エレン「親友の夢を見た」(160)

ホモ
______



843

シガンシナ区


アルミン「……ひっ……。うくっ。うっ、ぅ」グスッ

エレン「なぁ……。もう泣くなよ……。追い払ってやっただろ?あいつら尻尾巻いて逃げちまったよ」

アルミン「……うぅ……ごめん……」グスッ

エレン「なんだよ。お前が何かわりぃことしたわけじゃないだろ……」

アルミン「君に怪我をさせてしまった……。ほっぺが腫れてる……。唇から血も出てる」

エレン「こんなの唾つけときゃ治るよ。お前なんて泥だらけで俺よりひどい顔になってんぞ?髪はぐしゃぐしゃだし、足も擦りむいてるし……」

アルミン「……」ゴシゴシ

エレン「今日はなんで殴られたんだ?」


アルミン「……僕の父さんと母さんが、仕事でずっと家にいないことを馬鹿にするから……。人の役に立つことをしてるんだ、木の枝を振り回して街を歩いてるだけの君達とは違うんだって言ったら、町中追いかけ回された」

エレン「なんだそりゃ……!人の親をバカにするなんて最低だ!アルミン、お前は間違ってねぇよ」

アルミン「……」グスッ

エレン「だからもう泣くなって。今日は父さんが家にいるから、怪我の手当てをしてもらおうぜ」

アルミン「いいよ……。おじさんとおばさんに、合わせる顔がない……」

エレン「……」ゴシゴシ ゴシゴシ

アルミン「ぷ……」

エレン「……」サッサッ

アルミン「う……」

エレン「ほら、拭いたら綺麗になったぞ。髪も整えたし。恥ずかしくなんかねぇよ」

アルミン「……寄り道すると疲れるから、行かない」


エレン「オレがお前をおんぶしていけば平気だろ!」

アルミン「……自分で歩けるよ」

エレン「そうか?……でもやっぱり駄目だ。お前は足に怪我してんだから、歩いてる内に何かに触ってバイ菌が入ったら大変だろ」

アルミン「……」

エレン「いいからほら」グイッ

アルミン「わっ!エ、エレン!」

エレン「しっかり掴まってろよ」

アルミン「……」

エレン「……」プルプル

アルミン「やっぱり自分で歩くよ。重いだろ?」

エレン「ばっ。ばっか!重くなんてねぇし!羽みたいに軽くて困っちまうくらいだ!」ノッシノッシ

アルミン「……エレン」

エレン「んー?」

アルミン「もう、僕のこと助けなくていいよ」

エレン「は?」


アルミン「虐められてても、自分で何とかするから……」

エレン「そりゃ、オレに見て見ぬふりしろって言うのか?何とかなってたらオレだって何もしねぇよ」

アルミン「……」ギュッ

エレン「ぐ、ぐるし……」

ハンネス「おーっ?エレンとアルミンじゃねぇーかぁ?」

アルミン「ハンネスさん……」

エレン「酒くせぇ……。あんたまた仕事サボってサカモリしたのか」

ハンネス「人聞きの悪いことを言うな。オレは仲間との大事な会議を終えて、今はこうして街中をパトロールしてんだ。しかし酒盛りなんて言葉よく知ってんな。アルミンの教育の賜物だな!ハッハッハ」

アルミン「う゛……」

エレン「顔近付けんなよ!のんべえがうつる!」

ハンネス「お前らも大人になったらこうなるのさ」

エレン「ぜってぇならねぇ。オレは酒は飲まん」

ハンネス「で、なんだエレン……。お前はまた喧嘩したのか。アルミンも殴られたんだな?全くお前ら二人はよく飽きもせず……」


アルミン「あ……」

エレン「オレらが悪いみたいに言うなよ!悪いのはアルミンを殴るあいつらだろうが」

ハンネス「おいおい、別に責めてるんじゃねぇぞ。ただもっと穏便に事が運ぶようにしなさいよって話だ。すぐに暴力で返すんじゃなくて、歩み寄る姿勢を見せるとかな。殴ってきた方にも言い分はあるもんだ」

エレン「そんなことはあいつらに屈服するのと同じだろ」

ハンネス「ガキのくせにその頑固さはどうなんだ?エレンよ……。譲歩することを覚えねぇと、一生アルミンだけが友達だぞ」

エレン「充分だろ」

アルミン「そっ……そんなの駄目だよ」

エレン「なんでだよ」

ハンネス「嫁さんだって貰えねぇぞー?両親に孫を見せてやれなくてもいいのか?」


エレン「先の事なんてまだ分かんないだろ!」

ハンネス「ハッハッハ。その内アルミンと結婚するなんて言い出すんじゃねぇだろうな」

アルミン「えっ」

ハンネス「万が一そうなっても、俺だけはお前らを祝福してやるから安心しろ ドカッ イッテ!!」

アルミン「わっ!」ドサッ

エレン「てめぇ!!ハンネスさんまでアルミンのこと、そんな風にバカにしてんのかよ!アルミンは男だって言ってんだろ!」

ハンネス「お、おい。落ち着けよ。ちょっとした冗談だろうが。アルミン落ちちまったぞ」

エレン「この!このっ!!」ゲシッ ゲシッ

ハンネス「いてっ!いててて!わかった、分かった!俺が悪かった!」

エレン「もう二度と言うなよ!行こうぜアルミン!」

アルミン「う、うん」





アルミン「……エレン」

エレン「……」スタスタ

アルミン「エレン……」

エレン「……」スタスタ

アルミン「待って……。ちょっと……」

エレン「ん!」ピタッ

アルミン「……」ゼェゼェ

エレン「あ……悪い!お前が足怪我してたの忘れてた……!ほら、またおんぶしてやる」

アルミン「いいよ……。もうこの坂道越えれば、エレンの、家だし……」

エレン「でもほら」グイッ

アルミン「わっ」

エレン「ごめん。すげぇイライラしてたんだ……」ノッシノッシ

アルミン「エレン……。大人まで蹴っちゃダメだよ。僕なら嫌だと思ったら、ちゃんと自分で言い返せるから……」


エレン「……そうだな。明日ハンネスさんに謝るよ」

アルミン「うん」

エレン「いやでも腹立つ。アルミンは女と結婚するに決まってんのに」

アルミン「そうだね……。想像もつかないけど……。僕と結婚してくれる人なんているのかな」

エレン「いるだろ、一人くらいは」

アルミン「僕に合う人なんている?」

エレン「んー……。お前はおしゃべりだかんな。反対に無口で、黙って話し聞いてくれるような奴なんか、ピッタリなんじゃねぇか?」

アルミン「……エレンは黙ってるタイプじゃないのにね」

エレン「え?今、オレは関係ないだろ?」

アルミン「うん」

エレン「だよな」


844

アルミンの家


アルミン「……ミカサ?」

エレン「そう。アルミンも今度一緒に遊んでやってくれよ。あいつちょっと暗いから、面白い話とかしてくんねぇかな」

アルミン「うん。構わないよ」

エレン「……」

アルミン「会うのが楽しみだな」ニコ

エレン「そいつ今、一緒に住んでるんだけど……」

アルミン「……」

エレン「みんな噂してるだろ」

アルミン「そうだね。聞いたことあるよ」

エレン「それ、間違ってねぇんだ」

アルミン「……」


アルミン「……おじさんに怒られなかった?」

エレン「……あんなに怒鳴られたの、初めてだった」

アルミン「そりゃそうだよ……」

エレン「……」

アルミン「……僕は、エレンとまた遊べて嬉しいとしか、思ってないよ」

エレン「……」ジワッ

アルミン「おじいちゃん、午後から出かけるから、後でこっそり書斎に入ろうよ」

エレン「あ……あぁ!」ゴシゴシ

アルミン「エレンは外の世界を探検できたら、何がしたい?」

エレン「何がって……まず海に行くだろ?」

アルミン「うん」

エレン「それから……なんだろ?行ってみないと分かんねぇな。オレは見て騒いでるだけかもな。お前は記録をつけてそうだけど」

アルミン「僕は塩水で濃い味の料理を作るよ」

エレン「それ賛成!」


アルミン「塩の価値が今と変わってなかったら、売って旅の資金にできるよね」

エレン「そんなとこまで考えてんのか」

アルミン「うん。世界中を一緒に探検するには、お金が必要だなって、昨日の夜ずっと考えてたんだ」

エレン「オレ、昨日の夜は薪拾いの手伝いから逃げる方法を考えてた」

アルミン「あはは。エレンらしいや」

エレン「だってよ」

アルミン「本当に、一緒に行けたらいいね」

エレン「行けたらじゃなくて、行くんだ!オレは絶対にこの壁の中から出る。父さん母さんが反対したって、世間に冷たい目で見られたって知るかよ」

アルミン「エレン……」

エレン「お前だってそうだろ?オレと、一緒だよな」

アルミン「……うん!」


846

開拓地 馬小屋


アルミン「……」ブルブル

エレン「……」ブルブル

ミカサ「……」

エレン「……寒い」

アルミン「雪が止まないね……。明日にはきっと積もってるんだろうな。僕らが耕した土は意味があったのかな」

ミカサ「なくても、やれと言われたんだからやるしかない」

エレン「……」

アルミン「そうだね。ミカサの言う通りだ」

ミカサ「パンを食べて、また明日がんばろう」モグモグ

エレン「今日はこれ一食だな」モグモグ

アルミン「……奪還作戦で人が出払ってるとはいえ、食糧不足は相変わらずだね。この雪だし、次の物資が届くには時間がかかりそうだ」モグモグ


ミカサ「今日はどこで寝る?」

エレン「ここ以外にどっかあるのかよ」

アルミン「ここが一番暖かいよ。干し草を被って寝よう」

エレン「」バフッ

ミカサ「」モゾモゾ

アルミン「」モゾモゾ

ミカサ「……あったかい」

エレン「だな」

アルミン「間にいるエレンが一番あったかそうだね」




エレン「ん……」パチッ

ミカサ「…………」スヤスヤ

エレン「……?アルミンがいねぇ……。便所かな?」




エレン「……戻ってこねぇ」

ミカサ「…………」スヤスヤ

エレン「……」ムクッ


開拓地 外

アルミン「…………」

エレン「アルミン?」

アルミン「」ビクッ

エレン「夜中に何してんだ?まだ雪だって降ってんのに」

アルミン「エレン……」ゴシゴシ

エレン「お前雪だらけじゃねぇか。凍えて死んじまうぞ!?」サッサッ

アルミン「ごめん……。何でもないんだ」

エレン「何でもないってことないだろ」

アルミン「でも、本当に何でもないから。心配かけてごめん。戻って寝るよ」


エレン「……」





馬小屋


ミカサ「二人とも、どこ行ってたの」

エレン「起きてるし……」

ミカサ「今、起きた」

アルミン「トイレに行ってたんだけど、ちょっと長引いちゃって……」

エレン「アルミンお前、髪濡れてんぞ」サワッ

アルミン「すぐ乾くよ」

ミカサ「……エレン。アルミンと場所を交換して」モゾモゾ

アルミン「え?どうして?」

エレン「服も濡れてるし、一番あったかい真ん中にいた方が早く乾くだろ」モゾモゾ


アルミン「……ありがとう」モゾモゾ

ミカサ「おやすみなさい」

エレン「おー」ニギッ

アルミン「……?」

エレン「……」

アルミン「エレン……?手……」ヒソヒソ

エレン「……」

アルミン「エレンの手まで冷たくなっちゃうよ?」ヒソヒソ

エレン「……こうしたいんだから、いいだろ」ボソボソ

アルミン「こうしたいって……」

エレン「おじさんもおばさんも、ちゃんと帰ってくるよ」ボソボソ

アルミン「……」ジワッ

エレン「……心配すんなよ」ボソボソ

アルミン「…………うん」グスッ


847

アルミン「姿勢制御訓練、無事に終わってよかったね」

エレン「あぁ、最初はどうなることかと思って焦ったが……」

アルミン「ベルトが破損してたのに、一瞬でもバランスを取れたエレンはすごいよ!」

エレン「無我夢中でやったら出来たんだ。開拓地送りになるのだけはごめんだからな」

アルミン「そうだね。また土を耕したり、草むしりをするのは僕も嫌だよ」

エレン「……」

アルミン「訓練はきついけど、3食食べられるしベッドで寝れるし、開拓地と比べればここは極楽だよね」

エレン「……オレ」

アルミン「ん?」

エレン「……お前が訓練兵に志願するって言った時、正直驚いたよ。こう言うのもなんだが」

アルミン「……」


エレン「お前、体力ねぇし」

アルミン「体力は、後から付いてくると思ったんだよ。前に話しただろ?あんな奪還作戦の決行が許される現状を何とかしたいって……。それに……」

エレン「……」

アルミン「ここを卒業すれば……外の世界に近づける。そうだろ?エレン」

エレン「…………」

アルミン「いつか探検できたらいいなって」

エレン「そうだったか?」

アルミン「え?」

エレン「お前、筋肉痛に悩まされてたよな? ライナーの奴が言ってたんだけどさ。あれ、ストレッチで治すにもやり方があるらしいぜ。今度教えてもらえよ」

アルミン「そ、そっか」

エレン「な!」ポン

アルミン「……うん。そうするね」





宿舎

エレン「…………」ウーン

アルミン「なに、それ?今日出された課題?提出はまだ先だよね」

エレン「あぁ。でもオレ、考えんの得意じゃねぇからさ……。なるべく早い内に終わらせちまおうと思って」

アルミン「そっか。……なら僕もやろうかな」

エレン「お前、今日の授業で褒められてたな。昔から頭良かったもんな」

アルミン「いや……僕の考え方がたまたま教官の目に止まっただけのことだよ」

エレン「そんなことないだろ。周りの奴らだって、座学じゃお前を頼りにしてる。今日だって教室の前で囲まれてたじゃねぇか」

アルミン「ミーナとハンナとアニのこと?あれは……フランツのことを聞かれただけだから」


エレン「は?なんでフランツ?」

アルミン「さあ?普段何してるのか知りたかったみたいだけど……。僕がいつも一緒にいるのは君とミカサの二人だし、別の人に聞くよう答えたよ」

エレン「ふーん。……なぁ、アニもフランツのことを知りたがってたのか?」

アルミン「アニ?」

エレン「あいつ、いつも怖い顔でつまらなそうで他人に興味なさそうじゃん」

アルミン「怒られるよ……」

エレン「本人には言わねぇよ」

アルミン「アニはただ付き合わされてた感じだったけど……。一回も喋ってないし」

エレン「そうか」

アルミン「……気になるの?」

エレン「なにが?」

アルミン「何だと思う?」

エレン「……分からん」

アルミン「どこ?」


エレン「こんなに早くからお前に聞いちまってもいいのかな」

アルミン「……ここ、こうすれば解きやすいんじゃないかな」カリカリ

エレン「おぉ……!なるほど……」カリカリ

アルミン「この問いも、こっちの解き方がいいかも」 カリカリ

エレン「やっぱりお前、頭いいな」

アルミン「買いかぶりすぎだよ」

エレン「そんなことねぇ。技巧みたいに頭使う職に付けば、きっと皆がお前についてくるよ」

アルミン「……」

エレン「…………」カリカリ

アルミン「どちらかというと、それは嫌なんだ」

エレン「…………」ピタッ

アルミン「……」

エレン「勿体ねぇな」


849末

夜 宿舎


アルミン「エレン、外見た?」

エレン「見てねぇけど。……どうかしたのか?」

アルミン「雪が降ってるんだ。初雪だね。積もるほどではないみたいだけど」

エレン「どうりで寒い訳だよ」

アルミン「今年ももう終わるんだね……。来年の今頃は総合成績の順位が発表されてるよね。…… 首席はやっぱりミカサなのかな……」

エレン「……あいつな。教官の評価は確かに高いだろうさ。立体機動の動きもすげぇし、相変わらず馬鹿力だし。でも、あんなに強くなってどうすんだよ」

アルミン「君の力になりたいんだよ」

エレン「だから頼んでねぇよ。オレだって鍛えてるんだぞ?あなたは私が守るって訳分からん」

アルミン「それだけエレンが大事なんだよ。エレンだってそうでしょ?」

エレン「…………」

>>28訂正

誤 849末

正 848末


アルミン「エレンだって大事な人がいたら、相手が嫌がっても守りたいと思うよね?僕はそうだよ。守れる自信はないけど……」

エレン「……オレもそうかも」





アルミン「エレン、まだ起きてるよね」

エレン「あぁ」

アルミン「……僕……雪を見るとさ、開拓地で3人並んで寝てたことを思い出すんだ」

エレン「懐かしいな。開拓地にいたこと自体はいい思い出じゃねぇけど、寒い日に並んで寝ると温かかったよな」

アルミン「また一緒に寝る?」

エレン「え?毛布で凌げるからいいよ」

アルミン「……」ニギッ

エレン「……?」

アルミン「……エレン。今日みたいに雪が降った夜に、こうして手を握って……僕を励ましてくれた事があったよね。あの時言えなかったけど……ありがとう……」ギュッ

エレン「……今更礼なんていいって」ポリポリ

アルミン「エレンは結構優しいよね」

エレン「やめろって」

アルミン「このまま寝てもいい?」

エレン「え?」

アルミン「…………言ってみただけ」

エレン「構わねぇよ」

アルミン「ほんと?」

エレン「オレが嘘ついたことあったか?」

アルミン「あったよ」

エレン「そうだった」






........


図書室


アルミン「……?」

エレン「何読んでんだ?」

アルミン「エレン」

エレン「絵本か?」

アルミン「たまにはいいかなと思って」

エレン「鳥が冒険する話か。よく読んでたよな。オレはお前の朗読を聞いてるだけだったけど」

アルミン「……エレンが覚えてるなんて意外だな」

エレン「そりゃ覚えてるだろ……」

アルミン「……そう」

エレン「変わんねぇよなアルミンは。子供の頃から本が好きで……三度の飯より本だもんな。飯が本でもいいんだろ?」


アルミン「エレンも相変わらず喧嘩っぱやいよね。三度の飯より喧嘩だろ?」

エレン「うるせーな」ゴツンッ

アルミン「あだっ!!」

エレン「……本当に変わんねぇ。前ほど泣かなくなったけど……顔もそのまんまだし……小せえし……頭でっかちなだけで弱いし……」グリグリ

アルミン「え……そこまで言う?その通りだけど……」

エレン「…………」グリグリ

アルミン「いたた……ちょっと。痛いよ」

エレン「……」


.......





849



ミカサ「エレン。最近のあなたはおかしい」

エレン「は?オレはどこもおかしくねぇよ」

ミカサ「目の下に隈が出来ている。欠伸が多い。黙っていたけれど、今日は目に余る……。寝れていないの?」

エレン「…………」

ミカサ「……」

エレン「変な夢を見んだよ。夜中に目が覚めちまうから眠れねぇし。……眠りたくねぇ」

ミカサ「いつから?」

エレン「雪が降ってた日あったろ」

ミカサ「夢は眠りが浅いと見る言うから……深く眠れる方法を一緒に探そう」

エレン「眠りたくねぇんだ」

ミカサ「え?」

エレン「眠ると必ず見るんだよ。目も瞑りたくねぇ」

ミカサ「……エレン」

エレン「……」

ミカサ「それではお手上げだ。私にだってどうにもできない。でも、寝れないと体に負担がかかる」

エレン「分かってる」

ミカサ「私で解決できないのなら、アルミンに聞くしかない」

エレン「もう聞いたよ」

ミカサ「……耳が赤い」

エレン「…………」




アルミン「同じ夢を何回も見てしまうの?それとも、全く別の夢を見るの?」

エレン「続きを見る」

アルミン「続きを……」

エレン「初めて見た日の夢から、どんどん続いていくんだよ……」

アルミン「そう……」

エレン「見ない方法ってねぇのかな?本気で困ってんだ」

アルミン「うーん……。因みに……どんな夢かは聞かない方がいい?」

エレン「……」

アルミン「夢って意味のないものもあれば、現実世界での願望や自分の状態が形になったものもあるらしいから」

エレン「え……」

アルミン「もし後者なら、何かできるかも」

エレン「……意味なんてねぇと思う」

アルミン「そうなの?でも話すだけ話してみない?楽になるかもしれないよ」

エレン「」……

エレン「……図書室」

アルミン「図書室?訓練所の?」

エレン「あぁ」

アルミン「それで?」

エレン「……しようと……」

アルミン「しよう……?」

エレン「オレの他にもう一人いて……最初は普通に話してた。でもなんか、おかしいっつーか」

アルミン「相手が?」

エレン「オレがおかしい」

アルミン「うーん……」

エレン「……誰もいねぇからって……しようとするんだ」

アルミン「しようと……」

エレン「そういうことを……」

アルミン「そういう……」

エレン「もういいだろ」


アルミン「な……何となく分かったよ。それは……言い辛いよね」

エレン「やっぱり話すんじゃなかったな」

アルミン「エレン……でもさ、僕にはそれの何がいけないのかよく分からないんだけど……」

エレン「え?」

アルミン「だ……だって、別に良くない?現実だったら色々問題があるかもしれないけどさ、夢なんだよ」

エレン「……」

アルミン「そんなに怖い顔すると眉間に皺ができちゃうよ」

エレン「……でも……でもさ……」

アルミン「いっそその……続きを見てしまった方が……スッキリ終われそうな気がするよ。気に病んでるから見てしまうのもあるんだろうし」

エレン「……」

アルミン「それにエレンが思い込んでるだけで、実際は相手に殴られて目が覚めて終わりかもしれないよ」






.......


図書室


アルミン「カッとなると頭突きするくせ、どうにかならない?」

エレン「誰彼構わずやってる訳じゃねぇしいいだろ」

アルミン「……僕が痛い思いをしてる」

エレン「アルミンは石頭だから大丈夫だって」ゴリゴリ

アルミン「ちょっちょっと……。もうっ。怒るよ」

エレン「……」

アルミン「……僕もう少しここで読んでるから、先に寮に戻ってていいよ」

エレン「……なんで」


アルミン「飽きたのかと思ったんだけど……違うの?」

エレン「……」

アルミン「……なら……顔を離してくれないかな。本が読めないよ」

エレン「もう少し」

アルミン「……」

エレン「……」

アルミン「あれ……?外、サシャが走ってる」

エレン「また芋でも盗んだんだろ。懲りねぇな」

アルミン「見なくていいの?」

エレン「見るもんでもないだろ……。どんな顔かなんて想像つくし」


.......




849

訓練中 山道


アルミン「も……もうらめら……歩けない……」ペタン

エレン「大丈夫か?」

サシャ「すごい汗ですね……」

アルミン「平気……。ごめん……後は山を下るだけなのに……坂道がきつかった……」ハァハァ

サシャ「お水!お水を!」ガボッ

アルミン「むぐっ!」ゴクゴク

サシャ「お芋は食べますか!?訓練前に盗ってきた蒸かし芋ならまだあります!」

エレン「……」

アルミン「……ぷはっ。二人とも、先に行っててくれないかな……。少し休んだら、僕も追いかけるから……」

エレン「そうか?」

サシャ「え?アルミンを置いてくなんてできませんよ。一緒に下りましょう?そうだ。ここでランチタイムにしましょう」


エレン「バカ。後でバレたらまた死ぬ直前まで走らされるぞ。アルミン。オレがお前を背負って一緒に下る」

アルミン「え?……いいよ。怪我してる訳じゃないんだから。本当に先に行っててくれて構わない」

エレン「迷ったり、それこそどっかで足踏み外して怪我でもしたらどうすんだよ」

アルミン「……」

エレン「いいからほら」

サシャ「エレンに遠慮することないです」

アルミン「い、いや。自分で歩かなきゃ、訓練している意味がないよ……」

エレン「……」

アルミン「ありがとう。気持ちだけで十分だから……」

エレン「なら肩を貸すよ」

アルミン「……」

エレン「立てるか?」

アルミン「…………うん」ムクッ

サシャ「私が先頭に立って、安全な道を確保しますね」 ニコッ

エレン「あぁ」


アルミン「ごめん……」

エレン「……」

アルミン「……エレン」

エレン「ん?」

アルミン「……うん、やっぱり。目の隈、綺麗になったね」

エレン「あ……あぁ。まぁな。お前の言う通りにしたら、何とかなったよ。あれから夢は見てねぇし」

アルミン「殴られて終わりだった?」

エレン「……うん」

アルミン「…………」

エレン「……」

サシャ「今日のスープにはお肉は入ってるんでしょうか?」

アルミン「……耳赤くない?」

エレン「き……気のせいだろ」







教室


エレン「……」

ミカサ「エレン……机で寝ちゃダメ」

エレン「眠たくねぇし」

ミカサ「どうかしたの?」

エレン「何でもねぇよ」

ミカサ「エレンの何でもねぇよ、は大体何かある」

エレン「……」

ミカサ「耳が赤い」

エレン「耳ばっかり見んなよ。ほっといてくれ」

ミカサ「……アルミンと喧嘩……」

エレン「…………」ピクッ


ミカサ「……したようには見えなかったけど、何かあったの?」

エレン「……」

ミカサ「…………」

エレン「何もない」

ミカサ「……話したくないなら話さなくていい」

エレン「……」

ミカサ「…………」

エレン「……罪悪感が……すげぇ……」

ミカサ「謝ればいいと思う」

エレン「何もしてねぇし……」

ミカサ「…………」




......


図書室

アルミン「……もう少し経ったよ」

エレン「もうちょっと」

アルミン「…………」

エレン「……」

アルミン「何か話があるなら聞くけど……?」

エレン「そんなんじゃない」

アルミン「……エレン」

エレン「…………夢……」

アルミン「え?」

エレン「なんだし」

アルミン「……」


エレン「……いいよな?…………そう言ったのはお前だよな」

アルミン「……僕、何か言ったっけ?夢の話?」

エレン「どうせ現実にはならねぇんだし……」

アルミン「……それって……あのさ……」

エレン「強くしねぇから……」ギュッ

アルミン「なに?……いたっ……痛いよ。ちょっ、ちょっと……エレン?……いっ……苦し……」

エレン「……」

アルミン「……あ……」ビクッ

........



849

夜中 宿舎


キイィ…バタン

エレン「…………」

アルミン「……あ、エレン。帰ってきたんだ」

エレン「!?」ガタッ

アルミン「えっ」

エレン「……何で起きてる」

アルミン「喉が乾いて目が覚めたんだ。ごめん……そんなに驚くと思わなかった。エレンはトイレ?」

エレン「……え?あぁ」

アルミン「水はいらない?」

エレン「……貰う」


アルミン「……エレンの手って大きいよね。僕もエレンくらいあると良かったな」

エレン「そうか?」

アルミン「うん。身長だって、君と同じくらい欲しい。昔は変わらなかったのにさ、今は見上げないといけない」

エレン「その内伸びるだろ。オレだって今年一気に伸びたようなもんだよ。でもミカサまで同じくらい伸びたのには、いつも納得いかねぇ……」

アルミン「そうだよね。ミカサに追い越されたのは僕もちょっと悔しいや」

エレン「……アニはチビだよな。怖い顔してんのに……」

アルミン「関係ないし……怒られるよ……」

エレン「聞かれてないしいいだろ。どうすりゃアイツに格闘技で勝てんのか、いつも考えてんだけどさ……実際に手合わせすると上手くいかねぇんだよな」

アルミン「……そう。アニの技術ってすごいよね。僕は数えるほどしか組んだ事ないけど……」

エレン「父親に教えて貰ったらしいぜ」

アルミン「……ねえ、エレンは雪山の訓練には参加するの?」

エレン「雪山の?」

アルミン「うん」


エレン「するけど……お前はどうするんだ?」

アルミン「僕も参加する」

エレン「……本気で言ってんのか?普段の山登りとは違うんだぞ」

アルミン「分かってるよ。でも卒業の為に少しでも評価をあげておきたいんだ。……大丈夫。足手まといにはならないようにするから」

エレン「組めるかどうかだって分からねぇのに……」

アルミン「……何とかなるよ」

エレン「……」

アルミン「顔が怖いよ?……そんなに心配しないで」

エレン「何とかなるって……下手したら死んじまうかもしれねぇんだぞ」

アルミン 「……僕だって助けられながらではあるけど、ここまで死なずにやってこれたんだ。シガンシナにいた頃とは違う。こんなところで負けないよ」

エレン「……」

アルミン「これから……叶えたい夢だってあるんだ」

エレン「……そこまで言うんなら……止めねぇけど。 ……頑張れよ」

アルミン「……うん」

843

シガンシナ エレンの家

カルラ「エレン。母さんこれから買い物に出るから、父さんが戻ってきたら言っといてくれるかい?」

エレン「いつ帰ってくんの?」

カルラ「そんなに遠くまで行かないから、すぐ帰って来れるさ。アルミン、あんたはどうする?もし帰るなら途中まで送っていくよ」

アルミン「…………あ……まだ、ここにいます。いいですか?」

カルラ「勿論だよ。ちょっと待ってなさいね」ゴソゴソ

エレン「何?お菓子?」ヒョイ

カルラ「残念でした。林檎だよ」ショリショリ

エレン「ちっちぇー林檎」

カルラ「何を言うのこの子は。文句があるならあんたの分は無いからね」ショリショリ

エレン「嘘だよ!」


カルラ「……はい。じゃあこれ、アルミンと食べながら大人しく待ってるんだよ。抜け出してまた喧嘩してきたら、承知しないからね」ムギュッ

エレン「分かってるよ」

アルミン「……」

カルラ「アルミン。怪我大したことなくてよかったね」

アルミン「……はい」

エレン「いってらっしゃーい」

キイィ… バタン

エレン「父さん、いつ戻ってくるんだろ」

アルミン「地下室に行ってるんだっけ?」

エレン「うん。あの部屋って本当に何があんのかな。…… なぁ、こっそり覗きに行かないか?」

アルミン「え?よしなよ。見ちゃいけないって言われたんだろ?」

エレン「やっぱりダメか」

アルミン「うん……」


エレン「……ん。この林檎結構甘いぞ。ほら、アルミンも食うだろ」モグモグ

アルミン「……ほんとだ」 モグモグ

エレン「食べ終わったら部屋行こうぜ」

アルミン「……」グスッ

エレン「……?まだ泣いてんのか?思い出し泣きなんてすんなよ」

アルミン「……僕……おばさんに申し訳ないよ……。息子の君に怪我をさせたのに……林檎まで剥いて貰って……」

エレン「母さんが好きで剥いたんだから、遠慮することねぇよ。どんどん食え」

アルミン「……カルラおばさん。……エレンと僕が友達だと、心配するんじゃないかな……」

エレン「心配って?」

アルミン「エレンは元々手が出るのが早いのに……僕を助けてるせいで、喧嘩の回数が増えてるだろ?おばさんはきっと気にしてる……」

エレン「アルミンを助けなくたって、同じくらい喧嘩してるよ。母さんは……口出しすぎなんだよ」


アルミン「……」グスッ

エレン「……なんだよ。……もう一緒に遊ばないとか言うなよ……?」

アルミン「……言わないよ」ゴシゴシ

エレン「オレさ……お前しか遊ぶ奴いねぇから……お前がいなくなると……つまらねぇし……」

アルミン「……うん。僕も」

エレン「できれば……ずっと友達がいい……」

アルミン「……」

エレン「…………」

アルミン「エレンって、そういう事言うんだ」

エレン「どっどういう意味だよ」ガタンッ

アルミン「ふふ。……僕も、ずっと友達がいいな」



843

シガンシナ区


ハンネス「ここは本当に平和な所だよなぁ~。おっかねえ事件もないし、怖いもんと言ったら嫁の説教ぐらいだ」

駐屯兵A「事件はあるだろ?ほら、医者のせがれとアルレルトのせがれがよぉ」

駐屯兵B「あいつらが他のガキと問題起こす度に、オレらが呼び出されんのよ」

ハンネス「違いねぇ。エレンの奴なんか、昨日はオレの脛蹴りやがってな」


アハハハハハハ


エレン「…………」

駐屯兵A「おおい、ハンネス。噂をすればお前にお客様だぞ」


エレン「…………」

ハンネス「エレンじゃねぇか。どーしたぁ?今日はアルミンは一緒じゃねぇのか」

エレン「…………」

ハンネス「だんまりなんて珍しいな。こりゃ、これから雪が降っちまうな」

エレン「……」

ハンネス「……本当にどうした?何かあったのか?」

エレン「……さい」

ハンネス「?」

エレン「昨日は……蹴ったりして……ごめん」

ハンネス「…………」

エレン「それだけ。じゃあね」

ハンネス「エレン!!」ガシィッ

エレン「うわっ!?」

ハンネス「お前も成長したなぁ!目を見て謝れるのは、もう小便くさいガキじゃねぇって証拠だな!ハッハッハ 」


エレン「う゛っ……昨日より酒臭いよ!離してよ!」ジタバタ

アルミン「エレン!」ヒョイ

ハンネス「なんだ。やっぱりアルミンも一緒じゃねぇか。一人じゃ心細くて付いてきて貰ったんだな?」

エレン「は!?違うよ!」ジタバタ

アルミン「エレン、大丈夫?」

ハンネス「アルミン……お前も大人しく付いてきてどうすんだ。こういうのはエレン一人で行かせるもんだろ。今は良いかもしれねぇけどな、大人になったら一人きりで解決しなきゃいけない事が沢山出てくるんだ。その予行練習だと思って突き放さなきゃダメだろうがぁー」

アルミン「……エレンは一人で行くって言ったよ。僕が勝手についてきたんだ。また蹴っちゃわないか心配だったから。……ごめんね、エレン」

エレン「ほら、違うって言ったろ」

ハンネス「……はぁー」



849
トロスト区 街中


エレン「……あの野郎!どこ行ったんだ?単独行動は寄せってあれほど……」キョロキョロ

通行人A「今日も冷えるねー。また雪が降るのかな」

通行人B「庭にパンジーの花がまだ咲いてるのよー。よかったら今度見に来ない?」

エレン「先に帰るか?でも、あいつがちゃんと買い物してるか分からねぇし……どうする」

ハンネス「……おおい……エレン!エレンじゃねぇか!」

エレン「……?えっ……ハンネスさん!?」バッ

ハンネス「ははは。そんな堅苦しいのはいい、いい」

エレン「一応規律だからさ。久しぶり!」スッ

ハンネス「おう。元気にしてたか?手に持ってんのはなんだ……買い出しで街に来たのか?」

エレン「あぁ。あっ……なぁ、丸坊主の訓練兵見なかった?オレ、そいつとはぐれちまって探してんだ」

ハンネス「ん?丸坊主……いや、見てねぇな」

エレン「そっか。……どこで遊んでやがんだ」


ハンネス「アルミンやミカサは一緒じゃねぇのか」

エレン「買い出しは当番制だから、あいつらと一緒になることなんて稀だよ。ハンネスさんの時だってそうだったろ?」

ハンネス「どーだったかなー?昔過ぎて覚えてねぇな」

エレン「ボケたんじゃないの?」

ハンネス「バカ言え……オレはまだ結構若いぞ!ったく、少しは立派になったと思ったが、口も人相も悪いのはガキの頃と同じだな。他の二人も変わらずやってるか?」

エレン「うん。ミカサはいつもうるせぇし……付いてくるし……背がオレに追い付きやがった。あいつはどんな訓練でも要領よくこなしてるよ。アルミンは……相変わらず体力ねぇみたいだけど、頑張って訓練してる」

ハンネス「ミカサは分かるが、アルミンが厳しい訓練に耐えてるってのは驚いちまうな。ありゃ昔から頑固だったのは知ってたが、お前の背中で泣きべそ掻いてたんだぞ。あいつを追いかけ回す奴もいなくなったか?」

エレン「……泣き虫なのは変わってないよ。頭突きしただけで泣きそうになるし。屑みてぇな連中だっていなくなった訳じゃない。面倒な当番を押し付けられそうになってたり……体力がなくて痩せてるからか知らねぇが、オカマ野郎って言われてんのは何回も見たよ」

ハンネス「……その度に相手に突っ掛かってたんじゃねぇだろうな」


エレン「……しないように注意してる。オレは殴ってやりてぇんだが、アルミンの奴が寄せって言うんだ。自分で解決したいんだってさ」

ハンネス「なんだ……少しは自制を覚えたんだな。アルミンが馬鹿にされた途端に相手を殴ってたお前がな……。そういやアルミンを背負ったままオレの脛を蹴ったこともあったな!ありゃー痛かったなークソガキだった」

エレン「ま……まだ根に持ってんのかよ!ちゃんと謝っただろ。悪かったって。……ああいうのや……オカマ野郎だの……女みてぇだの……嫌いなんだ。頭に血が昇っちまう」

ハンネス「……」

エレン「…………なのに何で……オレ」

ハンネス「……」

エレン「…………」

ハンネス「……どうした?ミカサに怒られたことでも思い出したか?」

エレン「そんなのいちいち覚えてないよ」

ハンネス「……なら、アルミンと喧嘩でもしたか」

エレン「……してねぇ」

ハンネス「ふーん」ニヤニヤ


エレン「…………そうじゃないんだ」

ハンネス「まぁ何かあったんなら腹割って話すことだな。で、悪い方が謝って、次の日からはいつも通りだ!それが親友ってもんだろうが」バシバシ

エレン「分かってるよ。……あっ!!」

コニー「おぉおい!エレーン!!こんなとこにいたのかよ!?町中探しちまったぜ!」バタバタ

エレン「そりゃこっちの台詞だ!どこほっつき歩いてたんだよ!」

コニー「はぁ?オレはちゃんと買い物してたって…… ん?」

ハンネス「丸坊主ってこいつか」

エレン「あ……駐屯部のハンネス隊長だ」

コニー「こっこれは失礼しました!私は第104期訓練兵コニー・スプリンガーであります!」バッ

エレン「お前……逆だよ」




夜 宿舎

アルミン「あーっ!しまった」ガバッ

エレン「!? どっどうしたよ」

アルミン「今日中に返さなきゃいけない本があったんだ。すっかり忘れてたよ」モゾモゾ

エレン「今から行くのか?明日でもいいだろ」

アルミン「僕は常習犯だから……」

エレン「……」

アルミン「1日遅れただけで小言を言われるのが当たり前なんだ。教官がまだ帰らないでいることに望みをかけるよ」

エレン「ならオレも行く」

アルミン「え?いいよ……」

エレン「この時間お前がいないと、結構やることないんだぜ?ボーッとしてんのもつまらねぇだろ」

アルミン「……そう」

エレン「何ニヤけてんだ」

アルミン「え!?いや……悪いなと思って……」 アタフタ


図書室


アルミン「遅かったね……。真っ暗だ」

エレン「明日にしろって事だな。戻ろうぜ」

アルミン「消灯までまだ時間あるよね。……ここまで来たんだし、何か読んでいこうかな……?」

エレン「……」

アルミン「昼間と違って物音もないから、読書には最適だよね」

エレン「……ランプ持つよ」ヒョイ

アルミン「エレンも、たまに何か読んだら?」

エレン「と言われてもな。……この本の量見てると選ぶのから面倒になっちまう」

アルミン「狭い所にこの量だから、余計圧倒されて見えるのかもね。本棚の高さも天井に届きそうだ。今は綺麗に並んでるけど、僕らがこまめに整理整頓しなくちゃ、あっという間に床に横積みにされていくんだろうな。……えっと……」

エレン「脚立持ってくるか?」


アルミン「いいや。届く所の本にしておくよ。……あ、これ懐かしい」

エレン「なんだ?……絵本か」

アルミン「うん。たまにはいいよね」

エレン「……」

アルミン「鳥が冒険する本だよ。小さい頃によく読んだの、覚えてる?」

エレン「……」

アルミン「……忘れちゃったかな。本当に会ったばかりの頃だからね。僕なんかは読みすぎて、無駄に暗記しちゃってるけど……」

エレン「……いや、覚えてる。よくお前が読むのを聞いてた。さすがに内容は忘れちまったけど……」

アルミン「また読んであげようか?」

エレン「え?いいよ。子供じゃねぇんだから……」

アルミン「そうだね。自分で読めるね」

エレン「あーでも、気になってきたから簡単に教えてくれよ」

アルミン「そう?えっと……吹雪の夜に、二羽の鳥が南にある暖かい楽園を目指して旅立つ話なのは、覚えてる?」


エレン「……それくらいなら覚えてるような……気がする」

アルミン「二羽の鳥はね、元々仲が良かったから、お互い助け合いながら旅をするんだ。待ち構える色んな困難を一緒に乗り越えていくんだけど……ある時、1羽が猟師に捕まってしまうんだ」

エレン「食われちまうのか?」

アルミン「いいや。食われる前にもう1羽の鳥がやってきて、猟師と戦うんだ。おかげで何とか二羽は難を逃れたんだけど……猟師と争った鳥は、その時の怪我が原因で死んでしまう」

エレン「……」

アルミン「そして助けられた鳥は、すぐ楽園に辿り着く事ができて……ずっとずっと幸せに暮らした。こんな話だよ」

エレン「その最初に捕まった方は、猟師と戦わなかったのかよ。そいつだって暴れりゃ、もう一羽に怪我させる前に何とかなったんじゃないのか?」

アルミン「……子供の時も同じ質問をされた気がするよ」

エレン「まさか。嘘だろ?」


アルミン「どうかな。今の話はかなり省略していて、猟師の前に氷の女王と戦ったり、死ぬほど冷たい湖の中で餌を取るために泳いだりしているから……捕まった方には戦えるだけの力がもう残っていなかったのかもしれない。あとは共倒れするよりは1羽だけでも逃げ延びて、楽園を目指そうと思ったのかもしれないし……ってこれは僕の勝手な解釈だけどね。絵本だから感情の面は深く書かれていないんだ」

エレン「ふーん。でもすげぇな。本当に暗記してんだな」

アルミン「やだな……凄くなんてないよ……」カァァ

エレン「凄ぇよ。お前は昔から、一度読んだ本の内容はほとんど覚えてたもんな。その小さい頭にどれだけの知識が詰まってんのか知りたいよ」ポン

アルミン「大袈裟だなぁ……」カァア

エレン「……」

アルミン「ここの図書室は本当に種類が豊富だよ。初めて来た時は、軍事や政治関連の書物ばかりだと思ってたんだけど……マイナーな研究書や小説や、こうした絵本まで揃ってる。……あの教官の好みなのかな?今度聞いてみよう」ペ ラッ

エレン「…………」

アルミン「…………」ペラ

エレン「……」

アルミン「…………」ペラ

エレン「……なぁ、アルミン」

アルミン「ん?」ペラ

エレン「お前に夢の話をした事があっただろ?」


アルミン「……うん」

エレン「寝不足になっちまったやつ」

アルミン「……あ……そっち。あったねそんなこと。……あれはさ……君が予想以上に初で驚いたよ……」

エレン「……あれ、最近また見てんだ。お前の言った通りに大人しく全部見るようにしてるから、眠れてない訳じゃねぇけど」

アルミン「……同じ夢を見るの?」

エレン「内容が全く同じって訳じゃねぇ。場所や状況は変わってたりすんだけど……相手や、結果は同じだ」

アルミン「殴られて終わるんだっけ」

エレン「ち、違う。オレを殴るような奴じゃねぇから」

アルミン「そう……なの?」

エレン「回数が多いから、さすが何か理由があんのかと思い始めてんだけどよ……」

アルミン「…………」

エレン「……」

アルミン「……好きなの?」

エレン「……は?」


アルミン「異性として」

エレン「異性?」

アルミン「……そ、そんなに険しい顔する?ランプのせいでいつもより怖いよ……」

エレン「……何でそう思ったんだよ」

アルミン「何でって……単純に考えたら、そうならないかな……?夢に見る相手が毎回別の人なら、他の理由も考えられるかもしれないけどさ」

エレン「……」

アルミン「……誰だか聞いてもいい?」

エレン「……」

アルミン「……ケチ」


849

雪山


エレン「…………」ザッザッザッ

ミカサ「……」ザッザッザッ

ベルトルト「…………」ザッザッザッ

エレン「……灯りだ。おい、もうすぐ小屋だぞ」

ベルトルト「本当だ……」

ミカサ「油断しない。前を見て歩いて」

エレン「……」

ベルトルト「……」

ミカサ「…………」

エレン「……アルミン。今どの辺にいるんだろ」

ベルトルト「あ……ライナーと同じ班だったよね」

エレン「あぁ。ライナーがいりゃ、遭難することはなさそうだが……あいつ体力ねぇし。……付いていけてんのかな」


ミカサ「……ライナー達なら、先に小屋に着いている可能性もある。私達も急ごう……」

エレン「あぁ……だよな」

ベルトルト「……」ザッザッザッ

ミカサ「…………」ザッザッザッ

エレン「……なぁ、ベルトルト」コソコソ

ベルトルト「え……なに?」

エレン「お前に聞いてみてぇことがあんだけど……」

ベルトルト「うん」

エレン「お前って……ライナーが女に見えることってあるか?」

ベルトルト「え?」

エレン「上手く説明できねぇんだけど、こう……ライナーを女の代わりに思ったりすることねぇかな?」

ベルトルト「…………」

エレン「……」


ベルトルト「…………」

ミカサ「……」

エレン「…………ごめん」

ベルトルト「……い、いいや。僕の方こそ何て返したらいいか分からなくて……ごめん」

ミカサ「何の話?」

エレン「お前には関係ねぇよ……」

ミカサ「……」

エレン「……お前、サシャを男みたいだって思ったことあるか?」

ミカサ「……サシャは女性」

エレン「……違う。オレが聞きたいのはそうじゃねぇ」ガシガシ

ミカサ「考えが纏まっていないなら、小屋に着いてから聞いて」

エレン「…………」


山小屋


訓練兵A「あったまるなー……」

フランツ「ハンナ……凍えてしまわないようにもっとその……くっつかないかい?僕達まで熱を出さないようにしないと……」

ハンナ「うん……フランツ……」

訓練兵B「オレ、足霜焼けになっちゃったよ……」

エレン「なんだ……。結構先に来てるもんだな」

ベルトルト「……あ、あそこ。ライナー達もいるみたいだ」

ライナー「…………」

アニ「……寒くない?」

サシャ「もっと何かかけましょうか?」

アルミン「……う……」ハァハァ

エレン「……アルミン?」

サシャ「エレン……ミカサも!無事だったんですねぇぇ!!」ダキッ


ミカサ「先に着いていてよかった」ナデナデ

エレン「ライナー!アルミンはどうしたんだ?これ……」

アルミン「……は…………」ハァハァ

ライナー「小屋に着いた途端、熱を出して倒れちまったんだ」

アニ「……無理して歩くからさ。きっと疲れが一気に出たんだ」

ミカサ「アルミン……」

アルミン「う……ミカサ……?」ハァハァ

エレン「大丈夫なのか?」

ライナー「一晩寝てりゃ、熱は下がると思うんだが……この訓練は降りてもらった方がいいだろうな。明日は今日より長い距離を歩いて、ふもとの施設まで行かなきゃならねぇんだ。アルミンには悪いが……無理だろう」

アルミン「……」ハァハァ

エレン「……そうだな。教官と一緒に山を下ってもらうしかねぇか……」

ライナー「こいつの体力を気遣って途中で背負ってやっても良かったんだが、断られちまった。……エレン、お前の親友は本当に意地っ張りだな」


エレン「あぁ。……昔からそうなんだ」

ライナー「ま、お前にも意地っ張りな所はあるから、似た者同士でお似合いって訳だ」ポン

エレン「は?アルミンとオレは全然似てねぇだろ」

ミカサ「アルミン……水、飲める?」

アルミン「……う……」ハァハァ

サシャ「クリスタやマルコ達……まだ来ませんね」

ベルトルト「……山小屋はもう一ヶ所あるから……そっちに行ったのかもしれない」

アルミン「…………」ハァハァ

エレン「……ライナー。お前も疲れてんだろ?こいつの事はオレが見てるから、気にしないで休めよ」

ライナー「ん?そうか?」


エレン「お前らも向こうで休んでろよ」

アニ「言われなくてもそうするよ」

サシャ「芋ならちょっとだけですが残ってるんで……お腹が空いたら言ってくださいね」

ミカサ「私はここにいる」

エレン「お前も向こうに行ってろ」

ミカサ「アルミンを放っておけない。それにあなたにも休む時間が必要でしょ?一人で看るより、二人の方がいい。交代しながらでも……」

エレン「分かんねぇ奴だな。アルミンが気にすんだろうが」

ミカサ「……エレンの言うことの方が分からない」

エレン「……女に弱ってる姿なんて見られたくねぇだろ」

ミカサ「……」

エレン「…………」

ミカサ「……交代しながらの方が良いと思うから、ちゃんと声をかけて」






エレン「……」ウトウト

アルミン「……ぁ」パチッ

エレン「……!アルミン?大丈夫か?」ムクッ

アルミン「……えれん……?」ハァハァ

エレン「水飲めるか?水分取らねぇとな」スッ

アルミン「……ん……」ゴクゴク

エレン「……アルミン。こうなったら明日も訓練を続けんのは無理だ。朝になったら教官と一緒に山を下れ」

アルミン「……うん」ケホッケホッ

エレン「……」ホッ

アルミン「…………」ハァハァ

エレン「何かして欲しいことはねぇか?身体辛ぇだろうし、なんでも言えよ」


アルミン「…………て……」

エレン「……手?……握ればいいのか?」ニギッ

アルミン「……」

エレン「……かなり熱いな。ちゃんと汗は掻いてんのに……」

アルミン「…………」ジー

エレン「まだあるなら、どんどん言え。遠慮なんかすんじゃねぇぞ。こういう時はお互い様だからな」

アルミン「……じゃあ…………だきしめたい……」

エレン「え?」

アルミン「……うつる……?」

エレン「や……うつりはしねぇだろ。風邪じゃねぇんだし……」

アルミン「……」

エレン「ね、寝ながらでいいか?」モゾモゾ

アルミン「うん……」ギュッ


エレン「……」

アルミン「…………」

エレン「…………お前、どうしてそこまでして兵士になりたいんだ?」

アルミン「……ん……?」モゾ

エレン「今日みたいな訓練は、少し間違えりゃ本当に死ぬかもしれなかった。今だってこんな風に熱出しやがって……」

アルミン「……」

エレン「王政が憎いんなら、何も兵士にならなくたっていい。他に仕返しする方法があるってことくらい……賢いお前なら分かってたんだろ?」

アルミン「…………ちゃんと追いかけないと……置いていかれるから……」

エレン「……置いていってなんかねぇだろ」

アルミン「……」

エレン「…………」

アルミン「……エレンだけなんだ」ギュウッ


アルミン「……僕の夢を否定しないで……理解してくれて……一緒に追いかけてくれたのは、君だけなんだ……」

エレン「……」

アルミン「……一番の……友達なんだ」

エレン「……」

アルミン「……一緒にいたいって思うのは……そんなにおかしいことじゃないだろ……?」

エレン「……だからお前が死にそうな思いしてるってのか?これからもずっとオレについてくるつもりか。……ミカサみたいな事言ってんじゃねぇよ」

アルミン「……」

エレン「なら……友達じゃねぇ方が……」ギュッ

アルミン「……友達じゃなくたって同じだよ」

エレン「わかんねぇだろ。そんなの」

アルミン「……わかるよ……試したっていいんだ」クイ

エレン「……試すってなんだよ」


アルミン「」チュ

エレン「ん……!?」バッ

アルミン「…………」

エレン「……な……何しやがる。ふざけてる場合か?」カーッ

アルミン「……だって君がふざけたこと言うから……」

エレン「だからって何考えてんだよ……」

アルミン「……何だかボーッとして……夢を見てるみたいで……このくらいなら平気かなって思ったんだ……。エレンもしていいんだよ……」ウトウト

エレン「バカ。するわけねぇだろ……」

アルミン「……もう絶対に……言わないでね……友達じゃない方がいいなんて……」ウトウト

エレン「……」

アルミン「……」スヤスヤ


投稿中で寝る癖治したい


訓練後

訓練所 医務室


アルミン「……エレン!」

エレン「よう。飯持ってきた」

アルミン「よかった!訓練が無事に終わったか気になってたんだ。ライナー達もちゃんと山を下れたよね?」

エレン「あぁ。ライナーとアニなら心配いらねぇよ。オレの班より先に施設に着いてたくらいだ。そんな事よりお前、起き上がってて平気なのか?」ギシッ

アルミン「うん。熱はもう大分下がったんだ。ただ教官に明日までここで休むように言われててさ」

エレン「……そのノートなんだ?」


アルミン「これかい?座学の復習をしてたんだ」

エレン「なんだ。すっかりいつも通りだな。顔色も戻ってるし」

アルミン「本当?」

エレン「小屋で寝てたときは林檎みてぇだった」

アルミン「……エレン。たくさん迷惑をかけてごめん。一晩付きっきりで看病してくれたんだろ?」

エレン「ん?」

アルミン「僕、覚えてなくて…… 教官から聞いて知ったんだ」

エレン「……看病なんてもんじゃねぇさただ隣で寝てただけだ。いつもと変わんねぇよ」

アルミン「そう……」

エレン「……」

アルミン「…………」

エレン「……評価なんて雪山の訓練以外でも取れんだから、あんまり気を落とすなよ」

アルミン「……うん。……あのさ」


エレン「?」

アルミン「僕……看病してもらってる間……君に何か変なことをしなかった?」

エレン「え?」

アルミン「あ……その。小屋に着いてからは意識が朦朧としていて、自分がどうやって寝かされていたかも覚えてないから……」

エレン「……変なことなんてしてねぇと思うぞ」

アルミン「よかった」ホッ

エレン「寝ながら抱きついて、オレが一番の友達だとは言ってたけど」

アルミン「えっ!?」

エレン「……」

アルミン「そ……そんな事したの?恥ずかしいな……」 カーッ

エレン「……それから酔っ払いみたいに、ふざけてキスしやがった。しまいにゃオレにもしていいって言うしな……」

アルミン「うわぁ……」


エレン「……ぷっ。あははは!お前鼻の頭が真っ赤になってるぞ 」

アルミン「だってさ……見ないでよ」ゴシゴシ

エレン「ははは!擦ったらもっとだろうが……ははははっ」

アルミン「……」

エレン「くくっ……はははは、言わんこっちゃねぇ」

アルミン「笑いすぎじゃない?」

エレン「はぁ……」

アルミン「ごめん。まさか変を越えてそんな醜態を晒してるとは思わなかったよ……。とても病人とは思えないね」

エレン「……いいよ。オレもしたから」

アルミン「」ピクッ

エレン「……」

アルミン「な……なんで?」

エレン「……」フイッ

アルミン「……エレンて変なとこノリいいよね。無視してよかったんだよ」

エレン「オレは別にふざけた訳じゃねぇよ」


アルミン「そ……そうなの?ならどうして……」

エレン「……変なんだ。もうずっと」

アルミン「何が?」

エレン「お前の夢をずっと見てる。……夜に図書室で話しただろ」

アルミン「…………僕?」

エレン「あぁ」

アルミン「……」

エレン「……」

アルミン「……夢でするってどんな感じ?」

エレン「何で聞くんだよそんな事」

アルミン「あ……ごめん。……普通聞かないよね。ははは……驚いちゃったからかな」

エレン「……黙ってたのはすまねぇと思ってる。聞いても良い気はしねぇだろうけど……」

アルミン「……そんな事ないよ」

エレン「……お前に」ホッ


アルミン「……」

エレン「言われてから、お前をそういう風に見ちまってるのかどうか考えた。でも考える程上手い結論がでねぇんだ。だってさ……オレはお前が馬鹿にされてんのをガキの頃から見てきてんだぞ。そんなはずねぇだろ?お前と今の関係以外の何かになるなんて想像もできねぇし」

アルミン「……」

エレン「でも、夢は見ちまうから……いつまでもハッキリしねぇのが気持ち悪くて……いっそ実際にしてみりゃ分かるかと思ったんだ」

アルミン「……だから山小屋でキスしたの?」

エレン「お前もいいって言ってたし……」

アルミン「……それでハッキリした?」

エレン「……」

アルミン「エレン?」ノゾキ

エレン「……お前はオレを一番の友達だって言ってくれたじゃねぇか」

アルミン「……」

エレン「オレだってそうに決まってる」


アルミン「……そうだね」

エレン「……」

アルミン「ねぇエレン」

エレン「なんだ」

アルミン「……夢の事は、エレンが僕に負い目を感じたのがいけなかったんだよ」

エレン「は?」

アルミン「気にしすぎても夢に見るって言っただろ?君は一回見た夢の相手が僕だった事を、必要以上に引きずってしまったんだよ。……心当たりあるんじゃないの?」

エレン「……そりゃ……お前なんだし、引きずるだろ。当たり前だ」

アルミン「そうだよね。僕に話せない事が出来たっていう……罪悪感があったんだろ?何度も夢に見た原因はそれだよ。全部打ち明けた事で楽になったなら……だんだん見なくなるんじゃないかな」

エレン「……確かに大分楽だけど」

アルミン「うん」


エレン「それで見なくなるんだったら拍子抜けだな。さっさと喋っちまえば良かった」

アルミン「……もしまた見ても、僕の事を気にしないでおけば……近い内に解決するよ」

エレン「……」

アルミン「内容については僕は何とも思わない。だってエレンが僕の立場だったら、そうだろ?」

エレン「……」

アルミン「……」

エレン「そうだな」

アルミン「……うん」ニコッ

エレン「スープ冷めちまったかな?」

アルミン「どうだろう?きっと丁度いいくらいだよ」カチャ ン

エレン「パンも食えよ」

アルミン「ありあと……。でもパンは止めておこうかな。 エレン食べなよ」モグモグ

エレン「オレはいいよ。明日の朝飯に取っとけよ」


アルミン「……いつも通りの薄味だなぁ。たまには濃いスープが飲みたいよね」

エレン「オレは腹に入れば何でもいいけどな。訓練兵の飯に端から期待なんかしてねぇや」

アルミン「えー?」モグモグ

エレン「金払って食ってる訳じゃねぇし」

アルミン「…………ん!そうだ。明日の休日は三人で外食しようよ。サシャにお勧めのレストランを聞こう」

エレン「大人しくしてねぇとまた熱上がるかもしれねぇだろ?宿舎で本でも読んでろよ」

アルミン「エレンも読書するの?」

エレン「……読書するお前の話を聞いてる」

アルミン「……」モグモグ

エレン「飽きねぇからさ」

アルミン「……僕さ、安心したんだ」ゴクン

エレン「?」


アルミン「他の人じゃなくて……ホッとしてる」

エレン「……」

アルミン「……だから、謝らなくちゃいけないのは僕の方なんだ」

エレン「……」

アルミン「……ごめん」

エレン「なんだそりゃ?何でお前が謝ってんだ」

アルミン「……」

エレン「分かんねぇからちゃんと言えよ」

アルミン「…………ううん」

アルミン「分からなくていいんだ。ただの独り言だから」




....


図書室


アルミン「……エレン。……エレン?」ユサユサ

エレン「……」

アルミン「エレンってば……こんな所で寝ちゃダメだよ……」ユサユサ

エレン「!」ハッ

アルミン「僕の話聞いてた?」

エレン「……アルミン?」

アルミン「そうだよ」

エレン「なんだお前。何でそんな……子供の姿なんだよ」

アルミン「……寝惚けてるね。やっぱり聞いてなかったんだ」

エレン「……ん?」

アルミン「折角外の世界の話をしてたのに……寝ちゃうなんて珍しいね」


アルミン「仕方ないなぁ。一緒に、もう一回最初から読もうか。この本にはさ、海の事が沢山載ってたんだ。僕が一番興味があったのは、海が誕生するまでの話なんだけど……」ペラ

エレン「……」

アルミン「海も元は雨から出来たって書いてあるんだ。でも雨ってしょっぱくないよね。塩はどこからきたのかな……。エレンはどう思う?」

エレン「……さぁ」

アルミン「うん。きっと物凄い量の塩がいるよね。そもそも海がどのくらいの大きさなのか実際目にしないと分からないし……ねぇエレン!やっぱり最初は海に行こうよ」

エレン「……」ウツムキ

アルミン「……エレン?どうしたの?」

エレン「……いいや」

アルミン「すごい汗……怖い夢でも見た?」

エレン「……」

アルミン「……分かった。夢の中でもカルラおばさんに怒られたんだろ?」


エレン「うるせぇ。そんなんじゃねぇよ」

アルミン「今度は何しちゃったの?」

エレン「……アルミン」ギュッ

アルミン「わっ!……な……なに?」

エレン「……オレ……お前の事が」ギュウッ

アルミン「……」

エレン「……」

アルミン「……よっぽど怖い夢だったんだね」ポンポン

エレン「……」

アルミン「……大丈夫だよ。夢は夢でしかないんだから……すぐに忘れるよ」

.....





以上です。
レス&読んでくれた方ありがとうございました。

>>36
誤 エレン「」…
正 エレン「……」

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