ダル「僕もオカリンみたいなリア充になりたいお!」岡部「ほぉ」(253)

ID:ctJAZnzh0

ラボ。

ダル「最近オカリン牧瀬氏とイチャつき過ぎだよなー。リア充爆発しろ!」

岡部「イ、イチャついてなどいない!
   あ、あれは単に、紅莉栖がちょっかいをかけてくるから適当にあしらっているだけであって……」

ダル「かぁー、ツンデレ台詞にしか聞こえない件について! 爆発しろ! 爆発しろ!」

岡部「爆発爆発うるさい! そんなに見ててイラつくんなら、お前も同じことをすれば良いではないか!」

ダル「……へ?」

岡部「幸いラボメンの男女比は男3に対し女4。まぁ紅莉栖は勘弁してもらうとして、それでも残り3人も居るんだぞ!」

ダル「……」

岡部「お前もいいかげん爆発しろ爆発しろと呪い続けるのはやめろ。そろそろ自分から爆発してみたらどうだ」

ダル「僕が……」

岡部「たしかにお前は見た目が非常に残念だ。有史以来、類を見ない最低最悪の外見を誇っている」

ダル「そこまで言わなくてもよくね!?」

岡部「だが、その外見に隠された素晴らしい精神を俺は知っている。俺だけではない、ラボメンもだ」

ダル「オカリン……」

岡部「お前の良さをよく知っている女性が3人も居るんだぞ? ……動かない手はないだろう?」

ダル「……オカリン。僕、オカリンと親友で居られて良かった」

岡部「ふん、下らんな。感謝など述べている暇があったら、さっさと行動を起こすことだ」

ダル「……おう! 行ってくるぜオカリン!」ダダダダ……




岡部「……」

外。

ダル「僕と一番好感度高い子って言ったら……」

ダル「やっぱりフェイリスたんだろ常考!」

ダル「今の時間はメイクイーンだよな。よし、早速」

ダル「……いや。営業時間中に愛の告白なんてするのはさすがにお邪魔かな」

ダル「ここは焦らず騒がず、フェイリスたんのバイトが終わるまで待っておくべきだお!」

ダル「よぉーし燃えてきたぁ! サンボで栄養補給したらメイクイーン前で出待ちしようそうしよう!」

ダル「おばちゃん! 特盛り6杯ヨロー!」

ダル「うう、さすがに6杯は調子に乗りすぎたお……フェイリスたんはまだかなぁ」

ダル「……あ!」



フェイリス「……フニャ? ダルニャン? どうしてここに?」

ダル「フェイリスたんお疲れ様です! 飲み物をどうぞ!」シュバッ

フェイリス「え、あ、ありがとニャ。ちょうどのど渇いてたとこニャ……コクコク……」

フェイリス「フニャ~♪ 疲れた体にコーラはキクのニャ~♪」

ダル「あれ、フェイリスたんコーラ好きだったん? 今の今まで知らなかったお」

フェイリス「炭酸はだいたい好きニャよ。シュワシュワパチパチがフェイリスの五体に渇を入れるのニャ」

フェイリス「……あ~、でも、ドクペだけはどうにもだめニャ。
      あれは機関の作り出した、炭酸によく似せたヤバいクスリとしか思えないニャ」

ダル「完全に同意~。あんなのを知的飲料とか言ってラッパ飲みできるオカリンと牧瀬氏が信じられないお」

フェイリス「キョーマのその点だけはフェイリスもよく分からんニャ~」

ダル「でもフェイリスたん……の中の人のイメージだと、紅茶にお茶菓子ってのがよく似合う感じだけどなぁ。
   炭酸好きってのはちょっとびっくりだお」

フェイリス「ニャニャ。それはまた至極勝手なイメージだニャ?
      別に特別な味覚を持ってるわけじゃニャいんだから、私もみんなと同じような嗜好を持ってるニャ」

ダル「そんなもんなのかお……ん、おやおや? フェイリスたん今、私って。ちょっぴり地が出たお~?」

フェイリス「ニャ!? な、なんのことかニャ~。フェイリスはフェイリスニャ~」

フェイリス「ていうかダルニャン! フェイリスたんの中の人なんて居ない! ってあれだけ言ってたのに!
      いつのまに宗旨替えしたのかニャ?」

ダル「最近は中の人込みで萌えられるようになりました!」

フェイリス「そ、それは何よりニャ……」

フェイリス「……じゃ、じゃあ今は、どっちに萌えてるの?」

ダル「……今は、留未穂たんかな。今そっちでしょ?」

フェイリス「……ぁ……」

フェイリス「……フ、フニャー! ダ、ダルニャン! 最初の質問に答えてないニャ!
      どうしてこんなところで待ってたんだニャ!?」

ダル「あ……えとー、その……」

フェイリス「フェイリスの十の神技の一つが解放される前に、さっさと答えるニャ!」

ダル「……今ここでいきなり言うには、ちょっと場所が悪いな。フェイリスたん、このあと時間ある?
   もし良かったらお茶でもしないかお?」

フェイリス「お、お茶? べ、別にいいんニャけど……」

フェイリス「ば、場所が悪いってなんなの……、ニャー……?」

ダル「……フェイリスたん調子悪いん? どしたん?」

フェイリス「ひゃぁッ!? フ、フェイリスの額にみだりに触れちゃだめニャ! 封印が解かれてしまうニャ!」

ダル「ご、ごめん。
   なんか今日のフェイリスたんは留未穂たんがよく出ちゃってるから、熱でもあるのかと思って……」

フェイリス「……ぁ、ぅ……」

その頃、ラボ。

岡部(……このSG世界線で、ダルが阿万音由季と出会ってすでに一ヶ月。2人は全く進展する気配がなかった)

岡部(由季のほうはしっかりダルに好意を抱いており、行動にも示しているのだが、
   なぜかダルは彼女の好意に全く気付かず……)

岡部(ダルに至っては、なんと由季に全く関心を持っていない様子なのだ)

岡部(由季が意を決して告白を試みたことも多々ある。だが、まるで世界がそれを拒むかのように必ず邪魔が入るのだ)

岡部(……このままでは鈴羽が生まれない可能性が高い。それを心配した俺は、一計を案じた)

岡部(俺の知る限りでは、ダルに近しい女性は、フェイリス、まゆり、萌郁、紅莉栖、由季の5人。……あ、紅莉栖は抜いて4人)

岡部(他の交友関係では、この4人ほどに仲の良い女性は居ないようだ)

岡部(つまり、ダルを由季へと誘導するには……)

岡部(由季以外の3人とのフラグをぶち折ることで、ごく自然に彼女へ目を向けさせればいいのだ!!)

岡部「オペレーション・ベルウイングの幕は、今ここに切って落とされた……!」

岡部「さぁダルよ! ラボメンガールズに告りまくれ! 当たりまくれ! そして砕けろ!」

岡部「さぁラボメンよ! ダルをフれ! 手酷くフれ! トラウマになるほどにフれ!」

岡部「心の傷が深いほどに本作戦の成功確立は高まる! 待っていろ、由季! 傷心の男が今そちらへ向かったぞ!」

岡部「……全てはラボメンNo.009のために……エル・プサイ・コングルゥ……フゥーハハハハハハハハハハハハハ!!」

後日、ラボ。

ダル「……というわけで、フェイリスたん、もとい留未穂たんと付き合うことになったんだお。
   取り急ぎオカリンにだけは伝えておこうと思って。僕の背中を押してくれたのは他でもないオカリンだからさ」

岡部「………………」

ダル「いやーしかし、留未穂たん可愛すぎワロタ。
   フェイリスたんももちろん可愛いけど、髪溶いてストレートにして丁寧口調になった留未穂たんの可愛さは異常。
   属性を変える、という行為がああも破壊力バツ牛ンだとはさすがの僕も思わなかったお。マジ目から鱗。
   あと留未穂たんてけっこう素は大人しい子で、そのギャップがまた萌え萌え☆キュンでさー、
   至さん呼びされた時は尻子玉抜けるかと思ったね。
   そうそう、あとちゅっちゅする時、ちょっと怖いのかぎゅーって目を瞑ってんの。
   いやー、あんまり可愛いもんでそのまま見とれてたら怒られた怒られた。
   猫パンチたくさんかまされ……てオカリン? 何してんの?
   電子レンジになんか改良加えて……携帯電話とヘッドセットくっつけて……いったい何を」

岡部「飛べよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉおおぉおぉっぉぉぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおおおッッ!!」

ドギュゥゥーーーン……

ラボ。

岡部(……信じたくはない。断じて信じたくはないが)

岡部(ダルフェイは成立してしまうことが証明された……!)

岡部(フェイリスは、ダルをあくまでビジネスライクに好いていたのではないのか? 女心はよく分からん……)

岡部(……今の時間は、ダルを告白へとけしかけた時間の直前か)

岡部(フェイリスにはもう彼氏が居るとかなんとか偽り、フェイリス√にだけは進ませないようにしよう)

岡部(よし!)



岡部「なぁ、ダル――」

――――――
――――
――

外。

ダル「はぁぁー……フェイリスたん、もう彼氏いたのかぁ……」

ダル「まぁそりゃそうかぁ。フェイリスたん可愛いし、アキバの運営なんてしてるんだから、
   カッコいい大人の男との出会いなんてありふれてるだろうしなぁ」

ダル「はぁぁー……」

ダル「……ため息ばっかついてても仕方ないな。折角オカリンに背中押してもらえたんだから、頑張れお! 僕!」

ダル「フェイリスたんが駄目なら、まゆ氏か、桐生氏か……」

ダル「……うぅぅーん」

ダル「……桐生氏かな」

ダル「桐生氏のムチムチエロエロボディかな! うん!」

ブラウン管工房。

ダル「桐生氏ー、居るー?」

店長「お? なんでぇ橋田じゃねぇか。萌郁なら今日は休み、アパートだと思うぞ。何か用でもあんのか?」

ダル「アパートか。分かったお店長、ありがとね」

店長「あぁん? なんだぁ橋田のやつ……」



ダル「……」ポチポチ

ダル『今アパートかお? ご迷惑じゃなければちょっとそっち伺いたいんだけど。いい?』

ダル「……」

ダル「お」ヴーン ヴーン

ダル(どうしたの? 橋田君が私のウチに来たいなんて。珍しいね。……か)

ダル「相変わらずメールだと顔文字いっぱいで感情豊かな人だお……
   最近はずいぶん喋ってくれるようになったけど」

ダル「……」ポチポチ

ダル『特に用事はないけど、ただ桐生氏に会いたいだけだお。だめかな?』

ダル「……」

ダル「……」

ダル「……返信遅いなぁ」

ダル「お」ヴーン ヴーン

ダル(どどど、どうしたの? 私に会いたいって? もしかしてからかってる? からかってるんでしょ?
   もおー! 年上のお姉さんイジめて楽しむなんて、意地が悪いよ、橋田君!……か)

ダル「勝手になに結論付けてんだお桐生氏……」

ダル『からかってなんかない。ただ桐生氏に会いたいだけだお。何度言わせるん?
   あんまり分かってくれないようなら電話しちゃうおー?』

ダル「……」

ダル「……」

ダル「……また返信遅いなぁ」

ダル「お」ヴーン ヴーン

ダル(分かった、待ってます……か。みじかっ)

ダル「顔文字もデコも付いてないし……桐生氏のこんな簡素なメール初めて見たお」

ダル「なんにせよOK貰えたことだし、早速出発だお!」

アパート。

ピンポーン ……ガチャ

萌郁「あ……は、し…………」

ダル「桐生氏おいすー。どしたん? 顔赤いけど」

萌郁「……なんでも、ない……」

ダル「そう? あ、桐生氏これこれ。ジャジャーン」

萌郁「……わぁっ……!」

ダル「ふひひ、ケバブとマウンテンデューをご用意致しましたお」

萌郁「……ありが、とう……!」

ダル「……桐生氏さ、もっとその笑顔見せてくれればいいのに。正直めちゃめちゃ魅力的だお?」

萌郁「ッ……ぁ、ぅ……は、入って……」

ダル「ほいほい、お邪魔しますおー」

ダル「ほあー……」

萌郁「……ごめん、ね、なにも、なくて……」

ダル「あ、僕こそごめんおジロジロ見ちゃって。
   んー、小物が少ないのは家庭によってマチマチだからあれだけど、家具とかも全然少ないのはなんで?」

萌郁「前の、仕事が……場所を転々と、する仕事だったから……
   家財道具は、出来るだけ少なく、するように、って……」

ダル「必要に迫られてこんな殺風景になっちゃってるわけかお。むぅ……」

ダル「今の仕事はブラウン管工房のバイトだから、もう仕事場を変わることはないんだよね?」

萌郁「ぅ、うん……」

ダル「桐生氏、うーぱ好き?」

萌郁「へ……好き、だけど……ど、どうしてそれを……?」

ダル「あ、やっぱりか。ラボに来るとうーぱのクッションをチラチラ見てたように思ったからさ。
   気のせいじゃなかったんだおね」

萌郁「……橋田、くん……」

ダル「じゃ、ケバブ食ったらゲーセンでも行かん? 桐生氏はお気にのゲームとかあるん?」

萌郁「……ゲー、セン……行ったことない……」

ダル「なん……だと……!? そりゃいかんお桐生氏! 人生の95割を損してるお!
   よし、じゃあ早くケバブ食べちゃおう! そんで桐生氏のゲーセン処女を長く楽しませていただくお!」

萌郁「げ、げーせ……しょ……ぅぅぅ……」

テクテク

ダル「レンジ借りるおー?」

萌郁「う、うん……」

ダル「はー、うまかった! ケバブなんて久々に食べたお!」

萌郁「おいし、かったね……」

ダル「……そうそれ! その笑顔! 桐生氏もっかいもっかい!」

萌郁「え、えぇ……?」

ダル「ほらほら。僕を見て。こんな感じ!」ニヤーリ

萌郁「あ……こ、こう?」ニコ……

ダル「まだちょっと固いなぁ……もう少し口角を上げて、瞳を薄くしてみて……」

萌郁「きゃッ……は、はしだくん……ちかぃ、よ……」

ダル「むむむ、どんどん表情固くなってるお? ほら、こう!」ニヤーリ

萌郁「……ぷっ」

ダル「ちょっ!?」

ダル「人の顔見て笑うなんてひどいおー……まぁ慣れてますけどー……」

萌郁「は、はしだくん、の、かお……おも、おもしろい……」プルプル

ダル「そ、そんな痙攣するほどなん!? 失礼しちゃうおー!」

萌郁「ご、ごめ……でも…………お、おなかがぁ……」プルプル

ダル「……」

ダル「……」ニヤーリ

萌郁「ッ! や、やめてぇはしだくん……! ……あははは……」

ダル「…………」ニヤーリニヤーリ

萌郁「だ、だめっ……し、しんじゃうぅ……」プルプル

萌郁「はぁぁ……一生分、……笑った、気がする……」

ダル「なぁーに甘っちょろいこと言ってるん。これからもどんどん笑わせてやるから覚悟しとけお」

萌郁「ぅぅ……おなか……こわれちゃうよ……」

ダル「ふひひ、壊してやるおー。……うし、じゃあそろそろゲーセン行こっか」

萌郁「あ……橋田くんの、顔が面白くて……忘れ、てた……」

ダル「記憶忘却するほどなん!? ……ぐぬぬ、いつか桐生氏にも変顔させてやるんだからね!」

萌郁「……私に、出来る……かなぁ……」

ダル「ん? 出来る出来る。ドア開けて最初会ったときより、ずいぶん表情が柔らかくなってるお。
   気付いてなかったっしょ? 顔さわってみ?」

萌郁「…………ぁ、口の、はしっこが、うえに……」

ダル「ね。やっぱりキミ、笑った顔可愛いお」

萌郁「…………」

ダル「んー、どこのゲーセンにしよかな。
   取り易いうーぱグッズがたくさんあるクレーンゲーム置いてるとこっていうとー……」

萌郁「……ありがとう、はしだくん」

ダル「は…………」

ダル「……桐生氏、今のちょっとヤバ過ぎた。もっかいもっかい」

萌郁「……も、もぅ……出来ないよ……」

ダル「どうしてそこで諦めるんだそこで! 桐生氏、頼むおーっ!」ニヤーリ

萌郁「ッッ……そ、その顔は、……反則……っ」

――――――
――――
――

後日、ラボ。

ダル「……というわけで、桐生氏、もとい萌郁氏と付き合うことになったんだお。
   取り急ぎオカリンにだけは伝えておこうと思って。僕の背中を押してくれたのは他でもないオカリンだからさ」

岡部「………………」

ダル「いやーしかし、萌郁氏可愛すぎワロタ。
   プリクラ撮ったんだけどさ、やっぱりカメラを前にすると緊張しちゃって顔が固まっちゃってるんだよね。
   でも僕が不意打ちで変顔したらピンポイントで笑顔が撮れて。これがもー可愛いのなんの!
   あ、見るかお? 携帯のバッテリー蓋裏に貼ってあるから。ほらほらこれ。世界中の誰よりも可愛くね?
   あとね、記録には残ってないけどさー、デカいうーぱクッション取ってあげたあと僕トイレ行ったんだよ。
   で、帰ってきたらなんと! クッションぎゅーってだっこして顔うずめてんの桐生氏!
   僕とあろうものが一瞬心臓止まっ……てオカリン? 何してんの?
   電子レンジになんか改良加えて……携帯電話とヘッドセットくっつけて……いったい何を」

岡部「飛べよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉおおぉおぉっぉぉぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおおおッッ!!」

ドギュゥゥーーーン……

岡部(……フェイリスだけでなく、萌郁まで……)

岡部(……)

岡部(……え、なに、もしかしてアイツって本気出すとプレイボーイなの?)

岡部(ははは、そんなばかな、はははは……)

岡部(……)

岡部(とにかく、フェイリスと萌郁の2人は恋人居る設定で。
残りはまゆり一人か……まぁ、ラボにいつも一緒にいて何も進展がないんだ。大丈夫だろう)



岡部「なぁ、ダル……――」

――――――
――――
――

ダル「はぁぁー……フェイリスたん、もう彼氏いたのかぁ……」

ダル「まぁそりゃそうかぁ。フェイリスたん可愛いし、アキバの運営なんてしてるんだから、
   カッコいい大人の男との出会いなんてありふれてるだろうしなぁ」

ダル「はぁぁー……しかも桐生氏まで。やっぱりお相手は店長かなぁ?
   店長、ぶっきらぼうに見えてちゃんと桐生氏のこと気に掛けてるから、やっぱそうなんだろうなぁ……」

ダル「はぁぁー……」

ダル「……ため息ばっかついてても仕方ないな。折角オカリンに背中押してもらえたんだから、頑張れお! 僕!」

ダル「まゆ氏……か。……」

ダル(……良い機会かも知れないな)

ダル「……彼女、今日はたしかバイトなかったはずだよな」

ダル「じゃ、高校終わったらラボに来るな。先に待ってよっと」

ラボ。

岡部「……ん? なんだダル、もう戻ってきたのか。……!! ま、まさかもう……!?」

ダル「お? いや、まゆ氏は学校終わったらラボに来るだろうから、先に待ってようと思っただけだお」

岡部「は……そ、そうか、そうだよな……よかったぁぁ……」

ダル「んんー? なんだよオカリン、なんか隠してるん?」

岡部「い、いや! 何も隠してなんかないぞ! 我が右腕に隠し事なんてあるはずないじゃないか!
   フ、フゥーハハハ!!」

ダル「あからさまに怪し過ぎです本当にありがとうございました……」

岡部「……。ぐぅぅっ!! わ、我が左腕が! 右腕の信頼が減じたことにより封印が解けかかったか!?
   こ、このままではラボが吹っ飛んでしまうぞ!
   ダル、俺は柳林神社へ行って、ルカ子に封印を掛け直してもらおうと思う! 留守は頼んだぞーー……!」ダダダダ……

ダル「はいはい、いってらー」

ダル「オカリンの方から勝手に出てってくれてよかったお。どうやって追い出そうかと困ってたとこだったんだ」

ダル「さーて、ジューシーからあげナンバーワンはもう買ってきたことだし、あとはまゆ氏を待つだけ」

ガチャッ

まゆり「トゥットゥルー☆ まゆしぃでーす☆」

ダル「お、噂をすればなんとやら。まゆ氏とぅっとぅるー」

まゆり「あれ、ダルくん一人? オカリンも紅莉栖ちゃんも今日は居ないの?」

ダル「牧瀬氏は、今日は何故か連絡が取れなくてさ。ラボにも来てないんだよね。オカリンはもう帰っちゃったお」

まゆり「連絡がないの? 紅莉栖ちゃん、心配だなぁ……」

ダル「明日も連絡が無いようなら、3人でホテル行こうお。日本の気候にやられて、夏風邪で伏せってる可能性もある」

まゆり「うん、そうだね! 明日は空けておくよ!」

まゆり「……あ、ダルくん、もしかしてそれ」

ダル「さっすが、犬並の嗅覚だなまゆ氏。お察しの通り、ジューシーからあげナンバーワ」

まゆり「もう食べてきちゃったのです……10袋……」

ダル「じゅ、10袋!?」

まゆり「今日は午後に体育の授業があって、おなかがペコペコで……ラボまで我慢できなくて、むしゃむしゃむしゃーって……」

ダル「そ、そっか……まぁ冷凍庫に入れとくから。まゆ氏のために買ってきたものだから、明日にでも食べてくれお」

まゆり「ゴメンねぇダルくん……せっかく買ってきてくれたのに……」

ダル「いいっていいって。ダメになっちゃうわけじゃないんだから」

ダル「……あれ、そういえばまゆ氏、制服……」

まゆり「ん? あ、ダルくんは知らなかったっけ。
    お母さんがね、ラボに行って帰りが遅くなる場合は、そこで着替えて私服で帰ってきなさいーって。
    夏の夜は物騒だから、制服姿で帰ってくるのはやめなさいって」

ダル「でも今の時点でもう私服じゃんか」

まゆり「えとね、高校はクーラーも扇風機もないからね。汗いっぱいかいちゃって、制服がビチャビチャになっちゃうの。
    だから、もうそこで私服に着替えちゃって、それから帰るんだ~」

ダル「……制服……ビチャビチャ、だと……!!?
   まゆ氏、可及的速やかに持ち物検査をせねばならなくなったお。さぁバッグをこちらへ」

まゆり「持ち物検査? ラボなのに、持ち物検査するの?」

ダル「もちろんだお! まゆ氏の知らんうちに危険物が仕込まれてるかもしれない。
   オカリンから留守を預かっている以上、念には念を入れなければならんのです!」

まゆり「そうなんだぁ~。じゃあ仕方ないねぇ。はい♪」

ダル「うっひょお~~♪ アザーーーース!」

まゆり「?? ダルくんダルくん、どうして今ありがとうしたの?」

ダル「バッグ内に仕込まれた危険物を察知させてくれた神に感謝を述べたんだお!
   さぁ~て、開けるお~♪」

まゆり「ダルくんなんだか楽しそうだね~♪」

ダル「そりゃもちろんJKの制ふゲフンゲフンゴフン! す、少しばかり緊張感が足りなかったようだね。
   では、粛々と始めさせてもらうお」

まゆり「どうぞ~♪」

ジィィ……

ダル「ふおおお……」

ダル(JKのバッグの中! JKのバッグの中! 許されるなら顔突っ込んでクンカクンカしたいお!)

ダル(うーぱをあしらった筆箱ハケーン! シャーペンの持ち手の部分prprしてええええええええええええ!!」

ダル「いっぱいノートも入ってる……筆跡に沿って舌を這わせたい衝動を抑え切れんお……!」

ダル「んで真ん中にはぁ、ありますおー、せ☆い☆ふ☆く! セーラー服とスカートが綺麗に畳まれて入ってる!」

ダル「セ、セーラーの襟元をクンカprしたい! スカートの内側を余すことなく舐めしゃぶりたい!!」

ダル「そ、そそそして、ビショビショ制服が入っているということはぁ、その奥に、し、下着も……!?」

まゆり「……」

ダル「そろーっとそろーっと制服をどかしてぇ……」

まゆり「……」

ダル「……」

まゆり「……」

ダル「……」

まゆり「……」

ダル「……あ、の」

まゆり「……」

ダル「……まゆ氏? ……止めないの?」

まゆり「んー……?」

まゆり「どうしてぇ? 持ち物検査なんだよね?
    生徒のまゆしぃはダル先生の言うことにはちゃんと従わなきゃダメなのです♪」

ダル「や……ここ、学校じゃないし……まゆ氏が止めてくれないと、その……」

まゆり「……止めてくれないと?」

ダル「……洒落に、ならない、というか……」

まゆり「……」

まゆり「……もぅ、ダルくん」

まゆり「洒落でやってたの、今の……? ……まゆしぃは、悲しいのです……」

ダル「ぁ……ま、まゆ氏……」

まゆり「どうして怯えた顔してるの、ダルくん? まゆしぃの気持ちは知ってるでしょ?」

ダル「あ……いや、その……」

まゆり「いつになったらお返事くれるの? まゆしぃ、ずっと待ってるんだよ?」

ダル「……」

まゆり「嫌いならそう言ってほしい。諦めがつくもの。
    でもダルくん、いつまでも何も言ってくれないから、まゆしぃはこんなことばかりしちゃうのです」

ダル「まゆ、氏……」

まゆり「……えへへ、この雰囲気になるといつも、ダルくんの積極さってどこかへ飛んでいっちゃうよね」

まゆり「……んの唇、もらっちゃお……」

ダル「……まゆ氏のことは、好きだけど……でも、ダメだ!!」

グイッ!

まゆり「ッ! ……また、それ? ダルくんズルいよ、その言い方、ズルいよ……!」

ダル「……」

まゆり「好きだけどダメってなに……!? いつも聞いてるのに、どうして教えてくれないの……?」

ダル「……まゆ氏は……」

まゆり「……なに?」

ダル「まゆ氏は、オカリンがまだ好きなんだよ!!」

まゆり「……へ……?」

まゆり「何言ってるのダルくん……まゆしぃは、ダルくんが好きで」

ダル「嘘だお! まゆ氏は自分の本当の気持ちに気付いてないんだ!」

まゆり「どうしてそんなこと言うの……違うよダルくん、まゆしぃは」

ダル「違わない……まゆ氏の瞳の真ん中には、まだオカリンが居る」

ダル「僕を見つめていても、そこに僕は映ってない!」

ダル「……い、一番最初、まゆ氏が今みたく僕に迫ってきたとき、目をつぶって、小声でなんて言ったと思う!?」

ダル「『オカリン……』って言ったんだよ、まゆ氏!」

まゆり「……うそ……だよ、そん、なの……」

ダル「嘘だと思う? ……さっきキスしようとした時だって、『ん』って語尾だけはハッキリ聞こえたけど、前半は消えてた」

ダル「あれも、オカリンって言ってたんだろ!?」

まゆり「……ぁ……あぁ……」

ダル「まゆ氏は……本当は僕のことなんてどうとも思ってない……」

ダル「オカリンが好きで好きで、でもオカリンは牧瀬氏を選んだから。
   表面上は2人を祝福しても、蓋をされた気持ちは捻れに捻れて、結果まゆ氏は僕をオカリンと思いこむことにしたんだ」

ダル「オカリンに一番近いところにいる男、ただそれだけの理由で、君は、好きでもない僕を選んだんだよ!」

まゆり「……ちがう、よ……ちが、ぅ…………」

ダル「前から言おうと思ってたお……」

ダル「でも、言ったら、まゆ氏がほんとの気持ちに気付いたら、
   まゆ氏が……壊れちゃうかもしれないって……そう思ってたんだ」

まゆり「……ぅぅ……ぅぅう……」

ダル「……ごめん。言っちゃってごめん。まゆ氏も、もうやめよう?」

ダル「僕を好きだなんて思い込んで、自分を傷つける必要ないよ。近づけば近づくほど分かるでしょ?
   僕はオカリンにはなれない。代わりにはなれないんだ」

まゆり「…………」

ダル「僕もまゆ氏は好きだけど、でもオカリンを重ねられてることが分かってて、気持ちに答えることは出来ない」

ダル「……ごめん、まゆ氏……」

まゆり「……違うよ……」

ダル「……まゆ氏! まだ分からな」

まゆり「違うよダルくん! まゆしぃはね、本当にダルくんも好きなんだよ!」

ダル「え……」

まゆり「さっきだってね! ちゃんと『ダルくん』って言ったよ!? ダルくんの名前をちゃんと呼んだ!」

まゆり「……でもね、紅莉栖ちゃんの隣にいるオカリンを見ていて、心がしくしく痛むのもまた本当なの……」

まゆり「まゆしぃ、いやな女だよね。オカリンも、ダルくんも、どっちも好きだなんて……」

まゆり「最初はダルくんの言ったとおり、ダルくんを通してオカリンを見ていたんだと思う……」

まゆり「でもね、そうしてるうちに、どんどんダルくんが大きくなっていったんだよ……」

まゆり「今ではもう、オカリンとダルくん、2人の男の人が同じだけきらきらしてる……」

まゆり「……許されるなら……」

フワッ……

ダル「っ……」

まゆり「お願いダルくん……キスして……まゆしぃをぐちゃぐちゃにして……」

まゆり「オカリンを忘れてしまうくらい、ぐちゃぐちゃに……!」

ダル「……まゆ氏……」

ギュッ……

まゆり「あ……」

ダル「……さっきの持ち物検査での僕の言葉、聞いてたよな? あんぐらいのこと、やるぞ僕は」

まゆり「うん……」

ダル「まゆ氏、ほんとにぐちゃぐちゃにしちゃうぞ。
オカリンとして見られてたイライラの分、まゆ氏に全部ぶつけるぞ」

まゆり「うん……」

ダル「……いいんだな!? 僕の愛は重いぞ!?」

まゆり「うん……うん……! まゆしぃを、こわしてぇ……!」

ダル「……言ったな! まゆ氏……ッ!」

まゆり「ふあ……ッ!」

――――――
――――
――

後日、ラボ。

ダル「……」

岡部「……その様子だと、まゆりとは別れたようだな? ん? HAHAHA! なに、気に病むことはない!
   お前には、お前を心から好いてくれる人があと一人居るではn」

ダル「付き合ってるお。昨日も僕の部屋でいっぱいえっちした」

岡部「……え」

ダル「誰かさんを吹っ切ってから、どうにもえっちの虫に憑かれちゃったみたいだお、まゆ氏。
   まぁ僕も、今までのフラストレーション全部ぶつけてるからお互い様だけど」

岡部「……」

ダル「妊娠しちゃったらどうすっかな。オロすのも可哀想だ。まぁいいか、もう高3の夏だし。
   デキちゃったら僕も大学辞めて外国のセキュリティ関係の会社にでも入って……ってオカリン?
   電子レンジになんか改良加えて……携帯電話とヘッドセットくっつけて……いったい何を」

岡部「飛べよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉおおぉおぉっぉぉぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおおおッッ!!」

ドギュゥゥーーーン……

岡部(まま、ま、まゆりまで、てて、手籠めにされた、あああ、ああああ)

岡部(ダ、ダダ、ダルさんパない、ダルさんマジパない)

岡部(どど、どうしよう、どうしよう、どうしよう、3人とも攻略されちゃった)

岡部(……あいつの、あいつの手腕なら、まさか、紅莉栖も……?)

岡部(や、やめろ、考えるな、思い描くな!
   とにかく3人とも恋人が居ることにして、不本意でも由季に意識を向けさせるしかない)

岡部「お、おお、おい、ダ、ダル……――」

――――――
――――
――

ダル「はぁあー……フェイリスたんに……桐生氏に……まゆ氏……」

ダル「みんな可愛い顔してやることやってんだなぁ……」

ダル(……ていうか、まゆ氏は僕以外にもコナ掛けてたってことか?
   うぅ、僕の中でまゆ氏の株がストップ安……)

ダル「はぁー……阿万音氏か」










ダル「僕、あの子のことはどうとも思ってないんだよなぁ」

ダル「巨乳美人で性格ほわほわしててレイヤーで、逸材だとは思うけど、逸材でしかないっていうか」

ダル「どうも僕の琴線に触れないんだよなぁ……」

ダル「ていうかラボメンのレベルが高過ぎるのが問題なんだお。なんだおあの研究所。美女ばっか」

ダル「そんなとこに僕を呼んでくれたオカリンには、感謝してもしきれないお……」

ダル「……」

ダル「……オカリン、やけに僕と阿万音氏をくっつけたがってるんだよな」

ダル「真意は分からないけど、一応会うだけ会うか……」

ダル「……」 プルルル プルルル

ダル「……出ない。もう高校は終わってるはずだけど」

ダル「メールするかお」

ダル『阿万音氏。久しぶりに会わん?』

ダル「……」

ダル「……」

ダル「……」

ダル「……返信ないな。いつも桐生氏なみに特急なのに」

ダル「……」

ダル「……はぁ、もういいや」

ダル「荷物は持ってきたし、今日はもう帰るお……」








ダル「……ん? あれは……」

紅莉栖「……ぐすっ」

ダル「……牧瀬氏、どしたん」

紅莉栖「あっ……! ……ぅ、なんでもない……」グシグシ

ダル「ん、ハンカチ」

紅莉栖「あ、ありがと……これ、あんたの汗が大量に染み込んでる奴じゃないでしょうね」

ダル「染み込んでる奴が欲しいん?」

紅莉栖「っな、なわけないでしょこのHENTAI! ……これだから橋田は! もうちょっと普通に慰めるぐらい」

ダル「ふひひ、そうそう。調子出てきたな牧瀬氏」

紅莉栖「……む……」

ダル「ほいドクペ。キンッキンに冷えてるお」

紅莉栖「自販機なんだから当然でしょ。ありがと」

紅莉栖「……」ゴクッゴクッ

紅莉栖「……ぷはー! キクー!!」

ダル「親父かお……」

紅莉栖「親父言うな! 無意識に出た、この素晴らしい知的飲料への賛辞よ今のは!」

ダル「無意識とかますます親父じゃん……」

紅莉栖「うっさい!」

紅莉栖「ふあー、出した分飲んだし、これで元気百倍よ! ありがと橋田!」

ダル「どーも。
   出した分飲んだし、でいつもなら反応するところだけど、今の牧瀬氏からは親父臭しかしないので自重した」

紅莉栖「うるっさいわね! いつまでもメソメソしてたくないのよ!
    これでも切り替えの早さには定評があんの!」

ダル「メソメソはオカリンの前でだけですね分かります」

紅莉栖「そ、そんなわけあるか! そんなわけあるか! 大事なことだから(ry」

ダル「一瞬どもったので信憑性は露と消えたお。
   オカリンに、牧瀬氏がくすんくすん泣いてたから慰めてやれってメールしとこ」

紅莉栖「ちょ、おま、やめ」

ダル「送信っと」

紅莉栖「え、ほんとに送ったの!?」

ダル「え、うん」

紅莉栖「何を普通な顔してキョトンとしてんのよ!
    何してくれてんのアンタ!?」

ダル「だってー、牧瀬氏ぜったい自分からはオカリンに言わないで貯め込むっしょ?
   だからこうして逃げ道を潰しておいた次第」

紅莉栖「次第、じゃないっつーの! 淡々と言うな!
    だ、大体、どうして私が岡部に話さなきゃいけないのよ」

ダル「はぁー? 話したいのに話せないくせに何言ってんだおこのメリケン処女」

紅莉栖「往来で処女言うなバカ!!」

ダル「あいてててて……」

紅莉栖「次また迂闊なこと言ったら、今度は洋書を頭から生やすわよ……」

ダル「そ、そんな面白モヒカンは勘弁……」

紅莉栖「まったく! ……さっきのハンカチとドクペに免じて、岡部に話だけはしてあげるわよ」

ダル「免じなくてもしろお。むしろしろお」

紅莉栖「あーもー! するって言ってんのにコイツはー!」

ダル「君ら2人とも奥手なんだからさ、貯め込まないで相談する癖は付けとけって。マジで」

紅莉栖「ぐ、ぐぬぬ……マジ説教はリアクションに困るわ……」

紅莉栖「……あんた、私が泣いてた理由聞かないのね」

ダル「聞いて欲しいなら聞くお」

紅莉栖「……ううん、いい。岡部に話す」

ダル「それがいいお」

紅莉栖「……うん」






紅莉栖「ね、なんであんたって彼女いないの?」

ダル「な、なんだおいきなり」

紅莉栖「岡部が居なかったらさ、私あんたにクラッと来てたかもしんない」

ダル「そりゃ嬉しい申し出だお。牧瀬氏ってデブ専だったん?」

紅莉栖「自分で言うなよ……ていうか私は面食いじゃないし。顔で男は決めないわ」

ダル「オカリンはイケメンの部類に入ると思うけど。黙ってれば」

紅莉栖「私があいつを好きになったのは内面よ。偶然ちょいイケメンだっただけね。黙っていれば」

ダル「……あはは」

紅莉栖「……ふふ」

ダル「さっきの言葉、オカリンにもちゃんと言ってやれお」

紅莉栖「黙ってればイケメンって?」

ダル「はぐらかすなお。その前」

紅莉栖「……本人を前にすると、出てこないのよ。アンタ達がバカにするように、私、ツンデレだからっ」

ダル「んじゃ僕が伝えればぉk?」パカッ

紅莉栖「携帯を取り出すな! ……いつか私の口から、ちゃんと言うから」

ダル「そうしてくれお。出来れば早めに」パクン

紅莉栖「分かってる」

紅莉栖「由季さんのことはどう思ってるの?」

ダル「また僕の彼女話ぃ? 勘弁してくれおー」

紅莉栖「ふふん、色々説教してくれたからね、私からもしてやろうと思って」

ダル「うへー」

紅莉栖「うへーじゃない。で?」

ダル「でっていう?」

紅莉栖「由季さんをどう思ってるのよ」

ダル「どうとも思ってない」

紅莉栖「……これまた即答ね。ちょっと驚いたわ。
    由季さんが居る時は大体あんたら2人セットだから、少なからず好意は持ってると思ってた」

ダル「阿万音氏がまとわりついてくるだけだお」

紅莉栖「……普段リア充爆発リア充爆発言ってる男のセリフとは思えないわねー。
    ネット上では非リアアピールするリア充のコピペ思い出したわ」

ダル「そっちの2人セットは自他共に認めるバカップルだけどね」

紅莉栖「自は認めてない! そこは声高に叫ばせてもらうわ!」

ダル「自覚がないって罪だおー」ヤレヤレ

紅莉栖「くっ、この……油断するとすぐにペース持ってかれるわね……!」

紅莉栖「ここから私と岡部の話題禁止! 分かった!?」

ダル「えー。牧瀬氏とオカリンいじってた方が僕的にはおもしr」

紅莉栖「……」

ダル「洋書を振り上げないで欲しいお! 分かった、分かりました!」

紅莉栖「うむ、それでよろしい。
    ……由季さんどうとも思ってないって言ったけど、正直なところを聞きたいわ。
    あんた、彼女嫌ってるでしょ?」

ダル「……どうしてそう思うん?」

紅莉栖「その返答がもう答えみたいなもんだけど、そうね……」

紅莉栖「あんたは原則として女好き。ペットのようにくっついてくる女の子を邪険にするはずがない。
    なのにどうとも思ってない、と邪険にしてる。以上から由季さんを何らかの理由で嫌ってる。
    どう?」

ダル「……いくらでも反論できるけど……まぁいいお。
   たしかに僕は阿万音氏が好きじゃない」

紅莉栖「どうして? 今時珍しい素直で優しい人じゃない」

ダル「阿万音氏自身にはなんの落ち度もないお」

紅莉栖「どういうこと?」

ダル「……原因はオカリン」

紅莉栖「岡部……? どうしてここで岡部の名前が? アイツまさか由季さんに何か……?」

ダル「いやいや、勘違いしないでくれお」

ダル「オカリンは……理由は知らないけど、僕と阿万音氏をくっつけたがってんだよね」

紅莉栖「へぇ。いいじゃない。橋田に早く彼女作って欲しいって思ってるんじゃない? 男の友情ね」

ダル「……そんなレベルじゃないおアレは。まるで、僕が阿万音氏とくっつかないと、オカリンが困る、みたいな」

紅莉栖「なによそれ……橋田が由季さんと一緒にならないと、岡部に何か不都合があるの?
    親戚関係で何かあるとか? ……そんな感じじゃなさそうね」

ダル「うん、違う。もっと……何か僕らの得体の知れないもののためにオカリンは動いてる、そのために僕と阿万音氏を……って感じ。
   はっきり言って不気味だね。だから僕は阿万音氏にも心を許せないんだお」

紅莉栖「…………得体の知れないもの…………やはり世界線関係か」

ダル「せかい、え? なんだって?」

紅莉栖「ちょっと待ってて」プルルルル……

電話終了。

紅莉栖「……なるほどね」

ダル「で、オカリンなんだって?」

紅莉栖「あんた、世界線に関しては何も思い出してないのよね?」

ダル「……さっきもそんなこと言ってたけどそれなんなん? なんかの設定? 牧瀬氏も厨二病に目覚めたん?」

紅莉栖「違うわよ……違うけど、私は何も話さないわ」

ダル「へ……?」

紅莉栖「”なかったことにしてはならない”……私はそうは思わない。
    記憶や想いは時に呪いとなるわ。岡部はそこの自覚が希薄になってきてる。従うことは出来ないわね」

ダル「はー? なんなん呪いとか? RPG?」

紅莉栖「……と、いうわけで。あんたは地道に彼女を捜しなさい。
    私は由季さんとくっつけーなんて口酸っぱく言わないから」

ダル「お? え? ちょ、ぜんぜん話についていけないわけだが」

紅莉栖「ついてこれなくて結構。それじゃね橋田、ご忠告通り、岡部に慰めてもらいに行くわ」

ダル「……突然のデレに困惑を隠せないお……」

紅莉栖「あはは、ま、ほんとに気にしないで。大したことじゃないから。それじゃね!」







紅莉栖「……」プルルルル……

紅莉栖「……もしもし岡部?」

紅莉栖「アンタ、橋田に別世界線の話をするんじゃないわよ。もし言ったら開頭する価値もないと判断して即、殺す」

紅莉栖「……あんたバカか? 呆けたリアクションを取ることは許されないわ」

紅莉栖「他世界線記憶の保有者は私とアンタだけで十分なの。
    アンタが不用意に記憶を流布すれば、それだけまゆりの死と綯のラウンダーとしての記憶が喚起される危険性が高まるのよ」

紅莉栖「……」

紅莉栖「……ふざけんなって言ってんのよ!
    阿万音さん……鈴羽は私たちの仲間だけど、アンタその為に親友の気持ちをねじ曲げるつもり!?」

紅莉栖「鈴羽が居ない未来がイヤだからって、そうならないように誘導するのはどう考えても蛇の道でしょうが!
    橋田を種馬扱いするワケ!?」

紅莉栖「聞いてるの!? おい岡部! 返事しろ!」

紅莉栖「ッ……クソ、切られた! あの、ばか……!!」

岡部「……ぁああッ!」

ガシャァン!

岡部「紅莉栖……どういうつもりだよ……!
   鈴羽のことを思い出しているくせに、どうしてあんな冷たいことが言えるんだよ……!」

岡部「……ダルを種馬扱いしているのは確かかもしれない……。
   だが、たとえそうだとしても!
   α、βと辛い境遇に置かれていたアイツを、今度こそ大好きな家族と平和に過ごさせてやりたいだろうが!」

岡部「……どうして、分かってくれないんだ……」


『SG世界線の未来は、無限だ――』


岡部「……たとえダルと由季が一緒になっても、鈴羽が生まれない可能性は十分にある」

岡部「だが、ダルが由季以外と結ばれれば可能性はそれこそ0だ!」

岡部「ダルには世界線の話を聞かせてでも、たとえ由季を嫌っていても、なんとしても――」

岡部「……ん?」ヴーン ヴーン

岡部「ダルからメールか。なんだ?」

From:ダル

Subj:話は聞かせてもらったお!(キリッ

Text:牧瀬氏との会話、盗み聞いた。

   いくらか記憶を取り戻したお。

   その上で、あえて言おう!






   僕は阿万音氏と結ばれるつもりはない。

   子供に鈴羽と名付けるつもりもない。


岡部「……ッッ!!」

岡部「ダル…………ッ!!」プルルルル……

ダル「もしもー」

岡部「お前!! どういうつもりだ!!
   鈴羽のことを思い出しておきながら、その結論はいったいなんだ!!」

ダル「……はは、お前こそどういうつもりだよ。鈴羽の最後を見ておきながら、もう一度生まれ直させたいって?」

岡部「当然だろ! アイツは」

ダル「鈴羽は自分の戦場で立派に戦って、そして消えていったんだよ!
   鈴羽には鈴羽の人生があったんだ!
   未来に産まれる新しい命に、勝手に鈴羽を重ねるな! 鈴羽の命を、人生を侮辱するなよ!!」

岡部「……な……!」

ごめん! ちょっと席外す、保守お願いします!

ただ今戻りました、保守ありがとう!
もう残り少ないけど、続き投下します

岡部「……バタフライエフェクトにより、産まれる命は必ず俺たちのよく知る鈴羽となるんだ。断じて侮辱などではない!」

ダル「へぇー、β鈴羽にα鈴羽の記憶が喚起されなかったのに、そりゃどういう詭弁だお?」

岡部「ぐ……」

ダル「お前、神様にでもなったつもりか?」

岡部「神、だと……? そんな大層な存在になれたら、どれだけいいことか……」

ダル「ああ、言い方を変えようか? 今のお前が僕にしてること、SERNと一緒だお」

岡部「……ッッ!!」

ダル「自分に都合のいい未来のため、交配を強要する。どうみてもSERNです本当にありがとうございました。
   いいんじゃないかお?
   その自覚のなさ、正義ぶった口上、以前よりずっとマッドサイエンティストらしいよ」

岡部「……っ……」

ダル「……ふざけんじゃねーおオカリン。
   僕は自分の思う通りに生きるぞ。好きな人だって子供の名前だって自分で決める。
   それが消えていった由季と鈴羽への何よりのたむけだからな」

岡部「……だが……αとβ」

ダル「混同すんなって言ってんだよ!! アイツらはアイツらの生を精一杯生きた!!
   たしかに辛い境遇だったけど、それでも全力で生きて、戦ってたんだよ!
   それをお前、ここがちょっと平和な世界線だからって、僕の娘たちを勝手に不幸扱いすんなよ!!
   ぶっ殺すぞ!! ……お前……何様のつもりなんだよ……ちくしょう……!!」グスッ

岡部「……ぁ…………」

ダル「クソッ……怒鳴ってたらもうほとんど思い出しちゃったお……オカリンお前さ。
   呪われてるよ。世界線記憶に。
   いい加減、このたった一つしかない世界を生きろよな」

岡部「…………ぅ……」

ダル「切るぞ」

岡部「……あ、d」ブツッ

岡部「……」

岡部「紅莉栖も言ってたな」

岡部「呪われてる……か」

岡部「そう、なのかもな……」

岡部「……」

岡部(ダルを由季と関係させるため、俺はフェイリス、萌郁、まゆりたち3人の心まで弄んだ)

岡部(鈴羽だけでなく、3人をも侮辱したんだな)

岡部「……はは、はははは……」

ガチャッ

紅莉栖「すごい怒鳴り声だったわね。1階まで丸聞こえよ」

岡部「紅莉栖……」

紅莉栖「橋田に、アンタと私の会話聞かれてたみたいね……豚みたいな体型の癖して、とんだ狐よね……」

岡部「……」

紅莉栖「お父さん直々に説教をもらって、少しは頭が冷えたかしら? ちなみに私も橋田と全く同意見よ」

岡部「……俺は、呪われていたのかな」

紅莉栖「縛られていた、という方がより正しいかしらね」

紅莉栖「変にバタフライ・エフェクトやRSがあるから、アンタは人間自体は世界線を跨いでも繋がっていると思い込んでいたみたいね。
    それは絶対に違うわ。根本的には各世界線の各牧瀬紅莉栖は全員別人よ」

紅莉栖「パーソナリティーは似通っていても、紛れもなく別人。
    例えば、とある私が素晴らしい働きをしたとして、賞賛されるべきはその私だけよ。この私にその権利はない」

紅莉栖「……そうやって、考えるべきよ、岡部。あんたの心を守るために」

岡部「……守る……」

紅莉栖「消えていった無数の私、その記憶と想いは、あんたを苦しませるためにあるわけじゃない。
    あんたを、このただ一つの世界の未来に生かすためにあるのよ」

紅莉栖「鈴羽だってそう。自分のせいであんたが苦しんでるって知ったら、
    あの子、世界線を越えてでもあんたにそれは違うって言いに来るんじゃない?」

岡部「……ぅぅ……ぅぅううう……!」

紅莉栖「……ラクになんなさいよ、岡部。もう主人公であろうとしなくてもいいわ。
    あんたはあんた。ただの岡部倫太郎。……私の、大好きな人よ」

岡部「ううっ……!
   ああぁっぁ、ああぁっ…………ぁぁああああああぁぁっぁっっぁぁぁあっぁあああああああああああああ……!!」

――――――
――――
――

ダル「……、……」

ダル「ちょっと、言い過ぎたかな」

ダル「僕の恋を応援しようとしてくれてたのは、確かなんだもんな」

ダル「顔合わせ辛いけど、明日あたり謝っておくか……」

ダル「……ん?」ヴーン ヴーン


From:阿万音氏
Subj:久しぶりー!ノシ
Text:返信遅れてごめんね、充電忘れてて電源切れちゃってたよ!

   いやぁー、ダル君に久しぶりに会えると思うとね、もう居ても立ってもいられなくってさ、気付いたらもう秋葉原に着いちゃってました!><;
   へへへ、それじゃ、電気街口で待ってるねー!! Chu☆

ダル「……」

ダル「……なんで阿万音氏、こんなに僕のこと好いてくれてんだろう」

ダル(気になる気持ちはまだ全然ないけど……)

ダル「その理由だけは、聞いてみようかな」



――――――
――――
――

――――おわり

終わりだよ。みんなありがとうね。
これ以外にも下の2つ書いたから、おヒマなら読んで。


岡部「例えば俺が、助手を犯すとするだろう?」(乗っ取り)
岡部「やっぱり男2人だと気楽だな」ダル「禿同」

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