」

ホロ「♪」パタパタ


ホロ「…」

ロレンス「…ん」

ロレンス「…朝か」

ロレンス「…」

ギュウ

ホロ「…」

ロレンス「…」

ロレンス「…起こすのも悪いな」

ロレンス「(今日は休みだしな。もう少しこうしていてやるか)」

ホロ「(ぬしは優しいのー)」

ホロ「(こんなたわけじゃからまったくわっちは…)」パタパタ

ロレンス「はは。寝ながらも尻尾は動くんだな」ナデナデ

ホロ「…//」パタパタ


ホロ「…むぅ」

ロレンス「お、起きたか」

ホロ「…んむ」グシ

ホロ「おはようぬしよ」ニコ

ロレンス「ああ。おはよう」

ホロ「♪」ギュ

ロレンス「…」

ロレンス「苦しいんだが」

ホロ「む。こんな美人に抱きつかれてなにをたわけたことを言っておる」ギュゥ

ロレンス「…すいません」

ホロ「許さぬ」

ホロ「じゃからもうしばらく大人しく抱きつかれておるとよい」ギュウー

ロレンス「はいはい」

ホロ「♪」


ホロ「ぎゅー」

ロレンス「ぐえ」

ホロ「ぷはっ」

ホロ「んむ! 気が済んだ」

ロレンス「それはよかった」

ホロ「くふふ」

バッ

ロレンス「ひっ」

ホロ「ほれぬしよ! いつまで眠っておるつもりじゃ!」

ロレンス「…」ブルブル

ロレンス「…いきなり布団を剥ぐなんて、…な、なんてことを…」


ホロ「今日はぬしと過ごせる大切なお休みの日でありんす」

ホロ「時間は待ってくれぬからのー」パタパタ

ロレンス「…。そうだな」

ホロ「んむ。ではぬしよ」

ホロ「なにをして過ごそうかの!」ニコ


ヌクヌク

ホロ「…ほー」

ロレンス「…」

ロレンス「さっきあれだけ勢いよく起きたくせに…」

ロレンス「俺に言ってることとやっていることが違うぞ」コト

ホロ「くふ。ありがと」

ホロ「…」ズズ

ホロ「ココアは甘くておいしいでありんす」ニヘ


ホロ「じゃがぬしよ」コクコク

ホロ「そうは言ってもこたつから逃れられるものなどありんせん」ヌクヌク

ロレンス「大げさな」ズズ

ホロ「…ぬしはまたコーヒーかや?」

ロレンス「うん」

ホロ「一口ちょうだい?」

ロレンス「どうぞ」

ホロ「…」ズズ

ホロ「…ぅぇ」ニガイ

ロレンス「もらっておいてその顔はないだろう」


ホロ「大人しくココアにする…」コク

ロレンス「別に無理して好きでもないものを口にすることはないさ」

ホロ「それは、そうじゃが…」ゴニョ

ロレンス「ん?」ズズ

ホロ「な、なんでもありんせん」プイ

ロレンス「なんだよ」

ホロ「なんでもないと言っておる!」

ロレンス「素直じゃないなー」グニ

ホロ「ふにゃ…」ムニー


ホロ「ほ、ほおをひっぱるでないっ」

ロレンス「はは。可愛い」

ホロ「…」

ホロ「た、たわけめ」パタパタ

ロレンス「ホロ」

ホロ「ん、んむ」

ロレンス「こたつの中で尻尾を暴れさせるのはやめてくれ」

ホロ「…!」カア

ホロ「も、もうぬしなど知らぬ!」プイ

ロレンス「なんだよー」


ホロ「ふん」

ロレンス「まあそう怒るな」ナデ

ロレンス「もっとお互い素直になろうと話したのはついこの前の話だろう?」

ホロ「…む」

モゾ

ホロ「…そうじゃな」パタ

ロレンス「ああ。どんな些細なことでも、思っているだけでは伝わらない」

ロレンス「まあどうしても言いたくないことを…無理に口を割らせようとは思わないが」

ホロ「…うん」


モゾ

ホロ「…あの、本当に、大したことではないんじゃが」

ロレンス「うん」

ホロ「…その」ゴニョ

ロレンス「…」ナデナデ

ホロ「…ふわ…」

ホロ「だ、だめじゃ。撫でられると頭がぽーっとしてしまって喋れなくなってしまいんす。い、いまはやめてくりゃれ」

ロレンス「そうか」

ホロ「ん、んむ」

ホロ「またあとで…の」

ロレンス「…っ(上目遣いだと…)」

ロレンス「ま、まかせろ」

ホロ「ぬしよ目が怖いでありんす」


ホロ「そ、それでの」コホン

ロレンス「はい」

ホロ「…わっちはコーヒーは好きではありんせん」

ロレンス「うん」

ホロ「じゃが…」

ツツ…

ホロ「ぬしと同じものが飲めぬのは…ちょっとさみしい…でありんす」

ロレンス「…」

ロレンス「…」

ホロ「…ぬしよ、どうかしたかや…?」

ロレンス「…」

ロレンス「いや。お前に惚れ直していたところだ。気にするな」

ホロ「…そ、そうかや」パタパタ


ロレンス「しかしなるほど。そう言うことだったか」

ナデナデ

ホロ「…んむ」

ロレンス「…そうだな…」

ロレンス「なあホロ。じゃあせっかくの休みだし、昼から買い物に行こう」

ホロ「?」

ロレンス「前から欲しかったものがあるんだ。ちょうどいい」








+ショッピングモール・服屋さん+


エーブ「…」

エーブ「…」

店員「何かお探しですか?」

エーブ「…いや」

エーブ「見ているだけだ。放っておいてくれ」

店員「わー。お姉さんはスタイルいいですね! 羨ましいなぁ」

エーブ「そ、そうか」

エーブ「いやそんなことはない。あんたの方こそ…」

店員「?」

エーブ「(ち。ふわふわした格好しやがって)」

エーブ「可愛らしい格好だな」ハア


店員「あは。ありがとうございます!」クルクル

店員「可愛いですよねー。こういう服をお探しですか?」

エーブ「…いや。俺には似合わないだろう」

店員「そんなことないですよー」

店員「これなんかおすすめなんですけど。よかったら試着とか!」

エーブ「けっこうだ」

店員「そんなこと言わずに!」

エーブ「…ち、しつこいな」

店員「だっておねーさん本当に綺麗だから! どんな風になるのかなって見てみたいんです」

エーブ「…」

エーブ「…し、仕方ないな。そこまで言うなら」

店員「えへへ。ありがとうございます」

エーブ「…」

エーブ「…試着するだけだからな」


ガヤガヤ


ホロ「…すごい人じゃな」

ロレンス「日曜日だからな」

ホロ「…」

ギュ

ホロ「…」

ロレンス「(フードを押さえて…耳を気にしているのか)」

ロレンス「ホロ」

ホロ「ん?」


ギュ

ロレンス「はぐれないようにな。手を繋いでいよう」

ホロ「…。くふふ」

ホロ「ぬしよ、わっちは子どもではありんせん」

ロレンス「分かってるさ」ポン

ロレンス「俺が傍にいるからな。安心しろ」

ホロ「…うん」

ピト

ホロ「くふふふ」

ロレンス「じゃあ行くか」

ホロ「うん」


ロレンス「適当に見て回ろうと思うが…」

ロレンス「ホロは何か買いたいものはあるか?」

ホロ「…ふむ」

ホロ「そろそろ暖かくなってくりゃれ! …という想いを込めて、春物の服でも買ってみようかの」

ロレンス「もうしばらくこたつにはお世話になりそうだよな」

ホロ「んむ。こたつのない生活など考えられぬ」

ロレンス「…故郷の方が寒かったんだよな?」

ホロ「…う、うろ覚えじゃがの」

ロレンス「賢狼は記憶力の方にはめでたくないのか」

ホロ「ばかにするでありんせんっ」バシ

ロレンス「失礼しました」イテ


ピラ

ホロ「ふむ…これ可愛いの」

ホロ「ちょっと試着して来んす」パタパタ

ロレンス「行ってらっしゃい」

ロレンス「…」

ロレンス「(…って、こんな店で俺を一人にするなよ!)」

??「…ち…ず、ずいぶん動き辛い服だな…」フラ

ロレンス「ん?」


グイッ

??「あっ」

ロレンス「おっと」

ガシ

ロレンス「大丈夫ですか」

??「…わ、悪いな。裾が引っかかっちまっ…」

??「…な」

ロレンス「…。あの」

ロレンス「き、奇遇ですね。社長」

エーブ「…ロレンス。なぜここに…」


エーブ「…」

ロレンス「…」

エーブ「おい」

ロレンス「は、はい」

エーブ「そろそろ手を離したらどうだ」

ロレンス「あ、し、失礼しました」パッ

エーブ「…まったく」ポンポン

ロレンス「…」

エーブ「…。なんだよ」

ロレンス「いえ、あの…」


ガバッ

店員「やっぱり! 私の目は正しかったです!」

エーブ「な、なんだよ」

店員「お姉さんそのロングスカートとってもお似合いですよ」ニコ

エーブ「…」

エーブ「いや…」

店員「お兄さんもそう思いませんか?」パッ

ロレンス「わ、私ですか?」

エーブ「ロレンス。気を使わなくていい」

エーブ「俺みたいな眼つきの悪いやつに…こんなふわふわな格好が似合うはずがないからな」

ロレンス「(ふわふわとか言う表現がすでに可愛いんですがそれは…)」


ロレンス「眼つきは関係ないと思いますが…」ハハ…

ロレンス「私は、とてもお似合いだと思いますよ」

エーブ「…」

エーブ「ほ、本当か」

ロレンス「ええ。社長はいつもはかっちりした格好をしていますからね。なんだか新鮮で素敵です」

エーブ「…」

エーブ「そうか」

エーブ「おい。こ、これ。買ってくよ」

店員「ありがとうございますー」ニコー


エーブ「…おい」

ロレンス「はい?」

エーブ「どうせ奥さんと来ているんだろ。あの人なら気を使って別な場所にいたりするんじゃないか。待たせるなよ」

ロレンス「あ、…そうですね」

ロレンス「では社長。また明日」

エーブ「おう」

タタ…

エーブ「…」フン

クル

エーブ「…って」


バッ

エーブ「おいロレンス。プライベートでは俺のことはエーブと呼べと…」クル

ロレンス「エーブさーん!」

ロレンス「今度私用でお会いするときは、今日の服、着て見せてくださいね!」

ロレンス「では!」ブンブン

タタッ…

エーブ「…」

エーブ「…はいはい」ヒラヒラ








ホロ「…」クピクピ

ホロ「む?」

タタッ

ロレンス「わ、悪い…ホロ。一人にしてしまって」ハア

ホロ「ううん。気にすることはありんせん。わっちは子どもではないのじゃからな。それに」

ギュ

ホロ「こうしてぬしは探して来てくれたからの」ニコッ

ロレンス「…そうか」ハハ

ホロ「じゃがわっちの用はもう済んでしまいんす」ガサ

ホロ「今度はぬしの買いたいものを見に行こう」グイ

ロレンス「おう」








+自宅+


ガチャ

ロレンス「ただいまーっと」

ホロ「おかえりー」

ロレンス「…はは。ホロこそ、おかえり」

ホロ「んむ。ただいま」ニコニコ


ホロ「ではぬしよさっそく」

ロレンス「そうだな。一息入れよう」

ガサガサ

ロレンス「おいしいらしい、コーヒーでな」

ホロ「らしいて」

ロレンス「飲み易いというやつの中から高いのを選んでみただけだしな。正直俺にはなにが違うのかさっぱりだ」ペリペリ

サラサラ…

コポ…

ロレンス「まずちょっと全体を蒸らす」

ホロ「ふうん」クンクン

ホロ「んむ。香りはよい。…食欲をそそるかは別にしてじゃが」

ロレンス「なんだそれ」ハハ


コポコポ…

ロレンス「よし。入ったぞ」

ホロ「い、頂きます」カチャ

ホロ「…ん」

ズズ…

ホロ「…」

ロレンス「どうだ?」

ホロ「…うむ。飲める…」

ホロ「なんじゃろ。苦いのに違いはありんせん。じゃがおいしい」

ロレンス「…うん」ズズ

ロレンス「俺もそんな気がする」

ホロ「くふ。ぬしは違いの分からぬ男じゃな」

ロレンス「だいたいの男はそんなもんだ」ズズ


ズズ…

ホロ「…しかし…」

ホロ「…コーヒーと言うのは…なんだか不思議な飲み物じゃな」

ホロ「甘いものの方がおいしい。しかしなんだか心が落ち着くでありんす」

ロレンス「そうだな」

ロレンス「あ、おまけで貰ったビスケットがあるぞ」ハイ

ホロ「おお!」

ホロ「…」サクサク

ホロ「…」ズズ…

ホロ「ほふ…。んむ。甘いものとコーヒーはよく合いんす」ニヘ

ロレンス「そうだな」


ホロ「…」ズズ

ホロ「コーヒーも悪くない」

ホロ「とはいえやはりわっちは甘いものの方が好きじゃ」ウン

ロレンス「なんだそれ」ハハ

ホロ「くふ。じゃがこれからは…」

ホロ「ときどきぬしと一緒にコーヒーを飲むことにするかの」ニコ

ロレンス「そう言ってもらえたら何よりだ」

ホロ「んむ♪」


カチャ…。


ホロ「のうぬしよ。ぬしと一緒なら」

ホロ「たまにはこんな風に苦いのも。悪くありんせん♪」


おしまい。


以上、ホロ「たまにはこんな風に苦いのも」でした。



コーヒーが共通のテーマということで、以前投下したSSと対になるようなスレタイにしてあります。
とくに内容が対になってたりするわけではないです。


原作世界だとどうしても旅の終わりがちらつくのでどう書いても雰囲気が切なくなるんですが、現代設定だと能天気に幸せな二人が描けて楽しいです。
ちょっと能天気すぎますけど。



ではお読み頂きありがとうございました。

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