ルルーシュ「ひょっとしてお前」カレン「嫉妬してるの?」(52)

■ここまでのあらすじ ─────

無事蓬莱島に到着した黒の騎士団ご一行は、その晩に早速祝賀会を開く(発案:玉城)
宴にも出ず、いつもどおり自分の部屋に閉じこもってこの先の事に思案を巡らすゼロ……

しかし、恐るべき事態が待ち受けているとは知る由もなかったのであった───ッ!


ゼロ(全く……宴会場の騒ぎがここまで響いてきてるな……)
   (まあ、到着した日くらいは、連中に乱痴気騒ぎをさせておくか)
   (明日からは荷物整理で忙しくなるしな……)フウ…

   (さて、シュナイゼルがこれからどう出てくるか……)
   (俺と同様、中華連邦の天子をキーマンに考えているだろうから、)
   (どちらが先に手を打てるかにかかっているが……)カタカタ

??「……!…………!!」…ダダダ

ゼロ(……なんだ?誰が廊下を走ってるんだ?)

カレン「……ゼロ、ゼロ!ちょっと開けて、今すぐ!」ドンドン!!

ゼロ「カレン、うるさいぞ!何事だ……!」テクテク、シュイーン


(ドアを開くとそこには、ひざに手を置き肩で息をしているカレンがいた)
(確か、C.C.と一緒に宴会に参加したはずだったが……)


カレン「ちょっと……ちょっとヤバいのよあいつ、マジで!」ハァハァ

ゼロ「一体どうしたんだ?」

カレン「あっ……あのピザ女ッ!」
    「酔っ払って、誰かれ構わずにギアスのことを……!」

ゼロ「───なんだとおッ!?」ギョッ!!

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


C.C.「うーいっ……お前も欲しいのかあ、ギアスが……うん?」

神楽耶「C.C.さま、だいぶ酔っていらっしゃるようですね?」ナデナデ

C.C.「んあー、酔っ払ってなんかないぞおー」ヒック
   「こらかぐやっ、お前はぁ……ギアスが欲しいのか欲しくないのか、ああーん?」

神楽耶「ギアスって何ですの?」キョトン

C.C.「ギアスかあー、ギアスはだなぁ……ひ・み・つ、だ!あはははは!」ヒックヒック

神楽耶「手がつけられませんわ……」ハァ…

C.C.「私とぉ……契約をするならだなぁ……お前にも、ギアスを授けてやろう……」
   「さあ契約をするのだーするのだー」グリグリ

神楽耶「いたいいたい、痛いですわ!こめかみをグリグリしないで下さいまし!」

南「おいC.C.、神楽耶さまに手を出すんじゃない!」

C.C.「おー?きたなぁ、ロリコン大魔王めー」ウイー

南「なっ!……だ、誰が……///」

C.C.「南ィ、お前は私と契約するかぁー?今ならもれなくギアスをやるぞおー」

南「あーはいはい、してやるから神楽耶さまから離れろ」

C.C.「よーし、よかろう!ぬりゃ!」ガシッ

南「手をつかむな……って……ぬああ!」
  「うお、目が回るううううう!」フラフラフラ…

C.C.「うううううー……ほい、契約成立!」ゲフゥ
   「ふいーっ……今日はこれにて店じまいだあー」バッタリ

南「なっ……何なんだ、今のは……オレも飲み過ぎたか?」クラクラ…
  「さあ神楽耶さま、C.C.が倒れてる間にこちらへ……」

神楽耶「……///」
    (えっ、今の感覚は何……?)

南「……ん?どうしました?」

神楽耶「……//////」
    (えっ、うそ……)
    (私、この、うだつの上がらない小太りの男に魅力を感じてる……?)

南(あれっ……神楽耶様が、オレにときめいている?なぜかそんな気が……)
  「大丈夫ですか?ひょっとして、神楽耶様もお酒を召されたのですか?」
  「いけませんよ、そういうことは?」キラキラッ

神楽耶「いえっ、だっ、大丈夫ですっ!お構いなく!//////」タタッ…

南「あれっ、神楽耶さま?どちらへ?」トコトコ…

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

カレン(……C.C.がいた!床で寝てるわ!)ボソボソ

ゼロ(よし、今のうちにこいつをこっそりとさらうぞ!)ボソボソ
   (俺が肩を持つからカレンは脚を抱えろ!最大戦速で俺の部屋まで撤退する!)
   (行く手を阻む者があれば輻射波動で蹴散らせッ!)

カレン(そんなモンないわよ!ほら、しっかり抱えた?いいわね?)
    (紅蓮、行きますっ!)ドドドドドド…

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


(俺たちは、部屋に運んできたC.C.を床に転がした)
(ピザ女はまだ、気持ちよさそうに寝ている……)


ルル「……きろ、起きろ!C.C.、こら!」ペシペシ

C.C.「たっ、いたい、いたい!」
   「何をする!……って、ルルーシュか、ふう……」

カレン「やっと目を覚ましたわ……ほっぺた、真っ赤になってるし……」

ルル「おい、シーツウッ!」
   「お前、自分がとんでもないことをしたのがわかってるのかッ!?」

C.C.「なーにがだぁ……ったく、小うるさい童貞だなぁー」
   「お前はわたしのおふくろかぁー?」ゲシゲシ

ルル「いだだ!こら、暴れるな!」
   「一体どれだけ飲んだんだ、こいつはッ!」

カレン(…………ルルーシュ、童貞だったんだ……)

ルル「何か言ったか、カレン!?」

カレン「言ってません!」

C.C.「うーむ、酒が醒めてきたぞ……酒はどこだあー?」

ルル「バカッ、これ以上飲むな!」
   「おい、お前、まさかギアスのことを誰かに話したのか!?」

C.C.「んー、話してはないかなぁ……?」ヒック

ルル「そうか……」ホッ

C.C.「話すのは面倒なので、与えてやったよ……」ゲフー

ルル「───────」ブツブツブツブツブツブツ

カレン(うわっ!なに、その口の動きの速さは!)
    (全身からすっごい殺意がほとばしってるし……!)タラリ…

ルル「…………C.C.?」
   「誰に与えたんだ?もしくは、何人に与えたんだ?」ニコ

C.C.「んー、さっき南にやったのが最後だなぁ……」
   「後は、誰にやったっけな……んー……酒を飲めば思い出せるかも」

ルル「酒はまた後にしとけ」ニコッ
   「思い出すんだ、今日という日が二度と戻らない日とならないうちに」

C.C.「んあー……わからんー」
   「酒だ、酒を持ってこいー、こら、この童貞めー」フンフン

ルル「そうか………………」…スック
   「……ふンッ!!」ドゴオ!!

C.C.「ぐおっ!?う、うえええええええ!」ゲロブシャーッ!!


(ルルーシュは、寝そべっているC.C.の腹を思い切り踏みつけた!)
(C.C.の口から、宴会で飲み食いしたモノ全てが、輝きをまき散らしながらSPLASH!)


C.C.「ぐお……おええー……」ゲロゲロ…

ルル「行くぞ、カレン!誰にギアスを与えたのか調べる!」カポッ

カレン「ちょっと……あれ、大丈夫なの?」

ゼロ「あれでも奴が死なんのが残念なくらいだッ!!」
   「少しは反省させんとならん、放っておけ!」カツカツ、シュイーン

C.C.「うええー……ルルーシュぅ……痛いよー……」グスングスン、ゲロゲロ

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


(俺たちは、施設の監視センターに入った)
(ここでは常時、施設内の監視カメラを録画している)

ゼロ「宴会場の録画を探すんだ!」
   「宴会が始まってから俺たちがC.C.を運び出すまでの間に、奴が誰と接触しているか、」
   「それで対象が限定できる!」

カレン「わかった!」


(俺たちは、手分けをして目的の録画を探す……)
(ほどなくそれを見つけると、早速チェックを始めた)
(ジョグダイアルをくるくると操作し、映像を前後に動かしながらC.C.の動きを追ってゆく)

ゼロ「ふむ……最初は、神楽耶の隣に座ってたのか」
   「あくびまでして、退屈そうだな……」

カレン「C.C.、今まで誘っても宴会に顔を出すことがなかったのにね」
    「なんで今日は出たんだろ?」

ゼロ「さあな……奴の気まぐれに理由を求めても無駄だ」
   「む?ここで、神楽耶が酒をすすめたのか?」

カレン「そうね……そういえば、すすめてたわね」

ゼロ「まず、ビールを一杯か……おいおい、こいつ一息で飲んだぞ?」

カレン「うわ!即座におかわりしてるし!」

ゼロ「次も注いで……またすぐ一息か!」
   「酒の飲み方を全く知らんのか!」

カレン「なんだか、薄い薄いって言ってたわね……」

ゼロ「C.C.の奴、こんなに酒がイケる奴だったのか……?」

(映像では、C.C.の傍に人が入れかわり立ちかわり来ては酒を注いでいた)
(C.C.はそれを拒みもせずに、注がれるままぐいぐいと飲んでいる)


ゼロ「……おい、なんだこいつは……?」

カレン「……1本2本どころじゃないわね、これ……」タラリ…

ゼロ「これだけ飲めば、さすがの不死の魔女でも酔っ払うだろう……」
   「人間なら、急性アルコール中毒で倒れてるな」

カレン「この場面ではたくさんの人と話してるけど……」

ゼロ「いや、それぞれ接触している時間が短い」
   「それに、C.C.の近くに行った時と離れる時で、そぶりの変化もない」

カレン「なるほど……そう見ればいいのね」

(やがて、C.C.は酔いが回ってきたのか、頭がふらふらとし始めた)
(神楽耶と何事か話しては大笑いしているようだ)


ゼロ「ふむ……奴は笑い上戸か」

カレン「それ、今は関係ないんじゃ?」

ゼロ「情報は全部記憶しておく、いずれ何かの役に立つかもしれんからな」

カレン「あっそ……」
    (C.C.が笑い上戸だからって、何の役に立つのよ……)


(と、突然C.C.が神楽耶の傍を離れた)
(ふらふらとした足取りで、人々の間を縫って歩いている)


ゼロ「ここからか……!」
   「なるほど、すっかりいい気になって、自分から……」ギリッ…

カレン「まず最初は……」

(……C.C.は、玉城の背中に張り付いた)
(驚いた玉城に何か言い、その頭をぺしぺしと叩いている)
(玉城は、C.C.の変化によほど驚いているのか、珍しく苦笑いをしているだけだ)


ゼロ「ふむ、まずは玉城か……想定通りだ」

カレン「あんた、そんなの想定できてたの!?」

ゼロ「一番気安い奴にまずは行くものだろう」
   「なんだかんだ言って、奴は玉城とは気兼ねなく話せるようだからな」

カレン「ふーん……」


(C.C.は、ひとしきり玉城と話した後、またふらふらと移動しだす)
(玉城はC.C.の後ろ姿をちらりと見ると、また他の連中と話し始めた)


ゼロ「玉城は、シロっぽいな……」

カレン「玉城さんがギアス保持者になってたら、最悪の状況になりそうだったよね……」

ゼロ「……同意する」

(次にC.C.が寄っていったのは、ラクシャータだった)
(ほろ酔い加減といった風に、煙管をゆったりとふかしていた彼女は、近づいたC.C.に会釈する)
(普段と違い、にこにこと笑っているC.C.に、彼女も興味をひかれたようだ)


ゼロ「次はラクシャータか……」
   「専用機が欲しいとか言ってたからな、そのことかもしれん」

カレン「彼女も笑いながら話してるわね……あ、手を握った」

ゼロ「!!」


(俺は、その瞬間からのラクシャータの反応を凝視する)
(しかし、特に目立ったこともなく、二人はそのまま手を離した)


カレン「また、どっかに行くわね……」

ゼロ「お願いの意味での、握手か……」
   「ふむ、彼女もシロだな」

(次にC.C.が向かった先は……藤堂!)


ゼロ「なにいッ!?」

カレン「え?そんなに意外なの?」

ゼロ「奴と藤堂はさほどの接点がない……扇よりも先に向かうとは!?」


(千葉たちの談笑に混ざり、かすかに微笑みながら話を聞いていた風の藤堂に、)
(C.C.は躊躇なく話しかけたようだ)
(俺と同様、藤堂も驚いた表情をしている……まあ彼の場合は、すっかり酔っ払ったC.C.という)
(滅多に見ることのないモノを見たからであろうが……)


ゼロ「ふうむ……何を話してるのか……」

カレン「藤堂さんは、いつもの調子だね……」

ゼロ「しかし、信じられんな……藤堂に寄りかかる、絡み酒のC.C.という絵ヅラ……」
   「一生に一度見れるかどうかだろうな」

カレン「別に、何の有難みもない場面だけどね……」

(藤堂にべったりのC.C.に、千葉はややイラついているようだ)
(しきりに手を振り、藤堂から離れろというそぶりをしている)
(何事かをいい争っている風だったC.C.は、突然藤堂の手を握った)
(彼女のいきなりの行為に、驚いた様子の藤堂……)


ゼロ「……いや、違うぞ……?」

カレン「ん?……あれ?」

ゼロ「……奴は、"どこも見ていない"ぞ……!」

カレン「……」


(C.C.が手を離しても、藤堂はやや呆然とした風であった)
(己の手を握ったり開いたりしながら、それを見つめている)
(彼女は何事かを藤堂の耳にささやき、笑いながら後にした)

ゼロ「……藤堂は、クロだ」

カレン「藤堂さんが……今ので!?」

ゼロ「ああ、間違いない」
   「今ので奴は、ギアス保持者になった」

カレン「はぁ……やっぱ、いたのね……」

ゼロ「この調子だと、まだいる可能性が高い」
   「どんどん続きを見ていくぞ」

カレン「うん……!」


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


(……録画でわかった限りでの、ギアス保持疑惑者は、藤堂鏡志郎、それに扇要……)
(あと、C.C.が言っていた南の件も映像で確認できた、計3名だ)

(宴が終わり、皆が落ちついた頃を見計らって、俺はその3名に呼び出しをかけた)
(俺の部屋はC.C.の盛大なSPLASHの匂いで使えないので、別の部屋を使う)
(カレンには、今のうちにC.C.と一緒に掃除しておくよう指示を下した)

ゼロ「……さて、こうして君たちを呼び出したのは他でもない」
   「君たちが……先ほど、とある重大な問題を抱えたからだ」

南「先ほど……?」

扇「問題?……なんだそれは?」


(俺の言葉に、さっぱり要領を得ない風の南、そして扇……)
(だが、自分の"力"について間違いなく自覚はあるはずであり、"問題"でピンと来るはず)


ゼロ(俺に黙っているつもりか、この二人は……?)

藤堂「私は、大体想像はついている……C.C.のことだな?」

ゼロ「ほう、さすがは藤堂……即座に理解できたか?」

藤堂「逆に聞こう、君もなのか?」

ゼロ「……ああ、そうだ」
   「俺の"力"については、後で述べる」

藤堂「ふむ……」

ゼロ「……その、C.C.から得た"力"について、先に説明をしておく」
   「"力"は、使いすぎるといずれは暴走し……制御不能になる」

南「ええっ!?」

ゼロ「…………君も"力"の自覚があるんじゃないか、南……」

南「あっ、え?ええっ?ああ……はい、そうです」

扇「……」

藤堂「暴走をした場合、どうなるんだ?」

ゼロ「それは、その能力による」
   「俺が知っている限りでは、例えば読心術の能力を持っていた者は、」
   「最終的には他人の心の声を遮断できなくなって気が狂った」

南「うへえ……」

扇「……」

ゼロ「そして、その能力は捨てることができない」
   「一生それと付き合っていかねばならん」

藤堂「ふむ……」
   「私は、早々に暴走する可能性があるようだ」

ゼロ「何だと!?」
   「……藤堂、君はどんな"力"を得た?」

藤堂「動きが、止まるほどの遅さで見える能力だ……」

扇「……!」

南「じゃ、今も、そういう風に……?」

藤堂「いや、意識しないとそう見えない」
   「意識すれば、全ての動きが……」


(そう呟いた瞬間、藤堂の左目にあの紋章が浮かび上がった……!)
(俺は思わず、うめき声を上げる)


ゼロ「ぬう……!」

藤堂「……私自身が素早く動けるようになるわけではないが、」
   「1秒間を1000倍に引き伸ばしてみることができる能力のようだ」

ゼロ「……剣技の"見切り"か」

藤堂「ああ、白兵戦で役に立つ能力だな」

ゼロ「得られる"力"は、各人の才能や願望に左右される」
   「藤堂のそれは、まさしく君が望んだもののようだな」

藤堂「うむ……」

南「なんだ、いい能力じゃないですか」

藤堂「しかし、もしこれが暴走すれば……1000倍に引き伸ばされた世界を、」
   「私は永遠に見続けることになるのだろう……確実に気が狂う」
   「そうなったら、常時目を閉じているしかない」

南「……そりゃダメですね……」

ゼロ「だが、制御により発動するならば、使用を控えることにより」
   「暴走を遅らせることが十分に可能だ」

藤堂「そうか、ならばここぞという時に使うようにすればよいのか」

ゼロ「南、君の能力は何だ?自覚はあるはずだな?」

南「……あのですね、」
  「でも、ゼロの前で言っていいのかなぁ……」

ゼロ「わけがわからないぞ、どんな能力だ?」

南「……神楽耶様が惚れてくれる能力、というのかなぁ……」デレー

ゼロ「は?」

扇「え?」

藤堂「なに?」

南「いやね、C.C.から"力"を得た途端、神楽耶様がオレを恥ずかしそうに見たんですよ」
  「不思議に思って聞こうとすると、顔を真っ赤にして逃げちゃうし……」
  「なんかこう、あっ……こういう能力なんだって……」デヘヘー
  「いや、もちろん神楽耶様を狙ってたわけじゃないですよ、ゼロ?」

ゼロ「……そんなピンポイントな能力、聞いたことがないな……」

扇「……ゼロ、違う、そうじゃないぞ……南は、ロリコンだ」

南「うわっ!扇、おまえやめろって!」アタフタ!!

ゼロ「ロリコン……ふむ、それが?」

藤堂「幼女を惚れさせてしまう能力か……」ハァ…

南「ちょっと、藤堂さん!?直球過ぎますよ!」

藤堂「他に表現しようがないだろう」

ゼロ「……君の配置換えを検討せざるを得ないな、南……」

南「えっ!?ゼロ、そんな?」
  「いや大丈夫ですよ、神楽耶様に手を出したりしないですから!!」

ゼロ「そうじゃない、君のはどうやら、常時能力が発揮されているタイプだ」
   「つまり、意思による"力"の制御で最終的な暴走を遅らせるとかは全くできない」

南「え、そうなの!?」

ゼロ「だからおそらく、君が最も早く、能力の暴走が始まる」
   「推測だが、君に近づく幼女全てが発情するようになる可能性があるな」

南「…………マジで?」ゴクッ…

ゼロ「何を喜んでいるんだ?」
   「そんな能力の保持者が黒の騎士団にいるとわかってみろ、」
   「途端に、黒の騎士団が悪のロリコン組織扱いされてしまうだろうが!」

南「……」

ゼロ「それに、うっかり街に出てみろ、君はたちまちわいせつ容疑で逮捕されるぞ」
   「南……君はとりあえず、年配の者ばかりがいる部署に配置換えをする」
   「一般的には、資料室と呼ばれる部署だな」
   「そこならあるいは、能力の発現が抑えられるかもしれん」

南「ええっ!?マジですか?そんな……」ガクッ…


(本当は、いま南の瞳に紋章は浮かび上がっていないので、常時発動型ではない)
(おそらく、対象の接近により自動発動するタイプだ……)
(つまり、周囲を成人で固めておけば、ロリコンギアスの発動は免れるだろう)

ゼロ「さて、扇……君はどんな能力を得たのだ?」


(俺は、先ほどから黙りこくっている扇に話を振った)
(実のところ、藤堂の能力も南のそれも、聞いてそう驚きはなかった)
(彼らなら、そういう能力もさもありなんと思っていたからだ……)
(しかし、扇のそれは、見当がつかない)


扇「……ゼロ、どんな能力を得たのか、必ず言わなくてはならないのか?」

藤堂「!?」

南「え?」

ゼロ「……状況がここに至っては、この場で言う方が望ましい」
   「勿論、私も君たちに能力を明かそう」

扇「今までその能力を明かして来なかった君が……本当に明かすのか?」

ゼロ「……扇、今回の件は、完全にハプニングなんだ」
   「通常はC.C.も、見境なしには与えない……というと語弊があるが、奴なりの基準で」
   「"力"を与える相手を選んでいるらしい」

   「だから私は、私の"力"については墓の中まで持って行く秘密にするつもりだった」
   「……奴が泥酔して、調子に乗ることがなければな……」

藤堂「ふむ……」

南「じゃあ俺は、ラッキー、ってことなのか……な……?」

ゼロ「制御できなければ確実にアンラッキーな人生を歩むことになるぞ」

南「ははあ……」

扇「……つまり?」

ゼロ「やむを得ないので、"ギアス紳士同盟"をここで結ぶことにする」
   「C.C.もじきに正気に戻るだろうから、ギアス……この"力"を持つ者は我々だけに」
   「限られることになる……互いの能力については、絶対に他言無用だ」

扇「なるほど……わかった……」ハァッ…


(扇は、なぜか深くため息をつき、うつむいた)
(安堵のそれか、それとも諦めなのか……?)


扇「……正直、君らの能力が羨ましいよ……」

ゼロ「どういう意味だ?」

藤堂「?」

扇「オレの能力は……これだ……」


(そう言って顔を上げた瞬間……俺たちは絶句した)
(扇の顔が……ブリタニア人の顔立ちになっているッ!?)


南「扇いっ!?」

藤堂「なにいッ!」

ゼロ「お……扇、それは……?」

扇「顔に違和感を感じ、鏡を見たら……」
  「わからない……なんで、こんな能力なのか……」

ゼロ「……いや、君にはわかっているんだろう?」

扇「……」プルプル…


(顔を真っ赤にしてうつむいている扇……)
(どうやら、ブリタニア人になりたいという欲求、そう望むよほど強い理由があるのか)
(だが、そのことは知られたくないようだ……後で、自分で調べてみるか)


ゼロ「……自分の意思で顔つきを変えられるのなら、それも立派な能力だ」
   「君のそのギアス、あるいは変装での潜入などでも役に立つかもしれんな」

扇「そうだな……」


(扇は、この上なく寂しそうな顔つきで、自嘲気味な笑いを"作った")
(様々なギアスがあるものだ……)

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


藤堂「ゼロよ……君のギアスは、何だ?」


(告白タイムも、ついに俺の番が来た……藤堂は、おもむろに俺の方を向き尋ねる)
(扇や南も、興味津々といった表情で俺の言葉を待っている……)
(俺は、ひと呼吸を置いて答えた)


ゼロ「……私のギアスは……"絶対遵守"だ」

扇「絶対遵守?」

ゼロ「ギアスによる私の命令は、誰も拒むことができない」
   「どんな命令であろうとも、命令された者はそれを実行しようとする」
   「例えば、そう……自ら死ぬように命令されても、だ」

南「……マジかよ……」

扇「君はこれまでも、その能力を……?」

ゼロ「重要な場面では活用してきた」

藤堂「……ふむ……納得できるな」

ゼロ「藤堂、それはどういう意味だ?」


(俺は一瞬、焦りを覚えた)
(藤堂であれば、俺のギアスを聞けばユーフェミアの件に思い至る可能性が)
(わずかでもあることに思い至るべきであった……その意味なのか!?)

(だが幸いにして、そうではなかったようだ)


藤堂「君の有能さは、ギアスによっても保証されたものであったか、という意味だ」
   「あるいは……我々にも、その"力"を……?」

ゼロ「いや、君たち仲間には使っていない」
   「君たちは、俺を信じてついてきてくれているのだから必要ないだろう?」

扇「……これからも、と思っていいのか?」

ゼロ「互いに、裏切らない限り……」
   「この、"ギアス紳士同盟"を裏切ろうとしない限り、な」


(その言葉に、扇は信頼に満ちた表情を"作ってみせ"、藤堂はこくこくと頷く)
(南は……何も考えてないようだ)


ゼロ(全く……C.C.のおかげでこんな無用な秘密同盟を作るはめに陥るとは……)
   (戻ってもまだ酔いがさめてなければ、水風呂に1時間沈めてやるからな……!)

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


C.C.「うう……ルルーシュ、まだ怒ってるかな……」グスングスン

カレン「ほら、掃除を手伝ってあげてるんだし、」
    「もう泣きやみなさいよ……まったく……」フキフキ

C.C.「だって、ルルーシュに踏まれたところが……まだ痛いんだ……」グスグス

カレン「自業自得よ……」ハァ…
    「もうすぐ戻ってくるから、ちゃんと謝りなさいよ?」

C.C.「うん、そうする……」スンスン


プシュ、シュイーン!


ゼロ「ふう……」カツカツ

カレン「あ、ルルーシュ!」

C.C.「ううう……ルルーシュうぅ、悪かったあー!」ダダッ…ギュッ!!

ゼロ「C.C.……正気に戻ったのか?」

C.C.「もう酒は飲まない、悪かったから……許してくれー……」グスングスン


(C.C.は、先ほどまでの酒乱ぶりが、嘘のようにおさまっていた)
(俺も、今まで抱いていた怒りがだいぶ解消されていたこともあり、多少の反省の言葉を呟く)


ゼロ「……いや、俺も悪かった、怒りに任せてひどいことをした……」
   「しかし、いつもは宴会に参加することのなかったお前が、どうして今日は……」

C.C.「ここ(蓬莱島)に日本を作ったことで、ひとつの区切りがついたじゃないか……」
   「今日くらいは、お前と一緒に宴会に出るのも悪くないと思ったんだよ……」

ゼロ「……俺を待ってたのか」

C.C.「そうだよ……お前も、後で来ると言ってたじゃないか……」グスグス

ゼロ「そうだな……済まなかったな……」ナデナデ
   「おなかは大丈夫なのか?」

C.C.「まだ痛い……ちょっと脾臓が破裂してるかもしれない……」シクシク

ゼロ「じゃあ、そこのベッドであったかくして寝てろ」

C.C.「うん……済まなかった……グスッ……」テクテク


(二人が掃除をしてくれたおかげで床はきれいになっていたが、SPLASHの匂いが)
(まだ部屋中に充満している……俺は空調のスイッチを入れ、ソファに腰を落とした)


カレン「……で、彼らとは話がついたんだ?」

ゼロ「ああ……」カポッ

ルル「……とりあえず、俺を含めた4名のギアスについては、」
   「絶対に他言無用ということで決着した」

カレン「意外とすんなりと収まったのね?」

ルル「ああ、正直な話、俺以上に強力なギアスを手に入れた者はいなかったのでな」
   「あるいは俺のギアスで黙らせようかとも思っていたが、そうする必要すらなかった」

カレン「へえ……どんな能力だったの?」

ルル「まあ、彼ららしい能力だ……扇だけは、ちょっと意外だったがな」
   「悪いが、内容については君にも話せない」

カレン「ふーん、まあいいけど……ともかく、これで解決ね?」
    「到着早々、疲れたわ……」

ルル「うむ……保持者が3人というごく少数で済んだのは幸いだった」

C.C.「……んー……3人だけだったかな……」ボソ

カレン「!?」

ルル「!!」ピクッ
   「何だと、C.C.?いま何と言った?」

C.C.「うー、思い出せそうなのに……ルルーシュ、誰と話したか言ってみてくれ」

カレン「……」

ルル「…………藤堂と、南と、扇だ」

カレン「ルルーシュ、わたしそろそろ寝なきゃいけないから……」ガバッ

C.C.「あれ、カレン?お前も……」

ルル「カレン、ちょっと待て」ガシッ

カレン「えっ、なに?何なの?」

ルル「C.C.、カレンとはどこで接触したんだ?」
   「映像ではそんな場面は全く……」

C.C.「いや、カレンにはトイレで……」

カレン「───!!」

ルル「───!?」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


カレン(……あら、C.C.、ご機嫌じゃない?)

C.C.(ああ、ご機嫌だぞー、ご機嫌うるわしきC.C.さまだぞー)フウラフウラ

カレン(うっわ、ひどい酔い方ね……ちょっと、酒臭い息をかけないでよ?)シッシッ

C.C.(そんな邪険にしていいのかぁー?)
   (お前にも、ギアスをやろうかと思ったんだがなぁー?)ニヤニヤ

カレン(……え?)
    (いやいや、わたしは別に、そんなの)

C.C.(おやー、そうかぁ?)
   (お前も、憧れのルルーシュと同じ土俵にたてるぞおー?)ニタァー

カレン(ちょっと……そういう冗談は嫌いなのよ)
    (ほんとにひどい酔っ払いね)

C.C.(冗談じゃないんだな、これがぁ……)ゲフー
   (お前もなかなかのタマだしなぁ……強力なギアスが手に入るんじゃないかなぁー?)ニマー

カレン(……べっ、別にギアスなんて……)
    (これまでもそんなの、頼らずに……)

C.C.(ルルーシュも、喜ぶかもなぁー……)
   (「なに、すごいギアスを得ただと?そうかカレン、でかした!」とかなぁ……ヒック)

カレン(……)

C.C.(どうするかなあ、カーレーンー?人生が変わるぞおー?)
   (私と契約してギアスを手にしてみるか……んー?)
   (今なら、たった1ステップで契約してやるぞおー?)ニマニマ

カレン(…………)ゴクッ

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


ルル「……で?」
   「俺が気がつかなければ黙ってるつもりだったのか?」

カレン「いやっ、そういう意味じゃないの!」
    「ただ、ルルーシュがこのことを聞けばびっくりするかなあ、って……」
    「…………やっぱ、褒めない……よね?」

ルル「少し前、俺がそこのピザ女の腹をけり上げたのは覚えているか?」

カレン「覚えてます……」ショボン

C.C.「ルルーシュ……もう蹴らないでくれ……」ウルウル

ルル「ああ、蹴らないさ……だからC.C.、もう黙ってろ」
   「で、カレン、お前の能力は何だ?」

カレン「あっ、あのね、驚かないでね……あと、怒らないでね?」

ルル「わかった、早く言え」

カレン(……私の能力は、これなの……)

ルル「これって……何がだ?」

カレン(だから……)

ルル「…………!?」ガタッ
   「カレン……それは、その能力は!?」

カレン(うん……テレパス、っていうの?)
    (ルルーシュの心の声も聞こえるんだ……)


(カレンが得た能力……それは、マオの悲惨な運命を俺に思い起こさせた)
(俺は思わず、C.C.を睨みつける)


ルル「C.C.ッ!」

C.C.「私じゃない、私のせいじゃないぞ……」

ルル「お前のせいだろうがあッ!」

C.C.「だから悪かったっていってるじゃないかあぁぁ!」グスングスン

カレン「待って!この能力、マオって子のとは違うみたいなのよ!」

ルル「何がどう違うんだ!」

カレン「わたし……ルルーシュの声しかわかんないの……」

ルル「……え?」

カレン「試してみないとわかんないけど、多分、ルルーシュとなら、」
    「どれだけ離れてても会話ができる能力っぽいの」

ルル「俺とだけ……?」
   「じゃ、他の人間の声は?」

カレン「まったく……」

ルル「……俺の心は、どこまで読めるんだ?」

カレン「全部、かな……?」

ルル(くそッ!なんてことだ……!よりによってカレンがそんな能力を……!)

カレン「……えっ?ギアスは重複してかけられない?だから防ぎようがない!?」
    「やっぱかけてたのあたしに!?えっ、あの時にかけてた!?」
    「どっちかつーと失敗例だった!?」

ルル「ぬああっ!カレン、ちょっと黙れッ!」

カレン「…………ね、だから、黙っていようかと思ったの……」ショボン
    「うん、そうだよね、わたしに秘密にしたいこと、あるよね……ごめん……」

ルル「……もう秘密にできないんだろう?」ハァ…
   「しかし、どうしてそんなギアスが君に備わったんだ?」

カレン「…………」

ルル(ずるいな、俺のことは全てわかるくせに、君は秘密を作るのか?)

カレン(……自分でもわかんないの……)

ルル(……そうか……まあいい、)
   (君までギアスを手に入れてしまったことは、他の者には黙っておこう……)
   (幸いにして、他の人間にはその"力"は知りようがないものだしな)

カレン(許してくれるの?)

ルル(なったものはしようがない、それが運命というなら、乗り越えることが責務だ)
   (それに、考えようによっては、その能力は戦術の幅を広げる可能性を秘めている)
   (カレン……こうなったら、俺の作戦にそのギアスを捧げてもらうぞ?)

カレン(……はいっ!)ニコッ


C.C.(……なるほど、カレンはそれが望みだったか)
   (黙ったまま、二人して微笑みあったりして……)

   (……やはり酒はよろしくないな……もう二度とたしなむまい)イテテ…

■エピローグ ─────

こうして、"ルルーシュと以心伝心できる力"を得た紅月カレン───

その後彼女はブリタニアに捕えられるが、いつもルルーシュと話せるのでぜんぜん平気だったり
裏表ありそうな彼が実はナナリーのためにシヤワセな世界を創りたい一心なことを知ったり
ルルーシュの悔しさの分も上乗せしてスザクをタコ殴りにしとくのだった……

残念ながらトウキョウ租界はでっかい穴ボコになってしまったが、ルルーシュのギアスを
バラすことで騎士団の結束にヒビを入れ、ルルーシュを追い詰めてやろうというシュナイゼルの
策略も、「それもう知ってるし」の藤堂や扇の一言で水泡に帰した上に嘘ついたことまでバレて
逆に捕えられ、実はナナリーは無事ですと白状せざるを得ない状況に!
C.C.の泥酔もなぜか役にたってしまったという結果に、ルルーシュも思わず苦笑した!

さらに、ブリタニアの宰相は1千万人を無慈悲に消し去った極悪人な上にホモらしいという
ことまで知れ渡り、各国からドン引きされるという事態にまで発展、やむを得ずシュナイゼルは
廃嫡となり、次期宰相となったオデュッセウスはその凡才ぶりを如何なく発揮、にも関わらず
シャルルはまるで盆栽のごとく遺跡いじりに没頭したため、ブリタニアは没落の一途をたどる
こととなったのであった───!

そして……


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


カレン(この能力、暴走したらどうなるのかと思ってたけど……)
    (私の考えてることもルルーシュに全部バレちゃうだけだったわね)

ルル(というか、互いの脳が完全にリンクしたような感じだな)
   (五感まで伝わってくるのは、正直つらいが……)

カレン(それはお互い様、言いっこなしよ)

ルル(ああ……わかってる)

C.C.「……なあお前たち、頼むから私の前でも口で会話してくれ」

ルル「ん?なぜだ?」

C.C.「何も喋らない二人が、同時にニヤけたりするのを見てるのは気分が悪い」

ルル「まあそうだろうが、」
カレン「慣れるとすごく楽でね、」
ルル「無意識のうちに」
カレン「頭の中で会話しちゃうのよね」

C.C.「だから、そのハモりがますます気分悪いんだ!やめてくれ!」

ルル「ひょっとしてお前、」
カレン「嫉妬してるの」キョトン
ルル「か?」ニヤッ

C.C.「私が嫉妬だと?はっ、何をふざけたことを……!」

ルル「フッ、まあそれはないか……お前が好きなのは、チーズくんだしな」

カレン「ほんと好きだよね、それ……」

C.C.(……くそ、私が自身の気持ちにもっと早く気付いていれば……!)

   (シャルルとマリアンヌは、黄昏の間でこいつとカレンにキチ親扱いされて、)
   (「ラグナロクとか、どぉーでもよいわぁー……」とか言って、すっかり)
   (しょげかえってるし……)

   (まあいいさ、こいつがコードさえ持てば、いずれは私のものになる……)
   (それまでは、カレンにいい思いをさせておいてやるか)

ルル(C.C.は、何をニヤニヤしているんだ?)

カレン(何か悪い事考えてんのよ、絶対)

ルル(ふむ……まあいい、放っておけ)ニコ

カレン(うん、そうね)ニコ

C.C.「あーっ、もうほんとに腹立つなあそれっ!」



   ────── 完ッ!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月15日 (金) 11:15:18   ID: awv-7wl5

既知の知識を自信満々に披露するシュナイゼルは扇と藤堂と南にとってはアホにしか見えないよな

2 :  SS好きの774さん   2013年12月31日 (火) 21:59:36   ID: PTbh-Nw7

シュナイゼルに同情するわw

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