レッド「あっ、ピカチュウだ」(234)

―トキワのもり―
レッド「さてと、そろそろお昼だし、この辺でメシ休憩でもしよっか」

ピカチュウ「ピカッ!」

レッド「ははっ、元気だな。はい、ピカチュウはこーれ」コトンッ

ピカチュウ「ピカッ?」

レッド「極上の高級ポケモンフーズ。いつもがんばってるからご褒美。
    奮発して買ったんだぞ。一口一口噛みしめながら食べろよな」ナデナデ

ピカチュウ「ピ、ピカピ……」

レッド「なーに、心配いらないって。金は四天王でたくさん稼げるんだから」

ピカチュウ「ピカ……?」

レッド「『ほんとに大丈夫なの?』って? ポケモンのオマエが心配することじゃないぞっと。
    ほらほら、早く食べないと俺が食べちゃうぞ」ポンポン

ピカチュウ「ピッカ!」ニコニコ

レッド「どうだ? おいしいか?」

ピカチュウ「ピカピ!」ガツガツガツ

レッド「ははっ、そんなに急いで食べなくたって誰もとりゃしないって」

ピカチュウ「ピカピカ♪」ガツガツガツ

レッド「しっかし、初心に戻るつもりでまたここに足を運んだのはいいけど、相変わらず昼間でも薄暗いなー」

ピカチュウ「…」クンクン

ピカチュウ(すごくいいニオイ)クンクンクン

レッド「ピカチュウ、覚えてるか? 俺とオマエが初めて出会ったのはここなんだぞ。
    もう何ヶ月前になるかな」

ピカチュウ「ピ♪ ピ♪ ピ♪」ガツガツ

レッド「こら、無視すんな」

ピカチュウ「ピカピッ」ニコッ

ピカチュウ(いいなぁ、あのピカチュウ。あんなにおいしそうなエサを恵んでもらえて。
      食べてみたいなぁ)ギュルルルルッ

レッド「んっ?」

ピカチュウ「!」

レッド「あーっ! ピカチュウだ!」

ピカチュウ「ピカ?」

レッド「見ろよピカチュウ。オマエとおんなじピカチュウがいる!」

ピカチュウ「ピ、ピカ……」オドオド

レッド「見た感じ、どうやら戦意はなさそうだ。
    おいでー。怖くないよ」

ピカチュウ(ど、どうしよう……)ギュルルルルッ

ピカチュウ「ピ?」

レッド「ははーん。さてはニオイにつられてやってきたわけか。
    ええっと、確かもう1つ……あった!」ガサゴソ

レッド「1個余ってるんだけど、よかったら食べる?」

ピカチュウ「! ピ、ピカ……」

レッド「毒なんか入ってないって。ほら、おいで」

ピカチュウ「ピカピカ!」ニコニコ

ピカチュウ「…」

レッド「ほーら、いいニオイだろ?」

ピカチュウ(大丈夫……なのかな)

レッド「おいで、ピカチュウ」

ピカチュウ「ピカピ!」

ピカチュウ「…」

ピカチュウ「…」オズオズ

レッド「そうそう、怖がらなくても…………あれっ? 俺のピカチュウとシッポの形がちがうぞ。
    ……ってことは!」ガサゴソガサゴソ

レッド「ポケモンずかんでチェック!」

ピカチュウ「……?」

レッド「やっぱりそうだ。あのピカチュウ、女の子だ。
    女の子のピカチュウだ!」

ピカチュウ「ピカッ?」

レッド「あっ、もしかしてオマエはとっくに気づいてたとか?」

ピカチュウ「ピカッ」コクッ

レッド「へぇーっ、メスのピカチュウか。やっぱピカチュウはオスでもメスでもかわいいなぁ」

ピカチュウ♀「…」

レッド「シッポ以外は俺のピカチュウと瓜二つじゃん。背丈も一緒だし。
    まぁ同じピカチュウだから当たり前か」

ピカチュウ「ピカッ」ニコニコ

レッド「さっ、話は後にしてメシだメシ。
    キミもそんなとこに突っ立ってないでおいで」

ピカチュウ♀「…」トコトコトコ

レッド「ほいっ」コトンッ

ピカチュウ♀「…」クンクン

レッド「毒なんか盛ってませんってば」

ピカチュウ「ピカッ」ガツガツガツ

レッド「ほら、早くお食べ。お腹すいてるんだろ?」

ピカチュウ♀「…」ギュルルルルッ

ピカチュウ♀「……ピカピ」ペロッ

ピカチュウ♀「!」

ピカチュウ♀(なにこれ……すごくおいしい)ガツガツガツ

レッド「おいしい?」ナデナデ

ピカチュウ♀「チュウッ!」バチッ!

レッド「いって! ごめんごめん。ジャマするつもりはなかったんだ。
    もうさわったりしないからゆっくりお食べ」

ピカチュウ♀「…」ガツガツガツ

ピカチュウ「ピカッ、ピカッチュ」(これ、すっごくおいしいよね)

ピカチュウ♀「…」ガツガツガツ

ピカチュウ「ピカピッ」(あっ、頭にゴミついてるよ)

ピカチュウ♀「ヂュウ!」(気安くさわらないで!)バシッ

ピカチュウ「ピ、ピカ」(ご、ごめん)

レッド「俺もポケモン語が理解できれば会話に入っていけるのになぁ」

ピカチュウ♀(すごくおいしかった。とろけちゃうくらい……)

レッド「お腹いっぱいになった?」

ピカチュウ♀「……ピカッ」コクッ

ピカチュウ「…」

ピカチュウ♀(このポケモンは……毎日毎日こんなに豪華なエサをもらっているの?)チラッ

ピカチュウ「?」

ピカチュウ♀(ニンゲンのポケモンのくせにお腹一杯食べちゃって……)

ピカチュウ「ピ、ピカ?」(な、なに?)

ピカチュウ♀「……ピカピ」(……ずるい)バチッ

ピカチュウ「ピカッ!?」(わっ!?)

レッド「ははっ、ピカチュウったら嫌われてやんのー。同族嫌悪ってやつ?」

ピカチュウ「ピ、ピカー……」

ピカチュウ♀(でもちょっぴりうらやましい……)

レッド「さてと、そろそろ出発しよう」

ピカチュウ「ピカピッ」

ピカチュウ♀「…」

レッド「じゃあ元気でね、ピカ――おっと、さわると怒るんだっけ。
    元気でね、ピカチュウ」

ピカチュウ♀「……ピカ」ペコッ

ピカチュウ「ピカピ、ピカッチュ!」(バイバイ。元気でね!)トコトコトコ

ピカチュウ♀「…」

ピカチュウ♀(あのニンゲンのポケモンになれば……)ゴクッ

ピカチュウ♀(あのニンゲンについていけば、たらふくエサをもらえる……)

ピカチュウ♀(あのピカチュウは気にいらないけど、またあのカンヅメを食べれることに比べたら……)

ピカチュウ♀「…」

ピカチュウ♀(……行こう)タッタッタッ

―トキワのもり・でぐち―
レッド「四天王と再戦する日まで結構間が空くし、それまではその辺のトレーナーとでも戦ってレベル上げよっか」

ピカチュウ「ピカピッ」コクッ

ピカチュウ「! ピカピー! ピカピー!」グイグイッ

レッド「なんだよ引っぱって。どうした?」

ピカチュウ「ピカッ! ピカチュウ!」

レッド「あっ」

ピカチュウ♀「…」トコトコトコ

レッド「ひょっとして、さっきのピカチュウ? ついてきちゃったの?」

ピカチュウ♀(ニンゲンの眼を見なくちゃ……)

ピカチュウ「ピカッ……?」

レッド「ここを抜けたら道路に出るけど……」

ピカチュウ♀「…」ジッ

レッド「もしかしたらもしかして、一緒に行きたいの?」

ピカチュウ♀「…」

ピカチュウ♀「ピカッ」コクッ

レッド「なるほど。キミ、俺のピカチュウに恋しちゃったんだ」

ピカチュウ♀「ピカピッ!」ブンブンブンブン

ピカチュウ「ピカ、ピカピー、ピカッチュ……」(そこまで拒否しなくてもいいじゃん……)

レッド「ははっ、さっきの極上ポケモンフーズの食感が忘れられないんだ」

ピカチュウ♀「……チュウ」

レッド「あっ、照れてる。最高にかわいい」

ピカチュウ♀「…」

レッド「まぁいいか。こいつも仲間ができたら楽しいだろうし、
    ニンゲンの俺よりキミの方が、いい話し相手になりそうだし」

ピカチュウ♀「!」

ピカチュウ「ピカ!」

レッド「でもどうせならちゃんとバトルしてからゲットしたいんだ。
    だからメスピカチュウ、俺のピカチュウと戦ってくれる?」

ピカチュウ♀「ピカッ!」

レッド「おっ、やる気満々だ。ピカチュウ、いけるか?」

ピカチュウ「ピカチュウ!」コクッ

レッド「じゃあいっちょバトルしますか」

レッド「ピカチュウ、相手は野生のポケモンだ。しかもメスだ。
    念のために言っとくけど手加減しろよ」ヒソヒソ

ピカチュウ「ピカッ」コクッ

レッド「でんきだまは俺が預かっとく」

ピカチュウ♀「ピカーーー!」ドカッ!

ピカチュウ「ピッ……!」ヨロッ

レッド「えっ、いきなりでんこうせっか? まだ構えてもないのに気が早いなぁ」

ピカチュウ♀「ピカッ! ピカッ! ピカピー!」バシッ、バシッ

ピカチュウ「ピッカァ……」

レッド「今度はたたきつけるか。しかも会心の一撃。
    それにしても、やけに攻撃的なピカチュウだな。
    まるで俺のピカチュウに憎しみでも抱いてるみたいな……」

ピカチュウ♀「ピカピー!」バチバチバチ

ピカチュウ「ピッ……!」ピリピリピリ

レッド「今度は10万ボルトか。いい技を持ってるね。
    ……って、冷静に解説してる場合じゃなかった」

レッド「ピカチュウ! えーと、えーと」

ピカチュウ♀「ピカァ! ピカチュウ!」(ムカつく!)バシッ、バシッ

ピカチュウ「ピ、ピカピー! ピカピー!」(痛い痛い! ぶたないでよぉ……)

レッド「ピカチュウ、ボルテッカー!はマズイよな……。
    なら……アイアンテール!」

ピカチュウ「ピ、ピッカァ!」ブワッ

ピカチュウ♀「!」

レッド「あっ、バカ! 手加減しろって!」

ピカチュウ「ピッ!?」

時すでに遅し。
ピカチュウのアイアンテールがピカチュウ♀の顔面に直撃した。

ピカチュウ♀「ピカーーーーー!」ドサッ

レッド「あっ、と、とりあえず捕獲しよう。いけ、モンスターボール」

うぃうぃうぃうぃうぃうぃうぃうぃうぃうぃ、ポンッ

レッド「やった! 女の子のピカチュウゲット!」

ピカチュウ「ピ、ピカッ」ニコッ

レッド「ゲットするの久々だなー。
    では早速。出ておいで」ポンッ

ピカチュウ♀「…」キョロキョロ

ピカチュウ「ピカピ……」(あの、大丈夫?)

ピカチュウ♀「…」ギロリ

レッド「すっかりご立腹だなこりゃ。
    愛らしい顔にキズをつけた罪は重いぞぉ」

ピカチュウ「ピ、ピカピー。ピカッチュ」(ご、ごめんね。ほんとにごめん)

ピカチュウ♀「…」プイッ

レッド「あー、完全に嫌われたぁ。まっ、これからさ。元気出せよ」ポンポン

ピカチュウ「ピカァ……」ショボン

レッド「せっかくだからみんなで歩こっか。最近は“連れ歩き”ってやつが流行ってるみたいだし」スタスタスタ

ピカチュウ「…」トコトコトコ

ピカチュウ♀「ピカピ」(ちょっと)

ピカチュウ「ピ……?」(あっ、な、なに?)ビクビク

ピカチュウ♀「……ピカチュ」(2度とわたしにさわらないでよ)

ピカチュウ「…」トコトコトコ

―ニビシティ・ポケモンセンター―
レッド「とうちゃーく。ポケモンと歩いて町へ行くのも悪くないね」

レッド「さぁオマエたち、ボールに戻った戻った」

レッド「お願いします」

ポンポンポロリン

レッド「どうも」ペコッ

ジョーイ「またのご利用をお待ちしています」

レッド「ピカチュウズ」ポンッ、ポンッ

ピカチュウ「…」

ピカチュウ♀「…」キョロキョロ

レッド「買い物行ってくるからオマエたちはここで待ってて。
    20分くらいで戻るよ」

ピカチュウ「ピ!?」

ピカチュウ♀「ピカッ」

レッド「んじゃっ」ダッダッダッ

ピカチュウ「ピカピー!」

ピカチュウ「…」

ピカチュウ♀(ここ、ニンゲンがいっぱいいる)キョロキョロ

ピカチュウ「…」チラチラッ

ピカチュウ♀「ピカッ」(ジロジロ見ないでくれる?)

ピカチュウ「ピ、ピカピィ」(あっ、ごめんね……)

ピカチュウ♀「…」トコトコトコ

ピカチュウ「ピカッ……?」(どこ行くの?)

ピカチュウ♀「ピカピ」(関係ないでしょ)

ピカチュウ「ピカッ、ピカピカ」(でも一緒にいないとレッドが心配するよ)

ピカチュウ♀「ピカッ、ピカッチュ」(だからなに?)

ピカチュウ「ピ、ピカピィ、ピカピカァ」(なにって……後で怒られるのはぼくなんだよ)

ピカチュウ♀「ピカッ、ピカチュウ」(だから、あなたが怒られようが怒鳴られようが、わたしには関係ないでしょ)ダッダッダッ

ピカチュウ「ピカッ!」(あっ、待ってよ!)ダッダッダッ

そういえば、むかしなぜかピカチュウになりきってオナニーしてたなあ・・・
黒歴史ってレベルじゃない

ピカチュウ♀「……ピカッチュ」(ついてこないでよ)トコトコトコ

ピカチュウ「ピカッ、ピカピィ」(だってキミになにかあったら、脳みそがとろけるほど説教されるんだもん……)トコトコトコ

ピカチュウ♀「……ピカッ」(……好きにしたら)トコトコトコ

ピカチュウ「ピカピ?」(ところでどこへ向かってるの?)

ピカチュウ♀「ピカッ、ピカッチュ」(別に。ここニンゲンが多いし、じっとしてるのが嫌なだけ)

俺「ピカッチュ、ピカピカ、ッヂュウウウウ!」

ピカチュウ「ピカピ」(……ねぇ)

ピカチュウ♀「……ピカチュ」(あまり近寄らないで)

ピカチュウ「ピカピィ、ピカ、ピカピカ」(さっきのこと、まだ怒ってる?)

ピカチュウ♀「…」トコトコトコ

ピカチュウ「ピカ……」(ぼくのこと……そんなに嫌い?)

ピカチュウ♀「ピッカ、ピカピカ」(……頭に技をくらったことは、別にもう気にしてない)

俺「ビィカアア、ピカピカ、ッチャアアアア!」

thx

ピカチュウ「ピ……?」(えっ?)

ピカチュウ♀「ピカッ、ピカチュウ。ピカピカ」
      (あのニンゲンに『あなたとバトルしてほしい』って言われたからわたしはそれに従っただけだし。
       そしてわたしはあなたと戦って負けた。ただそれだけのこと)
ピカチュウ「……ピカッチュ」(……痛かった?)

ピカチュウ♀「……ピカッ」(そりゃね。地面に頭ぶつけたし)

ピカチュウ「ピカー」(ごめんね……)

ピカチュウ♀「ピカッチュ、ピカピカ」
      (わたしもちょっとやりすぎたし、痛いのはお互い様だから気にしてないよ)

ピカチュウ「ピ、ピカピィ」(あ、ありがとう)

ピカチュウ♀「ピカッチュ、ピカピカ、ピカピー」
      (だからって勘違いしないでよね。
       わたしはエサ目的であのニンゲンに近づいたんだから。
       あなたがおいしそうにがっつく姿を思い出してすごくムカムカしてるんだから。
       そこのところ理解してよね)

ピカチュウ「…」

ピカチュウ♀「ピカピー、ピカッチュ」(わかったらこれ以上馴れ馴れしくするのはやめてくれる?)

ピカチュウ「ピカッ。ピカピカ」(うん。わかったよ、ごめんね……)

ピカチュウ♀「ピカピィ」(いちいち謝るのはやめて。気持ち悪い)

ピカチュウ「…」

レッド「戻ったよ」

ピカチュウ♀「ピカッ」

ピカチュウ「…」

レッド「どうした? そんなにしょぼくれて」ナデナデ

ピカチュウ「ピカッ……」チラッ

ピカチュウ♀「…」プイッ

レッド「またケンカ? 飽きずによくやるなぁ」

レッド「ピカチュウ、異性は初めてだから緊張してるだけだろ?」ヒソヒソ

ピカチュウ「…」チラチラッ

ピカチュウ♀「ピカッ、ピカピィ」(どこ見てんの、えっち)

ピカチュウ「ピカー」(そ、そんなつもりじゃ……)

ピカチュウ♀「ピカッ、ピカチュウ」(あっち行ってよ)

ピカチュウ「…」

レッド「まぁまぁメスピカチュウ、これあげるから機嫌なおして」

ピカチュウ♀「ピッ?」

レッド「人間もポケモンもおいしく飲めるミックスオレだ。
    甘くてひんやりしてて心が癒されるぞ」

ピカチュウ♀「…」クンクン

レッド「信用ないなぁ俺。毒なんか入れてないって」

ピカチュウ♀(いいニオイ……)クンクン

レッド「あっ、オマエにはやらないぞ。か弱い女の子をはたいたバツ」

ピカチュウ「ピ、ピカ!?」

レッド「うそだようそ。本気にすんなって。ほいっ」

ピカチュウ「ピカ」(ほっ……)

ピカチュウ♀「…」クンクン

ピカチュウ♀(一口、舐めてみようかな)ペロッ

ピカチュウ♀「!」

ピカチュウ♀(すごく甘くておいしい)ゴクゴクッ

レッド「おいしいだろ。1本350円もするんだぜ」

ピカチュウ♀(甘味が口いっぱいに広がって、旨味が舌に染みこんで……)ゴクッ、ゴクッ

ピカチュウ「…」

レッド「ピカチュウ、飲まないのか?」

ピカチュウ♀(水なんかとは全然比べものにならないくらいおいしい)ゴクッ、ゴクッ

レッド「おーっ、一気に飲みほしたな。よっぽど好物だったのかな?」

ピカチュウ♀「ピカッ」グイッ

レッド「えっ、おかわり?」

ピカチュウ♀「チャアァ」コクッコクッ

レッド「ごめん。あいにく2本しかないんだ。
    後でおつきみやまで買ってきてあげるよ」

ピカチュウ♀「チュウ……」

レッド「あっ、サイコソーダなら確かまだあったぞ」ガサゴソ

レッド「はい。これもおいしいよ」

ピカチュウ♀「…」クンクン

ピカチュウ♀「ピカッ!」(こんなのいや!)バシッ

レッド「えー、ダメなの? ちぇっ、贅沢だなぁ」

ピカチュウ「ピ、ピカピ」(あ、あの……)オズオズ

ピカチュウ「ピカピー、ピカッチュ」(ぼくのこれ、飲んでいいよ)スッ

ピカチュウ♀「ピカッ……?」(えっ?)

ピカチュウ「ピカチュウ、ピカピカ」(まだ口つけてないから大丈夫。これ、キミにあげる)

レッド「おぉっ?」

ピカチュウ♀「……ピッ?」(……どういう風の吹き回し?)

ピカチュウ「ピカピカ、ピカッチュ」(いや、キミがすごく飲みたそうだからあげようかなって)

ピカチュウ♀「ピカピ?」(でも、あなたも飲みたいんじゃないの?)

ピカチュウ「ピカチュウ、ピカピカ」(ぼくはサイコソーダでいいから)

ピカチュウ♀「…」

ピカチュウ♀「ピカピカ……?」(本当にいいの?)

ピカチュウ「ピカッチュ」(うん。はいっ)スッ

ピカチュウ♀「……ピカピ」(……ありがと)

レッド「オマエは優しいな」ナデナデ

ピカチュウ「ピッカ」ニコニコ

ピカチュウ♀(おいしい)ゴクッ、ゴクッ

レッド「ほいっ、サイコソーダ。ゆっくり飲むんだぞ」

ピカチュウ「ピカピ」

ピカチュウ♀「…」ゴクッ、ゴクッ

ピカチュウ「! ピカァ……」(す、すっぱいや……)

ピカチュウ♀「ピカチュピ?」(それ、おいしいの?)

ピカチュウ「ピカピー、ピカピカ」(うーん、あんまり……かな)

ピカチュウ♀(……このピカチュウにもちょっとだけいいところがあるみたい)ゴクッ、ゴクッ

レッド「それ飲んだらおつきみやまにでも行こっか」

ピカチュウ「ピカッ」

レッド「じゃあ出発しよっか。あっ、メスピカチュウ、これ」

ピカチュウ♀「?」

レッド「仲間になった記念にオマエにも渡しとく。貴重な物だから紛失だけはしないように」

ピカチュウ♀(なにこれ。玉?)

ピカチュウ「ピカピー、ピカピカ、ピカッチュ」
     (それは『でんきだま』といって、攻撃力を高めてくれるぼくたち専用のどうぐだよ)

ピカチュウ♀「ピカピ……?」(わたしたち専用?)

ピカチュウ「ピカピ、ピカピカ、ピカチュウ」
     (ぼくたちピカチュウが持ってると攻撃力が2倍になるんだって)

ピカチュウ♀「ピカピカ?」(ライチュウには効果が出ないの?)

ピカチュウ「ピカピー、ピカッチュ」(うん。だからレッドはぼくを進化させないまま育ててるんだと思う)

ピカチュウ♀「ピカピカ、ピカチュウ」(そうなんだ。すごいアイテム)

レッド「行こうよピカチュウズ」

ピカチュウ「ピカッ」コクッ

―おつきみやま・いりぐち―
レッド「ここはトキワのもりよりも更に薄暗い洞窟だから注意深く歩くように」

ピカチュウ「ピカッ」

ピカチュウ♀「…」ギュッ

ピカチュウ「!」

ピカチュウ♀「ピカピ……」(……こういう場所、苦手)

ピカチュウ「ピ、ピカチュピ、ピカー」(い、痛いよ。そんなにしがみつかないでよ)

ピカチュウ♀「…」ギュッ

レッド(あれだけさわられるのを嫌ってたメスピカチュウが自分からピカチュウにさわってる……)

レッド「じゃあ行こうか」スタスタスタ

ピカチュウ♀「ピカ、ピカチュウ」(ゆっくり歩いてよ)

ピカチュウ「ピカチュピ、ピカピカ」
     (わかったからそんなに強くつかまないでってば……)トコトコトコ

レッド「懐かしいなぁ。あの時は確かピカチュウしかいなかったから通り抜けるのに随分苦労したんだっけ」

ピカチュウ♀「ピカピ?」(このニンゲン、他にポケモン持ってないの?)

ピカチュウ「ピカチュピ、ピカピカ」
     (いっぱいいるけど今はパソコンって機械にあずけてるよ)トコトコトコ

ピカチュウ♀(やだなぁここ。空気が冷たいし不気味だし……)ブルブル

バササササッ

ピカチュウ♀「ピカピ!」(きゃっ!)ギュウウッ

ピカチュウ「ピカァー!」(いたたたたっ!)バタバタ

レッド「ただのズバットだよ」クスクス

ピカチュウ♀「ピカー、ピカチュウ」(ねぇ、こんなところ早く出ようよ……)

ピカチュウ「ピ、ピカピ」(ぼ、ぼくに言われても……)

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